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特開2024-169252樹脂成形体表面の立体QRコードと樹脂成形金型及びその製造方法
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  • 特開-樹脂成形体表面の立体QRコードと樹脂成形金型及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169252
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】樹脂成形体表面の立体QRコードと樹脂成形金型及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20241128BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20241128BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20241128BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20241128BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20241128BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241128BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B29C33/38
B22F1/102
B22F3/02 L
B22F3/24 B
B22F5/00 F
B33Y10/00
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023096561
(22)【出願日】2023-05-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】595109708
【氏名又は名称】ナパック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 政毅
(72)【発明者】
【氏名】遠山 将樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆
【テーマコード(参考)】
4F202
4K018
【Fターム(参考)】
4F202AA13
4F202AF01
4F202AF16
4F202AJ02
4F202AJ03
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD03
4F202CD05
4F202CD30
4F202CK28
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA13
4K018AA14
4K018AA19
4K018AA21
4K018AA24
4K018AA33
4K018AA40
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA07
4K018BA08
4K018BA09
4K018BA10
4K018BA13
4K018BA17
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC29
4K018BC30
4K018CA02
4K018CA09
4K018CA11
4K018FA08
4K018KA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂成形体表面の立体QRコード造形のための樹脂成形金型及びその製造方法を提供する。
【解決手段】所定の粒径とした金属粉末の表面をカップリング剤により被覆する表面処理工程と、熱硬化性樹脂と前記表面処理された金属粉末を混合固化後解砕分級した金属樹脂複合粉末を得る工程と、更に三次元造形装置を用いて三次元データに基づいたQRコードパターンを転写した樹脂成形品形状の凸型を作成する工程と、ダイス内の下ポンチ上に設置された凸型金型上部空間に金属樹脂複合粉末を投入し樹脂成分が可塑状態となるBステージ温度まで加熱して上ポンチ共々圧縮成形する工程を経て、微細面積セルの凹凸集合体としての立体QRコードを形成し、前記金型内で冷却固化され離型後に前記熱硬化性樹脂の硬化温度雰囲気下で硬化させる工程により得られる刻印ブロックが形成された樹脂成形凹金型の製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体表面に微細面積セルサイズの凹凸集合体として造形された立体QRコードセル及びセルパターンの造形部に対応する刻印ブロックを組み込んだ樹脂成形金型とその製造方法。
