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特開2024-169441光学素子、光学系、撮像装置、および光学素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169441
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】光学素子、光学系、撮像装置、および光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20241128BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20241128BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152806
(22)【出願日】2024-09-05
(62)【分割の表示】P 2024039020の分割
【原出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2023085504
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】内田 和枝
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA07
2K009BB02
2K009CC03
2K009CC09
2K009CC21
2K009DD02
2K009EE05
(57)【要約】
【課題】 基材の屈折率に関わらず、反射率を十分に低減することが可能な光学素子を提供する。
【解決手段】 基材(200)と反射防止膜(100)とを有する光学素子(300)であって、反射防止膜は、基材の光学面上に形成された第1の層(01)と、第1の層の上に形成された第2の層(02)と、第2の層の上に形成された第3の層(03)とからなり、第1乃至第3の層はそれぞれ、有機化合物を含み、波長550nmにおける第3の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材の光学面上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層と、該第2の層の上に形成された第3の層と、該第3の層の上に形成された第4の層とからなり、
前記第2乃至第4の層はそれぞれ、有機化合物を含み、
波長550nmにおける前記第4の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材の光学面上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層と、該第2の層の上に形成された第3の層と、該第3の層の上に形成された第4の層とからなり、
波長550nmにおける前記第1乃至第4の層のそれぞれの屈折率をn、n、n、およびnとし、前記光学面の面頂点を通る基準軸上における前記第1乃至4の層のそれぞれの物理膜厚をd1c(nm)、d2c(nm)、d3c(nm)、およびd4c(nm)とするとき、
1.56≦n≦1.70
1.30≦n≦1.50
1.56≦n≦1.70
1.10≦n≦1.28
40≦n1c≦250
10≦n2c≦100
10≦n3c≦100
100≦n4c≦155
200≦n1c+n2c+n3c+n4c≦550
なる条件式を満足することを特徴とする光学素子。
【請求項3】
前記第2乃至第4の層はそれぞれ、有機化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1の層は、有機化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記光学面の面頂点を通る基準軸上での前記第2乃至第4の層のそれぞれの物理膜厚をd2c、d3c、およびd4c、前記光学面の有効領域における該基準軸から最も離れた位置での前記第2乃至第4の層のそれぞれの物理膜厚をd2q、d3q、およびd4qとするとき、
1.0<d2q/d2c≦1.3
1.0<d3q/d3c≦1.3
1.0<d4q/d4c≦1.3
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1の層は、ポリイミド樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記光学面の面頂点を通る基準軸上での前記第1の層の物理膜厚をd1c、前記光学面の有効領域における該基準軸から最も離れた位置での前記第1の層の物理膜厚をd1qとするとき、
1.0<d1q/d1c≦1.3
なる条件式を満足することを特徴とする請求項6に記載の光学素子。
【請求項8】
0.9≦d1c/d3c≦1.1
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2または3に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1の層は、酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光学面の面頂点を通る基準軸上での前記第1の層の物理膜厚をd1c、前記光学面の有効領域における該基準軸から最も離れた位置での前記第1の層の物理膜厚をd1qとするとき、
0.5≦d1q/d1c<1.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
波長550nmにおける前記基材の屈折率をnとするとき、
1.55≦n≦1.70
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
前記基材のガラス転移温度をT(℃)とするとき、
450≦T≦550
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項13】
1.12≦n≦1.25
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項14】
前記第2乃至第4の層のそれぞれの物理膜厚は、前記光学面の面頂点を通る基準軸上において最も小さく、該基準軸から離れるほど大きくなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項15】
前記第4の層は、空隙を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項16】
前記第4の層は、中実粒子、鎖状粒子、および中空粒子のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項17】
前記中実粒子、前記鎖状粒子、および前記中空粒子のうち少なくとも一つは、シリカからなることを特徴とする請求項16に記載の光学素子。
【請求項18】
前記第2の層は、中実粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項19】
前記反射防止膜の上に形成されたフッ素樹脂を含む膜を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項20】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子を含む複数の光学素子を有することを特徴とする光学系。
【請求項21】
前記光学面の有効径の位置での半開角をφ(度)とするとき、
25≦φ<90
なる条件式を満足することを特徴とする請求項20に記載の光学系。
【請求項22】
波長450nm以上650nm以下の範囲において、前記光学面の面頂点に入射角0度で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率は0.5%以下であり、該面頂点に入射角30度で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率は1.0%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項23】
請求項20に記載の光学素子を含む光学系と、
前記光学系を介して被写体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項24】
基材と第1乃至第4の層からなる反射防止膜とを有する光学素子の製造方法であって、
前記基材の光学面上に前記第1の層を形成するステップと、
前記第1の層の上に湿式塗工法により前記第2の層を形成するステップと、
前記第2の層の上に湿式塗工法により前記第3の層を形成するステップと、
前記第3の層の上に湿式塗工法により前記第4の層を形成するステップとを有し、
波長550nmにおける前記第4の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足することを特徴とする製造方法。
【請求項25】
前記湿式塗工法は、スピン塗工法であることを特徴とする請求項24に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、光学系、撮像装置、および光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学系に含まれるレンズやフィルターなどの光学素子の表面には、不要な反射によるフレアやゴーストを防止するため、反射防止機能を有する誘電体多層膜(反射防止膜)が形成されることが多い。反射防止膜は、最上層に屈折率の低い材料を使用すれば、高性能な反射防止性能を得ることができる。屈折率の低い材料としては、シリカやフッ化マグネシウム等の無機系材料、シリコン樹脂や非晶質のフッ素樹脂などの有機材料を用いることが知られている。これらの材料は、層内に空隙を形成することにより屈折率を下げることができる。
【0003】
特許文献1には、屈折率が1.70から1.95の基材の上に形成された、アルミナを主成分とした第1層、屈折率1.27のシリカエアロゲルである第2層からなる2層構成の反射防止膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-162989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている反射防止膜は、アルミナを主成分とした第1層を蒸着により成膜している。このため、大開角レンズにおいては、レンズ面内に膜ムラが生じ、レンズ面内全域での反射防止性能(反射率の低減)が十分でない。また、最上層である第2層の屈折率が1.27程度であるため、屈折率がより低い基材を用いた場合には反射防止性能が十分でない。
【0006】
そこで本発明は、基材の屈折率に関わらず、反射率を十分に低減することが可能な光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての光学素子は、基材と反射防止膜とを有し、前記反射防止膜は、前記基材の光学面上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層と、該第2の層の上に形成された第3の層と、該第3の層の上に形成された第4の層とからなり、前記第2乃至第4の層はそれぞれ、有機化合物を含み、波長550nmにおける前記第4の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材の屈折率に関わらず、反射率を十分に低減することが可能な光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1~14における光学素子の概略図である。
図2】実施例1、2、5、7、8、11、13、比較例1、2における光学素子の概略断面図である。
図3】実施例3、4、6、9、10、12、14における光学素子の概略断面図である。
図4】実施例1における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図5】実施例1における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図6】実施例2における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図7】実施例2における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図8】実施例3における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図9】実施例3における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図10】実施例4における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図11】実施例4における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図12】実施例5における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図13】実施例5における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図14】実施例6における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図15】実施例6における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図16】実施例7における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図17】実施例7における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図18】実施例8における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図19】実施例8における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図20】実施例9における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図21】実施例9における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図22】実施例10における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図23】実施例10における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図24】実施例11における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図25】実施例11における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図26】実施例12における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図27】実施例12における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図28】実施例13における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図29】実施例13における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図30】実施例14における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図31】実施例14における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図32】実施例15における光学系の断面図である。
図33】実施例16における撮像装置の外観斜視図である。
