IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-車両部品の締結構造 図1
  • 特開-車両部品の締結構造 図2
  • 特開-車両部品の締結構造 図3
  • 特開-車両部品の締結構造 図4
  • 特開-車両部品の締結構造 図5
  • 特開-車両部品の締結構造 図6
  • 特開-車両部品の締結構造 図7
  • 特開-車両部品の締結構造 図8
  • 特開-車両部品の締結構造 図9
  • 特開-車両部品の締結構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169295
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両部品の締結構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B62D37/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010754
(22)【出願日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2023086134
(32)【優先日】2023-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕隆
(57)【要約】
【課題】車体に取り付けられる車両部品において、強固な締結を実現しつつ、締結部に発生する応力を低減させる技術を提供すること。
【解決手段】締結部材により車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造であって、構成面と、前記構成面から前記車体側へ突出し、前記締結部材を取り付け可能な台座部と、前記台座部に前記車体側の反対側から積層された補強部材と、を備え、前記台座部は、前記締結部材を挿入する開口部と、前記車体に対向する対向面と、前記対向面に交差する方向に延びて前記構成面に接続する側壁と、を有し、前記側壁は、前記締結部材の挿入方向に沿う第1の側壁と、前記開口部に対向する側の側壁である第2の側壁とを含み、前記第1の側壁は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びている、締結構造を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部材により車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造であって、
構成面と、
前記構成面から前記車体側へ突出し、前記締結部材を取り付け可能な台座部と、
前記台座部に前記車体側の反対側から積層された補強部材と、を備え、
前記台座部は、
前記締結部材を挿入する開口部と、
前記車体に対向する対向面と、
前記対向面に交差する方向に延びて前記構成面に接続する側壁と、を有し、
前記側壁は、前記締結部材の挿入方向に沿う第1の側壁と、前記開口部に対向する側の側壁である第2の側壁とを含み、
前記第1の側壁は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びている、締結構造。
【請求項2】
前記対向面のうち、前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びている、請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
前記構成面のうち、前記側壁で囲まれた部分には貫通孔が設けられており、
前記車体側から平面視した場合に、前記貫通孔は、前記接続部分における前記第2の側壁の反対側の端部を起点として、前記第1の側壁から離間している、請求項2に記載の締結構造。
【請求項4】
前記車体側から平面視した場合に、前記貫通孔における前記第2の側壁の反対側の周縁は、前記第2の側壁とは反対側へ向かって湾曲した湾曲部を有しており、
該湾曲部が前記第1の側壁に接続されている、請求項3に記載の締結構造。
【請求項5】
前記側壁は、前記挿入方向に沿う一対の前記第1の側壁を含み、
前記対向面のうち、一方の前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びており、
前記対向面のうち、他方の前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えない、請求項1に記載の締結構造。
【請求項6】
前記車両部品がリアスポイラーである、請求項1から5のいずれか一項に記載の締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、車両部品の締結構造に関する。より詳しくは、車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、様々な目的で様々なパーツが取り付けられている。例えば、衝撃時に搭乗者の身を守るためのエアバック、衝撃エネルギーを吸収するためのEA材、走行時の空気の流れを調整し、走行時の操縦性や快適性を高めるためのスポイラー等、用途も機能も様々なパーツ(車両部品)が多数取り付けられる。
【0003】