【請求項2】
QRコードセルパターンと同一パターンの刻印ブロック表面形状を成す凸型を三次元造形設備で作成し、得られた凸型をマスターモデルとして転写された凹型金型を金属樹脂複合粉末の圧縮成形と硬化による工程で製造した請求項1に記載した樹脂成形金型及びその製造方法。
【請求項3】
所定の粒径とした金属粉末の表面をカップリング剤により被覆する表面処理工程と、可塑化した熱硬化性樹脂と前記表面処理された金属粉末を混合固化後、解砕分級して得られた金属樹脂複合粉末を凸型金型に投入し、樹脂成分が可塑状態となるBステージ温度まで加熱して圧縮成形した後、前記金型内で冷却固化され、離型後に前記熱硬化性樹脂の硬化温度雰囲気下で硬化させた請求項1に記載した樹脂成形金型及びその製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂成形面に微細面積セルの凹凸集合体として立体的に造形されたQRコードと、三次元積層造形法と圧縮成形技術を活用し金属樹脂複合粉末を用いてQRコード刻印の為のブロックを形成した樹脂成形金型と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品に生産管理上の各種情報等を表記する手段としてはバーコードやQRコードが成形後に別工程として成形体表面に印刷するか印刷されたラベルを張り付けたりして用いられている。
更に、数多くの管理情報を表記する必要からバーコードでは限界が有りQRコードの表示が増加している。
【0003】
これ等従来の方法では成形後に別工程として専用設備の導入や工数を増やす事になり、更に直接印刷した場合や印刷したラベルを張り付けた何れにおいても環境の変化により、インクや被印刷材料によっては表示を長期的に継続する事に限界がある。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-136666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような製品の仕様や取り扱い上の注意事項或いは型式等の各種情報を表記する手段としては組み立て工程において各種情報を表示するラベルがバーコードとして印刷されて製品の限られた位置に張り付けられている。
又、情報量の増加や製品部位の形状や貼り付け位置面積の制約に応じてQRコードとして印刷されたラベルの張り付けが追加の作業になり作業工数増となる。
【0006】
本発明の目的とするところは成形工程において樹脂成形体の限られた面積内に多くの情報量を提示する事が可能な微細面積のセル凹凸集合体としてのQRコードセルを成形時に直接造形する事で、手作業としてのラベル貼り付け作業を削除する事であり、通常の射出成形金型では加工が困難な微細面積セルの凹凸集合体としてのQRコードパターンを刻印ブロックとして組み込んだ樹脂成形金型とその製造方法を提供するものである。
【0007】
QRコードの様式は記載情報量と誤り訂正レベルによってセルサイズとセル数(バージョン)が選択され、一般的な印刷方式のバージョン1に於けるセルサイズは0.6mm前後でファインダーパターン両端間寸法は13mm角であり、セルのサイズを更に小さくすればバージョンを大きく出来、記載情報量を増大する事が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の樹脂成形金型は、所定の粒径とした金属粉末の表面をカップリング剤により被覆する表面処理工程と、熱硬化性樹脂と前記表面処理された金属粉末を混合固化後解砕分級した金属樹脂複合粉末を得る工程と、更に三次元造形装置を用いて三次元データに基づいたQRコードパターンを転写した樹脂成形品形状の凸型を作成する工程と、ダイス内の下ポンチ上に設置された凸型金型上部空間に金属樹脂複合粉末を投入し樹脂成分が可塑状態となるBステージ温度まで加熱して上ポンチ共々圧縮成形する工程を経て、微細面積セルの凹凸集合体としての立体QRコードを形成し、前記金型内で冷却固化され離型後に前記熱硬化性樹脂の硬化温度雰囲気下で硬化させる工程により得られる刻印ブロックが形成された樹脂成形凹金型の製造方法を提供するものである。
【0009】
