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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169172
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】仮固定用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20241128BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086421
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 和頼
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA101
4J040FA131
4J040JB08
4J040KA13
4J040NA20
(57)【要約】
【課題】 本発明は、広い面積を有する(大判)プレート状部材に適用することができ且つ短時間でプレート状部材同士を剥離することができると共に、ノズル詰まりを生じることなくスプレー塗工に好適に用いることができ、更に、高い熱を加える必要がないため、熱に弱いプレート状部材にも用いることができる仮固定用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の仮固定用接着剤組成物は、イソシアネート基を有する有機化合物(A)と、イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有する有機化合物(A)と、イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)とを含むことを特徴とする仮固定用接着剤組成物。
【請求項2】
上記有機化合物(A)及び上記重合性化合物(B)は、アクリル系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項3】
上記有機化合物(A)は、エチレン性不飽和結合を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項4】
上記重合性化合物(B)は、ポリオキシアルキレン鎖を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項5】
エチレン性不飽和結合を2個以上有する重合性化合物(C)を更に含有することを特徴とする請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項6】
エチレン性不飽和結合と一般式(1)で示される構造を有する置換基とを有する重合性化合物(D)を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の仮固定用接着剤組成物。
【化1】

但し、式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、水素原子又は一価の炭化水素基である。R1及びR2は同一であっても相違してもよい。R1及びR2は共有結合を介して結合して環状骨格を形成していてもよい。*1は、結合手であって、単結合を意味する。
【請求項7】
活性水素基を含まない(メタ)アクリルアミド系化合物(E)を更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項8】
光重合開始剤(F)を更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プリズム、レンズ、シリコンウエハ及び半導体実装部品などのプレート状部材は、1枚単独では強度が低いため、仮固定剤を用いて複数枚を積層した上で加工することが行われている。
【0003】
プレート状部材を積層するために、ホットメルト接着剤などが用いられている。
【0004】
しかしながら、ホットメルト接着剤は、高温のプロセスに耐えることができないと共に、剥離後のプレート状部材に糊残りが生じるため、プレート状部材をアルカリ溶剤又は有機溶剤を用いて洗浄する必要があり、作業環境上も好ましくないという問題点を有している。
【0005】
又、半導体実装部品に用いられる仮固定剤は、近年の半導体製造技術の進歩に伴い、更に広い面積を有するプレート状部材に適用できることが求められている。
【0006】
そこで、特許文献1には、(1)ウレタン(メタ)アクリレート、(2)n-(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート及び特定の一般式で示される(メタ)アクリル酸誘導体モノマーからなる群の1種または2種以上からなる(メタ)アクリル酸誘導体モノマー並びに(3)光重合開始剤を含有してなる接着剤組成物が開示されている。
【0007】
特許文献2には、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)発泡剤及び(D)光重合開始剤を含有する組成物が開示されている。
【0008】
特許文献3には、小物品を仮固定して所望の形状に機械加工する際に仮固定用接着剤として使用される接着剤組成物において、分子内に重合可能なエチレン性二重結合を少なくとも一つ有する吸水性モノマーと光重合開始剤(B)とを含む仮固定用接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-257312号公報
【特許文献2】特開2010-100831号公報
【特許文献3】特開平2-140279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の接着剤組成物は、狭い面積を有するプレート状部材にしか適用することができず、プレート状部材同士を剥離するために要する時間も長いという問題点を有している。
【0011】
特許文献2の接着剤組成物は、発泡剤として炭酸水素ナトリウムが用いられているが、炭酸水素ナトリウムは、(メタ)アクリレートに溶解しないため、炭酸水素ナトリウムが沈降して不均一となり、又は、ノズルから噴射させて塗工する際にノズルが詰まるという問題点を生じる。
【0012】
特許文献3の仮固定用接着剤組成物は、50~200℃程度で分解する熱分解型発泡剤を用いているため、耐熱性が低いという問題点を有している。
【0013】
本発明は、広い面積を有する(大判)プレート状部材に適用することができ且つ短時間でプレート状部材同士を剥離することができると共に、ノズル詰まりを生じることなく、更に、高温のプロセスにも耐えることができる仮固定用接着剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の仮固定用接着剤組成物は、イソシアネート基を有する有機化合物(A)と、イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)とを含む。
【0015】
[イソシアネート基を有する有機化合物(A)]
仮固定用接着剤組成物は、イソシアネート基を有する有機化合物(A)(以下、単に「有機化合物(A)」ということがある)を含有している。本発明において、「有機化合物」とは、分子中に少なくとも1個(好ましくは2個以上)の炭素を含み且つ炭素-水素結合(C-H結合)を含む化合物をいう。重合性化合物(A)は、活性水素基を有していないことが好ましい。即ち、重合性化合物(A)は、1分子中の活性水素基の数が0個であることが好ましい。重合性化合物(A)は、実質的にイソシアネート基の作用を阻害しなければよく、1分子中の活性水素基の平均個数は、0.3個以下であればよい。
【0016】
有機化合物(A)は、イソシアネート基(-NCO)を有しておればよい。有機化合物(A)は、イソシアネート基が水(好ましくは温水)と反応することによって二酸化炭素を発生させる。二酸化炭素によって、仮固定用接着剤組成物の硬化物を発泡させてプレート状部材に対する剥離応力を生じさせて、積層状態のプレート状部材を容易に剥離させることができる。
【0017】
有機化合物(A)において、1分子中のイソシアネート基の数は、1個以上が好ましい。有機化合物(A)において、1分子中のイソシアネート基の数は、4個以下が好ましい。
【0018】
有機化合物(A)としては、イソシアネート基を有しておれば、特に限定されず、例えば、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI、2,4体、2,6体、又はこれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物などが挙げられる。なお、有機化合物(A)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0019】
