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特開2024-169416XCL1を標的とする抗体及びそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169416
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】XCL1を標的とする抗体及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20241128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241128BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20241128BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K14/52
A61P17/14
A61P17/00
A61P11/06
A61P25/00
A61P19/02
A61P17/06
A61P1/00
A61K39/395 N
A61K47/64
C07K16/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】64
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024084764
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】63/504,051
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー リン ビースリー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック フランシス グリーリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジンシン リー
(72)【発明者】
【氏名】チャド ディー. パーヴォラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア デード プーアボウ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アラン レンシュラー
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンドリュー ウォーティンガー
(72)【発明者】
【氏名】イン タン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD34
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】潰瘍性大腸炎、白斑、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、1型糖尿病、及び喘息を含む免疫媒介性疾患の分野において有用な、療法用抗体、医薬組成物、及びそれらを使用する方法を含む、ヒトリンホタクチンを標的とする化合物及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、リンホタクチン、特にヒトケモカインXCL1及びXCL2に対する抗体、そのような抗体を含む医薬組成物、並びにそのような抗体を使用する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)を含むヒトXCL1に結合する抗体であって、前記HCVRが、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記LCVRが、CDR LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記HCDR1が、配列番号10を含み、
前記HCDR2が、配列番号11を含み、
前記HCDR3が、配列番号12を含み、式中、Zが、Q及びEから選択され、
前記LCDR1が、配列番号5を含み、式中、Xが、S及びDから選択され、
前記LCDR2が、配列番号8を含み、
前記LCDR3が、配列番号9を含む、抗体。
【請求項2】
Zが、Eである、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
Xが、Dである、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
Zが、Qである、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
Xが、Sである、請求項1又は4に記載の抗体。
【請求項6】
HCDR1が、配列番号10を含み、HCDR2が、配列番号11を含み、HCDR3が、配列番号13を含み、LCDR1が、配列番号6を含み、LCDR2が、配列番号8を含み、LCDR3が、配列番号9を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記LCVRが、配列番号17を含み、前記HCVRが、配列番号15を含み、式中、Xが、Q及びピログルタミン酸から選択される、請求項1~3又は6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
が、Qである、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含み、前記HCが、配列番号19を含み、式中、Xが、Q及びピログルタミン酸から選択され、Xが、Gであるか又は存在せず、Xが、Kであるか又は存在せず、前記LCが、配列番号21を含む、請求項1~3、6、又は7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
が、Qであり、Xが、Gであり、Xが、Kである、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
HCDR1が、配列番号10を含み、HCDR2が、配列番号11を含み、HCDR3が、配列番号14を含み、LCDR1が、配列番号7を含み、LCDR2が、配列番号8を含み、LCDR3が、配列番号9を含む、請求項1、4、及び5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
前記LCVRが、配列番号18を含み、前記HCVRが、配列番号16を含み、式中、Xが、Q及びピログルタミン酸から選択される、請求項1、4、5、及び11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
が、Qである、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
前記抗体が、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含み、前記HCが、配列番号20を含み、式中、Xが、Q及びピログルタミン酸から選択され、Xが、Gであるか又は存在せず、Xが、Kであるか又は存在せず、前記LCが、配列番号22を含む、請求項1、4、5、11、及び12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
が、Qであり、Xが、Gであり、Xが、Kである、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
XCL1アンタゴニストである、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体が、ヒトXCL2に結合する、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
XCL2アンタゴニストである、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
二量体XCL1に結合する、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項20】
前記二量体XCL1が、ホモ二量体XCL1である、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体が、β-シート立体配置にあるXCL1に結合する、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
前記ホモ二量体XCL1が、細胞の表面上のグリコサミノグリカンに結合している、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
二量体XCL2に結合する、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項24】
前記二量体XCL2が、ホモ二量体XCL2である、請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
前記抗体が、二量体XCL2の各単量体単位上の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
前記ホモ二量体XCL2が、細胞の表面上のグリコサミノグリカンに結合している、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
XCL1の1つの単量体及びXCL2の1つの単量体を含むヘテロ二量体複合体に結合する、請求項1~26のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体が、前記ヘテロ二量体複合体の前記XCL1単量体の少なくとも1つのアミノ酸又は前記XCL2単量体の少なくとも1つのアミノ酸に結合する、請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項29】
前記ヘテロ二量体複合体が、細胞の表面上のグリコサミノグリカンに結合している、請求項1~28のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項30】
XCL1及びXCL2以外のケモカインに結合しない、請求項1~29のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項31】
配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、ヒトXCL1に結合する、抗体。
【請求項32】
配列番号19に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖(HC)及び配列番号21に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖(LC)を含む、請求項31に記載する抗体。
【請求項33】
配列番号16に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、ヒトXCL1に結合する、抗体。
【請求項34】