微細面積セルサイズの凹凸集合体として造形される立体QRコードセルを形成する凸型加工に使用される三次元造形装置は、光硬化性樹脂を光硬化させ積層する方式や、溶融樹脂を積層・冷却して成形品形状を造形する方式が用いられる。
【0010】
三次元造形装置で作成されたQRコードセルを形成する凸型を用いて作成される樹脂成形凹金型は樹脂成形時に於ける強度と熱伝導性を確保する為に、所定の粒径とした金属粉末の表面をカップリング剤により被覆する表面処理工程と、Bステージ(半硬化状態)を経て最終的に硬化状態となる特性を有する熱硬化性樹脂と前記表面処理された金属粉末を復合固化後解砕分級する工程、を経て得られた金属樹脂複合粉末を使用する。
【0011】
金属粉末は、鉄、アルミニウム、タングステン、ステンレス、チタン、亜鉛、すず、銅、鉛、マグネシウム、クロム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブテン、銀、ネオジウム、白金、金、サマリウムから選ばれる1以上の金属を含むこととしても良い。
上記金属は使用目的に応じて還元法、電解法、アトマイズ法等によって粒子化され所定の粒度分布となる様に一定粒径の粗紛と微粉が除去され、一般的には最大粒径が105~212μmで管理されている。
【0012】
本発明の金属粉末は熱硬化金属成形体の結合力向上の為に粒径100μm以上望ましくは63μm以上の粗紛を分級除去し、熱硬化金属成形体を形成する為に配合する熱硬化樹脂との結合力向上の為に分子中に複数の異なった反応基を持つ表面処理剤を用いて表面処理を行なっている。
【0013】
表面処理された金属粉末は成形時に高い流動性を与えて形状再現性と成形後の固化性を高め高密度化構造とする目的で、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂を主成分にアミン系、イソシアネート系硬化剤及び添加材が配合された樹脂成分を20wt%以下の割合で添加混合し、一定の加熱温度で可塑化したペースト状態に於いて混練された複合材を解砕・分級して金属樹脂複合体粉末とする。
【0014】
又は表面処理された金属粉末とエポキシ樹脂やポリエステル樹脂を主成分としアミン系、イソシアネート系硬化剤及び添加材の配合に加えて100℃前後の低温で気化するメチルエチルケトン等の溶剤を加えて均一混合して得られるスラリー状態でドクターブレード等を用いて平板化した湿式混合後、溶剤成分を気化除去して得られる板状固化材を解砕・分級して金属樹脂複合体粉末とする。
【0015】
得られた金属樹脂複合体粉末を下ポンチとダイで構成された空間にセットされた三次元造形装置を用いて微細面積セルサイズの凹凸集合体の立体QRコードセルが造形された凸型上に投入し、Bステージ温度以上で上下ポンチにより低圧加圧成形した後冷却される。
【0016】
加圧成形を行う設備には金型の昇温と冷却を制御する機構が設けられており、金属樹脂複合体粉末が投入された金型が組み込まれて、熱硬化性樹脂が可塑状態(Bステージ領域)になる熱変形温度の上下温度間をコントロールし、上限域で加圧し、下限域で冷却され金型から固化成形体が離型される事が可能な機構を具備する事を特徴とする。
樹脂成形品形状の凹型は加圧成形後に圧縮成形金型からの離型が可能な温度迄冷却されて取り出されるが、自然冷却に加えて強制冷却が可能な機構を具備する事も有効である。
【0017】
加圧成形が行われる上限温度は熱変形温度より10℃以上、硬化開始温度の30℃以下の領域、離型が行われる下限温度は熱変形温度より20℃以下の領域が望ましく金型内で造形される成形品形状や寸法と生産性に応じて決められる。
【0018】
一般の粉末冶金で行われる圧縮成形においては最終焼結強度を高めるため、通常鉄系材料においては5~9トン/cmの高圧力が必要とされるが成形後の強度は非常に小さく、微細凹凸形状の成形は限界があるのに対して本発明工程では2~3トン/cmで成形後の強度は高く、大型プレス機の投入や金型破損への配慮も不要となる。
【0019】
加熱圧縮成形時の熱硬化性樹脂は一旦流動状態で金型内の金属粒子間を流動充填した後、加圧温度域から冷却される間に金属粒子間の結合材となって成形された形状を維持した固化成形体として圧縮成形金型から離型される。
圧縮成形後の熱硬化性樹脂は一旦流動状態温度から冷却固化させる事で金属粒子間の結合材となり成形された形状を維持して圧縮成形金型から離型し、次ステップとして200℃前後の硬化処理を行い凹型として完成する。
【0020】
得られた凹型は可塑化状態で加圧される為に微細面積セルで形成されたQRコードの立体形状が忠実に再現され、凹型を用いて得られた樹脂成形体には通常の金属金型で得られないQRコードセルが立体的に形成された表面状態となり、一般の樹脂成形金型表面への超微細模様や形状加工にも有効な技術である。
