(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169220
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電気車制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20241128BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20241128BHJP
H03K 17/695 20060101ALI20241128BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241128BHJP
H03K 17/08 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/082
H03K17/695
H02M7/48 M
H03K17/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086507
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 恒毅
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA08
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
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5H740MM12
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5J055AX34
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5J055GX01
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5J055GX06
(57)【要約】
【課題】短絡電流を抑制することができる電気車制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、電気車制御装置は、スイッチング素子と、ゲート駆動回路と、を備える。スイッチング素子は、直流電圧を供給する電気線と帰線との間に接続される。ゲート駆動回路は、前記スイッチング素子をオンオフ制御することで前記直流電圧を交流電圧に変換し、前記電気線と前記帰線との間の短絡を検知し、前記短絡を検知すると、前記スイッチング素子をオフにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を供給する電気線と帰線との間に接続されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子をオンオフ制御することで前記直流電圧を交流電圧に変換し、
前記電気線と前記帰線との間の短絡を検知し、
前記短絡を検知すると、前記スイッチング素子をオフにする、
ゲート駆動回路と、
を備える電気車制御装置。
【請求項2】
前記ゲート駆動回路は、
前記スイッチング素子に生じる電圧が所定の閾値を超えると前記短絡を検知したことを示す短絡検知信号を出力する短絡検知回路を備える、
請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記短絡検知回路は、
前記スイッチング素子のドレインとソースとの間の電圧を増幅する増幅器と、
前記増幅器によって増幅された電圧が所定の閾値を超えると前記短絡検知信号を出力する比較器と、
を備える、
請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記短絡検知回路は、
前記スイッチング素子の電流が流れる寄生インダクタンスに誘起された電圧を時間で積分する積分器と、
前記積分器からの積分結果が所定の閾値を超えると前記短絡検知信号を出力する比較器と、
を備える、
請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項5】
前記電気線と前記スイッチング素子との間に、鉄芯を有するリアクトルを備える、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の電気車制御装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、交流モータに接続する、
請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項7】
前記リアクトルが発生する磁気をシールドする磁気シールド板を備えない、
請求項5に記載の電気車制御装置。
【請求項8】
前記電気線と前記スイッチング素子との間に形成され前記短絡が生じると前記電気線と前記スイッチング素子との接続を遮断する遮断器を備えない、