配列番号20に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖(HC)及び配列番号22に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖(LC)を含む、請求項33に記載する抗体。
【請求項35】
配列番号27の1つ以上のアミノ酸を含むXCL1のエピトープに結合する、抗体。
【請求項36】
配列番号27の2つ以上のアミノ酸に結合する、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
配列番号27の3つ以上のアミノ酸に結合する、請求項36に記載の抗体。
【請求項38】
配列番号29の1つ以上のアミノ酸に結合する、請求項37に記載の抗体。
【請求項39】
配列番号28の1つ以上のアミノ酸を含むXCL1のエピトープに結合する、抗体。
【請求項40】
配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合する、請求項39に記載の抗体。
【請求項41】
配列番号27の1つ以上のアミノ酸及び配列番号28の1つ以上のアミノ酸を含むXCL1のエピトープに結合する、抗体。
【請求項42】
配列番号27の2つ以上のアミノ酸及び配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合する、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
配列番号29の1つ以上のアミノ酸に結合する、請求項41に記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプを有する、請求項1~43のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項46】
円形脱毛症、白斑、喘息、乾癬、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、又は潰瘍性大腸炎の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は請求項45に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項47】
療法に使用するための、請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項48】
円形脱毛症、白斑、喘息、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、又は潰瘍性大腸炎の治療に使用するための、請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項49】
円形脱毛症、白斑、喘息、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、又は潰瘍性大腸炎の治療のための医薬剤の製造における、請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は請求項45に記載の医薬組成物の使用。
【請求項50】
配列番号23、配列番号24、配列番号25、又は配列番号26をコードする配列を含む、核酸。
【請求項51】
配列番号23又は配列番号25をコードする第1の核酸配列及び配列番号24又は配列番号26をコードする第2の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項52】
請求項51に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項53】
抗体を産生する方法であって、前記抗体が発現されるような条件下で請求項52に記載の細胞を培養することと、前記発現された抗体を培養培地から回収することと、を含む、方法。
【請求項54】
抗体が発現されるような条件下で請求項52に記載の細胞を培養し、前記発現された抗体を培養培地から回収することによって産生される、抗体。
【請求項55】
二量体XCL1及び二量体XCL1に結合した抗体を含む、タンパク質複合体。
【請求項56】
前記二量体XCL1が、ホモ二量体XCL1である、請求項55に記載のタンパク質複合体。
【請求項57】
前記抗体が、β-シート立体配置にあるXCL1に結合する、請求項55又は56に記載のタンパク質複合体。
【請求項58】
二量体XCL2及び二量体XCL2に結合した抗体を含む、タンパク質複合体。
【請求項59】
前記二量体XCL2が、ホモ二量体XCL2である、請求項58に記載のタンパク質複合体。
【請求項60】
前記抗体が、β-シート立体配置にあるXCL2に結合する、請求項58又は59に記載のタンパク質複合体。
【請求項61】
タンパク質複合体であって、
XCL1の単量体単位及びXCL2の単量体単位を含むヘテロ二量体と、
前記ヘテロ二量体に結合した抗体と、を含む、タンパク質複合体。
【請求項62】
前記抗体が、XCL1の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する、請求項61に記載のタンパク質複合体。
【請求項63】
前記抗体が、XCL2の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する、請求項61又は62に記載のタンパク質複合体。
【請求項64】
前記抗体が、β-シート立体配置にあるXCL1又はXCL2の少なくとも1つの残基に結合する、請求項61~63のいずれか一項に記載のタンパク質複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表ファイル)
本出願は、ST.26XML形式の配列表とともに提出されている。配列表は、2024年5月6日に作成された「30574_SequenceListing」と題されたファイルとして提供され、43キロバイトのサイズである。ST.26XML形式の配列表情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医薬品の分野に属する。より具体的には、本発明は、リンホタクチン、特にヒトケモカインXCL1及びXCL2に対する抗体、そのような抗体を含む医薬組成物、並びにそのような抗体を使用する方法に関する。本明細書に開示される抗体は、XCL1及びXCL2に結合し、それらを中和する。本発明の抗体及び方法は、自己免疫及び慢性炎症性疾患(本明細書ではまとめて免疫媒介性疾患と称される)、特に円形脱毛症、白斑、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis、UC)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)、多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)、1型糖尿病、乾癬、喘息などの疾患の分野において、それらの治療を含めて有用であると予想される。
【背景技術】
【0003】
XCL1及びXCL2は、それぞれリンホタクチン-α及び-βとしても既知であり、Cケモカイン/γケモカインファミリーの唯一のメンバーである。XCL1は、活性化CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞、胸腺髄質上皮細胞などを含む様々な免疫細胞によって発現され、分泌される。XCL2は、XCL1のパラログであり、遺伝子重複から生じたと考えられており、XCL1とほぼ同一のアミノ酸配列(N末端領域の2つのアミノ酸のみがXCL1と異なる)を有する。XCL1及びXCL2は、この構造的類似性の結果として類似した機能を有すると考えられる。
【0004】
2つのジスルフィド結合を形成することができるそれらのアミノ末端付近に4つのシステイン残基を有するほとんどの他のケモカインとは異なり、XCL1及びXCL2は、単一のジスルフィド結合を形成するそのようなシステインを2つだけ有する。これによって、ケモカインは、標準的な単量体のα-ヘリックス含有ケモカインフォールドを有する第1の立体配置と、第2の主にβ-シート形態との間で相互変換して、変性することができる。形態間のこの変換は、典型的には、毎秒数回起こる。単量体α-ヘリックス形態は、受容体XCR1に結合して活性化し、細胞移動を誘導することができる。α-ヘリックス形態は、β-シート形態への立体構造変化を受け、これは、単量体形態で存在し得るが、二量体化に有利である。二量体又はβ-シート立体配置にある場合、XCL1は、XCR1結合に対して不活性であり、二量体は、細胞表面上のグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan、GAG)に付着することができる。単量体α-ヘリックス形態は、GAGに結合しない。Lei and Takahama,Microbes and Infection 14(2012)262-267、Fox et al.,ACS Chem.Biol.10(11)(2015)2580-2588を参照されたい。これらの形態間の頻繁な変換は、特に二量体及びβ-シート形態の不活性、並びにGAG上の細胞表面で凝集するその傾向を考慮すると、ケモカインの二量体形態に結合することができる抗体がケモカインの不活性形態に主に結合することができ、薬物動態、免疫原性、及び有効性に関して未知の特性をもたらすため、特に療法剤としての抗XCL1及び抗XCL2抗体の設計を複雑にする。
【0005】
自己免疫疾患は、身体が自身の組織に対する免疫応答を産生することから生じる免疫媒介性疾患の一形態である。これらの状態は、多くの場合慢性であり、かつ衰弱性であり得、致命的でさえあり得る。免疫媒介性疾患に対する現在のFDA承認の治療としては、急性炎症の治療に使用されることが多いコルチコステロイド、並びにTNFα、インターロイキン-12、-17、及び-23を標的とするバイオ製品が挙げられる。これらの治療は一部の患者の症状を低減する際に有効であることが実証されているが、あるパーセンテージの患者は、非応答のままであるか、又は現在利用可能な治療に対して応答を失う。したがって、免疫媒介性疾患の治療のための異なるヒト標的及び経路を標的とする追加の療法が依然として必要とされている。
【0006】
自己免疫疾患の一部は、円形脱毛症、白斑、UC、1型糖尿病、乾癬、RA、MS、及び喘息を含む、これらの細胞が体内のある特定の部位に移動した場合のCD8+T細胞の過剰活性及びCD8+T細胞による組織損傷と関連付けられているが、これらの状態の根底にあるCD8+T細胞活性化の機構に関する詳細の多くは解明されていない。例えば、樹状細胞(dendritic cell、DC)によるCD8+T細胞活性化に特異的な役割は、チェックポイントアンタゴニストの研究など、免疫学ではなく腫瘍学の分野において一般に解明されている。これは、従来の樹状細胞1(conventional dendritic cell 1、cDC1)として既知のDCの一部に当てはまり、例えば、Bowman-Kirigin et al.,「The Conventional Dendritic Cell 1 Subset Primes CD8+T Cells and Traffics Tumor Antigen to Drive Antitumor Immunity in the Brain,」Cancer Immunol Res,11(1)(2023)p.20-37を参照されたい。
