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特開2024-169288能力判定方法、能力判定装置、能力判定プログラム、及びファントム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169288
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】能力判定方法、能力判定装置、能力判定プログラム、及びファントム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241128BHJP
   A61B 6/58 20240101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B6/00 530A
A61B6/58 500A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221430
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2023085708の分割
【原出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 達也
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA13
4C093CA35
4C093DA03
4C093FF24
4C093GA01
4C093GA06
(57)【要約】
【課題】診断目的に応じた放射線検出器、又は放射線撮影装置の撮影能力を診断前に確認する提案は、これまでなされていない。
【解決手段】本開示の一実施形態における動態品質管理装置が行う能力判定方法は、モデルへの放射線照射により放射線検出器が得た画像から、撮影能力を取得する取得ステップと、取得された前記撮影能力を、所定の動態解析における所要撮影能力との関係を示す態様で出力する出力ステップと、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動態品質管理装置が行う能力判定方法であって、
モデルへの放射線照射により放射線検出器が得た画像から、撮影能力を取得する取得ステップと、
取得された前記撮影能力を、所定の動態解析における所要撮影能力との関係を示す態様で出力する出力ステップと、を有する、
能力判定方法。
【請求項2】
前記出力ステップは、取得された前記撮影能力と所定の動態解析における前記所要撮影能力との比較結果を出力する、
請求項1に記載の能力判定方法。
【請求項3】
前記所定の動態解析における所要撮影能力は、動態解析ごとの撮影能力であって、
前記出力ステップは、前記動態解析ごとの撮影能力を有しているか否かを出力する、
請求項1に記載の能力判定方法。
【請求項4】
前記撮影能力は、前記放射線検出器の撮影能力である、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項5】
前記撮影能力は、放射線撮影装置の撮影能力である、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項6】
前記放射線撮影装置は、放射線発生装置と前記放射線検出器を有する、
請求項5に記載の能力判定方法。
【請求項7】
前記放射線撮影装置は、さらにコンソールを有する、
請求項6に記載の能力判定方法。
【請求項8】
前記モデルは、放射線透過度が異なる複数の領域を有する、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項9】
前記モデルは、大きさの異なる複数の粒体を有する、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項10】
前記撮影能力は、撮影した画像のコントラストの変化量であるコントラスト分解能を含む、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項11】
前記撮影能力は、フレームレートである時間分解能を含む、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項12】
前記撮影能力は、撮影した画像の解像度である空間分解能を含む、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項13】
前記所定の動態解析は肺塞栓に関する動態解析であって、
前記所要撮影能力は、体厚が5cmのときに、コントラスト分解能が1~3%、空間分解能が1~5mm、フレームレートが0.5~2.0Hzである、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項14】
前記所定の動態解析は肺動脈弁逆流症に関する動態解析であって、
前記所要撮影能力は、体厚が5cmのときに、コントラスト分解能が3~5%、空間分解能が5~20mm、フレームレートが2.5~10Hzである、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項15】
前記所定の動態解析は心不全に関する動態解析であって、
前記所要撮影能力は、体厚が10~15cmのときに、コントラスト分解能が5~10%、空間分解能が10~50mm、フレームレートが1.0~4Hzである、
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法。
【請求項16】
モデルへの放射線照射により放射線検出器が得た画像から、撮影能力を取得する取得部と、
取得された前記撮影能力を、所定の動態解析における所要撮影能力との関係を示す態様で出力する出力部と、を有する、
能力判定装置。
【請求項17】
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法をコンピューターに実行させるための、能力判定プログラム。
【請求項18】
請求項1-3のいずれか1項に記載の能力判定方法において、モデルとして用いられるファントムであって、
放射線透過度が異なる複数の領域、及び、放射線が前記領域を通過した後の位置に大きさの異なる複数の粒体を有する、
ファントム。
【請求項19】
前記大きさの異なる複数の粒体は、移動可能である、
請求項18に記載のファントム。
【請求項20】
放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法であって、
放射線透過度と移動速度とを変更可能なモデルを用意する工程と、
前記モデルの前記放射線透過度と前記移動速度との組合せを選択しつつ、前記モデルに放射線を照射して連続的に撮影された複数の画像を取得する工程と、
取得した前記複数の画像の分解能を、撮影目的毎に設定された基準値と比較する比較工程と、
前記比較の結果により、前記放射線撮影装置が所要撮影能力を有するか否かを判定する工程と、
を有する放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法。
【請求項21】
前記画像の分解能は、コントラスト分解能、空間分解能、又は、時間分解能である、
請求項20に記載の放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法。
【請求項22】
放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置であって、
放射線透過度と移動速度とを変更可能なモデルに対して、前記モデルの前記放射線透過度と前記移動速度との組合せを選択しつつ、放射線を照射して連続的に撮影された複数の画像を取得する画像取得部と、
取得した前記複数の画像の分解能を、撮影目的毎に設定された基準値と比較する比較部と、
前記比較の結果により、前記放射線撮影装置が所要撮影能力を有するか否かを判定する判定部と、
を有する放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置。
【請求項23】
前記画像の分解能は、コントラスト分解能、空間分解能、又は、時間分解能である、
請求項22に記載の放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、能力判定方法、能力判定装置、能力判定プログラム、及びファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線を照射して撮影対象を順次撮影した複数の放射線静止画像(以下、単に「静止画像」という)から放射線動態画像(以下、単に「動態画像」という)を生成する放射線撮影システムが提案されている。動態画像は、生体内の様々な動きを可視化できるため、従来の静止画像では診断対象にならない様々な病態の臨床診断に活用できる。動態画像を生成する放射線撮影システムでは、診断目的に対応した動態解析及び動態画像処理を複数の静止画像に対して行い、解析及び画像処理後の動態画像を表示することにより、診断精度を向上させることができる。