図34】比較例1としての光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図35】比較例2としての光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図36】実施例17~25における光学素子の概略図である。
図37】実施例17、19、21、22、比較例1、2における光学素子の概略断面図である。
図38】実施例18、20、23における光学素子の概略断面図である。
図39】実施例24における光学素子の概略断面図である。
図40】実施例25における光学素子の概略断面図である。
図41】実施例17における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図42】実施例17における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図43】実施例18における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図44】実施例18における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図45】実施例19における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図46】実施例19における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図47】実施例20における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図48】実施例20における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図49】実施例21における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図50】実施例21における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図51】実施例22における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図52】実施例22における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図53】実施例23における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図54】実施例23における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図55】実施例24における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図56】実施例24における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図57】実施例25における光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図58】実施例25における光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図59】比較例3としての光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
図60】比較例3としての光学素子の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。
図61】比較例4としての光学素子の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
まず、図1を参照して、実施例1~14における光学素子300の概略について説明する。図1は、光学素子300の概略図である。光学素子300は、透明基板(基材)200および3つの層からなる反射防止膜100を有する。なお、ここでの「層」とは同じ材料で構成される一まとまりの部分を指す。すなわち、隣接する二つの層は互いに異なる材料で構成されており、それらの境界には界面が存在している。反射防止膜100は、透明基板200から空気側に向かって順に、薄膜層(第1の層)01、薄膜層(第2の層)02、および薄膜層(第3の層)03からなる。
【0013】
各実施例において、光学素子300の薄膜層01、02、03は、有機化合物を含む材料からなることが好ましい。ここで有機化合物とは、炭素を含む化合物のことであり、一酸化炭素や二酸化炭素といった簡単な構造の化合物を除いたものである。有機化合物を含む材料は、湿式塗工法で簡易に形成することができる。
【0014】
各実施例において、基準波長λを550nmとし、波長550mnにおける薄膜層03の屈折率をnとするとき、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
【0015】
1.10≦n≦1.28 …(1)
各実施例において、波長550mnにおける薄膜層01の屈折率をn、波長550mnにおける薄膜層02の屈折率をn、波長550mnにおける薄膜層03の屈折率をnとする。また、薄膜層01の物理膜厚をd(nm)、薄膜層02の物理膜厚をd(nm)、薄膜層03の物理膜厚をd(nm)とする。このとき、以下の条件式(2)~(8)を満足することが好ましい。
【0016】
1.30≦n≦1.50 …(2)
1.56≦n≦1.70 …(3)
1.10≦n≦1.28 …(4)
10≦n≦155 …(5)
10≦n≦155 …(6)
100≦n≦155 …(7)
200≦n+n+n≦300 …(8)
各材料の屈折率または物理膜厚が、条件式(2)~(8)の範囲外である場合、十分な反射防止性能を得ることができない。
【0017】
より好ましくは、条件式(1)または条件式(4)の数値範囲は、以下の条件式(9)のように設定される。
【0018】
1.12≦n≦1.22 …(9)
更に好ましくは、条件式(1)または条件式(4)の数値範囲は、以下の条件式(9a)のように設定される。
【0019】
1.15≦n≦1.22 …(9a)
次に、図2および図3を参照して、透明基板200(201、202)上に反射防止膜100(101、102)が形成された光学素子300(301、302)について説明する。図2は、後述の実施例1、2、5、7、8、11、13、比較例1、2における光学素子301の概略断面図である。図3は、後述の実施例3、4、6、9、10、12、14における光学素子302の概略断面図である。
【0020】
図2に示される光学素子301において、透明基板201は凹面形状を有し、透明基板201の凹面上に薄膜層(第1の層)11、薄膜層(第2の層)12、および薄膜層(第3の層)13からなる反射防止膜101が形成されている。図3に示される光学素子302において、透明基板202は凸面形状を有し、透明基板202の凸面上に薄膜層(第1の層)21、薄膜層(第2の層)22、および薄膜層(第3の層)23からなる反射防止膜102が形成されている。以下、図2に示される光学素子301について説明するが、図3に示される光学素子302に関しても同様である。
【0021】
光学素子301は、反射防止膜101を形成する光学面が回転対称軸(基準軸、例えば原点(面頂点)を通る面法線)を有する形状、すなわち回転対称形状を有する。ただし各実施例は、これに限定されるものではなく、反射防止膜101を形成する光学面が回転対称でなくてもよく、例えば回転対称な形状の一部を切り欠いた形状であってもよい。図2において、位置Cは反射防止膜101を付与された透明基板201のレンズ面の回転中心である。つまり、位置Cは、レンズ面の回転対称軸(基準軸、光軸L)と透明基板201のレンズ面とが交わる位置(交点)である。一方、位置Qは、透明基板201のレンズ面上の光学有効領域内において、最も位置Cから離れた箇所に位置する。ここで光学有効領域とは、光学面において結像に寄与する有効光線が通過する領域(有効径)ことを示す。
【0022】
つまり、光軸Lと位置Qの法線とがなす角(以下、半開角という)をφとすると、半開角φは光学有効領域内で最大値となる。反射防止膜101は、透明基板201から順に、薄膜層11、12、13からなる。位置Cにおける、薄膜層11の物理膜厚をd1c(nm)、薄膜層22の物理膜厚をd2c、薄膜層13の物理膜厚をd3c(nm)とする。また、位置Qにおける、薄膜層11の物理膜厚をd1q(nm)、薄膜層12の物理膜厚をd2q(nm)、薄膜層13の物理膜厚をd3q(nm)とする。このとき、以下の条件式(10)~(12)を満足することが好ましい。
【0023】
1.0<d1q/d1c≦1.3 …(10)
1.0<d2q/d2c≦1.3 …(11)
1.0<d3q/d3c≦1.3 …(12)
各実施例において、反射防止膜101を構成する薄膜層11、12、13の膜厚はそれぞれ、反射防止膜101の中心(光軸中心)である位置Cにおいて最も小さく、光軸中心から離れるほど大きくなることが好ましい。条件式(10)~(12)を満足することで、膜ムラを更に低減することができる。
【0024】
また各実施例において、位置Qにおける半開角φ(°)は、以下の条件式(13)を満足することが好ましい。
【0025】
φ≧25 …(13)
また各実施例において、波長450nm以上650nm以下の範囲において、前記交点(位置C)に入射角0度で入射する光に対する反射防止膜101の反射率は0.5%以下であることが好ましい。また各実施例において、前記交点に入射角30度で入射する光に対する反射防止膜101の反射率は1.0%以下であることが好ましい。
【0026】
薄膜層03、13、23は、空隙を含むことが好ましい。空隙、つまり屈折率が1.0である空気を含有するため、屈折率を条件式(1)、(4)、(9)を満足する範囲まで低減することができる。屈折率が1.10未満の場合、層内に含まれる空隙の割合が大きいため、膜強度が弱くなる。一方、屈折率が1.30よりも大きい場合、反射防止性能が十分に得られなくなる。また各実施例の反射防止膜の表面(薄膜層03、13、23の表面)には、必要に応じて、防汚膜などを設けてもよい。防汚膜の例としては、フッ素ポリマー、フルオロシラン単分子、酸化チタン粒子などを含む膜が挙げられる。
【0027】
各実施例において、薄膜層03、13、23は、中実粒子、鎖状粒子、または中空粒子からなることが好ましい。より好ましくは、薄膜層03、13、23は、内部に空孔を有する中空粒子からなることがより望ましい。空孔は単孔または多孔のいずれでもよく、適宜選択することができる。中実粒子、鎖状粒子、または中空粒子を構成する材質は、低屈折率であることが好ましい。例えば、SiO、MgF,フッ素、シリコンなどからなる有機樹脂が挙げられるが、粒子の製造が容易であるSiOがより好ましい。中空粒子の平均粒子径は15nm以上100nm以下、好ましくは15nm以上80nm以下であることが好ましい。中空粒子の平均粒子径が15nm未満の場合、コアとなる粒子を安定的に作ることが難しい。一方、中空粒子の平均粒子径が100nmを超える場合、粒子間の空隙の大きさが大きくなるため、大きなボイドが発生しやすく、また粒子の大きさに伴う散乱が発生するため、好ましくない。
【0028】
薄膜層01、11、21は、シロキサン結合のようなバインダーで結着した中実粒子、特に、中実シリカ粒子を含む材料からなることが好ましい。または、「アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体」であるアクリル樹脂を含む材料であることが好ましい。
【0029】
薄膜層02、12、22は、「イミド(-CO-NR-CO-)結合を含む高分子化合物」である、ポリイミド樹脂を含む材料からのなることが好ましい。または、「3員環のエーテルであるオキサシクロプロパン(オキシラン)を構造式中にもつエポキシ基を架橋させ硬化した樹脂」であるエポキシ樹脂を含む材料からなることが好ましい。
【0030】
各実施例において、光学素子300は、透明基板200の上に薄膜層01を形成し、薄膜層01の上に薄膜層02を形成し、薄膜層02の上に薄膜層03を形成することで製造される。各実施例において、薄膜層01、11、21、薄膜層02、12、22、および、薄膜層03、13,23の形成方法としては、膜材料を含む塗工液を塗布し、乾燥や焼成を行う、湿式成膜法が好ましい。湿式成膜法は、安価に大面積を塗工することができる。特に、スピンコート法(スピン塗工法)は、塗工面の回転軸で回転させながら塗工を行うことで、面内の膜厚分布を抑えることができるため、好ましい。蒸着法やスパッタ法のような乾式成膜法は、蒸発源とレンズの中心部が対面するような位置関係で成膜を行う。大開角レンズの場合、周辺部では、蒸着材料のレンズ面への入射角が大きくなるため、中心部よりも膜厚が減少する。このため、レンズ面内に膜ムラが生じ、反射防止性能に偏りが生じる。膜ムラが生じないように成膜するには、マスクを設置したり、基板の位置や回転動作を制御したりする必要がある。
【0031】
塗工液に用いることができる有機溶媒は、塗工性や性能などを損なわない範囲内において特に限定されるものではなく、公知の溶媒を用いることができる。例えば、1価のアルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、シクロペンタノール、2-メチルブタノールがある。または、3-メチルブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルブタノールでもよい。または、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、3-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノールなどでもよい。または、エチレングリコール、トリエチレングリコールなどの2価以上のアルコール類でもよい。
【0032】
メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノールなどのエーテルアルコール類でもよい。または、ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類でもよい。または、エステル類でもよい。例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートがある。または、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどがある。
【0033】
または、n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類でもよい。または、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類でもよい。または、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類でもよい。または、クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類でもよい。または、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルフォルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような、非プロトン性極性溶媒等でもよい。これらの溶媒のうち、2種類以上の溶媒を混ぜて使用することもできる。
【0034】
また、薄膜層03、13、23に中実粒子、鎖状粒子、または中空粒子を使用し、薄膜層01、11、21に中実粒子を使用する場合、強度を向上させる目的で、バインダーによって結着されていることが好ましい。バインダーとしてはシロキサン結合を利用するのが好ましい。表面に水酸基が多く存在するシリカの粒子を用いる場合には、特に好適である。
【0035】
各実施例において、薄膜層01、11、薄膜層02、12、薄膜層03、13は、湿式成膜法により形成できる材料からなることから、材料自体、ないしはバインダーに有機化合物を含む。また各実施例の反射防止膜は、塗工後の乾燥の工程において、高温による焼成を行わない。このため、透明基板200、201、202に熱変形が生じやすいプラスチックや、光学用硬化性樹脂などを使用することが可能である。
【0036】