【0007】
XCL1抗体は、XCL1の検出及び可視化のための研究ツールとして存在するが、現在まで、XCL1特異的アンタゴニスト抗体療法のための承認された又は既知の臨床候補はない。したがって、RA、MS、喘息、乾癬、UC、1型糖尿病、円形脱毛症、白斑などの免疫媒介性疾患の治療に有用な、ヒトXCL1を標的とする抗体、医薬組成物、及び方法に対する満たされていない必要性が残っている。ヒトXCL1の強力な中和剤(すなわち、アンタゴニスト)であることを含む、良好な療法的特徴を保有するXCL1抗体が必要とされている。そのような抗体の有利な特性としては、ヒトXCL1に対する高い結合親和性、並びに特にXCL1と類似の配列及び/又は構造を有し得る他のケモカインに対する低い非特異的結合が挙げられ得る。そのようなXCL1抗体はまた、治療的に許容される薬物動態(pharmacokinetics、Pk)プロファイルを保有し、低い免疫原性を実証すべきである。そのようなXCL1抗体はまた、高レベルの溶解性及び低レベルの凝集を含めて、商業的製造に適しているはずである。本開示は、免疫媒介性疾患の治療に使用するための、これらの必要性のうちの1つ以上に対処するXCL1抗体を提供する。
【0008】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトXCL1に対する抗体を提供する。本明細書に開示される抗体はまた、ヒトXCL2に結合し、それを中和する。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの実施形態によれば、本発明の抗体は、ヒトXCL1に対して拮抗的であり、いくつかの実施形態では、ヒトXCL2に対して拮抗的である。一態様では、重鎖可変領域(heavy chain variable region、HCVR)及び軽鎖可変領域(light chain variable region、LCVR)を含むヒトXCL1に結合する抗体が本明細書に記載される。HCVRは、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。LCVRは、CDR LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。HCDR1は、配列番号10であるか又はそれを含む。HCDR2は、配列番号11であるか又はそれを含む。HCDR3は、配列番号12であるか又はそれを含み、式中、Zは、Q及びEから選択される。LCDR1は、配列番号5であるか又はそれを含み、式中、Xは、S及びDから選択される。LCDR2は、配列番号8であるか又はそれを含む。LCDR3は、配列番号9であるか又はそれを含む。
【0010】
一実施形態では、Zは、Eである。別の実施形態では、Zは、Qである。
【0011】
一実施形態では、Xは、Dである。別の実施形態では、Xは、Sである。
【0012】
一実施形態では、HCDR1は、配列番号10であるか又はそれを含み、HCDR2は、配列番号11であるか又はそれを含み、HCDR3は、配列番号13であるか又はそれを含み、LCDR1は、配列番号6であるか又はそれを含み、LCDR2は、配列番号8であるか又はそれを含み、LCDR3は、配列番号9であるか又はそれを含む。
【0013】
一実施形態では、LCVRは、配列番号17であるか又はそれを含み、HCVRは、配列番号15であるか又はそれを含み、式中、Xは、Q及びピログルタミン酸から選択される。一実施形態では、Xは、Qである。
【0014】
一実施形態では、抗体は、重鎖(heavy chain、HC)及び軽鎖(light chain、LC)を有し、HCのアミノ酸配列は、配列番号19であるか又はそれを含み、式中、Xは、Q及びピログルタミン酸から選択され、Xは、Gであるか又は存在せず、Xは、Kであるか又は存在せず、LCのアミノ酸配列は、配列番号21であるか又はそれを含む。一実施形態では、Xは、Qであり、Xは、Gであり、Xは、Kである。
【0015】
一実施形態では、HCDR1は、配列番号10であるか又はそれを含み、HCDR2は、配列番号11であるか又はそれを含み、HCDR3は、配列番号14であるか又はそれを含み、LCDR1は、配列番号7であるか又はそれを含み、LCDR2は、配列番号8であるか又はそれを含み、LCDR3は、配列番号9であるか又はそれを含む。
【0016】
一実施形態では、LCVRのアミノ酸配列は、配列番号18であるか又はそれを含み、HCVRのアミノ酸配列は、配列番号16であるか又はそれを含み、式中、Xは、Q及びピログルタミン酸から選択される。一実施形態では、Xは、Qである。
【0017】
一実施形態では、抗体は、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を有する。HCは、配列番号20であるか又はそれを含み、式中、Xは、Q及びピログルタミン酸から選択され、Xは、Gであるか又は存在せず、Xは、Kであるか又は存在せず、LCは、配列番号22であるか又はそれを含む。一実施形態では、Xは、Qであり、Xは、Gであり、Xは、Kである。
【0018】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、XCL1アンタゴニストであり得る。
【0019】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトXCL2に結合し得る。
【0020】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、XCL2アンタゴニストであり得る。
【0021】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、二量体XCL1に結合し得る。二量体XCL1は、ホモ二量体XCL1であり得る。抗体は、β-シート立体配置にあるXCL1に結合し得る。ホモ二量体XCL1は、細胞の表面上のグリコサミノグリカンに結合し得る。
【0022】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、二量体XCL2に結合し得る。二量体XCL2は、ホモ二量体XCL2であり得る。抗体は、β-シート立体配置にあるXCL2に結合し得る。ホモ二量体XCL2は、細胞の表面上のグリコサミノグリカンに結合し得る。
【0023】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、XCL1の1つの単量体及びXCL2の1つの単量体を含むヘテロ二量体複合体に結合し得る。そのような実施形態では、抗体は、ヘテロ二量体複合体のXCL1単量体の少なくとも1つのアミノ酸又はXCL2単量体の少なくとも1つのアミノ酸に結合する。ヘテロ二量体複合体は、細胞の表面上のグリコサミノグリカンに結合し得る。
【0024】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、XCL1及びXCL2以外のケモカインに結合しない。
【0025】
一実施形態では、抗体は、配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0026】
一実施形態では、抗体は、配列番号19に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖(HC)及び配列番号21に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖(LC)を含む。
【0027】
一実施形態では、抗体は、配列番号16に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0028】
一実施形態では、抗体は、配列番号20に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖(HC)及び配列番号22に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖(LC)を含む。
【0029】
一実施形態では、抗体は、配列番号27の1つ以上のアミノ酸を含むXCL1のエピトープに結合する。一実施形態では、抗体は、配列番号27の2つ以上のアミノ酸に結合する。実施形態では、抗体は、配列番号27の3つ以上のアミノ酸に結合する。
【0030】
一実施形態では、抗体は、配列番号29の1つ以上のアミノ酸に結合する。
【0031】
一実施形態では、抗体は、配列番号28の1つ以上のアミノ酸を含むXCL1のエピトープに結合する。一実施形態では、抗体は、配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合する。
【0032】
実施形態では、配列番号27の1つ以上のアミノ酸及び配列番号28の1つ以上のアミノ酸を含むXCL1のエピトープに結合する抗体。一実施形態では、抗体は、配列番号27の2つ以上のアミノ酸及び配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合する。一実施形態では、抗体は、配列番号29の1つ以上のアミノ酸に結合する。
【0033】
一実施形態では、抗体は、ヒトIgG1アイソタイプを有する。
【0034】
本開示はまた、上記の実施形態のいくつかに記載されるような抗体と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0035】
本開示は、円形脱毛症、白斑、喘息、乾癬、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、又は潰瘍性大腸炎の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の本明細書に記載の抗体又は医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0036】
本開示は、療法に使用するための、例えば、円形脱毛症、白斑、喘息、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、又は潰瘍性大腸炎の治療に使用するための抗体又は医薬組成物を提供する。
【0037】
本開示は、円形脱毛症、白斑、喘息、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、又は潰瘍性大腸炎の治療のための医薬剤の製造における抗体又は医薬組成物の使用を提供する。
【0038】
一態様では、配列番号23、配列番号24、配列番号25、又は配列番号26をコードする配列を含む核酸が提供される。一態様では、配列番号23又は配列番号25をコードする第1の核酸配列及び配列番号24又は配列番号26をコードする第2の核酸配列を含むベクターが記載され、そのようなベクターを含む細胞も記載される。一実施形態では、抗体を産生する方法であって、抗体が発現されるような条件下で当該細胞を培養することと、発現された抗体を培養培地から回収することと、を含む、方法が開示される。一実施形態では、抗体が発現されるような条件下で当該細胞を培養し、発現された抗体を培養培地から回収することによって産生された抗体が開示される。
