(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169373
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】複層ガラス、殊に車両用の複層ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20241128BHJP
C03C 8/04 20060101ALI20241128BHJP
C03C 8/14 20060101ALI20241128BHJP
C03C 8/16 20060101ALI20241128BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20241128BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20241128BHJP
C03C 17/04 20060101ALI20241128BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20241128BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C8/04
C03C8/14
C03C8/16
C03C3/091
C03C3/093
C03C17/04 A
B32B17/10
B60J1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083150
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】10 2023 113 419.1
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】522480388
【氏名又は名称】ショット テクニカル グラス ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Technical Glass Solutions GmbH
【住所又は居所原語表記】Otto-Schott-Str. 13, 07745 Jena, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティロ ツァッハウ
(72)【発明者】
【氏名】イヴォンヌ メンケ-ベアク
(72)【発明者】
【氏名】フーベアト ヴィーゼケ
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
4G061
4G062
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AA17C
4F100AA18A
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(57)【要約】
【課題】例えばフロントガラスとして用いるために適しており、特に良好な強度並びに非常に良好な運転者の安全性を有する複層ガラス、例えば車両用の複層ガラスを提供する。
【解決手段】2枚のガラス板を含む複層ガラス、殊に車両用の複層ガラスであって、少なくとも1枚のガラス板が、SiO
2およびB
2O
3を含むガラスを含む部分的に被覆されたガラス板であって、第1の側と第2の側とを有する前記複層ガラス。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のガラス板を含む複層ガラス、殊に車両用の複層ガラスであって、少なくとも1枚のガラス板が、SiO2およびB2O3を含むガラスを含む部分的に被覆されたガラス板であり、第1の側と第2の側とを有し、
少なくとも1つの、少なくとも1枚のガラス板の第2の側の少なくとも1つの領域において施与された少なくとも1つのコーティングを有し、
前記少なくとも1つのコーティングが、少なくとも1つの顔料、ガラス質成分、および有利には少なくとも1つの添加剤、殊に充填剤を含むエナメルコーティングとして構成されており、
前記少なくとも1つのコーティングが、細孔、有利には開放細孔を含むことにより、少なくとも1つのコーティングにおいて、有利には、少なくとも1つのコーティングの少なくとも1枚のガラス板の第2の側に向く側と、少なくとも1つのコーティングの少なくとも1枚のガラス板の第2の側と反対の側との間の直接的な接続が生じ、
前記少なくとも1枚のガラス板は有利には、少なくとも5且つ最高170MPa、好ましくは少なくとも20且つ最高170MPa、特に好ましくは少なくとも35MPa、とりわけ特に好ましくは少なくとも60MPa、および最も好ましくは少なくとも80MPaの曲げ強度を有し、
前記複層ガラスは、前記ガラス板の間に配置される少なくとも1つのポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層のポリマーは無着色であり、且つ前記少なくとも1つのコーティングの領域において、前記ポリマー層の少なくとも一部が前記少なくとも1つのコーティングの細孔を少なくとも部分的に充填することにより、前記少なくとも1枚のガラス板の第1の側から第2の側への観察方向において、前記少なくとも1枚のガラス板の第2の側の上で少なくとも1つのコーティングが施与されている少なくとも1つの領域において特定して、CIEL*a*b*系において与えられる複層ガラスの色位置が生じ、ここでL*は最高12であり、且つ有利には少なくとも1であり、且つa*およびb*はそれぞれ+5~-5の範囲である、
前記複層ガラス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの領域において特定される光透過率τvisが、5%未満、好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満、および特に好ましくは0.5%未満である、請求項1に記載の複層ガラス。
【請求項3】
少なくとも1つの以下の特徴:
・ 前記少なくとも1つのコーティングの顔料含有率が1体積%~40体積%、好ましくは37.5体積%未満であり、ここで一般に好ましい下限は5体積%であること、
・ 前記少なくとも1つのコーティングのガラス質成分の含有率が、前記少なくとも1つのコーティングの固形分含有率に対して60体積%~95体積%であること
を有する、請求項1または2に記載の複層ガラス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコーティングのガラス質成分が、酸化物に基づく質量%で、
SiO2 10~70
B2O3 5~30、好ましくは6~25
を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の複層ガラス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコーティングのガラス質成分が、酸化物に基づく質量%で、
SiO2 10~50
B2O3 10~26
ZnO 20~50
を含み、ここで有利にはアルカリ酸化物の合計は0.5質量%~10質量%であり、且つ/またはアルカリ土類酸化物の合計は0質量%~2.5質量%であるか、
または
SiO2 30~60
B2O3 15~25
Bi2O3 8~45
を含み、ここで有利にはアルカリ酸化物の合計は3.5質量%~8.5質量%、殊に有利には4質量%~8質量%であり、且つ/またはアルカリ土類酸化物の合計は0.5質量%以下であるか、
または
SiO2 50~70
B2O3 15~30
Bi2O3 0~15
ZnO 0~5
を含み、ここで有利にはアルカリ酸化物の合計は4質量%~6.5質量%であり、且つ/またはアルカリ土類酸化物の合計は0~2.5質量%である、
