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特開2024-169379セルパウチ用フィルム及びその保管方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169379
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】セルパウチ用フィルム及びその保管方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20241128BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/131
H01M50/126
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083392
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】10-2023-0066379
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2024-0061080
(32)【優先日】2024-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523422299
【氏名又は名称】ユルチョン・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YOULCHON CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ノクチョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヒシク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒフン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドゥヒ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ムンギュ
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成形性に優れ、且つスリップ剤の流出が低減したセルパウチ用フィルムとその保管方法を提供する。
【解決手段】セルパウチ用フィルムは、スリップ剤を含む、シーラント層;前記シーラント層上に形成された金属層;及び前記金属層上に形成された外層;を含み、当該フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、1.3kgfの立方体形態の金属を外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなる黒色パウチで包んだ形態の滑剤検査装置を使用して、前記黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分の表面粗さがRt 13~20μm及びRz 10~15μmを満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリップ(slip)剤を含む、シーラント層;
前記シーラント層上に形成された金属層;及び
前記金属層上に形成された外層;
を含むセルパウチ用フィルムであって、
当該フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、1.3kgfの立方体形態の金属を外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなる黒色パウチで包んだ形態の滑剤検査装置を使用して、前記黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分の表面粗さがRt 13~20μm及びRz 10~15μmを満たす、セルパウチ用フィルム。
【請求項2】
当該フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、1.3kgfの立方体形態の金属を外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなる黒色パウチで包んだ形態の滑剤検査装置を使用して、前記黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分に存在するスリップ剤の凝集粒子のうち最大凝集粒子の平均直径が60μm以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
当該フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管後のシーラント層の摩擦係数が0.15~0.5である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
当該フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管後の成形性が15~25mmであり、
ここで、前記成形性は、前記フィルムに0.3MPaの圧力をかけて1カップ成形時に破れが生じない最大深さを測定したことである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
当該フィルムは、48~57℃の温度で保管するためのものである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
当該フィルムは、シーラント層の総重量に対してスリップ剤を0.1~20重量%含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