車体に車両部品を取り付ける場合、衝撃時はもちろんのこと、走行時や洗車時等の負荷にも耐えられるような構造であることが求められ、車両部品を車体に締結するための締結構造が非常に重要である。
【0004】
例えば、特許文献1には、フロントバンパカバーのバンパ下部に設けられ、固定部の端部を起点に車両前方側に回転する可動部を有する可動スポイラにおいて、前記可動スポイラの前記固定部の先端側を構成し、前記バンパ下部のバンパ側締結部の車両前方側に重ねられたスポイラ側締結部と、前記スポイラ側締結部の車両前方側に重ねられ、前記バンパ側締結部の車両後方側に重ねられたリテーナとで挟み締結されたプロテクタ側締結部を有するプロテクタと、前記プロテクタに設けられ、前記プロテクタ側締結部から前記可動スポイラの前記固定部の前記端部まで延在する保護部と、を備えることで、可動スポイラの固定部やフロントバンパの耐久性を向上する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ブロー成形によって中空部が形成された樹脂製のスポイラー本体に被締結部材がねじ部材によって締結されるブロー成形スポイラーにおいて、該スポイラー本体の下側壁部に、上記ねじ部材が螺合可能な螺合孔を有すると共に該螺合孔の周辺に上記被締結部材の締結座が当接する取付部を有するプレート部材が上記取付部を外表面に露出させた状態でインサート成形されており、上記被締結部材は上記スポイラー本体に、上記ねじ部材が上記スポイラー本体の下側壁部を貫通した状態で上記プレート部材の螺合孔に螺合することによって、締結することを特徴とする締結構造を備えることで、取付剛性を確保しつつ、ウイング部のように上下幅の小さい部分にも上側壁部と下側壁部とが溶着しない締結構造を設けることができるようにすると共に被締結部の取付面を高精度の平滑面に形成できるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-100579号公報
【特許文献2】実開平6-59027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、車体に車両部品を取り付ける際の締結構造については、様々な開発が進められているが、更なる技術開発が望まれているのが実情である。例えば、車両部品への負荷に対応するために、締結構造を強固にすると、締結の弛みを防止することはできるが、車両部品への負荷に起因して車両部品に亀裂が生じたり、車両部品が破壊されたりする問題があった。
【0008】
そこで、本技術では、車体に取り付けられる車両部品において、強固な締結を実現しつつ、締結構造に発生する応力を低減させる技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術では、まず、締結部材により車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造であって、
構成面と、
前記構成面から前記車体側へ突出し、前記締結部材を取り付け可能な台座部と、
前記台座部に前記車体側の反対側から積層された補強部材と、を備え、
前記台座部は、
前記締結部材を挿入する開口部と、
前記車体に対向する対向面と、
前記対向面に交差する方向に延びて前記構成面に接続する側壁と、を有し、
前記側壁は、前記締結部材の挿入方向に沿う第1の側壁と、前記開口部に対向する側の側壁である第2の側壁とを含み、
前記第1の側壁は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びている、締結構造を提供する。
本技術に係る締結構造において、前記対向面のうち、前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びていてもよい。
本技術に係る締結構造において、前記構成面のうち、前記側壁で囲まれた部分には貫通孔が設けられており、
前記車体側から平面視した場合に、前記貫通孔は、前記接続部分における前記第2の側壁の反対側の端部を起点として、前記第1の側壁から離間していてもよい。
前記車体側から平面視した場合に、前記貫通孔における前記第2の側壁の反対側の周縁は、前記第2の側壁とは反対側へ向かって湾曲した湾曲部を有しており、該湾曲部が前記第1の側壁に接続されていてもよい。
本技術に係る締結構造において、前記側壁は、前記挿入方向に沿う一対の前記第1の側壁を含み、
前記対向面のうち、一方の前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びており、
前記対向面のうち、他方の前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えないように構成されていてもよい。
本技術に係る締結構造は、スポイラーに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術に係る締結構造1の第1実施形態を備えた車両部品Pの一例を模式的に示す模式的斜視図である。
図2】Iは、図1の破線円部分を拡大した図であり、本技術に係る締結構造1の第1実施形態を模式的に示す模式的拡大斜視図である。IIは、IのX-X線端面図である。
図3図1に示す車両部品Pの車体Bへの取り付け方法の一例を模式的に示す模式的斜視図である。
図4】本技術に用いる補強部材13の一例を模式的に示す模式的斜視図である。
