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特開2024-169350半導体装置、記憶装置及び半導体装置の作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169350
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】半導体装置、記憶装置及び半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241128BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20241128BHJP
   H10B 10/00 20230101ALI20241128BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20241128BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241128BHJP
   H10K 71/00 20230101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L29/78 626A
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 618C
H10B12/00 671B
H10B12/00 801
H10B10/00
H01L27/06 102A
H01L27/088 H
H01L27/04 C
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H10K59/12
H10K71/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080618
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2023086420
(32)【優先日】2023-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024005509
(32)【優先日】2024-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024030892
(32)【優先日】2024-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】井坂 史人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優一
(72)【発明者】
【氏名】大野 敏和
(72)【発明者】
【氏名】國武 寛司
(72)【発明者】
【氏名】村川 努
【テーマコード(参考)】
3K107
5F038
5F048
5F083
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC14
3K107CC35
3K107CC36
3K107CC41
3K107DD90
3K107EE04
3K107FF15
3K107GG03
3K107GG05
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5F038AC18
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5F038DF05
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5F048AC01
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5F110HL01
5F110HL02
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5F110HL05
5F110HL06
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5F110NN33
5F110NN34
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5F110QQ11
5F110QQ19
(57)【要約】
【課題】電気特性が良好なトランジスタを提供する。オン電流が大きいトランジスタを提供する。寄生容量が小さいトランジスタを提供する。微細化または高集積化が可能なトランジスタ、半導体装置、または記憶装置を提供する。
【解決手段】トランジスタは、第1の導電層と、第2の導電層と、半導体層と、半導体層上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上のゲート電極を有し、第1の絶縁層は第1の導電層と第2の導電層の間に位置し、第2の導電層は第1の絶縁層上に位置し、第1の絶縁層及び第2の導電層は、第1の導電層に達する開口部を有し、半導体層は、開口部の側壁に接し、半導体層は、第1の酸化物層と、第2の酸化物層とを有し、第1の酸化物層は、第1の領域と、第2の領域を有し、第2の酸化物層は、第1の領域と第2の領域との間に位置する、半導体装置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層上のトランジスタと、第2の絶縁層と、を有し、
前記トランジスタは、前記第1の絶縁層上の第1の導電層と、第2の導電層と、半導体層と、ゲート絶縁層と、ゲート電極と、を有し、
前記第2の絶縁層は、前記第1の導電層と前記第2の導電層の間に位置し、
前記第2の導電層は、前記第2の絶縁層上に位置し、
前記第2の絶縁層及び前記第2の導電層は、前記第1の導電層に達する開口部を有し、
前記半導体層は、前記開口部内における前記第2の絶縁層の側面、及び、前記開口部内における前記第2の導電層の側面に接し、
前記ゲート絶縁層は、前記半導体層上に位置し、
前記ゲート電極は、前記開口部内において、前記ゲート絶縁層を間に挟んで前記半導体層と重なる領域を有し、
前記半導体層は、第1の酸化物層と、第2の酸化物層とを有し、
前記第1の酸化物層は、第1の領域と、第2の領域とを有し、
前記第1の領域及び前記第2の領域のそれぞれは、複数の結晶部を有し、
前記第2の酸化物層は、前記第1の領域と前記第2の領域との間に位置する、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、複数の前記結晶部は、c軸配向を有する半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2の酸化物層は、複数の前記結晶部と同じ結晶構造の結晶部を有する半導体装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記第2の酸化物層は、複数の前記結晶部の一と連結している結晶部を有する、半導体装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
断面TEM像において、前記第1の酸化物層と、前記第2の酸化物層と、の境界が観察されない、半導体装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電層は、前記開口部と重畳する凹部を有し、
前記半導体層は、前記凹部を埋め込むように形成される領域を有する半導体装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2において、
前記開口部は、側壁がテーパ形状を有する第8の領域と、前記第8の領域よりも側壁が急峻である第9の領域と、を有し、
前記第8の領域は、前記開口部の上端を含み、
前記第9の領域は、前記第8の領域よりも下方に位置し、
前記第8の領域は、前記第2の導電層の側面を含み、
前記第9の領域は、前記第2の絶縁層の側面を含む半導体装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第8の領域の側壁と、前記第1の絶縁層の上面とのなす角度は、20度以上75度以下であり、
前記第9の領域の側壁と、前記第1の絶縁層の上面とのなす角度は、75度より大きく90度以下である半導体装置。
【請求項9】
第1の導電層上に第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層上に第2の導電層を形成し、
前記第2の導電層の一部と、前記第1の絶縁層の一部と、を除去することにより、前記第1の導電層に達する第1の開口部を形成して、前記第1の導電層の上面を露出させ、
前記第1の導電層の上面、前記第1の絶縁層の前記第1の開口部内の側面、前記第2の導電層の前記第1の開口部内の側面、及び、前記第2の導電層の上面にそれぞれ接するように、半導体層を形成し、
前記半導体層は、第1の酸化物層を形成する第1の工程と、第2の酸化物層を形成する第2の工程と、加熱処理を行う第3の工程と、により形成され、
前記第1の酸化物層は、スパッタリング法を用いて形成され、
前記第2の酸化物層は、原子層堆積法を用いて形成され、
前記半導体層の上面、及び前記第1の絶縁層の上面に接するように、第2の絶縁層を形成し、
前記第2の絶縁層上に、第3の導電層を形成する、
半導体装置の作製方法。
【請求項10】
第1の絶縁層と、容量素子と、前記容量素子上のトランジスタと、を有し、
前記トランジスタは、第1の導電層と、第2の導電層と、半導体層と、ゲート絶縁層と、ゲート電極と、を有し、
前記容量素子は、第3の導電層と、前記第3の導電層上の第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層上の前記第1の導電層と、を有し、
前記第1の絶縁層は、前記第1の導電層と前記第2の導電層の間に位置し、
前記第2の導電層は、前記第1の絶縁層上に位置し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の導電層は、前記第1の導電層に達する開口部を有し、
前記半導体層は、前記開口部内における前記第1の絶縁層の側面、及び、前記開口部内における前記第2の導電層の側面に接し、
前記ゲート絶縁層は、前記半導体層上に位置し、
前記ゲート電極は、前記開口部内において、前記ゲート絶縁層を間に挟んで前記半導体層と重なる領域を有し、
前記半導体層は、金属酸化物を有し、
前記トランジスタにおいて、ドレイン-ソース間の電圧を0.05V以上1V以下としてId-Vgs特性を測定し、Idはドレイン電流であり、Vgsはゲート-ソース間の電圧であり、
前記Id-Vgs特性においてIdが1×10-12[A]であるときのVgsは0Vより大きく0.5V未満である、
記憶装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記金属酸化物はIn-M-Zn酸化物であり、
元素Mは、アルミニウム、ガリウム、スズ、イットリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、ランタン、セリウム、ネオジム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、及びアンチモンから選ばれる一以上である、
記憶装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記記憶装置の保持時間は、0.64秒以上である、
記憶装置。
【請求項13】
請求項10において、
前記トランジスタは、前記ゲートを0V、前記ソースを0Vとし、前記ドレインに0.05V以上1V以下の電圧を与えた際に、トランジスタを流れる電荷の、0.64秒間の積算量が3×10-15[F]×0.1[V]以下である、
記憶装置。
【請求項14】
請求項10において、
前記記憶装置の書き込み時間は、15ns以下である、
記憶装置。
【請求項15】
請求項10において、
前記記憶装置の読み出し時間は、15ns以下である、
記憶装置。
【請求項16】
請求項14において、
前記書き込み時間の算出には、前記トランジスタの前記ゲートに第1負荷を接続し、前記トランジスタの前記ドレインに第2負荷を接続した回路を用い、
前記第1負荷は、256個の第1回路を有し、
複数の前記第1回路のそれぞれは、第1の抵抗と、第2の容量素子とを有し、
前記第2負荷は、32個の第2回路を有し、
複数の前記第2回路のそれぞれは、第2の抵抗と、第3の容量素子を有し、
前記第1回路が有する複数の前記第1の抵抗は直列に接続され、
前記第2回路が有する複数の前記第2の抵抗は直列に接続され、
前記第1の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、
前記第2の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、
前記第2の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下であり、
前記第3の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下である、
記憶装置。
【請求項17】
請求項15において、
前記読み出し時間の算出には、前記トランジスタの前記ゲートに第1負荷を接続し、前記トランジスタの前記ドレインに第2負荷を接続した回路を用い、
前記第1負荷は、256個の第1回路を有し、
複数の前記第1回路のそれぞれは、第1の抵抗と、第2の容量素子とを有し、
前記第2負荷は、32個の第2回路を有し、
複数の前記第2回路のそれぞれは、第2の抵抗と、第3の容量素子を有し、
前記第1回路が有する複数の前記第1の抵抗は直列に接続され、
前記第2回路が有する複数の前記第2の抵抗は直列に接続され、
前記第1の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、
前記第2の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、
前記第2の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下であり、
前記第3の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下である、
記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、記憶装置、表示装置、及び電子機器に関する。また、本発明の一態様は、半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサ)、入出力装置(例えば、タッチパネル)、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップ、パッケージにチップを収納した電子部品は半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置、及び電子機器は、それ自体が半導体装置であり、かつ、それぞれが半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
近年、半導体装置の開発が進められ、LSI、CPU、メモリなどが主に半導体装置に用いられている。CPUは、半導体ウェハを加工し、チップ化された半導体集積回路(少なくともトランジスタ及びメモリ)を有し、接続端子である電極が形成された半導体素子の集合体である。
【0005】
LSI、CPU、メモリなどの半導体回路(ICチップ)は、回路基板、例えばプリント配線基板に実装され、様々な電子機器の部品の一つとして用いられる。
【0006】
また、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)、表示装置のような電子機器に広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0007】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ状態において極めてリーク電流が小さいことが知られている。例えば、特許文献1には、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が小さいという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている。また、例えば、特許文献2には、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が小さいという特性を応用して、長期にわたり記憶内容を保持することができる記憶装置などが、開示されている。
【0008】
また、近年では電子機器の小型化、軽量化に伴い、集積回路のさらなる高密度化への要求が高まっている。また、集積回路を含む半導体装置の生産性の向上が求められている。例えば、特許文献3及び非特許文献1では、酸化物半導体膜を用いる第1のトランジスタと、酸化物半導体膜を用いる第2のトランジスタとを積層させることで、メモリセルを複数重畳して設けることにより、集積回路の高密度化を図る技術が開示されている。また、特許文献4では、酸化物半導体膜を用いるトランジスタのチャネルを縦方向に配置し、集積回路の高密度化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-257187号公報
【特許文献2】特開2011-151383号公報
【特許文献3】国際公開第2021/053473号
【特許文献4】特開2013-211537号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.Oota et al.,“3D-Stacked CAAC-In-Ga-Zn Oxide FETs with Gate Length of 72nm”,IEDM Tech. Dig.,2019,pp.50-53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様は、電気特性が良好なトランジスタを提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、オン電流が大きいトランジスタを提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、寄生容量が小さいトランジスタを提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、微細化または高集積化が可能なトランジスタ、半導体装置、または記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、高精細または高開口率の表示装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、信頼性の高いトランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、消費電力の低い半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、動作速度が速い記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、上記トランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置の作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1の絶縁層上のトランジスタと、第2の絶縁層と、を有し、トランジスタは、第1の絶縁層上の第1の導電層と、第2の導電層と、半導体層と、ゲート絶縁層と、ゲート電極と、を有し、第2の絶縁層は、第1の導電層と第2の導電層の間に位置し、第2の導電層は、第2の絶縁層上に位置し、第2の絶縁層及び第2の導電層は、第1の導電層に達する開口部を有し、半導体層は、開口部内における第2の絶縁層の側面、及び、開口部内における第2の導電層の側面に接し、ゲート絶縁層は、半導体層上に位置し、ゲート電極は、開口部内において、ゲート絶縁層を間に挟んで半導体層と重なる領域を有し、半導体層は、第1の酸化物層と、第2の酸化物層とを有し、第1の酸化物層は、第1の領域と、第2の領域とを有し、第1の領域及び第2の領域のそれぞれは、複数の結晶部を有し、第2の酸化物層は、第1の領域と第2の領域との間に位置する、半導体装置である。
【0014】
また上記構成において、複数の結晶部は、c軸配向を有することが好ましい。
【0015】
また上記構成において、第2の酸化物層は、複数の結晶部と同じ結晶構造の結晶部を有することが好ましい。
【0016】
また上記構成において、第2の酸化物層は、複数の結晶部の一と連結している結晶部を有することが好ましい。
【0017】
また上記構成において、断面TEM像において、第1の酸化物層と、第2の酸化物層と、の境界が観察されないことが好ましい。
【0018】
また上記構成において、第1の導電層は、開口部と重畳する凹部を有し、半導体層は、凹部を埋め込むように形成される領域を有することが好ましい。
【0019】
また上記構成において、開口部は、側壁がテーパ形状を有する第8の領域と、第8の領域よりも側壁が急峻である第9の領域と、を有し、第8の領域は、開口部の上端を含み、第9の領域は、第8の領域よりも下方に位置し、第8の領域は、第2の導電層の側面を含み、第9の領域は、第2の絶縁層の側面を含むことが好ましい。
【0020】
また上記構成において、第8の領域の側壁と、第1の絶縁層の上面とのなす角度は、20度以上75度以下であり、第9の領域の側壁と、第1の絶縁層の上面とのなす角度は、75度より大きく90度以下であることが好ましい。
【0021】
または、本発明の一態様は、第1の導電層上に第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層上に第2の導電層を形成し、第2の導電層の一部と、第1の絶縁層の一部と、を除去することにより、第1の導電層に達する第1の開口部を形成して、第1の導電層の上面を露出させ、第1の導電層の上面、第1の絶縁層の第1の開口部内の側面、第2の導電層の第1の開口部内の側面、及び、第2の導電層の上面にそれぞれ接するように、半導体層を形成し、半導体層は、第1の酸化物層を形成する第1の工程と、第2の酸化物層を形成する第2の工程と、加熱処理を行う第3の工程と、により形成され、第1の酸化物層は、スパッタリング法を用いて形成され、第2の酸化物層は、原子層堆積法を用いて形成され、半導体層の上面、及び第1の絶縁層の上面に接するように、第2の絶縁層を形成し、第2の絶縁層上に、第3の導電層を形成する、半導体装置の作製方法である。
【0022】
または本発明の一態様は、第1の絶縁層と、容量素子と、容量素子上のトランジスタと、を有し、トランジスタは、第1の導電層と、第2の導電層と、半導体層と、ゲート絶縁層と、ゲート電極と、を有し、容量素子は、第3の導電層と、第3の導電層上の第2の絶縁層と、第2の絶縁層上の第1の導電層と、を有し、第1の絶縁層は、第1の導電層と第2の導電層の間に位置し、第2の導電層は、第1の絶縁層上に位置し、第1の絶縁層及び第2の導電層は、第1の導電層に達する開口部を有し、半導体層は、開口部内における第1の絶縁層の側面、及び、開口部内における第2の導電層の側面に接し、ゲート絶縁層は、半導体層上に位置し、ゲート電極は、開口部内において、ゲート絶縁層を間に挟んで半導体層と重なる領域を有し、半導体層は、金属酸化物を有し、トランジスタにおいて、ドレイン-ソース間の電圧を0.05V以上1V以下としてId-Vgs特性を測定し、Idはドレイン電流であり、Vgsはゲート-ソース間の電圧であり、Id-Vgs特性においてIdが1×10-12[A]であるときのVgsは0Vより大きく0.5V未満である、記憶装置である。
【0023】
また上記態様において、金属酸化物はIn-M-Zn酸化物であり、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、スズ、イットリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、ランタン、セリウム、ネオジム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、及びアンチモンから選ばれる一以上であることが好ましい。
【0024】
また上記態様において、記憶装置の保持時間は、0.64秒以上であることが好ましい。
【0025】
また上記態様において、トランジスタは、ゲートを0V、ソースを0Vとし、ドレインに0.05V以上1V以下の電圧を与えた際に、トランジスタを流れる電荷の、0.64秒間の積算量が3×10-15[F]×0.1[V]以下であることが好ましい。
【0026】
また上記態様において、記憶装置の書き込み時間は、15ns以下であることが好ましい。
【0027】
また上記態様において、記憶装置の読み出し時間は、15ns以下であることが好ましい。
【0028】
また上記態様において、書き込み時間の算出には、トランジスタのゲートに第1負荷を接続し、トランジスタのドレインに第2負荷を接続した回路を用い、第1負荷は、256個の第1回路を有し、複数の第1回路のそれぞれは、第1の抵抗と、第2の容量素子とを有し、第2負荷は、32個の第2回路を有し、複数の第2回路のそれぞれは、第2の抵抗と、第3の容量素子を有し、第1回路が有する複数の第1の抵抗は直列に接続され、第2回路が有する複数の第2の抵抗は直列に接続され、第1の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、第2の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、第2の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下であり、第3の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下であることが好ましい。
【0029】
また上記態様において、読み出し時間の算出には、トランジスタのゲートに第1負荷を接続し、トランジスタのドレインに第2負荷を接続した回路を用い、第1負荷は、256個の第1回路を有し、複数の第1回路のそれぞれは、第1の抵抗と、第2の容量素子とを有し、第2負荷は、32個の第2回路を有し、複数の第2回路のそれぞれは、第2の抵抗と、第3の容量素子を有し、第1回路が有する複数の第1の抵抗は直列に接続され、第2回路が有する複数の第2の抵抗は直列に接続され、第1の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、第2の抵抗の抵抗値は、1Ω以上100Ω以下であり、第2の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下であり、第3の容量素子の容量値は、1aF以上0.5fF以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様により、電気特性が良好なトランジスタを提供できる。また、本発明の一態様により、オン電流が大きいトランジスタを提供できる。また、本発明の一態様により、寄生容量が小さいトランジスタを提供できる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能なトランジスタ、半導体装置、または記憶装置を提供できる。また、本発明の一態様により、高精細または高開口率の表示装置を提供できる。また、本発明の一態様により、信頼性の高いトランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供できる。また、本発明の一態様により、消費電力の低い半導体装置、表示装置、または記憶装置を提供できる。また、本発明の一態様により、動作速度が速い記憶装置を提供できる。また、本発明の一態様により、上記トランジスタ、半導体装置、表示装置、または記憶装置の作製方法を提供できる。
【0031】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図1(B)及び図1(C)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図2図2(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図2(B)及び図2(C)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図3図3(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図3(B)乃至図3(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図4図4(A)は、半導体装置の一例を示す平面図である。図4(B)及び図4(C)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図5図5(A)乃至図5(C)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図6図6(A)乃至図6(D)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図7図7(A)及び図7(B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図8図8(A)及び図8(B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図9図9(A)及び図9(B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図10図10(A)及び図10(B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。
図11図11(A)乃至図11(D)は、酸化物半導体の断面を説明する図である。
図12図12(A)乃至図12(C)は、半導体装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図13図13(A)は、記憶装置の一例を示す平面図である。図13(B)及び図13(C)は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図14図14(A)は、記憶装置の一例を示す平面図である。図14(B)及び図14(C)は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図15図15(A)は、記憶装置の一例を示す平面図である。図15(B)は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図16図16は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図17図17は、記憶装置の一例を示す断面図である。
図18図18は、半導体装置の構成例を説明するブロック図である。
図19図19(A)乃至図19(H)は、メモリセルの回路構成例を説明する図である。
図20図20(A)及び図20(B)は、半導体装置の構成例を説明する斜視図である。
図21図21は、CPUを説明するブロック図である。
図22図22(A)及び図22(B)は、半導体装置の斜視図である。
図23図23(A)及び図23(B)は、半導体装置の斜視図である。
図24図24(A)及び図24(B)は、各種の記憶装置を階層ごとに示す図である。
図25図25(A)及び図25(B)は、表示装置の一例を示す斜視図である。
図26図26は、表示装置の一例を示す断面図である。
図27図27は、表示装置の一例を示す断面図である。
図28図28(A)乃至図28(C)は、表示装置の構成例を示す図である。
図29図29(A)及び図29(B)は、電子部品の一例を示す図である。
図30図30(A)乃至図30(C)は、大型計算機の一例を示す図である。図30(D)は、宇宙用機器の一例を示す図である。図30(E)は、データセンターに適用可能なストレージシステムの一例を示す図である。
図31図31(A)乃至図31(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図32図32(A)乃至図32(G)は、電子機器の一例を示す図である。
図33図33(A)乃至図33(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図34図34(A)及び図34(B)は、Id-Vg特性を示す図である。
図35図35(A)及び図35(B)は、Id-Vd特性を示す図である。
図36図36は、回路シミュレーションに用いた回路図である。
図37図37(A)及び図37(B)は、回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図38図38(A)乃至図38(C)は、実施例3に係る断面TEM像である。
図39図39(A)乃至図39(C)は、実施例3に係る結晶配向性を示す図である。
図40図40は、Id-Vgs特性を示す図である。
図41図41(A)乃至図41(C)は、回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図42図42(A)及び図42(B)は、回路シミュレーションの結果である。
図43図43は、実施例5に係る断面TEM像である。
図44図44は、実施例5に係る断面TEM像である。
図45図45は、実施例6に係る回路図である。
図46図46は、トランジスタの電流の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチングパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0035】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、及び、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、及び、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、及び、範囲などに限定されない。
【0036】
なお、本明細書等において、「第1」、「第2」という序数詞は、便宜上用いるものであり、構成要素の数、または、構成要素の順序(例えば、工程順、または積層順)を限定するものではない。また、本明細書のある箇所において構成要素に付す序数詞と、本明細書の他の箇所、または特許請求の範囲において、当該構成要素に付す序数詞と、が一致しない場合がある。
【0037】
また、トランジスタは半導体素子の一種であり、電流または電圧を増幅する機能、及び、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)及び薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0038】
本明細書等において、半導体層に酸化物半導体または金属酸化物を用いたトランジスタ、及び、チャネル形成領域に酸化物半導体または金属酸化物を有するトランジスタをOSトランジスタと記すことがある。また、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタをSiトランジスタと記すことがある。
【0039】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネルが形成される領域(チャネル形成領域ともいう)を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0040】
また、「ソース」と「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合、または回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」と「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0041】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1atomic%未満の元素は不純物といえる。不純物が含まれることにより、例えば、半導体の欠陥準位密度が高くなること、または結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがある。具体的には、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。なお、水も不純物として機能する場合がある。また、例えば不純物の混入によって、酸化物半導体に酸素欠損(Vとも記す)が形成される場合がある。
【0042】
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指す。窒化酸化物とは、その組成として酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。
【0043】
膜に含まれる水素、酸素、炭素、窒素などの元素の含有量の分析には、例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)、またはX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いることができる。目的の元素の含有率が高い(例えば、0.5atomic%以上、または1atomic%以上)場合は、XPSが適している。一方、目的の元素の含有率が低い(例えば0.5atomic%以下、または1atomic%以下)場合には、SIMSが適している。元素の含有量を比較する際には、SIMSとXPSの両方の分析手法を用いた複合解析を行うことがより好ましい。
【0044】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0045】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10度以上10度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5度以上5度以下の場合も含まれる。また、「概略平行」とは、二つの直線が-30度以上30度以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、「概略垂直」とは、二つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
【0046】
本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極または配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、コイル、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0047】
本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのソース-ドレイン間のリーク電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い(pチャネル型トランジスタでは、Vthよりも高い)状態をいう。
【0048】
本明細書等において、ノーマリーオン特性とは、ゲートに電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れてしまう状態のことをいう。また、ノーマリーオフ特性とは、ゲートに電位を印加しない、またはゲートに接地電位を与えたときに、トランジスタに電流が流れない状態のことをいう。
【0049】
本明細書等において、ある構成要素の上面形状とは、平面視における当該構成要素の輪郭形状のことをいう。また平面視とは、当該構成要素の被形成面、または当該構成要素が形成される支持体(例えば基板)の表面の法線方向から見ることをいう。
【0050】
本明細書等において「上面形状が概略一致」とは、積層した層と層との間で少なくとも輪郭の一部が重なることをいう。例えば、上層と下層とが、同一のマスクパターン、または一部が同一のマスクパターンにより加工された場合を含む。ただし、厳密には輪郭が重なり合わず、上層が下層の内側に位置すること、または上層が下層の外側に位置することもあり、この場合も「上面形状が概略一致」という場合がある。また、上面形状が一致または概略一致している場合、端部が揃っている、もしくは概略揃っている、または側端部が一致している、もしくは概略一致している、ということもできる。
【0051】
なお、本明細書等において、テーパ形状とは、構造の側面の少なくとも一部が、基板面または被形成面に対して傾斜して設けられている形状のことを指す。例えば、傾斜した側面と基板面または被形成面とがなす角(テーパ角ともいう)が0度より大きく90度未満である領域を有すると好ましい。なお、構造の側面、基板面、及び被形成面は、必ずしも完全に平坦である必要はなく、微小な曲率を有する略平面状、または微細な凹凸を有する略平面状であってもよい。
【0052】
本明細書等において、AはBと接する、と記載されている場合、Aの少なくとも一部がBと接する。そのため、例えば、AはBと接する領域を有する、と言い換えることができる。
【0053】
本明細書等において、AはB上に位置する、と記載されている場合、Aの少なくとも一部がB上に位置する。そのため、例えば、AはB上に位置する領域を有する、と言い換えることができる。
【0054】
本明細書等において、AはBを覆う、と記載されている場合、Aの少なくとも一部がBを覆う。そのため、例えば、AはBを覆う領域を有する、と言い換えることができる。
【0055】
本明細書等において、AはBと重なる、と記載されている場合、Aの少なくとも一部がBと重なる。そのため、例えば、AはBと重なる領域を有する、と言い換えることができる。
【0056】
本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いずに作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0057】
本明細書等では、発光波長が異なる発光素子(発光デバイスともいう)で発光層を作り分ける構造をSBS(Side By Side)構造と呼ぶ場合がある。SBS構造は、発光素子ごとに材料及び構成を最適化することができるため、材料及び構成の選択の自由度が高まり、輝度の向上及び信頼性の向上を図ることが容易となる。
【0058】
本明細書等において、正孔または電子を、「キャリア」といって示す場合がある。具体的には、正孔注入層または電子注入層を「キャリア注入層」といい、正孔輸送層または電子輸送層を「キャリア輸送層」といい、正孔ブロック層または電子ブロック層を「キャリアブロック層」という場合がある。なお、上述のキャリア注入層、キャリア輸送層、及びキャリアブロック層は、明確に区別できない場合がある。また、1つの層が、キャリア注入層、キャリア輸送層、及びキャリアブロック層のうち2つまたは3つの機能を兼ねる場合がある。
【0059】
本明細書等において、発光素子は、一対の電極間にEL層を有する。EL層は、少なくとも発光層を有する。ここで、EL層が有する層(機能層ともいう)としては、発光層、キャリア注入層(正孔注入層及び電子注入層)、キャリア輸送層(正孔輸送層及び電子輸送層)、及び、キャリアブロック層(正孔ブロック層及び電子ブロック層)などが挙げられる。本明細書等において、受光素子(受光デバイスともいう)は、一対の電極間に少なくとも光電変換層として機能する活性層を有する。本明細書等では、一対の電極の一方を画素電極と記し、他方を共通電極と記すことがある。
【0060】
本明細書等において、犠牲層(マスク層と呼称してもよい)とは、少なくとも発光層(より具体的には、EL層を構成する層のうち、島状に加工される層)の上方に位置し、製造工程中において、当該発光層を保護する機能を有する。
【0061】
本明細書等において、島状とは、同一工程で形成された同一材料を用いた2以上の層が、物理的に分離されている状態であることを示す。例えば、島状のEL層とは、当該EL層と、隣接するEL層とが、物理的に分離されている状態であることを示す。
【0062】
本明細書等において、段切れとは、層、膜、または電極が、被形成面の形状(例えば段差など)に起因して分断される現象を示す。
【0063】
なお、本明細書に係る図面等において、X方向、Y方向、及びZ方向を示す矢印を付す場合がある。なお、本明細書等において、「X方向」とはX軸に沿う方向であり、明示する場合を除き順方向と逆方向を区別しない場合がある。「Y方向」及び「Z方向」についても同様である。また、X方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれが互いに交差する方向である。例えば、X方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれが互いに直交する方向である。
【0064】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置について説明する。
【0065】
本発明の一態様の半導体装置は、第1の導電層、第2の導電層、第3の導電層、酸化物半導体層、第1の絶縁層、及び、第2の絶縁層を有する。
【0066】
第1の絶縁層は、第1の導電層上に位置し、第2の導電層は、第1の絶縁層上に位置する。第1の絶縁層及び第2の導電層は、第1の導電層に達する開口部を有する。酸化物半導体層は、開口部内で、少なくとも、第1の導電層の上面、第1の絶縁層の側面、及び、第2の導電層の側面と接する。第2の絶縁層は、開口部内で、酸化物半導体層上に位置する。第3の導電層は、開口部内で、第2の絶縁層を間に挟んで、酸化物半導体層と重なる。なお、開口部は開口ともいう。
【0067】
第1の導電層は、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方として機能する。第2の導電層は、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方として機能する。第3の導電層は、トランジスタのゲート電極として機能し、第2の絶縁層は、ゲート絶縁層として機能する。
【0068】
なお、本明細書等では、単に、「断面視において」と記すが、具体的には、「同一方向からの断面視において」と言い換えられることがある。例えば、複数の構成の関係を説明する場合には、同一方向からの断面視における関係を説明する。このとき、当該複数の構成の関係は、1つの断面図を用いて説明することができる。
【0069】
本発明の一態様のトランジスタは、ソース電極とドレイン電極とが、異なる高さに位置し、半導体層を流れる電流は、高さ方向に流れる。すなわち、チャネル長方向が高さ方向(縦方向)の成分を有するといえるため、本発明の一態様のトランジスタは、VFET(Vertical Field Effect Transistor)、縦型トランジスタ、縦型チャネルトランジスタ、縦チャネル型トランジスタなどとも呼ぶことができる。
【0070】
本発明の一態様のトランジスタは、ソース電極、半導体層、及びドレイン電極を、重ねて設けることができるため、半導体層を平面状に配置した、いわゆるプレーナ型のトランジスタと比較して、占有面積を大幅に縮小できる。
【0071】
なお、本明細書等において、「端部が一致」とは、平面視において、積層した層と層との間で少なくとも輪郭の一部が重なることをいう。例えば、上層と下層とが、同一のマスクパターン、または一部が同一のマスクパターンにより加工された場合を含む。ただし、厳密には輪郭が重ならず、上層の輪郭が下層の輪郭より内側に位置すること、または、上層の輪郭が下層の輪郭より外側に位置することもあり、この場合も「端部が一致」という。
【0072】
なお、一般に、「完全一致」と「概略一致」の差を明確に区分けするのは困難な場合がある。このため、本明細書等において「一致」とは、完全に一致している場合と、概略一致している場合のいずれも含む場合がある。
【0073】
<半導体装置の構成例1>
図2(A)乃至図6(D)を用いて、本発明の一態様の半導体装置の構成を説明する。図2(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の平面図である。図2(B)は、図2(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図2(C)は、図2(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図3(A)は、絶縁層280を含む、XY平面における断面図である。なお、図2(A)の平面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。以降の平面図においても、一部の要素を省略することがある。
【0074】
図2(A)乃至図2(C)、及び図3(A)に示す半導体装置は、基板(図示せず)上の絶縁層210と、絶縁層210上のトランジスタ200と、絶縁層210上の絶縁層280と、を有する。絶縁層210、及び絶縁層280は、層間膜として機能する。
【0075】
トランジスタ200は、導電層220と、絶縁層280上の導電層240と、酸化物半導体層230と、酸化物半導体層230上の絶縁層250と、絶縁層250上の導電層260と、を有する。導電層220と、導電層240は、異なる高さに位置する。
【0076】
トランジスタ200において、酸化物半導体層230は半導体層として機能し、導電層260はゲート電極として機能し、絶縁層250はゲート絶縁層として機能し、導電層220はソース電極及びドレイン電極の一方として機能し、導電層240はソース電極及びドレイン電極の他方として機能する。
【0077】
酸化物半導体層230の、導電層220及び導電層240と接する領域は、低抵抗領域として機能することが好ましい。
【0078】
図2(B)及び図2(C)に示すように、絶縁層280及び導電層240には、導電層220に達する開口部290が設けられている。ここで後述する図6(D)のような構成においては、開口部290の底部は例えば、導電層220の上面である。また図2(B)及び図2(C)に示すように、開口部290と重なる凹部が導電層220に設けられている場合には、開口部290と、導電層220の凹部とが、ひと続きの開口部を構成する場合がある。このような場合には例えば、導電層220の上面において開口部290と重なる領域が、ひと続きの該開口部の底部となる。開口部290の側壁は、絶縁層280の側面、及び導電層240の側面である。開口部290は、絶縁層280が有する開口部と、導電層240が有する開口部と、を含む。別言すると、絶縁層280が導電層220と重なる領域に有する開口部は、開口部290の一部であり、導電層240が導電層220と重なる領域に有する開口部は、開口部290の別の一部である。なお、開口部290のうち、絶縁層280に設けられる開口部290を開口部290a、導電層240に設けられる開口部290を開口部290bと表す。
【0079】
