(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169434
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】急性虚血性脳卒中の治療方法および治療システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20241128BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B17/22
A61M25/06 500
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024139068
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2023005995の分割
【原出願日】2014-12-19
(31)【優先権主張番号】62/083,128
(32)【優先日】2014-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/075,101
(32)【優先日】2014-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/075,169
(32)【優先日】2014-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/029,799
(32)【優先日】2014-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/046,112
(32)【優先日】2014-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/919,945
(32)【優先日】2013-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516237385
【氏名又は名称】ルート92メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Route 92 Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】ミチ・イー・ギャリソン
(72)【発明者】
【氏名】トニー・エム・チョウ
(57)【要約】
【課題】急性虚血性脳卒中を治療するためのシステムを提供する。
【解決手段】動脈を治療するためのデバイスのシステムは、介入カテーテルを動脈中に導入するように構成された動脈アクセスシースおよびシース本体の内腔内に配置可能な細長い拡張器を含む。システムはまた、頸動脈アクセスサイトを介して、動脈アクセスシースの内腔を通って総頸動脈中に導入される寸法および形状にされた細長いカテーテル本体から形成されたカテーテルを含む。前記カテーテルは、使用中に最遠位部が頭蓋内動脈中に配置でき、最近位部の少なくとも一部が総頸動脈中に配置されるような全長および最遠位部長さを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈を治療するためのデバイスのシステムであって、
動脈中に介入カテーテルを導入するように構成された動脈アクセスシースであって、動脈アクセスシースは、頸動脈アクセスサイトを介して総頸動脈中に導入される寸法および形状にされたシース本体を含み、第1の細長い本体が前記総頸動脈中に配置されたときに、前記シース本体が、カテーテルを前記総頸動脈に導入するための通路を提供する内腔を画定し、前記シース本体は、近位部および前記近位部より柔軟な最遠位部を有し、前記シース本体の全長に対する前記最遠位部の全体長さの比が、前記シース本体の全長の1/10~1/2である、動脈アクセスシースと、
前記シース本体の内腔内に配置可能な細長い拡張器であって、前記動脈アクセスシースおよび前記拡張器を共に前記総頸動脈中に導入することができる、拡張器と、
頸動脈アクセスサイトを介して、前記動脈アクセスシースの内腔を通って総頸動脈中に導入される寸法および形状にされた細長いカテーテル本体から形成されたカテーテルであって、前記カテーテル本体が前記頸動脈中の前記アクセス位置を介して前記総頸動脈を通って頭蓋内動脈の遠位に進められる寸法および形状にさられ、前記カテーテル本体が40cm~70cmの長さを有し、前記カテーテル本体が最近位部および最遠位部を有し、前記最近位部は前記カテーテル本体の最も硬い部分であり、前記カテーテル本体は、使用中に前記最遠位部が頭蓋内動脈中に配置可能で且つ前記最近位部の少なくとも一部が前記総頸動脈中に配置されるような全長および最遠位部長さを有する、カテーテルと、を含むシステム。
【請求項2】
前記カテーテル本体の前記最遠位部が、5cm~15cmの長さである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも85%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも71%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記カテーテル本体が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体に対し、少なくとも205mL/分の実際の吸引速度を達成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記カテーテル本体が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体に対し、少なくとも321mL/分の実際の吸引速度を達成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記介入カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも59%大きい実際の吸引速度を達成することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも23%大きい実際の吸引速度を達成することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記シース本体は、前記シース本体の遠位領域が、前記シース本体の近位領域の大きい直径に比べて縮小された直径を有するように、階段状になっており、
同様に、前記カテーテル本体は、前記カテーテル本体の遠位領域が、前記カテーテル本体の近位領域の大きい直径に比べて縮小された直径を有するように、階段状になっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記カテーテル本体の内径および外径の両方が階段状になっている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記カテーテル本体の近位領域の前記大きい直径が、前記カテーテル本体の遠位領域の直径より10~25%大きい直径を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記カテーテル本体の遠位領域が、10~25cmの長さである、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記介入カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも179%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも128%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記カテーテルが、前記動脈アクセスシースの長手方向軸に沿って前記動脈アクセスシースの遠位端から遠位方向に伸縮自在に伸びて、前記動脈アクセスシースと前記カテーテルとの間で連続的な内腔を形成することができるように、前記カテーテルが、前記動脈アクセスシースに伸縮自在に取り付けられており、
前記カテーテルが、前記動脈アクセスデバイスの遠位端を越えて伸びないように伸縮自在に後退することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記シース本体が、15~30cmの長さであり、前記カテーテルが10~15cmの長さである、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記介入カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも337%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも251%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、(1)2013年12月23日に出願の「Methods and Systems for Treatment of Acute Ischemic Stroke」と題された米国特許仮出願第61/919,945号;(2)2014年11月21日に出願の「Methods and Systems for Treatment of Acute Ischemic Stroke」と題された米国特許仮出願第62/083,128号;(3)2014年7月28日に出願の「Intravascvular Catheter with Smooth Transitions of Flexibility」と題された米国特許仮出願第62/029,799号;(4)2014年11月4日に出願の「Transcarotid Neurovascular Catheter」と題された米国特許仮出願第62/075,101号;(5)2014年9月4日に出願の「Methods and Devices for Transcarotid Access」と題された米国特許仮出願第62/046,112号;および(6)2014年11月4日に出願の「Methods and Devices for Transcarotid Access」と題された米国特許仮出願第62/075,169号に対する優先権を主張する。これらの特許仮出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、この出願日に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、急性虚血性脳卒中の治療のための医療方法および医療デバイスに関する。より具体的には、本開示は、脳動脈血管系の経頸動脈アクセスおよび脳閉塞の治療のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
急性虚血性脳卒中は、脳の部分への適切な血流の突然の閉塞であり、通常は、脳に血液を供給する血管の1つに詰まったもしくは形成された血栓またはその他の塞栓によって引き起こされる。この閉塞状態がすぐに解消されなければ、虚血は、永久的な神経障害または神経死に繋がる可能性がある。脳卒中の効果的な治療の期限は、静脈内(IV)血栓溶解療法に対しては3時間以内であり、部位特異的な動脈内血栓溶解療法または閉塞された脳動脈の介入再開通に対しては6時間以内である。この期間を過ぎた後の虚血脳への再灌流は、患者に対する全体的な利点はなく、実際に、線維素溶解剤の使用による頭蓋内出血のリスク増加によって害を引き起こす可能性がある。この期間内であっても、発症から治療までの時間が短いほど、良好な結果が得られるという強力なエビデンスがある。残念なことに、この時間枠以内に、症状に気づき、患者を脳卒中の治療場所まで送り、そして最終的にこれらの患者をこの期限内に治療できることはまれである。治療が進歩したにもかかわらず、脳卒中は、未だに米国における3番目の主要な死因である。
【0004】
急性脳卒中の血管内治療は、血栓溶解薬、例えば、組み換え(recombinent)組織プラスミノゲンアクチベータ(rtPA)などの動脈内投与、閉塞の機械的除去、またはこれら2つの組合せから成る。上述のように、これらの介入療法は、発症の数時間以内に行わなければならない。動脈内(IA)血栓溶解療法と介入血栓除去術の両方とも、血管内技術およびデバイスを介して閉塞脳動脈にアクセスすることを含む。
【0005】
IV血栓溶解療法と同様に、IA血栓溶解療法単独では、凝血塊を効率よく溶解するには注入に数時間を要する場合があるという制約がある。機械的な治療法は、凝血塊を捕捉して除去すること、凝血塊を溶解すること、凝血塊を破壊して吸引すること、および/または凝血塊を通す流路を形成することを必要としていた。脳卒中治療用に開発された最初の機械デバイスの1つは、MERCIリトリーバーシステム(Concentric Medical社、カリフォルニア州レッドウッドシティー)である。バルーンが先端に付いたガイドカテーテル(balloon-tipped guide catheter)を使って、大腿動脈から内頸動脈(ICA)にアクセスされる。マイクロカテーテルがガイドカテーテルを通して留置され、コイルが先端に付いたリトリーバー(coil-tipped retriever)を凝血塊を横切って送達し、その後、引き戻して凝血塊の周りにリトリーバーを配置する。その後、凝血塊を引っ張るためにマイクロカテーテルおよびリトリーバーをバルーンガイドカテーテル中に引き戻し、同時にバルーンを膨張させ、バルーンガイドカテーテルにシリンジを連結して凝血塊回収の間、ガイドカテーテルを吸引する。このデバイスは、血栓溶解療法単独の場合と比較すると、当初は良好な結果が得られた。
【0006】
他の血栓除去デバイスは、拡張可能なケージ、バスケットまたはスネアを利用して、凝血塊を捕捉し回収する。ステントリーバーまたは血管再生デバイスと呼ばれることもある一時的ステントは、血管に血流を回復するだけでなく、凝血塊の除去または回収のためにも利用される。凝血塊を破砕するためにアクティブレーザーまたは超音波のエネルギーを用いた一連のデバイスも利用されている。他のアクティブエネルギーデバイスは、血栓の溶解を促進するために、血栓溶解剤の動脈内注入と併せて用いられてきた。これらのデバイスの多くは、凝血塊の除去を助け、塞栓のリスクを低減するために、吸引と共に用いられてきた。凝血塊の直接吸引もまた、凝血塊の補助的な粉砕と一緒にまたはこれを行わずに、単一管腔のカテーテルとシリンジまたは吸引ポンプを使って行われてきた。この血栓除去法の効率を高めるために、吸引と併せて駆動された液体渦を適用するデバイスが利用されてきた。最後に、凝血塊の除去または溶解が不可能な場合には、凝血塊を通る開通管腔を形成するために、バルーンまたはステントが用いられてきた。
【発明の概要】
【0007】
急性虚血性脳卒中を治療するための、脳動脈および頭蓋内動脈への安全で、迅速で、比較的短い経頸動脈アクセスを可能にする方法およびデバイスを開示する。方法およびデバイスは、閉塞を除去するための1種または複数種の経頸動脈アクセスデバイス、カテーテル、および血栓除去デバイスを含む。方法およびデバイスはまた、遠位の塞栓を最小化するだけでなく、閉塞の除去を容易にするために、吸引および受動的な血流逆行を提供するために含まれている。システムは、脳血管系の特異的な血行力学要求に対処するように、使用者にある程度の血流制御を提供する。開示された方法およびデバイスは、脳の損傷を最小限にするために、手技中に脳のペナンブラを保護する方法およびデバイスも含んでいる。さらに、開示された方法およびデバイスは、経頸動脈血腫により大被害になる可能性を回避するために、頸動脈のアクセスサイトを確実に閉鎖する手段を提供する。
【0008】
一態様では、動脈を治療するデバイスからなるシステムが開示され、このシステムは、動脈中に介入カテーテルを導入するように構成された動脈アクセスシースであって、動脈アクセスシースは、頸動脈アクセスサイトを介して総頸動脈中に導入される寸法および形状にされたシース本体を含み、第1の(または、最初の)細長い本体が総頸動脈中に配置されたときに、シース本体がカテーテルを総頸動脈に導入するための通路を提供する内腔を画定し、シース本体は、近位部および近位部より柔軟な最遠位部を有し、シース本体の全長に対する最遠位部の全体長さの比が、シース本体の全長の1/10~1/2である動脈アクセスシースと、シース本体の内腔内に配置可能な細長い拡張器であって、動脈アクセスシースおよび拡張器を共に(または、ひとまとめにして:collectively)総頸動脈中に導入することができる拡張器と、頸動脈アクセスサイトを介して、動脈アクセスシースの内腔を通って総頸動脈中に導入される寸法および形状に作られた細長いカテーテル本体から形成されたカテーテルであって、カテーテル本体が頸動脈中のアクセスサイトを介して総頸動脈を通って頭蓋内動脈の遠位に進められる(または、ナビゲートできる)寸法および形状にされ、カテーテル本体が40cm~70cmの長さを有し、カテーテル本体が最近位部および最遠位部を有し、最近位部はカテーテル本体の最も硬い部分であり、カテーテル本体が使用中に最遠位部が頭蓋内動脈中に配置可能で且つ最近位部の少なくとも一部が総頸動脈中に配置されるような全長および最遠位部長さを有するカテーテルと、を含む。
【0009】
他の特徴および利点は、本発明の原理を、例により説明する様々な実施形態の以下の記述から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、急性虚血性脳卒中の経頸動脈アクセスおよび治療のためのデバイスからなるシステムの代表的実施形態の図で、頸動脈中に直接挿入された動脈アクセスデバイスおよびカテーテルを示す。
【
図2】
図2は、急性虚血性脳卒中の経頸動脈アクセスおよび治療のためのデバイスからなるシステムの別の実施形態の図で、システムはバルーンが先端に付いた動脈アクセスデバイスおよび血栓除去デバイスを備える。
【
図3】
図3は、急性虚血性脳卒中の経頸動脈アクセスおよび治療のためのデバイスからなるシステムの別の実施形態の図で、システムはバルーンが先端に付いたガイドカテーテルを備える。
【
図4】
図4は、経頸動脈初回アクセスシステムの実施形態を示す。
【
図5】
図5は、経頸動脈アクセスシースシステムの実施形態を示す。
【
図6】
図6は、経頸動脈アクセスシースの実施形態を示す。
【
図7】
図7は、経頸動脈アクセスシースの実施形態を示す。
【
図8】
図8は、経頸動脈アクセスシースの実施形態を示す。
【
図9】
図9は、経頸動脈アクセスシースの実施形態を示す。
【
図10】
図10は、経頸動脈アクセスシースの実施形態を示す。
【
図11】
図11は、経頸動脈アクセスシースの実施形態を示す。
【
図12】
図12は、2つの閉塞バルーンおよび2つのバルーン間に開口部を有する動脈アクセスデバイスの実施形態を示す。
【
図13】
図13は、伸縮性動脈アクセスデバイスの実施形態を示す。
【
図14a】
図14aは、シースストッパーを備えた動脈アクセスデバイスの実施形態を示す。
【
図14b】
図14bは、シースストッパーを備えた動脈アクセスデバイスの実施形態を示す。
【
図15】
図15は、拡張可能な遠位端を有するシースからなる動脈アクセスデバイスの例を示す。
【
図16】
図16は、拡張可能な遠位端を有するシースからなる動脈アクセスデバイスの例を示す。
【
図17】
図17は、拡張可能な遠位端を有するシースからなる動脈アクセスデバイスの例を示す。
【
図18】
図18は、拡張可能な遠位端を有するシースからなる動脈アクセスデバイスの例を示す。
【
図25A】
図25Aは、動脈中のカテーテルおよびテーパーの付いた拡張器の例を示す。
【
図25B】
図5Bは、動脈中のカテーテルおよびテーパーの付いた拡張器の例を示す。
【
図26】
図26は、アンカーデバイスを備えたマイクロカテーテルの例を示す。
【
図27】
図27は、アンカーデバイスを備えたガイドワイヤーを示す。
【
図28】
図28は、単一デバイスとして組み合わせたカテーテルおよび動脈アクセスデバイスを示す。
【
図32】
図32は、能動的吸引により動脈を治療するためのシステムの例である。
【
図33】
図33は、能動的吸引により動脈を治療するためのシステムの例である。
【
図34】
図34は、能動的吸引により動脈を治療するためのシステムの例である。
【
図35】
図35は、能動的吸引により動脈を治療するためのシステムの例である。
【
図38】
図38は、静脈リターンを使って動脈アクセスデバイス中への受動的逆流を樹立するシステムの代表的実施形態を示す。
【
図40】
図40は、少なくとも2つの管腔を有するマイクロカテーテルを示す。
【
図43】
図43は、閉塞バルーンを備えた遠位灌流カテーテルの別の実施形態を示す。
【
図44】
図44は、閉塞バルーンを備えた遠位灌流カテーテルの別の実施形態を示す。
【
図45】
図45は、閉塞バルーンを備えた遠位灌流カテーテルの別の実施形態を示す。
【
図46】
図46は、拡張可能デバイスを備えた灌流カテーテルの遠位領域を示す。
【
図47】
図47は、動脈アクセスデバイスまたはカテーテルを介して閉塞の遠位に配置されている近位灌流カテーテルを示す。
【
図48A】
図48Aは、バルーンの遠位および/または近位を潅流するように構成された遠位バルーンカテーテルの使用におけるステップを示す。
【
図48B】
図48Bは、バルーンの遠位および/または近位を潅流するように構成された遠位バルーンカテーテルの使用におけるステップを示す。
【
図48C】
図48Cは、バルーンの遠位および/または近位を潅流するように構成された遠位バルーンカテーテルの使用におけるステップを示す。
【
図48D】
図48Dは、バルーンの遠位および/または近位を潅流するように構成された遠位バルーンカテーテルの使用におけるステップを示す。
【
図49】
図49は、血管閉鎖デバイスの使用を容易にする動脈アクセスシステムの実施形態を示す。
【
図50】
図50は、血管閉鎖デバイスの使用を容易にする動脈アクセスシステムの実施形態を示す。
【
図54】
図54は、本明細書で開示のデバイスに関連するデータを含む表を示す。
【
図55】
図55は、本明細書で開示のデバイスに関連するデータを含む表を示す。
【
図56】
図56は、本明細書で開示のデバイスに関連するデータを含む表を示す。
【
図57】
図57は、本明細書で開示のデバイスに関連するデータを含む表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
脳または頭蓋内血管系への介入では、特殊なアクセスへのチャレンジが行われることが多い。ほとんどの神経血管介入手技では、頸動脈または椎骨動脈へ、さらにそこから標的の脳動脈または頭蓋内動脈への経大腿アクセスが使用される。近年、ワイヤー、ガイドカテーテル、ステントおよびバルーンカテーテルなどの介入デバイスは、神経血管構造内でより良く機能するように、小型化され、より柔軟にされている。最近では、脳卒中を治療するためのアクセスおよび治療カテーテルは、150cmまでの長さのマイクロカテーテルを使って、105cm~135cmの長さの範囲をカバーする。これらのカテーテルは大腿動脈から動脈系にアクセスし、大動脈弓ならびに頸部動脈および頭蓋内動脈を進み(またはナビゲートして)脳動脈中の閉塞に到達する必要がある。このアクセス経路は長く、多くの場合ねじ曲がっており、大動脈弓ならびに頸動脈血管および腕頭血管の起点に狭窄プラーク物質を含んでいる可能性があり、手技によるアクセス中の塞栓合併症のリスクが存在する。ねじ曲がった解剖学的構造を有する患者では、既存のカテーテルおよびデバイスでは、閉塞へのアクセスが困難であるかまたは不可能となる場合がある。さらに、脳血管は通常、冠血管系または他の末梢血管系よりもずっと繊細で、穿孔され易い。デバイスによるアクセスへのチャレンジであるため、多くの神経血管介入手技はより困難のままであるか、または不可能のままである。
