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特開2024-169259発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法
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  • 特開-発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169259
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/06 20060101AFI20241128BHJP
   D06N 3/08 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
D06N3/06
D06N3/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122205
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】112119005
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】鄭 維昇
(72)【発明者】
【氏名】呉 朝棟
【テーマコード(参考)】
4F055
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA12
4F055BA13
4F055EA22
4F055EA24
4F055FA08
4F055FA15
4F055FA39
4F055FA40
4F055GA03
4F055GA31
4F055HA18
(57)【要約】
【課題】本発明は、ベース層とこのベース層に直接に形成された表地層とを含む発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
表地層の表面からベース層に延びるように、表地組成物で形成された実体構造が形成されている。表地組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂、重量平均分子量が1,500~6,000である高分子可塑剤及びグラフェン材料を含む。高分子可塑剤の分子構造には、直鎖状のソフトセグメントを含む。ソフトセグメントは、エーテル基を含有する。エーテル基を含有するソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層と、
前記ベース層に直接に形成された表地層とを含む、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革であって、
前記表地層の前記ベース層から離れた表面から前記ベース層に延びるように表地組成物で形成された実体構造が形成され、
前記表地組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂30重量部~60重量部と1,500~6,000である第1の重量平均分子量を有する高分子可塑剤30重量部~60重量部とグラフェン材料0.01重量部~5重量部とを含み、
前記高分子可塑剤の分子構造には、少なくとも一つの直鎖状のソフトセグメントを含み、
前記ソフトセグメントは、エーテル基を含有し、
前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの前記高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、
前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVであることを特徴とする、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革。
【請求項2】
前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの前記高分子可塑剤での濃度は、20wt%~40wt%であり、
前記ソフトセグメントが、ジエチレングリコールで構成され、
前記表地組成物は、ポリエチレングリコール分散剤が含まれていない、請求項1に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革。
【請求項3】
前記グラフェン材料は、膨張グラフェン(Expanded Graphene,EG)及び酸化グラフェン(Graphene Oxide)の少なくとも一つである、請求項1に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革。
【請求項4】
前記表地組成物は、加工助剤15重量部以下と安定剤0.5重量部~5重量部と充填剤0重量部~15重量部と難燃剤2重量部~8重量部とを更に含む、請求項1に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革。
【請求項5】
前記加工助剤は、直鎖状の脂肪族二塩基酸エステルであり、
前記加工助剤は、300~800である第2の重量平均分子量を有し、
前記表地組成物は、発泡剤が含まれていない、請求項4に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革。
【請求項6】
グラフェン材料及び高分子可塑剤を混合することで第1の混合材料を得て、前記第1の混合材料及びポリ塩化ビニル樹脂を混合することで第2の混合材料を得て、前記第2の混合材料を圧延及び分散させることによって、グラフェンプレミックスシート材料を得ることと、
前記グラフェンプレミックスシート材料、追加の前記ポリ塩化ビニル樹脂及び追加の前記高分子可塑剤を更に混合することで、表地組成物を得ることと、
前記表地組成物を混合及び高温溶融を行うと共に、圧延させて表地層を形成した後に、前記表地層を更にベース層に貼り合わせることと、を含み、
前記高分子可塑剤の分子構造には、少なくとも一つの直鎖状のソフトセグメントを含み、
