(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169319
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】時計の文字盤を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G04B19/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068945
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】23175384.9
(32)【優先日】2023-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ライシュー、 セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】サウレト、 ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ポリ、 ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルノー、 フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】キスリング、 グレゴリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可視表面を含む時計の文字盤を製造する方法を提供する。
【解決手段】表面は風景の三次元表現、特に、風景の地形図を含み、この方法は、風景の三次元表現に関連する三次元構造を備えた上面を含む文字盤のブランクを製造するステップ20であって、上面に三次元構造を構築するための地形データを生成するサブステップ22を含むステップ20と、ブランクの上面の三次元構造の表面を処理するステップ29であって、その処理の間に、表面の少なくとも1つの視覚的特徴が、三次元表現を得られるように修正されるステップ29と、文字盤を得るために、ブランクを仕上げるステップ35とを含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小表面を有する可視表面(11)を含む時計(1)の文字盤(2)を製造する方法であって、前記表面(11)は風景の三次元表現(3)、特に、前記風景の地形図を含み、前記方法は、
前記風景の前記三次元表現(3)に関連する三次元構造(5)を備えた上面(13)を含む前記文字盤(2)のブランク(12)を製造するステップ(20)であって、前記上面(13)に前記三次元構造(5)を構築するための地形データを生成するサブステップ(22)を含むステップ(20)と、
前記ブランク(12)の前記上面(13)の前記三次元構造(5)の表面(14)を処理するステップ(29)であって、その処理の間に、前記表面(14)の少なくとも1つの視覚的特徴が、前記三次元表現(3)を得られるように修正されるステップ(29)と、
前記文字盤(2)を得るために、前記ブランク(12)を仕上げるステップ(35)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記生成するサブステップ(22)は、前記風景に関連する生の地形データを処理することによって前記構造地形データを取得するフェーズ(24)を含み、この処理動作は、このようなデータを生成するためのシステムのコントローラによって実行される地形構造データ生成アルゴリズムによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成するサブステップ(22)は、前記構造地形データを取得するフェーズ(24)であって、前記ブランク(12)の前記上面(13)の表面の寸法、前記表面の基本的な形状、前記ブランク(12)を構成する前記基板の材料の性質、及び前記風景の前記三次元表現(3)を構成する前記上面(13)の前記三次元構造(5)の観察者によって知覚される視覚的特徴の関数として、前記地形構造データを決定するための計算を実行するフェーズ(24)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記取得するフェーズ(24)は、生の地形データの値を修正するための動作を実行することにより、前記構造(5)の異なるゾーン(6a、6b、6c)、すなわち平坦ゾーン(6a)、隆起ゾーン(6b)及び/又は凹部ゾーン(6c)の寸法の変動を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記製造するステップ(20)は、前記ブランク(12)の前記上面(13)に前記三次元構造(5)を製造するサブステップ(26)を含み、前記サブステップ(26)は、取得した地形構造データに基づいて前記ブランク(