透明基板200、201、202の屈折率をnとするとき、以下の条件式(14)を満足することが好ましい。
【0037】
1.45≦n≦2.10 …(14)
以下に具体的な実施例を示す。ただし、これらは例に過ぎず、本発明は各実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例0038】
まず、実施例1について説明する。図2は、本実施例における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.57(波長550nm)のS-TIL26(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層12はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表1は、本実施例の光学素子301の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層11、12、13はそれぞれ、有機化合物を含む。
【0039】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
【0040】
(中空シリカ塗工液1)
中空シリカ粒子のイソプロピルアルコール分散液(日揮触媒化成株式会社製 スルーリア4110、平均粒子径約60nm、シェル厚約12nm、固形分濃度20.5質量%)580gを用いた。このイソプロピルアルコール分散液に、1-エトキシ-2-プロパノール(以下、1E2Pと略す)を加えながらイソプロピルアルコールを加熱留去した。固形分濃度19.5質量%となるまでソプロピルアルコールを留去して、中空シリカ粒子の1E2P溶媒置換液(以下、溶媒置換1と称する)610gを調製した。得られた溶媒置換液1に中空シリカ粒子:フッ素を含む有機酸(東京化成工業株式会社製 トリフルオロ酢酸 フッ素数3)成分の比が100/1となるように、フッ素を含む有機酸を添加し、中空粒子分散液1を得た。
【0041】
別の容器に、純水で0.1%濃度に希釈したホスフィン酸3.6gと1-プロポキシ-2-プロパノール11.4gとメチルポリシリケート(コルコート株式会社製 メチルシリケート53A)4.5gをゆっくり加え、室温で120分間攪拌した。これにより、固形分濃度12質量%シリカゾル(以下、シリカゾル1)を調製した。
【0042】
固形分濃度が4.5質量%になるように、中空粒子分散液1を乳酸エチルで希釈した後、中空シリカ粒子:シリカゾル成分の比が100/12となるように、シリカゾル1を添加した。さらに、室温で2時間混合攪拌することで中空シリカ粒子を含む中空シリカ塗工液1を得た。
【0043】
(中実シリカ塗工液1)
シリカ粒子分散液PL-1(扶桑化学製)25gに1-メトキシ-2-プロパノール300gとシリカゾル1を4g加えて中中実シリカ塗工液1を作製した。
【0044】
(ポリイミド塗工液1)
4,4’-メチレンビス(アミノシクロヘキサン)(以下、DADCM。東京化成製)200gに還流させながらヘキサンを徐々に加えて完全に溶解させた。加熱を止め数日間室温に放置した後、析出物を濾別し、減圧乾燥した。このように精製した白色固体状の脂環式ジアミンDADCMを58g得た。
【0045】
合計で12mmolになるように、3種類のジアミンをN,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)に溶解して、ジアミン溶液を作成した。これら3種類のジアミンの一つは、脂環式ジアミンDADCMである。他の二つは、芳香族ジアミン4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(製品名BODA:和歌山精化工業製)、シロキサン含有ジアミン1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(製品名PAM-E:信越化学工業製)である。
【0046】
このジアミン溶液を水冷しながら約12mmolの酸二無水物を加えた。酸二無水物は、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(製品名TDA-100:新日本理化製)である。または、酸二無水物は、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物(製品名B-4400:DIC製)である。DMAcの量はジアミンと酸二無水物の質量の合計が20重量%になるように調整した。
【0047】
この溶液を15時間室温で攪拌し、重合反応を行った。さらに、DMAcで希釈して8重量%になるように調整した後、7.4mlのピリジンと3.8mlの無水酢酸を加え、室温で1時間攪拌した。さらに、オイルバスで60から70℃に加熱しながら4時間攪拌した。重合溶液をメタノールまたはメタノールに再沈殿しポリマーを取り出した後、メタノール中で数回洗浄した。60℃で24時間乾燥後、白色から淡黄色粉末状のポリイミド1を得た。
【0048】
得られたポリイミド1を固形分濃度が2.5質量%になるようにシクロヘキサノンに溶解させ、ポリイミド塗工液1を作成した。
【0049】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜101を形成する。
【0050】
中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液1を、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0051】
図4は、本実施例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性である。図4において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。この点は、他の反射特性図に関しても同様である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図5は、本実施例における光学素子301の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表1によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%程度増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0052】
【表1】
【実施例0053】
次に、本発明の実施例2について説明する。図2は、本実施例における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.68(波長550nm)のS-LAL12(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは70度である。層材料としては、薄膜層11は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層12はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表2は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層11、12、13はそれぞれ、有機化合物を含む。
【0054】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
【0055】
(中空シリカ塗工液2)
中空粒子分散液1とシリカゾル1の作製方法は、中空粒子塗工液1と同様である。固形分濃度が4.5質量%になるように、中空粒子分散液1を乳酸エチルで希釈した後、中空シリカ粒子:シリカゾル成分の比が100/9となるように、シリカゾル1を添加した。さらに、室温で2時間混合攪拌することで中空シリカ粒子を含む中空シリカ塗工液2を得た。
【0056】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液2により、反射防止膜101を形成する。
【0057】
中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液2を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0058】
図6は、本実施例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図7は、本実施例における光学素子301の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表2によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの20%増となっているが、波長420nmから680nmにおける反射率は0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0059】
【表2】
【実施例0060】
次に、本発明の実施例3について説明する。図3は、本実施例における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は屈折率1.81(波長550nm)のS-LAH53(OHARA社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層21はアクリル樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層22は中空シリカを主成分とした材料からなる。表3は、本実施例の光学素子302の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層21、22、23は有機化合物を含む。
【0061】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は、以下のとおりである。
【0062】
(鎖状シリカ塗工液1)
鎖状シリカ粒子の2-プロパノール(IPA)分散液(日産化学工業株式会社製 IPA-ST-UP、平均粒径12nm・固形分濃度15質量%)をエバポレーターで、溶媒の2-プロパノールを1-プロポキシ-2-プロパノール(シグマ製)に置換した。これにより、1-プロポキシ-2-プロパノール分散液(固形分濃度17wt%)を作製した。これを分散液2とした。次に、テトラエトキシシラン(TEOS、東京化成工業株式会社製)18.5gと、触媒水として、TEOSに対して10当量の0.1wt%ホスフィン酸16.0gとを添加し、20℃の水浴中で60分混合攪拌し、バインダー溶液2を得た。
【0063】
分散液2を251.3gに、バインダー溶液2を33.4g添加した。その後、1-プロポキシ-2-プロパノールを174.5g、乳酸エチル546.5gを添加し、60分攪拌し、鎖状シリカ塗工液1を得た。
【0064】
(アクリル塗工液)
6.1gのN-シクロヘキシルマレイミド(以下、CHMI)、4.0gの2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(製品名M-3F:共栄社化学製)を用いた。更に、0.45gの3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(製品名LS-3380:信越化学工業製)を用いた。加えて、0.08gの2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(以下、AIBN)を用いた。これらを24.8gのトルエンに攪拌溶解して溶液を得た。この溶液を氷水冷しながら脱気と窒素置換を繰り返し行った後、窒素フローしながら60~70℃で7時間攪拌した。強攪拌したメタノール中にゆっくりと重合溶液を投入し析出させたポリマーを濾別してから、メタノール中で数回攪拌洗浄した。濾別回収したポリマーを80~90℃で真空乾燥を行った。白色粉末状でマレイミド共重合比が0.57のマレイミド共重合体を8.3g(収率81%)を得た。2.2gのマレイミド共重合体1の粉末を97.8gのシクロペンタノン/シクロヘキサノン混合溶媒に溶解してマレイミド共重合体1の溶液を調製し、アクリル塗工液を作製した。
【0065】
(ポリイミド塗工液2)
4,4’-メチレンビス(アミノシクロヘキサン)(以下、DADCM。東京化成製)を精製し、50gの白色固体状の脂環式ジアミンDADCMを得た。合計で12mmolになるように、3種類のジアミンをN,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)に溶解した。3種類のジアミンの一つは、脂環式ジアミンDADCMである。他の二つは、芳香族ジアミン4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(製品名BODA:和歌山精化工業製)およびシロキサン含有ジアミン1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(製品名PAM-E:信越化学工業製)である。
【0066】
以下は、ポリイミド塗工液1と同様の方法である。ポリイミド塗工液1とは3種類のジアミンの割合が異なるポリイミド2を得た。得られたポリイミド2を固形分濃度が2.5質量%になるようにシクロヘキサノンに溶解させ、ポリイミド塗工液2を作成した。
【0067】
アクリル塗工液、ポリイミド塗工液2、および鎖状シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。
【0068】
アクリル塗工液を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液2を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、鎖状シリカ塗工液1を、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0069】
図8は、本実施例における光学素子302の位置Cでの入射角0、15、30、45、および60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図9は、本実施例における光学素子302の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表3によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの2%程度増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0070】
【表3】
【実施例0071】
次に、本発明の実施例4について説明する。図3は、本実施例における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は屈折率2.00(波長550nm)のS-LAH79(OHARA社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層12はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表4は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層21、22、23は、有機化合物を含む。
【0072】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は、以下のとおりである。
【0073】
中実シリカ塗工液2、ポリイミド塗工液2、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。
【0074】
中実シリカ塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液1を、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0075】