請求項4に記載の複層ガラス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコーティングが、充填剤として構成される添加剤を含み、前記充填剤は好ましくは線熱膨張係数-7×10-6/K~1.5×10-6/Kを有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複層ガラス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコーティングが、充填剤として構成される添加剤を含み、その含有率は0.5体積%~20体積%、好ましくは15体積%未満である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複層ガラス。
【請求項8】
前記少なくとも1枚のガラス板が、少なくとも60質量%且つ最高85質量%のSiO2、少なくとも8質量%且つ最高26質量%のB2O3、少なくとも0.5質量%且つ最高12質量%のAl2O3、および少なくとも0.5質量%且つ最高6質量%のNa2Oを含み、好ましくはさらに1質量%までのLi2O、4質量%までのK2O、5質量%までのMgO、3.5質量%までのCaO、4質量%までのSrO、3質量%までのZnO、3質量%までのZrO2、並びにさらなる副成分、例えば清澄剤を含むことができ、ここでこれらの副成分の合計は2質量%以下である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の複層ガラス。
【請求項9】
さらなるガラス板が、ソーダライムガラスを含むか、またはソーダライムガラスからなる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の複層ガラス。
【請求項10】
いわゆるパンメル試験において少なくとも3の結果を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の複層ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、複層ガラス、殊に車両用の複層ガラスに関する。特に本発明は、例えばフロントガラスとして用いるために適しており、且つ特に良好な強度並びに非常に良好な運転者の安全性を有する複層ガラス、例えば車両用の複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
複層ガラスは例えば、殊にフロントガラスなどの特に重要な領域における車両のガラス張りのために選択される。複層ガラスは通常、少なくとも2枚のガラス板を含み、それらは板の間に配置されるポリマー層によって互いに結合されている。機械的な作用に基づいて破壊が生じる際、例えばフィルムとして構成され得るポリマー層はガラス板の破片を保持することにより、ガラスの破壊による車両乗員の負傷を低減する。
【0003】
そのような車両の板は摩耗条件、つまり高速で衝突する粒(例えば公知の「飛石」)による摩耗条件にさらされているので、これらの板複合材の外側のガラス板として、SiO2およびB2O3の要素を有するガラスを含む板を提供することが有利であることがある。そのようなガラスは、本開示の範囲においては一般にホウケイ酸ガラスとも称される。そのようなガラスは周知のように良好な耐引っかき性、並びに多くのさらなる利点、例えば一般に良好な機械的耐久性および耐熱性を有する。
【0004】
車両の外装のガラス張りにおいて、例えばホウケイ酸ガラス、例えば商品名Borofloat(登録商標)として市販されているものが用いられることが知られている。そのようなガラスは例えば、貼り合わせガラスのために非常に良く適しており、可視光の範囲における非常に高い透過率を特徴とする。さらに、ホウケイ酸ガラスは一般に、非常に良好な耐熱性、高い化学的耐久性、および良好な機械的強度を有する。
【0005】
例えば、国際公開第2015/059406号(WO2015/059406 A)は、貼り合わせられたガラス板を記載している。この板の1つ、例えば外側の板が例えばホウケイ酸ガラスを含み得る。
【0006】
国際公開第2017/157660号(WO2017/157660 A1)は、ヘッドアップディスプレイ用の複層ガラス板を記載している。ここでも、複層ガラスの板の1つがホウケイ酸ガラスを含み得る。
【0007】
コロンビア国出願公開第2017/0005596号明細書(CO2017/0005596 A1)も、高い耐久性を有する自動車用ガラス板を記載している。
【0008】
国際公開第2019/130285号(WO2019/130285 A1)は、摩耗および環境の影響に対する高い耐久性を有する貼り合わせ体を記載している。
【0009】
最後に、国際公開第2018/122769号(WO2018/122769 A1)は、高い破壊強度を有する貼り合わせ体を記載している。
【0010】
前述のとおり、フロントガラスは車両乗員の安全性のために複層ガラス板として構成される。それらは通常、縁部領域においてコーティングも有する。このコーティングは、一方では例えば接着部または部品、例えばアンテナの光学的な隠ぺいのために役立ち、他方ではUV光線に対する保護のために役立つ。通常、例えばフレームの形態でも配置され得るこのコーティングは、複層ガラスの両方のガラス板の間に配置される。該複合材はさらに、既に先述したとおり、両方のガラス板の間に、それらのガラス板を互いに結合するポリマー層、つまりポリマーを含むか、またはポリマーからなる層も含む。ガラス板は、殊に縁部領域における少なくとも1つの領域においてそれらの間に配置されたコーティングと共に互いに重ね合わせられて、熱間成形プロセスにおいて曲げられることが多い。しかし一般に、ここに記載される例に限定されることなく、複合材のガラス板の成形が個別に且つ互いに別々に行われることも可能である。引き続き、両方の板の間のポリマー層が施与され、それが曲げられたガラス板を互いに結合することにより、最終的に複層ガラス板が得られる。本開示の範囲において、そのような複層ガラス板は単に「複層ガラス」とも称される。そのような複層ガラスについて、「ガラス複合材」または「複合材」との用語も同義的に使用され得る。
【0011】
従って、そのような複合材に含まれるガラス板には多くの要件が課される。曲げプロセスは熱的に行われるので、ガラス板およびその上に施与されるコーティングはこの温度に耐えられなければならない。ガラス板およびコーティングは、安定な複合材が形成され且つガラスとポリマーとの間での剥離が生じないような形でポリマー層と結合しなければならない。最後に、フロントガラスの縁部領域に配置されている部品が煩わしく見えないように、コーティングが充分な光学的な密閉性を有する必要がある。これはドライバーの気が散ることを防ぎ、運転の安全性を高める。コーティングの微細なクラックまたは他の欠陥も、できれば回避されるか、または少なくとも最小化されるべきである。
【0012】
ガラスおよびコーティングの温度耐性、複合材を形成するためのガラスもしくはコーティングとポリマー材料との上記の適合性、光学濃度、および生じ得る欠陥の最小化、および一般に個別のガラス板(ここでは殊に被覆されたガラス板)の機械的強度の他に、コーティングが好ましくは均質であり、好ましくは黒もしくは暗く構成されていることが特に重要である。ガラス板(合わせガラス板の範囲においても)上のコーティングの際、特にそれらが接着性である場合、ガラス板の強度が損なわれ、ひいては最終的に、得られるガラス複合材の強度も損なわれることがあることが一般に知られている。層の剥離が生じることを防ぐために特に付着性の層が望ましい一方で、他方では特にこの付着性の層がガラスの強度を低下させるという難しさもある。
【0013】
ガラス板および得られる複合材の良好な機械的耐久性を実現するために、そのような板は例えば多孔質に構成されるか、またはガラスに基づく結合剤の代わりにゾルゲル結合剤を有することがある。つまり、1層または複数の層による強度の低下は、かなり確実に、部分的にはいわゆる「溶融反応領域」の形成に基づき、それは慣例的なガラスに基づくコーティングを使用する際に生じる。しかし他方で、層および基材の熱膨張が非常に異なる場合、密な層の構成によっても強度の低下が生じる。これは例えばコーティングの多孔質の構成によって軽減できる。これは例えば、いわゆる溶融反応領域が形成されないゾルゲル結合剤の使用で行うことができ、それは強度についても有利である。