トランジスタ200の構成要素の少なくとも一部は、開口部290の内側に配置される。具体的には、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260のそれぞれは、少なくとも一部が開口部290の内側に位置するように配置される。酸化物半導体層230は、開口部290内で、導電層220の上面、絶縁層280の側面、及び、導電層240の側面と接する。
【0080】
また、絶縁層280は、絶縁層280aと、絶縁層280a上の絶縁層280bと、絶縁層280b上の絶縁層280cとを有する。絶縁層280aは、絶縁層210の上面に接する領域と、導電層220の側面に接する領域と、導電層220の上面に接する領域と、を有する。絶縁層280cは、導電層240の下面に接する領域を有する。
【0081】
酸化物半導体層230は、絶縁層280が有する開口部290の内側に設けられる。また、トランジスタ200は、ソース電極及びドレイン電極の一方(ここでは導電層220)が下方に位置し、ソース電極及びドレイン電極の他方(ここでは導電層240)が上方に位置することから、電流が上下方向に流れる構成を有する。つまり、開口部290aの側壁に沿って、チャネルが形成される。
【0082】
酸化物半導体層230は、開口部290の内部において導電層220の上面と、導電層240の側面と、に接する。酸化物半導体層230は、さらに、導電層240の上面の一部とも接する。このように、酸化物半導体層230が導電層240の側面だけでなく上面にも接することで、例えば酸化物半導体層230が導電層240の側面と接するが上面とは接しない場合と比較して、酸化物半導体層230と導電層240とが接する面積を大きくすることができる。したがって、酸化物半導体層230と導電層240との間の接触抵抗を小さくすることができる。
【0083】
導電層240は、導電層220と重なる領域に開口部290bを有する。また、導電層240は、絶縁層280が有する開口部290aの内部に設けないことが好ましい。つまり、導電層240は、開口部290aにおける絶縁層280の側面と接する領域を有さないことが好ましい。このような構成にすることで、導電層240が有する開口部290b、及び絶縁層280が有する開口部290aを、一括で形成することができる。また、開口部290bにおける導電層240の側面と開口部290aにおける絶縁層280の側面とが一致するまたは概略一致する構成とすることで、開口部290の内部に設ける酸化物半導体層230の膜厚分布を均一にすることができる。また、酸化物半導体層230が導電層240と絶縁層280の段差により分断されることを抑制できる。
【0084】
導電層260は、導電層260aと、導電層260a上の導電層260bとの積層構造により構成されることが好ましい。なお、導電層260a、導電層260bはそれぞれ、さらに積層構造を有してもよい。
【0085】
開口部290の幅を、幅Dとする。幅Dは、深さ方向で変化する場合がある。例えば、絶縁層280の開口部290aの上端の幅とすることができる。あるいは、下端の幅とすることができる。あるいは、絶縁層280における開口部290aの深さの半分における幅とすることができる。あるいは、導電層240における開口部290bの幅を用いることができる。
【0086】
酸化物半導体層230及び絶縁層250の、開口部290の内側に配置される部分は、開口部290の形状を反映して設けられる。具体的には、開口部290の底部及び側壁を覆うように酸化物半導体層230が設けられ、酸化物半導体層230を覆うように絶縁層250が設けられる。酸化物半導体層230は、開口部290aにおける絶縁層280の側壁と接するように設けられることが好ましい。また、絶縁層250は、酸化物半導体層230を間に挟んで、開口部290aにおける絶縁層280の側壁に面して配置される。
【0087】
導電層260は、開口部290の形状を反映した絶縁層250の凹部を埋め込むように設けられる。幅Dを小さくすることによりトランジスタ200の微細化が可能となる一方、幅Dを小さくすると、開口部290のアスペクト比が高い場合、ここでは開口部の深さを開口部の幅で割った値が大きい場合、には開口部290の内側に配置される構成要素の形成方法または厚さ等によっては、開口部290の側壁への被覆性が低下する懸念がある。また、幅Dを小さくし、さらに酸化物半導体層230を厚くする場合には、開口部の内側への被覆性がさらに低下する懸念がある。
【0088】
開口部290は、開口部の上端においてテーパ形状を有することが好ましい。また、開口部290は、開口部の上端においてテーパ形状を有する領域と、該領域よりも深い領域で、側壁が上端よりも急峻である領域と、を有することが好ましい。急峻である、とは、ここでは例えば、絶縁層210に対する側壁の角度が垂直、あるいは垂直に近いことを指す。
【0089】
開口部290をこのような形状とすることにより、トランジスタ200をより微細なサイズとし、開口部の幅が小さく、アスペクト比が高い場合においても、導電層260を好適な形状とすることができる。具体的には例えば、導電層260において、導電層260aは、開口部290の側壁への被覆性を高くし、導電層260bは膜厚を厚くし、開口部290の上端に形成することができる。
【0090】
開口部290の内部に設ける膜は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法等を用いて形成することができる。
【0091】
開口部290は、上端においてテーパ形状を有することが好ましい。テーパ形状を有する領域の側壁は、少なくとも一部が導電層260bに覆われることが好ましい。
【0092】
また、開口部290は、テーパ形状を有する該領域よりも深い領域で、側壁が上端よりも急峻である領域を有することが好ましい。開口部290がこのような形状を有することにより例えば、テーパ領域においては、導電層240との接触面積が増大するため、酸化物半導体層230と導電層240との接触抵抗を低減することができる。また、絶縁層280の一部がテーパ形状を有すると例えば、該領域が導電層240と導電層260との間の電界の緩和領域として機能する場合がある。
【0093】
図2(B)及び図2(C)に示すトランジスタ200においては、開口部290において、導電層240の側壁及び絶縁層280cの側壁がテーパ形状を有する領域を有し、絶縁層280bの側壁及び絶縁層280aの側壁は、導電層240の側壁よりも急峻である領域を有する。
【0094】
絶縁層250は、開口部290の側壁への被覆性が良く、かつ、導電層240と導電層260との間のショートを抑制できる構成であることが好ましい。
【0095】
導電層260は、絶縁層280上に位置する領域を有する。図2(B)及び図2(C)において導電層260は、絶縁層280上において導電層240、酸化物半導体層230、及び絶縁層250をそれぞれ覆う領域を有する。
【0096】
また、導電層240は、導電層260に覆われない領域を有することが好ましい。導電層260と重畳しない領域において、導電層240の端部は、導電層260の端部よりも外側に位置する。導電層240の導電層260と重畳しない領域において、その上層に導電層を設け、該導電層と導電層240とを電気的に接続させることができる。
【0097】
図2(B)では、開口部290の外側において、導電層240の端部が、導電層260の端部よりも外側に位置する構成を示している。このような構成とすることにより、導電層240において導電層260よりも外側に延伸する領域の上にプラグ等を設け、導電層240及び導電層260の上層に位置する配線、電極、等の導電層と電気的に接続される構成、とすることができる。
【0098】
絶縁層250は、酸化物半導体層230の上面に接して設けられる。また、絶縁層250は、導電層240の上面と接する領域と、導電層240の側面と接する領域と、絶縁層280の上面と接する領域と、をそれぞれ有することが好ましい。
【0099】
図2(B)及び図2(C)に示すように、絶縁層250の一部は、開口部290の外、つまり、導電層240及び絶縁層280の上に位置する。このとき、絶縁層250は、酸化物半導体層230の端部を覆うことが好ましい。これにより、導電層260と酸化物半導体層230がショートすることを防止できる。また、絶縁層250は、導電層240の端部を覆うことが好ましい。これにより、導電層260と導電層240がショートすることを防止できる。
【0100】
絶縁層250はトランジスタ200のゲート絶縁層として機能する。ゲート絶縁層を薄くすることにより、トランジスタ200の動作時に印加するゲート電位の低減が可能となる。また、トランジスタ200を高速で動作させることが可能となる。
【0101】
ここで、図2(B)及び図2(C)では、開口部290の外側において、酸化物半導体層230の端部が、導電層240の端部よりも内側に位置する構成を示している。なお、本発明はこれに限られるものではない。例えば、X方向において、酸化物半導体層230の端部と導電層240の端部が一致、または概略一致する場合がある。または、酸化物半導体層230の端部が、導電層240の端部よりも外側に位置する場合がある。酸化物半導体層230の端部を導電層240の端部よりも外側とし、酸化物半導体層230が導電層240の端部を覆うことにより、導電層240と導電層260との間の耐圧をさらに高め、導電層240と導電層260の間に位置する絶縁層250のリーク電流をさらに低減できる場合がある。
【0102】
絶縁層210の上面と、開口部290の側壁とのなす角度を60度以下、より好ましくは50度以下、さらに好ましくは40度以下とすることにより、開口部290の側壁をテーパ形状とすることができる。また、絶縁層210の上面とのなす角度を20度未満とすると、開口部290の幅Dが増大し、トランジスタ200の微細化が難しくなる場合がある。よって、開口部290の側壁をテーパ形状とする場合には例えば、絶縁層210の上面とのなす角度を20度以上75度以下、好ましくは20度以上70度以下、より好ましくは20度以上60度以下、さらに好ましくは20度以上50度以下とすればよい。
【0103】
また、絶縁層210の上面とのなす角度を60度より大きく90度以下、好ましくは70度より大きく90度以下、より好ましくは75度より大きく90度以下、さらに好ましくは80度以上90度以下とすることにより、開口部290の側壁を急峻な形状とし、半導体装置の微細化または高集積化を図ることができる。
【0104】
または例えば、開口部290の側壁は、逆テーパ形状になっていてもよい場合がある。別言すると、開口部290における絶縁層280の側面と、絶縁層210の上面とがなす角度が、90度より大きくてもよい場合がある。
【0105】
開口部290の側壁は例えば、絶縁層210の上面に対して垂直となるように設けられることが好ましい。開口部290における絶縁層280a、絶縁層280b、絶縁層280c、導電層240のそれぞれの側面と、絶縁層210の上面とがなす角度である角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、角度θ2をそれぞれ、図3(B)に示す。角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、及び角度θ2は例えば20度より大きく90度以下である。
【0106】
図3(B)では、導電層240及び絶縁層280cがテーパ形状を有する例を示す。図3(B)においてテーパ形状を有する部分を破線で囲んでいる。角度θ2及び角度θ1cはそれぞれ、20度以上75度以下が好ましく、20度以上70度以下がより好ましく、20度以上60度以下がより好ましく、20度以上50度以下がさらに好ましい。
【0107】
角度θ1b及び角度θ1aはそれぞれ、60度より大きく90度以下であることが好ましく、70度より大きく90度以下であることがより好ましく、75度より大きく90度以下であることがより好ましく、80度以上90度以下であることがさらに好ましい。
【0108】
なおここでは角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、及び角度θ2をそれぞれ、絶縁層210の上面とのなす角度としたが、導電層220の上面とのなす角度、としてもよい。
【0109】
なお、絶縁層280cの厚さを例えば、50nm以下、30nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、とすることにより、絶縁層280cをテーパ形状とする場合においても、開口部290の大きさが広がりすぎず、トランジスタの占有面積を小さくすることができ、好ましい。
【0110】
図1(A)乃至図1(C)は、図2(A)乃至図2(C)において、角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、及び角度θ2が90度となる例を示す。
【0111】
図3(C)及び図3(D)はそれぞれ、図3(B)の変形例である。
【0112】
図3(C)では、導電層240、絶縁層280cに加えて、開口部290における絶縁層280aの側壁がテーパ形状を有する例を示す。図3(C)においてテーパ形状を有する部分を破線で囲んでいる。開口部290における絶縁層280aの側壁をテーパ形状とすることにより、開口部290の底部、及びその近傍において、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260aの被覆性を高めることができる。また、絶縁層280aを充分に薄くすることにより、トランジスタ200のサイズの増大も抑制することができる。絶縁層280aは例えば、50nm以下、30nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下とすればよい。
【0113】
図3(D)には、導電層240及び絶縁層280cが、側壁が急峻である領域を有し、絶縁層280b及び絶縁層280aがテーパ形状である領域を有する例を示す。このように、絶縁層280の一部がテーパ形状を有することにより例えば、開口部290内において、トランジスタ200の構成要素の被覆性を高めることができる。
【0114】
また、導電層240の側壁の下端と、絶縁層280cの側壁の上端を不連続とすることにより、酸化物半導体層230において絶縁層280の上面と接し、かつ、開口部290内に位置する領域を設けることができる。該領域は例えば、導電層240と導電層260との間の電界の緩和領域として機能する場合がある。また例えば、酸化物半導体層230、及びその上層の絶縁層250、導電層260、等の、開口部290の上端及びその近傍への被覆性を高めることができる。
【0115】
図4(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の平面図である。図4(B)は、図4(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図4(C)は、図4(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。また図5(A)は、角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、角度θ2を説明する図であり、図4(B)に示す断面と対応する。図4(A)乃至図4(C)に示す半導体装置は、図2(A)乃至図2(C)と比較して、導電層240の側壁の下端と、絶縁層280cの側壁の上端が不連続である点などが異なる。なお、図4(B)及び図4(C)では一例として、絶縁層280c及び導電層240の開口部290におけるそれぞれの側壁が、図2(B)及び図2(C)と比較して急峻である例を示すが、それぞれの側壁は、テーパ形状を有してもよい。
【0116】
図4(B)における開口部290における絶縁層280a、絶縁層280b、絶縁層280c、導電層240のそれぞれの側面と、絶縁層210の上面とがなす角度である角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、角度θ2をそれぞれ、図5(A)に示す。図5(A)に示す例では、導電層240の側壁の下端は、絶縁層280cの側壁の上端よりも、長さd1だけ外側に位置する。
【0117】
図5(A)において、角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、及び角度θ2はそれぞれ例えば、60度より大きく90度以下であることが好ましく、70度より大きく90度以下であることがより好ましく、75度より大きく90度以下であることがより好ましく、80度以上90度以下であることがさらに好ましい。
【0118】
また図5(B)及び図5(C)にはそれぞれ、図5(A)の変形例を示す。
【0119】
図5(B)では、角度θ2及び角度θ1cが図5(A)と異なる。図5(B)においてテーパ形状を有する部分を破線で囲んでいる。図5(B)では、角度θ2及び角度θ1cはそれぞれ例えば、20度以上75度以下が好ましく、20度以上70度以下がより好ましく、20度以上60度以下がより好ましく、20度以上50度以下がさらに好ましい。
【0120】
図5(C)では、角度θ2、角度θ1c、及び角度θ1aが図5(A)と異なる。図5(C)においてテーパ形状を有する部分を破線で囲んでいる。図5(C)では、角度θ2、角度θ1c、及び角度θ1aはそれぞれ例えば、20度以上75度以下が好ましく、20度以上70度以下がより好ましく、20度以上60度以下がより好ましく、20度以上50度以下がさらに好ましい。
【0121】
<OSトランジスタ>
トランジスタ200は、チャネル形成領域を含む酸化物半導体層230に、半導体として機能する金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有する。つまり、トランジスタ200は、OSトランジスタといえる。
【0122】
OSトランジスタは、酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損(V)及び不純物が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸素欠損近傍の水素が、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VHと呼ぶ場合がある)を形成し、キャリアとなる電子を生成する場合がある。このため、酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、OSトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、酸化物半導体中のチャネル形成領域では、酸素欠損及び不純物はできる限り低減されていることが好ましい。言い換えると、酸化物半導体中のチャネル形成領域は、キャリア濃度が低減され、i型化(真性化)または実質的にi型化されていることが好ましい。
【0123】
一方、OSトランジスタのソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域よりも、酸素欠損が多い、VHが多い、または水素、窒素、金属元素などの不純物濃度が高い、ことでキャリア濃度が増加し、低抵抗化した領域であることが好ましい。すなわち、OSトランジスタのソース領域及びドレイン領域は、チャネル形成領域と比較して、キャリア濃度が高く、低抵抗なn型の領域であることが好ましい。
【0124】
酸化物半導体層230の、絶縁層280と接する領域とその近傍は、トランジスタ200のチャネル形成領域として機能する。酸化物半導体層230の導電層220と接する領域、及び、酸化物半導体層230の導電層240と接する領域は、一方が、ソース領域として機能し、他方がドレイン領域として機能する。つまり、チャネル形成領域は、ソース領域とドレイン領域との間に挟まれている。
【0125】
酸化物半導体層230と導電層220とが接することで、金属化合物、または酸素欠損が形成され、酸化物半導体層230の導電層220と接する領域が低抵抗化する。これにより、酸化物半導体層230と導電層220との接触抵抗を低減できる。同様に、酸化物半導体層230と導電層240とが接することで、酸化物半導体層230の導電層240と接する領域が低抵抗化する。これにより、酸化物半導体層230と導電層240との接触抵抗を低減できる。
【0126】
図3(A)に示すように、絶縁層280は酸化物半導体層230の外周全体に接する。よって、トランジスタ200のチャネル形成領域は、開口部290内における酸化物半導体層230の外周全体(絶縁層280と接する領域全体)に形成されうる。なお、図3(A)は、酸化物半導体層230のチャネル形成領域を含む、XY平面における断面図ともいえる。
【0127】
トランジスタ200のチャネル長は、ソース領域とドレイン領域の間の距離となる。つまり、トランジスタ200のチャネル長は、導電層220上の絶縁層280の厚さによって決定される、ということができる。図2(C)では、トランジスタ200のチャネル長Lを破線の両矢印で示している。チャネル長Lは、断面視において、酸化物半導体層230と導電層220が接する領域の端部と、酸化物半導体層230と導電層240が接する領域の端部との距離となる。つまり、チャネル長Lは、断面視における絶縁層280の開口部290側の側面の長さに相当する。
【0128】
プレーナ型のトランジスタでは、チャネル長がフォトリソグラフィの露光限界で制限されており、さらなる微細化は困難であったが、本発明の一態様の半導体装置が有するトランジスタにおいては、絶縁層280の膜厚でチャネル長を設定することができる。よって、トランジスタ200のチャネル長を、フォトリソグラフィの露光限界以下の非常に微細な構造(例えば、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、または10nm以下であって、0.1nm以上、1nm以上、または5nm以上)にすることができる。これにより、トランジスタ200のオン電流が大きくなり、周波数特性の向上を図ることができる。
【0129】
また、本発明の一態様の半導体装置が有するトランジスタのチャネル長は、導電層220上の絶縁層280の厚さによって決定されることから例えば、チャネル長を60nm以上と長くする場合においても、トランジスタの占有面積、具体的には例えば上面から見たトランジスタの面積は、開口部290の幅に応じて大よそ決定される。後述するように、開口部290の幅Dは、例えば、5nm以上、10nm以上、または20nm以上であって、100nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、または30nm以下が好ましい。一例として、チャネル長を150nmとする場合においても、開口部290の幅を150nmより狭くすることもできる。すなわち、チャネル長よりも開口部の幅の狭いトランジスタとすることができ、トランジスタの占有面積を低減し、半導体装置を高集積化することができる。
【0130】
なお、トランジスタのチャネル長を例えば1μm以下、500nm以下、または300nm以下とすることにより、絶縁層280の形成、絶縁層280への開口部290の形成などにおいて生産性、及び歩留まりなどを高めることができる。
【0131】
よって、本発明の一態様の半導体装置が有するトランジスタのチャネル長は、0.1nm以上、1nm以上、または5nm以上が好ましく、1μm以下、500nm以下、または300nm以下が好ましい。
【0132】
さらに、上記のように、開口部290に、チャネル形成領域、ソース領域、及びドレイン領域を形成することができる。これにより、チャネル形成領域、ソース領域、及びドレイン領域が、XY平面上に別々に設けられる、横型のトランジスタ、例えばプレーナ型のトランジスタと比較して、トランジスタ200は、占有面積を低減できる。したがって、半導体装置を高集積化することができる。また、本発明の一態様の半導体装置を記憶装置に用いる場合、単位面積当たりの記憶容量を大きくすることができる。
【0133】
また、図3(A)に示すように、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260は、同心円状に設けられる。よって、中心に設けられた導電層260の側面は、絶縁層250を介して、酸化物半導体層230の側面と対向する。つまり、平面視において、酸化物半導体層230の周全体がチャネル形成領域になる。このとき、例えば、酸化物半導体層230の外周の長さによって、トランジスタ200のチャネル幅が決まる。つまり、トランジスタ200のチャネル幅は、開口部290の幅(平面視において開口部290が円形である場合は径)の大きさによって決定される、ということができる。図2(C)及び図3(A)では、開口部290の幅Dを二点鎖線の両矢印で示している。図3(A)では、トランジスタ200のチャネル幅Wを一点鎖線の両矢印で示している。開口部290の幅Dの大きさを大きくすることで、単位面積当たりのチャネル幅を大きくし、オン電流を大きくすることができる。
【0134】
フォトリソグラフィ法を用いて開口部290を形成する場合、開口部290の幅Dはフォトリソグラフィの露光限界で制限される。また、開口部290の幅Dは、開口部290に設ける、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260それぞれの膜厚によって設定される。開口部290の幅Dは、例えば、5nm以上、10nm以上、または20nm以上であって、100nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、または30nm以下が好ましい。なお、平面視において開口部290が円形である場合、開口部290の幅Dは開口部290の直径に相当し、チャネル幅Wは“D×π”と算出することができる。
【0135】
また、トランジスタ200のチャネル長Lは、少なくともトランジスタ200のチャネル幅Wよりも小さいことが好ましい。トランジスタ200のチャネル長Lは、トランジスタ200のチャネル幅Wに対し、0.1倍以上0.99倍以下が好ましく、0.5倍以上0.8倍以下がより好ましい。このような構成にすることで、良好な電気特性及び高い信頼性を有するトランジスタを実現できる。
【0136】
また、平面視で円形になるように開口部290を形成することで、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260は、同心円状に設けられる。これにより、導電層260と酸化物半導体層230の距離が概略均一になるため、酸化物半導体層230にゲート電界を概略均一に印加することができる。
【0137】
なお、本実施の形態では、平面視において開口部290が円形である例について示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、平面視において開口部290は、楕円などの略円形状、四角形などの多角形状、四角形等の多角形の角部を丸めた形状であってもよい。
【0138】
図6(A)には、図2(B)に示す断面において、一部を拡大して示す。図6(A)に示すように、導電層220に、開口部290と重なる凹部が形成され、当該凹部を埋め込むように、酸化物半導体層230、絶縁層250、及び導電層260の少なくとも一部が形成されている。このような構成とすることで、酸化物半導体層230の導電層220近傍まで、導電層260のゲート電界を印加しやすくすることができる。導電層220が有する凹部は例えば、開口部290が形成される際のオーバーエッチングにより形成される。
【0139】
図6(A)では、開口部290と、導電層220の凹部とが、ひと続きの開口部を構成している。このような場合には例えば、ひと続きの該開口部の底部が、導電層220の上面となる。
【0140】
図6(B)には、導電層220が導電層220a、導電層220a上の導電層220b、導電層220b上の導電層220cの3層積層構造を有する例を示す。導電層220が有する凹部の底面は、導電層220bの上面に相当し、当該凹部の側面が導電層220cの開口部290側の側面に相当する。ここで、絶縁層210の上面から導電層220cの絶縁層280と接する上面までの最短距離Tcは、絶縁層210の上面から絶縁層250の上面までの最短距離Taよりも長いことが好ましい。これにより、導電層220cの側面と酸化物半導体層230との接触抵抗を低くすることができる。よって、トランジスタ200のオン電流の低下を抑制することができる。
【0141】
また、図6(C)は図6(B)の変形例である。図6(C)では、導電層220が有する凹部の底面は、導電層220bの上面よりも上方に位置する。図6(C)に示すように、酸化物半導体層230は、必ずしも導電層220aまたは導電層220bと接していなくてもよい。
【0142】
図6(D)には、酸化物半導体層230が、導電層220の上面(図6(D)においては導電層220cの上面)と接する例を示す。開口部290の形成条件によっては図6(D)に示すように、導電層220に凹部が設けられない場合もある。
【0143】
図6(D)では、開口部290の底部が、導電層220の上面となる。
【0144】
導電層220が酸化物半導体層230の側面と接することにより、導電層220と酸化物半導体層230との接触面積を大きくすることができ、接触抵抗を低減することができる。
【0145】
また、導電層220と導電層260とが互いに重畳する領域を有することにより例えば、酸化物半導体層230のチャネル形成領域にゲート電界がかかりやすくなり、トランジスタの電気特性を良好にすることができる。さらに、酸化物半導体層230の導電層220と接する領域にもゲート電界がかかりやすくなるため、例えば、トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0146】
<半導体装置の構成例2>
導電層240は2層以上の積層構造を有してもよい。図7(A)は、導電層240が導電層240aと、導電層240a上の導電層240bとの積層構造を有する点で、図2(B)と主に異なる。
【0147】
また図7(B)は、角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、角度θ2a、角度θ2bを説明する図であり、図7(A)に示す断面と対応する。また角度θ2a、角度θ2bはそれぞれ、導電層240a、導電層240bの側壁に対応する角度である。
【0148】
なお、図7(A)には導電層240が2層積層の例を示すが、導電層240は3層以上で積層されてもよい。また、導電層260a、導電層260bはそれぞれ、さらに積層構造を有してもよい。
【0149】
図7(B)に示す例では、角度θ2bは角度θ2aよりも大きい。角度θ2b及び角度θ2aはそれぞれ、20度以上60度以下が好ましく、20度以上50度以下がより好ましく、20度以上40度以下がさらに好ましい。角度θ2bを角度θ2aよりも大きくすることにより、開口部290の上端におけるテーパ形状を凹部の形状とすることができ例えば、酸化物半導体層230、及びその上層の絶縁層250、導電層260、等の、開口部290の上端及びその近傍への被覆性を高めることができる。
【0150】
また図8(A)及び図8(B)にはそれぞれ、図7(A)及び図7(B)の変形例を示す。図8(A)には、導電層240bの側壁の下端と、導電層240aの側壁の上端が不連続である例を示す。また図8(B)は、角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、角度θ2a、角度θ2bを説明する図であり、図8(A)に示す断面と対応する。図8(B)に示すように、導電層240bの開口部290側の側壁の下端は、導電層240aの開口部290側の側壁の上端よりも、長さd2だけ外側に位置する。
【0151】
図8(A)では、酸化物半導体層230が導電層240aの上面と接する領域を有する。これにより、酸化物半導体層230と、導電層240aとの接触面積を大きくすることができ、接触抵抗を低減することができる。また開口部290の上端において、図8(A)に示すように導電層240aと導電層240bにより階段状の形状と構成することにより例えば、酸化物半導体層230、及びその上層の絶縁層250、導電層260、等の、開口部290の上端及びその近傍への被覆性を高めることができる。
【0152】
<半導体装置の構成例3>
図9(A)は、導電層240が導電層240aと、導電層240a上の導電層240bとの積層構造を有する点で、図4(B)と主に異なる。また図9(A)において、導電層240bの開口部290側の端部は、導電層240aの開口部290側の端部よりも外側に位置する。よって、導電層240aと導電層240bは階段状の形状を構成している。
【0153】
図9(B)は、角度θ1a、角度θ1b、角度θ1c、角度θ2a、角度θ2bを説明する図であり、図9(A)に示す断面と対応する。また角度θ2a、角度θ2bはそれぞれ、導電層240a、導電層240bの側壁に対応する角度である。導電層240bの開口部290側の側壁の下端は、導電層240aの開口部290側の側壁の上端よりも、長さd2だけ外側に位置する。
【0154】
なお、図9(A)には導電層240が2層積層の例を示すが、導電層240は3層以上で積層されてもよい。図9(B)においては、絶縁層280a、絶縁層280b、絶縁層280c、導電層240a、導電層240bの側壁がそれぞれ急峻な側壁を有する例を示すが、それぞれの側壁はテーパ形状を有してもよい。
【0155】
<絶縁層283及び絶縁層285>
図10(A)に示すように、半導体装置において、トランジスタ200上の絶縁層283と、絶縁層283上の絶縁層285とを設けることができる。絶縁層283及び絶縁層285はそれぞれ、層間膜として機能する。絶縁層283は導電層260、絶縁層280等を覆って設けられる。また図10(A)に示す構成例は例えば、被覆性が高く、等方的に膜が形成される成膜方法を用いて絶縁層283を形成し、絶縁層283上に、上面が平坦化された絶縁層285を形成することで作製することができる。
【0156】
<半導体装置の変形例>
図10(B)に示す半導体装置は、トランジスタ200上の絶縁層283及び絶縁層285と、絶縁層285上の導電層265とを有する。導電層260の上面の高さと絶縁層285の上面の高さは揃っている、または概略揃っていることが好ましい。導電層265は、絶縁層285上、絶縁層283上、及び導電層260上に設けられている。導電層260と導電層265は互いに電気的に接続されている。導電層265は導電層260の上面と接することが好ましい。
【0157】
図10(B)に示す半導体装置は、絶縁層280上において導電層260と導電層240が重畳する面積が極めて小さい。また、導電層265と導電層240との間には、絶縁層285が設けられているため、絶縁層285を厚くすることにより、導電層265と導電層240との間の寄生容量を小さくすることができる。
【0158】
<半導体装置の構成材料>
以下では、本実施の形態の半導体装置に用いることができる材料について説明する。なお、本実施の形態の半導体装置を構成する各層は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0159】
[絶縁層]
半導体装置が有する絶縁層(絶縁層210、絶縁層250、絶縁層280、絶縁層283、絶縁層285など)には、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、及び窒化酸化絶縁膜が挙げられる。酸化絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化ガリウム膜、酸化ゲルマニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ランタン膜、酸化ネオジム膜、酸化ハフニウム膜、酸化タンタル膜、酸化セリウム膜、ガリウム亜鉛酸化物膜、及び、ハフニウムアルミネート膜が挙げられる。窒化絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、及び窒化アルミニウム膜が挙げられる。酸化窒化絶縁膜としては、例えば、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化窒化ガリウム膜、酸化窒化イットリウム膜、及び、酸化窒化ハフニウム膜が挙げられる。窒化酸化絶縁膜としては、例えば、窒化酸化シリコン膜、及び窒化酸化アルミニウム膜が挙げられる。また、半導体装置が有する絶縁層には、有機絶縁膜を用いてもよい。
【0160】
また、金属酸化物を用いたトランジスタは、不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層で囲むことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、及び、タンタルから選ばれた一以上を含む絶縁層を、単層で、または積層で用いることができる。具体的には、不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層の材料として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどの金属窒化物を用いることができる。
【0161】
具体的には、水及び水素などの不純物と、酸素と、に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。
【0162】
なお、本明細書等において、バリア絶縁層とは、バリア性を有する絶縁層のことを指す。また、バリア性とは、対応する物質が拡散し難い性質、対応する物質が透過し難い性質、対応する物質の透過性が低い性質、対応する物質の拡散を抑制する機能、または、対応する物質の透過を抑制する機能とする。なお、対応する物質として記載される場合の水素は、例えば、水素原子、水素分子、並びに、水分子及びOHなどの水素と結合した物質などの少なくとも一を指す。また、対応する物質として記載される場合の不純物は、特段の明示が無い限り、チャネル形成領域または半導体層における不純物を指し、例えば、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの少なくとも一を指す。また、対応する物質として記載される場合の酸素は、例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一を指す。
【0163】
水及び水素などの不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、及び酸化タンタルといった金属酸化物が挙げられる。また例えば、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)が挙げられる。また例えば、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコン、及び窒化シリコンといった金属窒化物が挙げられる。
【0164】
また、ゲート絶縁層などの、酸化物半導体層と接する絶縁層、または酸化物半導体層の近傍に設ける絶縁層は、加熱により脱離する酸素(以下、過剰酸素と呼ぶことがある)を含む領域を有する絶縁層であることが好ましい。例えば、過剰酸素を含む領域を有する絶縁層が、酸化物半導体層と接する、または酸化物半導体層の近傍に位置することで、酸化物半導体層が有する酸素欠損を低減することができる。過剰酸素を含む領域を形成しやすい絶縁層として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどが挙げられる。
【0165】
また例えば、トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁層の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁層に、比誘電率が高い(high-k)材料を用いることで物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。また、ゲート絶縁層の等価酸化膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)の薄膜化が可能となる。また、比誘電率が高い材料を容量素子の誘電層として用いることにより、より大きな容量値を有する素子とすることができる。一方、層間膜として機能する絶縁層には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。したがって、絶縁層の機能に応じて、材料を選択するとよい。なお、比誘電率が低い材料は、絶縁耐力が大きい材料でもある。
【0166】
比誘電率が高い材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、ハフニウムジルコニウム酸化物、アルミニウム及びハフニウムを有する酸化物、アルミニウム及びハフニウムを有する酸化窒化物、シリコン及びハフニウムを有する酸化物、シリコン及びハフニウムを有する酸化窒化物、並びに、シリコン及びハフニウムを有する窒化物などが挙げられる。
【0167】
比誘電率が低い材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、及びアクリル樹脂などの樹脂が挙げられる。また、比誘電率が低い他の無機絶縁材料として、例えば、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、並びに、炭素及び窒素を添加した酸化シリコンなどが挙げられる。また、例えば、空孔を有する酸化シリコンが挙げられる。なお、これらの酸化シリコンは、窒素を含んでもよい。
【0168】
また例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、及び窒化酸化シリコンなどの無機絶縁材料は、ゲート絶縁層などの比誘電率が高い材料が好適に用いられる層と、層間膜などの比誘電率が低い材料が好適に用いられる層と、のいずれにも適用することができる。これらの材料は例えば、酸化ハフニウムなどのhigh-k材料と比較すると相対的に比誘電率が低いため、本明細書等では、比誘電率が低い材料、と表現する場合がある。
【0169】
また、半導体装置が有する絶縁層に、強誘電性を有しうる材料を用いてもよい。強誘電性を有しうる材料としては、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、HfZrO(Xは0よりも大きい実数とする)などの金属酸化物が挙げられる。また、強誘電性を有しうる材料としては、酸化ハフニウムに元素J1(ここでの元素J1は、ジルコニウム、シリコン、アルミニウム、ガドリニウム、イットリウム、ランタン、ストロンチウムなどから選ばれた一つまたは複数)を添加した材料が挙げられる。ここで、ハフニウムの原子数と元素J1の原子数の比は適宜設定することができ、例えば、ハフニウムの原子数と元素J1の原子数の比を1:1またはその近傍にすればよい。また、強誘電性を有しうる材料としては、酸化ジルコニウムに元素J2(ここでの元素J2は、ハフニウム、シリコン、アルミニウム、ガドリニウム、イットリウム、ランタン、ストロンチウムなどから選ばれた一つまたは複数)を添加した材料、などが挙げられる。また、ジルコニウムの原子数と元素J2の原子数の比は適宜設定することができ、例えば、ジルコニウムの原子数と元素J2の原子数の比を1:1またはその近傍にすればよい。また、強誘電性を有しうる材料として、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム(SBT)、ビスマスフェライト(BFO)、チタン酸バリウム、などのペロブスカイト構造を有する圧電性セラミックスを用いてもよい。
【0170】
また、強誘電性を有しうる材料としては、元素M1と、元素M2と、窒素と、を有する金属窒化物が挙げられる。ここで、元素M1は、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどから選ばれた一つまたは複数である。また、元素M2は、ホウ素、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ユーロピウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロムなどから選ばれた一つまたは複数である。なお、元素M1の原子数と元素M2の原子数の比は適宜設定することができる。また、元素M1と、窒素と、を有する金属酸化物は、元素M2を含まなくても、強誘電性を有する場合がある。また、強誘電性を有しうる材料としては、上記金属窒化物に元素M3が添加された材料が挙げられる。なお、元素M3は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウムなどから選ばれた一つまたは複数である。ここで、元素M1の原子数、元素M2の原子数、及び元素M3の原子数の比は適宜設定することができる。
【0171】
また、強誘電性を有しうる材料としては、SrTaON、BaTaONなどのペロブスカイト型酸窒化物、κアルミナ型構造のGaFeOなどが挙げられる。
【0172】
なお、強誘電性を有しうる材料として上記で説明した記載においては、金属酸化物、及び金属窒化物について例示したがこれに限定されない。例えば、上述の金属酸化物に窒素が添加された金属酸窒化物、または上述の金属窒化物に酸素が添加された金属窒酸化物などを用いてもよい。
【0173】
また、強誘電性を有しうる材料としては、例えば、上記に列挙した材料から選ばれた複数の材料からなる混合物または化合物を用いることができる。または、絶縁層130を、上記に列挙した材料から選ばれた複数の材料からなる積層構造とすることができる。ところで、上記に列挙した材料などは、成膜条件だけでなく、各種プロセスなどによっても結晶構造(特性)が変わり得る可能性があるため、本明細書等では強誘電性を発現する材料のみを強誘電体と呼ぶだけでなく、強誘電性を有しうる材料とも呼んでいる。
【0174】
ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、数nmといった薄膜であっても強誘電性を有しうることができる。また、ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、微小な面積でも強誘電性を有しうることができる。したがって、ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物を用いることで、半導体装置の微細化を図ることができる。
【0175】
なお、本明細書等において、強誘電性を有しうる材料を層状にしたものを指して、強誘電体層と呼ぶ場合がある。また、このような、強誘電体層、金属酸化物膜、または金属窒化物膜を有する装置を、本明細書等において、強誘電体デバイスと呼ぶ場合がある。
【0176】
なお、強誘電性は、外部電場により強誘電体層に含まれる結晶の酸素または窒素が変位することで、発現するとされている。また、強誘電性の発現は、強誘電体層に含まれる結晶の結晶構造に依存すると推定される。よって、絶縁層が強誘電性を発現するには、絶縁層130は結晶を含む必要がある。特に絶縁層は、直方晶系の結晶構造を有する結晶を含むと、強誘電性が発現するため好ましい。なお、絶縁層に含まれる結晶の結晶構造としては、立方晶系、正方晶系、直方晶系、単斜晶系、及び六方晶系の中から選ばれるいずれか一または複数であってもよい。また、絶縁層は、アモルファス構造を有していてもよい。このとき、絶縁層は、アモルファス構造と、結晶構造とを有する複合構造としてもよい。
【0177】
絶縁層250は、トランジスタ200のゲート絶縁層として機能する。絶縁層250として、比誘電率が高い材料を用いることが好ましい。
【0178】
また絶縁層250は、水素を捕獲及び水素を固着する機能を有することが好ましい。これにより、酸化物半導体層230の水素濃度(特に、トランジスタのチャネル形成領域中の水素濃度)を低減できる。よって、チャネル形成領域中のVHを低減し、チャネル形成領域をi型または実質的にi型とすることができる。
【0179】
水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層の材料としては、ハフニウムを含む酸化物、アルミニウムを含む酸化物、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、マグネシウムを含む酸化物等の金属酸化物が挙げられる。また、これらの金属酸化物は、さらにジルコニウムを含んでいてもよく、例えば、ハフニウム及びジルコニウムを含む酸化物等が挙げられる。ここで、アモルファス構造を有する金属酸化物では、一部の酸素原子がダングリングボンドを有するため、水素を捕獲するまたは固着する能力が高い。したがって、これらの金属酸化物は、アモルファス構造を有することが好ましい。例えば、これらの酸化物にシリコンを含むことで、アモルファス構造を実現してもよい。例えば、ハフニウム及びシリコンを含む酸化物(ハフニウムシリケート)を用いることが好ましい。なお、金属酸化物は、一部に結晶領域、及び、結晶粒界の一方または双方を有する場合がある。
【0180】
なお、対応する物質を捕獲するまたは固着する機能は、対応する物質が拡散し難い性質を有するともいえる。よって、対応する物質を捕獲するまたは固着する機能を、バリア性と言い換えることができる。
【0181】
絶縁層250が積層構造である場合、いずれかの層(以降、絶縁層250の第1の絶縁層と呼ぶ)に水素を捕獲及び水素を固着する機能を有する層を用いることが好ましい。また、絶縁層250が2層の積層構造である場合には酸化物半導体層230と接する層として、3層以上の積層構造である場合には、酸化物半導体層230に近い層として水素を捕獲及び水素を固着する機能を有する層を用いることにより、酸化物半導体層230に含まれる水素を、より効果的に捕獲させるまたは固着させることができる。よって、酸化物半導体層230中の水素濃度を低減できる。
【0182】
また、絶縁層250は第1の絶縁層に加えて、第2の絶縁層として、水素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。水素に対するバリア絶縁層の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、窒化シリコン、または窒化酸化シリコン等が挙げられる。
【0183】
絶縁層250は第1の絶縁層として、例えば、ハフニウムシリケートなどを用いるとよい。また、絶縁層250は第1の絶縁層は、アモルファス構造を有することが好ましい。アモルファス構造にすることで、結晶粒界の形成を抑制することができる。結晶粒界の形成が抑制されることで、絶縁層の平坦性を高めることができる。これにより絶縁層の膜厚分布が均一化されて、膜厚が極端に薄い部分を低減することができるため、絶縁層の耐圧を向上させることができる。また、絶縁層上に設ける膜の膜厚分布を均一化することができる。
【0184】
また、絶縁層の結晶粒界の形成を抑制することで、結晶粒界の欠陥準位に起因するリーク電流を低減することができる。よって、絶縁層をリーク電流の少ない絶縁膜として機能させることができる。
【0185】
また、酸化ハフニウムは比誘電率が高い材料であるため、ハフニウムシリケートは、シリコンの含有量によっては、比誘電率が高い材料となる。したがって、ゲート絶縁層として用いる場合、ゲート絶縁層の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0186】
