(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169321
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両の軌道の安全性をチェックするための装置及び方法、その装置を備える車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/095 20120101AFI20241128BHJP
B60W 50/00 20060101ALI20241128BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W50/00
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069233
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】10 2023 113 397.7
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】エーサン シャラフィアン アルダカニ
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA32
3D241DC01
3D241DC25
3D241DC57
5H181AA01
5H181EE02
5H181FF03
5H181LL01
5H181LL02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の軌道の安全性をチェックするための装置及び方法、並びに装置を備える車両を提供する。
【解決手段】車両(102)の所定の軌道(104)の安全性をチェックするための装置(106)及び方法であって、車両(102)の近傍で検出されたオブジェクト(108、110)からのオブジェクト(108)、特に、オブジェクト又は道路ユーザが選択され、軌道(104)、並びにオブジェクト(108)の位置及び/又は移動についての情報が、Frenet座標系に変換され、Frenet座標系は、オブジェクト(108)及び車両(102)が軌道(104)上に一般的に位置する軌道(104)の領域が存在するかどうかを確認するためにチェックされ、領域が存在する場合に、衝突が検出される、装置(106)及び方法。装置(106)を備える車両(102)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(102)の所定の軌道(104)の安全性をチェックするための方法であって、前記車両(102)の近傍で検出されたオブジェクト(108、110)から選択されたオブジェクト(108)、特に、オブジェクト又は道路ユーザが選択される(401)ことを特徴とし、前記軌道(104)、並びに前記オブジェクト(108)の位置及び/又は移動についての情報が、Frenet座標系に変換され(402)、前記Frenet座標系は、前記オブジェクト(108)及び前記車両(102)が前記軌道(104)上に一般的に位置する前記軌道(104)の領域が存在するかどうかを確認するためにチェックされ、安全性チェック結果が、前記領域が存在するか否かについて判定される(404)、方法。
【請求項2】
前記オブジェクト(108)は、前記オブジェクト(108)が前記軌道(104)上にあり、所定の時間にわたって前記軌道(104)上に留まることになることが確立されているか、又は前記オブジェクト(108)が前記軌道(104)の外側にあり、所定の時間内に前記軌道(104)上に移動することになることが確立されているときに、選択されること(401)を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
位置情報が、前記車両(102)に対する前記オブジェクト(108)の長手方向距離、若しくは前記軌道(104)に対する前記オブジェクト(108)の横方向距離、前記オブジェクト(108)の横方向速度、前記オブジェクト(108)の横方向加速度、又は前記オブジェクト(108)の進行方向を特徴付ける前記軌道に対する角度を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記情報が、1分未満、10秒未満、又は5秒未満の期間における前記オブジェクト(108)の前記位置又は移動を特徴付けることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数のオブジェクト(108、110)が検出されること(401)を特徴とし、安全性チェックが、前記複数のオブジェクト(108)の少なくとも一部分に対して実施される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記安全性チェックは、前記オブジェクト(108)が前記軌道(104)上にあり、所定の時間にわたって前記軌道上に留まることになること、又は前記オブジェクト(108)が前記軌道(104)の外側にあり、所定の時間内に前記軌道(104)上を移動することになることが確立されている(401)前記オブジェクト(108)の前記一部分に対して実施されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記安全性チェックは、前記オブジェクト(110)が前記軌道(104)上にあり、所定の時間内に前記軌道(104)を出ることになるか、又は前記軌道(104)の外側にあり、所定の時間内に前記軌道(104)の外側に移動することになることが確立されている(401)前記オブジェクト(110)のうちの少なくとも1つに対して省略されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記安全性チェックが、前記車両(102)の前方の領域内の少なくとも1つのオブジェクト(108)、及び/又は前記車両(102)の後方の領域内の少なくとも1つのオブジェクト(108)、及び/又は前記車両(401)の側面の領域内の少なくとも1つのオブジェクトに対して実施されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
車両(102)の軌道(104)の安全性をチェックするための装置(106)であって、前記装置(106)が、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されていることを特徴とする、装置(106)。
【請求項10】
前記車両(102)が請求項9に記載の装置(106)を備えることを特徴とする、車両(102)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の軌道の安全性をチェックするための装置及び方法、並びに装置を備える車両に基づく。
【背景技術】
【0002】
道路ユーザのオブジェクトの位置及び挙動を予測することは、運転者支援システムの前提条件である。
【0003】
欧州特許出願公開第3798912号明細書は、車両に車線が割り当てられ、それらの運転挙動の予測が行われる方法を開示している。この目的のために、トラフィックデータは、Frenet座標系に変換される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
独立請求項の装置及び方法は、車両の所定の軌道の安全性チェックを提供する。
【0005】
手順は、オブジェクト、特に、オブジェクト又は道路ユーザが、車両の近傍で検出されたオブジェクトから選択されることを提供し、ここで、オブジェクトの位置及び/又は移動に関する軌道及び情報は、Frenet座標系に変換され、Frenet座標系は、オブジェクト及び車両が軌道上に一般的に位置する軌道の領域が存在するかどうかを確認するためにチェックし、安全性チェック結果は、領域が存在するか否かに応じて確立される。オブジェクトについて、チェックは、Frenet座標系の軌道に沿って実施される。これは、チェックが一次元で実施されることを意味する。
【0006】
好ましくは、オブジェクトは、軌道上にあり、所定の時間にわたって軌道上に留まることになるか、又は軌道の外側にあり、所定の時間内に軌道上に移動することになると結論付けられるときに選択される。これは、安全性チェックのために特定の対象となるオブジェクトがどのように選択されるかの方法である。
【0007】
好ましくは、位置についての情報は、車両に対するオブジェクトの長手方向距離、又は軌道に対するオブジェクトの横方向距離、オブジェクトの横方向速度、オブジェクトの横方向加速度、又はオブジェクトの進行方向を特徴付ける軌道に対する角度を含む。
【0008】
好ましくは、情報は、1分未満、10秒未満、又は5秒未満の期間におけるオブジェクトの位置又は移動を特徴付ける。比較的短い期間は、安全性チェックにとって特に重要である。
【0009】
好ましくは、複数のオブジェクトが検出され、安全性チェックは、複数のオブジェクトの少なくとも一部分に対して実施される。例えば、安全性チェックは、車両の近傍の選択されたオブジェクトに対して実施される。
【0010】
安全性チェックは、好ましくは、軌道上にあり、所定の時間にわたって軌道上に留まることになるか、又は軌道の外側にあり、所定の時間内に軌道上を移動することになると判定されるオブジェクトの一部分に対して実施される。このようにして、安全性チェックは、おそらく車両と同じ領域に入ると予測されるオブジェクトに対して行われる。
【0011】
オブジェクトが軌道上にあり、所定の時間内に軌道を離れることになるか、又は軌道の外側にあり、所定の時間にわたって軌道の外側に移動することになると判定される場合、オブジェクトのうちの少なくとも1つについて安全性チェックを省略することが好ましい。これは、車両と同じ領域に進入できないと予測されるオブジェクトの安全性チェックを省略する。
【0012】
例えば、安全性チェックは、車両の前方の領域内の少なくとも1つのオブジェクト、及び/又は車両の後方の領域内の少なくとも1つのオブジェクト、及び/又は車両の側面の領域内の少なくとも1つのオブジェクトに対して実施される。
【0013】
装置は、方法を実施するように構成されている。装置を備える車両を提供することができる。
