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特開2024-169401スロットダイコーティング装置及びそのコーティング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169401
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】スロットダイコーティング装置及びそのコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20241128BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241128BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
B05C11/00
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D7/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084084
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】112119056
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6-1, Ziqiang 7th Rd., Zhongli Dist., Taoyuan City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】林嘉民
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ナン▼
(72)【発明者】
【氏名】黄佳▲キ▼
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC77
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC93
4D075AC99
4D075DA23
4D075DA36
4D075EA14
4F041AA05
4F041AA12
4F041AA16
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA22
4F041BA38
4F041CA03
4F041CA18
4F042AA06
4F042AA22
4F042AA27
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB02
4F042DF19
4F042DH09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、スロットダイコーティング装置、及び、そのコーティング方法を提供する。
【解決手段】スロットダイコーティング装置1の流路は、シム群によって第1の流路及び第2の流路に分割されている。第1の流路は、コーティングノズルの中間部分からコーティングするために利用され、第2の流路は、コーティングノズルの2つの側部からコーティングするために利用される。スロットダイコーティング装置の2つの側部におけるノズルリップは、コーティング中に基材72の障害物73に当たることを防止するために、基材に近づくように延在している。また、スロットダイコーティング装置のコーティングの高さは、最適化されたコーティングを達成するために制御可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にコーティングするように適合されたスロットダイコーティング装置であって、
ダイ本体であって、流路、及び、前記流路からスラリーを受け取ってコーティングのために前記スラリーを分配するコーティングノズルを有する、ダイ本体と、
前記ダイ本体内に配設されており、前記流路を第1の流路及び第2の流路に分割するシム群であって、前記第1の流路を通る前記スラリーは、前記コーティングノズルの中間部分から分配され、前記第2の流路を通る前記スラリーは、前記コーティングノズルの2つの側部から分配される、シム群と、
を備え、
前記シム群は、前記第2の流路に対応するとともに、前記ダイ本体から外方に延在及び突出している2つのダイリップを含み、前記第1の流路の第1の出口と前記基材との間の距離は、前記第2の流路の第2の出口と前記基材との間の距離よりも大きい、スロットダイコーティング装置。
【請求項2】
前記ダイ本体は、第1のスラリー貯蔵スロットを備えた上側モールドと、第2のスラリー貯蔵スロットを備えた下側モールドとを含む、請求項1に記載のスロットダイコーティング装置。
【請求項3】
前記上側モールドは、上側入口を含み、前記下側モールドは、下側入口を含み、前記スラリーは、前記第1のスラリー貯蔵スロット及び前記第2のスラリー貯蔵スロット内でそれぞれ案内される、請求項2に記載のスロットダイコーティング装置。