12)の前記上面(13)をパターニングするフェーズ(28)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理するステップ(29)は、前記三次元構造(5)の全部又は一部の表面状態(14)を修正するサブステップ(30)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理するステップ(29)は、前記三次元構造(5)の全部又は一部の表面(14)上にコーティング(7)を堆積するサブステップ(31)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記三次元構造(5)の処理された表面(14)上に少なくとも1つのパターン(4)を形成するステップ(32)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記三次元構造(5)の表面(14)の全部又は一部をカプセル化するステップ(34)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
再現された風景は、現実の風景及び/又は既存の風景である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記小表面の表面積は、700~1700mm2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法を用いて得ることができる、風景の三次元表現(3)を含む可視表面(11)を有する文字盤。
【請求項13】
請求項12に記載の文字盤(2)を含む、時計(1)。
【請求項14】
前記時計は腕時計である、請求項1~13のいずれかに1項に記載の時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の文字盤を製造する方法に関し、この文字盤は、風景の三次元表現を含む装飾を備える。
【0002】
本発明は、そのような文字盤及びそのような文字盤を備えた時計にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の表示部品を強調するために、いくつかの時計は、時計に独特の個性を与える三次元的装飾を可視表面に有する文字盤を備えている。このタイプの装飾は、典型的には、幾何学的形状の起伏を備えている。このタイプの文字盤は、典型的には、三次元形状を得るために、銅、鉄又はアルミニウム合金、ポリマー、石、セラミック又は当業者に公知の他の任意の材料等の文字盤の基材に加工するステップ、その後で、研磨、エナメル加工及び/又は着色ステップを含むプロセスを用いて製造される。
【0004】
しかしながら、これらのプロセスは、文字盤の審美的外観並びに研磨及び着色ステップ後のこれらの文字盤上の欠陥又はバリの潜在的存在の観点から、ますます厳しくなる要件を考慮すると、依然として不十分である。さらに、既存のプロセスによって提供される装飾の可能性は、いくつかの古くかつよく知られたプロセスの中からの限られた選択に限定さており、独創的な装飾を有する文字盤を製造することはできない。
【0005】
したがって、この文脈において、先行技術を改善するための解決策を見出す必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一般的な目的は、三次元装飾を含む審美的に好ましい文字盤を製造するための改善された単純化された解決策を提供することであり、それは先行技術の欠点の全部又は一部を含んでいない。
【0007】
この目的のために、本発明は、小表面積を有する可視表面を備える時計の文字盤を製造する方法に関し、前記表面は、風景の三次元表現、特に、この風景の地形図を備えており、この方法は、
前記風景の前記三次元表現に関連する三次元構造を備えた上面を含む前記文字盤のブランクを製造するステップであって、前記上面に前記三次元構造を構築するための地形データを生成するサブステップを含むブランク製造ステップと、
前記ブランクの前記上面の前記三次元構造の表面を処理するステップであって、その間に、前記表面の少なくとも1つの視覚的特徴が、前記三次元表現を得られるように修正されるステップと、
前記文字盤を得るために、前記ブランクを仕上げるステップとを含む。
【0008】
他の実施形態では、
前記生成するサブステップは、前記風景に関連する生の地形データを処理することによって前記地形構造データを取得するフェーズを含み、この処理動作は、このようなデータを生成するシステムのコントローラによって実行される地形構造データ生成アルゴリズムによって実行され、前記取得するフェーズは、前記ブランクの前記上面の表面の寸法、前記表面の基本的な形状、前記ブランクを構成する前記基板の材料の性質、及び前記風景の前記三次元表現を構成する前記上面の三次元構造の観察者によって知覚される視覚的特徴の関数として、前記地形構造データを決定するための計算を実行することを含み、