【0014】
ただし、コーティングの多孔質の構成、および/またはゾルゲル結合剤の使用の欠点は、このようにしてこれまで特に良好なガラス複合材が製造可能ではなかったことである。なぜなら、ガラス複合材は先述のとおり、ポリマー層を用いて複合材の少なくとも2枚の板を貼り合わせることによって作られるからである。ゾルゲル結合剤の組成次第でポリマーとの適合性が低下することがあるので、特にコーティングの領域における安定な結合が可能ではない。さらに、多孔質のコーティングは不充分な付着性か、または非常に荒い、まだらのコーティングの外観像のいずれかをみちびき、そのことはドライバーの安全性にとって重大であることがあり、なぜなら荒い外観像はドライバーの気を散らしかねないからである。
【0015】
従って、従来技術の上記の弱点を少なくとも軽減する、複層ガラスが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2015/059406号
【特許文献2】国際公開第2017/157660号
【特許文献3】コロンビア国出願公開第2017/0005596号明細書
【特許文献4】国際公開第2019/130285号
【特許文献5】国際公開第2018/122769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、従来技術の弱点を少なくとも部分的に低減する複層ガラスを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明の課題は、独立請求項の対象によって解決される。有利な、好ましく且つ特定の実施態様は、本開示の従属請求項、明細書および図面に記載されている。
【0019】
従って、本発明は一般に、2枚のガラス板を含む複層ガラス、殊に車両用の複層ガラスであって、少なくとも1枚のガラス板が、SiO2およびB2O3を含むガラスを含む部分的に被覆されたガラス板であり、前記ガラス板は第1の側と第2の側とを有する、前記複層ガラスに関する。
【0020】
少なくとも1枚のガラス板の第2の側の少なくとも1つの領域において、少なくとも1つのコーティングが少なくとも施与されている。
【0021】
少なくとも1つのコーティングは、少なくとも1つの顔料、ガラス質成分、および有利には少なくとも1つの添加剤を含むエナメルコーティングとして構成される。添加剤は殊に充填剤として構成され得る。
【0022】
少なくとも1つのコーティングが細孔、有利には開放細孔を含むことにより、少なくとも1つのコーティングにおいて、有利には少なくとも1つのコーティングの少なくとも1枚のガラス板の第2の側に向く側と、少なくとも1つのコーティングの少なくとも1枚のガラス板の第2の側と反対の側との間の直接的な接続が生じる。
【0023】
有利には少なくとも1枚のガラス板は、少なくとも5且つ最高170MPa、好ましくは少なくとも20且つ最高170MPa、特に好ましくは少なくとも35MPa、とりわけ特に好ましくは少なくとも60MPa、および最も好ましくは少なくとも80MPaの曲げ強度を有する。
【0024】
複層ガラスはさらにガラス板の間に配置される少なくとも1つのポリマー層を含み、ポリマー層のポリマーは無着色であり、少なくとも1つのコーティングの領域において、ポリマー層の少なくとも一部は少なくとも1つのコーティングの細孔を少なくとも部分的に充填する。
【0025】
従って、少なくとも1枚のガラス板の第1の側から第2の側への観察方向において、少なくとも1枚のガラス板の第2の側の上で第1のコーティングが施与されている少なくとも1つの領域において特定して、CIEL*a*b*系において与えられる複層ガラスの色位置が生じ、ここでL*は最高12であり、且つ有利には少なくとも1であり、且つa*およびb*はそれぞれ+5~-5の範囲である。つまり、換言すれば、色位置はガラス板を通じて測定もしくは特定される。
【0026】
本開示の範囲において、以下の定義が該当する:
複層ガラスとは一般に、少なくとも2枚のガラス板を含み、それらが中間層によって互いにしっかりと結合されている複合材と理解される。複層ガラスは一般に、「複合材」、「板複合材」、「ガラス複合材」、「複層ガラス板」などとしても称され得る。
【0027】
板とは一般に、直交座標系の第1の空間方向におけるその横方向寸法が、第1の空間方向に対して垂直な両方のさらなる空間方向における横方向寸法よりも少なくとも1桁小さい成形体と理解される。第1の空間方向に沿ったこの横方向寸法を一般に、板の「厚さ」と称することもでき、他の両方の横方向寸法を「長さ」および「幅」と称することもできる。換言すれば、本開示の意味による板は、厚さが、その長さおよび幅よりも少なくとも1桁小さい。板の長さおよび幅は、本開示の範囲において同程度であってもよいし、板の長さが幅よりも著しく大きくてもよい。従って、本開示の意味における板は、帯材としての構成も含む。
【0028】
ガラス板とは一般に、板がガラスを含む、例えばガラスから構成されると理解される。ガラス板は一般に、被覆されていることができ、つまり、被覆されたガラス板として構成されることができる。
【0029】
ガラス板の側とは、本開示の範囲においては主面または主表面と理解される。先述のとおり、板は厚さが長さおよび幅よりも著しく小さい成形体である。そのような板状の成形体(または板)の長さおよび幅が主面を定義し、それは合わせて全表面積の50%より多くを構成し、特に非常に薄い板の場合、さらに著しく上回ることも多い。従って、主面または側は、板の周囲の端面とは対照的である。従って一般に、板は本開示の意味において2つの側を含み、それらは場合によっては上側および下側、または表側および裏側とも称され得る。
【0030】
本開示の範囲において、「層」および「コーティング」との文言は、層とは、特別な方法(いわゆる被覆法)を用いて、大抵はコーティングもしくは層の材料とは異なる組成の基材上に施与される材料層と理解されるという意味において同義的に理解される。そのような被覆法は、本開示の範囲においては殊に、印刷、好ましくはスクリーン印刷またはタンポ印刷、塗布ロール、フィルムとしての施与またはドクターブレードなどの被覆法であることができるが、浸漬および噴霧または他のさらなる被覆法も一般に考えられる。一般に、コーティングまたは材料層が、例えばフィルムの貼り合わせを用いて、貼り合わせ体の形態で施与されることも考えられる。従って、一般に本開示の範囲において、複合材のポリマー層は本開示の意味における材料層として理解され得る。
【0031】
エナメルコーティングとは、本開示の範囲において一般に、熱プロセスによって基材上に付着する少なくとも1つのガラス質成分を含むコーティングと理解される。エナメルコーティングは、ガラス質成分の他に、さらなる成分、殊に少なくとも1つの顔料、および場合により1つ以上の添加剤、例えば1つ以上の充填剤またはいわゆる膨張剤を含み得る。ガラス質成分とはここでは殊にSiO2を含む無機且つアモルファスに構成される成分と理解される。殊にガラス質成分は溶融プロセスから生じ得るかまたはガラスから構成され得る。一般に、ガラスとは、溶融プロセスから得られる無機のアモルファスの固体と理解される。通常、これはシリケートガラスである。エナメルコーティングのガラス質成分は殊にガラスフラックスまたはガラスフリットとして構成され得る。これらの用語はガラスコーティングの分野における当業者に公知である。エナメルコーティングは本開示の範囲において、ガラス質成分が完全に溶融し、下にある基材、つまりここでは殊にガラス基材上に流れ、コーティングの他の成分、例えば顔料粒子を包み込むように構成され得るが、エナメルコーティングが焼結されたコーティングとして構成されることも可能であり、それはガラス質成分が熱プロセス(焼き付けとも称され得る)の際に部分的にのみ溶融していると理解される。これは殊に細孔を含む層を得ようとする場合に好ましいことがある。
【0032】
