(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169313
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】樹脂付着アルミニウム顔料、塗料、及びインキ
(51)【国際特許分類】
C09C 3/10 20060101AFI20241128BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20241128BHJP
C09D 5/36 20060101ALI20241128BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20241128BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20241128BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20241128BHJP
【FI】
C09C3/10
C09C1/40
C09D5/36
C09D7/62
C09D201/00
C09D11/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064948
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023085161
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 連
(72)【発明者】
【氏名】福留 健太
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA24
4J037CC29
4J037DD05
4J037DD07
4J037DD09
4J037EE02
4J037EE12
4J037EE28
4J037EE43
4J037FF09
4J038EA011
4J038KA08
4J038KA15
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC08
4J039BA32
4J039BE01
(57)【要約】
【課題】優れた意匠性を有し、優れた密着性及び耐薬品性を有する樹脂付着アルミニウム顔料を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミニウム粒子の表面が、ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの重合体を含有する樹脂で被覆された樹脂付着アルミニウム顔料であって、当該樹脂付着アルミニウム顔料の樹脂層表面の平均表面粗さRaが0.1~5.0nmである、樹脂付着アルミニウム顔料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粒子の表面が、ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの重合体を含有する樹脂で被覆された樹脂付着アルミニウム顔料であって、
当該樹脂付着アルミニウム顔料の樹脂層表面の平均表面粗さRaが0.1~5.0nmである、樹脂付着アルミニウム顔料。
【請求項2】
断面観察によって計測された樹脂付着層の厚みτが10nm~20nmである、請求項1に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
【請求項3】
アルミニウム粒子の表面が、ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの重合体を含有する樹脂で被覆された樹脂付着アルミニウム顔料であって、
断面観察によって計測された樹脂付着層の厚みτが10nm~20nmである、樹脂付着アルミニウム顔料。
【請求項4】
前記樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの樹脂質量(A(g/g))と前記アルミニウム粒子の単位質量あたりの総表面積(SSA(m2/g))との比((A)/(SSA))が、0.0077g/m2~0.025g/m2である、請求項1に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
【請求項5】
前記アルミニウム粒子の平均断面厚みτ’が0.03μm~0.2μmである、請求項1に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
【請求項6】
前記アルミニウム粒子の平均粒子径d50が5μm~15μmである、請求項5に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂付着アルミニウム顔料を含有する、塗料。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂付着アルミニウム顔料を含有する、インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付着アルミニウム顔料、並びに当該樹脂付着アルミニウム顔料を含有する塗料及びインキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタリック塗料用、印刷インキ用、プラスチック練り込み用等に、メタリック感を重視する美粧効果を得る目的でアルミニウム顔料が使用されている。これらのアルミニウム顔料に樹脂を被覆することで、耐アルカリ性試験を改善できる。特に、平均粒子径が20μm以下、かつ粒子厚みが0.2μm以下の薄膜アルミニウムは意匠性に優れる。
【0003】
上述したような、アルミニウム顔料の耐アルカリ性を図る方法として、アルミニウム顔料に所定の表面処理を施す方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの樹脂質量と、樹脂付着アルミニウム顔料の粒子の総表面積との比などを所定の範囲内とすることにより、意匠性に優れ、耐アルカリ性にも優れる傾向にあることが記載されている。しかし、樹脂層の厚みが意匠性に寄与し得ることについては記載されていない。
