(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169406
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】骨材の粒径分布の決定方法及びそのシステム及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20241128BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N15/0227 110
E01C7/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084356
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】202310588831.4
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520022540
【氏名又は名称】中国計量大学
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】陸藝
(72)【発明者】
【氏名】童欣
(72)【発明者】
【氏名】巨鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】範偉軍
(72)【発明者】
【氏名】胡暁峰
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AG01
2D051AH02
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】骨材の粒径分布の決定方法、およびそのシステム、および電子機器を開示し、路面工学技術分野に関する。該方法は、測定対象骨材からサンプルを抽出して骨材粒子の集合を構築し、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定し、さらに第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定し、異なる実際の粒径間隔の粒子数量に応じて、二項分布の集合を構築することと、異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定することと、事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定することと、を含む。
【効果】本発明は、尤度関数及び事前確率を構築することにより事後確率を決定し、さらに事後分布の集合を決定すると、粗骨材における骨材の粒径分布を迅速に決定でき、さらにアスファルトの性能決定の効率を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材の粒径分布の決定方法であって、
測定対象骨材からサンプルを抽出して、複数の骨材粒子の部分集合を含む骨材粒子の集合を構築することと、同じ骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の実際の粒径はすべて同じ実際の粒径間隔に属し、前記骨材粒子の部分集合は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、任意の2つの前記実際の粒径間隔の共通集合はすべて空集合であり、
前記骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定することと、前記尤度関数は、異なる実際の粒径間隔と異なるフェレット粒径間隔における骨材粒子の確率分布関係を説明するために使用され、
測定対象骨材の事前確率を取得することと、前記事前確率は、異なる実際の粒径間隔における単一骨材粒子の質量によって決定され、
前記尤度関数及び前記事前確率に応じて、第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定することと、前記事後確率P(ci|xi)は、第i個フェレット粒径間隔xiにおける各骨材の、第i個実際の粒径間隔ciにおける確率を示し、
骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の事前確率を、質量比の和から、対応する実際の粒径間隔の粒子数量比に変換することと、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量比に応じて、二項分布の集合を構築することと、前記二項分布の集合における二項分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定することと、前記事後分布の集合における事後分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
前記事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定することと、を含むことを特徴とする骨材の粒径分布の決定方法。
【請求項2】
前記骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定することは、
マシンビジョン検出技術を利用して、それぞれ前記骨材粒子の集合におけるすべての粒子のフェレット粒径を決定することと、
複数のフェレット粒径間隔を構築することと、任意の2つの前記フェレット粒径間隔の共通集合はすべて空集合であり、