【請求項4】
前記シム群は、前記第1のスラリー貯蔵スロット及び前記第2のスラリー貯蔵スロットを完全に分離するために、中央シムプレートを含む、請求項2に記載のスロットダイコーティング装置。
【請求項5】
前記シム群は、ノッチを有するとともに、前記中央シムプレート上に平坦に配設された上側シムプレートを更に含み、前記第1のスラリー貯蔵スロットからの前記スラリーは、前記コーティングノズルの前記中間部分から前記ノッチを介して分配される、請求項4に記載のスロットダイコーティング装置。
【請求項6】
前記シム群は、第1の下側シムプレート及び第2の下側シムプレートを更に含み、前記第1の下側シムプレートは、前記第2のスラリー貯蔵スロットの部分を遮蔽し、前記第2のスラリー貯蔵スロットの2つの側部に対応する2つの貫通孔を有し、前記第2の下側シムプレートは、前記貫通孔に対応する2つの流路スロットを有し、前記第2のスラリー貯蔵スロットからの前記スラリーは、前記コーティングノズルの両側部から前記貫通孔及び前記流路スロットを介して分配される、請求項4に記載のスロットダイコーティング装置。
【請求項7】
前記基材の障害物の、前記スロットダイコーティング装置に対する相対位置を検出し、前記第1の流路の前記第1の出口と前記基材との間の前記距離、及び、前記第2の流路の前記第2の出口と前記基材との間の前記距離を調整するセンサを更に備える、請求項1に記載のスロットダイコーティング装置。
【請求項8】
前記センサは、前記障害物の前記相対位置を検出し、前記スラリーを露出させるために、前記コーティングノズルの前記中間部分又は前記両側部を決定する、請求項7に記載のスロットダイコーティング装置。
【請求項9】
スロットダイコーティング方法であって、
障害物を伴う基材、及び、スロットダイコーティング装置を提供するステップであって、前記スロットダイコーティング装置は、
ダイ本体であって、流路、及び、前記流路からスラリーを受け取ってコーティングのために前記スラリーを分配するコーティングノズルを有する、ダイ本体と、
前記ダイ本体内に配設されており、前記流路を第1の流路及び第2の流路に分割するシム群であって、前記第1の流路を通る前記スラリーは、前記コーティングノズルの中間部分から分配され、前記第2の流路を通る前記スラリーは、前記コーティングノズルの2つの側部から分配される、シム群と、
を備え、
前記シム群は、前記第2の流路に対応するとともに、前記ダイ本体から外方に延在及び突出している2つのダイリップを含み、前記第1の流路の第1の出口と前記基材との間の距離は、前記第2の流路の第2の出口と前記基材との間の距離よりも大きい、提供するステップと、
前記スラリーを、前記第1の出口から、前記基材の前記障害物の前方に分配し、第1の横方向側部を形成するステップと、
前記第1の出口からの前記分配を閉鎖するとともに、前記スロットダイコーティング装置を前記基材から遠く離して移動させ、前記スロットダイコーティング装置が前記障害物に衝突することを防止するステップと、
前記スラリーを、前記第2の出口から前記基材の前記障害物の両側部上に分配し、前記基材上の2つの長尺側部を形成するステップと、
前記第2の出口からの前記分配を閉鎖するとともに、前記スロットダイコーティング装置を、前記基材に対して元の高さまで下方に移動させるステップと、
前記スラリーを、前記第1の出口から、前記基材の前記障害物の後方に分配し、第2の横方向側部を形成するステップと、
を含む、スロットダイコーティング方法。
【請求項10】
前記障害物を伴う前記基材は、ローラ又はコンベヤによって運搬され、前記スロットダイコーティング装置に対して単一の軸に沿ってのみ移動する、請求項9に記載のスロットダイコーティング方法。
【請求項11】
前記スロットダイコーティング装置は、前記障害物を伴う前記基材の表面に対して垂直な方向にのみ移動する、請求項10に記載のスロットダイコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイコーティング装置に関し、特に、2つの流路、及び、異なる高さを有する2つの出口を備えたダイコーティング装置、並びに、関連するコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングすべき基材上にコーティングするために、スロットダイコーティングのスロットノズルを通してスラリーを分配するため、スロットコーティングヘッドが利用される。スロットノズルは、そのより広い幅に起因して、広範囲のコーティングに非常に適している。スロットノズルは、連続的なコーティングを達成するために、ローラ又はコンベヤとともに使用できる。
【0003】