【0012】
現在の急性脳卒中介入の1つの重大な欠点は、脳への血液の灌流を回復するのに必要な時間であり、この時間は、閉塞した脳動脈にアクセスするのに必要な時間と、閉塞を通る血流を回復するのに必要な時間に分解することができる。血栓溶解療法、機械的血栓除去術または他の手段による血流の回復には、多くの場合数時間かかり、その間、脳組織は十分な酸素が得られない。この期間に、脳組織が永久的な損傷を受けるリスクがある。「時は脳を助ける(time is brain)」である急性虚血性脳卒中の状況では、これらの余計な困難事象は、重大な臨床的影響を与える。
【0013】
神経血管介入の別のチャレンジは、脳塞栓のリスクである。経大腿アクセスサイトから脳血管に到達するためには、カテーテルは末梢動脈、大動脈弓、および頸動脈を横切る必要がある。多くの患者では、これらの動脈において、アテローム性動脈硬化症の形の疾患がある。これらの動脈を横切ってカテーテルを進めること(ナビゲートすること)により、断片が切断されて、脳へ流れていき、脳塞栓を生じる場合がある。多くの場合、これらの塞栓は、処置に伴う脳卒中に繋がるが、脳に対する無症状の塞栓負荷であっても、精神状態の変化をもたらすことが知られている。
【0014】
標的サイトに到達しても、そこでも脳塞栓のリスクが存在する。脳動脈中の凝血塊閉塞を除去または溶解する努力の間に、例えば、血栓の断片化により塞栓粒子を生じ、これが下流に移動して脳灌流を損ない、神経学的イベントの原因となる場合があるという重大なリスクがある。頸動脈ステント留置術CASでは、塞栓物質が脳血管系に入るリスクを減らすために、塞栓保護デバイスおよびシステムがよく用いられている。このタイプのデバイスは、血管内フィルター、逆流システムまたは定常流システムを含む。残念なことに、迅速な介入の必要性のためだけでなく、繊細な構造およびアクセスチャレンジのために、これらの塞栓保護システムは、急性虚血性脳卒中の介入治療では用いられない。
【0015】
いくつかの現在の脳卒中治療用の機械的凝血塊回収手技では、塞栓のリスクを減らし、凝血塊の除去を容易にする手段として、吸引を用いている。例えば、いくつかの凝血塊回収手技は、ガイドカテーテルに大きなシリンジを取り付け、次に、凝血塊をガイド内に引き戻している間に、近位動脈を閉塞してガイドカテーテルを吸引することを含む。ガイドカテーテルは閉塞バルーンを有しても、または有さなくてもよい。しかし、このステップは、第2オペレーターを必要とし、シリンジを空にして再び取り付ける必要がある場合には吸引の中断を必要とすることがあり、吸引の速度およびタイミングを制御しない。この制御は、逆流に対する患者の耐性に疑問がある場合に重要であろう。さらに、マイクロカテーテルによって凝血塊を最初に横切り、回収デバイスを配置する間、塞栓の破砕物に対する保護が存在しない。別の要素が凝血塊を機械的に破砕するために補助的に使用されることがある一方で、ペナンブラシステム(Penumbra System)などの吸引システムは、凝血塊の表面で吸引するカテーテルを利用する。凝血塊を除去するために、凝血塊を横切るまたは破壊する必要がないために、吸引法および吸引デバイスはより急速に血流を回復し、遠位の塞栓のレベルを低減する潜在力を有する。しかし、現在のカテーテル設計を使った吸引の有効性は限られており、多くの場合、複数の試みおよび/または補助的な機械的血栓除去デバイスを必要とし、したがって、時間の利益および遠位の塞栓低減の利益を小さくしてしまう。
【0016】
開示されるのは、虚血性脳卒中の治療用の介入デバイスを導入するための、安全で、迅速で、比較的短く、直線的な頸動脈および脳血管系への経頸動脈アクセスを可能にする方法およびデバイスである。経頸動脈アクセスは、血管アクセスポイントから標的脳血管治療サイトまで、距離が短く、ねじ曲がっていない経路を提供し、それにより、例えば経大腿アプローチと比較して、手技にかかる時間を短縮し、困難性を緩和する。さらに、このアクセスルートは、疾患があり、角張っており、またはねじ曲がっている大動脈弓または頸動脈構造を進行すること(ナビゲーションすること)による塞栓発生のリスクを低減する。さらに、以下でより詳細に記載するように、このアクセス経路により、手技の一部のまたは全ての点で、より迅速に、より安全に、およびより正確に行うことができる。デバイスおよび関連方法には、経頸動脈アクセスサイトを介して特異的に脳標的解剖学的構造に到達するための経頸動脈アクセスデバイス、ガイドカテーテル、およびガイドワイヤー、ならびに、経頸動脈アクセスサイト(経頸管的アクセスサイトとしても知られる)を通して送達するために最適化されている関連する脳卒中治療デバイスが含まれる。
【0017】
また、開示されているのは、遠位の塞栓を最小化するために、アクセスシース、ガイドカテーテル、またはカテーテルからの吸引および受動的な血流逆行を提供するための方法およびデバイスである。また、開示されているのは、経大腿または経頸動脈アクセス手法により凝血塊吸引を最適化する方法およびデバイスである。この開示に含まれるのは、経頸動脈脳血管介入手技を容易にするための、これらのデバイスの種々の組み合わせからなるキットである。
【0018】
別の態様では、遠位の塞栓を最小化する手技の間に、能動的吸引ならびに受動的逆流をさらに提供するための方法およびデバイスが開示される。システムは、脳血管系の具体的な血行力学的要求に対処するために、使用者にある程度の血流制御を提供する。システムは、血流コントローラを含むことができ、それにより、使用者が吸引のタイミングおよびモードを制御することが可能になる。
【0019】
図1は、経頸動脈アプローチを介して総頸動脈(CCA)にアクセスするための、および脳血管系に、例えば、脳動脈中の閉塞10に、デバイスを送達するためのデバイスからなるシステムを示す。システムは、内腔およびポート2015を有する動脈アクセスデバイス2010(本明細書においては、動脈アクセスシースと呼ぶこともある)を含む。動脈アクセスデバイス2010は、経頸動脈の切開または穿刺を介して総頸動脈に挿入し、脳血管系へのアクセスを提供する位置、例えば総頸動脈または内頸動脈内に配置される寸法および形状に作られる。ポート2015は、動脈アクセスデバイスの内腔へのアクセスを提供し、動脈アクセスデバイス2010を介して脳血管系への追加のデバイスを導入するように構成されている。
【0020】
図2は別のシステムの実施形態を示し、この場合、動脈アクセスデバイスがシース遠位端の位置で動脈を閉塞する閉塞バルーン2020を有する。図から分かるように、シースは経頸動脈アクセスサイトから遠位頸部ICAに到達するのに十分な長さであるが、他の実施形態では、CCA中に閉塞バルーン2020が配置されるように、より短くてもよい。
【0021】
ある実施形態では、動脈アクセスデバイス2010による直接的な総頸動脈への経頸動脈アクセスは、皮膚の切開または穿刺を介して経皮的に達成される。代替の実施形態では、動脈アクセスデバイス2010は、頸動脈までの直接的な外科的切開を介して、総頸動脈CCAにアクセスする。別の実施形態では、動脈アクセスデバイスは、例えば、後大脳動脈または脳底動脈などの後方の脳血管系中の閉塞にアクセスするために、椎骨動脈の切開または椎骨動脈の経皮的穿刺を経由して、脳底動脈BAまたは後大脳動脈PCAへのアクセスを提供する。総頸動脈への挿入の場合には、動脈アクセスデバイスは総頸動脈内の開口に直接的に挿入することができ、その開口は、患者の鎖骨より上側で、患者の総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分岐する分岐位置より下側に位置している。例えば、開口は、患者の総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分岐する分岐位置よりも約3cm~7cmの距離だけ下側に位置してよい。
【0022】
システムは中間配値ガイドカテーテルを含んでもよい。
図3は、止血バルブ2012の近位にあるアクセスデバイスを介して、動脈アクセスシース2010を通って挿入されているガイドカテーテル2105を示す。ガイドカテーテル2105は、止血弁を備えた近位ポート2015を有する近位アダプターを含み、手技中の失血を防止または最小にすると同時にデバイスの導入を可能にしている。ガイドカテーテル2105はまた、遠位領域に閉塞バルーン2020を含めることができる。
【0023】
図1、2および3に示すシステムは、動脈アクセスデバイス2010の最遠位端より遠位側の位置への追加のデバイス、限局性流体もしくは造影剤送達のための遠位アクセスおよびその位置での局所的な吸引を提供するために、1つまたは複数のカテーテル2030を含んでもよい。単一のカテーテルだけで、1つまたは複数の閉塞にアクセスし、治療するのに十分である場合もある。より遠位へのアクセスが望まれ、第1の(または、最初の:first)カテーテルでは不可能な場合には、より小径の第2のカテーテルを、第1のカテーテルを通して挿入しても、または第1のカテーテルと交換してもよい。ある実施形態では、カテーテル2030は、ポート2015を介して動脈アクセスデバイス2010の内腔に挿入される寸法および形状にされるか、または別の方法で挿入されるように構成される。カテーテル2030は、閉塞サイトの近傍への留置を容易にするために、ガイドレールとしておよびサポート機構として機能する、予め設置されたガイドワイヤー、マイクロカテーテルまたは他のデバイスを利用してもよい。カテーテルは、さらに、血管系を通りガイドワイヤーに沿って留置するのを容易にするために、拡張器要素を利用してもよい。カテーテルが標的サイトまたはその近傍に位置決めされると、拡張器を取り出してもよい。その後、カテーテル2030を、閉塞に吸引を適用するために使用してもよい。また、カテーテル2030または拡張器を、追加のカテーテルおよび/または介入デバイスを閉塞サイトに送達するために使用してもよい。
【0024】
開示された方法およびデバイスはまた、脳の損傷を最小限にするために、手技中に脳のペナンブラを保護するデバイスも含んでいる。遠位灌流デバイスを、閉塞サイトを越えて脳に灌流を供給するために手技中に使用してもよく、それにより、血液不足による脳の損傷を低減することができる。これらの灌流デバイスはまた、血管中の閉塞に加わる順方向の血圧を低減し、したがって、例えば、吸引、機械的要素または両方により、閉塞を除去するのを支援する手段を提供する。
【0025】
システムはまた、補助デバイス、例えば、ガイドワイヤーおよびマイクロカテーテル、ならびに脳卒中治療デバイス、例えば、ステントリトリーバー、スネア、またはその他の血栓除去デバイスを含むことができ、これらは、経頸動脈アクセスサイトを介して標的脳または頭蓋内治療サイトに到達するのに最も適切なように構成されている。例えば、システムは血栓除去デバイス4100を含んでもよい。さらに、開示した方法およびデバイスは、経頸動脈の血腫という潜在的に大被害を及ぼす結果を回避するために、脳動脈へのアクセスサイトの確実な閉鎖を提供する。本開示は、追加の方法およびデバイスを提供する。
【0026】
<動脈アクセスデバイスの代表的実施形態>
本明細書で記載されるのは、動脈アクセスデバイスで、本明細書においては、動脈アクセスシースまたはシースシステムとしても参照される。米国特許出願公開第2014/02196769号、および2014年11月4日に出願され、「METHODS AND DEVICES FOR TRANSCAROTID ACCESS」と題された米国特許仮出願第62/075,169号、および2014年11月10日に出願され、「METHODS AND DEVICES FOR TRANSCAROTID ACCESS」と題された米国特許出願第14/537,316号も同様に、本明細書で考察の動脈アクセスデバイスについて記載している。これらの特許は、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
上記のように、
図1、2および3は、別のイントロデューサーシースを使用せずに総頸動脈(CCA)中に直接挿入されるように構成された動脈アクセスシース2010の実施形態を示す。シース2010は初回アクセスシステムのガイドワイヤーに沿って挿入することができる。
図4は、ガイドワイヤーを頸動脈への導入を可能とすることを目的として頸動脈へのアクセスを確立するための経頸動脈初期アクセスシステム100またはマイクロアクセスキットの実施形態を示す。頸動脈へのアクセスは、患者の首に位置するアクセスサイト、例えば、患者の頸動脈の領域で行なうことができる。経頸動脈初回アクセスシステム100のデバイスは、総頸動脈の壁を通って頸動脈へ直接アクセスするのに特に適している。経頸動脈初回アクセスシステム100は、アクセス針120、アクセスガイドワイヤー140、およびマイクロパンクチャーカニューレ160を含むことができる。マイクロパンクチャーカニューレ160は、カニューレ本体162および本体162の管腔内に摺動自在に配置される内側拡張器168を含むことができる。内側拡張器168は、テーパーの付いた先端部を有し、カニューレとアクセスガイドワイヤー140との間でスムーズな移行を可能とする。マイクロパンクチャーカニューレ160はまた、蛍光透視法下で使用者が先端部位置を可視化するのを助けるために、カニューレ160の先端近傍に放射線不透過性マーカー164を含むことができる。アクセスガイドワイヤー140は、使用者がカニューレ160に対しガイドワイヤー140の先端部のある位置を判断するのを助けるために、ガイドワイヤーマーキング143を含むことができる。アクセス針120、アクセスガイドワイヤー140、およびマイクロパンクチャーカニューレ160は全て、頸動脈穿刺を介して頸動脈中に導入されるように構成されている。頸動脈穿刺は、例えば、経皮的にまたは外科的切開を介して成し遂げることができる。初回アクセスシステム100の実施形態は、どちらか一方の穿刺方法用として構成することができる。
【0028】
代替の実施形態では、動脈アクセスデバイス2010はまた、別のイントロデューサーシースを使わないで、大腿動脈アクセスサイトから総頸動脈CCAにアクセスするように構成することができる。上述のように、アクセスデバイスは、止血弁を備えた近位ポート2015を有する近位アダプターおよび受動的または能動的な逆流に接続することができる血流ライン2025(またはシャント)への接続を含む。血流ライン2025は、動脈アクセスデバイスからの血液をシャントするために、動脈アクセスデバイス2010の内腔と連通している内腔を有する。経大腿および経頸動脈実施形態の両方では、血流ラインへの接続は動脈アクセスデバイス2010のID(内径)と少なくとも同じ大きさの血流管腔による血栓の吸引用として最適化される。
【0029】
初回アクセスシステム100を使って頸動脈へのアクセスが確立されると、本明細書で記載のものなどのシースシステムの動脈アクセスシースをアクセスサイトから頸動脈中に挿入することができる。
図5は、アクセスシースを頸動脈中に、例えば、初回アクセスシステムのシースガイドワイヤーに沿って挿入するための、デバイスの経頸動脈アクセスシースシステム200の実施形態を示す。頸動脈に挿入されると、アクセスシースシステム200は、血管系の領域への介入手技を実施するために、少なくとも1つの介入デバイスをアクセスシースの管腔を介して頸動脈中に挿入することを可能とする。経頸動脈アクセスシースシステム200は、アクセスシース220、シース拡張器260、およびシースガイドワイヤー300を含むことができる。アクセスシース220、シース拡張器260およびシースガイドワイヤー300は、全て頸動脈を介して頸動脈中に導入されるように構成されている。頸動脈穿刺は、経皮的にまたは外科的切開を介して成し遂げることができる。アクセスシースシステム200の実施形態は、どちらか一方の穿刺方法用として構成することができる。
【0030】
ある実施形態では、経頸動脈初回アクセスシステム100および経頸動脈アクセスシースシステム200の一部または全ての要素を、例えば、複数要素を単一のパッケージ、容器または一緒に包装された一群の容器として組み合わせることにより、1つの経頸動脈アクセスシステムキットに組み合わせてもよい。
【0031】
本明細書で記載の動脈アクセスシースシステムは、血管に挿入されるように構成された遠位部および動脈アクセスシースの遠位部が動脈経路中に配置される場合、アクセスサイトから外側に伸びるように構成された近位部を含むことができる。例えば、
図5を参照すると、動脈アクセスシース220は、手技中にシース本体222の少なくとも一部が動脈に挿入可能であり、同時に近位部が本体の外側に残るような寸法および形状にされた細長いシース本体222を有する。細長いシース本体222は、動脈中に挿入されるような寸法および形状にされており、細長いシース本体の少なくとも一部は手技中に実際に動脈中に挿入されている動脈アクセスシース220の一部である。近位アダプター224は、細長いシース本体222(例えば、
図1のポート2015も参照されたい)の近位端近傍に配置することができる。シース本体222の少なくとも一部が動脈に挿入される場合、近位アダプター224は、本体の外側に残るように構成される。近位アダプター224は、シース本体222の内腔と連通する止血弁226を備えることができる。シース本体222の内腔と連通する止血弁226は、その中にデバイスの導入を可能とし、同時に、手技中の内腔を介した失血を防ぐかまたは最小化することを可能とする。止血弁226は、固定シール型受動弁であっても、または開度調節弁、例えば、トーイボーストバルブ227または回転式止血弁(RHV)(
図6参照)などであってよい。止血弁を近位アダプター224に一体化してもよく、またはアクセスシース220を、別の止血弁部品、例えば、受動的シールバルブ、トーイボーストバルブまたは回転式止血弁を取り付けることができるメス型ルアーアダプター中の近位端で終わらせてもよい。さらに、1つまたは複数の機構をアクセスシース220の近位端近傍に配置して、手技中のシースの固定に役立てることができる。例えば、アクセスシース220は縫合糸アイレット234を有してもよく、またはアダプター224中へ成形されているか、または別の方法でアダプター224に取り付けられた1つまたは複数のリブ236を有してもよい。これにより、操作者がシースハブを患者に縫合糸結紮することを可能とする。
【0032】
ある実施形態では、シース本体222は、6フレンチシースサイズに相当する、約0.087”(インチ)の内径と、約0.104”の外径を有することができる。別の実施形態では、シース本体222は、8フレンチシースサイズに相当する、約0.113”の内径と、約0.136”の外径を有することができる。ある実施形態では、シース長さは10~12cmである。別の実施形態では、シース長さは15~30cmである。特定の実施形態に最も適する直径および長さは、標的サイトの位置およびデバイスの性質およびアクセスデバイス200の管腔を通る血流要件に依存する。
【0033】
場合によっては、近位ポートおよび/または止血弁を動脈アクセスシースの遠位端から離れる方向に動かし、本体の外側の近位部を効果的に伸ばすまたは延長し(本明細書では、近位延長部とも呼ばれる)、同時に挿入可能な遠位部を維持するのが望ましい。これにより、使用者が近位延長部の近位ポート中に、および、そこから動脈アクセスデバイスの管腔中に、標的サイトからさらに離れた位置から、および標的サイトを蛍光透視により画像形成するのに使われるイメージ増倍管から離れた位置からデバイスを挿入し、それにより、使用者の手および同様に彼または彼女の全身の放射線曝露を最小限にすることを可能とする。近位延長部は、近位ポートと動脈アクセスサイトとの間の長さが、約30cm~約50cmとなるように構成することができる。近位延長部は、動脈アクセスデバイスから取り除くことができる。近位延長部のデザインの一例は、2009年8月12日に出願された同時係属中の米国特許出願公開第2010/0042118号(この参照により本明細書に組み込まれる)、米国特許第8,574,245号、米国特許出願公開第2010/0217276号、および米国特許出願公開第2011/0087147号(それぞれ同様に参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0034】
図10は、同様に、近位延長部805を有する動脈アクセスシース220の実施形態を示す。近位延長部805は、経頸動脈アクセス手技中に使用者への放射線曝露を効果的に低減するのに適した長さにすることができる。例えば、近位延長部805は、約10cm~約25cm、または約15cm~約20cmである。他の選択肢としては、近位延長部805は、止血弁226とシース本体の遠位端との間で、アクセスシースの挿入可能な長さに応じて、約30cm~約60cmの距離を与えるように構成された長さを有してもよい。コネクター構造815を、細長いシース本体222を近位延長部805に接続することができる。この実施形態では、コネクター構造815は、アクセスシース220を患者に固定するのを助ける縫合糸アイレット820および/またはリブ825を含むことができる。ある実施形態では、止血弁226は、固定シール型の受動弁である。代替実施形態では、止血弁226は、例えば、トーイボーストバルブ227または回転式止血弁(RHV)などの開度調節弁である。他の選択肢としては、近位延長部805を、別の止血弁部品の、受動的シールバルブ、トーイボーストバルブまたは回転式止血弁などを取り付けることができるメス型ルアーアダプター中の近位端で終わらせてもよい。
【0035】
近位延長部および/または近位アダプター224は、シース本体222または動脈に挿入するように構成されたアクセスシースの一部より大きな内径および外径を有することができる。シースに挿入されるカテーテルの外径がシース本体の外径に近接している場合には、血流のために利用可能な管腔の輪形隙間が制限される。したがって、シース本体の長さを最小限にすることは、例えば、シースを生理食塩水または造影剤溶液で洗浄する間、またはシースからの吸引もしくは逆流の間、この血流に対する抵抗を最小限にするのに有利となる。再度、
図10に関して、シース本体222は、6フレンチシースサイズに相当する、約0.087”(インチ)の内径および約0.104”の外径を有し、近位延長部は約0.100”~約0.125”の内径および約0.150”~約0.175”の外径を有する。別の実施形態では、シース本体222は、8フレンチシースサイズに相当する、約0.113”の内径および約0.136”の外径を有し、近位延長部は約0.125”の内径および約0.175”の外径を有する。さらに別の実施形態では、シース本体222は、
図8に示すように、より小さい直径の遠位部605により階段状になっており、血流制限をさらに減らす。
【0036】
動脈アクセスシース220の近位延長部905は、取り除くことができる。通常、血管閉鎖デバイスは、シース本体の遠位端から止血弁の近位側の間の、約11cmのシース本体と近位の止血弁の長さを含む残り4cmで、約15cmの最大距離を有する動脈アクセスシースを必要とする。したがって、アクセスシースが15cmより大きい長さを有する場合は、手技の終わりに近位延長部を取り除くのが望ましい。再度、