以上より、絶縁層250の第1の絶縁層として、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物を用いることが好ましく、アモルファス構造を有し、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物を用いることがより好ましく、アモルファス構造を有する酸化アルミニウムを用いることがさらに好ましい。
【0187】
また、絶縁層250の第2の絶縁層に、水素に対するバリア絶縁層を用いることで、導電層260に含まれる不純物の、酸化物半導体層230への拡散を抑制できる。窒化シリコンは水素に対するバリア性が高いため、絶縁層250として好適である。ここで第2の絶縁層は、第1の絶縁層の上層であることが好ましい。
【0188】
このような構成にすることで、良好な電気特性を有する半導体装置を提供できる。また、信頼性が高い半導体装置を提供できる。また、トランジスタの電気特性のばらつきが少ない半導体装置を提供できる。また、オン電流が大きい半導体装置を提供できる。
【0189】
さらに、絶縁層250は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどの、熱に対し安定な構造の絶縁層を有していてもよい。
【0190】
また、絶縁層250は酸化物半導体層230に酸素を供給できる層を有することが好ましい。酸素を供給できる層として酸化物を用いることができる。絶縁層250が酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを有することにより、絶縁層250から酸化物半導体層230へ酸素を好適に供給することができる。
【0191】
また、絶縁層250は、一対の、水素を捕獲及び水素を固着する機能を有する絶縁層の間に、熱に対し安定な構造の絶縁層を有していてもよい。
【0192】
また、絶縁層250は、酸素に対するバリア絶縁層を有することが好ましい。これにより、導電層240及び導電層260などの酸化を抑制できる。絶縁層250が積層構造である場合、導電層240と接する層、及び、導電層260と接する層が、それぞれ、酸素に対するバリア絶縁層であることが好ましい。
【0193】
絶縁層250における導電層240と接する層は、少なくとも絶縁層280よりも酸素を透過しにくいことが好ましい。当該層が酸素に対するバリア性を有することで、導電層240の側面が酸化され、当該側面に酸化膜が形成されることを抑制できる。これにより、トランジスタ200のオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を起こすことを抑制できる。
【0194】
例えば、前述の第2の絶縁層に、水素及び酸素に対するバリア絶縁層を用いることで、導電層260の酸化を抑制できる。また、酸化物半導体層230に含まれる酸素が導電層260に拡散し、酸化物半導体層230に酸素欠損が形成されることを抑制できる。
【0195】
酸素に対するバリア絶縁層としては、例えば、ハフニウムを含む酸化物、アルミニウムを含む酸化物、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、ガリウム亜鉛酸化物、窒化シリコン、及び窒化酸化シリコンが挙げられる。また、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物として、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、並びに、ハフニウム及びシリコンを含む酸化物(ハフニウムシリケート)が挙げられる。
【0196】
ハフニウム及びシリコンを含む酸化物(ハフニウムシリケート)は、酸素に対するバリア絶縁層として機能することに加えて、先に述べたように、アモルファス構造を実現しやすく水素を捕獲するまたは固着する機能をも合わせ持つ、優れた絶縁層である。
【0197】
また、窒化シリコンは、酸素に対するバリア絶縁層として機能することに加えて、先に述べたように、水素に対する高いバリア性をも合わせ持つ、優れた絶縁層である。
【0198】
絶縁層250として、酸化物半導体層230側から、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する第1の絶縁層、水素及び酸素に対するバリア性を有する第2の絶縁層の順で積層された2層構造を用いることが好ましい。
【0199】
一例として、第1の絶縁層として、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物を用いることができ、第2の絶縁層として、窒化シリコンを用いることができる。
【0200】
また、絶縁層250として、酸化物半導体層230側から、比誘電率が相対的に低い材料を有する第3の絶縁層、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する第1の絶縁層、水素及び酸素に対するバリア性を有する第2の絶縁層の順で積層された3層構造を用いることが好ましい。第3の絶縁層が有する比誘電率が相対的に低い材料とは例えば、積層構造において、他の層のいずれか一以上より比誘電率が低い材料を指す。ここで第3の絶縁層として、酸化シリコン、または酸化窒化シリコンを用いることができる。第3の絶縁層は、酸化物半導体層230と接する層である。第3の絶縁層に酸化物を用いることで、酸化物半導体層230に酸素を供給することができる。また、第2の絶縁層を設けることで、第3の絶縁層に含まれる酸素が導電層260に拡散することを抑制し、導電層260の酸化を抑制できる。また、第3の絶縁層から酸化物半導体層230に供給される酸素量が減少することを抑制できる。
【0201】
一例として、第3の絶縁層として酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを用いることができ、第1の絶縁層として、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物を用いることができ、第2の絶縁層として、窒化シリコンを用いることができる。
【0202】
また絶縁層250として、酸化物半導体層230側から、酸素に対するバリア性を有する第4の絶縁層、比誘電率が相対的に低い材料を有する第3の絶縁層、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する第1の絶縁層、水素及び酸素に対するバリア性を有する第2の絶縁層の順で積層された4層構造を用いることが好ましい。第1の絶縁層乃至第3の絶縁層については、前述の3層構造に用いる層と同様の構成を適用できる。第4の絶縁層は、酸化物半導体層230と接する層である。第4の絶縁層が、酸素に対するバリア性を有することで、酸化物半導体層230から酸素が脱離することを抑制できる。第4の絶縁層として、例えば、酸化アルミニウムを用いるとよい。酸化アルミニウムは、水素を捕獲するまたは固着する機能を有するため、酸化物半導体層230と接する第4の絶縁層として好適である。
【0203】
一例として、第4の絶縁層として酸化アルミニウムを用いることができ、第3の絶縁層として酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを用いることができ、第1の絶縁層として、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方を含む酸化物を用いることができ、第2の絶縁層として、窒化シリコンを用いることができる。
【0204】
絶縁層250において特に、酸化物半導体層230のチャネル形成領域と重畳する領域の膜厚は、0.1nm以上30nm以下が好ましく、0.1nm以上20nm以下が好ましく、0.1nm以上10nm以下が好ましく、0.1nm以上8.0nm以下がより好ましく、0.5nm以上7.0nm以下がより好ましい。
【0205】
トランジスタの微細化を図るにあたって、絶縁層250を構成する各層の膜厚は薄いことが好ましい。絶縁層250を構成する各層の膜厚は例えば、0.1nm以上10nm以下、あるいは0.1nm以上5nm以下、あるいは0.5nm以上5nm以下、あるいは1nm以上5nm未満、あるいは1nm以上3nm以下である。なお、絶縁層250を構成する各層は、少なくとも一部において、上記のような膜厚の領域を有していればよい。
【0206】
代表的には、第4の絶縁層、第3の絶縁層、第1の絶縁層、及び、第2の絶縁層の膜厚をそれぞれ、1nm、2nm、2nm、及び1nmとする。このような構成にすることで、トランジスタを微細化または高集積化しても良好な電気特性を有することができる。
【0207】
絶縁層210は層間膜として機能するため、比誘電率が低いことが好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜に用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、それぞれ、熱的に安定であるため、絶縁層210として好適である。
【0208】
また、絶縁層210中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域への、水、水素などの不純物の混入を抑制できる。
【0209】
また、絶縁層210として、水素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。酸化物半導体層230の外側に設けられる絶縁層210が水素に対するバリア性を有することで、酸化物半導体層230中への水素の拡散を抑制できる。
【0210】
水素に対するバリア絶縁層の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、窒化シリコン、または窒化酸化シリコン等が挙げられる。
【0211】
例えば、絶縁層210として、窒化シリコン膜を用いることが好ましい。
【0212】
また、絶縁層210を2層積層構造としてもよい。例えば、絶縁層210の上層として、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いることができる。これにより、酸化物半導体層230中の水素が導電層220を介して絶縁層210の上層に拡散し、当該水素を捕獲させるまたは固着させることができる。したがって、酸化物半導体層230中の水素濃度を低減できる。
【0213】
例えば、絶縁層210の下層として、窒化シリコン膜を用い、上層として、ハフニウム及びシリコンを含む酸化物膜(ハフニウムシリケート膜)を用いることが好ましい。
【0214】
絶縁層283及び絶縁層285の一以上には、水素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。これにより、絶縁層283の上方から酸化物半導体層230に水素が拡散することを抑制できる。窒化シリコン膜、及び窒化酸化シリコン膜は、それぞれ、自身からの不純物(例えば、水及び水素)の放出が少なく、酸素及び水素が透過しにくい特徴を有するため、絶縁層283に好適に用いることができる。
【0215】
絶縁層283及び絶縁層285の一以上としてスパッタリング法で成膜された窒化シリコンを用いることが特に好ましい。スパッタリング法は、成膜ガスに水素を含む分子を用いなくてよいため、絶縁層283の水素濃度を低減できる。また、絶縁層283をスパッタリング法で成膜することで、密度が高い窒化シリコンを形成することができる。
【0216】
また、絶縁層283及び絶縁層285の一以上として、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いてもよい。このような構成にすることで、絶縁層283及び絶縁層285の上方から酸化物半導体層230に水素が拡散することを抑制し、さらに酸化物半導体層230に含まれる水素を、捕獲させるまたは固着させることができる。したがって、酸化物半導体層230の水素濃度を低減できる。絶縁層283及び絶縁層285の一以上としては、ハフニウムシリケートなどを用いることができる。
【0217】
また、絶縁層283として、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層と、水素に対するバリア絶縁層との積層構造としてもよい。例えば、絶縁層283として、酸化アルミニウムと、当該酸化アルミニウム上の窒化シリコンの積層膜を用いてもよい。
【0218】
また、半導体装置において、絶縁層283と絶縁層285のいずれか一方を有さない構成とすることもできる。
【0219】
また絶縁層285として例えば、比誘電率が低い材料を用いることができる。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。
【0220】
また、絶縁層285中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域に、水、水素などの不純物が混入することを抑制できる。
【0221】
絶縁層280は、前述の、水素に対するバリア絶縁層を有することが好ましい。絶縁層280は、酸化物半導体層230を囲むように設けられている。酸化物半導体層230の外側に設けられる絶縁層280が水素に対するバリア性を有することで、酸化物半導体層230中への水素の拡散を抑制できる。例えば、絶縁層280は、窒化シリコン膜を有することが好ましい。
【0222】
なお、窒化シリコンは、酸素に対するバリア性も有する。したがって、絶縁層280に窒化シリコンを用いることで、酸化物半導体層230から酸素が引き抜かれ、酸化物半導体層230に過剰な量の酸素欠損が形成されることを抑制できる。
【0223】
また、絶縁層280に窒化シリコンを用いることで、過剰な酸素が酸化物半導体層230に供給されることを防ぐことができる。よって、酸化物半導体層230のチャネル形成領域が酸素過剰になることを防ぐことができるため、トランジスタ200の信頼性向上を図ることができる。
【0224】
また、絶縁層280は、それぞれ前述した、酸化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、または、過剰酸素を含む領域を有する絶縁層を有することが好ましい。
【0225】
例えば、過剰酸素を含む領域を有する絶縁層は、酸素を含む雰囲気で、スパッタリング法で成膜することで形成することができる。また、成膜ガスに水素を含む分子を用いなくてもよいスパッタリング法を用いることで、絶縁層280中の水素濃度を低減できる。このように、絶縁層280を構成する少なくとも一部の層を成膜することで、絶縁層280から酸化物半導体層230のチャネル形成領域に酸素を供給し、酸素欠損及びVoHの低減を図ることができる。
【0226】
また、絶縁層280中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。これにより、酸化物半導体層230のチャネル形成領域への、水、水素などの不純物の混入を抑制できる。
【0227】
なお、導電層220上の絶縁層280の膜厚が、トランジスタ200のチャネル長に対応するため、トランジスタ200のチャネル長の設計値に合わせて、絶縁層280の膜厚を適宜設定する。
【0228】
絶縁層280は例えば、絶縁層280aと、絶縁層280a上の絶縁層280bと、絶縁層280b上の絶縁層280cとの積層構造とすることが好ましい。
【0229】
絶縁層280bは、酸化物半導体層230のチャネル形成領域と接する層である。絶縁層280bに酸素を含む絶縁層を用いることで、酸化物半導体層230に酸素を供給することができる。
【0230】
絶縁層280bは、絶縁層280a及び絶縁層280cの少なくとも一つと比べて、酸素の含有量が多い領域を有することが好ましい。特に、絶縁層280bは、絶縁層280a及び絶縁層280cのそれぞれと比べて、酸素の含有量が多い領域を有することが好ましい。絶縁層280bの酸素の含有量を多くすることにより、絶縁層280b近傍の酸化物半導体層230に、i型の領域を形成することが容易となる。
【0231】
絶縁層280bには、加熱により酸素を放出する膜を用いるとより好ましい。トランジスタ200の作製工程中にかかる熱により、絶縁層280bが酸素を放出することで、酸化物半導体層230に酸素を供給することができる。絶縁層280bから酸化物半導体層230、特に酸化物半導体層230のチャネル形成領域に酸素を供給することで、酸化物半導体層230中の酸素欠損及びVHの低減を図ることができ、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0232】
また、OSトランジスタの電気特性及び信頼性を良好にするには、酸化物半導体中の水素濃度を十分に低減した上で、酸化物半導体に供給する酸素量を最適化することが重要となる。
【0233】
一例として、絶縁層280bの酸素分子の放出量は、1.0×1014molecules/cm以上、1.0×1015molecules/cm未満であることが好ましい。なお、酸素分子の放出量は、昇温脱離ガス分析法によって測定することができる。
【0234】
特に、トランジスタ200のチャネル長が小さい場合、チャネル形成領域の酸素欠損及びVHの電気特性及び信頼性への影響が特に大きくなる。したがって、酸化物半導体層230中の水素濃度を十分に低減した上で、酸化物半導体層230に供給する酸素量を最適化することで、良好な電気特性及び高い信頼性を有するチャネル長の小さいトランジスタを実現できる。
【0235】
絶縁層280bは、スパッタリング法、またはPECVD法などの成膜方法で形成することが好ましい。特に、スパッタリング法を用いると、成膜ガスに水素ガスを用いなくてよいため、水素の含有量の極めて少ない膜とすることができる。そのため、酸化物半導体層230に水素が供給されることを抑制し、トランジスタ200の電気特性の安定化を図ることができる。
【0236】
酸化物半導体層230に供給する酸素量を多くする場合、例えば、絶縁層280bを形成した後に、酸素を含む雰囲気下における加熱処理、または、酸素を含む雰囲気下におけるプラズマ処理を行うとよい。また、絶縁層280bの上面に、スパッタリング法により、酸素雰囲気下で酸化物膜を成膜することで酸素を供給してもよい。その後、当該酸化物膜を除去してもよい。このような処理を行うことで、絶縁層280bに酸素を供給し、酸化物半導体層230に供給される酸素量を増やすことができる。
【0237】
また、酸化物半導体層230の、絶縁層280aに接する領域、及び絶縁層280cに接する領域は、絶縁層280bに接する領域と比較して、供給される酸素の量が少ない。よって、酸化物半導体層230の、絶縁層280aに接する領域、及び絶縁層280cに接する領域は、低抵抗化する場合がある。つまり、絶縁層280aの膜厚を調整することで、ソース領域及びドレイン領域の一方として機能する領域の範囲を制御できる。同様に、絶縁層280cの膜厚を調整することで、ソース領域及びドレイン領域の他方として機能する領域の範囲を制御できる。このように、絶縁層280a及び絶縁層280cの膜厚は、トランジスタに求める特性に合わせて、適宜設定できる。
【0238】
また、絶縁層280bには、比誘電率が低い材料を用いることが好ましい。これにより、配線間に生じる寄生容量を低減できる。絶縁層280bとして、例えば、酸化シリコン、または酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0239】
絶縁層280a及び絶縁層280cには、それぞれ、酸素に対するバリア絶縁層を用いることが好ましい。絶縁層280bと導電層220との間に絶縁層280aを設けることにより、導電層220が酸化され、導電層220の抵抗が高くなることを抑制できる。また、絶縁層280bと導電層240との間に絶縁層280cを設けることにより、導電層240が酸化され、導電層240の抵抗が高くなることを抑制できる。
【0240】
また、絶縁層280aとして、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いてもよい。このような構成にすることで、絶縁層280aの下方から酸化物半導体層230に水素が拡散することを抑制し、さらに酸化物半導体層230に含まれる水素を捕獲させるまたは固着させることができる。よって、酸化物半導体層230の水素濃度を低減できる。絶縁層280aとしては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、またはハフニウム及びシリコンを含む酸化物などを用いることができる。また、例えば、絶縁層280aとして、酸化アルミニウムと、当該酸化アルミニウム上の窒化シリコンの積層膜を用いてもよい。同様に、絶縁層280cとして、水素を捕獲するまたは固着する機能を有する絶縁層を用いてもよい。
【0241】
一例として、絶縁層280a及び絶縁層280cに窒化シリコンを用い、絶縁層280bに酸化シリコンを用いることができる。
【0242】
[導電層]
半導体装置が有する導電層(導電層220、導電層240、導電層260など)には、それぞれ、タングステン、銅、アルミニウム、クロム、銀、金、白金、亜鉛、タンタル、ニッケル、チタン、鉄、コバルト、モリブデン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または前述した金属元素を成分とする合金か、前述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。前述した金属元素を成分とする合金として、当該合金の窒化物、または当該合金の酸化物を用いてもよい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ルテニウム、モリブデンを含む窒化物、タングステンとチタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0243】
また、タンタルを含む窒化物、チタンを含む窒化物、モリブデンを含む窒化物、タングステンを含む窒化物、ルテニウムを含む窒化物、タンタル及びアルミニウムを含む窒化物、またはチタン及びアルミニウムを含む窒化物などの窒素を含む導電性材料、酸化ルテニウム、ストロンチウム及びルテニウムを含む酸化物、またはランタン及びニッケルを含む酸化物などの酸素を含む導電性材料、チタン、タンタル、またはルテニウムなどの金属元素を含む材料は、酸化されにくい導電性材料、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。なお、酸素を含む導電性材料として、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITOともいう)、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、シリコンを添加したインジウムスズ酸化物(ITSOともいう)、インジウム亜鉛酸化物(IZO(登録商標)ともいう)、及び、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物などが挙げられる。本明細書等では、酸素を含む導電性材料を用いて成膜される導電膜を、酸化物導電膜と呼ぶことがある。
【0244】
タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料は、導電性が高いため、好ましい。
【0245】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0246】
なお、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電層には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から脱離した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0247】
導電層260には、前述した金属元素、または前述した金属元素を成分とする合金か、前述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることができる。例えばタングステンなど、導電性が高い材料を用いることが好ましい。また、導電層260として、酸化されにくい導電性材料、または、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料などを用いることが好ましい。当該導電性材料としては、前述の通り、窒素を含む導電性材料、及び酸素を含む導電性材料などが挙げられる。これにより、導電層260の導電率が低下することを抑制できる。
【0248】
また、導電層260には、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素及び酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、インジウムスズ酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、及び、シリコンを添加したインジウムスズ酸化物のうち一つまたは複数を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁層などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0249】
導電層260は例えば、3nm以上500nm以下とすればよい。導電層260の厚さは例えば、絶縁層250の厚さ以上とすればよい。導電層260を厚くすることにより、導電層260の抵抗を低くすることができる。
【0250】
また、導電層260として導電層260aと、導電層260a上の導電層260bと、の2層構造を用いることが好ましい。
【0251】
導電層260aとして酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることにより例えば、酸化物半導体層230からの酸素の放出を抑制し、酸化物半導体層230の酸素欠損の形成を抑制することができる。
【0252】
また、導電層260aとして酸化されにくい導電性材料を用いることにより例えば、酸化物半導体層230からの酸素の放出、あるいは絶縁層250からの酸素の放出によって導電層260aが酸化して導電性が低下することを抑制することができる。
【0253】
導電層260bに用いる材料は例えば、導電層260aに用いる材料よりも導電性が高いことが好ましい。また、導電層260bを厚くすることにより、導電層260bに流れる電流をさらに高めることができる。
【0254】
導電層260aとして、被覆性の高い成膜方法を用いることにより、導電層260aを開口部290の側壁に沿って、好適に形成することができる。
【0255】
導電層260aとして例えば、窒素を含む導電性材料、酸素を含む導電性材料、等を用いることができる。また、導電層260aとして例えば、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素及び酸素を含む導電性材料を用いることができる。
【0256】
導電層260aとして例えば、前述した金属元素と、窒素とを含む導電性材料を用いることができ、例えば、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ルテニウム、モリブデンを含む窒化物、タングステンとチタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、等を用いることができる。
【0257】
また導電層260aとして例えば、前述した金属元素と、酸素とを含む導電性材料を用いることができ、例えば、酸化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物等を用いることができる。
【0258】
また、インジウムスズ酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、及び、シリコンを添加したインジウムスズ酸化物のうち一つまたは複数を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。
【0259】
また、導電層260aとして、チタン、タンタル、ルテニウム、及びこれらの金属元素から選ばれる一以上を含む材料は、酸化されにくい導電性材料、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0260】
導電層260bとして例えば、前述した金属元素、または前述した金属元素を成分とする合金か、前述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることができる。例えば、タングステンを用いることができる。
【0261】
また、導電層260aがさらに積層構造を有してもよい。また、導電層260bがさらに積層構造を有してもよい。導電層260aを積層構造とする場合には例えば、導電層260aとして用いることのできる材料を複数、積層すればよい。あるいは、本発明の一態様の導電層として用いることのできる材料から選ばれる複数を積層してもよい。導電層260bを積層構造とする場合には例えば、導電層260bとして用いることのできる材料を複数、積層すればよい。あるいは、本発明の一態様の導電層として用いることのできる材料から選ばれる複数を積層してもよい。
【0262】
導電層220及び導電層240は、それぞれ、酸化物半導体層230と接する導電層であるため、それぞれ、酸化されにくい導電性材料、酸化されても電気抵抗が低く保たれる導電性材料、酸化物導電性材料、または、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。当該導電性材料として、例えば、窒素を含む導電性材料、及び酸素を含む導電性材料が挙げられる。これにより、導電層220及び導電層240の導電率が低下することを抑制できる。
【0263】
導電層220または導電層240として酸素を含む導電性材料を用いることで、導電層220または導電層240が酸素を吸収しても導電性を維持することができる。また、絶縁層210として酸化ハフニウムなどの酸素を含む絶縁層を用いる場合においても、導電層220は導電性を維持できるため好適である。導電層220及び導電層240のそれぞれとして、例えば、ITO、ITSO、IZO(登録商標)などを用いることが好ましい。
【0264】
導電層220を絶縁層210上に順に第1の導電層(例えば導電層220a)、第2の導電層(例えば導電層220b)、及び第3の導電層(例えば導電層220c)の3層構造とする場合には例えば、第1の導電層として、酸化されにくい導電性材料、または酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用い、第2の導電層として、導電性が高い材料を用い、第3の導電層として、酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、第1の導電層として窒化チタンを用い、第2の導電層としてタングステンを用い、第3の導電層としてITOまたはITSOを用いることが好ましい。この場合、窒化チタンが絶縁層210に接し、ITOまたはITSOが酸化物半導体層230に接する。このような構造にすることで、導電層220が酸化物半導体層230と接していても、導電性を維持することができる。また、絶縁層210に酸化物絶縁層を用いる場合、絶縁層210によって導電層220が過剰に酸化されることを抑制できる。また、第2の導電層として、導電性の高いタングステンを用いることで、導電層220の導電性を高めることができる。
【0265】
また導電層240を2層の積層構造(例えば導電層240aと導電層240b)とする場合には例えば、下層は上層よりも導電性が高い材料を用い、上層として、酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、下層として、ルテニウム、タングステン、窒化チタン、または、窒化タンタルを用い、上層として、ITOまたはITSOを用いることが好ましい。この場合、ITOまたはITSOが酸化物半導体層230に接する。このような構造にすることで、導電層240が酸化物半導体層230と接していても、導電性を維持することができる。また、下層として、上層よりも導電性の高い材料を用いることで、導電層240の導電性を高めることができる。
【0266】
なお、導電層240を2層の積層構造とする場合において、上層(例えば導電層240b)に導電性が高い材料、下層(例えば導電層240a)に酸素を含む導電性材料をそれぞれ用いてもよい。このような場合には例えば、導電層240aの上面に酸化物半導体層230が接する構成とすることにより、導電層240と酸化物半導体層230との接触抵抗を低くすることができる。
【0267】
[酸化物半導体層230]
前述の通り、酸化物半導体層230は、チャネル形成領域を有する。当該チャネル形成領域は、i型(真性)または実質的にi型である。酸化物半導体層230は、さらに、ソース領域及びドレイン領域を有する。当該ソース領域及び当該ドレイン領域は、チャネル形成領域と比較してキャリア濃度が高い、n型の領域(低抵抗領域)である。
【0268】
酸化物半導体層230に用いる半導体材料の結晶性は特に限定されず、非晶質半導体、単結晶半導体、または単結晶以外の結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。単結晶半導体または結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0269】
半導体として機能する金属酸化物のバンドギャップは、2.0eV以上が好ましく、2.5eV以上がより好ましい。バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減できる。OSトランジスタは、オフ電流が小さいため、半導体装置の消費電力を十分に低減できる。また、OSトランジスタの周波数特性が高いため、半導体装置を高速に動作させることができる。
【0270】
OSトランジスタのオフ電流は、チャネル幅1μmあたり100zA以下(z:ゼプト、10-21)、50zA以下、10zA以下、1zA以下、100yA以下(y:ヨクト、10-24)、または10yA以下とすることができる。本発明の一態様の半導体装置に適用するOSトランジスタのオフ電流は例えば、トランジスタあたり50zA以下、10zA以下、1zA以下、100yA以下、または10yA以下であることが好ましい。
【0271】
オフ電流の温度依存性は、複数の温度におけるオフ電流を測定し、アレニウスプロットを用いて外挿して求めることができる。本発明の一態様の半導体装置に適用するOSトランジスタのオフ電流は110℃において、1aA(a:アト、10-18)以下であることが好ましく、100zA以下であることがさらに好ましく、10zA以下であることがさらに好ましい。また27℃において、1zA以下であることが好ましく、100yA以下であることがさらに好ましく、10yA以下であることがさらに好ましい。
【0272】
酸化物半導体層230に用いることができる金属酸化物として、例えば、インジウム酸化物、ガリウム酸化物、及び亜鉛酸化物が挙げられる。金属酸化物は、少なくともインジウム(In)または亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、金属酸化物は、インジウムと、元素Mと、亜鉛と、の中から選ばれる二または三を有することが好ましい。なお、元素Mは、酸素との結合エネルギーが高い金属元素または半金属元素であり、例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い金属元素または半金属元素である。元素Mとして、具体的には、アルミニウム、ガリウム、スズ、イットリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、ランタン、セリウム、ネオジム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、及びアンチモンなどが挙げられる。金属酸化物が有する元素Mは、上記元素のいずれか一種または複数種であることが好ましく、アルミニウム、ガリウム、スズ、及びイットリウムから選ばれた一種または複数種であることがより好ましく、ガリウムがさらに好ましい。なお、本明細書等において、金属元素と半金属元素をまとめて「金属元素」と呼ぶことがあり、本明細書等に記載の「金属元素」には半金属元素が含まれることがある。
【0273】
酸化物半導体層230は、例えば、インジウム酸化物(In酸化物)、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物、IZO(登録商標)とも記す)、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物)、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムガリウム酸化物(In-Ga酸化物)、インジウムガリウムアルミニウム酸化物(In-Ga-Al酸化物)、インジウムガリウムスズ酸化物(In-Ga-Sn酸化物、IGTOとも記す)、ガリウム亜鉛酸化物(Ga-Zn酸化物、GZOとも記す)、アルミニウム亜鉛酸化物(Al-Zn酸化物、AZOとも記す)、インジウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Al-Zn酸化物、IAZOとも記す)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物、ITZO(登録商標)とも記す)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn酸化物、IGZOとも記す)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物、IGZTOとも記す)、インジウムガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Ga-Al-Zn酸化物、IGAZO、IGZAO、またはIAGZOとも記す)などを用いることができる。または、シリコンを含むインジウムスズ酸化物、ガリウムスズ酸化物(Ga-Sn酸化物)、アルミニウムスズ酸化物(Al-Sn酸化物)などを用いることができる。又は、アモルファス構造を有する上記酸化物を用いることができる。例えば、アモルファス構造を有するインジウム酸化物、又はアモルファス構造を有するインジウムスズ酸化物等を用いることができる。
【0274】
金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を高くすることにより、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる。また、オン電流の大きいトランジスタを実現できる。
【0275】
なお、金属酸化物は、インジウムに代えて、または、インジウムに加えて、元素周期表における周期番号が大きい金属元素の一種または複数種を有してもよい。金属元素の軌道の重なりが大きいほど、金属酸化物におけるキャリア伝導は大きくなる傾向がある。よって、元素周期表における周期番号が大きい金属元素を含むことで、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。元素周期表における周期番号が大きい金属元素として、第5周期に属する金属元素、及び第6周期に属する金属元素などが挙げられる。当該金属元素として、具体的には、イットリウム、ジルコニウム、銀、カドミウム、スズ、アンチモン、バリウム、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムなどが挙げられる。なお、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムは、軽希土類元素と呼ばれる。
【0276】
また、金属酸化物は、非金属元素の一種または複数種を有してもよい。金属酸化物が非金属元素を有することで、キャリア濃度の増加、またはバンドギャップの縮小などが生じ、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。非金属元素として、例えば、炭素、窒素、リン、硫黄、セレン、フッ素、塩素、臭素、及び水素などが挙げられる。
【0277】
また、金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対する亜鉛の原子数の割合を高くすることにより、結晶性の高い金属酸化物となり、金属酸化物中の不純物の拡散を抑制できる。したがって、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0278】
また、金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対する元素Mの原子数の割合を高くすることにより、バンドギャップが大きい金属酸化物とすることができる。また、金属酸化物に酸素欠損が形成されることを抑制できる。したがって、酸素欠損に起因するキャリア生成が抑制され、オフ電流の小さいトランジスタとすることができる。また、トランジスタのしきい値電圧がシフトすることを抑制できる。また、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0279】
酸化物半導体層230に適用する金属酸化物の組成により、トランジスタの電気特性、及び信頼性が異なる。したがって、トランジスタに求められる電気特性、及び信頼性に応じて金属酸化物の組成を異ならせることにより、優れた電気特性と高い信頼性を両立した半導体装置とすることができる。
【0280】
金属酸化物がIn-M-Zn酸化物の場合、当該In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比はMの原子数比以上であることが好ましい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:M:Zn=1:1:0.5、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=1:1:2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:1、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5、及び、これらの近傍の組成が挙げられる。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。金属酸化物中のインジウムの原子数比を大きくすることで、トランジスタのオン電流、または電界効果移動度などを高めることができる。
【0281】
金属酸化物としてIn:M:Zn=1:1:1[原子数比]またはその近傍の組成を用いることにより、トランジスタをノーマリーオフとすることもできる。また、金属酸化物をスパッタリング法を用いて成膜する場合には、成膜される金属酸化物において、亜鉛が減少する場合がある。よって例えば、ターゲットの組成をIn:M:Zn=1:1:1.2[原子数比]またはその近傍とすることが好ましい。一方でALD法を用いて成膜する場合には、成膜される金属酸化物において、Inが減少する場合がある。
【0282】
また、In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比はMの原子数比未満であってもよい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:3、In:M:Zn=1:3:4、及びこれらの近傍の組成が挙げられる。金属酸化物中のMの原子数の割合を大きくすることで、酸素欠損の生成を抑制することができる。
【0283】
なお、元素Mとして複数の金属元素を有する場合は、当該金属元素の原子数の割合の合計を、元素Mの原子数の割合とすることができる。
【0284】
本明細書等において、含有される全ての金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を、インジウムの含有率と記す場合がある。他の金属元素においても同様である。
【0285】
また、金属酸化物がIn-Zn酸化物の場合、当該In-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:Zn=1:1、In:Zn=2:1、In:Zn=4:1、及びこれらの近傍の組成が挙げられる。また、In-Zn酸化物に、微量の元素Mを含んでいてもよい。例えば、元素MとしてSnを含む場合、当該金属酸化物の金属元素の原子数比として、例えば、In:Sn:Zn=2:0.1:1、In:Sn:Zn=4:0.1:1、及びこれらの近傍の組成が挙げられる。
【0286】
酸化物半導体層230に用いる金属酸化物の組成の分析には、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectrometry)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)、または誘導結合高周波プラズマ発光分光法(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いることができる。または、これらの手法を複数組み合わせて分析を行ってもよい。なお、含有率が低い元素は、分析精度の影響により、実際の含有率と分析によって得られる含有率が異なる場合がある。例えば、元素Mの含有率が低い場合、分析によって得られる元素Mの含有率が、実際の含有率より低くなる場合がある。また、元素Mの定量が困難となる場合、または元素Mが検出されない場合がある。
【0287】
金属酸化物の形成には、スパッタリング法、またはALD法を好適に用いることができる。なお、金属酸化物をスパッタリング法で形成する場合、成膜後の金属酸化物の組成はターゲットの組成と異なる場合がある。特に亜鉛は、成膜後の金属酸化物における含有率が、ターゲットと比較して50%程度にまで減少する場合がある。また、金属酸化物の成膜には、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE)法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法などを用いてもよい。
【0288】
酸化物半導体層230は、2以上の金属酸化物層を有する積層構造としてもよい。酸化物半導体層230が有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに同じ、または概略同じであってもよい。組成が同じ金属酸化物層の積層構造とすることで、例えば、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを削減できる。
【0289】
酸化物半導体層230が有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに異なってもよい。
【0290】
酸化物半導体層230は例えば、2層構造とすることができる。以下、第1層を酸化物層230aと呼称し、第2層を酸化物層230bと呼称する。なおここでは酸化物層230a及び酸化物層230bは図示しない。なお、酸化物層230aは例えば、導電層220、及び開口部290の側壁に近い側の層であり、酸化物層230bは例えば、絶縁層250に近い側の層である。あるいは、酸化物層230a及び酸化物層230bの配置は、これに限定されない。
【0291】
例えば、酸化物層230aには、酸化物層230bより導電率の高い材料を用いることが好ましい。ソース電極及びドレイン電極(導電層220及び導電層240)と接する酸化物層230aに導電率の高い材料を用いることにより、酸化物半導体層230と導電層220との接触抵抗、及び酸化物半導体層230と導電層240との接触抵抗を低くすることができ、オン電流が大きいトランジスタとすることができる。
【0292】
ここで、ゲート電極として機能する導電層260側に設けられる酸化物層230bに導電率の高い材料を用いると、トランジスタ200のしきい値電圧がシフトし、ゲート電圧が0V時に流れるドレイン電流(以下、カットオフ電流とも記す)が大きくなってしまう場合がある。具体的には、トランジスタ200がnチャネル型のトランジスタである場合に、しきい値電圧が低くなってしまうことがある。したがって、酸化物層230bには、酸化物層230aよりも導電率の低い材料を用いることが好ましい。これにより、トランジスタ200がnチャネル型のトランジスタである場合は、しきい値電圧を高くすることができ、カットオフ電流が小さいトランジスタとすることができる。なお、カットオフ電流が小さいことをノーマリーオフと記す場合がある。
【0293】
以上のように、酸化物半導体層230を積層構造とし、酸化物層230aには、酸化物層230bよりも導電率の高い材料を用いることにより、ノーマリーオフ、かつオン電流が大きいトランジスタとすることができる。したがって、低い消費電力と高い性能が両立した半導体装置とすることができる。
【0294】
また、酸化物層230aのキャリア濃度は、酸化物層230bのキャリア濃度より高いことが好ましい。酸化物層230aのキャリア濃度を高くすることにより導電率が高くなり、酸化物半導体層230と導電層220との接触抵抗、及び酸化物半導体層230と導電層240との接触抵抗を低くすることができ、オン電流が大きいトランジスタとすることができる。また、酸化物層230bのキャリア濃度を低くすることにより導電率が低くなり、ノーマリーオフのトランジスタとすることができる。
【0295】
なお、酸化物半導体層230は、前述の構成に限られず、酸化物層230aには、酸化物層230bより導電率の低い材料を用いてもよい。また、酸化物層230aのキャリア濃度は、酸化物層230bのキャリア濃度より低くてもよい。
【0296】
また、酸化物層230aに用いる第1の金属酸化物のバンドギャップは、酸化物層230bに用いる第2の金属酸化物のバンドギャップと異なることが好ましい。例えば、第1の金属酸化物のバンドギャップと第2の金属酸化物のバンドギャップの差は、0.1eV以上が好ましく、0.2eV以上がより好ましく、0.3eV以上がさらに好ましい。
【0297】
酸化物層230aに用いる第1の金属酸化物のバンドギャップは、酸化物層230bに用いる第2の金属酸化物のバンドギャップより小さいことが好ましい。これにより、酸化物半導体層230と導電層220との接触抵抗、及び酸化物半導体層230と導電層240との接触抵抗を低くすることができ、オン電流が大きいトランジスタとすることができる。また、トランジスタ200がnチャネル型のトランジスタである場合はしきい値電圧を高くすることができ、ノーマリーオフのトランジスタとすることができる。また、第2の金属酸化物のバンドギャップが大きいことで、酸化物層230b中、及び、酸化物層230bと絶縁層250との界面に、キャリアが生成及び誘起されることを抑制できる。これにより、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0298】
