(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169192
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】コンセント装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/713 20060101AFI20241128BHJP
H02H 3/00 20060101ALI20241128BHJP
H02H 3/04 20060101ALI20241128BHJP
H02H 3/093 20060101ALI20241128BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R13/713
H02H3/00 N
H02H3/04 D
H02H3/093
H02H3/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086453
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
(72)【発明者】
【氏名】林 文移
【テーマコード(参考)】
5E021
5G004
5G142
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB21
5E021FC40
5E021KA11
5E021MA01
5E021MA19
5E021MB20
5G004AA01
5G004BA01
5G004CA02
5G004DC01
5G004DC14
5G142AB01
5G142AC06
5G142DD02
(57)【要約】
【課題】 トラッキング放電による劣化が一定量進んだら遮断動作し、更に劣化が進んだらコンセント装置の交換を推奨する報知を行う。
【解決手段】 接続されたプラグ3の栓刃3a間で発生するトラッキング放電を検出するトラッキング電流検出部21と、プラグ3へ通電する電路Lを遮断する電路遮断機構部11と、遮断した電路Lを復帰操作する操作レバー11aと、トラッキング放電を検知したら電路遮断機構部11を遮断動作させるコンセントCPU29と、異常発生を報知する報知部22と、トラッキング放電に起因する電路Lの遮断回数を記憶する記憶部26とを有している。コンセントCPU29は、所定の電流値を超えるトラッキング放電が一定時間継続したら電路遮断機構部11を遮断動作させる一方、遮断回数が所定の回数に達したらコンセント装置1の交換を推奨する報知を実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続されたプラグの栓刃間で発生するトラッキング放電を検出するためのトラッキング電流検出部と、トラッキング放電を判定するトラッキング判定部と、前記プラグへ通電する電路を遮断する電路遮断機構部と、電源投入操作する操作レバーと、トラッキング放電を検出したら前記電路遮断機構部を遮断動作させる遮断制御部と、を備えたコンセント装置であって、
異常発生を報知する報知部及び報知部を制御する報知制御部と、
トラッキング放電に起因する電路の遮断回数を記憶する遮断回数記憶部と、
トラッキング放電の継続時間を計測する継続時間計測部と、を有し、
前記遮断制御部は、前記トラッキング電流検出部が検出した電流値が所定の電流値を超え、且つ当該放電が一定時間以上継続したら前記電路遮断機構部を遮断動作させる一方、
前記報知制御部は、前記遮断回数が設定された所定の回数に達したら、コンセント装置の交換を推奨する報知を実施することを特徴とするコンセント装置。
【請求項2】
前記所定の電流値を超える放電が発生したら、前記報知部がトラッキング放電発生の報知を行うことを特徴とする請求項1記載のコンセント装置。
【請求項3】
トラッキング放電の発生間隔を計時する放電間隔計時部を有し、
前記遮断制御部は、計時したトラッキング放電の発生間隔が所定の時間間隔以下であったら、前記電路を遮断することを特徴とする請求項1又は2記載のコンセント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラッキング現象が発生したらプラグへの出力を遮断する機能を備えたコンセント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンセント装置は、接続されたプラグの栓刃間でトラッキング放電が発生することがある。トラッキング放電は放置すると発火等の恐れがあるため、発生を検知して電路を遮断する機能を備えたものがある。
例えば、特許文献1のコンセント装置では、トラッキング放電を検知したら電路を遮断し、加えてトラッキング放電の発生をブザーの鳴動や表示部の表示で報知した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコンセント装置は、電路を遮断する際にそれがトラッキング放電発生による遮断であることが報知されたため、利用者は遮断動作した原因を認識できた。
しかしながら、軽微なトラッキング放電であっても電路を遮断したため、電源が不安定になる等の前触れ無く突然電路が遮断される場合が発生し、利用者にとっては利便性が悪かった。