【0003】
例えば特許文献1には、動態画像を生成するための撮影(以下、「動態撮影」という)で得た動態画像の品質に関する情報や動態撮影に用いた放射線撮影装置の機能に関する情報を出力して、動態撮影の品質管理を効率的に行う品質管理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-11259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機能に関する情報を参照するだけでは、その放射線検出器により得られた画像を各種診断に使用する場合に、診断目的に適した性能(撮影能力)を有しているか否か、実際の診断部位に応じた解像度を得られるのか否か、などを事前に正確に確認することはできない。
【0006】
無駄な撮影を止め、患者の被曝回数を低減させるために、使用する装置は確実に診断目的に適した性能を有している必要があるが、診断目的に応じた放射線検出器、又は放射線撮影装置の撮影能力を診断前に確認する提案は、これまでなされていない。
【0007】
本開示の目的は、動態撮影の品質管理を診断目的に関連付けて行うことができる、能力判定方法、能力判定装置、能力判定プログラム、及びファントムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態における動態品質管理装置が行う能力判定方法は、モデルへの放射線照射により放射線検出器が得た画像から、撮影能力を取得する取得ステップと、取得された前記撮影能力を、所定の動態解析における所要撮影能力との関係を示す態様で出力する出力ステップと、を有する。
【0009】
本開示の一実施形態における能力判定装置は、モデルへの放射線照射により放射線検出器が得た画像から、撮影能力を取得する取得部と、取得された前記撮影能力を、所定の動態解析における所要撮影能力との関係を示す態様で出力する出力部と、を有する。
【0010】
本開示の一実施形態における能力判定プログラムは、上記に記載の能力判定方法をコンピューターに実行させる。
【0011】
本開示の一実施形態におけるファントムは、上記に記載の能力判定方法において、モデルとして用いられるファントムであって、放射線透過度が異なる複数の領域、及び、放射線が前記領域を通過した後の位置に大きさの異なる複数の粒体を有する。
【0012】
本開示の一実施形態における放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法は、放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法であって、放射線透過度と移動速度とを変更可能なモデルを用意する工程と、前記モデルの前記放射線透過度と前記移動速度との組合せを選択しつつ、前記モデルに放射線を照射して連続的に撮影された複数の画像を取得する工程と、取得した前記複数の画像の分解能を、撮影目的毎に設定された基準値と比較する比較工程と、前記比較の結果により、前記放射線撮影装置が所要撮影能力を有するか否かを判定する工程と、を有する。
【0013】
本開示の一実施形態における放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置は、放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置であって、放射線透過度と移動速度とを変更可能なモデルに対して、前記モデルの前記放射線透過度と前記移動速度との組合せを選択しつつ、放射線を照射して連続的に撮影された複数の画像を取得する画像取得部と、取得した前記複数の画像の分解能を、撮影目的毎に設定された基準値と比較する比較部と、前記比較の結果により、前記放射線撮影装置が所要撮影能力を有するか否かを判定する判定部と、を有する。
【0014】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、又は、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、能力判定を診断目的に関連付けて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、放射線撮影システムの構成を示す図である。
図2図2は、コンソール、解析装置及び動態品質管理装置で共通する構成を示すブロック図である。
図3図3は、動態品質管理装置が行う能力判定処理について説明した図である。
図4図4は、ファントムの構成を示す図である。
図5図5は、ファントムの平面図である。
図6図6は、静止画像が基準品質を満たしているか否かについての判定の詳細を示す図である。
図7図7は、放射線撮影装置がファントムを撮影した体厚ごとのコントラスト分解能、及び時間分解能に関する情報が、品質を満たしているか否かについての判定結果を示す図である。
図8図8は、各評価モードの動態画像を生成する場合に必要な基準品質情報の例を示す図である。
図9図9は、各評価モードで必要な体厚、コントラスト分解能、及び時間分解能の能力を、放射線撮影装置が有しているか否かについての判定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
<1.放射線撮影システム>
はじめに、本開示の一実施形態に係る放射線撮影システム100の概略構成について説明する。図1は、放射線撮影システム100の構成を示す図である。
【0019】
放射線撮影システム100は、放射線発生装置1、放射線検出器2、コンソール3、解析装置4、光学カメラ5、及び動態品質管理装置6を備える。放射線発生装置1、放射線検出器2、コンソール3、解析装置4、光学カメラ5、及び動態品質管理装置6は、ネットワークNにより接続されて互いに通信することができる。放射線発生装置1、及び放射線検出器2は放射線撮影装置7を構成する。放射線撮影装置7に、コンソール3が含まれていてもよい。図1は、放射線撮影装置7にコンソール3が含まれている場合を示している。放射線撮影装置7は、動態撮影を行うよう動作可能な放射線撮影装置である。
【0020】
なお、放射線撮影システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)、動態解析装置等と通信可能となっていてもよい。
【0021】
ネットワークNは、放射線発生装置1、放射線検出器2、コンソール3、解析装置4、光学カメラ5、及び動態品質管理装置6を接続する。ネットワークNは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area network)、インターネット、公衆回線、専用回線等でよく、無線回線でも有線回線でも、無線回線と有線回線が混在していてもよい。
【0022】
以下、放射線発生装置1、放射線検出器2、コンソール3、解析装置4、光学カメラ5、及び動態品質管理装置6について、順に記載する。
【0023】
[1-1.放射線発生装置]
放射線発生装置1は、ジェネレーター11、照射指示スイッチ12、及び放射線源13を備えている。放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、放射線検出器2、及びコンソール3等と共に、例えば回診車と呼ばれる車両等、移動可能に構成されたものであってもよい。
【0024】
ジェネレーター11は、照射指示スイッチ12が操作されたことに基づいて、コンソール3によって予め設定された撮影条件に応じた電圧を放射線源13(管球)へ印加する。撮影条件は、例えば撮影部位、撮影方向、体格等の被写体Sに関する条件、管電圧、管電流、照射時間、電流時間積(mAs値)、パルス周期等の放射線Rの照射に関する条件であって、コンソール3によって予め設定される。
【0025】
照射指示スイッチ12は、ジェネレーター11が放射線源13に電圧を印加するかどうかを制御するスイッチである。
【0026】
放射線源13は、管球であって、ジェネレーター11から印加された電圧に応じた線量の放射線Rを照射口から放射する。放射線Rは例えばX線である。放射線源13は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動可能であると共に、Y軸及び/又はZ軸と平行な回転軸を中心に回転して放射線の照射口の向きを変えることが可能となっている。
【0027】