図10は、本実施例における光学素子302の位置Cでの入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図11は、本実施例における光学素子302の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表4によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%程度増となっているが、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0076】
【表4】
【実施例0077】
次に、本発明の実施例5について説明する。図2は、本実施例における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.81(波長550nm)のS-LAH53(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11はアクリル樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層12はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表5は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満たす。また、薄膜層11、12、13は、有機化合物を含む。
【0078】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
【0079】
アクリル塗工液、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液2により、反射防止膜101を形成する。アクリル塗工液を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液2を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0080】
図12は、本実施例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15,30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図13は、本実施例における光学素子301の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表5によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%程度増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0081】
【表5】
【実施例0082】
次に、本発明の実施例6について説明する。図3は、本実施例における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は、屈折率1.77(波長550nm)のS-LAH66(OHARA社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは60度である。層材料としては、薄膜層21は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層22はエポキシ樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層23は中空シリカを主成分とした材料からなる。表6は、本実施例の光学素子302の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層21、22、23は、有機化合物を含む。
【0083】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は、以下のとおりである。
【0084】
(エポキシ塗工液)
エポキシ樹脂jER828に(三菱ケミカル製)25gに1-メトキシ-2-プロパノール500gを加えて中間層塗工液3を作製した。
【0085】
中実シリカ塗工液2、エポキシ塗工液、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。
【0086】
中実シリカ塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次にエポキシ塗工液を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0087】
図14は、本実施例における光学素子302の位置Cでの入射角0、15,30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図15は、本実施例における光学素子302の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表6によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの12%程度増となっているが、反射率特性は、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0088】
【表6】
【実施例0089】
次に、本発明の実施例7について説明する。図2は、本実施例における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は、屈折率1.54(波長550nm)のZEONEX K22R(日本ゼオン社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層11は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層12はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表7は、本実施例の光学素子301の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層11、12、13は、有機化合物を含む。
【0090】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
【0091】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜101を形成する。中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0092】
図16は、本実施例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図17は、本実施例における光学素子301の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表7によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの2%程度増となっているが、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0093】
【表7】
【実施例0094】
次に、本発明の実施例8について説明する。図2は、本実施例における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は、屈折率1.64(波長550nm)のEP-5000(三菱ガス化学株式会社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層12は、ポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表8は、本実施例の光学素子301の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層11、12、13は、有機化合物を含む。
【0095】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
【0096】
中実シリカ塗工液2、ポリイミド塗工液2、および中空シリカ塗工液2により、反射防止膜101を形成する。
【0097】
中実シリカ塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。中空シリカ塗工液2を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0098】
図18は、本実施例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図19は、本実施例における光学素子301の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表8によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0099】
【表8】
【実施例0100】
次に、本発明の実施例9について説明する。図3は、本実施例における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は、屈折率1.64(波長550nm)のEP-9000(三菱ガス化学株式会社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層21は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層22はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層23は中空シリカを主成分とした材料からなる。表9は、本実施例の光学素子302の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層21、22、23は有機化合物を含む。
【0101】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は、以下のとおりである。
【0102】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および鎖状シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。中実シリカ塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。鎖状シリカ塗工液1を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0103】
図20は、本実施例における光学素子302の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図21は、本実施例における光学素子302の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表9によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの2%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0104】
【表9】
【実施例0105】
次に、本発明の実施例10について説明する。図3は、本実施例における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は、母材となるガラス基材(図に記載なし)の表面に透明基板202を形成したレプリカ素子と呼ばれる光学素子である。透明基板202は、屈折率1.59(波長550nm)のLPQ-1500(三菱ガス化学社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層21は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層22はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層23は中空シリカを主成分とした材料からなる。表10は、本実施例の光学素子302の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層21、22、23は、有機化合物を含む。
【0106】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は、以下のとおりである。
【0107】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液2、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。中実シリカ塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0108】
図22には、本実施例における光学素子302の位置Cでの入射角0、15、30,45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図23は、本実施例における光学素子302の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表10によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの2%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0109】
【表10】
【実施例0110】
次に、本発明の実施例11について説明する。図2は、本実施例における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は、屈折率1.77(波長550nm)のS-LAH66(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層11はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層12は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表11は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層11、12、13は、有機化合物を含む。
【0111】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
【0112】
ポリイミド塗工液1、中実シリカ塗工液1、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜101を形成する。ポリイミド塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0113】
図24は、本実施例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図25は、本実施例における光学素子301の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表11によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0114】
【表11】
【実施例0115】
次に、本発明の実施例12について説明する。図3は、本実施例における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は屈折率1.85(波長550nm)のS-TIH53(OHARA社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層21はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層22は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層23は中空シリカを主成分とした材料からなる。表12は、本実施例の光学素子302の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)、(10)~(12)を満足する。また、薄膜層21、22、23は、有機化合物を含む。
【0116】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は、以下のとおりである。
