(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169240
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】月経カップ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/455 20060101AFI20241128BHJP
A61F 13/24 20060101ALI20241128BHJP
A61F 13/34 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
A61F5/455
A61F13/24
A61F13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086555
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】523198006
【氏名又は名称】峠 ひかり
(71)【出願人】
【識別番号】523198017
【氏名又は名称】古谷 みのり
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】峠 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】古谷 みのり
【テーマコード(参考)】
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200AA15
4C098AA09
4C098CC31
4C098CC37
4C098DD23
(57)【要約】
【課題】取り外しが容易で、かつ使用感に優れた月経カップを提供する。
【解決手段】シリコンゴムから成るカップ本体2及び把持部3で一体成型される。カップ本体2の上端に、上縁部4がカップ本体2の胴部よりも幅広に設けられる。開口部7は略円形状に形成される。上縁部4の厚みはカップ本体2の胴部の厚みよりも大きく設けられる。カップ本体2の内部には収容部2cが設けられ、カップ本体2の上部には通気孔6a及び通気孔6bが設けられる。カップ本体2は、上縁部4から下方に向けやや幅広に設けられた後、細径化するように設けられる。底部2dは平面視において、開口部7の略中央ではなく、右側面部2a側に偏心して設けられる。把持部3は、端部3aから端部3bにかけて径が次第に小さくなるように形成され、端部3a及び端部3bおいてカップ本体2と接合される。カップ本体2は、外周面の一部に人魚のヒレを模した装飾部8aを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する合成樹脂から成り、女性の膣内に挿入して使用する月経カップであって、
略円形状の上縁部と、液体の収容部を内側に備えるカップ本体と、
カップ本体に接合された把持部、
を備え、
前記収容部の底部は、前記上縁部に対して偏心して設けられ、
前記把持部の一端は、前記底部に接合され、
前記把持部の他端は、湾曲して、把持部自体若しくは前記収容部の側周面に接合されたことを特徴とする月経カップ。
【請求項2】
前記把持部の径は、前記把持部の前記一端から前記他端にかけて次第に細くなるように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の月経カップ。
【請求項3】
前記把持部と前記カップ本体により、又は、前記把持部により、形成された略リング状の間隙の正面形状は、少なくとも直径13mm以上の円形状よりも大きい面積を有することを特徴とする請求項1に記載の月経カップ。
【請求項4】
前記把持部は、平面視において、前記上縁部の略円形状の輪郭からはみ出さないように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の月経カップ。
【請求項5】
前記カップ本体は、外周面の一部に凹凸形状の装飾部を有し、前記カップ本体及び前記把持部と相俟って所定のモチーフを表したことを特徴とする請求項1に記載の月経カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の生理用品に関し、特に、女性の膣内に挿入して使用する月経カップ(生理カップ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、釣鐘型の月経カップが多く利用されている(例えば、特許文献1を参照。)。一般に月経カップとは、月経期間中に女性の体内(膣内)に挿入して月経出血を集めるカップ状の用具であり、煮沸消毒することにより、繰り返し利用できるものである。
