(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169305
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241128BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241128BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L29/78 652B
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653C
H01L29/78 655B
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652S
H01L29/78 653B
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037474
(22)【出願日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2023085496
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 功
(57)【要約】
【課題】半導体装置の飽和電流およびオン電圧等の特性を向上する。
【解決手段】半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有するゲートトレンチ部と、前記半導体基板において前記上面に露出して設けられ、前記ゲートトレンチ部に接しており、且つ、前記第1方向の長さが、前記第1方向と直交する第2方向の長さよりも長い、第1導電型のエミッタ領域と、前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部に接している、第2導電型のベース領域と、前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極と、前記エミッタ領域と前記エミッタ電極との間に設けられた抵抗部とを備える半導体装置を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備える半導体装置であって、
前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有するゲートトレンチ部と、
前記半導体基板において前記上面に露出して設けられ、前記ゲートトレンチ部に接しており、且つ、前記第1方向の長さが、前記第1方向と直交する第2方向の長さよりも長い、第1導電型のエミッタ領域と、
前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部に接している、第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極と、
前記エミッタ領域の下端と前記エミッタ電極との間に設けられた抵抗部と
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記抵抗部は、前記エミッタ領域と前記エミッタ電極との間に設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記抵抗部は、前記第1方向の長さが、前記第1方向と直交する第2方向の長さよりも長い
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記エミッタ領域の全体が、前記抵抗部に覆われている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板において前記上面に露出して設けられ、且つ、前記上面において前記エミッタ領域に接して設けられた、第2導電型のコンタクト領域を更に備え、
前記抵抗部は、前記コンタクト領域の少なくとも一部を覆わないように配置されている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有するダミートレンチ部を更に備え、
前記半導体基板の前記上面において前記コンタクト領域は前記ダミートレンチ部と接しており、
前記抵抗部は、前記コンタクト領域と前記ダミートレンチ部との境界部分を覆わないように配置されている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2方向において、前記ゲートトレンチ部と並んで配置され、前記第1方向に長手を有する1つ以上のトレンチ部を更に備え、
前記抵抗部は、前記ゲートトレンチ部および前記エミッタ領域の前記第2方向における全体と重なり、且つ、前記ゲートトレンチ部の隣りの前記トレンチ部と重ならないように配置されている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1方向において、複数の前記エミッタ領域が離散して配置されており、
前記第1方向において、複数の前記抵抗部が離散して配置されている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1方向において、複数の前記エミッタ領域が離散して配置されており、
前記第1方向において、2つ以上の前記エミッタ領域に跨って、前記抵抗部が連続して配置されている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記抵抗部は、ポリシリコン抵抗部である
請求項2から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ポリシリコン抵抗部は、第1導電型の不純物が添加されている
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ポリシリコン抵抗部の不純物濃度が、1×1014/cm3以上、1×1015/cm3以下である
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ポリシリコン抵抗部において、前記エミッタ電極と接する領域、および、前記エミッタ領域と接する領域の不純物濃度のいずれもが、前記ポリシリコン抵抗部の深さ方向における中央の不純物濃度よりも高い
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ポリシリコン抵抗部の深さ方向における厚みが、0.1μm以上、1μm以下である
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板の前記上面において前記第1方向に長手を有し、且つ、前記エミッタ電極と接続されるダミートレンチ部を更に備え、
前記ダミートレンチ部には、前記エミッタ領域が接していない
請求項2から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ダミートレンチ部は、ダミー絶縁膜と、ダミー導電部とを有し、
前記ダミー導電部は前記エミッタ電極と接続している
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記半導体基板の前記上面に設けられ、内部に前記エミッタ電極が充填されるトレンチコンタクト部を更に備え、
前記ダミートレンチ部が、前記トレンチコンタクト部の底面に設けられている
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項18】
1つの前記トレンチコンタクト部の底面に、2つ以上の前記ダミートレンチ部が設けられている
請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記エミッタ領域は、
前記半導体基板の前記上面に接する第1エミッタ部分と、
前記第1エミッタ部分の下に設けられ、前記第1エミッタ部分よりもドーピング濃度が低い第2エミッタ部分と
を有し、
前記第2エミッタ部分は、深さ方向のドーピング濃度分布が平坦な平坦部分、深さ方向においてドーピング濃度が極小値を示す谷部、または、深さ方向においてドーピング濃度が極大値を示し且つ第1エミッタ部分よりも低濃度のピークのいずれかを有し、
前記第2エミッタ部分が前記抵抗部である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記エミッタ領域は、前記第2エミッタ部分の下に設けられ、前記第2エミッタ部分よりもドーピング濃度が高い第3エミッタ部分をさらに有する
請求項19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記第3エミッタ部分は、前記第1エミッタ部分よりもドーピング濃度が低い
請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記ゲートトレンチ部は、
前記半導体基板の内部に設けられたゲート導電部と、
前記ゲート導電部と前記半導体基板との間に設けられたゲート絶縁膜と
を有し、
前記ゲート導電部の上端が、前記第3エミッタ部分と向かい合って配置されている
請求項20に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記エミッタ電極は、前記第1エミッタ部分と接しており、前記第2エミッタ部分および前記第3エミッタ部分と接していない
請求項20から22のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記半導体基板の上面から前記ベース領域の上端よりも深くまで設けられ、導電性の材料で形成されたトレンチコンタクト部を更に備え、
前記第1エミッタ部分が、前記トレンチコンタクト部に接しており、
前記第2エミッタ部分、および、前記第3エミッタ部分は、前記トレンチコンタクト部に接していない
請求項20から22のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記トレンチコンタクト部と、前記第2エミッタ部分および前記第3エミッタ部分との間に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型の第1の高濃度領域と、
前記トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型の第2の高濃度領域と
を更に備え、
前記第1の高濃度領域は、前記第2の高濃度領域よりもドーピング濃度が低い
請求項24に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記トレンチコンタクト部と、前記第2エミッタ部分および前記第3エミッタ部分との間に設けられたコンタクト絶縁膜と、
前記トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型の高濃度領域と
を更に備える請求項24に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体装置において、エミッタ領域の配置等を変更し、特性を調整する技術が知られている(例えば、特許文献1-3参照)。
特許文献1 特開2008-91491号公報
特許文献2 特開平10-173170号公報
特許文献3 特開平9-283755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、飽和電流およびオン電圧等の特性を向上することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備える半導体装置を提供する。上記半導体装置は、前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有するゲートトレンチ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板において前記上面に露出して設けられ、前記ゲートトレンチ部に接しており、且つ、前記第1方向の長さが、前記第1方向と直交する第2方向の長さよりも長い、第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部に接している、第2導電型のベース領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記エミッタ領域の下端と前記エミッタ電極との間に設けられた抵抗部を備えてよい。
【0005】
上記何れかの半導体装置において前記抵抗部は、前記エミッタ領域と前記エミッタ電極との間に設けられていてよい。
【0006】
上記何れかの半導体装置において、前記抵抗部は、前記第1方向の長さが、前記第1方向と直交する第2方向の長さよりも長くてよい。
【0007】
上記何れかの半導体装置において、前記エミッタ領域の全体が、前記抵抗部に覆われていてよい。
【0008】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板において前記上面に露出して設けられ、且つ、前記上面において前記エミッタ領域に接して設けられた、第2導電型のコンタクト領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記抵抗部は、前記コンタクト領域の少なくとも一部を覆わないように配置されていてよい。