放射線発生装置1は、コンソール3によって撮影条件が設定され、照射指示スイッチ12の制御により、設定された撮影条件に応じた電圧が放射線源13へ印加されることにより、放射線Rを発生する。動態画像を撮影する場合は、コンソール3によって、1回の照射指示スイッチ12の押下につきパルス状の放射線Rの照射が所定時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)繰り返されるように、撮影条件が設定される。放射線発生装置1の能力として、パルス状の放射線Rの所定時間当たり複数回繰り返すことができない場合は、放射線Rの照射を所定時間連続してもよい。
【0028】
すなわち、本開示における「放射線を所定時間照射する」には、所定時間にわたってパルス状の放射線Rの照射を複数回繰り返すパルス照射と、放射線Rを所定時間連続して照射する連続照射と、の両方が含まれる。放射線Rを照射する時間は、例えば15秒である。動態画像の撮影に際してパルス照射を行う場合、1回のパルスで照射される放射線Rの照射量は、静止画像を撮影する場合の放射線の照射量よりも少なくてもよいので、全体として患者に照射される放射線量を、胸部の静止画像を撮影する場合と同程度とすることができる。なお、放射線Rの連続照射の場合は、患者の被曝量を著しく増加させない撮影条件設定が望まれる。
【0029】
[1-2.放射線検出器]
放射線検出器2は、図示を省略するが、センサー基板、走査回路、読出回路、制御部、及び通信部等を備えている。センサー基板は、画素が二次元状(マトリクス状)に配列されている。各画素は、被写体Sを通して受けた放射線Rの線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子及び電荷の蓄積及び放出を行うスイッチ素子を備えている。走査回路は、各スイッチ素子のオン又はオフを切り替える。読出回路は、各画素から放出された電荷の量を信号値(強度)として読み出す。制御部は、読出回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する。通信部は、読出回路が生成した放射線画像のデータ及び各種の信号等を外部へ送信し、また、各種情報や各種信号を受信する。
【0030】
このように構成された放射線検出器2の各画素において、走査回路がスイッチ素子をオフにした状態で放射線検出素子が放射線Rを受けると、放射線検出素子は放射線Rの線量に応じた電荷を発生させ、蓄積する。走査回路がスイッチ素子をオンに切り替えると、蓄積された電荷が放出され、読出回路が、各画素から放出された電荷量を検出して電荷量を示す信号値を生成し、制御部が、各画素について生成された信号値に基づいて放射線画像を生成する。生成された個々の放射線画像は、動態撮影では1つの静止画像である。パルス照射の場合、各パルスに対応して1つの静止画像が生成される。
【0031】
動態画像の生成のため、放射線検出器2は、上述の一連の動作による1つの静止画像の生成を、1回の照射指示スイッチ12の押下につき、単位時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)の周期で繰り返し、所定時間(持続時間)にわたり実行する。ここで、パルス周期及び持続時間は、コンソール3によって事前に設定される。パルス照射の場合、動態画像を構成する複数の静止画像の生成は、放射線発生装置1から放射線Rが照射されるタイミングと同期する。連続照射の場合、動態画像を構成する複数の静止画像の生成は、連続照射の時間中に行われる。
【0032】
なお、生成された静止画像は、画像データとして、放射線撮影システム100の内部に保存されてもよいし、放射線撮影システム100の外部(例えばクラウドサーバーやPACS等のデータ保存装置)に転送されてもよいし、放射線撮影システム100の内部又は外部にてリアルタイムで表示されてもよい。
【0033】
[1-3.コンソール]
コンソール3は、少なくとも放射線検出器2に各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、撮影部位、撮影方向等)を設定する。放射線発生装置1がパルス照射する場合、コンソール3は、各種撮影条件を、放射線発生装置1にも設定する。コンソール3は、撮影条件の設定を、他のシステム(HISやRIS等)から取得した撮影オーダー情報、又はユーザー(例えば技師)によってなされた操作に基づいて行う。
【0034】
コンソール3は、PC(Personal Computer)又は専用の装置等で構成される。本実施の形態では、コンソール3は、基本構成として、制御部201、記憶部202、表示部203、通信部204及び操作部205を有する。基本構成は、以下の通りである。
【0035】
制御部201は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processer)等のハードウェアプロセッサーにより構成されている。
【0036】
記憶部202は、不揮発性のメモリーやハードディスク等により構成されている。記憶部202は、コンソール3に内蔵されていてもよいし、コンソール3に対して着脱可能であってもよい。記憶部202は、制御部201が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なパラメーター、プログラムの実行に必要なデータ、及びプログラムの実行により得られたデータを記憶する。なお、プログラムは、予め記憶部202に記憶されていてもよいし、通信部204を介して外部からダウンロードされるようにしてもよい。記憶部202は、非一時的なコンピューター読取可能記録媒体の一例である。
【0037】
表示部203は、画像等の各種情報を表示する。表示部203は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、ELD(Electronic Luminescent Display)、又はCRT(Cathode Ray Tube)等で構成されている。
【0038】
通信部204は、通信モジュール等で構成されている。通信部204は、ネットワークNを介して接続された外部装置との間で各種信号や各種データを送受信する。
【0039】
操作部205は、ユーザーが操作可能に構成された操作手段である。操作部205は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、表示部203の表面に積層されたタッチパネル等を含む。そして、操作部205は、ユーザーによってなされた操作に応じた信号を制御部201へ出力する。
【0040】
上述した基本構成は、コンソール3と解析装置4と動態品質管理装置6とで共通である。
【0041】
コンソール3の制御部201は、コンソール3の記憶部202に記憶されているコンソール3の動作制御用の各種プログラム、パラメーター及びデータを読出して、読出されたプログラムに従って各種処理を実行し、コンソール3の記憶部202、表示部203、通信部204及び操作部205の動作を制御する。
【0042】
[1-4.解析装置]
解析装置4は、放射線検出器2が検出した放射線画像に基づいて動態画像を生成する装置である。解析装置4は、PC又は専用の装置等で構成される。本実施の形態では、解析装置4は、コンソール3及び動態品質管理装置6と同様に、基本構成として、制御部201、記憶部202、表示部203、通信部204及び操作部205を有する。
【0043】
解析装置4の制御部201は、解析装置4の記憶部202に記憶されている解析装置4の動作制御用の各種プログラム、パラメーター及びデータを読出して、読出されたプログラムに従って各種処理を実行し、解析装置4の記憶部202、表示部203、通信部204、操作部205の動作を制御する。
【0044】
解析装置4の制御部201が実行する各種処理には評価モードを含む動態解析処理が含まれる。動態解析処理は、放射線撮影装置7が撮影した画像に基づいて被写体S等の動態(例えば臓器の動きや流体の流れ等)を解析し、解析結果を反映した画像処理を動態画像に施すことで、解析後の動態画像を生成する。動態画像は、血流欠損評価を行うためのモード、肺動脈逆流比評価を行うためのモード、左室駆出能力評価を行うためのモード等の各モード処理に応じて生成される。生成された動態画像は、解析装置4の記憶部202に記憶され、解析装置4の操作部205に対するユーザー操作等に応じて解析装置4の表示部203に表示される。また、動態画像は、解析装置4の通信部204を介して放射線撮影システム100内の別の装置や放射線撮影システム100の外部に転送されて保存される。動態解析処理は、動態解析及び画像処理による動態画像の生成並びに生成された動態画像の保存を含む一連の動作を指す。
【0045】
なお、解析装置4は、コンソール3と一体でもよいし、動態品質管理装置6と一体でもよい。