図10に関して、近位延長部805は、取り除いた後に、止血が維持されるように取り除くことができる。例えば、止血弁は、シース本体222および近位延長部805との間のコネクター815中に組み込むことができる。近位延長部805が流体連通およびデバイスの挿入を可能とするように取り付けられるが、近位延長部805が取り除かれる際にシース220からの血流を防止する場合には、止血弁を開くことができる。手技が完結した後で、近位延長部805を取り除くことができ、止血弁の近位側と、シース先端部との間の距離を、15cm超から15cm以下まで減らし、したがって、血管閉鎖デバイスをアクセスシース220と共に使用してアクセスサイトを閉鎖することが可能となる。
【0037】
本明細書で記載の動脈アクセスシースシステムは、そのアクセスサイトから種々の治療サイトに到達するための経頸動脈アクセスを提供するのに好適している、または最適化されている。本明細書で記載の動脈アクセスシースまたはシース/ガイドカテーテルシステムの作業長さは、例えば、大腿動脈中のアクセス位置から留置された長いシースまたはシースガイドシステムの長さよりかなり短くすることができる。大腿動脈から総頸動脈(CCA)までの距離は動脈を通って移動して約60~80cmである。したがって、CCAアクセスサイトを使った動脈アクセスデバイスは、少なくとも、この量だけ短くすることができる。頸部のICA中にアクセスまたはデバイスを配置するために使用される大腿動脈アクセス(例えば、Balloon Guide,Concentric,Inc.)は、通常、80~95cmの長さである。錐体部ICA中にアクセスまたはデバイスを配置するために使用される大腿動脈アクセス(例えば、ニューロン6フレンチガイド(Neuron 6F Guide)ペナンブラ社製)は、通常、95~105cmの長さである。本明細書で開示されたアクセスデバイスの長さが短いことにより、これらのデバイスの管腔を通る血流抵抗が低下し、吸引および/または逆流が生じ得る流量が増加する。例えば、ある実施形態では、細長いシース本体222は、約10cm~約12cmの範囲の長さを有する。大腿部アクセスサイトからの同じ標的サイトへのアクセスに対し、アクセスシースは通常、80cm~110cmであるか、またはガイドカテーテルが動脈アクセスシースを通って挿入され、標的サイトまで進められる。しかし、アクセスシースを通るガイドカテーテルは管腔面積を占有し、したがって、標的サイトに導入することができるデバイスの寸法を制限する。したがって、ガイドカテーテルを使わずに介入デバイスの標的サイトへの到達を可能とするアクセスシースは、介入デバイスの標的サイトへの到達を可能とするガイドカテーテルの使用が必要なアクセスシースより利点がある。
【0038】
本明細書で記載の動脈アクセスシースの長さおよび内径は、シース遠位端の所望の標的位置に応じて変えることができることは理解されるべきである。一実施形態では、アクセスシースは、CCAまたは近位のICAに配置された遠位端により総頸動脈(CCA)中に挿入されるように構成される。この実施形態では、シースは、約7cm~約15cm、通常は約10cm~約12cmの範囲の長さを有する細長いシース本体222を有することができる。本明細書で考慮されている長さは、近位アダプター224から細長いシース本体222の遠位端まで伸びる長さであってよい。総頸動脈(CCA)を介して、中間または遠位の内頸動脈中のより遠位のサイトまで挿入されるように構成されたシースに対し、細長いシース本体222の長さは、約10cm~約30cm、通常は約15cm~約25cmの範囲であってよい。別の例示的実施形態では、動脈アクセスデバイスは、約10cm~約40cmの長さである。別の実施形態では、動脈アクセスデバイスの長さは、約10.5cmであり、アクセスデバイスを通して挿入される別のガイドカテーテルの長さは約32cmである。
【0039】
米国特許第7,998,104号(Chang)および米国特許第8,157,760号(Criado)に記載のように、いくつかの手技では、アクセスシースの挿入可能な部分を通る血流抵抗を最小限にするために、動脈アクセスシースに対する機構を組み込むことが望ましい場合がある。これら両方の特許は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、
図8は、シース本体222が縮小された直径の遠位領域705(縮小された直径はシースの残りの部分に比べたものである)を有するように、階段状またはテーパーの付いた形状を有するこのようなシース本体222の実施形態を示す。階段状シースの遠位領域705は、頸動脈中へ挿入用の寸法にすることができる。遠位領域705の内径は、0.065インチ~0.115インチの範囲でありえ、残りのシースの近位の領域はより大きな外側および内腔径を有してよい。残りの近位領域の内径は通常、0.110インチ~0.135インチの範囲であってよい。シース本体222の残りのより大きな内腔径は、シース220を通る全体の血流抵抗を最小化する。ある実施形態では、縮径された遠位領域705は、約2cm~4cmの長さである。縮径された遠位領域705の比較的短い長さによって、この部分が経頸動脈アプローチを介して総頸動脈CCAに配置されることを可能にし、同時に、シース本体222の遠位端が分岐部と接触するようになるリスクを低減する。代替の実施形態では、シース本体は、遠位のICAまで到達するように設計されている挿入可能な部分を有するように構成される。この実施形態では、縮径された遠位部605の長さは約10cm~15cmであり、全体シース本体の長さは、15~25cmである。縮径された部分はまた、血流抵抗のレベルに最小限の影響しか及ぼさずに、動脈にシースを導入するための動脈切開の寸法を縮小することを可能にする。さらに、縮小された遠位直径領域705は、より柔軟であり、したがって、血管の管腔により良好に適合することができる。
【0040】
場合によっては、例えば、手技中の遠位の塞栓のリスクを減らすために、受動的または能動的吸引のために血流ラインにアクセスシースを接続するのが好ましい場合がある。
図11に示す実施形態では、動脈アクセスシース220は、アクセスシースに接続された低抵抗(大きな口径)の血流ラインまたはシャントを有する。低抵抗血流ライン905は、コネクター815のYアーム915を介してシース本体222の内腔に接続することができる。血流ライン905は、より低圧のリターンサイト、例えば、静脈リターンサイトまたはリザーバーに接続することができる。血流ライン905はまた、ポンプまたはシリンジなどの吸引源に接続可能とすることができる。
図11に示すように、血流ライン905は、デバイスが動脈アクセスシース220の近位ポート226に入る位置の遠位に配置することができる。代替の実施形態では、血流ライン905は、別々に取り付けられたトーイボーストバルブのYアームに取り付けられている。
【0041】
血流ラインは、動脈アクセスシースからの血液をシャントすることができるように受動的および/または能動的逆流が構成された要素に接続することができる。血流ラインを中心静脈またはリザーバーなどの低圧システムに接続することは、受動的逆流の例である。圧力が約ゼロである場合には、リザーバーを患者に近くのテーブル上に配置することができ、または負圧を生成するために、テーブルの下に配置することができる。能動的逆流用のデバイスの例は、シリンジまたはその他のマニュアル吸引デバイス、または吸引ポンプである。受動的または能動的逆流デバイスは、手技の重要な期間中に、例えば、血栓が閉塞した領域からシース中に引き出され、さらに患者から引き出されている間に、活栓またはその他の血流制御スイッチを介して作動させることができる。ある実施形態では、血流制御スイッチは、動脈アクセスデバイスに一体化される。代替実施形態では、血流制御スイッチは、別の部品である。デバイスから全ての血栓源(thrombus)を除去して、不規則表面または接続面において物質片(material)が見つかる確率が最小限であるかあるいは全くないのが望ましいので、アクセスデバイスの実施形態は、シース本体、Yアーム、血流制御スイッチ、血流ライン、および吸引源の管腔間の接合部(単一または複数)に出っ張りまたは裂け目のない連続的な内表面が存在するように構成される。
【0042】
また、場合によっては、例えば遠位塞栓を形成する可能性のある手技では、シース本体が配置される動脈をそれ自体で閉塞することができるのが望ましい。これらの場合には、動脈の閉塞は動脈中の順方向血流を停止し、それにより、TIAまたは脳卒中などの神経系症状に繋がる可能性のある遠位塞栓のリスクを減らす。
図1または
図2の動脈アクセスデバイス2010は、膨脹した場合に動脈を閉塞するように構成された閉塞バルーン2020を備えることができる。さらには、動脈アクセスデバイス2010は、バルーン膨張用の管腔を含んでもよい。この管腔は、例えば、近位アダプターの第2のYアームに、バルーンを流体連結している。このYアームは、一方活栓2029で終端する配管2028に取り付けられている。血管閉塞が望まれる際には、バルーンを膨張させるために、シリンジなどの膨張装置を活栓2029に取り付けてもよい。
図9は、膨張配管710を介して膨脹された遠位領域に膨張式バルーン705を備えた動脈アクセスシース220の実施形態を示す。膨張配管710はシース本体222の内部膨脹内腔を活栓229に接続し、次に活栓229を膨張装置に接続することができる。この実施形態では、遠位塞栓のリスクをさらに減らすために、受動的または能動的吸引源に接続されるYアーム715も存在する。
【0043】
いくつかの構成では、中間配値ガイドカテーテルを、動脈アクセスデバイスを通って挿入し、追加のカテーテル支援および場合により遠位閉塞を可能とすることができる。
図3は、動脈アクセスデバイス2010の近位止血弁2012を通ってCCA中に挿入されたガイドカテーテル2105を備えたシステムを示す。ガイドカテーテル2105は、止血弁を備えた近位ポート2015を有する近位アダプターを含み、手技中の失血を防止または最小にすると同時にデバイスの導入を可能にしている。ガイドカテーテル2105はまた、閉塞バルーン2020およびバルーン膨張用管腔を含む。この膨張用管腔は近位アダプター中のYアームに取り付けられ、次に配管2128に接続される。配管2128は、バルーン膨張装置に接続するための一方活栓2129で終端している。ガイドカテーテル2105は、血流ライン2125と連通している第2のYアーム2107を含んでいてもよい。別のシース2110を通る導入により、患者の体外で洗浄して再挿入するために、またはイントロデューサーシース2110を除去せずにガイドカテーテル2105を別のガイドカテーテルと交換するために、ガイドカテーテル2105を取り除き、それにより、経頸動脈切開を介して動脈へのアクセスを維持することが可能となる。さらに、この配置によって、手技中に、動脈の挿入サイトを妨害することなく、閉塞バルーン2020の再留置が可能になる。
図11の実施形態はまた、動脈アクセスデバイス2105の取り出し、およびその後の、手技の終了時のイントロデューサーシース2110を通した血管閉鎖デバイスの挿入を可能にする
【0044】
さらに別の実施形態では、
図12に示すように、動脈アクセスデバイスは、2つの閉塞バルーン2405および2410ならびに2つのバルーンの間に配置された側面開口部2415を備えたデバイス2010である。遠位閉塞バルーン2410は、動脈アクセスデバイス2010の遠位端またはその近傍に配置されており、近位閉塞バルーン2405は、動脈アクセスデバイスの作業部分の遠位端と近位端との間に配置されている。遠位閉塞バルーン2410は、外頸動脈ECAに配置される寸法および形状にされ、近位閉塞バルーン2405は、総頸動脈CCAに配置される寸法および形状にされている。このような2重バルーン配置は、CCAおよびECAの両方から内頸動脈ICAへの血流を止めており、これは、ICA中にデバイスを挿入することなしにICA中に配置された閉塞バルーンと機能的に同じ効果を有する。これは、ICAに疾患があり、それゆえアクセスによって塞栓を遊離させて塞栓合併症を生じる可能性のある場合、またはICAへのアクセスがひどくねじ曲がっていて、達成するのが困難な場合、もしくはその両方の場合に有利となるであろう。動脈アクセスデバイス2105の作業部分の側部開口2415は、遠位塞栓のリスクを低減または排除するために血流を停止または逆流させている間に、デバイス2416を、動脈アクセスデバイス2010を介して導入し、側部開口2415を介してICA中に挿入することを可能とする。その後、このデバイス2416を脳動脈閉塞の位置まで前進させて、閉塞を治療することができる。
【0045】
さらに別の実施形態では、
図13に示すように、動脈アクセスデバイスは複部構成(2つの部分など)の伸縮性システムである。アクセスシース2010bおよび/または遠位の延長部2010cは、2つ以上の同心状の管状部分から形成され、相互に伸縮自在にスライドして、可動可能なように取り付けられた管状部分の全体を一緒にした長さを伸ばすおよび/または縮小することができる。第1の部分は、CCA中に直接挿入されるように構成されたアクセスシース2010bである。第2の部分は遠位伸張部2010cであり、イントロデューサーシース2010bの近位端を通って挿入され、シースの到達する範囲をICAまで延長する。シース2010bの遠位端および伸張部2010cの近位端は、伸張部が完全に挿入されたときに2つのデバイスを通る連続的な管腔が存在するように、重なり結合2113を形成する。伸縮性システム2105bの長さがある程度可変性となるように、重なり結合は可変長であってもよい。遠位伸張部2010cは、シース2010bを通って遠位伸張部2010cの留置および回収を可能にするテザーを含むことができる。ある実施形態では、遠位伸張部2010cは閉塞バルーン2815を含む。この実施形態では、テザー2835は、バルーン膨張用の管腔を含む。このテザーは、その近位端で、バルーン膨張デバイスに接続することができる。この配置は、管腔面積を犠牲にせずに、
図3に示すシースプラスガイドカテーテルシステムの利点を提供する。
【0046】
本明細書で記載の動脈アクセスデバイスは、キンクを生じることなく、動脈中の屈曲部を通過するか、または進むこと(ナビゲートすること)が可能なように構成することができる。例えば、アクセスシースが経頸動脈アプローチにより、鎖骨の上側であるが頸動脈分岐部の下側に導入される場合、アクセスシースは、細長いシース本体222が柔軟であると同時にフープ強度を保持し、キンクまたは座屈に耐えるのが望ましい。これは、深部の頸動脈および/または首部の短い患者における経頸動脈アクセスのように、動脈中へのシース挿入量が限られている、および/または急な挿入角度がある場合の手技中には特に重要である。これらの場合には、シースの剛性のために、シース本体先端部が動脈の後壁に向けられる傾向がある。これにより、シース本体それ自体の挿入に起因する、またはシースを通って動脈中に挿入されているガイドワイヤーなどのデバイスに起因する損傷のリスクが生じる。他の選択肢としては、シース本体の遠位領域を、1つまたは複数の屈曲部、例えば、錐体部ICAを含む遠位の頸動脈中に配置することができる。したがって、動脈中に挿入される際に、キンク形成することなく、固定することができるように、シース本体222を作製することが望ましい。ある実施形態では、動脈アクセスデバイスは45度以下の屈曲部を通過することが可能で、これを通過しており、この場合、屈曲部は、動脈を通って測定して、5cm、10cm、または15cm以内の動脈切開内に位置している。
【0047】
動脈に入るシース本体などの動脈アクセスシースの作業部分は、2層以上から構成することができる。内側ライナーは、内腔を通してデバイスを前進させるための平滑表面を提供するために、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはFEP(フッ化エチレンプロピレン)などの低摩擦ポリマーから構成することができる。内側ライナーに機械的健全性を提供することができる外側ジャケット材料は、ペバックス、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロンなどの材料から構成することができる。内側ライナーと外側ジャケットとの間を強化することができる第3の層を組み込むことができる。強化層により、デバイスが血管系の屈曲部を通って進む(ナビゲートする)際の、シース本体の内腔のつぶれまたはキンク形成を防ぐことができる。強化層はまた、デバイスアクセスならびに吸引または逆流に対し、妨害を受けない管腔を提供することができる。ある実施形態では、シース本体222は周囲方向に強化されている。強化層は、ステンレス鋼、ニチノール、ニチノール編物、らせん状リボン、らせん状ワイヤー、切り込みステンレス鋼などの金属、またはPEEKなどの剛性ポリマーから作製することができる。強化層は、コイルもしくは編物、または柔軟になるようにレーザー切り込みまたは機械切り込みされたチューブなどの構造であってもよい。別の実施形態では、強化層は、切り込みハイポチューブ、例えば、ニチノールハイポチューブまたは切り込み硬質ポリマーなどであってよい。
【0048】
本明細書で記載の動脈アクセスシースは、その長さ全体にわたり柔軟性が変化するシース本体を有することができる。上述のように、動脈アクセスデバイスの最遠位部は、デバイスの近位部より柔軟となるように構成することができる。一実施形態では、シース本体の最遠位部の残りの部分より柔軟であるシース本体222の最遠位部が存在する。遠位部は、カテーテルの作業部分の長さの少なくとも10%であってよく、この場合、作業部分は動脈中に挿入されるように構成されている部分である。他の実施形態では、遠位部は、カテーテルの作業部分の長さの少なくとも20%または少なくとも30%である。柔軟性の可変性は、種々の方法で実現することができる。例えば、外側ジャケットの種々の部分におけるデュロメータ硬度および/または材料を変えることができる。シースの他の部分に比べて、より低いデュロメータ硬度の外側ジャケット材料を、シースの遠位部に使用することができる。他の選択肢としては、ジャケット材料の壁厚を減らして、および/または強化層の密度を変えて、柔軟性を高めてもよい。例えば、より柔軟になるように、コイルまたは編物のピッチを引き伸ばしても、またはチューブの切り込みパターンを変更してもよい。他の選択肢としては、強化構造または材料をシース本体の長さ全体に変更することもできる。例えば、最遠位部の曲げ剛性が、シース本体222の残りの部分の曲げ剛性の1/3~1/10であってよい。ある実施形態では、最遠位部は50~300N-mm2の範囲の曲げ剛性(E*I)であり、シース本体222の残りの部分は500~1500N-mm2の曲げ剛性(E*I)である。式中、Eは、デバイスの弾性係数、Iは断面二次モーメントである。CCAアクセスサイト用に構成されたシースでは、柔軟な最遠位部はシース本体222のかなりの部分を含み、これは比率として表すことができる。ある実施形態では、シース本体222の全長に対する柔軟な最遠位部の長さの比率は、全シース本体222の少なくとも1/10、最大で1/2である。
【0049】
場合によっては、動脈アクセスシースは、CCAアクセスサイトから頸動脈分岐または近位の内頸動脈ICAにアクセスするように構成される。
図5で最も明確に示されるように、シース本体222は、最遠位部223を有し、これは約3cm~約4cmであり、全体シース本体222は、約10cm~12cmである。この実施形態では、シース本体222の全長に対する柔軟な最遠位部の長さの比率は、シース本体222の全長の約1/4~1/2である。別の実施形態では、最遠位柔軟部分と近位部231との間の移行部225があり、最遠位部とシース本体の残りの部分との間には1つまたは複数の異なる柔軟性の部分が存在する。この実施形態では、最遠位部は、約2cm~4cmであり、移行部は約1cm~約2cm、全体のシース本体222は約10cm~約12cm、または比率で表して、最遠位柔軟部分および移行部は一緒にして、シース本体の全長の少なくとも1/4、最大で1/2である。
【0050】
場合によっては、動脈アクセスシースのシース本体222は、動脈アクセス位置に対して、内頸動脈のより遠位に、また、場合により、内頸動脈の頭蓋内部分に挿入されるように構成される。例えば、細長いシース本体222の最遠位部223は、約2.5cm~約5cmであり、全体シース本体222は、約15cm~約30cmの長さである。この実施形態では、シース本体の全長に対する柔軟な最遠位部の長さの比率は、全シース本体222の1/10~1/4である。別の実施形態では、最遠位柔軟部分と近位部231との間の移行部225が存在し、最遠位部は、約2.5cm~約5cm、移行部は約2cm~約10cm、全体のシース本体222は約15cm~約30cmである。この実施形態では、最遠位柔軟部分および移行部は一緒に、シース本体の全長の少なくとも1/6、最大で1/2を構成する。
【0051】
場合によっては、動脈穿刺の直径を最小限にするために、シース挿入中にはシース先端部を可能な限り小さく保持し、血管へ挿入後はシース開口部を膨張させることが望ましい。この機構の少なくとも1つの目的は、吸引カテーテルまたはその他の血栓除去デバイスをシース中に引き戻す間の、遠位塞栓の影響または生成を最小限にすることである。血栓除去手技の間に、血栓を捕捉したデバイスのシースの遠位開口部中に血栓を「引き戻す」ことができる。シースの遠位端がその初期寸法より拡大されている場合は、血栓片が破砕されて塞栓を生じる確率が最小化される。理由は、より大きな寸法のシース先端部は、複数片に分割されないで吸い込まれる塞栓を収容する可能性がより高いためである。これは患者のためのより良好な臨床転帰をもたらす。動脈アクセスデバイスの実施形態では、動脈アクセスデバイスは、動脈中に挿入され、所望のサイトに配置されると、アクセスデバイスのシース本体の先端部をより大きな直径に膨張させることができるような材料から作製される、および/またはそのように構成される。ある実施形態では、シースの遠位領域は、約0.087”(インチ)のID(内径)を有し、約0.100”~0.120”の直径に拡大することができる。この拡大寸法は変わってもよい。
【0052】
遠位端構造を膨張させる例には、短くすることにより膨張させることができるカバー付きの編物先端部が挙げられる。遠位端構造を膨張させる別の例は、非拘束状態になると、機械的作動または弾性バネ力により開くことができる傘または類似の構造である。径を拡張可能なチューブのその他の機構は当該技術分野において周知である。特定の一実施形態は、高圧バルーンを使って変形可能な材料から作製されたシースである。
【0053】
図15は、拡張可能遠位端を有するシース4305からなる動脈アクセスデバイスの例を示す。他の実施形態の場合と同様に、シース4305は、拡張器4310を受ける寸法および形状にされた内腔を有し、これは、シース4305の遠位端から突き出た状態で示されている。シース4305の近位領域は種々のYアーム、バルブ、作動装置などを装着してもよい。
図16は、外側に付き出ている拡張器4310を備えるシース4305の遠位領域の拡大図を示す。
図16では、シースの遠位領域は拡張されていない。拡張器4310は、シース4305に対して、4310を前後にスライドさせることにより、シース4305に沿った所望の位置で整列させることができる拡張可能バルーン4505を備える。拡張器はバルーン4505を膨張させるための膨脹内腔および膨張装置を有してもよい。拡張器4310が動脈アクセスデバイスシース4305中に挿入される場合、バルーン4405はシース4305の所望の位置で整列させることができる。バルーン4505が膨脹すると、正確な長さまたはシース4305の領域は、シースの内側で膨張するバルーン4505の結果として、正確な直径まで拡張される。シース先端部がその所望の位置に置かれると、シース本体の遠位領域Rが拡張されている
