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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169318
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20241128BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/14 A
C04B18/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068927
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2023084383
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】永田 風彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 洋
(72)【発明者】
【氏名】村田 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】落合 健
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA29
(57)【要約】
【課題】 粉状製鋼スラグを含む材料と、水と、の混合物の適切な流動性を確保することが可能な鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法を提供する。
【解決手段】
鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法は、CaO、SiO、Pを含む製鋼スラグ及び、高炉スラグ微粉末を含む結合材を含む材料と、水と、を混合して混合物を生成する混合ステップと、前記混合物を硬化させる硬化ステップと、を有する。前記製鋼スラグは、CaO/SiOの質量比が1.4以上であり、かつPの含有量が0.3質量%以下である。前記混合ステップにおいて、前記水、前記製鋼スラグ及び、前記結合材が次の関係を満たすように添加される。
水の体積/(結合材の体積+製鋼スラグの体積)=0.60~0.90
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaO、SiO、Pを含む製鋼スラグ及び、高炉スラグ微粉末を含む結合材を含む材料と、水と、を混合して混合物を生成する混合ステップと、
前記混合物を硬化させる硬化ステップと、を有し、
前記製鋼スラグは、CaO/SiOの質量比が1.4以上であり、かつPの含有量が0.3質量%以下であり、
前記混合ステップにおいて、前記水、前記製鋼スラグ及び、前記結合材が次の関係を満たすように添加される、鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
水の体積/(結合材の体積+製鋼スラグの体積)=0.60~0.90
【請求項2】
前記混合物の前記製鋼スラグの含有量は、1mあたり370kg以下である、請求項1に記載の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
【請求項3】
前記製鋼スラグの最大粒径が15mm以下である、請求項1又は、2に記載の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼スラグを含む材料と、水と、を混合した混合物を硬化して生成される鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次精錬スラグや溶融還元スラグ等、還元精錬で発生する一部の製鋼スラグは、他の製鋼スラグよりもPの含有量が少ないものがある。CaO/SiOで示される塩基度が高い製鋼スラグは主な鉱物相としてダイカルシウムシリケートを含む。Pの含有量が少ない製鋼スラグでは、製鋼スラグが凝固する過程においてダイカルシウムシリケートがα‘型からγ型に相変態する。
【0003】
塩基度が1.4以上でありかつ、Pが0.3質量%以下である製鋼スラグは前記相変態によって粉化する傾向がある。前記塩基度とP質量%の条件とを満たすスラグを以下、粉状製鋼スラグと称する。
【0004】
粉状製鋼スラグは、粒度が細かいため水和固化体の骨材として適していない。このような粉状製鋼スラグを水和固化体として利用する試みが行われている。例えば、特許文献1には、粉粒状の製鋼スラグと潜在水硬性を有するSiO含有物質とを含む混合物に水を加えて混合した後、所定の圧力で成形するスラグ硬化体の製造方法が記載されている。
【0005】
ところで、製鋼スラグは、路盤材の材料として用いることも行われている。例えば、特許文献2には、製鋼スラグ、高炉スラグ微粉末及び、水を含む組成物を転圧して締め固めた鉄鋼スラグ含有組成物を舗装版として用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-114547号公報
