IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プロスパイラの特許一覧

<>
  • 特開-防振装置 図1
  • 特開-防振装置 図2
  • 特開-防振装置 図3
  • 特開-防振装置 図4
  • 特開-防振装置 図5
  • 特開-防振装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169218
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20241128BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20241128BHJP
   F16F 1/379 20060101ALI20241128BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/08 K
F16F1/379
F16F1/387 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086504
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048BB08
3J048BD04
3J048CB01
3J048EA15
3J059AA09
3J059AB01
3J059BA42
3J059BC11
3J059DA35
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で稼働中に弾性率を変化させることができる、防振装置を提供する。
【解決手段】本発明の防振装置100は、振動発生部及び振動受部のいずれか一方に取り付けられる、内側取付部材1と、振動発生部及び振動受部の他方に取り付けられるとともに、内側取付部材1を取り囲む筒状部21及び振動発生部及び振動受部の他方への取付部23を有する、外側取付部材2と、内側取付部材1と外側取付部材2の筒状部21との間に配置された、本体弾性体3と、を含む、防振装置100であって、外側取付部材2の筒状部21の外表面212に、外側取付部材2を介して本体弾性体3を加熱又は冷却するペルチェ素子6が取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部及び振動受部のいずれか一方に取り付けられる、内側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に取り付けられるとともに、前記内側取付部材を取り囲む筒状部及び前記振動発生部及び振動受部の他方への取付部を有する、外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の前記筒状部との間に配置された、本体弾性体と、を含む、防振装置であって、
前記外側取付部材の前記筒状部の外表面に、前記外側取付部材を介して前記本体弾性体を加熱又は冷却するペルチェ素子が取り付けられている、防振装置。
【請求項2】
前記本体弾性体は、中間板を介して互いに径方向に隣接する外側本体弾性体と内側本体弾性体とを含んでおり、
前記外側本体弾性体と前記内側本体弾性体とは、常温域における弾性率の温度依存性が、互いに異なる、請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記外側本体弾性体は前記内側本体弾性体よりも、常温域における弾性率の温度依存性が大きい、請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記ペルチェ素子の外側に、放熱用フィンが設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の防振装置。
【請求項5】
前記放熱用フィンに連結されて前記ペルチェ素子を冷却する冷却用ファンを、さらに備えている、請求項4に記載の防振装置。
【請求項6】
前記ペルチェ素子に連結されて前記ペルチェ素子を冷却する冷却用ファンを、さらに備えている、請求項1~3のいずれか1項に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム弾性体を用いた一般的な防振装置では、粘弾性特性は、ゴム材料により一義的に決まっており稼働中に変更することはできない。しかし、例えば車両に用いられる防振装置において、走行状態への対応その他の目的に応じて、粘弾性特性を稼働中に変化させるニーズがある。
そこで、従来より、内部に液体を封入し、その流路をアクチュエータを備えたバルブで制御する防振装置(例えば、特許文献1)や、内部に磁性流体を封入し、その剛性をコイルにより発生した磁界によって制御する防振装置(例えば、特許文献2)が、提案されている。
これらの装置によれば、稼働中に弾性率ひいては粘弾性特性を変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62―101935号公報
【特許文献2】特開2020―133704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の防振装置では、いずれも、内部に液室又は流体室と流路を持ち、さらには当該液体又は流体をシールしなければならない構造であるため、構造が複雑であり、ひいては、必要スペースの増大や製造コストが高くなるおそれもある等の課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成で稼働中に弾性率を変化させることができる、防振装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により、解決される。
【0007】
(1)本発明の防振装置は、
振動発生部及び振動受部のいずれか一方に取り付けられる、内側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に取り付けられるとともに、前記内側取付部材を取り囲む筒状部及び前記振動発生部及び振動受部の他方への取付部を有する、外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の前記筒状部との間に配置された、本体弾性体と、を含む、防振装置であって、
前記外側取付部材の前記筒状部の外表面に、前記外側取付部材を介して前記本体弾性体を加熱又は冷却するペルチェ素子が取り付けられている。
本発明に係る防振装置によれば、簡易な構成で稼働中に弾性率を変化させることができる。
【0008】
(2)上記(1)の防振装置において、
前記本体弾性体は、中間板を介して互いに径方向に隣接する外側本体弾性体と内側本体弾性体とを含んでおり、
前記外側本体弾性体と前記内側本体弾性体とは、常温域における弾性率の温度依存性が、互いに異なることが好ましい。
この場合、防振装置に要求される複数の要求特性を、同時に満足させることが可能となり得る。
【0009】