例えば、第1の金属酸化物の元素Mの含有率は、第2の金属酸化物の元素Mの含有率より低いことが好ましい。より具体的には、例えば、酸化物層230aとして、In:M:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用い、酸化物層230bとして、In:M:Zn=1:3:2[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。このとき、元素Mとして、ガリウム、アルミニウム、及びスズの一または複数を用いることが特に好ましい。
【0299】
なお、酸化物半導体層230は、前述の構成に限られず、第1の金属酸化物のバンドギャップが、第2の金属酸化物のバンドギャップより大きくてもよい。
【0300】
また、第1の金属酸化物の元素Mの含有率は、第2の金属酸化物の元素Mの含有率より低いことが好ましい。第1の金属酸化物は、元素Mを微量に含む構成、または元素Mを含まない構成としてもよい。例えば、酸化物層230aに用いる第1の金属酸化物をIn-Zn酸化物とし、酸化物層230bに用いる第2の金属酸化物をIn-M-Zn酸化物とすることが好ましい。具体的には、第1の金属酸化物をIn-Zn酸化物とし、第2の金属酸化物をIn-Ga-Zn酸化物とすることができる。
【0301】
例えば、酸化物層230aとして、In:Zn=1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=2:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=4:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=4:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはインジウム酸化物を用いることが好ましい。また、酸化物層230bとして、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはIn:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。これにより、トランジスタ200のオン電流を大きくし、かつ、ばらつきが少なく信頼性の高いトランジスタ構造とすることができる。
【0302】
なお、酸化物半導体層230は、前述の構成に限られず、第1の金属酸化物の元素Mの含有率は、第2の金属酸化物の元素Mの含有率より高くてもよい。
【0303】
あるいは、酸化物層230a及び酸化物層230bのそれぞれにIn:M:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用いることにより、トランジスタをノーマリーオフとすることもできる。
【0304】
酸化物半導体層230に用いる半導体材料の結晶性は特に限定されず、非晶質(アモルファス)半導体(非晶質構造を有する半導体)、単結晶半導体(単結晶構造を有する半導体)、または単結晶以外の結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。単結晶半導体または結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0305】
酸化物半導体層230は、結晶性を有する金属酸化物層を有することが好ましい。結晶性を有する金属酸化物の構造としては、例えば、CAAC(c-axis aligned crystal)構造、多結晶(Poly-crystal)構造、及び、微結晶(nc:nano-crystal)構造が挙げられる。結晶性を有する金属酸化物層を酸化物半導体層230に用いることにより、酸化物半導体層230中の欠陥準位密度を低減でき、信頼性の高い半導体装置を実現できる。なお、CAAC構造とは、複数の微結晶(代表的には、複数のIGZOの微結晶)がc軸配向を有し、かつa-b面においては、上記複数の微結晶が配向せずに連結した結晶構造である。また、高分解能TEM像を用いて、CAAC構造を有するOS膜の断面を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。よって、CAAC構造を有するOS膜は、層状の結晶部を有する構造ともいえる。
【0306】
多結晶構造は、結晶粒界(グレインバウンダリ)を有する。また、多結晶構造の酸化物半導体層を形成したのち熱処理を行うと、結晶部と、結晶部との、間に微小な隙間(ナノクラックあるいはマイクロクラックともいう)または微小な空間(ナノスペースあるいはマイクロスペースともいう)が形成されうる。酸化物半導体層内に微小な隙間または微小な空間が形成されると、酸化物半導体層の電気抵抗が高くなる。これは、微小な隙間または微小な空間の電気抵抗が非常に高く、例えば無限大であることに起因する。微小な隙間または微小な空間を有する酸化物半導体層を、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、酸化物半導体層と、ソース電極及びドレイン電極の一方または双方と、の接触抵抗が高くなる。そのため、トランジスタの初期特性または信頼性に悪影響を与えてしまう。CAAC構造は、多結晶構造よりもa-b面において結晶粒界(グレインバウンダリ)が少ないため信頼性の高い半導体装置を実現できる。
【0307】
酸化物半導体層230に用いる金属酸化物層の結晶性が高いほど、酸化物半導体層230中の欠陥準位密度を低減できる。一方、結晶性の低い金属酸化物層を用いることで、大きな電流を流すことができるトランジスタを実現することができる。
【0308】
金属酸化物層の形成時の基板温度(ステージ温度)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物層を形成することができる。また、形成時に用いる成膜ガス全体に対する酸素ガスの流量の割合(以下、酸素流量比ともいう)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物層を形成することができる。
【0309】
酸化物半導体層230の結晶性は、例えば、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、または電子線回折(ED:Electron Diffraction)により解析できる。または、これらの手法を複数組み合わせて分析を行ってもよい。
【0310】
酸化物半導体層230は、結晶性が異なる2以上の金属酸化物層の積層構造とすることができる。このとき、2以上の金属酸化物層は、互いに異なる組成であってもよく、同じまたは概略同じ組成であってもよい。例えば、第1の金属酸化物層と、当該第1の金属酸化物層上に設けられる第2の金属酸化物層と、の積層構造とし、第2の金属酸化物層は、第1の金属酸化物層より結晶性が高い領域を有する構成とすることができる。または、第2の金属酸化物層は、第1の金属酸化物層より結晶性が低い領域を有する構成とすることができる。なお、第2の金属酸化物層が第1の金属酸化物層よりも結晶性が低い領域を有する場合、第2の金属酸化物層を形成したのち、熱処理(結晶化処理ともいう)を行い、第2の金属酸化物層の結晶性を高めることができる。
【0311】
例えば、酸化物層230aとして、In:M:Zn=1:3:2[原子数比]またはその近傍の組成である金属酸化物、またはIn:M:Zn=1:3:4[原子数比]またはその近傍の組成である金属酸化物を用い、酸化物層230bとして、In:M:Zn=1:1:1[原子数比]またはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。酸化物層230aに、Inに対するZnの割合が大きい金属酸化物を用いると、酸化物層230aの結晶性を高めることができる。さらに、結晶性の高い酸化物層230a上に酸化物層230bを形成することで、酸化物層230bの結晶性を高めることも容易となる。これにより、酸化物半導体層230全体の結晶性を高めることができ、好ましい。このとき、元素Mとして、ガリウム、アルミニウム、またはスズを用いることが特に好ましい。例えば、互いに異なる組成を有する、IGZOを2層積層してもよい。また、例えば、インジウム酸化物、インジウムガリウム酸化物、及びIGZOの中から選ばれるいずれか一と、IAZO、IAGZO、及びITZO(登録商標)の中から選ばれるいずれか一と、の積層構造を用いてもよい。
【0312】
また、酸化物半導体層230は、3層以上の積層構造であってもよい。酸化物半導体層230は、例えば、酸化物層と、当該酸化物層上の酸化物層230aと、酸化物層230a上の酸化物層230bと、を有する3層構造とすることができる。
【0313】
酸化物層230a及び酸化物層230bには、前述の構成を適用できる。酸化物層230aの下に位置する酸化物層には、酸化物層230bに適用可能な構成と同様の構成を用いることができる。以下では、酸化物層230aを挟む一対の酸化物層としてまとめて説明する。
【0314】
例えば、酸化物層230aとして、In:Zn=1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=2:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Zn=4:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Sn:Zn=4:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはインジウム酸化物を用いることが好ましい。また、酸化物層230aを挟む一対の酸化物層には、それぞれ、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物、またはIn:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を用いることが好ましい。
【0315】
酸化物層230aを挟む一対の酸化物層は、それぞれ、酸化物層230aよりもバンドギャップが大きいことが好ましい。これにより、酸化物層230aが、バンドギャップが大きい当該一対の酸化物層に挟持され、酸化物層230aが主に電流経路(チャネル)として機能することとなる。酸化物層230aが当該一対の酸化物層により挟持されることで、酸化物層230aの界面及びその近傍のトラップ準位を少なくすることができる。これにより、チャネルが絶縁層界面から遠ざけられた埋め込みチャネル型のトランジスタを実現でき、電界効果移動度を高くすることができる。また、バックチャネル側に形成されうる界面準位の影響が低減され、トランジスタの光劣化(例えば、光負バイアス劣化)を抑制でき、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0316】
酸化物半導体層230の厚さは、3nm以上200nm以下が好ましく、3nm以上100nm以下が好ましく、さらには5nm以上100nm以下が好ましく、さらには10nm以上100nm以下が好ましく、さらには10nm以上70nm以下が好ましく、さらには15nm以上70nm以下が好ましく、さらには15nm以上50nm以下が好ましく、さらには20nm以上50nm以下が好ましい。また、より微細な半導体装置に用いるトランジスタにおいては、酸化物半導体層230の膜厚は、1nm以上、3nm以上、または5nm以上であって、20nm以下、15nm以下、12nm以下、または10nm以下であることが好ましい。
【0317】
また、酸化物半導体層の成膜時において、スパッタリング法と、ALD法と、の2種の成膜方法を用いることが好ましい。例えば、スパッタリング法を用いて、CAAC構造の第1の酸化物半導体層を形成したのち、ALD法を用いて、CAAC構造よりも結晶性の低い第2の酸化物半導体層を形成すると、第2の酸化物半導体層の原子層が、第1の酸化物半導体層のCAAC構造が有する原子レベルの結晶部の隙間を、埋める、または修復することが期待される。また、ALD法を用いて第2の酸化物半導体層を形成したのち、熱処理(例えば、100℃以上500℃以下、好ましくは200℃以上450℃以下、さらに好ましくは、300℃以上400℃以下)を行うことが好ましい。当該熱処理により、第1の酸化物半導体層のCAAC構造が有する原子レベルの結晶部の隙間を、第2の酸化物半導体層(別言すると、ALD法を用いて形成した各結晶分子)により修復することが期待される。また、上述の2種の成膜方法を用いて形成された酸化物半導体層を、Hybrid OSと呼称してもよい。
【0318】
ここで、酸化物半導体層の結晶性を高める熱処理の概念について、図11(A)、図11(B)、図11(C)、及び図11(D)を用いて説明を行う。なお、図11(A)、図11(B)、図11(C)、及び図11(D)は、CAAC構造を有する酸化物半導体層の断面を説明する概念図である。またそれぞれの図中には、c軸(c-axis)を矢印で示す。
【0319】
図11(A)に示す酸化物半導体層370aは、領域372aと、領域372aの間に位置する領域372bと、を有する。領域372aはCAAC構造(すなわち層状の結晶部を有する構造)の領域に相当し、領域372bは、CAAC構造の間の領域に相当する。CAAC構造は、多結晶構造よりもa-b面において結晶粒界が少ない。このように、CAAC構造を有する酸化物半導体層370aにおいても、結晶部と、結晶部との間に微小な隙間または微小な空間(図11(A)における、領域372b)が存在しうる場合がある。
【0320】
そこで、酸化物半導体層の結晶性を高めるために、別言すると、図11(A)に示す領域372bを低減させるために、第1の酸化物半導体層として、CAAC構造を有する酸化物半導体層をスパッタリング法にて形成したのち、第2の酸化物半導体層として、CAAC構造よりも結晶性の低い、微結晶構造または非晶質構造の酸化物半導体層をALD法により形成する。
【0321】
より具体的には、図11(B)に示すように、第1の酸化物半導体層として、領域372aを有する酸化物半導体層をスパッタリング法により形成したのち、第2の酸化物半導体層として、CAAC構造よりも結晶性の低い領域372cを有する酸化物半導体層をALD法により形成する。なお、図11(B)においては、酸化物半導体層370bは、領域372aと、領域372cと、を有する。ALD法は一層ずつ原子を堆積することができるため、領域372bを埋めるように第2の酸化物半導体層を形成することができる。
【0322】
その後、熱処理を行うことで第1の酸化物半導体層が有する領域372aを種とし、第2の酸化物半導体層が有する領域372cの結晶性を高める。別言すると、第1の酸化物半導体層が有する領域372aを種とし、第2の酸化物半導体層が有する領域372cを結晶成長させることができる。あるいは、CAAC構造を有する第1の酸化物半導体層の領域372aを核とし、非晶質(アモルファス)構造を有する第2の酸化物半導体層が有する領域372cを結晶成長させることができる。この結晶成長のモデルについては、ヘテロエピタキシーと同等の概念として捉えることができる。なお、図11(C)において、酸化物半導体層370cは、領域372aと、領域372cと、を有する。図11(C)に示す領域372aは、図11(B)に示す領域372aよりも結晶性が高い、または結晶部の密度が高い領域である。熱処理を行うことで、領域372a及び領域372cのいずれか一方または双方の結晶性を高めることができる。また、領域372cは例えば、領域372aが有する結晶部と同じ結晶構造である結晶部を有する。あるいは領域372cは例えば、領域372aが有する結晶部と連結する結晶部を有する。
【0323】
また、図11(D)において、酸化物半導体層370dは、領域372aを有する。領域372aは、図11(B)、及び図11(C)に示す領域372aよりも、さらに結晶性が向上し、領域372aと領域372cとの境界がなくなる、または領域372aと領域372cとの境界が確認されなくなった領域である。そのため、酸化物半導体層370dの全体がCAAC構造を有する。図11(D)に示すように、酸化物半導体層370dの全体がCAAC構造を有することで、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。領域372aと領域372cとの境界の有無の確認は例えば、断面TEM、断面STEM、等を用いて行うことができる。
【0324】
なお、第1の酸化物半導体層に微小な隙間または微小な空間を有していた場合においても、第1の酸化物半導体層上に第2の酸化物半導体層を成膜する、あるいは第1の酸化物半導体層上に第2の酸化物半導体層を成膜し、且つ熱処理を行うことで、第1の酸化物半導体層の微小な隙間または微小な空間を埋めることができる。このように第1の酸化物半導体層にCAAC構造の酸化物半導体層を用い、第2の酸化物半導体層に微結晶構造または非晶質構造の酸化物半導体層を用いることで、結晶性が高められた緻密な酸化物半導体層とすることができる。当該結晶性が高められた緻密な酸化物半導体層を、トランジスタのチャネル形成領域に用いると、酸化物半導体層の電気抵抗の増加抑制、またはトランジスタの初期特性(特にオン電流)が向上し、高速駆動に適したトランジスタとすることが期待できる。
【0325】
なお、スパッタリング法と、ALD法と、の双方を用いて酸化物半導体層を形成する場合、ALD法にて形成する酸化物半導体層の膜厚が薄いと、スパッタリング法を用いて形成した酸化物半導体層と、ALD法を用いて形成した酸化物半導体層と、の積層構造ではなく、単層構造の酸化物半導体層とみなすことができる。例えば、ALD法にて形成する酸化物半導体層の厚さが、0nmを超えて3nm以下、好ましくは0nmを超えて2nm以下、さらに好ましくは0nmを超えて1nm以下であるとき、スパッタリング法と、ALD法と、の2種の成膜方法を用いて形成した酸化物半導体層を、単層構造とみなすことができる。このような場合、例えば、断面TEM像、断面STEM像等において、スパッタリング法を用いて形成した酸化物半導体層と、ALD法を用いて形成した酸化物半導体層と、の境界が観察されない。一方で、ALD法にて形成する酸化物半導体層の厚さが3nmを超える場合、スパッタリング法を用いて形成した酸化物半導体層と、ALD法を用いて形成した酸化物半導体層との、積層構造、多層構造、または多重構造とみなせることがある。
【0326】
また、スパッタリング法と、ALD法と、の双方を用いて酸化物半導体層を形成する場合、それぞれ異なる組成とすることが好ましい。代表的には、スパッタリング法を用いて、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を成膜し、次いでALD法を用いて、In:Ga:Zn=4:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物を成膜することができる。上述の組成の酸化物半導体層とすることで、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物により高い信頼性を有し、In:Ga:Zn=4:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物により、高いオン電流または高い電界効果移動度を有する構造とすることができる。なお、In:Ga:Zn=4:0.1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成である金属酸化物の代わりに、In:Ga:Zn=1:0:0[原子数比]、すなわち酸化インジウム、またはInの割合が多い金属酸化物を用いることができる。
【0327】
上述の2種の成膜方法を用いて形成された酸化物半導体層は、CAAC構造が有する結晶部の隙間がALD法により形成された原子層で埋められた構造として捉えることができる。なお、当該構造は、断面SEM、断面STEM、断面TEM、SIMS、EDXなどの分析手法により解析することができる。
【0328】
また、上述の2種の成膜方法を用いて形成されたCAAC構造を有する酸化物半導体層は、1種の成膜方法を用いて形成されたCAAC構造の酸化物半導体層と比較して、膜の比誘電率、膜密度、及び膜の硬度のいずれか一または複数が高くなる場合がある。このように、2種の成膜方法を用いて形成されたCAAC構造を有する酸化物半導体層を、トランジスタのチャネル形成領域に用いることで、優れた特性を有するトランジスタ(例えば、オン電流が大きいトランジスタ、電界効果移動度が高いトランジスタ、S値が小さいトランジスタ、周波数特性(f特とも呼称する)が高いトランジスタ、信頼性の高いトランジスタなど)を実現することができる。
【0329】
酸化物半導体に含まれる水素が金属原子と結合する酸素と反応して水になり、酸化物半導体中に酸素欠損(V)が形成される場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VHと記す)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性(つまり、しきい値電圧がマイナスの値)となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0330】
酸化物半導体層230中のVHをできる限り低減し、酸化物半導体層230を高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を修復することが重要である。VHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。なお、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を修復することを、加酸素化処理と記す場合がある。
【0331】
チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0332】
ここで、金属酸化物(酸化物半導体)中における各不純物の影響について説明する。
【0333】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンまたは炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域における炭素の濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1018atoms/cm以下とする。また、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域におけるシリコンの濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは3×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1018atoms/cm以下とする。
【0334】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。または、酸化物半導体において、窒素が含まれると、トラップ準位が形成される場合がある。この結果、トランジスタの電気特性が不安定となる場合がある。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域における窒素濃度は、1×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、より好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0335】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体のチャネル形成領域における水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域における水素濃度は、1×1020atoms/cm未満、好ましくは5×1019atoms/cm未満、より好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0336】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体のチャネル形成領域中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0337】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0338】
なお、本実施の形態の半導体装置には、チャネル形成領域に他の半導体材料を用いたトランジスタを適用してもよい。当該他の半導体材料としては、例えば、単体元素よりなる半導体、または化合物半導体が挙げられる。単体元素よりなる半導体として、例えば、シリコン、及びゲルマニウムが挙げられる。化合物半導体として、例えば、ヒ化ガリウム、及びシリコンゲルマニウムが挙げられる。その他、化合物半導体として、例えば、有機半導体、及び、窒化物半導体が挙げられる。なお、前述の酸化物半導体も、化合物半導体の一種である。なお、これらの半導体材料に、ドーパントとして不純物が含まれてもよい。
【0339】
トランジスタの半導体材料に用いることができるシリコンとして、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、及び非晶質シリコンが挙げられる。多結晶シリコンとして、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly Silicon)が挙げられる。
【0340】
トランジスタの半導体層は、半導体として機能する層状物質を有してもよい。層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合またはイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス結合力のような、共有結合またはイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0341】
上記層状物質として、例えば、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などが挙げられる。カルコゲン化物は、カルコゲン(第16族に属する元素)を含む化合物である。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。トランジスタの半導体層として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe)、硫化タングステン(代表的にはWS)、セレン化タングステン(代表的にはWSe)、タングステンテルル(代表的にはWTe)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe)などが挙げられる。
【0342】
[基板]
トランジスタを形成する基板としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板、または導電体基板を用いることができる。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムを材料とした半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0343】
<半導体装置の作製方法例1>
半導体装置の作製方法について図12(A)乃至図12(C)を用いて説明する。ここでは一例として、図7(A)に示す構成の作製方法を説明する。なお、各要素の材料及び形成方法について、先に説明した部分と同様の部分については説明を省略することがある。
【0344】
半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、PLD法、ALD法等を用いて形成することができる。
【0345】
なお、スパッタリング法にはスパッタリング用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法、直流電源を用いるDCスパッタリング法、さらにパルス的に電極に印加する電圧を変化させるパルスDCスパッタリング法がある。また、RFとDCを重畳させるRF重畳DCスパッタリング法がある。絶縁性のターゲットを用いた成膜には、RFスパッタリング法を用いることが好ましい。DCスパッタリング法は主に導電性のターゲットを用いて成膜する場合に用いられる。またDCスパッタリング法では、導電膜の形成のほか、反応性スパッタを行うことで、絶縁膜の形成も可能である。また、パルスDCスパッタリング法は、主に、酸化物、窒化物、炭化物などの化合物をリアクティブスパッタリング法で成膜する際に用いられる。RF重畳DCスパッタリング法では、成膜中のイオンエネルギーの制御、およびターゲット側の電位制御が可能になる。よって、RFスパッタリング法と比較して、成膜によるダメージが低減される。また、質の良い膜が得られる。
【0346】
スパッタリング法として例えば、イオン化スパッタリング法、ロングスロースパッタリング法、等を用いることができる。イオン化スパッタリング法は、ターゲットから発生したスパッタリング粒子をRFなどによりイオン化し、セルフバイアスなどにより異方性を持って成膜する方法である。また、ロングスロースパッタリング法では、スパッタリングターゲットと基板の間の距離を長くすることにより、異方性を持った成膜を行うことができる。
【0347】
なお、CVD法は、PECVD法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0348】
PECVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0349】
また、ALD法としては、プリカーサ及びリアクタントの反応を熱エネルギーのみで行う熱ALD(Thermal ALD)法、プラズマ励起されたリアクタントを用いるPEALD(Plasma Enhanced ALD)法などを用いることができる。
【0350】
また、ALD法は、一層ずつ原子を堆積することができるため、極薄の成膜が可能、アスペクト比の高い構造への成膜が可能、ピンホールなどの欠陥の少ない成膜が可能、被覆性に優れた成膜が可能、低温での成膜が可能、などの効果がある。PEALD(Plasma Enhanced ALD)法では、プラズマを利用することで、より低温での成膜が可能となり好ましい場合がある。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
【0351】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0352】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送及び圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0353】
また、CVD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。例えば、CVD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送または圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0354】
また、ALD法では、異なる複数種のプリカーサを同時に導入することで任意の組成の膜を成膜することができる。または、異なる複数種のプリカーサを導入する場合、各プリカーサのサイクル数を制御することで任意の組成の膜を成膜することができる。
【0355】
また、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、またはナイフコート等の湿式の成膜方法により形成することができる。
【0356】
また、半導体装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いることができる。または、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0357】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。1つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう1つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0358】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、またはX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0359】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0360】
まず、絶縁層210上に導電層220を形成し、導電層220上に絶縁層280を形成し、絶縁層280上に導電層240を形成する。なおここでは絶縁層280は、絶縁層280a、絶縁層280b、及び絶縁層280cの3層積層構造とする。
【0361】
なお、絶縁層280の成膜後に化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法を用いた平坦化処理(CMP処理ともいう)を行い、絶縁層280の上面を平坦化させることが好ましい。絶縁層280の平坦化処理を行うことで、配線として機能する導電層240の被形成面を平坦にでき、導電層240の段切れを抑制できる。なお、平坦化処理は行わなくてもよく、その場合、製造コストを削減することができる。
【0362】
続いて、導電層240及び絶縁層280の、導電層220と重なる位置に開口部290を形成する(図12(A))。このとき、導電層220には開口部290と重なる位置に凹部が形成される。
【0363】
開口部290はアスペクト比が大きいため、異方性エッチングを用いて、導電層240の一部、及び絶縁層280の一部を加工することが好ましい。特に、ドライエッチング法による加工は、微細加工に適しているため好ましい。また、当該加工は、層によってそれぞれ異なる条件で行ってもよい。
【0364】
ここで、導電層240及び絶縁層280cの側壁がテーパ形状となる加工条件を用いることが好ましい。また、絶縁層280bの側壁が急峻である形状となる加工条件を用いることが好ましい。
【0365】
また、絶縁層280aは、側壁がテーパ形状となる加工条件を用いて形成してもよいし、側壁が急峻である形状となる加工条件を用いて形成してもよい。
【0366】
ここで、絶縁層280cの材料と、絶縁層280bの材料とを工夫することにより、同じドライエッチング条件を用いて、絶縁層280cをテーパ形状とし、絶縁層280bを急峻な形状とすることもできる。
【0367】
続いて、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、例えば、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行う。
【0368】
加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、窒素ガスと酸素ガスの混合雰囲気で加熱処理をする場合、酸素ガスを20%程度にすることが好ましい。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行なってもよい。以上のような加熱処理を行うことで、酸化物半導体層230の成膜前に、絶縁層280などに含まれる、水などの不純物を低減できる。
【0369】
また、上記加熱処理で用いるガスは、高純度化されていることが好ましい。例えば、上記加熱処理で用いるガスに含まれる水分量は、1ppb以下が好ましく、0.1ppb以下がより好ましく、0.05ppb以下がさらに好ましい。高純度化されたガスを用いて加熱処理を行うことで、絶縁層280などに水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0370】
導電層240と絶縁層280とは、同じマスクを用いて開口してもよく、異なるマスクを用いて開口してもよい。
【0371】
続いて、開口部290を覆うように、酸化物半導体層230を形成する。酸化物半導体層230は、導電層220の上面、絶縁層280の側面、並びに、導電層240の上面及び側面に接して形成される。
【0372】
酸化物半導体層230は、例えば、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、または、ALD法を用いて成膜することができる。
【0373】
酸化物半導体層230は、開口部290内で、導電層220の上面、絶縁層280の側面、及び、導電層240の側面に沿って、出来るだけ均一な厚さの膜として形成されることが好ましい。ALD法を用いて成膜することで、薄い膜を制御性よく成膜することができる。したがって、酸化物半導体層230はALD法を用いて成膜することが好ましい。
【0374】
また、酸化物半導体層230の結晶性が高いと、酸化物半導体層230中の不純物の拡散が抑制されるため、トランジスタの電気特性が変動しにくく、信頼性を高めることができる。酸化物半導体層230を、スパッタリング法を用いて成膜すると、ALD法を用いる場合に比べて、結晶性の高い層とすることが容易となり好ましい。
【0375】
酸化物半導体層230をスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして、酸素、または、酸素と貴ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される酸化膜中の過剰酸素を増やすことができる。また、上記の酸化膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、In-M-Zn酸化物ターゲットなどを用いることができる。
【0376】
酸化物半導体層230をスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を、30%を超えて100%以下、好ましくは70%以上100%以下として成膜すると、酸素過剰型の酸化物半導体が形成される。酸素過剰型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い信頼性が得られる。ただし、本発明の一態様はこれに限定されない。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を1%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、酸化物半導体層の結晶性を向上させることができる。
【0377】
続いて、導電層240及び酸化物半導体層230を島状に加工する(図12(B))。ここで、導電層240と、酸化物半導体層230は、同じマスクを用いて一括で加工することができる。
【0378】
なお、導電層240を島状に加工する工程と、酸化物半導体層230を島状に加工する工程とをそれぞれ独立に行ってもよい。この場合には例えば、導電層240を島状に加工する工程と、導電層240に開口部290を設ける工程とは、それぞれ独立に行うことができ、その場合の順序は問わない。また、方形の島状に加工するためのマスクを用いた露光と、円形の開口部を設けるためのマスクを用いた露光と、を行った後に、エッチングを行うことで、島状の加工と開口部の形成を一度に行ってもよい。また、多階調マスク(代表的にはハーフトーンマスク、またはグレートーンマスク)を用いた露光を利用してもよい。
【0379】
続いて、酸化物半導体層230上及び絶縁層280上に絶縁層250を形成する。絶縁層250は、酸化物半導体層230に接して形成される。
【0380】
次に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、酸化物半導体層230が多結晶化しない温度範囲で行うことが好ましい。加熱処理の温度は、100℃以上650℃以下とすることが好ましく、250℃以上600℃以下とすることがより好ましく、350℃以上550℃以下とすることがさらに好ましい。加熱処理の詳細は前述の記載を参照できる。
【0381】
また、上記加熱処理で用いるガスは、高純度化されていることが好ましい。高純度化されたガスを用いて加熱処理を行うことで、酸化物半導体層230に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0382】
本実施の形態では、加熱処理として、窒素ガスと酸素ガスの流量比を4:1として、450℃の温度で1時間の処理を行う。このような酸素ガスを含む加熱処理によって、酸化物半導体層230中の炭素、水、水素などの不純物を低減できる。このように膜中の不純物を低減することで、酸化物半導体層230の結晶性を向上させ、より密度の高い、緻密な構造にすることができる。これにより、酸化物半導体層230中の結晶領域を増大させ、酸化物半導体層230中における、結晶領域の面内ばらつきを低減できる。よって、トランジスタの電気特性の面内ばらつきを低減できる。
【0383】
また、絶縁層280が酸素を含む場合、加熱処理により、絶縁層280から酸化物半導体層230のチャネル形成領域に酸素を供給することが好ましい。これにより、酸素欠損及びVHの低減を図ることができる。
【0384】
続いて、絶縁層250上に導電層260aとなる導電層を形成する。導電層260aとなる導電層は、間に酸化物半導体層230及び絶縁層250を挟んで、導電層220の上面、絶縁層280の側面、並びに、導電層240の上面及び側面を覆うように形成される。続いて、導電層260bとなる導電層を形成する。
【0385】
導電層260a及び導電層260bは、アスペクト比の大きい開口部290に設けられた絶縁層250に接して形成される。よって、導電層260aとなる導電層及び導電層260bとなる導電層の成膜はそれぞれ、被覆性が良好な成膜方法を用いることが好ましく、ALD法、金属CVD法などを用いることがより好ましい。
【0386】
続いて、マスクを用いて導電層260bとなる導電層、及び導電層260aとなる導電層のそれぞれ一部を除去して、導電層260b及び導電層260aを形成する(図12(C))。
【0387】
以上により、本発明の一態様の半導体装置を作製することができる。
【0388】
<半導体装置の作製方法例2>
図10(B)に示す半導体装置の作製方法の一例を以下に説明する。
【0389】
まず、図12(B)に示す構造を作製する。続いて、絶縁層250及び導電層260を設ける領域にダミー構成物を形成する。その後、該ダミー構成物の外側に絶縁層283及び絶縁層285を形成する。
【0390】
続いて、該ダミー構成物を除去し、絶縁層250及び導電層260を形成する。
【0391】
続いて、導電層260上、及び絶縁層285上に導電層265を形成する。
【0392】
以上により、図10(B)に示す半導体装置を作製することができる。なお、図10(B)に示す半導体装置の作製方法はこれに限らない。
【0393】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0394】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の記憶装置について図14乃至図17を用いて説明する。本発明の一態様の記憶装置は、メモリセルを有する。当該メモリセルは、トランジスタ及び容量素子を有する。
【0395】
<記憶装置の構成例1>
図14(A)乃至図14(C)を用いて、トランジスタ及び容量素子を有する記憶装置の構成を説明する。図14(A)は、トランジスタ200及び容量素子100を有する記憶装置の平面図である。図14(B)は、図14(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図14(C)は、図14(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。
【0396】
図14(A)乃至図14(C)に示す記憶装置は、基板(図示せず)上の絶縁層140と、絶縁層140上の導電層110と、導電層110上のメモリセル150と、導電層110上の絶縁層180と、絶縁層280と、メモリセル150上の絶縁層283とを有する。絶縁層140、絶縁層180、絶縁層280、及び絶縁層283は、層間膜として機能する。導電層110は、配線として機能する。
【0397】
メモリセル150は、導電層110上の容量素子100と、容量素子100上のトランジスタ200と、を有する。
【0398】
容量素子100は、導電層110上の導電層115と、導電層115上の絶縁層130と、絶縁層130上の導電層120と、を有する。導電層120は一対の電極の一方(上部電極と呼ぶ場合がある)として機能し、導電層115は一対の電極の他方(下部電極と呼ぶ場合がある)として機能し、絶縁層130は誘電体として機能する。つまり、容量素子100は、MIM(Metal-Insulator-Metal)容量を構成している。
【0399】
図14(B)及び図14(C)に示すように、絶縁層180には、導電層110に達する開口部190が設けられている。導電層115の少なくとも一部は、開口部190に配置されている。なお、導電層115は、開口部190において導電層110の上面に接する領域と、開口部190において絶縁層180の側面に接する領域と、絶縁層180の上面の少なくとも一部に接する領域と、を有する。絶縁層130は、少なくとも一部が開口部190に位置するように配置されている。導電層120は、少なくとも一部が開口部190に位置するように配置されている。なお、導電層120は、図14(B)及び図14(C)に示すように、開口部190を埋め込むように設けることが好ましい。なお、開口部190の内部に設ける膜は、それぞれ、ALD法などの被覆性の高い方法を用いて形成することが好ましい。これにより、当該膜の被覆性が良好となる。例えば、導電層115、絶縁層130、及び、導電層120は、それぞれ、ALD法、金属CVD法、等を用いて形成することが好ましい。
【0400】
容量素子100は、開口部190において、底面だけでなく、側面においても上部電極と下部電極とが誘電体を挟んで対向する構成となっており、単位面積当たりの静電容量を大きくすることができる。よって、開口部190の深さを深くするほど、容量素子100の静電容量を大きくすることができる。このように容量素子100の単位面積当たりの静電容量を大きくすることにより、記憶装置の読み出し動作を安定にすることができる。また、記憶装置の微細化または高集積化を推し進めることができる。
【0401】
図14(B)及び図14(C)では、開口部190の側壁が、導電層110の上面に対して垂直である例を示す。このとき、開口部190は円筒形状を有する。このような構成にすることで、記憶装置の微細化または高集積化を図ることができる。
【0402】
開口部190の側壁及び導電層110の上面に沿って導電層115及び絶縁層130が積層して設けられている。また、開口部190を埋めるように、絶縁層130上に導電層120が設けられている。このような構成を有する容量素子100は、トレンチ型容量またはトレンチ容量と呼称してもよい。
【0403】
容量素子100上に、絶縁層280が配置されている。つまり、導電層115、絶縁層130、及び導電層120の上に、絶縁層280が配置されている。別言すると、絶縁層280の下に、導電層120が配置されている。
【0404】
トランジスタ200は、導電層120(図2(B)等の導電層220に対応)と、絶縁層280上の導電層240と、酸化物半導体層230と、酸化物半導体層230上の絶縁層250と、絶縁層250上の導電層260と、を有する。酸化物半導体層230は半導体層として機能し、導電層260はゲート電極として機能し、絶縁層250はゲート絶縁層として機能し、導電層120はソース電極及びドレイン電極の一方として機能し、導電層240はソース電極及びドレイン電極の他方として機能する。
【0405】
トランジスタ200については、実施の形態1(図2及び図3等)における説明を参照することができるため、詳細な説明は省略する。また、メモリセル150が有するトランジスタは、図2乃至図3等のトランジスタ200に限定されず、実施の形態1で例示した各トランジスタを適用することができる。
【0406】
図14(A)乃至図14(C)に示すように、トランジスタ200は、容量素子100と重なるように設けられる。また、トランジスタ200の構造の一部が設けられる開口部290は、容量素子100の構造の一部が設けられる開口部190と重なる領域を有する。特に、導電層120は、トランジスタ200のソース電極及びドレイン電極の一方としての機能と、容量素子100の上部電極としての機能とを有するため、トランジスタ200と容量素子100は、構造の一部を共有することになる。このような構成にすることで、平面視において、占有面積を大きく増加させることなく、トランジスタ200及び容量素子100を設けることができる。これにより、メモリセル150の占有面積を低減できるため、メモリセル150を高密度に配置し、記憶装置の記憶容量を大きくすることができる。言い換えると、記憶装置を高集積化することができる。
【0407】
また、トランジスタ200を容量素子100の上方に設けることで、トランジスタ200は、容量素子100の作製時の熱処理の影響を受けない。したがって、トランジスタ200において、しきい値電圧の変動、及び寄生抵抗の増大などの電気特性の劣化、並びに電気特性の劣化に伴う電気特性のばらつきの増大などを抑制できる。
【0408】
本実施の形態に示す記憶装置の回路図を図19(A)に示す。図19(A)に示すように、図14(A)乃至図14(C)に示す構成は、メモリセルとして機能する。メモリセル951は、トランジスタM1と容量素子CAとを有する。ここで、トランジスタM1はトランジスタ200に対応し、容量素子CAは容量素子100に対応する。
【0409】
トランジスタM1のソース及びドレインの一方は、容量素子CAの一対の電極の一方に接続される。トランジスタM1のソース及びドレインの他方は、配線BILに接続される。トランジスタM1のゲートは、配線WOLに接続される。容量素子CAの一対の電極の他方は、配線CALに接続される。
【0410】
ここで、配線BILは導電層240に対応し、配線WOLは導電層260に対応し、配線CALは導電層110に対応する。図14(A)乃至図14(C)に示すように、導電層260はX方向に延在して設けられ、導電層240はY方向に延在して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、配線BILと、配線WOLは互いに交差して設けられる。また、図14(A)では、配線CAL(導電層110)が面状に設けられているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、配線CALは、配線WOL(導電層260)に平行に設けられてもよいし、配線BIL(導電層240)に平行に設けられてもよい。
【0411】
なお、メモリセルについては、後の実施の形態で詳細に説明する。
【0412】
図13(A)乃至図13(C)には、図14(A)乃至図14(C)において、トランジスタ200の構成として図1(A)乃至図1(C)に示す構成を用いる例を示す。
【0413】
[容量素子100]
容量素子100は、導電層115と、絶縁層130と、導電層120と、を有する。また、導電層115の下方に導電層110が設けられている。導電層115は、導電層110と接する領域を有する。
【0414】