【特許文献2】特開2015-196631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法を用いた場合、粉状製鋼スラグの流動性が悪いため施工性が悪化する問題がある。このため、特許文献1の製造方法では、所定の圧力で成形することが行われている。したがって、当該成形のために用いる専用の設備を新たに設ける必要があり、導入コストの点で改善が求められている。また、当該設備の操作は、煩雑であり作業効率の点で改善が求められている。
【0008】
また、特許文献2の記載に従って、粉状鉄鋼スラグを用いて鉄鋼スラグ含有組成物を製造すると、粉状鉄鋼スラグと水とを含む混合物の流動性が著しく低く、鉄鋼スラグ含有組成物の製造が困難となる問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、粉状製鋼スラグを含む材料と、水と、の混合物の適切な流動性を容易に確保することが可能な鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
[1]
CaO、SiO2、を含む製鋼スラグ及び、高炉スラグ微粉末を含む結合材を含む材料と、水と、を混合して混合物を生成する混合ステップと、
前記混合物を硬化させる硬化ステップと、を有し、
前記製鋼スラグは、CaO/SiOの質量比が1.4以上であり、かつPの含有量が0.3質量%以下であり、
前記混合ステップにおいて、前記水、前記製鋼スラグ及び、前記結合材が次の関係を満たすように添加される、鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
水の体積/(結合材の体積+製鋼スラグの体積)=0.60~0.90
[2]
前記混合物の前記製鋼スラグの含有量は、1mあたり370kg以下である、[1]に記載の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
[3]
前記製鋼スラグの最大粒径が15mm以下である、[1]又は、[2]に記載の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法によれば、材料と、水と、を混合して混合物を生成する混合ステップにおいて、上述の関係式を満たす分量で各々の成分が添加されるため、混合物の適切な流動性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法は、製鋼スラグ及び、結合材を含む材料と、水と、を混合して混合物を生成する混合ステップと、混合物を硬化させる硬化ステップと、を有する。
【0013】
製鋼スラグは、特に限定しないが、CaO、SiO2、を含む。製鋼スラグは、CaO/SiOの質量比が1.4以上であり、かつPの含有量が0.3質量%以下である。ここで、Pの含有量が0.3質量%以下とは、Pを検出する装置の検出限界未満の含有量であってもよい。言い換えれば、Pについては、製鋼スラグに含有されている可能性があればよく、実際に検出装置に検出されない程度の微量の含有量であってもよい。尚、一般的な製鋼スラグは、Pを含み、その含有量も0.3質量%を超える蓋然性が非常に高い。
【0014】
このような製鋼スラグとしては、CaO/SiOが2.0以上のスラグがダイカルシウムシリケートの析出量が多いため好ましい。例えば、溶鋼を真空脱ガス装置で二次精錬する際に生じる二次精錬スラグや、ステンレス鋼の製造前に母溶湯を直接Cr鉱石などによって溶製する際に発生する溶融還元精錬スラグを用いるとよい。
【0015】
このような組成の製鋼スラグは、冷却時にダイカルシウムシリケート相が析出する。また、その際に、製鋼スラグのPの含有量が少ないため、ダイカルシウムシリケートがγ相に変態することによって製鋼スラグが粉化する。したがって、以後、このような組成をもつ製鋼スラグを粉状製鋼スラグとも称する。
【0016】
粉状製鋼スラグの最大粒径は、15mm以下とするとよく、10mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがさらに好ましい。粉状製鋼スラグの最大粒径を15mm以下とすることで、材料と水とを混合した混合物を硬化させた、鉄鋼スラグ水和固化体の水和による膨張を低減させることができる。すなわち、鉄鋼スラグ水和固化体の膨張安定性を高めることが可能となる。
【0017】
尚、粉状製鋼スラグの最大粒径は、粉状製鋼スラグがすべて通過する篩の最小の目開きで表した粒径である。篩分析に用いる篩目は、特には限定されないが、例えば、JIS Z 8801で規定されるもの等を用いることができる。具体的には、粉状製鋼スラグの最大粒径を15mm以下とする場合、呼び寸法15mmの篩は目開き16mmであるため、目開き16mmの篩を全量が通過する粉状製鋼スラグを用いるとよい。
【0018】