前記スリップ剤は、ワックス系、アミド系、シロキサン、及びシリコーンのうちの1種以上を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
前記金属層は、アルミニウム又はその合金、チタン又はその合金、タングステン又はその合金、モリブデン又はその合金、銅又はその合金、及びステンレス鋼からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
前記外層は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutylene adipate terephthalate、PBAT)、ポリブチレンサクシネート(polybutylene succinate、PBS)、ポリヒドロキシアルデヒド(polyhydroxy aldehyde、PHA)、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、熱可塑性デンプン(thermoplastic starch、TPS)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリカプロラクタム(polycaprolactam、PCL)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)、エチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)、ポリビニリデンクロライド(polyvinylidene chloride、PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、及びナイロン(nylon)からなる群より選ばれる1種を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
前記シーラント層は熱接着性樹脂を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のセルパウチ用フィルムを保管するための方法であって、
当該フィルムを48~57℃の温度で保管する段階を含む、保管方法。
【請求項12】
前記段階における保管期間は10日~300日である、請求項11に記載の保管方法。
【請求項13】
前記段階における保管時の相対湿度は5%~25%である、請求項11に記載の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、セルパウチ用フィルム及びその保管方法に関する。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、2023年5月23日付で出願された大韓民国特許出願第10-2023-0066379号に基づいて優先権を主張し、当該出願の全内容が本出願に参照により組み込まれる。
本出願は、2024年5月9日付で出願された大韓民国特許出願第10-2024-0061080号に基づいて優先権を主張し、当該出願の全内容が本出願に参照により組み込まれる。
【0003】
国家支援の研究開発に関する説明
本研究は、以下の国家課題を通じて遂行された。
-部署名:産業通商資源部、課題管理(専門)機関名:韓国産業技術評価管理院、研究事業名:素材部品パッケージ型(最高企業)、研究課題名:2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発、課題遂行機関名:栗村化学(株)、課題番号:20022450、課題固有番号:1415185612
【背景技術】
【0004】
一般的に電気自動車などに使用されるパウチ型バッテリーは、円筒型や角型バッテリーに比べて形態変更が容易であり且つエネルギー密度が高いという長所がある。セルパウチは、電池の電極群と電解液を包む外装材であって、金属薄膜と高分子からなる層間の接着力、熱融着強度、耐電解液性、気密性、水分浸透性、成形性などの要求特性を満たす必要があり、特にセルパウチを電気自動車(EVs)、エネルギー貯蔵システム(ESS)などのような大型電池に適用するためには高成形特性を有する必要がある。そのため、セルパウチには成形性向上のための添加剤としてスリップ剤(Slip agent)が必須に含まれ、スリップ剤が製造後の温度や圧力などに応じてパウチの最外層の表面に流出しながら成形性を提供する。しかし、スリップ剤が過量流出した場合には、スリップ剤の粒子が凝集しながら工程上に汚染を引き起こして、工程効率が急激に低下するため、スリップ剤の凝集を防止し且つ高い成形性を提供することができるセルパウチ用フィルムの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、成形性に優れ且つスリップ剤の流出が低減したセルパウチフィルムとその保管方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例は、スリップ(slip)剤を含む、シーラント層;
前記シーラント層上に形成された金属層;及び
前記金属層上に形成された外層;
を含むセルパウチ用フィルムであって、
前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、1.3kgfの立方体形態の金属を外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなる黒色パウチで包んだ形態の滑剤検査装置を使用して、前記黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分の表面粗さがRt 13~20μm及びRz 10~15μmを満たす、セルパウチ用フィルムを提供する。
【0007】
本開示の他の一実施例は、前記セルパウチ用フィルムを含むセルパウチを提供する。
【0008】
