(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169175
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20241128BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241128BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241128BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241128BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/34
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086424
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 蓉子
(72)【発明者】
【氏名】益川 直子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD631
4C083AD632
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC19
4C083CC33
4C083CC37
4C083CC39
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】多糖類とナイアシンアミドとを含む新規な化粧料を提供すること。
【解決手段】下記(A)~(C)を含む化粧料。
(A)ナイアシンアミド 1質量%以上
(B)マンニトール
(C)マンノースを構成単位とする多糖類
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を含む化粧料。
(A)ナイアシンアミド 1質量%以上
(B)マンニトール
(C)マンノースを構成単位とする多糖類
【請求項2】
(C)が、ローカストビーンガム、タラガム、グルコマンナンから選ばれる1以上である請求項1に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の粘度を高くしてとろみを付けるために、一般的にカルボマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー等の合成高分子が用いられる。これらの合成高分子は、安定性に優れているが、合成高分子を含む化粧料は、肌に適用した後にべたつき、つっぱり感、きしみ感がある場合があり、使用感に劣っている。
ローカストビーンガム、タラガム、グルコマンナン等の天然高分子である多糖類は、化粧料を増粘させることができ、これらを配合した化粧料は、つっぱり感、きしみ感が少ないことが知られている。しかし、多糖類は、合成高分子に比べ安定性に劣り、多糖類を配合した化粧料は、経時でオリ(沈殿)や白濁(凝集)が生じやすいという問題がある。
【0003】
ナイアシンアミドは、別名ニコチンアミド(nicotin amide)/ナイアシン/ビタミンB3とも呼ばれる、ニコチン酸のアミド化合物である。ナイアシンアミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである。ナイアシンアミドが欠乏するとペラグラなどの欠乏症となる。ナイアシンアミドは、外用薬の成分としてニキビ(尋常性ざ瘡)の治療や、美容目的で化粧品に配合される。日本では、医薬部外品の化粧品に、シワ改善の有効成分(リンクルナイアシン)、美白作用の有効成分(ニコチン酸アミド)として承認されている。
ナイアシンアミドは、シワ改善の有効成分としてスキンケア化粧料等にしばしば配合されており、ナイアシンアミドにより、シワ改善、肌のハリ感や弾力を付与するためには3~8質量%ほどの高い配合が求められる。しかし、ナイアシンアミドを高含有すると使用感が低下することが知られており、経験的には3質量%以上含有すると使用感の低下が認識される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多糖類とナイアシンアミドとを含む新規な化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.下記(A)~(C)を含む化粧料。
(A)ナイアシンアミド 1質量%以上
(B)マンニトール
(C)マンノースを構成単位とする多糖類
2.(C)が、ローカストビーンガム、タラガム、グルコマンナンから選ばれる1以上である1.に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化粧料は、多糖類を含みながらも安定性に優れ、長期間に亘って保管してもその外観変化が少ない。本発明の化粧料は、ナイアシンアミドを含みながらも、べたつきが少なく肌のやわらかさを感じることができる。また、本発明の化粧料は、ハリ感を感じることもでき、やわらかさとハリ感という相反する性質を感じることができ、使用感に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、下記(A)~(C)を含む化粧料に関する。