加えて、トラッキング放電を検知して遮断動作させても、点検せずにオン操作してコンセントの使用を継続する場合があり、劣化が進行しても放置される問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、トラッキング放電による劣化が一定量進んだら遮断動作し、更に劣化が進んだらコンセント装置の交換を推奨する報知を行うコンセント装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明に係るコンセント装置は、接続されたプラグの栓刃間で発生するトラッキング放電を検出するためのトラッキング電流検出部と、トラッキング放電を判定するトラッキング判定部と、プラグへ通電する電路を遮断する電路遮断機構部と、電源投入操作する操作レバーと、トラッキング放電を検出したら電路遮断機構部を遮断動作させる遮断制御部と、を備えたコンセント装置であって、異常発生を報知する報知部及び報知部を制御する報知制御部と、トラッキング放電に起因する電路の遮断回数を記憶する遮断回数記憶部と、トラッキング放電の継続時間を計測する継続時間計測部と、を有し、遮断制御部は、トラッキング電流検出部が検出した電流値が所定の電流値を超え、且つ当該放電が一定時間以上継続したら電路遮断機構部を遮断動作させる一方、報知制御部は、遮断回数が設定された所定の回数に達したら、コンセント装置の交換を推奨する報知を実施することを特徴とする。
この構成によれば、トラッキング放電が発生しても、その継続時間が一定の時間未満であれば電路を遮断しないため、軽微なトラッキング放電では遮断せず、頻繁な遮断動作を防止できる。そして、トラッキング放電に起因する遮断回数が所定回数に達したら、コンセント装置の交換を推奨する報知が成されるため、劣化が一定量進んだらそれを報知でき、使用者にコンセント装置の劣化の進行を認識させることができる。
【0007】
本発明の別の態様は、上記構成において、所定の電流値を超える放電が発生したら、報知部がトラッキング放電発生の報知を行うことを特徴とする。
この構成によれば、遮断に至らないレベルの軽微なトラッキング放電であっても、発生を報知するため、利用者はコンセント装置の状況を認識でき、事前の対応が可能となる。
【0008】
本発明の別の態様は、上記構成において、トラッキング放電の発生間隔を計時する放電間隔計時部を有し、遮断制御部は、計時したトラッキング放電の発生間隔が所定の時間間隔以下であったら、電路を遮断することを特徴とする。
この構成によれば、トラッキング放電が軽微な放電であっても、その発生間隔が所定の時間間隔以下になったら電路を遮断するため、劣化が進行に応じて電路を遮断でき、利用者に劣化を認識させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トラッキング放電が発生しても、その継続時間が一定の時間に達しなければ電路を遮断しないため、軽微なトラッキング放電では遮断せず、頻繁な遮断動作を防止できる。そして、トラッキング放電に起因する遮断回数が一定回数に達したら、コンセント装置の交換を推奨する報知が成されるため、劣化が一定量進んだらそれを報知でき、使用者はコンセント装置の劣化を認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るコンセント装置の一例を示す回路ブロック図である。
【
図2】劣化を判定する制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るコンセント装置の一例を示す回路ブロック図である。
図1に示すように、コンセント装置1は、商用電源等の交流電源Pから配設された電路Lが、電路遮断機構部11を介してプラグ3が接続されるコンセント12の図示しない受刃に接続されている。そして、交流電源Pの100V等の電圧を有する交流電力が、コンセント12を介してプラグ3に供給される。
またトラッキング電流検出部21、報知部22、電源トリップ回路23、テストスイッチ24、リセットスイッチ25、各種判定を行う閾値等を記憶する記憶部26、各部を制御するコンセントCPU29、電源回路30等を備えた制御部2を有している。
【0012】
トラッキング電流検出部21は、挿入されたプラグ3の栓刃3aの間となる位置に配置された電極21aから図示しないアースに流れる電流を検出して、コンセントCPU29に検出した電流情報を通知する。トラッキング放電が発生すると、放電電流の一部が電極21aに流れ込み、電極21aからアースに流れ出る。トラッキング電流検出部21はこの電流を検出し、電流値情報をコンセントCPU29に通知する。
【0013】
報知部22は、LEDから成る表示部22a、警報音を鳴動するブザー22bを有し、コンセントCPU29の制御により異常発生を報知する。異常の内容に応じて表示部22aの表示形態を変更すると共に、ブザー22bの鳴動形態を変更し、複数種類の異常発生を判別可能な報知を実施する。
ここでは、トラッキング放電発生の報知とコンセント装置1の交換を推奨する報知の2種類の報知を行う。例えば、トラッキング放電発生の報知はLEDを点灯させると共に、ブザー22bを報音させる。また交換を推奨する報知は、例えばLEDを点滅させる。そして、双方を同時に報知する場合は、LEDの点滅とブザー22bの鳴動を同時に実施する事になる。尚、LEDの発光色を複数種類用意して、発光色を変えて複数種類の表示を行っても良い。
【0014】
電源トリップ回路23は、コンセントCPU29から出力される遮断信号により、電路遮断機構部11を遮断動作させ、コンセント12に供給される電力を遮断する。
尚、電路遮断機構部11には、遮断動作するとオフ動作する操作レバー11aが設けられており、電路遮断機構部11の遮断動作により遮断された電路Lは、オフした操作レバー11aをオン操作することで電源は再投入される。
【0015】
テストスイッチ24は、トラッキング電流検出部21をテストするスイッチで、オン操作でトラッキング電流検出部21に所定の電流が流れ、コンセントCPU29が遮断信号を出力する。この信号により電源トリップ回路23が電路遮断機構部11を遮断動作させ、電路Lが遮断される。
