(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169331
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】物品の孔をアブレーションする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/382 20140101AFI20241128BHJP
【FI】
B23K26/382
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076141
(22)【出願日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】18/201,484
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レグラー、ホルガー ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン、スタンリー フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホーベル、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ロマス、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB22
4E168CB23
4E168DA32
4E168DA40
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA15
4E168JB04
(57)【要約】
【課題】物品(10)の一群の孔(14)を処理する方法(600)を提供する。
【解決手段】
前記方法(600)は、前記一群の孔のためのアブレーションパターン及びレーザ動作パラメータのうちの少なくとも一方を含むアブレーション特性を確定する確定ステップ(602)を含んでいる。アブレーションステップ(608)は、第1の確定されたアブレーション特性に基づいて、レーザ(22)で第1の群の孔をアブレーションする。第2のアブレーションステップ(610)は、第2の確定されたアブレーション特性に基づいて、前記レーザ(22)で第2の群の孔をアブレーションする。前記第1の確定されたアブレーション特性は、前記第2の確定されたアブレーション特性とは異なっている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品(10)の一群の孔(14)を処理する方法(600)であって、前記方法は、
前記一群の孔(14)のためのアブレーションパターン及びレーザ動作パラメータのうちの少なくとも一方を含むアブレーション特性を確定すること(602)、
第1の確定されたアブレーション特性に基づいて、レーザ(22)で第1の群の孔をアブレーションすること(608)、
第2の確定されたアブレーション特性に基づいて、前記レーザ(22)で第2の群の孔をアブレーションすること(610)
を含み、
前記第1の確定されたアブレーション特性は、前記第2の確定されたアブレーション特性とは異なる、方法。
【請求項2】
第1のアブレーションパターンを確定すること(602)、
前記第1のアブレーションパターンで前記第1の群の孔をアブレーションすること(608)、
第2のアブレーションパターンを確定すること(602)、
前記第2のアブレーションパターンで第2の群の孔をアブレーションすること(610)
を更に含み、
前記第1のアブレーションパターンは、前記第2のアブレーションパターンとは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アブレーション特性を確定するステップは、
前記物品の基体の材料の熱的能力を評価して、前記基体に対する熱損傷を低減する又は最小化することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1のレーザ動作パラメータを確定すること(602)、
前記第1のレーザ動作パラメータで前記第1の群の孔をアブレーションすること(608)、
第2のレーザ動作パラメータを確定すること(602)、
前記第2のレーザ動作パラメータで前記第2の群の孔をアブレーションすること(610)
をさらに含み、
前記第1のレーザ動作パラメータは、前記第2のレーザ動作パラメータとは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の群の孔は、前記第2の群の孔と同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
確定されたアブレーション特性は、作業ゾーン特性、冷却孔特性、及び同期化された機械動き特性のうちの少なくとも1つの特定をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
確定するステップ(602)は、前記物品(10)の損傷を最小化する又は低減するために、前記物品(10)の基体(13)又は前記基体に設けられた層の材料の熱的能力を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の孔を熱閾値までアブレーションし、前記第1の孔が所定の時間の間冷却されている間に、第2の孔をアブレーションすることを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アブレーションパターンは、前記一群の孔(14)のアブレーションの順序をさらに含み、前記アブレーションの順序によって、前記物品の孔又は基体の熱損傷が低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
確定するステップ(602)は、前記物品の基体の損傷を低減するように前記レーザ動作パラメータを選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
レーザアブレーションシステム(800)であって、
物品(10)の一群の孔のうちの少なくとも1つの孔(14)にレーザビームパルスを照射するように構成されたレーザ(22)、
前記レーザ(22)のレーザ特性を確定するように構成された制御システム(700)であって、前記レーザ特性は、レーザ動作パラメータ及び前記一群の孔のアブレーションパターンのうちの少なくとも1つを含む、制御システム(700)
を含み、
