(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016937
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240201BHJP
H01F 7/126 20060101ALI20240201BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F16K31/06 305D
H01F7/16 K
H01F7/16 R
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119242
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA12
3H106DA23
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DD03
3H106EE35
3H106GA10
3H106GA11
3H106GA14
3H106GA23
3H106JJ02
3H106KK23
5E048AD02
5E048BA01
5E048CB07
(57)【要約】
【課題】ハウジングと吸引子を密着させて磁路を形成しつつ製造時の工程数と材料費を削減し組立作業性を高める。
【解決手段】冷媒を流出入させる第1流路口14及び第2流路口15を有し弁座16を有する弁本体13と、第2流路口を開閉する弁体18とを含む弁部12と、弁部を駆動する電磁駆動装置41を備え、電磁駆動装置は、コイル42と、スリーブ46と、プランジャ45aと、スリーブと弁部の双方に固定された吸引子44と、磁性材料からなりコイルを弁部に固定するハウジング47とを有し、ハウジングは、コイル上面を覆う天板部47aと、吸引子が貫通する貫通孔53を有し且つコイル下面を覆う底板部47bを有する電磁弁11で、底板部と吸引子を磁性材料からなる弾性部材(波座金又はばね座金)55を介して接触させ、天板部をスリーブの上端部に固定することによりコイルを弁部に固定した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の流れを制御する弁部と、
当該弁部に固定され当該弁部を駆動する電磁駆動装置と
を備え、
前記弁部は、
弁室を内部に有するとともに、前記弁室に連通する第1流路口および第2流路口を有し、前記第2流路口の弁室側の端部に形成した弁座を有する、弁本体と、
前記弁座に対して進退動することにより前記第2流路口を開閉する弁体と
を有し、
前記弁部から前記電磁駆動装置に向かう方向を上方とし、前記電磁駆動装置から前記弁部に向かう方向を下方としたときに、
前記電磁駆動装置は、
磁力を発生するコイルと、
コイルの中心部に上下方向に延びるように配置したスリーブと、
前記スリーブ内に摺動可能に配置したプランジャと、
前記プランジャを吸引できるように前記スリーブの下方側の端部に固定され且つ前記弁部に固定された吸引子と、
磁性材料からなり前記コイルを前記弁部に固定するハウジングと
を有し、
前記ハウジングは、
前記コイルの上方側の面を覆う天板部と、
前記吸引子が貫通する貫通孔を有し且つ前記コイルの下方側の面を覆う底板部と
を有する
電磁弁であって、
前記底板部と前記吸引子とを磁性材料からなる弾性部材を介して接触させるとともに、
前記天板部を前記スリーブの上方側の端部に固定することにより前記コイルを前記弁部に固定した
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記弾性部材は、
ウェーブワッシャまたはスプリングワッシャであり、
上下方向に互いに対向する前記底板部の面と前記吸引子の面との間に介在されている
請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
冷媒の流れを制御する弁部と、
当該弁部に固定され当該弁部を駆動する電磁駆動装置と
を備え、
前記弁部は、
弁室を内部に有するとともに、前記弁室に連通する第1流路口および第2流路口を有し、前記第2流路口の弁室側の端部に形成した弁座を有する、弁本体と、
前記弁座に対して進退動することにより前記第2流路口を開閉する弁体と
を有し、
前記弁部から前記電磁駆動装置に向かう方向を上方とし、前記電磁駆動装置から前記弁部に向かう方向を下方としたときに、
前記電磁駆動装置は、
磁力を発生するコイルと、
コイルの中心部に上下方向に延びるように配置したスリーブと、
前記スリーブ内に摺動可能に配置したプランジャと、
前記プランジャを吸引できるように前記スリーブの下方側の端部に固定され且つ前記弁部に固定された吸引子と、
磁性材料からなり前記コイルを前記弁部に固定するハウジングと
を有し、
前記ハウジングは、
前記コイルの上方側の面を覆う天板部と、
前記吸引子が貫通する貫通孔を有し且つ前記コイルの下方側の面を覆う底板部と
を有する
電磁弁であって、
前記底板部は、前記貫通孔を形成する内縁部に、弾性変形可能な弾性縁部を有し、
当該弾性縁部を介して前記底板部を前記吸引子に接触させるとともに、
前記天板部を前記スリーブの上方側の端部に固定することにより前記コイルを前記弁部に固定した
