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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016939
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】吊具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/16 20060101AFI20240201BHJP
   B66C 1/62 20060101ALI20240201BHJP
   B66C 1/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B66C1/16
B66C1/62 B
B66C1/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119246
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政数
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 功太郎
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA07
3F004EA23
3F004LA07
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、物体を傷付けることなく、安定した状態で物体を吊り下げる。
【解決手段】吊具が徐々に上昇していくと、容器WKが床面に載置された状態を維持しつつ、スリング120j がピンと張る吊り上げ直前状態になる。当該吊り上げ直前状態になると、スリング120j に張力Tが発生する。この状態から、更に吊具が上昇すると、張力Tにより、容器WKの内壁面に第1当接部133が当接し、当該当接した第1当接部133を支点にして、スリング接続部136が、回転モーメントにより回転する。こうして回転すると、次に、容器WKの外壁面に第2当接部134が当接する。これにより、容器WKの内壁面は第1当接部133に当接され、容器WKの外側面は第2当接部134に当接される。この結果、容器WKの側面は、第1把持部131及び第2把持部132により挟み込まれる態様で保持される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降される吊部と、
物体を把持する把持部と、
前記吊部と前記把持部とを連結するスリングとを備え、
前記把持部は、
前記物体の所定部分を挟み込み可能な隙間を有し、
前記吊部を上昇させて前記物体を地切するとき、前記所定部分における対向する面それぞれに当接する当接部を備える、
ことを特徴とする吊具。
【請求項2】
前記把持部は、
前記所定部分における前記対向する一方の面側から把持する第1把持部と、
前記第1把持部に取り付けられ、前記一方の面に当接可能な第1当接部と、
前記所定部分における前記対向する他方の面側から把持する第2把持部と、
前記第2把持部に取り付けられ、前記他方の面に当接可能な第2当接部と、を備え、
前記吊部を上昇させて前記スリングに張力が発生すると、前記把持部が回転し、前記第1当接部が前記一方の面に当接し、前記第2当接部が前記他方の面に当接する、
ことを特徴とする請求項1に記載の吊具。
【請求項3】
前記把持部が回転すると、前記所定部分に当接した前記第1当接部及び前記第2当接部の一方の当接部が支点となって回転し、前記第1当接部及び前記第2当接部の他方が前記所定部分に当接すると、前回回転が止まり、前記第1把持部及び前記第2把持部が前記所定部分を挟み込む、ことを特徴とする請求項2に記載の吊具。
【請求項4】
前記所定部分は、縁部であり、
前記把持部及び前記スリングの数は複数であり、
前記複数の前記把持部のそれぞれは、対称位置となる縁部を把持する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の吊具。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷役物運搬機を用いて物品を運搬する際に、荷役物運搬機に吊るされ、物品を吊り下げる吊具が使用されている。当該吊具については、吊り下げる物体の形状等に応じて、様々な技術が提案されている。
【0003】
こうした提案技術として、フックを利用してドラム缶等の容器(以下、単に「容器」とも記す)を吊り下げるものがある(特許文献1参照:以下、「従来例」と呼ぶ)。この従来例の技術では、フックは、フック本体と、当該フック本体に摺動自在に取り付けられる掴み部とを備え、フック本体の下側部が屈曲形成されている。フックを利用して容器を吊り下げる際に、ドラム缶等の容器の上端に膨出部分がある場合には、当該膨出部分をフック本体の上側部と掴み部の下端部との間で挟持し、容器の側部にフック本体の下側部を当接させることにより、当該容器を保持するようにしている。また、ドラム缶等の容器に膨出部分が無い場合には、フック本体の先端部を使って、容器を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3302006号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例の技術では、フックを利用して、膨出部分が無いドラム缶等の容器を吊り下げるときには、容器の側部に孔を開ける。そして、当該孔にフック本体の鉤状の先端部を挿入して、容器を保持している。このため、容器の側面に孔を開けたくない場合や、容器に孔を開けられない場合には、当該容器を吊り下げることができなかった。