しかし、半導体構成要素などの構成要素が、基材上に存在する場合、基材上の構成要素は、スロットコーティングプロセス中に三次元障害物を形成する。例えば、構成要素の周りでフレーム形コーティングが行われる場合、障害物の存在に起因して、フレーム形コーティングを、単一の1つのプロセスで完了できない。しかし、スロットコーティングが、依然として、使用される効率的なプロセスであると考えられる。したがって、従来の方法は、まず、フレームの一対の対応する2つの側部をコーティングし、次いで、基材を90度回転させ、2つの相対する側部の別のセットをコーティングする。このように、全体的なプロセスステップは、複雑かつ時間がかかるものになり、連続的な大量生産を達成することも困難である。
【0004】
更に、基材上の構成要素の厚さが比較的大きい場合、コーティングヘッドが構成要素を通過するときに、底部のスロットノズルが構成要素と衝突し、構成要素の表面を引っかく可能性がある。したがって、この場合、フレーム形コーティングは、4つの側部の各々に対してそれぞれ行われなければならない。全体的なプロセスの複雑さ及び時間コストが大幅に高まる。
【0005】
したがって、本発明は、上述した問題を軽減するか又はなくすために、スロットダイコーティング装置及びそのコーティング方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新たなスロットダイコーティング装置及びそのコーティング方法を提供することであり、これは、シム群を利用することによって、スロットコーティングヘッドデバイスの構造を大幅に変更することなく、障害物を伴う基材上にフレーム形コーティングを形成するために単一の1つのプロセスを達成できる。したがって、プロセスの複雑さ及び製造コストが大幅に低減される。
【0007】
また、本発明の別の目的は、スロットダイコーティング装置及びそのコーティング方法を提供することである。スロットダイコーティング装置の流路は、フレーム形コーティングの横方向側部及び長尺側部をそれぞれコーティングするために、第1の流路及び第2の流路に分割されている。したがって、構成要素の周りのフレーム形コーティングが、単一の1つのプロセスを介して単一のスロットダイコーティング装置によって達成される。
【0008】
また、本発明の別の目的は、スロットダイコーティング装置及びそのコーティング方法を提供することである。シム群は、2つの側部により低いノズルリップを、及び、ダイ本体の中間部分により高いノズルリップを形成する。また、スロットダイコーティング装置の高さは、スロットダイコーティング装置と基材上の構成要素との間の衝突を回避するように調整可能であり、コーティング品質が最適化される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したものを実施するために、本発明は、ダイ本体及びシム群を含むスロットダイコーティング装置を開示する。ダイ本体は、流路、及び、流路からスラリーを受け取ってコーティングのためにスラリーを分配するコーティングノズルを有する。シム群は、ダイ本体内に配設されており、流路を第1の流路及び第2の流路に分割する。第1の流路を通るスラリーは、コーティングノズルの中間部分から分配され、第2の流路を通るスラリーは、コーティングノズルの2つの側部から分配される。シム群は、第2の流路に対応するとともに、ダイ本体から外方に延在及び突出している2つのダイリップを含む。第1の流路の第1の出口と基材との間の距離は、第2の流路の第2の出口と基材との間の距離よりも大きい。スラリーを、第1の流路から基材の障害物の前方及び後方に分配して横方向側部を形成し、スラリーを、第2の流路から基材の障害物の両側部に分配し、基材上に長尺側部を形成するように制御される。したがって、構成要素の周りのフレーム形コーティングが、単一の1つのプロセスを介して達成される。スロットダイコーティング装置と基材上の構成要素との間の衝突が回避される。
【0010】
本発明は、スロットダイコーティング方法であって、
障害物を伴う基材、及び、スロットダイコーティング装置を提供するステップであって、スロットダイコーティング装置は、
ダイ本体であって、流路、及び、流路からスラリーを受け取ってコーティングのためにスラリーを分配するコーティングノズルを有する、ダイ本体と、
ダイ本体内に配設されており、流路を第1の流路及び第2の流路に分割するシム群であって、第1の流路を通るスラリーは、コーティングノズルの中間部分から分配され、第2の流路を通るスラリーは、コーティングノズルの2つの側部から分配される、シム群と、
を備え、
シム群は、第2の流路に対応するとともに、ダイ本体から外方に延在及び突出している2つのダイリップを含み、第1の流路の第1の出口と基材との間の距離は、第2の流路の第2の出口と基材との間の距離よりも大きい、提供するステップと、
スラリーを、第1の出口から、基材の障害物の前方に分配し、第1の横方向側部を形成するステップと、
第1の出口からの分配を閉鎖するとともに、スロットダイコーティング装置を基材から遠く離して移動させ、スロットダイコーティング装置が障害物に衝突することを防止するステップと、
スラリーを、第2の出口から基材の障害物の両側部上に分配し、基材上の2つの長尺側部を形成するステップと、