複数のフェレット粒径に応じて複数の尤度関数値を決定することと、を含み、前記尤度関数値P(xi|ci)は、第i個骨材部分集合ciにおける骨材のフェレット粒径が第i個フェレット粒径間隔xiに属する確率を示すことを特徴とする請求項1に記載の骨材の粒径分布の決定方法。
【請求項3】
前記事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定することは、
前記事後分布の集合におけるいずれか一つの事後分布を、現在の事後分布として決定することと、
現在の事後分布の期待値を、測定対象骨材が対応する実際の粒径間隔における数量割合として決定することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の骨材の粒径分布の決定方法。
【請求項4】
前記第1ベイズの公式は
であり、
ここで、Nは実際の粒径間隔の個数であり、P(c
i)は、第i個骨材部分集合c
iの事前確率であることを特徴とする請求項2に記載の骨材の粒径分布の決定方法。
【請求項5】
骨材の粒径分布の決定システムであって、
測定対象骨材からサンプルを抽出して、骨材粒子の集合を構築するための骨材粒子の集合の構築モジュールと、前記骨材粒子の集合は、複数の骨材粒子の部分集合を含み、ここで、同じ骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の実際の粒径はすべて同じ実際の粒径間隔に属し、前記骨材粒子の部分集合は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、任意の2つの前記実際の粒径間隔の共通集合はすべて空集合であり、
前記骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定するための尤度関数の決定モジュールと、前記尤度関数は、異なる実際の粒径間隔と異なるフェレット粒径間隔における骨材粒子の確率分布関係を説明するために使用され、
測定対象骨材の事前確率を取得するための事前確率の決定モジュールと、前記事前確率は、異なる実際の粒径間隔における単一骨材粒子の質量によって決定され、
前記尤度関数及び前記事前確率に応じて、第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定するための事後確率の決定モジュールと、前記事後確率P(ci|xi)は、第i個フェレット粒径間隔xiにおける各骨材の、第i個実際の粒径間隔ciにおける確率を示し、
骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の事前確率を、質量比の和から、対応する実際の粒径間隔の粒子数量比に変換するための実際の粒径間隔の粒子数量決定モジュールと、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量比に応じて、二項分布の集合を構築するための二項分布の集合の構築モジュールと、前記二項分布の集合における二項分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定するための事後分布の集合の決定モジュールと、を含み、前記事後分布の集合における事後分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
前記事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定することを特徴とする骨材の粒径分布の決定システム。
【請求項6】
電子機器であって、メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリは、コンピュータープログラムを保存するために使用され、前記プロセッサは、前記コンピュータープログラムを実行して、前記電子機器が請求項1から4のいずれか1項に記載の骨材の粒径分布の決定方法を実行できるようにすることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
前記メモリは読み取り可能な記憶媒体であることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面工事技術分野に関し、特に骨材の粒径分布の決定方法及びそのシステム及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物は、アスファルト接着材、骨材粒子およびフィラー等で構成される多相複合材料であり、ここで粗骨材の質量は、総量の90%以上を占め、アスファルト混合物の性能は基本的に、粗骨材の性質に依存する。研究を通じて、骨材粒度分布が仕様に沿っているかどうかは、アスファルト混合物の性能に影響を与える最初の主要な影響要因であることを示す。道路建設基準では、骨材粒度分布がふるい網によるふるい方式を通じて実現されるが、ふるい分け中、骨材がふるいの孔を詰まる状況は頻繁に発生し、手動で通りをよくする必要があり、この場合、検出効率は低くなり、ふるい分けた後の骨材には手動データ分析が必要であり、混合ステーションのスタッフが骨材の粒径を迅速にふるい分けるニーズを満たすことはできない。通常、実際の工事では、各間隔の骨材の粒径分布の絶対誤差が±5%を超えないことが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、粗骨材における骨材の粒径分布を迅速に決定でき、さらにアスファルトの性能決定の効率を向上させることができる骨材の粒径分布の決定方法及びそのシステム及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