また、材料には、上述した粉状製鋼スラグの要件を満たさない製鋼スラグが含まれていてもよい。
【0019】
結合材は、高炉スラグ微粉末を含む。高炉スラグ微粉末は、例えば、高炉水砕スラグを粉砕したものを用いることができる。高炉スラグ微粉末は、例えば、JIS R 5211 2009「高炉セメント」で使用される高炉スラグ微粉末、JIS A 6206 2013「コンクリート用高炉スラグ」に適合する高炉スラグ微粉末を用いることができる。
【0020】
ブレーン法による高炉スラグ微粉末の比表面積は、約3000cm/g以上であることが好ましい。また、ブレーン法による高炉スラグ微粉末の比表面積が4000cm/g以上であると、水硬性の指標である活性度指数が高くなるためより好ましい。
【0021】
また結合材としては、特に限定されず、アルカリ刺激材のほか、ポゾラン反応性を有するシリカ含有物質を用いることができる。アルカリ刺激材としては、消石灰、JIS R 5210 2019に規定される普通ポルトランドセメントなどを用いることができる。ポゾラン反応性を有するシリカ含有物質としては、フライアッシュやシリカフュームなどを用いることができる。
【0022】
このようなシリカ含有物質としては、例えば、JIS R 5210 2009「ポルトランドセメント」や、JIS R 5211 2009「高炉セメント」、JIS A 6201 2015「コンクリート用フライアッシュ」に適合したものなどが挙げられる。
【0023】
材料には、減水剤が含まれていてもよい。材料に減水剤が含まれることにより、混合物に添加する水分量を少なくすることができかつ、材料の分散性を高めることができる。混合物に添加する水分量を少なくすることで、鉄鋼スラグ水和固化体の強度を高めることができる。
【0024】
減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系の減水剤を利用することができる。減水剤の使用量は、単位結合材量の0.3~0.5質量%とすることが好ましい。単位結合材量は、混合物1mに含まれる結合材の質量である。
【0025】
混合ステップにおいては、水、粉状製鋼スラグ及び、結合材を含む材料が次の関係を満たすように添加される。
水の体積/(結合材の体積+粉状製鋼スラグの体積)=0.60~0.90
また、当該体積比は、0.65~0.85とするとよく、0.65~0.80とすることが好ましく、0.70~0.75とすることがさらに好ましい。
【0026】
水の体積/粉状製鋼スラグ及び、結合材(以下主材料とも称する)の体積の比を0.60以上とすることで、材料と水分とを混合した混合物に適切な流動性を付与することができる。
【0027】
また、水の体積/主材料の体積比が大きくなる、すなわち、混合物に占める水の体積が大きくなるにつれて、鉄鋼スラグ水和固化体の強度が低くなる傾向がある。また、主材料の体積が水の体積よりも小さくなるにつれて、粉状製鋼スラグの添加量が少なくなり、粉状製鋼スラグの利用量が低下する。このため、混合物における水の体積/主材料の体積の比を0.90以下とするとよい。
【0028】
鉄鋼スラグ水和固化体の単位粉状製鋼スラグ量を370kg/m以下とするとよい。言い換えれば、混合物の粉状製鋼スラグの含有量は、1mあたり370kg以下とするとよく、70~370kgとすることが好ましく、80~350kgとすることがより好ましく、90~350kgとすることがさらに好ましい。
【0029】
混合物の粉状製鋼スラグの含有量を1mあたり370kg以下とすることによって、混合物中の遊離CaOと遊離MgOの量が抑制される。その結果、混合物を鉄鋼スラグ水和固化体とした際に十分な膨張安定性を確保することができる。
【0030】
また、混合物の粉状製鋼スラグの含有量が1mあたり370kgを超えると、混合物の流動性が低下する傾向がある。この点からも、単位粉状製鋼スラグ量は370kg/m以下とすることが好ましい。混合物の粉状製鋼スラグの含有量を1mあたり70kg以上とすることで、粉状製鋼スラグの添加量が多くなるため、その活用が促進されるため好ましい。
【0031】
混合ステップにおける混合は、特には限定されないが、例えば、コンクリートミキサーを用いて、常温の温度条件で混合することができる。
【0032】
混合物を硬化させる硬化ステップにおいては、セメント、コンクリート分野で行われている硬化方法を採用することができる。例えば、混合物は、20℃水中養生させることにより、硬化させることができる。硬化ステップの処理時間は、気温、湿度等に応じて適宜調整するとよい。
【実施例0033】
(試験例1:流動性評価)
粉状製鋼スラグ及び、結合材を含む材料と、水と、を混合して混合物を生成した。鉄鋼スラグ水和固化体を製造する際の材料の配合量を変えて、発明例1~6及び、比較例1~2を作製し、各々の混合物の流動性を評価した。
【0034】
(材料)
混合物の材料として、粉状製鋼スラグ、製鋼スラグ(以下、スラグAとも称する)、結合材、減水剤を用いた。
【0035】