【0117】
ポリイミド塗工液2、中実シリカ塗工液1、および中空シリカ塗工液2により、反射防止膜102を形成する。ポリイミド塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。中空シリカ塗工液2を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0118】
図26は、本実施例における光学素子302の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図27は、本実施例における光学素子302の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表12によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの2%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0119】
【表12】
【実施例0120】
次に、本発明の実施例13について説明する。図2は、本実施例における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.57(波長550nm)のS-TIL26(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11はフッ化マグネシウムを主成分とした材料からなり、薄膜層12はアルミナを主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表13は、本実施例の光学素子301の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。
【0121】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
【0122】
薄膜層11、12は蒸着法にて成膜した。蒸発材料の加熱には、電子ビームを使用した。また、より緻密な膜を形成するため、イオンビームアシスト蒸着法を行った。蒸着装置の真空チャンバ内は、2×10-3(Pa)近傍の高真空領域まで無加熱状態で排気した。真空チャンバ内が高真空状態になったのを確認してから、不活性ガスとしてArをイオン銃に導入し、イオン銃を放電させる。イオン銃が安定状態になってから、真空チャンバ内に酸素を導入し、真空圧が1×10-2(Pa)程度で酸素イオンによるイオンアシスト蒸着を行った。一般的に、蒸着法では、半開角が大きいレンズの場合、周辺部になるほど膜厚が減少するという問題が生じる。実施例13では、周辺部の膜厚減少が生じないように、蒸着を行う祭に、透明基板201の成膜面側に任意の形状のマスクを設置し、面内での膜厚分布が同程度になるようにした。
【0123】
薄膜層11に続いて薄膜層12が蒸着により成膜した後、中空シリカ塗工液1を薄膜11と12が成膜された透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0124】
図28は、本実施例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図29は、本実施例における光学素子301の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表13によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0125】
【表13】
【実施例0126】
次に、本発明の実施例14について説明する。図3は、本実施例における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は、屈折率2.00(波長550nm)のS-LAH79(OHARA社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層21はフッ化マグネシウムを主成分とした材料からなり、薄膜層22は酸化ジルコニアとアルミナを主成分とした材料からなり、薄膜層23は中空シリカを主成分とした材料からなる。表14は、本実施例の光学素子302の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)、(10)~(12)を満足する。
【0127】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は、以下のとおりである。薄膜層21、22は蒸着法にて成膜した。蒸着の方法は、実施例13と同様である。本実施例においても、膜厚分布を面内で同程度になるように、マスクを使用した。薄膜層21に続いて薄膜層22が蒸着により成膜した後、中空シリカ塗工液1を薄膜層21、22が成膜された透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0128】
図30は、本実施例における光学素子302の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図31は、本実施例における光学素子302の位置C、Qでの入射角0度の反射率特性である。表13によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの2%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0129】
【表14】
【実施例0130】
次に、図32を参照して、実施例15における光学系401について説明する。図32は、光学系401の断面図である。光学系401は、複数の光学素子G401~G416を有する。402は絞り(開口絞り)、403は結像面である。光学素子G401~G411はそれぞれレンズである。入射面および射出面の少なくとも一方に、実施例1~14のいずれかの反射防止膜が付与されている。すなわち光学系401は、複数の光学素子G401~G411を有し、複数の光学素子G403、G412、およびG143は、実施例1~14のいずれかの反射防止膜が形成された光学素子301または光学素子302を含む。
【0131】
なお本実施例の光学系400は、後述する撮像装置に用いられる撮像光学系に限定されるものではなく、双眼鏡、プロジェクタ、望遠鏡等の様々な用途の光学系に適用可能である。
【実施例0132】
次に、図33を参照して、実施例16における撮像装置について説明する。図33は、撮像装置(デジタルカメラ500)の外観斜視図である。デジタルカメラ500は、カメラ本体502と、カメラ本体502一体的に構成されたレンズ装置501とを有する。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、レンズ装置501は、一眼レフカメラ用やミラーレスカメラ用等の、カメラ本体502に対して着脱可能な交換レンズであってもよい。レンズ装置501は、実施例1~15のいずれかの光学系401を有する。カメラ本体502は、CMOSセンサやCCDセンサ等の撮像素子503を有する。撮像素子503は、光学系401の結像面403に配置される。
(比較例1)
次に、本発明の比較例1について説明する。図2は、本比較例における光学素子の概略断面図である。本比較例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.57(波長550nm)のS-TIL26(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11はフッ化マグネシウムを主成分とした材料からなり、薄膜層12はアルミナを主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。表15は、本比較例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(1)~(8)を満足するが、条件式(10)、(11)を満足しない。
【0133】
本比較例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。薄膜層11、および薄膜層12は蒸着法にて成膜した。蒸着の方法は実施例13と同様である。本比較例において、膜厚分布を面内で同程度になるようなマスクは使用しなかった。薄膜層11に続いて薄膜層12が蒸着により成膜した後、中空シリカ塗工液1を薄膜11、12が成膜された透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0134】
図34は、本比較例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。しかし、位置C、Qでの入射角0度の反射率特性(不図示)を比較してみると、位置Qの反射率特性が、位置Cよりも劣化していることが確認できる。表14によると、薄膜層12の位置Qにおける膜厚は、位置Cの6%増となっているが、薄膜層11、12の位置Qにおける膜厚は、位置Cの30%減となっている。このため、位置Qでの反射率特性が劣化したといえる。
【0135】
【表15】
【0136】
(比較例2)
次に、本発明の比較例2について説明する。図2は、本比較例における光学素子の概略断面図である。本比較例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.57(波長550nm)のS-TIL26(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層12はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層13は中空シリカを主成分とした材料からなる。
【0137】
表16は、本比較例の光学素子301の膜構成の詳細を示す。薄膜層13の屈折率は条件式(1)、(4)を満足しない。
【0138】
本比較例の反射防止膜101の形成方法は、以下のとおりである。
(鎖状シリカ塗工液2)
鎖状粒子分散液2とバインダー溶液2の作製方法は、中空粒子塗工液1と同様である。鎖状粒子分散液2を251.3gに、バインダー溶液2を78.0g添加した。その後、1-プロポキシ-2-プロパノールを174.5g、乳酸エチル510.8gを添加し、60分攪拌し、鎖状シリカ塗工液2を得た。
【0139】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および鎖状シリカ塗工液2により、反射防止膜101を形成する。
【0140】
中実シリカ塗工液を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、鎖状シリカ塗工液2を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0141】
図35は、本比較例における光学素子301の位置Cでの入射角0、15、30、45、60度の反射率特性である。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以上であり、十分な反射防止特性が得られていないといえる。
【0142】
【表16】
【0143】
各実施例によれば、基材の屈折率に関わらず、反射率を十分に低減することが可能な光学素子、光学系、撮像装置、および光学素子の製造方法を提供することができる。
【0144】
次に、図36を参照して、実施例17~25における光学素子300の概略について説明する。図36は、光学素子300の概略図である。光学素子300は、透明基板(基材)200および4層の膜からなる反射防止膜100を有する。反射防止膜100は、透明基板200から空気側に向かって順に、薄膜層(第1の層)01、薄膜層(第2の層)02、薄膜層(第3の層)03、および薄膜層(第4の層)04からなる。
【0145】
波長550mnのときの、薄膜層01の屈折率をn、薄膜層02の屈折率をn、薄膜層03の屈折率をn、薄膜層04の屈折率をnとする。さらに、薄膜層01の物理膜厚をd(nm)、薄膜層02の物理膜厚をd(nm)、薄膜層03の物理膜厚をd(nm)、薄膜層04の物理膜厚をd(nm)とすると、以下の条件式(15)~(22)の少なくとも一つを満足することが好ましい。
【0146】
1.56≦n≦1.70 …(15)
1.30≦n≦1.50 …(16)
1.56≦n≦1.70 …(17)
1.10≦n≦1.28 …(18)
40≦n≦250 …(19)
10≦n≦100 …(20)
10≦n≦100 …(21)
100≦n≦155 …(22)
200≦n+n+n+n≦550 …(23)
各材料の屈折率や物理膜厚が、条件式(15)~(23)の範囲外になった場合、十分な反射防止性能を得ることができない。
【0147】
より好ましくは、条件式(18)の数値範囲は、以下の条件式(24)のように設定される。
【0148】
1.12≦n≦1.22 …(24)
更に好ましくは、条件式(18)の数値範囲は、以下の条件式(24a)のように設定される。
【0149】
1.15≦n≦1.22 …(24a)
各実施例の光学素子300の薄膜層02、03、04は、有機化合物を含む材料からなることが望ましい。本実施形態の「有機化合物」とは、炭素を含む化合物のことであり、一酸化炭素や二酸化炭素といった簡単な構造の化合物を除いたもののことを言う。「有機化合物」を含む材料は、湿式塗工法で簡易に形成することができる。
【0150】
図37および図38に示した本発明の一実施形態である光学素子301および302は、透明基板201および202において、反射防止膜101および102を形成する面が凹面形状、および凸面形状の場合の概略図である。以下、図37で示した凹面形状のみで説明するが、図38で示した凸面形状において、同様である。
【0151】
光学素子301は、反射防止膜101を形成する光学面が回転対称軸(基準軸、例えば原点(面頂点)を通る面法線)を有する形状、すなわち回転対称形状を有する。ただし、各実施例は、これに限定されるものではなく、反射防止膜101を形成する光学面が回転対称でなくてもよい。図37において、位置Cは反射防止膜101を付与された透明基板201のレンズ面の回転中心である。つまり、位置Cは、上記レンズ面の回転対称軸(光軸L)と透明基板201のレンズ面とが交わる位置(交点)である。一方、位置Qは、透明基板201のレンズ面上の光学有効領域内において、最も位置Cから離れた箇所に位置する。ここで光学有効領域とは、光学面において結像に寄与する有効光線が通過する領域(有効径)ことを示す。
【0152】
つまり、光軸Lと位置Qの法線とがなす角(以下、半開角という)をφとすると、半開角φは光学有効領域内で最大値となる。反射防止膜101は、透明基板201から順に薄膜層(第1の層)11、薄膜層(第2の層)12、薄膜層(第3の層)13、および薄膜層(第4の層)14からなる。位置Cにおける、薄膜層12の物理膜厚をd2c(nm)、薄膜層13の物理膜厚をd3c、薄膜層14の物理膜厚をd4c(nm)とする。位置Qにおける、薄膜層12の物理膜厚をd2q(nm)、薄膜層13の物理膜厚をd3q(nm)、薄膜層14の物理膜厚をd4q(nm)とする。このとき、以下の条件式(25)~(27)の少なくとも一つを満足することが好ましい。
【0153】
1.0<d2q/d2c≦1.3 …(25)
1.0<d3q/d3c≦1.3 …(26)
1.0<d4q/d4c≦1.3 …(27)
各実施例において、反射防止膜101を構成する薄膜層12、13、14の膜厚はそれぞれ、反射防止膜101の中心(光軸中心)である位置Cにおいて最も小さく、光軸中心から離れるほど、大きくなることが望ましい。
【0154】
また各実施例において、位置Qにおける半開角φ(°)は、以下の条件式(28)を満足することが好ましい。
【0155】
25≦φ<90 …(28)
透明基板201の屈折率をnとするとき、以下の条件式(29)を満足することが好ましい。
【0156】
1.45≦n≦2.10 …(29)
図37、および図38において、反射防止膜101の薄膜層11、および反射防止膜102の薄膜層21は、薄膜層12、13、14および薄膜層22、23、24と同様に、有機化合物を含む材料からなることが望ましい。形成方法においても、同様に湿式成膜法、特にスピンコート法が望ましい。
【0157】