図17に示すようにバルーンがシースを拡張させる圧力まで膨脹される。
図18は、バルーン4505がシース4305の内側にある間に膨張された結果として拡張された領域Rを有するシース4305を示す。ある実施形態では、遠位領域Rは、塑性的に拡張される。シース本体は、引き裂きまたは破壊をせずに、このより大きな直径まで引き伸ばすことが可能なように構成される。バルーン材料は、ナイロンなどの血管形成バルーンで使われるものと類似または同じ、非柔軟性または半柔軟性材料であってよい。これら材料は、設計された直径を越えて拡張することなく、非常に高い圧力まで膨脹させることができる。変形例では、バルーン膨張部材が拡張器から分離されるか、または第2の拡張器上にあり、シースが所望の位置に配置されると、シース挿入用に使われた最初の拡張器と交換される。遠位塞栓のリスクを最小限にするために、シース上の閉塞バルーンの他の選択肢としては、またはそれと併用して、先端部を膨張させる設計を採用することができる。
【0054】
本明細書で記載の動脈アクセスデバイスはまた、後側動脈壁に面する、および接触する最遠位シース先端部により引き起こされる動脈に対する損傷のリスクを減らす、最小化する、または除くように構成することができる。いくつかの実施形態では、シースは、シース本体の遠位領域の長手方向軸が通常、血管の管腔の長手方向または中心軸に平行になるように動脈の管腔中でシース本体先端部を中心に配置するように構成された構造を有する。シースアライメント機構508は、シース先端部から外側に伸びるように作動させることができるシース本体222の1つまたは複数の機械的な構造であってよい(
図7参照)。シースアライメント機構508は、動脈アクセスシース220の外壁上に配置された、膨張可能、拡大可能、拡張可能なバンパー、気泡、またはバルーンであってよい。シースアライメント機構508は、大きさを増加させて動脈内壁に力を作用させて、動脈アクセスシースの細長い本体222に接触し、動脈壁から離れる方向にそれを押すことができる。ある実施形態では、シース本体222は、動脈アクセスの特定の縁部が動脈の後壁に向くように動脈中に挿入されるように構成される。この実施形態では、シースアライメント機構508はシース本体222の長手方向軸に対する1つの方向から外側に伸びるか、または後側動脈壁から離れる方向にシース先端部を押すことができる。アライメント機構508は、
図7に示すように、シース本体222の1つの側に配置するか、シース本体222の2つ以上の側に配置することができる。
【0055】
別の実施形態では、シース本体222の少なくとも一部は、急なシース挿入角度であっても、シース挿入後に先端部が挿入する血管の長軸とより良好に整列するようにプリシェイプされる。この実施形態では、拡張器260がシースガイドワイヤー300に沿ってシース挿入中にシース220とアセンブルされる場合、シース本体222は通常、まっすぐであるが、拡張器260とガイドワイヤー300が取り出されると、シース本体222の最遠位部は、湾曲形状または傾斜形状をとることができる。ある実施形態では、シース本体222は、シース本体220の主軸から測定して、約0.5”(インチ)の曲率半径で、最遠位の0.5cm~1cm部分が10~30度傾斜するような形状である。挿入中にまっすぐにした後で、シース本体220の湾曲形状または傾斜形状を保持するために、製造中に、傾斜または湾曲形状にシース220を熱硬化することができる。他の選択肢としては、製造中に、強化構造をニチノールから構築し、湾曲形状または傾斜形状に加熱成形することができる。他の選択肢としては、追加のバネ要素をシース本体220に加えて、例えば、適切な形状のバネスチールまたはニチノールの細片をシース220の強化層に加えることができる。
【0056】
いくつかの手技では、例えば、標的面積が動脈アクセスサイトに極めて近い場合の手技では、シース本体222の動脈への挿入量を制限するのが望ましい場合がある。頸動脈分岐部のステント手技では、シース先端部がステント配置を妨害しないように、または病気の領域に入り、塞栓をこぼれ落ちることを可能なかぎりさせないように、例えば、シース先端部を治療サイトの近位(アクセス位置に対し)に配置する必要がある。
図14Aおよび14Bに示す動脈シース220の実施形態では、シースストッパー1005がシース本体の遠位部の外側上に摺動自在に(slideably)連結されるか、または取り付けられる。シースストッパー1005は、シースの遠位部より短く、シース本体222に沿った特定の長さで確実な止め具を形成することによりシース本体222の挿入可能な部分を効率的に短縮する。シースストッパー1005は、シース本体222上に摺動自在に適合し、シース本体222上に配置される場合、シース本体の遠位部を露出したままにする長さを有するチューブであってよい。この長さは、約2cm~約4cmの範囲であってよい。より具体的には、長さは約2.5cmである。
図14Aに示すように、シースストッパー1005の遠位端は、シースが動脈に挿入される場合で、血管が動脈中に挿入される場合、角度が血管と端を揃えられて、動脈壁に対し止め具として機能するように傾斜され、配向されてもよい。他の選択肢としては、シースストッパーの遠位端は、
図14Bに示すように、動脈壁に接触する傾斜フランジ1015として形成してもよい。動脈壁に対しより確実で非侵襲的止め具を形成するように、フランジ1015は丸められるか、または非侵襲的形状を有する。シースストッパー1005は、動脈シースに恒久的に固定されてもよく、例えば、シースストッパーの近位端を動脈アクセスシースのコネクター815に接着してもよい。他の選択肢としては、使用者がシースストッパー1005を動脈アクセスシース220から取り外すことが可能であってもよく、それにより、手技において、シースストッパーを任意に選択して利用することができる。この場合には、シースストッパー1005は、コネクター815上の対応する係止機構と係合する係止機構を近位部に、例えば、コネクター上の突出部に係合する溝またはくぼみを近位のシースストッパー上に備えてもよい。その他の係止機構も同様に使用することができる。
【0057】
シース本体の挿入が約2cm~約3cmに制限されるような状況では、また、特にシース本体222が急な角度で挿入される場合には、患者に固定する場合、シース220を差し込み形状に適合させてもよい。例えば、差し込み形状は、第1の軸に沿って伸びる第1の部分、および第1の軸から軸方向にずれ、および/または第1の軸に非平行である第2の軸に沿って伸びる第2の部分を含む。シース本体222のばね反応性により、この形状が挿入サイトで血管に力を作用させて、適切に固定されない場合には、シース220が血管から出てくる傾向を高めさせる。血管への応力を減らすために、湾曲形状の場合に、シース本体の応力が血管ではなくシースストッパーに加わるように、シースストッパーを湾曲形状または差し込み形状にプリシェイプすることができる。シースストッパー1005は弾性があるが屈曲可能な材料から作られるか、またはバネ要素、例えば、ステンレス鋼またはニチノールワイヤーもしくは細片を含むことができ、それにより、拡張器260がシース220およびシースストッパー1005に挿入される場合には、シース220は比較的まっすぐになるが、拡張器260が取り除かれると、シースストッパー1005は予め曲げられた形状をとり、シース220が血管壁に加える力を減少させる。他の選択肢としては、シースストッパー1005は展性のある材料から作られるか、または展性のある要素、例えば、屈曲可能な金属ワイヤーまたは細片を含むことができ、それにより、シース220が挿入された後にシースストッパー1005は所望の湾曲部の形状になることができ、この場合も、シース220が血管壁に加える応力を低減させる。
【0058】
本明細書で記載のアクセスシースは、滑らかなまたは親水性コーティングをして、動脈中への挿入中の摩擦を低減し、血管系を通るデバイスの前進させ易さを向上させることができる。親水性のコーティングはデバイスの作業部分に限定することができる。ある実施形態では、軸の遠位部がポリウレタンなどの高分子材料で浸漬コーティングされる。浸漬コーティングは、デバイスの長さに沿って移動する種々の厚みの部分間で段階的変化を付与してもよい。ある実施形態では、遠位コーティングは細長いシース本体222の最遠位0.5cm~3cmに限定され、それにより、そのコーティングにより、穿刺サイトでのシースの安全性または挿入中に操作者が確実にシースを掴む能力を損なうことなく、挿入が容易になる。代替の実施形態では、シースはコーティングを有さない。本明細書で記載のアクセスシースはまた、放射線不透過性先端部マーカーを含み、蛍光透視法を使ったデバイスの留置を容易にする。例えば、
図3は、放射線不透過性先端部マーカー230を有するアクセスシース220を示す。ある実施例では、放射線不透過性先端部マーカーは、金属バンド、例えば、アクセスシース220のシース本体222の遠位端近傍に埋め込まれた白金イリジウム合金である。他の選択肢としては、アクセスシース先端部材料は別の放射線不透過性材料、例えば、バリウムポリマーまたはタングステンポリマー混合物であってよい。
【0059】
前述のように、動脈への挿入を改善するために、本明細書で記載の動脈アクセスデバイスシステムは1つまたは複数のテーパーの付いた拡張器を含むことができる。本明細書で記載の動脈アクセスシースの挿入端または遠位端は、動脈中へのスムーズなシースのガイドワイヤーに沿った導入を可能とするように、テーパーを付けることができる。動脈アクセスシースそれ自体の遠位端は、アクセスシースがシース拡張器とアセンブルされてシースアセンブリを形成する場合、シースアセンブリは、動脈穿刺を通ってシースガイドワイヤーに沿って最小限の抵抗でスムーズに挿入することができる。
図5は、動脈に挿入された細長い本体であってよく、アクセスシース220の、動脈壁中の穿刺サイトを通ってシースガイドワイヤー300に沿ってスムーズな挿入を可能とするシース拡張器260を示す。したがって、拡張器260の遠位端は通常、拡張器をシースガイドワイヤー300に沿って動脈中に挿入することを可能とし、アクセスシース220それ自体の挿入のために針穿刺サイトをより大きな直径に拡張するために、テーパーを付けることができる。これらの機能に適応するために、拡張器260は、通常、6~12度の合計夾角(拡張器の長手方向軸に対し)のテーパーと丸められた先端を備えたテーパーの付いた末端部268を有することができる。動脈中への挿入用としてアセンブルされる場合には、シース拡張器はアクセスシースに固定することができる。例えば、シース拡張器260の近位ハブ264は、例えば、止血弁226を備えた近位ハブ224などの、動脈アクセスシース220上の対応する構造中にまたはその構造上にはめ込む構造にすることができる。例えば、シースガイドワイヤー寸法に応じて、0.037”(インチ)~0.041”の内径を有する拡張器260の内腔は、シースガイドワイヤー300を収容することができる。
【0060】
ある実施形態では、動脈アクセスデバイスは2つ以上のテーパーの付いた拡張器を含むキットとして提供されうる。第1のテーパーの付いた拡張器は、例えば、
図5のテーパーの付いた拡張器260のように、動脈に入るために動脈アクセスデバイスと共に使用され、したがって、標準的なイントロデューサーシース拡張器と同様な寸法にされ、同様に構成される。テーパーの付いた拡張器に使用することができる材料例としては、例えば、高密度ポリエチレン、72Dペバックス、90Dペバックス、または同等の剛性および潤滑性の材料が挙げられる。第2のテーパーの付いた拡張器は、動脈アクセスデバイスと共に提供され、第1のテーパーの付いた拡張器の遠位部に比べて、より柔らかい遠位部またはより低い曲げ剛性を有する遠位部を有する。すなわち、第2の拡張器は、第1の拡張器の対応する遠位領域に比べて、より柔らかく、より柔軟な、またはより関節様である、またはより容易に曲がる遠位領域を有する。したがって、第2の拡張器の遠位領域は、第1の拡張器の対応する遠位領域より容易に曲がる。ある実施形態では、第1の拡張器の遠位部は、50~100N-mm
2の範囲の曲げ剛性を有し、第2の拡張器の遠位部は、5~15N-mm
2の範囲の曲げ剛性を有する。
【0061】
第2の拡張器(より低い曲げ剛性の遠位部を有する)は、最初の(initial)第1の拡張器と交換することができ、それにより、第2の拡張器のより柔らかい遠位部に起因して、血管に対する過度の力または外傷を生ずることなしに、動脈アクセスデバイスを内頸動脈中および動脈中の湾曲部周辺に挿入することができる。柔らかい第2の拡張器の遠位部は、例えば、例えば、72Dペバックスから作製された近位部を有する35または40Dペバックスで作製されてよい。第2の拡張器の柔らかい部分とより剛性の近位部との間にスムーズな変化部位を設けるために中間部または複数中間部を含めてもよい。ある実施形態では、両方の拡張器が放射線不透過性先端部マーカーを備え、それにより、蛍光透視法により拡張器先端位置が可視化されてもよい。ある実施形態では、片方または両方のカテーテルの最遠位縁部は、非侵襲的であり、最遠位縁部の組織に損害を与えるまたは傷つける可能性を減らすように構成される。最遠位縁部は丸められても、または最遠位縁部の組織に損害を与える可能性を減らす任意の形状を有してもよい。
【0062】
第1の拡張器と第2の拡張器との交換を容易にするために、片方または両方の拡張器を、拡張器の遠位部はテーパーの付いた単一管腔チューブから構成されるが、拡張器の近位部および近位端のいずれかのアダプターは側面開口部を有するように構成することができる。
図19は、動脈に挿入される寸法および形状にされた細長い部材、および近位ハブ4020から形成される拡張器4005の例を示す。拡張器は、拡張器4005の長さの少なくとも一部に沿って、例えば、細長い本体に沿って伸びる溝などの側面開口部4010および近位ハブ4020を有する。ある実施形態では、側面開口部4010は、近位ハブ4020を通って、拡張器4005の近位領域にのみ配置されるが、これは変わってもよい。側面開口部4010は、例えば、ガイドワイヤーを管腔に挿入するおよび/または管腔から取り出すなどの、拡張器4005の内腔へのアクセスを提供する。片側に溝を有する輪状の移動可能なスリーブ4015が、拡張器4005の近位ハブ4020に、またはその近くに配置される。後述のように、スリーブ4015を、例えば、回転を介して、ハブ4020の長手方向軸の周りで動かすことができる。拡張器4005の遠位端は組織拡張用のテーパーの付いた形状を有する。
【0063】
図20は、拡張器4005の近位領域の拡大図を示す。前述のように、拡張器4005は、拡張器4005の長さに沿って伸びる溝の形の側面開口部4010および近位ハブ4020を有する。スリーブ4015は、拡張器の外表面の周りに配置され、側面開口部4010の少なくとも一部をカバーするような形状にされている。したがって、スリーブ4015は、拡張器4005の内側に配置されたガイドワイヤーが側面開口部4010を介して拡張器から出るのを防ぐことができる。前述のように、スリーブ4015は、拡張器4005および近位ハブ4020に対し移動可能である。示した実施形態では、スリーブ4015は、拡張器4005の長手方向軸の周りで回転可能であるが、他のタイプの相対運動も本開示の範囲内にある。
図21に示すように、スリーブ4015は側面開口部4010と整列させることができる溝4210を有する。従って、整列された場合、溝4210および側面開口部4010は一緒に、拡張器4005の内腔に挿入されるか、または内腔から取り出されるガイドワイヤー用の開口部を提供するスリーブ4015は、
図20に示す位置(側面開口部4010をカバーする位置)と
図21に示す位置(スリット4210と側面開口部4010が整列されるために、側面開口部のカバーが外された位置)との間で回転させることができる。
【0064】
動脈アクセスデバイスキットの使用方法が以降で記載される。改良セルジンガー法または微小穿刺法を用いて、ガイドワイヤー、例えば、0.035”(インチ)のガイドワイヤーが、総頸動脈中に挿入される。ガイドワイヤーの遠位端を内頸動脈または外頸動脈中に配置するか、または分岐部を除く総頸動脈中で停止することができる。第1のより剛性の高い拡張器を有する動脈アクセスデバイスを0.035”のワイヤーに沿って動脈中に挿入する。動脈アクセスデバイスはシースの少なくとも2.5cmが動脈中にあるように挿入される。追加の購入が望ましい場合は、動脈アクセスデバイスはより遠くに、および内頸動脈中に向けることができる。第1の拡張器は取り除かれ、同時に、動脈アクセスデバイスおよび0.035”ワイヤーは所定位置で保持される。拡張器の近位部の側面開口部4010は、拡張器の取り出し中に、アクセスデバイスの外側のガイドワイヤーの大部分を直接に掴むことができるような「迅速交換」方式で拡張器が取り除かれることを可能とする。その後、0.035”ワイヤー上に第2の拡張器が配置され、シース中に挿入される。この場合も、拡張器の近位部に側面開口部4010を有する拡張器は、ガイドワイヤーの挿入中に、「迅速交換」法で0.035”のワイヤーを直接に掴むことを可能とするために使用することができる。第2の拡張器が完全に動脈アクセスデバイス中に挿入されると、血管の損傷を与える過度の力または損傷の懸念なしに、より柔らかい先端部の付いた第2の拡張器を有する動脈アクセスデバイスが内頸動脈および動脈中の屈曲部の周りまで前進させられる。この構成は、動脈中に挿入されるデバイスの能力を損なうことなく、動脈アクセスデバイスのより遠位の留置を可能とする。
【0065】
他の選択肢としては、1つまたは複数の標準的拡張器を側面開口部なしで使うことができる。側面開口部のない標準的拡張器が使われる場合は、第1の拡張器を使って、アクセスデバイスがガイドワイヤーに沿って動脈中に挿入された後で、第1の拡張器をガイドワイヤーと一緒に取り出し、アクセスデバイスのみを所定位置に残すことができる。中央管腔中にプリロードされたガイドワイヤーを有する第2の拡張器を一緒に動脈アクセスデバイス中に挿入することができる。完全に挿入されると、アクセスデバイス、およびより柔らかい先端部を有する第2の拡張器を上記のように遠位側に内頸動脈まで前進させることができる。この代替方法では、最初のガイドワイヤーを、両方の拡張器と共に使用することができ、または第2のより柔らかい先端部の付いた拡張器で挿入する場合、より柔らかい先端部の付いたガイドワイヤーと交換することもできる。
【0066】
<カテーテルの代表的実施形態>
本明細書で記載されるのは、動脈アクセスデバイスにより挿入されるように構成されたカテーテルである。カテーテルの例は、2014年7月28日出願の米国特許仮出願第62/029,799号および2014年11月4日に出願され、「Transcarotid Neurovascular Catheter」と題された米国特許仮出願第62/075,101号に記載されている。これら特許仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
上記のように、
図1、2および3は、動脈アクセスデバイス2010を通して総頸動脈(CCA)に挿入され、さらに、そこから内頸動脈または脳動脈中の標的治療領域に前進させられるように構成されたカテーテル2030の実施形態を示す。22は、代表的なカテーテル105の模式図を示す。カテーテル105は、血管への挿入のための寸法と形状にされた外形寸法を有している。近位ハブ2065は、プレップ中のシリンジの取り付けおよびその他の要素の取り付けのためのメス型ルアー形状を有する。例えば、手技中の失血を防ぐまたは最小限にする間に、マイクロカテーテル、ガイドワイヤー、または血栓除去デバイスなどのデバイスの導入を可能とするために、別の止血弁を、近位ハブ2065に取り付けることができる。他の選択肢としては、止血弁をカテーテル近位アダプターに一体化してもよい。ある実施形態では、このバルブは、例えばトーイボーストバルブまたは回転式止血弁(RHV)などの開度調節弁である。別の実施形態では、バルブは受動的シール止血弁である。
【0068】
カテーテル105は、2つ以上の層構造で作られてもよい。ある実施形態では、カテーテルはPTFE内側ライナー、外側ジャケット層を有し、カテーテルの少なくとも一部は、例えば、巻きコイル、編物または切り込みハイポチューブ(hyptotube)から形成された管状構造などの強化構造を有する。さらに、カテーテルは、遠位端に放射線不透過マーカーを有し、蛍光透視法を用いたデバイスの留置を容易にすることができる。
【0069】
カテーテル105は、頸動脈中のアクセスシースを通って挿入され、動脈経路(動脈を通る)を通過して遠位ICAまたは脳血管に送られる寸法にされている挿入可能な部分(すなわち、作業長さ)を有する。ある実施形態では、カテーテル105は、40~70cmの範囲の作業長さを有する。ある実施形態では、カテーテルは、70cm未満、60cm未満、または50cm未満の作業長さを有する。他の選択肢としては、カテーテルの長さは、アクセスサイトおよび標的の脳動脈サイトの位置に対して決定してもよい。ある実施形態では、カテーテルは、動脈を通して測定して、標的サイトの位置から40cm未満、30cm未満、または20cm未満である動脈中の位置で動脈中に導入されるように構成される。距離は、カテーテルが動脈切開部に入る位置と、標的サイトとの間の距離に対する作業長さの比率によりさらに決定することができる。ある実施形態では、この比率は2x未満である。ある実施形態では、デバイスの作業部は、血管系を通るデバイスの前進し易さを向上させるために、親水性コーティングされていてもよい。ある実施形態では、少なくとも、カテーテルの40%の作業長さが親水性材料でコーティングされる。他の実施形態では、カテーテルの少なくとも50%または少なくとも60%の作業長さが親水性材料でコーティングされる。
【0070】
ある実施形態では、最遠位部分は、内頸動脈湾曲部をうまく進み(ナビゲートし)、遠位のICAまたは脳動脈中の標的サイトに到着するために、1つまたは複数の柔軟部分を有し、近位部より柔軟になるように構成される。シャフトは、シャフトのより近位部に向かって次第に剛性が高くなる1つまたは複数の部分からなる移行部を有し、最近位部が最も高剛性のシャフト部となる。他の選択肢としては、移行部は、遠位部剛性から近位部剛性まで連続的に変化する剛性からなる部分であってもよい。ある実施形態では、最遠位柔軟部分は5~15cm、移行部は5~15cm、および近位の剛性部分は作業長さの残りの部分を占める。ある実施形態では、カテーテルは40cmの作業長さを有し、近位の剛性部分は10~30cmの範囲である。カテーテルが70cmの作業長さを有する実施形態では、近位の剛性部分は40~60cmの範囲である。
【0071】
他の選択肢としては、柔軟な遠位部および移行部は、全体のカテーテル作業部分の一部として記載することができ、その場合、作業部分は動脈に挿入されるように構成された部分である。ある実施形態では、柔軟な遠位部は、カテーテルの作業部分の長さの3~10%であってよく、移行部はカテーテルの作業部分の長さの15~35%であってよい。他の実施形態では、遠位部は、カテーテルの作業部分の長さの少なくとも20%または少なくとも25%である。
【0072】
ある実施形態では、最遠位部の柔軟性は、3~10N-mm2の範囲であり、近位の支柱部分の柔軟性は100~500N-mm2の範囲であり、移行部の柔軟性はこれらの2つの値の間に入る。
【0073】