前記取得するフェーズは、生の地形データの値を修正するための動作を実行することにより、前記構造の異なるゾーン、すなわち平坦ゾーン、隆起ゾーン及び/又は凹部ゾーンの寸法の変動を生じさせ、
前記製造するステップは、前記ブランクの前記上面に前記三次元構造を製造するサブステップを含み、前記サブステップは、取得した地形構造データに基づいて前記ブランクの前記上面をパターニングするフェーズを含み、
前記処理するステップは、前記三次元構造の全部又は一部の表面状態を修正するサブステップを含み、
前記処理するステップは、前記三次元構造の全部又は一部の表面上にコーティングを堆積するサブステップを含み、
前記三次元構造の処理された表面上に少なくとも1つのパターンを形成するステップ、
前記三次元構造の表面の全部又は一部をカプセル化するステップを含み、
再現された風景は、現実の風景及び/又は既存の風景であり、
前記小表面の表面積は、700~1700mm2の間である。
【0009】
本発明の別の態様は、風景の三次元表現を含む可視表面を有する文字盤に関し、この文字盤は、このような方法を用いて得ることができる。
【0010】
本発明の別の態様は、このような文字盤を含む時計に関する。
【0011】
有利には、時計は腕時計である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の特定の実施形態の以下の説明を読むことにより明らかになるが、これは単に例示的かつ非限定的な例として与えられており、添付の図面を以下に説明する。
【
図1】本発明の一実施形態による、時計用の文字盤を製造するための方法の基本的なステップをフローチャートの形式で示す図であり、この文字盤は、風景の三次元表現を含む装飾を備えた可視表面を備えており、風景は、実際のもの又は既存のものであり得る。
【
図2】本発明の実施形態によるそのような文字盤を備えた時計を示す。
【
図3】本発明の実施形態による時計の文字盤の線III-IIIに沿った断面図である。
【
図4】本発明の実施形態による、
図3と同様のビューであり、これは風景の三次元表現に関連する三次元構造を備えた文字盤のブランクである。
【
図5】本発明の実施形態による、
図4と同様のビューであり、三次元構造の表面を覆うコーティングを備えたブランクである。
【
図6】本発明の実施形態による、
図5と同様のビューであり、三次元構造の表面コーティング上にパターンを備えたブランクである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1-
図6を参照して、本発明は、時計1の文字盤2を製造する方法に関する。このような時計1は、特に、ムーブメントを収容するケース16と、この文字盤2及び針15を備える表示装置とを含む腕時計である。この腕時計1は、この時計1の着用者の手首に装着される。
【0014】
この時計1のケース16は、ブレスレット10が接続される中央部9をさらに備える。この時計1では、このような文字盤2がケース16内に配置され、小表面積を有する可視表面11を含む。このような表面は、非常に小さな寸法を有する。この小表面積は、好ましくは、700mm2から1700mm2の間である。この表面は、時計1のケース16によって制限される。言い換えると、この表面は、文字盤2、又は可視表面11がこのケース16の筐体の内周壁によって囲まれているので、このケース16によって制限されていると言える。本発明の文字盤2は、時計の文字盤であり、すなわち、この時計の動作を変更することなく、個人が移動時に携帯/着用することを意図した物体、この場合は時計に搭載されるように構成されることが理解される。
【0015】
この文字盤2は、三次元表現3、より正確には風景に関連する地形図の表現を含む三次元装飾を備えた可視表面11を備えることを特徴とする。言い換えると、この三次元表現3は、風景の地形
図3である。
【0016】
このような風景は、好ましくは、自然界に存在する実際の又は既存の風景である。この風景は、特定の場所から観察することができる全ての要素から構成される。言い換えると、それは地理的空間の可視の外観である。このような風景は、非限定的かつ非網羅的に、山脈のような陸上の風景、又は海溝のような水中の風景であり得る。このような風景は、起伏、空洞、水及び/又は植生の存在等を含み得るが、これらに限定されない。
【0017】
既に述べたように、この風景の三次元表現3は、この文字盤2の可視表面11上に生成される。この可視表面11は、この文字盤2が時計1のケース16に装着されたときに、このような時計1を装着しているユーザによって観察可能/可視となる文字盤2の表面に対応する。
【0018】