本発明の骨材の粒径分布の決定方法は、
測定対象骨材からサンプルを抽出して、複数の骨材粒子の部分集合を含む骨材粒子の集合を構築することと、同じ骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の実際の粒径はすべて同じ実際の粒径間隔に属し、前記骨材粒子の部分集合は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、任意の2つの前記実際の粒径間隔の共通集合はすべて空集合であり、
前記骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定することと、前記尤度関数は、異なる実際の粒径間隔と異なるフェレット粒径間隔における骨材粒子の確率分布関係を説明するために使用され、
測定対象骨材の事前確率を取得することと、前記事前確率は、異なる実際の粒径間隔における単一骨材粒子の質量によって決定され、
前記尤度関数及び前記事前確率に応じて、第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定することと、前記事後確率P(ci|xi)は、第i個フェレット粒径間隔xiにおける各骨材の、第i個実際の粒径間隔ciにおける確率を示し、
骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の事前確率を、質量比の和から、対応する実際の粒径間隔の粒子数量比に変換することと、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量比に応じて、二項分布の集合を構築することと、前記二項分布の集合における二項分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定することと、前記事後分布の集合における事後分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
前記事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定することと、を含む。
【0005】
任意選択的に、前記骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定することは、
マシンビジョン検出技術を利用して、それぞれ前記骨材集合におけるすべての粒子のフェレット粒径を決定することと、
複数のフェレット粒径間隔を構築することと、任意の2つの前記フェレットの粒径間隔の共通集合はすべて空集合であり、
複数のフェレット粒径に応じて複数の尤度関数値を決定することと、を含み、前記尤度関数値P(xi|ci)は、第i個骨材部分集合ciにおける骨材のフェレット粒径が第i個フェレット粒径間隔xiに属する確率を示す。
【0006】
任意選択的に、前記事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定することは、
前記事後分布の集合におけるいずれか一つの事後分布を、現在の事後分布として決定することと、
現在の事後分布の期待値を、測定対象骨材が対応する実際の粒径間隔における数量割合として決定することと、を含む。
【0007】
任意選択的に、前記第1ベイズの公式は
であり、
ここで、Nは実際の粒径間隔の個数であり、P(c
i)は、第i個骨材部分集合c
iの事前確率である。
【0008】
骨材の粒径分布の決定システムは、
測定対象骨材からサンプルを抽出して、骨材粒子の集合を構築するための骨材粒子の集合の構築モジュールと、前記骨材粒子の集合は、複数の骨材粒子の部分集合を含み、同じ骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の実際の粒径はすべて同じ実際の粒径間隔に属し、前記骨材粒子の部分集合は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、任意の2つの前記実際の粒径間隔の共通集合はすべて空集合であり、
前記骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定するための尤度関数の決定モジュールと、前記尤度関数は、異なる実際の粒径間隔と異なるフェレット粒径間隔における骨材粒子の確率分布関係を説明するために使用され、
測定対象骨材の事前確率を取得するための事前確率の決定モジュールと、前記事前確率は、異なる実際の粒径間隔における単一骨材粒子の質量によって決定され、
前記尤度関数及び前記事前確率に応じて、第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定するための事後確率の決定モジュールと、前記事後確率P(ci|xi)は、第i個フェレット粒径間隔xiにおける各骨材の、第i個実際の粒径間隔ciにおける確率を示し、
骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の事前確率を、質量比の和から、対応する実際の粒径間隔の粒子数量比に変換するための実際の粒径間隔の粒子数量決定モジュールと、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量比に応じて、二項分布の集合を構築するための二項分布の集合の構築モジュールと、前記二項分布の集合における二項分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定するための事後分布の集合の決定モジュールと、を含み、前記事後分布の集合における事後分布は、前記実際の粒径間隔と一対一で対応し、