上述のように、カテーテルは不連続な(discreet)および/または連続的に変化する剛性の軸を含む複数部分を有することができる。様々な柔軟性の部分は、複数の方法で実現することができる。例えば、外側ジャケット層は、異なるデュロメータ硬度(durometers)、組成、および/または肉厚を有するポリマーの不連続の部分から構成することができる。別の実施形態では、外層は柔軟性が連続的に変化する種々の外層材料からなる1つまたは複数の部分を有する。カテーテルは、カテーテルのPTFEライナーおよび強化アセンブリ上へのラミネート加工ジャケット押出成形ではなく、外層を浸漬コーティングすることにより、連続的に変化する外層材料を備えることができる。浸漬コーティングは、例えば、重合してカテーテルの外側ジャケット層を形成するポリマー溶液であってもよい。1つの柔軟性(例えば、デュロメータ硬度)の部位から別の柔軟性の部位へのカテーテルの長さに沿ったスムーズな移行を、カテーテルアセンブリを複数の変化するデュロメータ硬度材料中に浸漬することにより実現することができ、例えば、1つのデュロメータ硬度のカテーテルの片側から浸漬して移行部位中で次第に少なくし、および別のデュロメータ硬度の他の側から浸漬して同じ移行部位中で次第に少なくすることにより、1つのデュロメータ硬度から別のデュロメータ硬度への移行を段階的パターンとして実現することができ、それにより、1つのデュロメータ硬度から別のデュロメータ硬度への段階的移行が存在することになる。この実施形態では、浸漬コーティングにより積層アセンブリより薄い壁の外側ジャケットを生成することができる。別の実施形態では、カテーテルは、長さに沿って変化するデュロメータ硬度で押出成形され、カテーテルの長さに沿って変化する柔軟性を備える外側ジャケット層を有する。
【0074】
ある実施形態では、カテーテルの少なくとも一部は、不連続な構造または連続的に変化する構造で構成し、例えばコイルピッチまたは編物ピッチを変化させて剛性を変えた巻きコイル、編物から形成された管状構造などの強化構造を有する。ある実施形態では、強化構造は切り込みハイポチューブであり、ハイポチューブは、長さに沿って段階的になっており、例えば、連続的に変化するピッチまたは連続的に変化する切り込みギャップを含むスパイラルパターンで切り込みされ、またはチューブの屈曲を可能とし、それにより反復パターンが連続的に変化する反復距離または反復寸法またはこれらの両方を有する反復切り込みパターンで切り込みされる。切り込みハイポチューブ強化カテーテルはまた、コイル強化カテーテルより優れた押し込み易さを有する可能性がある。理由は、ハイポチューブ強化カテーテルが巻きコイル強化カテーテルよりも潜在的に軸方向安定性がより高い構造であるためである。強化構造用の材料は、ステンレス鋼、例えば、304ステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム合金、または強度、柔軟性、および破砕に対する抵抗性の所望の組み合わせを備える他の合金であってよい。ある実施形態では、強化構造は異なる柔軟性部分に沿った複数の材料を含む。
【0075】
別の実施形態では、カテーテルは、変化する柔軟性部分に沿った1つまたは複数の厚さを有するPTFE内側ライナーを有する。ある実施形態では、PTFE内側ライナーは、極めて薄く、例えば、0.0005”(インチ)~0.0010”となるように構成される。本実施形態はカテーテルに高レベルの柔軟性ならびにより薄い壁のカテーテルを構築する能力を与える。例えば、PTFEライナーは、薄壁PTFEチューブ製造、すなわち、後のステップで乾燥し、焼結してPTFEチューブを生成するPTFEペーストの押出成形を行うのではなく、液体PTFE溶液を通してマンドレルを引き抜くことにより作製される。引き抜き法は、非常に薄く、制御された壁厚、例えば、0.0005”~0.0010”の範囲の壁厚を可能とする。
【0076】
上述の製造方法のいずれか1つを組み合わせて使って、所望の柔軟性と耐キンク性の要件を組み込むことができる。現在の3層カテーテルは0.005”(インチ)~0.008”の範囲の壁厚を有する。これらの製造技術により、同じ壁厚でより良好なカテーテル性能、またはより薄い壁厚、例えば、0.003”~0.005”の壁厚で同等のもしくはより良好なカテーテル性能を有するカテーテルを得ることができる。
【0077】
ある実施形態では、カテーテルの遠位の柔軟部分は、柔軟部分からより高い剛性の近位部までの段階的移行部を有する1つまたは複数のディップコーティング外層、極めて薄い引き抜き加工PTFE層、および切り込みハイポチューブ強化層を使って構成することができる。ある実施形態では、全体カテーテルが1つまたは複数のこれらの要素から構成される。
【0078】
場合によっては、可能な限り大きな内腔寸法のカテーテルを使って解剖学的標的に到達することが必要になる。例えば、カテーテルを使って、血管中の閉塞を吸引することができる。したがって、非常に柔軟で、耐キンク性および耐圧壊性を有し、薄壁で大きな内径のカテーテルに対する要望が存在する。本明細書で開示の構築技術を使ったカテーテルはこれらの要件に適合する。例えば、カテーテルは0.070”(インチ)~0.095”の内径および25~50cmの作業長さとすることができる。別の実施形態では、カテーテルは、0.035”~0.060”の内径、40~80cmの作業長さを有し、より遠位の脳動脈に達する寸法にすることができる。ある実施形態では、カテーテルは、0.050”または0.100”の小ささの半径周りの180°屈曲部を回ってキンク形成なしで進む(ナビゲートする)ように構成される。この場合、屈曲部は動脈を通って測定して5cm、10cm、または15cmの動脈切開内に位置している。ある実施形態では、20インチ水銀の真空に接続された場合、カテーテルは圧壊に耐えることができ、一方で、180°×0.050”半径屈曲部までのねじ曲がった解剖学的構造中で圧壊しない。ある実施形態では、25インチ水銀の真空に接続された場合、カテーテルは同じ条件下で圧壊に耐えることができる。
【0079】
別の実施形態では、カテーテルの近位領域は、カテーテルの残りの遠位領域より大きな内径および/または外径を有するように、カテーテルの内径および/または外径がカテーテルの近位領域で大きくされる。
図23は、1つの内径および外径を備えた遠位部2070、および遠位部に比べてより大きな内径および外径を備えた近位部2075を有する実施形態を示す。一実施形態では、カテーテルの遠位部の長さは、より小さい遠位の血管中に配置されるように構成され、一方で、より大きな近位部はより近位のより大きな血管中に存在することになる。この実施形態では、カテーテルは遠位の10~25cmに対し1つの直径を有することができ、次いで、作業長さの残りの部分に対し、直径を10~25%増加させることができる。この増加は、増加の寸法およびスムーズな移行をする必要性に応じて、3~10mmの長さのテーパーの付いた移行部上で起こることになろう。他の選択肢としては、カテーテルは、
図8の実施形態または
図10に示すようなより大きな直径の近位延長部を有するシースなどのより大きな直径の近位領域を備えた階段状シースと共に使用してもよい。この場合、カテーテルは長さおよび直径を増加させて階段状シースに適合させることができる。例えば、シースがシースの近位20cmでより大きな直径の部分を有する場合、カテーテルは、より大きい長さ、例えば、近位25cmでより大きな直径を有し、近位アダプターおよびRHVなどの弁を通る追加の長さを許容するであろう。残りの遠位領域は、より小さい直径を有し、3~10mmの長さのテーパーの付いた移行部上で、増加の寸法およびスムーズな移行の必要性に応じて直径が増加することになる。
【0080】
場合によっては、カテーテルは動脈中の凝血塊を吸引するために使用される。
図24A~Dは、非正方形の遠位端または遠位縁を有するカテーテルの例を示す。
図24Aを参照すると、カテーテル105の遠位領域が示されている。カテーテル105は、カテーテル105の遠位端で開口部215を形成する最遠位端または縁部210を有する。遠位縁210は、長手方向軸Lに対し非垂直である角度を形成する。このような先端部は、先端部が軸Lに対し垂直である場合とは異なる寸法の開口部215を画定する。すなわち、開口部215はより大きく、長手方向軸に対し直角に切断された遠位端に比べて、より大きな吸引面積を提供する。したがって、カテーテルは先端部近傍に位置する閉塞に対し、より大きな吸引力を提供することができる。より大きな面積の開口部215はまた、先端部で吸引力により凝血塊を捕捉し、カテーテルで捕捉凝血塊を引き戻すだけではなく、凝血塊のカテーテルの管腔中への吸引を容易にする。
図24Aでは、カテーテル105は角度の付いたまっすぐな縁部210を有し、楕円開口部215を形成する。
図24B、24C、および24Dでは、遠位縁210は湾曲しているか、または非直線状であり、そのために、遠位開口部215は、非平面となり、より大きな開口部を提供することができ、閉塞との接触面積をさらに最適化することができるがその分に相当する先端部長さを延長する必要はない。遠位縁210は、まっすぐ、湾曲、波状、または不規則であってよい。切り込みハイポチューブ強化カテーテルを備えた実施形態では、ハイポチューブの遠位端は非正方形形状に形成することができる。放射線不透過性マーカーバンドを備えた実施形態では、放射線不透過性マーカーバンドは非正方形縁部を有してよく、この非正方形縁部は、その後、非正方形カテーテル先端部形状を形成するために使用することができる。
【0081】
極端な屈曲部を通って、および側枝を通過してカテーテルを前進させることの困難さの原因は、カテーテルと内部ガイド要素、例えば、より小さいカテーテル、マイクロカテーテル、またはガイドワイヤーとの不適合にある。カテーテルを前進させるための1つの技術は、3軸技術(tri-axial technique)と呼ばれており、より小さいカテーテルまたはマイクロカテーテルを、大きいカテーテルとガイドワイヤーとの間に配置するものである。しかしながら、現在のシステムでは、より小さいカテーテルは、より大きいカテーテル、ガイドワイヤーまたはそれら両方との間における直径の不適合があり、それにより、システムが血管系中を前進する際にシステムの前縁に段差が生じる。この段差は、非常に曲がった血管を進む場合、特に側枝(例えば眼動脈)が存在する位置では、困難を生ずる可能性がある。ある実施形態では、
図Aに示されるように、カテーテル105は、テーパーの付いた同軸の内側部材2652を備える。この内側部材2652は、通常使われるより小さいカテーテルに置き換わるものである。内側部材2652は、カテーテルの内腔を通して挿入される寸法および形状にされる。内側部材2652は、カテーテル203の内径と、内側部材2652の内腔を通して伸びるガイドワイヤー2515またはマイクロカテーテルの外径との間に滑らかな移行部を形成する外径を備えたテーパーの付いた領域を有している。ある実施形態では、テーパーの付いた拡張器または内側部材2652は、カテーテル内に配置したときに、より大きいカテーテル105の最遠位先端と、例えば直径が0.014”(インチ)および0.018”の範囲であってよいガイドワイヤー2515の外径との間の滑らかな移行部を形成する。例えば、内腔の直径は、例えば0.020”~0.024”であってよい。別の実施形態では、内径は、例えば外径が0.030”~0.040”の範囲内にあるマイクロカテーテルまたは0.035”のガイドワイヤーを内腔に受け入れるように構成されており、例えば、内腔の直径は0.042”~0.044”であってよい。
【0082】
この実施形態の変形例では、
図25Bに示されるように、テーパーの付いた領域に加えて、内側部材2652は、内側部材2652のテーパーの付いた部分を越えて遠位に伸びている一定の直径または単一の直径の最遠位領域2653から形成された延長部を含んでいる。この実施形態では、内側部材2652の遠位領域2653は、マイクロカテーテルが脳卒中の介入手技中に実行すると思われる一部のまたは全ての機能、例えば、遠位の血管造影を行うために閉塞を横切る、動脈内薬剤を注入する、または動脈瘤コイルまたはステントリトリーバーなどのデバイスを送達することを行うことができる。このように、行われるこれらのステップのために、マイクロカテーテルを拡張器と交換する必要がなくなるであろう。
【0083】
拡張器(内側部材2652)の材料が十分に柔軟であり、テーパー部が十分に長いので、柔軟なガイドワイヤーとカテーテルとの間に滑らかな移行部を形成することができる。この配置は、カテーテルを、湾曲した解剖学的構造を通って標的脳血管系まで前進させるのを容易にすると思われる。ある実施形態では、拡張器は、変化する剛性を有するように構成されており、例えば、最遠位部はより柔らかい材料から形成され、より近位部に向かって次第により硬質の材料で形成される。ある実施形態では、テーパーの付いた拡張器の遠位端には、白金/イリジウムバンド、タングステン、白金またはタンタルを含浸したポリマーなどの放射線不透過マーカーまたはその他の放射線不透過マーカーを備えている。
【0084】
別の実施形態では、カテーテルシステムは、血管系を通って脳閉塞に対し遠位の位置まで容易に進むことができるように構成されたアンカーデバイスを含む。アンカーを配置した場合には、閉塞の近位面へのカテーテルの前進を容易にするために、アンカーはレール応力および反力として使用することができる。
図26に示す例では、アンカーは遠位バルーン2510を備えたマイクロカテーテル2505である。マイクロカテーテル2505を、ガイドワイヤー2515に沿って標的治療領域、例えば、閉塞10の遠位側のサイトに配置し、その後、遠位のバルーン2510を膨張させる。他の選択肢としては、マイクロカテーテルが組み込み型の非侵襲的ガイドワイヤー先端部を有し、独立型デバイスとして前進させられてもよい。その後、従来技術で行われているように、カテーテル2030は、マイクロカテーテル2505の軸を治療サイトに向けて前進させるためのレールとして使用することができる。しかし、バルーン2510が膨張しているので、マイクロカテーテル2505は血管壁に係留され、カテーテル2030の前進に対する反力を提供する。ガイドワイヤー2515はこの手技中に所定位置に留まっているので、これにより、アンカー(すなわちバルーン2510)およびカテーテル2030を再前進させる必要がある場合には、アクセスは、ガイドワイヤー2515を使って、治療サイトを横切って維持される。
【0085】
非侵襲的遠位アンカーは、バルーン以外のデバイスであってもよい。例えば、他の非侵襲的遠位アンカーには、機械的拡張型先端部、例えば、編物、コイルまたはモリーボルト構造など)を備えたマイクロカテーテルを含むことができる。拡張可能な先端は、十分に柔らかくなるように、また、血管壁に対する局所圧力を低減し、血管壁の損傷を最小にするためにマイクロカテーテルの長さに沿って十分な力を提供するように、構成することができる。
【0086】
図27に示すように、この実施形態の別の変形例は、バルーンまたは拡張可能ケージもしくはステントなどの拡張可能先端部2620を備えたガイドワイヤー2615である。ガイドワイヤー2615は、マイクロカテーテルを使って血管系内に配置され、その後、マイクロカテーテルを後退させる際に、展開させることができる。ガイドワイヤー2615デバイスの拡張可能な部分は、別々の編んだ繊維から形成して、または、単一のハイポチューブから切り取って、反力作動部材として使って拡張させることができる。例えば、拡張可能な先端部の近位端は、中空のハイポチューブの遠位端に取り付けることができ、遠位端は、ハイポチューブ(hypotype)の長さを通ってきたワイヤーに取り付けることができる。ワイヤーを引き戻すと、拡張可能な先端は、長さが短くなり、直径が拡張される。ワイヤーを前方向に押すと、拡張可能な先端は折り畳まれることになる。
【0087】
図28に示す別の実施形態では、カテーテルおよび動脈アクセスデバイスは単一デバイス2710に組み合わされ、連続的管腔がデバイスの長さを通って伸びる。近位部2720は、動脈アクセスシースおよびカテーテルとして機能する遠位部2730を含む。この実施形態では、遠位部と近位部との間に位置する閉塞バルーン2715を含めることができる。遠位部2730は、脳血管系を通過するのに最適となるように構成される。特に、遠位部2730は、近位部2720より柔軟で、テーパーが付けられてより小さい径になっている。
【0088】
図29および30に示す別の実施形態では、カテーテルは、標的解剖学的構造を再横断することなしにカテーテルの再前進または交換を容易にするために、ガイドワイヤーアクセスを維持する第2の管腔を有している。
図29に示す実施形態では、カテーテルは、遠位端において一緒に終端する2つの管腔:主管腔および第2のガイドワイヤー管腔を有する。終端部では、遠位を向いた面を、血管系を通るカテーテルの通過が容易になるように(カテーテルの長手軸に対して)角度をつけて配置してもよい。
図30に示す別の実施形態では、第2のガイドワイヤー管腔は、主管腔の終端部を越えて伸びる延長部1247の内側にある。延長部1247は、主管腔によって形成された開口を越えて遠位に突出したカテーテルの最遠位領域である。延長部1247は、主管腔のまわりのカテーテルの外径と比較して、減少した外径を有するシャフトを形成する。第2の管腔は、主カテーテルのシャフトよりも小さく、主管腔の遠位端が閉塞の近位の表面上に配置される際に、閉塞内にまたはそれを横切って配置されてもよい。主管腔の遠位端は、デバイスの通過を容易にするために、同様に角度を付けて終端してもよい。
【0089】
いくつかの例では、吸引デバイスがカテーテルの近位部に接続される場合、カテーテルが標的治療サイトに配置された後で、例えば、閉塞の除去を容易にするために、直径を増加させることができる遠位端を有するのが望ましい場合がある。ある実施形態では、カテーテルは、拡張可能な先端部を有している。拡張可能な先端部は、編物またはステント構造などの機械的構造で構成されてもよく、これらは繰り返し可能な方法で開閉することができる。先端部を開くための機構は、拡張可能な部分を短縮する引張りワイヤーであってもよく、または、遠位部分を小さい直径に維持するが、後退させたときには遠位端が拡大できるようにする外側保持スリーブであってもよい。吸引が行われる場合に、先端部が拡張していても、していなくても、真空をカテーテルのまさにその先端部に適用できるように、遠位部は膜で覆われていてよい。拡張可能な先端部は、カテーテルを標的解剖学的構造まで通過する間、カテーテルを小さい外径に維持することを可能にするが、血栓などの閉塞性物質を容易に捕獲するために、その後に遠位の管腔面積を拡張する。カテーテル内に捕獲されると、血栓は、吸引デバイス内まで吸収されてもよく、または、その代替案として、カテーテルをそれ以上拡張しない場合には血栓をカテーテルの内腔に収容し、その時点でカテーテル全体を後退させることにより取り出すことができる。
【0090】
図31Aに示す別の実施形態では、カテーテル2830は、動脈アクセスデバイス2820の遠位部の伸縮式付属装置である。これに関しては、カテーテルは、2つ以上の同心状の管状部分から形成され、これら管状部分は、相互に伸縮自在にスライドして、可動可能なように取り付けられた管状部分の全体を一緒にした長さを増やすおよび/または減らすことができる。動脈アクセスデバイス2820の遠位領域は、動脈アクセスデバイスの長手軸に沿って遠位方向に伸縮自在に伸びる1つまたは複数の構造を有する。この構造はまた、それらが動脈アクセスデバイスの遠位端を越えて伸びないように、伸縮自在に折り畳まれていてもよい。この構造が動脈アクセスデバイスの遠位端を越えて伸縮自在に拡張する場合、構造は一緒に連続的な内腔を形成する。ワイヤー2835などのテザー要素は、動脈アクセスデバイスの近位端からテザー要素を押すまたは引っ張ることにより伸縮性の作動を行うことができるように、カテーテル2830の近位端に接続され、動脈アクセスデバイスの近位端を外に広げることができる。したがって、テザー要素は、座屈することなくカテーテルを押すのに十分な剛性を有する必要がある。テザー要素2835とカテーテル2830との間の接合部は、伸縮性カテーテルの作動中のキンク形成を避けるように、柔らかいカテーテルと硬いテザー要素の間を橋渡しする移行部位を含む。例えば、テザー要素は、移行部位でより柔軟になるように、平板化される、研磨で減らす、または小型化されてもよく、および/またはカテーテルは、強化構造または材料選択により、さらに高い剛性を有するように作られてもよい。バルーン2815などの閉塞部材は、動脈アクセスデバイス2820またはカテーテル2830上に配置されてもよい。アクセスデバイス2820およびカテーテル2830の両方とも、遠位の放射線不透過性マーカーを有する。さらに、カテーテルは、テザー2835がカテーテルに接続する近位端に放射線不透過性マーカーを有し、それにより、使用者はアクセスデバイスの遠位端とカテーテルの近位端との距離を可視化することができ、したがって、これら2つの間のオーバーラップ領域を可視化することができる。
【0091】
動脈アクセスデバイス2820のオーバーラップ部分と、カテーテル2830との間の接触面積は、2つのデバイス間の接合部でリークを生じることなく吸引力または圧力をカテーテル2830の遠位端に伝達するために必要とされるシールを提供するのに十分であろう。しかし、追加のシーリングが必要な場合には、システムは動脈アクセスデバイス2820とカテーテル2830との間の接合部にシーリング要素を導入することができる。この実施形態はまた、動脈アクセスデバイスを置き換えることなく手技中に異なる標的サイトに到達させるために複数の寸法のカテーテルが必要な場合に有用である。より小さいカテーテル2830のシーリング要素を、カテーテルとアクセスデバイスとの間のより大きなギャップをシールするように設計することができる。シール要素の一実施形態を
図31Bに示す。シーリング要素2845は、カテーテル2830の近位端の外面上に配置することができる。ある実施形態では、シーリング要素2845は、エラストマー材料から製造される1つまたは複数の外部隆起部機構であり、これはカテーテル2830が動脈アクセスデバイス2820の管腔に挿入される際に圧縮される。隆起部形状は、Oリング、クワッドリング、またはその他のピストンシールデザインのように動作するものである。
図31Cは、動脈アクセスデバイス2820の内側表面に対し傾斜した面などのワイパーシール形状を有するシーリング要素2845を備えた類似の形状を示す。他の選択肢としては、シール2845は、カテーテル2830が所望のサイトに配置された後などの必要に応じ、2つのデバイスの間で膨脹または拡張してシーリングを提供するバルーンまたはカバー付きの編物構造などの膨張可能または拡張可能部材であってよい。この実施形態の利点は、カテーテルの配置中にカテーテルに対しシーリング力が作用しないで、カテーテルが配置された後にカテーテルにシーリング力が加えられるという点である。他の選択肢としては、上記と同様の構造を有するシーリング要素が動脈アクセスデバイス2820の遠位端の内側にあってもよい。
【0092】
ある実施形態では、
