(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169356
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】受光素子およびその組立方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/107 20060101AFI20241128BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L31/10 B
H01L31/10 H
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024082264
(22)【出願日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】23175174.4
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524191697
【氏名又は名称】フィルスト ゼンザー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イマン サブリー アリレザエイ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヴィルケ
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン チャベス
(72)【発明者】
【氏名】マルク シルガリエス
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AA07
5F149AB03
5F149BA01
5F149BA03
5F149BA04
5F149BA05
5F149BA09
5F149BA25
5F149BB07
5F149DA05
5F149DA24
5F149DA25
5F149FA12
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5F149GA04
5F149HA02
5F149HA07
5F149HA09
5F149JA01
5F149JA10
5F149LA01
5F149XB04
5F149XB15
5F149XB38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長波長の放射にも合わせてAPDの感度および速度を向上させることができる受光素子およびその組立方法を提供する。
【解決手段】入射放射125が受光素子100に入ることのできる放射受容領域139を有する半導体基板138と、第1のコンタクト102に接続された第1のコンタクト領域113と、第2のコンタクト104に接続された第2のコンタクト領域119とを備え、第1のコンタクト102と第2のコンタクト104との間に電圧が印加されると、入射放射125から発生した電荷を増倍するための増倍領域が第1のコンタクト領域113に形成され、第1のコンタクト102および第2のコンタクト104は、半導体基板138の放射受容領域139とは反対側に配置され、放射反射領域106が半導体基板138の前記放射受容領域139とは反対側に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子(100)であって、
入射放射(125)が前記受光素子(100)に入ることのできる放射受容領域(139)を有する半導体基板(138)と、
第1のコンタクト(102)に接続された第1のコンタクト領域(113)と、
第2のコンタクト(104)に接続された第2のコンタクト領域(119)と
を備え、
前記第1のコンタクト(102)と前記第2のコンタクト(104)との間に電圧が印加されると、前記入射放射(125)から発生した電荷を増倍するための増倍領域が、前記第1のコンタクト領域(113)に形成され、
前記第1のコンタクト(102)および前記第2のコンタクト(104)は、前記半導体基板(138)の、前記放射受容領域(139)とは反対側に配置され、
放射反射領域(106)が、前記半導体基板(138)の、前記放射受容領域(139)とは反対側に配置されている、受光素子(100)。
【請求項2】
前記第1のコンタクト領域(113)は、第1の導電型の異なる導電性の領域を含み、
前記第2のコンタクト領域(119)は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含む、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項3】
前記第1のコンタクト領域(113)は、前記第1の導電型の第1のウェル(114)の上方に配置された、前記第1の導電型の、高濃度にドープされた第1の領域(112)を含み、前記第1の領域(112)および前記第1のウェル(114)の半径方向外方に配置された、前記第1の導電型の第2の領域(116)をさらに含む、請求項1または2に記載の受光素子(100)。
【請求項4】
