IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

特開2024-169449流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット
<>
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図1
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図2
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図3
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図4
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図5
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図6
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図7
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図8
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図9
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図10
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図11
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図12
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図13
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図14
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図15
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図16
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図17
  • 特開-流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169449
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/696 20060101AFI20241128BHJP
   G01F 1/72 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01F1/696 Z
G01F1/72
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157305
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2020044496の分割
【原出願日】2020-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】桝井 保幸
(72)【発明者】
【氏名】中尾 秀之
(72)【発明者】
【氏名】山本 克行
(57)【要約】
【課題】流量測定装置において、より精度を高めた流量測定を可能にする技術を提供する。
【解決手段】主流路(2)を流れる測定対象流体の流量を検出する流量測定装置(1)であって、測定対象流体を加熱する加熱部(113)と、測定対象流体の温度を検出する温度検出部(111、112)と、前記温度検出部による検出値に基づいて、前記主流路を流れる測定対象流体の流量が周期的に変動する脈動に関する脈動周波数を検知するとともに、前記検知された脈動周波数に応じて前記主流路を流れる測定対象流体の流量を補正する流量補正部(133)と、を備える。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路を流れる測定対象流体の流量を検出する流量測定装置であって、
測定対象流体を加熱する加熱部と、
前記測定対象流体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部による検出値に基づいて、前記主流路を流れる測定対象流体の流量が周期的に変動する脈動に関する脈動周波数を検知するとともに、前記検知された脈動周波数に応じて前記主流路を流れる測定対象流体の流量を補正する流量補正部と、
を備えることを特徴とする、流量測定装置。
【請求項2】
前記流量補正部は、