導電層110は、絶縁層140上に設けられる。導電層110は、配線CALとして機能し、例えば、面状に設けることができる。導電層110は、実施の形態1の[導電層]の項目に記載の導電性材料を用いて、単層または積層で形成することができる。例えば、導電層110として、タングステンなどの、導電性が高い導電性材料を用いることができる。このように導電性が高い導電性材料を用いることで、導電層110の導電性を向上させ、配線CALとして十分に機能させることができる。
【0415】
また、導電層115は、酸化されにくい導電性材料、または、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料などを、単層または積層で用いることが好ましい。例えば、窒化チタン、またはシリコンを添加したインジウムスズ酸化物などを用いてもよい。または、例えば、タングステンの上に窒化チタンを積層した構造にしてもよい。または、例えば、第1の窒化チタンの上にタングステンを積層し、当該タングステンの上に第2の窒化チタンを積層した構造にしてもよい。このような構造にすることで、絶縁層130に酸化物を用いる場合、絶縁層130によって導電層110が酸化されることを抑制できる。また、絶縁層180に酸化物を用いる場合、絶縁層180によって導電層110が酸化されることを抑制できる。
【0416】
絶縁層130は、導電層115上に設けられる。絶縁層130は、導電層115の上面及び側面に接するように設けられる。つまり、絶縁層130は、導電層110の側端部を覆う構造にすることが好ましい。これにより、導電層115と導電層120がショートすることを防止できる。
【0417】
また、絶縁層130の側端部と導電層115の側端部が一致する構造にしてもよい。このような構造にすることで、絶縁層130と導電層115を同一のマスクを用いて形成することができ、記憶装置の作製工程を簡略化することができる。
【0418】
絶縁層130として、比誘電率が高い(high-k)材料を用いることが好ましい。絶縁層130としてhigh-k材料を用いることで、リーク電流を抑制できる程度に絶縁層130を厚くし、かつ容量素子100の静電容量を十分確保することができる。
【0419】
また、絶縁層130は、high-k材料からなる絶縁層を積層して用いることが好ましく、比誘電率が高い(high-k)材料と、当該high-k材料より絶縁耐力が大きい材料との積層構造を用いることが好ましい。例えば、絶縁層130として、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。また、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。また、例えば、ハフニウムジルコニウム酸化物、酸化アルミニウム、ハフニウムジルコニウム酸化物、酸化アルミニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。酸化アルミニウムのような、比較的絶縁耐力が大きい絶縁層を積層して用いることで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制できる。
【0420】
また、絶縁層130として、強誘電性を有しうる材料を用いてもよい。強誘電性を有しうる材料の詳細については、実施の形態1の記載も参照できる。
【0421】
ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、数nmといった薄膜であっても強誘電性を有しうることができるため、絶縁層130として好ましい。絶縁層130の膜厚は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましく、10nm以下(代表的には、2nm以上9nm以下)がさらに好ましい。また、例えば、膜厚を、8nm以上12nm以下にすることが好ましい。薄膜化することができる強誘電体層とすることで、容量素子100を、微細化されたトランジスタなどの半導体素子に組み合わせて半導体装置を形成することができる。
【0422】
また、ハフニウム及びジルコニウムの一方または両方を含む金属酸化物は、微小な面積でも強誘電性を有しうることができるため、絶縁層130として好ましい。例えば、強誘電体層の平面視における面積(占有面積)が、100μm以下、10μm以下、1μm以下、または0.1μm以下であっても、強誘電性を有することができる。また、10000nm以下、または1000nm以下であっても、強誘電性を有する場合がある。面積が小さい強誘電体層とすることで、容量素子100の占有面積を小さくすることができる。
【0423】
強誘電体は、絶縁体であって、外部から電場を与えることによって内部に分極が生じ、かつ当該電場をゼロにしても分極が残る性質を有する。このため、当該材料を誘電体として用いた容量素子(以下、強誘電体キャパシタと呼ぶ場合がある)を用いて、不揮発性の記憶素子を形成することができる。強誘電体キャパシタを用いた、不揮発性の記憶素子は、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、強誘電体メモリなどと呼ばれることがある。例えば、強誘電体メモリは、トランジスタと、強誘電体キャパシタを有し、トランジスタのソース及びドレインの一方が、強誘電体キャパシタの一方の端子に電気的に接続された構成を有する。よって、容量素子100として強誘電体キャパシタを用いる場合、本実施の形態で示す記憶装置は、強誘電体メモリとして機能する。
【0424】
導電層120は、絶縁層130の上面の一部に接して設けられる。導電層120の側端部は、X方向及びY方向のいずれにおいても、導電層115の側端部よりも内側に位置することが好ましい。なお、絶縁層130が導電層115の側端部を覆う構造においては、導電層120の側端部は、導電層115の側端部よりも外側に位置してもよい。
【0425】
導電層120は、実施の形態1の[導電層]の項目に記載の導電性材料を用いて、単層または積層で形成することができる。導電層120として、酸化されにくい導電性材料、または、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料などを用いることが好ましい。例えば、窒化チタンまたは窒化タンタルなどを用いることができる。また、例えば、窒化チタンの上に窒化タンタルを積層した構造にしてもよい。この場合、窒化チタンが絶縁層130に接し、窒化タンタルが酸化物半導体層230に接する。このような構造にすることで、酸化物半導体層230によって導電層120が過剰に酸化されることを抑制できる。また、絶縁層130に酸化物を用いる場合、絶縁層130によって導電層120が過剰に酸化されることを抑制できる。または、導電層120として、例えば、窒化チタンの上にタングステンを積層した構造にしてもよい。
【0426】
また、導電層120は、酸化物半導体層230と接する領域を有するため、酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。導電層120として酸素を含む導電性材料を用いることで、導電層120が酸素を吸収しても導電性を維持することができる。また、絶縁層130として酸化ジルコニウムなどの酸素を含む絶縁層を用いる場合においても、導電層120は導電性を維持できるため好適である。導電層120として、例えば、ITO、ITSO、IZO(登録商標)などを単層または積層で用いることができる。
【0427】
絶縁層180は層間膜として機能するため、比誘電率が低いことが好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。絶縁層180としては、比誘電率が低い材料を含む絶縁層を、単層または積層で用いることができる。酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。
【0428】
なお、図14(B)及び図14(C)では、絶縁層180を単層で示したが、本発明はこれに限られるものではない。絶縁層180は、2層の積層構造であってもよく、3層以上の積層構造であってもよい。
【0429】
<記憶装置の構成例2>
本実施の形態に示す、トランジスタ200及び容量素子100を有するメモリセル150は、記憶装置のメモリセルとして用いることができる。トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、または、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減できる。また、トランジスタ200の周波数特性が高いため、記憶装置の読み出し、及び書き込みを高速に行うことができる。
【0430】
メモリセル150を3次元的にマトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
【0431】
図15(A)は、記憶装置の平面図である。図15(A)では、X方向及びY方向に2個×2個のメモリセル(メモリセル150a乃至メモリセル150d)を配置する例を示す。
【0432】
図15(B)は、図15(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。図15(A)及び図15(B)では、2個のメモリセル(図15(B)ではメモリセル150a及びメモリセル150b)が共通の配線(導電層246)に接続されている。
【0433】
ここで、図15(A)及び図15(B)に示すメモリセル150a及びメモリセル150bのそれぞれは、メモリセル150と同様の構成を有する。メモリセル150aは、容量素子100a及びトランジスタ200aを有し、メモリセル150bは、容量素子100b及びトランジスタ200bを有する。また、図15(A)に示すメモリセル150c及びメモリセル150dについても、メモリセル150と同様の構成を有する。よって、図15(A)及び図15(B)に示す記憶装置において、図14に示した記憶装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。また、メモリセル150a乃至メモリセル150dの詳細については、<記憶装置の構成例1>におけるメモリセル150の記載を参照できる。
【0434】
図15(A)及び図15(B)に示すように、配線WOLとして機能する導電層260は、メモリセル150a及びメモリセル150bに、それぞれ設けられる。また、図15(A)に示すように、1つの導電層260が、メモリセル150aとメモリセル150cに共通して設けられ、他の1つの導電層260が、メモリセル150bとメモリセル150dに共通して設けられる。また、配線BILの一部として機能する1つの導電層240は、メモリセル150a及びメモリセル150bに、共通に設けられる。つまり、導電層240は、メモリセル150aの酸化物半導体層230と、メモリセル150bの酸化物半導体層230に接する。また、他の1つの導電層240が、メモリセル150c及びメモリセル150dに、共通に設けられる。
【0435】
ここで、図15(A)及び図15(B)に示す記憶装置は、メモリセル150a及びメモリセル150bと電気的に接続してプラグ(接続電極とよぶこともできる)として機能する、導電層245及び導電層246を有する。導電層245は、絶縁層140、絶縁層180、絶縁層130、及び、絶縁層280に形成された開口部内に配置され、導電層240の下面に接する。また、導電層246は、絶縁層285、絶縁層283、及び絶縁層250に形成された開口部内に配置され、導電層240の上面に接する。なお、導電層245及び導電層246は、導電層240に適用可能な導電性材料などを用いることができる。
【0436】
導電層245及び導電層246は、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、及びダイオードなどの回路素子、配線、電極、または、端子と、メモリセル150a及びメモリセル150bを電気的に接続するためのプラグまたは配線として機能する。例えば、導電層245が、図15(B)に示す記憶装置の下に設けられたセンスアンプ(図示せず)に電気的に接続され、導電層246が、図15(B)に示す記憶装置の上に設けられた同様の記憶装置(図示せず)と電気的に接続される構成にすることができる。この場合、導電層245及び導電層246は、配線BILの一部として機能する。このように、図15(B)に示す記憶装置の上または下に記憶装置などを設けることで、単位面積当たりの記憶容量を大きくすることができる。
【0437】
また、メモリセル150aとメモリセル150bは、一点鎖線A3-A4の垂直二等分線を対称軸とした線対称の構成となっている。よって、トランジスタ200aとトランジスタ200bも、導電層245及び導電層246を挟んで、対称の位置に配置される。ここで、導電層240は、トランジスタ200aのソース電極及びドレイン電極の他方としての機能と、トランジスタ200bのソース電極及びドレイン電極の他方としての機能とを有する。また、トランジスタ200a及びトランジスタ200bは、プラグとして機能する導電層245及び導電層246を共有する。このように、2つのトランジスタと、プラグとの接続を上述の構成とすることで、微細化または高集積化が可能な記憶装置を提供できる。
【0438】
なお、配線CALとして機能する導電層110は、メモリセル150a及びメモリセル150bに、それぞれ設けてもよいし、メモリセル150a及びメモリセル150bに、共通に設けてもよい。ただし、図15(B)に示すように、導電層110は、導電層245と離隔して設け、導電層110と導電層245がショートしないようにする。
【0439】
また、図16では、図15(A)に示す4個のメモリセルがZ方向にn層(nは3以上の整数)積層されている例を示す。図16は、図15(A)に示す一点鎖線A3-A4間の断面図である。
【0440】
図16に示す記憶装置は、n層のメモリ層160を有する。具体的には、メモリ層160[1]上にメモリ層160[2]が設けられ、メモリ層160[2]上に、さらに、(n-2)層のメモリ層が設けられており、最上段にメモリ層160[n]が設けられている。1層のメモリ層160が有するメモリセルの数は特に限定されず、2以上のメモリセルを有することができる。導電層245、導電層246、導電層247、及び導電層248等によって、n層のメモリ層160が有するメモリセルが、n層のメモリ層160の下に設けられたセンスアンプ(図示せず)と電気的に接続される。
【0441】
図16に示すように、複数のメモリセルを積層することにより、メモリセルアレイの占有面積を増やすことなく、セルを集積して配置することができる。つまり、3Dメモリセルアレイを構成することができる。
【0442】
図17に、センスアンプを含む駆動回路が設けられる層上に、メモリセルを有する層が積層して設けられた記憶装置の断面構成例を示す。
【0443】
図17では、トランジスタ300の上方にメモリセル150(トランジスタ200及び容量素子100)が設けられている。
【0444】
トランジスタ300は、センスアンプが有するトランジスタの一つである。
【0445】
図17に示すメモリセル150については、<記憶装置の構成例1>におけるメモリセル150の記載を参照できる。なお、図17においては、容量素子100が導電層120に替えて、導電層120aと、導電層120a上の導電層120bを有する例を示す。ここで導電層120bとして例えば、導電層220cとして用いることができる材料などを適用することができる。また導電層120aとして例えば、導電層220a及び導電層220bとして用いることができる材料などを適用することができる。また図17においては、酸化物半導体層230は、導電層120aの上面と接する例を示すが、酸化物半導体層230は導電層120aの上面と接していなくてもよい。
【0446】
図17に示すように、メモリセル150と重なるように、センスアンプを設ける構成にすることで、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量が小さくなり、記憶装置の高速駆動が可能となる。
【0447】
図17に示す記憶装置は、実施の形態3で説明する半導体装置900と対応させることができる。具体的には、トランジスタ300は、半導体装置900におけるセンスアンプ927が有するトランジスタに相当する。また、メモリセル150は、メモリセル950と対応する。
【0448】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、ゲートとして機能する導電層316と、ゲート絶縁層として機能する絶縁層315と、基板311の一部からなる半導体領域313と、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a及び低抵抗領域314bと、を有する。トランジスタ300は、pチャネル型またはnチャネル型のいずれでもよい。
【0449】
ここで、図17に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面及び上面を、絶縁層315を介して、導電層316が覆うように設けられている。なお、導電層316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁層を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0450】
なお、図17に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成または駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いることができる。
【0451】
各構造体の間には、層間膜、配線、及びプラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線として機能する導電層は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電層の一部が配線として機能する場合、及び導電層の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0452】
例えば、トランジスタ300上には、層間膜として、絶縁層320、絶縁層322、絶縁層324、及び絶縁層326が順に積層して設けられている。また、絶縁層320及び絶縁層322には導電層328が埋め込まれ、絶縁層324及び絶縁層326には導電層330が埋め込まれている。なお、導電層328及び導電層330はプラグ、または配線として機能する。
【0453】
また、層間膜として機能する絶縁層は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁層322の上面は、平坦性を高めるためにCMP法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0454】
絶縁層326及び導電層330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図17において、絶縁層350、絶縁層352、及び絶縁層354が順に積層して設けられている。また、絶縁層350、絶縁層352、及び絶縁層354には、導電層356が形成されている。導電層356は、プラグ、または配線として機能する。
【0455】
層間膜として機能する、絶縁層352、及び絶縁層354等は、前述の、半導体装置または記憶装置に用いることができる絶縁層を用いることができる。
【0456】
プラグ、または配線として機能する導電層、例えば、導電層328、導電層330、及び導電層356等としては、導電層240に適用可能な導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステン、モリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウム、銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0457】
トランジスタ200が有する導電層240は、導電層643、導電層642、導電層644、導電層645、導電層646、導電層356、導電層330、及び、導電層328を介して、トランジスタ300のソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314bと、電気的に接続されている。
【0458】
導電層643は、絶縁層280に埋め込まれている。導電層642は、絶縁層130上に設けられ、絶縁層641に埋め込まれている。導電層642は、導電層120aと同一の材料、及び、同一の工程で作製することができる。導電層644は、絶縁層180及び絶縁層130に埋め込まれている。導電層645は、絶縁層647に埋め込まれている。導電層645は、導電層110と同一の材料、及び、同一の工程で作製することができる。導電層646は、絶縁層648に埋め込まれている。絶縁層648によって、トランジスタ300と、導電層110と、が電気的に絶縁されている。
【0459】
以上のように、本実施の形態の記憶装置は、寄生容量が低減されたトランジスタを有するため、動作速度を高めることができる。また、本実施の形態の記憶装置は、容量素子とトランジスタと、を重ねて有するため、メモリセルの平面視における占有面積を小さくでき、集積度の高い記憶装置を実現できる。
【0460】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0461】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置900について説明する。半導体装置900は記憶装置として機能できる。
【0462】
図18に、半導体装置900の構成例を示すブロック図を示す。図18に示す半導体装置900は、駆動回路910と、メモリセルアレイ920と、を有する。メモリセルアレイ920は、1以上のメモリセル950を有する。図18では、メモリセルアレイ920がマトリクス状に配置された複数のメモリセル950を有する例を示している。
【0463】
メモリセル950には、実施の形態2で説明した記憶装置(メモリセル150など)を適用することができる。
【0464】
駆動回路910は、PSW931(パワースイッチ)、PSW932、及び周辺回路915を有する。周辺回路915は、周辺回路911、コントロール回路912(Control Circuit)、及び電圧生成回路928を有する。
【0465】
半導体装置900において、各回路、各信号及び各電圧は、必要に応じて、適宜取捨することができる。あるいは、他の回路または他の信号を追加してもよい。信号BW、信号CE、信号GW、信号CLK、信号WAKE、信号ADDR、信号WDA、信号PON1、信号PON2は外部からの入力信号であり、信号RDAは外部への出力信号である。信号CLKはクロック信号である。
【0466】
また、信号BW、信号CE、及び信号GWは制御信号である。信号CEはチップイネーブル信号であり、信号GWはグローバル書き込みイネーブル信号であり、信号BWはバイト書き込みイネーブル信号である。信号ADDRはアドレス信号である。信号WDAは書き込みデータであり、信号RDAは読み出しデータである。信号PON1、信号PON2は、パワーゲーティング制御用信号である。なお、信号PON1、信号PON2は、コントロール回路912で生成してもよい。
【0467】
コントロール回路912は、半導体装置900の動作全般を制御する機能を有するロジック回路である。例えば、コントロール回路912は、信号CE、信号GW及び信号BWを論理演算して、半導体装置900の動作モード(例えば、書き込み動作、読み出し動作)を決定する。または、コントロール回路912は、この動作モードが実行されるように、周辺回路911の制御信号を生成する。
【0468】
電圧生成回路928は負電圧を生成する機能を有する。信号WAKEは、信号CLKの電圧生成回路928への入力を制御する機能を有する。例えば、信号WAKEとしてHレベルの信号が与えられると、信号CLKが電圧生成回路928へ入力され、電圧生成回路928は負電圧を生成する。
【0469】
周辺回路911は、メモリセル950に対するデータの書き込み及び読み出しをするための回路である。周辺回路911は、行デコーダ941(Row Decoder)、列デコーダ942(Column Decoder)、行ドライバ923(Row Driver)、列ドライバ924(Column Driver)、入力回路925(Input Cir.)、出力回路926(Output Cir.)、及びセンスアンプ927(Sense Amplifier)を有する。
【0470】
行デコーダ941及び列デコーダ942は、信号ADDRをデコードする機能を有する。行デコーダ941は、アクセスする行を指定するための回路であり、列デコーダ942は、アクセスする列を指定するための回路である。行ドライバ923は、行デコーダ941が指定する行を選択する機能を有する。列ドライバ924は、データをメモリセル950に書き込む機能、メモリセル950からデータを読み出す機能、読み出したデータを保持する機能等を有する。
【0471】
入力回路925は、信号WDAを保持する機能を有する。入力回路925が保持するデータは、列ドライバ924に出力される。入力回路925の出力データが、メモリセル950に書き込むデータ(Din)である。列ドライバ924がメモリセル950から読み出したデータ(Dout)は、出力回路926に出力される。出力回路926は、Doutを保持する機能を有する。また、出力回路926は、Doutを半導体装置900の外部に出力する機能を有する。出力回路926から出力されるデータが信号RDAである。
【0472】
PSW931は周辺回路915へのVDDの供給を制御する機能を有する。PSW932は、行ドライバ923へのVHMの供給を制御する機能を有する。ここでは、半導体装置900の高電源電圧がVDDであり、低電源電圧はGND(接地電位)である。また、VHMは、ワード線を高レベルにするために用いられる高電源電圧であり、VDDよりも高い。信号PON1によってPSW931のオン・オフが制御され、信号PON2によってPSW932のオン・オフが制御される。図18では、周辺回路915において、VDDが供給される電源ドメインの数を1としているが、複数にすることもできる。この場合、各電源ドメインに対してパワースイッチを設ければよい。
【0473】
図19(A)乃至図19(H)を用いて、メモリセル950に適用できるメモリセルの構成例について説明する。
【0474】
なお、以下において、2つの構成要素が接続すると記載した場合には、回路素子(トランジスタ、スイッチ、ダイオード、抵抗素子など)を介して電気的に接続されることを含む。電気的接続とは、2つの構成要素間で電流が流れる状態になりうることをいう。なお、2つの構成要素間がスイッチまたはトランジスタを介して接続される場合も、これらがオン状態のときに電流が流れる状態になりうるため、電気的接続に含まれる。
【0475】
[DOSRAM]
図19(A)に、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書などにおいて、OSトランジスタを用いたDRAMを、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ。メモリセル951は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。
【0476】
なお、トランジスタM1は、フロントゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有していてもよい。このとき、バックゲートは定電位または信号が与えられる配線に接続されていてもよいし、フロントゲートとバックゲートとが接続されていてもよい。
【0477】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
【0478】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、及び読み出し時において、配線CALには、低レベル電位(基準電位という場合がある。)を印加するのが好ましい。
【0479】
データの書き込み及び読み出しは、配線WOLに高レベル電位を印加し、トランジスタM1をオン状態にし、配線BILと容量素子CAの第1端子を導通状態(電流を流すことが可能な状態)にすることで行われる。
【0480】
また、メモリセル950に用いることができるメモリセルは、メモリセル951に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、図19(B)に示すメモリセル952を用いてもよい。メモリセル952は、容量素子CA、及び配線CALを有さない場合の例である。トランジスタM1の第1端子は、電気的にフローティングの状態である。
【0481】
メモリセル952において、トランジスタM1を介して書き込まれた電位は、破線で示す第1端子とゲートとの間の容量(寄生容量ともいう)に保持される。このような構成とすることで、メモリセルの構成を大幅に簡略化することができる。
【0482】
なお、トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特性を有している。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。または、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル951、及びメモリセル952に対して多値データ、またはアナログデータを保持することができる。
【0483】
[NOSRAM]
図19(C)に、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。メモリセル953は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。本明細書などにおいて、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ。
【0484】
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
【0485】
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位(基準電位という場合がある)を印加するのが好ましい。
【0486】
データの書き込みは、配線WOLに高レベル電位を印加し、トランジスタM2をオン状態にし、配線WBLと容量素子CBの第1端子を導通状態にすることで行われる。具体的には、トランジスタM2がオン状態のときに、配線WBLに記録する情報に対応する電位を印加し、容量素子CBの第1端子、及びトランジスタM3のゲートに該電位を書き込む。その後、配線WOLに低レベル電位を印加し、トランジスタM2をオフ状態にすることによって、容量素子CBの第1端子の電位、及びトランジスタM3のゲートの電位を保持する。
【0487】
データの読み出しは、配線SLに所定の電位を印加することによって行われる。トランジスタM3のソース-ドレイン間に流れる電流、及びトランジスタM3の第1端子の電位は、トランジスタM3のゲートの電位、及びトランジスタM3の第2端子の電位によって決まるため、トランジスタM3の第1端子に接続されている配線RBLの電位を読み出すことによって、容量素子CBの第1端子(またはトランジスタM3のゲート)に保持されている電位を読み出すことができる。つまり、容量素子CBの第1端子(またはトランジスタM3のゲート)に保持されている電位から、このメモリセルに書き込まれている情報を読み出すことができる。
【0488】
また、例えば、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。そのメモリセルの回路構成例を図19(D)に示す。メモリセル954は、メモリセル953の配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとして、トランジスタM2の第2端子、及びトランジスタM3の第1端子が、配線BILと接続されている構成となっている。つまり、メモリセル954は、書き込みビット線と、読み出しビット線と、を1本の配線BILとして動作する構成となっている。
【0489】
図19(E)に示すメモリセル955は、メモリセル953における容量素子CB及び配線CALを省略した場合の例である。また、図19(F)に示すメモリセル956は、メモリセル954における容量素子CB及び配線CALを省略した場合の例である。このような構成とすることで、メモリセルの集積度を高めることができる。
【0490】
なお、少なくともトランジスタM2にはOSトランジスタを用いることが好ましい。特に、トランジスタM2、及びトランジスタM3にOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0491】
OSトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特性を有しているため、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。または、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル953、メモリセル954、メモリセル955、メモリセル956に対して多値データ、またはアナログデータを保持することができる。
【0492】
トランジスタM2としてOSトランジスタを適用したメモリセル953、メモリセル954、メモリセル955、及びメモリセル956は、NOSRAMの一態様である。
【0493】
なお、トランジスタM3としてSiトランジスタを用いてもよい。Siトランジスタは電界効果移動度を高めることができるほか、pチャネル型トランジスタとすることもできるため、回路設計の自由度を高めることができる。
【0494】
また、トランジスタM3としてOSトランジスタを用いた場合、メモリセルを単極性回路で構成することができる。
【0495】
また、図19(G)に、3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセル957を示す。メモリセル957は、トランジスタM4乃至トランジスタM6と、容量素子CCと、を有する。
【0496】
トランジスタM4の第1端子は、容量素子CCの第1端子と接続され、トランジスタM4の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM4のゲートは、配線WOLと接続されている。容量素子CCの第2端子は、トランジスタM5の第1端子と、配線GNDLと、に接続されている。トランジスタM5の第2端子は、トランジスタM6の第1端子と接続され、トランジスタM5のゲートは、容量素子CCの第1端子と接続されている。トランジスタM6の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM6のゲートは配線RWLと接続されている。
【0497】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、書き込みワード線として機能し、配線RWLは、読み出しワード線として機能する。配線GNDLは、低レベル電位を与える配線である。
【0498】
データの書き込みは、配線WOLに高レベル電位を印加し、トランジスタM4をオン状態にし、配線BILと容量素子CCの第1端子を導通状態にすることで行われる。具体的には、トランジスタM4がオン状態のときに、配線BILに記録する情報に対応する電位を印加し、容量素子CCの第1端子、及びトランジスタM5のゲートに該電位を書き込む。その後、配線WOLに低レベル電位を印加し、トランジスタM4をオフ状態にすることによって、容量素子CCの第1端子の電位、及びトランジスタM5のゲートの電位を保持する。
【0499】
データの読み出しは、配線BILに所定の電位をプリチャージして、その後、配線BILを電気的に浮遊状態にし、かつ配線RWLに高レベル電位を印加することによって行われる。配線RWLが高レベル電位となるため、トランジスタM6はオン状態となり、配線BILとトランジスタM5の第2端子が導通状態となる。このとき、トランジスタM5の第2端子には、配線BILの電位が印加されることになるが、容量素子CCの第1端子(またはトランジスタM5のゲート)に保持されている電位に応じて、トランジスタM5の第2端子の電位、及び配線BILの電位が変化する。ここで、配線BILの電位を読み出すことによって、容量素子CCの第1端子(またはトランジスタM5のゲート)に保持されている電位を読み出すことができる。つまり、容量素子CCの第1端子(またはトランジスタM5のゲート)に保持されている電位から、このメモリセルに書き込まれている情報を読み出すことができる。
【0500】
なお、少なくともトランジスタM4にOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0501】
なお、トランジスタM5及びM6としてSiトランジスタを用いてもよい。前述した通り、Siトランジスタは、半導体層に用いるシリコンの結晶状態などによっては、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。
【0502】
また、トランジスタM5及びM6としてOSトランジスタを用いた場合、メモリセルを単極性回路で構成することができる。
【0503】
[OS-SRAM]
図19(H)に、OSトランジスタを用いたSRAM(Static Random Access Memory)の一例を示す。本明細書などにおいて、OSトランジスタを用いたSRAMを、OS-SRAM(Oxide Semiconductor-SRAM)と呼ぶ。なお、図19(H)に示すメモリセル958は、バックアップ可能なSRAMのメモリセルである。
【0504】
メモリセル958は、トランジスタM7乃至トランジスタM10と、トランジスタMS1乃至トランジスタMS4と、容量素子CD1と、容量素子CD2と、を有する。なお、トランジスタMS1、及びトランジスタMS2は、pチャネル型トランジスタであり、トランジスタMS3、及びトランジスタMS4は、nチャネル型トランジスタである。
【0505】
トランジスタM7の第1端子は、配線BILと接続され、トランジスタM7の第2端子は、トランジスタMS1の第1端子と、トランジスタMS3の第1端子と、トランジスタMS2のゲートと、トランジスタMS4のゲートと、トランジスタM10の第1端子と、に接続されている。トランジスタM7のゲートは、配線WOLと接続されている。トランジスタM8の第1端子は、配線BILBと接続され、トランジスタM8の第2端子は、トランジスタMS2の第1端子と、トランジスタMS4の第1端子と、トランジスタMS1のゲートと、トランジスタMS3のゲートと、トランジスタM9の第1端子と、に接続されている。トランジスタM8のゲートは、配線WOLと接続されている。
【0506】
トランジスタMS1の第2端子は、配線VDLと接続されている。トランジスタMS2の第2端子は、配線VDLと接続されている。トランジスタMS3の第2端子は、配線GNDLと接続されている。トランジスタMS4の第2端子は、配線GNDLと接続されている。
【0507】
トランジスタM9の第2端子は、容量素子CD1の第1端子と接続され、トランジスタM9のゲートは、配線BRLと接続されている。トランジスタM10の第2端子は、容量素子CD2の第1端子と接続され、トランジスタM10のゲートは、配線BRLと接続されている。
【0508】
容量素子CD1の第2端子は、配線GNDLと接続され、容量素子CD2の第2端子は、配線GNDLと接続されている。
【0509】
配線BIL及び配線BILBは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能し、配線BRLは、トランジスタM9、及びトランジスタM10のオン状態、オフ状態を制御する配線である。
【0510】
配線VDLは、高レベル電位を与える配線であり、配線GNDLは、低レベル電位を与える配線である。
【0511】
データの書き込みは、配線WOLに高レベル電位を印加し、かつ配線BRLに高レベル電位を印加することによって行われる。具体的には、トランジスタM10がオン状態のときに、配線BILに記録する情報に対応する電位を印加し、トランジスタM10の第2端子側に該電位を書き込む。
【0512】
ところで、メモリセル958は、トランジスタMS1乃至トランジスタMS2によってインバータループを構成しているため、トランジスタM8の第2端子側に、該電位に対応するデータ信号の反転信号が入力される。トランジスタM8がオン状態であるため、配線BILBには、配線BILに印加されている電位、すなわち配線BILに入力されている信号の反転信号が出力される。また、トランジスタM9、及びトランジスタM10がオン状態であるため、トランジスタM7の第2端子の電位、及びトランジスタM8の第2端子の電位は、それぞれ容量素子CD2の第1端子、及び容量素子CD1の第1端子に保持される。その後、配線WOLに低レベル電位を印加し、かつ配線BRLに低レベル電位を印加し、トランジスタM7乃至トランジスタM10をオフ状態にすることによって、容量素子CD1の第1端子、及び容量素子CD2の第1端子の電位を保持する。
【0513】
データの読み出しは、あらかじめ配線BIL及び配線BILBを所定の電位にプリチャージした後に、配線WOLに高レベル電位を印加し、配線BRLに高レベル電位を印加することによって、容量素子CD1の第1端子の電位が、メモリセル958のインバータループによってリフレッシュされ、配線BILBに出力される。また、容量素子CD2の第1端子の電位が、メモリセル958のインバータループによってリフレッシュされ、配線BILに出力される。配線BIL及び配線BILBでは、それぞれプリチャージされた電位から容量素子CD2の第1端子の電位、及び容量素子CD1の第1端子の電位に変動するため、配線BILまたは配線BILBの電位から、メモリセルに保持された電位を読み出すことができる。
【0514】
なお、トランジスタM7乃至トランジスタM10としてOSトランジスタを適用することが好ましい。これにより書き込んだデータをトランジスタM7乃至トランジスタM10によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。または、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。
【0515】
なお、トランジスタMS1乃至トランジスタMS4としてSiトランジスタを用いてもよい。
【0516】
半導体装置900が有する駆動回路910とメモリセルアレイ920は同一平面上に設けてもよい。また、図20(A)に示すように、駆動回路910とメモリセルアレイ920を重ねて設けてもよい。駆動回路910とメモリセルアレイ920を重ねて設けることで、信号伝搬距離を短くすることができる。また、図20(B)に示すように、駆動回路910上にメモリセルアレイ920を複数層重ねて設けてもよい。
【0517】
続いて、上記記憶装置などの半導体装置を備えることができる演算処理装置の一例について説明する。
【0518】
図21に、演算装置960のブロック図を示す。図21に示す演算装置960は、例えばCPU(Central Processing Unit)に適用することができる。また、演算装置960は、CPUよりも並列処理可能なプロセッサコアを多数(数十個乃至数百個)有するGPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、NPU(Neural Processing Unit)などのプロセッサにも適用することができる。
【0519】
図21に示す演算装置960は、基板990上に、ALU991(ALU:Arithmetic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ992、インストラクションデコーダ993、インタラプトコントローラ994、タイミングコントローラ995、レジスタ996、レジスタコントローラ997、バスインターフェース998、キャッシュ999、及びキャッシュインターフェース989を有している。基板990は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。書き換え可能なROM及びROMインターフェースを有してもよい。また、キャッシュ999及びキャッシュインターフェース989は、別チップに設けてもよい。
【0520】
キャッシュ999は、別チップに設けられたメインメモリとキャッシュインターフェース989を介して接続される。キャッシュインターフェース989は、メインメモリに保持されているデータの一部をキャッシュ999に供給する機能を有する。またキャッシュインターフェース989は、キャッシュ999に保持されているデータの一部を、バスインターフェース998を介してALU991またはレジスタ996等に出力する機能を有する。
【0521】
後述するように、演算装置960上に積層して、メモリセルアレイ920を設けることができる。メモリセルアレイ920はキャッシュとして用いることができる。このとき、キャッシュインターフェース989はメモリセルアレイ920に保持されているデータをキャッシュ999に供給する機能を有していてよい。またこのとき、キャッシュインターフェース989の一部に、駆動回路910を有することが好ましい。
【0522】
なお、キャッシュ999を設けず、メモリセルアレイ920のみをキャッシュとして用いることもできる。
【0523】
図21に示す演算装置960は、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際の演算装置960はその用途によって多種多様な構成を有している。例えば、図21に示す演算装置960を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み、それぞれのコアが並列で動作する、いわゆるマルチコアの構成とすることが好ましい。コアの数が多いほど、演算性能を高めることができる。コアの数は多いほど好ましいが、例えば2個、好ましくは4個、より好ましくは8個、さらに好ましくは12個、さらに好ましくは16個またはそれ以上とすることが好ましい。また、サーバ用途など非常に高い演算性能が求められる場合には、16個以上、好ましくは32個以上、さらに好ましくは64個以上のコアを有するマルチコアの構成とすることが好ましい。また、演算装置960が内部演算回路、データバスなどで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすることができる。
【0524】
バスインターフェース998を介して演算装置960に入力された命令は、インストラクションデコーダ993に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ992、インタラプトコントローラ994、レジスタコントローラ997、タイミングコントローラ995に入力される。
【0525】
ALUコントローラ992、インタラプトコントローラ994、レジスタコントローラ997、タイミングコントローラ995は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行う。具体的にALUコントローラ992は、ALU991の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ994は、演算装置960のプログラム実行中に、外部の入出力装置、周辺回路などからの割り込み要求を、その優先度、マスク状態などから判断し、処理する。レジスタコントローラ997は、レジスタ996のアドレスを生成し、演算装置960の状態に応じてレジスタ996の読み出し及び書き込みを行う。
【0526】
また、タイミングコントローラ995は、ALU991、ALUコントローラ992、インストラクションデコーダ993、インタラプトコントローラ994、及びレジスタコントローラ997の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ995は、基準クロック信号を元に、内部クロック信号を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号を上記各種回路に供給する。
【0527】
図21に示す演算装置960において、レジスタコントローラ997は、ALU991からの指示に従い、レジスタ996における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ996が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ996内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ996内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
【0528】
メモリセルアレイ920と演算装置960は、重ねて設けることができる。図22(A)及び図22(B)に半導体装置970Aの斜視図を示す。半導体装置970Aは、演算装置960上に、メモリセルアレイが設けられた層930を有する。層930には、メモリセルアレイ920L1、メモリセルアレイ920L2、及びメモリセルアレイ920L3が設けられている。演算装置960と各メモリセルアレイは、互いに重なる領域を有する。半導体装置970Aの構成を分かりやすくするため、図22(B)では演算装置960及び層930を分離して示している。
【0529】
メモリセルアレイを有する層930と演算装置960を重ねて設けることで、両者の接続距離を短くすることができる。よって、両者間の通信速度を高めることができる。また、接続距離が短いため消費電力を低減できる。
【0530】
メモリセルアレイを有する層930と演算装置960とを積層する方法としては、演算装置960上に直接メモリセルアレイを有する層930を積層する方法(モノリシック積層ともいう)を用いてもよいし、演算装置960と層930とをそれぞれ異なる基板上に形成し、2つの基板を貼り合せ、貫通ビアまたは導電膜の接合技術(Cu-Cu接合など)を用いて電気的に接続する方法を用いてもよい。前者は貼合わせにおける位置ずれを考慮する必要がないため、チップサイズを小さくできるだけでなく、作製コストを削減できる。
【0531】
ここで、演算装置960にキャッシュ999を有さず、層930に設けられるメモリセルアレイ920L1、920L2、及び920L3は、それぞれキャッシュとして用いることができる。このとき、例えばメモリセルアレイ920L1をL1キャッシュ(レベル1キャッシュともいう)として用い、メモリセルアレイ920L2をL2キャッシュ(レベル2キャッシュともいう)として用い、メモリセルアレイ920L3をL3キャッシュ(レベル3キャッシュともいう)として用いることができる。3つのメモリセルアレイのうち、メモリセルアレイ920L3が最も容量が大きく、かつ、最もアクセス頻度が低い。また、メモリセルアレイ920L1が最も容量が小さく、かつ最もアクセス頻度が高い。
【0532】