請求項1に記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車などの電気車において直流電圧を交流電圧に変換して交流モータに供給する電気車制御装置が提供されている。そのような電気車制御装置は、トランジスタなどのスイッチング素子をオンオフすることで直流電圧を交流電圧に変換する。
【0003】
電気車制御装置において、スイッチング素子などの故障により、直流電圧の両極が短絡することがある。電気車制御装置は、短絡を検知すると遮断器を用いて直流電圧との接続を遮断する。
【0004】
従来、電気車制御装置は、短絡の検知と遮断とのタイムラグにより短絡によって生じる短絡電流が増加するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を解決するため、短絡電流を抑制することができる電気車制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、電気車制御装置は、スイッチング素子と、ゲート駆動回路と、を備える。スイッチング素子は、直流電圧を供給する電気線と帰線との間に接続される。ゲート駆動回路は、前記スイッチング素子をオンオフ制御することで前記直流電圧を交流電圧に変換し、前記電気線と前記帰線との間の短絡を検知し、前記短絡を検知すると、前記スイッチング素子をオフにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電気車の構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電気車制御装置の構成例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るゲート駆動回路の構成例を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電気車制御装置に流れる電流を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施形態に係るゲート駆動回路の変形例を示す回路図である
【
図6】
図6は、実施形態に係る車両の変形例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、従来の電気車の構成例を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、従来の電気車制御装置に流れる電流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
実施形態に係る電気車は、線路を走行する列車を構成する。電気車は、電気線から直流電圧によって駆動する。電気車は、直流電圧を交流電圧に変換して交流モータに印加する。また、電気車は、故障などにより直流電圧の両極が短絡すると、直流電圧との接続を遮断する。
【0010】
図1は、実施形態に係る電気車100の構成例を示す。電気車100は、線路としての帰線14上を走行する。電気車100は、電気車100の上方に形成されている架空電車線または第三軌条などの電気線1からの直流電圧で駆動する。
【0011】
図1が示すように、電気車100は、集電器2、接地ブラシ12、車輪13、電気車制御装置30、モータ40及び筐体91などから構成される。
【0012】
なお、電気車100は、
図1が示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、電気車100から特定の構成が除外されたりしてもよい。
【0013】
筐体91は、電気車100の外形を形成する。たとえば、筐体91は、内部に人又は荷物などを収容可能に形成されている。
【0014】
筐体91の上部には、集電器2が形成されている。集電器2は、電気線1に電気的に接続する。集電器2は、電気線1からの直流電圧を電気車制御装置30に供給する。
【0015】
筐体91の下部には、車輪13が形成されている。車輪13は、帰線14上を走行可能な構造である。また、車輪13は、帰線14に電気的に接続する。また、車輪13は、接地ブラシ12を介して電気車制御装置30と電気的に接続する。
【0016】
また、筐体91の下部には、電気車制御装置30及びモータ40が形成されている。
モータ40は、電気車制御装置30からの交流電圧によって駆動する。モータ40は、車輪13を回転させることで電気車100を走行させる。たとえば、モータ40は、三相交流モータである。
【0017】
電気車制御装置30は、電気線1から集電器2を介して直流電圧を入力する。電気車制御装置30は、入力された直流電圧を交流電圧に変換してモータ40に出力する。
【0018】
電気車制御装置30は、内部に鉄芯を有する鉄芯リアクトル15を備える。鉄芯リアクトル15から外部に漏れる磁気は、空芯のリアクトルのそれと比較して小さいため、電気車制御装置30は、磁気が筐体91内に進入することを防止する磁気シールド板などを備えなくともよい。
【0019】
図2は、電気車制御装置30の構成例を示す回路図である。
図2は、電気車制御装置30の一相分の構成例を示す。