【0046】
また、解析装置4は、表示部203及び操作部205を備えず、例えば通信部204等を介して、解析装置4とは別に設けられた操作部205から制御信号を受信し、解析装置4とは別に設けられた表示部203へ動態画像等の画像信号を出力してもよい。
【0047】
[1-5.光学カメラ]
光学カメラ5は、ファントムFを使用して品質管理を行うための動態画像を得る際に、ファントムFを光学撮影するカメラである。
【0048】
[1-6.動態品質管理装置]
動態品質管理装置6は、動態撮影の能力判定を行うための装置である。図2はこの動態品質管理装置6の概略構成を示す図である。
【0049】
動態品質管理装置6は、PC又は専用の装置等で構成される。本実施の形態では、動態品質管理装置6は、コンソール3及び解析装置4と同様に、基本構成として、制御部201、記憶部202、表示部203、通信部204及び操作部205を有する。
【0050】
動態品質管理装置6は、表示部203及び操作部205を備えず、例えば通信部204等を介して、動態品質管理装置6とは別に設けられた入力装置、例えばコンソール3の操作部205から制御信号を受信し、動態品質管理装置6とは別に設けられた表示装置、例えばコンソール3の表示部203へ画像信号を出力してもよい。
【0051】
動態品質管理装置6の制御部201は、動態品質管理装置6の記憶部202に記憶されている動態品質管理装置6の動作制御用の各種プログラム、パラメーター及びデータを読出して、読出されたプログラムに従って各種処理を実行し、動態品質管理装置6の記憶部202、表示部203、通信部204、操作部205の動作を制御する。動態品質管理装置6の記憶部202が記憶するプログラムは、以下に詳しく説明する動態品質管理処理(動態撮影の品質管理方法の一例)を動態品質管理装置6の制御部201に実行させるためのプログラムを含む。
【0052】
ここで、動態撮影の品質管理方法としては、上記従来の品質管理方法があった。しかしながら、上述した通り、診断目的に応じた放射線撮影装置の性能を診断前に確認する提案は、これまでなされていない。
【0053】
ユーザーが、放射線撮影装置の性能が診断目的に適しているかどうかを評価しようとして、放射線撮影装置において生成された複数の静止画像を目視しても、静止画像が、病態に応じた動態画像の生成に必要な品質を有するか否かを判定することは困難である。また、ユーザーが画像処理後の動態画像を目視した場合、画像処理前の静止画像が必要な品質を有するものであったか否か、すなわち画像処理後の動態画像が正確な動態画像であるか否かを判定することも困難である。
【0054】
動態解析を行うにあたり、評価モードに必要な品質を満たしていない静止画像を用いると、結果的に、的確な診断が困難となり、場合によっては再撮影をすることにもなりかねない。
【0055】
的確な診断を行うためには、所定の能力を有する放射線撮影装置を用いることが必要である。しかし、病院ごとに、設置されている放射線検出器、又は放射線撮影装置は多種多様である。よって、使用する放射線検出器、又は放射線撮影装置が、評価モードに必要な能力を有しているか否か、すなわち、各評価モードに対応した動態撮影を行う能力を有しているか否か、を判定する場合は、実際に使用する放射線検出器、又は放射線撮影装置について個別に判定を行う必要があるが、手間暇がかかり困難である。
【0056】
さらに、発明者らは、放射線検出器、又は放射線撮影装置に必要な品質、より具体的には動態解析処理に必要な分解能(所要分解能)が、評価モードによって異なることが、動態撮影の研究開発を進めるにつれて分かってきた。例えば、ある診断目的に対応するある評価モードでは、所要分解能は高く、別の診断目的に対応する別の評価モードでは、所要分解能が低い。よって、使用した装置の機能や仕様を把握したり、撮影した画像のフレームレート等の属性データを把握したりするだけでは、その装置やその画像が特定の評価モードでの使用に適しているかどうか判断するうえで、必ずしも十分ではなかった。そこで、発明者らは、診断目的に応じた放射線検出器、又は放射線撮影装置の性能を診断前に確認することを可能にする品質管理方法について鋭意検討し、その結果、本実施形態で説明する動態品質管理処理を提案するに至った。
【0057】
すなわち、動態品質管理装置6は、各評価モードに要求される能力を放射線検出器2、又は放射線撮影装置7が満たしているか、判定する装置である。
【0058】
動態品質管理装置6は、放射線撮影装置7がファントムF(動態撮影の品質管理用模型の一例)と呼ばれる人体に代わるモデルを撮影して放射線検出器2が得たフレーム(静止画像)が各動態解析処理に必要な品質であるか否かを判定することにより、放射線検出器、又は放射線撮影装置7が各動態解析処理に必要な撮影能力を満たしているか判定する。
【0059】
複数の放射線検出器2、及び1つ以上の放射線発生装置1を有する医療機関においては、放射線発生装置1に対して使用する放射線検出器2を撮影に応じて変更することも考えられる。このような場合、必要な品質を満たす静止画像は、放射線検出器2の撮影能力に影響される。したがって、動態品質管理装置6は、放射線検出器2の撮影能力を判定することができる。
【0060】
また、撮影能力は、放射線検出器2と放射線発生装置1の組合せに影響される場合もある。この場合、必要な品質を満たす静止画像を得る能力を有する放射線検出器2及び放射線発生装置1で構成される放射線撮影装置7の撮影能力に影響される。したがって、動態品質管理装置6は、放射線検出器2及び放射線発生装置1で構成される放射線撮影装置7の撮影能力を判定することもできる。
【0061】
さらに、撮影された画像は、放射線検出器2、及び放射線発生装置1を制御するコンソール3の制御能力に影響される場合もある。この場合、必要な品質を満たす静止画像を得る能力を有する放射線検出器2、放射線発生装置1、及びコンソール3で構成される放射線撮影装置7の撮影能力に影響される。したがって、動態品質管理装置6は、放射線検出器2、放射線発生装置1、及びコンソール3で構成される放射線撮影装置7の撮影能力を判定することもできる。
【0062】
本開示の方法又はプログラムは、動態品質管理装置6により実行される。詳細については後述する。
【0063】
「品質管理」には、放射線発生装置1又は放射線検出器2などの製品の納品後の定期的な品質チェックによる品質管理(Quality Control)の他、製品の納品時の品質保証(Quality Assurance)を含む。
【0064】
なお、動態品質管理装置6は、コンソール3と一体であってもよいし、解析装置4と一体であってもよいし、コンソール3及び解析装置4の双方と一体であってもよい。
【0065】
また、放射線撮影システム100が図示しないPACS等を備える場合、動態品質管理装置6はこれらの装置と一体になっていてもよい。
【0066】
<2.動態品質管理装置の詳細>
[2-1.動態品質管理装置の処理]
図3は、動態品質管理装置6の制御部201が行う能力判定処理の概要を示すフローチャートである。以下、動態品質管理装置6の制御部201を、単に「制御部201」という。
【0067】
初めに、制御部201は、ファントムFが被写体Sとして撮影され放射線検出器2が得た静止画像を取得する(S301)。放射線検出器2、又は放射線撮影装置7が、各動態解析処理に必要な撮影能力を満たしているか判定するためには、同じ撮影対象を撮影した画像を得る必要がある。したがって、放射線撮影装置7は、人体を撮影するのでなく、ファントムFと呼ばれる放射線撮影に使用するモデル(模型)を撮影する。放射線撮影装置7が、ファントムFを撮影することにより、放射線検出器2、又は放射線撮影装置7の分解能、すなわち各体厚のコントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能を取得することができる。各動態解析処理に必要な撮影能力は、各体厚の、所要分解能、すなわちコントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能である。判定を行う各体厚に、コントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能に対応したファントムFの設定を行い、撮影することにより、撮影された静止画像が、各体厚の特定のコントラスト分解能、空間分解能、及び特定の時間分解能を有しているか否か判定することができる。ファントムFの設定については、後述する。
【0068】