図31Aに示すように、2つを伸縮自在に結合可能とする動脈アクセスデバイス2820およびカテーテル2830が一緒にキットで提供される。ある実施形態では、キットはまた、動脈アクセスデバイスの穿刺を通って動脈中への挿入に役立つシース拡張器およびシースガイドワイヤーを含む。頸動脈への経頸動脈アクセスのために構成された代表的実施形態では、動脈アクセスデバイスは15~30cmの長さの挿入可能な部分を有し、伸縮性カテーテルは10~15cmの長さである。別の代表的実施形態では、動脈アクセスデバイスは、経大腿アクセスサイトから頸動脈中に配置されるように構成された長いシースである。この実施形態では、動脈アクセスデバイスは、作業長さが90~120cmであり、伸縮性カテーテルは10~25cmの長さである。いずれの場合でも、テザーは、動脈アクセスデバイス2820から伸びたその完全長で配置される場合に、カテーテル2830の操作を可能とする長さである。ある実施形態では、キットはまた、動脈アクセスデバイスを頸動脈中に配置するためのシース拡張器およびシースガイドワイヤーを含む。ある実施形態では、キットはまた、
図25Aまたは
図25Bに示すような、カテーテル2830を伸縮させて位置決めするのに役立つ内側のテーパーの付いたシースを含む。
【0093】
ある実施形態では、動脈アクセスデバイス2820は、約0.086”(インチ)~0.088”ID(内径)の6F(フレンチ)シース寸法であり、カテーテル2830は0.083”~0.086”の外径、および0.068”~0.072”の内径を有する。代替実施形態では、動脈アクセスデバイス2820は、約0.074”~0.076”IDの5Fシース寸法であり、カテーテル2830は0.071”~0.073”の外径、および0.058”~0.062”の内径を有する。この方法の当然の結果として、その他の直径の組み合わせも可能である。
【0094】
別の実施形態では、カテーテル2830は、血栓性閉塞を、カテーテルに吸引する際に分割する(morcelating)構造を含む。ある実施形態では、カテーテルが標的サイトに配置され、内側のガイドワイヤーおよび/または内側のカテーテルまたは拡張器が取り出されると、拡張可能遠位セグメントを有する別の血栓破壊デバイスがカテーテルに挿入され、遠位端近傍の管腔の内側に配置される。このデバイスは収縮状態の拡張可能セグメントと共に挿入され、カテーテルの遠位端の近位で拡張される。このデバイスは、この状態で、血栓吸引との最小限の干渉となるように十分小さく構成される。代表的方法では、血栓破壊デバイスは、近位端で回転モーターに連結され、カテーテルの遠位セグメントにある拡張可能部分が回転する。その後、吸引がカテーテルの近位端で開始される。カテーテル中に血栓が吸引されるに伴い、回転する拡張可能部分により凝血塊が破壊され、その後、カテーテルの長さを通って容易に吸引される。他の選択肢としては、血栓破壊デバイスは、拡張されるが、まだそのまま残り、もし凝血塊がカテーテルの管腔中で詰まれることがあれば、そのときだけ、吸引の開始後に回転されるか、または前後に移動される。ある実施形態では、デバイスはまた、神経血管ガイドワイヤーの柔らかい先端部などの短い非侵襲的遠位端を含む。この機構は、その機構の使用中にカテーテルが遠位端から突出することがある場合はいつでも、このデバイスの血管損傷を生ずる確率を最小化した。
【0095】
ある実施形態では、血栓破壊デバイスは、拡張可能セグメントを作動させるために遠位端に取り付けられた内側の部材と一体となったほぼ細長い構造から構成される。拡張可能セグメントの構成は、編物、1つまたは複数のらせん状ワイヤー、または切り込みパターンを有するチューブであってよく、これらのいずれかが、内側の部材を引っ張ることにより短縮されると、拡張するように設計される。他の選択肢としては、
図51に示すように、血栓破壊デバイス5105が、送達中は拡張可能セグメントを押し込めている収納式スリーブ5110と一体化された概ね細長い構造の形状を有する。拡張可能セグメントの構成は、編物、1つまたは複数のらせん状ワイヤー、または切り込みパターンを有するチューブであってよく、
図52で認められるように、押し込めている収納式スリーブが後退させられる場合、これらのいずれかが、内側の部材を引っ張ることにより短縮されると、拡張するように設計される。収納式スリーブ5110は、マイクロカテーテルであってよい。デバイスが回転可能である場合、例えば、編物強化構造、逆巻きコイル構造、などのデバイスの軸はトルクを伝達することができる。カテーテルと同様に、デバイスは頭蓋内のおよび脳解剖学的構造中へ進行するための遠位端で非常に柔軟であり、近位端の方向に移動すると共に次第に高くなる剛性を備え、それにより、デバイスは容易に送達することができ、拡張可能部分を作動させることができる。
図53にあるように、血栓片Tがカテーテル2830の先端部で捕えられると、デバイス5105は矢印Rで示されるように、血栓破壊の必要に応じて、回転されるかもしくは前後に動かされる。または他の選択肢としては、デバイス5105は吸引ステップ全体を通して回転され、凝血塊がカテーテルの遠位端を決して閉塞しないが、遠位端中に吸引されると、直ちに破壊されることを保証してもよい。矢印Aで示される吸引は、この手技全体を通して維持され、分割された(morecelated)血栓がカテーテル2830を通して除去され、血流中へ再挿入されないことを保証する。
【0096】
本明細書で記載の多くのカテーテル構成は、カテーテル(cathereter)が開示動脈アクセスデバイスの1つと組み合わされる場合は特に、既存の方法およびデバイスに勝る吸引能力の点で利点を提供する。この利点は、結果的に、より迅速でより効果的な血栓性閉塞の除去および脳卒中の治療における遠位塞栓の低減に繋がる。この利点は、少なくともより短い吸引カテーテル設計、いくつかの事例では、より大きな内腔直径の吸引カテーテル設計に由来する。チューブ中の層流に対するポアズイユの法則にしたがって、流量は、Q=π×r
4×(ΔP)/8×n×Lで表すことができ、式中、Q=流量、r=チューブの半径、P=圧力、n=粘度、L=長さである。この式で示されるように、流量は長さの増加により低下し、半径の減少の4乗に比例して低下する。本明細書で記載の経頸動脈の実施形態は、約半分の長さのカテーテルを通る吸引速度を可能とし、したがって、既往のデバイスに比べて、潜在的に、2倍の血流を可能とする。さらに、本明細書で開示の実施形態は、特に、経頸動脈アクセスサイトからのより大きな近位支持、柔軟なセグメントから剛性セグメントへのより遠位の移行によるカテーテルのより優れた押し込みやすさ(pushabiltiy)、および
図25Aおよび
図25Bにあるようなテーパーの付いた内側の部材が理由となって、より大きな直径のカテーテルに対し、同じ標的サイトにより容易に、より多くの回数到達する能力を与える。
【0097】
例えば、凝血塊吸引に現在使用される1つのカテーテルは、ナヴィエン058(Navien058)またはナヴィエン072(Navien072)カテーテル(コヴィディエン社から販売)である。これらのカテーテルは、それぞれ0.058”(インチ)および0.072”の内径およびそれぞれ115cmおよび105cmの長さを有する。ナヴィエン072カテーテルは、脳血栓の除去により効果的なカテーテルであることが実証されているが、これは標的サイトに到達できる回数は少ない。対照的に、ペナンブラ5マックス(Penumbra 5Max)およびペナンブラ5マックス・エース(Penumbra 5Max ACE)は、高頻度で凝血塊面に到達することができ、さらに、いくつかの直径上の利点を提供する階段状形状を有する。しかし、これらのカテーテル構成は依然として、本明細書で開示のカテーテルほど良好に動作しない。
図22に示すような経頸動脈送達用に構成されたカテーテルは吸引上の利点を提供する。
図23に示すような階段状化および経頸動脈送達用構成の両方がなされたカテーテルはさらに多くの利点を提供する。最後に、
図31Aに示すような伸縮性形状は、経大腿構成で利点を提供し、また、経頸動脈構成ではさらに多くの利点を提供する。これらの利益は、
図54の表により小さいカテーテル寸法に対して、および
図55の表により大きなカテーテル寸法に対して示されるように、流体粘度nを3.7センチポアズ(典型的なヒトの体温での血液粘度)と仮定して、ポアズイユの法則にしたがって計算される。
【0098】
異なるカテーテルシステムが実際の吸引速度で試験される場合には、この利点は、より高流量での理論的吸引速度に比べて、幾分減少する。これは、より高い流量では、血流の層流が次第に減少するので、ポアズイユの法則による予測の理論的血流より低いことを反映している。しかし、より短く、より大きなID(内径)のカテーテルは、相対的利点を示す。代表的試験方法では、カテーテルは血液の粘度をシミュレートする40%グリセリン混合物を使い、次の方法により吸引速度の試験を行う。それぞれのカテーテルを活栓に接続し、さらに、そこから30ccのロッキングシリンジに接続する。カテーテルの先端部をグリセリン混合物の容器中に配置した。カテーテルおよびシリンジを空気でパージし、シリンジを空にした後、活栓を閉じた。その後、ロッキングシリンジを30cc容積に引き戻して、所定位置でロックした。活栓を開いた時点でタイマーをスタートし、シリンジ中に5cc、10cc、15ccおよび20ccの溶液を抜き出した時間を記録した。データポイントの傾斜を基準にして全体の平均抜き出し速度を計算したが、20ccまでおおよそ直線であり、これはこの方法を使うことによる一定の真空レベルを示している。結果およびそれらのベースラインのナヴィエンカテーテル(Navien Catheters)に対する相対的改善率を
図56および57の表に示した。
【0099】
<吸引および血流制御の代表的実施形態>
上述のように、システムに対し吸引または血流逆行デバイスもしくは構造を組み込むことが望ましい場合がある。本明細書で記載されるのは、開示システムの動脈アクセスデバイス、ガイドカテーテル、および/またはカテーテルと共に使用するように構成された吸引および血流制御要素である。吸引および血流制御要素の例は、2014年3月21日に出願された米国特許出願公開第2014/0296868号に記載されている。この特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。動脈アクセスデバイス2010およびカテーテル2030のいずれか一方または両方を、デバイス上の血流ライン2025または2045を介して、受動的または能動的な吸引源に接続することができる(
図1)。さらに、ガイドカテーテル2105を、デバイス上の血流ライン2125を介して受動的または能動的吸引源に接続することができる(
図3)。吸引のモードはデバイス毎に異なってもよい。
【0100】
図32では、動脈アクセスデバイス2010の血流ライン2025が送達位置、例えば、容器3100に接続される。吸引源3125を、血流ライン2025に接続することができる。容器3100および吸引源3125は別々であってもよく、または、シリンジなどの単一デバイスに組み込んでもよい。フィルター3418および/または逆止弁3419は、血流ライン2025に接続することができる。
図33では、カテーテル2030の血流ライン2045は、追加でまたは代わりに、別の吸引源3425および送達位置、例えば、容器3105に接続することができる。吸引源3425および送達位置は、シリンジなどの単一デバイスに組み込んでもよい。フィルター3418および/または逆止弁3419は、血流ライン2045に接続することができる。
【0101】
図34は、動脈アクセスデバイス2010およびカテーテル2030がそれぞれ血流ライン2025および2045を介して同じ吸引源3430に接続されるシステムを示す。バルブ3325は、どちらのデバイスを吸引源3430に接続するかを制御する。バルブは、いつでも、片方のデバイス、他方のデバイス、もしくは両方のデバイスを吸引源に接続されるようにすることができるか、またはいずれのデバイスも接続しないようにできる。バルブは三方活栓または四方活栓であってよい。他の選択肢としては、バルブは、上述したような構成を選択する単純作動の血流コントローラであってもよい。
【0102】
ある実施形態では、血流コントローラは、単一ユニット内の複数デバイスを経由する複数の吸引機構の制御を容易にしてもよい。この構成により、一人のオペレーターによるシステムの使用を容易することができる。血流コントローラは、例えば、動脈アクセスデバイス、カテーテル、それら両方またはそれ以外などのデバイスが吸引されるのを調節するために、使用者が作動させることのできる1つまたは複数の制御インターフェースを含むことができる。
図35は、このような血流コントローラ3400を使用するシステムの実施形態を示す。血流コントローラ3400は、カテーテル2030の血流ライン2045のみならず、動脈アクセスデバイス2010の血流ライン2025にも接続される。このようにして、血流ライン2025および2045は、動脈アクセスデバイス2010およびカテーテル2030から、それぞれ、血流コントローラ3400へと血流が流れるのを可能にする。コントローラ3400は、受動的な吸引源3410および能動的な吸引源3420のいずれかまたは両方に接続することができる。血流コントローラハウジング3429は、どのようにおよびいつ、各デバイスが各吸引源に接続されるかを決定するための制御機構を含む。制御機構はまた、各吸引源からの吸引レベルを制御することもできる。さらに、コントローラは、脳閉塞の破壊およびその吸引を容易にすることができる、パルス状の吸引モードを可能にする制御を含んでもよい。血流コントローラは、連続的な吸引モードとパルス状の吸引モードとの間で切り替えるためのインターフェースを有していてもよい。制御機構は、片手で操作可能となるようにデザインされてもよい。例えば、制御機構は、トグルスイッチ、押しボタンスイッチ、スライドボタンなどであってもよい。ある実施形態では、血流コントローラ3400は、使用者が脳循環への順方向血流をすぐに回復できるインターフェース、例えば、同時に動脈アクセスデバイスの閉塞バルーンを収縮し、吸引を止めるための、単一のボタンまたはスイッチを備える。
【0103】
能動的な吸引源は、吸引ポンプ、通常のシリンジまたはロッキングシリンジ、携帯型吸引器、病院吸引などであってもよい。一実施形態では、ロッキングシリンジ(例えば、VacLok Syringe)が血流コントローラに取り付けられ、手技の血栓除去術ステップの前に、血流ラインへの接続が閉じられている間に、プランジャーは使用者によってロック位置まで引き戻される。手技中に、吸引デバイス(動脈アクセスデバイスまたはカテーテル)の先端が閉塞の表面近傍または表面にある場合、使用者は、吸引シリンジへの接続を開くことができる。これにより、1人の使用者によって、急速に最大レベルの吸引が可能になるであろうが、これは現在、既存の技術では不可能なことである。別の実施形態では、吸引源は、吸引デバイスを切り離さずに吸引および補充ができるように構成された携帯型の吸引器である。この実施形態の例では、携帯型の吸引器は、片手で操作できるアクチュエーターで上下移動されるプランジャーを備えたチャンバーを含んでいる。チャンバーは入出力バルブを含み、その結果として、プランジャーが上下移動したときに、シリンジでは必要となるはずのチャンバーの取り外しおよび空にすることを必要としないチャンバーへのまたはチャンバーからの連続的な吸引源が存在するのと同じになる。チャンバー入力はカテーテルに接続され、チャンバー出力は血液収集バッグなどの収集容器に接続される。ある実施形態では、この吸引源は片手だけで使用されるように構成される。
【0104】
現在の吸引源の1つの欠点は、吸引された血液が外部リザーバーまたはシリンジで受けられるということである。この血液は通常、手技の最後に廃棄されるので、患者からの失血を意味している。さらに、遠心ポンプまたは蠕動ポンプなどのポンプは、血液細胞に損傷をもたらすことが知られている。外部リザーバーから患者に血液を戻すことは可能であるが、血液は空気に露出されているかまたは一時期は静置されており、血栓形成または血液細胞損傷のリスクがある。通常、吸引された血液は、血栓塞栓症のリスクを回避するために、患者に戻さない。
【0105】
図36は、代表的吸引ポンプデバイス3250の断面図を示す。このポンプデバイスは血液細胞を損傷しないように構成され、また、手技中に、リアルタイムで中心静脈系に血液を戻すように構成することができ、そのために、血液が静置されるリザーバーが存在しない。ポンプ3250は、動脈アクセスデバイス2010およびカテーテル2030のいずれか一方または両方に接続することができる。ポンプデバイス3250は、血流ライン2025の一部を含むチャンバー3220を囲んでいるハウジング3215を含む。チャンバー3220内に含まれている血流ライン2025の拡張可能な部分3210は、その自然な状態(
図36で細い線で示されている)では縮小された直径であるが、拡張された直径(
図36に実線で示されている)に変更できるように構成することができる弾性材料から形成される。Oリングなどの1つまたは複数のシール3125は、チャンバー3220と血流ライン2025の間の接合点を密閉する。真空源3230はチャンバー3220に接続されており、チャンバー3220の内の圧力を変更するために操作されるように構成される。2つの一方向逆止弁3235が、拡張可能な部分3210の両側の血流ライン2025内に位置している。
【0106】
ポンプデバイス3250の操作では、真空源3230は、血流ライン管腔3210内の圧力に対してチャンバー3220内で減圧を生成するように操作される。
図41に実線で示されるように、チャンバー3220と血流ライン管腔3210との間の圧力差は、血流ライン2025の拡張可能な部分3210を拡張させて、チャンバー3220内で容積を増加させる。逆止弁3235によって制御されるため、この拡張によって、血液は、「流入」の矢印で示される血流ラインのシース側から拡張可能な部分3210中へと引っ張られる。その後、真空源3230は、チャンバー3220内の圧力を正常化するように停止されてもよい。これにより、
図36で細い線で示されるように、拡張可能な部分3210が小さい自然な直径に戻される。逆止弁3235は、血流ライン2025の予め拡張された領域内の血液を、
図36の「流出」の矢印で示されるように、位置3120の方向に排出させる。真空源3230は、拡張可能な部分3210を、拡張状態と収縮状態との間で、一方向逆止弁3235と一緒に規則的に変動するように操作し、それにより、血流ライン管腔3210を通る血流を駆動させてもよい。
【0107】
図37は、1対のポンプデバイス3205aおよび3205bを含むポンプシステム3305を示しており、その各々は
図36で示されるタイプのものである。すなわち、各デバイス3205は、血流ライン2025の一部を含むチャンバーを包含するハウジング3215を含む。ポンプデバイス3205aおよび3205bは、各ポンプデバイス3205が拡張可能な部分3210を備えた血流ライン2025を有するように、血流ライン2025と平行に接続される。一対のポンプデバイス3205aおよび3205bは、ポンプシステム3305を通る相対的連続流の状態を形成するために、拡張状態と収縮状態とを交互させてもよい。ポンプ3205aおよび3205bが両方をあわせて、ポンプシステム3305を通る中断のない血流を駆動させるように、例えば、ポンプ3205bが収縮状態である間に、ポンプデバイス3205aが拡張状態であってよい。
【0108】
ポンプシステム3250または3305のさらに有利なことは、本明細書の別の箇所で開示されているように、中心静脈システムに血液を戻すように構成された受動的な逆流システムと共に使用することができるという点である。これら2つのシステムは、静脈リターンラインを共有してもよく、それらはバルブまたは他の血流制御デバイスにより接続される。
【0109】
受動吸引源は、例えば、(静脈リターン用に)中心静脈に挿入されたシース、または所望の負圧の程度に応じて変化し得る垂直レベルに設置されたIVバッグなどの、低圧のサイトであってよい。
図38は、静脈リターンを使用して動脈アクセスデバイスへの受動逆流を確立するシステム3500の代表的実施形態を示す。システム3500は、動脈アクセスデバイス3510、静脈リターンデバイス3515、および動脈アクセスデバイス3510から静脈リターンデバイス3515までの逆流用の通路を提供する血流ライン3520を含む。血流制御アセンブリ3525は、血流ライン3520と相互作用する。血流制御アセンブリ3525は、血流ライン3520を通る逆流を調節および/またはモニターするように構成されている。血流制御アセンブリ3525は、血流ラインを通る血流の状態およびレベルを決定するために、血流ライン3520を通る血流経路と相互作用する。
【0110】
ある実施形態では、以下に詳細に説明するように、動脈アクセスデバイス3510は、少なくとも部分的に総頸動脈CCAに挿入され、また、静脈リターンデバイス3515は、少なくとも部分的に、大腿静脈または内頸静脈などの静脈リターンサイトに挿入される。静脈リターンデバイス3515は、鼠径部における経皮穿刺によって大腿静脈FVに挿入することができる。動脈アクセスデバイス3510および静脈リターンデバイス3515は、コネクターで、血流ライン3520の反対端に接続される。閉塞要素3529を備えた動脈アクセスデバイス3510の遠位端を、ICA内に配置してもよい。他の選択肢としては、ICAアクセスが極端にねじ曲がっているような状況においては、総頸動脈中のより近位に閉塞要素を配置するのが好ましい場合がある。内頸動脈を通る血流が(閉塞要素3529を使用して)遮断される場合、内頸動脈と静脈系との間の自然な圧力勾配により、血液は、脳血管系から内頸動脈を通り、さらに血流ライン3520を通って静脈系へと逆行または逆方向に流れる。
【0111】
別の実施形態では、動脈アクセスデバイス3510は、経頸動脈アプローチを介して総頸動脈CCAにアクセスし、一方で、静脈リターンデバイス3515は、大腿静脈以外、例えば内頸静脈などの静脈リターンサイトにアクセスする。別の実施形態では、システムは、頸動脈から、静脈リターンサイトではなく外部容器、例えば、IVバッグに逆流を提供する。動脈アクセスデバイス3510は、血流ライン3520を介して容器に接続しており、これは血流制御アセンブリ3525と連通している。血液の逆流は、容器に集められる。所望により、血液をろ過し、その後患者に戻すことも可能である。容器の圧力は、圧力ゼロ(大気圧)またはさらに低く設定することができ、脳血管系から容器へ逆方向に血液を流すことができる。
【0112】
<血栓除去デバイスの代表的実施形態>
図39は、血栓除去デバイス15の代表的実施形態を示す。ある実施形態では、デバイスは脳循環への経頸動脈アクセス用に適合されている。デバイス15は、プッシャーワイヤー3910上に拡張可能部材3905を備える。拡張可能部材は、閉塞にまたは閉塞を横切ってすでに配置されている送達マイクロカテーテル3915中に非拡張状態で装着することができる。拡張可能部材3905は、マイクロカテーテル3915を通して、さらには閉塞を横切ってプッシャーワイヤー3910を押すことにより前進させられる。配置されると、拡張可能部材3905が拡張して閉塞に係合させるようにマイクロカテーテル3915が引き戻される。このデバイスの経頸動脈アクセス方法のための適合には、プッシャーワイヤー3910およびマイクロカテーテル3915の両方の作業長さの、経大腿送達用に適合されたデバイスの作業長さからの60~90cmの短縮が含まれる。血栓除去デバイス15は、脳閉塞にアクセスし横切るのに十分な長さを有する動脈アクセスデバイス2010またはカテーテル2030から外に広がることが可能となる作業長を有している。より具体的には、血栓除去デバイス15は作業長が80~120cmである。さらに、この適合は、マイクロカテーテル3915の遠位柔軟部分の長さを短縮して、標的サイトへのデバイスの送達性を向上させることを含めてもよい。血栓除去デバイス15は、閉塞を複数片に破壊しないで、単一片として閉塞を除去するように構成することができる。これにより、凝血塊の位置に対し遠位の塞栓の生成を最小限にするかまたは無くすことができる。ある実施形態では、拡張可能な部材3905が血栓位置で拡張されると、拡張可能な部材は一定期間その位置に維持され、その結果生成された血栓を通過する血流により血栓を溶解させるための血栓を通る灌流チャネルが形成される。このような実施形態では、拡張可能な部材3905は、患者の体外に回収するために血栓の一部を捕獲することが可能であるが、必須ではない。血栓の十分な部分が、閉塞を通して所望の血流チャネルを形成するように溶解されると、または得られた血流によって閉塞の完全な除去が達成されると、拡張可能な部材3905は、カテーテルまたはアクセスシース内に引き出して、その後、患者から取り出すことができる。拡張可能な部分は、シース内に引き出している間に、血栓の一部または全てを捕獲してもよい。