図2が示すように、電気車制御装置30は、遮断器3、断流器4、充電接触器5、充電抵抗器6、鉄芯リアクトル15、制御論理回路21及びコンバータ31などを備える。コンバータ31は、直流コンデンサ8、スイッチング素子10a並びに10b、及び、ゲート駆動回路11a並びに11bなどを備える。また、コンバータ31には、寄生インダクタンス9が発生するものとする。
【0020】
なお、電気車制御装置30は、
図2が示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、電気車制御装置30から特定の構成が除外されたりしてもよい。
ここでは、電気線1側を上流とし、帰線14側を下流とする。
【0021】
遮断器3は、集電器2に接続する。遮断器3は、制御論理回路21からの制御に従って、集電器2と電気車制御装置30とを接続又は遮断する。たとえば、電気線1と帰線14とが短絡したことにより短絡電流が生じた場合、遮断器3は、制御論理回路21からの制御に従って集電器2と電気車制御装置30との接続を遮断する。
【0022】
遮断器3の下流には、断流器4が接続されている。断流器4は、制御論理回路21からの制御に従って、集電器2と電気車制御装置30とを接続又は遮断する。
【0023】
断流器4の下流には、充電接触器5及び充電抵抗器6が接続されている。充電接触器5及び充電抵抗器6は、制御論理回路21からの制御によって動作する。
【0024】
充電接触器5及び充電抵抗器6の下流には、鉄芯リアクトル15が接続されている。鉄芯リアクトル15は、内部に鉄芯を有するリアクトルである。鉄芯リアクトル15は、自身のリアクタンスにより短絡電流の上昇を防止する。たとえば、鉄芯リアクトル15は、8mH程度である。
【0025】
鉄芯リアクトル15は、コンバータ31の直流コンデンサ8の一端及びスイッチング素子10aのドレインに接続されている。
【0026】
コンバータ31は、電気線1からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ40に供給する。
【0027】
スイッチング素子10aのゲートは、ゲート駆動回路11aに接続する。即ち、スイッチング素子10aは、ゲート駆動回路11aからの制御に従ってオンオフ制御される。
【0028】
また、スイッチング素子10aのドレイン及びソースは、モータ40に接続する。また、スイッチング素子10aのソースは、スイッチング素子10bのドレインに接続する。たとえば、スイッチング素子10aは、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。
【0029】
即ち、スイッチング素子10aのドレインは、遮断器3、断流器4、充電接触器5、充電抵抗器6及び鉄芯リアクトル15を介して電気線1に接続する。また、スイッチング素子10aのソースは、スイッチング素子10b、接地ブラシ12及び車輪13を介して帰線14に接続する。
【0030】
ゲート駆動回路11aは、制御論理回路21からの制御に従って、スイッチング素子10aをオンオフ制御する。ゲート駆動回路11aがスイッチング素子10aを所定の周期でオンオフ制御することで、直流電圧を交流電圧に変換する。
【0031】
また、ゲート駆動回路11aは、スイッチング素子10aのドレイン及びソースに接続する。ゲート駆動回路11aは、スイッチング素子10aのドレインとソースとの間における電圧に従って電気線1と帰線14との短絡を検知する。ゲート駆動回路11aの短絡の検知については、後に詳述する。
【0032】
スイッチング素子10bのゲートは、ゲート駆動回路11bに接続する。即ち、スイッチング素子10bは、ゲート駆動回路11bからの制御に従ってオンオフ制御される。
【0033】
また、スイッチング素子10bのドレイン及びソースは、モータ40に接続する。また、スイッチング素子10bのソースは、直流コンデンサ8の他端に接続する。また、スイッチング素子10bのソースは、接地ブラシ12及び車輪13を介して帰線14に接続する。たとえば、スイッチング素子10bは、MOSFETである。
【0034】
ゲート駆動回路11bは、制御論理回路21からの制御に従って、ゲート駆動回路11aと反対の位相でスイッチング素子10bをオンオフ制御する。ゲート駆動回路11bがスイッチング素子10bを所定の周期でオンオフ制御することで、直流電圧を交流電圧に変換する。
【0035】
また、ゲート駆動回路11bは、スイッチング素子10bのドレイン及びソースに接続する。ゲート駆動回路11bは、スイッチング素子10bのドレインとソースとの間における電圧に従って電気線1と帰線14との短絡を検知する。
【0036】
即ち、スイッチング素子10bのドレインは、遮断器3、断流器4、充電接触器5、充電抵抗器6、鉄芯リアクトル15及びスイッチング素子10aを介して電気線1に接続する。また、スイッチング素子10bのソースは、接地ブラシ12及び車輪13を介して帰線14に接続する。
【0037】
なお、スイッチング素子10a及び10bは、IGBT(insulated gate bipolar transistor)又はパワートランジスタなどであってもよい。スイッチング素子10a及び10bの構成は、特定の構成に限定されるものではない。