前記制御システム(700)は、第1のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔(14)をアブレーションするように前記レーザ(22)を制御し、その後、
前記制御システム(700)は、第2のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔(14)をアブレーションするように前記レーザ(22)を制御し、
前記第1のレーザ特性は前記第2のレーザ特性とは異なり、
前記制御システム(700)は、前記物品(10)の損傷を最小化する又は低減するように構成されている、レーザアブレーションシステム。
【請求項12】
前記制御システムは、レーザ特性と、作業ゾーン特性、冷却孔特性、及び同期化された機械動き特性のうちの少なくとも1つの特性とを確定するように構成されている、請求項11に記載のレーザアブレーションシステム(800)。
【請求項13】
前記制御システムは、前記レーザ特性を変更し、変更されたレーザ特性に基づいて、前記一群の孔のうちの少なくとも1つの孔をアブレーションするように構成されている、請求項12に記載のレーザアブレーションシステム。
【請求項14】
前記制御システムは、前記物品の基体の材料の熱的能力を評価し、前記基体又は前記基体に設けられたコーティング層の損傷を最小化又は低減するように構成されている、請求項11記載のレーザアブレーションシステム。
【請求項15】
前記アブレーションパターンは、第1の孔を熱閾値までアブレーションし、その後、前記第1の孔が所定の時間の間冷却されている間に、第2の孔をアブレーションする、請求項11に記載のレーザアブレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般にガスタービンに関し、より具体的には、ガスタービンアセンブリの物品の孔をアブレーションする又はきれいにする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械(ガスタービンなど)には、製造や保守の一部として表面処理やコーティング処理が必要な数多くの部品がある。このような部品の表面処理やコーティング処理を行うと、部品内の孔や開口部がコーティング処理によって覆われたり、又は塞がれたりする状況がしばしば発生する。孔は、多くの場合、回転機械の物品又は他の部品を冷却するために設けられている。そのため、孔は、残留物又は余分なコーティングといったデブリを全て取り除かなければならない。
【0003】
一般に、コンピュータ制御型切断装置(例えば、レーザ)は、多数の孔からデブリを除去するように構成されている。しかし、部品の複雑で起伏のある様々な表面上で多数の孔をきれいにしなければならない場合、この工程は困難で時間がかかり、各孔に対してレーザを移動させたり向きを変えたりする必要がある。
【0004】
ガスタービン部品には、コーティング作業後にきれいにしなければならない多数の冷却孔が存在することが多いため、工程の所要時間を最小化し、部品のスループットを最大化するためには、孔のクリーニング作業をできるだけ効率的な方法で行うことが重要になる。次の工程に備えて切断装置又は部品自体を物理的に移動させると、工程の中の当該移動の部分では切断装置が動作しないので、工程全体の効率が悪くなることがある。
【0005】
そのため、部品の多数の孔からデブリ及び障害物(obstruction)を取り除く装置及び方法であって、多大な時間と労力を必要とせずに、部品及び部品のコーティングに悪影響を与えない装置及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載される様々な実施形態の一部の態様の基本的な部分が理解できるようにするため、以下に、開示される主題の簡略化された要約を示す。本概要は、様々な実施形態の広範囲にわたる概要ではない。また、特許請求の範囲に記載される特許請求された主題の重要な特徴又は本質的な特徴を排他的に特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するときの参考に使用されるものとして意図されるものでもない。本概要の唯一の目的は、後で提示される発明を実施するための形態の前段階として、合理的な形式で本開示のいくつかの概念を提示することである。
【0007】
一実施形態によれば、物品の一群の孔を処理する方法が提供される。前記方法は、前記一群の孔のためのアブレーションパターン及びレーザ動作パラメータのうちの少なくとも一方を含むアブレーション特性を確定する確定ステップを含んでいる。アブレーションステップは、第1の確定されたアブレーション特性に基づいて、レーザで第1の群の孔をアブレーションする。第2のアブレーションステップは、第2の確定されたアブレーション特性に基づいて、前記レーザで第2の群の孔をアブレーションする。前記第1の確定されたアブレーション特性は、前記第2の確定されたアブレーション特性とは異なっている。
【0008】
別の実施形態によれば、レーザアブレーションシステムは、物品の一群の孔のうちの少なくとも1つの孔にレーザビームパルスを照射するように構成されたレーザを含んでいる。制御システムは、前記レーザのレーザ特性を確定するように構成され、前記レーザ特性は、レーザ動作パラメータ及び前記一群の孔のアブレーションパターンのうちの少なくとも1つを含んでいる。前記制御システムは、第1のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御し、その後、前記制御システムは、第2のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御する。前記第1のレーザ特性は前記第2のレーザ特性とは異なっている。また、前記制御システムは、前記物品の損傷を最小化する又は低減するように構成されている。
【0009】
代替の実施形態によれば、レーザアブレーションシステムは、物品の一群の孔のうちの少なくとも1つの孔にレーザパルスを照射するように構成されたレーザを有している。レーザは、25W~250Wの平均レーザ出力、1~1000ピコ秒のパルス幅、10kHz~10MHzの範囲の繰り返し周波数を有している。制御システムは、レーザのレーザ特性を確定するように構成されている。レーザ特性は、一群の孔のアブレーションパターン及びレーザ動作パラメータのうちの少なくとも一つを含む。前記制御システムは、第1のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御し、その後、前記制御システムは、第2のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御する。第1のレーザ特性は第2のレーザ特性とは異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付図面を参照しながら、以下の非限定的な実施形態の説明を読むことにより、更に理解される。