【0039】
一態様では、二量体XCL1及び二量体XCL1に結合した抗体を含む、タンパク質複合体が提供される。二量体XCL1は、ホモ二量体XCL1であり得る。抗体は、二量体XCL1の各単量体単位上の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し得る。
【0040】
一態様では、二量体XCL2及び二量体XCL2に結合した抗体を含む、タンパク質複合体が提供される。二量体XCL2は、ホモ二量体XCL2であり得る。抗体は、二量体XCL2の各単量体単位上の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し得る。
【0041】
一態様では、XCL1の単量体単位及びXCL2の単量体単位から構成されるヘテロ二量体と、ヘテロ二量体に結合した抗体と、を含む、タンパク質複合体が提供される。この実施形態では、抗体は、XCL1の少なくとも1つのアミノ酸残基、又はXCL2の少なくとも1つのアミノ酸残基、又はXCL1の少なくとも1つの残基及びXCL2の少なくとも1つの残基に結合し得る。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体の実施形態には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性若しくは多重特異性抗体、又はコンジュゲート抗体が含まれる。抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA)、及び任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)であってもよい。
【0043】
本開示の例示的な抗体は、4つのポリペプチド鎖:鎖間ジスルフィド結合を介して架橋される2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)から構成された、免疫グロブリンG(immunoglobulin G、IgG)型抗体である。4つのポリペプチド鎖の各々のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~125個以上のアミノ酸の可変領域を含む。4つのポリペプチド鎖の各々のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を含有する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域から構成される。IgGアイソタイプは、サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)に更に分割され得る。
【0044】
VH及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)と呼ばれる、より保存されている領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変領域に更に細分され得る。CDRはタンパク質の表面上に露出しており、抗原結合特異性のための抗体の重要な領域である。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成されており、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される。本明細書では、重鎖の3つのCDRを「HCDR1、HCDR2、及びHCDR3」と称し、軽鎖の3つのCDRを「LCDR1、LCDR2、及びLCDR3」と称する。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含有する。アミノ酸残基のCDRへの割り当ては、Kabat(Kabat et al.,「Sequences of Proteins of Immunological Interest,」National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、Chothia(Chothia et al.,「Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,196,901-917(1987)、Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、North(North et al.,「A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations」,Journal of Molecular Biology,406,228-256(2011))、又はIMGT(www.imgt.orgで利用可能なthe international ImMunoGeneTics database;Lefranc et al.,Nucleic Acids Res.1999;27:209-212を参照されたい)に記載されるものを含む、周知のスキームに従って行うことができる。
【0045】
本開示の実施形態はまた、本明細書で使用される場合、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、scFv抗体断片、scFab、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fd断片などの、抗原又は抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力を保持する抗体の少なくとも一部を含む、抗体断片又は抗原結合断片を含む。
【0046】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、任意の真核生物、原核生物、若しくはファージクローンを含む単一のコピー又はクローンに由来する抗体であり、それが産生される方法ではない。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージ提示技術、合成技術、例えば、CDR移植、又はそのような技術若しくは当該技術分野で既知の他の技術の組み合わせにより産生することができる。
【0047】
抗体を産生及び精製する方法は、当該技術分野で周知されており、例えば、Harlow and Lane(1988),Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring harbor,N.Y.,chapters 5-8 and 15,ISBN 0-87969-314-2に見ることができる。例えば、当該技術分野で既知の遺伝子形質転換マウス又はウサギを含む、マウス又はウサギは、ヒトXCL1又はその部分で免疫化してもよく、得られた抗体を回収、スクリーン、精製することができ、アミノ酸配列を、当該技術分野で周知の従来の方法を使用して決定することができる。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、抗体、又は抗体をコードする核酸は、単離された形態で提供される。本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、細胞環境内に見出される他の高分子種を含まないか、又はそれを実質的に含まない、タンパク質、ポリペプチド、又は核酸を指す。
【0049】
本発明の抗体は、既知の方法を使用して調製及び精製され得る。例えば、HC(例えば、配列番号19又は配列番号20によって示されるアミノ酸配列)及びLC(例えば、配列番号21又は配列番号22によって示されるアミノ酸配列)をコードするcDNA配列は、クローン化して、GS(グルタミンシンセターゼ)発現ベクター中に操作され得る。一例では、抗体は、配列番号19によって示されるアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号21によって示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を有し、そのような例において、鎖を発現するために使用され得るcDNA配列は、それぞれ配列番号23及び配列番号24によって提供される。別の例では、抗体は、配列番号20によって示されるアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号22によって示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を有し、この例において、鎖を発現するために使用され得るcDNA配列は、それぞれ配列番号25及び配列番号26によって提供される。
【0050】
次いで、操作した免疫グロブリン発現ベクターを、CHO細胞に安定的にトランスフェクトし得る。当業者が理解するように、抗体の哺乳動物発現は、典型的にはFc領域の高度に保存されたN-グリコシル化部位でグリコシル化をもたらすであろう。安定したクローンは、ヒトXCL1(例えば、配列番号1を含む組換え的に産生されたペプチドによって表される)に特異的に結合する抗体の発現について検証され得る。陽性クローンを、バイオリアクターでの抗体産生のために無血清培養培地中に拡大し得る。抗体が分泌された培地を、従来の技術によって精製し得る。例えば、培地を、リン酸緩衝生理食塩水などの適合性のある緩衝液で平衡化されたプロテインA又はG Sepharose FFカラムに都合よく適用し得る。カラムを洗浄して、非特異的結合構成成分を除去する。結合した抗体は、例えば、pH勾配によって溶出され、抗体画分は、例えば、SDS-PAGEによって検出され、次いでプールされる。抗体を、一般的な技術を使用して濃縮及び/又は滅菌濾過し得る。可溶性凝集体及び多量体を、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む一般的な技術によって効果的に除去し得る。生成物は、例えば、-70℃で直ちに凍結され得るか、又は凍結乾燥され得る。
【0051】
本発明の抗体は、患者の治療に使用することができる。より具体的には、本発明の抗体は、円形脱毛症、白斑、喘息、RA、MS、UC、乾癬、及び1型糖尿病を含む免疫媒介性疾患又は障害の治療に有用であると期待される。本明細書で互換的に使用される場合、「治療」及び/又は「治療すること」及び/又は「治療する」は、本明細書に記載の障害の進行を遅らせること、妨害すること、抑止すること、制御すること、停止させること、又は逆行させることであってもよい全てのプロセスを指すことが意図されるが、全ての障害の症状の完全な排除を必ずしも示すものではない。治療は、XCL1及び/又はXCL2活性の低減から利益を得るであろうヒトにおける疾患又は状態の治療のための本発明の抗体、又はその医薬組成物の投与を含み、(a)疾患の更なる進行を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること、あるいは(b)疾患を軽減すること、すなわち、疾患若しくは障害の退行を引き起こすこと、又はその症状若しくは合併症を緩和することを含む。
【0052】