顔料とは、本開示の範囲において色素、つまり固有の色を有する固体と理解される。これは通常、粒子の形態で存在する。つまり、本開示の範囲においてコーティングが顔料を含む場合、コーティングが特定の組成を有する固体粒子を含むことが理解される。これは相応していわゆる充填剤についても該当する。ここで、充填剤はコーティングの特定の特性に影響を与えるために粒子の形態でコーティングまたは層に添加される固体であり、それらの固体は主にコーティングの色に関わるのではなく、他の特性、例えば熱膨張、引っかき強度などに関わる。
【0033】
ポリマー層とは、ポリマーを含むかまたはポリマー製の材料層と理解される。殊にポリマー層はポリマーフィルムとして構成され得る。ポリマーは有機高分子である。本開示の範囲において層またはフィルムが特定のポリマー「製」であると述べられる場合、この層が必須成分としてこのポリマーを含むが、プラスチック産業において一般に慣例的なとおり、いわゆる添加物と称され得るなおもさらなる成分も有し得ると理解される。
【0034】
材料または材料層の「無着色」の構成とは、これが可視光の範囲、つまり380nm~780nmnの範囲において無色に構成されており、つまり、中性の色位置を有し、有利にはこの波長範囲において高い透過率を有すると理解される。有利にはこの波長範囲における透過率(τvis)は、例えばフロントガラスとして板複合材を用いることを可能にする要件を満たすために、少なくとも70%またはそれより上である。フロントガラスのための最小透過率は一般に70%より上である。上方の視界領域近くにおけるグレア低減くさび(Blendreduktionskeil)は、グレア光が0.1m2未満の面積において生じる場合、グレア光の遮蔽のために認められている。板の縁部で透過率0%までの勾配として遮蔽するためのそのような領域の構成が可能である。これについて欧州における基準はECE R43である(国際連合欧州経済委員会(UNECE)の規則43-安全ガラス材料の認可および車両への取り付けに関する統一条件-欧州連合官報 L 42/1; 2013年11月3日)。
【0035】
細孔を含む層またはコーティングとは、多孔質に構成されているコーティングと理解される。殊に、開放多孔性、有利には連続細孔を有する開放多孔性を有するコーティングと理解され得る。連続細孔または連続多孔性とは、材料層の第1の側と、材料層の第1の側の反対側にある第2の側とを接続する流体チャネルが存在することであると理解される。
【0036】
先述のような複層ガラスの構成は、以下で例示的に言及される多くの利点を有する。
【0037】
複層ガラスは少なくとも2枚のガラス板を含み、少なくとも1枚のガラス板はSiO2およびB2O3を含むガラスを含むガラス板であり、つまりホウケイ酸ガラス板として構成される。そのようなガラス板は、既に先に議論したとおり、良好な機械的強度(殊に破壊強度)、高い耐熱性、および良好な引っかき強度(小さな鋭い物体による攻撃に対する耐久性として理解され得るか、もしくはこれと体系的に類似する)も有する。このガラスの化学的耐久性も、例えばソーダライムガラスに比して非常に際立っている。これは殊に車両用の板に関係し、なぜならこれは例えば冬には塩水噴霧にさらされることがあり、それはいわゆるガラス腐食をみちびくことがあるからである。ここで、ホウケイ酸ガラスのより高い化学的耐久性は、公知のソーダライムガラスに対して有利であることができる。
【0038】
ホウケイ酸ガラス製もしくはホウケイ酸ガラスを含む少なくとも1枚の板の少なくとも1つの領域に少なくとも1つのコーティングが配置される。ここで一般に、複層ガラスが少なくとも1つのコーティングを含むことが理解され、殊に複層ガラスが唯一のコーティングのみを含むことも意図され得る。しかし、複層ガラスがさらなるコーティングを含むことも可能であり且つ意図され得る。これらは少なくとも1つのコーティングを有する領域に配置されてもよいし、またはこれと部分的に重複してもよいが、このことは必ず必要なわけではない。
【0039】
少なくとも1つのコーティングは、一種の、有利には不透明な領域として、有利には少なくとも1枚のガラス板の、もしくは相応して複層ガラスの縁部領域で、例えば一種の配線の隠ぺいなどとして、場合によっては車両乗員、例えばドライバーのための日光およびグレア防止として構成される目的を有するコーティングである。1つの実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングはフレームの形態で、つまりガラス板の1つの側の端部を取り囲む領域の形態で構成され得る。
【0040】
この目的のために少なくとも1つのコーティングは着色されたコーティング、つまり色を付けて構成される。少なくとも1つのコーティングに含まれる少なくとも1つの顔料は、電子部品が邪魔に見えないようにコーティングが充分な光学密度を有すること、且つ/またはコーティングが遮蔽および/またはグレア防止としてのその目的を果たし得ることを確実にする。少なくとも1つのコーティングは少なくとも、前述のとおり、顔料およびガラス質成分を含むエナメルコーティングとして構成される。そのようなエナメルコーティングは、そのガラス質の構成のために、化学的および機械的耐久性が良好なだけではなく、ガラス質基材、例えばここで問題となっているガラス基材との適合性も良好なので、このようにして一般に、比較的良好な付着強度も達成され得る。
【0041】
有利にはガラス板は、殊に少なくとも1つのコーティング自体の構成によって、少なくとも5且つ最高170MPa、好ましくは少なくとも20且つ最高170MPa、特に好ましくは少なくとも35MPa、とりわけ特に好ましくは少なくとも60MPa、および最も好ましくは少なくとも80MPaの曲げ強度を有するように構成され得る。従って有利にはコーティングおよび/または少なくとも1枚のガラス板は、ガラス板の固有の強度が保持されたままであるか、またわずかにしか低下しないように構成される。
【0042】
前述のとおり、複層ガラスはガラス板の間に配置されたポリマー層を含み、ポリマー層のポリマーは無着色である。換言すればポリマー層のプラスチックは透明に構成され、従ってこれは全体として透明に構成される。当然のことながら、これは有利なだけではなく、車両の板の視界領域において必ず必要でもある。しかし、従来技術の公知の複層ガラスの場合、ポリマー層が少なくとも1つのコーティングの領域において着色されて構成され得ることも知られている。従来技術の複層ガラスの場合、例えば、フレームの領域、つまり例えば少なくとも1つのコーティングの領域において、このフレームを象る、それ自体着色されているポリマー層が配置されることが意図され得る。他方で、視界領域においては、当然の理由から無着色のポリマー層が配置される。従って、視界領域において複層ガラスの充分な透明性を可能にすると共に、縁部領域における充分な不透明性ももたらすために、従来技術においては2つの異なるポリマー層、例えば2つの異なるポリマーフィルムが必須であることが多い。
【0043】
これは、本開示によれば必須ではなく、むしろ有利には無着色の1つのポリマー層が複層ガラスの板の間に構成されることが意図される。殊にこれは好ましくは少なくとも1つのコーティングの領域においても無着色で構成される。例えば、ポリマー層が両方のガラス板の間に全面的に配置されることが意図され得る。
【0044】
もちろん、他の理由、例えばコーティング上での特定のポリマーのより良好な付着強度から、本開示によって「2つのフィルム」もしくは「2つのポリマー」の策を取ることも可能である。
【0045】
それにもかかわらず、本開示による複層ガラスでは、少なくとも1枚のガラス板の第1の側から第2の側への観察方向において、少なくとも1つのコーティングが配置されている少なくとも1つの領域において特定される複層ガラスの均一で暗い色位置が、ガラス板の間に全面的に配置される唯一のポリマー層のみを使用する場合であっても可能である。このことは、少なくとも1つのコーティングが、有利には開放の連続多孔性を有して多孔質に構成されているので、且つ少なくとも1つのコーティングの領域において、ポリマー層の少なくとも一部は少なくとも1つのコーティングの細孔を少なくとも部分的に充填しているので可能である。
【0046】