【0009】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有するダミートレンチ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記半導体基板の前記上面において前記コンタクト領域は前記ダミートレンチ部と接していてよい。上記何れかの半導体装置において、前記抵抗部は、前記コンタクト領域と前記ダミートレンチ部との境界部分を覆わないように配置されていてよい。
【0010】
上記何れかの半導体装置は、前記第2方向において、前記ゲートトレンチ部と並んで配置され、前記第1方向に長手を有する1つ以上のトレンチ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記抵抗部は、前記ゲートトレンチ部および前記エミッタ領域の前記第2方向における全体と重なり、且つ、前記ゲートトレンチ部の隣りの前記トレンチ部と重ならないように配置されていてよい。
【0011】
上記何れかの半導体装置は、前記第1方向において、複数の前記エミッタ領域が離散して配置されていてよい。上記何れかの半導体装置は、前記第1方向において、複数の前記抵抗部が離散して配置されていてよい。
【0012】
上記何れかの半導体装置は、前記第1方向において、複数の前記エミッタ領域が離散して配置されていてよい。上記何れかの半導体装置は、前記第1方向において、2つ以上の前記エミッタ領域に跨って、前記抵抗部が連続して配置されていてよい。
【0013】
上記何れかの半導体装置において、前記抵抗部はポリシリコン抵抗部であってよい。
【0014】
上記何れかの半導体装置において、前記ポリシリコン抵抗部は、第1導電型の不純物が添加されていてよい。
【0015】
上記何れかの半導体装置において、前記ポリシリコン抵抗部の不純物濃度が、1×1014/cm3以上、1×1015/cm3以下であってよい。
【0016】
上記何れかの半導体装置は、前記ポリシリコン抵抗部において、前記エミッタ電極と接する領域、および、前記エミッタ領域と接する領域の不純物濃度のいずれもが、前記ポリシリコン抵抗部の深さ方向における中央の不純物濃度よりも高くてよい。
【0017】
上記何れかの半導体装置において、前記ポリシリコン抵抗部の深さ方向における厚みが、0.1μm以上、1μm以下であってよい。
【0018】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面において前記第1方向に長手を有し、且つ、前記エミッタ電極と接続されるダミートレンチ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記ダミートレンチ部には、前記エミッタ領域が接していなくてよい。
【0019】
上記何れかの半導体装置において、前記ダミートレンチ部は、ダミー絶縁膜と、ダミー導電部とを有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記ダミー導電部は前記エミッタ電極と接続していてよい。
【0020】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面に設けられ、内部に前記エミッタ電極が充填されるトレンチコンタクト部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記ダミートレンチ部が、前記トレンチコンタクト部の底面に設けられていてよい。
【0021】
上記何れかの半導体装置において、1つの前記トレンチコンタクト部の底面に、2つ以上の前記ダミートレンチ部が設けられていてよい。
【0022】
上記何れかの半導体装置において前記エミッタ領域は、前記半導体基板の前記上面に接する第1エミッタ部分を有してよい。上記何れかの半導体装置において前記エミッタ領域は、前記第1エミッタ部分の下に設けられ、前記第1エミッタ部分よりもドーピング濃度が低い第2エミッタ部分を有してよい。上記何れかの半導体装置において前記第2エミッタ部分は、深さ方向のドーピング濃度分布が平坦な平坦部分、深さ方向においてドーピング濃度が極小値を示す谷部、または、深さ方向においてドーピング濃度が極大値を示し且つ第1エミッタ部分よりも低濃度のピークのいずれかを有してよい。上記何れかの半導体装置において前記第2エミッタ部分が前記抵抗部であってよい。
【0023】
上記何れかの半導体装置において前記エミッタ領域は、前記第2エミッタ部分の下に設けられ、前記第2エミッタ部分よりもドーピング濃度が高い第3エミッタ部分をさらに有してよい。
【0024】
上記何れかの半導体装置において前記第3エミッタ部分は、前記第1エミッタ部分よりもドーピング濃度が低くてよい。
【0025】
上記何れかの半導体装置において前記ゲートトレンチ部は、前記半導体基板の内部に設けられたゲート導電部を有してよい。上記何れかの半導体装置において前記ゲートトレンチ部は、前記ゲート導電部と前記半導体基板との間に設けられたゲート絶縁膜を有してよい。上記何れかの半導体装置において前記ゲート導電部の上端が、前記第3エミッタ部分と向かい合って配置されていてよい。
【0026】
上記何れかの半導体装置において前記エミッタ電極は、前記第1エミッタ部分と接しており、前記第2エミッタ部分および前記第3エミッタ部分と接していなくてよい。
【0027】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の上面から前記ベース領域の上端よりも深くまで設けられ、導電性の材料で形成されたトレンチコンタクト部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において前記第1エミッタ部分が、前記トレンチコンタクト部に接していてよい。上記何れかの半導体装置において前記第2エミッタ部分、および、前記第3エミッタ部分は、前記トレンチコンタクト部に接していなくてよい。
【0028】
上記何れかの半導体装置は、前記トレンチコンタクト部と、前記第2エミッタ部分および前記第3エミッタ部分との間に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型の第1の高濃度領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型の第2の高濃度領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置において前記第1の高濃度領域は、前記第2の高濃度領域よりもドーピング濃度が低くてよい。
【0029】
上記何れかの半導体装置は、前記トレンチコンタクト部と、前記第2エミッタ部分および前記第3エミッタ部分との間に設けられたコンタクト絶縁膜を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型の高濃度領域を備えてよい。
【0030】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】半導体装置100の一例を示す上面図である。
【
図3】
図2のa-a線における断面の一例を示す図である。
【
図4】
図2のb-b線における断面の一例を示す図である。
【
図5】ポリシリコン抵抗部200、エミッタ領域12、ベース領域14およびドリフト領域18の深さ方向における電位分布の一例を示す図である。
【
図8】
図7におけるc-c断面の一例を示す図である。
【
図10】
図9におけるd-d断面の一例を示す図である。
【
図14】ポリシリコン抵抗部200の近傍の拡大図である。
【
図15】
図14のg-g線における、ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度分布の一例を示す図である。
【
図16】ポリシリコン抵抗部200の他の例を示す図である。
【
図17】半導体装置100の製造方法における一部の工程を示す図である。
【
図18】半導体装置100の製造方法の他の例を示す図である。
【
図19】ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度と、半導体装置100に流れる飽和電流との関係を示す図である。
【
図20】ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度と、半導体装置100のオン電圧との関係を示す図である。
【
図21】半導体装置100の他の構成を示す断面図である。
【
図22】
図21のh-h線におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
【
図23】h-h線におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
【
図24】h-h線におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
【
図25】半導体装置100の他の構成を示す断面図である。
【
図26】高濃度領域86の他の構造例を示す図である。
【
図27】半導体装置100の他の構成を示す断面図である。
【
図28】半導体装置100の他の構成を示す断面図である。
【
図29】半導体装置100の他の例を示す断面図である。
【
図30】上面視における高濃度領域86およびエミッタ領域12の配置例を示す図である。
【
図31】
図21から
図30において説明した半導体装置100の製造方法の一部の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0033】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0034】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0035】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0036】
半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の上面までの領域を、上面側と称する場合がある。同様に、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の下面までの領域を、下面側と称する場合がある。
【0037】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0038】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0039】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をND、アクセプタ濃度をNAとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はND-NAとなる。本明細書では、ネット・ドーピング濃度を単にドーピング濃度と記載する場合がある。
【0040】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。本明細書では、VOH欠陥を水素ドナーと称する場合がある。
【0041】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。
【0042】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度(原子密度)は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。本明細書では、N型領域のドーピング濃度をドナー濃度と称する場合があり、P型領域のドーピング濃度をアクセプタ濃度と称する場合がある。
【0043】
ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。本明細書において、単位体積当りの濃度表示にatоms/cm3、または、/cm3を用いる。この単位は、半導体基板内のドナーまたはアクセプタ濃度、または、化学濃度に用いられる。atоms表記は省略してもよい。
【0044】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0045】
CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。本明細書における各濃度は、室温における値でよい。室温における値は、一例として300K(ケルビン)(約26.9℃)における値を用いてよい。
【0046】
図1は、半導体装置100の一例を示す上面図である。
図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。
図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0047】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板であるが、半導体基板10の材料はシリコンに限定されない。