図5】本技術に係る締結構造1の第1実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。
図6】本技術に係る締結構造1の第2実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。
図7】Iは、本技術に係る締結構造1の第3実施形態を模式的に示す模式的拡大斜視図である。IIは、本技術に係る締結構造1の第3実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。
図8】Iは、本技術に係る締結構造1の第3実施形態の変形例を模式的に示す模式的拡大斜視図である。IIは、本技術に係る締結構造1の第3実施形態の変形例を車体B側から平面視した模式的平面図である。
図9】本技術に係る締結構造1の第4実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。
図10】従来の締結構造1の一例を、車体B側から平面視した模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
1.締結構造1
[全体構造]
図1は、本技術に係る締結構造1の第1実施形態を備えた車両部品Pの一例を模式的に示す模式的斜視図である。図2のIは、図1の破線円部分を拡大した図であり、本技術に係る締結構造1の第1実施形態を模式的に示す模式的拡大斜視図である。図2のIIは、図2のIのX-X線端面図である。車両部品Pは、例えば、図3に示すように、締結構造1によって車体Bに締結される。締結構造1では、図示しないが、例えば、各種ネジやボルト等の締結部材により車両部品Pが車体Bへ締結される。
【0013】
なお、各図では、車両部品Pの一例として、テールゲートスポイラーSを例示したが、これに限定されない。本技術に係る締結構造1は、車体Bに取り付けられる車両部品Pであれば、あらゆる種類の車両部品Pに用いることができる。
【0014】
車両としては、例えば、自動車、自動二輪車、電車、モノレール、リニアモーターカー、ディーゼル機関車等が挙げられ、自動車に特に好適に用いることができる。車両部品Pとしては、例えば、各種スポイラー、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー等の自動車外装部品に好適に用いることができる。
【0015】
特に本技術においては、車体Bの外側に取り付けられる車両部品Pの締結に際しても、後述するように、強固な締結を実現しつつ、車両部品Pへの負荷に起因して締結構造に発生する応力を低減させることができるため、車両部品Pの破損等を抑制することができる。そのため、本技術に係る締結構造1は、スポイラー等に特に好適に用いることができる。以下、本技術に係る締結構造1の詳細を説明する。
【0016】
(1)構成面11
締結構造1は、構成面11と台座部12と補強部材13とを備える。構成面11は、本技術に係る車両部品Pを構成する面であり、構成面11には、車両部品Pの種類や用途、車体Bの形態等に応じて、その他の構成を備えることも可能である。
【0017】
(2)台座部12
台座部12は、構成面11から車体B側へ突出し、締結部材を取り付け可能に構成されている。台座部12には、締結部材を挿入する開口部121(図2のIの薄墨色で示す部分)が形成されており、また、車体Bと対向する対向面122を有している。この対向面122が車体Bに対向した状態で、例えば、図示しないが、各種ネジ等の締結部材を、開口部121から挿入して、取付部1221を通して取り付けることで、車両部品Pが車体Bへ締結される。
【0018】
また、台座部12は、対向面122に交差する方向に延びて前記構成面11に接続する側壁と、を有し、側壁は、締結部材の挿入方向(図2矢印I方向)に沿う第1の側壁1231と、開口部121に対向する側の側壁である第2の側壁1232とを含む。
【0019】
台座部12の形態は、締結部材を取り付け可能で、車体Bへの締結を行うことができれば、特に限定されず、用いる車両部品P、車体B、締結部材等の形態等に応じて、自由に設計することができる。例えば、直方体、立方体等の多角方体、断面が多角(三角、四角或いはそれ以上)の多角筒体、円筒体、或いはこれらを1種又は2種以上組み合わせた形態などが挙げられる。なお、台座部12の本技術の特徴は、後述の各実施形態で説明する。
【0020】
(3)補強部材13
補強部材13は、台座部12に車体B側の反対側から積層されている。補強部材13を備えることで、台座部12の強度を向上させ、車両部品Pに負荷が加わった際の台座部12の破損を防止することができる。補強部材13は、構成面11、又は台座部12よりも硬い部材、例えば金属からなる。補強部材13に用いることができる金属としては、例えば、軟鋼、表面処理鋼、ステンレス鋼等の鉄鋼;アルミニウム;銅;真鍮;ニッケル等が挙げられる。
【0021】
補強部材13には、台座部12と同様に開口部131(図2のIの薄墨色で示す部分)と、挿入された締結部材を取り付ける取付部1331とが形成されており、締結部材を台座部12の開口部121から挿入するとともに補強部材13の開口部131から挿入して、これらの取付部1221,1331を通して取り付けることで、締結部材により補強部材13が台座部12に対して固定されるとともに、車体Bへ締結される。