【0014】
更なる有利な実施形態は、以下の説明及び図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】オブジェクトが車両の近傍にある状態の第1のシナリオである。
【
図2】オブジェクトが車両の近傍にある状態の第2のシナリオである。
【
図3】Frenet座標系への軌道の変換の概略図である。
【
図4】安全性チェックのための方法のステップである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1では、オブジェクトが車両102の近傍にある状態の第1のシナリオ100が、概略的に示される。
【0017】
特に、オブジェクトは、車両102の近傍に出るオブジェクト又は道路ユーザ、例えば、別の車両である。
【0018】
車両102については、車両102の所定の軌道104が示されている。車両102は、所定の軌道104上を移動する。
【0019】
車両102は、軌道104の安全性をチェックするための装置106を含む。
【0020】
装置106は、以下に記載の方法を実行するように設計される。実施例では、装置106は、軌道を受信するための、かつ車両の近傍で検出されたオブジェクトを受信するための、かつ検出されたオブジェクトの位置及び/又は移動についての情報を受信するためのインターフェースを備える。実施例では、装置106は、所定の軌道104の安全性チェックからの安全性チェック結果のインターフェース出力を備える。
【0021】
装置106は、実施例では、運転者支援システムから所定の軌道104を受信するように構成されている。装置106は、実施例では、所定の軌道104の安全性チェックの結果を運転者支援システムに出力するように構成されている。装置106は、運転者支援システムを備え得る。
【0022】
第1のシナリオ100は、3つの車線を含み、車両102は、2つの他の車両の左端の車線上に位置する。右端の車線には、車両102のすぐ前にある他の車両と同じ位置に位置する別の車両がある。他の車両は、車両102の前方に位置するオブジェクトである。
【0023】
所定の軌道104は、第1のシナリオに従って左車線上に位置する。
【0024】
第1のシナリオ100は、軌道104上に位置し、軌道104上に留まると予測されるオブジェクトが、安全性チェックに関連するオブジェクト108であることを提供する。
【0025】
実施例では、車両102のすぐ前の車両は、その位置及び/又はその移動に関する情報に基づいて、左車線から中央車線に移動することが予想されることが明らかである。したがって、この他の車両は、対象となるオブジェクトではなく、言い換えれば、安全性チェックに無関係なオブジェクト110である。
【0026】
第1のシナリオ100に示される他のオブジェクトは、無関係なオブジェクト110であるとみなされ、言い換えれば、オブジェクトの位置及び/又は移動に関する情報に基づいて、安全性チェックの対象とはならないオブジェクトである。
【0027】
図2では、オブジェクトが車両102の近傍にある状態の第2のシナリオ200が、概略的に示される。
【0028】
車両102については、車両102の所定の軌道104が示されている。車両102は、所定の軌道104上を移動する。第2のシナリオ200は、3つの車線を含む。車両102は、別の車両の後ろの左車線に位置する。中央車線には、2つの他の車両が順々にある。2つの他の車両の前方車両は、左車線に位置する他の車両の位置にある。2つの他の車両の後方車両は、車両102と左車線内に位置する他の車両との間のギャップの位置にある。第3の車線に他の車両は位置していない。
【0029】
第2のシナリオ200によると、所定の軌道104は、左車線内に位置する。
【0030】
第2のシナリオ200は、軌道104上になく、軌道104上に移動すると予測されるオブジェクトが、安全性チェックに関連するオブジェクト108であることを提供する。
【0031】
実施例では、ギャップの位置に位置する他の車両は、その位置及び/又はその移動に関する情報に基づいて、軌道104上を移動していることが分かる。したがって、この他の車両は、対象となるオブジェクトであり、言い換えれば、安全性チェックに関連するオブジェクト108である。
【0032】
第2のシナリオ200に示される他のオブジェクトは、無関係なオブジェクト110であるとみなされ、言い換えれば、オブジェクトの位置及び/又は移動に関する情報に基づいて、安全性チェックの対象とはならないオブジェクトである。
【0033】
図3では、軌道104のFrenet座標系への変換300が、実施例として、車両102及び軌道104上の車両102の前方にある別の車両302を使用して概略的に示されている。他の車両302は、安全性チェックに関連するオブジェクト108の実施例を提供する。
【0034】
軌道104は、二次元、言い換えれば、長手方向及び横方向で実施例に記載されている。実施例では、軌道104は、車両102が最初に右車線に位置し、長手方向に移動し、その左に位置する車線に対して横方向に変化することを提供する。
【0035】