有機化合物(A)としては、上記で挙げたポリイソシアネート化合物の他に、イソシアネート基を有し且つエチレン性不飽和結合(エチレン性不飽和二重結合など)を有している有機化合物であってもよく、イソシアネート基を有するアクリル系化合物が好ましい。仮固定用接着剤組成物の硬化時に、有機化合物(A)を重合性化合物(B)と共重合させて硬化物に均一に取り込むことができる。積層状態のプレート状部材を剥離する時に、仮固定用接着剤組成物の硬化物全体を均一に発泡させてプレート状部材に対する剥離応力を生じさせることができ、プレート状部材を容易に剥離することができる。有機化合物(A)がイソシアネート基を有するアクリル系化合物である場合、重合性化合物(B)との相溶性に優れ、仮固定用接着剤組成物の構成成分の層分離を防止し、ノズルを詰まらせることなく所望箇所に精度よく塗工することができる。
【0020】
有機化合物(A)が、イソシアネート基を有し且つエチレン性不飽和結合(エチレン性不飽和二重結合など)を有している有機化合物である場合、有機化合物(A)において、1分子中のエチレン性不飽和結合の数は1個が好ましい。
【0021】
なお、本発明において、「アクリル系化合物」とは、アクリル酸又はメタクリル酸の残基を分子中に含む化合物をいう。具体的には、アクリロイルオキシ基[式(11)]又はメタクリロイルオキシ基[式(12)]を含む化合物をいう。なお、*2及び*3は、結合手であって、単結合を意味する。
【0022】
【化2】
【0023】
イソシアネート基を有するアクリル系化合物としては、特に限定されず、例えば、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、2-(2-(メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1-(ビスメタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどが挙げられ、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが好ましい。本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0024】
[イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)]
仮固定用接着剤組成物は、イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)(以下、単に「重合性化合物(B)」ということがある)を含有している。仮固定用接着剤組成物は、放射線の照射によって重合性化合物(B)が重合して硬化し、プレート状部材同士を良好に接着することができる。仮固定用接着剤組成物の硬化物のプレート状部材への接着性を向上させて、積層状態のプレート状部材の加工時において、プレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。重合性化合物(B)中におけるエチレン性不飽和結合の数は、1個が好ましい。プレート状部材の接着性を向上させることができる。重合性化合物(B)は、1分子中のイソシアネート基の数が0個である。重合性化合物(B)は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物のうち、イソシアネート基を有する重合性化合物を除いた重合性化合物をいう。
【0025】
重合性化合物(B)は、積層状態のプレート状部材の剥離性が向上するので、活性水素基を含まないことが好ましい。即ち、重合性化合物(B)は、1分子中の活性水素基の数が0個であることが好ましい。重合性化合物(B)は、実質的に有機化合物(A)のイソシアネート基の作用を阻害しなければよく、1分子中の活性水素基の平均個数は、0.3個以下であればよい。
【0026】
本発明において、「活性水素基」とは、イソシアネート基と反応可能な置換基を意味する。活性水素基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イミノ基(=NH)、チオール基(-SH)などが挙げられる。
【0027】
重合性化合物(B)は、イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合(エチレン性不飽和二重結合など)を有しておればよく、プレート状部材同士の接着性が向上するので、イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合を有するアクリル系化合物が好ましい。
【0028】
有機化合物(A)及び重合性化合物(B)が共にアクリル系化合物であると、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の相溶性が向上し、仮固定用接着剤組成物の構成成分の層分離を防止し、ノズルを詰まらせることなく仮固定用接着剤組成物を所望箇所に精度よく塗工することができる。
【0029】
重合性化合物(B)としては、例えば、アルコキシポリアルキレングリコール-(メタ)アクリレート、アルキレングリコール-(メタ)アクリレート、トリシクロデカノールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、重合性化合物(B)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
重合性化合物(B)は、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有していることが好ましく、ポリオキシエチレン鎖を有していることがより好ましい。分子中にポリオキシアルキレン鎖を有していることによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性が向上すると共に、仮固定用接着剤組成物の硬化物において、水の吸収性が向上し、積層状態のプレート状部材において、プレート状部材の剥離性が向上する。
【0031】
重合性化合物(B)が有するポリオキシアルキレン鎖は、一般式:-(R11-O)q-(式中、R11は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、qは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される鎖状構造が好ましい。ポリオキシアルキレン鎖は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0032】
本発明において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。
【0033】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH25-]、ヘキシレン基などが挙げられ、エチレン基が好ましい。
【0034】
重合性化合物(B)としては、一般式(2)で示される構造を有するアクリル系化合物が好ましい。重合性化合物(B)が一般式(2)で示される構造を有していると、仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性に優れていると共に、仮固定用接着剤組成物の硬化物において、水の吸収性が向上し、積層状態のプレート状部材において、プレート状部材の剥離性に優れている。
【0035】
【化3】
【0036】
但し、一般式(2)中、R3は、炭素数が1~14のアルキレン基を表し、R11は、アルキル基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。
【0037】
式(2)において、R11の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。R10としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0038】
一般式(2)において、仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性及びプレート状部材の剥離性に優れているので、R3は、炭素数が1~4のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0039】
一般式(2)において、繰り返し単位の数nは、仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性及びプレート状部材の剥離性に優れているので、1~20が好ましく、4~16がより好ましく、6~12がより好ましい。
【0040】