【
図1】一実施形態による、本明細書に開示されたレーザアブレーションシステムに適した例示的な物品を示す。
【
図2】一実施形態によるレーザアブレーションシステムの一実施形態の概略図を示す。
【
図3】一実施形態による、本明細書に開示されたレーザアブレーションシステム及びレーザアブレーション方法に適した物品、並びにレーザアブレーション方法のアブレーションパターンを示す。
【
図4】一実施形態による、複数の冷却孔と、再コーティング工程後のトップコート及びボンドコートとを有する物品を示す。
【
図5A】実施形態による、
図2のレーザアブレーションシステムのレーザ動作パラメータの一実施形態のパルス幅を示す。
【
図5B】一実施形態による、
図2のレーザアブレーションシステムのレーザ動作パラメータの第2の実施形態のパルス幅を示す。
【
図6】一実施形態による物品の1つ又は複数の孔をきれいにするためのレーザアブレーションの方法(
図2に示す例示的な装置など)のフロー図である。
【
図7】一実施形態による、例示的なコンピューティングシステムを示す。
【
図8】一実施形態によるレーザアブレーションシステムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本方法及び本システムの例示的な実施形態について、図面を参照してより詳細に説明するが、この図面には、一部の実施形態が示されており、全ての実施形態が示されているわけではない。実際、本方法及び本システムは、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、これらの実施形態は、本開示が、適用される法的要件を満たすように提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を示すことができる。
【0012】
本明細書で使用される「アブレート(ablate)」又は「アブレーション(ablation)」という用語は、材料の除去を意味する。これは、工具又は切断装置を用いて材料を除去することによって達成される。本明細書で開示する方法及びシステムは、レーザパルスを放出する切断装置を用いて一連の孔から材料を除去することを説明している。本明細書で開示する方法及びシステムは、縁、表面、及び/又は孔から材料を除去することを含む他の方法に適用することができる。
【0013】
図面を参照すると、
図1はタービンブレードの形態の物品10を示している。しかしながら、物品10は、ノズル、ベーン、ディフューザ、シュラウド、又は他の任意の適切なガスタービン部品とすることもできる。物品10の起伏のある外面12は、冷却孔の形態の多数の孔14を有している。孔14は、外面12内の位置によって、大きさ及び/又は向きが異なっている。物品10の製造中及び修理中の両方において、物品は通常表面コーティングで被覆され、塞がった又は部分的に塞がった孔14は、物品10及び物品10の冷却チャネルの適切な機能が確保されるように、この表面コーティングを除去しなければならない。外面12には、様々な表面コーティング及び/又は基材が追加される場合があるが、孔14及び関連する冷却チャネルが適切に機能するように、除去されなければならない。本開示は、一般に、物品10の一連の孔14をアブレーションするための方法及びシステムに関する。
【0014】
図2を参照すると、レーザアブレーションシステムの全体が、符号20で示されている。レーザアブレーションシステム20は、レーザ22及び制御システム24の形態のアブレーション装置を含んでいる。レーザ22は、レーザを物理的に移動させることなく、物品10の一組の孔の各孔14にレーザビームパルスを出力するように構成することができる。「レーザ」という用語は、レーザハードウエアシステムとして定義され、レーザビーム発生器と、関連するレンズ及びビームを操縦するための手段とを含む。「レーザビーム」という語句は、レーザ又はレーザアブレーションシステム20によって放出されるビームのことである。言い換えれば、一組の孔は、レーザ22の視野内の全ての孔である。レーザの視野15は、
図2において破線の長方形で示されている。レーザ22のステアリング機構(例えば、ガルバノスキャナ)によって、レーザビームは、レーザ及び物品を物理的に移動させる必要なく、視野15内の各孔に到達することができる。レーザアブレーションシステム20は単一のレーザ22を含むことができ、単一のレーザ22は、レーザ22を物理的に移動させることなく、物品10に対して様々な角度でレーザビームのパルスを放出することができる。制御システム24は、レーザ動作パラメータを含むレーザアブレーション特性、及び/又は各組の孔に対してアブレーションパターンを確定し、レーザ特性に基づいて、一組の孔について、孔をアブレーションする。一部の実施形態(以下の方法600を参照して説明される実施形態など)では、制御システム24は、レーザ特性、作業ゾーン特性、冷却孔特性、及び/又は同期化された機械動き特性を確定し、確定されたレーザアブレーション特性に基づいて孔をアブレーションする。言い換えれば、制御システム24は、確定されたレーザアブレーション特性を使用して、アブレーションする(すなわち、デブリ/障害物を除去する)孔14(又は一組の孔)を決定し、孔14をどのようにアブレーションするか(例えば、レーザパルスを向ける角度、レーザパルスの振幅/周波数、レーザパワー、アブレーションされる孔の特定のパターンなど)を決定する。制御システム24は、物品10自体の材料特性を考慮するとともに、外部知識(同じ又は類似の物品に対するレーザアブレーションシステム20の以前の用途から取得した知識を含むが、これに限定されることはない)を組み込むことができる。最終的に、制御システム24は、物品10への損傷を最小にするために確定されたアブレーション特性を使用する。物品10への損傷は様々な形態で発生し、コーティングの剥離、ピッティング、又は基材への他の物理的損傷等であるが、これらに限定されることはない。
【0015】
図3を参照すると、一実施形態では、制御システム24は、それぞれ6個の孔を含む4つの特定の組(16a、16b、16c、16d)を定める。