本明細書で互換的に使用される場合、「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は、ヒトを指す。ある特定の実施形態では、患者は、XCL1及び/又はXCL2活性の低減から利益を得るであろう疾患、障害、又は状態(例えば、免疫媒介性疾患)を更に特徴とする。他の実施形態では、患者は、XCL1及び/又はXCL2活性の低減から利益を得るであろう免疫媒介性疾患、障害、又は状態を発症するリスクがあることを更に特徴とする。
【0053】
本明細書で言及される場合、「エピトープ」という用語は、抗体によって結合される抗原のアミノ酸残基を指す。エピトープは、直鎖状エピトープ、立体構造エピトープ、又はハイブリッドエピトープであり得る。
【0054】
「エピトープ」という用語は、構造的エピトープに関して使用され得る。構造的エピトープは、いくつかの実施形態によれば、抗体によってカバーされる抗原の領域(例えば、抗原に結合したときの抗体のフットプリント)を説明するために使用され得る。いくつかの実施形態では、構造的エピトープは、抗体のアミノ酸残基の特定の近接内(例えば、特定のオングストローム数内)にある抗原のアミノ酸残基を説明し得る。
【0055】
「エピトープ」という用語はまた、機能的エピトープに関して使用され得る。機能的エピトープは、いくつかの実施形態によれば、抗原と抗体との間の結合エネルギーに寄与する様式で抗体のアミノ酸残基と相互作用する抗原のアミノ酸残基を説明するために使用され得る。
【0056】
エピトープは、「エピトープマッピング技術」とも呼ばれる異なる実験技術に従って決定することができる。エピトープの決定は、使用される異なるエピトープマッピング技術に基づいて変動し得、例えば、特定の実験条件によって誘導される抗原の立体構造変化又は切断に起因して、使用される異なる実験条件によっても変動し得ることが理解される。X線結晶学、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分光法、部位特異的突然変異誘発、種スワップ突然変異誘発、アラニン走査突然変異誘発、水素-重水素交換(hydrogen-deuterium exchange、HDX)、及びクロスブロッキングアッセイが挙げられるが、これらに限定されないエピトープマッピング技術は、当該技術分野において既知である(例えば、Rockberg and Nilvebrant,Epitope Mapping Protocols:Methods in Molecular Biology,Humana Press,3rd ed.2018)。
【0057】
本明細書で使用される場合、「結合する(bind)」、「結合する(binds)」、及び「結合すること(binding)」という用語は、別段示されない限り、化学結合又は別のタンパク質若しくは分子との引力相互作用を形成するタンパク質又は分子の能力を意味し、当該技術分野で既知の一般的な方法によって決定されるように、2つのタンパク質又は分子の密接な近接をもたらす。特に抗体の抗原への結合に関して、「結合する(bind)」、「結合する(binds)」、及び「結合すること(binding)」という用語は、抗体の超可変領域のCDRの1つ以上と抗原との相互作用を指し、つまり、特異的結合は、CDRの1つ以上によって抗体に付与され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」及び「特異的結合」という用語は、特異的結合対の一方のメンバーが、その特異的結合パートナー以外の分子に有意に結合しない状況を指す。例えば、ある特定の抗体は、XCL1及びXCL2に特異的に結合するが、他の類似のタンパク質(例えば、ケモカインなど)には結合しないと言うことができる。抗体は、当該技術分野で利用可能な技術、例えば、競合ELISA又はBIACORE若しくはKINEXAアッセイを用いたK測定によって測定されるように、それが異なる抗原又は非抗原標的に結合するよりも少なくとも約50%大きく、又は2倍大きく、又は20倍大きく、又は50倍大きく、又は100倍大きく結合する場合、抗原に特異的に結合すると言うことができる。
【0059】
本発明の抗体は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができ、本発明の抗体と、1つ以上の薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤と、を含む、医薬組成物に組み込むことができる(例えば、一般に開業医に既知の製剤化技術の概要を提供する、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Loyd V.,Ed.,Pharmaceutical Press,2012)。医薬組成物に好適な担体には、本発明の抗体と組み合わせたときに分子の活性を保持し、かつ患者の免疫系と非反応性である、任意の材料が含まれる。
【0060】
本発明の抗体を含む医薬組成物は、親的経路(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、又は経皮)によって、本明細書に記載の疾患若しくは障害のリスクがあるか、又はそれを呈する患者に投与され得る。本発明の医薬組成物は、「有効」量又は「治療有効」量(本明細書で互換的に使用される)の本発明の抗体を含有する。有効量は、所望の治療結果を達成するのに必要な量(投与量及び期間及び投与手段で)を指す。抗体の有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに抗体が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因に応じて変動し得る。有効量はまた、本発明の抗体の任意の毒性効果又は有害効果よりも治療的に有益な効果が上回る量である。
【0061】
2つ以上のアミノ酸配列に関連して、本開示において使用される場合、相同性パーセントは、配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN、又は当業者が利用可能な他のアルゴリズム)を使用して、又は目視検査によって測定されて、最大一致について比較及び整列されたときに、特定されるパーセンテージの同じアミノ酸残基を有する2つ以上の配列を指す。用途に応じて、相同性パーセントは、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能的ドメインにわたって存在するか、あるいは比較される2つの配列の全長にわたって存在することができる。例として、配列の相同性パーセントを参照配列と比較することができる。例えば、配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列をコンピュータに入力することができる(必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムのパラメータとともにサブシーケンス座標を更に指定することができる)。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムのパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性又は相同性パーセントを計算する。例示的な配列アラインメント及び/又は相同性アルゴリズムは、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)、GAP,BESTFIT,FASTA,and TFASTA(the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)を通じて利用可能であるか、又は目視検査(一般に、Ausubelら、以下を参照されたい)による。配列同一性及び配列類似性パーセントを決定するために好適であるアルゴリズムの一例は、BLASTアルゴリズムであり、これは、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公に利用可能である。
【0062】
いくつかの場合において、抗体の組換え産生が抗体の改変をもたらし得ることが知られている。そのような改変の例としては、HCのC末端におけるリジン若しくはグリシンの喪失、重鎖のN末端におけるグルタミン若しくはグルタミン酸のピログルタミン酸への変換、又はラムダ軽鎖のN末端におけるグルタミン若しくはグルタミン酸のピログルタミン酸への変換が挙げられる。これは、改変のないもの、単一の改変、又は複数の改変を有するものを含む、抗体の不均一な混合物の産生をもたらし得る。本開示の抗体は、そのような改変を受けてもよく、それに由来する特許請求の範囲によって包含される。
【0063】
一実施形態では、本発明の抗体は、XCL1に結合し、XCL1を中和する。一実施形態では、本発明の抗体は、XCL2に結合し、XCL2を中和する。
【0064】
一実施形態では、本発明の抗体は、XCR1を発現する細胞の移動を妨害又は防止する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、樹状細胞移動を中和する。一実施形態では、樹状細胞は、cDC1である。
【0065】
一実施形態では、本発明の抗体は、5.0×10-11M未満のXCL1に対するKを有する。一実施形態では、本発明の抗体は、1.0×10-11M未満のXCL2に対するKを有する。
【0066】
一実施形態では、本発明の抗体は、β-シート単量体立体配置にあるXCL1に結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、二量体立体配置にあるXCL1に結合する。
【0067】
一実施形態では、本発明の抗体は、β-シート単量体立体配置にあるXCL2に結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、二量体立体配置にあるXCL2に結合する。
【0068】
一実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ホモ二量体XCL1に結合する。実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ホモ二量体XCL2に結合する。一実施形態では、本明細書の抗体は、XCL1の1つの単量体及びXCL2の1つの単量体を含むヘテロ二量体複合体に結合する。一実施形態では、本明細書に開示される抗体は、遊離単量体XCL1及び/若しくはXCL2、並びに/又は遊離ホモ二量体XCL1、並びに/又は遊離ホモ二量体XCL2、並びに/又はXCL1及びXCL2の遊離ヘテロ二量体に結合する。一実施形態では、本開示の抗体は、GAGに結合したホモ二量体XCL1、並びに/又はGAGに結合したホモ二量体XCL2、並びに/又はGAGに結合したXCL1及びXCL2のヘテロ二量体に結合する。
【0069】