(A)ナイアシンアミド 1質量%以上
(B)マンニトール
(C)マンノースを構成単位とする多糖類
なお、本明細書において、「X~Y」(X、Yは数値)との表記は、その両端を含む数値範囲を意味する。
【0008】
(A)ナイアシンアミド
(A)ナイアシンアミドは、ニコチン酸のアミド化合物であり、ニコチン酸アミド、ビタミンB3、ナイアシンともいう水溶性ビタミンである。ナイアシンアミドは、天然物(米ぬかなど)からの抽出物であってもよく、公知の方法によって合成したものでもよく、具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているものを用いることができる。ナイアシンアミドには、シワ改善効果に加えて血行促進作用や、肌荒れ改善作用、メラニン生成抑制作用や美白効果が知られている。
【0009】
本発明の化粧料は、全体に対して(A)ナイアシンアミドを1質量%以上含む。(A)の含有量は、化粧料全体に対して、1~9質量%であることが好ましい。(A)の含有量は、化粧料全体に対し2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがよりさらに好ましく、また、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましく、6質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0010】
(B)マンニトール
マンニトールは、自然界に広く分布している6価の糖アルコールであり、ソルビトールの異性体である。マンニトールとソルビトールとは、異性体ではあるもののその物性は異なり、例えば、ソルビトールは吸湿性であるのに対し、マンニトールはほとんど吸湿しない。本発明に用いるマンニトールは、既に化粧品原料として市販されているものであり、何ら限定なく使用できる。
【0011】
本発明の化粧料において、(B)マンニトールの含有量は特に限定されない。(B)の含有量は、化粧料全体に対して、0.5~15質量%であることが好ましい。(B)の含有量が15質量%を超えるとべたつきが発生する恐れが高まる。(B)の含有量は、化粧料全体に対し0.8質量%以上であることがより好ましく、また、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3.5質量%以下であることがよりさらに好ましい。
任意で多価アルコールを含有する場合は、多価アルコールとマンニトールの合計量が化粧料全体に対して、0.6~20質量%となるように含有することが好ましく、1~15質量%含有することがより好ましい。
【0012】
(C)マンノースを構成単位とする多糖類
本発明は、(C)マンノースを構成単位とする多糖類を含む。マンノースを構成単位とする多糖類としては、ローカストビーンガム、タラガム、グルコマンナン、グァーガム、メスキートガム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中で、ローカストビーンガム、タラガム、グルコマンナンから選ばれる1以上が好ましい。
ローカストビーンガムは、マメ科植物カロブ樹の種子の胚乳部分等から得られる水溶性の多糖類である。D-グルコースとD-マンノースを約4:1のモル比で含む。
タラガムは、マメ科植物タラの種子の胚乳から得られる多糖類であり、D-グルコースとD-マンノースを約3:1のモル比で含む。
グルコマンナンは、コンニャクイモの塊茎に含まれる水溶性多糖類であり、D-グルコースとD-マンノースを約1:1.5~1:20のモル比で含む。
【0013】
本発明の化粧料において、(C)の含有量は、化粧料全体に対して、0.01~3質量%程度であることが好ましい。(C)の含有量は、化粧料全体に対し0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましく、また、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.8質量%以下であることがよりさらに好ましい。
本発明の化粧料において、(A)の含有量と(C)の含有量の比率(A:C)は、1:0.0125~1:0.4が好ましい。
【0014】
本発明の化粧料は、(A)~(C)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に常用される各種原料、例えば、乳化剤、エタノール、保湿成分、増粘剤、キレート剤、pH調整剤、中和剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、着色剤(例えばシアノコバラミン)、美容成分(例えばローズマリーエキス)、ビタミン類等の機能成分を含有することができる。