前記主流路を流れる測定対象流体の流量の変動に関する変動周期とは異なる周期間隔で前記温度検出部による検出値を取得するとともに、少なくとも、前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中から同じ検出値になる2つの検出値間の時間差分に基づいて、前記脈動周波数を検知する、ことを特徴とする請求項1に記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の数量が所定の条件を満たさないときには、前記周期間隔を変更する、ことを特徴とする請求項2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列における変動幅が所定の範囲内であるときには、前記周期間隔を変更する、ことを特徴とする請求項2または3に記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中に、連続して増加または減少変動する検出値群が存在しないときには、前記周期間隔を変更することを特徴とする。請求項4に記載の流量測定装置。
【請求項6】
前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中に、連続して増加または減少変動する検出値群が存在するときには、前記周期間隔を用いた検出値の取得を所定回数に実行することを特徴とする。請求項5に記載の流量測定装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の流量測定装置と、
前記流量補正部により補正された流量を表示する表示部と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部と、
を備える、流量測定装置ユニット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の流量測定装置と、
前記流量測定装置により測定した流量を表示する表示部と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部と、
前記流量測定装置、表示部及び、統合制御部に電力を供給する電源部と、
前記流量測定装置、表示部及び、統合制御部を収納可能な筐体と、
前記筐体の外部から前記流量測定装置の作動に関する設定が可能な操作部と、
を備える、ガスメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量測定装置、流量測定装置を備えたガスメータ及び、ガスメータのための流量測定装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータおよびセンサを備え、流体の流れによって変化する温度分布をセンサが検知することにより、流体の流速又は流量を算出する熱式の流量測定装置が提案されている。
【0003】
上述のような、熱式の流量測定装置を備えるガスメータ等においては、例えば、配管等に流れる測定対象の流体が周囲の振動やポンプといった駆動装置の影響により、脈動流となる場合がある。ここで、脈動流の測定に関し、例えば、特許文献1では、「超音波の伝播時間を利用して流量計測を行なう超音波ガスメータにおいて、前記超音波を一定周期でN回送信し、その後微小な変動期間を設けた後に、再度超音波を一定周期でN回送信する操作を繰り返して流量計測する」とされる超音波式ガスメータが提案されている。また、特許文献2には、「上流側から下流側へと流れる流体の流量または流速の値を一度の計測期間当りに所定の頻度で間欠的に計測することを複数回繰り返し、前記一度の計測期間ごとに得られた値を積算する流量計測方法において、前記計測期間の開始位相を所定の規則性に基づいて変化させる」とされる流量計測方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、ヒータを備え、測定対象流体の流れによって変化する温度分布を検知する熱式の流量測定装置においては、脈動流の周波数がヒータによって形成された温度分布に影響を及ぼし、正確な流量値を計測することが困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-28686号公報
【特許文献2】特開2001-174306号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、熱式の流量測定装置において、脈動が発生した状態であっても、より精度を高めた流量測定を可能にする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
主流路を流れる測定対象流体の流量を検出する流量測定装置であって、
測定対象流体を加熱する加熱部と、
前記測定対象流体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部による検出値に基づいて、前記主流路を流れる測定対象流体の流量が周期的に変動する脈動に関する脈動周波数を検知するとともに、前記検知された脈動周波数に応じて前記主流路を流れる測定対象流体の流量を補正する流量補正部と、
を備えることを特徴とする、流量測定装置である。
【0008】
本流量測定装置によれば、測定対象流体に脈動が生じた状態であっても検知された脈動
周波数に基づいて主流路を流れる測定対象流体の流量を補正することが可能になるため、より精度を高めた流量測定が可能になる。
【0009】
また、本発明においては、前記流量補正部は、
前記主流路を流れる測定対象流体の流量の変動に関する変動周期とは異なる周期間隔で前記温度検出部による検出値を取得するとともに、少なくとも、前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中から同じ検出値になる2つの検出値間の時間差分に基づいて、前記脈動周波数を検知するようにしてもよい。これにより、測定対象流体の脈動についての変動周期とは異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中から、同じ検出値を示す2点間の時間幅(時間差分)から、脈動周波数を検知することが可能になる。限られた検出期間の中で、数少ない検出値に基づいて、脈度周波数の特定が可能になる。