この可視表面11上に/その中に生成されるこの風景の三次元表現3は、地形図の形態でこの文字盤2上に再現しようとする実際の又は既存の風景に忠実である。要するに、この文字盤2上のこの既存の風景の再現は、この風景に対応する又はこの風景を記述する地形データに基づいている。このようなデータは、「地形風景データ」又は「生の地形データ」と呼ばれ得る。このようなデータは、地形測量からの測定値を含む。これらの測定値は、特にこの文字盤2に転写することを目的として、この風景に関連して地上で直接収集されたものである。このような測定値には、限定されないが、2つの成分、すなわち、水平面内の点の位置を決定するための平面測量中に測定される平面測量成分、及び水平基準面の上又は下の同じ点の位置を与える高度測量中に測定される高度測量成分が含まれる。
【0019】
この三次元表現3は、この文字盤2の可視表面11の実質的に全面にわたって生成されることに留意されたい。より具体的には、この表現3は、可視表面11のこの表面の80%又は90%にわたって、又は可視表面11の全面にわたって生成される。言い換えれば、この三次元表現3は、この文字盤2の可視表面11の15%から100%の間を占める。
【0020】
このような文字盤2上の風景の再現は、これらの地形データを正確に尊重しつつ、時計1の文字盤2の寸法にスケールされた風景の忠実かつ正確な表現3を構成するので、可逆的であると言える。言い換えれば、この文字盤2上に再現された風景の構成要素の実際の寸法は、この三次元表現3から直接取られた測定値から得ることができ、この風景の実際の寸法に忠実なまま、この風景を別のスケールに再現することができる。
【0021】
本実施形態では、製造する方法は、次に、時計1の文字盤2のブランク12を製造するステップ20を含み、このブランク12は、風景の三次元表現3に関連する三次元構造5を含む。
【0022】
なお、このブランク12において、上面13は、製造される文字盤2の可視表面11に対応する。
【0023】
このようなステップ20は、このブランク12を構成する基板を提供するサブステップ21を含む。この基板は、製造される文字盤2の最終形状及び寸法を有することが好ましい。このような基板は、剛性材料から作られる。この材料は、金属材料、金属合金タイプの材料及び/又は工業用セラミックタイプの材料であり得る。この基板は、例えば、銅合金、ステンレス鋼、貴金属、チタン、アルミナ、ドープされた又はドープされていないアルミン酸ストロンチウム、安定化された又は安定化されていないジルコニア、ハイブリッド有機-無機材料、又は一般に、時計製造の分野で使用され得る任意の金属合金、工業用セラミック、又は任意の複合材料から作ることができる。「工業用セラミック」という用語は、酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウム及び/又は安定化された酸化ジルコニウム及び/又は窒化物及び/又は炭化物及び/又はアルミン酸ストロンチウム、特にドープされたアルミン酸ストロンチウムに基づく高密度材料を意味するものと理解される。「高密度」という用語は、当該材料の理論密度の95%から100%の間の密度を有する材料を意味するものと理解される。「所定の化合物に基づく」という表現は、材料が前記化合物の重量の少なくとも50%を含むことを意味する。
【0024】
この製造ステップ20は、ブランク12の上面13に三次元構造5を構築するための地形データを生成するサブステップ22も含む。
図4を参照すると、この三次元構造5は、
少なくとも1つの平坦ゾーン6a、及び/又は少なくとも1つの起伏を含む少なくとも1つの隆起ゾーン6b、及び/又は少なくとも1つの凹部を含む少なくとも1つの凹部ゾーン6cを含んでおり、この凹部はリブとも呼ばれ得る。
【0025】
これらのゾーン6a、6b、6cは、ブランク12の基準面に対して画定されることに留意されたい。この基準面は小さくかつ平坦であり、三次元構造5を生成するために修正されていないときにブランクの上面13に含まれる。この基準面は、
図4に示されている平面P内にある。この構成では、平坦ゾーン6aは基準面に含まれており、したがって平面P内にあり、基準面の上に隆起ゾーン6bがあり、この面の下に凹部ゾーン6cがある。
【0026】
このようなサブステップ22は、三次元構造5を構築するためのこれらの地形データを生成するためのシステムによって実施される。このシステムは、非網羅的かつ非限定的に、コントローラ及び通信モジュール、並びに生の地形データとも呼ばれる地形風景データを含むデータベースを備える。
【0027】