なお、演算装置960に設けられるキャッシュ999をL1キャッシュとして用いる場合は、層930に設けられる各メモリセルアレイを、それぞれ下位のキャッシュ、またはメインメモリとして用いることができる。メインメモリはキャッシュよりも容量が大きく、アクセス頻度の低いメモリである。
【0533】
また、図22(B)に示すように、駆動回路910L1、駆動回路910L2、及び駆動回路910L3が設けられている。駆動回路910L1は接続電極940L1を介してメモリセルアレイ920L1と接続されている。同様に駆動回路910L2は接続電極940L2を介してメモリセルアレイ920L2と、駆動回路910L3は接続電極940L3を介してメモリセルアレイ920L3と接続されている。
【0534】
なお、ここではキャッシュとして機能するメモリセルアレイを3つとした場合を示したが、1つまたは2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0535】
メモリセルアレイ920L1をキャッシュとして用いる場合、駆動回路910L1はキャッシュインターフェース989の一部として機能してもよいし、駆動回路910L1がキャッシュインターフェース989と接続される構成としてもよい。同様に、駆動回路910L2、駆動回路910L3も、キャッシュインターフェース989の一部として機能する、またはこれと接続される構成としてもよい。
【0536】
メモリセルアレイ920をキャッシュとして機能させるか、メインメモリとして機能させるかは、各駆動回路910が有するコントロール回路912によって決定される。コントロール回路912は、演算装置960から供給された信号に基づいて、半導体装置900が有する複数のメモリセル950の一部をRAMとして機能させることができる。
【0537】
半導体装置900は、複数のメモリセル950の一部をキャッシュとして機能させ、他の一部をメインメモリとして機能させることができる。すなわち半導体装置900はキャッシュとしての機能と、メインメモリとしての機能を併せ持つことができる。本発明の一態様に係る半導体装置900は、例えば、ユニバーサルメモリとして機能できる。
【0538】
また、一つのメモリセルアレイ920を有する層930を演算装置960に重ねて設けてもよい。図23(A)に半導体装置970Bの斜視図を示す。
【0539】
半導体装置970Bでは、一つのメモリセルアレイ920を複数のエリアに分けて、それぞれ異なる機能で使用することができる。図23(A)では、領域L1をL1キャッシュとして、領域L2をL2キャッシュとして、領域L3をL3キャッシュとして用いる場合の例を示している。
【0540】
また半導体装置970Bでは、領域L1乃至領域L3のそれぞれの容量を状況に応じて変えることができる。例えばL1キャッシュの容量を増やしたい場合には、領域L1の面積を大きくすることにより実現する。このような構成とすることで、演算処理の効率化を図ることができ、処理速度を向上させることができる。
【0541】
また、複数のメモリセルアレイを積層してもよい。図23(B)に半導体装置970Cの斜視図を示している。
【0542】
半導体装置970Cは、メモリセルアレイ920L1を有する層930L1と、その上にメモリセルアレイ920L2を有する層930L2と、その上にメモリセルアレイ920L3を有する層930L3とが積層されている。最も演算装置960に物理的に近いメモリセルアレイ920L1を上位のキャッシュに用い、最も遠いメモリセルアレイ920L3を下位のキャッシュまたはメインメモリに用いることができる。このような構成とすることで、各メモリセルアレイの容量を増大させることができるため、より処理能力を向上させることができる。
【0543】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0544】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る記憶装置の応用例について説明する。
【0545】
一般に、コンピュータなどの半導体装置では、用途に応じて様々な記憶装置が用いられる。図24(A)に、半導体装置に用いられる各種の記憶装置を階層ごとに示す。上層に位置する記憶装置ほど速い動作速度が求められ、下層に位置する記憶装置ほど大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。図24(A)では、最上層から順に、CPUなどの演算処理装置にレジスタ(register)として混載されるメモリ、L1キャッシュ(L1 cache)、L2キャッシュ(L2 cache)、L3キャッシュ(L3 cache)、メインメモリ(main memory)、ストレージ(storage)等がある。なお、ここではL3キャッシュまで有する例を示したが、さらに下位のキャッシュを有していてもよい。
【0546】
CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリは、演算結果の一時保存などに用いられるため、演算処理装置からのアクセス頻度が高い。よって、記憶容量よりも速い動作速度が求められる。また、レジスタは演算処理装置の設定情報などを保持する機能も有する。
【0547】
キャッシュは、メインメモリ(main memory)に保持されているデータの一部を複製して保持する機能を有する。使用頻繁が高いデータを複製してキャッシュに保持しておくことで、データへのアクセス速度を高めることができる。キャッシュに求められる記憶容量はメインメモリより少ないが、メインメモリよりも速い動作速度が求められる。また、キャッシュで書き換えられたデータは複製されてメインメモリに供給される。
【0548】
メインメモリは、ストレージ(storage)から読み出されたプログラム、データなどを保持する機能を有する。
【0549】
ストレージは、長期保存が必要なデータ、演算処理装置で使用する各種のプログラムなどを保持する機能を有する。よって、ストレージには動作速度よりも大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。例えば3D NANDなどの高容量かつ不揮発性の記憶装置を用いることができる。
【0550】
本発明の一態様に係る酸化物半導体を用いた記憶装置(OSメモリ(OS memory))は、動作速度が速く、長期間のデータ保持が可能である。そのため図24(A)に示すように、本発明の一態様に係る記憶装置は、キャッシュが位置する階層とメインメモリが位置する階層の双方に好適に用いることができる。また、本発明の一態様に係る記憶装置は、ストレージが位置する階層にも適用することができる。
【0551】
OSメモリとして先に述べたDOSRAM、NOSRAM、及びOS-SRAMを好適に用いることができる。
【0552】
また、これらのメモリのうち、キャッシュとしては、より動作速度が速いことが求められる。
【0553】
一方、メインメモリはキャッシュより容量が大きいことから、メインメモリに用いられる記憶素子は、より消費電力を低減できる構成であることが好ましい。本発明の一態様のOSメモリは、OSトランジスタの極小オフ電流の特徴を用いることにより、長い保持時間を有するメモリを実現することができる。メインメモリとしてOSメモリを用いることにより、長い保持時間を実現することができ、記憶装置の消費電力を低減することができる。メインメモリとして例えば、15ns以下の動作速度であり、かつ、保持時間が長いDOSRAMを用いることができる。シリコンを用いたトランジスタで構成されるDRAMの場合、保持時間は64ms(ミリ秒)程度である。OSトランジスタを用いたDOSRAMでは、その10倍程度の保持時間を実現することができる。保持時間を長くすることにより、リフレッシュ頻度を低くすることができ、記憶装置の消費電力を低減することができる。DOSRAMの書き込み時間及び読み出し時間はそれぞれ、15ns(ナノ秒)以下とすることにより、好適にメインメモリとして用いることができる。またDOSRAMの保持時間は0.64s(秒)以上であることが好ましい。本発明の一態様のDOSRAMの書き込み時間及び読み出し時間は15ns以下であることが好ましい。また、本発明の一態様のDOSRAMの書き込み時間及び読み出し時間の少なくとも一方は例えば、1ns以上15ns未満である。あるいは例えば2nsより大きく15ns未満である。また本発明の一態様のDOSRAMの保持時間は0.16s以上が好ましく、0.32s以上がより好ましく、0.64s以上であることがさらに好ましい。また、メモリは例えば、-40℃以上110℃以下の環境温度の範囲で動作できることが好ましい。
【0554】
OSメモリにおいて、図2図1等に示すトランジスタを用いることにより、プレナー型と比較してトランジスタの占有面積をより小さくすることができ、さらに、図14図15等に示すDOSRAMの構成を用いることにより、容量素子上にトランジスタを重ねて設けることにより、メモリセルを高密度に配置することができる。また、OSトランジスタを用いることにより、速い動作速度と、長時間のデータ保持とを実現することができる。
【0555】
また、図24(B)では、キャッシュの一部にSRAMを、他の一部に本発明の一態様のOSメモリを適用した場合の例を示す。
【0556】
キャッシュのうち、最も下位に位置するものを、LLC(Last Level cache)と呼ぶことができる。LLCはこれよりも上位のキャッシュよりも速い動作速度は求められないものの、大きな記憶容量を有することが望ましい。本発明の一態様のOSメモリは動作速度が速く、長期間のデータ保持が可能であるため、LLCに好適に用いることができる。なお、本発明の一態様のOSメモリは、FLC(Final Level cache)にも適用することができる。
【0557】
例えば、図24(B)に示すように、上位のキャッシュ(L1キャッシュ、L2キャッシュ等)にSRAMを用い、LLCに本発明の一態様のOSメモリを用いる構成とすることができる。また、図24(B)に示すように、メインメモリにはOSメモリだけでなくDRAMを適用することもできる。
【0558】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0559】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について説明する。
【0560】
本発明の一態様の半導体装置は、表示装置、または、当該表示装置を有するモジュールに用いることができる。当該表示装置を有するモジュールとしては、当該表示装置にフレキシブルプリント回路基板(Flexible printed circuit、以下、FPCと記す)もしくはTCP(Tape Carrier Package)等のコネクタが取り付けられたモジュール、COG(Chip On Glass)方式もしくはCOF(Chip On Film)方式等により集積回路(IC)が実装されたモジュール等が挙げられる。
【0561】
また、本実施の形態の表示装置はタッチパネルとしての機能を有していてもよい。例えば、表示装置には、指などの被検知体の近接または接触を検知できる様々な検知素子(センサ素子ともいえる)を適用することができる。
【0562】
センサの方式としては、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、及び、感圧方式が挙げられる。
【0563】
静電容量方式としては、例えば、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式がある。また、投影型静電容量方式としては、例えば、自己容量方式、相互容量方式がある。相互容量方式を用いると、同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0564】
タッチパネルとしては、例えば、アウトセル型、オンセル型、及び、インセル型が挙げられる。なお、インセル型のタッチパネルは、表示素子を支持する基板と対向基板のうち一方または双方に、検知素子を構成する電極が設けられた構成をいう。
【0565】
[表示モジュール]
図25(A)に、表示モジュール170の斜視図を示す。表示モジュール170は、表示装置600Aと、FPC298と、を有する。なお、表示モジュール170が有する表示装置は表示装置600Aに限られず、後述する表示装置600Bであってもよい。
【0566】
表示モジュール170は、基板291及び基板299を有する。表示モジュール170は、表示部297を有する。表示部297は、表示モジュール170における画像を表示する領域であり、後述する画素部294に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0567】
図25(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部292と、回路部292上の画素回路部293と、画素回路部293上の画素部294と、が積層されている。また、基板291上の画素部294と重ならない部分に、FPC298と接続するための端子部295が設けられている。端子部295と回路部292とは、複数の配線により構成される配線部296により電気的に接続されている。
【0568】
本発明の一態様の半導体装置は、回路部292及び画素回路部293の一方または双方に適用することができる。
【0569】
画素部294は、周期的に配列した複数の画素294aを有する。図25(B)の右側に、1つの画素294aの拡大図を示している。図25(B)では、1つの画素294aが、赤色の光を呈する副画素130R、緑色の光を呈する副画素130G、及び、青色の光を呈する副画素130Bを有する例を示す。
【0570】
副画素は、表示素子を有する。表示素子としては、様々な素子を用いることができ、例えば、液晶素子及び発光素子が挙げられる。その他、シャッター方式または光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、または電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示素子などを用いることもできる。また、光源と、量子ドット材料による色変換技術と、を用いたQLED(Quantum-dot LED)を用いてもよい。
【0571】
発光素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、半導体レーザなどの、自発光型の発光素子が挙げられる。LEDとして、例えば、ミニLED、マイクロLEDなどを用いることができる。
【0572】
本実施の形態の表示装置における画素の配列に特に限定はなく、様々な方法を適用することができる。画素の配列としては、例えば、ストライプ配列、Sストライプ配列、マトリクス配列、デルタ配列、ベイヤー配列、及びペンタイル配列が挙げられる。図25(B)では、画素の配列にストライプ配列が適用された場合を例に示す。
【0573】
画素回路部293は、周期的に配列した複数の画素回路293aを有する。
【0574】
1つの画素回路293aは、1つの画素294aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。1つの画素回路293aは、1つの発光素子の発光を制御する回路が3つ設けられる構成とすることができる。例えば、画素回路293aは、1つの発光素子につき、1つの選択トランジスタと、1つの電流制御用トランジスタ(駆動トランジスタ)と、容量と、を少なくとも有する構成とすることができる。このとき、選択トランジスタのゲートにはゲート信号が、ソースにはソース信号が、それぞれ入力される。これにより、アクティブマトリクス型の表示装置が実現されている。
【0575】
回路部292は、画素回路部293の各画素回路293aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、及び、ソース線駆動回路の一方または双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0576】
FPC298は、外部から回路部292にビデオ信号または電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC298上にICが実装されていてもよい。
【0577】
表示モジュール170は、画素部294の下側に画素回路部293及び回路部292の一方または双方が重ねて設けられた構成とすることができるため、表示部297の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。また、画素294aを極めて高密度に配置することが可能で、表示部297の精細度を極めて高くすることができる。
【0578】
このような表示モジュール170は、極めて高精細であることから、HMDなどのVR向け機器またはメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール170の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール170は極めて高精細な表示部297を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール170はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。例えば腕時計などの装着型の電子機器の表示部に好適に用いることができる。
【0579】
[表示装置の構成例1]
図26に、表示装置600Aの断面図を示す。表示装置600Aは、MML(メタルマスクレス)構造が適用された表示装置の一例である。つまり、表示装置600Aは、ファインメタルマスクを用いずに作製された発光素子を有する。
【0580】
MML構造が適用された表示装置が有する発光素子における島状の発光層は、発光層を一面に成膜した後、フォトリソグラフィ法を用いて加工することで形成される。したがって、これまで実現が困難であった高精細の表示装置または高開口率の表示装置を実現することができる。さらに、発光層を各色で作り分けることができるため、極めて鮮やかでコントラストが高く、表示品位の高い表示装置を実現できる。例えば、表示装置が、青色の光を発する発光素子、緑色の光を発する発光素子、及び赤色の光を発する発光素子の3種類で構成される場合、発光層の成膜、及び、フォトリソグラフィによる加工を3回繰り返すことで、3種類の島状の発光層を形成することができる。
【0581】
MML構造のデバイスは、メタルマスクを用いることなく製造することができるため、メタルマスクの合わせ精度に起因する精細度の上限を超えることができる。また、メタルマスクを用いずにデバイスを作製する場合、メタルマスクの製造に係る設備、及び、メタルマスクの洗浄工程を不要にすることができる。また、フォトリソグラフィによる加工には、トランジスタを作製する際に用いる装置と共通または同様の装置を用いることができるため、MML構造のデバイスを作製するために特別な装置を導入する必要はない。このように、MML構造は、製造コストを低く抑えることが可能となるため、デバイスの大量生産に適している。
【0582】
MML構造が適用された表示装置では、例えば、ペンタイル配列などの特殊な画素配列を適用し疑似的に精細度を高める必要がないため、R、G、Bの副画素をそれぞれ一方向に配列させた、いわゆるストライプ配列で、かつ、高精細(例えば500ppi以上、1000ppi以上、2000ppi以上、3000ppi以上、または5000ppi以上)の表示装置を実現することができる。
【0583】
また、発光層上に犠牲層を設けることで、表示装置の作製工程中に発光層が受けるダメージを低減し、発光素子の信頼性を高めることができる。なお、犠牲層は、完成した表示装置に残存していてもよく、作製工程中に除去されていてもよい。例えば、図26及び図27に示す犠牲層618aは、発光層上に設けられていた犠牲層の一部である。
【0584】
また、エリアマスクを用いた成膜工程と、レジストマスクを用いた加工工程と、を採用することで、比較的簡単なプロセスにて発光素子を作製することができる。
【0585】
図26は、本発明の一態様の表示装置600A(半導体装置)の断面概略図である。表示装置600Aは、基板410上に画素回路、駆動回路などが設けられた構成となっている。なお、図26の表示装置600Aでは、素子層620、素子層630、及び素子層660に加えて、配線層670についても図示している。配線層670は、配線が設けられる層である。
【0586】
素子層630には、表示装置の画素回路が設けられることが好ましい。素子層620には、表示装置の駆動回路(ゲートドライバ及びソースドライバのうち一方または双方)が設けられることが好ましい。また、素子層620には、演算回路、記憶回路などの各種回路が1種以上設けられていてもよい。
【0587】
素子層620は、一例として、基板410を有し、基板410上には、トランジスタ400dが形成されている。また、トランジスタ400dの上方には、配線層670が設けられており、配線層670には、トランジスタ400dを、素子層630に設けられた導電層またはトランジスタなど(図26では導電層514)と電気的に接続する配線が設けられている。また、配線層670の上方には、素子層630、及び素子層660が設けられており、素子層630は、一例として、トランジスタMTCKなどを有する。素子層660は、発光素子650(図26では、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650B)などを有する。
【0588】
トランジスタ400dは、素子層620に含まれているトランジスタの一例である。また、トランジスタMTCKは、素子層630に含まれるトランジスタの一例である。また、発光素子(発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650B)は、素子層660に含まれる発光素子の一例である。
【0589】
トランジスタMTCKとして例えば、OSトランジスタを用いることができる。図26には、トランジスタMTCKとして、先の実施の形態に示すトランジスタ200を適用する例を示す。
【0590】
基板410には、例えば、半導体基板(例えば、シリコンまたはゲルマニウムを材料とした単結晶基板)を用いることができる。また、基板410には、半導体基板以外としては、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、サファイアガラス基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、または基材フィルムを用いることができる。なお、本実施の形態では、基板410は、シリコンを材料として有する半導体基板として説明する。そのため、素子層620に含まれるトランジスタは、Siトランジスタとすることができる。
【0591】
トランジスタ400dは、素子分離層412と、導電層416と、絶縁層415と、絶縁層417と、基板410の一部からなる半導体領域413と、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域414a及び低抵抗領域414bと、を有する。このため、トランジスタ400dは、Siトランジスタとなっている。なお、図26では、トランジスタ400dのソースまたはドレインの一方が、導電層428、導電層430、及び、導電層456を介して、素子層630に設けられた導電層514と電気的に接続されている構成を示しているが、本発明の一態様の表示装置の電気的な接続構成は、これに限定されない。
【0592】
トランジスタ400dは、例えば、半導体領域413の上面及びチャネル幅方向の側面が、ゲート絶縁層として機能する絶縁層415を介して導電層416に覆われる構成にすることによって、Fin型にすることができる。トランジスタ400dをFin型にすることにより、実効上のチャネル幅が増大することができ、トランジスタ400dのオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ400dのオフ特性を向上させることができる。また、トランジスタ400dは、Fin型でなくプレーナ型としてもよい。
【0593】
なお、トランジスタ400dは、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。またはトランジスタ400dを複数設け、pチャネル型、及びnチャネル型の双方を用いてもよい。
【0594】
半導体領域413のチャネルが形成される領域と、その近傍の領域と、ソース領域またはドレイン領域となる低抵抗領域414a及び低抵抗領域414bと、には、シリコン系半導体を含むことが好ましく、具体的には、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、上述した各領域は、例えば、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、または窒化ガリウムを用いて形成されてもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。または、トランジスタ400dは、例えば、ヒ化ガリウムとヒ化アルミニウムガリウムを用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0595】
ゲート電極として機能する導電層416には、ヒ素、またはリンといったn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素またはアルミニウムといったp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料を用いることができる。または、導電層416には、例えば、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料といった導電性材料を用いることができる。
【0596】
なお、導電層の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電層の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電層に窒化チタン、及び窒化タンタルの一方または双方の材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電層にタングステン及びアルミニウムの一方または双方の金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0597】
素子分離層412は、基板410上に形成されている複数のトランジスタ同士を分離するために設けられている。素子分離層は、例えば、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法、STI(Shallow Trench Isolation)法、またはメサ分離法を用いて形成することができる。
【0598】
図26に示すトランジスタ400d上には、絶縁層420及び絶縁層422が、基板410側から順に積層して設けられている。
【0599】
絶縁層420及び絶縁層422として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムから選ばれた一以上を用いることができる。
【0600】
絶縁層422は、絶縁層420及び絶縁層422に覆われているトランジスタ400dなどによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁層422の上面は、平坦性を高めるためにCMP法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0601】
絶縁層420及び絶縁層422には、絶縁層422より上方に設けられているトランジスタMTCKなどと接続する導電層428が埋め込まれている。なお、導電層428は、プラグまたは配線としての機能を有する。
【0602】
表示装置600Aでは、トランジスタ400d上に配線層670が設けられている。配線層670は、例えば、絶縁層424と、絶縁層426と、導電層430と、絶縁層450と、絶縁層452と、絶縁層454と、導電層456と、を有する。
【0603】
絶縁層422上及び導電層428上には、絶縁層424と絶縁層426とが順に積層して設けられている。また、導電層428に重なる領域において、絶縁層424と絶縁層426とには、開口部が形成されている。また、当該開口部には導電層430が埋め込まれている。
【0604】
また、絶縁層426上、及び導電層430上には、絶縁層450と絶縁層452と絶縁層454とが順に積層して設けられている。また、導電層430に重なる領域において、絶縁層450と絶縁層452と絶縁層454とには、開口部が形成されている。また、当該開口部には導電層456が埋め込まれている。
【0605】
導電層430及び導電層456は、トランジスタ400dと接続するプラグまたは配線としての機能を有する。
【0606】
なお、例えば、絶縁層424及び絶縁層450は、後述する絶縁層592と同様に、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層426、絶縁層452、及び絶縁層454としては、後述する絶縁層594と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層426、絶縁層452、及び絶縁層454は、層間絶縁膜及び平坦化膜としての機能を有する。
【0607】
また、導電層456は、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する導電層を含むことが好ましい。
【0608】
なお、水素に対するバリア性を有する導電層としては、例えば、窒化タンタルを用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ400dからの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁層450と接する構造であることが好ましい。
【0609】
また、絶縁層454及び導電層456の上方には、絶縁層513が設けられている。また、絶縁層513上には、絶縁層IS1が設けられている。また、絶縁層IS1及び絶縁層513には、プラグまたは配線として機能する導電層が埋め込まれている。これにより、トランジスタ400dを、素子層630に設けられた導電層514と電気的に接続することができる。または、トランジスタMTCKのソースまたはドレインの一方とトランジスタ400dのソースまたはドレインの一方とを電気的に接続してもよい。
【0610】
絶縁層IS1上には、トランジスタMTCKが設けられている。また、トランジスタMTCK上には、絶縁層IS3、絶縁層574、及び絶縁層581がこの順に積層して設けられている。また、絶縁層IS3と絶縁層574と絶縁層581とには、プラグまたは配線として機能する導電層MPGが埋め込まれている。
【0611】
絶縁層574は、水及び水素(例えば、水素原子及び水素分子の一方または双方)といった不純物の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。つまり、絶縁層574は、当該不純物がトランジスタMTCKに混入することを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁層574は、酸素(例えば、酸素原子及び酸素分子の一方または双方)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁層574は、絶縁層IS2及び絶縁層IS3より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁層IS2として、先の実施の形態の絶縁層280を適用することができる。
【0612】
そのため、絶縁層574は、水及び水素といった不純物の拡散を抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁層574は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(例えば、NO、NO、及びNO)、及び銅原子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、及び酸素分子の一方または双方)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0613】
水及び水素といった不純物と、酸素と、の透過を抑制する機能を有する絶縁層には、実施の形態1で例示した、不純物及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層に用いることができる材料を適用できる。
【0614】
特に、絶縁層574には、酸化アルミニウム、または窒化シリコンを用いることが好ましい。これにより、水及び水素といった不純物が絶縁層574の上方からトランジスタMTCKに拡散することを抑制できる。または、絶縁層IS3等に含まれる酸素が、絶縁層574の上方に、拡散することを抑制できる。
【0615】
絶縁層581は、層間膜として機能する膜であって、絶縁層574よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁層581の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁層581の比誘電率は、絶縁層574の比誘電率の、0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。絶縁層581を誘電率が低い層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0616】
また、絶縁層581は、膜中の水及び水素といった不純物の濃度が低減されていることが好ましい。この場合、絶縁層581には、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、または窒化シリコンを用いることができる。また、絶縁層581には、例えば、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素と窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、及び空孔を有する酸化シリコンといった材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。また、絶縁層581には、樹脂を用いることができる。また、絶縁層581に適用できる材料は、上述した材料を適宜組み合わせたものとしてもよい。
【0617】
絶縁層574上及び絶縁層581上には、絶縁層592、及び絶縁層594がこの順に積層して設けられている。
【0618】
また、絶縁層592には、基板410、トランジスタMTCKから、絶縁層592より上方の領域(例えば、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bなどが設けられている領域)に、水、及び水素といった不純物が拡散しないようなバリア性を有する絶縁膜(バリア性絶縁膜と呼称する)を用いることが好ましい。したがって、絶縁層592は、水素原子、水素分子、及び水分子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、状況によっては、絶縁層592は、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(例えば、NO、NO、及びNO)、及び銅原子といった不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、及び酸素分子の一方または双方)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。
【0619】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。
【0620】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectrometry)を用いて分析することができる。例えば、絶縁層424の水素の脱離量は、TDSにおいて、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁層424の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm以下、好ましくは5×1015atoms/cm以下であればよい。
【0621】
絶縁層594は、絶縁層581と同様に、誘電率が低い層間膜とすることが好ましい。このため、絶縁層594には、絶縁層581に適用できる材料を用いることができる。
【0622】
なお、絶縁層594は、絶縁層592よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁層594の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁層594の比誘電率は、絶縁層592の比誘電率の、0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。絶縁層594を誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0623】
また、絶縁層GI1及び絶縁層IS3には、プラグまたは配線として機能する導電層MPGが埋め込まれ、絶縁層592及び絶縁層594には、プラグまたは配線として機能する導電層596が埋め込まれている。特に、導電層MPG及び導電層596は、絶縁層594より上方に設けられている発光素子などと電気的に接続されている。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電層は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電層の一部が配線として機能する場合、及び導電層の一部がプラグとして機能する場合もある。絶縁層GI1として、先の実施の形態の絶縁層250を適用することができる。
【0624】
各プラグ、及び配線(例えば、導電層MPG、導電層428、導電層430、導電層456、導電層514、及び導電層596)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、及び金属酸化物材料から選ばれた一以上の導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステン、またはモリブデンといった高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウム、または銅といった低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0625】
絶縁層594上及び導電層596上には、絶縁層598及び絶縁層599が順に形成されている。
【0626】
絶縁層598は、一例として、絶縁層592と同様に、水素、酸素、及び水から選ばれた一以上に対するバリア性を有する絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層599としては、絶縁層594と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁層を用いることが好ましい。また、絶縁層599は、層間絶縁膜及び平坦化膜としての機能を有する。
【0627】
絶縁層599上には、発光素子650及び接続部640が形成されている。
【0628】
接続部640は、カソードコンタクト部と呼ばれる場合があり、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bのそれぞれのカソード電極に電気的に接続されている。図26に示す接続部640では、導電層611a乃至導電層611cと同一の工程、同一の材料で形成された導電層が、後述する共通電極615と、電気的に接続されている。なお、図26では、当該導電層が、後述する共通層614を介して、共通電極615と電気的に接続される例を示すが、当該導電層と共通電極615とが直接接していてもよい。
【0629】
なお、接続部640は、平面視において表示部の四辺を囲むように設けられてもよく、または、表示部内(例えば、隣り合う発光素子650同士の間)に設けられてもよい(図示しない)。
【0630】
発光素子650Rは、画素電極として、導電層611aを有する。同様に、発光素子650Gは、画素電極として、導電層611bを有し、発光素子650Bは、画素電極として、導電層611cを有する。
【0631】
導電層611a、導電層611b、導電層611cは、それぞれ、絶縁層599に埋め込まれた導電層(プラグ)を介して、絶縁層594に埋め込まれている導電層596と接続されている。
【0632】
発光素子650Rは、層613aと、層613a上の共通層614と、共通層614上の共通電極615と、を有する。また、発光素子650Gは、層613bと、層613b上の共通層614と、共通層614上の共通電極615と、を有する。また、発光素子650Bは、層613cと、層613c上の共通層614と、共通層614上の共通電極615と、を有する。
【0633】
発光素子の一対の電極(画素電極及び共通電極)を形成する材料としては、金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを適宜用いることができる。当該材料としては、具体的には、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、インジウム、スズ、モリブデン、タンタル、タングステン、パラジウム、金、白金、銀、イットリウム、ネオジムなどの金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金が挙げられる。また、当該材料としては、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物、ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、及びIn-W-Zn酸化物などを挙げることができる。また、当該材料としては、アルミニウム、ニッケル、及びランタンの合金(Al-Ni-La)等のアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)、並びに、銀とマグネシウムの合金、及び、銀とパラジウムと銅の合金(Ag-Pd-Cu、APCとも記す)等の銀を含む合金が挙げられる。その他、当該材料としては、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム)、ユウロピウム、イッテルビウムなどの希土類金属及びこれらを適宜組み合わせて含む合金、グラフェン等が挙げられる。
【0634】
表示装置600Aには、SBS構造が適用されている。SBS構造は、発光素子ごとに材料及び構成を最適化することができるため、材料及び構成の選択の自由度が高まり、輝度の向上及び信頼性の向上を図ることが容易となる。
【0635】
また、表示装置600Aは、トップエミッション型である。トップエミッション型は、トランジスタ等を発光素子の発光領域と重ねて配置できるため、ボトムエミッション型に比べて画素の開口率を高めることができる。
【0636】
なお、層613aは、導電層611aの上面及び側面を覆うように形成されている。同様に、層613bは、導電層611bの上面及び側面を覆うように形成されている。また、同様に、層613cは、導電層611cの上面及び側面を覆うように形成されている。したがって、導電層611a、導電層611b、及び導電層611cが設けられている領域全体を、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bの発光領域として用いることができるため、画素の開口率を高めることができる。
【0637】
発光素子650Rにおいて、層613aと共通層614をまとめてEL層と呼ぶことができる。また、同様に、発光素子650Gにおいて、層613bと共通層614をまとめてEL層と呼ぶこともできる。また、同様に、発光素子650Bにおいて、層613cと共通層614をまとめてEL層と呼ぶことができる。
【0638】
EL層は、少なくとも発光層を有する。発光層は、1種または複数種の発光物質を有する。発光物質としては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、または赤色などの発光色の光を呈する物質を適宜用いる。また、発光物質として、近赤外光を発する物質を用いることもできる。
【0639】
発光素子が有する発光物質としては、例えば、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)、及び、無機化合物(量子ドット材料等)が挙げられる。
【0640】
発光層は、発光物質(ゲスト材料)に加えて、1種または複数種の有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)を有していてもよい。1種または複数種の有機化合物としては、正孔輸送性の高い物質(正孔輸送性材料)及び電子輸送性の高い物質(電子輸送性材料)の一方または双方を用いることができる。また、1種または複数種の有機化合物として、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)、またはTADF材料を用いてもよい。
【0641】
EL層は、発光層の他に、正孔注入性の高い物質を含む層(正孔注入層)、正孔輸送性材料を含む層(正孔輸送層)、電子ブロック性の高い物質を含む層(電子ブロック層)、電子注入性の高い物質を含む層(電子注入層)、電子輸送性材料を含む層(電子輸送層)、及び、正孔ブロック性の高い物質を含む層(正孔ブロック層)のうち一つまたは複数を有することができる。その他、EL層は、バイポーラ性の物質及びTADF材料の一方または双方を含んでいてもよい。
【0642】
発光素子には低分子化合物及び高分子化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。発光素子を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0643】
発光素子には、シングル構造(発光ユニットを1つだけ有する構造)を適用してもよく、タンデム構造(発光ユニットを複数有する構造)を適用してもよい。発光ユニットは、少なくとも1層の発光層を有する。タンデム構造は、複数の発光ユニットが電荷発生層を介して直列に接続された構成である。電荷発生層は、一対の電極間に電圧を印加したときに、2つの発光ユニットの一方に電子を注入し、他方に正孔を注入する機能を有する。タンデム構造とすることで、高輝度発光が可能な発光素子とすることができる。また、タンデム構造は、シングル構造と比べて、同じ輝度を得るために必要な電流を低減できるため、信頼性を高めることができる。なお、タンデム構造をスタック構造と呼んでもよい。
【0644】
また、発光素子にマイクロキャビティ構造を付与することにより色純度を高めることができる。
【0645】
層613a、層613b、及び層613cは、フォトリソグラフィ法により島状に加工されている。そのため、層613a、層613b、及び層613cは、それぞれその端部において、上面と側面との成す角が90度に近い形状となる。一方、例えば、FMM(Fine Metal Mask)を用いて形成された有機膜は、その厚さが端部に近いほど徐々に薄くなる傾向があり、例えば端部まで1μm以上10μm以下の範囲にわたって、上面がスロープ状に形成されるため、上面と側面の区別が困難な形状となる。
【0646】
層613a、層613b、及び層613cは、上面と側面の区別が明瞭となる。これにより、隣接する層613aと層613bにおいて、層613aの側面の一と、層613bの側面の一は、互いに対向して配置される。これは、層613a、層613b、及び層613cのうちいずれの組み合わせにおいても同様である。
【0647】
層613a、層613b、及び層613cは、少なくとも発光層を有する。例えば、層613aが、赤色の光を発する発光層を有し、層613bが緑色の光を発する発光層を有し、層613cが、青色の光を発する発光層を有する構成であると好ましい。また、それぞれの発光層は、上記以外の色としては、シアン、マゼンタ、黄、または白を適用することができる。
【0648】
層613a、層613b、及び層613cは、発光層と、発光層上のキャリア輸送層(電子輸送層または正孔輸送層)と、を有することが好ましい。層613a、層613b、及び層613cの表面は、表示装置の作製工程中に露出する場合があるため、キャリア輸送層を発光層上に設けることで、発光層が最表面に露出することを抑制し、発光層が受けるダメージを低減することができる。これにより、発光素子の信頼性を高めることができる。
【0649】
共通層614は、例えば電子注入層、または正孔注入層を有する。または、共通層614は、電子輸送層と電子注入層とを積層して有していてもよく、正孔輸送層と正孔注入層とを積層して有していてもよい。共通層614は、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bで共有されている。なお、共通層614は設けられていなくてもよく、発光素子が有するEL層全体が、層613a、層613b、及び層613cのように、島状に設けられていてもよい。
【0650】
また、共通電極615は、発光素子650R、発光素子650G、及び発光素子650Bで共有されている。また、図26に示すように、複数の発光素子が共通して有する共通電極615は、接続部640に含まれている導電層に電気的に接続される。
【0651】
絶縁層625は、水及び酸素の一方または双方に対するバリア絶縁層としての機能を有することが好ましい。また、絶縁層625は、水及び酸素の一方または双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁層625は、水及び酸素の一方または双方を捕獲、または固着する(ゲッタリングともいう)機能を有することが好ましい。絶縁層625が、バリア絶縁層としての機能、またはゲッタリング機能を有することで、外部から各発光素子に拡散しうる不純物(代表的には、水及び酸素の一方または双方)の侵入を抑制することが可能な構成となる。当該構成とすることで、信頼性の高い発光素子、さらには、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0652】
また、絶縁層625は、不純物濃度が低いことが好ましい。これにより、絶縁層625からEL層に不純物が混入し、EL層が劣化することを抑制することができる。また、絶縁層625において、不純物濃度を低くすることで、水及び酸素の一方または双方に対するバリア性を高めることができる。例えば、絶縁層625は、水素濃度及び炭素濃度の一方、好ましくは双方が十分に低いことが望ましい。
【0653】