【0010】
また、本発明においては、前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の数量が所定の条件を満たさないときには、前記周期間隔を変更するようにしてもよい。これにより、脈動周波数のサンプリングに最適な周期間隔で検出値を取得することが可能になる。
【0011】
また、本発明においては、前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列における変動幅が所定の範囲内であるときには、前記周期間隔を変更するようにしてもよい。これにより、脈動周波数の変動周期と、検出値をサンプリングする周期間隔とを非同期の状態に導くことが可能になり、脈動周波数の多様な変化に対応できる。
【0012】
また、本発明においては、前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中に、連続して増加または減少変動する検出値群が存在しないときには、前記周期間隔を変更するようにしてもよい。これにより、検出値をサンプリングする期間の長さが制限されるときには、少なくとも連続して増加または減少変動する検出値群を特定することで周期間隔を変更できる。少ないサンプリング数であっても当該周期間隔が脈動周波数の変動周期と同期しているか否かが判断できるため、処理負担を軽減し、電力消費を抑制できる。
【0013】
また、本発明においては、前記流量補正部は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中に、連続して増加または減少変動する検出値群が存在するときには、前記周期間隔を用いた検出値の取得を所定回数に実行するようにしてもよい。これにより、特定の周期間隔を用いてサンプリングされたた所定回数分の検出値に基づいて、平均化された脈動周波数を求めることが可能になり、より精度を高めた流量測定が可能になる。
【0014】
また、本発明は、上記した流量測定装置と、
前記流量補正部により補正された流量を表示する表示部と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部と、
を備える、流量測定装置ユニットであってもよい。
【0015】
そうすれば、より容易または効率的に、測定対象流体の流量を出力・表示可能なガスメータを製造することが可能になる。
【0016】
また、本発明は、上記した流量測定装置と、
前記流量測定装置により測定した流量を表示する表示部と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部と、
前記流量測定装置、表示部、及び統合制御部に電力を供給する電源部と、
前記流量測定装置、表示部及び、統合制御部を収納可能な筐体と、
前記筐体の外部から前記流量測定装置の作動に関する設定が可能な操作部と、
を備える、ガスメータであってもよい。
【0017】
これによれば、より精度を高めた流量測定が可能なガスメータを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱式の流量測定装置において、脈動が発生した状態であってもより精度を高めた流量測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1における流量測定装置の一例を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施例1における流量測定装置の一例を示す断面図である。
図3】本発明の実施例1における副流路部を示す平面図である。
図4】本発明の実施例1におけるセンサ素子の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の実施例1におけるセンサ素子の仕組みを説明するための断面図である。
図6】本発明の実施例1における流量検出部の概略構成を示す平面図である。
図7】本発明の実施例1における物性値検出部の概略構成を示平面図である。
図8】本発明の実施例1における回路基板の機能構成を示すブロック図である。
図9】流体の流量を一定に保った状態で脈動を加えた場合における流量値の変動を示すグラフである。
図10】脈動が生じた場合における流量検出装置内の温度分布を説明する図である。
図11】脈動の周波数に対するセンサ出力値のずれ量を示すグラフである。
図12】本発明の実施例1における脈動の周波数を測定するためのサンプリング周期を説明する図である。
図13】本発明の実施例1におけるゼロクロス法による周波数特定を説明する図である。
図14】本発明の実施例1における加熱期間における流量値のサンプリングを説明する図である。
図15】本発明の実施例1における流量測定処理のフローチャートである。
図16】本発明の実施例1における流量測定処理のフローチャートである。
図17】本発明の実施例1における流量測定処理による脈動周波数の測定結果の一例を示す図である。