第2の出口からの分配を閉鎖するとともに、スロットダイコーティング装置を、基材に対して元の高さまで下方に移動させるステップと、
スラリーを、第1の出口から、基材の障害物の後方に分配し、第2の横方向側部を形成するステップと、
を含む、スロットダイコーティング方法を更に開示する。
【0011】
本発明の適用可能性の更なる範囲は、本明細書で以下に与えられる詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正がこの詳細な説明から当業者には明らかとなるため、専ら例示として与えられていることを理解されたい。
【0012】
本発明は、本明細書で以下に専ら例示として与えられ、したがって本発明を限定するものではない詳細な説明からより十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のスロットダイコーティング装置の実施形態の概略図である。
図2】本発明のスロットダイコーティング装置の実施形態の分解図である。
図3】コーティング状態を示す、本発明のスロットダイコーティング装置の実施形態の概略図である。
図4A】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図4B】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図4C】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図4D】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図5A】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図5B】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図6A】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図6B】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図7A】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図7B】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図8A】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
図8B】本発明のスロットダイコーティング方法の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、特定の実施形態に関して、かつある特定の図面を参照して説明されるが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されないものとする。説明される図面は、専ら概略的であり、非限定的である。図面において、要素のいくつかのサイズは、例示目的で誇張され、縮尺通りではない場合がある。
【0015】
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、包括的な発明の概念を限定することを意図しない。本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈によって別途明記されない限り、複数形も含むことが意図される。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書において定義されているような用語は、関連する分野の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書においてそのように明示的に定義されない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが更に理解されるであろう。
【0016】
本明細書全体を通して、「1つの実施形態」又は「一実施形態」への言及は、その実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通した様々な箇所における「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及するものではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、本開示から当業者には明らかであるように、1つ又は複数の実施形態において任意の適した方法で組み合わせられ得る。
【0017】
本発明の説明において、「設置」、「接続された」及び「配設された」という用語は、広範に理解されるべきであり、固定されているか又は着脱可能であってもよく、例えば、機械的又は電気的であってもよく、2つの構成要素間の内部接続部であり得る中間の媒体を通じて、直接的又は間接的に接続され得ることに留意されたい。本発明における上記の用語の特定の意味は、当業者によって特定の状況において理解できる。