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
前記吸引子は、その下方側の端部に、上方を向いてハウジングの底板部を受けるハウジング受面を有し、
前記弾性縁部は、
前記貫通孔の中心に向けて斜め下方へ延びる傾斜部と、
当該傾斜部の先端から前記貫通孔の中心に向けて前記ハウジング受面と平行に延びる接触部と
を有し、
前記接触部を前記ハウジング受面に接触させた
請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
冷媒の流れを制御する弁部と、
当該弁部に固定され当該弁部を駆動する電磁駆動装置と
を備え、
前記弁部は、
弁室を内部に有するとともに、前記弁室に連通する第1流路口および第2流路口を有し、前記第2流路口の弁室側の端部に形成した弁座を有する、弁本体と、
前記弁座に対して進退動することにより前記第2流路口を開閉する弁体と
を有し、
前記弁部から前記電磁駆動装置に向かう方向を上方とし、前記電磁駆動装置から前記弁部に向かう方向を下方としたときに、
前記電磁駆動装置は、
磁力を発生するコイルと、
コイルの中心部に上下方向に延びるように配置したスリーブと、
前記スリーブ内に摺動可能に配置したプランジャと、
前記プランジャを吸引できるように前記スリーブの下方側の端部に固定され且つ前記弁部に固定された吸引子と、
磁性材料からなり前記コイルを前記弁部に固定するハウジングと
を有し、
前記ハウジングは、
前記コイルの上方側の面を覆う天板部と、
前記吸引子が貫通する貫通孔を有し且つ前記コイルの下方側の面を覆う底板部と
を有する
電磁弁であって、
前記底板部は、前記貫通孔を形成する内縁部に、前記吸引子の側面に接触する接触部を有し、
前記天板部を前記スリーブの上方側の端部に固定することにより前記コイルを前記弁部に固定した
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項6】
前記接触部は、前記内縁部から前記吸引子の側面に沿うように立ち下がって前記吸引子の側面に接触する折曲部である
請求項5に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に係り、特に、コイルの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁コイルにより弁の開閉を行う電磁弁が空気調和機や冷蔵装置、冷凍装置など冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置に用いられている。
【0003】
かかる電磁弁には、通電時のみ開弁されるノーマルクローズタイプ(常時閉型)と、通電時のみ閉弁されるノーマルオープンタイプ(常時開型)とがある。また電磁弁には、電磁コイルによって弁体を直接開閉する直動式と、電磁コイルによりパイロット弁を開閉駆動し、このパイロット弁の開閉に応動して主弁を開閉するようにしたパイロット式とがあり、使用用途に応じてこれらの電磁弁が使い分けられている。
【0004】
また、このような電磁弁を開示するものとして下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の電磁弁には、弁本体に対するコイルの固定構造について改良の余地がある。
【0007】
具体的には、前記特許文献1記載の電磁弁では、磁性材料からなりコイルを覆うように備えられたヨーク(本願発明の「ハウジング」に相当する)の下側に左右に張り出す張出部をそれぞれ形成し、これらの張出部に雄ねじを貫通させることにより弁本体の上面にコイルを固定している。このため、弁本体に2箇所のねじ加工(雄ねじに螺合する雌ねじの形成)が必要で、加工工程数がかかる面があった。
【0008】
また、ハウジングに雄ねじが通る2つの貫通孔が必要で、張出部を形成する必要があることから、例えば生産性に優れる順送プレスによりハウジングを作製する場合にその分、材料幅が大きくなって材料費が嵩み、加工工数が多くなる課題もある。
【0009】
さらに、2箇所で固定されるため、コイルの向きを自由に変えられない不便さや、固定箇所がコイルに近い場所にあると雄ねじを締めるときにコイルの側面が邪魔になって締め辛く、組立時の作業性が良好とは言えない面もあった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記のような課題を解決できるコイルの新たな固定構造を得る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔第1発明〕
前記課題を解決し目的を達成するため、本願の第1の発明に係る電磁弁は、冷媒の流れを制御する弁部と、弁部に固定されて弁部を駆動する電磁駆動装置とを備え、弁部は、弁室を内部に有するとともに弁室に連通する第1流路口および第2流路口を有し第2流路口の弁室側の端部に形成した弁座を有する弁本体と、弁座に対して進退動することにより第2流路口を開閉する弁体とを有し、弁部から電磁駆動装置に向かう方向を「上方」とし、電磁駆動装置から弁部に向かう方向を「下方」としたときに、電磁駆動装置は、磁力を発生するコイルと、コイルの中心部に上下方向に延びるように配置したスリーブと、スリーブ内に摺動可能に配置したプランジャと、プランジャを吸引できるようにスリーブの下方側の端部(以下「下端部」と言うことがある)に固定され且つ弁部に固定された吸引子と、磁性材料からなりコイルを弁部に固定するハウジングとを有し、ハウジングは、コイルの上方側の面(以下「上面」と言うことがある)を覆う天板部と、吸引子が貫通する貫通孔を有し且つコイルの下方側の面(以下「下面」と言うことがある)を覆う底板部とを有する。
