(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169200
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241128BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20241128BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20241128BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C16/458
C23C14/50 A
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086464
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大
(72)【発明者】
【氏名】佐野 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸太
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029BD01
4K029JA01
4K029JA06
4K030CA04
4K030CA12
4K030GA02
4K030KA45
4K030KA46
4K030LA15
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB25
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA04
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB16
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】誘電体基板に加えられる熱応力を低減することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に内蔵されたRF電極140と、金属により形成されたベースプレート200と、誘電体基板100とベースプレート200との間を接合する層であって、接着剤を硬化させることにより形成された接合層300と、RF電極140とベースプレート200との間を導通させる導電性部材400と、を備える。誘電体基板100のうち接合層300側の面120には、RF電極140を露出させるための凹部121が形成されており、導電性部材400は当該凹部121の内側に収容されている。凹部121のうち少なくとも一部には、接着剤が入り込んでおらず空間SP2が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板に内蔵された内部電極と、
金属により形成されたベースプレートと、
前記誘電体基板と前記ベースプレートとの間を接合する層であって、接着剤を硬化させることにより形成された接合層と、
前記内部電極と前記ベースプレートとの間を導通させる導電性部材と、を備え、
前記誘電体基板のうち前記接合層側の面には、前記内部電極を露出させるための凹部が形成され、前記導電性部材は当該凹部の内側に収容されており、
前記凹部のうち少なくとも一部には、前記接着剤が入り込んでおらず空間が形成されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記凹部のうちいずれの部分にも前記接着剤が入り込んでいないことを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記凹部の周囲には、前記凹部の内側に前記接着剤が入り込むことを防止するための遮断部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記遮断部は弾性部材により形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記接合層は、前記凹部と対応する位置に予め開口が形成された固形の接着剤シート、を硬化させたものであることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記導電性部材は、前記誘電体基板から前記ベースプレートに向かう方向に沿って圧縮された状態で、前記凹部の内側に収容されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記導電性部材は繊維状の金属部材であることを特徴とする、請求項6に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記導電性部材は螺旋状の金属部材であることを特徴とする、請求項6に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置等の半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。を備える。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
下記特許文献1に記載されているように、誘電体基板には、半導体製造装置においてプラズマを発生させるための一対の対向電極のうちの1つ、であるRF電極が内蔵されることもある。この場合、RF電極とベースプレートとの間は、導電性部材を介して電気的に接続されることが多い。これにより、基板の処理中におけるRF電極の電位は、ベースプレートの電位(例えば接地電位)に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘電体基板のうち接合層側の面に凹部を形成することでRF電極を露出させ、当該凹部の内側に導電性部材を収容すれば、RF電極とベースプレートとの間を導電性部材により容易に接続することができる。しかしながら、そのような構成においては、誘電体基板とベースプレートとの間を接着剤により接合する際に、接着剤が凹部の内側へと入り込み、当該部分において局所的に厚くなった状態で硬化する。つまり、凹部の内側では、局所的に厚くなった接合層が閉空間内に閉じ込められた状態となる。
【0006】