(3)上記(2)の防振装置において、
前記外側本体弾性体は前記内側本体弾性体よりも、常温域における弾性率の温度依存性が大きいことが好ましい。
この場合、弾性率を効率的に変化させることができる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの防振装置において、
前記ペルチェ素子の外側に、放熱用フィンが設けられていることが好ましい。
この場合、弾性率を効果的に変化させることができる。
【0011】
(5)上記(4)の防振装置において、
前記放熱用フィンに連結されて前記ペルチェ素子を冷却する冷却用ファンを、さらに備えていることが好ましい。
この場合、弾性率をより効果的に変化させることができる。
【0012】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの防振装置において、
前記ペルチェ素子に連結されて前記ペルチェ素子を冷却する冷却用ファンを、さらに備えていることが好ましい。
この場合、弾性率をより効果的に変化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で稼働中に弾性率を変化させることができる、防振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る防振装置を、図2のY-Y線に沿う断面により示す、断面図である。
図2図1の防振装置を、当該防振装置の軸線を含む図1のX-X線に沿う断面により示す、断面図である。
図3図1の防振装置を含む防振システムの全体の構成の例を説明するための、説明図である。
図4図1の防振装置に用いることのできる本体弾性体を構成し得るゴム材料の、常温域における弾性率の温度依存性の例を示す、概略図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る防振装置の構成を説明するための、図1と同様の断面による断面図を伴う、概略説明図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る防振装置の構成を説明するための、図1と同様の断面による断面図を伴う、概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のいくつかの実施形態に係る防振装置について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
本明細書において、「軸方向」とは、内側取付部材ひいては防振装置の軸線Oに平行な方向を指し、一部の図面において符号「AD」で示し、「周方向」とは、防振装置の軸線Oを周回する方向を指し、一部の図面において符号「CD」で示し、「径方向」とは、防振装置の軸線Oに直交する方向を指し、一部の図面において符号「RD」で示す。また、「径方向内側」とは、径方向において軸線Oに近い側を指し、「径方向外側」とは、径方向において軸線Oから遠い側を指す。
なお、以下に説明する実施形態の防振装置100は、例えば、車両のサスペンション部分に用いられるサスペンションブッシュとして構成されているが、任意の種類の防振装置として構成されてよい。
【0016】
(第1実施形態)
図1図4は、本発明の第1実施形態に係る防振装置100を説明するための図面である。図1は、本発明の第1実施形態に係る防振装置を、図2のY-Y線に沿う断面により示す、断面図である。図2は、図1の防振装置を、当該防振装置の軸線を含む図1のX-X線に沿う断面により示す、断面図である。図3は、図1の防振装置を含む防振システムの全体の構成の例を説明するための、説明図である。図4は、図1の防振装置に用いることのできる本体弾性体を構成し得るゴム材料の、常温域における弾性率の温度依存性の例を示す、概略図である。
【0017】
本発明の第1実施形態に係る防振装置100は、例えば、車両のサスペンション部分に用いられるサスペンションブッシュとして構成されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る防振装置100は、内側取付部材1と、外側取付部材2と、本体弾性体3と、を含んでいる。
【0019】
本実施形態において、内側取付部材1は、振動発生部及び振動受部のいずれか一方(例えば、振動受部である図示しない車両の車体)に、取り付けられる。換言すれば、内側取付部材1は、振動発生部及び振動受部のいずれか一方に取り付けることが可能なように、構成されている。より具体的に、本例において、図1及び図2に示すように、内側取付部材1は、筒状(より具体的には、円筒状)の部材でありその軸線O(ひいては、防振装置100の軸線O)に沿って貫通孔が形成されており、当該貫通孔にボルト等が装着されることによって、当該ボルトを介して内側取付部材1ひいては防振装置100が振動発生部及び振動受部のいずれか1方に取り付けられるように、構成されている。内側取付部材1は、例えば鉄又はアルミニウム等の金属や硬質樹脂等の、剛性を有する材料によって、形成することができる。
【0020】
本実施形態において、外側取付部材2は、振動発生部及び振動受部の他方、即ち、振動発生部及び振動受部のうち内側取付部材1が取り付けられるいずれか一方に対する他方(例えば、防振装置100がサスペンションブッシュである場合、振動発生部である図示しないサスペンション側のロアアーム、アッパーアーム等の部材)に、取り付けられる。換言すれば、外側取付部材2は、振動発生部及び振動受部の他方に取り付けることが可能なように、構成されている。より具体的に、本例において、図1及び図2に示すように、外側取付部材2は、後述する取付部23に形成された複数(例えば、4つ)の取付穴231にボルト等が装着されることによって、当該ボルトを介して外側取付部材2ひいては防振装置100が振動発生部及び振動受部の他方に取り付けられるように、構成されている。外側取付部材2は、例えば鉄又はアルミニウム等の金属や硬質樹脂等の、剛性を有する材料によって、形成することができる。しかし、外側取付部材2は、後述するペルチェ素子6及び本体弾性体3のいずれか一方からの熱を効率よく他方に伝える観点からは、鉄又はアルミニウム等の金属から形成されていることが好ましく、熱伝導率の高さ及び軽量化の観点から、アルミニウムで形成されていることがより好ましい。
【0021】
本実施形態において、図1に示すように、外側取付部材2は、内側取付部材1を取り囲む筒状部21及び振動発生部及び振動受部の他方への取付部23を有している。本例において、外側取付部材2は、さらに、筒状部21と取付部23とを連結する、連結部22を有している。即ち、本例において、外側取付部材2は、筒状部21と、取付部23と、筒状部21と取付部23とを連結する連結部22と、を有しており、上述のとおり、取付部23において取付穴231に装着されるボルト等を介して、振動発生部及び振動受部の他方に取り付けられる。
【0022】