少なくとも1つのコーティングの多孔質の構成は、このコーティングが少なくとも1枚のガラス板の機械的強度を重大に損なわず、例えばわずかにしか低減しないことをみちびく。しかしこれは同時に、コーティングの、もしくは相応してガラス複合材の、不充分に中性の暗い色をみちびく。即ち、細孔によって散乱が生じるので、不安定な外観像が生じ、それによって部品の充分な隠ぺいが可能ではなく、車両乗員の気が散ることがある。このことは安全上の理由から不利である。
【0047】
ただし、先述のとおり、有利には連続多孔性を有する開放細孔を有するコーティングの特別な構成によって、ポリマー層の成分が少なくとも部分的に細孔を充填できる。ここで「ポリマー層の成分」とは、ポリマー層の個別の要素が細孔中に入ると理解されるのではなく、ポリマー層が部分的に細孔中に引き込まれ、少なくとも部分的にこれを充填すると理解される。これは例えば、ガラス複合材の構成の範囲において、ポリマー層がガラス板の間に例えばフィルムの形態で配置され、行われる貼り合わせ工程の間にそのポリマー層が、毛細管力に基づき細孔中に引き込まれるような低粘度になる際に生じ得る。1つの実施態様によれば、これは細孔が本質的に完全に、つまりポリマー層の少なくとも80体積%まで、好ましくは80体積%より多くまで充填される形態で生じることができる。ただし、複層ガラスを充填度の相応の特定が分析的に可能であるように準備することは一般に困難である。
【0048】
ポリマー(またはプラスチック)材料で細孔を充填することによって、意外なことに、ポリマー層のポリマー自体が全く着色されていない場合でも、均一な、非常に暗い色位置を達成することもできる。それによって、複層ガラスの「視界領域」における、2つの異なるポリマー層、つまり少なくとも1つのコーティングの領域のために着色された層と無着色/透明な層とを備える必要がなくなる。これは複層ガラスの製造を非常に著しく簡素化する。
【0049】
このようにして、少なくとも1枚のガラス板の第1の側から第2の側への観察方向において、少なくとも1枚のガラス板の第2の側の上で少なくとも1つのコーティングが施与されている少なくとも1つの領域において特定して、CIEL*a*b*系において与えられる複層ガラスの色位置が非常に容易に実現されることができ、ここでL*は最高12であり、且つ有利には少なくとも1であり、且つa*およびb*はそれぞれ+5~-5の範囲である。
【0050】
有利にはポリマー層はポリビニルブチラール(PVB)を含むか、または例えばいわゆるPVBフィルムとして構成される。
【0051】
1つの実施態様によれば、ポリマー層は厚さ650μm~850μmを有し得る。例示的な適したフィルムの典型的な厚さは例えば700μmおよび760μmである。
【0052】
さらなる実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングは2~10mm、例えば最高7μmまでを有し得る。
【0053】
有利には、ホウケイ酸ガラスを含む少なくとも1枚の板は、フロートガラス板であってよい。この場合、少なくとも1つのコーティングは有利には、いわゆるガラス板の大気側に施与される。
【0054】
1つの実施態様によれば、少なくとも1つの領域において特定される光透過率τvisは5%未満、好ましくは2%未満、特に好ましくは1未満、および特に好ましくは0.5%未満である。当然のことながら、光透過率は、少なくとも1つのコーティングが全面的に施与されているところで実現される。低い光透過率は、この実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングの非常に高い遮蔽作用および隠ぺい作用が存在することを示す。
【0055】
一般に、少なくとも1つのコーティングは、少なくとも1枚のガラス板の端部、従って相応して複層ガラスの端部を取り囲む形態で施与されることが多いことが指摘される。その際、特定の領域において、例えばフロントガラスの場合はバックミラーが配置される領域において、突出部が存在することが意図され得る。複層ガラスの内側に向く領域において、全面的に施与されたフレームが、より低い被覆率を有するグリッドの形態でのコーティングが施与されている施与されている、1つの被覆率を有する領域に移行することも意図され得る。これは例えば、車両の分野における視界窓の場合に非常に一般的である。
【0056】
1つの実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングの顔料含有率は、1体積%~40体積%、好ましくは37.5体積%未満であり、ここで一般に好ましい下限は5体積%である。このようにして、光学的に着色された暗いコーティングが実現されると共に、基材、つまりここではガラス板上での依然として充分なコーティングの付着性が確実にされ得る。
【0057】
さらなる実施態様によれば、有利には、これは少なくとも1つのコーティングのガラス質成分の含有率が、少なくとも1つのコーティングの固形分含有率に対して60体積%~99体積%であることによって促進される。62.5体積%~95体積%が好ましい。固形分の100体積%までの不足分は、殊に少なくとも1つの顔料で構成されることができ、そこに場合によりなおもさらなる成分、例えば1つの充填剤または複数の充填剤、同様に場合によってはさらなる顔料が入り得る。
【0058】
少なくとも1つのコーティングの組成が体積%ではなく質量%で記述される場合、これは少なくとも1つのコーティングの顔料含有率に関して約1質量%~60質量%の顔料である。少なくとも1つのコーティングのガラス質成分の含有率は、約35質量%~約98質量%である。少なくとも1つのコーティングが充填剤として構成される添加剤を含む場合、質量%で、1質量%~15質量%の含有率が可能である。この記述は、体積%での記述と同様にそれぞれ少なくとも1つのコーティングの固形分含有率に関し、従って、実施態様によるガラス板の相応の少なくとも1つのコーティングを製造するために使用され得るペーストの固形分含有率にも相応して該当する。
【0059】
さらなる実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングは少なくとも1つの顔料およびガラス質成分の他に添加剤を含む。当然のことながら、少なくとも1つのコーティングが、異なって構成される複数の添加剤を含むことも可能である。添加剤は例えば充填剤として、例えば引っかき強度を高めるかまたはコーティングの熱膨張に影響を与える充填剤として構成され得る。添加剤が膨張剤であることも可能であり、これは細孔形成剤または発泡剤とも称され得る。そのような膨張剤は少なくとも1つのコーティングを焼き付ける際に分解し、ガスが形成され、それが細孔の形成に寄与し、殊にここで特に有利である開放多孔性の形成も有利に促進する。膨張剤として構成される添加剤は、例えば充填剤として構成される添加剤のように相応の量で、実施態様による少なくとも1つのコーティングを製造するためのペーストに添加され得るが、当然の理由、つまり分解により、少なくとも1つのコーティングの固形分含有率にはもはや含まれない。
【0060】
さらなる実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングのガラス質成分は、酸化物に基づく質量%で、
SiO2 10~70
B2O3 5~30、好ましくは6~25
を含む。
【0061】
換言すれば、この実施態様によれば、ガラス質成分(またはガラスフラックスまたはガラスフリット)自体がホウケイ酸ガラスを含むとして構成される。当然のことながらこれは有利であり、なぜなら、このようにして、ガラスフラックスと、少なくとも1つのコーティングが部分的に施与される少なくとも1枚のガラス板との間の高い適合性が可能であるからである。
【0062】
さらに、ガラス質成分がさらにAl2O3を、有利には10質量%未満の量で含むことが一般に意図され得る。
【0063】
正確な重点次第で、さらに好ましい実施態様によれば、ガラスフラックスもしくはガラス質成分は上記の範囲で異なって形成され得る。
【0064】
例えば、少なくとも1つのコーティングのガラス質成分が、酸化物に基づく質量%で
SiO2 10~50
B2O3 10~26