基板の処理時等において静電チャックの温度が上昇すると、凹部に閉じ込められた接着剤と、その周囲にある誘電体基板との間の熱膨張差に起因して、誘電体基板には大きな熱応力が加えられる。
【0007】
近年では、処理中において基板に入射するエネルギーは増大する傾向にあるので、それに伴い上記の熱応力も大きくなっていくと考えられる。熱応力が大きくなり過ぎると、誘電体基板の変形や破損が生じてしまう可能性がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘電体基板に加えられる熱応力を低減することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、誘電体基板と、誘電体基板に内蔵された内部電極と、金属により形成されたベースプレートと、誘電体基板とベースプレートとの間を接合する層であって、接着剤を硬化させることにより形成された接合層と、内部電極とベースプレートとの間を導通させる導電性部材と、を備える。誘電体基板のうち接合層側の面には、内部電極を露出させるための凹部が形成され、導電性部材は当該凹部の内側に収容されている。凹部のうち少なくとも一部には、接着剤が入り込んでおらず空間が形成されている。
【0010】
このような構成の静電チャックでは、凹部の内側が接着剤(接合層)で満たされてはおらず、少なくとも一部に空間が形成されている。このため、凹部内における接着剤の熱膨張に伴う熱応力を、従来に比べて低減することができる。尚、ここでいう「空間」とは、凹部の内側のうち、接着剤及び導電性部材のいずれもが存在していない部分、のことである。
【0011】
また、本発明に係る静電チャックでは、凹部のうちいずれの部分にも接着剤が入り込んでいないことも好ましい。このような構成においては、凹部の内側に接着剤が一切存在しないので、接着剤の熱膨張に伴う熱応力を無視できる程度にまで低減することができる。
【0012】
また、本発明に係る静電チャックでは、凹部の周囲には、凹部の内側に接着剤が入り込むことを防止するための遮断部が設けられていることも好ましい。このような構成においては、未硬化時において流動性を有する接着剤を用いる場合でも、凹部の内側に接着剤が入り込むことを容易に且つ確実に防止し、接着剤の熱膨張に伴う熱応力を低減することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る静電チャックでは、遮断部は弾性部材により形成されていることも好ましい。このような構成とすることで、各部の熱膨張等に伴い遮断部から誘電体基板等へと加えられる力、をも低減することが可能となる。尚、「弾性部材」は、接合層(つまり硬化した接着剤)と同程度のヤング率、もしくはそれよりも低いヤング率の部材であればよい。
【0014】
また、本発明に係る静電チャックでは、接合層は、凹部と対応する位置に予め開口が形成された固形の接着剤シート、を硬化させたものであることも好ましい。接合前の段階で、接着剤シートのうち凹部と対応する位置に開口を形成しておけば、接着の過程において、凹部の内側に接着剤が入り込むことがない。これにより、凹部の内側の空間を容易に且つ確実に形成することができる。
【0015】
また、本発明に係る静電チャックでは、導電性部材は、誘電体基板からベースプレートに向かう方向に沿って圧縮された状態で、凹部の内側に収容されていることも好ましい。このような構成とすることで、導電性部材は、自らの復元力によって内部電極及びベースプレートのそれぞれに対し押し付けられた状態となる。これにより、各部の熱膨張又は収縮が生じても、内部電極とベースプレートとの間の導通を維持することができる。
【0016】
また、本発明に係る静電チャックでは、導電性部材は繊維状の金属部材であることも好ましい。導電性部材の形状が凹部の形状に応じて容易に変化するので、凹部の形状や配置の自由度を高めることができる。
【0017】
また、本発明に係る静電チャックでは、導電性部材は螺旋状の金属部材であることも好ましい。線形の比較的太いスプリングを導電性部材として用いることができるので、導電性部材の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、誘電体基板に加えられる熱応力を低減することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1の一部の構成を拡大して示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る静電チャックが備える、導電性部材の構成を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る静電チャックにおいて、導電性部材が収容される凹部の配置を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る静電チャックの構成を示す断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る静電チャックの構成を示す断面図である。
【
図7】第3実施形態に係る静電チャックが備える、導電性部材の構成を示す斜視図である。
【
図8】第3実施形態に係る静電チャックにおいて、導電性部材が収容される凹部の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0022】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0023】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度のアルミナ(Al2O3)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0024】
誘電体基板100のうち
図1における上方側の面110は、被吸着物である基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち
図1における下方側の面120(つまり、面110とは反対側の面120)は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0025】