本開示の他の一実施例は、ある一項に記載のセルパウチ用フィルムを保管するための方法であって、前記フィルムを48~57℃の温度で保管する段階を含む、保管方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、セルパウチ用フィルムの製造後の保管温度の調節によってスリップ剤を少量含みながらもスリップ剤が表面に過量流出する現象を最小化して、スリップ剤の効率を向上させることができる。したがって、本開示に係るフィルムは、優れた成形性を示すとともにスリップ剤の過量流出が防止されるので、スリップ剤による工程上の不良発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1における実施例1及び実施例2、比較例4の表面粗さを測定した結果を示したものである。
図2】試験例2に使用された滑剤検査用装置を撮像した像である。
図3】試験例2において滑剤検査後に黒色パウチを撮像した像である。
図4】試験例2における滑剤検査の評価基準(S、A、B等級)を示した図である。
図5A】試験例2における滑剤検査後に実施例1(保管温度50℃)でスリップ剤が凝集して形成した粒子の大きさ分析結果を示したものである。(80倍率像)
図5B】試験例2における滑剤検査後に実施例1(保管温度50℃)でスリップ剤が凝集して形成した粒子の大きさ分析結果を示したものである。(450倍率像)
図6A】試験例2における滑剤検査後に比較例4(保管温度45℃)でスリップ剤が凝集して形成した粒子の大きさ分析結果を示したものである。(80倍率像)
図6B】試験例2における滑剤検査後に比較例4(保管温度45℃)でスリップ剤が凝集して形成した粒子の大きさ分析結果を示したものである。(450倍率像)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して本開示の好ましい実施例を詳しく説明することにする。
【0012】
本文に開示されている本開示の実施例は、単に説明のための目的から例示されたものであって、本開示の実施例は種々の形態で実施されてよく、本文に説明されている実施例に限定されると解釈されてはいけない。本開示は、種々の変更を加えることができ、様々な形態を有し得るところ、実施例は本開示を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本開示の思想や技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0013】
単数の表現は、文脈上明らかに異なって捉えられない限り、複数の表現を含む。本出願における「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在することを表すためのものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加可能性を排除しない。
【0014】
本明細書において「セル(cell)」とは、電池を意味するものであって、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池などのような二次電池やポータブル蓄電池などのような各種の電池をすべて含む最広義の意味である。
【0015】
本明細書において「セルパウチ(cell pouch)」とは、正極、負極、及びセパレータ(separator)などのセル構成要素が電解液に含浸され収納されたものであって、前記セル構成要素を収納するために、ガスバリア性、曲げ性、耐電解液性、及び熱接着性などを考慮した積層構造のフィルムを袋型や箱型などに加工されたものをすべて含む最広義の意味である。
【0016】
本明細書において「成形性(formability)」とは、セルパウチ用フィルムを所定の形状に加工する際に亀裂や破れが生じることなく目的とする形状に加工可能であり且つその形状を保持できる特性のことを意味する。例えば、前記成形性は、セルパウチ用フィルムを切断して得た試片に対して0.3MPaの圧力をかけて1個のカップ状に成形時に亀裂や破れが生じない最大深さを測定して評価することができ、より具体的には、同一のフィルム試片10個のうち10個とも破れが生じていない場合、より深い深さを適用していき、1個でも破れが生じた場合、その直前の深さを最大高さと定義してよい。例えば、前記成形性の評価は、直方体形態の成形カップ(入口大きさ:16cm×9cm)を使用して評価してよい。より具体的には、GWANGSHIN HI-TECH社製のGS-S5モデルにて評価してよい。
【0017】
本開示の一実施例は、シーラント層、前記シーラント層上に形成された金属層、及び前記金属層上に形成された外層を含むセルパウチ用フィルムであって、前記シーラント層はスリップ剤を含み、当該フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、1.3kgfの立方体形態の金属を外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなる黒色パウチ(black pouch)で包んだ形態の滑剤検査装置を使用して、前記黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分の表面粗さがRt 13~20μm及びRz 10~15μmを満たす、セルパウチ用フィルムを提供することができる。
【0018】
本開示の一実施例によれば、前記フィルムは、48~57℃の温度で保管するためのものであってよく、前記保管温度の調節によってスリップ剤の過量流出とスリップ剤の凝集を防止することができる。具体的に、前記保管温度は、48℃以上、49℃以上、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上又は54℃以上であってよく、且つ57℃以下、56℃以下、55℃以下、54℃以下、53℃以下、52℃以下又は51℃以下であってよい。保管温度が57℃を超えると、成形性が低下することがあり、また、48℃未満であると、スリップ剤が過量流出して凝集しながら工程上の不良を引き起こして、製品信頼性が低下することがある。