【0018】
本発明は、スロットダイコーティング装置を開示する。図1図2を参照すると、スロットダイコーティング装置1は、ダイ本体、及び、ダイ本体の底部に位置付けられたコーティングノズルを含む。スラリーは、ポンプなどの外部機器を介してダイ本体内に駆動され、次いで、コーティングノズルを通して分配される。ポンプなどの外部機器の詳細は、従来のスロットコーティングヘッドのものと同じである。したがって、外部ポンプは、図では無視されている。図において、本発明の特徴であるスロットダイコーティング装置1が主に示されている。
【0019】
図1図2に示されているように、ダイ本体は、台形の断面を有する上側モールド11、及び、台形の断面を有する下側モールド12から構成されている。上側モールド11は、第1のスラリー貯蔵スロット112を含み、下側モールド12は、第2のスラリー貯蔵スロット122を含む。また、上側モールド11及び下側モールド12は、上側入口111及び下側入口121を含む。上側入口111は、第1のスラリー貯蔵スロット112に接続されており、下側入口121は、第2のスラリー貯蔵スロット122に接続されている。従来の構造では、上側モールド11及び下側モールド12は、互いに直接的に結合されている。第1のスラリー貯蔵スロット112及び第2のスラリー貯蔵スロット122は、単一の流路を形成するように組み立てられる。2つの台形の傾斜した平面において端部に形成されるコーティングノズルは、コーティングのためのスラリーを排出する。しかし、本発明では、第1のスラリー貯蔵スロット112及び第2のスラリー貯蔵スロット122を完全に分離するために、シム群が上側モールド11と下側モールド12との間に配設されて挟まれている。したがって、互いに接続されていない第1の流路及び第2の流路が形成される。
【0020】
シム群は、上側モールド11と下側モールド12との間に挟まれており、中央シムプレート14と、上側シムプレート13と、第1の下側シムプレート16と、第2の下側シムプレート15とを含む。中央シムプレート14は、U字形であり、中央シムプレート本体141と、中央シムプレート本体141の2つの側部の端部分に位置付けられており、かつコーティングノズルに向かって延在する2つの延長部分142とを含む。中央シムプレート本体141は、第1のスラリー貯蔵スロット112及び第2のスラリー貯蔵スロット122に対応する位置にいずれの孔又はスロットも有しない。したがって、第1のスラリー貯蔵スロット112及び第2のスラリー貯蔵スロット122は、互いに接続されていない第1の流路及び第2の流路を形成するために完全に分離されている。中央シムプレート本体141の2つの延長部分142によって形成された第1のノッチ143の幅が、T1である。第1のノッチ143は、コーティングノズルと、すなわち、第1のモールド11及び第2のモールド12の2つの台形の傾斜した平面における端部において面一である。上側シムプレート13は、U字形であり、上側シムプレート本体132と、上側シムプレート本体132の2つの側縁部からコーティングノズルに向かって延在する2つの延長部分133とを含む。したがって、第2のノッチ131が中間部分に形成される。第2のノッチ131の幅は、T2であり、T2>T1である。上側シムプレート13は、中央シムプレート14の一方の側に平坦に配設されている。第2のノッチ131は、第1のスラリー貯蔵スロット112のほとんどの部分に接続されており、第1のスラリー貯蔵スロット112の2つの縁部のみが遮蔽されている。第1のスラリー貯蔵スロット112からのスラリーは、中央シムプレート14によってブロックされ、第2のノッチ131から露出して第1の流路を形成し、これが、コーティングノズルの中間部分からスラリーを分配する。
【0021】
第1の下側シムプレート16及び第2の下側シムプレート15は、中央シムプレート14と下側モールド12との間に連続的に挟まれている。第1の下側シムプレート16は、下側モールド12の第2のスラリー貯蔵スロット122の部分を遮蔽し、第2のスラリー貯蔵スロット122の2つの側部に対応する2つの貫通孔161を有する。第2の下側シムプレート15は、貫通孔161に対応する2つの流路スロット151を有する。第2のスラリー貯蔵スロット122からのスラリーは、貫通孔161及び流路スロット151を介してコーティングノズルの両側部から分配される。第1の下側シムプレート16及び第2の下側シムプレート15もU字形である。第1の下側シムプレート16は、第1の下側シムプレート本体163と、第1の下側シムプレート本体163の2つの側部の端部分に位置付けられており、かつコーティングノズルに向かって延在する2つの延長部分164とを含む。第3のノッチ162が、2つの延長部分164の間に形成されている。第2の下側シムプレート15は、第2の下側シムプレート本体153と、第2の下側シムプレート本体153の2つの側部の端部分に位置付けられており、かつコーティングノズルに向かって延在する2つの延長部分154とを含む。第4のノッチ152が、2つの延長部分154の間に形成されている。第3のノッチ162の幅は、T3であり、第4のノッチ152の幅は、T4である。幅T3及びT4は、第1のノッチ143の幅T1に実質的に等しい。したがって、第2の下側シムプレート15の流路スロット151は、第1の下側シムプレート16と中央シムプレート14との間に挟まれており、第2の流路からの分配の安定性を維持する。