誘電体基板100の内部には、吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の導体層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。給電路13を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、所謂「双極」の電極として本実施形態のように2つ設けられていてもよいが、所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよい。
【0026】
図1においては、給電路13の全体が簡略化して描かれている。給電路13のうち誘電体基板100の内部の部分は、例えば、導電体の充填された細長いビア(穴)として構成されており、その下端には不図示の電極端子が設けられている。給電路13のうちベースプレート200を貫いている部分は、上記の電極端子に一端が接続された導電性の金属部材(例えばバスバー)である。ベースプレート200には、給電路13を挿通するための不図示の貫通穴が形成されている。当該貫通穴の内面と給電路13との間には、例えば円筒状の絶縁部材が設けられていてもよい。
【0027】
誘電体基板100の内部には、上記の吸着電極130に加えて、RF電極140も埋め込まれている。RF電極140は、半導体製造装置においてプラズマを発生させるための一対の対向電極のうちの1つ、として設けられている。対向電極のうちのもう一つは、半導体製造装置において静電チャック10よりも上方側となる位置に設けられる。これらの対向電極の間に高周波の交流電圧が印加されると、基板Wの上方側においてプラズマが発生し、基板Wに対する成膜やエッチング等の処理に供される。誘電体基板100に内蔵されたRF電極140は、本実施形態における「内部電極」に該当する。
【0028】
RF電極140は、吸着電極130と同様に、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層である。RF電極140の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。RF電極140は、吸着電極130よりも面120側となる位置に埋め込まれている。RF電極140は、吸着電極130と同様に、面110や吸着電極130に対して平行となるように配置されている。RF電極140は、上面視において略円形の単一の電極である。
【0029】
RF電極140のうち、上面視で給電路13と重なる分には、開口143が形成されている。開口143を形成しておくことにより、給電路13とRF電極140との間の絶縁が確保されている。
【0030】
図1に示されるように、静電チャック10には導電性部材400が設けられている。導電性部材400は、RF電極140と後述のベースプレート200との間を電気的に接続するための部材である。導電性部材400により、基板Wの処理中におけるRF電極140の電位は、ベースプレート200の電位と同じになる。導電性部材400の具体的な形状や配置については後に説明する。
【0031】
誘電体基板100と基板Wとの間には空間SP1が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、空間SP1には、誘電体基板100に形成された不図示のガス穴を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SP1に供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0032】
吸着面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、空間SP1はこれらの周囲に形成されている。
【0033】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SP1を区画する壁である。それぞれのシールリング111の上端は面110の一部となっており、基板Wに当接する。尚、空間SP1を分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SP1におけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0034】
図1等において符号「116」が付されている部分は、空間SP1の底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。底面116には、ヘリウムガスを空間SP1内で素早く拡散させるための溝が形成されていてもよい。
【0035】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の吸着面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0036】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持するために、誘電体基板100の面120に接合される略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属により形成されている。ベースプレート200のうち、
図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。
【0037】
ベースプレート200のうち、
図1における下方側の面220を除く表面の略全体には、絶縁膜230が形成されている。絶縁膜230は、例えばアルミナのような絶縁性の材料からなる膜であり、例えば溶射によって形成されている。先に述べた面210は、その全体が絶縁膜230上の面となっている。尚、ベースプレート200のうち絶縁膜230が形成されている範囲は、
図1の例とは異なる範囲であってもよい。例えば、被接合面である面210の範囲のみに絶縁膜230が形成されていてもよい。
【0038】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させることにより形成された層である。このような接着剤としては、例えばシリコーン系の接着剤を用いることができる。