【0004】
特許文献2には、金属顔料100重量部に対して0.1~50重量部の樹脂が金属顔料の表面に付着している樹脂被覆金属顔料の製造方法であって、樹脂被覆処理中に超音波照射といった外的作用を付加することにより、物理的分散を促進して、所望の樹脂被覆金属顔料が得られることが記載されている。しかし、樹脂層の厚みが意匠性に寄与し得ることについては記載されていない。
【0005】
特許文献3には、アルミニウム粒子表面を被覆する被覆樹脂の表面の、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積の割合を特定の範囲とすることにより、アルカリ等の薬品に対する耐薬品性に優れた顔料を提供できることが記載されている。しかし、樹脂層の厚みが意匠性に寄与し得ることについては記載されていない。
【0006】
特許文献4には、意匠性に優れ、かつ密着性においても優れたメタリック塗膜を与えることができるアルミニウム顔料及びその製造方法が記載されている。しかし、樹脂層の厚みが意匠性に寄与し得ることについては記載されておらず、耐アルカリ性についても記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-135455号公報
【特許文献2】特開2012-162733号
【特許文献3】国際公開第2018/047360号
【特許文献4】特開2002-226733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術では必ずしも十分に実現されていなかった樹脂付着アルミニウム顔料を提供することを目的とし、優れた意匠性を有し、優れた密着性及び耐薬品性を有する樹脂付着アルミニウム顔料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂付着アルミニウム顔料の樹脂層表面の平均表面粗さ、及び/又は、樹脂付着層の厚み等を所定の範囲とすることにより、意匠性に優れ、密着性及びアルカリなどの薬品に対する耐薬品性にも優れる樹脂付着アルミニウム顔料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]アルミニウム粒子の表面が、ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの重合体を含有する樹脂で被覆された樹脂付着アルミニウム顔料であって、当該樹脂付着アルミニウム顔料の樹脂層表面の平均表面粗さRaが0.1~5.0nmである、樹脂付着アルミニウム顔料。
[2]断面観察によって計測された樹脂付着層の厚みτが10nm~20nmである、上記[1]に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
[3]アルミニウム粒子の表面が、ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの重合体を含有する樹脂で被覆された樹脂付着アルミニウム顔料であって、断面観察によって計測された樹脂付着層の厚みτが10nm~20nmである、樹脂付着アルミニウム顔料。
[4]前記樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの樹脂質量(A(g/g))と前記アルミニウム粒子の単位質量あたりの総表面積(SSA(m2/g))との比((A)/(SSA))が、0.0077g/m2~0.025g/m2である、上記[1]に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
[5]前記アルミニウム粒子の平均断面厚みτ’が0.03μm~0.2μmである、上記[1]に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
[6]前記アルミニウム粒子の平均粒子径d50が5μm~15μmである、上記[5]に記載の樹脂付着アルミニウム顔料。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂付着アルミニウム顔料を含有する、塗料。
[8]上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂付着アルミニウム顔料を含有する、インキ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来技術では必ずしも十分に実現されていなかった樹脂付着アルミニウム顔料を提供することができ、優れた意匠性を有し、優れた密着性及び耐薬品性を有する樹脂付着アルミニウム顔料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の樹脂被覆金属顔料のTEM写真の一例である。
【
図2】比較例1の樹脂被覆金属顔料のTEM写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
本発明による樹脂付着アルミニウム顔料は、優れた意匠性を維持しながら、優れた密着性及び耐薬品性を有するものである。
【0014】
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料は、アルミニウム粒子の表面が、ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの重合体を含有する樹脂で被覆された構造を有する。
以下に本発明の樹脂付着アルミニウム顔料の原料となるアルミニウム粒子について、具体的な形状について述べる。
【0015】
本発明に使用するアルミニウム粒子は、その種類を限定されるものではなく、一般的にアルミニウム顔料として使用されているもので良く、その形状は、鱗片状、角状、丸み状等の扁平状である。意匠性(例えば、輝度、光輝性、フリップフロップ感、及び隠蔽性等の特性)の高さを維持するのであれば、高意匠グレード(蒸着調メタリック塗料ないしはインキ用グレード)のアルミニウム粒子(以下、フレーク状アルミニウム粉末と記載する場合がある)を使用した方が、本発明の効果がより発揮される。
【0016】