前記ソフトセグメントは、エーテル基を含有し、
前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、
前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVであることを特徴とする、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法。
【請求項7】
前記グラフェンプレミックスシート材料において、前記グラフェン材料の含有量は、5wt%~15wt%であり、
前記高分子可塑剤の含有量は、30wt%~50wt%であり、
前記ポリ塩化ビニル樹脂の含有量は、40wt%~60wt%である、請求項6に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法。
【請求項8】
前記表地組成物の総重量を100重量部として、
ポリ塩化ビニル樹脂の使用量は、30重量部~60重量部であり、
前記高分子可塑剤の使用量は、30重量部~60重量部であり、
前記グラフェン材料の使用量は、0.01重量部~5重量部である、請求項6に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法。
【請求項9】
前記グラフェン材料及び高分子可塑剤は、超音波振動器のウォーターバス環境において、15分~45分の振動時間で振動され、
前記超音波振動器のウォーターバス温度は、40℃~60℃に制御される、請求項6に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法。
【請求項10】
前記表地層の表面に水性ポリウレタン系処理剤を塗布・乾燥することによって、表面処理層を形成して、ポリ塩化ビニル系人工皮革の製造を完成することを更に含む、請求項6に記載の発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル系人工皮革に関し、特に、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、人工皮革の生産や開発において主要な原材料であり、自動車の内装に広く使用されている。
重合度の高いポリ塩化ビニルは、溶融温度が高く、そのメルトの流動性が低いため、加工し難いという問題がある。
【0003】
ポリ塩化ビニルのメルトの流動性を改善して、加工温度を低くし、生産加工を容易にするために、ポリ塩化ビニル材料に可塑剤を添加する必要がある。
しかし、従来の技術で使用されたフタル酸系可塑剤は、刺激臭を放出することがあり、また、発泡剤などの他の添加剤をポリ塩化ビニル加工過程に添加すると、刺激臭が放出されることがある。
【0004】
また、人工皮革の表面特性を改善するため、通常、合成皮革の表面が表面処理が施される。
既存の表面処理方法は、主に、溶剤型の表面処理剤が使用されているが、溶剤型の表面処理剤には臭気指数が高いという問題がある。
既存の表面処理を施した人工皮革は、一般的な自動車臭気試験方法であるPV3900C3に基づいて測定された臭いレベルが、4.0以上となり、使用者の快適性に大きな影響する。
さらに、従来の技術のポリ塩化ビニル系人工皮革(PVC人工皮革とも呼ばれる)には、通常、緻密的な表地層とレザーの手触りを提供するための発泡層とが含まれている。
しかし、既存の発泡層が発泡剤で形成された発泡構造であるため、依然として刺激臭を放出することがある。
【0005】
ポリ塩化ビニルに属する人工皮革の技術分野では、車内環境を改善するように、ポリ塩化ビニル系人工皮革の臭いレベルをさらに低減するための開発が必要であり、また、その同時に、人工皮革の引裂強度も一定のレベルで維持する必要がある。
これによって、ほとんどの中級車または高級車の要求を満たすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、ベース層と、前記ベース層に直接に形成された表地層とを含む、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革を提供する。
前記表地層の前記ベース層から離れた表面から前記ベース層に延びるように、表地組成物で形成された実体構造が形成される。
前記表地組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂30重量部~60重量部と、1,500~6,000である第1の重量平均分子量を有する高分子可塑剤30重量部~60重量部と、グラフェン材料0.01重量部~5重量部と、を含む。
前記高分子可塑剤の分子構造には、少なくとも一つの直鎖状のソフトセグメントを含む。
前記ソフトセグメントは、エーテル基を含有する。
前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVである。
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法を提供する。
前記発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法は、グラフェン材料及び高分子可塑剤を混合することで第1の混合材料を得て、前記第1の混合材料及びポリ塩化ビニル樹脂を混合することで第2の混合材料を得て、前記第2の混合材料を圧延及び分散させることで、グラフェンプレミックスシート材料を得ることと、前記グラフェンプレミックスシート材料、追加の前記ポリ塩化ビニル樹脂及び追加の前記高分子可塑剤を更に混合することで、表地組成物を得ることと、前記表地組成物を混合及び高温溶融を行うと共に、圧延させて表地層を形成することと、前記表地層を更にベース層に貼り合わせることと、を含む。
前記高分子可塑剤の分子構造には、少なくとも一つの直鎖状のソフトセグメントを含む。
前記ソフトセグメントは、エーテル基を含有する。