粉状製鋼スラグとしては、表1に示す組成の2種類の二次精錬スラグを用いた。尚、P25の検出に用いた検出装置の限界検出量は0.05質量%であった。表1においては、粉状製鋼スラグ2のP25の含有量は、P25が含有されている可能性があるものの、当該含有量が検出装置の限界検出量未満であるため、<0.05質量%として表記されている。また、表1に記載されている数値の単位は、「CaO/SiO」の項目を除いて質量%である。
【0036】
【表1】
【0037】
スラグAは、骨材である。スラグAとしては、スラグに限らず、砕石なども用いることができる。本実施例においては、スラグAとして、最大粒径が40mm以下の製鋼スラグを用いている。製鋼スラグをスラグAとして用いる場合、Pの含有量が0.3質量%よりも高く、粉化していないものとするとよい。
【0038】
結合材としては、高炉スラグ微粉末及び、JIS R 5210 2019に規定される普通ポルトランドセメントを用いた。高炉スラグ微粉末、普通ポルトランドセメント及び、粉状製鋼スラグの密度を表2に示す。尚、以後の試験例においては、高炉スラグ微粉末、普通ポルトランドセメント及び、粉状製鋼スラグを主材料として用いた場合を説明する。
【0039】
【表2】
【0040】
減水剤としては、ポリカルボン酸系高性能減水剤(竹本油脂株式会社製チューポール)を用いた。
【0041】
発明例1~6及び、比較例1~2の混合物は、表3に示す配合で作製した。
【0042】
(流動性及び、強度評価)
材料と水とを混合して混合物を作製した後、打設した。常温にて混合物を硬化させて、その翌日に脱枠した。硬化させた混合物を材齢7日まで20℃で水中養生を行って鉄鋼スラグ水和固化体を生成した。
【0043】
混合物の流動性は、鉄鋼スラグ水和固化体を生成する際の混合物の流動性について評価した。混合時のスランプ値(JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験方法を参照)を測定した。スランプの目標値は、スリップフォーム工法又は、人力での施工を考え、3.0cm以上20.0cm以下とした。また、鉄鋼スラグ水和固化体の強度については、以下に示す方法で評価した。
【0044】
鉄鋼スラグ水和固化体の強度は、材齢7日でJIS A 1108 2018に従った曲げ強度を測定することにより評価した。曲げ強度の評価はJIS A 5308 2019「レディーミクストコンクリート」に舗装コンクリートの呼び強度として記載されている4.5N/mm以上を合格とした。表3に発明例1~6及び比較例1~2の曲げ強度評価を示す。以後の表において、強度の評価は、7日曲げ強度(N/mm)として記載する。
【0045】
【表3】
【0046】
水の体積/主材料の体積比が0.60~0.90である発明例1~6では、適切な混合物の流動性が得られた。また、発明例1~6を硬化させた鉄鋼スラグ水和固化体においては、適切な曲げ強度が得られた。
【0047】
これに対して、水の体積/主材料の体積比が0.60未満である比較例1では、発明例1~6よりも混合物の流動性が低く、打設が難しかった。また、水の体積/主材料の体積比が0.90を超える比較例2では、流動性が高くなりすぎ、舗装コンクリートとしては適切ではなかった。また、比較例1及び比較例2の鉄鋼スラグ水和固化体の強度は、発明例1~6よりも低く、適切な強度が得られなかった。
【0048】
ところで、舗装コンクリートは28日曲げ強度が4.5N/mmと規定されている。発明例1~6については打設後7日で規定値以上の強度を得られる。したがって、発明例1~6の鉄鋼スラグ水和固化体を舗装コンクリートの代替として用いた場合には早期に交通開放が可能となる。
【0049】
(試験例2:鉄鋼スラグ水和固化体の膨張評価)
鉄鋼スラグ水和固化体を生成する際の混合物の配合を変えて、発明例7~10及び、比較例3を作製し、各々の混合物の流動性及び、膨張性の評価をした。発明例7~10及び、比較例3の混合物は、表4に示す配合量で作製した。試験例1で試験した発明例1~3及び6の混合物も試験例2の試験に供した。
【0050】
発明例7~10及び、比較例3の混合物は、試験例1と同様に作製した。また、流動性の評価についても試験例1と同様に行った。発明例7~10及び、比較例3の混合物は、表4に示す配合量で作製した。試験例1で試験した発明例1~3及び6の混合物も試験例2の試験に供した。
【0051】
具体的には、発明例6~10については、混合物の粉状製鋼スラグの含有量が1mあたり370kg以下でありかつ、水の体積/主材料の体積比を0.60~0.90とする条件を満たすように作製した。発明例2~3についても、混合物の粉状製鋼スラグの含有量が1mあたり370kg以下でありかつ、水の体積/主材料の体積比が0.60~0.90となる条件を満たすものである。
【0052】
また、比較例3については、混合物の粉状製鋼スラグの含有量が1mあたり370kg以下であること、水の体積/主材料の体積比が0.60~0.90であること、のいずれの条件も満たさないものを作製した。