このシステムでは、処理ユニットとも呼ばれるコントローラは、ハードウェアリソースを含む電子回路、特に、メモリ要素並びにアドレス、データ及び制御バスと協働する少なくとも1つのプロセッサを含む。このコントローラは、そのメモリ要素内に、三次元構造5を構築するための地形データを生成するアルゴリズムを含む。このようなアルゴリズムは、ブランク12の上面13の表面積、この面13の基本的形状、この面13の寸法及び/又はこのブランク12を構成する基板の材料の性質等の計算基準を考慮に入れて、このコントローラのプロセッサによって実行される。これらの基準は、観察者によって知覚される、この風景の三次元表現3を構成する上面13の三次元構造の視覚的特徴をさらに含んでもよい。このようなアルゴリズムは、生の地形データに適用されることによって、風景の三次元表現3を既定の寸法、すなわちブランク12の寸法、特にその上面13の寸法にスケールすることに特に寄与することに留意されたい。
【0028】
このコントローラは、通信モジュールを介してデータベースに接続される。この目的のために、コントローラに接続される通信モジュールは、それをデータベースに接続する有線又は無線接続要素を備える。
【0029】
この文脈において、生成サブステップ22は、ブランク12の上面13に三次元構造5を生成するために使用される風景についての生の地形データを取り込むフェーズ23を含む。したがって、このフェーズ23の間に、コントローラは、このブランク12上にパターニングされる風景に関連するそのような地形データを含むデータベースとの接続を確立することによって、この生の地形データを取り込む。
【0030】
次に、このサブステップ22は、この風景に関連する生の地形データを処理することによって地形構成データを取得するフェーズ24を含み、この処理動作はコントローラによって実行されるアルゴリズムによって実行される。より具体的には、このフェーズ24の間に、コントローラは、このようにして、このアルゴリズムを実行することによって、生の地形データに対して計算を実行する。このような計算の目的は、特に、ブランク12の上面13の表面積、この表面の基本的な形状、このブランク12を構成する基板の材料の性質、及びこの風景の三次元表現3を構成する上面13の三次元構造5の観察者によって認識される視覚的特徴を考慮して、地形構成データを取得することである。これらの認識された視覚的特徴は、生成される上面13のこの構造5の視覚的レンダリングを改善するのに役立つ。これらの特徴は、例えば、この構造5の異なるゾーン6a、6b、6c、すなわち、平坦ゾーン6a、隆起ゾーン6b及び/又は凹部ゾーン6cの寸法を変化させるために、生の地形データの値を修正することによって、この三次元構造5を見ている観察者によって認識されるコントラストの強調又は改善に関連する。一例として、このアルゴリズムは、少なくとも1つの修正されたゾーン6b、6cの周囲に位置するゾーン6a~6cの平均に対して、少なくとも1つの凹部ゾーン6c及び/又は少なくとも1つの隆起ゾーン6bを均衡を取って修正することによって、構造5の少なくとも1つの平坦ゾーン6aのコントラストを増加させることができる。この文脈において、前記少なくとも1つの修正されたゾーン6b、6c、すなわち、この場合、前記少なくとも1つの凹部ゾーン6c及び前記少なくとも1つの隆起ゾーンは、それぞれ深さ及び高さ/高度が修正される。
【0031】
このような地形構成データはそれぞれ、水平軸X及びY、及びZ軸が垂直軸である3つの直角な軸X、Y及びZにおける空間測定情報を含む。本発明の範囲内では、この情報は、X軸上の経度、Y軸上の緯度、及びZ軸上の起伏の高度/高さ又は凹部の深さに関連する。これらの地形構成データは、ブランク12の上面13に形成される三次元構造5をモデリングするために使用される。三次元構造5のこのようなモデリングは、この構造5のデジタル表現に対応する。このモデリングは、ブランク12の三次元構造5を形成する点群を含む。この文脈において、地形構成データの各部分は、この群における点の空間座標である。
【0032】
前述のように、コントローラによって実行されるアルゴリズムは、地形構成データの取得に関与する。この文脈において、このアルゴリズムは、数学関数、特に、z軸の多項式関数、隣接するx及びy座標のzにおけるn次平均の関数としてz座標を増減するように構成される数学関数、表面の導関数/勾配に応じた変数z軸の多項式関数を実装するように構成される。
【0033】
次に、サブステップ22は、コントローラのメモリ要素に格納されたコンピュータ/デジタルファイルに、これらの地形構成データ、したがってこのモデルをアーカイブするフェーズ25を提供する。
【0034】
製造ステップ20は、ブランク12の上面13の中/その上に三次元構造5を製造するサブステップ26をさらに含む。このようなサブステップ26は、特に、ブランク12のこの上面13内にこの構造5を製造するシステムによって実装される。このシステムは、制御ユニット、通信モジュール、及び上面13をパターニングする装置を含む。制御ユニットによって駆動されるこのパターニング装置は、機械加工及び/又はレーザ加工モジュール、又は文字盤2のブランク12上にスタンピングするモジュールを含んでもよい。この文脈において、製造ステップ20は、フェムト秒レーザを使用する精密レーザ彫刻によって上面13を加工するサブステップを含んでもよい。