【0012】
そして当該電磁弁では、上記ハウジングの底板部と吸引子とを磁性材料からなる弾性部材を介して接触させるとともに、ハウジングの天板部をスリーブの上方側の端部(以下「上端部」と言うことがある)に固定することによりコイルを弁部に固定する。
【0013】
なお、本発明(「本発明」と言う場合は後述の第2及び第3の発明を含む)は、電磁駆動装置が弁体を直接駆動する直動式電磁弁と、後に述べる実施形態のように電磁駆動装置がパイロット弁を介して間接的に弁体(主弁体)を駆動するパイロット式電磁弁の双方に適用することが可能である。したがって電磁駆動装置について「弁体を駆動する」とは、弁体を直接駆動する意味に限定されるわけではなく、間接的に(パイロット弁を介して)弁体(主弁体)を駆動する意味を含む概念である。
【0014】
同様に、本発明に言う「天板部をスリーブの上方側の端部に固定する」とは、スリーブに直接固定することだけを意味するのではなく、間接的に固定すること、つまり他の部材(例えば後述する実施形態の栓状部材のようなスリーブに固定した部材等)を介して固定することと直接固定することの双方を含む。
【0015】
本願の第1の発明に係る電磁弁では、上述のようにハウジングの天板部をスリーブの上端部に固定することによりコイルを弁部に固定するが、スリーブは弁部に固定された吸引子に固定されている(つまり吸引子とスリーブは相互に固定されている)。したがって、ハウジング(即ちコイル)はスリーブと吸引子を介して弁部に固定されることになる。なお、吸引子の弁部への固定は、吸引子を弁本体に直接固定しても良いし、他の部材(例えば後述の実施形態の連結部材のような部材)を介して間接的に固定しても良い。
【0016】
スリーブへの天板部の固定は、固定時の作業性を良好にするため典型的には、ねじ止めにより行う。例えば、スリーブ側(スリーブに固定された他の部材でも良い)に形成した雌ねじにハウジングを貫通する雄ねじをねじ込むことにより天板部をスリーブに固定することが可能である。前記特許文献1記載の発明では、左右に張り出す張出部をハウジングに設けて2本の雄ねじによって弁本体にハウジングを固定していたのに対し、本発明によれば天板部を貫通する1本の雄ねじでハウジングを弁本体に(スリーブと吸引子を介して)固定することが可能となり、ハウジングに張出部を設ける必要も無い。
【0017】
したがって本発明によれば、従来に比べて加工工程数と材料費を削減することが出来る。また本発明によれば、天板部1箇所でハウジング(コイル)を固定できるから、コイルの向き(例えばコイルへの給電ケーブルの引出し方向)を自由に変えることが出来る利便性もある。さらに本発明によれば、スリーブ上端部でハウジングを固定するから、ハウジング固定用の雄ねじを締めるときにコイルの側面が邪魔になるようなこともなく、組立時の作業性も良好となる。
【0018】
また、本発明においてハウジングは、吸引子とともにプランジャを吸引する磁気回路を構成する(磁路を形成する)が、吸引力が低下することがないようにハウジングと吸引子とは隙間無く(両者の間にエアギャップが形成されること無く)密着させることが好ましい。そこで、上記第1の発明では、ハウジングの底板部と吸引子とを磁性材料からなる弾性部材を介して接触させる。つまり、ハウジング(底板部)と吸引子との間に磁性材料からなる弾性部材を挟み込み、これら底板部と弾性部材と吸引子とで磁路を形成する。
【0019】
このような構造によれば、天板部をスリーブの上端部に固定するとき(コイルを弁本体に取り付けるとき)に底板部が吸引子に対して位置ずれする(底板部が吸引子に対して離れるように移動する)ことがあってもその位置ずれを弾性部材によって吸収することが出来るから、ハウジング(底板部)と吸引子とを確実に密着させ、両者(底板部と吸引子)の間に隙間が生じることを防ぐことが出来る。
【0020】
上記弾性部材は、典型的には、ウェーブワッシャ(波座金)またはスプリングワッシャ(ばね座金)であり、上下方向に互いに対向する底板部の面と吸引子の面との間に介在させる。なお、本発明において「上下方向」とは、上方と下方の双方を含む概念(上方と下方の双方に平行な方向)であり、別の表現をすれば、電磁弁(弁本体)の軸線に平行な方向である。
【0021】
また、本発明において第1流路口と第2流路口は、弁室に冷媒を流入させる流入口と、弁室から冷媒を流出させる流出口のいずれかとして使用される。すなわち、第1流路口を流入口として使用する場合には第2流路口は流出口となり、逆に、第2流路口を流入口として使用する場合には第1流路口が流出口となる。
【0022】
〔第2発明〕