図18】本発明の実施例2におけるガスメータの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。本発明は例えば、図1に示すような熱式の流量測定装置1に適用される。流量測定装置1は、図2に示すように、主流路部2を流れる流体を分流し、その一部を流量検出部11に導いて、主流路部2の流体の流量と高い相関を有する、流量検出部11における流量を測定するものである。流量検出部11に用いられるセンサ素子は、図4に示すように、マイクロヒータ(加熱部)101を挟んで二つのサーモパイル(温度検出部)102が配置された構成を有する。
【0021】
測定原理としては、流体の流れがない場合、図5(a)に示すようにマイクロヒータ101の周囲の温度分布はほぼ均等になる。一方、例えば、図5(b)において破線の矢印
で示す方向に流体が流れた場合、未加熱の流体が移動するため、マイクロヒータ101の上流側よりも下流側の方が温度は高くなる。このように、二つのサーモパイル(温度検出部)102で検出される温度の温度差ΔTと、その上を通過する流体の流量との間の、ヒータ熱の分布の偏りに伴う相関関係を利用したものである。
【0022】
また、流量測定装置1の機能ブロック図8に示すように、流量検出部11の出力は、回路基板5に配置されたCPU(Central Processing Unit)により実現される制御部13
の検出値取得部131に送信され、流量算出部133において必要な補正などが施された上で、最終的な出力としての流量が算出される。
【0023】
しかしながら、熱式の流量測定装置を備えるガスメータ等においては、配管等に流れる測定対象の流体が周囲の振動やポンプといった駆動装置の影響により脈動流となる場合には、図9から図11に示すように、脈動流の周波数が流量値の真値に干渉することになり、正確な流量値を計測することが困難な状況が生じていた。
【0024】
そこで、本発明においては、脈動流の変動に関する周波数を特定し、特定された脈動周波数に応じて真値とのずれ量を補正する構成とした。これにより、測定対象流体に脈動が生じた状態であっても検知された脈動周波数に基づいて主流路を流れる測定対象流体の流量を補正することが可能になるため、より精度を高めた流量測定が可能になる。また、本発明においては、脈動流の変動に関する周波数を特定するためにゼロクロス法を採用する。これにより、ヒータの限られた加熱期間内で効率よく流量値のデータをサンプリングすることが可能になる。さらに、本発明においてはサンプリングされたデータおよびデータ数が所定条件を満たさないときには、当該データのサンプリング周波数を変更して再計測を行う構成とした。ここで、所定条件とは、脈動の周期とサンプリング周期が同期する場合、所定数のデータが得られない場合等である。これにより、所定条件を満たさないデータ計測が行われたときには、サンプリング周波数を高周波数方向または低周波数方向に変化させて再サンプリングを繰り返すことができるため、脈動周波数に最適な周期間隔によるデータ計測が可能になり、周波数検知精度を高めることが可能になる。
【0025】
なお、本発明は上記のような熱式の流量測定装置1に適用してもよいし、流量測定装置1を備えた図18に示すようなガスメータ150に適用しても構わない。ガスメータ150は、流量測定装置1の他、表示部151、電源部152、操作部153、振動検出部154、遮断部155、ガスメータ制御部156、ガスメータ記憶部157、及び、ガスメータ通信部158を備えている。
【0026】
また、本発明は、図18において、流量測定装置1、表示部151、電源部152、振動検出部154、ガスメータ制御部156、ガスメータ記憶部157、ガスメータ通信部158をユニット化し、ガスメータ150を製造する際に組み込み容易とした、流量測定装置ユニット150aに適用しても構わない。
【0027】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例に係る流量測定装置について、図面を用いて、より詳細に説明する。
【0028】
<装置構成>
図1は、本実施例に係る流量測定装置1の一例を示す分解斜視図である。図2は、流量測定装置1の一例を示す断面図である。流量測定装置1は、例えばガスメータや燃焼機器、自動車等の内燃機関、燃料電池、その他医療等の産業機器、組込機器に組み込まれ、流路を通過する流体の量を測定する。なお、図1及び図2の破線の矢印は、流体の流れる方向を例示している。
【0029】
また、図1に示すように、本実施例に係る流量測定装置1は、主流路部2と、副流路部3と、シール4と、回路基板5と、カバー6とを備えている。図1及び図2に示すように、本実施例では、流量測定装置1は主流路部2から分岐した副流路部3を有する。また副流路部3には、流量検出部11と、物性値検出部12が備えられる。流量検出部11及び物性値検出部12は、マイクロヒータによって形成される加熱部とサーモパイルによって形成される温度検出部とを含む熱式のフローセンサによって構成されている。また、本実施例では、物性値検出部12を利用して流体の物性値を検出し、流量検出部11によって検出される流量を流体の物性値に基づいて補正するものとするが、流量測定装置1は、物性値検出部12を備えていなくてもよい。
【0030】
