(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016931
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】累進屈折力レンズの設計方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20240201BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119220
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 仁志
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵介
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD03
2H006DA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の累進面を合成する際に常に破綻なく合成でき、既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案する場合に、設計データの被提供者が特別な知見を持たなくても、積極的に新しい設計パターンを作り出して商品化することを可能とする累進屈折力レンズの設計方法及び製造方法を提供すること。
【解決手段】遠用領域から近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、累進帯長が同じで全体として異なる収差分布となる複数の累進面を合成して1つの累進面を設計するようにした。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための遠用領域と、前記遠用領域よりも下方に配置され前記遠用領域よりも大きな屈折力を有する近用領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進領域を備え、前記遠用領域から前記近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、
累進帯長が同じで全体として異なる収差分布となる複数の累進面を合成して1つの累進面を設計するようにした累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項2】
レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための遠用領域と、前記遠用領域よりも下方に配置され前記遠用領域よりも大きな屈折力を有する近用領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進領域を備え、前記遠用領域から前記近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、
累進帯における加入度曲線の加入パターンに同一性又は類似性があって全体として異なる収差分布となる複数の累進面を合成して1つの累進面を設計するようにした累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項3】
全領域に渡って複数の累進面を合成する際には、合成対象とする複数の累進面同士の合成割合が全領域内においてその位置によらず一定となるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項4】
合成対象とする複数の累進面の合成割合が水平方向において連続的に変化するように合成していくことを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項5】
合成対象とする複数の累進面の合成割合がレンズの上下方向に連続的に変化するように合成していくことを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項6】
累進面を合成する際には、前記遠用領域又は前記近用領域については合成対象のある1つの累進面の設計とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項7】
レンズ面上方に下に凸な第1の放物線を配置するとともに、レンズ面下方に上に凸な第2の放物線を配置し、前記第1の放物線よりも上側の累進面形状を第1の累進面とし、前記第2の放物線よりも下側の累進面形状を第2の累進面とし、前記第1の放物線と前記第2の放物線の間の中間領域の累進面を前記第1の累進面と前記第2の累進面とのサグ量に基づいて合成する際に、前記第1の放物線上の点Sと前記第2の放物線上の点Tを通る円弧上にある前記中間領域内の点Rについて、点S、点R、点Tを結ぶ弧STRと、点S、点Rを結ぶ弧SRとの長さの比に基づいて前記第1の累進面と前記第2の累進面の合成割合を決定するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法によってレンズを製造することを特徴とする累進屈折力レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老視補正用の眼鏡に使用される累進屈折力レンズの設計方法及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老視に対する矯正用の眼鏡に累進屈折力レンズが使用されている。