前記事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定する。
【0009】
電子機器であって、メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリは、コンピュータープログラムを保存するために使用され、前記プロセッサは、前記コンピュータープログラムを実行して、前記電子機器が上述の本発明の骨材の粒径分布の決定方法を実行できるようにする。
【0010】
任意選択的に、前記メモリは読み取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって提供される具体的な実施例によれば、本発明は、以下の技術的効果を開示する。
【0012】
本発明は、骨材の粒径分布の決定方法、およびそのシステム、および電子機器を提供し、測定対象骨材からサンプルを抽出して、骨材粒子の集合を構築し、骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定し、測定対象骨材の事前確率を取得し、尤度関数及び事前確率に応じて、第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定し、骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の事前確率の和が対応する実際の粒径間隔の粒子数量であることを決定し、異なる実際の粒径間隔の粒子数量に応じて、二項分布の集合を構築し、異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定し、事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定する。本発明は、尤度関数及び事前確率を構築することにより事後確率を決定し、さらに事後分布の集合を決定すると、粗骨材における骨材の粒径分布を迅速に決定でき、さらにアスファルトの性能決定の効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、次に実施例に使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、次の説明における図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的努力をすることなく、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0014】
【
図1】本発明の実施例1における骨材の粒径分布の決定方法フローチャートである。
【
図2】本発明の実施例1における骨材画像の収集概略図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるFeret粒径が異なる実際の粒径間隔を表現する図である。
【
図4】本発明の実施例1において、骨材の粒径分布を推定するステップフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例1において、S
9仕様の骨材が実際の粒径間隔c
1にあることを推定する第1事後分布図である。
【
図6】本発明の実施例1において、S
9仕様の骨材が実際の粒径間隔c
1にあることを推定する第2事後分布図である。
【
図7】本発明の実施例1において、S
9仕様の骨材が実際の粒径間隔c
1にあることを推定する第3事後分布図である。
【
図8】本発明の実施例1において、S
9仕様の骨材が実際の粒径間隔c
1にあることを推定する第4事後分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者は創造的な努力をすることなく取得されたすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0016】
本発明は、粗骨材における骨材の粒径分布を迅速に決定でき、さらにアスファルトの性能決定の効率を向上させる骨材の粒径分布の決定方法及びそのシステム及び電子機器を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより顕著で分かりやすくするために、以下に図面及び発明を実施するための形態を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
実施例1
本発明は、収集データとしてマシンビジョンで測定して得られた骨材粒子の最大Feret(フェレット)粒径を使用し、それと骨材粒子の実際の粒径との間に、誤差が存在し、異なるFeret粒径間隔の骨材の実際の粒径はまだ重なった(
図3に示す)。本発明は、ベイズの公式によってこれによって引き起こされる誤差を減らし、異なる粒径の骨材の割合(即ち粒径分布)を正しく推測できる。骨材粒径の理解を促進するために、c
i(0<i<15,i∈N
*)を使用して、骨材の実際の粒径間隔を表し、この間隔範囲は、JTG F40-2004《道路アスファルト路面施工技術仕様》によって決定され、x
i(0<i<15,i∈N
*)は、骨材のFeretの粒径間隔を表した。