アルミニウム粒子の製造方法については、特に限定されるものではないが、金属アルミニウムの粒状粉、又は、細片を機械的方法、例えばスタンプミル法、乾式ボールミル法、湿式ボールミル法、アトライター法、振動ボールミル法等により数%の粉砕助剤と共に粉砕することにより得られる。
高意匠性のアルミニウム粒子の製造方法としては、例えば、国際公開第99/54074号に記載された方法が挙げられ、その製造方法で得られる、表面が平滑で厚みも均一なフレーク状アルミニウム粉末が本発明のアルミニウム顔料の原料として特に好ましく使用できる。
【0017】
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料の原料となるアルミニウム粒子の粒径は用途により異なる。本発明の樹脂付着アルミニウム顔料の用途が塗料用及び印刷インキ用の場合、平均粒子径d50(μm)が1~100μm程度のアルミニウム粒子が好適に使用できる。また、最近特に金属顔料の高意匠性が求められる用途として、自動車用、一般家電用、及び携帯電話に代表される情報家電用が挙げられ、これらの用途において金属顔料は鉄やマグネシウム合金などの金属又はプラスチック等の塗装に使用される。高意匠性を確保するために、これらの用途に使用される本発明の樹脂付着アルミニウム顔料のアルミニウム粒子の好ましい平均粒子径(d50)は、5~35μmであり、さらに好ましくは、5~15μmである。
【0018】
本発明のアルミニウム粒子の平均粒子径d50(μm)は、一般的なレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができるが、例えば次のように測定することができる。
フレーク状アルミニウム粉末の粒子の平均粒子径(d50)を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-300/株式会社 堀場製作所)により測定する。測定溶剤としては、ミネラルスピリットを使用することができる。
試料となる樹脂付着アルミニウム顔料は、例えば前処理として2分間の超音波分散を行った後、分散槽の中に投入し適正濃度になったのを確認後、測定を開始することが好ましい。
【0019】
アルミニウム粒子の平均断面厚みτ’(μm)は、塗膜断面のFE-SEM像を用い、かつ画像解析ソフトを用いて計測することにより求めることができる。
具体的には、塗膜断面のFE-SEM像においてランダムに粒子を100個選択し、粒子の断面厚さの自動計測を実施し、100個の算術平均値を算出することにより求めることができる。
本実施形態のアルミニウム粒子の平均断面厚みτ’(μm)は、0.03μm~0.2μmであることが好ましい。
【0020】
以下に本発明の樹脂付着アルミニウム顔料の表面に付着している樹脂について、具体的な組成や形状について述べる。
【0021】
本実施形態の樹脂付着アルミニウム顔料に付着している樹脂は特に限定されないが、好ましくはラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの重合体からなるものが挙げられる。
【0022】
前記ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。前記ラジカル重合性二重結合を1個以上有する単量体の具体例としては、以下に限定されないが、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロトン酸、マレイン酸又は無水マレイン酸)、リン又はホスホン酸のモノ、又はジエステル(例えば2-メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジ-2-メタクリロイロキシエチルホスフェート、トリ-2-メタクリロイロキシエチルホスフェート、2-アクリロイロキシエチルホスフェート、ジ-2-アクリロイロキシエチルホスフェート、トリ-2-アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル-2-メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート、2-メタクリロイロキシプロピルホスフェート、ビス(2-クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネート、2-メタクリロイロキシエチルホスフェート、2-アクロイロキシエチルホスフェート)、カップリング剤(例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、ジルコアルミネート)、不飽和カルボン酸のニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、又は不飽和カルボン酸のエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸シクロヘキシル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ-ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジ-ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジ-ペンタエリスリトールペンタアクリレートモノプロピオネート、トリアクリルホルマール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル)等を好適に使用できる。
さらには、環式不飽和化合物(例えば、シクロヘキセン)や、芳香族系不飽和化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、シクロヘキセンビニルモノオキシド、ジビニルベンゼンモノオキシド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アリルベンゼン又はジアリルベンゼン)も好適に使用できる。前記ラジカル重合性二重結合を1個以上有するオリゴマーは、これらの単量体の重合体とすることができる。
【0023】
後述する本実施形態の樹脂付着アルミニウム顔料の製造方法においては、重合開始剤を用いることが好ましい。