一般的に累進屈折力レンズは屈折力のそれぞれ異なる2つの屈折領域と、それら両領域の間で屈折力(度数)が累進的に変わる累進領域とを備えた複雑な累進面から形成されており、境目がなく1枚のレンズで遠くのものから近くのものまで見ることができるものである。ここに2つの領域とはレンズの比較的上方位置に設定された遠用領域と、レンズの比較的下方位置に設定された近用領域の2つの領域のことである。遠用領域と近用領域との移行帯である累進領域は滑らかかつ連続的に連結されている。
累進屈折力レンズの累進面はレンズごとに設計されるのが基本であるが、設計した累進屈折力レンズの非点収差を抑制したり、あるいは、既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案したりするというようなことがある。
「既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案する」とは、具体的には次のような場合である。例えば、「設計データを提供する会社」をA社とし「設計データを提供されてレンズを製造する会社」をB社とする。このようなビジネス形態においては、従来は一つの契約に対して一種類の設計データをやりとりするのみであった。すなわち、2種類なら2種類、5種類なら5種類ぶんの設計データをやりとりし、B社はA社から提供されたデータから選択したものを自社のレンズ商品として販売するという形態であった。しかし、提供されたデータ以外の新しい設計パターンをB社が積極的に作り出して販売するというビジネスモデルも考えられる。
既存の累進屈折力レンズを変更する公知の例として、例えば、特許文献1を挙げる。特許文献1には、ある基準とする累進屈折面に個人特有の視覚動作に対応させるためにその基準とする累進屈折面を修正することが開示されている。また、特許文献2には非点収差を抑制する目的で累進面と累減面のサグ合成により、累進的な合成面を得る製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-107239号公報
【特許文献2】特表2004-524582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来の累進面を修正する技術は実際には必ずしも非点収差が解消されるものではない。特許文献1では基準とする累進屈折面と修正サグとの関係で非点収差が増す可能性もある。また、特許文献2でも累進面と累減面の形状によっては合成することでかえって非点収差が増す可能性がある。つまり、合成後の設計に破綻が生じるケースがある。また、累進面と累進面の合成でも同様に非点収差が増す可能性がある。そのため、複数の累進面を合成する際に常に破綻なく合成できる合成手法が求められていた。
また、既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案する場合に、設計データの被提供者が特別な知見を持たなくても、積極的に新しい設計パターンを作り出して商品化することを可能とする方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために手段1では、レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための遠用領域と、前記遠用領域よりも下方に配置され前記遠用領域よりも大きな屈折力を有する近用領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進領域を備え、前記遠用領域から前記近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、累進帯長が同じで全体として異なる収差分布となる複数の累進面を合成して1つの累進面を設計するようにした。
また、手段2では、レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための遠用領域と、前記遠用領域よりも下方に配置され前記遠用領域よりも大きな屈折力を有する近用領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進領域を備え、前記遠用領域から前記近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、累進帯における加入度曲線の加入パターンに同一性又は類似性があって全体として異なる収差分布となる複数の累進面を合成して1つの累進面を設計するようにした。
これらの手段によって、複数の累進面を合成することで従来にない新しい設計パターンの累進屈折力レンズを得ることができ、そのレンズの非点収差は合成前の単独で設計した累進面に比べて著しく増加することがない。また、これらのようにして複数の累進面を合成して得られる設計パターンの性能が好適な範囲に収まるので、これらのような手法によって合成した累進屈折力レンズの性能について一定の保証を与えることができる。