【0019】
図1及び
図4に示すように、本実施例は、骨材の粒径分布の決定方法を提供し、以下のステップを含む。
ステップ101:測定対象骨材からサンプルを抽出して、骨材粒子の集合を構築し、骨材粒子の集合は、複数の骨材粒子の部分集合を含み、同じ骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の実際の粒径はすべて同じ実際の粒径間隔に属し、骨材粒子の部分集合は、実際の粒径間隔と一対一で対応し、任意の2つの実際の粒径間隔の共通集合はすべて空集合であった。
ステップ102:骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定し、尤度関数は、異なる実際の粒径間隔と異なるフェレット粒径間隔における骨材粒子の確率分布関係を説明するために使用される。
ステップ102は、以下を含む。
ステップ1021:マシンビジョン検出技術を利用して、それぞれ骨材集合におけるすべての粒子のフェレット粒径を決定した。
ステップ1022:複数のフェレット粒径間隔を構築し、任意の2つのフェレットの粒径間隔の共通集合はすべて空集合であった。
ステップ1023:複数のフェレット粒径に応じて複数の尤度関数値を決定し、尤度関数値P(x
i|c
i)は、第i個骨材部分集合c
iにおける骨材のフェレット粒径が第i個フェレット粒径間隔x
iに属する確率を示した。
【0020】
ベイズの公式における尤度関数の求め方について、まずふるい網によるふるい方式で異なるciの実験骨材それぞれ1000個を得て、次にマシンビジョン測定を用いて集合Dを得て、集合Dは、ciに属するすべての実験骨材を示し、ここで、xi間隔にある粒子数量はniであった。
【0021】
ここで、
である。それにより尤度関数
をリストした。
【0022】
【0023】
ここで、
は既知の条件であるため、上式に対してラグランジュの未定乗数法
を用いた。
【0024】
θに対して偏微分を求め、偏微分関数を0に等しくさせ、
を得た。
【0025】
【0026】
【0027】
この解を求めることで度関数値θiを得ることができ、骨材がciに属する場合、マシンビジョン測定によるFeret粒径がxiに属する確率は即ちP(xi|ci)であることを示した。
【0028】
ステップ103:測定対象骨材の事前確率を取得し、事前確率は、異なる実際の粒径間隔における単一骨材粒子の質量によって決定される。骨材仕様は、混合ステーションのスタッフによってふるい網によるふるい方式で標準(JTG F40-2004《道路アスファルト路面施工技術仕様》)に準拠するかどうかを判断するため、本発明は、JTG F40-2004における骨材仕様を事前確率とした。実際の工事では、ふるい網によるふるい方式を用いて、骨材の粒径分布を推定することは、骨材が各レベルのふるい網を通過する質量が、総質量を占めるパーセントに応じて判断さる。本発明では、骨材の粒径分布を推定することは、異なる粒径間隔における骨材の数量が総数量を占めるパーセントにより判断されるため、本発明の計算を便利にするために、骨材質量と数量との間の関係を推定する必要がある。
【0029】
ふるい網によるふるい方式により異なるciの実験骨材の粒子数量それぞれ1000個を得て、次に同じciの骨材を秤量し、計算してそれぞれの場合に対応する異なるciの骨材質量を得て、それにより、数量を単位としてJTG F40-2004標準に準拠する異なるciを事前確率P(ci)として得た。
【0030】
ステップ104:尤度関数及び事前確率に応じて、第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定し、事後確率P(ci|xi)は、第i個フェレット粒径間隔xiにおける、第i個実際の粒径間隔ciにおける各骨材の確率を示した。
【0031】
ここで、第1ベイズの公式は
であり、
ここで、Nは実際の粒径間隔の個数であり、P(c
i)は、第i個骨材部分集合c
iの事前確率であった。
【0032】
ステップ105:骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の事前確率を、質量比の和から、対応する実際の粒径間隔の粒子数量比に変換した。
ステップ106:異なる実際の粒径間隔の粒子数量比に応じて、二項分布の集合を構築し、この二項分布の集合における二項分布は、上記実際の粒径間隔と一対一で対応した。
撹拌ステーションの品質検査者は、試料サンプリングにより被測定サンプル(その粒子数は約3000個、数量はMとして記録され)を得て、被測定サンプルは、視覚測定された後、視覚測定下のFeret粒径データ集を得た。次にベイズの公式を応用して被測定サンプルを計算し、それにより被測定サンプルの各個骨材の事後確率P(ci|xi)を得た。P(ci|xi)は、異なるciにおける各個骨材の可能性p値を示し、同様に、異なるciにおける単個石の分布値として理解できる。各ci間隔の被測定サンプルのp値を累加することにより、異なる骨材仕様における被測定サンプルciの可能な粒子数量を得た。この時、各ciの数量miを得て、この間隔にある確率が二項分布B(M,θ)であると考えられ、それにより二項分布の集合{B1(M,θ1),B2(M,θ2),B3(M,θ3)…,B15(M,θ15)}を取得した。
【0033】
ステップ107:異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定し、前記事後分布の集合における事後分布は、先の実際の粒径間隔と一対一で対応した。