【0022】
補強部材13は、台座部12周辺の構成面11に車体B側の反対側から積層されたフランジ部132を有することが好ましい。フランジ部132を設けることで、台座部12周辺の構成面11の強度も向上させることができ、車両部品Pに負荷が加わった際に、台座部12の破損のみならず、台座部12周辺の構成面11の破損も防止することができる。
【0023】
図4に示すように、補強部材13は、第2の側壁1232およびフランジ部132の開口部121に対向する側の端部から、フランジ部132に交差する方向であって取付部1331とは逆側に延びる延長部133を有していてもよい。延長部133を設けることで、台座部12周辺の構成面11の強度も向上させることができ、車両部品Pに負荷が加わった際に、台座部12の破損のみならず、台座部12周辺の構成面11の破損も防止することができる。
【0024】
[第1実施形態]
図5は、本技術に係る締結構造1の第1実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。第1実施形態において、台座部12の第1の側壁1231は、補強部材13の外縁1311を越えて第2の側壁1232の反対側へ延びている。
【0025】
構成面11や台座部12では、補強部材13が積層されている部分に比べて、補強部材13が積層されていない部分の方が、強度が低い。このため、車両部品Pに負荷が加わった場合、補強部材13の外縁1311部分を起点として台座部12や構成面11に亀裂や破損が発生する可能性が高い。特に、例えば、図10に示す従来の締結構造10のように、台座部120の開口部側の補強部材130の外縁13110が、第1の側壁12310の開口部側(第2の側壁12320の反対側)の端部12310e近辺にあると、第1の側壁12310の端部12310eを起因とした構成面110の強度低下部分と、補強部材130の外縁13110を起因とした構成面110の強度低下部分が重なり、開口部側(第2の側壁12320の反対側)の補強部材130の外縁13110近辺を起点とする破損が生じやすい。そこで、本技術では、図5に示すように、第1の側壁1231を、補強部材13の外縁1311を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばすことで、補強部材13の外縁1311と、第1の側壁1231の端部1231eとが離間するため、車両部品Pに負荷が加わった際に締結構造1に発生する応力が、第1の側壁1231を伝わって、補強部材13の外縁1311から離れた構成面11に抜けることで、開口部側(第2の側壁1232の反対側)の補強部材13の外縁1311近辺を起点とする亀裂や破損を防止することができる。その結果、ボルト、ナットといった締結部品の数を減らし、車両部品Pの軽量化や、締結部品の数の削減によるコストダウンの実現も可能となる。
【0026】
[第2実施形態]
図6は、本技術に係る締結構造1の第2実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。第2実施形態において、対向面122のうち、第1の側壁1231に接続する接続部分1222(図6の薄墨色線で示す部分)は、補強部材13の外縁1311を越えて第2の側壁1232の反対側へ延びている。即ち、第2実施形態では、第1の側壁1231を、補強部材13の外縁を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばすことに加えて、第1の側壁1231に接続する対向面122も、補強部材13の外縁を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばされていることを特徴とする。
【0027】
前述した通り、前記第1実施形態では、第1の側壁1231を、補強部材13の外縁を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばすことで、車両部品Pに負荷が加わった際に締結構造1に発生する応力が、第1の側壁1231を伝わって、補強部材13の外縁1311から離れた構成面11に抜けることで、開口部側(第2の側壁1232の反対側)の補強部材13の外縁1311近辺を起点とする亀裂や破損を防止することができるが、第2実施形態では、更に、第1の側壁1231に接続する対向面122も、補強部材13の外縁を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばすことで、車両部品Pに負荷が加わった際に締結構造1に発生する応力が、第1の側壁1231及び対向面122に分散されながら、補強部材13の外縁1311から離れた構成面11に抜けるため、開口部側(第2の側壁1232の反対側)の補強部材13の外縁1311近辺へかかる応力を更に低減することができる。
【0028】
接続部分1222の第2の側壁1232の反対側の端部1222eは、車体B側から平面視したときに、R加工が施されていることが好ましい。車両部品Pに負荷が加わった際に締結構造1に発生する応力が端部1222eに集中することで、端部1222eが起点となって、亀裂や破損が生じる可能性があるが、端部1222eにR加工を施すことで、締結構造1に発生する応力が端部1222eに集中することなく、Rに沿って分散するため、端部1222eを起点とする亀裂や破損を防止することができる。