【0006】
上記において「加入度」は、累進屈折力レンズにおける遠用領域と近用領域との見え方の差であって、一般に次のように計算される。
加入度=
主子午線上の近用測定位置における平均度数(S+C/2)
-主子午線上の遠用測定位置における平均度数(S+C/2)
「累進帯長」は、累進帯の上端をフィッティングポイントの高さとした場合に、累進帯の下端、つまり加入度曲線を下方に真っすぐ延長したとき、そのレンズの公称の加入度数に到達する高さとなる。
「複数の累進面を合成」することは、任意の累進面、例えば2つの異なる設計の累進面について、部分的な領域、あるいは全領域が両方の累進面の形状データに基づいて決定される。つまり、累進屈折力レンズについて基本となる累進面の設計を行い、それぞれ全領域の形状データを設計する。例えば、基準面からどのくらい切削加工するかのサグデータを決定する。サグとは垂下量のことであり、基準となる面(平面または球面)からの垂直方向の変位量(単位は長さで通常はmmで表す)のことである。平面を基準にする場合は「絶対サグ量」とも言う。ここでは参照球面を基準としてレンズ形状を定義することを想定し、「球面を基準としたサグ量」とする。この場合の垂直方向というのは、レンズの中心で球面に接する平面に対して垂直とする。累進面を凹面側(眼球側)とする内面累進屈折力レンズでは、内面を削ってレンズがより薄くなる方向(凸面側に向かう方向)を+にとる。
サグデータとはすなわち基準となる面から削る垂下量のデータである。そして、合成する位置ごとに2つの形状データのサグ量を合成割合に基づいて配分してその位置のサグ量を決定する。レンズ全領域について2つの形状データのサグ量を合成割合に基づいてサグ量を算出し、その数値に基づいてレンズ面を加工する。3つ以上の異なる設計の累進面についても同様である。
【0007】
「累進帯における加入度曲線の加入パターンに同一性又は類似性があって」については具体的には次のような条件となる。
(1)「加入度曲線に同一性がある」と言える条件
主子午線上のどの高さにおいても、度数の違いが加入度の100分の1以下となる場合である。従って、例えば下記実施例の設計Aと設計Bの累進面では主注視線上のどの高さにおいても、度数の違いが0.02D以下であるため同一性があるといえる。
(2)「加入度曲線に類似性がある」と言える条件
主子午線上のどの高さにおいても、度数の違いが加入度の20分の1以下となる場合である。これは同一性があるとまではいえないものの、合成に支障のない度数の違いである条件である。
従って、例えば下記実施例の設計Cと設計Dの累進面同士は極端に特性が異なり、最大0.24Dの違いがあるため、同一性はもちろん類似性もないという判断になる。
【0008】
また手段3では、全領域に渡って複数の累進面を合成する際には、合成対象とする複数の累進面同士の合成割合が全領域内においてその位置によらず一定となるようにした。
つまり、複数の累進面を合成する際に、それら累進面の全領域を合成するのであれば合成割合を累進面の全領域で同じ割合とすることである。
このような構成では、累進面同士の合成手法が比較的単純で合成しやすく収差も生じにくいからである。
また手段4では、合成対象とする複数の累進面の合成割合が水平方向において連続的に変化するように合成していくようにした。
また手段5では、合成対象とする複数の累進面の合成割合がレンズの上下方向に連続的に変化するように合成していくようにした。
また手段6では、累進面を合成する際には、前記遠用領域又は前記近用領域については合成対象のある1つの累進面の設計とする。
これらは合成割合を一定とする場合に比べて、複雑な累進面形状が合成されることとなるが、ユーザーの好みや生活習慣、具体的には視線の使い方の多様なニーズに応えることができることとなる。例えば、水平方向においてA設計、B設計を合成することを考えた場合に、
・鼻側がA設計で耳側がB設計だと都合がよい。
・上側がA設計で下側がB設計だと都合がよい。
というようなユーザーの要望に答えることが可能となる。
レンズの上下方向に連続的に変化するように合成していく場合において、必ずしも垂直方向ではなく眼鏡フレームの形状に加工する前の円形の外観形状の、いわゆる丸レンズの状態のレンズの外形形状となる円弧や同心円方向を考慮して上下方向に連続的に変化するように合成させていくことがレンズ特性から鑑みよりよい。例えば、下記実施例の
図17におけるPRQを通る円弧の直径はRの位置によって変わるのであるが、そのRの位置によって合成させるカーブ形状が変わる。
具体的には、
(1)主子午線から離れた領域においては、レンズ外周の円弧に近いカーブに沿って
(2)主子午線に近い領域においては、主子午線に平行な方向に沿って
(3)(1)と(2)の間においては、距離に応じて連続的に変化させて
それぞれ合成をするとよい。
【0009】