ステップ108:事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定した。
【0034】
ステップ108は、
先の事後分布の集合におけるいずれか一つの事後分布を、現在の事後分布として決定するステップ1081と、
現在の事後分布の期待値を、測定対象骨材が対応する実際の粒径間隔における数量割合として決定するステップ1082と、を含む。ここで実際の工事では、骨材の粒径分布を推定することは、異なる間隔における骨材質量の割合に応じて判断され、実験により骨材質量と数量の関係比を得て、計算すると、異なる間隔における骨材の質量比を得ることができ、且つ手動のふるい網によるふるい方式で得られた結果と比較して本発明の精度を判断した。
【0035】
骨材の粒径分布を推定することは即ち、c
iにおける被測定サンプル骨材の数量割合を推定することであり、これを推定対象パラメーターθ
iとした。ステップ3に応じて各c
i間隔における被測定サンプルの二項分布の集合を得て、beta分布f(θ
i)を事前分布として選択し、ベイズを応用して事後分布f(θ
i|m
i)を推定した。ここでf(θ
i|m
i)∝f(θ
i)p(m
i|θ
i)、事前分布の確率密度関数は、
である。二項分布の確率密度関数は、
である。
【0036】
【0037】
事前分布がすでに決定されたため、パラメーターαとβが既知であり、同様に、被測定サンプルの総個数M及びc
iに属する数量m
iが既知であるため、
及び
が推定対象パラメーターθ
iと関係ないと確認でき、上式を合併して正規化して下式を得た。
【0038】
上式に応じて判断できるように、得られた事後分布はbeta分布であり、そのパラメーターはα’=α+mi、β’=β+M-miであり、ここで該beta分布の期待値は、α’/(α’+β’)として表され、得られた期待値は即ち、推定対象パラメーターθiの推定値であり、すべてのciにおける被測定サンプルの数量割合を推定することにより、ベイズ統計に基づいて骨材の粒径分布を推定することを実現した。
【0039】
本発明の説明において、
図2に示すように、骨材の最大Feret粒径は、振動材料供給機を使用して実験骨材を均一に落下させ、画像収集で得られた個々の骨材の多姿勢画像を利用して、骨材画像のピクセルサイズを校正して変換して得られた。本発明は、収集データとしてマシンビジョン測定によって得られた骨材粒子の最大Feret粒径を使用し、それと骨材粒子の実際の粒径との間に、誤差が存在し、
図3に示すように、異なるFeret粒径間隔の骨材はまだ重なっているため、最大Feret粒径間隔との等価実際の粒径間隔に誤差が存在し、ベイズの公式によってこれによって引き起こされる誤差を減らした。ここで、ふるい網によるふるい方式でふるい分けて得られた骨材粒径は、権威あり、本発明は、この方法で得られた骨材粒径を実際の粒径とした。
【0040】
図4に示すように、本発明は、標準におけるS
9仕様の粗骨材を例として、該仕様の骨材の実際の粒径間隔には、c
1(19-26.5)mm、c
2(16-19)mm、c
3(13.2-16)mm、c
4(9.5-13.2)mm及びc
5(4.75-9.5)mmがあった。
【0041】
(1)骨材の実際の粒径間隔を推定することを容易にするために、1mmごとに骨材を均一にふるい分け、各間隔の実験骨材それぞれ1000個を得た。尤度関数を解くことにより、骨材がci(i∈{1,2,3,4,5})に属する場合、マシンビジョンにより測定されたFeret粒径がxi(i∈{1,2,3,4,5})に属する確率を得て、表1に示した。
【0042】
【0043】
(2)S9仕様の骨材の事前確率P(ci)を取得するために、本発明は、実験により骨材質量と数量との間の関係を推定した。ふるい網によるふるい方式により異なるciの実験骨材の粒子数量それぞれ1000個を得て、次に同じciの骨材を秤量し、計算してそれぞれの場合の、対応する異なるciの骨材質量を得た。本発明は、以上のステップを3回繰返し、得られた結果に対して平均値を選択し、次に計算することによりJTG F40-2004における骨材仕様に準拠する骨材数量割合を得ることができ、表2に示した。
【0044】
【0045】
(3)混合ステーションの品質検査者は、試料サンプリングにより被測定サンプル(その粒子数は約3000個、数量はMとして記録され)を得て、被測定サンプルは、視覚測定された後、視覚測定下のFeret粒径データ集を得た。次にベイズの公式を応用して被測定サンプルを計算した。ベイズの公式に応じて事後確率が、事前確率と尤度の積を、事前確率と尤度の積の和で割ることであると判断できる。
【0046】
ここで、Nは骨材の実際の粒径間隔の個数であり、ここでN=5。
【0047】
【0048】
表3に示すように、ベイズの公式を応用して、事後確率P(ci|xi)を計算して得て、異なるciにおける各個骨材の可能性値を示し、同様に、異なるciにおける単個石の分布値として理解できる。各ci間隔の被測定サンプルの可能性値を累加することにより、異なる骨材仕様におけるciの可能な粒子数量を取得した。被測定サンプルの粒子数量に対して、M=9、90、900及び3000の場合、推定して計算して異なるciにおける骨材粒子の可能な数量を取得し、表4に示した。
【0049】
【0050】
(4)推定して事後分布を得て、得られた期待値は即ち骨材粒径がc
1に属する数量割合の推定であり、
図5~