【0019】
一実施例において、前記保管時の保管期間は、10日~300日であってよい。具体的に、10日以上、20日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、70日以上、80日以上、90日以上、100日以上、150日以上、200日又は250日以上であってよく、且つ300日以下、200日以下、100日以下、90日以下、80日以下、70日以下、60日以下、50日以下、40日以下、30日以下、20日以下又は10日以下であってよい。
【0020】
一実施例において、前記保管時の相対湿度は5%~25%であってよい。本開示において、本明細書において「相対湿度(Relative Humidity、RH)」とは、所定体積の空気が最大で含み得る飽和水蒸気圧に対する、現在空気中に含まれている水蒸気量の割合を百分率(%)で表した値である。
【0021】
一実施例において、前記フィルムの表面粗さは、前記フィルムのシーラント層に含まれたスリップ剤が前記シーラント層と外層にそれぞれ流出し一部が凝集した様相をパラメータ化したことである。本開示において、前記表面粗さは、表面に存在する微細な凹凸の程度のことを意味する。前記表面粗さのパラメータのうちRtは、最大高さ粗さ(maximum height roughness)であって抜き出し部分の基準長さ(cut-off)内の粗さ曲線において中心線に平行でありその曲線の最高点と最低点を通る2つの平行線間の上下距離を測定したことである。Rzは、10点平均粗さ(ten point median height)であって最大山高さから5番目までの平均高さと最大谷深さから5番目までの平均谷深さの間の距離を測定したことである。
【0022】
一実施例において、前記表面粗さの測定に用いられた前記黒色パウチは、外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなるパウチ(製造社:栗村化学(株))である。前記黒色パウチを擦り付けると、前記黒色パウチのおもて面と前記フィルムのシーラント層又は外層とが摩擦しながら前記フィルムから流出したスリップ剤が前記黒色パウチのおもて面ににじみ出て白い縞を形成することがある。本開示は、シーラント層にスリップ剤を含む前記フィルムが前述した表面組さ範囲を示すとき、スリップ剤が少量流出して凝集粒子の大きさが小さく形成されながらも高い成形性を示すことを見出し、かかる観点から、前記方法によって測定したとき、白い縞が形成された部分の表面粗さは、Rt 13~20μm及びRz 10~15μmを満たすものであってよい。ここで、前記表面粗さは、シーラント層を1回、又は外層を5回繰り返し同じ方向に擦り付けたときの値であってよい。具体的に、前記表面粗さRt(μm)は、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上又は19以上であり、且つ20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下又は14以下であってよい。また、前記表面粗さRz(μm)は、10以上、11以上、12以上、13以上又は14以上であり、且つ15以下、14以下、13以下、12以下又は11以下であってよい。前記表面粗さRt及びRzが前記範囲を外れるフィルムは、滑剤検査の際にスリップ剤が過度に流出してシーラント層の表面に60μm超の凝集粒子が存在するものであってよく、シーラント層の摩擦係数や成形性が低く示されることがある。
【0023】
一観点において、一実施例に係る前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、前述したのと同じ滑剤検査装置を使用して、前記滑剤検査装置の黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分に存在するスリップ剤の凝集粒子の大きさのうち最大凝集粒子の平均直径が60μm以下であるものであってよい。ここで、前記スリップ剤の凝集粒子は、流出したスリップ剤が凝集して形成された粒子のことを意味する。スリップ剤が過多流出するほど粒子の大きさが増加する。前記スリップ剤の凝集粒子の大きさのうち最大凝集粒子は、形成された凝集粒子のうち最大の大きさの凝集粒子のことを意味し、前記平均直径は、1個の凝集粒子で測定した直径の平均値を意味する。具体的に、前記スリップ剤の凝集粒子の大きさのうち最大の凝集粒子は、スリップ剤の全凝集粒子のうち100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下、88%以下、86%以下、84%以下、82%以下又は80%以下のうち最大の大きさの凝集粒子を意味してよい。又は、具体的に、前記スリップ剤の凝集粒子の大きさのうち最大の凝集粒子は、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した像に含まれた凝集粒子のうち最大の大きさの凝集粒子を意味してよい。ここで、前記スリップ剤の凝集粒子の大きさは、シーラント層を1回、又は外層を5回繰り返し同じ方向に擦り付けたときの値であってよい。より具体的に、前記スリップ剤の凝集粒子の大きさは、60μm以下、50μm以下又は40μm以下であってよい。一実施例において、前記凝集粒子の大きさは、顕微鏡像から確認することができる。
【0024】
一観点において、一実施例に係る前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管後の成形性が15~25mmであるものであってよい。ここで、前記成形性は、前記フィルムに0.3MPaの圧力をかけて1カップ(16cm×9cm)成形時に破れが生じない最大深さを測定したことである。より具体的に、前記成形性は、15mm以上、16mm以上、17mm以上、18mm以上、19mm以上、20mm以上、21mm以上、22mm以上又は23mm以上であってよく、且つ25mm以下、24mm以下、23mm以下、22mm以下、21mm以下又は20mm以下であってよい。