絶縁層627としては、有機材料を有する絶縁層を好適に用いることができる。有機材料としては、感光性の有機樹脂を用いることが好ましく、例えば、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いればよい。なお、本明細書などにおいて、アクリル樹脂とは、ポリメタクリル酸エステル、またはメタクリル樹脂だけを指すものではなく、広義のアクリル系ポリマー全体を指す場合がある。
【0654】
絶縁層627に用いることができる有機材料は上記に限られるものではない。例えば、絶縁層627には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、またはこれら樹脂の前駆体を適用することができる場合がある。また、絶縁層627として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、またはアルコール可溶性のポリアミド樹脂といった有機材料を適用することができる場合がある。また、絶縁層627には、例えば、感光性の樹脂として、フォトレジストを用いることができる場合がある。なお、感光性の樹脂としては、ポジ型の材料、またはネガ型の材料が挙げられる。
【0655】
絶縁層627には可視光を吸収する材料を用いてもよい。絶縁層627が発光素子からの発光を吸収することで、発光素子から絶縁層627を介して隣接する発光素子に光が漏れること(迷光)を抑制することができる。これにより、表示装置の表示品位を高めることができる。また、表示装置に偏光板を用いなくても、表示品位を高めることができるため、表示装置の軽量化及び薄型化を図ることができる。
【0656】
可視光を吸収する材料としては、黒色などの顔料を含む材料、染料を含む材料、光吸収性を有する樹脂材料(例えば、ポリイミド)、及び、カラーフィルタに用いることのできる樹脂材料(カラーフィルタ材料)が挙げられる。特に、2色、または3色以上のカラーフィルタ材料を積層または混合した樹脂材料を用いると、可視光の遮蔽効果を高めることができるため好ましい。特に3色以上のカラーフィルタ材料を混合させることで、黒色または黒色近傍の樹脂層とすることが可能となる。
【0657】
絶縁層627は、例えば、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、またはナイフコートといった湿式の成膜方法を用いて形成することができる。特に、スピンコートにより、絶縁層627となる有機絶縁膜を形成することが好ましい。
【0658】
絶縁層627は、EL層の耐熱温度よりも低い温度で形成する。絶縁層627を形成する際の基板温度としては、代表的には、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0659】
なお、絶縁層627は、側面にテーパ形状を有していることが好ましい。絶縁層627の側面端部を順テーパ形状(90°未満であり、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましい)にすることで、絶縁層627の側面端部上に設けられる、共通層614及び共通電極615に、段切れ、または局所的な薄膜化などを生じさせることなく、被覆性良く成膜することができる。これにより、共通層614及び共通電極615の面内均一性を向上させることができ、表示装置の表示品位を向上させることができる。
【0660】
また、表示装置の断面視において、絶縁層627の上面は凸曲面形状を有することが好ましい。絶縁層627の上面の凸曲面形状は、中心に向かってなだらかに膨らんだ形状であることが好ましい。絶縁層627をこのような形状にすることで、絶縁層627上全体で、共通層614及び共通電極615を被覆性良く成膜することができる。
【0661】
また、絶縁層627は、二つのEL層の間の領域(例えば、層613aと層613bとの間の領域)に形成される。このとき、絶縁層627の一部が、一方のEL層(例えば、層613a)の側面端部と、もう一方のEL層(例えば、層613b)の側面端部に挟まれる位置に配置されることになる。
【0662】
また、絶縁層627の一方の端部が画素電極として機能する導電層611aと重なり、絶縁層627の他方の端部が画素電極として機能する導電層611bと重なることが好ましい。このような構造にすることで、絶縁層627の端部を層613a(層613b)の平坦または概略平坦な領域の上に形成することができる。よって、絶縁層627のテーパ形状を、上記の通り加工することが比較的容易になる。
【0663】
以上のように、絶縁層627などを設けることにより、層613aの平坦または概略平坦な領域から層613bの平坦または概略平坦な領域まで、共通層614及び共通電極615に段切れ箇所、及び局所的に膜厚が薄い箇所が形成されることを防止できる。よって、各発光素子間において、共通層614及び共通電極615に、段切れ箇所に起因する接続不良、及び局所的に膜厚が薄い箇所に起因する電気抵抗の上昇が発生することを抑制できる。
【0664】
本実施の形態の表示装置は、発光素子間の距離を狭くすることができる。具体的には、発光素子間の距離、EL層間の距離、または画素電極間の距離を、10μm未満、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、200nm以下、100nm以下、90nm以下、70nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、または10nm以下とすることができる。別言すると、本実施の形態の表示装置は、隣接する2つの島状のEL層の間隔が1μm以下の領域を有し、好ましくは0.5μm(500nm)以下の領域を有し、さらに好ましくは100nm以下の領域を有する。このように、各発光素子間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する表示装置を提供することができる。
【0665】
発光素子650上には、保護層631が設けられている。保護層631は、発光素子650を保護するパッシベーション膜として機能する膜である。発光素子を覆う保護層631を設けることで、発光素子に水及び酸素といった不純物が入り込むことを抑制し、発光素子650の信頼性を高めることができる。保護層631は、少なくとも無機絶縁膜を含む単層構造または積層構造とすることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などの酸化物膜または窒化物膜が挙げられる。または、保護層631としてインジウムガリウム酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などの半導体材料を用いてもよい。なお、保護層631は、ALD法、CVD法、及びスパッタリング法などを用いて形成できる。なお、保護層631として、無機絶縁膜を含む構成について例示したがこれに限定されない。例えば、保護層631として、無機絶縁膜と、有機絶縁膜との積層構造としてもよい。
【0666】
保護層631と、基板610と、は接着層607を介して接着されている。発光素子の封止には、固体封止構造または中空封止構造などが適用できる。図26では、基板410と基板610との間の空間が、接着層607で充填されており、固体封止構造が適用されている。または、当該空間を不活性ガス(窒素またはアルゴンなど)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層607は、発光素子と重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層607とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0667】
接着層607には、紫外線硬化型の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、または熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤といった各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シートを用いてもよい。
【0668】
表示装置600Aは、トップエミッション型である。発光素子が発する光は、基板610側に射出される。そのため、基板610には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。例えば、基板610には、基板410に適用できる基板のうち、可視光に対する透過性が高い基板を選択すればよい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極615)は可視光を透過する材料を含む。
【0669】
なお、本発明の一態様の表示装置は、トップエミッション型ではなく、発光素子が発する光が基板410側に射出されるボトムエミッション型としてもよい。なお、この場合、基板410には、可視光に対する透過性が高い基板を選択する。
【0670】
[表示装置の構成例2]
図27に、表示装置600Bの断面図を示す。表示装置600Bの素子層660は、層613a、層613b、及び層613cに、同一の構成を適用し、さらに、着色層628R、着色層628G、及び着色層628Bを設けた点で、表示装置600Aの素子層660と異なる。また表示装置600Bは、素子層620を有さず、素子層635を有する点で、表示装置600Aと異なる。素子層635は、素子層630と同様の構成を有する。
【0671】
表示装置600Bは、基板541及び基板610に可撓性を有する基板を用いることで、可撓性を有する表示装置(フレキシブルディスプレイともいう)とすることができる。基板541は、接着層543によって絶縁層545と貼り合わされている。基板610は、接着層607によって保護層631と貼り合わされている。
【0672】
表示装置600Bの素子層660は、層613a、層613b、及び層613cが同一の構成を有し、着色層628R、着色層628G、及び着色層628Bを有する。
【0673】
層613a、層613b、及び層613cは、同一の工程、同一の材料で形成される。また、層613a、層613b、及び層613cは、互いに離隔されている。EL層を発光素子ごとに島状に設けることで、隣接する発光素子間のリーク電流(横方向リーク電流、横リーク電流、またはラテラルリーク電流と呼称する場合がある)を抑制することができる。これにより、クロストークに起因した意図しない発光を防ぐことができ、かつ隣接する発光素子間の色の混色を抑制することができるため、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。
【0674】
例えば、図27に示す発光素子650R、650G、650Bは、白色の光を発する。発光素子650R、650G、650Bが発する白色の光が、着色層628R、着色層628G、及び着色層628Bを透過することで、所望の色の光を得ることができる。
【0675】
なお、マイクロキャビティ構造を適用することで、白色の光を発する構成の発光素子は、赤色、緑色、または青色などの特定の波長の光が強められて発光する場合もある。
【0676】
発光素子650Rの発光は、着色層628Rを介して表示装置600Bの外部に赤色の光として取り出される。同様に、発光素子650Gの発光は、着色層628Gを介して表示装置600Bの外部に緑色の光として取り出される。発光素子650Bの発光は、着色層628Bを介して表示装置600Bの外部に青色の光として取り出される。
【0677】
白色の光を発する発光素子には、タンデム構造を用いることが好ましい。
【0678】
または、例えば、図27に示す発光素子650R、650G、650Bは、青色の光を発する。このとき、層613a、層613b、及び層613cは、青色の光を発する発光層を1層以上有する。青色の光を呈する副画素においては、発光素子650Bが発する青色の光を取り出すことができる。また、赤色の光を呈する副画素及び緑色の光を呈する副画素においては、発光素子650Rと着色層628Rの間、及び、発光素子650Gと着色層628Gの間に、色変換層を設けることで、発光素子650Rまたは発光素子650Gが発する青色の光をより長波長の光に変換し、赤色または緑色の光を取り出すことができる。色変換層を透過した光を、着色層を介して取り出すことで、所望の色の光以外を着色層で吸収し、副画素が呈する光の色純度を高めることができる。
【0679】
着色層は特定の波長域の光を選択的に透過し、他の波長域の光を吸収する有色層である。例えば、赤色の波長域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長域の光を透過する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長域の光を透過する青色(B)のカラーフィルタなどを用いることができる。各着色層には、金属材料、樹脂材料、顔料、染料のうち一つまたは複数を用いることができる。着色層は、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0680】
表示装置600Bの素子層630は、表示装置600Aの素子層630と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0681】
表示装置600Bは、素子層635と、素子層635上の素子層630と、を有する。素子層635は、素子層630と同様の構成を有する。
【0682】
素子層635が有するトランジスタの少なくとも一部は、プラグ及び配線等を介して、素子層630が有する導電層またはトランジスタと電気的に接続される。なお、素子層630と素子層635の間に、配線層670が設けられていてもよい。
【0683】
素子層635には、表示装置の画素回路及び駆動回路の一方または双方が設けられることが好ましい。
【0684】
図27では、OSトランジスタを有する素子層を2層積層する例(素子層630及び素子層635)を示すが、素子層の積層数はこれに限られず、3層以上としてもよい。例えば、OSトランジスタを有する素子層を3層以上積層する場合は、一番下の層を、表示装置の駆動回路(ゲートドライバ及びソースドライバの一方または双方)に用い、一番上の層を、表示装置の画素回路に用い、その間に位置する層は、それぞれ、画素回路または駆動回路に用いることが好ましい。
【0685】
なお、Siトランジスタは、代表的には、単結晶Siウェハ上に形成されるため、可撓性を有する構成とするのが困難である。一方で、図27に示すように、Siトランジスタを用いずに、OSトランジスタのみで表示装置を構成する場合、比較的簡単な製造プロセスにて、可撓性を有する構成とすることができる。
【0686】
[発光素子の構成例]
次に、本発明の一態様の表示装置に用いることができる発光素子について説明する。以下では、主に、図26及び図27に示す構成とは異なる、発光素子の構成例について説明する。
【0687】
図28(A)に、発光素子を複数有する表示部の一部における上面概略図を示す。表示部は、赤色の光を呈する発光素子61R、緑色の光を呈する発光素子61G、及び青色の光を呈する発光素子61Bをそれぞれ複数有する。図28(A)では、各発光素子の区別を簡単にするため、各発光素子の発光領域内にR、G、Bの符号を付している。また、図28(A)では、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3つの発光色を有する構成について例示したがこれに限定されない。例えば、4つ以上の色を有する構成としてもよい。
【0688】
図28(B)は、図28(A)に示す一点鎖線A1-A2間の断面図である。図28(B)に示す、発光素子61R、発光素子61G、及び発光素子61Bは、それぞれ絶縁層363上に設けられ、画素電極として機能する導電層171、及び共通電極として機能する導電層173を有する。絶縁層363としては、無機絶縁膜及び有機絶縁膜の一方または双方を用いることができる。
【0689】
発光素子61Rは、画素電極として機能する導電層171と共通電極として機能する導電層173との間に、EL層172Rを有する。EL層172Rは、少なくとも赤色の波長域にピークを有する光を発する発光性の化合物を有する。発光素子61Gが有するEL層172Gは、少なくとも緑色の波長域にピークを有する光を発する発光性の化合物を有する。発光素子61Bが有するEL層172Bは、少なくとも青色の波長域にピークを有する光を発する発光性の化合物を有する。
【0690】
画素電極として機能する導電層171は、発光素子毎に設けられている。また、共通電極として機能する導電層173は、各発光素子に共通な一続きの層として設けられている。画素電極として機能する導電層171と共通電極として機能する導電層173のいずれか一方に可視光に対して透光性を有する導電膜を用い、他方に反射性を有する導電膜を用いる。
【0691】
例えば、発光素子61Rがトップエミッション型である場合、発光素子61Rから射出される光175Rは、導電層173側に射出される。発光素子61Gがトップエミッション型である場合、発光素子61Gから射出される光175Gは、導電層173側に射出される。発光素子61Bがトップエミッション型である場合、発光素子61Bから射出される光175Bは、導電層173側に射出される。
【0692】
画素電極として機能する導電層171の端部を覆って、絶縁層272が設けられている。絶縁層272の端部は、テーパ形状であることが好ましい。絶縁層272には、無機絶縁膜及び有機絶縁膜の一方または双方を用いることができる。
【0693】
絶縁層272は、隣接する発光素子が意図せず電気的に短絡し、誤発光することを防ぐために設ける。また、EL層の形成にメタルマスクを用いる場合、メタルマスクが導電層171に接触しないようにする機能も有する。
【0694】
EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bは、それぞれ画素電極として機能する導電層171の上面に接する領域と、絶縁層272の表面に接する領域と、を有する。また、EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bの端部は、絶縁層272上に位置する。
【0695】
図28(B)に示すように、発光色の異なる発光素子間において、2つのEL層の間に隙間が設けられている。このように、EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bが、互いに接しないように設けられていることが好ましい。これにより、隣接する2つのEL層を介して電流が流れ、意図しない発光が生じること(クロストークともいう)を好適に防ぐことができる。そのため、コントラストを高めることができ、表示品位の高い表示装置を実現できる。
【0696】
EL層172R、EL層172G、及びEL層172Bは、メタルマスクなどのシャドーマスクを用いた真空蒸着法などにより、作り分けることができる。または、フォトリソグラフィ法により、これらを作り分けてもよい。フォトリソグラフィ法を用いることで、メタルマスクを用いた場合では実現することが困難である高い精細度の表示装置を実現することができる。
【0697】
また、共通電極として機能する導電層173上には、発光素子61R、発光素子61G、及び発光素子61Bを覆って、保護層271が設けられている。保護層271は、上方から各発光素子に水などの不純物が拡散することを防ぐ機能を有する。保護層271の材料としては、前述の保護層631の材料を参照できる。
【0698】
図28(C)には、白色の光を呈する発光素子61Wを示す。発光素子61Wは、画素電極として機能する導電層171と共通電極として機能する導電層173との間に白色の光を呈するEL層172Wを有する。
【0699】
EL層172Wとしては、例えば、それぞれの発光色が補色の関係になるように選択された、2以上の発光層を積層した構成とすることができる。また、発光層間に電荷発生層を挟持した、タンデム型のEL層を用いてもよい。
【0700】
図28(C)には、3つの発光素子61Wを並べて示している。左の発光素子61Wの上部には着色層264Rが設けられている。着色層264Rは、赤色の光を透過するバンドパスフィルタとして機能する。同様に、中央の発光素子61Wの上部には緑色の光を透過する着色層264Gが設けられ、右の発光素子61Wの上部には、青色の光を透過する着色層264Bが設けられている。これにより、表示装置はカラーの画像を表示することができる。
【0701】
ここで、隣接する2つの発光素子61W間において、EL層172Wが分離されている。これにより、隣接する2つの発光素子61Wにおいて、EL層172Wを介して電流が流れて意図しない発光が生じることを防ぐことができる。特に、EL層172Wとして、2つの発光層の間に電荷発生層が設けられる積層型のEL層を用いた場合では、精細度が高いほど、すなわち隣接画素間の距離が小さいほど、クロストークの影響が顕著となり、コントラストが低下してしまうといった問題がある。そのため、このような構成とすることで、高い精細度と、高いコントラストを兼ね備える表示装置を実現できる。
【0702】
EL層172Wの分離は、フォトリソグラフィ法により行うことが好ましい。これにより、発光素子間の間隔を狭めることができるため、例えばメタルマスク等のシャドーマスクを用いた場合と比較して、高い開口率の表示装置を実現することができる。
【0703】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0704】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の応用例について、図29乃至図33を用いて説明する。
【0705】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、電子部品、大型計算機、宇宙用機器、データセンター(Data Center:DCとも呼称する)、及び、各種電子機器に用いることができる。本発明の一態様の半導体装置を用いることで、電子部品、大型計算機、宇宙用機器、データセンター、及び、各種電子機器の、低消費電力化及び高性能化が実現できる。
【0706】
また、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置を、各種電子機器の表示部に用いることができる。本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置は、高精細化及び高解像度化が容易である。
【0707】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0708】
特に、本発明の一態様の表示装置は、精細度を高めることが可能なため、比較的小さな表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。このような電子機器としては、例えば、腕時計型及びブレスレット型の情報端末機(ウェアラブル機器)、並びに、ヘッドマウントディスプレイなどのVR向け機器、メガネ型のAR向け機器、及び、MR向け機器など、頭部に装着可能なウェアラブル機器等が挙げられる。
【0709】
本発明の一態様の表示装置は、HD(画素数1280×720)、FHD(画素数1920×1080)、WQHD(画素数2560×1440)、WQXGA(画素数2560×1600)、4K(画素数3840×2160)、8K(画素数7680×4320)といった極めて高い解像度を有していることが好ましい。特に4K、8K、またはそれ以上の解像度とすることが好ましい。また、本発明の一態様の表示装置における画素密度(精細度)は、100ppi以上、300ppi以上、500ppi以上、1000ppi以上、2000ppi以上、3000ppi以上、5000ppi以上、または7000ppi以上とすることが好ましい。このように高い解像度及び高い精細度の一方または双方を有する表示装置を用いることで、臨場感及び奥行き感などをより高めることが可能となる。また、本発明の一態様の表示装置の画面比率(アスペクト比)については、特に限定はない。例えば、表示装置は、1:1(正方形)、4:3、16:9、16:10など様々な画面比率に対応することができる。
【0710】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を検知、検出、または測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0711】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0712】
[電子部品]
電子部品700が実装された基板(実装基板704)の斜視図を、図29(A)に示す。図29(A)に示す電子部品700は、モールド711内に半導体装置710を有している。図29(A)は、電子部品700の内部を示すために、一部の記載を省略している。電子部品700は、モールド711の外側にランド712を有する。ランド712は電極パッド713と電気的に接続され、電極パッド713は半導体装置710とワイヤ714を介して電気的に接続されている。電子部品700は、例えばプリント基板702に実装される。このような電子部品が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板702上で電気的に接続されることで実装基板704が完成する。
【0713】
また、半導体装置710は、駆動回路層715と、記憶層716と、を有する。なお、記憶層716は、複数のメモリセルアレイが積層された構成である。駆動回路層715と、記憶層716と、が積層された構成は、モノリシック積層の構成とすることができる。モノリシック積層の構成では、TSV(Through Silicon Via)などの貫通電極技術、及び、Cu-Cu直接接合などの接合技術、を用いることなく、各層間を接続することができる。駆動回路層715と、記憶層716と、をモノリシックに積層することで、例えば、プロセッサ上にメモリが直接形成される、いわゆるオンチップメモリの構成とすることができる。オンチップメモリの構成とすることで、プロセッサと、メモリとのインターフェース部分の動作を高速にすることが可能となる。
【0714】
また、オンチップメモリの構成とすることで、TSVなどの貫通電極を用いる技術と比較し、接続配線などのサイズを小さくできるため、接続ピン数を増加させることも可能となる。接続ピン数を増加させることで、並列動作が可能となるため、メモリのバンド幅(メモリバンド幅ともいう)を向上させることが可能となる。
【0715】
また、記憶層716が有する、複数のメモリセルアレイを、OSトランジスタを用いて形成し、当該複数のメモリセルアレイをモノリシックで積層することが好ましい。複数のメモリセルアレイをモノリシック積層の構成とすることで、メモリのバンド幅、及びメモリのアクセスレイテンシの一方または双方を向上させることができる。なお、バンド幅とは、単位時間あたりのデータ転送量であり、アクセスレイテンシとは、アクセスしてからデータのやり取りが始まるまでの時間である。なお、記憶層716にSiトランジスタを用いる構成の場合、OSトランジスタと比較し、モノリシック積層の構成とすることが困難である。そのため、モノリシック積層の構成において、OSトランジスタは、Siトランジスタよりも優れた構造であるといえる。
【0716】
また、半導体装置710を、ダイと呼称してもよい。なお、本明細書等において、ダイとは、半導体チップの製造工程で、例えば円盤状の基板(ウエハともいう)などに回路パターンを形成し、さいの目状に切り分けて得られたチップ片を表す。なお、ダイに用いることのできる半導体材料として、例えば、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、または窒化ガリウム(GaN)などが挙げられる。例えば、シリコン基板(シリコンウエハともいう)から得られたダイを、シリコンダイという場合がある。
【0717】
次に、電子部品730の斜視図を図29(B)に示す。電子部品730は、SiP(System in Package)またはMCM(Multi Chip Module)の一例である。電子部品730は、パッケージ基板732(プリント基板)上にインターポーザ731が設けられ、インターポーザ731上に半導体装置735、及び複数の半導体装置710が設けられている。
【0718】
電子部品730では、半導体装置710を広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)として用いる例を示している。また、半導体装置735は、CPU、GPU、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路に用いることができる。
【0719】
パッケージ基板732は、例えば、セラミックス基板、プラスチック基板、または、ガラスエポキシ基板を用いることができる。インターポーザ731は、例えば、シリコンインターポーザ、または樹脂インターポーザを用いることができる。
【0720】
インターポーザ731は、複数の配線を有し、端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する機能を有する。複数の配線は、単層または多層で設けられる。また、インターポーザ731は、インターポーザ731上に設けられた集積回路をパッケージ基板732に設けられた電極と電気的に接続する機能を有する。これらのことから、インターポーザを「再配線基板」または「中間基板」と呼ぶ場合がある。また、インターポーザ731に貫通電極を設けて、当該貫通電極を用いて集積回路とパッケージ基板732を電気的に接続する場合もある。また、シリコンインターポーザでは、貫通電極として、TSVを用いることもできる。
【0721】
HBMでは、広いメモリバンド幅を実現するために多くの配線を接続する必要がある。このため、HBMを実装するインターポーザには、微細かつ高密度の配線形成が求められる。よって、HBMを実装するインターポーザには、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0722】
また、シリコンインターポーザを用いた、SiP及びMCM等では、集積回路とインターポーザ間の膨張係数の違いによる信頼性の低下が生じにくい。また、シリコンインターポーザは表面の平坦性が高いため、シリコンインターポーザ上に設ける集積回路とシリコンインターポーザ間の接続不良が生じにくい。特に、インターポーザ上に複数の集積回路を横に並べて配置する2.5Dパッケージ(2.5次元実装)では、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0723】
一方で、シリコンインターポーザ、及びTSVなどを用いて端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する場合、当該端子ピッチの幅などのスペースが必要となる。そのため、電子部品730のサイズを小さくしようとした場合、上記の端子ピッチの幅が問題になり、広いメモリバンド幅を実現するために必要な多くの配線を設けることが、困難になる場合がある。そこで、前述したように、OSトランジスタを用いたモノリシック積層の構成が好適である。TSVを用いて積層したメモリセルアレイと、モノリシック積層したメモリセルアレイと、を組み合わせた複合化構造としてもよい。
【0724】
また、電子部品730と重ねてヒートシンク(放熱板)を設けてもよい。ヒートシンクを設ける場合は、インターポーザ731上に設ける集積回路の高さを揃えることが好ましい。例えば、本実施の形態に示す電子部品730では、半導体装置710と半導体装置735の高さを揃えることが好ましい。
【0725】
電子部品730を他の基板に実装するため、パッケージ基板732の底部に電極733を設けてもよい。図29(B)では、電極733を半田ボールで形成する例を示している。パッケージ基板732の底部に半田ボールをマトリクス状に設けることで、BGA(Ball Grid Array)実装を実現できる。また、電極733を導電性のピンで形成してもよい。パッケージ基板732の底部に導電性のピンをマトリクス状に設けることで、PGA(Pin Grid Array)実装を実現できる。
【0726】
電子部品730は、BGA及びPGAに限らず様々な実装方法を用いて他の基板に実装することができる。実装方法としては、例えば、SPGA(Staggered Pin Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、QFJ(Quad Flat J-leaded package)、及び、QFN(Quad Flat Non-leaded package)が挙げられる。
【0727】
[大型計算機]
次に、大型計算機5600の斜視図を図30(A)に示す。図30(A)に示す大型計算機5600には、ラック5610にラックマウント型の計算機5620が複数格納されている。なお、大型計算機5600を、スーパーコンピュータと呼称してもよい。
【0728】
計算機5620は、例えば、図30(B)に示す斜視図の構成とすることができる。図30(B)において、計算機5620は、マザーボード5630を有し、マザーボード5630は、複数のスロット5631、複数の接続端子を有する。スロット5631には、PCカード5621が挿入されている。加えて、PCカード5621は、接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625を有し、それぞれ、マザーボード5630に接続されている。
【0729】
図30(C)に示すPCカード5621は、CPU、GPU、記憶装置などを備えた処理ボードの一例である。PCカード5621は、ボード5622を有する。また、ボード5622は、接続端子5623と、接続端子5624と、接続端子5625と、半導体装置5626と、半導体装置5627と、半導体装置5628と、接続端子5629と、を有する。なお、図30(C)には、半導体装置5626、半導体装置5627、及び半導体装置5628以外の半導体装置を図示しているが、それらの半導体装置については、以下に記載する半導体装置5626、半導体装置5627、及び半導体装置5628の説明を参照できる。
【0730】
接続端子5629は、マザーボード5630のスロット5631に挿入することができる形状を有しており、接続端子5629は、PCカード5621とマザーボード5630とを接続するためのインターフェースとして機能する。接続端子5629の規格としては、例えば、PCIeなどが挙げられる。
【0731】
接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625は、例えば、PCカード5621に対して電力供給、信号入力などを行うためのインターフェースとすることができる。また、例えば、PCカード5621によって計算された信号の出力などを行うためのインターフェースとすることができる。接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625のそれぞれの規格としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial ATA)、SCSI(Small Computer System Interface)などが挙げられる。また、接続端子5623、接続端子5624、接続端子5625から映像信号を出力する場合、それぞれの規格としては、HDMI(登録商標)などが挙げられる。
【0732】
半導体装置5626は、信号の入出力を行う端子(図示しない)を有しており、当該端子をボード5622が備えるソケット(図示しない)に対して差し込むことで、半導体装置5626とボード5622を電気的に接続することができる。
【0733】
半導体装置5627は、複数の端子を有しており、当該端子をボード5622が備える配線に対して、例えば、リフロー方式のはんだ付けを行うことで、半導体装置5627とボード5622を電気的に接続することができる。半導体装置5627としては、例えば、FPGA、GPU、CPUなどが挙げられる。半導体装置5627として、例えば、電子部品730を用いることができる。
【0734】
半導体装置5628は、複数の端子を有しており、当該端子をボード5622が備える配線に対して、例えば、リフロー方式のはんだ付けを行うことで、半導体装置5628とボード5622を電気的に接続することができる。半導体装置5628としては、例えば、記憶装置などが挙げられる。半導体装置5628として、例えば、電子部品700を用いることができる。
【0735】
大型計算機5600は並列計算機としても機能できる。大型計算機5600を並列計算機として用いることで、例えば、人工知能の学習、及び推論に必要な大規模の計算を行うことができる。
【0736】
[宇宙用機器]
本発明の一態様の半導体装置は、宇宙用機器に好適に用いることができる。
【0737】
本発明の一態様の半導体装置は、OSトランジスタを含む。OSトランジスタは、放射線照射による電気特性の変動が小さい。つまり放射線に対する耐性が高いため、放射線が入射しうる環境において好適に用いることができる。例えば、OSトランジスタは、宇宙空間にて使用する場合に好適に用いることができる。具体的には、OSトランジスタを、スペースシャトル、人工衛星、または、宇宙探査機に設けられる半導体装置を構成するトランジスタに用いることができる。放射線として、例えば、X線、及び中性子線が挙げられる。なお、宇宙空間とは、例えば、高度100km以上を指すが、本明細書に記載の宇宙空間は、熱圏、中間圏、及び成層圏のうち一つまたは複数を含んでもよい。
【0738】
図30(D)には、宇宙用機器の一例として、人工衛星6800を示している。人工衛星6800は、機体6801と、ソーラーパネル6802と、アンテナ6803と、二次電池6805と、制御装置6807と、を有する。なお、図30(D)においては、宇宙空間に惑星6804を例示している。
【0739】
また、図30(D)には示していないが、二次電池6805に、バッテリマネジメントシステム(BMSともいう)、またはバッテリ制御回路を設けてもよい。前述のバッテリマネジメントシステム、またはバッテリ制御回路に、OSトランジスタを用いると、消費電力が低く、かつ宇宙空間においても高い信頼性を有するため好適である。
【0740】
また、宇宙空間は、地上に比べて100倍以上、放射線量の高い環境である。なお、放射線として、例えば、X線、及びガンマ線に代表される電磁波(電磁放射線)、並びにアルファ線、ベータ線、中性子線、陽子線、重イオン線、中間子線などに代表される粒子放射線が挙げられる。
【0741】
ソーラーパネル6802に太陽光が照射されることにより、人工衛星6800が動作するために必要な電力が生成される。しかしながら、例えばソーラーパネルに太陽光が照射されない状況、またはソーラーパネルに照射される太陽光の光量が少ない状況では、生成される電力が少なくなる。よって、人工衛星6800が動作するために必要な電力が生成されない可能性がある。生成される電力が少ない状況下であっても人工衛星6800を動作させるために、人工衛星6800に二次電池6805を設けるとよい。なお、ソーラーパネルは、太陽電池モジュールと呼ばれる場合がある。
【0742】
人工衛星6800は、信号を生成することができる。当該信号は、アンテナ6803を介して送信され、例えば地上に設けられた受信機、または他の人工衛星が当該信号を受信することができる。人工衛星6800が送信した信号を受信することにより、当該信号を受信した受信機の位置を測定することができる。以上より、人工衛星6800は、衛星測位システムを構成することができる。
【0743】
また、制御装置6807は、人工衛星6800を制御する機能を有する。制御装置6807としては、例えば、CPU、GPU、及び記憶装置の中から選ばれるいずれか一または複数を用いて構成される。なお、制御装置6807には、本発明の一態様であるOSトランジスタを含む半導体装置を用いると好適である。OSトランジスタは、Siトランジスタと比較し、放射線照射による電気特性の変動が小さい。つまり放射線が入射しうる環境においても信頼性が高く、好適に用いることができる。
【0744】
また、人工衛星6800は、センサを有する構成とすることができる。例えば、可視光センサを有する構成とすることにより、人工衛星6800は、地上に設けられている物体に当たって反射された太陽光を検出する機能を有することができる。または、熱赤外センサを有する構成とすることにより、人工衛星6800は、地表から放出される熱赤外線を検出する機能を有することができる。以上より、人工衛星6800は、例えば地球観測衛星としての機能を有することができる。
【0745】
なお、本実施の形態においては、宇宙用機器の一例として、人工衛星について例示したがこれに限定されない。例えば、本発明の一態様の半導体装置は、宇宙船、宇宙カプセル、宇宙探査機などの宇宙用機器に好適に用いることができる。
【0746】
以上の説明の通り、OSトランジスタは、Siトランジスタと比較し、広いメモリバンド幅の実現が可能なこと、放射線耐性が高いこと、といった優れた効果を有する。
【0747】
[データセンター]
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、データセンターなどに適用されるストレージシステムに好適に用いることができる。データセンターは、データの不変性を保障するなど、データの長期的な管理を行うことが求められる。長期的なデータを管理する場合、膨大なデータを記憶するためのストレージ及びサーバの設置、データを保持するための安定した電源の確保、あるいはデータの保持に要する冷却設備の確保、など建屋の大型化が必要となる。
【0748】
データセンターに適用されるストレージシステムに本発明の一態様の半導体装置を用いることにより、データの保持に要する電力の低減、データを保持する半導体装置の小型化を図ることができる。そのため、ストレージシステムの小型化、データを保持するための電源の小型化、冷却設備の小規模化、などを図ることができる。そのため、データセンターの省スペース化を図ることができる。
【0749】
また、本発明の一態様の半導体装置は、消費電力が少ないため、回路からの発熱を低減することができる。よって、当該発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの悪影響を低減できる。また、本発明の一態様の半導体装置を用いることにより、高温環境下においても動作が安定したデータセンターを実現できる。よってデータセンターの信頼性を高めることができる。
【0750】
図30(E)にデータセンターに適用可能なストレージシステムを示す。図30(E)に示すストレージシステム7010は、ホスト7001(Host Computerと図示)として複数のサーバ7001sbを有する。また、ストレージ7003(Storageと図示)として複数の記憶装置7003mdを有する。ホスト7001とストレージ7003とは、ストレージエリアネットワーク7004(SAN:Storage Area Networkと図示)及びストレージ制御回路7002(Storage Controllerと図示)を介して接続されている形態を図示している。
【0751】
ホスト7001は、ストレージ7003に記憶されたデータにアクセスするコンピュータに相当する。ホスト7001同士は、ネットワークで互いに接続されていてもよい。
【0752】
ストレージ7003は、フラッシュメモリを用いることで、データのアクセススピード、つまりデータの記憶及び出力に要する時間を短くしているものの、当該時間は、ストレージ内のキャッシュメモリとして用いることのできるDRAMが要する時間に比べて格段に長い。ストレージシステムでは、ストレージ7003のアクセススピードの長さの問題を解決するために、通常ストレージ内にキャッシュメモリを設けてデータの記憶及び出力に要する時間を短くしている。
【0753】
前述のキャッシュメモリは、ストレージ制御回路7002及びストレージ7003内に用いられる。ホスト7001とストレージ7003との間でやり取りされるデータは、ストレージ制御回路7002及びストレージ7003内の当該キャッシュメモリに記憶されたのち、ホスト7001またはストレージ7003に出力される。
【0754】
前述のキャッシュメモリのデータを記憶するためのトランジスタとして、OSトランジスタを用いてデータに応じた電位を保持する構成とすることで、リフレッシュする頻度を減らし、消費電力を小さくすることができる。またメモリセルアレイを積層する構成とすることで小型化が可能である。
【0755】
[電子機器]
図31(A)乃至図31(F)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。これらウェアラブル機器は、ARのコンテンツを表示する機能、VRのコンテンツを表示する機能、SRのコンテンツを表示する機能、MRのコンテンツを表示する機能のうち少なくとも一つを有する。電子機器が、AR、VR、SR、及びMRなどの少なくとも一つのコンテンツを表示する機能を有することで、使用者の没入感を高めることが可能となる。
【0756】
図31(A)に示す電子機器700Aは、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0757】
表示パネル751には、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。したがって極めて精細度の高い表示が可能な電子機器とすることができる。また、制御部(図示しない)には、本発明の一態様の半導体装置を適用することができる。これにより、電子機器の消費電力を低減することができる。
【0758】
電子機器700Aは、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影することができる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。したがって、電子機器700Aは、AR表示が可能な電子機器である。
【0759】
電子機器700Aには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700Aは、ジャイロセンサなどの加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0760】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により映像信号等を供給することができる。なお、無線通信機に代えて、または無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0761】
また、電子機器700Aには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方または双方によって充電することができる。
【0762】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。タッチセンサモジュールは、筐体721の外側の面がタッチされることを検出する機能を有する。タッチセンサモジュールにより、使用者のタップ操作またはスライド操作などを検出し、様々な処理を実行することができる。例えば、タップ操作によって動画の一時停止または再開などの処理を実行することが可能となり、スライド操作により、早送りまたは早戻しの処理を実行することなどが可能となる。また、2つの筐体721のそれぞれにタッチセンサモジュールを設けることで、操作の幅を広げることができる。
【0763】
図31(B)に示す電子機器800A、及び、図31(C)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0764】
表示部820には、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。したがって極めて精細度の高い表示が可能な電子機器とすることができる。これにより、使用者に高い没入感を感じさせることができる。また、制御部824には、本発明の一態様の半導体装置を適用することができる。これにより、電子機器の消費電力を低減することができる。
【0765】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0766】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、VR向けの電子機器ということができる。電子機器800Aまたは電子機器800Bを装着した使用者は、レンズ832を通して、表示部820に表示される画像を視認することができる。
【0767】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。また、レンズ832と表示部820との距離を変えることで、ピントを調整する機構を有していることが好ましい。
【0768】
装着部823により、使用者は電子機器800Aまたは電子機器800Bを頭部に装着することができる。なお、図31(B)などにおいては、メガネのつる(テンプルなどともいう)のような形状として例示しているがこれに限定されない。装着部823は、使用者が装着できればよく、例えば、ヘルメット型またはバンド型の形状としてもよい。
【0769】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力することができる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、広角などの複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0770】
なお、ここでは撮像部825を有する例を示したが、対象物の距離を測定することのできる測距センサ(以下、検知部ともよぶ)を設ければよい。すなわち、撮像部825は、検知部の一態様である。検知部としては、例えばイメージセンサ、または、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)などの距離画像センサを用いることができる。カメラによって得られた画像と、距離画像センサによって得られた画像とを用いることにより、より多くの情報を取得し、より高精度なジェスチャー操作を可能とすることができる。
【0771】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。例えば、表示部820、筐体821、及び装着部823のいずれか一または複数に、当該振動機構を有する構成を適用することができる。これにより、別途、ヘッドフォン、イヤフォン、またはスピーカなどの音響機器を必要とせず、電子機器800Aを装着しただけで映像と音声を楽しむことができる。
【0772】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続することができる。
【0773】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。イヤフォン750は、通信部(図示しない)を有し、無線通信機能を有する。イヤフォン750は、無線通信機能により、電子機器から情報(例えば音声データ)を受信することができる。例えば、図31(A)に示す電子機器700Aは、無線通信機能によって、イヤフォン750に情報を送信する機能を有する。