そして、制御部201は、取得した静止画像について、分解能すなわち、各体厚の、コントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能に関する情報を生成する(S302)。ステップS302で生成される体厚、コントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能は、ステップS301において静止画像を撮影したときのファントムFに設定した体厚、コントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能に等しい。
【0069】
そして、制御部201は、病態の評価を行うために必要な、各評価モードに必要とされる基準品質情報を取得する(S303)。基準品質情報は、各評価モードの所要分解能であり、動態画像を生成するために必要とされる各体厚のコントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能に関する情報である。
【0070】
そして、制御部201は、ステップS301及びS302で取得及び生成した体厚、コントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能で撮影した静止画像が、基準品質を満たしているか否か判定する(S304)。判定の詳細については後述する。
【0071】
そして、制御部201は、ステップS303で取得した基準品質情報を満たす静止画像を放射線検出器2、又は放射線撮影装置7が取得することができるかどうか判定する(S305)。基準品質情報を満たす静止画像を取得することができると判定されたら、放射線検出器2、又は放射線撮影装置7は、動態画像を生成することができる静止画像を撮影する能力を満たしていると判定される。
【0072】
そして、制御部201は、ステップS305で判定した結果を出力する(S306)。例えば、制御部201は、その判定結果を、動態品質管理装置6の表示部203に表示させる。
【0073】
以下に、各処理の詳細について記載する。
【0074】
[2-2.ファントムF]
ステップS301での撮影に使用するファントムFについて説明する。
【0075】
放射線撮影装置7は、人体を使用した撮影に代わり、ファントムFと呼ばれる放射線撮影に使用するモデルを撮影する。ファントムFは、体厚、空間分解能、コントラスト分解能、及び時間分解能に関する設定がされて撮影されるが、本実施の形態ではコントラスト分解能と空間分解能は合わせて評価される。空間分解能は対象物の大きさ、コントラスト分解能は対象物の深さで評価される。ここで、体厚は、ファントムFでは板状部401の厚さにより示される。
【0076】
図4は、ファントムFの構成を示す図である。また、図5は、ファントムFの平面図である。
【0077】
例えば、ファントムFは、板状部401の背後に、複数個(本実施の形態では4個)の半径の異なる粒体402(本実施の形態では球体)を十字型の支持部403の端部にそれぞれ配置して、支持部403を十字の交差部分中心に回転可能とした構成である。板状部401は、撮影しようとする部位の筋肉の厚さ及び血液の量等に応じて、板面の厚さが5cm、10cm、15cmの三段階となっている。板状部401は、人体の胸部乃至胴体部を模した模型部であり、粒体402は、診断部位における血液量の変化による放射線検出器2が検出する強度の変化に対応する4種類のサイズの粒体模型部である。板状部401は、例えばアクリル板で構成される。粒体402及び支持部403は、板状部401と同様にアクリル樹脂製であってもよいし別の材料で構成されていてもよい。ファントムFは、放射線撮影の対象であるので、放射線Rの透過性を一定程度有する材料で構成されていればよい。ファントムFは、撮影時、板状部401の厚さの方向が放射線の照射方向と平行になるように、板面を放射線源13に向けて配置され、支持部403が回転すると粒体402が照射方向(厚さの方向)と交差する方向に移動するように、支持部403の回転軸を放射線検出器2に向けて配置される。
【0078】
各体厚に対して、空間分解能、コントラスト分解能、時間分解能が測定される。
【0079】
まず、体厚について説明する。例えば胸部を放射線撮影する場合、成人の胸の厚みは20cm程度である。しかし、空気は放射線に影響を与えないので、人体を放射線撮影するにあたり、肺のように筋肉が少なく空気が多い部位を撮影する場合は、放射線に影響を与える体の部分は少ないから体厚は薄い。一方、心臓のように筋肉が多く空気が少ない部位を撮影する場合は、放射線に影響を与える体の部分は多いから体厚は厚い。撮影する部位に応じて体厚は決定される。
【0080】
そこで、撮影する部位に応じた体厚に基づいて、使用する板状部401の厚さを設定する。肺を撮影した静止画像を使用する評価モードの判定に使用するファントムFの板状部401の厚さは薄く、例えば5cmである。一方、心臓を撮影した静止画像を使用する評価モードの判定に使用するファントムFの板状部401の厚さは厚く、例えば10cm~15cmである。板状部401の厚さは、例えば5cm、10cm、15cmである。
【0081】
空間分解能に関するファントムFの設定について説明する。空間分解能はファントムFの粒体のX線照射方向と垂直な方向の大きさ(径)で定義される。すなわち、空間分解能は、撮影した画像の解像度である。
【0082】
判定対象の空間分解能に応じて、使用する粒体402のX線照射方向と垂直な方向の大きさを設定する。言い換えれば、判定する空間分解能に応じたX線照射方向と垂直な方向の大きさの粒体402を使用するように設定する。判定対象の空間分解能が小さい場合に使用するファントムFの粒体402の大きさは小さく、判定対象の空間分解能が大きい場合に使用するファントムFの粒体402の大きさは大きい。例えば、粒体402は、粒体402a~402dで構成され、粒体402a、粒体402b、粒体402c、及び粒体402dは、それぞれ異なる空間分解能の判定に使用される。
【0083】
コントラスト分解能に関するファントムFの設定について説明する。コントラスト分解能はファントムFの厚み及びX線照射方向の粒体の大きさ(径)で定義される。X線照射方向の粒体の大きさ(長さ)に対応して、検出されるX線は減少する。すなわち、コントラスト分解能は撮影した画像において、有為に判別することのできるコントラスト(濃度)の変化量である。本実施の形態におけるファントムFの粒体は球体であるから、コントラスト分解能と空間分解能は合わせて評価される。
【0084】
放射線源13から放射された放射線が遮蔽物無しに放射線検出器2で検出された場合の強度を100とし、放射線検出器2で放射線が検出されない場合の強度を0とした場合に、放射線撮影装置7が、強度が1変化することを検出することができればコントラスト分解能1%の能力を有しており、強度が10変化することを検出することができればコントラスト分解能10%の能力を有している。また、血管に血液が多く含まれて血管が膨らむ場合と少なく含まれて血管が縮小する場合とで放射線検出器2が検出する強度は変化する。粒体402を挿入するか否かは、血管の血液量の変化に対応している。粒体402を挿入するか否かで放射線検出器2が検出する強度は変化するが、小さい粒体402を挿入した場合は、放射線検出器2で検出する強度の変化は小さく、大きい粒体402を挿入した場合は、放射線検出器2で検出する強度の変化は大きい。
【0085】
つまり、判定対象のコントラスト分解能に応じて、使用する粒体402の大きさを設定する。言い換えれば、判定するコントラスト分解能に応じた大きさの粒体402を使用するように設定する。判定対象のコントラスト分解能が小さい(例えば、1%)場合に使用するファントムFの粒体402の大きさは小さく、判定対象のコントラスト分解能が大きい(例えば、10%)場合に使用するファントムFの粒体402の大きさは大きい。例えば、粒体402は、粒体402a~402dで構成され、粒体402aは1%コントラスト分解能の測定に使用する粒体であり、粒体402bは、3%コントラスト分解能の測定に使用する粒体であり、粒体402cは5%コントラスト分解能の測定に使用する粒体であり、粒体402dは10%コントラスト分解能の測定に使用する粒体である。粒体402は、例えばコントラスト1%から10%に対応する粒体である。
【0086】
本実施の形態においては、コントラスト分解能と空間分解能は合わせて評価される。例えば、粒体402aは空間分解能1mmの測定に使用する粒体であり、粒体402bは、空間分解能5mmの測定に使用する粒体であり、粒体402cは空間分解能10mmの測定に使用する粒体であり、粒体402dは空間分解能50mmの測定に使用する粒体である。なお、以下の説明では、粒体402a~402dを特に区別しない場合、「粒体402」という。
【0087】
時間分解能に関するファントムFの設定について説明する。
【0088】