【0035】
これに関連して、サブステップ26は、地形構造データを含むコンピュータ/デジタルファイルを受信するフェーズ27を含み、したがって、文字盤2のブランクの上面13における三次元構造5のモデリングを含む。このフェーズ27の間、地形構造データを生成するシステムのコントローラは、これら2つのシステムの通信モジュールを介してコンピュータ/デジタルファイルを制御ユニットに送信する。
【0036】
次に、このサブステップ26は、受信したファイルに含まれる地形構造データに基づいてブランク12の上面13をパターニングするフェーズ28を含む。
図4を参照すると、このフェーズ28の間、制御ユニットは、ブランク12の上面に三次元構造5を生成するために、これらの地形構造データに基づいて加工モジュールを駆動するための命令を生成する。これらの制御命令は、三次元構造5がそのモデルに適合するように、一点ずつ三次元構造5を再現するために、加工モジュールをブランク12の上面13の中/その上に誘導することを可能にする。
【0037】
この三次元構造5がスタンピングモジュールによって生成される別の実施形態では、このモジュールは、この構造5に関連する刻印を備えたダイを含むことに留意されたい。より具体的には、この刻印は、この加工モジュールがそのような刻印を受けるように意図されたダイの面の中/その上に案内されることを可能にする制御命令に基づいて、加工モジュールによって行われ得る。
【0038】
図4に見えるブランクの上面に生成されるこの三次元構造の厚さe1は、好ましくは10
1から10
3μmの間であることに留意されたい。
【0039】
このような三次元構造5は、このブランク12の実質的に上面13全体にわたって生成される。より具体的には、この構造5は、この上面13の80%又は90%にわたって、又は上面13全体にわたってさえ生成される。言い換えれば、この三次元構造5は、上面13の15%から100%の間を占める。
【0040】
次に、この方法は、ブランク12の三次元構造5の表面14を処理するステップ29を含み、その間に、この表面14の少なくとも1つの視覚的特徴が修正される。このステップ29の目的は、非限定的かつ非網羅的に、この表面14の粗さの程度、輝度及び/又は色を含むこの表面14の視覚的特徴を成形/修正することである。より具体的には、このステップ29は、この表面14の全体にわたって、又はこの表面14の少なくとも一部にわたって、これらの特徴の少なくとも1つを修正することを可能にする。
【0041】
この処理ステップ29は、特に、この三次元構造5によって再現された風景の詳細を可視化するのを助けることによって、それを構成する様々なゾーン6a、6b、6cの視覚認知を改善するために、構造5のこの表面14の光学特性(例えば、この表面14上の光反射、光分布等)及び審美的特性を修正することに寄与する。
【0042】
これを行うために、このステップ29は、三次元構造5の全部又は一部の表面状態14を修正するサブステップ30と、三次元構造5の全部又は一部の表面14上にコーティング7を堆積するサブステップ31とを含む。修正サブステップ30は、この構造5の表面14又はこのような表面14を構成する部分の少なくとも1つに適用される処理に応じて、堆積サブステップ31の前又は後に実行され得る。
【0043】
修正サブステップ30の目的は、非限定的かつ非網羅的に、この表面14の粗さの程度及び/又は輝度及び/又は色を含むこの表面14の特徴を修正することである。このようなサブステップ30の間に、表面14を処理するための動作、例えば、乾式サンドブラスト、湿式サンドブラスト、ショットブラスト、サンレイブラッシング、サンディング、研磨、サテン仕上げ、ブラッシング、化学エッチング、又はこれらの動作の少なくとも2つの組み合わせが実行される。このような動作は、三次元構造5の表面14全体又はこの表面14の少なくとも一部に対して実行され得る。言い換えれば、このような動作は、この構造5の表面14を選択的に修正することを可能にする。
【0044】
堆積サブステップ31の目的は、この表面14の色特徴を修正することである。また、このサブステップ31は、この表面14の粗さ及び/又は輝度を修正するのに役立ち得る。このようなサブステップ31の間に、金属又は樹脂タイプの材料のコーティング7をこの表面14又はこの表面14の少なくとも1つの部分に適用するための動作が行われる。言い換えれば、このような動作は、この構造5の表面14にコーティング7を選択的に適用することを可能にする。このコーティング7は、審美的及び/又は技術的な制約を満たすために、単一層又は一組の積み重なった層から構成され得る。このようなコーティング7は、10-2μmから102μmの間の厚さを有することに留意されたい。
【0045】