図3に示された第1のアブレーションパターンに従った実施形態では、第1の組16aの孔は左上の6つの孔14であり、第2の組16bの孔は右下の6つの孔14であり、第3の組16cの孔は左下の孔14であり、第4の組16dの孔は右上の孔14である。一部の実施形態では、制御システム24は、アブレーション特性を変更し、変更されたアブレーション特性に基づいて、複数の孔の各組における個々の冷却孔14をアブレーションするように構成される。一部の実施形態では、制御システム24は、同じアブレーション特性に従って連続する組の孔14をアブレーションするように構成され、アブレーション特性を変更して、全ての組の孔14を再度アブレーションすることができる。
【0016】
図4は、冷却孔14を有する物品12の一部を示している。物品12は、冷却孔14を有する基体13によって構成されている。冷却孔14は、ディフューザ部19を含むこともできる。物品がコーティング又は再コーティングされた後、ボンドコート17及びトップコート18が孔14及びディフューザ部19を塞ぐことができる。単なる一例として、ボンドコート17はMCrAlY合金とすることができ、トップコートはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)セラミックとすることができる。ボンドコート17及びトップコート18は全体で、遮熱コーティング(TBC)を形成する。物品が適切に機能できるようにするために、孔14及びディフューザ部19は、残余物又は余分なコーティングのような全てのデブリ及び障害物が取り除かれなければならない。
【0017】
図3に戻ると、第1のアブレーションパターンを使用してトップコート18をアブレーションし、第2のアブレーションパターンを使用して、トップコート18の下にあるボンドコート17をアブレーションすることができる。第2のアブレーションパターンは第1のアブレーションパターンと異なるようにすることができる。例えば、第2のアブレーションパターンは、各行の左から右へ孔14aを連続的にアブレーションし、すべての孔14aがアブレーションされると、レーザーは各行の孔14bをアブレーションする。このように孔を「スキップする」ことによって、次のアブレーションパスの前に、基体と孔の領域を局所的に冷却することができる。このようにして、基体への望ましくない熱損傷が最小限に抑えられる。さらなる例として、第1のアブレーションパターンで使用するレーザパワーを低くして、基体13に悪影響を及ぼすことなく、隣接する孔をアブレーションすることができる。第2のアブレーションパターンでは高いレーザパワーを使用することができるが、アブレーションされた各孔は、前にアブレーションされた孔から一定の間隔が空けられ、冷却によって基体の損傷を回避するのに十分な時間が確保できるようにしなければならない。
【0018】
レーザアブレーション特性は、アブレーションされる特定の領域に基づいて変化することもある。例えば、第1のレーザアブレーション特性は、孔14(
図4を参照)の領域をアブレーションするために使用することができ、第2のレーザアブレーション特性は、ディフューザ部19の領域をアブレーションするために使用することができる。単なる一例として、孔14の領域をアブレーションするために第1のレーザパルス幅が使用され、ディフューザ部19をアブレーションするために第2のレーザパルス幅(第1のパルス幅とは異なるパルス幅)を使用することができる。特定のレーザ特性は、基体13及び基体13の近傍にあるコーティング17及び18への熱損傷を低減するように選択される。
【0019】
図5Aと
図5Bを参照すると、レーザ特性は、レーザ動作パラメータ(レーザパルス幅30(又はパルス持続時間)、レーザ周波数、レーザパルスピーク電力、波長、平均レーザパワー、レーザビーム品質、繰り返し率、パルスエネルギー、出力ピークパワー、レーザースポット径、エネルギー密度、焦点距離など)を含んでいる。一部の実施形態では、レーザ動作パラメータの例として、平均レーザパワーが約25W~約250Wの間の値、レーザビーム品質(M
2)が3より低い値又は1~3の間の値又は1~2の間の値、繰り返し周波数が約10kHz~約10MHzの値、レーザースポット径が約0.05mm~約0.5mmの値、パルス幅/パルス長が約15ピコ秒より小さい値、のうちの1つ以上とすることができる。レーザスポットサイズは、焦点面におけるレーザビームの最小直径として定義される。制御システム24は、物品10から余分な材料を最大限に除去するとともに、残りの材料と基体13を保護するようにレーザアブレーション特性を制御することができる。レーザ22は、ON設定32でピークパワーが高くレーザパルス幅30が短い出力を照射するように構成され、第1の作業ゾーンと第2の作業ゾーンをアブレーションするステップによって、レーザのOFF設定34の時間が最小限になる。「短い」という用語は、レーザパルスがフェムト秒又はピコ秒の範囲にあるものとして定義される。レーザ22のオフ設定34の時間を最小化することによって、物品10の処理数を著しく改善し、デブリ/障害物を、素早く、より効率的に除去することができる。
【0020】
一部の実施形態では、制御システム24は、物品10の損傷を最小化するために物品10の材料の熱的能力(耐性)を評価するように構成された冷却孔特性を確定する。冷却孔特性としては、孔14の寸法、物品10の材料の熱応答、所望の冷却孔14の全体的な三次元形状、セラミック充填物、金属充填物、及び/又は、冷却孔(例えば、仕上げられた孔、部分的にアブレーションされた孔、及び完全にコーティングされた孔)の熱特性が挙げられる。また、制御システム24は、レーザ22によって引き起こされる損傷を最小化するために、物品10の外面12に追加されるあらゆる表面コーティング及び/又は基体の材料特性を評価することができる。物品10への損傷を防ぐために制御システム24が特性を変更する一例は、アブレーションパターンが、一組の孔のうちの第1の孔14を熱閾値までアブレーションし、その後、第1の孔14が冷却される間に、一組の孔のうちの第2の孔14をアブレーションすることに影響する場合である。一部の実施形態では、複数の異なる組から同時に材料を効率的に除去し、物品10への熱的影響を最小にするために、各組の特定の孔14が対象とされる。言い換えると、特に