前記第2のコンタクト領域(119)は、前記第2の導電型の第2のウェル(120)の上方に配置された、前記第2の導電型の、高濃度にドープされた第3の領域(118)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項5】
前記半導体基板(138)はp型基板であり、
前記第1の導電型はn型であり、
前記第2の導電型はp型である、請求項1から4のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項6】
前記第2のコンタクト領域(119)は、トレンチ(136)によって少なくとも部分的に取り囲まれ、
前記トレンチ(136)は、前記第2の導電型のドープされた側壁を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項7】
前記放射反射領域(106)は230μmの直径Dを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項8】
反射防止膜(ARC)またはブラッグフィルタ(132)が、前記放射受容領域(139)において前記半導体基板(138)の下方に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項9】
前記第2の導電型の、高濃度にドープされた第4の領域(128)が、前記半導体基板(138)と前記反射防止膜または前記ブラッグフィルタ(132)との間に配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項10】
前記半導体基板(138)はシリコンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項11】
前記受光素子(100)は、バイポーラ技術に基づいて作製されたリニアモードアバランシェフォトダイオードである、請求項1から10のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項12】
前記放射反射領域(106)は金属および/または金属合金を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項13】
前記半導体基板(138)は、赤色-赤外スペクトルの波長の全吸収深さよりも小さい深さを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項14】
前記第2の導電型の第3のウェル(122)が、前記第1のコンタクト領域(113)の下方に配置され、前記半導体基板(138)によって完全に取り囲まれている、請求項1から13のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項15】
前記受光素子(100)は、905nmの波長で73%(A/W)のピーク感度を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の受光素子(100)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の受光素子(100)を設ける組立方法であって、
前記受光素子(100)をキャリア(144)上に組み立てるステップであり、前記キャリア(144)は、前記受光素子(100)の、前記放射受容領域(138)とは反対側に配置される、ステップをさらに含む、組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受光素子および受光素子を設ける組立方法に関する。
【0002】
フォトダイオードなどの受光素子が、放射を電気信号に変換するために広く使用されている。それにより、放射は、フォトダイオードに入って吸収され、電流が発生する。
【背景技術】
【0003】
そのような受光素子は、産業オートメーションおよび自動車用途のための安全デバイスの分野で知られている。特に、LIDAR(光検知および測距)技術は、高度な運転者支援システム(ADAS)で使用され、自動運転を可能にする重要な技術である。これらのLIDARシステムにおいて、異なる受光素子に基づく異なる検出器スタイルが使用されている。受光素子の1つの種類は、アバランシェフォトダイオード(APD)である。
【0004】
APDは、シリコンに基づき、サイズが非常にコンパクトで量子効率が高く、比較的高利得であり得る半導体素子である。APDの内部構造は、真性半導体または低濃度にドープされたp型半導体から形成され、カソードおよびアノードに接触する、高濃度にドープされたp型領域およびn型領域を含む。シリコン結晶の高濃度にドープされた領域および低濃度にドープされた深い領域を使用することによって、非常に高い内部電界(internal field)がpn接合にわたって維持されて、高い内部利得を生み出す。これらの金属コンタクトを通して、外部の高い逆バイアス電圧が供給される。放射がAPDに入ると、高い内部電界により、発生する電子-ホール対を増倍し(multiplying)、かつ電気信号を出力で発生させる、アバランシェ効果が生じる。
【0005】