【0039】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路250が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路250に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SP1のヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0040】
導電性部材400について説明する。
図2は、
図1のうち導電性部材400及びその近傍の構成を拡大して示すものである。
図3は導電性部材400の斜視図である。
【0041】
図2に示されるように、誘電体基板100のうち接合層300側の面120には、凹部121が形成されている。凹部121は、導電性部材400を配置可能とするために、面120の一部を面110側へと凹状に後退させた部分である。凹部121の底部分(
図2においては上端部分)では、内部電極であるRF電極140が露出している。本実施形態では、上面視における凹部121の形状は円形であり、その内側には略円柱形状の空間が形成されている。
【0042】
ベースプレート200の面210のうち、上面視において凹部121と重なる部分には、凹部211が形成されている。凹部211では、絶縁膜230が除去されており、ベースプレート200の金属部分が露出している。上面視における凹部211の形状は、凹部121と同様に円形である。尚、ベースプレート200の面210に絶縁膜230が形成されていない場合には、凹部211は無くてもよい。
【0043】
導電性部材400は、繊維状の金属部材により形成された略円柱形状の部材であって、凹部121及び凹部211の内側に収容されている。導電性部材400は、凹部121において露出しているRF電極140に対し当接している。また、導電性部材400は、凹部211において露出しているベースプレート200の金属部分に対しても当接している。このように配置された導電性部材400によって、RF電極140とベースプレート200の金属部分との間が導通している。
【0044】
図3に示されるように、導電性部材400は、略円柱形状の本体部410と、複数の突出部420と、を有しており、その全体が繊維状の金属部材により一体に形成されている。突出部420は、本体部410のうち
図2における上面から、更に上方側に向かって伸びるように形成された略円柱形状の突起である。本実施形態では、突出部420は計4つ形成されているが、突出部420の数はこれとは異なっていてもよい。
【0045】
繊維状の金属部材からなる導電性部材400は、その内部に、空気や接着剤等の流体が入り込み得る程度の通気性を有している。つまり、繊維状の金属部材は十分に密とはなっておらず、繊維同士の間には隙間が空いている。このような構成とすることで、導電性部材400は、突出部420を含む各部が、外力によって容易に変形し得る弾性体となっている。
【0046】
外力を受けていないときの、導電性部材400の上下方向(突出部420が伸びているる方向)の寸法は、
図2の状態における同方向の寸法よりも大きい。つまり、導電性部材400は、誘電体基板100からベースプレート200に向かう方向に沿って圧縮された状態で、凹部121の内側に収容され、RF電極140とベースプレート200との間に挟み込まれている。それぞれの突出部420の先端は、RF電極140に対し押し付けられることで潰れるように弾性変形している。
【0047】
導電性部材400は、自らの復元力によってRF電極140及びベースプレート200のそれぞれに対し押し付けられた状態となっている。このため、基板Wの処理時等において、静電チャック10の各部の熱膨張又は収縮が生じても、RF電極140とベースプレート200との間の導通が常に維持される。
【0048】
導電性部材400の数は、1つであっても複数であってもよい。
図4は、誘電体基板100に形成された凹部121の配置を、上面視で模式的に描いた図である。同図に示されるように、本実施形態では、計10個の凹部121が周方向に並ぶように形成されており、それぞれの凹部121に導電性部材400が1つずつ収容されている。
【0049】
導電性部材400の形状としては、本実施形態とは異なる形状を採用してもよい。例えば、導電性部材400の全体を略円柱形状とし、突出部420を有さない形状としてもよい。
【0050】
ところで、凹部121は接合層300と隣り合う位置にある。このため、誘電体基板100とベースプレート200とを接合する際には、凹部121の内側全体に未硬化の接着剤が入り込んでしまう可能性がある。そのような状態で接着剤が硬化すると、凹部121の内側では、局所的に厚くなった接合層300が閉空間内に閉じ込められた状態となる。
【0051】
その場合、基板Wの処理時等において静電チャック10の温度が上昇すると、凹部121に閉じ込められた接着剤と、その周囲にある誘電体基板100との間の熱膨張差に起因して、誘電体基板100には大きな熱応力が加えられる。
【0052】
近年では、処理中において基板Wに入射するエネルギーは増大する傾向にあるので、それに伴い上記の熱応力も大きくなっていくと考えられる。熱応力が大きくなり過ぎると、誘電体基板100の変形や破損が生じてしまう可能性がある。
【0053】
そこで、本実施形態に係る静電チャック10では、凹部121の内側に接着剤を一切入り込ませない構成とすることで、上記のような熱応力を低減している。
【0054】
図2において符号「310」が付されているのは、凹部121の内側に接着剤が入り込んでしまうことを防止するために配置された部材である。当該部材のことを、以下では「遮断部310」とも称する。遮断部310は、上面視において、凹部121を外側から全周に亘り囲むように配置された円環状の部材である。遮断部310の内径は、凹部121の内径よりも僅かに大きいが、凹部121の内径と同じであってもよい。
【0055】
誘電体基板100とベースプレート200とを接合する際には、ベースプレート200の面210のうち凹部211の外側となる位置に、予め円環状の遮断部310を配置する。その後、遮断部310の外側に、流動性を有する未硬化の接着剤を塗布し、当該接着剤を挟んで誘電体基板100とベースプレート200とを貼り合わせる。その際、接着剤は、誘電体基板100とベースプレート200との間で挟まれて流動するが、遮断部310によって遮られるので、接着剤が凹部121の内側に入り込んでしまうことは無い。その後、接着剤は例えば加熱されることにより硬化し、接合層300となる。