【0025】
一観点において、一実施例に係る前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管してから以下のように摩擦係数を評価したとき、開示の一実施例に係るシーラント層の摩擦係数は0.15~0.5であってよい:(a)本開示の一実施例に係るフィルムを用いてセルパウチを製造後、それを200mm×100mmの大きさにカットして試片を準備し、該試片を摩擦係数測定装置の底部に平坦に貼り付ける。(b)次いで、前記と同一のセルパウチの70mm×60mm大きさの試片を摩擦係数測定用治具に固定させる。(c)次いで、前記摩擦係数測定装置に備えられた治具を前記二つのパウチの両方に当接するように二つのパウチの間に挟み込んでから摩擦係数測定装置の底部を15mm/1sの速度で55秒間動かしてパウチのシーラント層間の摩擦係数を測定する。一実施例において、前記摩擦係数測定装置はLabsink社製のCF-800XSモデルであってよい。具体的に、前記摩擦係数は、0.15以上、0.2以上、0.25以上又は0.3以上であってよく、且つ0.5以下、0.4以下、0.35以下、0.3以下、0.25以下又は0.2以下であってよい。
【0026】
本開示において前記フィルムの各層の材料や厚さは、セルパウチ用フィルムとして製造できるものであれば特に制限されないが、例えば、次のような構成を含むものであってよい。
【0027】
本開示において、前記シーラント層は、内層であって、セルが内蔵された後、熱によって接着されてシーリング(sealing)性を与える層のことを意味する。一実施例として、前記シーラント層は、熱接着性樹脂、すなわち、熱接着のためのシーリング樹脂(sealing resin)を含んでよい。具体的に、前記シーラント層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)系などのポリオレフィン系、これらの共重合体、ターポリマー又はこれらの誘導体、及びエチレンビニルアセテート(EVA)からなる群より選ばれた1種以上を含んでよい。前記共重合体(Co-polymer)又はターポリマー(ter-polymer)としては、エチレン/プロピレン共重合体又はエチレン/プロピレン/ブタジエンのターポリマーなどを含んでよい。一実施例として、前記シーラント層は、20μm~100μmの厚さを有してよい。前記シーラント層は、複数の層から構成されてよい。
【0028】
本開示において、前記スリップ剤(slip agent)は、フィルムの表面に摩擦係数を低減し且つ潤滑性や成形加工性を与えるための添加剤のことを意味する。一実施例において、前記スリップ剤は、ワックス系、アミド系、シロキサン、及びシリコーンのうちの1種以上を含んでよい。具体的に、前記スリップ剤は、オレイン酸アミド系のスリップ剤であってよい。より具体的に、前記スリップ剤は、エルカミド(Erucamide)、ベヘンアミド(Behenamide)、ステアロアミド(stearamide)、及びオレアミド(Oleamide)のうちの1種以上を含んでよい。
【0029】
一実施例において、前記フィルムは、シーラント層の総重量に対してスリップ剤を0.1~20重量%含んでよい。具体的に、前記フィルムは、シーラント層の総重量に対してスリップ剤を0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、17重量%以上又は19重量%以上含んでよく、且つ20重量%以下、17重量%以下、15重量%以下、13重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下含んでよい。スリップ剤が前記範囲を超えて過量添加されると、シーリング強度が低減し、巻取り状態不良及び経時的な物性の不均一が示されることがあり、また工程段階において異物の問題を引き起こして商品の信頼性を阻害することがある。また、スリップ剤が前記範囲よりも少量添加されると、成形性が低下することがある。
【0030】
本開示において、前記外層は、前記金属層を保護するために耐熱性、耐摩耗性、耐化学性などを持つ層のことを意味する。一実施例として、前記外層は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutylene adipate terephthalate、PBAT)、ポリブチレンサクシネート(polybutylene succinate、PBS)、ポリヒドロキシアルデヒド(polyhydroxy aldehyde、PHA)、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、熱可塑性デンプン(thermoplastic starch、TPS)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリカプロラクタム(polycaprolactam、PCL)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)、エチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)、ポリビニリデンクロライド(polyvinylidene chloride、PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、及びナイロン(nylon)からなる群より選ばれる1種を含んでよい。より具体的に、前記外層は、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などから選ばれた1種以上の樹脂を含んでよい。一実施例として、前記外層は、5μm~40μmの厚さを有してよい。前記外層は、複数の層から構成されてよい。
【0031】