本実施形態において、外側取付部材2の筒状部21は、内側取付部材1を取り囲むように筒状に形成された部分である。筒状部21の当該筒状としての形状は任意であってよい。例えば、筒状部21の形状は、図1及び図2に示す例のように、内表面(より具体的に、筒状部21の径方向RDの内側の表面である、内周面)211が円筒状である一方、外表面(より具体的に、筒状部21の径方向RDの外側の表面である、外周面)212の一部(本例において、より具体的に、径方向RDにおいて取付部23と対向しない、周方向CDの一部の領域)が平面状に形成されていてもよいし、内表面211及び外表面212がともに円筒状に形成されていてもよい。しかし、筒状部21の形状は、その外表面212に後述するペルチェ素子6が取り付けられやすいこと、及び、当該外表面212の形状に合う取付面を有するペルチェ素子6を調達しやすいこと、等の観点から、図1及び図2に示す例のように、外表面212の一部が平面状に形成されていることが好ましい。
【0023】
本例において、図1に示すように、外側取付部材2の筒状部21は、図1に示す断面視において、全体として径方向RDにおいて取付部23に対向する周方向CDの領域(図1においては、筒状部21のうちの、紙面上下の領域。以下、「取付部対向領域」ともいう。)と、それ以外の周方向CDの領域(図1においては、筒状部21のうちの、紙面左右の領域。以下、「取付部非対向領域」ともいう。)と、を有している。そして、本例では、筒状部21の取付部対向領域の径方向RDの外側に取付部23が形成されており、また、図1及び図2に示すように、筒状部21の取付部非対向領域の径方向RDの外側の外表面212に後述するペルチェ素子6が取り付けられている。本例では、さらに、筒状部21の取付部非対向領域の径方向RDの外側、より具体的に、ペルチェ素子6の径方向RDの外側に、後述する放熱用フィン7が設けられている。
【0024】
本例において、図1に示すように、外側取付部材2の取付部23は、平板状であるが、取付対象(振動発生部及び振動受部の他方側の部材)の形状等に応じて、平板状以外の形状であってもよい。
また、本例において、図1に示すように、外側取付部材2の連結部22は、図1に示す断面視において、筒状部21の取付部対向領域よりも短い幅で筒状部21と取付部23との間に直線状に延在しこれらを連結する、2つの連結部22から構成されている。但し、筒状部21の外表面212に対するペルチェ素子6等の取付けに支障のない限り、連結部22は、任意の形状・数であってよく、また、連結部22がなく、筒状部21と取付部23とが一体的に構成されていてもよい。
【0025】
本実施形態において、本体弾性体3は、内側取付部材1と外側取付部材2の筒状部21との間に配置されている。より具体的に、本例において、本体弾性体3は、内側取付部材1(より具体的に、内側取付部材1の外表面)と外側取付部材2の筒状部21(より具体的に、筒状部21の内表面211)とに例えば加硫接着により固着され接合されて、当該内側取付部材1と外側取付部材2の筒状部21(ひいては、外側取付部材2)とを弾性的に連結している。本例において、本体弾性体3は、ゴム弾性体であり、即ち、ゴム材料で形成されている。本体弾性体3は、本例のように、ゴム材料で形成されていることが好ましい。
本実施形態において、図1及び図2に示すように、本体弾性体3は、中間板5を介して互いに径方向RDに隣接する外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とを含んでいる。この点については、追って詳述する。
本体弾性体3は、防振装置100の通常稼働時において、特には径方向RDにおける振動入力に対する、防振機能を有する。換言すれば、本体弾性体3は、通常稼働時、例えば、車両の通常走行時(即ち、過大入力時に、内側取付部材1側と外側取付部材2側とが、後述する軸方向貫通孔301を介して当接するまでの間)における、防振装置100の防振特性、例えば、防振装置100による、車両の乗り心地、操縦安定性、騒音防止性能、振動防止性能、及びハーシュネス防止性能への寄与等を、決定する。逆に言えば、本発明において、「本体弾性体」とは、防振装置の通常稼働時において防振機能を果たし、当該通常稼働時における防振特性を決定する弾性体を指す。
【0026】
本例においては、上述のとおり、本体弾性体3は、内側取付部材1(より具体的に、内側取付部材1の外表面)と外側取付部材2の筒状部21(より具体的に、筒状部21の内表面211)とに、例えば加硫接着により直接固着され接合されているが、本体弾性体3が筒状の外筒部材(図示せず)の内周面に固着され、当該外筒部材が外側取付部材2の筒状部21の内周面に圧入又はかしめ等により取付け固定されることにより、本体弾性体3が外側取付部材2の筒状部21に接合されていてもよい。本明細書において、その場合、当該外筒部材も、外側取付部材2の一部とみなすこととする。しかし、防振装置100の構成部材及び製造の簡略化並びに軽量化等の観点からは、本体弾性体3は、上記外筒部材を介さず直接外側取付部材2の筒状部21に接合されていることが好ましい。
【0027】
本実施形態においては、図1に示すように、内側取付部材1と外側取付部材2の筒状部21との間に、本体弾性体3以外に、ストッパ弾性体4も配置されている。より具体的に、本例において、ストッパ弾性体4は、外側取付部材2の筒状部21(より具体的に、筒状部21の内表面211)に例えば加硫接着により固着されている。ストッパ弾性体4の径方向RDの内側には、本体弾性体3の後述するストッパ部321との間に、通常スグリとも称される軸方向貫通孔301が形成されている。図1に示すように、ストッパ弾性体4は、本体弾性体3と、防振機能やストッパ機能を有さない厚さの薄い薄膜弾性体を介して同一の弾性体で一体に形成されているが、ストッパ弾性体4は、本体弾性体3と別体に形成されていてもよい。本例において、ストッパ弾性体4は、本体弾性体3と同様にゴム弾性体であり、即ち、ゴム材料で形成されている。ストッパ弾性体4も、本例のように、ゴム材料で形成されていることが好ましい。
本例において、ストッパ弾性体4は、防振装置100への径方向RDにおける過大な入力時に、本体弾性体3のストッパ部321と当接し、内側取付部材1と外側取付部材2の筒状部21との間のそれ以上の相対変位を抑制し、ひいては、当該過大な入力後の、例えば車両の乗り心地や操縦安定性の低下の抑制等に寄与する。即ち、ストッパ弾性体4は、ストッパ機能を有する。ストッパ弾性体4は、ストッパ機能を発揮していない防振装置100の通常稼働時において、防振機能は有さない。
【0028】
本実施形態において、防振装置100は、例えば、図1の紙面上下方向、即ち、図1において、外側取付部材2の取付部23の延在方向に垂直な径方向RDの方向を鉛直方向として、振動発生部と振動受部との間に配置されてよい。但し、防振装置100は、図1の紙面上下方向を鉛直方向として配置されなくてもよい。しかし、防振装置100を所期した特性に制御しやすくする等の観点からは、防振装置100は、図1の紙面上下方向を鉛直方向として配置されることが好ましい。