一般的なAPDは、pドープされたエピタキシャル層(epi―layer)が高濃度にドープされたp型基板上に配置される、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)プロセスを使用して作製される。アノードは、高濃度にドープされたp型基板に接続され、APDの反対側に、カソードが配置される。動作中、放射が、カソード側(前側)でAPDに入り、APDの内部構造により、発生した電荷の流れがカソードとアノードとの間に生じる。これらのAPDは、対応するキャリアにワイヤボンディングされている。
【0006】
そのようなCMOSにより作製された単一光子アバランシェダイオード(SPAD)は、2021年2月16~18日に開催された第16回(Virtual) Trento workshop on Advanced Silicon Radiation Detectsに寄与したG. Paternoster他によって提案されている(https://indico.cern.ch/event/983068/contributions/4223039/attachments/2191308/3703680/TREDI21_Paternoster.pdf(2023年3月2日に検索))。そこでは、SPADの上面に1つの金属コンタクト(カソード)が配置され、SPADの下面に別の金属コンタクト(アノード)が配置されている、背面照射SPADが提案されている。放射は、下面からSPADに入る。シリコンで発生する電荷は、アノードとカソードとの間でSPADを通って垂直に流れる。
【0007】
現在の解決策の1つの欠点は、前面照射APDの感度およびフィルファクタが、APDのワイヤボンディングにより限られることである。さらに、近赤外スペクトル領域の厚いエピタキシャル層により、APDの感度および速度に対する要求の妥協点を見つけなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来の技術の欠点を克服するために、サイズが小さく感度および速度が向上した、改良された受光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。本開示の有利な例は、従属請求項の主題である。
【0010】
本開示は、APDの構造を改良することによって、長波長の放射にも合わせてAPDの感度および速度を向上させることができるという考えに基づく。
【0011】
特に、受光素子は、入射放射が受光素子に入ることのできる放射受容領域を有する半導体基板を備える。さらに、受光素子は、第1のコンタクトに接続された第1のコンタクト領域と、第2のコンタクトに接続された第2のコンタクト領域とを備える。第1のコンタクトと第2のコンタクトとの間に電圧が印加されると、入射放射から発生した電荷を増倍するための増倍領域(multiplication region)が、第1のコンタクト領域に形成される。第1のコンタクトおよび第2のコンタクトは、半導体基板の、放射受容領域とは反対側に配置されている。さらに、放射反射領域が、半導体基板の、放射受容領域とは反対側に配置されている。
【0012】
入射放射を反射する放射反射領域を使用すると、放射が半導体基板において必要とする有効距離が2倍になる。これにより、光とも呼ばれる放射が基板に吸収される可能性が高まり、有利である。これは、電磁エネルギーが波長に応じて異なる吸収深さを有するため、特に注目される。赤色および赤外領域の長波長は、基板の深いところで吸収される。入射光線を反射すると、長波長を吸収することができ、同時に、基板の厚さを低減させることができ有利である。基板の厚さを低減させると、受光素子の速度および感度が向上し、有利である。
【0013】
本開示による放射反射領域は、様々な波長の放射を反射するために使用できる異なるサイズの領域であってよい。それにより、本発明は、ある特定の反射材料に限定されるのではなく、任意の反射材料であってよい。使用する材料を、反射すべき放射波長に応じて選択することができ、本発明は、様々な数の用途に適用可能になる。
【0014】
本発明の放射受容領域は、無金属材料から形成されることが好ましい。
【0015】
本開示の有利なさらなる発展によれば、受光素子の第1のコンタクト領域は、第1の導電型の異なる導電性の領域を含み、第2のコンタクト領域は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含む。
【0016】
本開示の有利なさらなる発展によれば、第1のコンタクト領域は、第1の導電型の第1のウェルの上方に配置された、第1の導電型の、高濃度にドープされた第1の領域を含む。さらに、第1の導電型の第2の領域が、第1の領域および第1のウェルの半径方向外方に配置されている。
【0017】
本開示の有利なさらなる発展によれば、第2のコンタクト領域は、第2の導電型の第2のウェルの上方に配置された、第2の導電型の、高濃度にドープされた第3の領域を含む。
【0018】
半導体基板はp型基板であり、第1の導電型はn型であり、第2の導電性はp型であることが有利である。
【0019】
