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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169268
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/52 20060101AFI20241128BHJP
   B65H 29/24 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B65H29/52
B65H29/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173857
(22)【出願日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2023085248
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川北 純
(72)【発明者】
【氏名】小久保 洋
(72)【発明者】
【氏名】原 義明
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝平
(72)【発明者】
【氏名】貞光 雄志
【テーマコード(参考)】
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
3F049AA01
3F049AA05
3F049BA04
3F049FA03
3F049LA01
3F049LB01
3F101FA01
3F101FB12
3F101FC03
3F101FC05
3F101FC11
3F101FC19
3F101LA01
3F101LB01
(57)【要約】
【課題】搬送ベルトにより搬送されるシートの乾燥効率を向上させると共に、シートが搬送ベルトから浮くのを抑制する。
【解決手段】対向ダクト部141は、温風吹付面12に温風吹付ノズル10、リブ30が設けられ、温風吹付面12から上面121に向けて貫通した貫通部181、182が形成されている。温風吹付ノズル10を設けることで、シートを効率的に乾燥させ得る。温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風の一部は、貫通部181、182において温風吹付面12から上面121へ抜ける。温風の一部を貫通部181、182から抜けやすくするために、リブ30が温風吹付ノズル10同士を繋ぐように設けられる。温風の一部は、搬送ベルトと温風吹付面12との隙間をリブ30によって貫通部181、182側へ流れやすくなり、対向ダクト部141の上流端部や下流端部に到達する前に貫通部181、182から抜ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して画像が形成されたシートを乾燥する乾燥装置において、
シートを搬送する搬送ベルトと、
送風ファンと、
前記送風ファンから送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに対向する位置まで送る送風ダクトと、を備え、
前記送風ダクトは、
前記搬送ベルトと対向する対向ダクト部と、
前記対向ダクト部の前記搬送ベルトと対向する対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、前記対向ダクト部に送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに吹き付ける複数のノズルと、
前記対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、且つ、シートの搬送方向に交差するシートの幅方向に間隔を空けて、それぞれが前記搬送方向に沿うように配置された複数のリブと、
前記搬送方向から見て前記幅方向に隣り合う一対の前記リブ同士の間に位置するように配置され、前記対向面に直交する方向に関して前記対向面から前記対向面と反対側の面に向けて貫通し、且つ、前記対向ダクト部の内部には連通しない貫通部と、を有する、
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記送風ファンから送られる空気を温める加熱手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記リブは、前記搬送方向に隣り合う前記ノズル同士を繋ぐように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記リブは、前記対向面からの突出量が前記対向面から前記ノズルの先端までの長さと同じである、
ことを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記貫通部は、貫通する方向に直交する断面積が前記搬送ベルトから遠ざかるにつれて大きくなっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記貫通部は、前記搬送方向に関し前記対向ダクト部の両端部に、前記対向ダクト部の上流端部から下流に向けて凹むように形成された第一凹部と、前記対向ダクト部の下流端部から上流に向けて凹むように形成された第二凹部を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記貫通部は、前記対向ダクト部において前記搬送方向に関して中央部に形成され且つ上流端部及び下流端部に開口していない貫通孔である、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項8】
インクを吐出して画像が形成されたシートを乾燥する乾燥装置において、
シートを搬送する搬送ベルトと、
送風ファンと、
前記送風ファンから送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに対向する位置まで送る送風ダクトと、を備え、
前記送風ダクトは、
前記搬送ベルトと対向する対向ダクト部と、
前記対向ダクト部の前記搬送ベルトと対向する対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、前記対向ダクト部に送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに吹き付ける複数のノズルであって、シートの搬送方向に交差するシートの幅方向に間隔を空けて配置され、それぞれが前記幅方向の長さよりも前記搬送方向の長さが長く形成された複数のノズルと、