本明細書において、前記金属層は、電池の外部からの水蒸気又は空気、電池内部で発生したガス、及び/又は水分を遮断する性能を持つバリア層のことを意味する。一実施例として、前記金属層は、その片面又は両面にそれぞれ均一にコートされた表面処理層をさらに含んでよい。一実施例において、前記金属層は、金属薄膜又は金属蒸着層であってよい。前記金属薄膜は、金属箔(metal foil)が挙げられる。前記金属蒸着層は、別途のプラスチックフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などのフィルムに金属が真空蒸着されて形成されてよい。
【0032】
一実施例として、前記金属層の金属は、前記のような遮断性能を持つものであれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、及びテングステン(W)などからなる群より選ばれた1以上(単一金属又は単一金属の混合)、又はこれらから選ばれた2以上の合金(alloy)などが挙げられる。具体的に、前記金属は、アルミニウム又はその合金、チタン又はその合金、タングステン又はその合金、モリブデン又はその合金、銅又はその合金、及びステンレス鋼からなる群より選ばれる1種以上を含んでよい。より具体的には、アルミニウムを含んでよい。一実施例として、前記表面処理層は、金属の耐腐食性を提供するために、リン酸、クロム、ジルコニウム、セリウム、ランタン、スカンジウム、イットリウムなどによる表面処理層であってよい。
【0033】
一実施例として、前記金属層は、20μm~80μmの厚さを有してよい。前記金属層の厚さが20μm未満であると、成形などの工程の際にピンホール、微細クラックなどが発生することがあるため安全性の確保が難しく、また前記金属層の厚さが80μmを超えると、電池の製作の際にエネルギー密度が低くなることがある。
【0034】
本開示の一実施例は、前記金属層と外層との間に前記金属層と外層との接着のための接着層をさらに含んでよい。また、本開示の一実施例は、前記シーラント層と金属層との間に前記金属層とシーラント層との接着のための接着層をさらに含んでよい。具体的に、前記接着層は、接着剤層及び/又は押出樹脂層であってよい。例えば、前記接着剤層は、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、及びポリエステル系接着剤のうちの一つ以上を含んでよい。一実施例として、前記接着剤層は、0.5μm~10μmの厚さを有してよい。例えば、前記押出樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂などのオレフイン系樹脂を含んでよい。一実施例として、前記押出樹脂層は、約5~80μmの厚さを有してよい。
【0035】
本開示の一実施例は、前述したセルパウチ用フィルムを含む、セルパウチを提供することができる。
【0036】
本開示のまた他の実施例は、48~57℃の温度で保管する段階を含む、前述したセルパウチ用フィルムの保管方法を提供することができる。具体的に、前記保管温度は、48℃以上、49℃以上、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上又は54℃以上であってよく、且つ57℃以下、56℃以下、55℃以下、54℃以下、53℃以下、52℃以下又は51℃以下であってよい。保管温度が57℃を超えると、成形性が低下することがあり、また48℃未満であると、スリップ剤が過量流出して凝集しながら工程上の不良を引き起こして、製品信頼性が低下することがある。
【0037】
一実施例において、前記保管段階の保管期間は、10日以上であってよい。具体的に、10日以上、20日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、70日以上、80日以上、90日以上、100日以上、150日以上、200日又は250日以上であってよく、且つ300日以下、200日以下、100日以下、90日以下、80日以下、70日以下、60日以下、50日以下、40日以下、30日以下又は20日以下であってよい。
【0038】
一実施例において、前記保管段階の相対湿度は、5%~25%であってよい。
【0039】
以下、実施例を通じて本開示をより詳しく説明することにする。なお、これらの実施例は単に開示を例示するためのものであって、本開示の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0040】
[製造例]
本開示の一実施例を次の方法によって製造した。
【0041】
アルミニウム箔の金属原反から構成された60μm厚さの金属層の一方の面にポリエチレンテレフタレートフィルムで外層25μmを形成し、前記金属層の他方の面にアミド系スリップ剤を、シーラント層の総重量に対して0.1~20重量%含む無延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートしてシーラント層80μmを形成して、セルパウチ用フィルムを製造した。
【0042】
本開示の一実施例として、前記外層にポリエチレンテレフタレートフィルム12μm及びナイロンフィルム25μmが積層された外層を使用して、セルパウチ用フィルムを製造することができ、この場合にも後述する試験例の結果が同一であることを確認した。
【0043】
[試験例1]
前記製造例で製造したフィルムの保管時の保管温度に応じた表面粗さを確認するために、以下の実験を実施した。
【0044】