本開示の有利なさらなる発展によれば、第2のコンタクト領域は、トレンチによって少なくとも部分的に取り囲まれ、トレンチは、第2の導電型のドープされた側壁を含む。トレンチは、小さい経路抵抗をもたらし、暗騒音の可能性を低下させ、有利である。ドープされた側壁を含むトレンチは、電荷移動効率を向上させることができる。トレンチ側壁における第2の導電型の浅いドープの深さが、トレンチの深さに伴って増加することが好ましい。あるいは、トレンチ側壁におけるドープ濃度が、トレンチの異なる深さにおいて略均一である。
【0020】
本開示の有利なさらなる発展によれば、放射反射領域は230μmの直径Dを有する。
【0021】
本開示の有利なさらなる発展によれば、反射防止膜(ARC)またはブラッグフィルタが、放射受容領域において半導体基板の下方に配置されている。反射防止膜は、放射受容領域の放射透過性を向上させ、有利である。さらに、ARCを使用して、所望の波長における半導体基板の吸収特性を向上させるまたは制御することができる。ARCの特性を、対象の波長に応じて選択できることが有利である。
【0022】
本開示の有利なさらなる発展によれば、第2の導電型の、高濃度にドープされた第4の領域が、半導体基板と反射防止膜またはブラッグフィルタとの間に配置されている。この領域は、増倍領域への電荷移動効率を向上させ、有利である。
【0023】
本開示の有利なさらなる発展によれば、半導体基板はシリコンを含む。シリコンの薄層を使用することは、破壊電圧を低下させることができるという好ましい効果を有する。
【0024】
本開示の有利なさらなる発展によれば、受光素子は、バイポーラ技術に基づいて作製されたリニアモードアバランシェフォトダイオードである。バイポーラ技術に基づく受光素子の作製は、シリコン基板を使用し、厚いエピタキシャル(EPI)層の使用を不要にするため有利である。これは、受光素子の感度と速度との妥協点を見つけなければならないEPI層を使用する従来の解決策の欠点を克服し、有利である。
【0025】
本開示の有利なさらなる発展によれば、放射反射領域は金属および/または金属合金を含む。
【0026】
本開示の有利なさらなる発展によれば、半導体基板は、赤色-赤外スペクトルの波長の全吸収深さよりも小さい深さを有する。基板の特に小さい深さにより、受光素子のパッケージサイズが小さくなる。同時に、放射反射領域を使用するという考えにより、これらの波長が、それでも薄い基板に吸収され得ることが可能になる。
【0027】
本開示の有利なさらなる発展によれば、第2の導電型の第3のウェルが、第1のコンタクト領域の下方に配置され、半導体基板によって完全に取り囲まれている。
【0028】
本開示の有利なさらなる発展によれば、受光素子は、800nm~930nmのスペクトル領域において70%(A/W)超の感度を有する。特に、受光素子は、905nmの波長で73%(A/W)のピーク感度を有することが有利である。この文脈における感度という用語は、光子を受け取ったときに物体が反応する量に関する。例示的に、30μmの半導体基板の厚さで感度値に達することができる。
【0029】
本発明はさらに、本開示の有利な発展による受光素子を設ける組立方法であって、受光素子をキャリア上に組み立てるステップであり、キャリアは、受光素子の、放射受容領域とは反対側に配置される、ステップをさらに含む組立方法に関する。
【0030】
受光素子の有利な構造により、フリップチップボンディングを介して素子がキャリア上に組み立てられ得ることが可能になる。この組立方法により、信頼性が高まり、素子のパッケージサイズが小さくなる。さらに、組み立てられた受光素子を、既存の解決策に容易に組み込んで、さらに加工することができる。また、標準的なワイヤボンディング組立方法の代わりにフリップチップボンディングを使用することは、受光素子の信号対雑音比(SNR)およびフィルファクタに対して有利な効果を有する。
【0031】
本開示をより良く理解するために、以下の図面に示す例を使用して、本開示をより詳細に説明する。ここでは、同一の部分は、同一の参照数字および同一の部品名で示す。さらに、図示し説明する様々な例のいくつかの特徴または特徴の組合せは、独立した解決策、本発明の解決策、または本開示による解決策も表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】本開示による受光素子の配置を示す図である。
【
図3】本開示による、組み立てられた受光素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
さらに、
図1を参照しながら、本発明の好ましい態様について説明する。
【0034】
図1は、本開示による受光素子100を示す。受光素子100は、第1のコンタクト領域113と第2のコンタクト領域119とを含む半導体基板138を備える。第1のコンタクト領域113は、第1の導電型の異なる導電性の領域を含み、第2のコンタクト領域119は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含む。
【0035】