前記搬送方向から見て前記幅方向に隣り合う一対の前記ノズル同士の間に位置するように配置され、前記対向面に直交する方向に関して前記対向面から前記対向面と反対側の面に向けて貫通し、且つ、前記対向ダクト部の内部には連通しない貫通部と、を有する、
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項9】
前記貫通部は、貫通する方向に直交する断面積が前記搬送ベルトから遠ざかるにつれて大きくなっている、
ことを特徴とする請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記貫通部は、前記搬送方向に関し前記対向ダクト部の両端部に、前記対向ダクト部の上流端部から下流に向けて凹むように形成された第一凹部と、前記対向ダクト部の下流端部から上流に向けて凹むように形成された第二凹部を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記貫通部は、前記対向ダクト部において前記搬送方向に関して中央部に形成され且つ上流端部及び下流端部に開口していない貫通孔である、
ことを特徴とする請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項12】
インクを吐出して画像が形成されたシートを乾燥する乾燥装置において、
シートを搬送する搬送ベルトと、
送風ファンと、
前記送風ファンから送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに対向する位置まで送る送風ダクトと、を備え、
前記送風ダクトは、
前記搬送ベルトと対向する対向ダクト部と、
前記対向ダクト部の前記搬送ベルトと対向する対向面に設けられ、前記対向ダクト部に送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートへ吹き出す複数の吹出孔と、
前記対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、且つ、シートの搬送方向に交差するシートの幅方向に間隔を空けて、それぞれが前記搬送方向に沿うように配置された複数のリブと、を有する、
ことを特徴とする乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトにより搬送されるシートを乾燥する乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクヘッドからインクを吐出してシートに画像を形成するインクジェット記録装置は、シートを乾燥するために乾燥装置を備えている(特許文献1)。特許文献1に記載の乾燥装置では、回転する搬送ベルトにより搬送されるシートに対し、送風ファン等から供給される空気を送風ダクトに形成された多数のノズルから吹き付けることによりシートを乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-86458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートの乾燥効率を向上させるには、シートが通る隙間を確保したうえで、ノズルを搬送ベルトへ近づけるのが好ましい。さらに、シートの乾燥効率を向上させるために、ノズルから出る空気を強く吹かなければならない。すると、ノズルから吹き付けられて搬送ベルトとの隙間を流れる空気の風速が速くなるので、シートが搬送ベルトから浮いてしまいやすくなる。シートが搬送ベルトから浮いてしまうと、搬送中のシートが変形したりシートの搬送不良が生じたりする虞がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、搬送ベルトにより搬送されるシートに空気を吹き付けて乾燥する場合に、シートの乾燥効率を向上させると共に、シートが搬送ベルトから浮くのを抑制可能な乾燥装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る乾燥装置は、インクを吐出して画像が形成されたシートを乾燥する乾燥装置において、シートを搬送する搬送ベルトと、送風ファンと、前記送風ファンから送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに対向する位置まで送る送風ダクトと、を備え、前記送風ダクトは、前記搬送ベルトと対向する対向ダクト部と、前記対向ダクト部の前記搬送ベルトと対向する対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、前記対向ダクト部に送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに吹き付ける複数のノズルと、前記対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、且つ、シートの搬送方向に交差するシートの幅方向に間隔を空けて、それぞれが前記搬送方向に沿うように配置された複数のリブと、前記搬送方向から見て前記幅方向に隣り合う一対の前記リブ同士の間に位置するように配置され、前記対向面に直交する方向に関して前記対向面から前記対向面と反対側の面に向けて貫通し、且つ、前記対向ダクト部の内部には連通しない貫通部と、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態に係る乾燥装置は、インクを吐出して画像が形成されたシートを乾燥する乾燥装置において、シートを搬送する搬送ベルトと、送風ファンと、前記送風ファンから送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに対向する位置まで送る送風ダクトと、を備え、前記送風ダクトは、前記搬送ベルトと対向する対向ダクト部と、前記対向ダクト部の前記搬送ベルトと対向する対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、前記対向ダクト部に送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに吹き付ける複数のノズルであって、シートの搬送方向に交差するシートの幅方向に間隔を空けて配置され、それぞれが前記幅方向の長さよりも前記搬送方向の長さが長く形成された複数のノズルと、前記搬送方向から見て前記幅