時間分解能は、フレームレートである。血流の振幅のみを見ればよい場合は、血流周期程度のフレームレートがあればよく、血流の波形を見る必要がある場合は、少なくとも血流周期の4~8倍のフレームレートが必要となる。
【0089】
支持部403を回転させると、支持部403の一端に配置されている粒体402が回転する。粒体402の回転に伴い、ある範囲に粒体402が存在する時刻と粒体402が存在しない時刻が周期的に変化する。つまり、放射線検出器2が検出する強度は、周期的に変化する。支持部403を早く回転させると検出する強度も早く変化し、支持部403を遅く回転させると検出する強度もゆっくり変化する。支持部403の回転速度に応じたフレームレートを得ることができる。支持部403は、例えば0.5~15Hzで回転させることができる。
【0090】
したがって、判定対象の時間分解能に応じて支持部403の回転速度を設定する。
【0091】
上記のように、判定する体厚、コントラスト分解能及び時間分解能に応じて、ファントムFの、板状部401の厚さ、粒体の大きさ、及び支持部403の回転速度が設定される。放射線撮影装置7が、設定されたファントムFを用いて撮影し、静止画像を生成する。
【0092】
ファントムFは、板状部401は、板厚が異なる構成が簡易であるが、同一厚みでX線透過度が異なる板状部を隣接配置するような構成でもよい。また、板状部401の中央部で異なるサイズの粒体402が回転する構成でなくとも、板状部401の異なる厚さの領域毎に異なるサイズの粒状体が移動する構成であればよい。例えば、板状部401の異なる厚さの領域のそれぞれに、異なるサイズの粒状体を移動可能に配置する構成にすること、又は異なるサイズの粒状体が板状部401の異なる厚さの領域を跨いで直線的に往復移動又は循環移動する構成とすることができる。また、粒体402は、球状でもよいし、粒体402のX線照射方向とX線照射方向に垂直な方向の大きさ(径)が異なる大きさであってもよい。
【0093】
[2-3.基準品質情報]
S303の各評価モードに必要とされる基準品質情報について説明する。図8は、各評価モードに必要な静止画像の体厚、時間分解能、及びコントラスト分解能を示す。
【0094】
本実施形態では、血流欠損評価モード、肺動脈逆流比評価モード、及び左室駆出能力評価モードの3つの評価モードについての判定が例示される。血流欠損評価モードは、肺塞栓の診断に有用な動態画像を生成するためのモードである。肺動脈逆流比評価モードは、ファローの診断に有用な動態画像を生成するためのモードである。左室駆出能力評価モードは心不全の診断に有用な動態画像を生成するためのモードである。以下に各評価モードについて説明する。
【0095】
(血流欠損評価モード)
肺塞栓の診断を行う血流欠損評価モードの判定を行う場合、肺の毛細血管の血流を把握することが必要であるから、肺の部分を撮影する必要がある。肺は空気が多いから実質的な体厚は薄くなる。したがって、血流欠損評価モードに必要な体厚は、例えば5cmでよいから、ファントムFで使用する板状部401は薄くてよい。5cmの体厚のときにX線撮影を行った場合に必要なコントラスト分解能、空間分解能、時間分解能について説明する。
【0096】
毛細血管の血流の変化によるX線画像のコントラストの変化は小さいから、細かいコントラスト分解能を有することが必要である。血流欠損評価モードに必要なコントラスト分解能は、例えば1~3%である。また、対象物(毛細血管)の大きさは1~5mmであるから、毛細血管の血流を把握するために必要な空間分解能は1~5mmである。
【0097】
血流欠損評価モードの判定では、毛細血管の血流量の振幅について判断できればよいから、時間分解能は、血流周期程度の周波数が必要である。例えば、血流欠損評価モードに必要な時間分解能は、0.5-2Hzの周波数である。
【0098】
(肺動脈逆流比評価モード)
肺動脈弁逆流症の診断を行う肺動脈逆流比評価モードの判定を行う場合、配動脈の血流を把握することが必要であるから、肺の部分を撮影する必要がある。肺は空気が多いから実質的な体厚は薄くなる。したがって、血流欠損評価モードに必要な体厚は、例えば5cmでよいから、ファントムFで使用する板状部401は薄くてよい。5cmの体厚のときにX線撮影を行った場合に必要なコントラスト分解能、空間分解能、時間分解能について説明する。
【0099】
肺動脈弁逆流症では、肺動脈弁において逆流が生じ、右心室に逆向きに血液が漏れてジェット血流が生じる状態となっている。したがって、肺動脈弁逆流症の診断を行う場合、肺動脈逆流比の評価を行うことが有効である。肺動脈にジェット血流が生じているか否かを把握するためには、肺動脈の血流を把握することが必要である。肺動脈は毛細血管に比べて太く、肺動脈を流れる血流による放射線撮影のコントラスト変化は、毛細血管に比べて大きい。つまり、動態画像として、中程度のコントラスト分解能が必要である。例えば、必要なコントラスト分解能は、3-5%である。また、対象物(肺動脈)の大きさは5~20mmであるから、肺動脈の血流の有無を表現するために必要な空間分解能は5~20mmである。
【0100】
肺動脈逆流比評価モードの判定では、肺動脈のジェット血流を把握することが必要であるので、波形を把握することが必要である。つまり、時間分解能は血流周期の4~8倍程度の周波数が必要である。例えば、肺動脈逆流比評価モードに必要な時間分解能は、2.5-10Hzの周波数である。
【0101】
(左室駆出能力評価モード)
心不全は左室駆出率(LVEF:Left ventricular ejection fraction)により分類されるから、心不全の診断にあたって、左室駆出能力を評価することが有効であるから、心臓を撮影する必要がある。心臓は、肺に比べて放射線の透過が小さいので、体厚は比較的厚くなるので、左室駆出能力評価モードに必要な体厚は厚くなる。例えば、必要な体厚は10-15cmであり、ファントムFで使用する板状部401の厚さは厚くなる。10-15cmの体厚のときにX線撮影を行った場合に必要なコントラスト分解能、空間分解能、時間分解能について説明する。
【0102】
心室の血流量は大きいので、心室の血流量の変化による放射線撮影のコントラスト変化は大きい。つまり、動態画像として、コントラスト分解能はそれほど高くなくてもよい。例えば、必要なコントラスト分解能は、5-10%である。また、前記対象物(心室)の大きさは10~50mmであるから、心臓部の血流の有無を表現するために必要な空間分解能は10~50mmである。
【0103】
左室駆出能力評価モードの判定では、心拍に応じて左心室から送り出される血流の振幅を判断できればよいから、血流に応じた周波数が必要である。つまり、時間分解能は、血流に応じた周波数が必要である。例えば、左室駆出能力評価モードの判定に必要な時間分解能は、1-4Hzの周波数である。
【0104】
[2-4.静止画像の品質の判定]
ここで、ステップS304の詳細を説明する。ステップS304は、放射線撮影装置7がファントムFを撮影した静止画像が基準品質を満たしているか否か判定するステップである。
【0105】
図6は、静止画像が基準品質を満たしているか否か判定する詳細を示す。
【0106】
制御部201は、動態品質管理装置6の操作部205(以下、単に「操作部205」という)のユーザー操作による入力を受け付けて、判定対象の体厚に対応する、板状部401の厚さを設定する(S601)。また、制御部201は、操作部205のユーザー操作による入力を受け付けて、判定対象のコントラスト分解能及び空間分解能に対応する大きさの粒体402(粒体402a、402b、402c、402dのいずれか)を設定する(S602)。また、制御部201は、操作部205のユーザー操作による入力を受け付けて、判定対象の時間分解能に対応する支持部403の回転速度を設定する(S603)。
【0107】
そして、放射線撮影装置7が、ファントムFを用いて動態撮影を行う(S604)。つまり、放射線撮影装置7が、ファントムFに対してパルス照射又は連続照射による放射線照射を行い、ファントムFを被写体Sとする複数の静止画像を含む動態画像を得る。これにより制御部201は、撮影された複数の静止画像を取得する。なお、この間、ファントムFの粒体402は、設定された回転速度での支持部403の回転移動に伴って、設定された回転速度で回転移動する。支持部403の回転中心(十字の交差部分)をモータ(図示略)の出力軸と接続することで、モータ駆動により支持部403及び粒体402の回転を発生させることができる。また、モータの回転速度を切り替えることで、支持部403の回転速度を切り替えることができる。
【0108】
また、速度が滑らかに変化する対象を計測する場合は、回転速度に加えて加速度(角加速度)を変更してもよい。
【0109】
そして、制御部201は、動態撮影した複数の静止画像から対象となる静止画像を1つ決定する(S605)。
【0110】