仮固定用接着剤組成物中において、有機化合物(A)と重合性化合物(B)の含有比率[有機化合物(A)の質量/重合性化合物(B)の質量]は、0.02以上が好ましく、0.04以上がより好ましく、0.08以上がより好ましく、0.10以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中において、有機化合物(A)と重合性化合物(B)の含有比率[有機化合物(A)の質量/重合性化合物(B)の質量]は、3.5以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がより好ましく、1.2以下がより好ましい。有機化合物(A)と重合性化合物(B)の含有比率[有機化合物(A)の質量/重合性化合物(B)の質量]が0.1以上であると、プレート状部材の剥離のために必要な剥離応力を十分に発生させることができるので好ましい。有機化合物(A)と重合性化合物(B)の含有比率[有機化合物(A)の質量/重合性化合物(B)の質量]が3.5以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物のプレート状部材への接着性を向上させて、積層状態のプレート状部材の加工時において、プレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。
【0041】
[エチレン性不飽和結合を2個以上有する重合性化合物(C)]
仮固定用接着剤組成物は、エチレン性不飽和結合を2個以上有する重合性化合物(C)(以下、単に「重合性化合物(C)」ということがある)を含有していることが好ましい。重合性化合物(C)において、エチレン性不飽和結合の数は、6以下であることが好ましい。重合性化合物(C)は、イソシアネート基(-NCO)を有しないことが好ましい。重合性化合物(C)は、1分子中のイソシアネート基の数が0個であることが好ましい。重合性化合物(C)は、実質的に架橋構造形成のための反応を阻害しなければよく、1分子中のイソシアネート基の平均個数は、0.3個以下であればよい。重合性化合物(C)は、活性水素基を有していないことが好ましい。即ち、重合性化合物(C)は、1分子中の活性水素基の数が0個であることが好ましい。重合性化合物(C)は、実質的に有機化合物(A)のイソシアネート基の作用を阻害しなければよく、1分子中の活性水素基の平均個数は、0.3個以下であればよい。なお、重合性化合物(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0042】
仮固定用接着剤組成物が、エチレン性不飽和二重結合などのエチレン性不飽和結合を2個以上有する重合性化合物(C)を含有していると、重合性化合物(C)は、重合性化合物(B)及びその他のエチレン性不飽和結合(エチレン性不飽和二重結合など)を有する重合性化合物と共重合することによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物に架橋構造を付与し、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を吸収して発泡した時に、硬化物が破断することを低減し、硬化物を一つのシート状を保持したまま発泡させながら、プレート状部材の表面か円滑に離脱させて、積層状態のプレート状部材の剥離性に優れている。
【0043】
重合性化合物(C)は、エチレン性不飽和結合を2個以上有しておれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリブチレングリコールジアクリレートなどのポリアルキレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリシクロジデカンジメタノールジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、鎖状骨格(鎖状の分子構造)であることが好ましい。ポリアルキレングリコールジアクリレートが好ましく、ポリエチレングリコールジアクリレートがより好ましい。
【0044】
ポリアルキレングリコールジアクリレートは、一般式(3)で示される構造式を有している。
【0045】
【化4】
【0046】
但し、一般式(3)中、R4は、炭素数が1~14のアルキレン基を表し、mは、繰り返し単位の数であって正の整数である。
【0047】
一般式(3)において、仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性及びプレート状部材の剥離性に優れているので、R4は、炭素数が1~4のアルキレン基が好ましい。
【0048】
一般式(3)において、繰り返し単位の数mは、2以上がより好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより好ましい。繰り返し単位の数mは、14以下が好ましく、12以下がより好ましい。mが2以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物に柔軟性を付与することができ、仮固定用接着剤組成物の硬化物に水を供給した時に、硬化物が円滑に発泡して剥離応力を生じさせ、積層状態のプレート状部材の剥離性が向上する。mが14以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物の架橋密度を高くして、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を吸収して発泡した時に、硬化物が破断することを低減し、硬化物を一つのシート状を保持したまま発泡させながら、プレート状部材の表面か円滑に離脱させて、積層状態のプレート状部材の剥離性を向上させることができる。
【0049】
重合性化合物(C)の分子量は、200以上が好ましく、250以上が好ましく、300以上がより好ましい。重合性化合物(C)の分子量は、800以下が好ましく、600以下がより好ましく、500以下がより好ましい。重合性化合物(C)の分子量が200以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物に柔軟性を付与することができ、仮固定用接着剤組成物の硬化物に水を供給した時に、硬化物が円滑に発泡して剥離応力を生じさせ、積層状態のプレート状部材の剥離性が向上する。重合性化合物(C)の分子量が800以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物の架橋密度を高くして、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を吸収して発泡した時に、硬化物が破断することを低減し、硬化物を一つのシート状を保持したまま発泡させながら、プレート状部材の表面か円滑に離脱させて、積層状態のプレート状部材の剥離性を向上させることができる。
【0050】
仮固定用接着剤組成物中における重合性化合物(C)の含有量は、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の総量100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、4質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における重合性化合物(C)の含有量は、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の総量100質量部に対して200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、50質量部以下がより好ましい。重合性化合物(C)の含有量が1質量部以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物の架橋密度を高くして、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を吸収して発泡した時に、硬化物が破断することを低減し、硬化物を一つのシート状を保持したまま発泡させながら、プレート状部材の表面か円滑に離脱させて、積層状態のプレート状部材の剥離性を向上させることができる。重合性化合物(C)の含有量が200質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物に柔軟性を付与することができ、仮固定用接着剤組成物の硬化物に水を供給した時に、硬化物が円滑に発泡して剥離応力を生じさせ、積層状態のプレート状部材の剥離性が向上する。
【0051】
[エチレン性不飽和結合及び一般式(1)で示される構造を有する置換基を有する重合性化合物(D)]
仮固定用接着剤組成物は、エチレン性不飽和結合及び一般式(1)で示される構造を有する置換基を有する重合性化合物(D)(以下、単に「重合性化合物(D)」ということがある)を含有していることが好ましい。仮固定用接着剤組成物が重合性化合物(D)を含有していると、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、プレート状部材に対する接着性が向上する。プレート状部材への硬化物の接着性を向上させて、積層状態のプレート状部材の加工時において、プレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。重合性化合物(D)は、活性水素基を有していないことが好ましい。即ち、重合性化合物(D)は、1分子中の活性水素基の数が0個であることが好ましい。重合性化合物(D)は、実質的に有機化合物(A)の発泡作用を阻害しなければよく、1分子中の活性水素基の平均個数は、0.3個以下であればよい。重合性化合物(D)は、イソシアネート基(-NCO)を有しないことが好ましい。重合性化合物(D)は、1分子中のイソシアネート基の数が0個であることが好ましい。重合性化合物(D)は、実質的に仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を阻害しなければよく、1分子中のイソシアネート基の平均個数は、0.3個以下であればよい。重合性化合物(D)において、1分子中のエチレン性不飽和結合の数は1~4個であることが好ましい。なお、重合性化合物(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0052】