また手段7では、レンズ面上方に下に凸な第1の放物線を配置するとともに、レンズ面下方に上に凸な第2の放物線を配置し、前記第1の放物線よりも上側の累進面形状を第1の累進面とし、前記第2の放物線よりも下側の累進面形状を第2の累進面とし、前記第1の放物線と前記第2の放物線の間の中間領域の累進面を前記第1の累進面と前記第2の累進面とのサグ量に基づいて合成する際に、前記第1の放物線上の点Sと前記第2の放物線上の点Tを通る円弧上にある前記中間領域内の点Rについて、点S、点R、点Tを結ぶ弧STRと、点S、点Rを結ぶ弧SRとの長さの比に基づいて前記第1の累進面と前記第2の累進面の合成割合を決定するようにした。
手段7は複数の累進面の合成割合が垂直方向において連続的に変化する場合の合成割合の配分の算出手法の具体例である。このような算出手法であれば、遠用領域は収差集中型として遠くの物をはっきりと見ることができ、近用領域は収差分散型として、明視できる幅がせまくなっても歪みユレを低減する設計を得ることができる。このような設計は、例えば自動車の運転に好適である。
「第1の放物線上の点Sと第2の放物線上の点Tを通る円弧」は、同時に円形のレンズ外郭と交差することがよい。このような円弧の条件であれば点Rを通る円弧の曲率が大きくならないため、合成割合が位置によって極端に変化することがなくなる。但し、円弧は円形のレンズ外郭よりも外方にあってレンズ外郭と交差しないケースもある。
第1の累進面と第2の累進面は合成前のある設計が100%の状態でもよく、ある設計にわずかに修正を加えた状態でもよい。
【0010】
また手段8では、上記のような累進屈折力レンズの設計方法によってレンズを製造するようにした。
上記のような設計方法によってレンズを製造するためには、具体的には例えば次のように実行することがよい。コンピューターを内蔵した加工装置であるNC装置に加工データを入力してプログラムによって作業者がコンピューターを制御することでセミフィニッシュトブランクをサグデータに基づいて切削加工して累進屈折力レンズを得る。また、あるいは、例えば作業者によってサグデータに基づいてNC装置で加工されたレンズ型に透明な樹脂(モノマー)を注入した後に、レンズ型を離型して硬化した累進屈折力レンズを得る。最終的にはこのようにして得られた累進屈折力レンズ(丸レンズと呼称される)を装用者の選択した眼鏡フレームにあわせて外周をカットする(このような状態の累進屈折力レンズは玉型レンズと呼称される)。
本願発明は以下の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や実施例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素と任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0011】
上記発明では、複数の累進面を合成することで従来にない新しい設計パターンの累進屈折力レンズを得ることができ、そのレンズの非点収差は合成前の単独で設計した累進面に比べて大きく増加することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に用いる設計Aの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図2】同じく実施例に用いる設計Bの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図3】設計Aの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図4】設計Bの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図5】同じく実施例又は比較例に用いる設計Cの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図6】同じく実施例又は比較例に用いる設計Dの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図7】設計Cの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図8】設計Dの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図9】同じく実施例又は比較例に用いるに設計Eの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図10】
図3のグラフと
図4のグラフを重ねてそれらの特性の違いをわかりやすく比較したグラフ。
【
図11】
図7のグラフと
図8のグラフを重ねてそれらの特性の違いをわかりやすく比較したグラフ。
【
図12】実施例1の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図13】実施例2の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図14】実施例3の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図15】比較例1の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図16】比較例2の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図17】実施の形態における垂直方向の合成における合成手法を説明する説明図。