ZnO 20~50
を含み、ここで有利にはアルカリ酸化物(R2O)の合計は0.5質量%~10質量%であり、且つ/またはアルカリ土類酸化物の合計は0質量%~2.5質量%であることが可能である。
【0065】
従って、この場合、ガラスフラックスはホウ酸亜鉛ガラスフラックスとして構成される。これは有利であり、なぜなら、これによってフリットの溶融温度が低下するので、顔料および充填剤の含有率にもかかわらず、焼き付け温度(500~750℃)での充分な流動性が与えられるからである。
【0066】
他の実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングのガラス質成分は、酸化物に基づく質量%で
SiO
2 30~60
B
2O
3 15~25
Bi
2O
3 8~45
を含み、ここで有利にはアルカリ酸化物(R
2O)の合計は3.5質量%~8.5質量%、有利には4質量%~6.5質量%であり、且つ/またはアルカリ土類酸化物の合計は0.5質量%以下である。この実施態様によれば、有利にはガラス質成分は少なくとも2.5質量%のLi
2O、Na
2OおよびK
2Oの群の少なくとも1つの酸化物を含み、ここで一般にアルカリ酸化物(R
2O)の酸化アルミニウムに対する比はモル分率に対して6未満、つまり
【数1】
である。
【0067】
従って、この場合はホウ酸ビスマスガラスフラックスである。これは、焼き付け温度を考慮して、基材とガラスフラックスとの熱膨張係数の間の最適条件に取り組むべきである場合に特に有利である。このようにして、特に良好な強度値を達成できる。
【0068】
さらなる実施態様によれば、ガラス質成分は、酸化物に基づく質量%で
SiO2 50~70
B2O3 15~30
Bi2O3 0~15
ZnO 0~5
を含み、ここで有利にはアルカリ酸化物の合計は4質量%~6.5質量%であり、且つ/またはアルカリ土類酸化物の合計は0~2.5質量%である。
【0069】
さらなる実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングは充填剤として構成される添加剤を含み、充填剤は好ましくは線熱膨張係数-7×10-6/K~1.5×10-6/Kを有する。線熱膨張係数は略してαと称されることもあり、その膨張係数が特定された温度範囲も添え字として記述されることがある。本開示の範囲において、熱膨張が指定される場合、これは線熱膨張と理解される。「線熱膨張係数」、「熱膨張係数」、「膨張係数」、「CTE」および「α」との用語は、特段明示的に記述されない限り、本開示の範囲においては同義的に使用される。殊に、線熱膨張係数はISO 7991に準拠する方法において特定され得る。
【0070】
熱膨張係数が先述の範囲である充填剤が有利であり、なぜなら、このようにして、それらの成分から得られる少なくとも1つのコーティングの熱膨張に影響を与え、殊に低下することができるからである。顔料は通常、本開示による基材材料であるホウケイ酸ガラスよりもかなり高い熱膨張係数を有するので、ガラス板/複合材の得られる強度が低下しすぎないように、比較的低い熱膨張係数を有する充填剤をコーティングに添加することが有利であることができる。
【0071】
1つの実施態様によれば、充填剤の添加の際に顔料とナノ粒子充填剤との含有率の比を目標通りに調節することによって、良好な機械的特性および高い不透明性を有する板複合材を達成することが可能であることが示された。使用される顔料は通常、ナノ粒子充填剤よりも少なくとも一桁大きい直径を有する。顔料の好ましい直径もしくはサイズも、以下で実施例の部分に記述される。
【0072】
1つの実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングは充填剤として構成される添加剤を含み、その含有率は0.5体積%~20体積%、有利には15体積%未満である。
【0073】
有利には、少なくとも1つのコーティングが、その特性、例えば粒子サイズに関して異なる2つの充填剤を有することが意図され得る。粒子サイズに関して、ここでは常に、粒子サイズ分布のd50値に対する等価直径が指定される。従って、本開示の範囲において総括的に「粒子サイズ」または「直径」に言及されている場合、それは、特段明記されない限り粒子サイズ分布のd50値である。
【0074】
粒子サイズに関して異なって構成されている2つの充填剤を有するそのような構成は有利であることができ、なぜなら、このようにして特に有利な細孔サイズ分布が得られ、それによって殊に少なくとも1つのコーティングの細孔中へのポリマーの拡散もしくは侵入が特に容易に可能であるからである。例えば、1つの充填剤がナノ充填剤であり、つまり、粒子サイズ100nm未満を有するが、他の充填剤がナノ粒子充填剤の粒子サイズよりも少なくとも半桁大きい粒子サイズを有することが可能である。ナノ粒子充填剤は例えば最高50nmの粒子サイズを有することができ、その際さらなる充填剤は有利には少なくとも0.5μmの粒子サイズを有するべきである。このようにして、コーティングにおける良好な多孔性を特に良好に達成できる。ナノ粒子ではない充填剤の慣例的なサイズは約0.5μm~1.5μmである。
【0075】
ただし、有利なナノ粒子充填剤、つまり最高50nmの粒子直径を有する充填剤を添加する際、さらなる充填剤が存在するのではなく、顔料とナノ粒子充填剤との含有率の比のみが良好に調節されていれば充分であり得ることも示された。なぜなら、使用される顔料は通常、ナノ粒子充填剤よりも少なくとも一桁大きい直径を有するからである。白色顔料について、これは有利には1μm以下、好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.6μm以下である。顔料の好ましい直径もしくはサイズも、以下で実施例の部分に記述される。
【0076】
さらなる実施態様によれば、少なくとも1つのコーティングおよび/またはペーストは、膨張剤として構成されるさらなる添加剤を含む。本開示による複層ガラスのための実施態様による相応の少なくとも1つのコーティングを製造できるペーストの膨張剤含有率は、この場合、好ましくは5体積%~25体積%、特に好ましくは15体積%未満である。
【0077】
さらなる実施態様によれば、少なくとも1枚のガラス板は、少なくとも60質量%且つ最高85質量%のSiO2、少なくとも8質量%且つ最高26質量%のB2O3、少なくとも0.5質量%且つ最高12質量%のAl2O3、および少なくとも0.5質量%且つ最高6質量%のNa2Oを含み、好ましくはさらに1質量%までのLi2O、4質量%までのK2O、5質量%までのMgO、3.5質量%までのCaO、4質量%までのSrO、3質量%までのZnO、3質量%までのZrO2、並びにさらなる副成分、例えば清澄剤を含むことができ、ここでこれらの副成分の合計は2質量%以下である。
【0078】
SiO2は主なガラス形成剤であり、少なくとも1枚のガラス板の主成分である。従って、ガラス板が化学的および機械的に充分に安定であるために、ガラス板のSiO2含有率は少なくとも60質量%であるべきである。ただし、良好な溶融性を確実にするために、ガラス板のSiO2含有率は有利には制限され、且つ1つの実施態様によれば85質量%以下を含む。B2O3は少なくとも1枚のガラス板のさらなる成分であり、且つ有利にはガラス中に少なくとも8質量%含有される。このようにしてガラスの溶融粘度を低く保つことができ、そのことは製造の観点から有利である。有利にはガラスのB2O3含有率は、化学的に充分に安定なガラスを得るために高すぎない。ガラスはさらに少なくとも0.5質量%のAl2O3を含む。Al2O3はいわゆる中間酸化物であり、有利にはホウケイ酸ガラスに添加されて、このガラスにおける偏析傾向を低下させる。Al2O3はガラスの硬度を改善することもできる。しかしそれは同時に化学的耐久性を低下させ、その際、溶融温度も高めることがあるので、ガラス中に高すぎる含有率で存在すべきではなく、従ってここで好ましい上限は最高12質量%のAl2O3である。最後に、ガラスは少なくとも0.5質量%且つ最高6質量%のNa2Oも含む。このようにして、ガラスの融点を下げることができると共に、ガラスの化学的耐久性を非常に低下させる高すぎる含有率のNa2Oが存在しないことが確実になる。