【0038】
次に、ゲート駆動回路11a及び11bにおいて短絡を検知する回路(短絡検知回路)について説明する。ゲート駆動回路11a及び11bは、同様の短絡検知回路を有するため、代表してゲート駆動回路11aの短絡検知回路について説明する。
【0039】
図3は、ゲート駆動回路11aの短絡検知回路の構成例を示す回路図である。
図3が示すように、ゲート駆動回路11aは、増幅器81、比較器82及び閾値入力器83などを備える。
【0040】
ここでは、スイッチング素子10aに導通する電流値に比例して、スイッチング素子10aのドレインとソースとの間において電圧が降下するものとする。
【0041】
ゲート駆動回路11aは、スイッチング素子10aのドレインとソースとの間における電圧降下を検知することで短絡を検知する。
【0042】
増幅器81は、スイッチング素子10aのドレインとソースとの間における電圧(電圧降下)を所定の倍率で増幅する。増幅器81は、増幅された電圧を比較器82に入力する。
【0043】
閾値入力器83は、短絡電流を検知するための閾値を比較器82に入力する。閾値入力器83は、短絡が発生したと判定される電流値(短絡電流閾値)に対応する電圧を比較器82に入力する。
【0044】
比較器82は、増幅器81からの電圧と閾値入力器83からの電圧とを比較する。比較器82は、増幅器81からの電圧が閾値入力器83からの電圧を超えると、短絡を検知したことを示す短絡検知信号84を出力する。
【0045】
ゲート駆動回路11aは、比較器82が短絡検知信号84を出力すると、スイッチング素子10aをオフにする。即ち、ゲート駆動回路11aは、スイッチング素子10aのゲートをオフにする。
【0046】
図4は、ゲート駆動回路11a(又は11b)が短絡を検知した場合においてスイッチング素子10aに流れる電流を示す。
図4では、横軸は、短絡が発生してから経過した時間を示す。また、縦軸は、スイッチング素子10aに流れる電流を示す。
図4では、原点において短絡が発生したものとする。
【0047】
図4は、グラフ51乃至53を示す。
グラフ53は、短絡が発生しスイッチング素子10aがオフになった場合における電流を示す。
【0048】
図4が示すように、グラフ53は、短絡が発生してから時間の経過と共に上昇する。
タイミング61において、電流が短絡電流閾値71に達する。電流が短絡電流閾値71に達すると、ゲート駆動回路11aは、短絡検知信号84を出力する。短絡検知信号84を出力すると、ゲート駆動回路11aは、スイッチング素子10aをオフにする。スイッチング素子10aは、ゲートに入力される信号オフになってから所定の時間(たとえば、10μs程度)が経過したタイミング62においてドレインとソースとの間の接続を切断になる。
【0049】
スイッチング素子10aがオフになると、電流は、下降して0になる。たとえば、電流のピークは、2から3A程度である。
【0050】
グラフ52は、ゲート駆動回路11aが短絡を検知しない場合における電流を示す。グラフ52が示すように、電流が短絡電流閾値71に達した後も上昇し続ける。また、鉄芯リアクトル15が磁気飽和することで、電流は、指数関数的に増加する。
【0051】
グラフ51は、ゲート駆動回路11aが短絡を検知せず、かつ、電気車制御装置30が鉄芯リアクトル15の代わりに空芯リアクトルを備える場合における電流を示す。グラフ51が示すように、電流が短絡電流閾値71に達した後も上昇し続ける。また、空芯リアクトルは、磁気飽和しないため、電流は、時間に比例して増加する。
【0052】
次に、ゲート駆動回路11aの短絡検知回路の変形例について説明する。
図5は、ゲート駆動回路11aの短絡検知回路の変形例を示す回路図である。
図5が示すように、変形例であるゲート駆動回路11a’は、比較器82、積分器85及び閾値入力器86などを備える。
図5が示すように、ゲート駆動回路11a’には、寄生インダクタンス16が発生するものとする。比較器82は、前述の通りである。
【0053】
寄生インダクタンス16には、スイッチング素子10aの電流が流れるものとする。
寄生インダクタンス16に流れる電流は、以下の式で示される。
【0054】
【0055】
ここで、VLは、寄生インダクタンス16に誘起される電圧である。また、LSは、寄生インダクタンス16の値である。iは、寄生インダクタンス16に流れる電流である。
【0056】
積分器85は、寄生インダクタンス16に誘起される電圧を時間で積分する。即ち、積分器85は、電圧を時間で積分することで寄生インダクタンス16に流れる電流を算出する。
【0057】
積分器85は、以下の式に従って電流を算出する。
【0058】
【0059】
積分器85は、算出された電流に対応する電圧(積分結果)を比較器82に入力する。
【0060】
閾値入力器86は、短絡電流を検知するための閾値を比較器82に入力する。閾値入力器86は、短絡が発生したと判定される電流値(短絡電流閾値)に対応する電圧を比較器82に入力する。
【0061】
次に、電気車制御装置30の変形例について説明する。
図6は、電気車制御装置30の変形例を示す回路図である。