前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、本発明に係る発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法は、「前記表地組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂30重量部~60重量部と、1,500~6,000である第1の重量平均分子量を有する高分子可塑剤30重量部~60重量部と、グラフェン材料0.01重量部~5重量部と、を含む」、「前記高分子可塑剤の分子構造には、少なくとも一つの直鎖状のソフトセグメントを含む。前記ソフトセグメントは、エーテル基を含有する。前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVである」といった技術的特徴により、ポリ塩化ビニル系人工皮革の臭気レベルを改良し、発泡構造を備えなくても、レザーの手触りを提供することができると共に、優れた引裂強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来の技術のポリ塩化ビニル系人工皮革の積層構造の模式図である。
図2】本発明のポリ塩化ビニル系人工皮革の積層構造の模式図である。
図3】本発明のポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。
しかし、提供される添付図面は、参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0012】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。
本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。
また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。
以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0013】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の材料又はパラメータを叙述することがあるが、これらの材料又はパラメータは、これらの用語によって制限されるものではない。
また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0014】
[塩化ビニル系人工皮革]
上記の従来の技術における技術的課題を解決するために、本発明の実施形態において、ポリ塩化ビニル系人工皮革100(polyvinyl chloride artificial leather)を提供する。
特に、発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革100を提供する。
本発明に係るポリ塩化ビニル系人工皮革100は、発泡構造を備えなくても、通常の人工皮革に必要されたレザーの手触りを与えられる。
【0015】
なお、本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル系人工皮革100の、自動車臭気試験方法であるPV3900C3に基づいて測定された臭いレベルが、レベル3.5以下、さらに好ましくは、レベル3.0以下である。
即ち、従来の技術に比べて、本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル系人工皮革100の臭いレベルが低いため、一般消費者の製品を使用する際の快適度合いや健康的な要望を満たすことができる。
また、本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル系人工皮革100は、改良された引裂強度を備える。
【0016】
図1に示すように、従来の技術におけるポリ塩化ビニル系人工皮革100aは、従来の技術でのポリ塩化ビニル系人工皮革100aには、順にベース層1aと、発泡層2aと、表地層3aと、選択的に塗布された表面処理層4aとが下から上までに含まれている。
ここで、従来の技術では、発泡層は、通常、レザーの手触りを提供するように、発泡剤によって発泡構造を生成する。
【0017】
図2に示すように、従来の技術と異なり、本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル系人工皮革100は、ペース層1(base fabric layer)と、表地層2(top fabric layer)と、選択的に塗布された表面処理層3(surface treatment layer)と、が下から上までに含まれている。
【0018】
前記表地層2は、ベース層1の一つの表面に直接に形成されていると共に、前記表面処理層3は、表地層2のベース層1から離れた表面に形成されている。
特筆すべきことは、本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル系人工皮革100は、発泡構造(foam structure)を備えていない。
【0019】
より具体的に説明すると、前記表地層2のベース層1から離れた表面から、ベース層1に延伸されるように、実体構造(即ち、表地層2の本体構造)が形成されている。
前記表地層2の実体構造は、前記表地層2とベース層1との間に発泡層を備えないように、ベース層1に直接に接触している。
前記表地層2の実体構造は、発泡されないため、フォームポア(foam pores)などの発泡構造を含まれず、レザーの手触りを提供することができる。
【0020】
説明すべきことは、本明細書における「実体構造」とは、発泡剤で発泡されていないと共に、フォームポアを含まない連続相の樹脂構造である。
しかし、人工皮革の製造過程において、異なる高分子材料又は添加された材料との間の相溶性、若しくは、製造方法のパラメータなどの原因によって、実体構造には、少量のポアを含むことがあるが、発泡によるフォームポアではない。
【0021】
上述した目的を実現するために、本発明の実施形態に係る表地層2の実体構造は、表地組成物(fabric composition)で形成される。