図3を参照すると、一実施形態では、制御システム24は、複数の(異なる)アブレーションパターンを用いて孔をアブレーションする。例えば、第1のアブレーションパターンは、組16aの連続的に隣接する孔をアブレーションし、次に数行飛ばして第2の組16bに進むなどである。第2のアブレーションパターンは、第1のアブレーションパターンが完了した後に使用することができ、第2のアブレーションパターンは、基体13への望ましくない熱影響を最小限に抑えるために、孔を1つおきにアブレーションしてもよいし、孔のアブレーションとアブレーションとの間に2つの孔、3つの孔、又は4つの孔を飛ばしてもよい。
【0021】
物品10の一連の孔14を修復するためのレーザアブレーションの方法600の例示的な実施形態が、
図6のフロー図に示されている。
図1~
図5を参照すると、方法600は、レーザ特性、作業ゾーン特性、冷却孔特性、及び/又は同期化された機械動き特性を確定すること(602);物品10の第1の作業ゾーン及び第2の作業ゾーンの確定された特性に基づいてレーザ用のレーザ経路計画(例えば、アブレーションパターン)を作成すること(604);レーザ22から放出されたレーザビームの位置及び/又は物品10の位置を、レーザ及び物品10に対して相対的に制御するための同期ルーチンを実行すること(606)、第1の作業ゾーンをアブレーションすること(608)及び/又は第2の作業ゾーンをアブレーションすること(610)を含む。第1の作業ゾーン及び第2の作業ゾーンをアブレーションするステップ608、610は、連続的な動作とすることができる。言い換えれば、レーザ22は連続周波数でパルス発振しているが、少なくとも2つの作業ゾーンに連続的に作用している。第1の作業ゾーン及び第2の作業ゾーンの各作業ゾーンは、単一の孔14内に位置していてもよく、2つの別個の孔14であってもよく、孔14及び当該孔14に関連するディフューザ19であってもよく、第1の作業ゾーン及び第2の作業ゾーンの各作業ゾーンは、一組の孔14の全体を含んでいてもよく、上述のように、異なる行又は列の一組の孔であってもよい。アブレーションを連続的に行うことで、アセンブリの部品が最も摩耗する時間である、アセンブリ内での開始と停止の動作をなくすことができる。
【0022】
方法600は、物品10及び/又はレーザ22を初期位置から次の位置に又はその逆に移動させるステップ612を任意選択で含み、アブレーションステップ608、610と物品10を移動させるステップ612とを繰り返す。一部の実施形態において、本方法は、少なくとも1つの作業ゾーンをアブレーションするステップ608、610の間に、レーザ22及び/又は物品10を移動させることを含む。確定されたアブレーション特性は、上述のように、制御システム24によって変更すること(614)ができ、方法600は、レーザ22の移動を必要とすることなく、変更されたアブレーション特性に従ってレーザ経路計画604を作成する(604)。例えば、ステップ604において、第1のアブレーションパターンを使用することができ、方法はステップ606~610、614に進み、ステップ614において第2のアブレーションパターン(第1のアブレーションパターンとは異なるアブレーションパターン)が選択され、第2のアブレーションパターンがステップ604~610において使用される又はステップ610のみで使用される。レーザアブレーション特性は、ステップ608とステップ610との間で変更することもでき、第1の作業ゾーンをアブレーションする際には第1のレーザアブレーション特性を使用し、第1のレーザアブレーション特性とは異なる第2のレーザアブレーション特性は、第2の作業ゾーンのアブレーションに使用することができる。
【0023】
レーザ経路計画は、レーザ特性、作業ゾーン特性、冷却孔特性、及び第1の作業ゾーンと少なくとも1つの第2の作業ゾーンのために物品10に対して同期化された機械動き特性の関数である。レーザ経路計画は、後に続く幾つかの作業ゾーン及び後に続く幾つかの位置に適応するように計画されている。レーザ経路計画は、レーザ22の能力を評価して、レーザ22の動作の適切な又は効率的な時間スケールを決定することができる。
【0024】
方法600は、例えば、レーザ22及び/又は物品10の直線加速度及び回転加速度、レーザ22及び/又は物品10の直線速度及び回転速度、再現性及び精度、並びに作業ゾーン及び有効作業ゾーンに関連する任意の追加の特性(例えば、レーザ入力、視野、最小作業距離及び/又は最大作業距離、最小有効作業距離及び/又は最大有効作業距離、スポットサイズの変動、エネルギー効率)などの特性(これらの特性に限定されることはない)を考慮することによって、レーザ及び/又は物品10の動きを、レーザ及び物品に対して相対的に同期させる。同期化された機械動き特性は、レーザ22及び/又は物品10の全体的な及び局所的な位置同期、加速及び/又は減速の通知の形式で、動きデータ及びレーザデータ(これらのデータに限定されることはない)を含み、物品及び/又はレーザの動きに対する制御システムのレイテンシ(latency)を含む。方法600は、孔14及び/又はディフューザ部19からデブリ又は障害物を効率的に除去するために、レーザ22と物品10との間の関係を動的な関係にすることができる。同期化された機械動き特性によって、位置合わせ用の孔を必要とせず、及び装置を他の方法でゼロ設定にすることを必要とせずに、レーザ22及び物品10の位置の追跡及び監視をすることができる。しかしながら、方法600の実行の途中及び/又は方法600の完了後に、位置合わせ用の孔を組み込んだり、レーザ22をゼロにしたりすることは、本明細書に開示した発明から逸脱するものではない。
【0025】
一部の実施形態では、レーザ経路計画を作成するステップ604は、基体への熱誘導損傷を低減して非最適作業ゾーンでアブレーションができるようなやり方で、低熱伝導率ゾーンにおいて冷却孔14をアブレーションすることを目標とする。レーザ経路計画を作成するステップ604は、冷却孔への移行部分及び冷却孔からの移行部分を滑らかにするために、冷却孔の縁部が不規則である箇所のアブレーションを対象とすることができる。一部の実施形態では、レーザ経路計画は、領域、ゾーン、及び/又は層がレーザ照射システム20のピーク有効アブレーションゾーンにある間に、既知のデータ領域及び困難なアブレーションゾーン及び層をターゲットとする。一部の実施形態では、レーザ経路計画を作成するステップは、物品10が動いている間に物品10全体の領域に渡って移動する作業ゾーンに最適化されたレーザ経路を確定する。また、レーザ経路計画は、レーザ22が各孔14をアブレーションしているときに生じるデブリ雲も考慮し、物品10への損傷を減少させる又は損傷をなくすために、デブリ雲を最小化する又は他の方法で制御することができる。