【0113】
上述の血管アクセスおよび逆流システムと同様の方式で、他の機械的な血栓除去カテーテルを使用することができることは理解されたい。機械的な血栓除去デバイスは、コイルが先端に付いたリトリーバー、ステントリトリーバー、拡張可能なケージ、ワイヤーまたはフィラメントのループ、捕捉器具、ブラシなどであってよい。これらの凝血塊リトリーバーには、虚血性合併症を引き起こす塞栓の破砕物のリスクを低下させるために、吸引管腔を含めてもよい。他の選択肢としては、血栓除去デバイスは、血栓を除去するための洗浄および吸引と共に、流体渦、超音波またはレーザーエネルギー素子、バルーンなどの凝血塊粉砕要素を含んでもよい。いくつかの代表的デバイスおよび方法は、以下の米国特許公報および特許出願公開公報に記載されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第6,663,650号、米国特許第6,730,104号、米国特許第6,428,531号、米国特許第6,379,325号、米国特許第6,481,439号、米国特許第6,929,632号、米国特許第5,938,645号、米国特許第6,824,545号、米国特許第6,679,893号、米国特許第6,685,722号、米国特許第6,436,087号、米国特許第5794629号、米国特許出願公開第20080177245号、米国特許出願公開第20090299393号、米国特許出願公開第20040133232号、米国特許出願公開第20020183783号、米国特許出願公開第20070198028号、米国特許出願公開第20060058836号、米国特許出願公開第20060058837号、米国特許出願公開第20060058838号、米国特許出願公開第20060058838号、米国特許出願公開第20030212384号、および米国特許出願公開第20020133111号。
【0114】
既往の血栓除去デバイスの主な欠点は、血栓除去デバイスが、適切な血流を回復するのに十分な閉塞を除去できず、閉塞を除去するためにさらなる試みが必要となった場合に、ガイドワイヤーおよびマイクロカテーテルを閉塞と再び交差させる必要があることである。現在では、単一管腔のマイクロカテーテルを使用して、血栓除去デバイスを送達する。マイクロカテーテルはガイドワイヤーに沿って配置され、その後、ガイドワイヤーが除去されて、血栓除去デバイスが送達される。閉塞を除去する場合、マイクロカテーテルとデバイスの両方を引き戻すので、閉塞を横切るアクセスが失われる。したがって、除去の試みが失敗または不完全で、さらなる試みが必要な場合には、ガイドワイヤーとマイクロカテーテルとを再び閉塞に交差させなくてはならない。上述のように、閉塞への再交差の余分なステップは時間かかり、遠位の血管損傷のリスクを招く。
図40に示す本開示の実施形態は、マイクロカテーテル4200であり、これは少なくとも2つの管腔を含み、1つの管腔は、ガイドワイヤー2515用であり、2つめの管腔は血栓除去デバイス4100、例えば、ステントリーバーまたはコイルリトリーバーを送達するためのものである。ガイドワイヤー用の第2の管腔の存在によって、単一の管腔のみを有するマイクロカテーテルに比べて、遠く離れた位置の特性をマイクロカテーテルに付加することができる。しかし、第2のガイドワイヤー管腔によって可能となる時間短縮およびリスク軽減は好都合であろう。さらに、経頸動脈的な使用のために、ガイドワイヤーおよび/またはカテーテル壁を、余分な管腔の追加により必要となる全体的な増大を抑えるために、従来の壁厚よりも小さくなるように縮小することができる。
【0115】
<灌流デバイスの代表的実施形態>
ある実施形態では、システムは、例えば、動脈アクセスデバイス2010を通って血栓性閉塞10の遠位側のサイトまで送達された灌流カテーテルを介して、血栓性閉塞および虚血脳組織よりも遠位側の脳血管系を灌流する方法を含むことができる。灌流カテーテルは、所望の位置に灌流溶液を送達するように構成されている。灌流溶液は、例えば、受動的な逆流回路3500の血流ラインからまたは別の動脈からの自家動脈血、酸素化溶液、または他の神経保護剤を含んでいてもよい。さらに、灌流溶液は、脳組織を冷却するために低体温にされていても、虚血期間中の脳損傷を最小限にすることが明らかになっている別の戦略であってもよい。灌流カテーテルは、血栓溶解療法に準ずる動脈内の血栓溶解剤のボーラスを送達するために使用してもよい。通常、血栓溶解療法では、ボーラスを送達した後、閉塞が取り除かれるまでに1~2時間またはそれ以上かかることがある。機械的な血栓除去術ではまた、閉塞された動脈を首尾よく再開通させるまでに1~2時間かかる場合がある。虚血性領域の遠位の灌流は、脳卒中の治療手技中の脳損傷のレベルを最小限にすることができる。遠位灌流の実施形態を以下で記載する。
【0116】
図41は、血栓性閉塞10を横切って配置され、閉塞よりも遠位の灌流を可能にする灌流カテーテル3600を示す。ある実施形態では、カテーテル3600は、カテーテル内の管腔を通って留置されたガイドワイヤーに沿って配置される。管腔は、ガイドワイヤー管腔と灌流管腔の両方として機能させることができる。留置すると、灌流に利用可能な管腔の貫通空間を最大限にするために、ガイドワイヤーを取り出してもよい。他の選択肢としては、ガイドワイヤー管腔および灌流管腔は、ガイドワイヤーが灌流中に灌流管腔に干渉せずにガイドワイヤー管腔内の所定位置に留まるように、カテーテル内の別々の2つの管腔であってもよい。灌流出口孔3615は、灌流管腔と連通しており、カテーテル3600の遠位領域に位置している。この灌流管腔は、注入ポンプまたはシリンジなどの灌流源に接続されてもよく、また、神経保護剤などの流体および/または患者自身の動脈血などの酸素化血液を、
図41の矢印P(カテーテル3600から吐出される灌流溶液の流れを表現している)で示すように、灌流出口孔3615を介して灌流するために使用してもよい。他の選択肢としては、カテーテル3600を、血栓溶解剤の急速投与中に、灌流出口孔3615が血栓症閉塞10のすぐ近位にまたは内部に最初に配置されるように、閉塞10に対して配置してもよい。その後、血液または等価溶液を使った遠位灌流を虚血性ペナンブラに供給するために、灌流出口孔3615のうちの少なくとも一部が閉塞10の遠位に配置されるように、カテーテルを再配置することができる。灌流カテーテルは、上述の機械的なまたは吸引による血栓除去と共に使用することができる。カテーテルは、アクセスデバイス2010またはカテーテル2030の管腔を通って配置することができる。カテーテルは、管腔内の機械的な血栓除去要素と並列に留置してもよく、または機械的な血栓除去デバイスと同軸に留置してもよい。
【0117】
図42は、流体を灌流するための側孔3615および/または末端開口部3616と連通する灌流管腔3610、および第2の管腔3612を備える灌流カテーテル3600の別の実施形態を示す。圧力モニタリング管腔3612は、最遠位端3613で閉鎖されている。管腔3612の側開口3614は、灌流圧の測定のために最遠位端3613の近位に位置している。カテーテル3600は、閉塞バルーンなどの拡張可能な閉塞要素を含むことができるが、拡張可能な閉塞要素を含めないで図示されている。閉塞要素は、側孔3615の遠位または近位のいずれかに配置することができる。ある実施形態では、灌流源は、200mmHg未満の灌流圧を維持するように、灌流圧測定により制御することができる。ある実施形態では、灌流流量は、約50mL/分~約250mL/分の範囲で灌流を維持するように制御される。
【0118】
図43に示す代替的実施形態では、遠位灌流カテーテル3700は、閉塞バルーン3705を含み、灌流出口孔3715が閉塞バルーン3705の遠位および/または近位に配置される。前の実施形態と同様に、灌流カテーテル3700は、血栓除去デバイス、吸引機構または動脈内血栓溶解剤注入などの再開通治療と併せて使用してもよい。カテーテル3700は、閉塞バルーン3705が閉塞10の遠位に配置されるように、血管系内に留置される。カテーテル3700は、バルーン3705の遠位の領域を血液または等価液で灌流し、バルーン3705の近位の領域を血栓溶解剤で灌流するように、構成されてもよい。その際、
図44に示されるように、カテーテル3700は、別々の灌流出口孔と連通している別々の灌流管腔3720および3725を含んでいてもよい。他の選択肢としては、
図45に示すように、遠位および近位の灌流出口孔は、同じ灌流管腔3630と接続しており、閉塞バルーンの遠位および近位の両方の領域が、血液または代わりの灌流溶液を注入するのに使用される。閉塞バルーン3705の膨張および収縮用の別々の管腔は、
図43および
図44のいずれにも示されていない。この管腔は、カテーテルの壁に埋め込まれてもよい。
【0119】
図46に示す別の実施形態では、拡張可能閉塞デバイス3705は、カテーテル3700が遠位の血管系を灌流している間に血栓に膨張力を加えることができる膨張バルーンである。
【0120】
灌流カテーテルは、血栓除去を助けるために灌流を供給することも可能である。
図47は、動脈アクセスデバイス2010またはカテーテル3401を介して閉塞の遠位で配置されている近位灌流カテーテル3800を示す。近位灌流カテーテル3800は、閉塞バルーンなどの拡張可能な閉塞要素3829を含む。近位灌流カテーテル3800はまた、閉塞要素3829の近位の位置に、1つまたは複数の灌流出口孔3820を含む。灌流出口孔3820は、灌流出口孔3820を通って流出する液体の灌流用の灌流カテーテル3800内の内部灌流管腔と連通している。
図46をさらに参照すると、近位灌流カテーテル3800は、灌流カテーテルの閉塞要素3829が血栓10の遠位で配置および拡張され、灌流出口孔3820が閉塞要素3829の近位で、血栓10の遠位に配置されるように、動脈アクセスデバイスを介して血管系中に配置される。このような配置は、血栓10の除去を支援するための背圧を提供する。さらに、閉塞要素3829は遠位塞栓保護として機能する。様々な灌流流体のいずれを使用してもよく、これらには、例えば、酸素化血液、神経保護剤、血栓溶解剤、ならびに他の流体が含まれており、これらは所望の温度に調節することができる。動脈アクセスデバイス2010は、
図47に示す配置により、吸引に使用することができる。動脈アクセスデバイス2010は、閉塞バルーン2020、ならびに、受動的または能動的な吸引機構を備えていてもよい。灌流カテーテルは、動脈アクセスデバイス2010、したがって、血流ライン2025を通って、血栓を患者から取り出すのを容易にする。
【0121】
閉塞の遠位への圧力の付与に加えて、近位灌流カテーテル3800からの灌流流体は、閉塞内またはすぐ近位を起点とする小さい血管(穿通枝)に血液を供給することができる。灌流カテーテル3800の軸はまた、ステントリーバーまたは血栓除去デバイスなどの治療デバイスを送達するためのレールまたは導管として使用することができる。
【0122】
ある実施形態では、灌流管腔およびガイドワイヤー管腔は、例えば、
図42に示すように構成された2つの別々の管腔である。代替の実施形態では、灌流カテーテル3800の灌流管腔は、ガイドワイヤー管腔としても機能する。このような配置では、バルブは、灌流管腔/ガイドワイヤー管腔の遠位端開口部に位置するのが望ましい。ガイドワイヤーがガイドワイヤー管腔の遠位端開口部から遠位に押し込まれたときに、ガイドワイヤーがバルブを開く。ガイドワイヤーが近位に引き戻されて管腔内に入ると、バルブは自動的に閉じる。このように、ガイドワイヤーを引き込んだ後、バルブは管腔の遠位端開口部を封止する。バルブはまた、灌流圧が高すぎる場合にバルブが開いて圧力を開放するための圧力逃がし弁でもあり得る。
【0123】
図48A~48Dは、近位灌流カテーテル3800の代表的使用方法を示す。
図48Aは、脳動脈中の血栓10を横切って配置されたガイドワイヤー3912の拡大図を示す。
図48Bでは、灌流カテーテル3800の遠位領域が、(ガイドワイヤー3912を介して)血栓10を横切って配置され、未拡張の閉塞要素3829が、血栓10の遠位に配置されている。ガイドワイヤー3912は、灌流カテーテル3800のガイドワイヤー管腔の遠位端から突き出る。
図48Cでは、ガイドワイヤーは灌流カテーテル3800のガイドワイヤー内腔中に引き戻されているので、示されていない。ガイドワイヤー管腔が灌流カテーテル3800用の灌流管腔としても機能する場合、
図48Cの矢印Pで示すように管腔が灌流出口孔3820を介して灌流としてすぐに使用できるように、ガイドワイヤー管腔/灌流管腔の遠位端にある遠位バルブ3916(ダックビル弁など)は自動的に閉じる。(
図48Cに示すように)閉塞要素3829が拡張していない場合、灌流出口孔3820は、遠位を灌流するのに使用することができる。
図48Dでは、拡張可能閉塞要素3829が動脈中で拡張されている。
図48Dの矢印P1で示すように、その後、灌流出口孔3820は、閉塞要素3829の近位の灌流に使用することができる。
【0124】
灌流カテーテル3600または3800は、血圧モニタリング用の要素を含むことができる。ある実施形態では、圧力モニタリング要素は、灌流カテーテル3600または3800の専用内腔であり、内腔は流体で満たされており、灌流カテーテルの近位端の圧力変換器に接続される。カテーテル自身の圧力変換器も同様に使用することができる。他の選択肢としては、圧力計測用ガイドワイヤーを、灌流カテーテル3600または3800の内腔を通して、圧力をモニターする位置に挿入することができる。
【0125】
あるいは、脳の灌流は、Frazeeらにより記述されたような脳の逆行性灌流を含むことができる。この実施形態は、虚血性脳卒中の治療中における、内頸静脈を介した選択的カニューレ挿入および横静脈洞の閉塞、ならびに、上矢状静脈洞を介した脳組織への血液注入を含む。以下の論文(参照によりその全体が組み込まれる)は、脳の逆行性灌流について記述している。Frazee,J.G.and X.Luo(1999).“Retrograde transvenous perfusion.” Crit Care Clin 15(4):777-88,vii.;およびFrazee,J.G.,X.Luo,et al.(1998).“Retrograde transvenous neuroperfusion:a back door treatment for stroke.” Stroke 29(9):1912-6。この灌流は、脳組織の保護の提供に加えて、脳動脈中で逆流勾配を生じさせることも可能である。逆流システム100と共に使用される逆行性灌流成分は、血栓性閉塞10の再開通中に逆流ライン内への塞栓破砕物を捕獲するのを助けるだけでなく、脳組織に酸素を供給することもできる。
【0126】
例えば、米国特許第6,435,189号および米国特許第6,295,990号に記載されているような他の灌流カテーテルまたはシステムを、システム100と共に用いることができることを理解されたい。これらの米国特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0127】
<経頸動脈の血管閉鎖用の代表的方法およびデバイス>
自動閉鎖要素、縫合に基づく閉鎖要素、静水圧封止要素を含むいずれかのタイプの閉鎖要素を、手技の最後に動脈アクセスデバイス2010を引き抜く前に、総頸動脈壁の貫通部にまたはその周囲に配置することができる。経頸動脈血管閉鎖用として特に構成されている血管閉鎖方法およびデバイスが本明細書で記載される。「Suture Delivery Device」という名称の米国特許出願公開第20100042118号、および「Vessel Closure Clip Device」と題された米国特許出願公開第20100228269号には、代表的な閉鎖デバイスおよび方法が記載されている。これらの特許出願公開は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。経頸動脈血管閉鎖デバイスおよび方法のさらなる例は、2014年5月16日に出願された米国特許仮出願第61/994,623号に記載されている。この特許仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2014年11月4日に出願された、「Vessel Access and Closure Assist System and Method」と題された米国特許仮出願第62/074,964号、および「Suture Closure Device」と題された米国特許出願第12/540,341号もまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0128】
閉鎖要素は、手技の開始時またはその付近で「予備閉鎖」と呼ばれるステップにおいて配置されてもよく、または、閉鎖要素は、シースが引き抜かれるときに配置することもできる。ある実施形態では、血管閉鎖は、縫合に基づく血管閉鎖デバイスにより実現することができる。縫合に基づく血管閉鎖デバイスは、シース除去後に縫合糸の端部を結ぶ際に、1回または複数回の縫合がアクセスサイトの止血を可能とするように、血管アクセスサイトを横切って1本または複数本の縫合糸を配置することができる。縫合は、動脈切開部を通る手技用シースの挿入前に、または動脈切開部からのシースの除去後に適用することができる。予備閉鎖ステップを用いる場合には、デバイスは、手技用シースの留置前および留置中ではなく、縫合糸の配置後に、動脈切開部の一時的な止血を維持することができ、また、縫合糸を結ぶ前ではなく、手技用シースを引き抜いた後に一時的な止血を維持することもできる。いくつかの代表的な縫合に基づく血管露出(disclosure)デバイスは、米国特許第6,562,052号;同第7,001,400号;および同第7,004,952号に記載されている。これらの特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0129】
ある実施形態では、システムは、超音波プローブ要素を含んでおり、これは、超音波イメージングシステムと共に使用された場合、頸動脈アクセスの所望のサイトを特定して、経皮的穿刺に適していることを判断するように、例えば、血管に血管疾患がないことを確認するように構成されている。プローブはまた、内頸静脈などの周囲の解剖学的構造を可視化して、それらの他の構造を含むことなしにアクセスを達成できることを保証すると思われる。さらに、プローブは、止血が達成されたことを確認するために、血管閉鎖後のアクセスサイトを視覚化するのに使用することもできる。必要であれば、プローブは、止血を確実にするために、必要に応じて穿刺のサイトに局所的な圧迫を加えるために使用してもよい。例えば、血管の閉鎖後、プローブは閉鎖サイトを画像形成するために使用される。血液がサイトから流れ出るのが見えた場合には、プローブを押し下げてサイトを圧迫する。使用者は、プローブに加えている圧力を定期的に緩めて、止血が達成されたかどうか判断する。止血されていない場合には、再び圧力をかける。止血されていれば、プローブを除去してもよい。
【0130】
図49に示す実施形態では、動脈アクセスシステム2000は血管壁の開口部を閉鎖するために、血管閉鎖デバイスの血管上への送達を容易にするデバイスを含む。ある実施形態では、システム2000は、手順に従って、イントロデューサーシース2200、シース拡張器2600、イントロデューサーガイドワイヤー3000、および血管閉鎖デバイス送達シース2205を含むキットとして梱包される。ある実施形態では、キットはまた、血管閉鎖デバイス適用装置を含む。ある実施形態では、血管閉鎖デバイスデリバリーシステムは、患者の首に位置する血管上、例えば、総頸動脈を含む頸動脈上で、少なくとも部分的に行われる経頸動脈手技で使用するように構成される。
図50は、ガイドワイヤー3000に沿って動脈中に挿入するために組み立てられた動脈アクセスシステム200を示す。
【0131】
<代表的な使用方法>
図1に示すように、動脈アクセスデバイス2010は経頸動脈的に患者の直接総頸動脈CCA中に導入される。これは経皮的穿刺または直接的な切開によって行うことができる。穿刺の場合、最初の動脈穿刺を正確に行うために超音波画像処理を使用することができる。動脈アクセスデバイス2010は、遠位端が総頸動脈または内頸動脈ICAの近位もしくは遠位の頸部、錐体部もしくは内頸動脈空洞部に配置されるように、血管系を通される。取り外し可能な近位延長部は、蛍光透視下で、使用者の手が放射線による被ばくなしに、動脈アクセスデバイス2010を設置するために使用することができる。2010年7月12日に出願された米国特許出願公開第2011/0034986号には、取り外し可能な近位延長部の代表的実施形態について記載されている。この特許出願公開は参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
動脈アクセスデバイスが位置決めされると、経頸動脈アクセス用に構成され、動脈アクセスデバイスを通して留置されているマイクロカテーテルを介して、診断血管造影を行うことができる。診断血管造影は、手技の進行を確認するために、手技の全体にわたって行なわれる。
【0133】
カテーテル2030は、動脈アクセスデバイス2010またはガイドカテーテル2105を通して留置され、遠位端が治療サイトに到達するように配置される。必要に応じ、ガイドワイヤー、マイクロカテーテル、およびカテーテル2030を含むデバイスの同軸のシステムが、動脈アクセスデバイス2010を通して一緒に挿入され、治療サイトの方向に進められる。他の選択肢としては、マイクロカテーテル先端部を備えたまたは備えていないテーパーの付いた拡張器を、マイクロカテーテルの代わりに用いてもよい。他の選択肢としては、マイクロカテーテルおよびガイドワイヤーを、テーパーの付いた拡張器の内部に配置してもよい。取り外し可能な近位延長部を使用する場合には、伸縮性デバイスの導入の前に取り出してもよく、または、デバイスは、取り外し可能な近位延長部を通して挿入してもよい。その後、マイクロカテーテル、またはテーパーの付いた拡張器、およびガイドワイヤーを前進させて、脳閉塞に近接させ交差させる。マイクロカテーテルまたは拡張器は、閉塞よりも近位または遠位の脳循環の血管造影を行なうために使用してもよい。マイクロカテーテルは、カテーテルを前進させるためのレールとして使用することもできる。
【0134】