これは、金属材料の場合、乾式又は湿式の方法によって、PVD(物理的蒸着)、CVD(化学的蒸着)、ALD(原子層蒸着)、LBL(Layer by Layer)、インクジェットによって、ディップコーティングによって、ブラシによって、ディスペンサによって、スプレーによって、噴霧によって、又はゾル-ゲル法によって、化学的方法によって、又は電気めっきタイプの電気化学的方法の動作の少なくとも1つを用いて、適用され得る。なお、このような金属材料は、例えば、金属合金又は金属酸化物で合ってもよいことに留意されたい。具体的には、この材料は、非限定的かつ非網羅的に、金、銀、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅、チタン、クロム、酸化クロム、酸化チタン、酸化シリコンであり得る。
【0046】
これは、樹脂タイプの材料の場合には、噴霧、浸漬、又は鋳造の動作の少なくとも1つによって、三次元構造5の表面14に適用され得る。このような樹脂タイプの材料は、透明及び/又は有色であり得る。この樹脂は、アクリル、ニトロセルロース、エポキシ、又はポリウレタン樹脂であり得るが、これらに限定されない。
【0047】
次に、この方法は、三次元構造5の処理表面14上に少なくとも1つのパターン4を生成するステップ32を含む。このようなステップ32は、前記パターン4を構成する材料を印刷するサブステップ33を含む。この材料は、樹脂等の高分子又は粒子からなる。これらの粒子は、有機、金属、有機金属、岩石、発光性、燐光性、又は不活性粒子であり得る。樹脂は、アクリル、ニトロセルロース、エポキシ、又はポリウレタン樹脂であり得るが、これらに限定されない。この印刷サブステップ33は、パッド印刷又は転写印刷とも呼ばれる転写印刷動作、又はスクリーン印刷動作を用いて実行されることに留意されたい。このようなパターン4は、二次元又は三次元であり得ることに留意されたい。より具体的には、このパターン4は、非限定的かつ非限定的に、時間又は日付の表示等の時計学的機能の生成に関与する、時間目盛り数字又はインデックス等のマーキング要素、刻印、画像に関連し得るグラフィック表現である。
【0048】
このようなパターン4は、要求に応じて露出させ得る不可視のパターンとすることができる。より具体的には、これは、紫外線照射を受けた場合にのみ可視になる蛍光パターンとすることができる。
【0049】
このようなプロセスは、三次元構造5の表面14の全部又は一部をカプセル化するステップ34も含む。このステップ34の間、カプセル化層8は、この表面14の全体にわたって、又は前記少なくとも1つのパターン4の上にのみ適用される。この層8は、好ましくは、パターン4の厚さよりも大きい厚さを有する。このような層の厚さは、1μmから500μmの間である。このようなカプセル化層8は、好ましくは、エポキシ樹脂等の樹脂で形成される。代替的に、この樹脂は、アクリル、ニトロセルロース又はポリウレタン樹脂であってもよい。このような層8をこの表面14に適用することは、特に、時間の経過に伴う摩耗から保護し、深みを与えることによって三次元構造5の視覚的外観を改善するのに役立つことに留意されたい。さらに、このように装飾された文字盤は、衝撃及び場合によっては侵食的な環境(湿気、ほこり等)にさらされる外部部品である可能性が高いので、このような層8は、堅牢性を改善するのに役立つ。
【0050】
次に、この方法は、この文字盤2を得るためにブランク12を完成させる/仕上げるステップ35を含む。このステップ35の間に、時計1のケース13内での組み立てのためにこのブランク12を必要に応じてサイズ調整するためにブランクを加工する動作、針15を駆動するためのシャフトの通路のための貫通開口を生成するために文字盤2に対して実行される加工動作、ブランク12を研磨する動作、ブランク12の露出部分、すなわち加工動作中に露出した基板の部分を保護するためのガルバニック処理動作、アクリル、ニトロセルロース、ポリウレタン又はエポキシ樹脂を使用してカプセル化層に直接転写する動作、まだ実行されていない場合は、アップリケ/インデックス取り付け動作のような仕上げ動作が行われる。これらのアップリケは、ブランクに直接接着されるか、又は加工動作中に形成された穴を介して文字盤を通過する部分を介して接合され得る。
【0051】
したがって、このような方法を使用して、風景に関連する地形データに基づいたこの風景の詳細な再現からなる、その可視表面11上に存在する装飾を含む文字盤2を製造することができる。この装飾は、好ましくは10
1μmから10
4μmの間、好ましくは10
3μmである、
図3に見られる厚さe2を有する三次元表現3を含む。
【符号の説明】
【0052】
1 時計
2 文字盤
3 三次元的装飾、三次元的表現
4 パターン
5 三次元構造
6a 平坦ゾーン
6b 隆起ゾーン
6c 凹部ゾーン
7 コーティング
8 カプセル化層
9 中央部
10 ブレスレット
11 可視表面
12 文字盤ブランク
13 ブランクの上面
14 三次元構造の表面