本願の第2の発明に係る電磁弁は、第1の発明に係る電磁弁と同様に、冷媒の流れを制御する弁部と、弁部に固定されて弁部を駆動する電磁駆動装置とを備え、弁部は、弁室を内部に有するとともに弁室に連通する第1流路口および第2流路口を有し第2流路口の弁室側の端部に形成した弁座を有する弁本体と、弁座に対して進退動することにより第2流路口を開閉する弁体とを有し、弁部から電磁駆動装置に向かう方向を上方とし、電磁駆動装置から弁部に向かう方向を下方としたときに、電磁駆動装置は、磁力を発生するコイルと、コイルの中心部に上下方向に延びるように配置したスリーブと、スリーブ内に摺動可能に配置したプランジャと、プランジャを吸引できるようにスリーブの下端部に固定され且つ弁部に固定された吸引子と、磁性材料からなりコイルを弁部に固定するハウジングとを有し、ハウジングは、コイルの上面を覆う天板部と、吸引子が貫通する貫通孔を有し且つコイルの下面を覆う底板部とを有し、ハウジングの天板部をスリーブの上端部に固定することによりコイルを弁部に固定する。
【0023】
一方、当該第2の発明に係る電磁弁では、前述した第1発明の弾性部材に代え、底板部の吸引子と接触する内縁部に弾性変形可能な弾性縁部を形成し、この弾性縁部を介して底板部を吸引子に接触させる。
【0024】
第2の発明における上記弾性縁部は、第1発明の弾性部材と同様の機能を果たすもので、吸引子に対するハウジング(底板部)の位置ずれを吸収し、底板部を吸引子に密着させて隙間の無い良好な磁路を形成することを可能とする。また、この第2の発明には弾性部材を使用しない分、第1の発明と比べて部品点数を少なく出来る利点がある(後述の第3の発明も同様)。他方、前記第1の発明には、底板部に弾性縁部を形成する必要がないことから、ハウジングの加工(作製)が簡易となる利点がある。
【0025】
また、上記第2発明の一態様では、吸引子がその下方側の端部(以下「下部」と言うことがある)に上方を向いてハウジングの底板部を受けるハウジング受面を有し、弾性縁部は、前記貫通孔の中心に向けて斜め下方へ延びる傾斜部と、当該傾斜部の先端から前記貫通孔の中心に向けてハウジング受面と平行に延びる接触部とを有し、当該接触部をハウジング受面に接触させる。
【0026】
〔第3発明〕
本願の第3の発明に係る電磁弁は、前記第1および第2の発明に係る電磁弁と同様に、冷媒の流れを制御する弁部と、弁部に固定されて弁部を駆動する電磁駆動装置とを備え、弁部は、弁室を内部に有するとともに弁室に連通する第1流路口および第2流路口を有し第2流路口の弁室側の端部に形成した弁座を有する弁本体と、弁座に対して進退動することにより第2流路口を開閉する弁体とを有し、弁部から電磁駆動装置に向かう方向を上方とし、電磁駆動装置から弁部に向かう方向を下方としたときに、電磁駆動装置は、磁力を発生するコイルと、コイルの中心部に上下方向に延びるように配置したスリーブと、スリーブ内に摺動可能に配置したプランジャと、プランジャを吸引できるようにスリーブの下端部に固定され且つ弁部に固定された吸引子と、磁性材料からなりコイルを弁部に固定するハウジングとを有し、ハウジングは、コイルの上面を覆う天板部と、吸引子が貫通する貫通孔を有し且つコイルの下面を覆う底板部とを有し、ハウジングの天板部をスリーブの上端部に固定することによりコイルを弁部に固定する。
【0027】
一方、当該第3の発明に係る電磁弁では、上記貫通孔を形成する底板部の内縁部に吸引子の側面に接触可能な接触部を形成し、当該接触部を介して底板部を吸引子の側面に接触させる。
【0028】
これにより本願の第3の発明では、弁部にコイルを取り付けるときにハウジング(底板部)が上下方向に位置ずれすることがあっても底板部は吸引子との接触状態を維持しつつ吸引子の側面に沿って上下方向に摺動変位することが可能となるから、前記第1および第2の発明と同様に底板部と吸引子との間に隙間が生じることを防ぐことが出来る。また、弁部へのコイル(ハウジング)の取り付けはこの第3の発明でも、第1発明の説明で述べたのと同様にスリーブの上端部に例えば雄ねじ1本で固定することにより行うことが出来る。
【0029】
上記接触部は、例えば、上記内縁部から吸引子の側面に沿うように立ち下がって吸引子の側面に接触する折曲部とすることが出来る。このような態様によれば、ハウジング(底板部)と吸引子との接触面積を増やすことができ、当該接触部を介してより確実に底板部を吸引子の側面に接触させて良好な磁路を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ハウジングと吸引子とを密着させて良好な磁路を形成しつつ、電磁弁製造時の加工工程数と材料費を削減し、組立時の作業性を向上させることが出来る。
【0031】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電磁弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、前記第1実施形態に係る電磁弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電磁弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、前記第2実施形態に係る電磁弁のハウジングを示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、前記第2実施形態に係る電磁弁のハウジングを示す横断面図(