【0048】
半導体基板10は、上面視において第1端辺161および第2端辺162を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の第1端辺161を有する。また、本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の第2端辺162を有する。
図1においては、第1端辺161は、X軸方向と平行である。第2端辺162は、Y軸方向と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。また、第1端辺161は、後述するゲートトレンチ部の延伸方向または長手方向と垂直である。第2端辺162は、後述するゲートトレンチ部の延伸方向または長手方向と平行である。
【0049】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部160の上方には、エミッタ電極が設けられているが
図1では省略している。
【0050】
本例において、活性部160には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70が設けられている。他の例では、トランジスタ部70およびFWD(Free Wheel Diode)等のダイオード素子を含むダイオード部が、半導体基板10の上面における所定の配列方向に沿って、交互に配置されていてもよい。本例では1つのトランジスタ部70が設けられているが、複数のトランジスタ部70が設けられていてもよい。トランジスタ部70の間には、P+型のウェル領域やゲートランナーが設けられてよい。
【0051】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N+型のエミッタ領域、P-型のベース領域、N-型のドリフト領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有する表面MOS構造が周期的に配置されている。
【0052】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド164を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、第1端辺161の近傍に配置されている。第1端辺161の近傍とは、上面視における第1端辺161と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0053】
ゲートパッド164には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド164は、活性部160のゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド164とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線130を備える。
図1においては、ゲート配線130に斜線のハッチングを付している。
【0054】
ゲート配線130は、上面視において活性部160と、第1端辺161または第2端辺162との間に配置されている。本例のゲート配線130は、上面視において活性部160を囲んでいる。上面視においてゲート配線130に囲まれた領域を活性部160としてもよい。また、ゲート配線130は、ゲートパッド164と接続されている。ゲート配線130は、半導体基板10の上方に配置されている。ゲート配線130は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。ゲート配線130は、エミッタ電極と分離して設けられてよい。
【0055】
P型外周ウェル領域11は、ゲート配線130と重なって設けられている。つまり、ゲート配線130と同様に、P型外周ウェル領域11は、上面視において活性部160を囲んでいる。P型外周ウェル領域11は、ゲート配線130と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。P型外周ウェル領域11は、第2導電型の領域である。本例のP型外周ウェル領域11はP+型である。P型外周ウェル領域11のドーピング濃度は、5.0×1017atоms/cm3以上でかつ5.0×1019atоms/cm3以下であってよい。P型外周ウェル領域11のドーピング濃度は、2.0×1018atоms/cm3以上でかつ2.0×1019atоms/cm3以下であってよい。
【0056】
半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部160に設けられたトランジスタ部70の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。温度センス部は、配線を介してアノードパッドおよびカソードパッドと接続してよい。温度センス部を設ける場合、X軸方向およびY軸方向における半導体基板10の中央に設けられるのが好ましい。
【0057】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と第1端辺161または第2端辺162との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、外周ゲート配線130と第1端辺161または第2端辺162との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0058】
図2は、
図1の領域Dの拡大図の一例である。領域Dは、
図1に示した活性部160のトランジスタ部70を含む領域である。
図2では、領域Dにおける半導体基板10の上面の構造を示している。領域Dにおいて半導体装置100は、1つ以上のゲートトレンチ部40、1つ以上のエミッタ領域12、1つ以上のコンタクト領域15、および、1つ以上のポリシリコン抵抗部200を備える。ポリシリコン抵抗部200は、抵抗部の一例である。抵抗部は、エミッタ領域12の下端と、後述するエミッタ電極との間に設けられた領域である。本例の抵抗部は、抵抗材料を膜または層状に形成した構造を有する。ポリシリコン抵抗部200に代えて、例えば導電性ダイアモンドライクカーボンを抵抗部として用いてもよい。半導体装置100は、1つ以上のダミートレンチ部30を更に備えてよい。本明細書では、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30を、それぞれトレンチ部と称する場合がある。本明細書において単にトレンチ部と称した場合、当該トレンチ部はゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のいずれであってもよい。
【0059】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において第1方向に長手を有する。本例においてゲートトレンチ部40は、第1方向であるY軸方向に延伸して設けられている。ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面から、半導体基板10の内部まで設けられている。ゲートトレンチ部40の内部には、ポリシリコン等の導電材料で形成されたゲート導電部が配置されている。ゲート導電部は、ゲート配線130(
図1参照)と電気的に接続されて、所定のゲート電圧が印加される。
【0060】
第1方向と交差する第2方向において、複数のトレンチ部が所定の間隔を有して配列されている。本例の第2方向は、第1方向(Y軸方向)と直交するX軸方向である。
図2に示すように、Y軸方向においてゲートトレンチ部40と隣り合うトレンチ部はダミートレンチ部30であってよい。ただし、ゲートトレンチ部40どうしが、Y軸方向において隣り合って配置されていてもよい。
図2に示すように、Y軸方向においてダミートレンチ部30と隣り合うトレンチ部は、ゲートトレンチ部40であってよく、ダミートレンチ部30であってもよい。Y軸方向において、2つのゲートトレンチ部40の間には、1つ以上のダミートレンチ部30が配置されていてよい。
【0061】
X軸方向において、2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板10の領域をメサ部60とする。メサ部60のX軸方向における両端は、それぞれのトレンチ部との境界部分である。メサ部60の下端の深さ位置は、両側のトレンチ部の少なくとも一方の下端の深さ位置と同一とする。
【0062】
エミッタ領域12は、半導体基板10において上面に露出して設けられたN+型の領域である。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接している。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接するそれぞれのメサ部60に設けられてよい。1つのエミッタ領域12のY軸方向における長さをY1、X軸方向における長さをX1とする。長さY1は、長さX1よりも長い。それぞれのエミッタ領域12は、Y軸方向に延伸する帯形状を有してよい。長さY1は、長さX1の2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。長さY1を長さX1よりも大きくすることで、エミッタ領域12の下方に形成されるチャネルのY軸方向の長さを大きくでき、チャネル密度を向上できる。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部のうち、一方のトレンチ部(
図2ではゲートトレンチ部40)だけに接しており、他方のトレンチ部(
図2ではダミートレンチ部30)には接していなくてよい。
【0063】
図2に示すように、1つのメサ部60において、複数のエミッタ領域12がY軸方向に互いに離間して配置されてよい。Y軸方向において隣り合う2つのエミッタ領域12の間の距離は、長さY1より小さくてよく、長さY1の半分以下であってよく、1/4以下であってよく、1/10以下であってもよい。他の例では、1つのメサ部60のY軸方向においては、1つのエミッタ領域12だけが連続して配置されていてもよい。この場合、エミッタ領域12の長さY1は、メサ部60のY軸方向の長さの半分以上であってよく、3/4以上であってもよい。
【0064】
コンタクト領域15は、メサ部60において半導体基板10の上面に露出して、エミッタ電極と接続されるP型の領域である。コンタクト領域15は、後述するベース領域の一部の領域であってよく、ベース領域よりも高いドーピング濃度を有するP+型の領域であってもよい。コンタクト領域15がベース領域よりも高いドーピング濃度を有する場合、コンタクト領域15とエミッタ電極との接触抵抗を低減できる。
【0065】
ポリシリコン抵抗部200は、エミッタ領域12と、後述するエミッタ電極との間に設けられる。本例のポリシリコン抵抗部200は、不純物が添加されたポリシリコンで形成されている。室温(25℃)において、ポリシリコン抵抗部200の抵抗率(Ω・m)は、エミッタ電極の抵抗率よりも大きく、後述するゲート絶縁膜または層間絶縁膜等の絶縁膜の抵抗率よりも小さい。ポリシリコン抵抗部200の深さ方向における抵抗値は、エミッタ領域12の深さ方向における抵抗値より高くてよい。
【0066】
本例のポリシリコン抵抗部200は、上面視においてエミッタ領域12の全体を覆っている。つまりエミッタ領域12は、エミッタ電極と接していない。ポリシリコン抵抗部200は、コンタクト領域15の少なくとも一部を覆わないように配置されている。これにより、コンタクト領域15とエミッタ電極52とが接触できる。
図2に示すように、コンタクト領域15は、上面21においてダミートレンチ部30と接していてよい。ポリシリコン抵抗部200は、コンタクト領域15とダミートレンチ部30との境界部分を覆わないように配置されていてよい。ポリシリコン抵抗部200は、ダミートレンチ部30とは重ならないように配置されてよい。
【0067】
ポリシリコン抵抗部200は、コンタクト領域15の一部を覆ってよく、覆っていなくてもよい。本例のポリシリコン抵抗部200は、コンタクト領域15のうち、エミッタ領域12との境界部分を覆っている。上面21におけるコンタクト領域15のうち、ポリシリコン抵抗部200に覆われている面積は、ポリシリコン抵抗部200に覆われていない面積より小さくてよい。これにより、コンタクト領域15とエミッタ電極52との接触面積を確保して、接触抵抗を低減できる。上面21におけるコンタクト領域15のうち、ポリシリコン抵抗部200に覆われている面積は、ポリシリコン抵抗部200に覆われていない面積の半分以下であってよく、1/4以下であってよく、1/10以下であってもよい。
【0068】
1つのポリシリコン抵抗部200のY軸方向における長さをY2、X軸方向における長さをX2とする。長さY2は、長さY1と同一またはより大きくてよい。長さX2は、長さX1と同一、または、長さX1より大きくてよい。