【0056】
以上のような方法で接合が行われた結果として、本実施形態の静電チャック10では、凹部121のうちいずれの部分にも接着剤が入り込んでおらず、その結果として、凹部121の内側には空間SP2が形成されている。尚、ここでいう「空間SP2」とは、凹部121の内側のうち、接着剤及び導電性部材400のいずれもが存在していない部分(導電性部材400を構成する繊維の隙間を含む)、のことである。このような構成とすることで、凹部121内における接着剤(接合層300)の熱膨張に伴う熱応力が、従来に比べて低減されている。
【0057】
尚、問題が生じない程度に熱応力が抑えられるのであれば、凹部121の内側には僅かに接着剤が入り込んでいてもよい。すなわち、凹部121の全体ではなく一部のみに、接着剤の存在しない空間SP2が形成されているような態様であってもよい。しかしながら、本実施形態のように、凹部121のうちいずれの部分にも接着剤が一切入り込んでいない構成とすれば、接着剤の熱膨張に伴う熱応力を無視できる程度にまで低減することができる。
【0058】
本実施形態では上記のように、凹部121の内側に接着剤が入り込むことを防止するための遮断部310が、凹部121の周囲に設けられている。このような構成とすることで、未硬化時において流動性を有する接着剤を用いる場合でも、凹部121の内側に接着剤が入り込むことを容易に且つ確実に防止し、接着剤の熱膨張に伴う熱応力を低減することが可能となる。
【0059】
遮断部310の材料としては種々の材料を用いることができるが、弾性部材を用いることが好ましい。このような構成とすることで、各部の熱膨張等に伴い遮断部310から誘電体基板100等へと加えられる力をも低減することが可能となる。尚、「弾性部材」は、接合層300(つまり硬化した接着剤)と同程度のヤング率、もしくはそれよりも低いヤング率の部材であればよい。
【0060】
本実施形態では、遮断部310の材料としてシリコーン接着剤を用いている。具体的には、シリコーン接着剤をシート状に延ばして加熱し半硬化させた後、当該シートを打ち抜き加工により円環状としたものを、遮断部310として用いた。接着剤を加熱し接合層300とする際に、遮断部310も同時に硬化する。ただし、遮断部310はシリコーン接着剤であるから、接合層300と共に、硬化後においてもある程度の弾性を有している。遮断部310の材料である接着剤と、接合層300の材料である接着剤とは、互いに異なるものであってもよいが、互いに同じものであってもよい。
【0061】
尚、遮断部310から誘電体基板100等へと加えられる力が問題とならない場合には、遮断部310は、誘電体基板100又はベースプレート200と一体に形成されていてもよい。
【0062】
本実施形態では、先に述べたように、導電性部材400として繊維状の金属部材が用いられている。繊維状の金属部材を用いることで、導電性部材400が凹部121の形状に応じて容易に変化するので、凹部121の形状や配置の自由度を高めることができる。また、導電性部材400が弾性体となるので、RF電極140とベースプレート200との間の導通を常に維持することもできる。
【0063】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0064】
図5は、本実施形態における静電チャック10のうち、導電性部材400及びその近傍の部分を、
図2と同様の視点で描いたものである。
図5に示されるように、本実施形態においては遮断部310が設けられていない。
【0065】
本実施形態では、接合層300となる接着剤として、固形の接着剤シートを用いている。接着剤シートは、硬化前の段階においても液状とはなっておらず、可撓性を有する固形のシート状の部材となっている。このような接着剤シートとしては、例えば、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系等を用いることができる。接着剤シートとしては、熱伝導に優れたものや絶縁性が高いものを好適に用いることができる。
【0066】
接着剤シートは、上記のように硬化前においても固形のシート状となっているので、例えば、金型を用いた穴抜き加工等を施すことにより、接合前において開口301を予め形成しておくことができる。開口301は、凹部121と対応する位置に形成される円形の貫通穴であり、接着剤シートの硬化後においてもそのまま開口301として残るものである。接合前の接着剤シートに開口301を予め形成しておけば、接着の過程において、凹部121の内側に接着剤が入り込むことがない。これにより、凹部121の内側の空間SP2を容易に且つ確実に形成することができる。
【0067】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0068】
図6は、本実施形態における静電チャック10のうち、導電性部材400及びその近傍の部分を、
図2と同様の視点で描いたものである。
図6に示されるように、本実施形態では、導電性部材400の構成において第1実施形態と異なっている。
【0069】
本実施形態の導電性部材400は、
図7に示されるように、全体が円環状に形成された螺旋状の金属部材として構成されている。また、導電性部材400を収容するための凹部121は、
図8に示されるように、全体が円環状の溝として形成されている。
【0070】
図6に示されるように、本実施形態の導電性部材400も第1実施形態と同様に、誘電体基板100からベースプレート200に向かう方向に沿って圧縮された状態で、凹部121の内側に収容され、RF電極140とベースプレート200との間に挟み込まれている。
【0071】
このような構成においては、線形の比較的太いスプリングを導電性部材400として用いることができるので、導電性部材400の耐久性を向上させることができる。
【0072】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0073】
10:静電チャック
100:誘電体基板
121:凹部
140:RF電極
200:ベースプレート
300:接合層
310:遮断部
400:導電性部材
SP2:空間