【0029】
[第3実施形態]
図7のIは、本技術に係る締結構造1の第3実施形態を模式的に示す模式的拡大斜視図であり、図7のIIは、本技術に係る締結構造1の第3実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。第3実施形態において、構成面11のうち、台座部12の側壁1231,1232で囲まれた部分には貫通孔Hが設けられており、車体B側から平面視した場合に、貫通孔Hは、対向面122のうち第1の側壁1231に接続する接続部分1222における前記第2の側壁1232の反対側の端部1222eを起点として、第1の側壁1231から離間している。
【0030】
図7に示すように、第3実施形態では、第1の側壁1231を、補強部材13の外縁1311を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばすと共に、貫通孔Hの形状を工夫して、第1の側壁1231の延ばした部分を貫通孔Hと離間させることで、車両部品Pに負荷が加わった際に締結構造1に発生する応力を低減することができる。
【0031】
より具体的には、前述した第1実施形態や第2実施形態のように、第1の側壁1231を、補強部材13の外縁1311を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばすことで、車両部品Pに負荷が加わった際に補強部材13の外縁1311に発生する応力を低減することができるが、第1の側壁1231の延ばした部分(接続部分1222の端部1222eから第1の側壁1231の端部1231eまでの部分)に応力が集中しやくすなる。そこで、第3実施形態では、車体B側から平面視した場合に、貫通孔Hを、対向面122のうち第1の側壁1231に接続する接続部分1222における前記第2の側壁1232の反対側の端部1222eを起点として、第1の側壁1231から離間させることで、第1の側壁1231の延ばした部分の両面が構成面11と接続されるため、車両部品Pに負荷が加わった際に締結構造1に発生する応力を、第1の側壁1231の延ばした部分から構成面11へ向かって3次元的に分散させることができる(図7Iの矢印参照)。その結果、補強部材13の外縁1311や貫通孔Hの周辺部分を起点とする亀裂や破損を防止することができ、ボルト、ナットといった締結部品の数を減らしたり、車両部品Pの軽量化や、締結部品の数の削減によるコストダウンの実現も可能となる。
【0032】
貫通孔Hにおける第2の側壁1232の反対側の周縁は、車体B側から平面視した場合に、第2の側壁1232とは反対側へ向かって湾曲した湾曲部Wを有しており、該湾曲部Wが第1の側壁1231に接続されていることが好ましい。例えば、図8に示す第3実施形態の変形例のように、貫通孔Hにおける第2の側壁1232の反対側の周縁が直線的に構成されている場合に比べ(図8IIの一点鎖線参照)、図7に示す第3実施形態のように、第2の側壁1232とは反対側へ向かって湾曲しており、その湾曲した湾曲部Wが直接、第1の側壁1231に接続していることで、車両部品Pに負荷が加わった際に締結構造1に発生する応力を、湾曲方向に分散させることができる。その結果、貫通孔Hの周縁部分を起点とする亀裂や破損を防止することができ、ボルト、ナットといった締結部品の数を減らしたり、車両部品Pの軽量化や、締結部品の数の削減によるコストダウンの実現も可能となる。
【0033】
[第4実施形態]
図9は、本技術に係る締結構造1の第4実施形態を車体B側から平面視した模式的平面図である。第4実施形態において、側壁は、挿入方向I(図2参照)に沿う一対の第1の側壁1231a,1231bを含み、対向面122のうち、一方の第1の側壁1231aに接続する接続部分1222(図9の薄墨色線で示す部分)は、補強部材13の外縁1311を越えて第2の側壁1232の反対側へ延びており、対向面122のうち、他方の第1の側壁1231bに接続する接続部分1223(図9の薄墨色線で示す部分)は、補強部材13の外縁1311を越えないことを特徴とする。
【0034】
補強部材13は、車体B側とは反対側から積層されているため、車両部品Pを車体Bへ取り付ける際に、視認することができない。そこで、一方の第1の側壁1231aに接続する接続部分1222は、補強部材13の外縁1311を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばすことにより、前述した第2実施形態のように、車両部品Pに負荷が加わった際に締結部に発生する応力の分散に寄与しつつ、他方の第1の側壁1231bに接続する接続部分1223は、補強部材13の外縁1311を越えないように構成することで、接続部分1223よりも第2の側壁1232の反対側の部分は、補強部材13が対向面122で覆われていないため、補強部材13を車体B側から視認することができる。補強部材13を車体B側から視認できるようにすることで、車両部品Pを車体Bへ取り付ける際の作業性を向上させると共に、車両部品Pの不良品の発見を容易にすることができる。
【0035】