月経カップの底部には、特許文献1に示すように、つまみのような突起状の把持部が設けられるのが一般的であるが、カップの取り出しの際に把持部を引っ張って取り出そうとすると、カップと膣壁の間に形成されるシールに起因して、ユーザに不快な吸引力を与えることになるという問題がある。
そこで、特許文献1の月経用カップでは、把持部としてのつまみ部は、あくまでも月経用カップを膣内に装着した際に、カップの位置を確認するための部位に過ぎず、カップの取り出しは、胴体部を指でつまみながら、ゆっくりと月経用カップを引き抜く運用とされている。
しかしながら、カップ本体を摘まみながら膣内から取り出すと、取り出しの際に経血がカップから漏出するという問題がある。
【0003】
カップの取り外しを容易にする技術としては、複数の非凸状の把持表面を含む月経カップが知られている(特許文献2を参照)。特許文献2の月経カップでは、把持部ではなくカップ本体に凹凸を形成することで取り外しを容易にするが、取り外しの際にカップ本体を把持するため、取り出しの際に経血がカップから漏出するという問題は解決できていない。
【0004】
月経カップの取り外しの際にカップ本体を把持するのではなく、把持部を把持する技術としては、把持部の側面に窪みが形成された生理用具(月経カップ)が知られている(特許文献3を参照)。しかしながら、月経カップの取り外しはユーザが手探りで行う必要があり、そのためにはより把持しやすい形状である必要があるが、特許文献3の生理用具では、カップ本体の下端を下方に延伸させてなる把持部の一部に窪みを設けるものであるため、滑り止め機構としては不十分であるという問題がある。
なお、特許文献3の生理用具においては、把持部は、その下端側が開口部の成す傾斜の低い側に向かって湾曲した形状に形成されているが、これは膣内への挿入を容易にする機構に過ぎない。
【0005】
月経カップの取り外しの際に、把持部を把持し易くする技術として、リング状の取っ手が設けられた月経カップが知られている(非特許文献1を参照)。しかしながら、非特許文献1の月経カップに設けられたリング状の取っ手は、ヒトの指を挿通できる径を有していないため、指を引っ掛けることができず、把持しづらいという問題がある。また、取っ手の位置が、カップ本体の底面の略中央に設けられるため、リング状の取っ手を下方に引っ張ってカップを取り出そうとすると、カップと膣壁の間に形成されるシールに起因して、ユーザに不快な吸引力を与えることになる。そこで、非特許文献1の月経カップでは、月経カップの取り外しの際は、リングではなく、カップの底をつまみ空気を入れて膣から引き出すとするが、それではやはり取り出しの際に経血がカップから漏出するという問題がある。
【0006】
カップの取り出しの際に、カップの上縁部が膣壁を圧迫し、ユーザに不快な吸引力を与えることを防止する技術として、カップ本体の上部に接続され、カップの底部を通した開放空洞を通して延在する、茎部デバイスを有する月経カップが知られている(特許文献4を参照)。特許文献4の月経カップでは、カップの取り出しの際に、下方から茎部を引動することによって、カップの上方の領域と下方の領域との間の空気のための導管を作成し、カップの除去を促進するものである。したがって、特許文献1などのように、カップ本体をつまんで膣壁と上縁部の間に間隙を生ぜしめる必要がなく、経血漏出のリスクを最小限に留めることができる。
しかしながら、特許文献4の月経カップでは、茎部がカップの底部のシール6を通過するように設けられるため、漏出を防止する機構が必要となり、作製コストが高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-118006号公報
【特許文献2】特表2018-522700号公報
【特許文献3】特開2018-089376号公報
【特許文献4】特表2020-534119号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“ソフィ ソフトカップ|月経カップ-生理用品のソフィ”(https://www.sofy.jp/ja/products/softcup.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる状況に鑑みて、本発明は、取り外しが容易で、かつ使用感に優れた月経カップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の月経カップは、弾性を有する合成樹脂から成り、女性の膣内に挿入して使用する月経カップであって、略円形状の上縁部と、液体の収容部を内側に備えるカップ本体と、カップ本体に接合された把持部を備え、収容部の底部は、上縁部に対して偏心して設けられ、把持部の一端は、底部に接合され、把持部の他端は、湾曲して、把持部自体若しくは収容部の側周面に接合される。