【0021】
一般の粉末冶金の成形品においては金属組成に応じて成形後の化学結合を行う為に500℃~1200℃の範囲を4~6時間程度の時間を要する温度プロファイルの焼結が行われるが本発明では樹脂分が接着剤として機能した固化状態で金型から取り出された固化成形体は200℃前後の硬化温度に昇温された恒温槽に10~30分程度静置して樹脂成分が完全硬化後槽外に取り出して冷却後、樹脂成形体にQRコードを造形する目的の硬化した凹型成形体が得られる。
【0022】
本発明の硬化工程で使用される恒温槽はバッチ式の汎用乾燥装置等で成形後の成形体を纏めて投入可能であり、通常の粉末冶金成形に比べ設備金額、設置面積や投入エネルギーも大幅に削減出来、焼結炉での温度プロファイル設定や雰囲気制御も不要となる。
【0023】
本発明工法では所定の粒径とした金属粉末の表面をカップリング剤により被覆する表面処理工程と、熱硬化性樹脂を複合化した工程で得られた金属複合樹脂粉末を三次元造形装置で作成されたQRコードセルを形成する凸型と共に60~130℃程度の温度領域で硬化性樹脂が可塑化され、Bステージ状態で圧縮成形金型内に平方センチメートル当たり2~3トン/cmで加圧し、硬化性樹脂の流動性による造形と、その後の冷却固化による形状維持を行った後に離型を行い、最終的には160~220℃に10~30分の硬化工程を経て成形時に直接成形体表面に立体QRコードセルを造形可能な樹脂成形金型が得られる。
【0024】
得られた微細面積セルサイズの凹凸集合体の立体QRコードセルが造形された硬化反応後の樹脂成形凹型は金属粉粒子間の結着剤として用いた硬化性樹脂により三次元積層造形装置で得られた凸型との転写工程や離型工程に十分耐えられる強度を有し、硬化工程後の樹脂成形金型として使用される際の成形圧力と温度に十分耐えられる強度を有し、温度制御にも有効な特性を有している。
【0025】
通常の樹脂成形に用いられる金属塊を切断切削加工して組み立てられる金型では加工が困難な微細面積ドットの凹凸集合体としてのQRコードを立体的に成形する事はドット寸法を拡大しない限り不可能であり、三次元造形により直接凹型を造形した場合には金属塊を切断切削加工して組み立てられる金型に比べ熱伝導性と機械強度が大幅に劣る為に実用性が得られない。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、金属粉末とBステージを経て最終的には熱硬化成形体となる硬化性樹脂微粒子を複合化し、三次元造形により得られた凸型造形物を介し、Bステージ前後の加熱と冷却機構を具備した加熱圧縮成形設備、及び恒温槽を使用して微細セルの集合体であるQRコードが凹凸部として転写された樹脂成形金型として形成し、樹脂成形体表面に直接立体QRコードとして造形が可能となり、更に一般の樹脂成形金型表面への超微細模様や形状加工された成形体が得られる樹脂成形金型を、大幅なコスト低減と短期間で提供することが可能となる。
更に、微細面積セルサイズの凹凸集合体の立体QRコードセル造形のみならず、樹脂金型表面面に施工される特殊模様のシボ加工金型への転用も容易に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る金属樹脂複合粉末の製造方法工程図である
図2】本発明の実施形態に係るCADデータを基に三次元造形技術で造形されたQRコード凸型を介して行う樹脂成形凹型金型の製造方法工程図である
図3】本発明の実施形態に係るCADデータを基に三次元造形技術で造形された立体QRコードを含む凸型の実施例写真である
図4】本発明の実施形態に係る金属樹脂複合粉末を用いQRコードを含む凸型を介して成形、硬化して得られたQRコードが転写された樹脂成形凹型の実施例写真である
図5】本発明の実施形態に係る樹脂成形用QRコードを含む凹型を用いて射出成形された樹脂成形体の実施例写真である
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施の形態にについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る金属樹脂複合粉末の製造方法工程図である。
先ず、微細形状の成形に適合する為に篩等を用いて粗紛をカットして所定の粒径とした金属粉末の表面を複合化される樹脂との結合性を高める為にカップリング剤により被覆する表面処理工程と、前記表面処理された金属粉末と熱硬化性樹脂の二成分を複合化した後、解砕分級して図2に示す工程で使用する金属樹脂複合粉末とするものである。