第1のコンタクト領域113は、第1のコンタクト102に接続され、第2のコンタクト領域119は、第2のコンタクト104に接続されている。第1のコンタクト102は受光素子100のカソードと呼ばれ、第2のコンタクト104はアノードと呼ばれることが好ましい。第2のコンタクト104は、第1のコンタクト102の半径方向外方に配置されることが好ましい。さらに、第1のコンタクト102および第2のコンタクト104は、金属および/または金属合金を含むことが好ましい。
【0036】
さらに、第1のコンタクト領域113は、第1の導電型の第1のウェル114の上方に配置された、第1の導電型の、高濃度にドープされた第1の領域112を含む。さらに、第1の導電型の第2の領域116が、第1の領域112および第1のウェル114の半径方向外方に配置されている。第2のコンタクト領域119は、第2の導電型の第2のウェル120の上方に配置された、第2の導電型の、高濃度にドープされた第3の領域118を含む。
【0037】
第1の導電型はn型であり、第2の導電型はp型であることが好ましい。さらに、半導体基板138は、例示的に、シリコンを含むp型基板として選択されている。したがって、好ましい例において、第1のコンタクト領域113は、n型の異なってドープされた領域を含み、第2のコンタクト領域119は、p型の異なってドープされた領域を含む。
【0038】
さらに、第2のコンタクト領域119は、トレンチ136によって少なくとも部分的に取り囲まれている。トレンチ136は、第2の導電型のドープされた側壁を含み、電荷移動効率を向上させることが有利である。それにより、第2の導電型のドープされた側壁の深さが、トレンチの深さに伴って増加することができる。あるいは、トレンチ側壁におけるドープ濃度が、トレンチの異なる深さにおいて略均一である。
【0039】
トレンチ136は、小さい経路抵抗をもたらして、電荷収集効率を向上させ、潜在的な暗騒音源を減らす。
【0040】
さらに、第2の導電型の第3のウェル122が、第1のコンタクト領域113の下方に配置され、半導体基板138によって完全に取り囲まれていることが好ましい。
【0041】
本開示の有利な例において、受光素子100は、バイポーラ技術に基づいて作製されたリニアモードアバランシェフォトダイオード(APD)である。バイポーラ技術に基づくAPDの作製は、そのような検出器の開発に関して自由度が制限される、標準的なCMOS技術の欠点を克服する。この制限は、ウェルとしての高性能トランジスタのために最適化しなければならないプロセスフローの変更が不可能であることから生じる。バイポーラ技術に基づくAPDの作製から生じるさらなる利点は、作用面積の大きさ、カソードとアノードとの間の距離、および半導体基板の厚さとしての設計要件が、もはや制限要因ではないことである。さらにまた、金属を付着させる半導体基板のコンタクト開口部を、自由に選択することができる。さらに、バイポーラ技術の使用により、低入力インピーダンスを有するAPDを提供することも有利である。同時に、高い駆動電流、速度、および利得を実現することができる。
【0042】
入射放射125は、放射受容領域139から受光素子100に入る。この放射受容領域139は、無金属材料から形成されることが好ましい。第1のコンタクト102と第2のコンタクト104との間に電圧が印加されると、第1のコンタクト領域113に増倍領域が形成される。印加された電圧は、増倍領域の周囲の電界を強める。入射放射が受光素子に入ると、入射放射は吸収され、電子-ホール対が発生する。これらの電荷キャリアは、高電界が存在する増倍領域に流れ、そこで増倍される。速度が最高であるときに、電荷キャリアは他の原子に衝突し、新しい電子-ホール対を発生させる。これにより、高い光電流が生じる。
【0043】
第1のコンタクト102および第2のコンタクト104が受光素子100の一側に配置されることにより、入射放射125により発生する電荷は、受光素子100を通って横方向に流れる。
【0044】
図1はまた、反射防止膜(ARC)またはブラッグフィルタ132が半導体基板138の下方に配置されていることが有利であることを示す。「下方」という用語は、ARCまたはブラッグフィルタ132が、受光素子100の放射受容領域139に配置され、入射放射125が、半導体基板138に入る前にARCまたはブラッグフィルタ132に当たることを意味する相対的な用語を示す。ARC/ブラッグフィルタ132と半導体基板138との間に、第2の導電型の、高濃度にドープされた第4の領域128が配置されていることが好ましい。第4の領域128は、放射が入る受光素子の側で、捕捉された電荷または欠陥点の関与(contribution)を低減させることが好ましい。
【0045】
さらに、ARCの下方またはブラッグフィルタ132の下方に、ガラスウエハ134が配置されている。ガラスウエハ134は、受光素子100の加工を容易にする取扱部品として使用される。ガラスハンドルウエハは、結合プロセス後に除去される。したがって、入射放射125が、最初にARCまたはブラッグフィルタに入り、次に第4の領域128、そして半導体基板138に入ることが有利である。
【0046】
ARCおよびブラッグフィルタは、所望の波長における吸収特性を向上させ、入射放射が基板に入ることを可能にすることが好ましい。