重合性化合物(D)は、エチレン性不飽和二重結合などのエチレン性不飽和結合を有しており、重合性化合物(B)及びその他のエチレン性不飽和結合(エチレン性不飽和二重結合など)を有する重合性化合物と共重合することによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物に極性基を導入し、プレート状部材に対する接着性を向上させることができる。重合性化合物(D)は、アクリロイルオキシ基[式(11)]又はメタクリロイルオキシ基[式(12)]を含むことが好ましい。
【0053】
【化5】
【0054】
重合性化合物(D)は、一般式(1)で示される構造を有する置換基を有しているので、仮固定用接着剤組成物の硬化物に極性基を導入することができ、硬化物のプレート状部材に対する接着性を向上させることができる一方、硬化物の吸水性を向上させることができ、硬化物に水を供給して発泡させると、硬化物にプレート状部材に対する剥離応力をより円滑に生じさせて、プレート状部材からの硬化物の離脱を促進し、積層状態のプレート状部材の剥離性を優れたものにすることができる。
【0055】
重合性化合物(D)に含まれている一般式(1)で示される構造を有する置換基は下記の構造を有している。
【0056】
【化6】
【0057】
但し、式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、水素原子又は一価の炭化水素基である。R1及びR2は同一であっても相違してもよい。R1及びR2は互いに結合して環状骨格を形成してもよい。*1は、結合手であって、単結合を意味する。
【0058】
1及びR2はそれぞれ、水素原子又は一価の炭化水素基である。R1及びR2はそれぞれ、エチレン性不飽和結合を含有していてもよい。一価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基などのアルキル基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する一価の炭化水素基(以下、単に「一価の不飽和炭化水素基」ということがある)としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、イソプロペニル基、n-ブテニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【0059】
式(1)中、R1及びR2は共有結合を介して結合して環構造を形成していてもよい。環構造としては、特に限定されず、例えば、脂環構造(1個のみの環構造を有する)、橋かけ環構造(複数の環が2個以上の原子を共有している環構造)などが挙げられる。脂環構造は、飽和脂環構造であっても、エチレン性不飽和結合を含む不飽和脂環構造であってもよい。橋かけ環構造は、飽和橋かけ環構造であっても、エチレン性不飽和結合を含む不飽和橋かけ環構造であってもよい。脂環構造は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含まないことが好ましい。橋かけ環構造は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含まないことが好ましい。
【0060】
飽和脂環構造としては、特に限定されず、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環などが挙げられ、シクロヘキサン環などが挙げられる。
【0061】
不飽和脂環構造としては、特に限定されず、例えば、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロペプテン環、シクロオクテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環などが挙げられ、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロオクテン環が好ましい。不飽和脂環構造は、エチレン性不飽和結合を1個のみ有していることが好ましい。
【0062】
飽和橋かけ環構造としては、特に限定されず、例えば、ビシクロ[2.1.0]ペンタン環、ビシクロヘプタン環(例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環など)、ビシクロオクタン環(例えば、ビシクロ[3.2.1]オクタン環など)、ビシクロノナン環、ビシクロデカン環、ビシクロウンデカン環、ビシクロドデカン環などが挙げられる。
【0063】
不飽和橋かけ環構造としては、特に限定されず、例えば、ビシクロ[2.1.0]ペンテン環、ビシクロヘプテン環、ビシクロオクテン環(例えば、ビシクロ[3.2.1]オクテン環など)、ビシクロノネン環、ビシクロデセン環、ビシクロペンタジエン環、ビシクロへプタジエン環、ビシクロオクタジエン環などが挙げられる。
【0064】
式(1)で示される構造を有する置換基としては、式(6)~(8)で示される構造を有する置換基が好ましい。なお、式(6)~(8)において、*1は、結合手であって、単結合を意味する。
【0065】
【化7】
【0066】
重合性化合物(D)としては、例えば、N-アクリロイルオキシエチルスクシンイミド、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-アクリロイルオキシエチル1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、N-アクリロイルオキシエチル5-ノルボルネン-2,3‐ジカルボキシイミド、N-アクリロイルオキシエチル5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド、N-アクリロイルオキシエチルスクシンイミドなどが挙げられ、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが好ましい。
【0067】
仮固定用接着剤組成物中における重合性化合物(D)の含有量は、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の総量100質量部に対して15質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましく、40質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における重合性化合物(D)の含有量は、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の総量100質量部に対して150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、90質量部以下がより好ましい。重合性化合物(D)の含有量が15質量部以上であると、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させることができる。重合性化合物(D)の含有量が150質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物に水を供給することによってプレート状部材からの離脱を容易にし、積層状態のプレート状部材の剥離性を優れたものとすることができる。
【0068】
[活性水素基を含まない(メタ)アクリルアミド系化合物(E)]
仮固定用接着剤組成物は、活性水素基を含まない(メタ)アクリルアミド系化合物(E)(以下、単に「(メタ)アクリルアミド系化合物(E)」ということがある)を含む。仮固定用接着剤組成物が(メタ)アクリルアミド系化合物(E)を含有していると、プレート状部材に対する接着性が向上する。本発明において、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。なお、(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0069】
(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有しており、重合性化合物(B)及びその他のエチレン性不飽和結合(エチレン性不飽和二重結合など)を有する重合性化合物と共重合することによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物に極性基を導入し、プレート状部材に対する接着性を向上させることができる。