一実施形態では、抗体は、配列番号29によって示される配列(つまり、スレオニン16、グルタミン17、アルギニン18、ロイシン19、及びプロリン20)に結合する。実施形態では、抗体は、リジン42及びアルギニン43とともに配列番号29によって示される配列に結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号27の1つ以上のアミノ酸、又は配列番号27の2つ以上のアミノ酸、又は配列番号27の3つ以上のアミノ酸に結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号28の1つ以上のアミノ酸、又は配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合する。実施形態では、本発明の抗体は、配列番号29の1つ以上のアミノ酸に結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号27の1つ以上のアミノ酸及び配列番号28の1つ以上のアミノ酸、又は配列番号27の2つ以上のアミノ酸及び配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合する。
【0070】
一実施形態では、本発明の抗体は、抗炎症活性を有し、療法剤として使用され得る。
【0071】
一態様では、本発明の抗体は、XCL1及び/又はXCL2に結合するが、別のケモカインに特異的に結合しない。
【実施例0072】
実施例1:組換えXCL1及びその変異体、並びにXCL2の発現
各タンパク質(ヒトXCL1、配列番号1;ヒトXCL2、配列番号2;CC3、配列番号3;及びCC5、配列番号4)をN末端の8xHisタグ、周知のBRIL融合タンパク質、エンテロキナーゼ(enterokinase、EK)切断部位、次いでC末端の特異的タンパク質(XCL1など)で構成された融合タンパク質として発現させた。融合タンパク質発現プラスミドを使用して、当該技術分野で既知の方法によって、各タンパク質について安定したCHO-K1細胞株を作成した。融合タンパク質を発現させ、化学的に定義された培地中で分泌させた。培地を回収し、融合タンパク質をNi-IMACカラム(例えば、Pierceから入手可能なもの)上で捕捉し、pH7.5の375mMのイミダゾールで溶出した。Ni-IMACプールをEK消化緩衝液(20mMのトリス、100mMのNaCl、5mMのCaCl、pH8)中に透析し、融合タンパク質をEKで一晩インキュベートした。遊離タンパク質をCapto-S樹脂(Cytivaカタログ番号17544101)で捕捉した後、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 75-Cytivaカタログ番号28989333)で研磨した。タンパク質の同一性を質量分析によって確認した。
【0073】
実施例2:抗XCL1抗体の発現
本発明の例示される抗XCL1抗体を、下の表1に提示する。抗体を化学的に定義された培地中の安定したCHO-K1細胞株中で産生した。それらをPRISMA樹脂(Cytiva-カタログ番号1754981)上で捕捉し、pH3の緩衝液で溶出した。PRISMAプールをpH5にして、宿主細胞タンパク質(host cell protein、HCP)を沈殿させた。タンパク質を、POROS 50HS(Thermo Fisherカタログ番号1335906)を使用して陰イオン交換クロマトグラフィー(anion exchange chromatography、AEX)によって研磨し、次いで10mMのヒスチジン、275mMのスクロース、pH6中に透析した。材料を分析的サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)によって分析し、質量分析を使用して確認した。
【0074】
【表1】
【0075】
配列番号27によって示されるHCアミノ酸配列及び配列番号28によって示されるLCアミノ酸配列を有する、単量体XCL1に特異的に結合する(つまり、高い親和性でCC3に結合し、CC5に結合しない;下の実施例を参照されたい)対照抗体。HC及びLCを発現するために使用され得るcDNA配列は、それぞれ、配列番号29及び配列番号30によって示される。この抗体は、本明細書において単量体結合対照(monomer-binding control、MBC)と称される。
【0076】
例示される抗XCL1抗体の様々な領域の関係は、以下の通りである(アミノ酸の番号付けは、線形番号付けを適用し、可変ドメインへのアミノ酸の割り当ては、www.imgt.orgで利用可能なInternational Immunogenetics Information System(登録商標)に基づく)。例示される各抗体のCDRドメインへのアミノ酸の割り当ては、C末端が周知のKabat番号付け規則に基づくHCDR2を除いて、周知のNorth番号付け規則に基づく。
【0077】
本開示の例示される抗体は、高い結合親和性を保有し、療法用親的投与と一致する凝集及び溶解性を含めて化学的及び物理的に安定していると特定される。本開示の例示される抗体はまた、低い免疫原性(低い非特異的結合及び/又は血清結合を含む)を保有し、免疫媒介性疾患の治療のための療法用親的投与と一致する薬物動態特性を保有するものとして特定される。一態様では、本明細書に開示される抗体は、IgG1アイソタイプのヒト抗体である。本明細書に開示される抗体は、モノクローナル抗体である。他のアイソタイプ(例えば、IgG4など)の抗体もまた、本開示によって企図される。
【0078】
実施例3:XCL1変異体CC3及びCC5の特性
XCL1は、塩及び温度条件に依存して主要な立体構造再編成を容易に受ける変成タンパク質である。高い塩及び低い温度(10℃)は、同族受容体、XCR1を介してシグナル伝達することができる標準的なケモカインフォールドに典型的なα-ヘリックスモチーフを有する活性単量体立体構造に有利に働くが、低い塩及びより高い温度(40℃)は、二量体化して内因性グリコサミノグリカン(GAG)に結合し得る不活性β-シート立体配置に有利に働く。
【0079】
各立体配置の特性を別々に研究するために、操作した変異体タンパク質を発現させ、精製した。CC3(配列番号3)は、残基21及び59がシステインに突然変異した場合(V21C/V59C)のジスルフィド結合の作成を通して、活性なα-ヘリックス含有単量体立体構造で安定化されたXCL1の操作された変異体である。同様に、残基36及び49におけるシステインへの突然変異(A36C/A49C)は、CC5(配列番号4)と呼ばれる、二量体状態に向かう傾向がある不活性β-シート立体配置を安定化する代替ジスルフィド構造を作成する。これらの変異体は、当該技術分野で既知であり、文献に明記されているように調製された(Biopolymers 2021 Oct、112(10):e23402 doi:10.1002/bip.23402.Epub 2020 Sep 28を参照されたい)。
【0080】
XCR1は、いくつかのタイプの樹状細胞(DC)、主に1型従来型樹状細胞(cDC1)上で発現される。cDC1は、主要組織適合性複合体Iとの関連でCD8+T細胞への抗原提示に適した抗原提示細胞(antigen presenting cell、APC)である。CD8+T細胞がXCL1を分泌するため、ケモイン性勾配が生じ、XCR1保有細胞をCD8+T細胞の部位(例えば、腫瘍又は自己免疫部位内)に誘引し、免疫応答を増強する。Dorner et al.,Immunity 31(2009)823-833、Audsley et al.Cells 9(2020)565 1-22を参照されたい。
【0081】
組換えヒトXCL1、CC3、及びCC5を調製し、ヒトXCR1を安定して過剰発現させるマウスBa/F3細胞株を利用する移動アッセイにおいて評価した。この細胞株は、5μMのボイデンチャンバーアッセイプレートにおいて、XCL1ケモカイン勾配インビトロに向かって移動する。下部チャンバーには様々な濃度のXCL1を添加して、上部チャンバーには150,000細胞/ウェルでアッセイを設定する。細胞を37℃で約4時間にわたって移動させ、発光細胞生存率読み出しを使用して移送した細胞を定量する。結果を下の表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
CC3については、野生型XCL1(858.4nM)と比較して、約114.7nMのEC50で強い移動が起こる。CC5については、移動は観察されなかった。これらのデータは、組換えCC3及びCC5がXCL1の2つの異なる立体構造を表すことを示す文献における観察を確認する。
【0084】
実施例4:結合動態及び親和性
Biacore 8K(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴によって、ヒトXCL1、ヒトXCL2、マウスXCL1、カニクイザル(cynomolgus、cyno)XCL1、及びラットXCL1に対する本発明の抗体及びMBCの親和性及び結合動態を決定した。手順は、一般に、「Instrument Handbook」に従う。抗体を最初にBiacore Protein Aチップ上で捕捉し、続いて、PBS-P20-BSA(0.1%の界面活性剤P20、0.1mg/mLのBSA)中の2倍連続希釈で400nMから0.039nMまでの連続濃度の抗原を流した。全ての測定を25℃で実施する。
【0085】
各試料注入後に表面を再生する別々のサイクルにおいて各分析物濃度を実行するマルチサイクル動態設定を使用する。再生を、サイクル毎に一貫した表面特性を維持するように最適化する。各サイクルは、10μl/分の流速での抗体(約150応答単位(response unit、RU)捕捉レベル)の3分間の注入で開始し、50μl/分の流速での抗原の3分間の注入及びPBS-P20-BSA中で15分間の解離相が続く。次いで、pH1.5、10mMのグリシン緩衝液を50μl/分の流速で3回30秒間注入することによって、チップ表面を再生した。データを1:1の結合モデルに適合させて、k及びkを導き出し、Kを計算した。
【0086】
本質的に上記の手順に従って、本発明における抗体について以下のパラメータが得られる。
【0087】
【表3】
【0088】
注目すべきことに、抗体1及び2は、良好な親和性でCC5に結合するが、CC3には結合せず、一方、MBCの単量体特異的結合ではその逆が観察される。これは、CC3におけるシステインの導入が、抗体1及び2が結合するエピトープに干渉し得るためであり得る。結晶学実験は、抗体1及び抗体2がβ-シート単量体形態のXCL1に結合するということを支持する。一態様では、抗体1及び2は、主に及び優先的に二量体形態に結合すると称され得、これらの結果は、抗体1及び2がホモ二量体XCL1に結合し得ることを実証する。
【0089】
実施例5:XCL1及びXCL2の中和:ヒトXCR1移動アッセイ
XCL1及びXCL2は、XCR1受容体を通して媒介されるケモイン性活性を有する高度に保存されたケモカインである。マウス細胞株Ba/F3をヒトXCR1受容体で安定してトランスフェクトして、XCL1/2がインビトロ系において移動を誘導する能力を評価した。
【0090】
このアッセイのために、150,000個の組換えhXCR1/Ba/F3細胞を、5μMのボイデンチャンバーアッセイプレートの上部チャンバーに播種し、XCL1濃度を、下部チャンバーに添加された各々の種について経験的に決定した。細胞をXCL1/2勾配に向かって約4時間移動させ、下部チャンバー中の細胞を発光細胞生存率読み出しによってアッセイした。このアッセイでは、ヒトXCL1、ヒトXCL2、マウス、ラット、及びカニクイザルXCL1は全て、移動を誘導する。リガンドの用量応答を行った後、単一濃度のXCL1/2を選択し、試験した各mABの用量応答とともにボイデンチャンバープレートの下部チャンバーに使用した。各抗体の中和IC50値を決定した。下の表4に見られるように、全ての抗体は、ヒトXCL1及びXCL2、並びにラット、マウス、及びカニクイザルXCL1を中和することができた。