【0006】
また、従来例の技術では、フック本体の上側部と、掴み部の下端部とを挟持可能に構成するとともに、フック本体の先端部を鉤状にする必要がある。このため、従来例の吊具は、構造が容易とは言い難かった。
【0007】
このため、簡易な構成にするとともに、物体の側面に孔を開けることなく、安定した状態で物体を吊り下げることができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、物体を傷付けることなく、安定した状態で物体を吊り下げることができる新たな吊具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、昇降される吊部と、物品を把持する把持部と、前記吊部と前記把持部とを連結するスリングとを備え、前記把持部は、前記物体の所定部分を挟み込み可能な隙間を有し、前記吊部を上昇させて前記物体を地切するとき、前記所定部分における対向する面それぞれに当接する当接部を備える、ことを特徴とする吊具である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】昇降装置に取り付けられ、物体を吊り下げる直前の本発明の一実施形態に係る吊具の外観図(その1)である。
図2図1の吊具、物体及び昇降装置の外観図(その2)である。
図3図1,2の吊部の構成を説明するための図である。
図4図1,2の把持部の構成を説明するための図(その1)である。
図5図1,2の把持部の構成を説明するための図(その2)である。
図6】物体を吊り下げる前の図4,5の把持部の状態を説明するための図である。
図7】物体を吊り下げる前の把持部の状態を誇張して説明するための図である。
図8】物体を吊り下げたときの吊具の状態を説明するための図(その1)である。
図9】物体を吊り下げたときの吊具の状態を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[構成]
図1及び図2には、昇降装置MLに取り付けら、物体を吊り下げる直前の一実施形態に係る吊具100外観図が示されている。当該吊具100を説明する座標系(X,Y,Z)は、図示の通りに定義されている。ここで、図1は、吊具100、昇降装置ML及び物体の斜視図である。また、図2は、図1に示した吊具100、昇降装置ML及び物体を-Y方向側から視た図である。
【0013】
ここで、昇降装置MLは、当該昇降装置MLの本体部内部に巻回され、巻き取り及び巻き出しが可能なチェーンを備え、当該チェーンの端部にフックが取り付けられている。このフックを、吊具100における鉛直上方部分の吊部の引掛部に引っ掛けることで、吊具100が、昇降装置MLに取り付けられるようになっている。当該昇降装置MLは、操作部を備え、作業者が操作部を操作することで、チェーンを巻き取り・巻き出しして、吊具100を昇降させることができるようになっている。当該昇降装置MLは、建屋内の所定位置に配置され、移動可能に設置されている。
【0014】
本実施形態では、物体は、有底円筒形状の容器WKである。吊具100は、容器WKの円筒の上方部分を把持して、容器WKを吊り下げる。
【0015】
図1及び図2により総合的に示されるように、吊具100は、吊部110と、4個のスリング1201,1202,1203,1204と、4個の把持部1301,1302,1303,1304とを備えている。本実施形態では、スリング及び把持部の数は、同数の 複数個を備えている。
【0016】
<吊部110の構成>
上記の吊部110の構成について、説明する。
【0017】
図3には、吊部110の外観図が示されている。図3(A)では、吊部110の+X方向側及び-Y方向側が見えている。また、図3(B)では、吊部110の-X方向側及び+Y方向側が見えている。当該吊部110は、昇降装置MLに取り付けられ、スリング1201,1202,1203,1204を取り付ける。
【0018】
図3(A),(B)に示されるように、吊部110は、引掛部111と、2個の折り曲げ板状部材112,113と、スリング取付部1151,1152,1153,1154とを備えている。
【0019】
上記の引掛部111は、YZ平面と平行な輪状の部材であり、折り曲げ板状部材112の+Z方向側の面に取り付けられる。当該引掛部111に、昇降装置MLのチェーンの端部に取り付けられたフックを引っ掛けることで、吊具100が、昇降装置MLに取り付けられる。
【0020】
上記の折り曲げ板状部材112は、+X方向側及び-X方向側の部分を、Y方向に平行な折り曲げ線に沿って、-Z方向に折り曲げることで形成される。上記の折り曲げ板状部材113は、+Y方向側及び-Y方向側の部分を、X方向に平行な折り曲げ線に沿って、-Z方向に折り曲げることで形成される。折り曲げ板状部材113は、折り曲げ板状部材112の-Z方向側に配置され、当該折り曲げ板状部材112とネジ止め固定される。
【0021】