【0022】
中央シムプレート14の分離によって、第1のスラリー貯蔵スロット112及び第2のスラリー貯蔵スロット122によってそれぞれ形成される第1の流路及び第2の流路は、互いに接続することなく完全に分離されている。したがって、上側入口111又は下側入口121に入るスラリーを決定することによって、流路のうちの一方、すなわち第1の流路又は第2の流路からのスラリーの分配が、制御される。スラリーがコーティングノズルの中間部分、すなわち第1の流路から分配されるか、又は2つの側部、すなわち第2の流路から分配されるかは、選択可能又は調整可能である。したがって、長尺方向及び横方向の双方におけるコーティングが、単一の1つのコーティングヘッドの単一の1つのプロセスを用いてフレーム形コーティングを達成するように行われる。換言すると、コーティングされる物体は、旋回又は他の動きを行うことなく一方向にのみ駆動されるように維持され、本発明のスロットダイコーティング装置1を通してフレーム形コーティングを達成できる。より詳細な説明が以下に提示される。
【0023】
図3を参照すると、本発明のスロットダイコーティング装置1は、障害物73の周りにフレーム形コーティングを形成するように、障害物73を伴う基材72上でのコーティングに適合されている。障害物73は、基材72上に配設された半導体チップ、又は、基材72の表面から突出した任意の他の構成要素であり得る。フレームは、障害物73の前方端部及び後方端部に近い横方向側部である第1の横方向側部31及び第2の横方向側部33と、障害物73の2つの側部に近い長尺側部である第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322とを含む。図に示されるように、基材72がより薄いか又は可撓性である場合、ローラ71を利用して、基材72を駆動し、スロットダイコーティング装置1に対して移動させることができる。また、スラリーは、基材72の表面をコーティングするようにスロットダイコーティング装置1によって分配される。しかし、ローラ71は、専ら例示のためであり、本発明が、専らローラ71を使用して基材72をスロットダイコーティング装置1に対して移動させ、基材72の表面をコーティングできることに限定されない。コンベヤ又は任意の他の手段などの他の方法を使用できる。その上、フレームの完全性のために、第1の横方向側部31及び第2の横方向側部33は、第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322に接続しなければならない。したがって、上側シムプレート13の第2のノッチ131の幅T2は、第2の下側シムプレート15の流路スロット151の部分に延在して重ならなければならない。流路スロット151は、第2のノッチ131の2つの端部にそれぞれ位置付けられている。流路スロット151は、第2のノッチ131と部分的に重なっている。図1図2を参照されたい。換言すると、第2のノッチ131の幅は、T2である。2つの流路スロット151の内側側壁間の距離は、T6である。障害物73の横方向側部の長さは、T5である。これらの大きさの関係は、T2>T6>T5である。
【0024】
その上、障害物73は、フレームをコーティングする前に基材72の表面上に予め形成されている構成要素である。構成要素は、ある特定の高さを有することに起因して、いわゆる障害物73である。構成要素のタイプは限定されない。障害物73の両側部の第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322をコーティングするとき、スロットダイコーティング装置1は、単一の1つのコーティングプロセスにおいて障害物73を通過する。障害物73がある特定の高さを有することが考慮され、スロットダイコーティング装置1は、構成要素の表面を引っかくことを防止するために、第1の横方向側部31及び第2の横方向側部33をコーティングすることと比較して、第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322をコーティングする間に、基材72の表面から遠く離れるように移動するよう制御される。したがって、第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322をコーティングするために使用される第2の出口22は、より良好なコーティングを達成するために、基材72により近くなければならない。