重合開始剤としては、一般に、ラジカル発生剤として知られるものであり、その種類は特に制限されない。
重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウオイルパーオキサイド、ビス-(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート等のパーオキサイド類、2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性単量体の反応速度によってそれぞれ調整されるため特に限定されないが、アルミニウム顔料100質量部に対して、0.1質量部~25質量部が好ましい。
【0024】
後述する本実施形態の樹脂付着アルミニウム顔料の樹脂重合時に、反応生成物の分子量制御のために重合開始剤と共に可逆的付加開裂型連鎖移動剤(以下、RAFT剤と呼ぶ。)を添加することで、リビングラジカル重合とすることが好ましい。この重合は、(1)多様な単量体に対して適用可能、(2)広範囲の反応条件に適用可能、という点で、他のリビングラジカル重合と比較して、生産性に優れている。本発明の樹脂付着アルミニウム顔料の樹脂層を得るために使用するRAFT剤としては、以下の例に限定されないが、O-エチル-S-(1-フェニルエチル)ジチオカーボネート、O-エチル-S-(2-プロポキシエチル)ジチオカーボネート、O-エチル-S-(1-シアノ-1-メチルエチル)ジチオカーボネート等のジチオカーボネート類、ジチオプロピオン酸シアノエチル、ジチオプロピオン酸ベンジル、ジチオ安息香酸ベンジル、ジチオ安息香酸アセトキシエチル等のジチオエステル類、S-ベンジル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-1-ピロールカルボジチオエート等のジチオカルバメート類、ジベンジルトリチオカーボネート、S-シアノメチル-S-ドデシルトリチオカーボネート等のトリチオカーボネート類などが挙げられる。使用するRAFT剤は、モノマーの反応性に応じて最適なものを選択することが好ましく、特に、アクリル酸エステルの重合にはジチオカルバメート類、ジチオカーボネート類が好適であり、メタクリル酸エステルの重合にはジチオエステル類が好適である。RAFT剤は、樹脂の総量100重量部に対して0.1~30重量部使用するのが好ましく、1.0~10重量部がより好ましい。0.1重量部以上とすることにより、反応生成物の平均分子量が高くなってしまう傾向を抑制することができ、30重量部以下にする、ことにより、反応生成物の平均分子量が低くなってしまう傾向を抑制することができる。
【0025】
溶媒としては、以下の例には限定されないが、金属顔料を有機溶剤中に分散させるのに使用する有機溶剤は、金属顔料に対して不活性であればよく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その使用量は、金属顔料の固形分濃度が、1~40重量%となる量が好ましい。なお、本発明において上記有機溶剤は、上記の分子内に1個以上の二重結合を有する単量体及び/又はオリゴマーを重合反応させて樹脂を形成する際の反応溶媒としても用いられる。
【0026】
樹脂付着アルミニウム顔料を製造する際には、外的作用としてせん断的外的作用と振動的外的作用との併用をしてもよい。せん断的外的作用とは、金属顔料を有機溶剤中に分散させる際に、及びその分散液に単量体を添加する際に、高いせん断力を付加して物理的分散を促進する作用をいい、そのための方法としては、例えば撹拌機、ディスパー、振動発生装置や超音波発生装置を用いて、金属顔料や単量体を分散させる方法がある。振動発生装置や超音波発生装置を用いた場合、上記分散液や重合反応中のスラリー液を、機械的に強力に振動させ、物理的分散を促進する作用が生じる。特に攪拌機による高速分散では、蒸着調アルミニウム顔料表面が破壊されないためより好ましい。
【0027】
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料は、従来の薄膜アルミニウム顔料に対して、樹脂付着層の高い平滑性と薄膜形成により、高い意匠性を保持することが特徴である。これは薄膜アルミニウム顔料を高速攪拌下で単分散状態として、RAFT重合によって、分子量を低分子量状態で制御できることから、高い平滑性と薄膜形成が両立できると考えられる。樹脂被覆顔料の樹脂層の厚みτや平均表面粗さRaを測定することにより、この均一さを評価することができる。
【0028】
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料の樹脂層表面の平均表面粗さRaは、好ましくは0.1~5.0nmであり、より好ましくは0.1~4.5nmであり、さらに好ましくは0.1~2.6nmであり、最も好ましくは0.1~2.5nmである。このうち、平均表面粗さRaの上限値は、上述した上限値が好ましいが、より好ましくは2.5nmであり、さらに好ましくは2.2nmであり、最も好ましくは2.0nmである。また、平均表面粗さRaの下限値は、場合によっては0.3nm、0.5nm、0.7nm、又は0.9nmとしてもよい。平均表面粗さRaが、前記の上限値以下の時、当該樹脂付着アルミニウム顔料を使用した塗膜の表面での光の正反射率が大きいため、極めて優れた光輝度を示すと共にフロップ性も良好となる。
本発明で言う平均表面粗さRaは、一般的な原子間力顕微鏡を用いた表面形態観察法により算出することができる。具体的には、例えば次の方法により算出する。
金属顔料の表面形態観察法として、原子間力顕微鏡(以下AFMと略記する)(例えば、Dimensioin Icon(Bruker製))を使用することができる。前処理としては、例えば試料の樹脂付着アルミニウム顔料を過剰のメタノール及びクロロホルムで超音波洗浄後、真空乾燥し、再度アセトンに分散後、Siウェハー上に滴下し、自然乾燥を行う。AFMによる表面粗さの定量は、樹脂被覆金属顔料が他の樹脂被覆金属顔料と重なりがないものについて、測定視野は2μm、512pixelとして、測定視野を16区画に分割し、各区画に3次の傾き補正(Plane Fit)を行い算出平均した値を「平均表面粗さRa(nm)」として定義する。表面粗さの用語については、JIS-B-0601:2013に基づく。