【0070】
一方、(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、硬化物に水を供給すると、硬化物の吸水性を向上させ、硬化物を更に発泡させ易くし、プレート状部材に対する剥離応力を更に生じさせて、硬化物のプレート状部材に対する接着性を円滑に低下させて、プレート状部材からの硬化物の離脱を促進し、積層状態のプレート状部材の剥離性を優れたものにすることができる。
【0071】
(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、活性水素基を有していない。即ち、(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、1分子中の活性水素基の数が0個である。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、(メタ)アクリルアミド系化合物のうち、活性水素基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物を除いたものである。
【0072】
(メタ)アクリルアミド系化合物(E)としては、特に限定されない。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)としては、式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)、式(5)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)などが挙げられ、式(4)で示されるアクリルアミドが好ましい。なお、(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、下記の通りの構造式を有している。
【0074】
【化8】
【0075】
式(4)中、R5及びR6はそれぞれ、一価の置換基である。R5及びR6は、互いに同一であっても相違してもよい。R7は、水素原子又はメチル基である。R5及びR6がアルキル基の場合、アルキル基は、直鎖状又は分岐状の何れであってもよい。なお、アルキル基とは、脂肪族飽和炭化水素から水素原子1個を引き抜いて形成される1価の原子団をいう。R5及びR6は互いに結合して環状骨格を形成してもよい。
【0076】
5及びR6としては、特に限定されない。R5及びR6としては、アルキル基が好ましい。
【0077】
式(4)中、R5及びR6がアルキル基の場合、アルキル基の水素は、他の原子又は原子団によって置換されていないことが好ましい。
【0078】
5及び/又はR6がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。R7は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性が向上するので、水素原子が好ましい。
【0079】
5及び/又はR6がアルキル基である場合、アルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、n-ペンチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
【0080】
式(4)中、R5及びR6は共有結合又はエーテル結合(-O-)を介して結合して環構造を形成していてもよい。環構造としては、特に限定されず、例えば、脂肪族複素環構造(1個のみの環構造を有する)、橋かけ複素環構造(複数の環が2個以上の原子を共有している環構造)などが挙げられる。脂肪属複素環構造は、飽和脂肪属複素環構造であっても、エチレン性不飽和結合を含む不飽和脂肪属複素環構造であってもよい。橋かけ複素環構造は、飽和橋かけ複素環構造であっても、エチレン性不飽和結合を含む不飽和橋かけ複素環構造であってもよい。
【0081】
飽和脂肪族複素環構造としては、特に限定されず、例えば、アジリジン構造、アゼチジン構造、ピロリジン構造、モルホリン構造などが挙げられる。
【0082】
不飽和脂肪族複素環構造としては、特に限定されず、例えば、ピロリン環などが挙げられる。
【0083】
飽和橋かけ複素環構造としては、特に限定されず、例えば、キヌクリジン構造、アザアダマンタン構造などが挙げられる。
【0084】
仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材同士の不測の剥離又はずれを防止してプレート状部材の切削、切断及び研磨などの加工をより円滑に行うことができるので、式(4)において、R5及びR6がアルキル基で且つR7が水素原子であることが好ましい。
【0085】
式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)としては、特に限定されず、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)が好ましく、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)がより好ましい。
【0086】
式(5)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、下記の通りの構造式を有している。
【0087】
【化9】
【0088】
式(5)中、R8及びR9はそれぞれ独立してアルキル基である。R8及びR9は、互いに同一であっても相違してもよい。アルキル基は、直鎖状又は分岐状の何れであってもよい。式(5)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のアルキル基の水素は、他の原子又は原子団によって置換されていないことが好ましい。R10は、水素原子又はメチル基である。pは、繰り返し単位の数であって自然数であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。pが上記範囲内であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物の吸水性を向上させ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し発泡して剥離応力を生じさせ、積層状態のプレート状部材の剥離性を向上させることができる。
【0089】
8及びR9について、アルキル基の炭素数は、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性が向上するので、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
【0090】
8及びR9について、アルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、n-ペンチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
【0091】
プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材同士の不測の剥離又はずれを防止してプレート状部材の切削、切断及び研磨などの加工をより円滑に行うことができるので、式(5)において、R8及びR9がアルキル基で且つR10が水素原子であることが好ましい。
【0092】
式(5)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)としては、特に限定されず、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-[2―(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミドなどが挙げられ、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上するので、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミドが好ましく、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドがより好ましい。
【0093】
(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgは、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がより好ましい。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgが80℃以上であると、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgが150℃以下であると、積層状態のプレート状部材において、プレート状部材の剥離性を向上させることができる。
【0094】