そして、折り曲げ板状部材112の+Y方向側の折り曲げ部分には、スリング取付部1152が取り付けられ、折り曲げ板状部材112の-Y方向側の折り曲げ部分には、スリング取付部1154が取り付けられる。また、折り曲げ板状部材113の+X方向側の折り曲げ部分には、スリング取付部1153が取り付けられ、折り曲げ板状部材113の-X方向側の折り曲げ部分には、スリング取付部1151が取り付けられる。
【0022】
上記のスリング取付部115j(j=1,…,4)は、円柱状の部材である。スリング取付部1151は、折り曲げ板状部材113に取り付けられ、スリング1201を取り付け可能となっている。スリング取付部1152は、折り曲げ板状部材112に取り付けられ、スリング1202を取り付け可能となっている。また、スリング取付部1153は、折り曲げ板状部材113に取り付けられ、スリング1203を取り付け可能となっている。スリング取付部1154は、折り曲げ板状部材112に取り付けられ、スリング1204を取り付け可能となっている。
【0023】
<スリング1201,1202,1203,1204
図1及び図2に戻り、上記のスリング1201,1202,1203,1204について、説明する。スリング120j(j=1,…,4)は、吊部110と把持部130jとを連結する。スリング120jは、本実施形態では、線維吊りベルトであり、本体部と、両端にアイ部とを有している。スリング120jの一方側の端部は、吊部110のスリング取付部115j に取り付けられ、スリング120jの他方側の端部は、把持部130jに取り付けられる。
【0024】
<把持部1301,1302,1303,1304の構成>
上記の把持部1301,1302,1303,1304の構成について、説明する。把持部1301は、吊具100全体の-X方向側に配置され、把持部1302は、吊具100全体の+Y方向側に配置される。また、把持部1303は、吊具100全体の+X方向側に配置され、把持部1304は、吊具100全体の-Y方向側に配置される。
【0025】
本実施形態では、把持部1301,1302,1303,1304のそれぞれは、有底円筒形状である容器の+Z方向側(上方)の縁部に、容器WKの中心軸を中心にして、90度間隔で点対称の対称位置に配置されている。ここで、把持部1301は、容器WKの-X方向側の縁部に配置され、把持部1302は、容器WKの+Y方向側の縁部に配置されている。また、把持部1303は、容器WKの+X方向側の縁部に配置され、把持部1304は、容器WKの-Y方向側の縁部に配置されている。
【0026】
図4及び図5には、把持部130j(j=1,…,4)の代表として、把持部1301の外観図が示されている。本実施形態では、把持部1302,1303,1304についても、把持部1301と同様に構成されている。図4(A)は、把持部1301の斜視図であり、図4(B)は、図4(A)に示した把持部1301を-Y方向側から視た図である。また、図5(A)は、図4(A)に示した把持部1301を+Z方向側から視た図であり、図5(B)は、図4(A)に示した把持部1301を-X方向側から視た図である。
【0027】
図4及び図5により総合的に示されるように、把持部1301は、第1把持部131と、第2把持部132と、第1当接部133と、第2当接部134とを備えている。また、把持部1301は、接続用部材135と、スリング接続部136とを備えている。
【0028】
上記の第1把持部131は、本実施形態では、Z方向に沿って延びる直方体形状の部材である。第1把持部131におけるZ方向の長さは、容器WKの深さより短くしている。第1把持部131における-Z方向側の端部の-X方向側の面に、第1当接部133が取り付けられている。
【0029】
上記の第1当接部133は、X方向に所定の厚みを持ったYZ平面と平行な板状の弾性部材である。当該第1当接部133の+X方向側の面は、第1把持部131に取り付けられる。第1当接部133の-X方向側の面は、容器WKの把持時に、容器WKの内壁面に当接するようになっている。
【0030】
上記の第2把持部132は、本実施形態では、Z方向に沿って延びる直方体形状の部材である。第2把持部132におけるZ方向の長さは、第1把持部131のZ方向の長さより短くなっている。第2把持部132における-Z方向側の端部の+X方向側の面に、第2当接部134が取り付けられている。
【0031】
上記の第2当接部134は、X方向に所定の厚みを持ったYZ平面と平行な板状の弾性部材である。当該第2当接部134の-X方向側の面は、第2把持部132に取り付けられる。第2当接部134の+X方向側の面は、容器WKの把持時に、容器WKの外壁面に当接するようになっている。
【0032】
ここで、容器WKの把持に際し、容器WKの上方の縁部に、第1把持部131と第2把持部132との間を挟み込めるようになっている。より詳しくは、第1当接部133と第2当接部134との間の隙間で、容器WKの縁部を挟み込めるようになっている。このように、把持部1301は、容器WKの縁部(所定部分)を挟み込める隙間を有している。
【0033】
第1把持部131のZ方向の長さ、第2把持部132のZ方向の長さ、第1当接部133のX方向の厚さ、第2当接部134のX方向の厚さ、X方向に沿った第1当接部133と第2当接部134との隙間である間隔は、容器WKの厚さや深さ等を考慮して、実験、シミュレーション等に基づいて予め定められる。本実施形態では、X方向に沿った第1当接部133と第2当接部134との間隔は、容器WKの厚さよりわずかに広く、容器WKの上方の縁部に、第1当接部133と第2当接部134との間を円滑に挿入することができるようになっている。