図4のA-A断面)である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る電磁弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、前記第3実施形態に係る電磁弁のハウジングを示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、前記第3実施形態に係る電磁弁のハウジングを示す横断面図(
図7のB-B断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
図1から
図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る電磁弁11は、冷媒の流路を開閉する弁部12と、弁部12を駆動する電磁駆動装置41とを備え、冷媒流路の開閉を行う主弁をパイロット弁で制御するパイロット式電磁弁で、前記第1の発明を具体化したものである。また当該電磁弁11は、冷媒の流入路と流出路を備えた筐体(図示せず)に装着することによりヒートポンプ式冷暖房システムのような冷凍サイクル装置に組み込むことが可能な所謂カートリッジ式の電磁弁で、非通電時は開弁状態となるノーマルオープンタイプ(常時開型)の弁である。
【0034】
なお、本発明はカートリッジ式の電磁弁に限定されるものではない。また、本発明はパイロット式電磁弁に限らず、直動式の電磁弁にも適用することが出来ることは既に述べたとおりである。さらに各図には、上下、左右および前後方向を表す互いに直交する二次元座標を適宜表示してこれらの方向に基いて以下の説明を行うが、本発明並びに本願の各実施形態の電磁弁は様々な向きで使用することが可能であり、各方向は説明の便宜上のものであって本発明の各部構成について何ら限定を加えるものではない。
【0035】
本実施形態に係る電磁弁11は、弁部12(主弁)として、内部に主弁室17を備えた弁本体13と、主弁室17に冷媒を流入させることが可能なように弁本体13の側面(周面)に穿設した流入口14と、主弁室17から冷媒を流出させることが可能なように弁本体13の底部13aを上下方向に貫通するとともに垂直上方に起立して上端部が主弁室17内へ突出し且つこの突出した上端部に主弁座16を形成した流出口15と、主弁座16に対して進退動(上下動)することにより流出口15を開閉する主弁体18と、主弁体18を開弁方向(上方)へ付勢するコイルばねである開弁ばね21と、電磁駆動装置41を弁部12(弁本体13)に連結する連結部材22とを有する。
【0036】
弁本体13は、上面と下面が共に開放された(開口となった)円筒状の部材で、上面の開口は連結部材22によって閉塞され、下面の開口は流出口15となっている。また、本実施形態の電磁弁11は前述のように筐体に装着して使用されるが、弁本体13を筐体の弁装着穴に嵌挿すると、弁本体13の底面の流出口15が筐体の弁装着穴の底面に開口した流出路に連通し、これにより当該流出路を通じて主弁室17内の冷媒を流出させることが可能となる。
【0037】
一方、弁本体13は、流入口14として利用可能な複数(本実施形態の場合、前後左右に1つずつ合計4つ)の開孔を周面に備えており、これらの開孔が上記流入口14となる。具体的には、弁本体13を筐体の弁装着穴に嵌挿すると、弁本体13と筐体との間に形成されたリング状(本実施形態では円筒状)の隙間によって4つの開孔14が連通されるようになっている。これにより当該開孔を通じて主弁室17内に冷媒を流入させることが可能となる。
【0038】
なお、弁本体13と筐体との間に形成されたリング状の隙間は、弁本体13の外周面に形成した凹部31,32にそれぞれ装着したシール部材(Oリング)33,34によって密閉され、外部や流出路に冷媒が漏れ出すことはない。
【0039】
主弁体18はその上部を、弁本体13の上部に形成したシリンダ部13bによって上下方向に摺動可能に支持されている。また、開弁ばね21は、主弁室17の底面と主弁体18との間に圧縮状態で設置され、これにより主弁体18を上方(即ち開弁方向)に付勢する。
【0040】
弁本体13の上面開口を塞ぐ連結部材22は、中心孔を有するリング状部材で、弁本体13の上面開口の内周面に形成した雌ねじ24に螺合する雄ねじ23を外周面に有し、弁本体13の上面開口にねじ込むことにより連結部材22を弁本体13に固定する。また、連結部材22の中心孔には、吸引子44(後述する)を嵌入させ固定する。
【0041】
主弁体18は、その中心部を上下方向に貫通して主弁室17とパイロット弁室25とを連通させるパイロット通路19と、同じく主弁体18を上下方向に貫通して主弁室17とパイロット弁室25とを連通させるがパイロット通路19より径が小さい均圧路20とを有する。なお、主弁室17は、主弁体18と主弁座16の間の空間および流入口14に面した空間であり、パイロット弁室25は、主弁体18の上側に形成される空間(主弁体18の上面と吸引子44の下面と連結部材22の中心孔の内周面とにより囲まれた空間)である。また、主弁体18の上面周縁部を上方へ突出させ、主弁体18が上昇する開弁状態において当該周縁部が連結部材22の下面に当接することにより主弁体18が停止するようにしてある。
【0042】