前記表地組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂(polyvinyl chloride resin)と、高分子可塑剤(polymer plasticizer)と、グラフェン材料(graphene material)と、を含む。
【0022】
前記表地組成物の総重量を100重量部として、前記ポリ塩化ビニル樹脂の使用量は、30重量部~60重量部であり、30重量部~50重量部であることが好ましい。
前記表地組成物の総重量を100重量部として、前記高分子可塑剤の使用量は、30重量部~60重量部であり、30重量部~50重量部であることが好ましい。
また、前記表地組成物の総重量を100重量部として、前記グラフェン材料の使用量は、0.01重量部~5重量部であり、0.01重量部~1重量部であることが好ましい。
【0023】
更に説明すると、前記ポリ塩化ビニル樹脂は、人工皮革に必要された機械的強度を提供するための、表地組成物のマトリックスである。
前記高分子可塑剤は、高い分子量を有する可塑剤であり、人工皮革の臭いレベルを改善するだけでなく、表地層2にレザーの手触りを与えられる。
また、前記グラフェン材料は、表地組成物が導入された後に、材料の引裂強度を提供することができ、前記表地層2が、従来の発泡構造を備えた人造皮革より薄い厚みを有する場合でも、優れた引裂強度を有する。
【0024】
本発明の一つの実施形態において、前記ポリ塩化ビニル樹脂は、30,000g/mol~200,000g/molである重量平均分子量(Mw)を有すると共に、80℃~85℃であるガラス転移温度(Tg)を有する。
【0025】
本発明の一つの実施形態において、前記高分子可塑剤の第1の重量平均分子量は、1,500g/mol~6,000g/molであり、2,000g/mol~5,000g/molであることが好ましい。
【0026】
更に説明すると、前記高分子可塑剤の分子構造には、直鎖状のソフトセグメント(soft segment)を含むと共に、前記ソフトセグメントは、エーテル基(ether group)を有する。
ここで、前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、20wt%~40wt%であることが好ましく、20wt%~30wt%であることが特に好ましい。
前記エーテル基を有するソフトセグメントは、例えば、ジエチレングリコール(DEG)で構成されてもよい。
また、前記高分子可塑剤のガラス転移温度は、-15℃~-80℃であり、-40℃~-80℃であることが好ましい。
なお、前記表地層2の実体構造の厚みDは、100μm~600μmであり、150μm~550μmであることが好ましいが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0027】
上述した構成により、前記高分子可塑剤は、従来の低い分子量の可塑剤の代わりとして用いられ、発泡剤の使用を回避することができるため、ポリ塩化ビニル系人工皮革の臭いレベルを改善するだけでなく、前記高分子可塑剤の分子構造(エーテル基ソフトセグメント)も、ポリ塩化ビニル系人工皮革100の表地層2にレザーのような手触りをもたらすことができる。
【0028】
また、前記高分子可塑剤は、比較的に高い表面張力を有するため、前記高分子可塑剤は、グラフェン材料に対してより優れた分散性を有するため、前記グラフェン材料は、他の分散剤(例えば、ポリエチレングリコールPEG)を使用していない場合でも、前記表地組成物に分散されることができる。
【0029】
特筆すべきことは、前記エーテル基を有するソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度を20wt%以上にすれば、グラフェン材料により優れた分散性を与えて、引裂強度の向上にとって有利となる。
前記エーテル基を有するソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度が、20wt%未満であると、前記グラフェン材料の表地組成物での引裂強度を向上する効果が、顕著ではない。
【0030】
本発明の一つの実施形態において、前記エーテル基を有するソフトセグメントが、高分子可塑剤の分子構造の中間部または末端部に組み込まれている。
【0031】
なお、前記エーテル基を有するソフトセグメントは、高分子可塑剤の分子構造の主鎖にあり、側鎖の形式として存在することではない。
【0032】
前記高分子可塑剤は、二塩基酸原料と二価アルコール原料との重縮合反応で形成された高分子ポリエステルである。
また、前記エーテル基を有するソフトセグメントは、前記二塩基酸原料及び前記二価アルコール原料の少なくとも1つで構成される。
【0033】
本発明の一つの実施形態において、前記二塩基酸原料は、アジピン酸(AA)、マレイン酸(MA)、セバシン酸及びドデカンジオン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0034】
前記二価アルコールは、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、テトラエチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン(PTMG)、1,2-プロピレングリコール(1,2-PG)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPO)、ネオペンチルグリコール(NPG)、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0035】
前記高分子可塑剤は、末端封止脂肪アルコール(end-capped fatty alcohol)で封止することによって、重縮合反応を中止する。
前記末端封止脂肪アルコールは、モノアルコールであると共に、前記末端封止脂肪アルコールは、イソオクチルアルコール(2-EH)、2-プロピル-1-ヘプタノール(2-PH)、ラウリルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGBE)、およびジエチレングリコールメチルエーテル(DGME)からなる群のうちの少なくとも1つである。