図1図2を参照すると、本発明では、第2の出口22を形成するために使用されるシム群の2つの側部は、下方に延在する。中央シムプレート14、上側シムプレート13、第1の下側シムプレート16及び第2の下側シムプレート15は、第2の流路の流路スロット151に対応した、かつ上側モールド11及び下側モールド12の底部の外側に延在した、第1のダイリップ101及び第2のダイリップ102を形成している。したがって、第2の出口22は、第1のダイリップ101及び第2のダイリップ102まで延在する。第2のスラリー貯蔵スロット122からのスラリーは、第2の出口22から分配するために、第1の下側シムプレート16の貫通孔161、及び、中央シムプレート14によってブロックされる第2の下側シムプレート15の流路スロット151を通過する。中間部分における第1の流路の第1の出口21は、第2の出口22よりも高い第3のダイリップ103に位置付けられている。第1のスラリー貯蔵スロット112からのスラリーは、第1の出口21から分配するために、中央シムプレート14によってブロックされ、上側シムプレート13の第2のノッチ131から露出する。
【0025】
そのような構造によって、障害物73の前方端部及び後方端部において第1の横方向側部31及び第2の横方向側部33をコーティングする間、スロットダイコーティング装置1は、基材72に近いように制御される。障害物73の両側部における第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322をコーティングする間、スロットダイコーティング装置1は、第1のダイリップ101及び第2のダイリップ102を有しない中間部分によって障害物73と衝突することを回避するために、基材72から僅かに離れるように制御される。両側部の第1のダイリップ101及び第2のダイリップ102は、より良好なコーティングを得るために、第2の流路の第2の出口22を基材72により近づけるように下方に延在する。そのプロセスに対応するより詳細な説明が以下で提示される。
【0026】
本発明は、スロットダイコーティング方法を開示する。図4Aを参照されたい。本発明のスロットダイコーティング装置1は、障害物73を伴う基材72をコーティングするために利用される。スラリーは、基材72の障害物73の周りに分配され、フレームを形成する。上述したように、スロットダイコーティング装置1のフィーダ、基材72の駆動システムなどは、本発明の主な特徴ではない。したがって、この図を含めた以下の図において、これらのデバイス又は機器は提示されない。また、図において、例示のために1つの障害物73しか提示されない。大量生産が考慮される場合、基材72上の障害物73は、複数の又は周期的な構成で配置されるように設計することもできる。第1の流路及び第2の流路は、制御のために所定の時間又は進行の間に切り替えられ得る。その上、図4Bに示されているように、センサ50を使用して、より正確なコーティングのためにスロットダイコーティング装置1に対する基材72の障害物73の相対位置を使用して検出できる。以下の説明は、センサ50を有する場合において提示される。
【0027】
図4Bを参照すると、障害物73を伴う基材72及びスロットダイコーティング装置1が提供されている。スロットダイコーティング装置1の構造は、上述し、図1に示されるようなものであり、これは、スラリーを第1の流路の第1の出口21からの中間部分から、及び、または、第2の流路の第2の出口22からの両側部から分配するように切り替えできる。また、障害物73がある厚さを有することが考慮される。第1の流路の第1の出口21の位置は、第2の流路の第2の出口22の位置よりも高く、すなわち、第2の出口22は、第1の出口21よりも基材72により近い。すなわち、スロットダイコーティング装置1は、両側部に延在した第1のダイリップ101及び第2のダイリップ102を有する。第1のダイリップ101及び第2のダイリップ102は、基材72の表面により近くなる。図4C図4Dを参照すると、スロットダイコーティング装置1の第1の流路は、第1の横方向側部31を形成するために、基材72の障害物73の前方においてスラリーを分配するために利用される。また、図2を参照すると、これは、スラリーが上側入口111から給送されることを意味する。スラリーは、第1の出口21から分配するために、第1のスラリー貯蔵スロット112を通って流れ、上側シムプレート13の第2のノッチ131から露出される。
【0028】