図2の例では、長さX2は長さX1の2倍より大きく、長さX1の2倍にトレンチ部の幅を加算した長さよりも大きい。本例の長さY2は、長さX2よりも長い。それぞれのポリシリコン抵抗部200は、Y軸方向に延伸する帯形状を有してよい。長さY2は、長さX2の2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。
【0069】
ポリシリコン抵抗部200は、メサ部60の両側のトレンチ部のうち、一方のトレンチ部(
図2ではゲートトレンチ部40)だけに重なっており、他方のトレンチ部(
図2ではダミートレンチ部30)には重なっていなくてよい。
【0070】
図2に示すように、1つのメサ部60において、複数のポリシリコン抵抗部200がY軸方向に離散して配置されてよい。ポリシリコン抵抗部200は、Y軸方向に離散して配置されたエミッタ領域12毎に設けられてよい。他の例では、Y軸方向に離散して配置された2つ以上のエミッタ領域12を1つのポリシリコン抵抗部200が覆っていてもよい。また、1つのメサ部60のY軸方向においては、1つのポリシリコン抵抗部200だけが連続して配置されていてもよい。この場合、Y軸方向に離散して配置された全てのエミッタ領域12を、1つのポリシリコン抵抗部200が覆っていてよい。
【0071】
1つのゲートトレンチ部40のY軸方向の両側にエミッタ領域12が配置されてよい。この場合、1つのポリシリコン抵抗部200が、1つのゲートトレンチ部40の両側のエミッタ領域12を覆ってよい。この場合のポリシリコン抵抗部200は、ゲートトレンチ部40の上方にも配置される。
【0072】
図3は、
図2のa-a線における断面の一例を示す図である。a-a断面は、エミッタ領域12およびポリシリコン抵抗部200を通過するXZ断面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52、コレクタ電極24およびポリシリコン抵抗部200を備える。
【0073】
エミッタ電極52は、半導体基板10の上面21の上方に設けられる。半導体基板10の上面21の一部は、層間絶縁膜38またはポリシリコン抵抗部200に覆われている。層間絶縁膜38またはポリシリコン抵抗部200に覆われていない半導体基板10の上面21の少なくとも一部に、エミッタ電極52が接触する。本例のエミッタ電極52は、コンタクト領域15と接しており、且つ、エミッタ領域12と接していない。
【0074】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金、例えばAlSi、AlSiCu等の金属合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下方に、チタンまたは窒化チタン等で形成されたバリアメタルを有してよい。バリアメタルが、半導体基板10に接していてよい。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下方に、タングステン等で形成されたメタルプラグを有していてもよい。メタルプラグは、半導体基板10の上面21よりも下方に形成された部分を有してよい。
【0075】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。コレクタ電極24は、エミッタ電極52と同様にアルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0076】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面21に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38は、それぞれのトレンチ部を覆っていてよい。また層間絶縁膜38は、設けられなくてもよい。この場合、ポリシリコン抵抗部200がトレンチ部の上端の絶縁膜と接していてよい。
【0077】
それぞれのメサ部60には、P-型のベース領域14が設けられる。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40と接している。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部のそれぞれと接していてよい。ベース領域14の少なくとも一部分は、エミッタ領域12の下方に設けられている。ベース領域14はエミッタ領域12と接していてよい。ゲートトレンチ部40に所定のオン電圧が印加されると、ゲートトレンチ部40と接するベース領域14の表層がN型の領域に反転してチャネルが形成される。当該チャネルにより、エミッタ領域12と、後述するドリフト領域18とが電気的に接続される。
【0078】
ベース領域14は、コンタクト領域15の下方にも設けられている。ベース領域14はコンタクト領域15と接している。上述したように、ベース領域14の一部がコンタクト領域15として機能してもよい。本例のベース領域14は、コンタクト領域15よりもドーピング濃度の低いP-型の領域である。ベース領域14のドーピング濃度は、5.0×1016atоms/cm3以上、1.0×1018atоms/cm3以下であってよい。
【0079】
半導体基板10は、N-型のドリフト領域18を有する。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりドーピング濃度が高い。ドリフト領域18は、ベース領域14の下方に設けられている。ドリフト領域18は、ベース領域14と接していてよい。他の例では、ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高いN+型の蓄積領域が設けられていてもよい。蓄積領域を設けることで、電子注入促進効果(Injection Enhancement Effect)を生じさせて、半導体装置100のオン電圧を低くできる。
【0080】
ドリフト領域18と半導体基板10の下面23との間には、P+型のコレクタ領域22が設けられている。コレクタ領域22のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度より高い。コレクタ領域22は、ベース領域14と同一のアクセプタを含んでよく、異なるアクセプタを含んでもよい。コレクタ領域22のアクセプタは、例えばボロンである。アクセプタとなる元素は、上述した例に限定されない。コレクタ領域22は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。
【0081】
ドリフト領域18とコレクタ領域22との間には、N+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを1つ以上有してよい。濃度ピークのドーピング濃度とは、濃度ピークの頂点におけるドーピング濃度を指す。また、ドリフト領域18のドーピング濃度は、ドーピング濃度分布がほぼ平坦な領域におけるドーピング濃度の平均値を用いてよい。
【0082】
バッファ領域20は、水素(プロトン)またはリン等のN型ドーパントをイオン注入することで形成してよい。本例のバッファ領域20は水素をイオン注入して形成される。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層がコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0083】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40が設けられる。本例において、半導体基板10の上面21側には、複数のゲートトレンチ部40が設けられる。本例において各ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0084】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられた溝形状のゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート導電部44は、導電材料であるポリシリコンで形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。
【0085】
ゲートトレンチ部40内のゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、
図3に示した断面以外の位置で、ゲート配線130に電気的に接続されている。
【0086】
ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様の構造を有する。本例のダミートレンチ部30は、溝形状のダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34の構造は、ゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44と同様である。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ダミー導電部34は、
図3に示した断面以外の位置で、エミッタ電極52に電気的に接続されている。
【0087】
ポリシリコン抵抗部200は、エミッタ領域12と、エミッタ電極52との間に設けられている。本例のポリシリコン抵抗部200は、ゲートトレンチ部40と、当該ゲートトレンチ部40のY軸方向における両側に設けられた2つのエミッタ領域12とを覆っている。ポリシリコン抵抗部200は、X軸方向において、ゲートトレンチ部40の全体、および、2つのエミッタ領域12の全体と重なるように配置されてよい。ポリシリコン抵抗部200は、半導体基板10の上面21におけるエミッタ領域12とコンタクト領域15との境界部分を超えて、コンタクト領域15の一部も覆ってよい。
【0088】
本例の半導体装置100は、ポリシリコン抵抗部200を設け、且つ、Y軸方向に長手を有するエミッタ領域12を形成することで、比較的に低い飽和電流と、比較的に低いオン電圧を両立する。半導体基板10の上面21に設けられたMOS構造は、コレクタ-エミッタ間の電圧を上昇させても、コレクタ電流が飽和する飽和特性を有する。これにより半導体装置100は、大電流かつ大電圧が同時に印加される短絡状態において、一定時間内であれば素子が破壊されない短絡耐量特性を有している。装置の微細化が進んだ状態で、全てのメサ部60にMOS構造を形成すると、飽和電流が非常に大きくなるので、一部のメサ部60にはMOS構造を形成しない間引き構造、または、X軸方向に長手を有するエミッタ領域12をY軸方向に離散的に配置する梯子構造等により、飽和電流を抑制する場合がある。しかし、このような構造で飽和電流を抑制すると、オン電圧が高くなってしまう。
【0089】
MOS構造の電流飽和特性は、下式(1)であらわされる。
【数1】
Isatは飽和電流、Zはエミッタ領域12の総エミッタ幅(つまりY軸方向の総長さ)、μnは電子の移動度、Coxは、ゲート絶縁膜42の容量、LchはZ軸方向のチャネル長、Vgeはゲートエミッタ間電圧、Vthは閾値電圧を表す。
【0090】
MOS構造のチャネル抵抗Rchは、下式(2)であらわされる。
【数2】
式(1)および式(2)を比較すると、飽和電流Isatを小さくするとチャネル抵抗Rchが大きくなり、また飽和電流Isatを大きくするとチャネル抵抗Rchが小さくなることがわかる。つまり半導体装置100の短絡耐量を向上するために飽和電流を小さくすると、オン電圧が上昇するという、トレードオフの相関になっている。例えば、間引きエミッタ構造では、エミッタ領域12が一部のメサ部60に形成されているため、ドリフト領域18への電子電流の供給がX軸方向においてまばらになり、電流の流れが不均一化して、オン電圧が上昇する。また、X軸方向に長手を有するエミッタ領域12をY軸方向に離散的に配置する梯子構造では、ゲートトレンチ部40とエミッタ領域12とが接する長さZ(チャネル幅に相当する)を大きくすることが困難である。
【0091】
これに対して半導体装置100では、エミッタ電極52とエミッタ領域12との間にポリシリコン抵抗部200を設けることで、飽和電流を抑制する。半導体装置100がオン状態になると、エミッタ電極52とエミッタ領域12との間において、ポリシリコン抵抗部200を介して電流が流れる。このため、エミッタ領域12の電位は、ポリシリコン抵抗部200に流れる電流の大きさに応じて変化する。エミッタ領域12からエミッタ電極52に対して電流が流れるので、ポリシリコン抵抗部200に流れる電流がより大きい場合、エミッタ領域12の電位はより高くなる。ポリシリコン抵抗部200に流れる電流が小さい場合には、エミッタ領域12の電位はわずかしか上昇しない。
【0092】
ゲート導電部44に印加されるオン電圧は概ね一定電圧であるから、ポリシリコン抵抗部200に流れる電流が大きくなると、ゲート導電部44とエミッタ領域12との間の電位差は小さくなり、ゲート絶縁膜42に印加される電圧は小さくなる。一方で、ポリシリコン抵抗部200に流れる電流が小さい場合は、ゲート絶縁膜42に印加される電圧は相対的に大きくなる。このため、MOS構造に流れる飽和電流を抑制できる。
【0093】