【0036】
例えば、高分子可塑剤を合成するための二塩基酸原料は、アジピン酸(AA)である。
前記高分子可塑剤を合成するための二価アルコール原料は、ジエチレングリコール及び他の種類の二価アルコール(例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPO))を選択的に用いることができる。
また、前記重縮合反応を中止するための末端封止脂肪アルコールは、ジエチレングリコールメチルエーテル(DGME)及び/又はイソオクチルアルコール(2-EH)であってもよい。
【0037】
上述したように、前記グラフェン材料が表地組成物に添加されていることによって、引裂強度を向上することができると共に、前記高分子可塑剤は、グラフェン材料を分散する役割を果たせる。
特筆すべきことは、本実施形態において、前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVであり、-10mV~-30mVであることが好ましい。
それによって、前記グラフェン材料は、上述の表面電位の特性及び高分子可塑剤によって、表地組成物に効果的に分散することができる。
【0038】
ここで、前記グラフェン材料の表面電位は、ゼータ電位(Zeta Potential)とも呼ばれてもよい。
ゼータ電位は、ナノスケール材料が滑り面で持つ電位を示すためのものであり、その単位は、通常、ミリボルト(mV)で表される。
ゼータ電位の測定方法は、例えば、電気泳動法(レーザードップラー法)を採用して、溶液中のナノスケール材料に電場を印加することで、荷電粒子は、電泳運動を引き起こし、この電泳運動を観察することでゼータ電位を求めることができる。
【0039】
本発明の一つの実施形態において、前記グラフェン材料は、例えば、膨張グラフェン(Expanded Graphene,EG)及び酸化グラフェン(Graphene Oxide)の少なくとも一つであってもよいが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0040】
更に説明すると、前記表地組成物は、加工助剤10重量部(processing aids)以下を更に含む。
【0041】
ここで、前記加工助剤は、直鎖状の脂肪族二塩基酸エステル(esters of aliphatic dibasic acid)である。
また、前記加工助剤は、300~800である第2の重量平均分子量を有する。
即ち、前記加工助剤の重量平均分子量は、前記高分子可塑剤の重量平均分子量より低い。
【0042】
本発明の一つの実施形態において、前記加工助剤は、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOS)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0043】
上述した構成により、前記加工助剤は、表地組成物の粘度を低減することによって、前記表地組成物の加工性を向上することができる。
なお、前記加工助剤も、可塑剤の役割を果たせると共に、前記表地層のレザーの手触りを向上することができる。
【0044】
本発明の一つの実施形態において、前記表地組成物は、ゴムの耐熱安定性を高め、且つ、人工皮革の臭いレベルを低減するための安定剤(stabilizer)0.5重量部~5重量部を更に提供する。
【0045】
ここで、前記安定剤は、ステアリン酸リチウム(lithium stearate)、ステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、ステアリン酸バリウム(barium stearate)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ラウリン酸マグネシウム(magnesium laurate)、ラウリン酸バリウム(barium laurate)、ラウリン酸亜鉛(zinc laurate)、リシノール酸カルシウム(calcium ricinoleate)、リシノール酸バリウム(barium ricinoleate)、リシノール酸亜鉛(zinc ricinoleate)、カプリル酸亜鉛(zinc caprylate)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0046】
ここで、前記安定剤は、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛などの金属石鹸化合物であることが好ましい。
【0047】
本発明の一つの実施形態において、前記表地組成物は、充填剤(filler)0重量部~10重量部を更に含む。
前記充填剤は、無機粒状材料である。
【0048】
ここで、前記充填剤は、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、二酸化ケイ素(silicon dioxide)、アルミナ(alumina)、粘土(clay)、タルク(talc)、珪藻土(diatomaceous earth)、及び肥料鉄(fertilizer)などの金属酸化物、ガラス(glass)、カーボンブラック(carbon black)、金属などの繊維および粉末、ガラス球(glass ball)、グラファイト(graphite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)、硫酸バリウム(barium sulfate)、酸化マグネシウム(magnesium oxide)、炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)、ケイ酸マグネシウム(magnesium silicate)、及びケイ酸カルシウム(calcium silicate)からなる群から選択される少なくとも1つである。