主弁体18の上面と電磁駆動装置41との間にはパイロット弁を備える。具体的には、主弁体18の上側に形成したパイロット弁室25に開口するパイロット通路19の上端(主弁体18の上面中心部)にパイロット弁座26を形成し、このパイロット弁座26に対して接離(当接及び離脱)可能にパイロット弁体27を備える。パイロット弁体27は、プランジャ45a(後述する)の下端に固定した弁体保持部材45bの下端に保持させてあり、プランジャ45aと一緒に上下方向に移動することによりパイロット通路19を開閉する。
【0043】
パイロット弁を駆動する電磁駆動装置41は、ボビン43に巻線を施したコイル42と、コイル42の内側に配置した吸引子44と、コイル42により発生される磁力によって吸引子44に引き付けられるプランジャ45aと、コイル42を弁本体13に固定するハウジング47とを有する。また、ボビン43は中心部に筒状部を備え、この筒状部内に、吸引子44とプランジャ45aをスリーブ46に収容された状態で配置する。スリーブ46は上面と下面が共に開放された(開口となった)筒状部材であるが、下端部を吸引子44の上端部の外周面に固定することにより下面の開口を閉塞し、上端部に栓状部材48を固着することにより上面の開口を閉塞してある。
【0044】
栓状部材48は、外径が大きくスリーブ46の上面開口を閉塞する円柱状の頭部48aと、頭部48aの下面から垂直下方へ延びる外径の小さな円柱状の脚部48bとからなる。頭部48aの中心部には、頭部48aの上面から垂直下方に脚部48bの上端部まで延びるように雌ねじ50を形成してある。この雌ねじ50は、ハウジング47を固定する雄ねじ51(後述する)と螺合する。またこの栓状部材48は、磁性材料からなり、コイル42により発生した磁束を導いて磁気回路を形成する(磁路となる)機能を有する。さらに栓状部材48は、開弁時に上方へ移動するプランジャ45aをリング部材49を介して停止させるストッパとしての機能をも有する。
【0045】
吸引子44は、プランジャ45aを吸引できるように上部44aがスリーブ46の下面開口からスリーブ46内に嵌入される一方、下端部に外径が大きくなった基台部44bを有する。また吸引子44は、ハウジング47の底板部47b(後述する)の中心部を上下方向に貫通するように配置され、吸引子44の上部44aは底板部47bの上側に配置される一方、基台部44bは底板部47bの下側に配置される。さらに基台部44bは、連結部材22の中心孔に嵌入され、これにより吸引子44が連結部材22に固定される。また吸引子44は、その中心部に上下方向に垂直に貫通する貫通孔44cを有する。
【0046】
プランジャ45aは、スリーブ46内に上下方向に摺動可能に配置され、吸引子44によって吸引される。また、プランジャ45aの下端部には、パイロット弁体27を保持する弁体保持部材45bを固定する。この弁体保持部材45bは、プランジャ45aの下端部から下方へ延びて前記貫通孔44cを通って吸引子44を貫通しパイロット弁室25内に達する。前記パイロット弁体27は、この弁体保持部材45bの下端(下面部)に固定してある。
【0047】
またプランジャ45aは、円筒状の形状を有し、上面開口から栓状部材48の脚部48bが挿入されている。またプランジャ45aの内側底面部には、樹脂製のリング部材49を備えてある。このリング部材49は、閉弁状態から開弁するとき(コイル42への通電時を遮断したとき)にプランジャ45aが栓状部材48の脚部48bの下面に衝突して衝突音が発生することを防ぐとともに磁性材同士(プランジャ45aと栓状部材48)の接触を防ぐ機能を果たす。
【0048】
さらに、プランジャ45aと吸引子44との間には上部コイルばね54を備える。この上部コイルばね54は、プランジャ45aの下面部と吸引子44の貫通孔44c内に形成した段部44dとの間に圧縮状態で設置した圧縮コイルばねであり、プランジャ45aを上方へ付勢することによりパイロット弁体27を開弁方向へ付勢する。
【0049】
ハウジング47は、磁路を形成できるように磁性材料からなり、コイル42を内部に収容できるように、コイル42の上面を覆う天板部47aと、コイル42の下面を覆う底板部47bと、天板部47aと底板部47bとを繋ぐ側板部47cとを有する。天板部47aは、その中心部を上下方向に貫通するねじ孔52を有し、このねじ孔52を通じて雄ねじ51を前記栓状部材48に形成した雌ねじ50にねじ込むことにより栓状部材48に固定される。栓状部材48はスリーブ46の上端部に固定されており、スリーブ46は吸引子44の上部に固定され、さらに吸引子44は連結部材22を介して弁本体13に固定されているから、ハウジング47が(従ってハウジング47内に収容したコイル42も)弁本体13に固定されることとなる。
【0050】
一方、ハウジング47の底板部47bは、その中心部に吸引子44を貫通させる貫通孔(この孔を「吸引子挿通孔」を言う)53を有する。また、ハウジング47の底板部47bの下面には、当該底板部47bと吸引子44との間に介在されるように磁性材料からなり且つ厚さ方向(上下方向)に弾性変形可能なウェーブワッシャ(弾性部材)55を備える。より詳しくは、底板部47bの中心部(吸引子挿通孔53の周囲)の下面と、吸引子44の基台部44bの外縁部上面とは互いに上下方向に対向するが、これらの対向する面の間にウェーブワッシャ55を挟み込む。