また、図1に示す本実施形態において、後述するペルチェ素子6が設けられていない、内側取付部材1と外側取付部材2の取付部23とが対向する方向、より具体的には、図1において、外側取付部材2の取付部23の延在方向に垂直な径方向RDの方向を主振動方向として、ペルチェ素子6を制御することが好ましい。
【0029】
図1及び図2に示すように、本実施形態において、防振装置100は、ペルチェ素子6を有している。ここで、ペルチェ素子6は、熱と電気とを関係づける現象を利用した素子、より具体的に、熱エネルギーと電気エネルギーとの間の変換を行う素子である、熱電素子の一種である。ペルチェ素子6は、当該熱電素子のうち、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する現象、より具体的に、2種類の異種金属(又は、半導体)の両端を接続し電流を流すと当該両端間に温度差が生じる現象であるペルチェ効果を利用して、対象物を加熱又は冷却する半導体素子である。
本例において、図1及び図2に示すように、ペルチェ素子6は、略板状(本例において、より具体的に、略平板状)の板状体として形成されており、当該板状体の両表面(図1及び図2においては、紙面左側及び右側の表面)である、径方向内側の内側表面61及び径方向外側の外側表面62が、伝熱面となる。本例において、ペルチェ素子6は、ペルチェ効果を呈するペルチェ素子本体のみから構成されていてもよいが、ペルチェ素子6は、例えばアルミニウム等の良熱伝導性の金属板等から構成されて略平行に設けられた2枚の伝熱板(詳細は、図示せず)と、当該2枚の伝熱板の間に挟まれたペルチェ素子本体と、を含んだ、いわばペルチェ素子モジュールとして構成されていてもよい。本明細書においては、当該ペルチェ素子モジュールも、ペルチェ素子と称することとする。
【0030】
本実施形態において、図1及び図2に示すように、ペルチェ素子6は、外側取付部材2の筒状部21の外表面212に取り付けられている。より具体的に、本例において、ペルチェ素子6は、その内側表面61が、平面状に形成された外側取付部材2の筒状部21の取付部非対向領域の径方向RDの外側の外表面212に、対向して取り付けられている。ここで、「取り付けられている」とは、ペルチェ素子6が外側取付部材2の筒状部21の外表面212に対向して、熱伝導可能な状態で取り付けられていることを指す。ペルチェ素子6(より具体的に、その内側表面61)は、例えば熱伝導可能な接着剤による接着により当該外表面212に固着されて、当該外表面212に取り付けられていてよい。ペルチェ素子6(より具体的に、その内側表面61)と当該外表面212との間に、上記接着剤以外に、例えば熱伝導可能な板状体、シート材、熱伝導グリース等が介在されていてもよい。
本例において、ペルチェ素子6は、外側取付部材2(より具体的には、外側取付部材2の筒状部21の取付部非対向領域)を介して、本体弾性体3を加熱又は冷却する。より具体的に、ペルチェ素子6は、当該ペルチェ素子6に電圧が印加され電流が流されることにより、本体弾性体3を加熱又は冷却することができる。ここで、「加熱又は冷却」とは、ペルチェ素子6に電流を流している状態と電流を流していない状態との間、及び/又は、ペルチェ素子6に所定の向きに電流を流した状態と当該所定の向きとは反対の向きに電流を流した状態との間で、相対的に本体弾性体3を加熱又は冷却することを指す。ペルチェ素子6に電流を流すことにより、その内側表面61と反対側の外側表面62の一方から他方に向かって熱が移動することにより、本体弾性体3を加熱又は冷却することができる。
【0031】
図1に示すように、本例において、ペルチェ素子6は、径方向RDにおいて外側取付部材2の筒状部21(より具体的に、筒状部21の取付部非対向領域)を間に挟んで本体弾性体3(後述するストッパ部321を除く)と対向する、周方向CDの位置に、取り付けられている。この場合、ペルチェ素子6により、効率的に本体弾性体3を加熱又は冷却することができる。より具体的に、本例では、図1及び図2に示すように、ペルチェ素子6は、外側取付部材2の筒状部21の取付部非対向領域に対応する周方向CDの位置であって、防振装置100の軸線Oを挟んだ両側の位置にそれぞれ1個ずつ、計2個取り付けられている。但し、ペルチェ素子6は、当該ペルチェ素子6により外側取付部材2を介して本体弾性体3を加熱又は冷却することができる限り、上述以外の周方向CDの位置に取り付けられていてもよく、上述の周方向CDの位置に加えて又は替えて、例えば、外側取付部材2の筒状部21の取付部対向領域のうちの、取付部23に近接しない側の取付部対向領域(図1では、紙面上側の取付部対向領域)に対応する周方向CDの位置に取り付けられていてもよい。しかし、効率的に本体弾性体3を加熱又は冷却する観点からは、ペルチェ素子6は、図1に示す例のように、径方向RDにおいて外側取付部材2の筒状部21の取付部非対向領域を間に挟んで本体弾性体3(後述するストッパ部321を除く)と対向する、周方向CDの位置に、取り付けられていることが好ましい。
【0032】
本実施形態において、防振装置100には、当該防振装置100の稼働中に本体弾性体3の温度状況に応じてペルチェ素子6に流す電流を制御するための、温度センサ8(図1及び図2においては、図示せず)が、さらに設けられていてよい。温度センサ8は、本体弾性体3の温度を、直接的又は間接的に、測定又は推定できる限り、防振装置100のどの位置に設けられていてもよい。本例において、温度センサ8は、本体弾性体3が含む後述する外側本体弾性体31及び内側本体弾性体32のうち、ペルチェ素子6により近い位置に配置されより温度制御しやすい外側本体弾性体31の温度を、直接的又は間接的に、測定又は推定できるように、配置されていることが好ましい。この観点から、図示の例において、温度センサ8は、例えば、ペルチェ素子6と外側取付部材2との間、外側取付部材2と外側本体弾性体31との間、外側本体弾性体31の内部、外側本体弾性体31と後述する中間板5との間、及び中間板5の内部、のいずれか1か所以上に、配置されていることが好ましい。
【0033】
本実施形態において、図1及び図2に示すように、本体弾性体3は、外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とを含んでいる。本例において、本体弾性体3は、外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とのみからなっている。図示されているように、外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とは、中間板5を介して互いに径方向RDに隣接している。より具体的に、本例において、外側本体弾性体31の径方向RDの内表面及び内側本体弾性体32の径方向RDの外表面は、それぞれ、中間板5の径方向RDの外表面及び内表面に、固着され接合されている。また、図1に示すように、本例において、内側本体弾性体32は、ストッパ弾性体4と当接することによりストッパ機能を発揮するストッパ部321を、一体的に有している。