【0015】
本発明の化粧料は、溶液状、ローション状、ジェル状、乳液状、クリーム状、軟膏状等とすることができ、さらに具体的には、化粧水、乳液、クリーム、美容液、美容ジェル、パック等のスキンケア化粧料、育毛剤、ヘアトリートメント、ヘアリンス等のヘアケア化粧料、リキッドファンデーション等のメイク化粧料や日焼け止め化粧料とすることができる。
【実施例0016】
本試験で用いた試料は以下のとおりである。
<試料>
(A)ナイアシンアミド
(B)マンニトール
(C)マンノースを構成単位とする多糖類
ローカストビーンガム(三晶株式会社、GENUGUM RL-200-J)
タラガム(三晶株式会社、スピノガム)
グルコマンナン(清水化学株式会社、レオックスOne)
(B’)ソルビトール
(C’)カルボマー(和光純薬工業、ハイビスワコー105、カルボマー)
【0017】
<調製方法>
下記の表1~表3に示す組成の化粧料を常法により調製した。なお表中の数字は、化粧料全量を100質量%とする質量%で表示した。
【0018】
【0019】
<試験方法>
上記の方法で得た化粧料について、「安定性」と、使用感として「肌のやわらかさ」、「ハリ感」、「べたつきのなさ」について以下の評価方法にて評価を行った。得られた結果を表1~表3にまとめて示す。なお評価項目のうち1項目でも×を含むものを比較例とし、それ以外を実施例とした。
<安定性>
得られた化粧料80mlを、100ml容量のガラスサンプル瓶に入れて蓋をし、25℃1ヶ月保管した後、その外観を目視で確認して、以下のような評点をつけた。
○:オリ・沈殿が全く見られない
△:オリ・沈殿がわずかに見られる
×:オリ・沈殿が見られる
<使用感>
専門パネラー3名の合議により、各化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布した直後の感覚について下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。
・肌のやわらかさ
肌のやわらかさは、化粧料を塗布した後、肌を触った際にごわつきを感じず、ふっくら
とした感覚のことである。
◎:やわらかさを感じる
〇:やわらかさをやや感じる
△:やわらかさをわずかに感じる
×:やわらかさを感じない
【0020】
・ハリ感
ハリ感とは、化粧料を肌に塗布した後、肌を触った際にピンと張ったように感じ、指で
押した時に弾力が感じられることである。
◎:ハリ感を感じる
○:ハリ感をやや感じる
△:ハリ感をわずかに感じる
×:ハリ感を感じない
・べたつきのなさ
べたつきとは、化粧料を肌に塗布した後、肌を触った際に一定時間経過後も感じる粘性
もしくは粘着性を伴う残液感のことである。
◎:べたつきを感じない
○:べたつきをほとんど感じない
△:べたつきをわずかに感じる
×:べたつきを感じる
【0021】
「結果」
本発明である実施例で得られた化粧料は、(A)~(C)成分を含むことにより、天然高分子である(C)を含みながらも、長期間保管した後にオリ・沈殿がほとんど見られず、安定性に優れていた。さらに本発明である実施例で得られた化粧料は、肌のやわらかさとハリ感の両方を感じることができ、また、べたつきも少なかった。
実施例3、8~10、比較例1~3より、(A)ナイアシンアミドの量を検討したところ、1質量%以上とすることにより、安定性とハリ感を向上できることが確かめられた。
(B)マンニトールに代えてソルビトールを用いた比較例10、(C)マンノースを構成単位とする多糖類に代えてカルボマーを用いた比較例11は、肌のやわらかさ、べたつきのなさに劣っており、(A)~(C)を組み合わせることにより、本発明の効果が奏されることが確かめられた。
【0022】
処方例1:化粧水
配合量(質量%)
精製水 残余
ナイアシンアミド 5
BG 4
グリセリン 5
マンニトール 2
フェノキシエタノール 0.1
ペンチレングリコール 2
ローカストビーンガム 0.3
クエン酸 0.02
クエン酸Na 0.1
【0023】
処方例2:美容液
配合量(質量%)
精製水 残余
ナイアシンアミド 5
BG 5
グリセリン 8
ジグリセリン 1
マンニトール 5
グルコマンナン 0.8
ステアリン酸ソルビタン 0.25
ポリソルベート60 2
トリエチルヘキサノイン 2
イソノナン酸イソトリデシル 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
クエン酸 0.02
クエン酸Na 0.1
エチルヘキシルグリセリン 0.07
【0024】
処方例3:乳液
配合量(質量%)
精製水 残余
ナイアシンアミド 5
BG 5
グリセリン 9
SIMULGEL EG(SEPPIC社) 0.5
マカデミアナッツフィトステリル 1
トリエチルヘキサノイン 2
ジメチコン 2
ローカストビーンガム 0.5
マンニトール 3
フェノキシエタノール 0.1
ポリクオタニウム-51 0.3