式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgは、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がより好ましい。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgが80℃以上であると、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgが150℃以下であると、積層状態のプレート状部材において、プレート状部材の剥離性を向上させることができる。
【0095】
式(5)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgは、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がより好ましく、125℃以上がより好ましい。式(5)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgが80℃以上であると、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgが150℃以下であると、積層状態のプレート状部材において、プレート状部材の剥離性を向上させることができる。
【0096】
本発明において、(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のガラス転移温度Tgは、(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のホモポリマーのガラス転移温度Tgをいう。(メタ)アクリルアミド系化合物(E)のホモポリマーのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量(DSC)測定において、昇温速度10℃/分、及び、測定温度領域20~200℃の測定条件下にて測定された低温側のベースラインを高温側に延長した直線および高温側のベースラインを低温側に延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする。約10mgのポリマーを用い、例えば、下記の条件下にて、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度を測定する。
測定機器:示差走査熱量計 DSC200(日立ハイテクサイエンス社製)
昇温速度:10℃/分
測定温度領域:20~200℃
【0097】
(メタ)アクリルアミド系化合物(E)は、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させることができるので、式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)又は式(5)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)を含むことが好ましく、式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)を含むことが好ましく、N,N-ジメチルアクリルアミドを含むことが好ましい。
【0098】
(メタ)アクリルアミド系化合物(E)中における式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%以上がより好ましい。式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量は、50質量%以上であると、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。
【0099】
式(4)で示される(メタ)アクリルアミド系化合物(E)中におけるN,N-ジメチルアクリルアミドの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0100】
仮固定用接着剤組成物は、重合性化合物(D)及び(メタ)アクリルアミド系化合物(E)を含有していることが好ましい。重合性化合物(D)及び(メタ)アクリルアミド系化合物(E)を含有していると、仮固定用接着剤組成物の硬化物について、プレート状部材に対する接着性が向上する。更に、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して接着されたプレート状部材同士の接着が、空気中の水分によって低下することを低減化し、プレート状部材同士の接着状態をより安定的に維持することができる。
【0101】
仮固定用接着剤組成物において、重合性化合物(D)の含有量と(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量の比率[重合性化合物(D)の質量/(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の質量]は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上がより好ましく、1.5以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物において、重合性化合物(D)の含有量と(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量の比率[重合性化合物(D)の質量/(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の質量]は、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がより好ましい。上記比率が0.1以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物のプレート状部材に対する接着性が向上する。上記比率が10以下であると、硬化物の吸水性を向上させ、硬化物を更に発泡させ易くし、プレート状部材に対する剥離応力を更に生じさせて、硬化物のプレート状部材に対する接着性を円滑に低下させて、プレート状部材からの硬化物の離脱を促進し、積層状態のプレート状部材の剥離性を優れたものにすることができる。
【0102】
仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量は、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の総量100質量部に対して20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量は、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の総量100質量部に対して180質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、80質量部以下がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量が20質量部以上であると、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド系化合物(E)の含有量が110質量部以下であると、積層状態のプレート状部材において、プレート状部材の剥離性を向上させることができる。
【0103】
[光重合開始剤(F)]
仮固定用接着剤組成物は、光重合開始剤(F)を含むことが好ましい。光重合開始剤は、放射線の照射によってラジカルを発生し、仮固定用接着剤組成物に含まれているモノマーをラジカル重合させる。
【0104】
光重合開始剤(F)としては、仮固定用接着剤組成物中に含まれるモノマーをラジカル重合させることができれば、特に限定されない。本発明において、「モノマー」とは、重合性化合物の他、重合性化合物と重合可能な化合物を含む概念である。
【0105】
光重合開始剤(F)としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤が好ましく、仮固定用接着剤組成物を一液型とすることができ仮固定用接着剤組成物の作業性に優れ且つ仮固定用接着剤組成物の光硬化性に優れているので、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤がより好ましい。
【0106】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0107】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0108】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0109】
トリアジン系光重合開始剤としては、例えば、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0110】