【0029】
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料においては、当該樹脂付着アルミニウム顔料の断面観察によって計測された樹脂付着層の厚みτが、好ましくは5~30nmであり、さらに好ましくは10nm~20nmである。樹脂付着層の厚みτの上限値は、さらにより好ましくは18nmであり、最も好ましくは16nmである。樹脂付着層の厚みτが上記範囲内となるとき、極めて優れた意匠性を示すとともに、密着性及び耐薬品性も良好となる。
【0030】
本発明で言う樹脂層の平均膜厚τは、例えば以下のように算出される。まず前処理として、樹脂付着アルミニウム顔料を過剰のメタノール及びクロロホルムで超音波洗浄をして、その後、真空乾燥し、再度アセトンに分散・洗浄後、自然乾燥を行う。そしてエポキシ樹脂で包埋し、完全硬化させた後、トリミングと切片切り出しを行い、その断面の透過型電子顕微鏡(以下TEMと略記する)で、観察を行い、樹脂被覆層とアルミニウム顔料の界面を観察する。1視野200000倍の観察を4視野行い、被覆層の面積を公知の画像解析ソフト(例えば、Image-ProPLUS ver.7.0(Media Cybernetics社製))を用いて、樹脂層全体の輪郭から面積を計測し、それら4視野の算術平均値を〔算術平均膜厚τ〕として定義する。
【0031】
(I)樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの樹脂質量(A(g/g))と、樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりのアルミニウム粒子の総表面積(SSA(m2/g))との比((A)/(SSA))
(1)樹脂質量(A(g/g))
樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの樹脂質量(A(g/g))とは、1gの樹脂付着アルミニウム顔料に付着している樹脂の質量(g)を算出した値である。
樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの粒子の総表面積(SSA(m2/g))とは、1gのアルミニウム粒子の面積の総和(m2)である。
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料における比(A)/(SSA)は、好ましくは0.0077g/m2~0.025g/m2である。比(A)/(SSA)が上記数値範囲内であることにより、アルミニウム粒子に対する樹脂の量が適正となる。比(A)/(SSA)を上記数値範囲の下限値以上にすることにより、耐アルカリ性が低くなることが抑制され、上記数値範囲の上限値以下にすることにより、樹脂層の制御がしやすくなり、色調低下が抑制される。
【0032】
本発明におけるA(g/g)及びSSA(m2/g)は、例えば以下の方法で測定することができる。
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料1gを100mlビーカーに秤量し、石油ベンゼン50mlを加えて十分に分散した後、40℃恒温水槽の上で1時間加温する。加温後の分散液を濾過し、回収する前に十分にアセトンで洗浄した。濾過後に得られた固形状の試料をデシケーター中で90分以上乾燥させる。乾燥した試料の一部を熱重量・示差熱TG-DTAにて分析し、樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの樹脂質量(A(g/g))を求める。
【0033】
アルミニウム粒子のSSA(m2/g)は、アルミニウム粒子1g当たりの総表面積のことであり、下式により算出した値である。
SSA(m2/g)=2×(0.4/τ’(μm))
【0034】
上記したSSA(m2/g)の算出方法は、例えば、Aluminium Paint and Powder,J.D.Ed-wards&R.I.Wray著、第3版、Reinhold Publishing Corp.New York(1955)の第16~22頁に記載されている。
【0035】
また、本発明の樹脂付着アルミニウム顔料は、アルミニウム粒子の表面に、従来のアルミニウム顔料よりも樹脂が一層緻密で均一に被覆されているため、塗膜中での耐薬品性が改善されている。耐薬品性の評価として、JIS-Z-8781(2017)の6.3.19に従い、色差ΔEを求めた場合、ΔEが1.0未満であることが好ましい。
【0036】
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料は、塗料及びインキに使用することができる。
本発明の樹脂付着アルミニウム顔料を含有する塗料は、自動車用、一般家電用、携帯電話に代表される情報家電用、印刷用、鉄やマグネシウム合金などの金属、あるいは、プラスチック等の基材の塗装用に好適に使用でき、高い意匠性を発揮できる。本発明の樹脂付着アルミニウム顔料を含有するインキは、メタリック塗料用、印刷インキ用、プラスチック練り込み用塗料用等に好適に使用でき、高い意匠性を発揮できる。
【0037】
また、塗料業界で一般に使用されている顔料、染料、湿潤剤、分散剤、色分れ防止剤、レベリング剤、スリップ剤、レオロジーコントロール剤、粘度調整剤、皮張り防止剤、ゲル化防止剤、消泡剤、増粘剤、タレ防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、界面活性剤等の添加剤を、適宜、本発明の新規な樹脂付着アルミニウム顔料を含有する塗料又はインキに加えてもよい。
【実施例0038】
次に、本発明の実施例を挙げて詳細な説明をする。なお、以下の記載における「%」は重量%を示す。
【0039】
〔実施例1〕