本例において、前述のとおり、本体弾性体3ひいては外側本体弾性体31及び内側本体弾性体32は、ゴム弾性体であり、即ち、ゴム材料で形成されている。本体弾性体3ひいては外側本体弾性体31及び内側本体弾性体32は、本例のように、ゴム材料で形成されていることが好ましい。本例において、中間板5は、板状の部材であり、例えば鉄又はアルミニウム等の金属や硬質樹脂等の、剛性を有する材料によって、形成することができる。
【0034】
次に、図4を参照しつつ、本実施形態における外側本体弾性体31と内側本体弾性体32の特性について、説明する。
本実施形態において、外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とは、常温域における弾性率の温度依存性が、互いに異なる。ここで、「常温域」とは、5~35°Cの温度領域を指し、また、「弾性率の温度依存性」とは、温度の変化に応じて弾性率がどのように変化するかを示す特性を指す。
【0035】
図4は、防振装置100に用いることのできる本体弾性体3を構成し得るゴム材料の、常温域における弾性率の温度依存性の例を示す、概略図である。図4には、本体弾性体3ひいては外側本体弾性体31及び内側本体弾性体32を構成し得る高分子材料の典型例として、2種類のゴム材料についての、常温域における温度依存性、即ち、温度の変化に対する弾性率の変化が、示されている。高分子材料の弾性率は、一般に温度依存性を有する。図4を参照すれば、太線で示すゴム材料Aと点線で示すゴム材料Bとは、ともに弾性率が温度依存性を有している。より具体的に、両ゴム材料とも、一定の温度領域について、他の温度領域よりも温度に対する弾性率の変化率の絶対値(以下、単に「変化率」ともいう。)が大きい。また、図4に例示するゴム材料Aとゴム材料Bとは、当該弾性率の温度依存性が互いに異なっている。
本実施形態の防振装置100において、外側本体弾性体31及び内側本体弾性体32として、それぞれ、例えば図4に示すように常温域における弾性率の温度依存性が互いに異なる、ゴム材料A及びゴム材料Bのいずれか一方又は他方を用いることができる。
【0036】
より具体的に、図4に示すゴム材料Aとゴム材料Bとを比較すると、少なくとも所定の温度領域(図4において、「温度制御範囲」と記載された温度領域)を含む全体の温度領域において、ゴム材料Aの方がゴム材料Bより、弾性率の温度依存性が大きい。
図1及び図2に示す本実施形態の防振装置100においては、外側本体弾性体31が、例えば図4に示されるような温度特性を有するゴム材料Aで形成され、内側本体弾性体32が、例えば図4に示されるような温度特性を有するゴム材料Bで形成されている。即ち、本実施形態において、外側本体弾性体31は内側本体弾性体32よりも、常温域における弾性率の温度依存性が大きい。当該内側本体弾性体32を構成する材料(上述の例では、ゴム材料B)としては、例えば、ゴム成分として、天然ゴム(NR)のみからなるゴム等が、挙げられる。また、当該外側本体弾性体31を構成する材料(上述の例では、ゴム材料A)としては、例えば、ゴム成分として、天然ゴム(NR)に、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)やブチルゴム(IIR)等の合成ゴムを所定の割合で配合することによって得られるゴム等が、挙げられる。
【0037】
但し、本実施形態のように、本体弾性体3が、中間板5を介して互いに径方向Rに隣接する外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とを含んでいる場合、外側本体弾性体31が内側本体弾性体32よりも、常温域における弾性率の温度依存性が小さくてもよく、また、外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とが同一材料で形成され、ひいては常温域における弾性率の温度依存性が互いに等しくてもよい。しかし、後述するように、本体弾性体3の弾性率を効率的に変化させる観点からは、本実施形態のように、外側本体弾性体31は内側本体弾性体32よりも、常温域における弾性率の温度依存性が大きいことが、好適である。
なお、本体弾性体3は、2枚以上の中間板5を介して互いに径方向Rに隣接する、3個以上の弾性体から構成されていてもよい。この場合、いずれか1枚の中間板5を介して互いに径方向Rに隣接する外側本体弾性体31と内側本体弾性体32との間で、常温域における弾性率の温度依存性が、上述したいずれかの関係にあれば、後述する効果と同様の効果が得られる。
また、本体弾性体3は、中間板5を介して互いに径方向RDに隣接する複数の弾性体から形成されていなくてもよい。即ち、本体弾性体3は、1つの弾性体から形成されていてもよく、その場合、中間板5は有さなくてよい。
【0038】
本実施形態において、図1及び図2に示すように、防振装置100には、放熱用フィン7が設けられている。本例において、放熱用フィン7は、略板状(本例において、より具体的に、略平板状)に形成された板状部71と、当該板状部71から径方向外側に凸条状に突出する複数の突出部72と、を備えている。図1を参照すれば、複数の突出部72は、互いに略平行に形成されている。但し、放熱用フィン7の構成は、外部に開放された表面積が大きく、ペルチェ素子6から伝達される熱が効率よく放熱できる限り、任意であってよい。しかし、放熱用フィン7は、放熱対象への取付けやすさや簡易な形状で効率よく放熱する観点からは、本実施形態のように、板状部71と複数の突出部72とを備えた構成であることが、好適である。
【0039】
本実施形態において、図1及び図2に示すように、放熱用フィン7は、ペルチェ素子6の外側に設けられている。より具体的に、本例において、放熱用フィン7は、板状部71の内側表面711が、平面状に形成されたペルチェ素子6の外側表面62に、対向して設けられている。ここで、「設けられている」とは、放熱用フィン7がペルチェ素子6の外側表面62に対向して、熱伝導可能な状態で設けられているいることを指す。放熱用フィン7(より具体的に、その板状部71の内側表面711)は、例えば熱伝導可能な接着剤による接着により当該外側表面62に固着されて、当該外側表面62に設けられていてよい。放熱用フィン7(より具体的に、その板状部71の内側表面711)と当該外側表面62との間に、上記接着剤以外に、例えば熱伝導可能な板状体、シート材、熱伝導グリース等が介在されていてもよい。
放熱用フィン7により、ペルチェ素子6に生じた熱を効率的に外部に放出することができ、ペルチェ素子6により効果的に本体弾性体3(図示の例においては、特には、外側本体弾性体31)を例えば冷却するのを、助けることができる。
【0040】