方向に隣り合う一対の前記ノズル同士の間に位置するように配置され、前記対向面に直交する方向に関して前記対向面から前記対向面と反対側の面に向けて貫通し、且つ、前記対向ダクト部の内部には連通しない貫通部と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態に係る乾燥装置は、インクを吐出して画像が形成されたシートを乾燥する乾燥装置において、シートを搬送する搬送ベルトと、送風ファンと、前記送風ファンから送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートに対向する位置まで送る送風ダクトと、を備え、前記送風ダクトは、前記搬送ベルトと対向する対向ダクト部と、前記対向ダクト部の前記搬送ベルトと対向する対向面に設けられ、前記対向ダクト部に送られた空気を前記搬送ベルトにより搬送されるシートへ吹き出す複数の吹出孔と、前記対向面から前記搬送ベルトに向けて突出し、且つ、シートの搬送方向に交差するシートの幅方向に間隔を空けて、それぞれが前記搬送方向に沿うように配置された複数のリブと、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送ベルトにより搬送されるシートに空気を吹き付けて乾燥する場合に、シートの乾燥効率を向上させると共に、シートが搬送ベルトから浮くのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の乾燥装置を用いて好適なインクジェット記録装置を示す概略図。
図2】プリントモジュール、乾燥モジュール、定着モジュールを示す概略図。
図3】送風ユニットを示す断面図。
図4】第一実施形態の対向ダクト部の下面側を示す斜視図。
図5】第一実施形態の対向ダクト部の上面側を示す斜視図。
図6】比較のため貫通部がない場合における空気の流れを模式的に示した図。
図7】風速比と、貫通部の開口面積の総和と温風吹付ノズルの孔の総面積の比との関係を示すグラフ。
図8】ダクト内部から貫通部を示した模式図。
図9】温風吹付ノズルの別の形状を示す下面図。
図10】温風吹付ノズルのさらに別の形状を示す下面図。
図11】第二実施形態の対向ダクト部を示す斜視図。
図12】第三実施形態の対向ダクト部を上面側から見た斜視図。
図13】第三実施形態の対向ダクト部を下面側から見た下面図。
図14】第四実施形態の対向ダクト部を上面側から見た斜視図。
図15】第四実施形態の対向ダクト部を示す下面側から見た下面図。
図16】第五実施形態の対向ダクト部を下面側から見た斜視図。
図17】第五実施形態の対向ダクト部を下面側から見た下面図。
図18】第五実施形態の対向ダクト部を上面側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
<インクジェット記録装置>
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。まず、本実施形態の乾燥装置を用いて好適なインクジェット記録装置について、図1を用いて説明する。インクジェット記録装置100は、インクを用いてシートにインク像を形成する所謂枚葉式のインクジェット記録装置である。シートは、例えば普通紙や厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート、並びに布など、インクを受容可能な記録材であればよい。
【0012】
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000を備える。給紙モジュール1000から供給されるシートSは、各モジュール内を搬送経路に沿って搬送される際に各種処理が行われ、最終的に積載モジュール7000に排出される。
【0013】
なお、給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000はそれぞれが別々の筐体を有し、それら筐体が連結されてインクジェット記録装置100を構成してよい。あるいは、1つの筐体に給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000が配置されていてもよい。
【0014】
給紙モジュール1000は、シートSを収容する収納庫1500a、1500b、1500cを有し、収納庫1500a~1500cはシートSを収容するために装置正面側へ引き出し可能に設けられている。シートSは、各収納庫1500a~1500cにおいて分離ベルト及び搬送ローラにより1枚ずつ給送されて、プリントモジュール2000へ搬送される。なお、収納庫1500a~1500cは3つであることに限定されず、1つや2つあるいは4つ以上を有していてよい。
【0015】
プリントモジュール2000は、作像前レジ補正部(不図示)、プリントベルトユニット2200、記録部2300を有する。給紙モジュール1000から搬送されたシートSは、作像前レジ補正部により用紙の傾きや位置が補正されてプリントベルトユニット2200へ搬送される。
【0016】
シートSの搬送経路に対し、プリントベルトユニット2200と対向する位置には記録部2300が配置されている。記録部2300は、搬送されるシートSに対して上方から複数の記録ヘッドによりシートS上にインクを吐出して画像を形成する。シートSは、プリントベルトユニット2200により吸引搬送されることにより、記録ヘッドとのクリアランスが確保されている。本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の4色と反応液に対応した計5つのライン型記録ヘッドが搬送方向(矢印A)に沿って並べられている。
【0017】
なお、インクの色数及び記録ヘッドの数は5つに限定されない。また、インクを吐出させるインクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、不図示のインクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッドに供給される。
【0018】
記録部2300の搬送方向下流側には、不図示のインラインスキャナが配置されている。記録部2300で画像形成されたシートSは、プリントベルトユニット2200によりインラインスキャナ(不図示)へ搬送されて、インラインスキャナ(不図示)によりシートSに形成された画像が読み取られる。シートSに形成された画像に基づいて、シートSに形成する画像のズレや色濃度を補正することができるようにしている。