収容部の底部が上縁部に対して偏心して設けられ、当該底部に把持部の一端が接合されることにより、把持部を把持して下方に引っ張り取り出す際に、まず上縁部と膣壁の当接部の一部の当接状態が解除され、間隙が生じる。これにより、ユーザに不快な吸引力を与えることを防止できる。
また、把持部の他端が湾曲して、把持部自体若しくは収容部の側周面に接合されることにより、リング状の間隙が形成されて把持し易くなり、利便性が向上する。カップ本体ではなく、把持部を把持して月経カップを取り出すことができるため、取り出しの際に経血がカップから漏出し難い構造となっている。
弾性を有する合成樹脂としては、耐熱性・耐久性に優れていて、かつ人体への安全性の高いシリコン(Silicone)ゴムが好適に用いられる。シリコンゴムとは、シリコーン樹脂(シリコーンを主成分とする合成樹脂)の内、ゴム状のものを指す。
【0011】
本発明の月経カップにおいて、把持部の径は、把持部の一端から他端にかけて次第に細くなるように設けられたことが好ましい。これにより、ユーザが把持部を把持した際に、把持部の向き、すなわち何れの端部が底部に接合され、また何れの端部が把持部自体若しくは収容部の側周面に接合されたかを容易に察知でき、取り外しの利便性が向上する。
【0012】
本発明の月経カップは、把持部とカップ本体により、又は、把持部により、形成された略リング状の間隙の正面形状は、少なくとも直径13mm以上の円形状よりも大きい面積を有することが好ましく、より好ましくは直径16mm以上である。かかるサイズの間隙が設けられることにより、ユーザの指を間隙に挿通させて、把持部を摘まむことができ、取り外しが容易となる。
【0013】
本発明の月経カップにおいて、把持部は、平面視において、上縁部の略円形状の輪郭からはみ出さないように設けられたことが好ましい。これにより、装着時にカップ本体や把持部が膣壁に干渉し難くなり、使用感が向上する。
【0014】
本発明の月経カップにおいて、カップ本体は、外周面の一部に凹凸形状の装飾部を有し、カップ本体及び把持部と相俟って所定のモチーフを表したことが好ましい。別部材を取り付けるのではなく、装飾部が凹凸形状で形成されることにより、低コストで多彩な装飾を施すことが可能となる。例えば、カップ本体と把持部の他端の接合部に人魚のヒレを模した装飾を施すことで、カップ本体で人魚の腰部を、次第に細径化する把持部を用いて人魚の尻尾をそれぞれ表現し、全体として、人魚の下半身のモチーフを表したかのような外観形状とすることができる。これにより無機質な外観を呈しがちな生理用具において、ユーザの心を和ませるような審美性の高いデザインを実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の月経カップによれば、取り外しが容易で、かつ使用感に優れているといった効果がある。また、本発明の月経カップは、その本体の外周面に装飾部を有することで、カップ本体及び把持部と相俟って所定のモチーフを表し、審美性を向上させるといった効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例0018】
図1~5は第一の実施形態の月経カップの外観図であり、
図1は外観斜視図、
図2は正面図、
図3は背面図、
図4(1)は右側面図、
図4(2)は左側面図、
図5(1)は平面図、
図5(2)は底面図を示している。また、
図6は、第一の実施形態の月経カップの断面イメージ図であり、
図5(1)のA-A断面図を示している。
図1に示すように、月経カップ1は、カップ本体2及び把持部3で構成される。カップ本体2及び把持部3は何れもシリコンゴムから成り、一体成型されている。シリコンゴムについては、FDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)認証済みのシリコンゴムを使用している。
図2~4に示すように、カップ本体2の上端には、上縁部4がカップ本体2の胴部よりも幅広に設けられる。
図5(1)に示すように、開口部7は、上縁部4により略円形状に形成される。