【0029】
図2は三次元造形装置を用い三次元データに基づいてQRコードパターンを転写した凸型を作成し、ダイス内の下ポンチ上に設置された凸型金型上部空間に図1で得られた金属樹脂複合粉末を投入し樹脂成分が可塑状態となるBステージ温度まで加熱して上ポンチ共々圧縮成形する工程を経て、微細面積セルの凹凸集合体としての立体QRコードを形成し、前記金型内で冷却固化され離型後に前記熱硬化性樹脂の硬化温度雰囲気下で硬化させる工程により得られる刻印ブロックが形成された樹脂成形凹金型の製造方法を提供するものである。
【0030】
図3は本発明の図1で示される工程を経て得られた金属樹脂複合粉末と図2で示された3DCADデータを基に三次元造形技術で造形された立体QRコード造形部を含んで得られた凸型の実施例写真である
【0031】
図4図2で示された3DCADデータを基に三次元造形技術で造形された立体QRコード凸型と金属樹脂複合粉末を用いて樹脂成分が可塑状態となるBステージ温度まで加熱して上ポンチ共々圧縮成形する工程を経て、冷却固化され離型後に前記熱硬化性樹脂の硬化温度雰囲気下で硬化させる工程により得られた樹脂成形凹金型の実施例写真である。
【0032】
図5図4に示した樹脂成形凹型を射出成形機に装着して射出成形された樹脂成形体の実施例写真である
【0033】
(本実施の形態によって得られる主な効果)
本実施の形態では、分子中に2個以上の異なった反応基を有するカップリング剤を用いて表面処理をした金属粉末と特定の温度域(Bステージ)で可塑化して金属粉末の流動性を高める熱硬化性樹脂を結着剤とする所定の粒径以上の粗粉がカットされた金属樹脂複合体粉末を生産し、三次元造形装置を用いて造形し圧縮成形装置に装着した凸型金型空間に投入して加熱加圧成形後に続いて行う硬化工程により、立体QRコードセル及びセルパターンの凹型を得て樹脂成形品の表面に直接立体QRコードセルを造形する事が特別な設備、高エネルギーを使用せずに可能である。
【0034】
表面処理が為された金属粉末はBステージを有する熱硬化性樹脂の可塑化状態でのペースト混錬や溶剤を用いた湿式混合シート化法等で予め複合化され、解砕後粗紛をカットした粉末として圧縮成形工程に投入され、成形時の高流動性で金型内の微細凹凸形状を転写し、金型からの離型時に余裕ある強度を持ち、最終の熱硬化を経た射出成形用金型として十分な強度と通常の金属金型とほぼ同等の熱伝導性を有する樹脂成形用金型を得ることが出来る。
【0035】
金属粉末と複合化された熱硬化樹脂の可塑化された温度域で圧縮成形を行う際の圧力は2~3トン/cmと低圧で成形が可能であるのに対して、通常の粉末冶製造の場合には多くの潤滑剤を添加し、5~7トン/cmが一般的であり、更に大きな圧力を加える事には設備的にも金型強度から限界があり、微細面積セルの凹凸集合体としての立体QRコードはじめ微細面積の造形体を形成する事は成形後の未焼結状態では強度不足の為、成形形状を維持した離型が不可能である。
【0036】
また、本実施の形態では、圧縮成形時の加熱温度は熱硬化性微の可塑化温度に応じて60~130℃の範囲とすることが可能であって成形・冷却後の最終硬化温度は160~220℃であり、10~30分前後静置すれば良く、本実施の形態では通常の乾燥器等小型設備が使用出来、大掛かりな焼結炉等が不可欠な粉末冶金工程に比べてエネルギーコストを大幅に低減する事が可能で脱炭素的にも大きく貢献する。
又、粉末冶金に於ける焼結収縮率に比べ収縮が小さく、寸法精度も向上する事が出来る。
【0037】
また、本実施の形態では、三次元積層造形法により得られた微細面積セルの凹凸集合体である立体QRコードが造形された凸型は、わずか1~2日で設計、製造が可能であり、更にこれを用いて粉末成形と硬化工程により得られる凹型も同様な日数で製造出来、入れ子として金型ベースに取り付けてなる樹脂成形用金型は格段に短日程、安価に樹脂成形金型を提供出来る。
【0038】
(他の形態)
上述した本実施形態の樹脂成形金型の製造法は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0039】
熱硬化成形体を形成する為の熱硬化性樹脂との結合力向上の為に金属粉末に行う表面処理剤としてチタネート系、シラン系や酸化グラフェン等の処理剤処理剤を使用する事が可能である。
【0040】
金属粉末に添加するBステージを有する熱硬化性樹脂は可塑化温度が90℃前後であり硬化温度が200℃前後であることが望ましい。
【0041】