以上説明した本技術に係る締結構造1は、車両部品Pのあらゆる箇所に用いることができるが、応力が発生する方向が予め解っている場合には、補強部材13の外縁を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばされた第1の側壁1231(1231a)が、応力が発生する方向(応力方向)に設けられていることが好ましい。具体的には、例えば、図1図9の実施形態のように、本技術に係る締結構造1をテールゲートスポイラーSに用いる場合、補強部材13の外縁を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばされた第1の側壁1231(1231a)が、車両の後方に設けられていることが好ましい。このように、補強部材13の外縁を越えて第2の側壁1232の反対側へ延ばされた第1の側壁1231(1231a)を、応力が発生する方向(応力方向)に設けることにより、車体Bとの締結部に伝わる応力をより効果的に低減させることができる。
【0036】
2.スポイラーS
本技術に係るスポイラーSは、前述した本技術に係る締結構造1を有する。本技術に係るスポイラーSには、例えば、前述した図1に示す第1実施形態のように、一つの締結構造1を備えていてもよいが、例えば、図示しないが、一つのスポイラーSに、複数の締結構造1を備えていてもよい。スポイラーSに、本技術に係る締結構造1を複数備える場合、その数も特に限定されず、用いるスポイラーSや車体Bの形態等に応じて、2以上の任意の数の締結構造1を備えることができる。
【0037】
スポイラーSに、本技術に係る締結構造1を複数備える場合、それぞれの締結構造1は、前述した範囲内で個々に設計変更が可能である。即ち、本技術に係るスポイラーSには、異なる形態の締結構造1を複数備えることも可能である。
【0038】
本技術に係るスポイラーSの種類は特に限定されない。例えば、フロントバンパースポイラー、フロントアンダースポイラー、ハーフスポイラー、サイドスポイラー、テールゲートスポイラー、リアバンパースポイラー、トランクスポイラー、ルーフスポイラー等が挙げられる。
【0039】
なお、本技術は、以下のように構成することも可能である。
[1]
締結部材により車両部品を車体に締結するための車両部品の締結構造であって、
構成面と、
前記構成面から前記車体側へ突出し、前記締結部材を取り付け可能な台座部と、
前記台座部に前記車体側の反対側から積層された補強部材と、を備え、
前記台座部は、
前記締結部材を挿入する開口部と、
前記車体に対向する対向面と、
前記対向面に交差する方向に延びて前記構成面に接続する側壁と、を有し、
前記側壁は、前記締結部材の挿入方向に沿う第1の側壁と、前記開口部に対向する側の側壁である第2の側壁とを含み、
前記第1の側壁は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びている、締結構造。
[2]
前記対向面のうち、前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びている、[1]に記載の締結構造。
[3]
前記構成面のうち、前記側壁で囲まれた部分には貫通孔が設けられており、
前記車体側から平面視した場合に、前記貫通孔は、前記接続部分における前記第2の側壁の反対側の端部を起点として、前記第1の側壁から離間している、[2]に記載の締結構造。
[4]
前記車体側から平面視した場合に、前記貫通孔における前記第2の側壁の反対側の周縁は、前記第2の側壁とは反対側へ向かって湾曲した湾曲部を有しており、
該湾曲部が前記第1の側壁に接続されている、[3]に記載の締結構造。
[5]
前記側壁は、前記挿入方向に沿う一対の前記第1の側壁を含み、
前記対向面のうち、一方の前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えて前記第2の側壁の反対側へ延びており、
前記対向面のうち、他方の前記第1の側壁に接続する接続部分は、前記補強部材の外縁を越えない、[1]から[4]のいずれかに記載の締結構造。
[6]
前記車両部品がリアスポイラーである、[1]から[5]のいずれか一項に記載の締結構造。
[7]
[1]から[6]のいずれか一項に記載の車両部品の締結構造を有する、スポイラー。
[8]
[1]から[6]のいずれか一項に記載の車両部品の締結構造、又は、[7]に記載のスポイラーを有する、車両。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本技術は、自動車、自動二輪車、電車、モノレール、リニアモーターカー、ディーゼル機関車等の車両に限らず、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、航空機等の乗物、農業機械、建設機械等の各種機械の締結構造にも用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 締結構造
11 構成面
12 台座部
121,131 開口部
122 対向面
1221,1331 取付部
1231,1231a,1231b 第1の側壁
1232 第2の側壁
13 補強部材
132 フランジ部
133 延長部
P 車両部品
B 車体
S スポイラー
H 貫通孔
W 湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10