【0053】
(膨張性評価)
材料と水とを混合して混合物を作製した後、打設した。常温にて混合物を硬化させて、その翌日に脱枠した。硬化させた混合物を材齢7日まで20℃で水中養生を行い、鉄鋼スラグ水和固化体を生成した。その後当該鉄鋼スラグ水和固化体について膨張試験を行った。
【0054】
当該鉄鋼スラグ水和固化体を80℃の水に連続10日間浸漬させた後、当該鉄鋼スラグ水和固化体の外観を観察し、大きなひび割れの有無を確認した。観察において、ひび割れが確認されなかったものを「合格」、ひび割れが確認されたものを「不合格」として評価した。また、流動性が悪く、打設できなかった配合においては7日曲げ強度、膨張性評価共に「測定不可」として評価した。
【0055】
【表4】
【0056】
発明例1は、水の体積/主材料の体積比を0.60~0.90の条件を満たすものである。発明例2~3、6~10は、混合物の粉状製鋼スラグの含有量が1mあたり370kg以下でありかつ、水の体積/主材料の体積比を0.60~0.90の条件を満たすものである。
【0057】
発明例1~3、6~10の混合物は、スランプ値が3.5~20.0の範囲にあり、適切な流動性を有していた。発明例1~3、6~10の混合物を硬化させた鉄鋼スラグ水和固化体の曲げ強度は、いずれも4.5N/mm以上であった。
【0058】
上述のように、舗装コンクリートは28日曲げ強度が4.5N/mmと規定されている。発明例1~3、6~10については打設後7日で規定値以上の強度を得られる。したがって、発明例1~3、6~10の鉄鋼スラグ水和固化体を舗装コンクリートの代替として用いた場合には早期に交通開放が可能となる。また、発明例2~3、6~10の鉄鋼スラグ水和固化体は、膨張性評価においてもひび割れが確認されなかった。したがって、発明例2~3、6~10の鉄鋼スラグ水和固化体は、路盤材としても用いることが可能となる。
【0059】
比較例3では混合物の流動性が低く、打設が困難であった。このため、比較例3は、膨張性評価の測定が不可能であった。また、混合物の粉状製鋼スラグの含有量が1mあたり370kgを超える発明例1では、膨張性評価においてひび割れが確認された。
【0060】
(試験例3:粉状製鋼スラグの粒径の物性評価)
鉄鋼スラグ水和固化体を製造する際の配合を変えて、発明例11、8及び、比較例1~2を作製し、各々の混合物の流動性及び、膨張性の評価をした。
【0061】
発明例11、8及び、比較例1~2の混合物は、試験例1と同様に作製した。また、流動性の評価についても試験例1と同様に行った。発明例11、8及び、比較例1~2の混合物は、表5に示す配合で作製した。
【0062】
具体的には、発明例11については、篩を用いて最大粒径を10mm以下に分級した粉状製鋼スラグを材料に用いかつ、水の体積/主材料の体積比を0.60~0.90とする条件を満たすように作製した。尚、表5において、当該粉状製鋼スラグを粉状製鋼スラグ1(0-10mm)として記載する。また、発明例11の配合は、粉状製鋼スラグの最大粒径が異なる以外は発明例5と同一である。
【0063】
また、表5において、発明例8の粉状製鋼スラグの表記については、発明例11の粉状製鋼スラグの最大粒径との違いを分かりやすくするために粉状製鋼スラグ1(0-40mm)として表記されている。
【0064】
比較例1~2については、試験例1と同一であるので説明を省略する。
【0065】
(膨張性評価)
鉄鋼スラグ水和固化体の外観を観察し、大きなひび割れ(構造体として強度に影響を与える恐れがあるひび)の有無を確認した。観察において、大きなひび割れが確認されなかったものを「◎」、大きなひび割れが確認されなかったものの、小さいひび(構造体として強度に影響を与える恐れがないひび)やポップアウト(表面が円錐状の皿のように剥離する現象)が観察されたものを「〇」、大きなひび割れが確認されたものを「×」として評価した。発明例11、8及び、比較例1~2の膨張性評価を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
発明例11の混合物は、スランプ値が3.5~20.0の範囲にあり、適切な流動性を有するものであった。発明例11は、ひび割れは確認されなかった。発明例8の混合物は、適切な流動性を有するものであった。発明例8は、小さなポップアウトがあったものの、ひび割れは確認されなかった。上述の通り、比較例1は、流動性が低く、打設が難しかった。比較例2は、流動性が高くなりすぎ、舗装コンクリートとしては適切ではなかった。比較例1及び2は、単位粉状製鋼スラグ量が370kg/m以上であり、80℃で10日浸漬後に大きなひび割れが確認された。また、7日曲げ強度も4.5N/mm以下であった。
【0068】
以上のように、混合物の流動性、鉄鋼スラグ水和固化体の強度及び、鉄鋼スラグ水和固化体の膨張安定性の各々を高次元で満たすことが要求される場合には、粉状製鋼スラグの最大粒径が10mm以下のものを用いて鉄鋼スラグ水和固化体を生成することがよいと確認された。