また、本実施の形態では、乾式混合や湿式混合の後に解砕・分級されてなる金属樹脂複合体粉末をダイス内の下ポンチ上に設置された立体QRコードが造形された凸型金型上部空間に投入し圧縮するが圧縮成形時の圧力は2~3トン/cmである。しかし、金属粉と添加される熱硬化性微粒子の組み合わせによっては圧縮の圧力は2トン/cm未満であっても良いし、3トン/cmを超えても良い。
【0042】
また、本実施の形態では、可塑化温度が100℃前後であり硬化温度が200℃前後である。しかし、金属粉末と添加される熱硬化性樹脂の組み合わせによってBステージでの圧縮成形時の温度は、熱変形温度より高く出来れば10℃以上、硬化温度より30℃低い領域である事が望ましく、硬化温度に設定された恒温槽に静置する硬化時間は10~30分である。
【0043】
また、立体QRコードが造形された凹型はモジュール化して金属塊を機械加工して製造される一般的な樹脂成形金型の一部に装着される入れ子とする事も可能であり、射出成形用以外の他の成形方法、例えば真空成形、ブロー成形等の成形に対して、本実施の形態を適用することができる。
【実施例0044】
使用した金属粉はアトマイズ法で製造された粉末冶金で一般的に使用される鉄系粒子(ヘガネス社Somaloy:ASC100.29)であり、本発明には粗粉を多く含むが金属粉製造工程で微細化する事は可能である。
【0045】
熱硬化性樹脂との結合性を高め、微細面積セルサイズの凹凸集合体として造形された立体QRコードセル及びセルパターンを造形する為の金属粉末への表面処理は63μm以上の粗紛をカットした鉄粉を攪拌混合装置に投入し、混合状態でアルコール希釈されたカップリング剤を滴下し、混合時のせん断熱でアルコールを蒸発させて表面処理を行う。
カップリング処理条件は6500gの鉄粉末をヘンシェルミキサーに投入し、62.5gのエタノール中にチタネート系である味の素社のプレンアクト46B12.5gを溶解した処理液を低速回転滴下して行った。
せん断発熱と混合設備の加熱補助でアルコールを蒸発させる為130℃に45分間回転混合を行った後、40℃迄設備の冷却装置で冷却して排出回収を行った。
【0046】
熱硬化性樹脂は東和合成社のエポキシ系・アミン系硬化剤からなるE-150BK14Sを用いて軟化点以上に加熱したホットプレートを用いてペースト状態として上記チタネート系表面処理後の鉄粉を所定の割合になる迄適量分割添加して混合混錬した後冷却する。
混練温度は熱硬化性樹脂E-150BK14Sの軟化点90℃より40℃高い130℃で行い熱硬化性樹脂の添加割合は鉄粉100に対して8とした。
【0047】
鉄粉と熱硬化性樹脂の結合性を高める為にペースト状態での混合混錬によって複合化され冷却後、微細面積セルサイズの凹凸集合体として造形された立体QRコードセル及びセルパターンを造形する為に室温で粉砕装置を用いて解砕し63μmの篩を用いて粗紛をカットして元の鉄粉粒径と同等な粒径とした。
【0048】
一方、微細面積セルサイズの凹凸集合体として造形された立体QRコードセル及びセルパターンに加えて微細模様を想定したシボ加工を造形する為に、成形体形状の三次元CADデータを作成する。得られたCADデータを基に三次元造形装置を用い三次元データに基づいてQRコードパターン及び複数の微細模様を転写した凸型を作成した。
用いた三次元造形装置はfomlabs-Form3で使用材料はRigid 10K Resinを用いて積層ピッチ0.025mmで行った。
図3として示す写真が三次元造形技術で造形された立体QRコードを含む凸型である。
【0049】
ダイス内の下ポンチ上に設置された凸型金型上部空間に金属樹脂複合粉末を投入し樹脂成分が可塑状態となるBステージ温度域の140℃に昇温後、2.5トン/cmで圧縮成形を行い金型内で冷却降温した後、離型して200℃の恒温槽に20分間静置して完全硬化した樹脂成形用凹型を作成した。
恒温槽は一般的な設備で、粉末冶金工程での焼結炉に比べて簡便な設備で熱エネルギーも大幅に削減される。
図4として示す写真は立体QRコード等が造形された凸型と金属樹脂複合粉末を用いて得られた樹脂成形凹金型である。
【0050】
得られた凹金型は射出成形後に金型を開いて樹脂成形体を取り出すための突き出しピンガイド穴加工を行い、樹脂成形金型ベースに入れ子として装着され、成形機BabyPlast6t/12に取り付けられ、成形作業を行った。
成形樹脂はABSペレットを使用し、冷却時間20秒て行い、得られた樹脂成形体を図5として示す。
【0051】
図5に示した立体QRコードはスマートフォンのQRコードリーダーにより、記載情報が読み取れる事を確認した。
図1
図2
図3
図4
図5