変換300によって、軌道104’は、Frenet座標系、すなわち、一次元で視認される。変換によって、他の車両302の位置及び/又は移動についての情報をFrenet座標系で見ることができる。
【0036】
位置情報は、例えば、車両102から他の車両302の長手方向距離を含む。
【0037】
位置情報は、例えば、軌道104から他の車両302の横方向距離を含む。
【0038】
移動に関する情報は、例えば、他の車両302の横方向速度、他の車両302の横方向加速度、又は他の車両302の進行方向を特徴付ける軌道に対する角度を含む。
【0039】
例えば、情報は、1分未満、10秒未満、又は5秒未満の期間におけるオブジェクトの位置又は移動を特徴付ける。
【0040】
図4では、ステップが安全性チェックのための方法において示されている。
【0041】
方法は、車両102の所定の軌道104に対して実施される。
【0042】
ステップ401では、オブジェクト又は複数のオブジェクトが車両102の近傍で検出される。
【0043】
安全性チェックは、安全性チェックに関連するオブジェクトが検出されたときに実行される。
【0044】
実施例では、複数のオブジェクトが検出され、安全性チェックは、複数のオブジェクトの少なくとも一部分に対して実施される。
【0045】
例えば、検出されたオブジェクトは、軌道104上にあり、所定の時間にわたって軌道104上に留まることになるように確立されているときに選択される。
【0046】
例えば、安全性チェックは、軌道104上にあり、所定の時間にわたって軌道上に留まることになると判定された、検出されたオブジェクトの一部分に対して実施される。
【0047】
例えば、検出されたオブジェクトは、軌道104の外側にあり、所定の時間内に軌道104上に移動することになると判定されると選択される。
【0048】
例えば、安全性チェックは、軌道104の外側にあり、所定の時間内に軌道104上に移動することになる検出されたオブジェクトの一部分に対して実施される。
【0049】
安全性チェックは、軌道104上にあり、所定の時間内に軌道104を出ることになることが確立されている検出されたオブジェクトについては省略される。
【0050】
安全性チェックは、軌道104の外側にあり、所定の時間内に軌道104の外側に移動することになることが確立されている検出されたオブジェクトについては省略される。
【0051】
例えば、所定の時間は、1分未満、10秒未満、又は5秒未満の期間である。
【0052】
少なくとも1つのオブジェクトの安全性チェックは、車両102の前方の領域で実施されるように提供され得る。
【0053】
安全性チェックは、車両102の後方の領域内の少なくとも1つのオブジェクトに対して実施されるように提供され得る。
【0054】
車両102の前方、車両102の後方、及び/又は車両102の側面の領域におけるオブジェクトの安全性チェックを実施するように提供され得る。
【0055】
実施例では、車両102の近傍で検出されたオブジェクト、言い換えれば、オブジェクト又は道路ユーザが選択される。
【0056】
ステップ402では、軌道104並びに選択されたオブジェクトの位置及び/又は移動についての情報が、Frenet座標系に変換される。
【0057】
ステップ403では、Frenet座標系は、選択されたオブジェクトが対象となるものであるかどうかをチェックする。好ましくは、オブジェクトは、軌道上にあり、所定の時間にわたって軌道上に留まることになるように確立されている場合、又は軌道の外側にあり、所定の時間内に軌道上に移動することになることが見出されている場合、対象となるオブジェクトである。これは、安全性チェックのために特定の対象となるオブジェクトがどのように選択されるかの方法である。
【0058】
オブジェクトが対象となるオブジェクトとして検出される場合、ステップ404が実施される。そうでなければ、ステップ405が実施される。
【0059】
ステップ404で、衝突が検出され得る。
【0060】
例えば、選択されたオブジェクト及び車両102が軌道104上に一般的に位置する軌道104の領域が存在するときに、衝突が検出される。
【0061】
この文脈では、例えば、共通とは、選択されたオブジェクト及び車両102が、少なくとも1つの時点の間に同じ領域内にあることを意味する。例えば、唯一のチェックは、選択されたオブジェクト及び車両が少なくとも1つの時点の間に同じ領域内にある期間があるかどうかである。
【0062】
ステップ405では、衝突は検出されない。
【0063】
衝突を検出すること、及び衝突がないことを検出することは、安全性チェックの結果の例である。衝突を検出する代わりに、領域が存在する場合、アプローチが近すぎるか、又は衝突の可能性が高すぎることが検出され得る。
【0064】
例えば、軌道104は、領域が存在しない場合、安全であると分類される。例えば、軌道104は、領域が存在する場合、安全ではないと分類される。概して、安全性チェック結果は、領域が存在するか否かに基づいて判定される。
【0065】
次いで、別の選択されたオブジェクトに対してステップ402を実行するように提供され得る。