制御部201は、操作部205のユーザー操作による入力を受け付けて、決定した静止画像から粒体402が写っている領域を選択する(S606)。図5に示す平面図のファントムFを用いる場合、1枚の静止画像で板状部401の厚さと粒体402の大きさの組合せに関して4パターンが撮影される。例えば、図5では、5cm体厚の3%コントラスト分解能(パターン1)、10cm体厚の1%コントラスト分解能(パターン2)、10cm体厚の5%コントラスト分解能(パターン3)、15cm体厚の10%コントラスト分解能(パターン4)を1回の撮影で測定することができる。支持部403を回転させると、時間により板状部401の厚さと粒体402の組合せが変化した静止画像が撮影される。したがって、撮影された複数の静止画像から、板状部401の厚さと粒体402の所望の組合せが撮影された静止画像を決定し、決定された静止画像から所望の組合せが写っている領域を選択すればよい。この選択は、ユーザーが目視の結果に基づいて手動で行ってもよいし、制御部201が所定の基準に従って自動で行ってもよい。
【0111】
そして、制御部201は、粒体が写っていない領域に対する、粒体が写っている領域のコントラスト比を算出する(S607)。
【0112】
そして、制御部201は、算出したコントラスト比が基準品質を満たしているか否か判定する(S608)。制御部201は、コントラスト比が基準品質以上であれば(S608においてYES)、「Pass」を、基準品質未満であれば(S608においてNO)、「Fail」を、それぞれ出力する。なお、基準品質は、例えばS/N(信号対雑音比)=1である。
【0113】
「Pass」であれば、ステップS601~S603(S302)で取得されたファントムFの設定値に対応した、体厚、コントラスト分解能、空間分解能、及び時間分解能で撮影する能力を放射線撮影装置7が有すると判定される。
【0114】
例えば、5cmの体厚に対応する板状部401の厚さ、10%のコントラスト分解能に対応する大きさの粒体を用いて、支持部403を2Hzで回転させたファントムFを用いて撮影された場合、撮影された静止画像の「粒体が写っている領域」と「粒体が写っていない領域」のコントラスト比が基準品質以上であれば、体厚5cm、コントラスト分解能10%、時間分解能2Hzは「Pass」と判定される。
【0115】
図7は、ステップS608(S304)で判定した結果の例を示す。図7は、16通りにファントムFを設定して放射線撮影装置により撮影された結果を示している。空間分解能はコントラスト分解能と合わせて評価されるので、図7では空間分解能は記載していない。図5に示す平面図のファントムFを用いる場合、1枚の静止画像で4つの板状部401の厚さ及び粒体の大きさの組合せの静止画像が撮影され、静止画像の選択と領域の選択により任意の体厚と粒体の大きさの組合せを得られるから、支持部403の回転速度を4通りに設定して撮影すれば図7に示す16通りの結果を得られる。
【0116】
[2-5.各評価モードの判定]
ステップS305は、ステップS303で取得した各評価モードで必要な体厚、コントラスト分解能、及び時間分解能の能力を、放射線撮影装置7が有しているか否か判定する。
【0117】
図8は、ステップS303で取得した、各評価モードの動態処理を行うために必要な分解能を示す。空間分解能はコントラスト分解能と合わせて評価されるので、図8では空間分解能は記載していない。
【0118】
例えば、血流欠損評価モードでは、体厚が5cmのときに、必要な時間分解能は0.5-2Hz、必要なコントラスト分解能は1-3%である。
【0119】
評価モードで使用される静止画像の1つでも品質を満たさない品質の静止画像があれば、正確な動態画像が出力されない。したがって、評価モードに必要な分解能を組合せた設定で撮影された静止画像が、全て「Pass」であれば、評価モードは「Pass(又は可能)」とされ、1つでも「Fail」の判定があれば、評価モードは「Fail(又は不可)」と判定される。
【0120】
血流欠損評価モードでは、体厚5cmのときに、時間分解能0.5-2Hz、コントラスト分解能1-3%であるから、「体厚5cm、時間分解能0.5Hz、コントラスト分解能1%」「体厚5cm、時間分解能0.5Hz、コントラスト分解能3%」「体厚5cm、時間分解能2Hz、コントラスト分解能1%」「体厚5cm、時間分解能2Hz、コントラスト分解能3%」の全ての判定が「Pass」の場合に、血流欠損評価モードが「Pass」と判定される。
【0121】
図7に示された生成した体厚、コントラスト分解能、時間分解能に関する情報によれば、体厚5cm、回転速度2Hz、コントラスト分解能1%で測定を行った判定結果は「Pass」である。また、体厚5cm、回転速度2Hz、コントラスト分解能3%で測定を行った判定結果も「Pass」である。「体厚5cm、時間分解能0.5Hz、コントラスト分解能1%」及び「体厚5cm、時間分解能0.5Hz、コントラスト分解能3%」の判定結果は存在していない。ファントムFを用いて新たに撮影してもよい。しかし、時間分解能2Hzよりも時間分解能0.5Hzの方が低い能力でよいことが明らかであるから、2Hzの時間分解能が「Pass」であれば、0.5Hzの時間分解能も「Pass」であると推測できる。つまり、動態品質管理装置は、新たにファントムFの設定をして測定をすることなく0.5Hzの時間分解能を「Pass」と推定してもよい。
【0122】
したがって、評価モードに必要な静止画像の品質は全て「Pass」であるから、血流欠損評価モードは「Pass」(図9において「可能」)と判定される。
【0123】
同様に、肺動脈逆流比評価モードは「Pass」(図9において「可能」)と判定される。
【0124】
一方、左室駆出能力評価モードについては、「体厚15cm、時間分解能4Hz、コントラスト分解能5%」が「Fail」であるから、左室駆出能力評価モードは「Fail」(図9において「不可」)と判定される。
【0125】
[2-6.まとめ]
出力された判定結果を参照すれば、撮影した放射線撮影装置7が各評価モードに撮影能力を有するか否か判定することができる。
【0126】
例えば、図9の判定結果が出力された場合、図7の結果を得た放射線撮影装置7は、血流欠損評価モードと肺動脈逆流比評価モードを行う場合の撮影能力はあるが、左室駆出能力評価モードを行う場合の撮影能力はない。つまり、心不全の診断を行う場合には、放射線撮影装置7を使用しても有効な動態画像を得ることができない。ただし、放射線撮影装置7は、肺塞栓及び肺動脈弁逆流症の診断での使用に有効な動態画像を得ることができる。
【0127】
したがって、放射線撮影装置7が、各評価モードに必要な品質の静止画像を得ることができるか否か、すなわち、評価モードを行うだけの必要な能力を有しているか否かを判定することができるので、動態撮影の品質を管理することができる。
【0128】
放射線撮影装置7がファントムFを使用して基準品質情報を取得し、各評価モードに必要な基準品質が得られているかを判定することで、放射線撮影装置7が各評価モードに必要な動態画像が得られるか否かを判定することができる。
【0129】
動態画像の品質基準情報は、体厚が大きくなるほど、時間分解能(周波数)が高くなるほど、コントラスト分解能(粒体)が小さくなるほど、基準品質を満たすことが困難となるから、最も体厚の数値が大きく、最もコントラスト分解能が小さく、最も時間分解能が高い動態画像の品質基準情報を用いて、各評価モードの解析の可否を判定してもよい。
【0130】
<変形例>
ファントムFは、十字型の支持部403の端部に配置された4個の半径の異なる粒体402を配置したが、支持部403の端部に配置する粒体402は4つ以外でもよい。また、支持部403は、十字型でなくてもよい。1つの支持部403の端部に、半径の異なる粒体402が変更可能に配置可能としてもよい。支持部403の端部に、同じ半径の粒体402を配置して、粒体402を変更可能に配置してもよい。また、他のファントムを使用することもできる。例えば、CDRADファントムを回転可能にアクリル板に固定してもよい。
体厚に対応して板状部401の厚さを変更する代わりに、板状部401の素材等を変更することにより放射線透過度を変更してもよい。
【0131】
基準品質情報は、3つの評価モードに対応する品質を例示したが、評価モードは3つでなくてもよい。他の評価モードに応じた品質が設定されてもよい。基準品質情報は、各評価モードに設定されているが、各評価モードに高精細な動態画像を表示することが可能なAランクの品質、通常の動態画像を表示することが可能なBランクの品質など、複数の品質が設定されてもよい。
【0132】