図1に示すように、本例において、放熱用フィン7は、ペルチェ素子6の取り付けられている周方向CDの位置に対応する周方向CDの位置に、設けられている。この場合、放熱用フィン7により、ペルチェ素子6に生じた熱をより効率的に外部に放出することができる。より具体的に、本例では、図1及び図2に示すように、放熱用フィン7は、ペルチェ素子6の取り付けられている周方向CDの位置であって、防振装置100の軸線Oを挟んだ両側の位置にそれぞれ1個ずつ、計2個取り付けられている。
【0041】
但し、上述の放熱用フィン7は、特には本体弾性体3の温度制御の必要性が少ない場合、設けられていなくてもよい。また、放熱用フィン7は、ペルチェ素子6から離れた場所に設けられていてもよい。
【0042】
上記のように構成された、本実施形態に係る防振装置100は、例えば、防振装置100の外部(例えば、車両の車体側)に設けられた制御部200(図3参照)により、例えばペルチェ素子6に連結された図示しないリード線を介して、ペルチェ素子6に流す電流が制御されることにより、所期した効果を発揮させることができる。
【0043】
次に、図3を参照しつつ、上述した実施形態の防振装置100を含む防振システムについて、説明する。
【0044】
図3は、図1の防振装置を含む防振システムの全体の構成の例を説明するための、説明図である。
図3を参照すれば、防振システム400は、上述した実施形態の防振装置100と、制御部200と、電源300と、を備えている。
本例において、防振装置100は、上述のとおり、ペルチェ素子6と温度センサ8とを含んでいる。上述のとおり、ペルチェ素子6は、本体弾性体3(上述の実施形態において、特には、外側本体弾性体31)を加熱又は冷却する。また、上述のとおり、温度センサ8は、本体弾性体3(上述の実施形態において、特には、外側本体弾性体31)の温度を、直接的又は間接的に、測定又は推定し、検出する。
【0045】
本例において、制御部200は、車両制御ユニット210と、防振装置制御ユニット220と、を含んでいる。
車両制御ユニット210は、車両の適切な制御に必要な防振装置100の特性を算出し、防振装置制御ユニット220に指示する。車両制御ユニット210は、例えばCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを、1つ又は複数含んで構成されてよい。車両制御ユニット210は、また、アンプを内蔵し、当該アンプを通じて防振装置制御ユニット220に必要な指示を行ってもよい。
防振装置制御ユニット220は、例えば、防振装置制御ユニット220内に記憶されたプログラムを実行することにより、ペルチェ素子6に流す電流を制御しつつ当該ペルチェ素子6に電流を流す。防振装置制御ユニット220は、例えばCPUのようなプロセッサを、1つ又は複数含んで構成されてよい。防振装置制御ユニット220は、また、アンプを内蔵し、当該アンプが例えばCPUからの指示に従い、ペルチェ素子6に電流を流してもよい。
図3に示す例において、制御部200は、防振装置100の外部(例えば、車両の車体)に設けられているが、制御部200の配設位置は任意であってよい。例えば、制御部200のうち、車両制御ユニット210が車両の車体に設けられ、防振装置制御ユニット220が防振装置100に内蔵されていてもよい。
車両制御ユニット210及び防振装置制御ユニット220の相互間、及び、これらと他の部材又は装置との間の通信は、有線通信であっても無線通信であってもよい。
【0046】
電源300は、防振装置制御ユニット220及び車両制御ユニット210を起動する。図3に示す例において、電源300は、制御部200及び防振装置100の外部に設けられているが、電源300は、制御部200又は防振装置100に内蔵されていてもよい。また、電源300は防振装置制御ユニット220のみを起動し、車両制御ユニット210を起動する電源は別個に設けられていてもよい。
【0047】
次に、上述した実施形態による主な効果を、以下に説明する。
まず本実施形態において、防振装置100は、内側取付部材1と、筒状部21及び取付部23を有する、外側取付部材2と、内側取付部材1と外側取付部材2の筒状部21との間に配置された、本体弾性体3と、を含んでいるので、本体弾性体3により、例えば、内側取付部材1と外側取付部材2の取付部23とが対向する方向(より具体的には、図1において、外側取付部材2の延在方向に垂直な径方向RDの方向)に入力された主振動に対して、防振機能を発揮することができる。
また、本実施形態によれば、外側取付部材2の筒状部21の外表面212に、外側取付部材2を介して本体弾性体3を加熱又は冷却するペルチェ素子6が取り付けられているので、当該ペルチェ素子6に電流を流すことにより、一般に弾性率が温度依存性を有する本体弾性体3の温度を制御することができる。従って、本実施形態によれば、例えば、防振装置の内部に液体を封入し、その流路をアクチュエータを備えたバルブで制御する場合や、防振装置の内部に磁性流体を封入し、その剛性をコイルにより発生した磁界によって制御する場合と比較して、簡易な構成で稼働中に本体弾性体3ひいては防振装置100の弾性率を変化させることができる。また、本実施形態によれば、例えば、ペルチェ素子6を外側取付部材2の筒状部21の径方向Rの内側に取り付ける場合と比較して、ペルチェ素子6に生じた熱を効率よく外部に放出するための放熱用フィン7等が、設けやすくなる。
さらに、本実施形態によれば、ペルチェ素子6は、外側取付部材2の筒状部21の取付部23とは対向しない外表面212(即ち、筒状部21の外表面212のうち、前述の取付部非対向領域の外表面)に取り付けられている。この場合、ペルチェ素子6に生じた熱が外部に効率よく放出されやすくなるとともに、ペルチェ素子6に生じた熱をより効率よく外部に放出するための放熱用フィン7等が、設けやすくなる。
【0048】
本実施形態において、本体弾性体3は、中間板5を介して互いに径方向RDに隣接する外側本体弾性体31と内側本体弾性体32とを含んでおり、当該外側本体弾性体31と当該内側本体弾性体32とは、常温域における弾性率の温度依存性が、互いに異なっている。
ここで、一般に、例えば車両のサスペンション部分に用いられるサスペンションブッシュは、動倍率が低い(静的ばね定数即ち弾性率が高く、動的ばね定数が低い)ことが要求されるが、そのような特性を有する弾性体(例えば、前述のゴム材料B)は、一般に弾性率の温度依存性が低い。逆に、防振装置100の稼働中に弾性率を変えることが要求される場合があるが、それに適した特性を有する、弾性率の温度依存性の高い弾性体(例えば、前述のゴム材料A)は、一般に動倍率が高い。
そこで、本実施形態のように、本体弾性体3として、常温域における弾性率の温度依存性が互いに異なる少なくとも2種類の弾性体(外側本体弾性体31及び内側本体弾性体32)を使用することにより、当該弾性体のうち少なくとも当該温度依存性の高い弾性体の温度をペルチェ素子6により制御することができ、ひいては、防振装置100に要求される上記のような複数の要求特性を同時に満足させることが可能となり得る。
【0049】