【0019】
乾燥モジュール3000は、デカップリング部3200、乾燥ベルトユニット3300、温風吹付ユニット3400を有する。乾燥モジュール3000は、後続の定着モジュール4000によるシートSへのインクの定着性を高めるために、シートSに塗布されたインクの液体分を減少させる。画像形成されたシートSは、乾燥モジュール3000のデカップリング部3200に搬送される。デカップリング部3200では、送風ユニット3201により上方から吹き付けられる空気の風圧によりシートSとデカップリングベルト2(図2参照)との間に摩擦力を生じさせ、デカップリングベルト2によりシートSを搬送させている。こうして、デカップリングベルト上に載置されたシートSを摩擦力により搬送させることで、シートSがプリントベルトユニット2010とデカップリング部3200に亘って搬送される際のシートSのズレを防ぐようにしている。
【0020】
デカップリング部3200から搬送されたシートSは、乾燥ベルトユニット3300の搬送ベルト7(図2参照)に吸着搬送され、搬送ベルト7の上方に配置された温風吹付ユニット3400から温風が吹き付けられる。こうして、シートSのインクにより画像形成された画像形成面が乾燥されることで、シートSに塗布されたインクが加熱され水分の蒸発が促進される。シートSを乾燥させる乾燥モジュール3000については、詳細を後述する。
【0021】
定着モジュール4000は、定着ベルトユニット4100を有する。定着ベルトユニット4100は、乾燥モジュール3000から搬送されたシートSを、加熱した上ベルトユニットと下ベルトユニットの間を通過させることによりインクをシートSに定着させる。
【0022】
冷却モジュール5000は冷却部5100を複数有し、冷却部5100により定着モジュール4000から搬送された高温のシートSを冷却する。冷却部5100は、例えば外気をファンで冷却ボックス内に取り込んで冷却ボックス内の圧力を高め、冷却ボックスから圧力によりノズルを介して噴き出す風をシートSに当ててシートSを冷却する。冷却部5100は、シートSの搬送経路に対し両側に配置され、シートSの両面を冷却する。
【0023】
冷却モジュール5000には、搬送経路切換え部5002が設けられている。搬送経路切換え部5002は、反転モジュール6000にシートSを搬送する場合と、シートSの両面に画像形成する両面印刷のために両面搬送経路にシートSを搬送する場合とに応じて、シートSの搬送経路を切り換える。
【0024】
反転モジュール6000は、反転部6400を有する。反転部6400は搬送されるシートSの表裏を反転させて、積載モジュール7000に排出する際のシートSの表裏向きを変更する。積載モジュール7000は、トップトレイ7200と積載部7500を有し、反転モジュール6000から搬送されたシートSを積載する。
【0025】
両面印刷時、シートSは搬送経路切換え部5002により冷却モジュール5000の下方の搬送経路に搬送される。その後、シートSは定着モジュール4000、乾燥モジュール3000、プリントモジュール2000、給紙モジュール1000の両面搬送経路を通って、プリントモジュール2000へ戻される。定着モジュール4000の両面搬送部には、シートSの表裏を反転させる反転部4200が設けられている。プリントモジュール2000へ戻されたシートSは、画像形成されていない他方の面にもインクにより画像が形成され、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000を経て積載モジュール7000に排出される。
【0026】
<乾燥モジュール>
次に、乾燥モジュール3000について、図2を用いて説明する。図2に示すように、乾燥装置としての乾燥モジュール3000は、プリントモジュール2000から排出されたシートSを受け取り、シートSの乾燥を行って定着モジュール4000にシートSを受け渡す。乾燥モジュール3000では、シートSの搬送方向Aに関し上流にデカップリング部3200が配置され、デカップリング部3200の下流に乾燥ベルトユニット3300及び温風吹付ユニット3400が配置されている。
【0027】
デカップリング部3200は、デカップリングベルト2と冷風吹付ユニット3を有する。冷風吹付ユニット3がデカップリングベルト2の上方から冷風を吹き付けることで、シートSは回転するデカップリングベルト2に押し付けられて搬送される。デカップリングベルト2には、冷風吹付ユニット3から吹き付けられた冷風を外周面(表面)から内周面(裏面)へ通すために多数の貫通孔が形成されている。
【0028】
プリントベルトユニット2200のプリントベルト4に搬送されたシートSの先端がデカップリングベルト2に到達しても、シートSの後端はプリントベルト4上にある。プリントベルト4上のシートSに対し記録部2300により画像形成を行うため、シートSはプリントベルト4に吸着搬送されている。画像形成工程時に外乱を与えないために、シートSをデカップリングベルト2に押し付ける力はシートSをプリントベルト4に吸着させる吸引力より弱く、且つ、デカップリングベルト2はプリントベルト4よりもわずかに速い速度で回転される。つまり、シートSの後端がプリントベルト4上にあるときは、シートSはデカップリングベルト2に対して滑るように搬送される。
【0029】
シートSの後端がプリントベルト4を通過すると、シートSの搬送はデカップリングベルト2に依存する。このとき、シートSがデカップリングベルト2上を滑らないように冷風吹付ユニット3の吹き付け力を制御する必要がある。そこで、冷風吹付ユニット3に設けられた不図示の圧力センサの検知結果に従って不図示の送風ファンが制御されることにより、冷風吹付ユニット3の吹き付け力が調整される。
【0030】
冷風吹付ユニット3はダクトを有し、ダクトにおいてプリントベルト4と対向する対向面に、シートSに対し冷風を吹き付けるための多数の冷風吹付ノズル(不図示)が形成されている。冷風吹付ノズルは、ダクトの対向面からプリントベルト4に向かって突出している。
【0031】
乾燥ベルトユニット3300は、回転する搬送ベルト7によりシートSを吸着搬送させる。搬送ベルト7にシートSを吸着させるため、搬送ベルト7には、搬送ベルト7の内側に配置された吸気ファン(不図示)による吸引に応じて外周面(表面)から内周面(裏面)へ空気が抜けるように、多数の吸引孔が形成されている。搬送ベルト7表面における吸引力は、乾燥ベルトユニット3300に設けられた不図示の圧力センサの検知結果に従って、不図示の吸気ファンが制御されることにより調整される。なお、シートSの搬送方向Aに関し、プリントベルト4の吸引終了位置から搬送ベルト7の吸引開始位置までの距離は、画像形成可能なシートSの最大シート長よりも長くなるように設定されている。