【0026】
レーザ経路計画によって、プラズマが形成されアブレーション効率を生成する時間よりも短い時間スケールで動作することができる。このアブレーション効率は評価され、アブレーション閾値よりも大きい値及び/又はアブレーション閾値よりも小さい値に維持することができる。一部の実施形態では、レーザ経路計画は、フェムト秒又はピコ秒の時間領域における時間スケールで動作する。ここで、フェムト秒の時間領域は、1フェムト秒と1000フェムト秒との間として定義される。ピコ秒の時間領域は、1ピコ秒と1000ピコ秒との間として定義される。ナノ秒の時間領域は、1ナノ秒と1000ナノ秒との間として定義される。マイクロ秒の時間領域は、1マイクロ秒と1000マイクロ秒との間として定義される。
【0027】
図7は、制御システム24の例示的な実施形態による例示的なコンピューティングシステム700を示す。本明細書で説明されるコンピューティングシステム700は、様々な構成要素を含むことができ、レーザ22の制御システム24と関連して、以下に説明されるコンピューティングシステム700の1つ又は複数のコンピューティング装置702を用いて様々な機能を実行することができる。
【0028】
図7に示すように、コンピューティングシステム700は、1つ又は複数のコンピューティング装置702を含むことができる。コンピューティング装置702は、1つ又は複数のプロセッサ704及び1つ又は複数のメモリ装置706を含むことができる。1つ又は複数のプロセッサ704は、任意の適切な処理装置(マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、集積回路、論理装置、及び/又は他の適切な処理装置など)を含むことができる。1つ又は複数のメモリ装置706は1つ又は複数のコンピュータ可読媒体を含むことができ、1つ又は複数のコンピュータ可読媒体としては、非一時的コンピュータ可読媒体、RAM、ROM、ハードドライブ、フラッシュドライブ、及び/又は他のメモリ装置が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0029】
1つ又は複数のメモリ装置706は、1つ又は複数のプロセッサ704によってアクセス可能な情報(例えば、1つ又は複数のプロセッサ704によって実行可能なコンピュータ可読命令708など)を記憶することができる。命令708は、1つ又は複数のプロセッサ704によって実行されると、1つ又は複数のプロセッサ704に、動作(本明細書で説明される動作のいずれかの動作など)を実行させる命令の任意のセットとすることができる。例えば、本明細書で提供される方法は、コンピューティングシステム700によって全体的に又は部分的に実施することができる。命令708は、任意の適切なプログラミング言語で記述されたソフトウェアとすることができる、又はハードウェアに実装することができる。追加で及び/又は代替的に、命令708は、プロセッサ704上で、論理的及び/又は仮想的に分離されたスレッドで実行することができる。メモリ装置706は、更に、プロセッサ704がアクセスできるデータ710を記憶することができる。例えば、データ710は、モデル、データベース、機械動き同期データなどを含むことができる。
【0030】
コンピューティング装置702は、例えば、レーザシステム20の他の構成要素と(例えば、ネットワークを通じて)通信するために使用されるネットワーク(又は通信)インターフェース712を含むこともできる。ネットワークインターフェース712は、1つ又は複数のネットワークと接続するための任意の適切な構成要素(例えば、送信器、受信機、ポート、アンテナ、及び/又は他の適切な構成要素など)を含むことができる。
【0031】
本明細書で説明する技術は、コンピュータベースのシステムと、コンピュータベースのシステムによって実行されるアクションと、コンピュータベースのシステムに送信される情報及びコンピュータベースのシステムからの情報について言及している。当業者であれば、コンピュータベースのシステムが本来的に持つ柔軟性により、コンポーネント間のタスク及び機能について、可能であると考えられる多種多様な構成、組み合わせ、及び分割が可能であることを認識することができる。例えば、本明細書で説明されるプロセスは、単一のコンピューティング装置を使用して、又は組み合わせて動作する複数のコンピューティング装置を使用して、実装することができる。データベース、メモリ、命令、及びアプリケーションは、単一のシステムに実装する、又は複数のシステムに分散して実装することができる。分散されたコンポーネントは、逐次的に又は並列的に動作することができる。
【0032】
図8は、実施形態による、機械の動きを同期させるために使用されるシステム800を示す。アブレーションされる物品10は、レーザ22によって照射される。ガルバノスキャナーミラー820は、レーザビーム830を所望のパターンにする、又はレーザビーム830を物品10の所望の位置に移動させる。ガルバノスキャナーミラーは、スキャナ・コントローラ810によって制御される。レーザ22は、コンピューティングシステム700からオン/オフ信号を受け取るビーム整形光学系(コリメーターレンズやディフューザなど)を含むことができる。カメラ840は、ビームスプリッタ850を介して視野842内の物品10の画像を検出する。このカメラは、インターラインセンサ、又は画像取得と画像転送が独立に可能なCCDチップ若しくはCMOSチップを用いて画像を取得する。しかし、標準的なビデオカメラや高速度カメラなど、他の種類のカメラを使用することも可能である。画像取得の開始は、コンピューティングシステム700内の同期制御ルーチンによって制御される。画像取得後、画像は追跡システム860に転送され、追跡システム860は物品10に目標作業ゾーンを決定する。次に、スキャナ制御装置810に、測定された座標(x/y/z)が供給され、この座標は、アブレーションレーザビーム830を物品10の意図された位置に向けるために、スキャナミラー820を動かすための角度に変換される。同期制御ルーチンから同期信号を受け取った後、レーザはアブレーションレーザパルスを物品10に照射する。画像取得、画像処理、レーザ位置制御、レーザ照射のタイミングの関係は、同期化された機械動き特性が得られるように、コンピューティングシステム700の同期化制御ルーチンによって制御される。追跡システム860は、アブレーション工程中に物品10が移動しても、処理中の視野と孔のターゲットグループを追跡する。例えば、物品10は、アブレーション工程が物品10の全ての所望の孔又は作業ゾーンに対して中断されることなく進行するように、アブレーション中に移動又は回転することができる。あるいは、レーザ22はアブレーション工程中に移動してもよいし、レーザと物品との両方がアブレーション工程中に移動してもよく、追跡システムによって、レーザは常にアブレーションのための正しい孔を確実に標的とすることができる。