ここで、前記充填剤は、炭酸カルシウムであることが好ましいが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明の一つの実施形態において、前記表地組成物は、難燃剤(flame retardant)2重量部~8重量部を更に含む。
【0050】
ここで、前記難燃剤は、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)、水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、三酸化アンチモン(antimony trioxide)、ホウ酸亜鉛(zinc borate)などの無機化合物;リン酸クレジルジフェニル(cresyl diphenyl phosphate)、リン酸トリス(2-クロロエチル)(tris(2-chloroethyl)phosphate)、りん酸トリス(2-クロロ-1-メチルエチル)(tris(1-chloropropan-2-yl)phosphate)、リン酸トリス(1-メチルー2-クロロエチル)(phosphoric acid tris(2-chloro-1-methylethyl) ester)などのリン系化合物;及び塩素化パラフィンワックスなどのハロゲン化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
ここで、前記難燃剤は、三酸化アンチモンであることが好ましいが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0051】
特筆すべきことは、本発明の一つの実施形態において、前記表地組成物には、発泡剤(例えば、化学発泡剤又は物理発泡剤)が含まれていない。
本発明の実施形態の表地層2は、発泡構造を備えていないか、若しくは、発泡剤を用いていない前提において、通常の人工皮革に必要されたレザーの手触りを提供することができる。
【0052】
即ち、発泡剤の使用又は発泡構造による刺激臭は、本発明において回避することが可能である。
【0053】
特筆すべきことは、前記表地組成物における高分子可塑剤は、グラフェン材料を分散させる役割を果たせる。
好ましくは、前記表地組成物には、何らの分散剤が含まれていない。
例えば、前記表地組成物には、ポリエチレングリコール(PEG)分散剤が含まれていない。
【0054】
続いて、図2に示すように、前記ベース層1は、例えば、織布または不織布であってもよい。
なお、前記表地層2は、例えば、人工的な合成によって、基布からなるベース層1が形成されることによって、天然皮革に似た人工皮革を形成してもよい。
【0055】
更に説明すると、前記ポリ塩化ビニル系人工皮革100は、表面処理層3を含む。
前記表面処理層3は、水性表面処理剤で塗布するように、表地層2のベース層1から離れた表面に形成される。
前記表面処理層3は、ポリ塩化ビニル系人工皮革100の光沢、手触り、耐光性、耐熱性、耐汚れ性、耐摩耗性、及び耐スクラッチ性を改善することができる。
【0056】
前記表面処理層3の表地層2から離れた表面は、人工皮革の表面に異なるパターンを形成するように、高温エンボス加工を行うことができる。
【0057】
本実施形態において、前記水性表面処理剤は、N-エチルピロリドンを含まない水性ポリウレタン系処理剤である。
それによって、前記表面処理層3の配合も、ポリ塩化ビニル系人工皮革100の臭いレベルを低減することができるため、使用者の使用者の快適性を向上することができる。
【0058】
上述した構成により、本発明の実施形態に係る発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革100は、自動車内装に応用することができる。
例えば、ドアパネル、インストルメントパネル、コンソール、コラム、シートバックパネル、シートファブリックなどが挙げられる。
当然ながら、本発明の実施形態に係る発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革は、自動車内装に類似する他の分野に応用することができる。
【0059】
[塩化ビニル系人工皮革の製造方法]
以上の内容は、本発明の実施形態に係る発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革の構造特徴及び材料特徴の説明である。
また、本発明の実施形態においても、ポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法を提供する。
前記ポリ塩化ビニル系人工皮革の製造方法は、工程S110、工程S120、工程S130及び工程S140を含む。
説明すべきことは、本実施形態における各工程の順番や操作方式は、ニーズに応じて調整することは可能であり、これに制限されるものではない。
【0060】
前記工程S110は、グラフェン材料を予め分散する作業を実施することである。
前記工程S110は、グラフェン材料及び高分子可塑剤を混合することによって、前記グラフェン材料が高分子可塑剤に第1回の予め分散を行うと共に、第1の混合材料を得ることを含む。
【0061】
ここで、前記グラフェン材料及び高分子可塑剤は、例えば、超音波振動器(40kHz、50W)のウォーターバス環境において、15分~45分の振動時間(好ましくは、25分~35分)で振動してもよい。
また、前記超音波振動器のウォーターバス温度は、40℃~60℃に制御され、45℃~55℃に制御されることが好ましい。
【0062】
本発明の実施形態において、前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVであり、-10mV~-30mVであることが好ましい。
前記高分子可塑剤の分子構造には、直鎖状のソフトセグメント(soft segment)を含むと共に、前記ソフトセグメントは、エーテル基(ether group)を有する。
前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、20wt%~40wt%であることが好ましく、20wt%~30wt%であることが特に好ましい。