【
図18】実施例4の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図19】実施例5の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図20】実施例6の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図21】比較例3の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図22】他の実施の形態における垂直方向の合成における合成手法を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
1.合成対象とする設計について
以下の実施例において用いる設計Aと設計Bの累進屈折力レンズの累進面を例示する。これらは累進帯長が同じで加入パターンも似ているケースである。これらの加入パターンはほぼ同じであるが、完全に一致はしていない。設計Aと設計Bの主子午線は一致する。
図1に示す設計Aの累進屈折力レンズは収差集中型で、具体的なある累進屈折力レンズA(屈折率1.50、累進帯長15mm)のマッピング測定データをもとに、屈折率1.60、累進帯長14mmとなるような形状データを作成し、その性能を再現したものである。
図2に示す設計Bの累進屈折力レンズは収差分散型で、具体的なある累進屈折力レンズB(屈折率1.60、累進帯長14mm)のマッピング測定データをもとに屈折率1.60、累進帯長14mmとしてシミュレーションして再現したものである。設計Aと設計Bの累進屈折力レンズはフィッティングポイントを幾何中心から2mm上方、プリズム測定点は幾何中心とした。フィッティングポイントは、正面遠方を見る視線がレンズを通過する位置である。
図3及び
図4はそれぞれ設計A、設計Bの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化のグラフであり横方向が幾何中心 (X, Y) = (0.0, 0.0) からの距離(mm)で縦方向が度数である。
【0014】
以下の実施例において比較例として用いる設計C、設計D及び設計Eの累進屈折力レンズの累進面を例示する。
図5に示す設計Cの累進屈折力レンズは設計Aと設計Bとは加入パターンが大きく異なり、具体的なある累進屈折力レンズC(屈折率1.60、累進帯長13mm)のマッピング測定データをもとに、屈折率1.60、累進帯長13mmとしてシミュレーションして再現したものである。
図6に示す設計Dの累進屈折力レンズも設計Aと設計Bとは加入パターンが大きく異なり、具体的なある累進屈折力レンズD(屈折率1.60、累進帯長13mm)のマッピング測定データをもとに、屈折率1.60、累進帯長13mmとしてシミュレーションして再現したものである。設計Cの累進屈折力レンズはフィッティングポイント付近で大きく加入するタイプであり、設計Dの累進屈折力レンズはフィッティングポイント付近の加入が弱いタイプである。設計Cと設計Dの主子午線は一致する。
図7及び
図8はそれぞれ設計C、設計Dの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化のグラフであり横方向が幾何中心からの距離(mm)で縦方向が度数である。
【0015】
図9に示す設計Eの累進屈折力レンズは設計Aと加入パターンが似ているが累進帯長を17mmとなるようにシミュレーションして再現したものである。設計Aと設計Eの主子午線はほぼ一致するが累進帯長が異なるため、設計Aと設計Eとは加入パターンはおのずと大きく異なることとなる。
図10は設計Aと設計Bの累進屈折力レンズにおいて主子午線上の度数変化の違いを分かりやすくするために
図3及び
図4を重ねて示したグラフである。
図11は設計Cと設計Dの累進屈折力レンズにおいて主子午線上の度数変化の違いを分かりやすくするために
図3及び
図4を重ねて示したグラフである。
図10では設計Aと設計Bは累進帯においてほぼ一致しており、その差の最大値は (X, Y) = (0.0, 8.0) の座標においてわずかに0.02Dである。つまり、設計Aと設計Bの累進屈折力レンズは累進帯長が同じで主子午線の配置がほぼ一致する。一方、
図11では設計Cと設計Dは累進帯においてほとんど一致しておらず、その差の最大値は (X, Y) = (0.5, -2.0) において0.24Dに及ぶ。つまり、設計Cと設計Dの累進屈折力レンズの累進帯長は同じであるが累進帯における加入度曲線の加入パターンに同一性又は類似性がない。
【0016】
2.全体的な合成
2-1 累進面同士の合成手法について
全体的な合成では累進面(レンズ面)の全面にわたって一定割合で合成する。合成手法は内挿補間でも外挿補間でもどちらでもよい。例えば、内挿補間であれば0:1~1:0の範囲内で合成する。また、例えば複数段階(たとえば3~5段階、あるいは0~100の101段階など)を用いるようにしてもよい。例えば設計Aそのもの、半々合成、設計Bそのものという3つのバリエーションを作れば、3段階から選択するタイプの商品をユーザーは選択することができる。