【0032】
また、搬送ベルト7は、ハロゲンヒータ(不図示)を内部に有するヒータローラ9により加熱されている。シートSを素早く乾燥させるために、乾燥ベルトユニット3300内に設けた温度センサ(不図示)の検知結果に従ってハロゲンヒータの温度制御が行われることによって、搬送ベルト7の表面温度が調整される。
【0033】
温風吹付ユニット3400はシートSの搬送方向Aに並べて配置された複数の送風ユニット8を有しており、これら送風ユニット8が搬送ベルト7により搬送されるシートSに対し上方から温風を吹き付けてシートSを乾燥する。送風ユニット8では、加熱手段としてのシーズヒータ15(図3参照)が空気を加熱して温風を生じさせる。この温風の温度は、送風ユニット8に設けられた温度センサ16(図3参照)の検知結果に従ってシーズヒータ15が制御されることにより所定温度に調整される。
【0034】
後述するように、送風ユニット8は送風ダクトを有し、送風ダクトにおいて搬送ベルト7と対向する対向面(下面)に、シートSに対し温風を吹き付けるための多数の温風吹付ノズルが形成されている。温風吹付ノズルからシートSに吹き付ける温風の風速は、送風ユニット8に設けられた不図示の風速センサの検知結果に従って、送風ファン13(図3参照)の送風制御が行われることによって所定の風速に調整される。
【0035】
<送風ユニット>
次に、送風ユニット8について、図3乃至図5を用いて説明する。図3は、送風ユニットを示す断面図である。図4は、送風ダクトの下面側を示す斜視図である。図5は、送風ダクトの上面側を示す斜視図である。なお、図3及び図5において点線で示す矢印は、空気の流れを示す。
【0036】
図3に示すように、送風ユニット8は送風ファン13、送風ダクト14、シーズヒータ15、温度センサ16、吸気ダクト17を有する。吸気ダクト17は、不図示の吸気ファンの吸気側と送風ファン13に連結されている。送風ファン13は例えば軸流ファンであり、送風ファン13の送風側に送風ダクト14が連結されている。シーズヒータ15及び温度センサ16は、送風ダクト14に設けられる。シーズヒータ15は送風ファン13の送風経路の下流側に配置され、送風ファン13から送られる空気を加熱して温風を生じさせる。温度センサ16は、上記したように、温風の温度を所定温度に調整すべくシーズヒータ15を制御するために設けられている。送風ダクト14は、送風ファン13から送られてシーズヒータ15により加熱された空気(温風)を搬送ベルト7により搬送されるシートSに対向する位置まで送る。なお、送風ファン13はシロッコファンなど他の送風源であってよく、またシーズヒータ15はカンタルヒータなど他の発熱源であってよい。
【0037】
本実施形態において、送風ダクト14は、搬送ベルト7と対向する対向ダクト部141を有している。対向ダクト部141の搬送ベルト7と対向する対向面である温風吹付面12には、対向ダクト部141に送られた温風を搬送ベルト7により搬送されるシートSに吹き付ける複数の温風吹付ノズル10が搬送ベルト7に向けて突出している。
【0038】
<温風吹付ノズル>
温風吹付ノズル10は断面が円形の円柱状に形成され、温風吹付面12からノズル先端までの長さが例えば「5mm」に設定されている。そして、送風ユニット8は搬送ベルト7に対し、例えば温風吹付ノズル10のノズル先端から搬送ベルト7までの距離Gが「10mm」となるように、つまり温風吹付面12と搬送ベルト7の距離Hが「15mm」となるように配置されている。こうして、温風吹付面12に温風吹付ノズル10を設けることで、温風の吹付による乾燥効率をあげるために温風吹付面12を搬送ベルト7に近づけることなく、温風吹付ノズル10によりシートSへより近い距離で温風を吹き付けできるようになる。例えば、搬送ベルト7により搬送されるシートSの搬送速度が「700mm/s」である場合には、温風吹付ノズル10から吹き付ける温風の風速は「約33m/s」に設定される。
【0039】
温風吹付ノズル10の先端には、対向ダクト部141内から温風を吹き付けるための吹付孔が形成されている。図4に示すように、温風吹付ノズル10は、温風吹付面12において単位面積当たりの吹付孔の面積が均一になるように、シートSの搬送方向A及びシートSの搬送方向Aに交差する幅方向Bに均等に配置されている。例えば、吹付孔の直径は「2mm」、搬送方向Aの吹付孔同士の間隔は「14mm」、幅方向Bの吹付孔同士の間隔は「14mm」である。そして、幅方向Bで隣り合う列と列における温風吹付ノズル10の吹付孔と吹付孔とが搬送方向Aに「7mm」ずれた位置で、温風吹付ノズル10は配置されている。また、幅方向Bに関しては、画像形成可能なシートSの最大サイズよりも広い領域に温風を吹き付けるように、温風吹付ノズル10はシートSの最大サイズ幅よりも広い領域に亘って配設されている。
【0040】
本実施形態では、送風ファン13を駆動すると、図3に示すように、吸気ダクト17を通して送風ファン13に吸い込まれた空気が、送風ダクト14内部のシーズヒータ15に達する。シーズヒータ15で加熱された空気(温風)は温風吹付ノズル10を通って、搬送ベルト7により搬送されるシートSへ吹き付けられる。なお、温度センサ16は、対向ダクト部141の温風吹付面12に直交する方向(矢印C参照)に関して、温風吹付面12と反対側の上面121に配置されている。
【0041】
<貫通部>
また、送風ダクト14は、図4及び図5に示すように、対向ダクト部141において温風吹付面12に直交する方向に関して温風吹付面12から上面121に向けて貫通し、且つ、対向ダクト部141の内部には連通しない複数の貫通部181、182を有している。貫通部181、182は搬送方向Aに関し対向ダクト部141の両端部に、搬送方向長さが幅方向長さよりも長い長尺状に形成されている。
【0042】
第一凹部としての貫通部181は搬送方向Aに関し、対向ダクト部141の上流端部から下流に向けて凹むように形成され、上方から見て搬送ベルト7の表面の一部が見えるように開口している。第二凹部としての貫通部182は搬送方向Aに関し、対向ダクト部141の下流端部から上流に向けて凹むように形成され、上方から見て搬送ベルト7の表面の一部が見えるように開口している。貫通部181、182は、上面121側の開口面積が温風吹付面12側の開口面積よりも大きく、そして貫通する方向に直交する断面積が搬送ベルト7から遠ざかるにつれて大きくなっている。