【0034】
上記の接続用部材135は、本実施形態では、X方向に沿って延びる直方体形状の部材である。接続用部材135の+X方向側の面には、第1把持部131がネジ止め固定される。また、接続用部材135の-Z方向側の面の+X方向側寄りには、第2把持部132が取付金具FITにより固定される。さらに、接続用部材135の+Z方向側の-X方向側の端部には、スリング接続部136が固定されている。
【0035】
上記のスリング接続部136は、折り曲げ部材137と、スリング取付部138とを備えている。上記の折り曲げ部材137は、+Y方向側及び-Y方向側の部分を、X方向に平行な折り曲げ線に沿って、+Z方向に折り曲げることで形成される。折り曲げ部材137は、接続用部材135の+Z方向側に配置され、当該接続用部材135とネジ止め固定される。
【0036】
上記のスリング取付部138は、円柱状の部材である。スリング取付部138は、折り曲げ部材137に取り付けられ、スリング1201を取り付け可能となっている。
【0037】
[動作]
以上のようにして構成された吊具100の動作の一例について、説明する。
【0038】
<容器WKの取り付け動作、及び、容器WKの吊り下げ動作>
前提として、吊具100は、昇降装置MLに取り付けられて、吊支されているものとする。また、当初においては、容器WKは床面に載置されているものとする。
【0039】
こうした状態で、まず、作業者が、昇降装置MLの操作部を操作して吊具100の高さ位置を調整して、把持部1301,1302,1303,1304を容器WKの+Z方向側の縁部に配置する。かかる配置に際して、把持部1301は、容器WKの-X方向側の縁部に配置し、把持部1302は、容器WKの+Y方向側の縁部に配置する。また、把持部1303は、容器WKの+X方向側の縁部に配置し、把持部1304は、容器WKの-Y方向側の縁部に配置する。このとき、スリング取付部115j(j=1,…,4)は引っ張られていないものとする。かかる配置に際し、第1当接部133と第2当接部134との間の隙間で、容器WKの縁部を挟み込む。
【0040】
次いで、作業者が、昇降装置MLの操作部を操作して、吊具100を+Z方向に移動(上昇)させる。吊具100が徐々に上昇していくと、容器WKが床面に載置された状態を維持しつつ、スリング120j(j=1,…,4)がピンと張る状態になる(以下、「吊り上げ直前状態」とも記す)(図1及び図2を参照)。
【0041】
図6(A)には、吊り上げ直前状態における把持部1301が示されている。また、図7(A)には、図6(A)の状態を誇張した図が示されている。ここで、図6(A)及び図7(A)においては、把持部1301の動作を見られるようにするため、容器WKは、容器WKの中心軸を通るXZ平面で切断したときの断面図にしている。なお、把持部1301は、XZ平面図である。
【0042】
上述したように、把持部1301,1302,1303,1304のそれぞれは、同様に構成され、有底円筒形状である容器の上方の縁部に、容器WKの中心軸を中心にして、90度間隔で点対称に配置されている。このため、把持部130j(j=1,…,4)の代表として、把持部1301の動きを説明する。
【0043】
吊り上げ直前状態になると、スリング1201に、図6(A)及び図7(A)に示した矢印の方向に張力Tが発生する。図6(A)及び図7(A)に示される状態から、更に吊具100が上昇すると、張力Tにより、容器WKの内壁面に第1当接部133が当接し、当該当接した第1当接部133を支点にして、スリング接続部136が、回転モーメントにより、紙面で時計回り方向に回転する。
【0044】
こうして回転すると、次に、容器WKの外壁面に第2当接部134が当接する。これにより、容器WKの内壁面は第1当接部133に当接され、容器WKの外側面は第2当接部134に当接される。この結果、容器WKの側面は、第1把持部131及び第2把持部132により挟み込まれる態様で保持される(以下、この状態を「容器把持状態」とも記す)。図6(B)には、容器把持状態における把持部1301が示されている。また、図7(B)には、図6(B)の状態を誇張した図が示されている。
【0045】
図6(B)及び図7(B)に示される容器把持状態から、更に吊具100が上昇して、容器WKを地切すると、第1当接部133と容器WKの内壁面との間の摩擦力、及び、第2当接部134と容器WKの外壁面の摩擦力により、容器WKは吊具100に把持され、当該容器WKは吊り下げられる。図8及び図9には、容器WKを吊り下げた吊具100の外観図が示されている。ここで、図8は、吊具100、昇降装置ML及び物体の斜視図である。また、図9は、図8に示した吊具100、昇降装置ML及び物体を-Y方向側から視た図である。
【0046】
かかる容器WKの取り付け動作、及び、容器WKの吊り下げ動作の間に、作業者は、容器WKへの把持部130jの配置操作及び昇降装置MLにおける操作部の操作を行っただけである。このため、作業者の手間を低減して、吊具100に容器WKを取り付け、安定した状態で容器WKを吊り下げることができる。
【0047】
<容器WKの取り外し動作>
前提として、吊具100に容器WKが取り付けられ、図8及び図9に示される状態になっているものとする。吊具100からの容器WKの取り外しに際して、まず、作業者が昇降装置MLの操作部を操作して、吊具100を-Z方向側に移動(下降)させて、容器WKを所望の場所に乗せ置く(図1及び図2を参照)。この状態では、スリング1201は、ピンと張っていて張力Tが発生している。