図8に示すように、横座標は、尤度推定を示し、縦座標は、事後分布を示し、骨材粒子数量Mが増加するにつれて、得られた事後分布が益々集中になり、推定対象パラメーターθ
1への確定性が高くなり、同時に骨材推定がc
1に属する数量割合は徐々に実際の数量割合に近くなることが分かった。ここで事前beta分布のパラメーターα及びβを1として選択し、被測定サンプルがc
1間隔に属する可能な粒子数量を計算して29.926であると得られた。ステップ4で得られた公式
に代入し、
同様に、他の間隔を計算して表5に示すように得られ、実験で得られた骨材質量と数量との関係比を使用して各間隔の質量割合を計算して得ることにより、骨材の粒径分布の推定を実現した。ここで絶対誤差は基本的に、±5%以内に保持した。
【0051】
【0052】
以上の解析から分かるように、骨材個数が少ない場合、事前分布から事後への影響が最大であるが、骨材個数が増加するにつれて事前から事後への影響が徐々に小さくなるため、骨材個数がある程度まで増加した後、異なる事前から事後への影響は無視できるほど小さいことを合理的に仮定することができる。本発明は、ベイズ統計を使用して骨材の粒径分布を推定すると、スクリーニング効率を効果的に向上させることができる。従来の人が手で骨材をスクリーニングすることに比べて、該方法は、マシンビジョン測定技術と合わせて、迅速なスクリーニングを実現し、同時に検出プロセス全体は、人的要因による影響がなく、骨材スクリーニング品質を効果的に保証した。
【0053】
本発明は、マシンビジョン分野に急速に発展して、画像収集情報をよりよく正確にする基礎の上で、ベイズ統計推定方法を使用して骨材の粒径分布を推定し、従来の方法と比較して、自動化レベルが向上し、混合ステーションでは、運搬される骨材がJTG F40-2004標準に準拠するか否かを迅速に検出することを満たすことができる。また、本発明は、骨材個数が十分に大きい場合、不合格骨材の粒径分布を推定できるため、すべての仕様の骨材に応用することができ、且つ該方法により推定して得られた骨材の粒径分布の精度が高く、今後の骨材粒径ふるい分けのために新しい方法及び視点も提供した。
【0054】
実施例2
対応する機能と技術的効果を達成するために、上記の実施例1に対応する方法を実行するために、以下に、骨材の粒径分布の決定システムを提供する。
実施例2の骨材の粒径分布の決定システムは、測定対象骨材からサンプルを抽出して、複数の骨材粒子の部分集合を含む骨材粒子の集合を構築するための骨材粒子の集合の構築モジュールと、同じ骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の実際の粒径はすべて同じ実際の粒径間隔に属し、骨材粒子の部分集合は、実際の粒径間隔と一対一で対応し、任意の2つの実際の粒径間隔の共通集合はすべて空集合であり、
骨材粒子の集合に基づき、マシンビジョン検出技術を利用して、測定対象骨材の尤度関数を決定するための尤度関数の決定モジュールと、尤度関数は、異なる実際の粒径間隔と異なるフェレット粒径間隔における骨材粒子の確率分布関係を説明するために使用され、
測定対象骨材の事前確率を取得するための事前確率の決定モジュールと、事前確率は、異なる実際の粒径間隔における単一骨材粒子の質量によって決定され、
尤度関数及び事前確率に応じて、第1ベイズの公式を利用して、複数の事後確率を決定するための事後確率の決定モジュールと、事後確率P(ci|xi)は、第i個フェレット粒径間隔xiにおける、第i個実際の粒径間隔ciにおける各骨材の確率を示し、
骨材粒子の部分集合におけるすべての骨材粒子の事前確率の和が対応する実際の粒径間隔の粒子数量であることを決定するための実際の粒径間隔の粒子数量決定モジュールと、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量に応じて、二項分布の集合を構築するための二項分布の集合の構築モジュールと、二項分布の集合における二項分布は、実際の粒径間隔と一対一で対応し、
異なる実際の粒径間隔の粒子数量及び二項分布の集合に基づき、beta分布を事前分布として、第2ベイズの公式を利用して事後分布の集合を決定するための事後分布の集合の決定モジュールと、を含み、事後分布の集合における事後分布は、実際の粒径間隔と一対一で対応した。
【0055】
事後分布の集合に応じて、測定対象骨材の粒径分布を決定した。
【0056】
実施例3
本実施例は電子機器を提供し、メモリ及びプロセッサを含み、メモリは、コンピュータープログラムを保存するために使用され、プロセッサは、コンピュータープログラムを実行して、電子機器が実施例1に記載の骨材の粒径分布の決定方法を実行するようにした。
【0057】
ここで、メモリは読み取り可能な記憶媒体であった。
【0058】
本明細書における各実施例は段階的に説明されており、各実施例が主に説明することはいずれも他の実施例との相違点であり、各実施例間で同一または同様の部分は、互いに参照すればよい。実施例に開示されたシステムについては、実施例に開示された方法に対応するので、説明は比較的簡単であり、関連情報は、方法部分の説明を参照すればよい。
【0059】
本明細書では、具体的な例を応用して本発明の原理及び実施態様を説明し、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核となる考え方を理解するように寄与するに過ぎず、同時に、当業者にとって、本発明の考えに応じて、発明を実施するための形態および応用範囲にすべて変更がある。以上より、本明細書の内容は本発明への制限であると理解すべきではない。