【0047】
入射経路で吸収されなかった入射放射125は、受光素子100に配置された放射反射領域106によって反射される。この放射反射領域106は、放射受容領域139とは反対側に配置されている。放射反射領域106は、第1のコンタクト102および第2のコンタクト104と同じ受光素子100の側に配置されていることが好ましい。さらに、放射反射領域106は、受光素子の略中央に配置されていることが有利である。第1のコンタクト102は、放射反射領域106を半径方向に取り囲むことが有利である。次に、第2のコンタクト104は、第1のコンタクト102を半径方向に取り囲む。
【0048】
入射放射125は、放射反射領域106によって反射されて、反射光線126を生じさせる。したがって、入射放射125は、略反射されて増倍領域および半導体基板138に戻り、そこで吸収され得る。入射放射125の反射により、放射が受光素子において必要とする有効距離が2倍になる。したがって、本開示により、長波長の放射の吸収が可能になる。
【0049】
特に、入射放射125の反射により、吸収できる放射に影響を及ぼすことなく、半導体基板138の深さが効果的に小さくなり得ることが可能になる。半導体基板138の深さは、赤色-赤外スペクトルの波長の全吸収深さよりも小さくなるように選択されることが有利である。したがって、特にコンパクトで小さく、それでも長波長を吸収する受光素子が得られる。
【0050】
受光素子に同等の薄い基板および放射反射領域を設けることにより、受光素子の速度および感度の両方が向上する。さらに、薄いシリコン基板により、特に近赤外スペクトル領域における受光素子の低い温度係数および低い破壊電圧が可能になる。
【0051】
さらに、放射反射領域106が、230μmの直径Dを有し、金属および/または金属合金を含むことが好ましい。例示的に、放射反射領域106はアルミニウムから形成されている。
【0052】
提示された受光素子100により、800nm~930nmのスペクトル領域の波長について70%~80%(A/W)のピーク感度に達することができると有利である。905nmの波長で73%(A/W)のピーク感度に達することができると有利である。例示的に、30μmの半導体基板の厚さで感度値に達することができる。
【0053】
図2は、受光素子100の配置を示す。見て取れるように、放射反射領域106は、略中央に配置され、230μmの直径を有することが好ましい。第1のコンタクト102は、放射反射領域106の半径方向外方に位置決めされている。第2のコンタクト104は、第1のコンタクト102の半径方向外方に配置され、第1のコンタクト102から電気的に分離されている。第2のコンタクト104の半径方向外方に、チャネルストッパ146が配置されていることが好ましい。
【0054】
図1に示すように、第1のコンタクト102と第2のコンタクト104とは、例示的に、酸化物を含む層108を介して電気的に分離されている。例示的に、複数の層108が、窒化物を含む層110によって分離されている。
【0055】
図3は、キャリア144上に組み立てられた受光素子100を示す。この図は、本発明の受光素子100のある有利な特徴を強調している。第1のコンタクト102および第2のコンタクト104を受光素子100の同じ側に配置することにより、フリップチップボンディングを介してこれらのコンタクトを結合することが可能になる。フリップチップボンディングは、非常に信頼性が高く、一体化が容易な結合方法である。結合部品140を介して、各コンタクト102、104は、キャリア144のそれぞれの結合部品142に結合されている。それにより、キャリア144は、受光素子100の、放射受容領域139とは反対側に特に配置されている。
【符号の説明】
【0056】
100 受光素子
102 第1のコンタクト
104 第2のコンタクト
106 放射反射領域
108 酸化物
110 窒化物
112 第1の領域
113 第1のコンタクト領域
114 第1のウェル
116 第2の領域
118 第3の領域
119 第2のコンタクト領域
120 第2のウェル
122 第3のウェル
125 入射放射
126 反射光線
128 第4の領域
132 反射防止膜/ブラッグフィルタ
134 ガラスウエハ
136 トレンチ
138 半導体基板
139 放射受容領域
140 結合部品
142 キャリアの結合部品
144 キャリア
146 チャネルストッパ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子(100)であって、
入射放射(125)が前記受光素子(100)に入ることのできる放射受容領域(139)を有する半導体基板(138)と、
第1のコンタクト(102)に接続された第1のコンタクト領域(113)と、
第2のコンタクト(104)に接続された第2のコンタクト領域(119)と
を備え、
前記第1のコンタクト(102)と前記第2のコンタクト(104)との間に電圧が印加されると、前記入射放射(125)から発生した電荷を増倍するための増倍領域が、前記第1のコンタクト領域(113)に形成され、