【0079】
さらなる成分もガラスに含まれ得る。例えば、1質量%までのLi2O、4質量%までのK2O、5質量%までのMgO、3.5質量%までのCaO、4質量%までのSrO、3質量%までのZnO、3質量%までのZrO2が含まれ得る。これらの要素はガラスの様々な特性に影響を与えることができ、例えば偏析傾向をさらに打ち消したり(例えばK2Oの添加)、ガラスの強度を改善したりできる。
【0080】
当然のことながら、ガラスは一般にさらなる副成分、例えば清澄剤を含むことができ、これらの副成分の合計は2質量%以下である。
【0081】
さらなる実施態様によれば、さらなるガラス板はソーダライムガラスを含むか、またはソーダライムガラスからなる。
【0082】
ソーダライムガラスは一般に、主成分としてSiO2、CaOおよびNa2Oを含むガラスであり、大量に生産されている。それは安価に入手可能であるが、特定の弱点、例えば比較的低い化学的および機械的耐久性も有する。ただし、良好な入手性に基づき、そのようなガラスが複層ガラスのために、有利には使用中にあまり機械的負荷および/または腐食にさらされない複合材の側に備えられることは非常に有利であることができる。複層ガラスからなる、もしくは複層ガラスを含む車両の板の場合、これは有利には車両の内部空間に向く複層ガラスの側であってよい。これは、複層ガラスの非常に良好な耐久性と、受け容れ可能な費用との間の良好な歩み寄りを表す。
【0083】
さらなる実施態様によれば、複合材は、いわゆるパンメル試験における少なくとも3のレベルを有する。英語の「pummel」=「叩く」に由来する「パンメル試験」は、複合材の耐久性もしくは品質の尺度であり、ASTM C1908-21規格に記載されている。一般に、例えば「複合安全ガラス」とも称され得る複合材が破壊する際、ガラスの破片が、例えばPVBフィルムとして構成される、複合材のガラス板の間のポリマー層に付着したままでなければならない。これは、最大厚さ2×4mmを有する少なくとも2枚のガラス板を含む複層ガラスを、傾斜した金属台の上でハンマーで加工する、つまりこれを叩く、「パンメル試験」によって調査される。その際、ガラスは機械的作用によって破壊される。引き続き、視覚的な評価を行う。付着レベルは、ポリマー層の露出したフィルム面もしくは露出した面ごとに0~10の「パンメル値」に区分され、ここでより高い値は、ポリマー層上でのガラス破片のより良好な付着を表す。
【0084】
本開示は一般に、少なくとも1つのコーティングを含むガラス板の製造方法、および/または少なくとも1つのコーティングを含むガラス板を含む複合材の製造方法にも関する。
【0085】
少なくとも1つのコーティングを含むガラス板を製造するために、一般に、ガラスフラックス、少なくとも1つの顔料、および有利には少なくとも1つの、有利には充填剤として構成される添加剤を使用するペーストを使用することができる。この場合、実施態様による少なくとも1つのコーティングの組成についての先述の態様が顔料および結合剤の含有率に関しても相応して適用され、つまり含有率についての記述はペーストの固形分含有率に関する。相応の量での相応の固形分含有率の他に、ペーストは通常さらに、約30質量%~45質量%の媒体または分散媒体、通常は高沸点溶剤または溶剤混合物を含む。殊にペーストがスクリーン印刷によってガラス板上に施与される場合、殊にこれはいわゆる「スクリーン印刷オイル」であることができる。
【0086】
ペーストは慣例的な被覆法によって、殊に印刷法、例えばスクリーン印刷によって施与され得る。
【0087】
さらに、ペーストが膨張剤の形態での添加剤を含むことが可能である。
【0088】
有利には、ペーストの組成は、殊に少なくとも1つのガラス質成分、および少なくとも1つのコーティングが施与されているかまたは施与されるガラス板に使用されるガラスに関して、少なくとも1つのコーティングの焼き付け温度および焼き付け時間が、好ましくは、板が曲げられる場合、この板の曲げ温度および曲げ時間に相応するように互いに合わせられる。粘度の観点からは、少なくとも1つの、多孔質のエナメル層として構成されるコーティングの形成は、板がlg[η]/dPasの粘度8~11、好ましくは9~10を有する温度で、つまり有利には少なくとも590℃且つ最高850℃の温度で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】1つの実施態様による複層ガラスを通じた断面の模式的且つ縮尺通りではない図である。
【
図2】1つの実施態様によるガラス板の模式的且つ縮尺通りではない図である。
【
図3】1つの実施態様による複層ガラスの模式的且つ縮尺通りではない上面図である。
【
図4】少なくとも1つのコーティングを有するガラス板の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5】少なくとも1つのコーティングを有するガラス板の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図6】少なくとも1つのコーティングを有するガラス板の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図7】少なくとも1つのコーティングを有するガラス板の走査型電子顕微鏡写真である。
【実施例0090】
以下の表に、本開示の実施態様による適したガラス板のいくつかの組成を、このガラス組成で達成された特性についての関連データと共に要約する。組成はそれぞれ酸化物に対する質量%で記述される。合計における100%からのずれは、分析結果としての端数処理によって生じる。
【0091】
【0092】
適したガラスフラックスの例示的な組成を下記の表に示す。ここでも、組成は質量%で記述される。場合により生じ得る、合計の100質量%からのずれは端数処理技術に起因する。
【0093】
【0094】
以下の表に、実施態様によるコーティングのために適した顔料を列挙する。示される顔料クラスはいわゆる「カラーインデックス」に関し、そこでは顔料がクラスに分類されており、ここで表中、「Bk」は「黒」を、「Br」は「茶色」を、および「Gr」は「緑」を表す。列挙される顔料は一般に、実施態様による暗い層を製造するために、殊に黒色の印象をもたらすもののためにも適している。これは殊に表中で「茶色」または「緑」として分類される顔料について該当し、なぜなら、これらは一般に高吸収性に構成されており、これらの顔料を含むコーティングの場合、これらの「色」は、(もしあったとしても)弱い色合い(茶色がかった黒または緑がかった黒として)の形でしか現れないことが多く、そのようなコーティングの一般的な印象はやはり暗いか、もしくは黒であるからである。
【0095】
【0096】
実施態様によるペーストもしくはコーティングのための適した添加剤を以下の表に示す:
【表4】
【0097】
充填剤については殊に、先述の表に挙げられるように、低膨張の充填剤、例えばシリカが考慮される。その際、シリカは種々の変種で、例えばかなり緻密であるが小さい粒子の形態を有するシリカ(先述の表中のシリカ(1))として、または特に高い表面積を有するシリカの形態(先述の表中のシリカ(2))で使用できる。一般に、それ自体が多孔質に構成されているアモルファスまたは結晶性の充填剤、例えば「CoralPor」として先に挙げられている充填剤も使用できる。それは多孔質に構成されたホウケイ酸ガラス製の充填剤である。他の充填剤、例えば多孔質且つ結晶性に構成されているゼオライト、またはβ-ユークリプタイトとは別の他の低膨張充填剤、例えばコージエライトも考えられる。充填剤の添加は二重リング曲げ強度の改善においても非常に効果的であり、(得られるコーティングに対して)1.75体積%のみの充填剤の添加で既に、充填剤がないこと以外は同じ組成のペースト/コーティングに比した強度(二重リング曲げ引っ張り強度)の12.5%~14.5%の改善をみちびく。ここで、使用された充填剤は「シリカ(1)」、β-ユークリプタイトおよびCoralPor(登録商標)充填剤であった。