容積1リットルの四つ口フラスコに市販のアルミペースト100g(旭化成株式会社製、SB-10「平均粒子径10μm、不揮発分74質量%」;本発明のアルミニウム粒子)を入れ、ミネラルスピリット500gを加え、窒素ガスをバブリングしながら3時間撹拌し、系内の温度を70℃に昇温した。次いで、アクリル酸1.11gを添加し70℃で30分撹拌を続けた。次にトリメチロールプロパントリメタクリレート7.83gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.87gと2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(重合開始剤)2.0gとビス(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)ジスルフィド0.5g(RAFT剤)とミネラルスピリット50gを1時間で滴下し(すなわち、添加方法として滴下を採用し、滴下時間を1時間とした)、系内の温度を70℃に保ちながら合計8時間重合した。この時点でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタクリレートとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したところ、添加量の99%以上が反応していた。重合終了後、処理後のスラリーを濾過し、樹脂付着アルミニウム顔料を得た。アルミニウム顔料の加熱残分(JIS-K-5910による)は、56.1重量%であった。
【0040】
〔実施例2〕
実施例1で、トリメチロールプロパントリメタクリレート12.6gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.14gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0041】
〔実施例3〕
実施例1で、ミネラルスピリット150gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0042】
〔実施例4〕
実施例1で使用する容積1リットルの四つ口フラスコの外側に直接超音波分散機を貼付し、内部のスラリー液に超音波を付加するように変更した。この超音波分散機を用い、重合中において周波数40kHz、出力12Wの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして樹脂被覆アルミペーストを得た。JIS-K-5910によるこのペーストの不揮発分は50.1重量%であった。
【0043】
〔実施例5〕
実施例1で、アルミペースト100g(旭化成株式会社製、FD-5060「平均粒子径6μm、不揮発分72質量%」;本発明のアルミニウム粒子)とトリメチロールプロパントリメタクリレート5.31gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.59gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0044】
〔実施例6〕
実施例3で、トリメチロールプロパントリメタクリレート10.62gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.18gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0045】
〔実施例7〕
実施例1で、アルミペースト100g(旭化成株式会社製、BS-120「平均粒子径13μm、不揮発分65質量%」;本発明のアルミニウム粒子)とトリメチロールプロパントリメタクリレート4.95gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.55gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0046】
〔実施例8〕
実施例5で、トリメチロールプロパントリメタクリレート7.2gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.8gに変更した以外は実施例5と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0047】
〔実施例9〕
実施例1で、トリメチロールプロパントリメタクリレート6.83gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.87gとジビニルベンゼン1.0gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0048】
〔実施例10〕
実施例2で、滴下時間を0.5時間に変更した以外は実施例2と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0049】
〔実施例11〕
実施例2で、添加方法として滴下を採用せず、一括添加に変更した以外は実施例2と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0050】
〔比較例1〕
容積1リットルの四つ口フラスコに市販のアルミペースト100g(旭化成株式会社製、SB-10「平均粒子径10μm、不揮発分74質量%」)を入れ、ミネラルスピリット500gを加え、窒素ガスをバブリングしながら1時間撹拌し、系内の温度を70℃に昇温した。次いで、アクリル酸1.11gを添加し70℃で30分撹拌を続けた。次にトリメチロールプロパントリメタクリレート12.6gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.14gと2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(重合開始剤)2.0gとミネラルスピリット50gを定量ポンプにて1時間で滴下し(すなわち、添加方法として滴下を採用し、滴下時間を1時間とした)、系内の温度を70℃に保ちながら合計8時間重合した。重合反応中は、市販の超音波洗浄機を用いて、周波数42kHz、出力180Wの超音波を、間接的に四つ口フラスコ内の混合物に15分毎に約3分間照射した。この時点でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタクリレートとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したところ、添加量の99%以上が反応していた。重合終了後、処理後のスラリーを濾過し、樹脂付着アルミニウム顔料を得た。アルミニウム顔料の加熱残分(JIS-K-5910による)は、55.6重量%であった。