【0091】
【表4】
【0092】
表3及び4に提供される結果は、両方の例示される抗体が、高い親和性でXCL1及びXCL2の両方に結合し、インビトロアッセイにおいて両方のケモカインを中和することを実証する。したがって、本開示の抗体は、療法的にXCL1、XCL2、又はそれらの両方の結合及び中和に有用であることが理解されるであろう。本明細書に開示される抗体はホモ二量体XCL1に結合し、XCL1とXCL2との間の配列類似性のために、抗体はホモ二量体XCL2に結合することが理解されるであろう。抗体はまた、XCL1及びXCL2のうちの1つの単量体を形成し得、かつ含むヘテロ二量体複合体に結合する。本開示の抗体は、遊離単量体XCL1若しくはXCL2、又は遊離ホモ二量体XCL1、又は遊離ホモ二量体XCL2、又はXCL1及びXCL2の遊離ヘテロ二量体に結合し得る。本開示の抗体はまた、GAGに結合したホモ二量体XCL1、又はGAGに結合したホモ二量体XCL2、又はGAGに結合したXCL1及びXCL2のヘテロ二量体に結合し得る。
【0093】
実施例6:抗体によるXCL1活性の中和:樹状細胞移動
XCL1及びXCL2は、従来の1型樹状細胞(cDC1)を発現するXCR1の移動を刺激する。XCL1/2抗体中和活性を実証するために、ヒトcDC1細胞をCD34+幹細胞から分化させ、ボイデンチャンバーを通るXCL1へのそれらの移動をフローサイトメトリーによって測定した。簡潔には、ヒト臍帯血由来のCD34+細胞を、DLL1を発現するフィーダー層上のサイトカインカクテル中で3週間にわたって分化させた(Balan et al.doi:10.1016/j.celrep.2018.07.033から改作)。細胞を、骨髄樹状細胞キットを使用して濃縮した(StemCell;系統陰性、HLA-DR、CD11c)。10ng/mLのXCL1+抗体用量滴定を三連で1時間プレインキュベートし、ボイデンチャンバーの下部チャンバーに添加した。用いた抗体は、抗体1、抗体2、及びhIgG1-AASアイソタイプ対照抗体であった。150,000個の濃縮分化細胞をボイデンチャンバーの上部チャンバーに添加し、2時間インキュベートした。下部チャンバー中の移動したヒトcDC1細胞を染色し(生/死、CLEC9A、XCR1)、計数した。本発明のXCL1/2抗体は、3回の反復実験にわたってXCL1へのcDC1移動を完全に阻害し、IC50値の幾何平均(nM)及び関連する誤差(デルタ法)を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例7:マウスにおける抗体の抗炎症効果
抗体1及び2の免疫抑制活性を、マウス耳に対するオキサゾロン誘導性遅延型過敏のマウスモデルにおいて評価し、抗CD8枯渇抗体(Bio X細胞#BE0117)と比較した。0日目にマウスを抗XCL1/2抗体で処置し、その約1時間後に、剃毛した腹側表面をアセトン中3%オキサゾロンで感作した。6日目に、マウスの耳に2%オキサゾロン投与を行い、7日目に耳の腫脹の変化を測定した。結果を、対応するアイソタイプと比較した抗XCL1/2抗体を用いたデルタ耳厚として表6に示す。
【0096】
【表6】
【0097】
実施例8:エピトープマッピング及び決定
XCL1の表面上の例示される抗体についての結合部位を、当該技術分野で周知の技術であるHDX及びX線結晶学によって決定した。HDXによって、抗体1及び2は、残基12~20(配列番号27)内及び残基35~46、配列番号28内の残基から形成される非直鎖状エピトープに結合することが見出された。ヒトXCL1と複合体化されたフラグメント抗原結合領域(fragment antigen-binding、Fab)のX線結晶構造(2.77オングストロームの分解能まで)は、結合に関与する特定の残基が、その配列が配列番号29によって示されるもの(つまり、スレオニン16、グルタミン17、アルギニン18、ロイシン19、及びプロリン20)、並びにリジン42及びアルギニン43であることを更に示唆する。したがって、本発明の抗体は、配列番号27の1つ以上のアミノ酸、又は配列番号27の2つ以上のアミノ酸、又は配列番号27の3つ以上のアミノ酸に結合し得る。本発明の抗体は、配列番号28の1つ以上のアミノ酸、又は配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合し得る。本発明の抗体は、配列番号29の1つ以上のアミノ酸に結合し得る。本発明の抗体は、配列番号27の1つ以上のアミノ酸及び配列番号28の1つ以上のアミノ酸、又は配列番号27の2つ以上のアミノ酸及び配列番号28の2つ以上のアミノ酸に結合し得る。
【0098】
本明細書に例示される抗体は、XCL1/XCL2の非直鎖状エピトープに結合する。一例では、抗体は、XCL1又はXCL2の単量体β-シート立体配置に結合する。別の例では、抗体は、XCL1又はXCL2の二量体形態に結合する。そのような場合、抗体は、一緒になって二量体を定義するケモカインの2つの単量体サブユニットのうちの単一の1つに結合し得る。例えば、抗体は、配列番号29によって定義されるアミノ酸残基、並びにXCL1の第1の単量体単位のリジン42及び/又はアルギニン43に結合し得る。本開示は、同様に、二量体の両方の単量体の残基を含む非直鎖状エピトープに結合することによって二量体XCL1又はXCL2に結合する抗体を企図する。本明細書で企図される別の結合様式は、二量体化が防止されるような方法で単量体β-シートXCL1又はXCL2に結合する様式である。
【0099】
実施例9:GAG-結合アッセイ
言及したように、XCL1/2のβ-シート立体配置は、二量体化することができ、XCR1受容体に結合することができない。代わりに、この形態では、XCL1/2は細胞表面GAGに結合し、これは化学誘引性勾配の確立を助けると考えられている。抗体1及び2は、β-シート立体配置に、優先的に二量体形態に結合し、フローサイトメトリーを使用して、細胞表面GAGに結合したXCL1/2二量体に結合するそれらの能力を研究した。
【0100】
293T細胞を、1μg/mLのXCL1又はXCL2の様々な調製物、及び100nMの抗体1、抗体2、又はhIgG1-AASアイソタイプ対照抗体(「対照」)のいずれかとともに1時間インキュベートした。これに続いて、抗ヒト-Fc/PE二次抗体(Life Technologies 12-4998-82)で染色して、細胞表面GAGに結合した抗体-XCL1/2複合体を検出した。別の条件において、抗体-XCL1/2複合体の結合を100ug/mLのヘパリンの存在下で行って、GAG結合の特異性を実証する。平均蛍光強度(mean fluorescence intensity、MFI)を、各条件についてフローサイトメトリーによって測定した。実験を3回繰り返し、実験全体にわたる平均MFI+/-標準偏差を下の表7に示す。
【0101】
【表7】
【0102】
上記の結果は、抗体1及び2が細胞表面で不活性又は二量体XCL1に結合することを実証し、実施例6の結果と合わせると、抗体1及び2が不活性XCL1に結合して、XCR1を活性化しないようにそれを隔離し得ることを実証する。
【0103】
実施例10:例示される抗体のXCL1特異性
ヒト血清結合アッセイを使用して、抗体1及び2、並びにMBCの非特異的標的を特定した。各抗体をマイクロウェルにコーティングし、続いて血清で処理した。一晩インキュベートした後、抗体結合タンパク質を溶出する前に、未結合の血清タンパク質を洗い流した。これらの試料をトリプシンで消化し、ペプチドを質量分析によって特定した。
【0104】
抗体1及び2は他のケモカインに結合しなかったが、MBCは相当量の第2のオフターゲットケモカインに結合することが見出された。その後の実験は、MBCがこのケモカインの高濃度(つまり、生理学的状況において予想されるものに類似)の存在下で生物学的活性を失う一方で、他の抗体1及び2は影響を受けないことを実証した。
【0105】
配列表
配列番号1 ヒトXCL1
VGSEVSDKRTCVSLTTQRLPVSRIKTYTITEGSLRAVIFITKRGLKVCADPQATWVRDVVRSMDRKSNTRNNMIQTKPTGTQQSTNTAVTLTG
【0106】
配列番号2 ヒトXCL2
VGSEVSHRRTCVSLTTQRLPVSRIKTYTITEGSLRAVIFITKRGLKVCADPQATWVRDVVRSMDRKSNTRNNMIQTKPTGTQQSTNTAVTLTG
【0107】
配列番号3 CC3
VGSEVSDKRTCVSLTTQRLPCSRIKTYTITEGSLRAVIFITKRGLKVCADPQATWVRDCVRSMDRKSNTRNNMIQTKPTGTQQSTNTAVTLTG
【0108】
配列番号4 CC5
VGSEVSDKRTCVSLTTQRLPVSRIKTYTITEGSLRCVIFITKRGLKVCCDPQATWVRDVVRSMDRKSNTRNNMIQTKPTGTQQSTNTAVTLTG
【0109】
配列番号5 抗体1及び2のLCDR1一般式
QASQXISDYLN(式中、Xは、S及びDから選択される)
【0110】
配列番号6 抗体1軽鎖CDR1
QASQDISDYLN
【0111】
配列番号7 抗体2 軽鎖CDR1
QASQSISDYLN
【0112】
配列番号8 抗体1及び2の軽鎖CDR2
YDASAKQT
【0113】
配列番号9 抗体1及び2の軽鎖CDR3
QHYDNLGYYT
【0114】
配列番号10 抗体1及び2の重鎖CDR1
KASGYTFTSYYMV
【0115】
配列番号11 抗体1及び2の重鎖CDR2
VIDPSKGSTNYAQKFQG
【0116】
配列番号12 抗体1及び2のHCDR3 CDR2
AREGLZLLAFDI(式中、Zは、Q及びEから選択される)
【0117】
配列番号13 抗体1 重鎖CDR3
AREGLELLAFDI
【0118】
配列番号14 抗体2 重鎖CDR3
AREGLQLLAFDI
【0119】
配列番号15 抗体1 HCVR
VQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLELLAFDIWGQGTMVTVSS(式中、Xは、Q又はピログルタミン酸である)
【0120】
配列番号16 抗体2 HCVR
VQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLQLLAFDIWGQGTMVTVSS(式中、Xは、Q又はピログルタミン酸である)
【0121】
配列番号17 抗体1 LCVR
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISDYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASAKQTGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQHYDNLGYYTFGQGTKLEIK
【0122】
配列番号18 抗体2 LCVR
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQSISDYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASAKQTGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQHYDNLGYYTFGQGTKLEIK
【0123】
配列番号19 抗体1 HC
VQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLELLAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVSVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPX(式中、Xは、Q又はピログルタミン酸であり、Xは、Gであるか又は存在せず、Xは、Kであるか又は存在しない)
【0124】
配列番号20 抗体2 HC
VQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLQLLAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVSVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPX(式中、Xは、Q又はピログルタミン酸であり、Xは、Gであるか又は存在せず、Xは、Kであるか又は存在しない)
【0125】
配列番号21 抗体1 LC
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISDYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASAKQTGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQHYDNLGYYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0126】
配列番号22 抗体2 LC
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQSISDYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASAKQTGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQHYDNLGYYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0127】
配列番号23 抗体1 重鎖DNA配列
CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGGCCTCAGTGAAGGTTTCCTGCAAAGCGTCTGGATACACCTTCACCAGCTATTATATGGTCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAGTAATCGACCCTAGTAAAGGTAGCACAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACCATGACCAGGGACACGTCCACGAGCACAGTCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGAAGGACTGGAACTACTTGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGGACAATGGTCACCGTCTCTTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCGCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAAGCCGCCGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGTCCGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTATGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAAGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAAGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATTCCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGCAAA
【0128】
配列番号24 抗体1 軽鎖DNA配列
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCAGGCGAGTCAGGACATAAGCGACTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTACGATGCTTCCGCTAAACAAACAGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGAAGTGGATCTGGGACAGATTTTACTTTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATATTGCAACATATTACTGTCAACATTATGATAATCTCGGATACTACACTTTTGGCCAAGGGACCAAGCTGGAGATCAAAagaactgtggcggcgccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatccggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgc
【0129】
配列番号25 抗体2 重鎖DNA配列
CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGGCCTCAGTGAAGGTTTCCTGCAAAGCGTCTGGATACACCTTCACCAGCTATTATATGGTCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAGTAATCGACCCTAGTAAAGGTAGCACAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACCATGACCAGGGACACGTCCACGAGCACAGTCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGAAGGACTGCAACTACTTGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGGACAATGGTCACCGTCTCTTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCGCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAAGCCGCCGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGTCCGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTATGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAAGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAAGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATTCCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGCAAA
【0130】
配列番号26 抗体2 軽鎖DNA配列
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCAGGCGAGTCAGAGCATAAGCGACTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTACGATGCTTCCGCTAAACAAACAGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGAAGTGGATCTGGGACAGATTTTACTTTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATATTGCAACATATTACTGTCAACATTATGATAATCTCGGATACTACACTTTTGGCCAAGGGACCAAGCTGGAGATCAAAAGAACTGTGGCGGCGCCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCCGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGC
【0131】
配列番号27 XCL1エピトープ1(抗体1及び2)
VSLTTQRLP
【0132】
配列番号28 XCL1エピトープ2(抗体1及び2)
RAVIFITKRGLK
【0133】
配列番号29 XCL1エピトープ1サブシーケンス(抗体1及び2)
TQRLP
【0134】
配列番号30 可変数なしの抗体1 HCVR
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLELLAFDIWGQGTMVTVSS
【0135】
配列番号31 可変数なしの抗体2 HCVR
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLQLLAFDIWGQGTMVTVSS
【0136】
配列番号32 可変数なしの抗体1 HC
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLELLAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVSVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0137】
配列番号33 可変数なしの抗体2 HC
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMVWVRQAPGQGLEWMGVIDPSKGSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREGLQLLAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVSVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【配列表】
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【外国語明細書】