以下、図37で示した凹面形状のみで説明するが、図39で示した凸面形状において、同様である。
【0158】
薄膜層11において、位置Cにおける、薄膜層11の物理膜厚をd1c(nm)とし、位置Qにおける、薄膜層11の物理膜厚をd1q(nm)としたとき、以下の条件式(30)を満足することが好ましい。
【0159】
1.0<d1q/d1c≦1.3 …(30)
薄膜層11および薄膜層13においては、以下の条件式(31)を満足することが好ましい。
【0160】
0.9≦d/d≦1.1 …(31)
また、薄膜層11は、「イミド(-CO-NR-CO-)結合を含む高分子化合物」である、ポリイミド樹脂を含む材料からなることが望ましい。イミド結合は、平面構造であり、これらの構造を持つ薄膜層は、形成時に分子鎖同士が基材に対して平行に配向しやすい。そのため、横方向の密着性よりも縦方向の密着性が弱くなり、アルミナ系鉱物を含む研磨剤を適量に布につけてこすると、容易に剥がすことができる。本発明の一実施例の形態においては、薄膜層11の上層となる薄膜層12、13、14、つまり反射防止膜101ごと、透明基材201から剥がすことができ、製造過程における再生処理がし易い。
【0161】
一方、図39および図40は、本発明の一実施形態である、光学素子303および304を示す。光学素子303、304は、透明基板203、204において、反射防止膜103、104を形成する面が凹面形状、および凸面形状の場合の概略図である。以下、図39で示した凹面形状のみで説明するが、図40で示した凸面形状において、同様である。
【0162】
反射防止膜103は、透明基板203から順に、薄膜層31、薄膜層32、薄膜層33、および薄膜層34からなる。薄膜層32、33、34は、先に説明した反射防止膜101における薄膜層12、13、14と同様に有機化合物を含む材料からなることが望ましく、また条件式(25)~(27)を満足する。
【0163】
なお、薄膜層31は、酸化アルミニウムを含む材料で構成してもよい。酸化アルミニウムは、水蒸気に対する遮蔽性に優れ、基板表面のヤケを防止することができる。このとき、以下の条件式(19a)を満足することが好ましい。
【0164】
120≦n≦250 …(19a)
なお、薄膜層31を蒸着法やスパッタ法のような乾式成膜法で形成する場合、大開角レンズの周辺部では、蒸着材料のレンズ面への入射角が大きくなるため、中心部よりも膜厚が減少する。このため、図39において、位置Cにおける、薄膜層31の物理膜厚d1c(nm)と、位置Qにおける、薄膜層31の物理膜厚d1q(nm)は、以下の条件式(32)を満足することが好ましい。
【0165】
0.5≦d1q/d1c<1.0 …(32)
波長550nmのときの透明基板203の屈折率をnとしたとき、以下の条件式(33)を満足することが好ましい。
【0166】
-0.1≦n-n≦0.1 …(33)
透明基板203と薄膜層31との屈折率差が小さい場合、界面反射は小さい。薄膜層31の膜厚がレンズ面内でムラがあったとしても、反射率性能に偏りは生じにくい。
【0167】
透明基板203のガラス転移温度T(℃)としたとき、以下の条件式(34)を満足することが好ましい。
【0168】
450≦T≦550 …(34)
ガラス転移温度の低い硝材は、ヤケのような硝材起因の問題が起こりやすい。硝材に直接付与される層を酸化アルミニウムとすることで、ヤケなどによる反射率の低下を抑えることができる。
【0169】
薄膜層04、14、24、34、44は、空隙を含むことが望ましい。空隙、つまり屈折率が1.0である空気を含有するため、屈折率を条件式(18)および条件式(24)まで低減することができる。屈折率が1.10未満の場合は、層内に含まれる空隙の割合が大きいため、膜強度が弱くなる。屈折率が1.28よりも大きい場合は、反射防止性能が十分に得られなくなる。また各実施例の反射防止膜の表面(薄膜層04、14、24、34、44の表面)には、必要に応じて、防汚膜などを設けてもよい。防汚膜の例としては、フッ素ポリマー、フルオロシラン単分子、酸化チタン粒子などを含む膜が挙げられる。
【0170】
各実施例において、薄膜層04、14、24、34、44は、中実粒子、鎖状粒子、または中空粒子からなることが望ましい。より好ましくは、内部に空孔を有する中空粒子からなることがより望ましい。空孔は単孔、多孔のどちらでもよく適宜選択することができる。中実粒子、鎖状粒子、ないしは中空粒子を構成する材質は、低屈折率のものが好ましい。例えば、SiO、MgF,フッ素、シリコンなどからなる有機樹脂が挙げられるが、粒子の製造が容易であるSiOがより好ましい。中空粒子の平均粒子径は15nm以上100nm以下、好ましくは15nm以上80nm以下が望ましい。中空粒子の平均粒子径が15nm未満の場合、コアとなる粒子を安定的に作ることが難しい。また100nmをこえる場合、粒子間の空隙の大きさが大きくなるため、大きなボイドが発生しやすく、また粒子の大きさに伴う散乱が発生するため、好ましくない。
【0171】
薄膜層02、12、22、32、42は、シロキサン結合のようなバインダーで結着した中実粒子、特に、中実シリカ粒子を含む材料からなることが望ましい。ないしは、「アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体」であるアクリル樹脂を含む材料であることが望ましい。
【0172】
薄膜層03、13、23、33、43は、「イミド(-CO-NR-CO-)結合を含む高分子化合物」である、ポリイミド樹脂を含む材料からのなることが望ましい。ないしは、「3印環のエーテルであるオキサシクロプロパン(オキシラン)を構造式中にもつエポキシ基を架橋させ硬化した樹脂」であるエポキシ樹脂を含む材料からなることが望ましい。
【0173】
各実施例において、薄膜層11、21、薄膜層12、22、32、42、薄膜層13、23、33、43、および、薄膜層14,24、34、44の形成方法としては、膜材料を含む塗工液を塗布し、乾燥や焼成を行う、湿式成膜法が好ましい。湿式成膜法は、安価に大面積を塗工することができる。特に、スピンコート法は、塗工面の回転軸で回転させながら塗工を行うことで、面内の膜厚分布を抑えることができるため、好ましい。
【0174】
塗工液に用いることができる有機溶媒は、塗工性や性能などを損なわない範囲内において特に限定されるものではなく、公知の溶媒を用いることができる。例えば、1価のアルコールとして、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、シクロペンタノールを用いることができる。または、例えば、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルブタノールを用いることができる。または、例えば、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、3-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノールを用いることができる。
【0175】
または、エチレングリコール、トリエチレングリコールなどの2価以上のアルコール類を用いてもよい。または、エーテルアルコール類を用いてもよい。例えば、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノールなどがある。または、ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類を用いてもよい。
【0176】
または、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類を用いてもよい。または、エステル類として、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを用いてもよい。または、n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類を用いてもよい。または、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類を用いてもよい。
【0177】
または、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類。クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類を用いてもよい。または、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルフォルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような、非プロトン性極性溶媒等を用いてもよい。これらの溶媒のうち、2種類以上の溶媒を混ぜて使用することもできる。
【0178】
また、第4の薄膜層04、14、24、34、44に使用する中実粒子、鎖状粒子、ないしは中空粒子、第2の薄膜層02、12、22、32、42に中実粒子を使用する場合、強度を向上させる目的で、バインダーによって結着されていることが好ましい。バインダーとしてはシロキサン結合を利用するのが好ましい。表面に水酸基が多く存在するシリカの粒子を用いる場合には、特に好適である。
【0179】
各実施例において、薄膜層11、21、薄膜層12、22薄膜層13、23、薄膜層14、24は、湿式成膜法により形成できる材料からなることから、材料自体、ないしはバインダーに有機化合物を含む。また各実施例の反射防止膜は、塗工後の乾燥の工程において、高温による焼成を行わない。このため、全層を湿式成膜法で形成できる、透明基板201、202には熱変形が生じやすいプラスチックや、光学用硬化性樹脂などを使用することが可能である。
【0180】
一方、薄膜層31、41は、蒸着法やスパッタ法のような乾式成膜法で、形成することが好ましい。蒸着法やスパッタ法のような乾式成膜法は、蒸発源とレンズの中心部が対面するような位置関係で成膜を行う。大開角レンズの場合、周辺部では、蒸着材料のレンズ面への入射角が大きくなるため、中心部よりも膜厚が減少する。このため、レンズ面内に膜ムラが生じ、反射防止性能に偏りが生じる。しかしながら、条件式(19)を満足する場合、透明基板200と薄膜層31、41の界面反射は小さくなる。このため、薄膜層31、41の膜厚に面内ばらつきがあったとしても、反射率性能の偏りは小さくなる。
【0181】
以下に具体的な実施例を示す。ただし、これらは例に過ぎず、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例0182】
図37は、本発明の実施例17における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.57(波長550nm)のS-TIL26(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層12は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層13はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層14は中空シリカを主成分とした材料からなる。表1は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(37)、(30)を満たす。また、薄膜層11、12、13、14は有機化合物を含んでいる。
【0183】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は以下のとおりである。
【0184】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜101を形成する。
【0185】
ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、2000rpmで20秒間スピンコートした。次に中実シリカ塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、ポリイミド塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。最後に、中空シリカ塗工液1を、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0186】
図41には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図42は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表17によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%程度増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0187】
【表17】
【実施例0188】
図38は、本発明の実施例18における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は屈折率1.77(波長550nm)のS-LAH66(OHARA社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは60度である。層材料としては、薄膜層21はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層22は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層23はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層24は中空シリカを主成分とした材料からなる。表18は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(30)を満たす。また、薄膜層21、22、23、および24は有機化合物を含んでいる。
【0189】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は以下のとおりである。
【0190】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。
【0191】
ポリイミド塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、ポリイミド塗工液1を連続して、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。最後に、中空シリカ塗工液を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0192】
図43には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図44は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表18によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの12%程度増となっているが、波長420nmから680nmにおける反射率は0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0193】
【表18】
【実施例0194】
図37は、本発明の実施例19における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.85(波長550nm)のS-TIH53(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層11はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層12は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層13はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層14は中空シリカを主成分とした材料からなる。表19は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(30)を満たす。また、薄膜層11、12、13、および14は有機化合物を含んでいる。