典型的には、閉塞まで安全に進めることが可能な最大寸法のカテーテルを選択して、閉塞の吸引のための力および管腔面積を最大化することになる。その後、カテーテルを通して吸引が開始される。これは、手動で、吸引ポンプで、または他の吸引源で行うことができ、または上述した血流コントローラを介して行うことができる。血栓が大きすぎてまたは血管系中にあまりに強く埋め込まれていて、吸引のみでは閉塞を除去できない場合には、閉塞を除去するために、さらなるステップが行われる。血栓除去デバイス15は、凝血塊を除去する動脈アクセスデバイスを通して配置されてもよい。凝血塊回収中に、遠位塞栓の量を最小にするかまたは無くすために、受動的または能動的な吸引を動脈アクセスデバイスまたはガイドカテーテルを介して適用してもよい。
【0135】
カテーテルが閉塞に到達することができない場合、または第1の閉塞の除去後さらに遠位の第2の閉塞に到達することが必要になった場合は、より小径の第2のカテーテルを、第1のカテーテルを通して挿入して、遠位の治療サイトに配置してもよい。他の選択肢としては、第1のカテーテルを取り出して、第2のカテーテルと交換してもよい。ガイドワイヤーおよび/またはマイクロカテーテルを、第1のカテーテルを通して留置して、交換を容易にしてもよい。
【0136】
所望寸法のカテーテルを治療サイトまで進めるのが困難な場合には、
図26または27に示されるように、デバイスをそのサイトの遠位側に配置し、拡張させて、カテーテルの前進を助けるためのアンカーとして機能させることができる。所望される場合には、第2のカテーテルは、閉塞の近位面にアクセスするための第1のカテーテルの支持を形成するように、伸縮方式で使用してもよい。他の選択肢としては、
図25Aまたは
図25Bに示すように、テーパーの付いた拡張器をマイクロカテーテルに加えて、またはそれを置換して使用して、カテーテルの進行を容易にすることができる。動脈アクセスデバイス2010およびカテーテル2030は、
図32~34に示されるように、受動的または能動的な吸引のための要素に接続することができ、または
図35に示されるような血流コントローラ3400に接続してもよい。一実施形態では、動脈アクセスデバイス2010は受動的な吸引に接続され、カテーテル2030は能動的な吸引に接続される。別の実施形態では、両方のデバイスとも能動的な吸引に接続される。手技中に、使用者は、要望に応じて、受動的および/または能動的な吸引源への接続を開閉することができる。
【0137】
手技中のいつでも、閉塞に加わる順方向動脈圧を低減させるために、動脈アクセスデバイス2010のバルーンをその時点で膨張させることができる。また、膨張されたバルーンは、血管中の動脈アクセスの安定性を高め、動脈アクセスデバイスを通るデバイスの前進に対する支持を高めることができる。さらに、動脈アクセスデバイス2010またはガイドカテーテル2015を、所望に応じて受動的または能動的吸引に接続して、脳の灌流を損なうことなく、塞栓保護を可能とすることができる。これは、逆方向、停止、順方向流れの時間を選択することにより実現することができる。手技の最後に、前述の通りにして、動脈アクセスシースを閉じることができる。超音波を再び採用することができ、この場合は、止血を確認および/または確実にするためである。適切な場合、超音波プローブを使用して、止血が達成されるまでアクセスサイトに圧力を加えることができる。
【0138】
この手技の変形例では、ガイドカテーテル2105は、
図3に示すように、予めCCA中に挿入されている動脈アクセスデバイス2010を通って挿入される。このシナリオでは、ガイドカテーテル2105を、手技中に取り出してテーブル上できれいにしてもよく、または、必要に応じ、動脈アクセスを損なうことなしに別の寸法または種類のカテーテルと交換してもよい。また、手技の最後で、血管閉鎖デバイスを利用する前に、シースを交換する必要はない。動脈アクセスデバイス2010は、手技中に使用者の手の放射線への暴露を制限するように、近位延長部を組み込むことができる。ある実施形態では、近位延長部は取り外し可能であり、血管閉鎖デバイスによるアクセスサイトの閉鎖の前に除去される。
【0139】
さらなる実施形態では、システムは、手技中に遠位の保護および/または灌流を可能とするために使用される。この実施形態では、灌流カテーテルは、動脈アクセスデバイス2010またはカテーテル2030を通って挿入され、管腔を横切って配置され、閉塞の遠位の位置で膨張される。灌流カテーテルは、注入ポンプに接続されて、灌流カテーテルの遠位開口部を介して、酸素化血液または灌流溶液を虚血脳に灌流する。ある実施形態では、灌流カテーテルは、バルーンが先端に付けられたカテーテルである。バルーンは閉塞の遠位の位置で膨張される。このバルーンは、塞栓が、閉塞の除去中または再開通中に遠位に進むのを防ぐように機能する。灌流カテーテルはまた、灌流カテーテルの近位ポートを介して閉塞バルーンの近位を灌流するために、洗浄源に接続されてもよい。この手技は、本質的には、閉塞に背圧を加え、その除去を支援することができる。
【0140】
脳閉塞の治療の前または後のいずれかで治療を必要とする頸動脈狭窄がさらに存在する場合には、イントロデューサーシースを介して血管形成バルーンまたはステントを狭窄内に配置することができる。頸動脈狭窄のインターベンション中に塞栓保護が望ましいときは、イントロデューサーシースは、
図38に示されるように閉塞バルーンおよび逆流ラインへの接続を行ってもよく、また、米国特許第8,157,760号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、CAS手技を逆流塞栓保護下で行なってもよい。他の選択肢としては、動脈アクセスデバイス2010は、
図12に示すように、2つの閉塞バルーンを備え、頸動脈狭窄のバルーン血管形成術またはステント留置術を可能とし、その後、脳または頭蓋内動脈の治療のためにカテーテルなどのデバイスのICAおよび脳循環への導入を可能とする開口部を有する。
【0141】
さらに別の使用方法では、
図31Aに示すような伸縮性システムを使って、経大腿または経頸動脈アクセスサイトから迅速に脳閉塞にアクセスし、脳閉塞が吸引される。動脈アクセスサイトに穿刺が最初に形成され、シースガイドワイヤーが動脈に挿入される。テーパーの付いた拡張器を備えた動脈アクセスデバイスがシースガイドワイヤーに沿って挿入される。頸動脈アクセス方法では、動脈アクセスデバイス、シースおよびシースガイドワイヤーは、経頸動脈アクセス用に設計される。その後、動脈アクセスデバイス2820が前進させられ、遠位端が総頸動脈または内頸動脈中に配置される。シースおよびガイドワイヤーがその後取り出される。動脈アクセスデバイスが閉塞要素2815を有する場合は、手技中のどの時点であっても、閉塞要素を膨脹させて総頸動脈または内頸動脈を閉塞し、脳血管の遠位塞栓のリスクを低減することができる。伸縮性カテーテル2830は、動脈アクセスデバイスの管腔を通って標的閉塞サイトに配置される。カテーテル2830は、ガイドワイヤーと共に予め組み立てて、配置を促進し、システムとしてアクセスデバイス2820中に挿入することができる。他の選択肢としては、ガイドワイヤーが最初に、閉塞サイトを横切って留置され、カテーテルがガイドワイヤー上に積み戻され、シース中に戻される。カテーテルはまた、マイクロカテーテルまたは
図8または9に示すようなテーパーの付いた内側部材上に予め組み込み、システムをアクセスデバイス2820中に、したがって、頸動脈血管系に挿入し、閉塞サイトまで前進させることができる。カテーテルが閉塞サイトに配置されると、カテーテルとアクセスデバイスとのオーバーラップ領域および/またはシーリング要素が2つのデバイスの間を密封する。すべての内部デバイス、例えば、ガイドワイヤー、マイクロカテーテル、またはテーパーの付いた内側の部材が取り除かれる。吸引が動脈アクセスデバイスのサイドアームに、例えば、
図1に示すサイドアーム2027を介して適用される。吸引はシリンジ、ポンプ、または上記で開示のその他の手段によってもよい。閉塞が十分柔らかい場合には、吸引は、カテーテルおよび動脈アクセスデバイスを通って、動脈アクセスデバイスのサイドアーム2027を介して吸引デバイス中に閉塞を除去するには十分である。閉塞がこのようにして完全に除去するには硬すぎるが、吸引力によって、カテーテル2830の遠位端および/または遠位管腔が「栓をされる」、または別の方法でその遠位端および/または遠位管腔中に捕らえられている場合には、閉塞はカテーテル2830を引き戻すことにより除去することができる。この手技は遠位塞栓のリスクを高める可能性があるので、上述のように、アクセスデバイス上で閉塞要素を膨張させることが望ましいタイミングであろう。凝血塊が完全にアクセスデバイス2820の管腔中に引っ張られると、カテーテル2830をアクセスデバイス2830から素早く取り出すことができる。このステップ中に凝血塊がカテーテル2830から引き離される場合には、凝血塊は、サイドアーム2027を介して動脈アクセスデバイスのより大きな管腔を通って容易に除去することができる。凝血塊はカテーテルの遠位端から数センチメートルも付き出ている可能性があるので、使用者はカテーテルの急速取り出しの前に、カテーテルの遠位マーカーを数センチメートル動脈アクセスデバイス中に引っ張ることが必要な場合がある。
【0142】
この方法は、吸引が動脈アクセスデバイスの全長に挿入されたカテーテルを介して適用される従来の構成に比べて、速度と容易さの点での使用上の利点を提供する。この従来の構成では、吸引はカテーテルの近位端に直接適用され、カテーテルがアクセスデバイスから取り出されている全時間の間、吸引を適用する必要がある。さらに、カテーテルは非常にゆっくりと取り出す必要があり、そうでない場合は、凝血塊が失われ、血管系中またはアクセスデバイス中に戻って格納される。対照的に、伸縮方法では、閉塞に対する直接吸引を、カテーテルではなく、動脈アクセスデバイスを介して適用することができ、したがって、凝血塊がアクセスデバイス中に入ると、カテーテルをすぐに取り外すことができる。この差異は、吸引の試みのそれぞれの「工程」のための時間を半分またはさらに多く減らすことができる。多くの脳卒中手技に対しては、閉塞を完全に除去するために、2つ以上の工程が必要である。さらに、吸引管腔の後ろ半分は、カテーテルのより小さい管腔ではなく、アクセスデバイスのより大きな管腔であるという事実により、吸引がより効率的になる。凝血塊がカテーテルの先端部またはカテーテルの管腔中で「栓を形成する」ことなく吸引され、吸引デバイス中への吸引速度を高める可能性がより高いと思われる。
【0143】
この方法の変形例では、ステントリーバーまたは類似のデバイスを、閉塞を除去するための吸引の補助として使用することができる。この方法は、カテーテルの留置の前に最初に使用して、閉塞を通る即時灌流を提供することができ、この方法をカテーテルの配置の間に使用して反対牽引およびレール支持を可能とすることができ、この方法を使用して、凝血塊をカテーテル中に、または上記の一部もしくは全部中に追い出すのを助けることができる。
【0144】
本明細書は、多くの具体例を含んでいるが、これらは、請求されているまたは請求可能な発明の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施形態に特有の特徴を説明するものとして解釈されるべきである。別の実施形態との関係で本明細書に記載された特定の複数の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実行することも可能である。反対に、単一の実施形態との関係で記載された様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、または適切なサブコンビネーションで、実行することもできる。さらに、特徴が、特定の組合せで機能すると上述され、また、たとえ最初にそのように請求されていたとしても、請求された組合せ由来の1つまたは複数の特徴は、いくつかの事例では、その組合せから除外され、また、請求された組合せは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形と関連する場合もある。同様に、操作は、特定の順序で図面に示されているが、そのような操作は、望ましい結果を達成するには、図示された特定の順序でまたは順次行われること、または図示された全ての操作が行われることが必要であると理解されるべきではない。したがって、添付の請求項の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に制限されるべきものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径、近位端、および遠位開口部を有する中央管腔を備えたチューブ状のシース本体を含むアクセスシースと、
長手軸を有する単一の内腔を含むカテーテルであって、大腿アクセスサイトから頸動脈まで延在するように構成されているカテーテルと、を含む神経血管用カテーテルシステムであって、
前記カテーテルは、前記シース本体の前記中央管腔内で摺動して、前記中央管腔内での前記カテーテルの相対位置を変え、前記カテーテルの少なくとも一部が前記シース本体の前記遠位開口部から外側に伸びるように構成されており、
前記カテーテルは、内層ライナーおよび外側ジャケット層を含み、前記カテーテルの少なくとも一部に巻きコイルの強化構造を有し、
前記カテーテルは、前記長手軸に対して直交しない角度で形成されたカテーテルの遠位先端を有し、前記長手軸に対して直交していない縁部であり且つ、前記直交しない前記カテーテルの遠位先端に一致する該縁部を有する放射線不透過マーカーバンドを有する、カテーテルシステム。
【請求項2】
前記カテーテルの遠位先端は直線状である、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項3】
前記カテーテルの遠位先端は、湾曲、波状、または不規則である、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項4】
前記アクセスシースの外径が約6フレンチ~約8フレンチであり、前記カテーテルの内径が1.48mm(約0.058インチ)~1.83mm(約0.072インチ)であり、前記シース本体の前記中央管腔の内径が約1.88mm(0.074インチ)~2.24mm(約0.088インチ)である、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項5】
前記内層ライナーは、PTFEから形成され、厚さが0.0127mm(0.0005インチ)~0.0254mm(0.0010インチ)である、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項6】
前記放射線不透過マーカーの前記直交していない縁部を使用して、前記カテーテルの遠位端に遠位開口部を形成する遠位縁部を設ける、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項7】
前記カテーテルの遠位端の遠位開口部は楕円形である、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項8】
前記カテーテルの遠位端の遠位開口部は、前記カテーテルの前記単一の内腔の断面積よりも大きい吸引面積を提供する、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項9】
前記カテーテルは、遠位端の近傍が、当該カテーテルの近位端領域よりも柔軟に構築されている、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項10】
前記巻きコイルの強化構造は、可変ピッチの巻きコイルを含む、請求項9に記載のカテーテルシステム。
【請求項11】
前記単一の内腔を定義する前記カテーテルの側壁は、吸引デバイスによって付与される約25inHgまで圧壊に耐える、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0144
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0144】
本明細書は、多くの具体例を含んでいるが、これらは、請求されているまたは請求可能な発明の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施形態に特有の特徴を説明するものとして解釈されるべきである。別の実施形態との関係で本明細書に記載された特定の複数の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実行することも可能である。反対に、単一の実施形態との関係で記載された様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、または適切なサブコンビネーションで、実行することもできる。さらに、特徴が、特定の組合せで機能すると上述され、また、たとえ最初にそのように請求されていたとしても、請求された組合せ由来の1つまたは複数の特徴は、いくつかの事例では、その組合せから除外され、また、請求された組合せは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形と関連する場合もある。同様に、操作は、特定の順序で図面に示されているが、そのような操作は、望ましい結果を達成するには、図示された特定の順序でまたは順次行われること、または図示された全ての操作が行われることが必要であると理解されるべきではない。したがって、添付の請求項の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に制限されるべきものではない。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
動脈を治療するためのデバイスのシステムであって、
動脈中に介入カテーテルを導入するように構成された動脈アクセスシースであって、動脈アクセスシースは、頸動脈アクセスサイトを介して総頸動脈中に導入される寸法および形状にされたシース本体を含み、第1の細長い本体が前記総頸動脈中に配置されたときに、前記シース本体が、カテーテルを前記総頸動脈に導入するための通路を提供する内腔を画定し、前記シース本体は、近位部および前記近位部より柔軟な最遠位部を有し、前記シース本体の全長に対する前記最遠位部の全体長さの比が、前記シース本体の全長の1/10~1/2である、動脈アクセスシースと、
前記シース本体の内腔内に配置可能な細長い拡張器であって、前記動脈アクセスシースおよび前記拡張器を共に前記総頸動脈中に導入することができる、拡張器と、
頸動脈アクセスサイトを介して、前記動脈アクセスシースの内腔を通って総頸動脈中に導入される寸法および形状にされた細長いカテーテル本体から形成されたカテーテルであって、前記カテーテル本体が前記頸動脈中の前記アクセス位置を介して前記総頸動脈を通って頭蓋内動脈の遠位に進められる寸法および形状にさられ、前記カテーテル本体が40cm~70cmの長さを有し、前記カテーテル本体が最近位部および最遠位部を有し、前記最近位部は前記カテーテル本体の最も硬い部分であり、前記カテーテル本体は、使用中に前記最遠位部が頭蓋内動脈中に配置可能で且つ前記最近位部の少なくとも一部が前記総頸動脈中に配置されるような全長および最遠位部長さを有する、カテーテルと、を含むシステム。
(態様2)
前記カテーテル本体の前記最遠位部が、5cm~15cmの長さである、態様1に記載のシステム。
(態様3)
前記カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも85%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、態様1に記載のシステム。
(態様4)
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも71%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、態様1に記載のシステム。
(態様5)
前記カテーテル本体が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体に対し、少なくとも205mL/分の実際の吸引速度を達成する、態様1に記載のシステム。
(態様6)
前記カテーテル本体が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体に対し、少なくとも321mL/分の実際の吸引速度を達成する、態様1に記載のシステム。
(態様7)
前記介入カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも59%大きい実際の吸引速度を達成することができる、態様1に記載のシステム。
(態様8)
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも23%大きい実際の吸引速度を達成することができる、態様1に記載のシステム。
(態様9)
前記シース本体は、前記シース本体の遠位領域が、前記シース本体の近位領域の大きい直径に比べて縮小された直径を有するように、階段状になっており、
同様に、前記カテーテル本体は、前記カテーテル本体の遠位領域が、前記カテーテル本体の近位領域の大きい直径に比べて縮小された直径を有するように、階段状になっている、態様1に記載のシステム。
(態様10)
前記カテーテル本体の内径および外径の両方が階段状になっている、態様9に記載のシステム。
(態様11)
前記カテーテル本体の近位領域の前記大きい直径が、前記カテーテル本体の遠位領域の直径より10~25%大きい直径を有する、態様9に記載のシステム。
(態様12)
前記カテーテル本体の遠位領域が、10~25cmの長さである、態様9に記載のシステム。
(態様13)
前記介入カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも179%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、態様9に記載のシステム。
(態様14)
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも128%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、態様9に記載のシステム。
(態様15)
前記カテーテルが、前記動脈アクセスシースの長手方向軸に沿って前記動脈アクセスシースの遠位端から遠位方向に伸縮自在に伸びて、前記動脈アクセスシースと前記カテーテルとの間で連続的な内腔を形成することができるように、前記カテーテルが、前記動脈アクセスシースに伸縮自在に取り付けられており、
前記カテーテルが、前記動脈アクセスデバイスの遠位端を越えて伸びないように伸縮自在に後退することができる、態様1に記載のシステム。
(態様16)
前記シース本体が、15~30cmの長さであり、前記カテーテルが10~15cmの長さである、態様1に記載のシステム。
(態様17)
前記介入カテーテルが、115cmの長さおよび0.058インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも337%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、態様15に記載のシステム。
(態様18)
前記介入カテーテルが、105cmの長さおよび0.072インチの直径の内腔を有するカテーテルの吸引速度よりも、少なくとも251%大きい吸引速度を達成することができ、吸引速度が、体温でのヒト血液の粘度を有する流体によるチューブ中の層流に対するポアズイユの法則に基づき計算される、態様15に記載のシステム。
【外国語明細書】