【0043】
<リブ>
さらに、送風ダクト14は対向ダクト部141に、温風吹付面12から搬送ベルト7に向けて突出し、且つ、幅方向Bに間隔を空けて、それぞれが搬送方向Aに沿うように配置された複数のリブ30が設けられている。本実施形態の場合、リブ30は、搬送方向Aに並べられたうちの隣り合う温風吹付ノズル10同士を繋ぐように設けられている。そして、リブ30の温風吹付面12からの突出量は、温風吹付面12から温風吹付ノズル10の先端までの長さと同じであるのが好ましい。
【0044】
リブ30を設けた場合には、温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風の一部が、貫通部181、182から上方へ抜けやすくなる。即ち、温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風は、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から搬送方向A、搬送方向Aと反対方向、幅方向Bへ温風吹付面12に沿って拡がるように流れる(図5参照)。そして、それら温風の一部は、幅方向Bに関し一対のリブ30に挟まれた領域において、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間をリブ30により搬送方向A及び搬送方向Aの反対方向へ案内される。これにより、リブ30がない場合に比べ、より多くの温風が対向ダクト部141の上流端部や下流端部に到達する前に、貫通部181、182において温風吹付面12から上面121へ抜ける。
【0045】
なお、本実施形態では、温風吹付ノズル10同士を繋ぐようにリブ30を設けたが、これに限らない。貫通部181、182が搬送方向Aから見て幅方向Bに隣り合う一対のリブ30同士(リブ同士)の間に位置するように配置されていれば、リブ30は温風吹付ノズル10同士を繋ぐように設けられていなくてもよい。ただし、温風吹付ノズル10同士を繋ぐようにリブ30を設けた方が、温風が貫通部181、182において温風吹付面12から上面121へ抜けやすくなるので好ましい。また、上記したように、リブ30の突出量が温風吹付面12から温風吹付ノズル10の先端までの長さと同じであると、温風が貫通部181、182において温風吹付面12から上面121へ抜けやすくなるので好ましい。
【0046】
次に、温風吹付ノズル10から吹き付ける温風と、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風との関係について、図6乃至図8を用いて説明する。図6は、比較のため貫通部がない場合における温風の流れを模式的に示した図である。図7は、風速比(V´/v)と、貫通部181、182の温風吹付面12側の開口面積の総和(U)と温風吹付ノズル10の吹付孔の総面積(z)の比(U/z)との関係を示すグラフである。図8は、対向ダクト部141の内部から貫通部181を示した模式図である。
【0047】
図6に示すように、貫通部181、182がない矩形状の対向ダクト部1411の場合、温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風のうち、搬送方向A、搬送方向Aと反対方向へ流れた温風は、対向ダクト部1411の下流端部、上流端部において搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける。また、幅方向Bへ流れた温風は、対向ダクト部1411の両端部において搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける。
【0048】
温風吹付ノズル10から吹き付ける温風の総風量をQ、対向ダクト部1411の下流端部、上流端部における搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間の開口面積、対向ダクト部1411の幅方向両端部における搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間の開口面積の和をTとする。この場合に、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風の平均風速Vは「V=Q/T」となる。したがって、総風量Qが一定のとき、隙間の開口面積の和Tが増加するほど平均風速Vは下がる。つまり、図3において、温風吹付面12と搬送ベルト7の距離Hを長くして、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風の平均風速Vを下げれば、シートSに浮きが生じ難くなる。
【0049】
他方、上述のように、温風吹付面12と搬送ベルト7の距離Hが近いほど、シートSを乾燥させやすくなる。そこで、本実施形態では、温風吹付面12に温風吹付ノズル10を設けて、温風吹付面12が搬送ベルト7に近づき過ぎないようにしている。こうすることで、温風吹付ノズル10を設けないで温風吹付面12を搬送ベルト7に近づけた場合に比べて、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風の平均風速Vを無駄に上げずに、シートSを乾燥させ得る。
【0050】
また、貫通部181、182の温風吹付面12側の開口面積の総和をUとした場合、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風の平均風速V´は「V´=Q/(T+U)」となる。温風の一部は貫通部181、182から抜けることから「V>V´」、つまり「貫通部181、182がない場合の平均風速V>貫通部181、182がある場合の平均風速V´」となる。即ち、貫通部181、182がある場合は、貫通部181、182がない場合に比べて、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風の平均風速が下がる。このように、本実施形態では貫通部181、182を設けることで、対向ダクト部141の下流端部、上流端部において、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風を減らすことができ、もってシートSに浮きが生じるのを抑制し得る。
【0051】