【0195】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は以下のとおりである。
【0196】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液2、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜101を形成する。
【0197】
ポリイミド塗工液2を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、ポリイミド塗工液2を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液1を、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0198】
図45には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図46は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表19によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの2%程度増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0199】
【表19】
【実施例0200】
図38は、本発明の実施例20における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は屈折率1.59(波長550nm)のLPQ-1500(三菱ガス化学社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層21はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層22は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層23はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層24は中空シリカを主成分とした材料からなる。表20は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(30)を満たす。また、薄膜層11、12、13、および14は有機化合物を含んでいる。
【0201】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は以下のとおりである。
【0202】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液2、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。
【0203】
ポリイミド塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、3500rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液2を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、中空シリカ塗工液1を、透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0204】
図47には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図48は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表20によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの3%程度増となっているが、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0205】
【表20】
【実施例0206】
図37は、本発明の実施例21における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は、屈折率1.68(波長550nm)のEP-9000(三菱ガス化学株式会社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。薄膜層11はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層12は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層13はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層14は中空シリカを主成分とした材料からなる。表21は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(30)、(31)を満たす。また、薄膜層11、12、13、および14は有機化合物を含んでいる。
【0207】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は以下のとおりである。
【0208】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜101を形成する。
【0209】
ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。最後に、中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0210】
図49には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図50は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表21によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%程度増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0211】
【表21】
【実施例0212】
図37は、本発明の実施例22における光学素子301の概略断面図である。本実施例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.52(波長550nm)のS-BSL7(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層11はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層12は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層13はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層14は中空シリカを主成分とした材料からなる。表22は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(30)、(31)を満たす。また、薄膜層11、12、13、および14は有機化合物を含んでいる。
【0213】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は以下のとおりである。
【0214】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液2、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜101を形成する。
【0215】
ポリイミド塗工液2を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらにポリイミド塗工液2を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。最後に、中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0216】
図51には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図52は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表22によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの3%程度増となっているが、反射率特性は、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0217】
【表22】
【実施例0218】
図38は、本発明の実施例23における光学素子302の概略断面図である。本実施例の光学素子302は、透明基板202上に反射防止膜102が形成された光学素子である。透明基板202は屈折率1.64(波長550nm)のS-BAM12(OHARA社製)である。反射防止膜102を形成する透明基板202のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層21はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層22は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層23はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜24は中空シリカを主成分とした材料からなる。表23は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(30)、(31)を満たす。また、薄膜層21、22、23、24は有機化合物を含んでいる。
【0219】
本実施例の反射防止膜102の形成方法は以下のとおりである。
【0220】
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および中空シリカ塗工液1により、反射防止膜102を形成する。
【0221】
ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。最後に、中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0222】
図53には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図55は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表23によると、位置Qでは各薄膜層の膜厚が位置Cの6%程度増となっているが、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0223】
【表23】
【実施例0224】
図39は、本発明の実施例24における光学素子303の概略断面図である。本実施例の光学素子303は、透明基板203上に反射防止膜103が形成された光学素子である。透明基板203は屈折率1.59(波長550nm)のL-BAL43(OHARA社製)である。L-BAL43のガラス転移温度T(℃)は493℃である。また、反射防止膜103を形成する透明基板203のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは30度である。層材料としては、薄膜層31は酸化アルミニウムを主成分とした材料からなり、薄膜層32は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層33はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層34は中空シリカを主成分とした材料からなる。表24は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(32)~(34)を満たす。また、薄膜層32、33、34は有機化合物を含んでいる。
【0225】
本実施例の反射防止膜103の形成方法は以下のとおりである。
【0226】
薄膜層31は蒸着法にて成膜した。蒸発材料の加熱には、電子ビームを使用した。また、より緻密な膜を形成するため、イオンビームアシスト蒸着法を行った。蒸着装置の真空チャンバ内は、2×10-3(Pa)近傍の高真空領域まで無加熱状態で排気した。真空チャンバ内が高真空状態になったのを確認してから、不活性ガスとしてArをイオン銃に導入し、イオン銃を放電させる。イオン銃が安定状態になってから、真空チャンバ内に酸素を導入し、真空圧が1×10-2(Pa)程度で酸素イオンによるイオンアシスト蒸着を行った。蒸着法では、半開角が大きいレンズの場合、周辺部になるほど膜厚が減少する。
【0227】
薄膜層31を蒸着により成膜した後、中実シリカ塗工液1を薄膜31の成膜された透明基板203のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液1を透明基板202のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。最後に、中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板203のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0228】
図55には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図56は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表24によると、位置Qでは薄膜層31の膜厚が位置Cの13%程度減、薄膜層32、33、34の膜厚が位置Cの3%程度増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0229】
【表24】
【実施例0230】
図40は、本発明の実施例25における光学素子304の概略断面図である。本実施例の光学素子304は、透明基板204上に反射防止膜104が形成された光学素子である。透明基板204は屈折率1.69(波長550nm)のL-TIL28(OHARA社製)である。反射防止膜104を形成する透明基板204のレンズ面は凸面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは40度である。層材料としては、薄膜層41は酸化アルミニウムを主成分とした材料からなり、薄膜層42は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層43はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層44は中空シリカを主成分とした材料からなる。表25は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)、(25)~(27)、(32)~(34)を満たす。また、薄膜層42、43、および44は有機化合物を含んでいる。 本実施例の反射防止膜104の形成方法は以下のとおりである。
【0231】
薄膜層41は、蒸着法にて成膜した。蒸着の方法は実施例8の薄膜層31と同様である。
【0232】
薄膜層41を蒸着により成膜した後、中実シリカ塗工液1を薄膜41の成膜された透明基板204のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。次に、ポリイミド塗工液2を連続して、透明基板204のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。最後に、中空シリカ塗工液1を連続して、透明基板204のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0233】