図5Aを参照すると、センサ50が、それが障害物73に近いことを検出すると、第1の流路からの分配は閉鎖される。また、スロットダイコーティング装置1は、基材72から遠く離れるように移動される。図に示されるように、スロットダイコーティング装置1の移動方向Aは、上方である。換言すると、スロットダイコーティング装置1は、基材72が位置付けられている平面のZ軸方向に沿って上方に移動される。したがって、第1の流路の第1の出口21は、障害物73と衝突することを防止するために、上方に移動される。スロットダイコーティング装置1の持ち上げられる高さは、障害物73の厚さ及びスロットダイコーティング装置1の元の高さに応じて変わる。第1の流路の第1の出口21がスロットダイコーティング装置1の中間部分に位置付けられており、スロットダイコーティング装置1の高さが持ち上げられることに起因して、障害物73は、第1のダイリップ101と第2のダイリップ102との間を通過する。スロットダイコーティング装置1の第1の出口21が障害物73と衝突すること、及び、結果として第1の出口21又は障害物73に損傷又は引っかき傷が生じることを回避できる。
【0029】
次いで、スロットダイコーティング装置の第2の流路を利用して、基材72上の障害物73の両側部をコーティングし、第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322を形成する。図5Bを参照されたい。第2の流路の第2の出口22は、図6A図6Bに示されている、障害物73の両側部に位置付けられた第1の長尺側部321及び第2の長尺側部322が完了するまで、コーティングに利用され続ける。第2の流路の第2の出口22の位置は、より低く、すなわち、基材72の表面により近い。スロットダイコーティング装置1が基材72から遠く離れて持ち上げられても、第2の出口22は、基材72に比較的近い。したがって、良好なコーティングを依然として達成できる。図7A図7Bを参照すると、第2の流路からの分配は、検出部が障害物73を通過するときに閉鎖される。また、スロットダイコーティング装置1は、基材72に対して元の高さまで下方に移動される。図に示されるように、スロットダイコーティング装置1の移動方向Bは、下方である。換言すると、スロットダイコーティング装置1は、基材72が位置付けられている平面のZ軸方向に沿って下方に移動される。第1の流路の第1の出口21は、基材72の障害物73の後方にスラリーを分配して、第2の横方向側部33を形成するために利用される。図8A図8Bを参照すると、第2の横方向側部33のコーティングは、第1の横方向側部31の上述したコーティングと同じである。したがって、繰り返しの説明は省略する。したがって、障害物73の周りのフレームのコーティングが完成する。従来のコーティングにおけるように基材72の被駆動方向を変更することなく、単一の1つのスロットダイコーティング装置1のみを単一のプロセスにおいて使用する。また、スロットダイコーティング装置1は、基材72上の障害物73と衝突することなくフレーム全体のコーティングを最適化するように、2つの側端部から延在及び突出した第1のダイリップ101及び第2のダイリップ102を有する。
【0030】
フレーム全体をコーティングするための上述した製造プロセスから、基材72が、スロットダイコーティング装置1に対して単一の軸(図において水平方向)に沿ってのみ移動し、スロットダイコーティング装置1が、基材72に対してZ軸(基材72の表面に対して垂直な方向)に沿ってのみ移動することが分かる。従来のコーティングとは異なり、基材は、全体的なフレームコーティングを完成するために、コーティングヘッドデバイスに対して回転する必要がある。したがって、本発明は、基材72を運搬するためにローラ又はコンベヤを使用し、高効率かつ連続的な生産を達成できる。
【0031】
したがって、本発明は、スロットダイコーティング装置及びそのコーティング方法を提供し、これは、シム群を利用することによって、スロットコーティングヘッドデバイスの構造を大幅に変更することなく、障害物を伴う基材上にフレーム形コーティングを形成するために単一の1つのプロセスを達成できる。したがって、プロセスの複雑さ及び製造コストが大幅に低減される。また、スロットダイコーティング装置の流路は、フレーム形コーティングの横方向側部及び長尺側部をそれぞれコーティングするために、第1の流路及び第2の流路に分割されている。したがって、構成要素の周りのフレーム形コーティングが、単一の1つのプロセスを介して単一のスロットダイコーティング装置によって達成される。更に、シム群は、ダイリップを形成するようにダイ本体から延在及び突出している。ダイリップは、中間部分においてより高く、すなわち、基材から遠く離れており、両側部においてより低く、すなわち、基材に近い。また、スロットダイコーティング装置の高さは、スロットダイコーティング装置と基材上の構成要素との間の衝突を回避するように調整可能であり、コーティング品質が最適化される。
【0032】
本発明をこのように説明したが、本発明を多くの方法で変えてもよいことは自明である。そのような変形は、本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、全てのそのような修正は、当業者には自明であるため、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B