【0098】
膨張剤については一般に無機および有機の膨張剤が可能であり、ここで有機の膨張剤、例えば、先にも列挙もされたとおり、糖(マルトース、グルコースなど)またはデンプンが好ましい。そのような膨張剤(または細孔形成剤)が添加される場合、色への良い影響の他に、例えばガラス板および相応して得られる複合材の強度においても、細孔形成剤/膨張剤がないこと以外は同じ組成のコーティングに比した、40%を超える(膨張剤/細孔形成剤としてのデンプン)、もしくは30%を上回る(糖)、強度(二重リング曲げ引っ張り強度)の改善も示される。ここで、10体積%の細孔形成剤/膨張剤がペーストに添加された。これは、コーティングにおいて、膨張剤を添加しない場合よりも10体積%多い細孔をみちびく。
【0099】
図面の説明
本発明を以下で図面を用いてさらに説明する。
【0100】
図1は1つの実施態様による複層ガラスを通じた断面の模式的且つ縮尺通りではない図を示す。
【0101】
図2は1つの実施態様によるガラス板の模式的且つ縮尺通りではない図を示す。
【0102】
図3は1つの実施態様による複層ガラスの模式的且つ縮尺通りではない上面図を示す。
【0103】
図4~7は貼り合わせられた状態および貼り合わせられていない状態での少なくとも1つのコーティングを有するガラス板の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0104】
図1は、本開示の実施態様による複合材もしくは複層ガラス10の模式的且つ縮尺通りではない図である。複層ガラス10は2枚のガラス板1、2を含む。ここで、板1は少なくとも1つの、少なくとも部分的に施与された少なくとも1つのコーティングを表す。板2はさらなるガラス板であり、例えばソーダライムガラスから構成され得る。両方のガラス板1、2の間にポリマー層3、並びに、ここでは複層ガラス10の縁部領域にコーティング11が配置されている。これはガラス板1の1つの側(図示せず)上に配置され、且つそれぞれ以下の記載の範囲において、少なくとも1つのコーティングを、または場合により中間層としてのさらなるコーティングと共に少なくとも1つのコーティングを含み得る。
【0105】
より良好に示すために、ここではコーティング11を厚く、つまり両方の板1、2と同等の厚さで示したが、前述のとおり、これはより良好に示すために過ぎない。コーティング11は通常、両方の板1、2の各々よりも顕著に薄く、通常、ポリマー層3よりも薄い。ポリマー層3はフィルムであってもよい。ポリマー層の例示的な厚さは650~850μmであり、ここで少なくとも1つのコーティングは通常、一桁のマイクロメートルの範囲の厚さを有する。少なくとも1つのコーティングの層厚についての好ましい上限は、例えば7μmまたは6μmである。さらに、少なくとも1つのコーティングは例えば3μm~5μmの厚さであってよい。
【0106】
ここでわかるとおり、複層ガラス10は、例えばフロントガラスとしても使用され得るように、曲げられた複層ガラス板として構成されている。しかしながら一般に、
図1に示された例に限定されることなく、複層ガラス10が曲げられた板1、2を含まず、平坦に形成されていることも可能である。複層ガラス10の曲率が特に
図1に示される図とは逆に形成されていることも可能である。
図1の例においてガラス板1はフロントガラスの外側であるが、一般にガラス板1がフロントガラスの内側に配置されることも可能である。ただし、いずれの場合においても、コーティング3は両方のガラス板1、2の間に配置される。
【0107】
ただし、
図1による描写が好ましく、なぜならこのようにして、第1のガラス板1は、例えばフロントガラスとして使用される際に、飛石、または化学的負荷、例えば塩水噴霧にさらされ、ホウケイ酸ガラス製のガラス板は、例えば市販のソーダライムガラス板よりも良好にそれに耐えられるからである。しかし、上でも述べたとおり、費用の理由から、複層ガラスの両方の板がホウケイ酸ガラスを含むわけではない場合が有利であることができる。
【0108】
従って前述のとおり、
図1のような配置が有利であることができ、なぜならガラス板1はガラス質材料の要素としてSiO
2およびB
2O
3を含むからである。そのようなホウケイ酸ガラスは例えばソーダ石灰ガラスよりも耐引っかき性であるため、ガラス板1が
図1に示されるように複合材10において「外」向きに構成される、つまりフロントガラスとして使用する場合には外に向けられている場合に有利であることができる。このようにして、飛石または類似の機械的負荷に対するより良好な保護がもたらされる。
【0109】
実施態様によるガラス板1の構成を明確に示すために、これを
図2において模式的且つ縮尺通りではない図の形態で示す。そこで、
図2は側面図を示す。ただしここではガラス板1はまだ曲げられて形成されていない。一般に、ガラス板1もしくは複層ガラス10の
図1に示された例に限定されることなく、ガラス板が曲がっていることも可能である。しかし、まず平面状の曲げられていない板1が使用され、それが後に例えば熱的な方法において曲げられる場合が有利であることができる。ここでも、より良好に示すために、コーティング11の厚さは現実よりも明らかに大きく示されている。
【0110】
板1の配置は、
図2においては板が曲げられていないこと以外は、前述のとおり
図1における配置に相応する。わかるとおり、コーティング11はここでは、複合材10において第2の板2に向いている側102上で構成される。複合材において板1と板2との間に配置されているポリマー層3はここでは図示されていない。ここで、ポリマー層3が板の側102に直接的に接触することも、板1(もしくは板1の側102)の1つの領域(または複数の領域)に配置されたコーティング11上に配置されることも明らかに指摘される。
【0111】
コーティング11はここでは、
図2の描写のそれぞれ左および右における板1の縁部領域に配置されている。ここで、例えばコーティングが全体として「フレーム」の形態で施与されることができる。
【0112】
これについて、模式的且つ縮尺通りではない図で実施態様による複層ガラス10の上面図を示す
図3に教示される。ここでコーティング11は板1の縁部を取り囲むフレームとして構成され、コーティングはまず覆って、つまり途切れていない層として構成され、板1の中央に向かってグリッドまたはドットパターン111を介して、被覆されていない領域へと移行する。この被覆されていない領域は、板1が複層ガラス10において使用される場合については、例えばフロントガラスの視界領域である。当然のことながら、一般に、フレームが
図3に模式的に示されるように一様に形成されるのではなく、例えば突出部、例えばフロントガラスのバックミラーの領域でよくあるような突出部を有することが可能である。
【0113】
図4および6は、本開示の実施態様による、SiO
2およびB
2O
3を含むガラスを含む部分的に被覆されたガラス板であって、第1の側と第2の側とを有する前記ガラス板の走査型電子顕微鏡写真である。
【0114】
ここで、コーティングは一般に、ガラス板の第2の側の少なくとも1つの領域に施与された少なくとも1つのコーティングである。それは一般に、少なくとも1つの顔料、ガラス質成分、および有利には少なくとも1つの添加剤、例えば充填剤を含むエナメルコーティングとして構成される。
【0115】
見てのとおり、
図4および6の描写からわかるように、少なくとも1つのコーティングは細孔、有利には開放細孔を含む。従ってここで有利には、少なくとも1つのコーティングにおいて、少なくとも1つのコーティングの少なくとも1枚のガラス板の第2の側に向く側と、少なくとも1つのコーティングの少なくとも1枚のガラス板の第2の側と反対の側との間の直接的な接続が生じる。
【0116】
図5および7における貼り合わせられた試料の描写からわかるように(ここで
図5は
図4の貼り合わせられた試料であり、
図7は
図6の貼り合わせられた試料である)、貼り合わせプロセスにおいてポリマー層が少なくとも1つのコーティングの細孔に少なくとも部分的に侵入する。