15 針
16 ケース
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小表面を有する可視表面(11)を含む時計(1)の文字盤(2)を製造する方法であって、前記可視表面(11)は風景の三次元表現(3)を含み、前記方法は、
前記風景の前記三次元表現(3)に関連する三次元構造(5)を備えた上面(13)を含む前記文字盤(2)のブランク(12)を製造するステップ(20)であって、前記上面(13)に前記三次元構造(5)を構築するための地形データを生成するサブステップ(22)を含むステップ(20)と、
前記ブランク(12)の前記上面(13)の前記三次元構造(5)の表面(14)を処理するステップ(29)であって、その処理の間に、前記表面(14)の少なくとも1つの視覚的特徴が、前記三次元表現(3)を得られるように修正されるステップ(29)と、
前記文字盤(2)を得るために、前記ブランク(12)を仕上げるステップ(35)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記三次元表現(3)は、前記風景の地形図である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成するサブステップ(22)は、前記風景に関連する生の地形データを処理することによって地形構造データを取得するフェーズ(24)を含み、この処理動作は、前記地形構造データを生成するシステムのコントローラによって実行される地形構造データ生成アルゴリズムによって実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生成するサブステップ(22)は、地形構造データを取得するフェーズ(24)であって、前記ブランク(12)の前記上面(13)の表面の寸法、前記上面(13)の表面の基本的な形状、前記ブランク(12)を構成する基板の材料の性質、及び前記風景の前記三次元表現(3)を構成する前記上面(13)の前記三次元構造(5)の観察者によって知覚される視覚的特徴の関数として、前記地形構造データを決定するための計算を実行するフェーズ(24)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記取得するフェーズ(24)は、生の地形データの値を修正するための動作を実行することにより、前記三次元構造(5)の異なるゾーン(6a、6b、6c)の寸法の変動を生じさせる、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記異なるゾーン(6a、6b、6c)は、平坦ゾーン(6a)、隆起ゾーン(6b)及び/又は凹部ゾーン(6c)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記製造するステップ(20)は、前記ブランク(12)の前記上面(13)に前記三次元構造(5)を製造するサブステップ(26)を含み、前記サブステップ(26)は、取得した地形構造データに基づいて前記ブランク(12)の前記上面(13)をパターニングするフェーズ(28)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理するステップ(29)は、前記三次元構造(5)の全部又は一部の表面(14)の状態を修正するサブステップ(30)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記処理するステップ(29)は、前記三次元構造(5)の全部又は一部の表面(14)上にコーティング(7)を堆積するサブステップ(31)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記三次元構造(5)の処理された表面(14)上に少なくとも1つのパターン(4)を形成するステップ(32)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記三次元構造(5)の表面(14)の全部又は一部をカプセル化するステップ(34)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
再現された風景は、現実の風景及び/又は既存の風景である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記小表面の表面積は、700~1700mm2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法を用いて得ることができる、風景の三次元表現(3)を含む可視表面(11)を有する文字盤。
【請求項15】
請求項14に記載の文字盤(2)を含む、時計(1)。
【請求項16】
前記時計は腕時計である、請求項1~15のいずれかに1項に記載の時計(1)。
【外国語明細書】