半導体装置100では、Y軸方向に長手を有するエミッタ領域12を設けることで、総エミッタ幅Zを大きくして、オン電圧を小さくする。これにより、低い飽和電流と、低いオン電圧とを両立できる。
【0094】
図4は、
図2のb-b線における断面の一例を示す図である。b-b断面は、エミッタ領域12およびポリシリコン抵抗部200を通過せず、コンタクト領域15を通過するXZ断面である。
【0095】
b-b断面では、それぞれのメサ部60にはエミッタ領域12が設けられていない。それぞれのメサ部60において、半導体基板10の上面21には、コンタクト領域15が設けられている。コンタクト領域15は、エミッタ電極52と接触している。
【0096】
b-b断面では、ポリシリコン抵抗部200が設けられていない。コンタクト領域15および層間絶縁膜38は、エミッタ電極52に接している。エミッタ領域12およびポリシリコン抵抗部200が設けられていない点を除き、b-b断面の構造は、a-a断面の構造と同様である。
【0097】
図2から
図4に示した例では、それぞれのメサ部60において、エミッタ領域12がY軸において同一の位置に設けられている。同様に、ポリシリコン抵抗部200も、それぞれのメサ部60においてY軸方向の同一位置に設けられている。他の例では、いずれかのメサ部60におけるエミッタ領域12のY軸方向の位置が、他のメサ部60におけるエミッタ領域12のY軸方向の位置と異なっていてもよい。同様に、いずれかのメサ部60におけるポリシリコン抵抗部200のY軸方向の位置が、他のメサ部60におけるポリシリコン抵抗部200のY軸方向の位置と異なっていてもよい。
【0098】
図5は、ポリシリコン抵抗部200、エミッタ領域12、ベース領域14およびドリフト領域18の深さ方向における電位分布の一例を示す図である。
図5では、ポリシリコン抵抗部200、エミッタ領域12、ベース領域14およびドリフト領域18を含む半導体装置100の模式図と、電位分布を示す図とを並べて示している。電位分布図の深さ位置を示す軸は、模式図における深さ位置に対応している。模式図においては、層間絶縁膜38を省略している。模式図においては、エミッタ電極52、ベース領域14、コレクタ領域22、および、ゲート導電部44を、端子E、B、C、Gで模式的に示している。模式図では、各端子間を接続する配線を示している。模式図における抵抗Rは、ポリシリコン抵抗部200の抵抗成分を示している。模式図では、ベース領域14とゲート導電部44との間のゲート絶縁膜42による容量成分も示している。電位分布図では、エミッタ・コレクタ間に定格電流より小さい小電流I
1が流れる場合の電位分布を破線で示し、飽和電流程度の大電流I
2が流れる場合の電位分布を実線で示している。
【0099】
ポリシリコン抵抗部200を設けた場合、ポリシリコン抵抗部200に流れる電流と、ポリシリコン抵抗部200の抵抗Rによって、エミッタ領域12の電位が変化する。大電流I2が流れた場合、エミッタ領域12の電位は大きく上昇する。一方、小電流I1が流れた場合、エミッタ領域12の電位はわずかしか上昇しない。MOS構造を駆動させるゲート電圧VGEは一定であるため、大電流領域ではゲート絶縁膜42にかかる電位差VGEeff2は、小さくなる。一方、小電流領域ではゲート絶縁膜42にかかる電位差VGEeff1は、相対的に大きくなる。したがって、飽和電流を大きく抑制することができる。半導体装置100は、小電流領域では大きいゲート電圧/エミッタ電圧差で駆動し、大電流領域では小さいゲート電圧/エミッタ電圧差で駆動することができる。
【0100】
本例の半導体装置100は、ポリシリコン抵抗部200を設けることで飽和電流を低減させることができる。一方で、半導体装置100は、総エミッタ幅Zを増やすことにより、飽和電流を増大できる。つまり半導体装置100は、ポリシリコン抵抗部200により飽和電流を低減させた範囲で、総エミッタ幅Zを増加させて飽和電流を増大させることで、飽和電流を維持または小さくしつつ、オン電圧を低減できる。
【0101】
図6は、
図1の領域Dの拡大図の他の例である。本例の半導体装置100においては、1つのメサ部60に、1つだけのエミッタ領域12がY軸方向に連続して設けられている。1つのメサ部60には、1つだけのポリシリコン抵抗部200がエミッタ領域12を覆って設けられている。他の構造は、
図1から
図5において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様である。例えば、
図6におけるa-a断面は、
図3に示したa-a断面と同様の構造を有する。
【0102】
図7は、
図1の領域Dの拡大図の他の例である。本例の半導体装置100においては、1つのメサ部60に、複数のエミッタ領域12がY軸方向に離散して設けられている。本例のメサ部60では、1つのポリシリコン抵抗部200が、Y軸方向において2つ以上のエミッタ領域12に跨って連続して配置されている。1つのポリシリコン抵抗部200は、2つ以上のエミッタ領域12の全体を覆っていてよい。メサ部60には、Y軸方向において複数のポリシリコン抵抗部200が配置されてよい。それぞれのポリシリコン抵抗部200が、2つ以上のエミッタ領域12に跨って配置されてよい。それぞれのポリシリコン抵抗部200が覆うエミッタ領域12の個数は、互いに同一であってよく、異なっていてもよい。
【0103】
エミッタ領域12およびポリシリコン抵抗部200以外の構造は、
図1から
図5において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様である。例えば、
図7におけるa-a断面は、
図3に示したa-a断面と同様の構造を有する。ただし本例では、c-c断面の構造が、
図4に示したb-b断面の構造と異なる。
【0104】
図8は、
図7におけるc-c断面の一例を示す図である。c-c断面は、エミッタ領域12を通過せず、ポリシリコン抵抗部200を通過するXZ断面である。当該断面におけるメサ部60には、エミッタ領域12が設けられていない。上面21においてゲートトレンチ部40と接する領域には、コンタクト領域15が設けられている。ポリシリコン抵抗部200は、X軸方向におけるゲートトレンチ部40の全体と、コンタクト領域15の一部を覆っている。本例のポリシリコン抵抗部200は、コンタクト領域15のうち、ゲートトレンチ部40と接する境界部分を覆い、ダミートレンチ部30と接する境界部分を覆っていない。コンタクト領域15およびポリシリコン抵抗部200以外の構造は、
図4に示したb-b断面と同様の構造である。
【0105】
図9は、
図1の領域Dの拡大図の他の例である。本例の半導体装置100は、ポリシリコン抵抗部200以外の構造は、
図1から
図8において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様である。本例のポリシリコン抵抗部200は、X軸方向においてゲートトレンチ部40の両側に配置されたエミッタ領域12を覆い、且つ、2つのエミッタ領域12の間におけるゲートトレンチ部40の少なくとも一部を覆っていない。
【0106】
ポリシリコン抵抗部200以外の構造は、
図1から
図8において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様である。例えば、
図9におけるb-b断面は、
図4に示したb-b断面と同様の構造を有する。ただし本例では、d-d断面の構造が、
図2に示したa-a断面の構造と異なる。
【0107】
図10は、
図9におけるd-d断面の一例を示す図である。d-d断面は、エミッタ領域12およびポリシリコン抵抗部200を通過するXZ断面である。d-d断面においては、ポリシリコン抵抗部200が、ゲートトレンチ部40の少なくとも一部を覆っていない。ポリシリコン抵抗部200は、2つのエミッタ領域12に挟まれたゲートトレンチ部40のX軸方向における中央部分と重なっていなくてよい。ポリシリコン抵抗部200は、ゲートトレンチ部40のうち、エミッタ領域12と接する境界部分と重なっていてよい。ポリシリコン抵抗部200以外の構造は、
図3に示したa-a断面と同様の構造である。
【0108】
図11は、
図1の領域Dの拡大図の他の例である。本例の半導体装置100は、トレンチコンタクト部210を備える。トレンチコンタクト部210以外の構造は、
図1から
図10において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様であってよい。本例の半導体装置100は、コンタクト領域15に代えてベース領域14が半導体基板10の上面21に露出しているが、
図1から
図10の例と同様に、コンタクト領域15が半導体基板10の上面21に露出していてもよい。
【0109】
トレンチコンタクト部210は、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで形成された凹部である。当該凹部の内部には、エミッタ電極52が充填されている。トレンチコンタクト部210の側面および底面において、エミッタ電極52と半導体基板10とが接触する。これにより、エミッタ電極52と半導体基板10との接触面積を増大できる。
【0110】
トレンチコンタクト部210は、上面視においてダミートレンチ部30と重なっている。トレンチコンタクト部210は、X軸方向においてダミートレンチ部30よりも広い範囲に設けられてよい。トレンチコンタクト部210は、Y軸方向においてダミートレンチ部30よりも広い範囲に設けられてよい。
【0111】
図12Aは、
図11におけるe-e断面の一例を示す図である。e-e断面は、エミッタ領域12およびポリシリコン抵抗部200を通過するXZ断面である。e-e断面において、トレンチコンタクト部210の近傍以外の構造は、
図3のa-a断面または
図10のd-d断面と同様である。
【0112】
上述したように、トレンチコンタクト部210は、半導体基板10の上面21から内部まで設けられており、内部にはエミッタ電極52が充填されている。トレンチコンタクト部210の底面に、ダミートレンチ部30が形成されている。ダミートレンチ部30のダミー導電部34は、トレンチコンタクト部210の内部のエミッタ電極52と接続している。これにより、ダミー導電部34にエミッタ電位を印加できる。
【0113】
1つのトレンチコンタクト部210の底面212には、1つまたは2つ以上のダミートレンチ部30が設けられてよい。トレンチコンタクト部210は、X軸方向において2つのゲートトレンチ部40に挟まれて配置された2つ以上のダミートレンチ部30に対して、共通に設けられてよい。つまり、2つのゲートトレンチ部40の間には、1つのトレンチコンタクト部210が設けられる。2つのゲートトレンチ部40の間の1つ以上のダミートレンチ部30は、1つのトレンチコンタクト部210の底面212に設けられてよい。このような構造により、トレンチ部の間隔が微細化しても、トレンチコンタクト部210を容易に設けることができる。
【0114】
トレンチコンタクト部210の底面212に設けられたダミートレンチ部30の下端の深さ位置と、ゲートトレンチ部40の下端の深さ位置は、同一であってよく、異なっていてもよい。ダミートレンチ部30の下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも下方に配置されていてもよい。
【0115】
図12Bは、
図12Aに示したダミートレンチ部30の近傍の拡大図である。本例のダミー導電部34の上端33は、トレンチコンタクト部210の底面212よりも下方に配置されている。上端33は、ダミー導電部34のうち、最も上方に配置された部分である。本例の底面212の深さ位置は、ダミー絶縁膜32に最も近い底面212の深さ位置である。
【0116】
ダミー絶縁膜32の上端31は、底面212と同一の深さ位置に設けられてよい。上端31は、ダミー絶縁膜32のうち、最も上方に配置された部分である。なお
図12Aに示したように、上端33は、底面212と同一の深さ位置に配置されていてもよい。
【0117】
図12Cは、
図12Aに示したダミートレンチ部30の近傍の拡大図の他の例である。本例では、ダミー絶縁膜32の上端31が、底面212より下方で、且つ、ダミー導電部34の上端33よりも上方に配置されている。
図12Cのような構造にすることで、底面212等の半導体基板10、ダミー絶縁膜32、および、ダミー導電部34を覆う膜(例えばエミッタ電極52またはエミッタ電極52を覆う保護膜)の被覆性が向上し、良品率が向上する。
図12Bまたは
図12Cの例では、底面212、上端31および上端33の少なくとも一部が階段状に配置されているが、底面212、上端31および上端33の各境界部分は、曲面であってもよい。トレンチコンタクト部210を形成するときに用いるエッチャントは、半導体基板10、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34に対する除去速度が異なる場合がある。
図12Bおよび
図12Cの構造は、当該エッチャントを選択することで形成できる。
【0118】
図13は、