ステップS305の判定は、可能か不可かといった、放射線検出器2或いは放射線撮影装置7の撮影能力と所要撮影能力との比較結果ではなく、提供される動態画像の品質レベルが表示されてもよい。例えば、撮影された静止画像を使用した評価モードによって提供される動態画像の品質として、最高品質レベルに対する割合、例えば、80%の品質レベルである、60%の品質レベルである、等が判定され、出力されてもよい。さらに他の例として、提供される動態画像の品質レベルと基準品質レベルとが、並べて表示されてもよい。
【0133】
複数の放射線撮影装置が存在する場合には、どの放射線撮影装置が診断に必要な動態撮影を行うことが可能か予め判定することができるので、診断に必要な放射線撮影装置を予約することができる。
【0134】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例又は修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0135】
(1)本開示の一実施形態における動態品質管理装置が行う能力判定方法は、モデルへの放射線照射により放射線検出器が得た画像から、撮影能力を取得する取得ステップと、取得された前記撮影能力を、所定の動態解析における所要撮影能力との関係を示す態様で出力する出力ステップと、を有する。
【0136】
(2)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)の能力判定方法において、前記出力ステップは、取得された前記撮影能力と所定の動態解析における前記所要撮影能力との比較結果を出力する。
【0137】
(3)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)の能力判定方法において、前記所定の動態解析における所要撮影能力は、動態解析ごとの撮影能力であって、前記出力ステップは、前記放射線検出器が、前記動態解析ごとの撮影能力を有しているか否かを出力する。
【0138】
(4)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記撮影能力は、前記放射線検出器の撮影能力である。
【0139】
(5)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記撮影能力は、放射線撮影装置の撮影能力である。
【0140】
(6)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(5)の能力判定方法において、前記放射線撮影装置は、放射線発生装置と前記放射線検出器を有する。
【0141】
(7)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(6)の能力判定方法において、前記放射線撮影装置は、さらにコンソールを有する。
【0142】
(8)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記モデルは、放射線透過度が異なる複数の領域を有する。
【0143】
(9)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記モデルは、大きさの異なる複数の粒体を有する。
【0144】
(10)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記撮影能力は、撮影した画像のコントラストの変化量であるコントラスト分解能を含む。
【0145】
(11)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記撮影能力は、フレームレートである時間分解能を含む。
【0146】
(12)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記撮影能力は、撮影した画像の解像度である空間分解能を含む。
【0147】
(13)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記所定の動態解析は肺塞栓に関する動態解析であって、前記所要撮影能力は、体厚が5cmのときに、コントラスト分解能が1~3%、空間分解能が1~5mm、フレームレートが0.5~2.0Hzである。
【0148】
(14)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記所定の動態解析は肺動脈弁逆流症に関する動態解析であって、前記所要撮影能力は、体厚が5cmのときに、コントラスト分解能が3~5%、空間分解能が5~20mm、フレームレートが2.5~10Hzである。
【0149】
(15)本開示の一実施形態における能力判定方法は、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、前記所定の動態解析は心不全に関する動態解析であって、前記所要撮影能力は、体厚が10~15cmのときに、コントラスト分解能が5~10%、空間分解能が10~50mm、フレームレートが1.0~4Hzである。
【0150】
(16)本開示の一実施形態における能力判定装置は、モデルへの放射線照射により放射線検出器が得た画像から、撮影能力を取得する取得部と、取得された前記撮影能力を、所定の動態解析における所要撮影能力との関係を示す態様で出力する出力部と、を有する。
【0151】
(17)本開示の一実施形態における能力判定プログラムは、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法をコンピューターに実行させる。
【0152】
(18)本開示の一実施形態におけるファントムは、(1)から(3)のいずれか1つの能力判定方法において、モデルとして用いられるファントムであって、放射線透過度が異なる複数の領域、及び、放射線が前記領域を通過した後の位置に大きさの異なる複数の粒体を有する。
【0153】
(19)本開示の一実施形態におけるファントムは、(18)に記載のファントムにおいて、前記大きさの異なる複数の粒体は、移動可能である。
【0154】
(20)本開示の一実施形態における放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法は、放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法であって、放射線透過度と移動速度とを変更可能なモデルを用意する工程と、前記モデルの前記放射線透過度と前記移動速度との組合せを選択しつつ、前記モデルに放射線を照射して連続的に撮影された複数の画像を取得する工程と、取得した前記複数の画像の分解能を、撮影目的毎に設定された基準値と比較する比較工程と、前記比較の結果により、前記放射線撮影装置が所要撮影能力を有するか否かを判定する工程と、を有する。
【0155】
(21)本開示の一実施形態における放射線撮影装置の動態撮影能力の判定方法は、(20)に記載の判定方法において、前記画像の分解能は、コントラスト分解能、空間分解能、又は、時間分解能である。
【0156】
(22)本開示の一実施形態における放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置は、放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置であって、放射線透過度と移動速度とを変更可能なモデルに対して、前記モデルの前記放射線透過度と前記移動速度との組合せを選択しつつ、放射線を照射して連続的に撮影された複数の画像を取得する画像取得部と、取得した前記複数の画像の分解能を、撮影目的毎に設定された基準値と比較する比較部と、前記比較の結果により、前記放射線撮影装置が所要撮影能力を有するか否かを判定する判定部と、を有する。
【0157】
(23)本開示の一実施形態における放射線撮影装置の動態撮影能力の判定装置は、(22)に記載の判定装置において、前記画像の分解能は、コントラスト分解能、空間分解能、又は、時間分解能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本開示は、放射線を用いた動態撮影における品質管理に有用である。
【符号の説明】
【0159】
1 放射線発生装置
2 放射線検出器
3 コンソール
4 解析装置
5 光学カメラ
6 動態品質管理装置
7 放射線撮影装置
11 ジェネレーター
12 照射指示スイッチ
13 放射線源
100 放射線撮影システム
201 制御部
202 記憶部
203 表示部
204 通信部
205 操作部
401 板状部
402、402a、402b、402c、402d 粒体
403 支持部
F ファントム
R 放射線
S 被写体
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9