【0063】
前記工程S110は、グラフェン材料及び高分子可塑剤を含む前記第1の混合材料と、ポリ塩化ビニル樹脂(例えば、PVC粉末)とを混合することによって、第2の混合材料を得て、そして、前記第2の混合材料を三本ロールミ(three roll mill)を用いて圧延及び分散を行うことによって、グラフェン材料の第2回の予め分散を行うと共に、グラフェンプレミックスシート材料を得ることを更に含む。
【0064】
ここで、前記グラフェンプレミックスシート材料において、前記グラフェン材料の含有量は、5wt%~15wt%であり、前記高分子可塑剤の含有量は、30wt%~50wt%(好ましくは、35wt%~45wt%)であり、前記ポリ塩化ビニル樹脂の含有量は、40wt%~60wt%(好ましくは、45wt%~55wt%)である。
【0065】
前記工程S120は、表地組成物を製造する作業を実施することである。
前記工程S120は、前記グラフェンプレミックスシート材料と、追加のポリ塩化ビニル樹脂と、追加の高分子可塑剤とを更に混合すると共に、他の添加剤(例えば、加工助剤、安定剤、充填剤、難燃剤)を選択的に添加することによって、表地組成物を得ることを含む。
即ち、前記表地組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂、高分子可塑剤、グラフェンプレミックスシート材料、及び他の添加剤を少なくとも含む。
【0066】
前記表地組成物の総重量を100重量部として、前記ポリ塩化ビニル樹脂の使用量は、30重量部~60重量部であり、30重量部~50重量部であることが好ましい。
前記表地組成物の総重量を100重量部として、前記高分子可塑剤の使用量は、30重量部~60重量部であり、30重量部~50重量部であることが好ましい。
また、前記表地組成物の総重量を100重量部として、前記グラフェンプレミックスシートの使用量は、0.5重量部~10重量部であり、2重量部~8重量部であることが好ましい。
【0067】
特筆すべきことは、前記グラフェンプレミックスシート材料に含まれたグラフェン材料(グラフェン材料のグラフェンプレミックスシート材料での含有量は、約5wt%~15wt%)を更に換算すれば、前記グラフェン材料の表地組成物での使用量は、約0.01重量部~5重量部であり、0.01重量部~1重量部であることが好ましいが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0068】
前記工程S130は、表地層を形成する作業を実施することである。
前記工程S130は、前記表地組成物の混合及び高温溶融を行うと共に、圧延させて表地層を形成することを含む。
より具体的に説明すると、前記表地組成物は、小型ミキサー及びバンブリミキサーをこの順で混合及び高温溶融を行うと共に、圧延機により圧延させて、前記表地組成物を表地層として形成することである。
【0069】
前記工程S140は、人工皮革を形成する作業を実施することである。
前記工程S140は、前記表地層を圧延機を介してベース層に貼り合わせて、そして、表地層の表面に水性ポリウレタン系処理剤を塗布・乾燥することによって、表面処理層を形成して、ポリ塩化ビニル系人工皮革の製造を完成することを含む。
【0070】
[実験データの測定]
以下、実験データにより、本発明の内容を詳しく説明するが、それらの実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明は、これに制限されるものではない。
【0071】
<調製例1>
下表に記載された調製例1の表地組成物は、小型ミキサー及びバンブリミキサーをこの順で混合及び高温溶融を行い、次に、前記表地組成物を圧延機により圧延させて、前記表地組成物を表地層として形成すると共に、表地層を圧延によりベース層に張り合わせて、そして、表地層の表面に水性ポリウレタン系処理剤を塗布・乾燥することによって、表面処理層を形成した。
調製例1のポリ塩化ビニル系人工皮革の物理化学特性の測定を行い、その結果は、下表1に示すとおりである。
特筆すべきことは、調製例1の表地組成物においては、グラフェンプレミックスシートを添加しておらず、即ち、グラフェン材料を含まなかった。
【0072】
<実施例1>
グラフェン材料及び高分子可塑剤を混合すると共に、超音波振動器(40kHz、50W)を用いて、30分振動(ウォーターバス温度が50℃に制御された)することによって、第1の混合材料を得た。
次に、第1の混合材料にポリ塩化ビニル樹脂(PVC粉末)を添加することによって、第2の混合材料を得た。
次に、前記第2の混合材料を三本ロールミを用いて圧延及び分散を行うことによって、グラフェンプレミックスシート材料(I)を得た。
ここで、前記高分子可塑剤の材料に関するパラメータは、調製例1と同一であり、例えば、エーテル基を有するソフトセグメントの濃度(wt%)は、22.5wt%であった。
グラフェンプレミックスシート材料(I)において、グラフェン材料の含有量は、10wt%であり、高分子可塑剤の含有量は、40wt%であり、ポリ塩化ビニル(PVC粉末)の含有量は、50wt%であった。
また、グラフェン材料の表面電位は、-20mV(誤差±10)であった。
<実施例1>において、下表1に記載された実施例1の表地組成物の配合に基づいて、グラフェンプレミックスシート材料(I)を表地組成物に添加すると共に、表地組成物は、小型ミキサー及びバンブリミキサーをこの順で混合及び高温溶融を行い、次に、前記表地組成物を圧延機により圧延させて、前記表地組成物を表地層として形成すると共に、表地層を圧延によりベース層に張り合わせて、そして、表地層の表面に水性ポリウレタン系処理剤を塗布・乾燥することによって、表面処理層を形成した。
実施例1のポリ塩化ビニル系人工皮革の物理化学特性の測定を行い、その結果は、下表1に示すとおりである。
特筆すべきことは、実施例1の表地組成物においては、グラフェン材料が添加された。
【0073】
<調製例2>