さらに、本実施形態において、外側本体弾性体31は内側本体弾性体32よりも、常温域における弾性率の温度依存性が大きい。この場合、外側本体弾性体31は内側本体弾性体32よりも、外側取付部材2の外側に取り付けられているペルチェ素子6により近い位置に配置されているので、当該外側本体弾性体31を、常温域における弾性率の温度依存性が内側本体弾性体32よりも大きい弾性体とすることで、例えば、当該外側本体弾性体31を、当該温度依存性が内側本体弾性体32と同じ又は内側本体弾性体32よりも小さい弾性体とした場合と比較して、外側本体弾性体31ひいては防振装置100の弾性率を効率的に変化させることができる。
【0050】
ここで、再度図1図3及び図4等を参照しつつ、本実施形態におけるペルチェ素子6に流す電流値の制御方法の1例について、説明する。
図3を参照すれば、本実施形態において、防振装置制御ユニット220は、車両制御ユニット210から要求された車両側の要求特性(例えば、高速時において静的ばね定数を高める、等)、及び、温度センサ8によって検出された温度(以下、「検出温度」ともいう。)(例えば、外側本体弾性体31の温度)に基づいて、ペルチェ素子6に流す電流値を制御する。より具体的に、防振装置制御ユニット220は、例えば次のようにして、当該電流値を制御することができる。ここで、本実施形態のように、内側本体弾性体32は、外側本体弾性体31よりも、弾性率の温度依存性が小さくかつ動倍率が小さい弾性体とされているとする。
例えば、車両制御ユニット210から、動的ばね定数は低く保ったまま静的ばね定数も低くする、という要求信号が入力された場合、防振装置制御ユニット220は、ペルチェ素子6の外側取付部材2側の内側表面61が外側表面62よりも高温の目標温度になるように(即ち、当該内側表面61を加熱するように)、ペルチェ素子6に電流を流す。温度センサ8は、防振装置制御ユニット220に外側本体弾性体31の検出温度をフィードバックすることで、外側本体弾性体31の温度を高温の目標温度にコントロールする。これにより、外側本体弾性体31の弾性率(ひいては、剛性)が低くなり、主振動(図1の例においては、紙面上下方向の振動)入力時における内側取付部材1の外側取付部材2に対する相対変位時は、外側本体弾性体31と内側本体弾性体32の両方が変位しやすくなることから、防振装置100のトータルの静的ばね定数も低くなる。
一方、例えば、車両制御ユニット210から、静的ばね定数を通常よりも高くする、という要求信号が入力された場合、防振装置制御ユニット220は、ペルチェ素子6の外側取付部材2側の内側表面61が外側表面62よりも低温の目標温度になるように(即ち、当該内側表面61を冷却するように)、ペルチェ素子6に電流を流す。温度センサ8は、防振装置制御ユニット220に外側本体弾性体31の検出温度をフィードバックすることで、外側本体弾性体31の温度を低温の目標温度にコントロールする。これにより、外側本体弾性体31の弾性率(ひいては、剛性)が高くなり、主振動(図1の例においては、紙面上下方向の振動)入力時における内側取付部材1の外側取付部材2に対する相対変位時は、内側本体弾性体32のみが変位しやすくなることから、防振装置100におけるトータルの静的ばね定数も高くなる。
ここで、防振装置制御ユニット220による温度制御を、例えば、図4に「温度制御範囲」として示す、弾性率の温度に対する変化率の絶対値が大きい領域内で行うようにすることにより、より効率的に防振装置100の弾性率(即ち、静的ばね定数)を制御できる。
なお、上述の例の制御方法では、温度センサ8による検出温度は車両制御ユニット210にはフィードバックされず、温度センサ8による検出温度により車両制御ユニット210による車両側の要求特性が影響を受けることはない。
【0051】
本実施形態において、ペルチェ素子6の外側に、放熱用フィン7が設けられている。ここで、ペルチェ素子に電圧を印加し電流を流すと、当該ペルチェ素子の一方側の面の温度が相対的に高くなり、即ち、当該一方側の面は相対的に加熱され、他方側の面の温度は相対的に低くなり、即ち、当該他方側の面は相対的に冷却される。このとき、例えば、特に温度制御する対象物が前記他方側にあり、当該対象物を冷却するよう前記他方側の面を冷却する場合、前記一方側の面の熱を外部に放出しないと冷却効率が低下する場合がある。逆に、当該対象物を加熱するよう前記他方側の面を加熱する場合も、前記一方側の面の熱を外部から吸収しないと加熱効率が低下する場合がある。そこで、本実施形態のように、ペルチェ素子6の外側に、表面積の大きい放熱用フィン7が設けられている場合、温度制御の対象物である本体弾性体3をより効率的に加熱又は冷却することができ、ひいては、本体弾性体3ひいては防振装置100の弾性率をより効果的に変化させることができる。なお、放熱用フィン7は、特にその表面温度が外部の温度(外気温)よりも低い場合、吸熱の効果も奏し得る。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る防振装置100について、図5を参照しつつ説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材又は部位等については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係る防振装置100は、冷却用ファン90をさらに備えている点のみ、本発明の第1実施形態に係る防振装置100と異なり、その他の点は、第1実施形態の防振装置100と実質的に同じである。以下では、主に、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
図5は、本発明の第2実施形態に係る防振装置の構成を説明するための、図1と同様の断面による断面図を伴う、概略説明図である。なお、図5では、図面を見やすくするための便宜上、防振装置100の紙面上の向きが図1に対し90°回転されて描かれているが(例えば、図1では、外側取付部材2の取付部23が紙面左右方向に延在するように描かれているが、図5では、外側取付部材2の取付部23が紙面上下方向に延在するように描かれている)、実際の防振装置100は、図5で描かれた防振装置100も、図1で描かれた防振装置100と同様の向きで、配置されてよい。
図5を参照すれば、本実施形態において、防振装置100は、放熱用フィン7に連結されてペルチェ素子6を冷却する冷却用ファン90を、さらに備えている。本例において、冷却用ファン90は、放熱用フィン7の複数の突出部72の頂部721に、例えば接着やボルト止め等、任意の方法で固着されて、放熱用フィン7に連結されている。本例において、冷却用ファン90は、放熱用フィン7の配置位置に対応して設けられている。より具体的に、本例において、冷却用ファン90は、放熱用フィン7の設けられている周方向CDの位置であって、防振装置100の軸線Oを挟んだ両側の位置にそれぞれ1個ずつ、計2個設けられている。冷却用ファン90は、詳細は図示しないが、例えば複数の回転可能な羽根体の回転により、一方側から他方側に流体(空気)の流れを惹起できるものである限り、任意に構成されていてよい。冷却用ファン90を起動する図示しない電源が、任意の位置に別個に設けられていてもよい。