先ず、立方体形態の金属(鉄)(重さ:約1.3kg)の表面を黒色パウチ(製造社:栗村化学(株))で包んだ形態の滑剤検査装置を準備した。50mm×240mmの大きさでカットした前記製造例で製造したフィルムを、シーラント層が上向きになるように平坦な面に固定させた後、前記装置の黒色パウチを保管温度を異にして保管された各フィルムのシーラント層に400mm/10sの速度で擦り付けて1回摩擦させた。次いで、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分を1×1cmの大きさでカットし、両面テープを用いてスライドガラスに平坦に貼り付けた後、表面粗さ測定装置(例えば、NV-2200 3D profiler、Nano system社製)と分析プログラム(NanoMap、Nano system社製)を用いて表面粗さを測定した。
【0045】
これらのうち実施例1及び実施例2、比較例4の結果を図1及び表1に表した。
【0046】
【表1】
【0047】
前記結果に示したように、本開示の実施例1及び2は、保管温度の調節によって表面粗さRtが13~20μm、Rzが10~15μmの範囲内に収まることを確認することができる。
【0048】
[試験例2]
本開示の一実施例に係るフィルムの表面粗さに応じたスリップ剤の凝集様相、摩擦係数、及び成形性を確認するために、前記試験例1で表面粗さを確認した実施例1、2、及び比較例1~4を対象に下記の実験を実施し、各測定値を表2~表9に表した。このとき、各フィルムの成形性、滑剤検査、及び摩擦係数を0日目では常温で測定し、その後、各設定保管温度で90日間保管しながらその結果を観測した。
【0049】
滑剤検査
滑剤検査は、セルパウチ用フィルムのシーラント層又は外層の表面に流出するスリップ剤の量又は凝集様相を測定するためのことである。前記表面粗さの測定の際に使用したのと同一の滑剤検査装置を準備し、前記製造したフィルムを50mm×240mmの大きさでカットしてから、シーラント層又は外層が上向きになるように平坦な面に固定させた後、前記準備した各フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けて摩擦させた。シーラント層を摩擦させた場合には1回、外層を摩擦させた場合には5回繰り返し行った。次いで、前記各フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分を走査電子顕微鏡(SEM、製造社:HITACHI、製品名:SU3500)を使用して撮像し、スリップ剤の凝集粒子の大きさを走査目視にて確認及び評価した。図2は、前記実験に使用された滑剤検査用装置の写真であり、図3は、前記実験後の黒色パウチを撮像した像であり、黒色パウチ像の上部に白い縞が形成されていることを確認することができる。図4に示すように、目視評価の結果、縁部の一方のみに白い縞が見られ、大部分の面積に亘って擦り傷が少ないとS等級、縁部(白い縞部位)に2つのラインが見られ、スリップ剤の擦り傷があればA等級(A+、A0又はA-)、角部位に2つのラインが見られ、スリップ剤が全面に亘って付いているとB等級と評価した。
【0050】
また、SEM像の分析のとき、前記スリップ剤がにじみ出て黒色パウチに白い縞を形成した部分に存在するスリップ剤の凝集粒子のうち最大大きさの凝集粒子を選定した数、その平均直径を確認した。
【0051】
摩擦係数の測定
前記準備した各フィルムを200×100mmの大きさでカットしてから、各フィルムの摩擦係数を摩擦係数測定器(製造社:Labsink、製品名:CF-800XS)を使用して測定した。具体的に、各フィルムの試片を200mm×100mmの大きさで準備してから摩擦係数測定装置の底部に平坦に貼り付けた後、同一のフィルムの70mm×60mm大きさの試片を摩擦係数測定器に備えられた治具に付着させてから該治具を装備に紐で連結した。前記二つのフィルムが当接するように前記治具を装備の上に載せてから装備の底部を15mm/1sの速度で55秒間動かし、このとき、紐で固定された治具のフィルムは動かず、二つのフィルム間の摩擦係数を測定した。
【0052】
成形性の測定
前記準備した各フィルムを200×100mmの大きさでカットしてから、1個のカップ状の成形型(製造社:GWANGSHIN HI-TECH、モデル:GS-S5)に載置して0.3MPaの圧力をかけて前記フィルムをカップ状に成形し、成形の際に亀裂や破れが生じない最大深さを測定した。このとき、同じフィルム試片の10個のうち10個とも破れが生じていない場合、より深い深さを適用していき、1個でも破れが生じた場合、その直前の深さを最大高さと定義した。
【0053】
比較例1
【表2】
【0054】
比較例2
【表3】
【0055】
比較例3
【表4】
【0056】
比較例4
【表5】
【0057】
実施例1
【表6】
【0058】
実施例2
【表7】
【0059】
比較例5
【表8】
【0060】
図5A図5B図6A、及び図6Bは、前記滑剤検査後に流出したスリップ剤が凝集して形成した粒子の大きさ分析結果を示したものである。図5A及び図5Bは、前記表における実施例1のフィルムを撮像したものであり、SEM像に存在する最大大きさの凝集粒子の平均直径は39.2μmであった。図6A及び図6Bは、前記表における比較例4のフィルムをそれぞれ撮像したものである。図6Aの比較例4のSEM像に存在する最大大きさの凝集粒子の平均直径は40.9μm、図6Bの比較例4のSEM像に存在する最大大きさの凝集粒子の平均直径は97.5μmであった。
【0061】
前記結果をまとめて下表に表した。
【0062】
【表9】
【0063】
前記結果から分かるように、比較例1~4とは異なり、本開示の実施例1及び2は、表面粗さRtが13~20μm、Rzが10~15μmの範囲を満たすことにより、滑剤検査の際にシーラント層の表面に存在するスリップ剤の凝集粒子の大きさが60μm以下と減少した。また、実施例1及び2は、シーラント層の摩擦係数が0.15以上に維持され、成形性が常温(0日目)に比べて約40%アップして、スリップ剤が少量流出しながらも優れた成形性を示すことを確認することができる。
【0064】
[試験例3]