【0016】
リセットスイッチ25は、表示部22aの表示及びブザー22bの報音を停止するスイッチであり、オン操作でコンセントCPU29の状態がリセットされ、報知動作が停止する。
【0017】
記憶部26は、トラッキング放電発生を判断するための電流閾値、劣化を判断するためのトラッキング放電の基準発生回数(所定の回数)、トラッキング放電の発生間隔の基準値(所定の時間間隔)等を記憶している。また、前回の放電発生日時、トラッキング放電に基づくこれまでの電路遮断回数等を記憶する。
【0018】
コンセントCPU29は、制御部2の各部を制御すると共に、トラッキング電流検出部21の電流情報を受けて、放電の大きさを算出してトラッキング放電の発生を判定するトラッキング判定部の機能、放電の継続時間を計測する放電時間計測部の機能、放電の発生間隔を計時する放電間隔計時部の機能、電路遮断を判断する遮断制御部の機能、報知部22を制御する報知制御部の機能、更に遮断回数からコンセント装置1の交換推奨を判断する機能等を備えている。
【0019】
上記の如く構成されたコンセント装置1の、トラッキング放電の発生を受けた動作は以下のようである。
図2はトラッキング放電を検知した後の制御の流れを示すフローチャートであり、
図2を参照して説明する。尚、制御はコンセントCPU29により行われる。
操作レバー11aがオン操作されて電源が投入されると(S1)、コンセント12が通電されて、コンセント12に接続されているプラグ3に交流電源Pの電力が供給される。また、投入操作でコンセントCPU29がトラッキング放電の監視をスタートする。
【0020】
この状態で、プラグ3に塵等が付着して栓刃3aの間でトラッキング放電が発生すると、電極21aに放電電流が流れる。この電流をトラッキング電流検出部21が計測し、計測した電流値情報がコンセントCPU29に通知される。
この電流値情報を受けたコンセントCPU29では、実際の放電電流を算出して記憶部26が記憶している電流閾値(例えば、100mA)と比較し、トラッキング放電の発生を判断する(S2)。電流閾値より計測値が大きければ、トラッキング放電発生と判断してその時の日時情報を取得(S3)する。電流閾値以下であれば、次のトラッキング放電の発生を待つ。
尚、電極21aに流れ込む放電電流と実際に栓刃3aの間で発生する放電の電流との比は、実験により判明しており、その比率によりコンセントCPU29はトラッキング放電の実際の放電電流を算出する。
【0021】
トラッキング放電発生と判断したら、次に放電の継続時間を監視(S4)し、継続時間が一定時間である基準時間(例えば、0.5秒)以上であったら(S4でNO)、電路Lを遮断する。合わせて、トラッキング放電発生による遮断であることを報知部22を動作させて報知させる(S6)。
基準時間未満の短時間で放電が終了したら、次に前回のトラッキング放電からの発生間隔を計時する(S5)。設定された所定の時間間隔(基準間隔)より短い間隔でのトラッキング放電発生であったら(S5でYES)、電路Lを遮断してトラッキング放電による遮断であることを報知する(S6)。
所定の時間間隔より長い時間が経過していたら(S5でNO)、トラッキング放電の発生を報知(S7)し、次のトラッキング放電の発生を待つ。尚、この時の報知動作は一定時間で終了する。ここで、所定の時間間隔は例えば3000時間であり、コンセントCPU29は電路Lが遮断された時間は除外して、トラッキング放電の発生間隔を計時する。
【0022】
そして、トラッキング放電発生を受けて電路Lを遮断したら、記憶部26が記憶する電路遮断回数Nを1加算する(S8)。尚、コンセント装置1の工場出荷時はN=0で設定されている。
こうして遮断動作と電源投入操作が複数回実施され、コンセント装置1の使用を始めてから電路遮断回数が所定の回数Nt(例えば、Nt=5)に達したら(S9でYES)、コンセント装置1の交換を推奨する報知を行う(S10)。遮断回数が所定の回数未満であれば(S9でNO)、電源投入を待ち、投入されたら次のトラッキング放電発生を待つ。
【0023】
このように、トラッキング放電が発生しても、その継続時間が一定の時間に達しなければ電路Lを遮断しない。よって、軽微なトラッキング放電では遮断せず、頻繁な遮断動作を防止できる。そして、トラッキング放電に起因する遮断回数Nが所定回数に達したら、コンセント装置1の交換を推奨する報知が成されるため、使用者にコンセント装置1の劣化の進行を認識させることができる。
また、遮断に至らないレベルの軽微なトラッキング放電であっても、発生を報知するため、利用者はコンセント装置1の状況を認識でき、事前の対応が可能となる。
更に、トラッキング放電が軽微な放電であっても、その発生間隔が所定の時間間隔以下になったら電路Lを遮断するため、劣化の進行に応じて電路を遮断でき、利用者に劣化を認識させることができる。
【0024】
尚、上記実施形態では、トラッキング放電に起因する遮断が5回発生したら、コンセント装置1の交換を推奨する表示を行うが、劣化を判断する基準値は5回に限定するものでは無く、コンセント装置1の構造に応じて変更されるものである。
また、トラッキング放電の発生を判断する電流閾値、電路遮断を判断する放電発生間隔も同様に変更できるものである。
【符号の説明】
【0025】
1・・コンセント装置、2・・制御部、3・・プラグ、3a・・栓刃、11・・電路遮断機構部、11a・・操作レバー、21・・トラッキング電流検出部、22・・報知部、22a・・表示部、22b・・ブザー、26・・記憶部(遮断回数記憶部)、29・・コンセントCPU(トラッキング判定部、遮断制御部、報知制御部、継続時間計測部、放電間隔計時部)、L・・電路。