例えば、外挿的な合成であれば、例えば「設計Aの割合を1.2、設計Bの割合を-0.2」として、設計Aの収差集中型の性質をさらに強めて、極端な収差集中型と極端な収差分散型の設計データを作り出すことが可能となる。
【0017】
2-2 実施例
実施例1として設計Aと設計Bの累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、設計A:設計B=0.5:0.5の内挿補間で合成した。その結果を
図12に示す。また、を実施例2として設計A:設計B=1.2:-0.2の外挿補間で合成した結果を
図13に示す。いずれも問題なく非点収差が増加することなく合成された。
【0018】
3.水平方向の合成
3-1 累進面同士の合成手法について
水平方向の合成においても合成手法は内挿補間でも外挿補間でもどちらも可能である。例えば、内挿補間であれば、非球面サグを合成する割合を、鼻側から耳側にかけて1:0から0:1まで連続的に変化させるようにする。例えば、レンズの直径を80mm、中央の水平座標を0mmとして、鼻側+40mmで1:0、耳側-40mmで0:1として、その間を直線的に割合を変化させる合成方法が容易に実施できる。
例えば、外挿補間であれば、例えば、レンズの直径を100mm、中央の水平座標を0mmとして、+50~-50mmの形状を得るとすれば、+50mm位置では加重平均の重みで表すと1.25:-0.25となり、-50mm位置では-0.25:1.25の割合で合成することができる。
【0019】
しかし、それらのような単純な方法で非球面サグ量を合成すれば、鼻側と耳側の性能の違いがはっきりしない設計パターンが得られることとなる。というのは、実質的に眼鏡レンズとして高頻度で使用する領域は横幅(水平方向)+20~-20mm程度であるが、その範囲においては0.75:0.25~0.25:0.75という割合での変化となるためである。
そこで、+20mmよりプラスの鼻側領域は1:0、-20mmよりマイナスの耳側領域は0:1として、-20~+20mmの間は、
0.5×{1+sin((水平座標(mm)/20)×(π/2))} :
0.5×{1-sin((水平座標(mm)/20)×(π/2))}
という割合で重みづけすることが考えらえる。-20~+20mmの間を直線的に変化させると、割合の変化が不連続になる領域(水平座標-20mmと+20mmとなる位置の周辺)において、性能が乱れるので、三角関数を用いるようにする。
この際に、水平方向の起点を、レンズ上方から下方にかけて中央(水平座標が0mm)に固定すると、インセットを無視することになる。そこで、水平座標の基準点をインセット量を考慮してずらすとよい。具体的にはインセット量の半分(2.5mmに対して1.25mm)にするとよい。あるいは、遠用度数測定点と近用度数測定点(または累進帯の上下端)を結ぶ直線を起点として、その直線から水平方向に鼻側と耳側に離れた距離をもとに合成するとよい。
【0020】
あるいは、遠用度数測定点の上方と近用度数測定点の下方にては垂直な直線として、その中間は三角関数などにしたがって滑らかに水平方向に変異する曲線としてもよい。
以上のような単純ではないやや複雑な合成をコンピュータープログラムにて実現する際は、「水平座標と垂直座標を引数として、合成割合を返し値とする関数」を用いることがよい。以下中間に三角関数を用いた具体例を示す。
参照点の水平座標をX、垂直座標をY、遠用度数測定点の高さYf、近用度数測定点の高さをYnとする。
Y>Yfの場合は、水平方向の起点を0として、そのままXの値を水平座標として重みづけする。
Y<Ynの場合は、水平方向の起点をインセット量として、X-インセット量の値をもとに重みづけする。その際、-20+インセット量~+20+インセット量mmの間で上式を適用する。
Yn≦Y≦Yfの場合は、
Z=インセット量×0.5×{1-cos((Yf-Y)/(Yf-Yn)×π)}として、X-Zの値をもとに重みづけする。その際、-20+Z~+20+Zmmの間で上記の三角関数の式を適用する。
【0021】
3-2 実施例
実施例3として設計Aと設計Bの累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、上記段落0019~0020で説明した手法で合成した。その結果を
図14に示す。この実施例3は設計Aを鼻側、設計Bを耳側として上記に倣って各座標を、
Z=インセット量×0.5×{1-cos((Yf-Y)/(Yf-Yn)×π)}
で計算した。
一方、比較例1として設計Aを鼻側とし、設計Eを耳側として累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、上記段落0019~0020で説明した手法で合成した。その結果を
図15に示す。また、比較例2として設計Cを鼻側とし、設計Dを耳側として累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、上記段落0019で説明した手法で合成した。その結果を
図16に示す。