下表に記載された調製例2の表地組成物は、小型ミキサー及びバンブリミキサーをこの順で混合及び高温溶融を行い、次に、前記表地組成物を圧延機により圧延させて、前記表地組成物を表地層として形成すると共に、表地層を圧延によりベース層に張り合わせて、そして、表地層の表面に水性ポリウレタン系処理剤を塗布・乾燥することによって、表面処理層を形成した。
調製例2のポリ塩化ビニル系人工皮革の物理化学特性の測定を行い、その結果は、下表1に示すとおりである。
特筆すべきことは、調製例2の表地組成物においては、グラフェンプレミックスシートを添加しておらず、即ち、グラフェン材料を含まなかった。
【0074】
<比較例1>
グラフェン材料及び高分子可塑剤を混合すると共に、超音波振動器(40kHz、50W)を用いて、30分振動(ウォーターバス温度が50℃に制御された)することによって、第1の混合材料を得た。
次に、第1の混合材料にポリ塩化ビニル樹脂(PVC粉末)を添加することによって、第2の混合材料を得た。
次に、前記第2の混合材料を三本ロールミを用いて圧延及び分散を行うことによって、グラフェンプレミックスシート材料(II)を得た。
ここで、前記高分子可塑剤の材料に関するパラメータは、調製例2と同一であり、例えば、エーテル基を有するソフトセグメントの濃度(wt%)は、15.0wt%であった。
グラフェンプレミックスシート材料(II)において、グラフェン材料の含有量は、10wt%であり、高分子可塑剤の含有量は、40wt%であり、ポリ塩化ビニル(PVC粉末)の含有量は、50wt%であった。
<比較例1>において、下表1に記載された比較例1の表地組成物の配合に基づいて、グラフェンプレミックスシート材料(II)を表地組成物に添加すると共に、表地組成物は、小型ミキサー及びバンブリミキサーをこの順で混合及び高温溶融を行い、次に、前記表地組成物を圧延機により圧延させて、前記表地組成物を表地層として形成すると共に、表地層を圧延によりベース層に張り合わせて、そして、表地層の表面に水性ポリウレタン系処理剤を塗布・乾燥することによって、表面処理層を形成した。
比較例1のポリ塩化ビニル系人工皮革の物理化学特性の測定を行い、その結果は、下表1に示すとおりである。
【0075】
<比較例2>においては、エーテル基を有するソフトセグメントを含む高分子可塑剤を使用せず、従来の発泡構造を採用した。
用いた可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤であった。
【0076】
次に、製造されたポリ塩化ビニル系人工皮革の物理化学特性の測定を行うことによって、それらのポリ塩化ビニル系人工皮革の物理化学特性を得た。
物理化学特性として、例えば、臭いレベル、引張強度、引裂強度である。
ここで、臭いレベルは、80℃、2時間での一般的な自動車臭気試験方法であるPV3900C3に基づいて測定された。
臭いレベルのシステムは、六つのレベルが含まれている。
1=臭いなし。
2=臭いがあるが困ることがない。
3=臭いが顕著だが、不快な臭いがない。
4=不快な臭いがある。
5=強い不快な臭がある。
6=耐えられない臭いがある。
ここで、引張強度は、ASTM D412に基づいて測定した。
引裂強度は、ASTM D624に基づいて測定した。
【0077】
[表1]実験条件及び測定結果


【0078】
[測定結果の検討]
前記実験結果によれば、実施例1において高分子可塑剤を用いることによって、最適化された分子量の範囲及びポリ塩化ビニル樹脂(PVC)に優れた相溶性を有すると共に、優れた耐寒性及び手触りを与えられる。
実施例1は、高分子可塑剤を用いていなかった比較例2に比べて、臭いレベルが顕著に改良された。
【0079】
また、実施例1において、濃度が22.5%であるエーテル基を有するソフトセグメントを用いることによって、グラフェン材料を分散させた。
実験の結果によれば、実施例1は、前記条件において引張強度及び引裂強度を顕著に向上させることができた。
例えば、MD引張強度が、569N/3cmから605N/3cmに向上され、CD引張強度が、506N/3cmから525N/3cmに向上され、MD引裂強度が、34N/3cmから38N/3cmに向上され、CD引裂強度が、38N/3cmから40N/3cmに向上された。
【0080】
一方、比較例1において、濃度が15.0%であるエーテル基を有するソフトセグメントを用いることによって、グラフェン材料を分散させた。
実験の結果によれば、比較例1は、前記条件において引張強度及び引裂強度に対する向上が顕著でない。
【0081】
[実施形態による有利な効果]
本発明の効果として、本発明に係る発泡構造を備えないポリ塩化ビニル系人工皮革及びその製造方法は、「前記表地組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂30重量部~60重量部と、1,500~6,000である第1の重量平均分子量を有する高分子可塑剤30重量部~60重量部と、グラフェン材料0.01重量部~5重量部と、を含む」、「前記高分子可塑剤の分子構造には、少なくとも一つの直鎖状のソフトセグメントを含む。前記ソフトセグメントは、エーテル基を含有する。前記エーテル基を含有する前記ソフトセグメントの高分子可塑剤での濃度は、20wt%以上であり、前記グラフェン材料の表面電位は、-5mV(ミリボルト)~-50mVである」といった技術的特徴により、ポリ塩化ビニル系人工皮革の臭気レベルを改良し、発泡構造を備えなくても、レザーの手触りを提供することができると共に、優れた引裂強度を有する。
【0082】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲は、これに制限されない。
そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
<従来の技術>
100a…ポリ塩化ビニル系人工皮革
1a…ベース層
2a…発泡層
3a…表地層
4a…表面処理層
<本発明の実施例>
100…ポリ塩化ビニル系人工皮革
1…ベース層
2…表地層
3…表面処理層
D…厚み
図1
図2
図3