なお、貫通部181、182は幅方向長さが搬送方向長さよりも長い長尺状に形成されても、対向ダクト部141の上流端部、下流端部において、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風を減らし得る。しかし、貫通部181、182は搬送方向長さが幅方向長さよりも長い長尺状に形成された方が、温風が貫通部181、182に侵入しやすく、温風吹付面12から上面121へ抜ける温風の量が増すので好ましい。
【0052】
そして、温風吹付ノズル10から吹き付ける温風の風速をv、温風吹付ノズル10の吹付孔の総面積をzとすると、「v=Q/z」となる。したがって、上記の「V´=Q/(T+U)」へ代入すると「V´=z/(T+U)v」が導かれる。ここで「U=z」を代入すると、「V´=(1-T/(T+Z))v」となる。「1-T/(T+Z)<1」より、「V´<v」が導かれる。
【0053】
したがって、貫通部181、182の温風吹付面12側の開口面積の総和Uが温風吹付ノズル10の吹付孔の総面積z以上であれば、対向ダクト部141の下流端部、上流端部において、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風の風速を、温風吹付ノズル10から吹き付ける温風の風速よりも小さくすることができる。それ故、貫通部181、182の温風吹付面12側の開口面積の総和Uは、温風吹付ノズル10の吹付孔の総面積z以上であるのが好ましい。
【0054】
図7に示すように、貫通部181、182の温風吹付面12側の開口面積の総和Uが大きいほど、平均風速V´は下がるが、総和Uが大きくなるほど、平均風速V´の減少の変化率は低下する。「温風吹付ノズル10の吹付孔の総面積z:隙間の開口面積の和T=1:1」の場合、開口面積の総和Uと、温風吹付ノズル10の吹付孔の総面積zの比「U/z」が「1~10」の範囲であると、平均風速V´は大きく減少する。したがって、貫通部181、182の温風吹付面12側の開口面積の総和Uが温風吹付ノズル10の吹付孔の総面積zの「1~10倍」程度となるように、貫通部181、182を形成するのが好ましい。
【0055】
そして、図8に示すように、対向ダクト部141内への貫通部181、182の侵入量が大きいと、対向ダクト部141を樹脂で射出成形する際に、金型への樹脂の食いつきによる成形不良が生じる虞がある。このため、貫通部181、182による風速の低減効果の度合いと、製造上での部品不良の抑制を考慮して、図4に示すように、貫通部181、182のない領域19が形成されている。
【0056】
以上のように、本実施形態の場合、対向ダクト部141は、温風吹付面12に温風吹付ノズル10、リブ30が設けられている。また、対向ダクト部141の上流端部や下流端部には、温風吹付面12から上面121に向けて貫通した貫通部181、182が形成されている。温風吹付ノズル10を設けることで、温風吹付面12を搬送ベルト7に近づけることなくシートSを効率的に乾燥させ得る。そして、温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風の一部は、搬送方向A、搬送方向Aと反対方向へ流れ、貫通部181、182において温風吹付面12から上面121へ抜ける。温風の一部を貫通部181、182から抜けやすくするために、リブ30が温風吹付ノズル10同士を繋ぐように設けられている。温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風の一部は、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間をリブ30によって貫通部181、182側へ流れやすくなり、対向ダクト部141の上流端部や下流端部に到達する前に貫通部181、182から抜ける。これにより、対向ダクト部141の下流端部、上流端部において、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風を減らすことができる。このようにして、搬送ベルト7により搬送されるシートSに空気(温風)を吹き付けて乾燥する場合に、シートSの乾燥効率を向上させると共に、シートSが搬送ベルト7から浮くのを抑制できる。
【0057】
なお、温風吹付ノズル10は、円柱状に形成されることに限らない。温風吹付ノズル10の他の例を、図9及び図10に示す。図9及び図10では、上述したリブ30の図示を省略している。図9に示すように、温風吹付ノズル10は対向ダクト部141の温風吹付面12に断面が楕円の楕円柱に形成されていてもよい。あるいは、図10に示すように、温風吹付ノズル10は対向ダクト部141の温風吹付面12に断面が四角の四角柱に形成されていてもよい。
【0058】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態の対向ダクト部141Aについて、図11を用いて説明する。なお、第二実施形態の対向ダクト部141Aにおいて、上述した第一実施形態の対向ダクト部141と同様の構成については同じ符号を付し、説明を簡略又は省略する。
【0059】
図11に示すように、対向ダクト部141Aでは、温風吹付ノズル10Aが幅方向Bの長さよりも搬送方向Aの長さが長いスリット状に形成され、複数の温風吹付ノズル10Aが幅方向Bに間隔を空けて配置されている。本実施形態では、対向ダクト部141Aの温風吹付面12に、搬送方向長さが幅方向長さよりも長い長尺状の吹出孔が幅方向Bに等間隔に1つずつ形成されており、温風吹付ノズル10Aは1つの吹出孔の周囲を囲うように設けられている。第一実施形態と同様に、温風吹付ノズル10Aは温風吹付面12からノズル先端までの長さが例えば「5mm」に設定されている。そして、貫通部181、182が、搬送方向Aから見て幅方向Bに隣り合う一対の温風吹付ノズル10A同士(ノズル同士)の間に位置するように配置されている。
【0060】
本実施形態では、温風吹付ノズル10Aの搬送方向Aに延びる側壁部101が第一実施形態のリブ30と同様に機能し、温風吹付ノズル10Aから吹き付けられた温風の一部が貫通部181、182から上方へ抜けやすくなる。即ち、温風吹付ノズル10Aから吹き付けられた温風の一部は、幅方向Bに関し温風吹付ノズル10Aに挟まれた領域において、異なる温風吹付ノズル10Aの貫通部181、182を挟んで互いに対向する側壁部101に沿って貫通部181、182へと流れる。これにより、温風の一部が対向ダクト部141Aの上流端部や下流端部に到達する前に、貫通部181、182において温風吹付面12から上面121へ抜ける。