比較例1では主子午線に沿った明視域は、遠用領域から近用領域に向かって鼻側に向かうべきところを、途中から反対に耳側に向かってしまい、明らかな破綻が生じている。これは設計Aと設計Eは累進帯長が違うためであり、そのため累進帯長が異なる設計どうしを合成することは妥当でないことがわかる。
また、比較例2では鼻側と耳側の収差分布に高低差を生じている。また、主子午線において、等度数曲線が斜めになっているため、アイポイントのすぐ下で水平方向の視線移動(または頭を回転)にあたってユレを生じることとなる。つまり、全体として妥当な設計ではない。比較例2では設計Cと設計Dを合成している。設計Cと設計Dはいずれも設計Aと設計Bとも加入パターンが違い、更に設計Cと設計Dどうしも加入パターンが大きく異なっているケースであった。
【0022】
4.垂直方向の合成
4-1 累進面同士の合成手法について
垂直方向の合成においても合成手法は内挿補間でも外挿補間でもどちらも可能である。「3.水平方向の合成」と同様に、設計Aと設計Bの非球面サグを合成する割合を、上側から下側にかけて1:0から0:1まで単純に連続的に変化させるようにする。レンズの直径を80mm、中央の垂直座標を0mmとして、上側+40mmで1:0、下側-40mmで0:1として、その間を直線的に割合を変化させる合成方法が容易に実施できる。
しかし、それらのような単純な方法で非球面サグ量を合成すれば、上側と下側の性能の違いがはっきりしない設計パターンが得られることとなる。というのは、実質的に眼鏡レンズとして高頻度で使用する領域は、たとえば上下幅+5~-15mm程度であって、これは水平方向の幅よりも短い。その範囲における変化割合は全体の25%となるためである。
そこで、+5mmよりプラスの上側領域は1:0、-15mmよりマイナスの下側領域は0:1として、+5~-15mmの間は、
0.5×{1+sin(((垂直座標+5)/10)×(π/2))} :
0.5×{1-sin(((垂直座標+5)/10)×(π/2))}
という割合で重みづけすることが考えらえる。
この合成手法では、とくに主子午線から水平方向に離れた領域において、性能の乱れが発生する。この点において下記の複雑ではあるが、より好ましい合成手法はそのような点が改善されることとなる。
【0023】
これに対して複雑ではあるが、より好ましい合成手法について
図17に基づいて説明する。
遠用度数測定点または遠用フィッティングポイントを含んで、上側に広がる領域(下に凸な放物線より上側)を「上方領域」として、この累進面の非球面サグを設計Aの値とする。近用度数測定点または近用フィッティングポイント(累進帯の終点)を含んで、下側に広がる領域(上に凸な放物線より下側)を「下方領域」として、この累進面の非球面サグを設計Bの値とする。その間の領域を「中間領域」として、非球面サグ量を上方から下方にかけて連続的に変化させる。以上が基本的な合成面の構成である。この構成においてどのように「中間領域」の各点のサグ量を決定するかについて説明する。以下は計算方法の一例である。
図17に示すように、遠用度数測定点の上方で、レンズ末端の垂直座標+50mmの位置を始端P(0、50)とする。近用度数測定点の下方で、レンズ末端の垂直座標-50mmの位置を終端Qとする。この例ではインセットを2.5mmとして、終端Qの座標は(2.5、-50)とする。これは近用アイポイントの真下の位置を狙ったものである。これら始端P、終端Qの座標は一例である。
中間領域内の任意の点(座標)Rの非球面サグを決定するために、P・R・Qの点(座標)を通る円を想定する。これら3点は座標が定まっているため円の方程式は容易に決定できる。次に、3点P・R・Qを通る円と下凸放物線の交点S、および3点を通る円と下上放物線の交点Tの座標を求める。そのためには水平座標をX、垂直座標をYとして、円の方程式をX2次・Y2次の式で表し、各放物線の方程式をX2次・Y1次の式で表し、両式を連立させて解く。放物線と円の交点は最大4個あるため、4次方程式を解くことになる。4次方程式の解法として、例えば公知のフェラーリの方法を使用できる。
【0024】
円と放物線との交点S、交点Tが求められたら、弧SRTの長さに対する弧SRの長さの比U(=弧SR/弧SRT)に基づいて、合成する2つの累進屈折力レンズの累進面の設計について非球面サグ量を合成する。合成する割合の一例は次式の通りである。
0.5×{1+cos(U×π)}:0.5×{1-cos(U×π)}
但し、Rが直線PQ上にあるか、または直線PQに近い場合は、3点P・R・Qを通る円を定めることができないので、代替的な計算を行う。例えば、Rと同じ水平面上の高さにある直線PQ上の点をR1として、線分STの長さに対する線分SR1の長さの比U1(=線分SR1/線分ST)に基づく合成比(設計Aの合成割合)をM1とする。次に、Rから水平方向に直線PQから所定の小さい距離(たとえば1mm)だけ離れた点をR2として、弧SR2Tの長さに対する弧SR2の長さの比U2(=弧SR2/弧SR2T)に基づく合成比をM2とする。そして、M1とM2の重み付き平均として、Rにおける合成比をR・R1・R2の水平方向の距離に基づいて計算する。
(M1×|Rx-R2x|+M2×|Rx-R1x|)/|R1x-R2x|