図6に示すように、上縁部4の厚みをカップ本体2の厚みよりも大きく設けることで、取付け時において膣壁9(
図7(1)参照)に対して安定的に固定できる。
カップ本体2の内部には収容部2cが設けられ、略25mlの液体(経血)を収容できる。カップ本体2の上部には通気孔(6a~6d)が設けられる。通気孔(6a~6d)は、径が小さく、またカップ本体2の上部に設けられることで、収容部2cに収容された経血(図示せず)が漏出し難い構造となっている。
【0019】
図2又は
図3に示すように、カップ本体2は、上縁部4から下方に向けて、やや幅広に設けられた後、細径化するように設けられる。また、
図5又は
図6に示すように、底部2dは平面視において、開口部7の略中央ではなく、右側面部2a側に偏心して設けられる。
【0020】
把持部3は、端部3aから端部3bにかけて径が次第に小さくなるように形成され、端部(3a,3b)おいてカップ本体2と接合される。具体的には、接合部5aにおいて、カップ本体2の底部2dと端部3aが接合され、接合部5bにおいて、カップ本体2の左側面部2bと端部3bが接合される。なお、本明細書においては説明の便宜上、接合部(5a,5b)を図示しているが、実際の製品においては表示されず、したがって例えば接合部5aはシームレスな外観を呈する。
図2に示すように、把持部3がカップ本体2と接合されることにより形成された間隙10aは、一般的なヒトの指が挿通し得る径を有するように設けられ、径φ
3は16mm以上であることが好ましい。これにより、ユーザ(図示せず)は、自身の指を把持部3に係合させてしっかりと把持できる。
なお、本実施例では、月経カップ1はカップ本体2と把持部3を一体成型して作製しているが、例えば、カップ本体2と把持部3を別々に成形したのち、溶融接着や、接着剤により接合してもよい。
図2に示すように、カップ本体2及び把持部3の最大径φ
2は、上縁部4の外径φ
1よりも小さくなるように設けられる。これにより、カップ本体2や把持部3が膣壁に干渉し難くなり、使用感が向上する。
【0021】
ここで、月経カップ1の使用方法について説明する。
図7は、第一の実施形態の月経カップの使用イメージ図であり、(1)は取り外し前、(2)は取り外し後の状態を示している。
まず、月経カップ1を女性の膣内に挿入する方法については、公知の月経カップと同様であり、上縁部4の一端を内側へ折り曲げて畳み、膣内へ挿入する。
これに対して、月経カップ1を取り出す際には、
図7(1)に示すように、把持部3を把持して、端部3a側を矢印11aに示すように下方に引っ張ることで、
図7(2)に示すように、上縁部4が矢印11bに示す方向に引っ張られる。その結果、上縁部4と膣壁9の間に間隙10bが生じ、これにより上縁部4と膣壁9の固定状態が解除され、取り出される。
【0022】
このように月経カップ1を取り出す際には、ユーザは手探りで把持部3の端部3a側と端部3b側を判別する必要があるため、判別方法について説明する。
図6に示すように、把持部3は端部3a側から端部3b側へ向けて径が小さくなるように設けられるため、例えば、ユーザが把持部3の部位P
1又はP
2を把持すると、部位P
1を把持した際の厚みT
1よりも、部位P
2を把持した際の厚みT
2の方が小さいことが容易に分かる。これにより、何れの方向が端部3aであり、何れの方向が端部3b側であるかが、容易に察知できる構造である。
月経カップ1の取り出し後は、公知の月経カップと同様に90℃以上の熱湯で10分程度、煮沸消毒を行う。なお、煮沸消毒は使用前後に行うことが好ましい。
【0023】
図2、
図3、及び
図4(2)に示すように、カップ本体2は、外周面の一部に人魚のヒレを模した装飾部(8a,8b)を有する。これにより、カップ本体2が人魚の腰部、把持部3が尻尾部をそれぞれ表現したものとなり、カップ本体及び把持部と相俟って、あたかも人魚の下半身のモチーフを表したかのような外観形状とでき、審美性の高いデザインとすることができる。
【0024】
図8は第一の実施形態の月経カップの外観斜視図を示しており、
図1に相当する。また
図9は、第一の実施形態の月経カップの六面図(形状を線図で現したもの)を示す。
図9(1)は正面図を示しており、
図2に相当する。
図9(2)は背面図を示しており、
図3に相当する。
図9(3)は右側面図を示しており、
図4(1)に相当する。
図9(4)は左側面図を示しており、
図4(2)に相当する。
図9(5)は平面図を示しており、
図5(1)に相当する。また
図9(6)は底面図を示しており、
図5(2)に相当する。