図6が示すように、変形例である電気車制御装置30’は、断流器4、充電接触器5、充電抵抗器6、鉄芯リアクトル15、制御論理回路21及びコンバータ31などを備える。
【0062】
電気車制御装置30’は、遮断器3を有しない。
断流器4は、電気線1に接続する。
【0063】
断流器4、充電接触器5、充電抵抗器6、鉄芯リアクトル15、制御論理回路21及びコンバータ31は、前述の通りである。
【0064】
電気車制御装置30’は、ゲート駆動回路11a及び11bにより短絡を検知し電気線1と帰線14との接続を遮断する。そのため、電気車制御装置30’は、遮断器3を有しなくとも、短絡発生時において電気線1と帰線14との接続を遮断することができる。
【0065】
次に、電気車100の従来例について説明する。
図7は、電気車100の従来例を示す。
図7が示すように、従来例である電気車100’は、集電器2、接地ブラシ12、車輪13、電気車制御装置30’’、モータ40及び筐体91などから構成される。
集電器2、接地ブラシ12、車輪13、モータ40及び筐体91は、前述の通りである。
【0066】
電気車制御装置30’’は、鉄芯リアクトル15に代えて空芯リアクトル7を備える。たとえば、空芯リアクトル7は、8mH程度である。
【0067】
また、電気車制御装置30’’は、空芯リアクトル7が発生する磁気をシールドする磁気シールド板92を備える。
電気車制御装置30’’のゲート駆動回路11a及び11bは、短絡検知回路を有しない。そのため、電気車制御装置30’’は、短絡を検知すると、遮断器3を用いて電気線1と帰線14との接続を遮断する。たとえば、電気車制御装置30’’は、スイッチング素子10a又は10bに流れる電流を測定することで短絡を検知する。
【0068】
電気車制御装置30’’の他の構成は、前述の通りであるため説明を省略する。
【0069】
次に、電気車制御装置30’’が短絡を検知した場合においてスイッチング素子10aに流れる電流を示す。
図8は、電気車制御装置30’’において短絡が発生した場合においてスイッチング素子10aに流れる電流を示す。
図8では、横軸は、短絡が発生してから経過した時間を示す。また、縦軸は、スイッチング素子10aに流れる電流を示す。
図8では、原点において短絡が発生したものとする。
【0070】
図8は、グラフ51、52及び54を示す。グラフ51及び52は、前述の通りである。
グラフ54は、短絡が発生し遮断器3がオフになった場合における電流を示す。
【0071】
図8が示すように、グラフ54は、短絡が発生してから時間の経過と共に上昇する。
タイミング61において、電流が短絡電流閾値71に達する。電流が短絡電流閾値71に達すると、電気車制御装置30’’は、遮断器3をオフにする。遮断器3は、電気車制御装置30から接続をオフにする信号を受信してから所定の時間(たとえば、10ms程度)が経過したタイミング62においてオフになる。
【0072】
遮断器3がオフになると、電流は、下降して0になる。たとえば、電流のピークは、数千A程度である。
【0073】
実施形態に係る電気車制御装置は、ゲート駆動回路において短絡を検知してスイッチング素子をオフにする。その結果、電気車制御装置は、従来の電気車制御装置と比較して、短絡が発生してから短い時間で電気線と帰線との接続を遮断する。
よって、電気車制御装置は、短絡電流の増加を抑制することができる。
【0074】
また、電気車制御装置は、スイッチング素子をオフにして電気線と帰線との接続を遮断するため、遮断器を備えなくともよい。
【0075】
また、電気車制御装置は、電気線と帰線との接続を迅速に遮断することでリアクトルに短絡電流が流れる時間を短くすることができる。そのため、電気車制御装置は、鉄芯リアクトルを用いても磁気飽和を防止することができる。
また、電気車制御装置は、鉄芯リアクトルを用いることで磁束の漏れを抑制することができる。よって、電気車制御装置は、磁気シールド板を備えなくともよい。
また、鉄芯リアクトルは、同一のリアクタンスを有する空芯リアクトルよりも小さい。そのため、電気車制御装置は、小型化されることができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1…電気線、2…集電器、3…遮断器、4…断流器、5…充電接触器、6…充電抵抗器、7…空芯リアクトル、8…直流コンデンサ、9…寄生インダクタンス、10a…スイッチング素子、10b…スイッチング素子、11a…ゲート駆動回路、11a’…ゲート駆動回路、11b…ゲート駆動回路、12…接地ブラシ、13…車輪、14…帰線、15…鉄芯リアクトル、16…寄生インダクタンス、21…制御論理回路、30…電気車制御装置、30’…電気車制御装置、30’’…電気車制御装置、31…コンバータ、40…モータ、51…グラフ、52…グラフ、53…グラフ、54…グラフ、61…タイミング、62…タイミング、71…短絡電流閾値、81…増幅器、82…比較器、83…閾値入力器、84…短絡検知信号、85…積分器、86…閾値入力器、91…筐体、92…磁気シールド板、100…電気車、100’…電気車。