【0051】
なお、当該ウェーブワッシャ55は、雄ねじ51を締め付けてハウジング47の天板部47aを栓状部材48に固定したときに、圧縮されて弾性変形することにより底板部47bの下面と基台部44bの上面の双方に圧接した(押し付けられた状態で接触した)状態となること、つまり、そのような圧接状態となるようにハウジング47の上下方向の寸法や、雄ねじ51による天板部47aの上下方向の固定位置や、ウェーブワッシャ55の高さ寸法等を設定しておく。これにより、ハウジング47の寸法や雄ねじ51による天板部47aの上下方向に関する固定位置にばらつき(公差)があってもこれを吸収して底板部47bとウェーブワッシャ55との間、並びに、ウェーブワッシャ55と基台部44bとの間に隙間が生じることを防ぎ、これら底板部47bとウェーブワッシャ55と基台部44bとを相互に密着させて良好な磁路を形成することが出来る。またウェーブワッシャ55に代えて、スプリングワッシャを使用しても良いことは既に述べた通りである。
【0052】
本実施形態に係る電磁弁の動作を説明すれば次のとおりである。
【0053】
図1に示す開弁状態では、パイロット通路19が開放されており、流入口14から主弁室17内に流入し均圧路20を通ってパイロット弁室25内に流れ込む高圧冷媒がパイロット弁室25内に溜まらずにパイロット通路19を通って流出口15から排出される。このため、パイロット弁室25内の圧力が高まらず、主弁体18を上方(開弁方向)へ付勢する開弁ばね21の付勢力によって主弁体18が連結部材22の下面に押し付けられて開弁状態が維持され、流入口14から主弁室17に流れ込んだ冷媒(矢印F1参照)は、流出口15から流れ出す(矢印F2参照)。
【0054】
上記開弁状態において、電磁駆動装置41内のコイル42に通電するとプランジャ45aが吸引子44に吸引されることにより上部コイルばね54の付勢力に抗して下降し、パイロット弁体27をパイロット弁座26に着座させる。これによりパイロット通路19は閉鎖され、均圧路20を通じてパイロット弁室25に導入される冷媒圧力がパイロット通路19を通じて放出されることなく蓄積されてパイロット弁室25内の圧力が上昇する。そして、パイロット弁室25内の冷媒圧力(より正確にはパイロット弁室25と主弁室17との差圧)と、吸引子44の吸引力(プランジャ45aを吸引する下方への力)とによる、主弁体18を下方に押し下げる力が、開弁ばね21の上方への付勢力を超えると、主弁体18は下降して主弁座16に着座する。これにより流出口15が閉鎖された閉弁状態となる(
図2参照)。
【0055】
なお、上記コイル42への通電時には、天板部47a、側板部47c、底板部47b、ウェーブワッシャ55、吸引子44の基台部44b、吸引子44の上部44a、プランジャ45a、栓状部材48の脚部48b、および、栓状部材48の頭部48aを通る磁気回路(磁路)が形成され、プランジャ45aが吸引子44に引き付けられる。
【0056】
一方、この閉弁状態からコイル42への通電を停止すると、吸引子44の吸引力が消失してプランジャ45aが吸引子44から解放されるため、プランジャ45aは上部コイルばね54によって上方に押し戻され、パイロット弁体27がパイロット弁座26から離れてパイロット通路19が開放される。すると、パイロット弁室25内に蓄積された冷媒がパイロット通路19を通じて流出口15から排出され、パイロット弁室25内の圧力が低下する。さらに、均圧路20よりもパイロット通路19の断面積が大きいから、主弁体18を上方へ引き上げる差圧が主弁体18の上下面に生じる。加えて、開弁ばね21は主弁体18を上方へ引き上げる付勢力を有する。これらにより、主弁体18が押し上げられ、主弁体18が主弁座16から離れて流出口15が開放された開弁状態(
図1参照)となる。
【0057】
なお、この開弁状態では、プランジャ45aは上部コイルばね54によって押し上げられて栓状部材48の脚部48bにリング部材49を介して当接した最上位置にあり、主弁体18は連結部材22の下面に当接して停止されており、これによりパイロット弁体27と、主弁体18の上面中心部のパイロット弁座26との間には一定の隙間が形成され、パイロット通路19は開放されている。
【0058】
〔第2実施形態〕
図3から
図5を参照して本発明の第2の実施形態に係る電磁弁について説明する。
【0059】
第2実施形態に係る電磁弁61は、第1実施形態に係る電磁弁11のウェーブワッシャ55に代えて底板部47bを加工することにより同様の機能をハウジング自体に持たせたもので、前記第2の発明を具体化したものである。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態と同一または相当する部分には同一の符号を付して重複する説明を省略し、相違点を中心に説明を行う(後述の第3実施形態についても同様)。
【0060】
図3から
図5に示すように本実施形態の電磁弁61では、第1実施形態の電磁弁11と同様にハウジング47の底板部47bの中心部に吸引子挿通孔53(以下単に「挿通孔」と言うことがある)を設けてあるが、この挿通孔53の縁部に底板部47b(挿通孔53を形成する底板部47bの内縁部)を下方に曲げた一対の弾性縁部62a,62bを形成して、これらの弾性縁部62a,62bを吸引子44の基台部44bに接触させる。