仮固定用接着剤組成物において、光重合開始剤(F)の含有量は、仮固定用接着剤組成物に含まれるモノマー全量100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物において、光重合開始剤(F)の含有量は、仮固定用接着剤組成物に含まれるモノマー全量100質量部に対して6.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がより好ましい。光重合開始剤(F)の含有量が0.1質量部以上であると、仮固定用接着剤組成物が光硬化性に優れているので好ましい。光重合開始剤(F)の含有量が6.0質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物は光硬化性に優れている。
【0111】
[添加剤]
仮固定用接着剤組成物は、その物性を阻害しない範囲内において、チクソトロピック剤、ウレタンアクリレート、アクリル系ポリマー、接着性付与樹脂、可塑剤、非熱膨張性微粒子、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤、界面活性剤などを含有してもよい。
【0112】
[仮固定用接着剤組成物]
仮固定用接着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)と、必要に応じて含有される化合物及びその他の添加剤を汎用の要領で好ましくは常圧下において均一に混合することによって製造することができる。
【0113】
[プレート状部材の加工方法]
仮固定用接着剤組成物は、プレート状部材の加工時にプレート状部材同士を積層状態に重ね合わせて、プレート状部材同士を仮固定するために用いられる。プレート状部材としては、特に限定されず、例えば、薄層ガラス、ガラス、水晶、石英、プリズム、光学レンズ、シリコンウエハ及び半導体実装部品などが挙げられる。
【0114】
仮固定用接着剤組成物は、大判のプレート状部材に特に好適に適用することができる。仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して大判のプレート状部材を積層状に重ね合わせている場合、積層状態のプレート状部材同士の剥離時、通常、プレート状部材の中央部におけるプレート状部材同士の接着状態の解除が難しいが、上記仮固定用接着剤組成物によれば、剥離用処理水に、積層状のプレート状部材を浸漬させるだけで、プレート状部材の中央部同士を接着している仮固定用接着剤組成物の硬化物にも剥離用処理水を円滑に浸透させて接着強度を低下させ、プレート状部材同士を円滑に剥離することができる。なお、大判のプレート状部材とは、平面から見た面積(最大となる方向から見た面積)が1000mm2以上の面積を有するプレート状部材をいう。
【0115】
仮固定用接着剤組成物を用いた加工方法の一例を説明する。先ず、複数枚のプレート状部材のそれぞれの対向面間に仮固定用接着剤組成物を介在させた状態に積層させて積層体を製造する(積層工程)。なお、複数枚のプレート状部材をこれらのプレート状部材の対向面間に仮固定用接着剤組成物を介在させた状態に積層させて積層体を製造してもよい。
【0116】
仮固定用接着剤組成物は一液型であるため、積層体を作製するにあたって二液を混合するといった煩雑な作業を必要とせず、積層体を容易に製造することができる。
【0117】
また、仮固定用接着剤組成物は、構成成分が層分離を生じることもなく互いに相溶性に優れているので、低粘度を呈し、ノズル詰まりを生じさせることもない。
【0118】
次に、得られた積層体全体に、この積層体の積層方向から、放射線を照射し、積層体における互いに隣接するプレート状部材間に介在させた仮固定用接着剤組成物を硬化させて硬化物を生成する(硬化工程)。この硬化物によって複数枚のプレート状部材を仮固定し、複数枚のプレート状部材が仮固定用接着剤組成物の硬化物によって剥離可能に積層一体化されてなる硬化体を製造する。
【0119】
積層体は、複数枚のプレート状部材が仮固定用接着剤組成物の硬化物によって剥離可能に積層一体化され、全体として機械的強度に優れており、プレート状部材の研磨、切削、エッチングなどの加工をプレート状部材の破損なく容易に行うことができる(加工工程)。
【0120】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、プレート状部材に対する密着性及び接着性に優れており、更に、優れた柔軟性を有し、プレート状部材の表面凹凸に円滑に追従してプレート状部材に対して優れた接着性を発現する。従って、加工工程において、積層状態のプレート状部材にずれが生じることはなく、積層状態のプレート状部材に破損を生じさせることなく所定の加工を精度良く施すことができる。
【0121】
また、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、耐熱性に優れているので、プレート状部材の加工プロセスにおいて熱が加えられた場合にあっても、硬化物は優れた接着性を維持し、プレート状部材同士の積層状態を確実に保持し、プレート状部材の加工を円滑に且つ正確に行なうことができる。
【0122】
しかる後、硬化体を剥離用処理水に浸漬する。剥離用処理水は、これに添加剤を添加する必要はなく、通常の水が用いられ、水道水などであってもよい。仮固定用接着剤組成物の硬化物は、剥離用処理水の吸収性に優れているので、剥離用処理水の温度は、特に限定されないが、剥離用処理水は温度が高い方が好ましい。
【0123】
硬化体における仮固定用接着剤組成物の硬化物は、内部まで剥離用処理水を十分に吸収し、有機化合物(A)の作用によって発泡し、プレート状部材に対する剥離応力を発生させることができる。従って、硬化体を剥離用処理水に浸漬することによって、積層状態のプレート状部材を円滑に互いに分離し剥離することができる(剥離工程)。
【0124】
有機化合物(A)は、重合性化合物(B)と相溶性に優れているので、仮固定用接着剤組成物の硬化物において、有機化合物(A)及びこの有機化合物(A)に起因した分子構造が均一に且つ全体的に分散しており、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、水の接触によって水を吸収して全体的に発泡し、プレート状部材に対する剥離応力を発生させて、プレート状部材を剥離することができる。
【0125】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、上述のように剥離用処理水の吸収性に優れているので、プレート状部材が大判であっても、プレート状部材の平面視中央部を接着している硬化物部分まで剥離用処理水を十分に且つ速やかに吸収させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を発泡させて接着強度を十分に低下させることができる。
【0126】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、高温の剥離用処理水を用いる必要なく、プレート状部材を剥離することができるので、プレート状部材が熱に弱い場合にあっても好適に用いることができる。
【0127】
仮固定用接着剤組成物の硬化物が架橋されている場合には、硬化物は、プレート状部材からの離脱時においてもシート状を維持し、剥離用処理水に溶解せず、剥離用処理水を汚染することはないので、プレート状部材を汚染させることなく剥離用処理水から取り出すことができる。そして、シート状の硬化物は、プレート状部材から糊残りなく離脱するので、プレート状部材の汚染を防止し、加工後のプレート状部材の洗浄を省略して作業の効率化を図ることができる。
【0128】
仮固定用接着剤組成物の硬化物が架橋されている場合には、硬化物を水の吸収(接触)によって発泡させると、硬化物に亀裂を生じさせることなく、硬化物全体を発泡させて、硬化物全体のプレート状部材に対する剥離応力を生じさせることができる。よって、積層状態のプレート状部材からプレート状部材を一枚ずつ分離することができる。
【発明の効果】
【0129】
本発明の仮固定用接着剤組成物は、プレート状部材同士を剥離可能に強固に接着一体化させることができ、プレート状部材の加工を円滑に行うことができる。
【0130】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、プレート状部材の剥離工程において、水に浸漬させるなどして水を供給することによって円滑に水を吸収して発泡し、プレート状部材に対する剥離応力を生じさせ、プレート状部材の剥離作業を容易に行うことができる。
【0131】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、耐熱性に優れているので、プレート状部材の加工プロセスにおいて熱が加えられた場合にあっても、硬化物は優れた接着性を維持し、プレート状部材同士の積層状態を確実に保持し、プレート状部材の加工を円滑に且つ正確に行なうことができる。
【0132】
積層状態のプレート状部材の剥離時に用いられる水も高温である必要はないので、熱に弱いプレート状部材にも好適に適用することができる。
【0133】