前記製造例によってフィルムを製造し、これらの、保管温度の調節によってフィルムの表面粗さRtが13~20μm、Rzが10~15μmの範囲を満たす実施例3及び4と、前記範囲を外れた比較例5~8を準備した。前記フィルムの表面粗さに応じたスリップ剤の凝集様相、摩擦係数、及び成形性を確認するために、前記試験例1及び2に記載された方法と同様な方法にて前記各フィルムの表面粗さ、滑剤検査、摩擦係数、及び成形性を測定し、各測定値を表10に表した。
【0065】
【表10】
【0066】
その結果、表面粗さRtが13~20、Rzが10~15の範囲を満たす本開示の実施例3及び4は、滑剤検査の結果でいずれもS等級を受け、0.2以上と高い摩擦係数を示した。また、前記実施例3及び4は、比較例5~8と同じ量のスリップ剤を含むにも係わらず、前記表面粗さを満たすようにスリップ剤の流出量が調節され、顕著に優れた成形性を示すことを確認することができる。
【0067】
本開示は、一実施例として、次の実施形態を提供することができる。
【0068】
[第1実施形態]
スリップ(slip)剤を含む、シーラント層;
前記シーラント層上に形成された金属層;及び
前記金属層上に形成された外層;
を含むセルパウチ用フィルムであって、
前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、1.3kgfの立方体形態の金属を外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなる黒色パウチで包んだ形態の滑剤検査装置を使用して、前記黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分の表面粗さがRt 13~20μm及びRz 10~15μmを満たす、セルパウチ用フィルム。
【0069】
[第2実施形態]
前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管した後、1.3kgfの立方体形態の金属を外観が黒色無光沢(matt)であり且つ外層がナイロンからなる黒色パウチで包んだ形態の滑剤検査装置を使用して、前記黒色パウチのおもて面を前記フィルムのシーラント層又は外層に400mm/10sの速度で擦り付けたとき、前記フィルムから流出したスリップ剤がにじみ出て前記黒色パウチに白い縞を形成した部分に存在するスリップ剤の凝集粒子のうち最大凝集粒子の平均直径が60μm以下である、第1実施形態に記載のフィルム。
【0070】
[第3実施形態]
前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管後のシーラント層の摩擦係数が0.15~0.5である、第1実施形態又は第2実施形態に記載のフィルム。
【0071】
[第4実施形態]
前記フィルムは、48~57℃の温度で30日間保管後の成形性が15~25mmであり、
ここで、前記成形性は、前記フィルムに0.3MPaの圧力をかけて1カップ成形時に破れが生じない最大深さを測定したことである、第1実施形態~第3実施形態のいずれかに記載のフィルム。
【0072】
[第5実施形態]
前記フィルムは、48~57℃の温度で保管するためのものである、第1実施形態~第4実施形態のいずれかに記載のフィルム。
【0073】
[第6実施形態]
前記フィルムは、シーラント層の総重量に対してスリップ剤を0.1~20重量%含む、第1実施形態~第5実施形態のいずれかに記載のフィルム。
【0074】
[第7実施形態]
前記スリップ剤は、ワックス系、アミド系、シロキサン、及びシリコーンのうちの1種以上を含む、第1実施形態~第6実施形態のいずれかに記載のフィルム。
【0075】
[第8実施形態]
前記金属層は、アルミニウム又はその合金、チタン又はその合金、タングステン又はその合金、モリブデン又はその合金、銅又はその合金、及びステンレス鋼からなる群より選ばれる1種以上を含む、第1実施形態~第7実施形態のいずれかに記載のフィルム。
【0076】
[第9実施形態]
前記外層は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutylene adipate terephthalate、PBAT)、ポリブチレンサクシネート(polybutylene succinate、PBS)、ポリヒドロキシアルデヒド(polyhydroxy aldehyde、PHA)、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、熱可塑性デンプン(thermoplastic starch、TPS)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリカプロラクタム(polycaprolactam、PCL)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)、エチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)、ポリビニリデンクロライド(polyvinylidene chloride、PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、及びナイロン(nylon)からなる群より選ばれる1種を含む、第1実施形態~第8実施形態のいずれかに記載のフィルム。
【0077】
[第10実施形態]
前記シーラント層は熱接着性樹脂を含む、第1実施形態~第9実施形態のいずれかに記載のフィルム。
【0078】
[第11実施形態]
第1実施形態~第10実施形態のいずれかに記載のセルパウチ用フィルムを保管するための方法であって、
前記フィルムを48~57℃の温度で保管する段階を含む、保管方法。
【0079】
[第12実施形態]
前記段階の保管期間は10日~300日である、第11実施形態に記載の保管方法。
【0080】
[第13実施形態]
前記段階における保管時の相対湿度は5%~25%である、第11実施形態又は第12実施形態に記載の保管方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B