【0061】
より具体的には、当該弾性縁部62a,62bは、吸引子挿通孔53の左側に当該挿通孔の縁から互いに平行に左方に延びる一対の切込溝65を形成することによって、当該一対の切込溝65の間に突片部(底板部47bの内縁が吸引子挿通孔53の中心に向けて片持ち梁状に突き出したような形状を有する突状部分)を形成する。同様に、吸引子挿通孔53の右側に当該挿通孔53の縁から互いに平行に右方に延びる一対の切込溝65を形成することによって、当該一対の切込溝65の間に突片部を形成する。
【0062】
そして、各突片部の基端部を斜め下方に曲げるともに先端部を水平に曲げれば、吸引子挿通孔53の中心に向けて基端部から斜め下方に延びる傾斜部63と、傾斜部63の先端から水平に(基台部44bの上面と平行に)延びる先端部(接触部)64とを有する一対の弾性縁部62a,62bを底板部47bに形成することが出来る。
【0063】
また、本実施形態においても第1実施形態のウェーブワッシャと同様に、雄ねじ51を締め付けて天板部47aを栓状部材48に固定したときに上記各弾性縁部62a,62bが吸引子44の基台部44bに圧接するようにする。すなわち、各弾性縁部62a,62bは、上下方向に弾性変形可能であり、天板部47aを固定したときに各弾性縁部62a,62bの先端部64の下面が基台部44bの上面に押し付けられる。これにより、吸引子44とハウジング47(底板部47b)とを密着させて第1実施形態と同様に良好な磁路を形成することが出来る。
【0064】
〔第3実施形態〕
図6から
図8を参照して本発明の第3の実施形態に係る電磁弁について説明する。なお、本実施形態は、前記第3の発明を具体化したものである。
【0065】
本実施形態に係る電磁弁71は、前記第2実施形態に係る電磁弁61と同様に第1実施形態に係る電磁弁11のウェーブワッシャ55に代えて底板部47bを加工することにより同様の機能をハウジング47に持たせたものであるが、吸引子44に対する底板部47bの接触構造が第2実施形態と異なる。
【0066】
具体的には、本実施形態では、
図8に示すように吸引子挿通孔53の縁に放射状に切込溝73を形成することにより隣り合う切込溝73の間に、挿通孔53の中心に向けて突き出す複数(本実施形態の場合6つ)の突片部72を形成する。そして、各突片部72の先端部を直角に下方へ曲げることにより、吸引子44を挿通孔53に通したときに垂直下方に延びる各突片部72の先端部の表面(挿通孔53の中心に面する側の面)が吸引子44の側面(外周面)に押し当てられるようにする。
【0067】
これにより、吸引子44と底板部47bとを接触させて磁路を形成することが出来る。なお、本実施形態では、外径を大きくした基台部を吸引子に設ける必要はない。また、突片部72の先端(下端)と連結部材22の上面との間には、一定の隙間が形成されるようにする。雄ねじ51を締め付けて天板部47aを栓状部材48に固定するときにハウジング47が上下方向にずれたとしても突片部72の先端(下端)が連結部材22に突き当たって雄ねじ51の締結が邪魔されることがないようにするためである。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0069】
例えば、前記実施形態では、スリーブ46の上面開口を閉塞する栓状部材48を介して間接的にハウジング47をスリーブ46に固定したが、スリーブ46にハウジング47を直接固定すること、例えば、スリーブ47が肉厚の大きな天板を備える構造とし、このスリーブの天板に雌ねじ51を形成してハウジング47をねじ止め固定することも可能である。
【0070】
また、本発明は直動式の電磁弁にも適用できることは既に述べたが、直動式の場合には、例えば、流出口を開閉する弁体を弁体保持部材45bの下端部に固定し、当該弁体をプランジャ45aと弁体保持部材45bを介して電磁駆動装置により上下動(流出口の上端部に形成した弁座に対して進退動)させるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0071】
F1,F2 冷媒の流れ
11,61,71 電磁弁
12 弁部
13 弁本体
13a 弁本体の底部
13b シリンダ部
14 流入口
15 流出口
16 主弁座
17 主弁室
18 主弁体
19 パイロット通路
20 均圧路
21 開弁ばね
22 連結部材
23,51 雄ねじ
24,50 雌ねじ
25 パイロット弁室
26 パイロット弁座
27 パイロット弁体
31,32 凹部
33,34 シール部材(Oリング)
41 電磁駆動装置
42 コイル
43 ボビン
44 吸引子
44a 吸引子の上部
44b 基台部
44c 貫通孔
44d 段部
45a プランジャ
45b 弁体保持部材
46 スリーブ
47 ハウジング
47a 天板部
47b 底板部
47c 側板部
48 栓状部材
48a 頭部
48b 脚部
49 リング部材
52 ねじ孔
53 吸引子挿通孔
54 上部コイルばね
55 ウェーブワッシャ
62a,62b 弾性縁部
63 傾斜部
64 先端部(接触部)
65,73 切込溝
72 突片部