【0054】
以上のように構成された第2実施形態に係る防振装置100によれば、ペルチェ素子6から伝達され放熱用フィン7を通じて放出される熱を、冷却用ファン90によりより効果的に外部に放出することができる。従って、本実施形態によれば、ペルチェ素子6による本体弾性体3の温度変化をより確実に実現することができ、ひいては、本体弾性体3ひいては防振装置100の弾性率を、より効果的に変化させることができる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る防振装置100について、図6を参照しつつ説明する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の部材又は部位等については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第3実施形態に係る防振装置100は、放熱用フィン7に替えて、冷却用ファン90を用いた冷却システム900を備えている点のみ、本発明の第1実施形態に係る防振装置100と異なり、その他の点は、第1実施形態の防振装置100と実質的に同じである。以下では、主に、第1実施形態及び/又は第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0056】
図6は、本発明の第3実施形態に係る防振装置の構成を説明するための、図1と同様の断面による断面図を伴う、概略説明図である。なお、図6では、図面を見やすくするための便宜上、冷却システム900を除く防振装置100の紙面上の向きが図1に対し90°回転されて描かれているが(例えば、図1では、外側取付部材2の取付部23が紙面左右方向に延在するように描かれているが、図6では、外側取付部材2の取付部23が紙面上下方向に延在するように描かれている)、実際の防振装置100は、図5で描かれた防振装置100も、図1で描かれた防振装置100と同様の向きで、配置されてよい。
図6を参照すれば、本実施形態において、防振装置100は、ペルチェ素子6に連結されてペルチェ素子6を冷却する冷却用ファン90を、さらに備えている。
【0057】
本例において、冷却用ファン90は、冷却用ファン90を含む冷却システム900の一部として構成されている。ここで、図6に示すように、本例における冷却システム900は、一般に水冷式と呼ばれる冷却システムであり、冷却用ファン90と、配管部91と、冷却部92とを有している。冷却部92は、例えば熱伝導性の良い金属で形成されており、内部に水等の冷却液が充填されている。冷却部92は、ペルチェ素子6の外側に設けられている。より具体的に、本例において、冷却部92の表面921が、ペルチェ素子6の外側表面62に対向して、好ましくは当該外側表面62に直接接するように設けられている。冷却用ファン90は、ファン(図6の例では、2個のファン)とともに、熱を外部に放出するための図示しないラジエータをファンの背面側に備えている。配管部91は、冷却部92と冷却用ファン90のラジエータとの間で、図示しないポンプ等により、冷却液を循環させる。
以上のように構成された、冷却用ファン90を含む冷却システム900によれば、ペルチェ素子6の外側表面62側に生じた熱は、冷却液を介して冷却用ファン90のラジエータに運ばれ、ファンの回転により外部に放出されるとともに冷却液は再度冷却される。冷却された冷却液は、図示しないポンプにより冷却システム900内を再度循環する。
【0058】
本例において、冷却システム900の冷却部92は、ペルチェ素子6の配置位置に対応して設けられている。より具体的に、本例において、冷却部92は、ペルチェ素子6の設けられている周方向CDの位置であって、防振装置100の軸線Oを挟んだ両側の位置にそれぞれ1個ずつ、計2個設けられている。冷却用ファン90(より具体的に、冷却用ファン90のラジエータを除くファン)は、図6に示すように、例えば複数の回転可能な羽根体の回転により、一方側から他方側に流体(空気)の流れを惹起できるものである限り、任意に構成されていてよい。冷却用ファン90を起動する図示しない電源が、任意の位置に別個に設けられていてもよい。なお、図6に示す例では、2個の冷却部92の冷却液をまとめて冷却用ファン90のラジエータに送るように配管部91が構成されているが、2個の冷却部92の冷却液をそれぞれ個別に1個又は2個の冷却用ファン90のラジエータに送るように配管部91が構成されていてもよい。
【0059】
以上のように構成された第3実施形態に係る防振装置100によれば、ペルチェ素子6に生じた熱を、冷却用ファン90によりより効果的に外部に放出することができる。従って、本実施形態によれば、ペルチェ素子6による本体弾性体3の温度変化をより確実に実現することができ、ひいては、本体弾性体3ひいては防振装置100の弾性率を、より効果的に変化させることができる。
また、本実施形態の防振装置100によれば、大きなスペースを要しやすい冷却用ファン90を、それ以外の防振装置100の部分(本例において、以下、冷却用ファン90及び配管部91を除く防振装置100の部分を、「防振装置本体部分」という。)とは離れた位置に設置することができるため、防振装置本体部分を狭いスペースにも配置できるようになる。従って、本実施形態によれば、防振装置100の配置位置の自由度を増すこともできる。
なお、本実施形態において、冷却用ファン90を、例えば車両の車体のうち直接外気にさらされるような、外の風が当たる部分に配置することにより、熱放出の効率がより高まる。
【0060】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る防振装置は、任意の防振装置として利用でき、特に、例えば、車両のサスペンション部分に用いられるサスペンションブッシュ等として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1:内側取付部材、
2:外側取付部材、 21:筒状部、 211:内表面、 212:外表面、
22:連結部、 23:取付部、 231:取付穴、
3:本体弾性体、 301:軸方向貫通孔、
31:外側本体弾性体、 32:内側本体弾性体、 321:ストッパ部、
4:ストッパ弾性体、 5:中間板、
6:ペルチェ素子、 61:内側表面、 62:外側表面、
7:放熱用フィン、 71:板状部、 711:内側表面、
72:突出部、 721:頂部、 8:温度センサ、
90:冷却用ファン、 91:配管部、 92:冷却部、 921:表面、
100:防振装置、
200:制御部、 210:車両制御ユニット、 220:防振装置制御ユニット、
300:電源、 400:防振システム、 900:冷却システム、
AD:軸方向、 CD:周方向、 O:軸線、 RD:径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6