前記第1のコンタクト(102)および前記第2のコンタクト(104)は、前記半導体基板(138)の、前記放射受容領域(139)とは反対側に配置され、
放射反射領域(106)が、前記半導体基板(138)の、前記放射受容領域(139)とは反対側に配置されている、受光素子(100)。
【請求項2】
前記第1のコンタクト領域(113)は、第1の導電型の異なる導電性の領域を含み、
前記第2のコンタクト領域(119)は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含む、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項3】
前記第1のコンタクト領域(113)は、第1の導電型の異なる導電性の領域を含み、
前記第1のコンタクト領域(113)は、前記第1の導電型の第1のウェル(114)の上方に配置された、前記第1の導電型の、高濃度にドープされた第1の領域(112)を含み、前記第1の領域(112)および前記第1のウェル(114)の半径方向外方に配置された、前記第1の導電型の第2の領域(116)をさらに含む、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項4】
前記第2のコンタクト領域(119)は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含み、
前記第2のコンタクト領域(119)は、前記第2の導電型の第2のウェル(120)の上方に配置された、前記第2の導電型の、高濃度にドープされた第3の領域(118)を含む、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項5】
前記半導体基板(138)はp型基板であり、
前記第1の導電型はn型であり、
前記第2の導電型はp型である、請求項2に記載の受光素子(100)。
【請求項6】
前記第2のコンタクト領域(119)は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含み、
前記第2のコンタクト領域(119)は、トレンチ(136)によって少なくとも部分的に取り囲まれ、
前記トレンチ(136)は、前記第2の導電型のドープされた側壁を含む、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項7】
前記放射反射領域(106)は230μmの直径Dを有する、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項8】
反射防止膜(ARC)またはブラッグフィルタ(132)が、前記放射受容領域(139)において前記半導体基板(138)の下方に配置されている、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項9】
前記第2のコンタクト領域(119)は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含み、
前記第2の導電型の、高濃度にドープされた第4の領域(128)が、前記半導体基板(138)と前記反射防止膜または前記ブラッグフィルタ(132)との間に配置されている、請求項8に記載の受光素子(100)。
【請求項10】
前記半導体基板(138)はシリコンを含む、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項11】
前記受光素子(100)は、バイポーラ技術に基づいて作製されたリニアモードアバランシェフォトダイオードである、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項12】
前記放射反射領域(106)は金属および/または金属合金を含む、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項13】
前記半導体基板(138)は、赤色-赤外スペクトルの波長の全吸収深さよりも小さい深さを有する、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項14】
前記第2のコンタクト領域(119)は、第2の導電型の異なる導電性の領域を含み、
前記第2の導電型の第3のウェル(122)が、前記第1のコンタクト領域(113)の下方に配置され、前記半導体基板(138)によって完全に取り囲まれている、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項15】
前記受光素子(100)は、905nmの波長で73%(A/W)のピーク感度を有する、請求項1に記載の受光素子(100)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の受光素子(100)を設ける組立方法であって、
前記受光素子(100)をキャリア(144)上に組み立てるステップであり、前記キャリア(144)は、前記受光素子(100)の、前記放射受容領域(139)とは反対側に配置される、ステップをさらに含む、組立方法。
【外国語明細書】