図57には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。図59は、位置CおよびQの入射角0度の反射率特性を示す。表25によると、位置Qでは薄膜層41の膜厚が位置Cの23%程度減、薄膜層32、33、34の膜厚が位置Cの5%増となっているが、反射率特性は波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、良好であることが確認できる。
【0234】
【表25】
【0235】
なお、実施例17~25の光学素子は、図32を参照して説明した実施例15の光学系401にも適用可能である。光学系400は、実施例17~25のいずれかの反射防止膜が形成された光学素子301、302、303、304を含む。また、実施例17~25の光学素子は、図33を参照して説明した実施例16の撮像装置(デジタルカメラ500)にも適用可能である。
【0236】
(比較例3)
本発明の比較例3における光学素子の概略断面図を図37に示す。本比較例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.57(波長550nm)のS-TIL26(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11は酸化アルミニウムを主成分とした材料からなり、薄膜層12はフッ化マグネシウムを主成分とした材料からなり、薄膜層13は酸化アルミニウムを主成分とした材料からなり、薄膜層14は中空シリカを主成分とした材料からなる。表26は、本比較例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、条件式(15)~(23)を満たすが、条件式(25)~(27)を満たさない。
【0237】
本比較例の反射防止膜101の形成方法は以下のとおりである。薄膜層11、12、13は蒸着法にて成膜した。蒸着の方法は実施例8と同様である。薄膜層11、薄膜層12、薄膜層13の順で蒸着により成膜した後、中空シリカ塗工液1を薄膜11、12、13が成膜された透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0238】
図59には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以下であり、非常に良好な反射率特性であることがわかる。しかし、図60において、位置CとQの入射角0度の反射率特性を比較してみると、位置Qの反射率特性が、位置Cよりも低下していることが確認できる。表26によると、薄膜層14の位置Qにおける膜厚は、位置Cの6%増となっているが、薄膜層11、12、13の位置Qにおける膜厚は、位置Cの30%減となっている。このため、位置Qでの反射率特性が低下したといえる。
【0239】
【表26】
【0240】
(比較例4)
本発明の比較例4における光学素子の概略断面図を図61に示す。本比較例の光学素子301は、透明基板201上に反射防止膜101が形成された光学素子である。透明基板201は屈折率1.57(波長550nm)のS-TIL26(OHARA社製)である。反射防止膜101を形成する透明基板201のレンズ面は凹面形状である。最大光線有効径上の位置Qにおける半開角φは45度である。層材料としては、薄膜層11はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層12は中実シリカを主成分とした材料からなり、薄膜層13はポリイミド樹脂を主成分とした材料からなり、薄膜層14は鎖状シリカを主成分とした材料からなる。表27は、本比較例の光学素子の膜構成の詳細を示す。薄膜層13の屈折率は条件式(18)を満たさない。
【0241】
本実施例の反射防止膜101の形成方法は以下のとおりである。
【0242】
(鎖状シリカ塗工液2)
中実シリカ塗工液1、ポリイミド塗工液1、および鎖状シリカ塗工液2により、反射防止膜101を形成する。
【0243】
ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートした。次に、中実シリカ塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、ポリイミド塗工液1を透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。さらに、鎖状シリカ塗工液2を連続して、透明基板201のレンズ面上に0.2ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートした。その後、室温23℃のクリーンルームで24時間以上乾燥を行った。
【0244】
図61には、位置Cにおける入射角0、15,30,45、および60度の反射率特性を示す。反射率は、0度入射、波長420nmから680nmにおいて、0.2%以上であり、十分な反射防止特性が得られていないといえる。
【0245】
【表27】
【0246】
各実施例の開示は、以下の構成および方法を含む。
(構成1)
基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材の光学面上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層と、該第2の層の上に形成された第3の層とからなり、
前記第1乃至第3の層はそれぞれ、有機化合物を含み、
波長550nmにおける前記第3の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足することを特徴とする光学素子。
(構成2)
基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材の光学面上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層と、該第2の層の上に形成された第3の層とからなり、
波長550nmにおける前記第1乃至第3の層のそれぞれの屈折率をn、n、およびnとし、前記光学面の面頂点を通る基準軸上における前記第1乃至第3の層のそれぞれの物理膜厚をd1c(nm)、d2c(nm)、およびd3c(nm)とするとき、
1.30≦n≦1.50
1.56≦n≦1.70
1.10≦n≦1.28
10≦n1c≦155
10≦n2c≦155
100≦n3c≦155
200≦n1c+n2c+n3c≦300
なる条件式を満足することを特徴とする光学素子。
(構成3)
前記第1乃至第3の層はそれぞれ、有機化合物を含むことを特徴とする構成2に記載の光学素子。
(構成4)
前記光学面の面頂点を通る基準軸上での前記第1乃至第3の層のそれぞれの物理膜をd1c、d2c、およびd3c、前記光学面の有効領域において、前記交点から最も離れた位置での前記第1乃至第3の層のそれぞれの物理膜厚をd1q、d2q、およびd3qとするとき、
1.0<d1q/d1c≦1.3
1.0<d2q/d2c≦1.3
1.0<d3q/d3c≦1.3
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の光学素子。
(構成5)
前記第1の層および前記第2の層のそれぞれの物理膜厚は、前記反射防止膜の中心において最も小さく、前記中心から離れるほど大きくなることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の光学素子。
(構成6)
前記第1の層は、アクリル樹脂を含むことを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の光学素子。
(構成7)
前記第1の層は、中実粒子を含むことを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の光学素子。
(構成8)
前記第2の層は、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂を含むことを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の光学素子。
(構成9)
波長550nmにおける前記基材の屈折率をnとするとき、
1.45≦n≦2.10
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載の光学素子。
(構成10)
基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材の光学面上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層と、該第2の層の上に形成された第3の層と、該第3の層の上に形成された第4の層とからなり、
前記第2乃至第4の層はそれぞれ、有機化合物を含み、
波長550nmにおける前記第4の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足することを特徴とする光学素子。
(構成11)
基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材の光学面上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層と、該第2の層の上に形成された第3の層と、該第3の層の上に形成された第4の層とからなり、
波長550nmにおける前記第1乃至第4の層のそれぞれの屈折率をn、n、n、nとし、前記光学面の面頂点を通る基準軸上における前記第1乃至4の層のそれぞれの物理膜厚をd1c(nm)、d2c(nm)、d3c(nm)、およびd4c(nm)とするとき、
1.56≦n≦1.70
1.30≦n≦1.50
1.56≦n≦1.70
1.10≦n≦1.28
40≦n1c≦250
10≦n2c≦100
10≦n3c≦100
100≦n4c≦155
200≦n1c+n2c+n3c+n4c≦550
なる条件式を満足することを特徴とする光学素子。
(構成12)
前記第2乃至第4の層はそれぞれ、有機化合物を含むことを特徴とする構成11に記載の光学素子。
(構成13)
前記第1の層は、有機化合物を含むことを特徴とする構成10乃至12のいずれかに記載の光学素子。
(構成14)
前記光学面の面頂点を通る基準軸上での前記第2乃至第4の層のそれぞれの物理膜厚をそれぞれd2c、d3c、およびd4c、前記光学面の有効領域における、該基準軸から最も離れた位置での前記第2乃至第4の層のそれぞれの物理膜厚をd2q、d3q、およびd4qとするとき、
1.0<d2q/d2c≦1.3
1.0<d3q/d3c≦1.3
1.0<d4q/d4c≦1.3
なる条件式を満足することを特徴とする構成10乃至13のいずれかに記載の光学素子。
(構成15)
前記第1の層は、ポリイミド樹脂を含むことを特徴とする構成10乃至14のいずれかに記載の光学素子。
(構成16)
前記光学面の面頂点を通る基準軸上での前記第1の層の物理膜厚をd1c、前記光学面の有効領域における該基準軸から最も離れた位置での前記第1の層の物理膜厚をd1qとするとき、
1.0<d1q/d1c≦1.3
なる条件式を満足することを特徴とする構成15に記載の光学素子。
(構成17)
0.9≦d1c/d3c≦1.1
なる条件式を満足することを特徴とする構成2、3、11、または12に記載の光学素子。
(構成18)
前記第1の層は、酸化アルミニウムを含むことを特徴とする構成10乃至17のいずれかに記載の光学素子。
(構成19)
前記光学面の面頂点を通る基準軸上での前記第1の層の物理膜厚をd1c、光学面の有効領域における該基準軸から最も離れた位置での前記第1の層の物理膜厚をd1qとするとき、
0.5≦d1q/d1c<1.0
なる条件式を満足することを特徴とする構成18に記載の光学素子。
(構成20)
波長550nmにおける前記基材の屈折率をnとするとき、
1.55≦n≦1.70
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至19のいずれかに記載の光学素子。
(構成21)
前記基材のガラス転移温度をT(℃)とするとき、
450≦T≦550
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至20のいずれかに記載の光学素子。
(構成22)
波長450nm以上650nm以下の範囲において、前記光学面の面頂点に入射角0度で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率は0.5%以下であり、該面頂点に入射角30度で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率は1.0%以下であることを特徴とする構成1乃至21に記載の光学素子。
(構成23)
1.12≦n≦1.25
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至22のいずれかに記載の光学素子。
(構成24)
前記第2乃至第4の層のそれぞれの物理膜厚は、前記光学面の面頂点を通る基準軸上において最も小さく、該基準軸から離れるほど大きくなることを特徴とする構成10乃至23のいずれかに記載の光学素子。
(構成25)
前記第4の層は、空隙を含むことを特徴とする構成1乃至24のいずれかに記載の光学素子。
(構成26)
前記第4の層は、中実粒子、鎖状粒子、および中空粒子のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする構成1乃至25のいずれかに記載の光学素子。
(構成27)
前記中実粒子、前記鎖状粒子、および前記中空粒子のうち少なくとも一つは、シリカからなることを特徴とする構成26に記載の光学素子。
(構成28)
前記第2の層は、中実粒子を含むことを特徴とする構成10乃至16のいずれかに記載の光学素子。
(構成29)
前記反射防止膜の上に形成されたフッ素樹脂を含む膜を更に有することを特徴とする構成1乃至28のいずれかに記載の光学素子。
(構成30)
構成1乃至29のいずれかに記載の光学素子を含む複数の光学素子を有することを特徴とする光学系。
(構成31)
前記光学面の有効径の位置での半開角をφ(度)とするとき、
25≦φ<90
なる条件式を満足することを特徴とする構成30に記載の光学系。
(構成32)
構成30に記載の光学素子を含む光学系と、
前記光学系を介して被写体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
(方法1)
基材と第1乃至第3の層からなる反射防止膜とを有する光学素子の製造方法であって、
前記基材の光学面上に湿式塗工法により前記第1の層を形成するステップと、
前記第1の層の上に湿式塗工法により前記第2の層を形成するステップと、
前記第2の層の上に湿式塗工法により前記第3の層を形成するステップとを有し、
波長550nmにおける前記第3の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足することを特徴とする製造方法。
(方法2)
基材と第1乃至第4の層からなる反射防止膜とを有する光学素子の製造方法であって、
前記基材の光学面上に前記第1の層を形成するステップと、
前記第1の層の上に湿式塗工法により前記第2の層を形成するステップと、
前記第2の層の上に湿式塗工法により前記第3の層を形成するステップと、
前記第3の層の上に湿式塗工法により前記第4の層を形成するステップとを有し、
波長550nmにおける前記第4の層の屈折率をnとするとき、
1.10≦n≦1.28
なる条件式を満足することを特徴とする製造方法。
(方法3)
前記湿式塗工法は、スピン塗工法であることを特徴とする方法1または2に記載の製造方法。
【0247】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0248】
01、11、21 薄膜層(第1の層)
02、12、22 薄膜層(第2の層)
03、13、23 薄膜層(第3の層)
100、102、102 反射防止膜
200、201、202 基材
300、301、302 光学素子
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