【0051】
〔比較例2〕
比較例1で、トリメチロールプロパントリメタクリレート7.83gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.87gに変更した以外は比較例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0052】
〔比較例3〕
比較例1で、アルミペースト100g(旭化成株式会社製、FD-5060「平均粒子径6μm、不揮発分72質量%」)とトリメチロールプロパントリメタクリレート7.20gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.80gに変更した以外は比較例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0053】
〔比較例4〕
比較例1で、アルミペースト100g(旭化成株式会社製、BS-120「平均粒子径13μm、不揮発分65質量%」)とトリメチロールプロパントリメタクリレート4.95gとジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート0.55gに変更した以外は比較例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0054】
〔比較例5〕
比較例1で、滴下時間を0.5時間に変更した以外は比較例1と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0055】
〔比較例6〕
比較例1で、添加方法として滴下を採用せず、一括添加に変更した以外は比較例5と同様にして樹脂付着アルミニウム顔料を得た。
【0056】
[評価1(樹脂質量(A(g/g))と、総表面積(SSA(m2/g))との比((A)/(SSA)))]
(1)樹脂質量(A(g/g))
実施例及び比較例で得られた樹脂付着アルミニウム顔料1gを100mlビーカーに秤量し、石油ベンゼン50mlを加えて十分に分散した後、40℃恒温水槽の上で1時間加温した。加温後の分散液を濾過し、回収する前に十分にアセトンで洗浄した。濾過後に得られた固形状の試料をデシケーター中で90分以上乾燥させた。乾燥した試料の一部を熱重量・示差熱TG-DTAにて分析し、樹脂付着アルミニウム顔料の単位質量あたりの樹脂質量(A(g/g))を求めた。
(2)アルミニウム粒子の総表面積(SSA(m2/g))
(粒子の総表面積SSA(m2/g)=2×(0.4/τ’(μm))と定義する。
平均厚みτ’(μm)は、後述する塗膜断面のFE-SEM像を用い、かつ画像解析ソフトを用いて計測することにより求めることができる。
【0057】
[評価2(アルミニウム粒子の平均粒子径d50の測定)]
アルミニウム粒子の平均粒子径(d50)を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-300/株式会社 堀場製作所)により測定した。
測定溶剤としては、ミネラルスピリットを使用した。
測定は機器取扱説明書に従い実施したが、留意事項として、試料となるアルミニウム粒子は、前処理として2分間の超音波分散を行った後、分散槽の中に投入し適正濃度になったのを確認後、測定を開始した。
測定終了後、d50は自動表示された。
【0058】
[評価3(アルミニウム粒子の平均断面厚みτ’の測定)]
(1)塗装板の作製
実施例及び比較例で得られたアルミニウム顔料を使用して、下記の組成でメタリックベース塗料を作製した。
・アルミニウム顔料: 2g
・シンナー(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエースシンナー No.2726」): 50g
・アクリル樹脂(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエース No.7160」): 33g
エアスプレー装置を用いて上記塗料をABS樹脂板に乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、60℃のオーブンで30分乾燥し、メタリックベース塗装板を得た。
前記のメタリックベース塗装板上に、下記の組成で作製したトップコート塗料を、エアスプレー装置を用いて塗装した。
・ヒタロイドワニス3685S (日立化成製): 25g
・混合シンナー(溶剤混合比率/トルエン:45質量%、酢酸ブチル:30質量%、酢酸エチル:20質量%、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン:5質量%): 20g
・デュラネート TPA100 (旭化成ケミカルズ製): 5g
前記の塗装後、60℃のオーブンで30分乾燥し、評価用塗装板を得た。
【0059】
(2)塗膜の断面作製
上記のようにして製造した評価用塗装板を用いて、下記の手順で塗膜断面を作製した。
ハサミを使い、前記評価用塗装板を2cm四方の大きさに分断した。
分断した2cm四方の評価用塗装板を、大型回転式ミクロトーム(大和光機工業製/RV-240)を使用して、塗膜断面を繰り返し切削し、断面に突起したミクロなアルミ・アクリル樹脂を取り除いた。
前記により得られた塗膜断面を、イオンミリング装置(日本電子製/IB-09010CP)を使用して、塗膜断面から20μm離れた部分までイオンビーム照射が可能なよう設定し、イオンミリング処理を行い、後述するFE-SEM像取得用の塗膜断面を作製した。
【0060】
(3)粒子断面(FE-SEM像)の取得
前記((2)塗膜の断面作製)で得られた塗膜断面(塗装板)を、SEM試料台に平行になるように接着し、電界放出型のFE-SEM(HITACHI製/S-4700)を使用して、前記塗膜断面のFE-SEM像を取得した。
FE-SEM観察・取得の条件は、加速電圧の設定を5.0kVで調整し、像倍率は1万倍で測定を行った。
また、FE-SEM像を取得(キャプチャー)する前に、電子工学軸アライメント処理を行い、FE-SEM像のアルミニウム粒子とアクリル樹脂の境界線に歪みがでないようにした。