ここで、Rx、R1x、R2xは、それぞれR、R1、R2の水平座標を表す。
尚、より簡便な方法としてM1とM2の加重平均によらずにPとRを結ぶ直線と下に凸な放物線との交点をS、RとQを結ぶ直線と上に凸な放物線との交点をTとして、U=SR/(SR+RT)として計算するようにしてもよい。
【0025】
この「より好ましい合成手法」によれば、遠用領域は収差集中型として遠くの物をはっきりと見ることができ、近用領域は収差分散型として、明視できる幅がせまくなっても歪みユレを低減する設計を得ることができる。
また、主子午線上においては、上下幅が短い領域で設計Aと設計Bのパターンが入れ替わることとなる。しかしながら、「より好ましい合成手法」であれば設計Aと設計Bは主子午線付近の形状が似ていることを想定しており、したがって無理なく合成することができる。そして、主子午線から水平方向に離れた領域においては、円弧にそった十分な距離で入れ替わることとなり、自然な合成を実現することができる。
【0026】
4-2 実施例
実施例4として設計Aと設計Bの累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、上記段落0022で説明した単純な手法で合成した。実施例4は設計Aを上側に、設計Bを下側に配置して合成した例である。その結果を
図18に示す。
また、実施例5及び実施例6として設計Aと設計Bの累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、上記段落0023~0024で説明したより好ましい合成手法で合成した。実施例5は設計Aを上側に、設計Bを下側に配置して合成した例であり、実施例6は設計Bを上側に、設計Aを下側に配置して合成した例である。その結果を
図19及び
図20に示す。
実施例4は上下方向の合成においては設計Aと設計Bの水平断面形状が高さ-5mm付近において大きく異なっている(特に主子午線から水平方向に離れた領域において異なる)ため、実施例4では主子午線から水平方向に離れた領域において、性能に乱れが生じている。実施例5及び実施例6では実施例4のような乱れがない。
一方、比較例3として設計Cを上側とし、設計Dを下側として累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、上記段落0023~0024で説明した手法で合成した。その結果を
図21に示す。
比較例3では、平均度数、非点収差とも好ましい分布となっていない。主子午線上において、等度数曲線のカーブが反対に沿っている。そのため、累進帯の中間付近の高さでは、等度数曲線は鼻側から耳側にかけて上下変化を繰り返している。これは全体のパワー配置がなめらかでないことを表す。非点収差分布に関しては、さらに顕著な問題がある。遠用アイポイント付近の明視幅が広くなったことは好ましいが、近用アイポイント付近の明視幅がかなり狭くなってしまっている。この原因は設計Cと設計Dの加入パターンが異なっているためと考えられる。
【0027】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記「4.垂直方向の合成」においては、円はレンズの外縁と交差する場合について説明した。つまり、始端P、終端Qはレンズの外縁上に配置するようにしたが、そうでなくともよい。
図22に示すように、例えば、始端Pを遠用度数測定点(0、8)、終端Qを近度数測定点(2.5、-14)に配置する。そして遠用領域と近用領域を、それぞれ半径数mmの円形状とする。異なる2つの円の交点は最大2点なので、2次方程式を解くことで交点が容易に得られ、計算コストやプログラミングの容易さに関しては有利である。ただし、参照点Rの位置が変わると、Rを通る円弧の形状が上記「より好ましい合成手法」に比べて大きく変動する傾向となる。そのため、合成した設計の性能分布が不安定になりやすい。
・合成する基準となる累進面自体を、ある複数の設計を合成したものとしてもよい。例えば、設計Aと設計Bを合成するのではなく、たとえばあらかじめ設計Aと設計Bを上記した「全体的な合成」により一定割合(たとえば0.5:0.5)で合成したものを上側に配置して、設計Aを下側に配置するようにしてもよい。この場合は、元になる設計Aに対して、設計Bを上側に半分合成したものとなる。あるいは、設計Aと設計Bを0.25:0.75で合成したものを上側に配置して、0.75:0.25で合成したものを下側に配置する方法も考えられる。この場合は、上記例と比べると設計Aと設計Bの配分が均等に近い。
・上記実施の形態では2つの異なる設計を合成する例を示したが、3つ以上の異なる設計を合成するようにしてもよい。例えば、A、B2種類の異なる設計について重み0.5:0.5で全体的な合成を行い、それと改めて設計A(または第3の設計C)について実施例で示した方法により水平方向の合成、または垂直方向の合成を行う如くである。
本願発明は上記の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素、又は発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。