図11におけるf-f断面の一例を示す図である。f-f断面は、エミッタ領域12およびポリシリコン抵抗部200を通過せず、ベース領域14を通過するXZ断面である。f-f断面において、トレンチコンタクト部210およびダミートレンチ部30の構造は、
図12Aに示したe-e断面と同様である。トレンチコンタクト部210およびダミートレンチ部30以外の構造は、
図4のb-b断面と同様である。
【0119】
図14は、ポリシリコン抵抗部200の近傍の拡大図である。ポリシリコン抵抗部200の深さ方向における厚みは、0.1μm以上、1μm以下であってよい。ポリシリコン抵抗部200の厚みを調整することで、エミッタ領域12とエミッタ電極52との間の抵抗値を調整できる。ポリシリコン抵抗部200の厚みは、0.15μm以上であってよく、2μm以上であってもよい。ポリシリコン抵抗部200の厚みは、0.8μm以下であってよく、0.6μm以下であってよく、0.3μm以下であってもよい。
【0120】
ポリシリコン抵抗部200の深さ方向における厚みは、エミッタ領域12と、エミッタ電極52との最短距離であってよい。他の例では、ポリシリコン抵抗部200の厚みとして、エミッタ領域12に積層された部分のZ軸方向の厚みT1を用いてもよい。厚みT1は、エミッタ領域12に積層された部分の厚みの最小値であってよい。ポリシリコン抵抗部200の厚みとして、層間絶縁膜38のX軸方向の中央位置に積層された部分の厚みT2を用いてもよい。
【0121】
ポリシリコン抵抗部200には、N型の不純物が添加されていてよい。つまりポリシリコン抵抗部200には、エミッタ領域12と同一の導電型の不純物が添加されていてよい。ポリシリコン抵抗部200には、エミッタ領域12と同一元素の不純物が添加されていてもよい。一例として当該不純物はリンである。ポリシリコン抵抗部200にN型の不純物を添加することで、ポリシリコン抵抗部200およびエミッタ領域12の間で不純物が拡散しても、互いの特性への影響を抑制できる。
【0122】
図15は、
図14のg-g線における、ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度分布の一例を示す図である。g-g線は、ポリシリコン抵抗部200の深さ方向と平行な線である。ポリシリコン抵抗部200の深さ方向とは、Z軸方向であってよい。他の例では、ポリシリコン抵抗部200の深さ方向とは、ポリシリコン抵抗部200を通過し、且つ、エミッタ領域12とエミッタ電極52とを結ぶ距離が最短となる直線の方向であってもよい。
【0123】
ポリシリコン抵抗部200において、エミッタ電極52と接する領域の不純物濃度D1、および、エミッタ領域12と接する領域の不純物濃度D2のいずれもが、ポリシリコン抵抗部200の深さ方向における中央の不純物濃度D3よりも高くてよい。このような構成により、ポリシリコン抵抗部200と、エミッタ電極52等との接触抵抗が高くなりすぎるのを防げる。ポリシリコン抵抗部200の上方から不純物を注入することで、不純物濃度D1は比較的に高くできる。また、ポリシリコン抵抗部200を形成した後に熱処理することで、エミッタ領域12の不純物を、ポリシリコン抵抗部200に拡散させて、不純物濃度D2を比較的に高くできる。
【0124】
ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度D3は、1×1014/cm3以上、1×1015/cm3以下であってよい。不純物濃度D1、D2、D3のいずれもが、1×1014/cm3以上、1×1015/cm3以下であってよく、ポリシリコン抵抗部200の深さ方向の不純物濃度の平均値が、1×1014/cm3以上、1×1015/cm3以下であってもよい。ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度を調整することで、ポリシリコン抵抗部200の抵抗値を調整できる。
【0125】
図16は、ポリシリコン抵抗部200の他の例を示す図である。
図16は、ゲートトレンチ部40の近傍を拡大した断面図である。本例のポリシリコン抵抗部200は、層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホール220の内部に設けられている。ポリシリコン抵抗部200および層間絶縁膜38以外の構造は、
図1から
図15において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様である。
【0126】
コンタクトホール220は、エミッタ領域12およびエミッタ電極52の間に設けられている。コンタクトホール220は、エミッタ領域12毎に設けられる。1つのコンタクトホール220のX軸方向の幅は、1つのエミッタ領域12のX軸方向の幅よりも小さくてよく、同じでよく、大きくてもよい。1つのコンタクトホール220のY軸方向の幅は、1つのエミッタ領域12のY軸方向の幅よりも小さくてよく、同じでよく、大きくてもよい。コンタクトホール220のXY面における大きさを調整することで、ポリシリコン抵抗部200の深さ方向の抵抗値を調整できる。
【0127】
図17は、半導体装置100の製造方法における一部の工程を示す図である。本例の製造方法は、層間絶縁膜形成段階S1002、エミッタ領域露出段階S1004、ポリシリコン堆積段階S1006、第1不純物注入段階S1008、第2不純物注入段階S1010、エッチング段階S1012およびエミッタ電極形成段階S1014を有する。層間絶縁膜形成段階S1002の前に、半導体基板10にドーパントを注入してエミッタ領域12等の各領域が形成されている。また、層間絶縁膜形成段階S1002の前に、トレンチ部が形成されている。
【0128】
層間絶縁膜形成段階S1002では、半導体基板10の上面21に層間絶縁膜38を形成する。層間絶縁膜形成段階S1002では、PSG等の絶縁膜を上面21の全体に堆積してよい。
【0129】
エミッタ領域露出段階S1004では、層間絶縁膜38の一部を除去してエミッタ領域12を露出させる。エミッタ領域露出段階S1004では、層間絶縁膜38をドライエッチングまたはウェットエッチングしてよく、層間絶縁膜38をCMP等の方法で研削してもよい。
【0130】
ポリシリコン堆積段階S1006では、半導体基板10の上面21および層間絶縁膜38の上方に、CVD法等でポリシリコン膜を堆積する。第1不純物注入段階S1008では、ポリシリコン膜の上面全体に、リン等の不純物を注入する。不純物を注入した後に熱処理を行い、ポリシリコン膜の深さ方向に不純物を拡散させてよい。第1不純物注入段階S1008における熱処理は、半導体基板10をアニール炉に投入して、半導体基板10の全体を加熱してよい。
【0131】
第2不純物注入段階S1010では、ポリシリコン膜の上面近傍に、砒素等の不純物を注入する。不純物を注入した後に、ポリシリコン膜を熱処理してよい。第2不純物注入段階S1010では、RTA(Rapid Thermal Anneal)により、ポリシリコン膜を加熱してよい。第2不純物注入段階S1010における熱処理時間は、第1不純物注入段階S1008における熱処理時間よりも短くてよい。このような処理により、
図15に示したように、ポリシリコン抵抗部200の上面近傍の不純物濃度を高くできる。
【0132】
エッチング段階S1012では、ポリシリコン膜に対して、フォトリソグラフ処理およびエッチング処理を行う。これにより、所定の形状のポリシリコン抵抗部200を形成する。エミッタ電極形成段階S1014では、半導体基板10の上面21、層間絶縁膜38およびポリシリコン抵抗部200を覆うようにエミッタ電極52を形成する。エミッタ電極形成段階S1014では、スパッタ法等でエミッタ電極52を形成してよい。エミッタ電極形成段階S1014の後に、半導体装置100の他の構造を形成する工程を有してよい。
【0133】
図17に示した工程により、
図1から
図15において説明した半導体装置100を製造できる。
図12Aに示したトレンチコンタクト部210を形成する場合、エッチング段階S1012と、エミッタ電極形成段階S1014の間において、トレンチコンタクト部210の凹部を形成してよい。当該工程では、半導体基板10およびダミートレンチ部30を同時にエッチングして、当該凹部を形成してよい。
【0134】
図18は、半導体装置100の製造方法の他の例を示す図である。本例の製造方法では、
図16に示した構造の半導体装置100を製造する。層間絶縁膜形成段階S1002は、
図17の例と同様である。
【0135】
エミッタ領域露出段階S1004では、層間絶縁膜38の一部を除去してコンタクトホール220を形成し、エミッタ領域12を露出させる。エミッタ領域露出段階S1004では、エッチングによりコンタクトホール220を形成してよい。
【0136】
ポリシリコン堆積段階S1006、第1不純物注入段階S1008および第2不純物注入段階S1010は、
図17の例と同様である。第1不純物注入段階S1008および第2不純物注入段階S1010の間に、エッチバック段階S1009を行ってもよい。エッチバック段階S1009では、少なくとも、コンタクトホール220の上方に存在するポリシリコン膜をエッチングして除去する。エッチバック段階S1009では、コンタクトホール220の内部以外に存在するポリシリコン膜を除去してよい。
【0137】
第2注入段階S1010の後に、エッチング段階S1012を行う。エッチング段階S1012は
図17の例と同様である。エッチバック段階S1009を行っている場合、エッチング段階S1012では、エッチバック段階S1009で除去し切れなかったポリシリコン膜を除去してよい。
【0138】
エミッタ電極形成段階S1014以降は、
図17の例と同様である。エッチング段階S1012とエミッタ電極形成段階S1014との間に、プラグ形成段階S1013を行ってもよい。プラグ形成段階S1013では、エミッタ電極52と、コンタクト領域15またはベース領域14とを接続するタングステンプラグを形成する。タングステンプラグは、半導体基板10の上面21から内部に埋め込まれてよい。コンタクト領域15またはベース領域14が層間絶縁膜38で覆われている場合、層間絶縁膜38に形成したコンタクトホールにタングステンプラグを形成してよい。
【0139】
図19は、ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度と、半導体装置100に流れる飽和電流との関係を示す図である。
図19に示すように、ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度を下げてポリシリコン抵抗部200の抵抗値を上げると、飽和電流は低下する。飽和電流の低下分に応じて、ゲートトレンチ部40とエミッタ領域12とが接触する総エミッタ幅Zを大きくできる。
【0140】
図20は、ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度と、半導体装置100のオン電圧との関係を示す図である。本例では、飽和電流を概ね540A(175℃)に設定している。
図20では、エミッタ領域12がY軸方向に長手を有する実施例を実線で示し、エミッタ領域12がX軸方向に長手を有する比較例を破線で示している。実施例では、総エミッタ幅Zを大きくできる。このため、ポリシリコン抵抗部200の不純物濃度を下げて、オン電圧をより低くできる。
図19および
図20に示すように、実施例に係る半導体装置100は、低オン電圧で低飽和電流な特性を実現できる。
【0141】
図21は、半導体装置100の他の構成を示す断面図である。
図21では、a-a断面とY軸方向の位置が同一のXZ断面を示している。ただし
図21の断面では、1つのゲートトレンチ部40と、ゲートトレンチ部40の両側に配置されたダミートレンチ部30とを含んでいる。また
図21の断面では、半導体基板10の下面23側の構成を省略している。当該断面以外の構造は、
図1から
図20において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様であってよい。
【0142】
本例の半導体装置100は、ポリシリコン抵抗部200を備えない点で、
図1から
図20において説明した半導体装置100と相違する。
図1から
図20においてポリシリコン抵抗部200が設けられていた領域には、エミッタ電極52が設けられている。本例の半導体装置100は、エミッタ領域12の構造が、
図1から
図20において説明した半導体装置100と相違する。本例のエミッタ領域12は、N+型の第1エミッタ部分81およびN型の第2エミッタ部分82を有する。エミッタ領域12は、N+型の第3エミッタ部分83を更に有してもよい。
図21においては、エミッタ領域12の符号を省略している。本例の半導体装置100は、トレンチコンタクト部210および高濃度領域86を更に備えてもよい。他の構造は、
図1から
図20において説明した半導体装置100と同様である。
【0143】
本例のメサ部60は、それぞれのトレンチ部に対してエミッタ領域12を有している。つまり、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40のそれぞれに対してエミッタ領域12を有している。他の例では、メサ部60は、ダミートレンチ部30と接するエミッタ領域12を有さなくてもよい。