【0061】
(4)解析(粒子断面における粒子の平均厚み計測)
前記((1)-(3))の粒子断面(FE-SEM像)の取得手順で得たFE-SEM像(1万倍)、及び画像解析ソフトWin Roof version 5.5(MITANI CORPORATION製)を用いて、アルミニウム粒子断面における粒子の厚みの計測、及び平均厚みの算出を実施した。
アルミニウム粒子の断面における粒子の厚み計測を実施するFE-SEM像を画像表示し、ROIラインを選択して画像の5μmスケールにROIラインを合わせ、登録・変更から長さ・単位を入力して設定した。
次に、アルミニウム粒子の断面の厚み計測を実施すべき画像を表示させ、長方形ROIを選択して、粒子の断面に長方形ROIを合わせて2値処理を実施した。
次に、計測の垂直弦長の測定項目を選択させた後、計測実行をさせ、画像解析ソフトによる自動計測値(垂直弦長値)を画像に表示した。
このように、前記の画像解析ソフトWin Roof version 5.5を用いて、後述する〔(IV)平均粒子径:d50〕の、平均粒子径:d50の±50%以内のものを100個選択し、アルミニウム粒子の断面における厚みの自動計測を実施し、100個の算術平均値を算出し、粒子の平均断面厚みτ’を求めた。
【0062】
[評価4(樹脂付着アルミニウム顔料表面の平均膜厚τの測定)]
まず前処理として、樹脂被覆金属顔料を過剰のメタノール及びクロロホルムで超音波洗浄をして、その後、真空乾燥し、再度アセトンに分散・洗浄後、自然乾燥を行った。そしてエポキシ樹脂で包埋し、完全硬化させた後、トリミングと切片切り出しを行い、その断面の透過型電子顕微鏡(以下TEMと略記する)で、観察を行い、樹脂被覆層の表面の凹凸を観察した。1視野1μm幅の観察を4視野行い、被覆層の面積を画像解析ソフトImage-ProPLUS ver.7.0(Media Cybernetics社製)を用いて、樹脂層全体の輪郭を検出し、面積を計測し、それら4視野の算術平均値を求めてτとした。
【0063】
[評価5(樹脂付着アルミニウム顔料表面の平均表面粗さRaの測定)]
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて樹脂被覆金属顔料の1視野4μm四方のラインプロファイル(300スキャン)を求めた。これを16区画に分割し、3次の傾き補正を行い、算術平均表面粗さを求めた。同様の操作を合計4視野以上について行い、それらの算術平均値を求めてRaとした。
【0064】
[評価6(塗膜の密着性、耐薬品性の評価)]
実施例1~9、及び比較例1~6で得られた樹脂付着アルミニウム顔料を使用して、下記の組成でメタリック塗料を作製した。
・樹脂付着アルミニウム顔料: 1.3g(固形分質量)
・シンナー(酢酸ブチル:30部、トルエン:45部、イソプロピルアルコール:20部、エチルセロソルブ:5部を混合したもの): (D)g(ここで、樹脂付着アルミニウム顔料と(D)との合計量が33gなるように調整した。)
・クリヤー(アクリディックA―166(DIC製):29部、硝化綿(工業用硝化綿1/2AS、Companhia Nitro Qumica Brasileira製):3部、上記シンナー:68部を混合したもの)(バインダー樹脂成分): 42g
得られた塗料組成物をABS樹脂板に膜厚が15μmになるように吹き付け塗装した。その後、55℃で30分乾燥し、評価用塗板を作成し、評価用塗板を得た。
上記の評価用塗板を用いて、密着性、耐薬品性、光沢保持率の評価を行った。
【0065】
(塗膜の密着性)
上記で作製した塗板を用い、セロテープ(登録商標:ニチバン(株)製、CT405AP-18)を塗膜に密着させ、45度の角度で引っ張り、金属顔料粒子の剥離度合いを目視で観察した。観察結果に応じて、下記のように評価した。
○ ( 良) : 剥離なし
△ ( 可) : やや剥離あり
× ( 不可) : 剥離あり
【0066】
(塗膜の耐薬品性)
上記で作製した塗板の下半分を2.5NのNaOH水溶液を入れたビーカーに浸漬し、23℃で24時間放置した。試験後の塗板を水洗、乾燥したのち、浸漬部と未浸漬部を、JIS-Z-8722(1982)の条件d(8-d法)により測色し、JIS-Z-8730(1980)の6.3.2により色差ΔEを求める。色差ΔEの値に応じて、下記のように評価した。(値が小さいほど良好。)
○ (良) : 1.0未満
△ (可) : 1.0以上~2.0未満
× (不可) : 2.0以上
【0067】
[評価7 塗膜のFF性(輝度、光輝性)、隠蔽性]
(1)塗装板の作製
実施例1~11、及び比較例1~6で得られた樹脂付着アルミニウム顔料を使用して、下記の組成でメタリック塗料を作製した。
・樹脂付着アルミニウム顔料: 5.0g
・シンナー(関西ペイント株式会社製、商品名「アクリディック2000GL」): 13.0g
・アクリル樹脂(関西ペイント株式会社製、商品名「アクリディック2000」): 97.0g
次に、3milアプリケーターを用いて前記メタリックベース塗料をPETフィルムに塗装し、常温にて30分乾燥し、メタリックベース塗装板を得た。
【0068】
(2)ΔF/F性(輝度、光輝性)の測定
上記作製塗料をPETシートに塗布した塗膜を、変角測色計(スガ試験機株式会社製)を用いてΔF/F性を評価した。入射角を45度とし、前記評価用の塗装板の塗膜表面で反射する鏡面反射領域の光を除いた、正反射光に近い受光角15度(L15)と底色に近い受光角60度(L60)を測定した。この比(L15/L60)をFF性とした。
【0069】
(3)隠蔽性の判定
・隠蔽性
上記作製塗料をPETシートに塗布した塗膜を目視で判定した。具体的には、上記作成塗料を基準アルミペースト及び樹脂被覆アルミペーストを用いて作製し、PETシート上に2本引きした塗装版を未塗装面からライトを照射することで、隠蔽性の評価を行った。
(基準アルミペースト顔料は樹脂被覆前のアルミニウム顔料)
◎:基準アルミペースト顔料と同等の隠蔽性を有する。
〇:基準アルミペースト顔料に対して、若干隠蔽性が低下する。
△:基準アルミペースト顔料に対して隠蔽性は低い。
×:基準アルミペースト顔料に対して、著しく隠蔽性が低下する。
【0070】