【0033】
本開示の例示された実施形態の上記の説明は、要約書に記載されたものを含めて、可能な全ての実施形態を含むことを意図するものではなく、開示された実施形態を開示されたそのものに限定することを意図するものでもない。具体的な実施形態及び実施例が例示目的で本明細書に記載されているが、当業者であれば認識できるように、そのような実施形態及び実施例の範囲内とみなされる様々な修正が可能である。例えば、異なる実施形態からの部品、構成要素、ステップ、及び態様は、本開示に記載されておらず図示もされていないとしても、組み合わせることができ、他の実施形態での使用に適している場合もある。したがって、本明細書に含まれる発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、上述の発明において特定の変更を加えることができるため、図面に示される上述の説明の全ての主題は、本明細書において単に発明の概念を示す例として解釈され、本発明を限定するものとして解釈されるものではないことが意図される。
【0034】
この点に関して、開示された主題は、様々な実施形態及び対応する図とともに説明されてきたが、該当する場合には、開示された主題から逸脱することなく、開示された主題の同一の機能、類似の機能、代替の機能、又は置き換えられた機能を実行するために、他の類似の実施形態を使用することができる、又は記載された実施形態に修正及び追加を行うことができることを理解すべきである。したがって、開示された主題は、本明細書に記載された任意の単一の実施形態に限定されるべきではなく、その広さ及び範囲については特許請求の範囲に従って解釈されるべきである。例えば、本発明の「一実施形態」に対して言及されていることは、列挙された特徴も組み込んだ追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図するものではない。
【0035】
特許請求の範囲において、「含む(including)」及び「で(in which)」という用語は、それぞれの用語「含む(comprising)」及び「で(wherein)」の平易な英語の等価物として使用される。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、「第3」、「上」、「下」、「底」、「頂」などの用語は、単にラベルとして使用され、対象に数値的要件及び位置的要件を課すことを意図するものではない。「実質的に」、「一般的に」、及び「約」という用語は、構成要素又はアセンブリの機能的な目的を達成するのに適した理想的な所望の条件に対して、合理的に達成可能な製作公差内及び組立公差内の条件を示すものである。さらに、以下の請求項の限定は、このような請求項の限定が、他の構造の記載の無い機能の記述の後に「手段」が記載されるフレーズが明示的に使用されていない限り、及び他の構造の記載の無い機能の記述の後に「手段」が記載されるフレーズが明示的に使用されるまで、ミーンズ・プラス・ファンクション形式で記載されておらず、また、ミーンズ・プラス・ファンクション形式で記載されていると解釈されることを意図するものではない。
【0036】
以上説明してきたことは、開示された主題を例示したシステム及び方法の実施例を含む。もちろん、構成要素又は方法論のすべての組み合わせを本明細書で説明することは不可能である。当業者であれば、請求項に記載された対象の他の多くの組み合わせ及び並替えが可能であることを認識することができる。さらに、「含む、有する、備える(includes)」、「含む、有する、備える(has)」、「所有する(possesses)」などの用語が、発明を実施するための形態、特許請求の範囲、付属書類、及び図面において使用される場合、このような用語は、「含む(comprising)」という用語が請求項において移行語として使用されるときに解釈されるのと同様に包括的なものであることが意図される。すなわち、反対のことが明示的に記載されていない限り、特定の特性を有する単一の要素又は複数の要素を「含んでいる、有している、備えている(comprising)」、「含んでいる、有している、備えている(including)」、又は「含んでいる、有している、備えている(having)」実施形態は、その特性を有していない追加の要素を含むことができる。更に、本明細書及び図面で使用される冠詞「1つ(a)」及び「1つ(an)」は、別段の定めがない限り、又は文脈から単数形であることが明らかでない限り、一般には、「1つ又は複数」を意味すると解釈されるべきである。
【0037】
本明細書は、実施例を使用して、本発明のいくつかの実施形態(最良の形態を含む)を開示するものであり、また、当業者が、本発明の実施形態を実施すること(任意の装置又はシステムを製造及び使用すること並びに組み込まれた方法を実行することを含む)をできるようにするものである。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が思いつく他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、当該他の実施例が請求項の字義通りの文言と異なっていない構造要素を有する場合、又は当該他の実施例が請求項の字義通りの文言と実質的な差異がない等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0038】
本発明の他の態様は、以下の実施形態によって提供される。
[実施形態1]
物品の一群の孔を処理する方法は複数のステップを含んでいる。確定するステップは、前記一群の孔のためのアブレーションパターン及びレーザ動作パラメータのうちの少なくとも一方を含むアブレーション特性を確定する。アブレーションステップは、第1の確定されたアブレーション特性に基づいて、レーザで第1の群の孔をアブレーションする。第2のアブレーションステップは、第2の確定されたアブレーション特性に基づいて、前記レーザで第2の群の孔をアブレーションする。前記第1の確定されたアブレーション特性は、前記第2の確定されたアブレーション特性とは異なっている。