【0144】
第1エミッタ部分81は、半導体基板10の上面21と接して設けられている。第1エミッタ部分81は、半導体基板10の上面21において、エミッタ電極52と接触してよい。第1エミッタ部分81は、トレンチ部の側面と接していてよい。
【0145】
第2エミッタ部分82は、第1エミッタ部分81の下において、第1エミッタ部分81と接して設けられている。第2エミッタ部分82は、第1エミッタ部分81よりもドーピング濃度の低いN型の領域である。第2エミッタ部分82は、トレンチ部の側面と接していてよい。本例の第2エミッタ部分82は、エミッタ電極52と接触していない。
【0146】
本例のメサ部60は、第2エミッタ部分82とエミッタ電極52との間に流れる電流が、第1エミッタ部分81を通過するように構成されている。つまりメサ部60において、第2エミッタ部分82とエミッタ電極52とを接続する各径路には、第1エミッタ部分81、絶縁膜、または、P型の領域の少なくともいずれかが配置されている。また、本例のメサ部60は、第1エミッタ部分81とベース領域14との間に流れる電流が、第2エミッタ部分82を通過するように構成されている。つまりメサ部60において、第1エミッタ部分81とベース領域14とを接続する各径路には、第2エミッタ部分82、絶縁膜またはP型の領域の少なくともいずれかが配置されている。
【0147】
本例の第2エミッタ部分82は、第1エミッタ部分81よりもドーピング濃度が低い。これにより第2エミッタ部分82の抵抗値が高くなる。また、第1エミッタ部分81とベース領域14との間に流れる電流は、第2エミッタ部分82を通過する。このため本例の第2エミッタ部分82は、抵抗部として機能する。これにより、
図1から
図20における半導体装置100と同様に、MOS構造に流れる飽和電流を抑制できる。また、Y軸方向に長手を有するエミッタ領域12を設けることで、総エミッタ幅を大きくして、オン電圧を小さくする。これにより、低い飽和電流と、低いオン電圧とを両立できる。本例によれば、ポリシリコン抵抗部200等の追加の膜を用いずに、抵抗部を設けることができる。
【0148】
第3エミッタ部分83は、第2エミッタ部分82の下において、第2エミッタ部分82と接して設けられている。第3エミッタ部分83は、第2エミッタ部分82よりもドーピング濃度の高いN+型の領域である。第3エミッタ部分83は、第1エミッタ部分81よりもドーピング濃度が低くてよい。第3エミッタ部分83は、トレンチ部の側面と接していてよい。本例の第3エミッタ部分83は、エミッタ電極52と接触していない。
【0149】
第3エミッタ部分83を設けることで、第2エミッタ部分82がP型の領域に直接接することを防げる。このため、P型の領域のドーパントが、低濃度の第2エミッタ部分82に拡散することを抑制でき、第2エミッタ部分82の深さ方向の長さを精度よく制御できる。このため、第2エミッタ部分82における抵抗値のばらつきを抑制できる。
【0150】
ゲートトレンチ部40のゲート導電部44の上端84は、第3エミッタ部分83と向かい合って配置されていることが好ましい。ゲート導電部44の上端84は、メサ部60と向かい合う側壁における上端を指してよい。上端84と第3エミッタ部分83とが向かい合うとは、Z軸方向において、第3エミッタ部分83の上端位置と下端位置との間に、上端84が配置されていることを指す。第3エミッタ部分83の上端および下端は、ゲートトレンチ部40の側壁に接する部分における上端および下端を指してよい。
【0151】
ゲート導電部44にオン電圧が印加されると、メサ部60におけるトレンチ部との境界部分のうち、ゲート導電部44と向かい合う領域に電子が誘引される。第2エミッタ部分82とゲート導電部44とが向かい合って配置されている場合、第2エミッタ部分82の境界部分にも電子が誘引される。第2エミッタ部分82はドーピング濃度が低いので、誘引された電子により、境界部分における抵抗値が変動する場合がある。これに対して第3エミッタ部分83をゲート導電部44の上端84と向かい合うように配置することで、第2エミッタ部分82の境界部分における抵抗値の変動を抑制できる。また、第3エミッタ部分83はドーピング濃度が高いので、第3エミッタ部分83の境界部分に電子が誘引されても、当該境界部分の抵抗値の変動は非常に小さい。
【0152】
トレンチコンタクト部210は、半導体基板10の上面21からベース領域14の上端よりも深くまで設けられている。トレンチコンタクト部210は導電性の材料で形成されている。トレンチコンタクト部210は、半導体基板10の上方のエミッタ電極52と同一の材料で形成されていてよく、異なる材料で形成されていてもよい。例えばトレンチコンタクト部210はタングステンを含んでよい。
【0153】
高濃度領域86は、ベース領域14よりも高濃度のP+型の領域である。高濃度領域86のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度と同一であってよい。高濃度領域86のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度の10倍以上であってよく、50倍以上であってよく、100倍以上であってもよい。高濃度領域86は、トレンチコンタクト部210に接している。高濃度領域86は、少なくともトレンチコンタクト部210とベース領域14との間に設けられている。本例の高濃度領域86は、トレンチコンタクト部210の下端および側壁と接している。本例の高濃度領域86は、トレンチコンタクト部210の側壁の上端とは接していない。
【0154】
本例の第1エミッタ部分81は、トレンチコンタクト部210と接している。これにより、エミッタ電極52と第1エミッタ部分81との間の接続抵抗を小さくできる。第1エミッタ部分81は、高濃度領域86の上端と接していてよい。
【0155】
第2エミッタ部分82は、トレンチコンタクト部210と接していない。第2エミッタ部分82とトレンチコンタクト部210との間には、絶縁膜またはP型の領域が設けられてよい。本例では、第2エミッタ部分82とトレンチコンタクト部210との間にP型の高濃度領域86が設けられている。このような構成により、第1エミッタ部分81以外の経路を通って、エミッタ電極52と第2エミッタ部分82との間に電流が流れることを防げる。
【0156】
第3エミッタ部分83は、トレンチコンタクト部210と接していない。第3エミッタ部分83とトレンチコンタクト部210との間には、絶縁膜またはP型の領域が設けられてよい。本例では、第3エミッタ部分83とトレンチコンタクト部210との間にP型の高濃度領域86が設けられている。このような構成により、ベース領域14のチャネルを通った電流が、第2エミッタ部分82を通らずにエミッタ電極52に抜けることを防げる。
【0157】
図22は、
図21のh-h線におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。h-h線は、第1エミッタ部分81、第2エミッタ部分82および第3エミッタ部分83を通過する、Z軸と平行な線である。
【0158】
本例の第1エミッタ部分81は、深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク91を有する。ドーピング濃度分布のピークとは、頂点において極大値を示す山型の部分である。ピークの頂点におけるドーピング濃度を、当該ピークのドーピング濃度とする。ピーク91のドーピング濃度をP1とする。なお第1エミッタ部分81は、第2エミッタ部分82との境界から、半導体基板10の上面21まで、ドーピング濃度が継続して増加していてもよい。この場合、上面21における第1エミッタ部分81のドーピング濃度をP1とする。
【0159】
本例の第2エミッタ部分82は、深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク92を有する。ピーク92のドーピング濃度をP2とする。第1エミッタ部分81と第2エミッタ部分82との間において、ドーピング濃度が極小値を示す谷部94を、第1エミッタ部分81と第2エミッタ部分82との境界とする。
【0160】
本例の第3エミッタ部分83は、深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク93を有する。ピーク93のドーピング濃度をP3とする。第2エミッタ部分82と第3エミッタ部分83との間において、ドーピング濃度が極小値を示す谷部95を、第2エミッタ部分82と第3エミッタ部分83との境界とする。
【0161】
上述したように、第2エミッタ部分82のピーク92の濃度P2は、第1エミッタ部分81のピーク91の濃度P1よりも低い。濃度P2は、濃度P1の1/100倍以下であってよく、1/1000倍以下であってもよい。濃度P2は、谷部94のドーピング濃度の10倍以下であってよく、5倍以下であってもよい。濃度P2は、ドリフト領域18のドーピング濃度より高い。濃度P2は、ドリフト領域18のドーピング濃度の100倍以下であってよく、10倍以下であってよく、5倍以下であってもよい。濃度P2を調整することで、抵抗部における抵抗値を調整できる。
【0162】
第2エミッタ部分82の深さ方向における長さは、2μm以下であってよい。当該長さは、1.5μm以下であってよく、1μm以下であってもよい。当該長さは、0.1μm以上であってよく、0.5μm以上であってもよい。エミッタ領域12の全体の深さ方向における長さは3μm以下であってよい。
【0163】
本例のエミッタ領域12は、ピーク91、ピーク92およびピーク93のそれぞれの位置にN型のドーパントイオンを注入することで形成できる。第2エミッタ部分82の長さは、ピーク91およびピーク93を形成する深さ位置により調整できる。第2エミッタ部分82の長さを調整することで、抵抗部における抵抗値を調整できる。
【0164】
上述したように、第3エミッタ部分83のピーク93の濃度P3は、第2エミッタ部分82のピーク92の濃度P2よりも高い。濃度P3は、濃度P2の10倍以上であってよく、50倍以上であってよく、100倍以上であってもよい。第3エミッタ部分83のピーク93の濃度P3は、第1エミッタ部分81のピーク91の濃度P1以下であってよい。濃度P3は、濃度P1の1/2倍以下であってよく、1/5倍以下であってよく、1/10倍以下であってもよい。
【0165】
図21において説明したように、ゲート導電部44の上端84の深さ位置は、第3エミッタ部分83が設けられた深さ範囲に含まれている。上端84は、ピーク93の半値全幅の範囲内に設けられてよい。ピーク93の半値全幅の範囲とは、ピーク93において、ドーピング濃度がP3の半分以上となる範囲である。
【0166】
第3エミッタ部分83の深さ方向の長さは、0.4μm以上であってよい。これにより、ゲート導電部44の上端84の深さ位置が、製造ばらつき等で変動した場合であっても、上端84を第3エミッタ部分83と向かい合う位置に配置できる。第3エミッタ部分83の深さ方向の長さは1μm以下であってよい。第3エミッタ部分83は、上端84の深さ位置のばらつきを吸収できればよい。第3エミッタ部分83の長さを1μm以下とすることで、エミッタ領域12の全長を小さくできる。
【0167】
図23は、h-h線におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例のドーピング濃度分布は、第2エミッタ部分82における分布が、
図22の例と相違する。第1エミッタ部分81および第3エミッタ部分83における分布は、
図22の例と同様である。
【0168】
本例の第2エミッタ部分82は、深さ方向のドーピング濃度分布が平坦な平坦部分96を有する。例えば平坦部分96とは、ドーピング濃度の最大値が、ドーピング濃度の最小値の2倍以下の部分である。平坦部分96の深さ方向の長さは、0.1μm以上であってよく、0.5μm以上であってもよい。
【0169】
平坦部分96のドーピング濃度の最小値は、ドーピング濃度Ddの10倍以下であってよく、5倍以下であってよく、2倍以下であってもよい。平坦部分96のドーピング濃度の最小値は、ドリフト領域18のドーピング濃度Ddと同一であってもよい。本例では、第2エミッタ部分82に、N型のドーパントイオンを注入しない。
【0170】
図24は、h-h線におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例のドーピング濃度分布は、第2エミッタ部分82における分布が、
図22の例と相違する。第1エミッタ部分81および第3エミッタ部分83における分布は、
図22の例と同様である。
【0171】
本例の第2エミッタ部分82は、深さ方向においてドーピング濃度が極小値を示す谷部97を有する。谷部97におけるドーピング濃度の極小値をV1とする。濃度V1は、ドリフト領域18のドーピング濃度Ddの100倍以下であってよく、50倍以下であってよく、10倍以下であってよく、5倍以下であってもよい。濃度V1は濃度Ddと同一であってもよい。本例では、第2エミッタ部分82に、N型のドーパントイオンを注入しない。第1ピーク91と第3ピーク93との境界近傍における谷部97が第2エミッタ部分82として機能する。