【0061】
このように、第二実施形態ではリブ30を設けなくても、温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風の一部が、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間を温風吹付ノズル10Aの側壁部101によって貫通部181、182側へ流れやすくなる。したがって、温風の一部は対向ダクト部141の上流端部や下流端部に到達する前に、貫通部181、182から抜ける。これにより、搬送ベルト7により搬送されるシートSに空気(温風)を吹き付けて乾燥する場合に、シートSの乾燥効率を向上させると共に、シートSが搬送ベルト7から浮くのを抑制できる、という上述した第一実施形態と同様の効果が得られる。なお、幅方向Bの一列毎に複数の吹出孔が搬送方向Aに並べて形成されていてもよく、その場合、温風吹付ノズル10Aは搬送方向Aに並べられた複数の吹出孔の周囲を囲うように設けられればよい。
【0062】
なお、上述した第一、第二実施形態では、対向ダクト部141の上流端部から下流に向けて凹むように形成された貫通部181と、対向ダクト部141の下流端部から上流に向けて凹むように形成された貫通部182を例に示したが(図4図11参照)、これに限らない。貫通部が異なる形状である対向ダクト部の他の実施形態を、図12乃至図18に示す。ここでは、上述した対向ダクト部141、141Aと同様の構成については同じ符号を付し、説明を簡略又は省略する。なお、図13及び図15では説明を理解しやすくするために、上述したリブ30の図示を省略している。
【0063】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態の対向ダクト部141Bについて、図12及び図13を用いて説明する。図12及び図13に示すように、対向ダクト部141Bは、貫通部183が搬送方向Aに関して中央部に形成され且つ上流端部及び下流端部に開口していない貫通孔として形成されている。貫通部183は搬送方向長さが幅方向長さよりも長い長尺状に形成され、搬送方向Aから見て幅方向Bに隣り合う一対の温風吹付ノズル10同士の間に位置するように配置されている。温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風の一部は、貫通部183において温風吹付面12から上面121へ抜ける。したがって、対向ダクト部141Bの下流端部、上流端部において、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風を減らすことができる。
【0064】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態の対向ダクト部141Cについて、図14及び図15を用いて説明する。図14及び図15に示すように、対向ダクト部141Cは、上述した貫通部181、182(図4参照)と貫通部183(図12参照)の両方が形成されている。温風吹付ノズル10から吹き付けられた温風の一部は、貫通部181、182、183において温風吹付面12から上面121へ抜ける。したがって、対向ダクト部141Bの下流端部、上流端部において、搬送ベルト7と温風吹付面12との隙間から抜ける温風を減らすことができる。
【0065】
[第五実施形態]
次に、第五実施形態の対向ダクト部141Dについて、図16乃至図18を用いて説明する。図16及び図17に示すように、対向ダクト部141Dには、搬送方向Aの上流側にシートSに対し温風を吹き付ける複数の上流ノズル10aが設けられ、搬送方向Aの下流側にシートSに対し温風を吹き付ける複数の下流ノズル10bが設けられている。これら上流ノズル10aと下流ノズル10bは、幅方向Bに間隔を空けて、それぞれが搬送方向Aに沿うように配置されている。
【0066】
そして、図16乃至図18に示すように、対向ダクト部141Dには、搬送方向Aの上流側に上流貫通部18aが設けられ、搬送方向Aの下流側に下流貫通部18bが設けられている。これら上流貫通部18a、下流貫通部18bは搬送方向Aに関し対向ダクト部141Dの両端部に、搬送方向Aに沿って搬送方向長さが幅方向長さよりも長い長尺状に形成されている。
【0067】
シートSが温風吹付ノズル10により受ける温風の強さは、幅方向Bの温風吹付ノズル10の位置によって決まる。上述した第一実施形態乃至第四実施形態の対向ダクト部では、温風吹付ノズル10が幅方向Bに間隔を空けて同じ位置に並べられている。この場合、シートSの1つの面内において温風吹付ノズル10により受ける温風の強さに強弱が生じやすく、乾燥ムラが生じる虞があった。この点に鑑み、第五実施形態の対向ダクト部141Dでは、搬送方向Aにおいて、上流に配置された上流ノズル10aと、下流に配置された下流ノズル10bとが互いに幅方向Bにずらされた位置に配置されている。こうすると、シートSの1つの面内において、シートSが上流ノズル10a及び下流ノズル10bにより受ける温風の強さに強弱が生じ難くなることから、乾燥ムラが生じるのを抑制することができる。
【0068】
また、対向ダクト部141Dでは、上記のように上流ノズル10aと下流ノズル10bとが幅方向Bにずれて配置されることに伴い、上流貫通部18aと下流貫通部18bとが互いに幅方向Bにずらされた位置に配置される。こうして上流貫通部18aと下流貫通部18bとが幅方向Bにずれて配置されることによって、上流ノズル10a及び下流ノズル10bによりシートSに吹き付けられた温風を搬送ベルト7と送風ダクト14の間を通って逃がしやすくなる。
【0069】
なお、上述した実施形態では、温風吹付ユニット3400の送風ユニット8を例に説明したが、これに限らない。上述した実施形態は、例えばデカップリング部3200においてシートSに空気を吹き付けるための送風ユニット3201(図1参照)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
7…搬送ベルト、10(10A)…ノズル(温風吹付ノズル)、12…対向面(温風吹付面)、13…送風ファン、14…送風ダクト、15…加熱手段(シーズヒータ)、30、31…リブ、141(141A、141B、141C、141D)…対向ダクト部、181、182…貫通部(第一凹部、第二凹部)、183…貫通部(貫通孔)、3000…乾燥装置(乾燥モジュール)、S…シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18