[実施形態2]
第1のアブレーションパターンを確定すること、前記第1のアブレーションパターンで前記第1の群の孔をアブレーションすること、第2のアブレーションパターンを確定すること、前記第2のアブレーションパターンで第2の群の孔をアブレーションすることを更に含み、前記第1のアブレーションパターンは、前記第2のアブレーションパターンとは異なる、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
アブレーション特性を確定するステップは、前記物品の基体の材料の熱的能力を評価して、前記基体に対する熱損傷を低減する又は最小化することをさらに含む、実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態4]
第1のレーザ動作パラメータを確定すること、前記第1のレーザ動作パラメータで前記第1の群の孔をアブレーションすること、第2のレーザ動作パラメータを確定すること、前記第2のレーザ動作パラメータで前記第2の群の孔をアブレーションすることをさらに含み、前記第1のレーザ動作パラメータは、前記第2のレーザ動作パラメータとは異なる、実施形態1~3のうちのいずれかの実施形態に記載の方法。
[実施形態5]
前記第1の群の孔は、前記第2の群の孔と同じである、実施形態1~4のうちのいずれかの実施形態に記載の方法。
[実施形態6]
確定されたアブレーション特性は、作業ゾーン特性、冷却孔特性、及び同期化された機械動き特性のうちの少なくとも1つの特定をさらに含む、実施形態1~5のうちのいずれかの実施形態に記載の方法。
[実施形態7]
確定するステップは、前記物品の損傷を最小化する又は低減するために、前記物品の基体又は前記基体に設けられた層の材料の熱的能力を評価する、実施形態1~6のうちのいずれかの実施形態に記載の方法。
[実施形態8]
第1の孔を熱閾値までアブレーションし、前記第1の孔が所定の時間の間冷却されている間に、第2の孔をアブレーションすることを更に含む、実施形態1~7のうちのいずれかの実施形態に記載の方法。
[実施形態9]
前記アブレーションパターンは、前記一群の孔のアブレーションの順序をさらに含み、前記アブレーションの順序によって、前記物品の孔又は基体の熱損傷が低減する、実施形態1~8のうちのいずれかの実施形態に記載の方法。
[実施形態10]
確定するステップは、前記物品の基体の損傷を低減するように前記レーザ動作パラメータを選択する、実施形態1~9のうちのいずれかの実施形態に記載の方法。
[実施形態11]
レーザアブレーションシステムは、物品の一群の孔のうちの少なくとも1つの孔にレーザビームパルスを照射するように構成されたレーザ、前記レーザのレーザ特性を確定するように構成された制御システムであって、前記レーザ特性は、レーザ動作パラメータ及び前記一群の孔のアブレーションパターンのうちの少なくとも1つを含む、制御システムを含む。前記制御システムは、第1のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御し、その後、前記制御システムは、第2のレーザ特性に基づいて、前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御する。前記第1のレーザ特性は前記第2のレーザ特性とは異なる。前記制御システムは、前記物品の損傷を最小化する又は低減するように構成されている。
[実施形態12]
多軸ステージで構成された物品支持システムを更に含み、前記ステージは少なくとも3次元的に移動可能である、実施形態11に記載のレーザアブレーションシステム。
[実施形態13]
前記制御システムは、レーザ特性と、作業ゾーン特性、冷却孔特性、及び同期化された機械動き特性のうちの少なくとも1つの特性とを確定するように構成されている、実施形態11又は12に記載のレーザアブレーションシステム。
[実施形態14]
前記制御システムは、前記レーザ特性を変更し、変更されたレーザ特性に基づいて、前記一群の孔のうちの少なくとも1つの孔をアブレーションするように構成されている、実施形態11~13のうちのいずれかの実施形態に記載のレーザアブレーションシステム。
[実施形態15]
前記制御システムは、前記物品の基体の材料の熱的能力を評価し、前記基体又は前記基体に設けられたコーティング層の損傷を最小化又は低減するように構成されている、実施形態11~14のうちのいずれかの実施形態に記載のレーザアブレーションシステム。
[実施形態16]
前記アブレーションパターンは、第1の孔を熱閾値までアブレーションし、その後、前記第1の孔が所定の時間の間冷却されている間に、第2の孔をアブレーションする、実施形態11~15のうちのいずれかの実施形態に記載のレーザアブレーションシステム。
[実施形態17]
前記レーザ動作パラメータはレーザパルス幅を含み、前記レーザパルス幅はコーティング層の除去を最大化し、前記物品の基体の損傷を低減する、実施形態11~16のうちのいずれかの実施形態に記載のレーザアブレーションシステム。
[実施形態18]
レーザアブレーションシステムは、レーザパルスを物品の一群の孔のうちの少なくとも1つの孔に照射するように構成されたレーザを含んでいる。前記レーザは25W~250Wの平均レーザ出力、1~1,000ピコ秒のパルス幅、及び10kHz~10MHzの範囲の繰り返し周波数を有している。制御システムは、前記レーザのレーザ特性を確定するように構成されている。前記レーザ特性は、前記一群の孔のアブレーションパターン及びレーザ動作パラメータのうちの少なくとも一つを含んでいる。前記制御システムは、第1のレーザ特性に基づいて前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御し、その後、前記制御システムは、第2のレーザ特性に基づいて前記少なくとも1つの孔をアブレーションするように前記レーザを制御する。前記第1のレーザ特性は前記第2のレーザ特性と異なっている。
[実施形態19]
前記レーザは1ピコ秒~15ピコ秒のパルス幅を有する、実施形態11~18のうちのいずれかの実施形態に記載のレーザアブレーションシステム。
[実施形態20]
前記レーザは、0.05mm~0.5mmのレーザースポット径、及び1~3のレーザビーム品質を有する、実施形態11~19のうちのいずれかの実施形態に記載のレーザアブレーションシステム。
【符号の説明】
【0039】
10 物品
13 基体
14 孔
22 レーザ
700 制御システム
800 レーザアブレーションシステム
【外国語明細書】