【0172】
第2エミッタ部分82の深さ方向における両端のドーピング濃度をDbとする。濃度Dbは、濃度V1の10倍であってよく、5倍であってよく、他の値であってもよい。第2エミッタ部分82の深さ方向の長さは、
図22または
図23の例と同様である。
【0173】
第2エミッタ部分82は、
図22に示したピーク92、
図23に示した平坦部分96、および、
図24に示した谷部97のいずれかを有する。第2エミッタ部分82には、ピーク92、平坦部分96および谷部97のうちの複数が設けられていてもよい。
【0174】
図25は、半導体装置100の他の構成を示す断面図である。本例の半導体装置100は、高濃度領域86の構造が
図21の例と相違する。他の構造は、
図21の例と同様である。
【0175】
本例の高濃度領域86は、第1エミッタ部分81とトレンチコンタクト部210との間にも設けられている。本例の第1エミッタ部分81は、トレンチコンタクト部210と接触していない。本例によれば、高濃度領域86を形成する範囲にばらつきが生じても、第2エミッタ部分82とトレンチコンタクト部210とが接続されることを抑制できる。
【0176】
図26は、高濃度領域86の他の構造例を示す図である。本例では、第1の高濃度領域86-1および第2の高濃度領域86-2が設けられている。他の構造は、
図25の例と同様である。第1の高濃度領域86-1および第2の高濃度領域86-2は、いずれもベース領域14より高濃度のP型の領域である。第1の高濃度領域86-1は、第2の高濃度領域86-2よりも低濃度の領域である。
【0177】
第1の高濃度領域86-1は、トレンチコンタクト部210と、第2エミッタ部分82および第3エミッタ部分83との間に設けられている。本例の第1の高濃度領域86-1は、トレンチコンタクト部210と、第1エミッタ部分81との間にも設けられている。
図21の例のように、第1エミッタ部分81がトレンチコンタクト部210と接している場合、第1の高濃度領域86-1は、トレンチコンタクト部210と、第1エミッタ部分81との間には設けられなくてもよい。
【0178】
第2の高濃度領域86-2は、トレンチコンタクト部210の下端に接して設けられている。第2の高濃度領域86-2は、トレンチコンタクト部210の下面の全体を覆うように設けられてよい。トレンチコンタクト部210の下面とは、トレンチコンタクト部210の外面のうち、法線方向と、Z軸における下方向との成す角度が45度以下の部分を指してよい。
【0179】
第2の高濃度領域86-2を高濃度にすることで、トレンチコンタクト部210とベース領域14との接触抵抗を小さくできる。第1の高濃度領域86-1を低濃度にすることで、第1の高濃度領域86-1におけるP型のドーパントが第2エミッタ部分82に拡散することを抑制できる。このため、第2エミッタ部分82におけるドーピング濃度を精度よく調整して、抵抗部の抵抗値を精度よく調整できる。
【0180】
第1の高濃度領域86-1のドーピング濃度は、第2の高濃度領域86-2のドーピング濃度の0.2倍以下であってよく、0.1倍以下であってよく、0.05倍以下であってもよい。第2の高濃度領域86-2のドーピング濃度は、第2の高濃度領域86-2におけるドーピング濃度の最大値を用いてよい。
【0181】
半導体基板10にトレンチコンタクト部210を形成するための溝部を形成し、当該溝部からP型のドーパントイオンを注入することで、第1の高濃度領域86-1および第2の高濃度領域86-2を形成してよい。ドーパントイオンの注入角度およびドーズ量を調整することで、第1の高濃度領域86-1および第2の高濃度領域86-2のドーピング濃度を調整できる。ドーパントイオンの注入角度およびドーズ量の少なくとも一方を変更して、複数回ドーパントイオンを注入することで、第1の高濃度領域86-1および第2の高濃度領域86-2のドーピング濃度を調整してもよい。
【0182】
図27は、半導体装置100の他の構成を示す断面図である。本例の半導体装置100は、高濃度領域86の一部分に代えてコンタクト絶縁膜88を有する点で
図21の例と相違する。他の構造は、
図21の例と同様である。
【0183】
コンタクト絶縁膜88は、半導体基板10を酸化または窒化した膜であってよい。コンタクト絶縁膜88が設けられる位置および範囲は、
図26において説明した第1の高濃度領域86-1が設けられる位置および範囲と同様であってよい。本例において高濃度領域86が設けられる位置および範囲は、
図26において説明した第2の高濃度領域86-2が設けられる位置および範囲と同様であってよい。
【0184】
本例のコンタクト絶縁膜88は、トレンチコンタクト部210と、第2エミッタ部分82および第3エミッタ部分83との間に設けられている。本例では、第1エミッタ部分81がトレンチコンタクト部210と接触している。第1エミッタ部分81とトレンチコンタクト部210との間には、コンタクト絶縁膜88が設けられていなくてよい。
【0185】
コンタクト絶縁膜88の上端の位置は、第2エミッタ部分82の上端の位置と同一であってよい。コンタクト絶縁膜88の上端の位置は、第2エミッタ部分82の上端よりも上方に位置していてもよい。これにより、第2エミッタ部分82がトレンチコンタクト部210に接触することを防げる。
【0186】
図28は、半導体装置100の他の構成を示す断面図である。本例の半導体装置100は、コンタクト絶縁膜88の構造が、
図27の例と相違する。他の構造は、
図27の例と同様である。本例のコンタクト絶縁膜88は、第1エミッタ部分81とトレンチコンタクト部210との間にも設けられている。本例の第1エミッタ部分81は、トレンチコンタクト部210と接触していない。
【0187】
図29は、半導体装置100の他の例を示す断面図である。本例の断面は、
図21の例と同様の位置および範囲を示している。本例においては、X軸方向においてダミートレンチ部30の両側に配置された2つのメサ部60に渡って、トレンチコンタクト部210が設けられている。本例のトレンチコンタクト部210はエミッタ電極52と同一の材料で形成されてよい。トレンチコンタクト部210とゲートトレンチ部40との間の構造は、
図21から
図28において説明したいずれかの態様と同様である。
【0188】
トレンチコンタクト部210の底面には、ダミートレンチ部30が形成されている。ダミートレンチ部30のダミー導電部34は、トレンチコンタクト部210と接続している。これにより、ダミー導電部34にエミッタ電位を印加できる。トレンチコンタクト部210の底面および側面のうち、ダミートレンチ部30と接続していない領域の少なくとも一部には、高濃度領域86が設けられている。高濃度領域86は、第1エミッタ部分81とトレンチコンタクト部210との間に設けられていてよく、設けられていなくてもよい。
【0189】
図29の例では、1つのトレンチコンタクト部210の底面には、1つのダミートレンチ部30が設けられている。他の例では、1つのトレンチコンタクト部210の底面には、X軸方向に並んだ複数のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。トレンチコンタクト部210は、X軸方向において2つのゲートトレンチ部40に挟まれて配置された2つ以上のダミートレンチ部30に対して、共通に設けられてよい。このような構造により、トレンチ部の間隔が微細化しても、トレンチコンタクト部210を容易に設けることができる。
【0190】
トレンチコンタクト部210の底面に設けられたダミートレンチ部30の下端の深さ位置と、ゲートトレンチ部40の下端の深さ位置は、同一であってよく、異なっていてもよい。ダミートレンチ部30の下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも下方に配置されていてもよい。トレンチコンタクト部210の底面に設けられたダミートレンチ部30は、
図12Bの例と同様の構造を有してよく、
図12Cの例と同様の構造を有してもよい。
【0191】
図30は、上面視における高濃度領域86およびエミッタ領域12の配置例を示す図である。本例では、複数のエミッタ領域12がY軸方向において離散的に配置されている。半導体基板10の上面21においてエミッタ領域12が設けられない領域には、ベース領域14等のP型の領域が設けられている。
【0192】
本例では、複数の高濃度領域86が、Y軸方向において離散的に配置されている。それぞれの高濃度領域86は、エミッタ領域12と重なるように配置されている。高濃度領域86のY軸方向の長さL1は、エミッタ領域12のY軸方向の長さL2より大きくてよい。
【0193】
図31は、
図21から
図30において説明した半導体装置100の製造方法の一部の工程を示す図である。本例の製造方法は、エミッタ領域形成段階S1102、層間絶縁膜形成段階S1104、エッチング段階S1106、イオン注入段階S1108、熱処理段階S1110、コンタクト部形成段階S1112、および、エミッタ電極形成段階S1114を有する。エミッタ領域形成段階S1102または層間絶縁膜形成段階S1104よりも前に、トレンチ部が形成されていてよい。
【0194】
エミッタ領域形成段階S1102では、
図21から
図30において説明したエミッタ領域12を形成する。エミッタ領域12は、第1エミッタ部分81および第2エミッタ部分82を有する。エミッタ領域12は、第3エミッタ部分83を更に有してよい。エミッタ領域形成段階S1102では、異なる深さにN型のドーパントイオンを注入することで、複数のエミッタ部分を形成する。ドーパントイオンを注入した後に、半導体基板10を熱処理してよい。
【0195】
層間絶縁膜形成段階S1104では、半導体基板10の上面21に層間絶縁膜38を形成する。層間絶縁膜形成段階S1002では、PSG等の絶縁膜を上面21の全体に堆積してよい。
【0196】
エッチング段階S1106では、層間絶縁膜38の一部を除去して半導体基板10の上面21の一部を露出させる。エッチング段階S1106では、層間絶縁膜38をドライエッチングまたはウェットエッチングしてよく、層間絶縁膜38をCMP等の方法で研削してもよい。
【0197】
イオン注入段階S1108では、高濃度領域86を形成すべき領域に、P型のドーパントイオンを注入する。イオン注入段階S1108では、トレンチコンタクト部210を形成するための溝部を形成して、当該溝部にドーパントイオンを注入してよい。熱処理段階S1110では、高濃度領域86にドーパントイオンを注入した後に、半導体基板10を熱処理する。高濃度領域86に代えてコンタクト絶縁膜88を形成する場合、S1108およびS1110に代えて、コンタクト絶縁膜88を形成する段階を設けてよい。
【0198】
コンタクト部形成段階S1112では、半導体基板10の上面21に設けた溝部に導電材料を充填して、トレンチコンタクト部210を形成する。コンタクト部形成段階S1112では、エミッタ電極52と同一の材料を充填してよく、タングステンを含む材料を充填してもよい。
【0199】
エミッタ電極形成段階S1114では、エミッタ電極52を形成する。エミッタ電極形成段階S1114では、スパッタ法等でエミッタ電極52を形成してよい。エミッタ電極形成段階S1114の後に、半導体装置100の他の構造を形成する段階を有してよい。
【0200】
図31に示した工程により、
図21から
図30において説明した半導体装置100を製造できる。
図29に示したトレンチコンタクト部210を形成する場合、コンタクト部形成段階S1112において溝部に導電材料を充填する前に、当該溝部の底面にダミートレンチ部30を形成してよい。
【0201】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0202】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0203】
10・・半導体基板、11・・P型外周ウェル領域、12・・エミッタ領域、14・・ベース領域、15・・コンタクト領域、18・・ドリフト領域、20・・バッファ領域、21・・上面、22・・コレクタ領域、23・・下面、24・・コレクタ電極、30・・・ダミートレンチ部、31・・・上端、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・上端、34・・・ダミー導電部、38・・層間絶縁膜、40・・ゲートトレンチ部、42・・ゲート絶縁膜、44・・ゲート導電部、52・・エミッタ電極、60・・メサ部、70・・トランジスタ部、81・・・第1エミッタ部分、82・・・第2エミッタ部分、83・・・第3エミッタ部分、84・・・上端、86・・・高濃度領域、88・・・コンタクト絶縁膜、90・・エッジ終端構造部、91、92、93・・・ピーク、94、95・・・谷部、96・・・平坦部分、97・・・谷部、100・・半導体装置、130・・ゲート配線、160・・活性部、161・・第1端辺、162・・第2端辺、164・・ゲートパッド、200・・・ポリシリコン抵抗部、210・・・トレンチコンタクト部、212・・・底面、220・・・コンタクトホール