【0774】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。図31(C)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。イヤフォン部827と制御部824とをつなぐ配線の一部は、筐体821または装着部823の内部に配置されていてもよい。また、イヤフォン部827と装着部823とがマグネットを有していてもよい。これにより、イヤフォン部827を装着部823に磁力によって固定することができ、収納が容易となり好ましい。
【0775】
なお、電子機器は、イヤフォンまたはヘッドフォンなどを接続することができる音声出力端子を有していてもよい。また、電子機器は、音声入力端子及び音声入力機構の一方または双方を有していてもよい。音声入力機構としては、例えば、マイクなどの集音装置を用いることができる。電子機器が音声入力機構を有することで、電子機器に、いわゆるヘッドセットとしての機能を付与してもよい。
【0776】
図31(D)及び図31(E)に、VR向けのゴーグル型の電子機器850Aの斜視図を示す。図31(D)及び図31(E)では、筐体845内に、それぞれ湾曲した一対の表示装置840(表示装置840_R及び表示装置840_L)を有する例を示している。また、電子機器850Aは、動き検出部841、視線検出部842、演算部843、通信部844、レンズ848、操作ボタン851、装着具854、センサ855、ダイヤル856などを有する。
【0777】
2つの表示装置840を有することで、使用者は片方の目につき1つの表示装置を見ることができる。これにより、視差を用いた3次元表示等を行う際であっても、高い解像度の映像を表示することができる。また、表示装置840は使用者の目を概略中心とした円弧状に湾曲している。これにより、使用者の目から表示装置840の表示面までの距離が一定となるため、使用者はより自然な映像を見ることができる。また、表示装置840に、光の輝度または色度が見る角度によって変化してしまう、いわゆる視野角依存性がある場合であっても、表示装置840の表示面の法線方向に使用者の目が位置する構成にできるため、特に水平方向については実質的にその影響を無視することができるため、より現実感のある映像を表示することができる。
【0778】
図31(E)に示すように、レンズ848は、表示装置840と使用者の目の位置との間に位置する。図31(E)では、視度調節のためにレンズの位置を変化させるダイヤル856を有する例を示している。なお、電子機器850Aがオートフォーカス機能を有する場合には、視度調節のためのダイヤル856を有さなくてもよい。
【0779】
図31(F)には、1枚の表示装置840を有するゴーグル型の電子機器850Bを示している。このような構成とすることで、部品点数を削減することができる。
【0780】
表示装置840は、左右2つの領域にそれぞれ右目用の画像と、左目用の画像の2つの画像を並べて表示することができる。これにより、両眼視差を用いた立体映像を表示することができる。なお、表示装置840には、視差を用いた2つの異なる画像を並べて表示させてもよいし、視差を用いずに2つの同じ画像を並べて表示させてもよい。
【0781】
また、表示装置840の全域に亘って、両方の目で視認可能な一つの画像を表示してもよい。これにより、視野の両端に亘ってパノラマ映像を表示することが可能となるため、現実感が高まる。
【0782】
表示装置840に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の一態様の表示装置は、極めて精細度が高いため、レンズ848を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より現実感の高い映像を表示することができる。
【0783】
図32(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0784】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、光源6508、及び制御装置6509などを有する。
【0785】
図32(B)に示す電子機器6520は、タブレット端末として用いることのできる携帯情報端末機である。
【0786】
電子機器6520は、筐体6501、表示部6502、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、制御装置6509、及び接続端子6519などを有する。
【0787】
電子機器6500及び電子機器6520のそれぞれにおいて、表示部6502はタッチパネル機能を備える。また、制御装置6509は、例えば、CPU、GPU、及び記憶装置の中から選ばれるいずれか一または複数を有する。本発明の一態様の半導体装置は、表示部6502及び制御装置6509の一方または双方に用いることができる。
【0788】
図32(C)は、電子機器6500または電子機器6520が有する筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0789】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、バッテリ6518等が配置されている。
【0790】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0791】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0792】
表示パネル6511には本発明の一態様の表示装置を適用することができる。そのため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0793】
図32(D)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0794】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0795】
図32(D)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0796】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0797】
図32(E)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214、及び、制御装置7215などを有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。制御装置7215は、例えば、CPU、GPU、及び記憶装置の中から選ばれるいずれか一または複数を有する。本発明の一態様の半導体装置は、表示部7000及び制御装置7215の一方または双方に用いることができる。
【0798】
図32(F)及び図32(G)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0799】
図32(F)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0800】
図32(G)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0801】
図32(F)及び図32(G)において、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0802】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0803】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像または動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0804】
また、図32(F)及び図32(G)に示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311または情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311または情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311または情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0805】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311または情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数の使用者が同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0806】
また、本発明の一態様の半導体装置及び表示装置は、移動体である自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0807】
図33(A)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を表す図である。図33(A)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル9001a、表示パネル9001b、及び、表示パネル9001c、並びに、ピラーに取り付けられた表示パネル9001dを示している。
【0808】
表示パネル9001a乃至表示パネル9001cは、ナビゲーション情報、スピードメーター、タコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目及びレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることができる。表示パネル9001a乃至表示パネル9001cは、照明装置として用いることもできる。
【0809】
表示パネル9001dには、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車の外側に設けられた撮像手段からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル9001dは、照明装置として用いることもできる。
【0810】
図33(B)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0811】
図33(B)に示す携帯情報端末9200は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を検知、検出、または測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0812】
図33(C)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。携帯情報端末9201は、筐体9000aと、筐体9000bと、表示部9001と、操作ボタン9056と、を有している。
【0813】
筐体9000aと筐体9000bと、は、ヒンジ9055により結合されており、ヒンジ9055によって、2つ折りが可能となっている。
【0814】
携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された2つの筐体(筐体9000a及び筐体9000b)に支持されている。
【0815】
図33(D)乃至図33(F)は、折り畳み可能な携帯情報端末9202を示す斜視図である。また、図33(D)は携帯情報端末9202を展開した状態、図33(F)は折り畳んだ状態、図33(E)は図33(D)と図33(F)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。このように、携帯情報端末9202は、3つ折りが可能である。
【0816】
携帯情報端末9202が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。
【0817】
図33(C)乃至図33(F)において、表示部9001に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0818】
携帯情報端末9201及び携帯情報端末9202は、それぞれ、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0819】
なお、本発明の一態様の半導体装置を、電子部品、大型計算機、宇宙用機器、データセンター、及び電子機器の中から選ばれるいずれか一または複数に適用することで、消費電力を低減することができる。そのため、半導体装置の高性能化、または高集積化に伴うエネルギー需要の増加が見込まれる中、本発明の一態様の半導体装置を用いることで、二酸化炭素(CO)に代表される、温室効果ガスの排出量を低減させることも可能となる。また、本発明の一態様の半導体装置は、低消費電力であるため地球温暖化対策としても有効である。
【0820】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例0821】
本実施例では、トランジスタを含む半導体装置を作製し、トランジスタの電気特性を評価した。
【0822】
<半導体装置の作製>
図7(A)に示す半導体装置が含むトランジスタの構造を参照し、半導体装置の作製を行った。
【0823】
酸化シリコン膜上に、導電層220を設けた。導電層220aは、スパッタリング法で成膜した、膜厚が5nmの窒化チタン膜を用いて形成した。導電層220bは、スパッタリング法で成膜した、膜厚が20nmのタングステン膜を用いて形成した。導電層220cは、スパッタリング法を用いて成膜した、20nmのITSO膜を用いて形成した。
【0824】
次に、絶縁層280を形成した。
【0825】
絶縁層280aは、ALD法で成膜した、膜厚が5nmの窒化シリコン膜を用いた。続いて、絶縁層280bとなる絶縁層として、スパッタリング法を用いて、膜厚が135nmの酸化シリコン膜を形成した。続いて、135nmの酸化シリコン膜上に、膜厚100nmの窒化シリコン膜を形成した。その後、CMP処理を行なって、窒化シリコン膜を除去し、酸化シリコン膜の上面を平坦化させた。当該CMP処理を行うことで、導電層220上に絶縁層280bとして、膜厚が80nmの酸化シリコン膜を形成した。
【0826】
絶縁層280cは、スパッタリング法で成膜した、膜厚が10nmの窒化シリコン膜を用いた。
【0827】
次に、導電層240aを、スパッタリング法で成膜した、膜厚が15nmのタングステンを用いて形成した。続いて、導電層240bを、スパッタリング法で成膜した、膜厚が10nmのITSO膜を用いて形成した。
【0828】
次に、ドライエッチング法などを用いて開口部290を形成した。
【0829】
SOC膜、SOG膜、レジスト膜を順に塗布法により形成した。続いて、フォトリソグラフィを用いてレジストパターンを形成し、レジストパターンを用いてSOG膜及びSOC膜を加工して、マスクパターンを形成した。
【0830】
形成したマスクパターンを用いて、ドライエッチングを行い、開口部290を形成した。導電層240bのエッチングには、ドライエッチングガスとして、CHとArを用いた。その後、希釈フッ酸を用いて洗浄を行った。続いて、導電層240aのエッチングには、ドライエッチングのガスとして、Cl、O、CFを用いた。絶縁層280のエッチングには、ドライエッチングガスとして、C、C、O、Arを用いたエッチングを行った後、Ar、Oを用いたプラズマ処理を行い、Oを用いたプラズマ処理を行った。その後、希釈フッ酸を用いて洗浄を行った。
【0831】
次に、酸化物半導体層230を形成した。なお、酸化物半導体層230として、第1の酸化物半導体層と、第2の酸化物半導体層とを形成した。
【0832】
第1の酸化物半導体層は、RFスパッタリング法で成膜した、In-Ga-Zn酸化物膜を用いて形成した。なお、第1の酸化物半導体層となる酸化物膜の成膜には、In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比]の酸化物ターゲットを用いた。また、当該酸化物膜は、導電層240の上面が被形成面となる部分の膜厚が2nmとなるよう成膜した。
【0833】
第2の酸化物半導体層は、ALD法で成膜した、膜厚が5nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を用いて形成した。なお、第2の酸化物半導体層となる酸化物膜の成膜に用いたプリカーサは、トリエチルインジウム(TEI)、トリエチルガリウム(TEG)、及び、ジエチル亜鉛(DEZ)である。また、酸化剤として、オゾン(O)と酸素(O)を用いた。TEIを導入し、OとOを導入し、TEGを導入し、OとOを導入し、DEZを導入し、OとOを導入し、の工程を一つの周期として、繰り返して行い、当該酸化物膜の組成がIn:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]となるようにした。
【0834】
次に、絶縁層250を形成した。絶縁層250は、4層積層とした。
【0835】
第1層は、ALD法で成膜した、膜厚が1nmの酸化アルミニウム膜を用いて形成した。第1層上の第2層は、ALD法で成膜した、膜厚が2nmの酸化シリコン膜を用いて形成した。第2層上の第3層は、ALD法で成膜した、膜厚が2nmの酸化ハフニウム膜を用いて形成した。第3層上の第4層は、ALD法で成膜した、膜厚が1nmの窒化シリコン膜を用いて形成した。
【0836】
次に、導電層260を形成した。
【0837】
導電層260aは、金属CVD法で成膜した、膜厚が5nmの窒化チタン膜を用いて形成した。また、導電層260bは、金属CVD法で成膜した、膜厚が20nmのタングステン膜を用いて形成した。
【0838】
以上のようにして、半導体装置に含まれるトランジスタを作製した。
【0839】
<トランジスタの電気特性評価>
作製した半導体装置に含まれるトランジスタの電気特性を評価した。ここでは、開口部290の開口部の幅が60nmのトランジスタの電気特性を評価した。電気特性として、Id-Vg特性、及びId-Vd特性をそれぞれ測定した。Id-Vg特性の測定は、ドレイン電圧Vdを0.1V、0.4V、0.8V、1.2Vの4条件とし、ソース電圧Vsを0Vとし、ゲート電圧Vgを-2.5Vから+3.5Vまで、0.05Vステップで掃引した。また、当該測定は、110℃、-40℃の2条件において行った。Id-Vd特性の測定は、ゲート電圧Vgを1.0V、2.0V、3.0Vの3条件とし、ソース電圧Vsを0Vとし、ドレイン電圧Vdを0Vから+1.2Vまで、0.05Vステップで掃引した。測定は、110℃、-40℃の2条件において行った。
【0840】
図34(A)には、110℃におけるId-Vg特性を、図34(B)には、-40℃におけるId-Vg特性を、それぞれ示す。なお、図34(A)、及び図34(B)において、ドレイン電圧Vdが0.1V、0.4V、0.8V、1.2Vの測定結果を重ねて表示している。また、図35(A)には、110℃におけるId-Vd特性を、図35(B)には、-40℃におけるId-Vd特性を、それぞれ示す。Id-Vg特性のそれぞれの図において、縦軸はドレイン電流Id[A]を表し、横軸はゲート-ソース間電圧(Vg)[V]を表す。また、Id-Vd特性のそれぞれの図において、縦軸はドレイン電流Id[A]を表し、横軸はドレイン-ソース間電圧(Vd)[V]を表す。
【0841】
図34(A)、図34(B)、図35(A)、及び図35(B)に示すように、本実施例で作製した半導体装置は、良好な特性を示すトランジスタを有することが確認できた。
【0842】
<トランジスタの電気特性評価2>
作製した半導体装置に含まれるトランジスタの電気特性を評価した。ここでは、開口部290の開口部の幅が60nmのトランジスタの電気特性を評価した。電気特性として、Id-Vgs特性を測定した。Id-Vgs特性の測定は、ドレイン電圧Vdを0.4Vとし、ソース電圧Vsを0Vとし、ゲート電圧Vgを-2.5Vから+3.5Vまで、0.05Vステップで掃引した。また、当該測定は、110℃、27℃、及び-40℃の3条件において行った。
【0843】
図40には、Id-Vgs特性を示す。Id-Vgs特性のそれぞれの図において、縦軸はドレイン電流(ドレイン-ソース間の電流)Id[A]を表し、横軸はゲート-ソース間の電圧(Vgs)[V]を表す。
【0844】
ドレイン電流Id=1×10-12[A]のときのゲート-ソース間の電圧VgsをVshとする。図40に示すように、本実施例で作製した半導体装置は、チャネル長Lをチャネル幅Wで割った値L/W=95/(60×π)=0.5において、Vshは0.5Vより小さい優れた値を示した。さらに、0Vより大きな値を示し、ノーマリーオフ状態のトランジスタ動作が確認された。ここで、チャネル長Lは絶縁層280の厚さとし、開口部290の平面視における形状を円形とした。
【0845】
Vshは0Vより大きいことが好ましい。また、Vshは0Vより大きく、0.5Vより小さいことがより好ましい。また、チャネル長Lをチャネル幅Wで割った値L/Wは例えば、0.1以上1.5以下、あるいは0.2以上1以下、例えば0.5またはその近傍の値とすることができる。Vshは0.1V以上となる場合がある。具体的には例えば、27℃以下の温度において、Vshは0.1V以上、あるいは0.1V以上0.5V未満である。なお、Vshは例えば、ドレイン-ソース間の電圧が0.05V以上1V以下のId-Vgs特性において、算出されることが好ましい。
【実施例0846】
本実施例では、実施例1で作製したトランジスタを用いて、シミュレーション用のデータを測定により抽出し、回路シミュレーションを行った。
【0847】
図36には、回路シミュレーションに用いた回路図を示す。1本の配線BLに、先の実施の形態の図19(A)に示すメモリセル951と同様の構成のメモリセルが32個、接続される場合を想定した。回路シミュレーションには、実施例1で作製したトランジスタの特性を用いた。なお、トランジスタのId-Vg特性のしきい値は、実測値で得られたしきい値から、回路動作に好適なしきい値へとシフトさせてシミュレーションを行った。
【0848】
図37には、図36に示す回路の動作を説明するタイミングチャートを示す。図37(A)において、配線WLの高電圧電位Hは3.3V、2.5V、及び1.8Vの3条件で条件振りを行い、低電圧電位Lは0Vとした。また、ノードSNの電位V2は0.52Vとした。また、配線BLの電位V1は0.26Vとした。また、Vreadは80mVとした。図37(B)において、配線WLの高電圧電位Hは3.3V、2.5V、及び1.8Vの3条件で条件振りを行った。また、配線BLの高電圧電位H2は0.8Vとし、低電圧電位Lは0Vとした。また、ノードSNの低電圧電位Lは0Vとした。また、Vwriteは0.52Vとした。なお、配線WL及び配線BLが低電圧電位L、ノードSNの電位がV2の条件において0.64秒の保持に相当する電流値となるよう、回路シミュレーションで使用したモデルでは、実測の電気特性から閾値電圧を変動させており、-40℃における書き込み、及び読み出し動作をシミュレーションした。
【0849】
回路シミュレーションに用いたパラメータを表1に示す。表1には条件Cir1、条件Cir2の2条件を示す。条件Cir1では、図9(A)等に示すトランジスタのように、導電層260と導電層240との間に絶縁層250が配置される構成を想定したパラメータを用いた。また、条件Cir2では、図10(B)に示すように、導電層260と導電層240との重畳を小さくし、導電層265と導電層240との間に層間膜を設け、配線間の容量を低減する構成を想定したパラメータを用いた。
【0850】
【表1】
【0851】
表2には、書き込み時間Twriteの計算結果を、表3には読み出し時間Treadの計算結果を、それぞれ示す。なお、表中のμFE×1は、トランジスタの移動度として、実施例1で得られたトランジスタの評価結果の移動度を用いた計算結果を示し、μFE×3は、得られた移動度の3倍の値を用いた計算結果を示す。
【0852】
【表2】
【0853】
【表3】
【0854】
WLが3.3Vでは、数ns以下の書き込み時間、及び読み出し時間が得られた。
【実施例0855】
本実施例では、金属酸化物層を形成した試料(試料H1乃至試料H3)を作製し、金属酸化物の結晶配向性を評価した。
【0856】
<試料の作製>
まず、シリコン基板上に、熱酸化処理を用いて膜厚100nmの酸化シリコン層を形成した。続いて、上記酸化シリコン層上に、金属酸化物層(酸化物半導体層230に相当)を形成した。なお、試料H1の金属酸化物層は、膜厚5nmの第1の酸化物半導体層の単層構造とした。また、試料H2及び試料H3の金属酸化物層は、膜厚5nmの第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層上の、膜厚5nmの第2の酸化物半導体層と、の積層構造とした。
【0857】
上記第1の酸化物半導体層は、金属元素の原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2であるIGZOスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により形成した。上記第2の酸化物半導体層は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1となるようにALD法により形成した。第2の酸化物半導体層の形成に用いたプリカーサは、トリエチルインジウム(TEI)、トリエチルガリウム(TEG)、及び、ジエチル亜鉛(DEZ)である。また、酸化剤として、オゾン(O)と酸素(O)を用いた。
【0858】
続いて、試料H3に対して、加熱処理を行なった。当該加熱処理として、Nガス流量4slm、Oガス流量1slmの混合雰囲気で、400℃、1時間の大気圧処理を行った。
【0859】
なお、TEM観察用の保護膜として、金属酸化物層上に炭素膜を形成した。
【0860】
<TEM観察、結晶配向性の評価>
試料H1乃至試料H3を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)により薄片化し、断面を透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)で観察した。TEM像の撮影は、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて、加速電圧200kV、ビーム径約0.2nmφの電子線を照射して行なった。
【0861】
試料H1の断面TEM像及び結晶配向性をそれぞれ、図38(A)及び図39(A)に示す。試料H2の断面TEM像及び結晶配向性をそれぞれ、図38(B)及び図39(B)に示す。試料H3の断面TEM像及び結晶配向性をそれぞれ、図38(C)及び図39(C)に示す。
【0862】
図38(A)乃至図38(C)はそれぞれ、試料H1乃至試料H3の断面TEM像である。試料H1乃至試料H3のそれぞれにおいて、層状の格子像を観察できた。試料H1乃至試料H3は、結晶性を有することを確認できた。
【0863】
図39(A)乃至図39(C)は、断面TEM像から得られた結晶配向性を示す図である。断面TEM像内を領域ごとに高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理を行うことでFFTパターンを取得し、各領域の結晶軸の方向を得ることにより、結晶配向性を示す図(結晶配向性を示すマップともいえる)を得た。なお、FFTを行う領域(FFTウィンドウともいう)は直径1.0nmの円とした。FFT処理により得られるFFTパターンは、電子線回折パターンと同様の逆格子空間情報を反映する。
【0864】
図39(A)乃至図39(C)において、金属酸化物層の被形成面(酸化シリコン層の上面)に対する結晶軸の方向をグレースケールで示しており、90°を黒色(濃色)、0°及び180°を白色(淡色)で示している。つまり、黒色(濃色)の領域は、結晶のc軸が金属酸化物層の被形成面(酸化シリコン層の上面)に対して垂直の方向に配向している領域である。別言すると、黒色(濃色)の領域は、c軸配向している結晶領域である。
【0865】
図39(A)に示すように、試料H1の金属酸化物層の表面において、結晶がc軸配向していることを確認できた。また、図39(B)に示すように、スパッタリング法により形成した第1の酸化物半導体層上に、ALD法により第2の酸化物半導体層を成膜することで、第1の酸化物半導体層のc軸配向している結晶領域が拡大することを確認できた。また、図39(C)に示すように、第2の酸化物半導体層を成膜した後に加熱処理を行うことで、第1の酸化物半導体層のc軸配向している結晶領域がさらに拡大することを確認できた。
【0866】
以上より、スパッタリング法により形成された第1の酸化物半導体層は、CAAC構造の領域を有することが分かった。よって、第1の酸化物半導体層は、実施の形態1で説明した領域372aを有することが分かった。また、第1の酸化物半導体層上に第2の酸化物半導体層を成膜する、あるいは第2の酸化物半導体層を成膜し、且つ加熱処理を行うことで、CAAC構造の領域が拡大することが分かった。したがって、第1の酸化物半導体層に含まれる領域372aを種として、結晶成長を促すことができることが分かった。
【実施例0867】
本実施例では、実施例1で作製したトランジスタを用いて、シミュレーション用のデータを測定により抽出し、回路シミュレーションを行った。
【0868】
図36には、回路シミュレーションに用いた回路図を示す。図36は、メモリセルアレイ内の一つのメモリセルの動作を検証する回路である。図36では、先の実施の形態の図19(A)に示すメモリセル951と同様の構成のメモリセルが、1本の配線BLに32個、一本の配線WLに256個、接続される場合を想定した。図36は、1KBの容量のDOSRAMにおいて、一つのメモリセルの動作を検証する回路である、ということもできる。図36にはメモリセルとしてトランジスタFET及び容量素子Csを有するメモリセルを示し、配線BLにはメモリセルアレイが有する他のメモリセルから配線BLに与えられる負荷に対応する32個の回路RC_BLが接続され、配線WLには、メモリセルアレイが有する他のメモリセルから与えられる負荷に対応する256個の回路RC_WLとが接続されている。配線BLは図19(A)の配線BILに対応し、配線WLは図19(A)の配線WOLに対応する。回路シミュレーションには、実施例1で作製したトランジスタの特性を用いた。また回路の動作温度は-40℃以上110℃以下を想定した。
【0869】
回路シミュレーションを行う際に、0.64秒間、データが保持できるように、図40で得られたトランジスタ特性のId-VgsカーブをVg方向(横軸方向)に沿ってシフトさせたカーブを用いた。以下の方法で、必要なシフト量を算出した。
【0870】
図41(C)に示すように、110℃において、0.64秒間、オフリーク電流I_LEAKが流れ続けた場合に、ノードSNの電圧V_SNの変化が0.1Vとなるように、シフト量を決定した。トランジスタFETのドレイン(ここでは配線BLに接続される端子)には、プリチャージ電圧として0.4Vを与え、ノードSNにはデータ0に対応する電圧0Vを与えた。ここで、オフリーク電流I_LEAKの初期値は、Id-Vg特性において、Vg=0V、Vd=0.4V、Vs=0Vとした場合のドレイン電流Idである。なお、ノードSNの電圧V_SNが変化するのに伴いトランジスタのゲート電圧Vgとソース電圧Vs(ここではノードSNの電圧V_SN)の間の電圧差が変化し、それに伴いオフリーク電流I_LEAKも変化する。このことを考慮するために、ノードSNの電圧V_SNを0.1mVずつ変動させ、Id-Vg特性から算出したS値を用いて、ノードSNの電圧V_SNが0.1mV変化したことによる電流の変化量を求め、オフリーク電流I_LEAKから当該変化量を減算する。このようにして、ノードSNの電圧V_SNの変動に伴うオフリーク電流の変化分を考慮することができる。
【0871】
上記の方法を用いて算出を行ったところ、必要なシフト量は-0.04Vと見積もられた。
【0872】
本発明の一態様の記憶装置は、1KB以上の容量を有し、記憶装置が有するそれぞれのメモリセルは、保持時間が0.64秒以上であることが好ましい。
【0873】
また、本発明の一態様のトランジスタは、ゲートを0V、ソースを0Vとし、ドレインに第1の電圧V1を与えた際に、トランジスタを流れる電荷の、0.64秒間の積算量が3×10-15[F]×0.1[V]以下であることが好ましい。また第1の電圧V1は0.05V以上1V以下であることが好ましい。
【0874】
次に、図36に示す回路の書き込み時間、及び読み出し時間を算出した。回路シミュレーションでは、トランジスタのId-Vg特性として、実施例1で得られたトランジスタの特性を、しきい値を-0.04Vシフトさせて用いた。
【0875】
図41(A)及び図41(B)には、図36に示す回路の動作を説明するタイミングチャートを示す。図41(A)において、配線WLの高電圧電位Hは1.8Vとし、低電圧電位Lは0Vとした。また、ノードSNの電位V2は0.52Vとした。また、読み出し時間Treadは、配線BLとノードSNの電位が95%一致するまでの時間とした。図41(B)において、配線WLの高電圧電位Hは1.8Vとし、配線BLの高電圧電位H2は0.8Vとし、低電圧電位Lは0Vとした。また、ノードSNの低電圧電位Lは0Vとした。また、Vwriteを高電圧電位H2の80%の電圧である、0.64Vとし、書き込み時間Twriteは、Vwriteに到達するまでの時間とした。
【0876】
抵抗値R1は、メモリセルひとつあたりに対応する配線BLの抵抗値に対応して決定され、抵抗値R2は、メモリセルひとつあたりに対応する配線WLの抵抗値に対応して決定される。抵抗値を小さくすることにより回路の遅延を低減することができるため、抵抗値R1及び抵抗値R2は低いことが好ましい。抵抗値R1及び抵抗値R2は、例えば100Ω以下であり、あるいは例えば1Ω以上100Ω以下である。また、容量値C1及び容量値C2は、メモリセルひとつあたりに対応する容量値であり、メモリセルが有する電極、配線、等の導電層に起因する容量値に対応して決定される。回路の寄生容量を低減することにより回路の動作速度を高めることができる。容量値C1及び容量値C2は例えば、0.5fF(f:フェムト、10-15)以下であり、あるいは例えば1aF(a:アト、10-18)以上0.5fF以下である。
【0877】
回路シミュレーションに用いたパラメータを表4に示す。
【0878】
【表4】
【0879】
図42(A)には書き込み時間Twriteの算出結果を示し、図42(B)には読み出し時間Treadの算出結果を示す。なお、図42(A)及び図42(B)の横軸は、シミュレーションを行った際に考慮した、しきい値電圧のばらつきσである。ここで、1σは18.1mVである。また、図42(A)及び図42(B)には、本発明の一態様のメモリセルが好適に動作できる読み出し時間、及び書き込み時間の目安としてそれぞれ、15nsを図中に破線で示している。
【0880】
図42(A)及び図42(B)に示す通り、書き込み時間、及び読み出し時間ともに、10ns以下となり、図中に示した15nsよりも充分に短い時間となった。
【0881】
以上の通り、本発明の一態様のメモリセルは、速い速度で動作することが示された。特に、本発明の一態様のメモリセルの読み出し時間及び書き込み時間が、図24(A)において述べたmain memoryに用いるDOSRAMに好ましい動作速度である、15ns以下を充分に満たすことが示唆された。
【0882】
また先に述べた通り、本発明の一態様のメモリセルは、0.64sの保持時間を満たすために必要なしきい値のシフト量が-0.04Vと極めて小さいことから、優れた保持特性を実現できることも示唆された。本発明の一態様のメモリセルは、優れた動作速度と、優れた保持特性と、を合わせ持つことから、図24(A)において述べたmain memoryに用いるDOSRAMとして特に好適であると示唆された。
【0883】
図2図1等に示すトランジスタの構成を用い、酸化物半導体層として本発明の一態様の金属酸化物を用いることで、トランジスタのしきい値のシフトを抑制し、ノーマリーオフの特性とすることができた。ノーマリーオフの特性を有するOSトランジスタを用いることにより、シリコントランジスタを用いて作製するDRAMに比べて保持時間を飛躍的に長くすることができた。さらに、図2図1等に示すトランジスタの構成を用い、酸化物半導体層として本発明の一態様の金属酸化物を用いることで、優れたオン特性を実現し、シリコントランジスタを用いたDRAMに対して、遜色ない充分な動作速度を実現することができた。
【0884】
本発明の一態様の記憶装置は、1KB以上の容量を有し、記憶装置が有するそれぞれのメモリセルは、書き込み速度が15ns以下であることが好ましい。
【0885】
1KB以上の容量を有する本発明の一態様の記憶装置において、記憶装置が有するそれぞれのメモリセルは、読み出し速度が15ns以下であることが好ましい。
【0886】
本発明の一態様のメモリセルは、トランジスタと、トランジスタのソースに接続される容量素子と、を有する。当該メモリセルにおいて、トランジスタのゲートに第1負荷を接続し、トランジスタのドレインに第2負荷を接続した回路を用いて、当該メモリセルの書き込み速度、及び読み出し速度をそれぞれ算出することができる。第1負荷は、256個の第1回路を有し、第2負荷は、32個の第2回路を有する。第1回路は、第1の抵抗と、第1の抵抗の一方の電極に接続される第1の容量素子と、を有する。第1負荷が有する256個の第1の抵抗は直列に接続される。第2回路は、第2の抵抗と、第2の抵抗の一方の電極に接続される容量素子と、を有する。第2負荷が有する256個の第2の抵抗は直列に接続される。
【実施例0887】
本実施例では、実施例1で作製したトランジスタの断面観察を行った。
【0888】
作製したトランジスタを含む試料を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)により薄片化し、断面を走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)で観察した。STEM観察には、日立ハイテク製の走査透過電子顕微鏡HD-2700を用い、加速電圧は200kVとした。
【0889】
試料の断面のSTEM像を図43に示す。図43は倍率30万倍の透過電子像(TE像:Transmission Electron Image)である。図43より、絶縁層280及び導電層240に開口部が形成され、開口部内を被覆するように酸化物半導体層230、絶縁層250、導電層260a、導電層260bが配置される様子がみられた。
【0890】
図44には倍率30万倍のZコントラスト像(ZC像:Z Contrast Image)を示す。観察の際の加速電圧は200kVとした。図44より、絶縁層280a(窒化シリコン)、絶縁層280b(酸化シリコン)、絶縁層280c(窒化シリコン)の厚さはそれぞれ、4.30nm、78.7nm、11.9nmと見積もられた。絶縁層280aでは、狙い膜厚である5nmとの差がおよそ14%であり、絶縁層280bでは、狙い膜厚である80nmとの差がおよそ2%であり、絶縁層280cでは、狙い膜厚である10nmとの差がおよそ19%であった。
【実施例0891】
本実施例では、実施例1で作製した半導体装置の評価を行った。
【0892】
図45に示す回路1001を用いて、トランジスタのオフ状態のリーク電流を評価した。図45に示すそれぞれのトランジスタには、実施例1で作製したトランジスタを用いた。回路1001では、回路ブロック1001aが有するトランジスタのリーク電流によるノードNDの電位の変化を評価することができる。なお酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタではリーク電流が小さいため、回路ブロック1001aでは2万個(m=20000)のトランジスタが並列に接続し、電流の値を大きくしている。これにより、回路1001においてリーク電流が検出しやすくなる。回路ブロック1001aが有するそれぞれのトランジスタのゲートには、端子IN3が接続される。
【0893】
回路ブロック1001bは回路ブロック1001aと直列に接続されている。回路ブロック1001bでは5個(n=5)のトランジスタが直列に接続されている。回路ブロック1001bが有するそれぞれのトランジスタのゲートには、端子IN1が接続される。
【0894】
回路ブロック1001bの一方の端子は端子IN2に接続され、他方の端子はノードNDに接続される。回路ブロック1001aの一方の端子はノードNDに接続され、他方の端子は端子IN4に接続される。
【0895】
回路ブロック1001c及び回路ブロック1001dではそれぞれ、直列に接続された13個(n=13)のトランジスタが、並列に15個(m=15)、接続されている。回路ブロック1001cが有するトランジスタのそれぞれのゲートは、ノードNDと接続される。回路ブロック1001cが有するトランジスタのそれぞれのゲートは、端子IN5と接続される。
【0896】
回路ブロック1001cの一方の端子は端子IN7に接続され、他方の端子は出力端子OUTに接続される。回路ブロック1001dの一方の端子は出力端子OUTに接続され、他方の端子は端子IN6に接続される。
【0897】
まず、ノードNDへの書き込みを行った。表5に示す電圧を端子IN1、端子IN2、端子IN3及び端子IN4に与え、図45の回路1001において、回路ブロック1001bのトランジスタをオン状態として、ノードNDに端子IN2の電圧0.8Vを書き込んだ。書き込み時間は、ノードNDの電圧が0.8Vとなるのに充分に長い時間とした。
【0898】
【表5】
【0899】
次に、表6に示す電圧を端子IN1、端子IN2、端子IN3、端子IN4、端子IN5、端子IN6及び端子IN7に与え、図45の回路1001において、回路ブロック1001a及び回路ブロック1001bのそれぞれのトランジスタをオフ状態として、保持を行った。出力端子OUTの電圧の変化を測定することで、ノードNDの電圧の変化を見積もることができる。ノードNDの電圧の変化から、回路ブロック1001aが有するトランジスタのリーク電流を見積もることができる。
【0900】
【表6】
【0901】
図45の回路1001を用いて見積もられたリーク電流を図46に示す。図46には測定温度が110℃、100℃、及び85℃における測定結果をそれぞれ示す。グラフの縦軸にはトランジスタ1つあたりのリーク電流を示し、横軸には1000/Tを示す。ここでTは測定の絶対温度である。
【0902】
図46より、トランジスタ1つあたりのリーク電流は、110℃において2.17×10-21[A/FET]と見積もられた。また外挿値より求めた27℃でのリーク電流は1×10-23[A/FET]よりも低い値となった。以上より、オフ状態でのトランジスタのリーク電流は極めて低いことが示唆された。
【符号の説明】
【0903】
ADDR:信号、BIL:配線、BILB:配線、BL:配線、BRL:配線、BW:信号、CA:容量素子、CAL:配線、CB:容量素子、CC:容量素子、CE:信号、CLK:信号、Cs:容量素子、FET:トランジスタ、GNDL:配線、GW:信号、M10:トランジスタ、MPG:導電層、MTCK:トランジスタ、RBL:配線、RC_BL:回路、RC_WL:回路、RDA:信号、RWL:配線、SL:配線、SN:ノード、Ta:最短距離、Tc:最短距離、VDL:配線、WAKE:信号、WBL:配線、WDA:信号、WL:配線、WOL:配線、61B:発光素子、61G:発光素子、61R:発光素子、61W:発光素子、100:容量素子、100a:容量素子、100b:容量素子、110:導電層、115:導電層、120:導電層、120a:導電層、120b:導電層、130:絶縁層、130B:副画素、130G:副画素、130R:副画素、140:絶縁層、150:メモリセル、150a:メモリセル、150b:メモリセル、150c:メモリセル、150d:メモリセル、160:メモリ層、170:表示モジュール、171:導電層、172B:EL層、172G:EL層、172R:EL層、172W:EL層、173:導電層、175B:光、175G:光、175R:光、180:絶縁層、190:開口部、200:トランジスタ、200a:トランジスタ、200b:トランジスタ、210:絶縁層、220:導電層、220a:導電層、220b:導電層、220c:導電層、230:酸化物半導体層、240:導電層、240a:導電層、240b:導電層、245:導電層、246:導電層、247:導電層、248:導電層、250:絶縁層、260:導電層、260a:導電層、260b:導電層、264B:着色層、264G:着色層、264R:着色層、265:導電層、271:保護層、272:絶縁層、280:絶縁層、280a:絶縁層、280b:絶縁層、280c:絶縁層、283:絶縁層、285:絶縁層、290:開口部、290a:開口部、290b:開口部、291:基板、292:回路部、293:画素回路部、293a:画素回路、294:画素部、294a:画素、295:端子部、296:配線部、297:表示部、298:FPC、299:基板、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁層、316:導電層、320:絶縁層、322:絶縁層、324:絶縁層、326:絶縁層、328:導電層、330:導電層、350:絶縁層、352:絶縁層、354:絶縁層、356:導電層、363:絶縁層、370a:酸化物半導体層、370b:酸化物半導体層、370c:酸化物半導体層、370d:酸化物半導体層、372a:領域、372b:領域、372c:領域、400d:トランジスタ、410:基板、412:素子分離層、413:半導体領域、414a:低抵抗領域、414b:低抵抗領域、415:絶縁層、416:導電層、417:絶縁層、420:絶縁層、422:絶縁層、424:絶縁層、426:絶縁層、428:導電層、430:導電層、450:絶縁層、452:絶縁層、454:絶縁層、456:導電層、513:絶縁層、514:導電層、541:基板、543:接着層、545:絶縁層、574:絶縁層、581:絶縁層、592:絶縁層、594:絶縁層、596:導電層、598:絶縁層、599:絶縁層、600A:表示装置、600B:表示装置、607:接着層、610:基板、611a:導電層、611b:導電層、611c:導電層、613a:層、613b:層、613c:層、614:共通層、615:共通電極、618a:犠牲層、620:素子層、625:絶縁層、627:絶縁層、628B:着色層、628G:着色層、628R:着色層、630:素子層、631:保護層、635:素子層、640:接続部、641:絶縁層、642:導電層、643:導電層、644:導電層、645:導電層、646:導電層、647:絶縁層、648:絶縁層、650B:発光素子、650G:発光素子、650R:発光素子、660:素子層、670:配線層、700:電子部品、700A:電子機器、702:プリント基板、704:実装基板、710:半導体装置、711:モールド、712:ランド、713:電極パッド、714:ワイヤ、715:駆動回路層、716:記憶層、721:筐体、723:装着部、730:電子部品、731:インターポーザ、732:パッケージ基板、733:電極、735:半導体装置、750:イヤフォン、751:表示パネル、753:光学部材、756:表示領域、757:フレーム、758:鼻パッド、800A:電子機器、800B:電子機器、820:表示部、821:筐体、822:通信部、823:装着部、824:制御部、825:撮像部、827:イヤフォン部、832:レンズ、840:表示装置、840_L:表示装置、840_R:表示装置、841:動き検出部、842:視線検出部、843:演算部、844:通信部、845:筐体、848:レンズ、850A:電子機器、850B:電子機器、851:操作ボタン、854:装着具、855:センサ、856:ダイヤル、900:半導体装置、910:駆動回路、911:周辺回路、912:コントロール回路、915:周辺回路、920:メモリセルアレイ、923:行ドライバ、924:列ドライバ、925:入力回路、926:出力回路、927:センスアンプ、928:電圧生成回路、930:層、931:PSW、932:PSW、941:行デコーダ、942:列デコーダ、950:メモリセル、951:メモリセル、952:メモリセル、953:メモリセル、954:メモリセル、955:メモリセル、956:メモリセル、957:メモリセル、958:メモリセル、960:演算装置、970A:半導体装置、970B:半導体装置、970C:半導体装置、989:キャッシュインターフェース、990:基板、991:ALU、992:ALUコントローラ、993:インストラクションデコーダ、994:インタラプトコントローラ、995:タイミングコントローラ、996:レジスタ、997:レジスタコントローラ、998:バスインターフェース、999:キャッシュ、1001:回路、1001a:回路ブロック、1001b:回路ブロック、1001c:回路ブロック、1001d:回路ブロック、5600:大型計算機、5610:ラック、5620:計算機、5621:PCカード、5622:ボード、5623:接続端子、5624:接続端子、5625:接続端子、5626:半導体装置、5627:半導体装置、5628:半導体装置、5629:接続端子、5630:マザーボード、5631:スロット、6500:電子機器、6501:筐体、6502:表示部、6503:電源ボタン、6504:ボタン、6505:スピーカ、6506:マイク、6507:カメラ、6508:光源、6509:制御装置、6510:保護部材、6511:表示パネル、6512:光学部材、6513:タッチセンサパネル、6515:FPC、6516:IC、6517:プリント基板、6518:バッテリ、6519:接続端子、6520:電子機器、6800:人工衛星、6801:機体、6802:ソーラーパネル、6803:アンテナ、6804:惑星、6805:二次電池、6807:制御装置、7000:表示部、7001:ホスト、7001sb:サーバ、7002:ストレージ制御回路、7003:ストレージ、7003md:記憶装置、7010:ストレージシステム、7100:テレビジョン装置、7101:筐体、7103:スタンド、7111:リモコン操作機、7200:ノート型パーソナルコンピュータ、7211:筐体、7212:キーボード、7213:ポインティングデバイス、7214:外部接続ポート、7215:制御装置、7300:デジタルサイネージ、7301:筐体、7303:スピーカ、7311:情報端末機、7400:デジタルサイネージ、7401:柱、7411:情報端末機、9000:筐体、9000a:筐体、9000b:筐体、9001:表示部、9001a:表示パネル、9001b:表示パネル、9001c:表示パネル、9001d:表示パネル、9003:スピーカ、9005:操作キー、9006:接続端子、9007:センサ、9008:マイクロフォン、9055:ヒンジ、9056:操作ボタン、9200:携帯情報端末、9201:携帯情報端末、9202:携帯情報端末
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