【0048】
かかる状態から、更に吊具100が下降し容器WKが接地すると、スリング取付部115jは引っ張られなくなる。この状態になると、作業者は、容器WKの縁部から、把持部130jを取り外す。
【0049】
かかる容器WKの取り外し動作の間に、作業者は、昇降装置MLにおける操作部の操作及び把持部130jの取り外し操作を行っただけである。このため、作業者の手間を低減して、吊具100から容器WKを取り外すことができる。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態では、吊具100が徐々に上昇していくと、容器WKが床面に載置された状態を維持しつつ、スリング120j(j=1,…,4)がピンと張る吊り上げ直前状態になる。当該吊り上げ直前状態になると、スリング120j に張力Tが発生する。この状態から、更に吊具100が上昇すると、張力Tにより、容器WKの内壁面に第1当接部133が当接し、当該当接した第1当接部133を支点にして、スリング接続部136が、回転モーメントにより回転する。こうして回転すると、次に、容器WKの外壁面に第2当接部134が当接する。これにより、容器WKの内壁面は第1当接部133に当接され、容器WKの外側面は第2当接部134に当接される。この結果、容器WKの側面は、第1把持部131及び第2把持部132により挟み込まれる態様で保持される。
【0051】
このため、本実施形態では、吊具100を簡易な構成にするとともに、物体の側面に孔を開けることなく、安定した状態で物体を吊り下げることができる。
【0052】
また、本実施形態では、把持部1301,1302,1303,1304を容器WKの縁部に置くようにしている。このため、異なるサイズの容器に対応することができる。
【0053】
また、本実施形態では、把持部1301,1302,1303,1304のそれぞれは、有底円筒形状である容器WKの上方(+Z方向側)の縁部に、等間隔で配置されている。このため、安定した状態で容器を吊り下げることができる。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、簡易な構成で、物体を傷付けることなく、安定した状態で物体を吊り下げることができる。
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0055】
上記の実施形態では、吊具は、4個のスリングと、4個の把持部とを備えるようにした。これに対し、スリング及び把持部の数は、1個以上3個以下であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、容器の把持に際して、スリングに発生した張力により、容器の内壁面に当接した第1当接部を支点にして、スリング接続部が回転し、第2当接部が容器の外側壁に当接して、容器を把持することを説明したが、容器の外壁面に当接した第2当接部を支点にして、スリング接続部が回転し、第1当接部が容器の内側壁に当接して、容器を把持することもある。
【0057】
また、上記の実施形態では、スリングを線維吊りベルトとしたが、スリングをワイヤロープやチェーン、リンクにしてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、吊部は、引掛部と、2個の折り曲げ板状部材と、4個のスリング取付部とを備えるようにした。これに対し、吊部の構成として、例えば、引掛部と、1個の平板状部材とを備えるようにして、平板状部材の+Z方向側の面に引掛部を取り付け、当該平板状部材の端側にスリングを通す開口を形成するようにしてもよい。当該開口の数は、スリング及び把持部の数と同じにすればよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、把持部は、第1把持部と、第2把持部と、接続用部材と、第1当接部と、第2当接部とを備えるようにした。これに対し、第1把持部、第2把持部及び接続用部材を一体成形したものを採用してもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、第1当接部及び第2当接部を板状の弾性部材にしたが、例えば、ゴム足にしてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、ドラム缶を吊り下げたが、挟み込み可能な部分を有する物体であれば、他の形状の物体であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 … 吊具
110 … 吊部
111 … 引掛部
112,113 … 折り曲げ板状部材
115j(j=1,…,4) … スリング取付部
120j … スリング
130j … 把持部
131 … 第1把持部
132 … 第2把持部
133 … 第1当接部(当接部の一部)
134 … 第2当接部(当接部の一部)
135 … 接続用部材
136 … スリング接続部
137 … 折り曲げ部材
138 … スリング取付部
FIT … 取付金具
ML … 昇降装置
WK … 容器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9