仮固定用接着剤組成物は、有機化合物(A)及び重合性化合物(B)の相溶性に優れており、低い粘度を呈しているのでノズル詰まりを生じさせることなくスピンコート法などによって簡単に塗工作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
図1】接着強度の測定要領を示した断面図である。
図2】接着強度の測定要領を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0135】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、「課題を解決するための手段」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超える」として定義されている数値)に代替することができる。
【実施例0136】
実施例及び比較例において、下記の化合物を用いた。
【0137】
[有機化合物(A)]
・2-イソシアナトエチルアクリレート(レゾナック社製 商品名「Karenz AOI-VM」、イソシアネート基:1個、活性水素基:0個)
【0138】
[イソシアネート基を有さず且つエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)]
・メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(日油社製 商品名「Blemmer AME-400」、一般式(2)、R3:エチレン基、n:6~12、イソシアネート基:0個、エチレン性不飽和二重結合:1個、活性水素基:0個)
【0139】
[エチレン性不飽和結合を2個以上有する重合性化合物(C)]
・ポリエチレングリコールジアクリレート(日油社製 商品名「Blemmer ADE-400A」、一般式(3)、R4:エチレン基、m:6~12、イソシアネート基:0個、エチレン性不飽和二重結合:2個、活性水素基:0個)
【0140】
[エチレン性不飽和結合及び一般式(1)で示される構造を有する置換基を有する重合性化合物(D)]
・N‐アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド[式(9)、東亜合成社製 商品名「Aronix M-140」、式(1):R1及びR2が共有結合を介して結合して飽和脂環構造であるシクロヘキサン環を形成している。]
【0141】
【化10】
【0142】
[活性水素基を含まない(メタ)アクリルアミド系化合物(E)]
・N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA、式(4)で示されるアクリルアミド、ガラス転移温度Tg:119℃、活性水素基:0個)
【0143】
[光重合開始剤(F)]
・光重合開始剤[2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、IGM Resins B.V.社製 商品名「Omnirad TPO H」]
[発泡剤]
・熱分解型発泡剤(ベンゼンスルホニルヒドラジド)
・無機系発泡剤(炭酸水素ナトリウム)
【0144】
(実施例1~16、比較例1~9)
表1及び表2に示す所定量の重合性化合物(B)、エチレン性不飽和結合を2個以上有する重合性化合物(C)、エチレン性不飽和結合及び一般式(1)で示される構造を有する置換基を有する重合性化合物(D)及び活性水素基を含まない(メタ)アクリルアミド系化合物(E)をそれぞれ、ポリプロピレン製の容器内に供給して混合、溶解させて混合液を作製した。
【0145】
得られた混合液に、この混合液の10質量%に相当する量の乾燥剤(富士フイルム和光純薬社製 商品名「モレキュラーシーブス4A」)を供給した。容器内に湿気が進入しないように容器を密封した。混合液の水分量が100ppm未満になるまで数日間静置した。なお、容器を1日に2~3回軽く振とうさせて、混合液を混合した。
【0146】
次に、混合液中に、表1に示した所定量の有機化合物(A)、光重合開始剤及び発泡剤を供給し、光重合開始剤及び発泡剤が混合液中に完全に溶解するまで混合して仮固定用接着剤組成物を得た。
【0147】
得られた仮固定用接着剤組成物について、温水剥離試験、ガラス接着力、耐久性、耐熱性及び吐出性を下記の要領で測定し、その結果を表1及び表2に示した。
【0148】
[温水剥離試験]
縦75mm×横25mm×厚み1.0mmの第1ガラスを用意した。第1ガラスの上面における四隅部のそれぞれに、縦3mm×横3mm×厚み200μmのスペーサ部材を配設した。次に、第1ガラスの中央部に仮固定用接着剤組成物を載置した。この仮固定用接着剤組成物上に縦75mm×横25mm×厚み1.0mmの第2ガラスを載置し、第1ガラスと第2ガラスの対向面間に仮固定用接着剤組成物が全面的に充填された状態として積層体を製造した。
【0149】
積層体に紫外線LEDランプ(東芝ライテック社製 商品名「FL20S・BL」)を用いて、ピーク波長が365nmである紫外線を照度50mW/cm2にて120秒間に亘って照射して仮固定用接着剤組成物を硬化させ、第1ガラス及び第2ガラスが仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層一体化してなる硬化体を作製した。
【0150】
得られた硬化体を50℃に保持した温水に浸漬した。硬化体を温水に浸漬した直後から、第1ガラスと第2ガラスが完全に剥離されるまでの剥離時間(h)を測定した。
【0151】
試験開始から5時間を経過しても、第1ガラスと第2ガラスが完全に剥離されない場合は、試験を中止し、「剥離せず」と評価した。
【0152】
[ガラス接着力]
縦50mm×横25mm×厚み5mmの直方体形状の板ガラス1、2を2枚用意した。2枚の板ガラスの表面全面をエタノールによって洗浄し乾燥した。
【0153】
図1及び図2に示したように、一方の板ガラス1を水平な載置面3上に載置し、この板ガラス1の長辺側の端縁部上に、他方の板ガラス2の長辺側の端縁部を重ね合わせた。2枚の板ガラス1、2の端縁部同士の重なり幅は12.5mmであった。2枚の板ガラス1、2の長辺側の端縁部間には仮固定用接着剤組成物5が介在しており、仮固定用接着剤組成物5は、2枚の板ガラス1、2における長辺側の端縁部の対向面間における横方向の全長に充填されていた。仮固定用接着剤組成物5は、長さ25mm×幅12.5mm×厚み0.01mmであった。上側に重ね合わせた板ガラスと載置面間の隙間に支持用板ガラス4を配設し、上側の板ガラス2を支持用板ガラス4で支持した。
【0154】
2枚の板ガラス1、2の重ね合わせ部分に介在させた仮固定用接着剤組成物5に、紫外線LEDランプ(東芝ライテック社製 商品名「FL20S・BL」)を用いて、ピーク波長が365nmである紫外線を照度50mW/cm2にて120秒間に亘って照射して仮固定用接着剤組成物5を硬化させて硬化体を作製した。
【0155】
得られた硬化体について、卓上形精密万能試験機(島津製作所製 商品名「オートグラフAGS-100NX」)を用いて3点曲げ試験により10mm/minの押込速度にて2枚の板ガラスの重ね合わせ部を押し込み、得られた最大強度を測定強度(N)とし、下記式に基づいて剥離強度を算出した。
【0156】
剥離強度(N/mm2)=測定強度(N)/(25×12.5)(mm2
【0157】
[耐久性]
温水剥離試験と同様の要領で硬化体を作製した。得られた硬化体を23℃及び相対湿度50%の環境下にて養生を行なった。試験開始から試験体の硬化物にボイド(空隙)が発生するまでの日数を測定した。なお、試験開始から7日経過後に試験を終了した。試験開始から7日経過後において、硬化物にボイドが発生していない場合は「-」と記載した。試験体の硬化物にボイドが発生すると、板ガラスの加工が良好に行なうことができなくなる。硬化物にボイドが発生するまでの日数が長いほど、板ガラスを加工できる期間が長くなることを意味する。
【0158】
[耐熱性]
温水剥離試験と同様の要領で試験体を作製した。130℃に保持した加熱装置内に試験体を10分間、放置した。加熱装置から試験体を取り出し、試験体の硬化物を目視観察した。試験片の硬化物にボイド(空隙)が発生していない場合を「A」、試験片に気泡が発生している場合を「B」として評価した。
【0159】
[吐出性]
50mLの内容量を有するUVブロックシリンジ(武蔵エンジニアリング社製)内に仮固定用接着剤組成物50mLを充填した。UVブロックシリンジにディスポーザブルニードル(内径:0.20mm、外径:0.41mm、長さ:13mm、武蔵エンジニアリング社製)を取り付けた。ディスポーザブルニードルを10KPaのエアー圧力でUVブロックシリンジ内に押し込み、UVブロックシリンジから仮固定用接着剤組成物を吐出させた。仮固定用接着剤組成物の全量(50mL)を吐出できた場合を「A」、仮固定用接着剤組成物が詰まり、仮固定用接着剤組成物の全量を吐出させることができなかった場合を「B」とした。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【符号の説明】
【0162】
1 板ガラス
2 板ガラス
3 載置面
4 支持用板ガラス
5 仮固定用接着剤組成物
図1
図2