主流路部2は、測定対象である流体の流路(以下、主流路ともいう)が長手方向に貫通した管状の部材である。図2に示すように、主流路部2の内周面には、流体の流れ方向に対して、上流側に流入口(第1流入口)34Aが形成され、下流側に流出口(第1流出口)35Aが形成されている。例えば主流路部2の軸方向の長さは約50mmであり、内周面の直径(主流路部2の内径)は約20mmであり、主流路部2の外径は約24mmであるが、主流路部2の寸法はこれらに限定されない。また、主流路部2には、流入口34Aと流出口35Aとの間にオリフィス21が設けられている。オリフィス21は、主流路部2においてその前後よりも内径が小さくなった抵抗体であり、オリフィス21の大きさによって副流路部3へ流入する流体の量を調整することができる。
【0031】
図1及び図2においては、主流路から分岐した副流路を内部に含む部分である副流路部3は主流路部2の鉛直上方に設けられている。また、副流路部3内の副流路は、流入用流路34と、物性値検出用流路32と、流量検出用流路33と、流出用流路35とを含む。副流路部3には、主流路部2を流れる流体の一部が分岐して流入する。
【0032】
流入用流路34は、主流路部2を流れる流体を流入させて、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流させるための流路である。流入用流路34は、主流路部2における流体の流れ方向と垂直な方向に沿って形成されており、一端が流入口34Aに連通し、他端は物性値検出用流路32および流量検出用流路33に連通している。主流路部2を流れる流体の一部は、流入用流路34を介して、さらに物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流する。このような物性値検出用流路32及び流量検出用流路33には、主流路部2を流れる流体の量に応じた量の流体が流入する。したがって、流量検出部11は、主流路部2を流れる流体の量に応じた値を検出することができる。
【0033】
図1に示すように、物性値検出用流路32は、主流路部2の鉛直上方に形成され、主流路部2と平行な方向に延在する、上側から見た断面が略U字型の流路である。物性値検出用流路32は、その内部に、測定対象流体の物性値を検出するための物性値検出部12が配置されている。物性値検出用流路32の一端は、流入用流路34を介して流入口34Aに連通しており、他端は、流出用流路35を介して流出口35Aに連通している。
【0034】
流量検出用流路33も、主流路部2における流体の流れ方向と平行な方向に延在する、上側から見た断面が略U字型の流路である。流量検出用流路33には、その内部に、流体の流量を検出するための流量検出部11が配置されている。また、流量検出用流路33の一端は、流入用流路34を介して流入口34Aに連通しており、他端は、流出用流路35を介して流出口35Aに連通している。なお、物性値検出部12、流量検出部11は、それぞれ回路基板5上に実装される。そして、回路基板5は、上部に開口を有する物性値検出用流路32、流量検出用流路33の上部を覆うと共に、物性値検出用流路32に物性値検出部12が位置し、流量検出用流路33に流量検出部11が位置するように配置される。
【0035】
流出用流路35は、物性値検出用流路32および流量検出用流路33を通過した測定対象流体を、主流路部2に流出させるための流路である。流出用流路35は、主流路部2と垂直な方向に沿って形成されており、一端が流出口35Aに連通し、他端は物性値検出用流路32および流量検出用流路33に連通している。物性値検出用流路32および流量検出用流路33を通過した測定対象流体は、流出用流路35を介して、主流路部2に流出する。
【0036】
本実施例では、上述のように、1つの流入口34Aから流入させた測定対象流体を、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流させている。これにより、流量検出部11および物性値検出部12は、それぞれ温度、密度などの条件がほぼ等しい流体に基づいて、測定対象の流体の物性値や流量を検出することができる。なお、流量測定装置1は、副流路部3にシール4を嵌め込んだ後、回路基板5が配置され、さらにカバー6によって回路基板5を副流路部3に固定することで、副流路部3の内部の気密性を確保している。
【0037】
図3は、図1に示される副流路部3の平面図である。図3に示すように、物性値検出用流路32と流量検出用流路33とは、平面視で流入用流路34の中心軸の位置と流出用流路35の中心軸の位置とを結ぶ線(不図示)に対して対称に配置されている。また、矢印P及びQは、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流する流体の流量の比率を模式的に表している。本実施例では、分流される流体の量がP対Qの割合になるように、物性値検出用流路32および流量検出用流路33の断面積が定められている。
【0038】
実際に物性値検出用流路32および流量検出用流路33を流れる流体の量は、主流路部2を流れる流体の流量に応じて変動するが、通常の使用態様において、物性値検出用流路32を流れる流体の量は物性値検出部12の検出レンジ内の値となり、流量検出用流路33を流れる流体の量は流量検出部11の検出レンジ内の値となるように、主流路部2に対する副流路部3の大きさやオリフィス21の大きさ、物性値検出用流路32および流量検出用流路33の幅がそれぞれ設定されている。なお、物性値検出用流路32及び流量検出用流路33の幅は例示であり、図3に示す例には限定されない。
【0039】
このように、流量測定装置1では、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流する流体の流量を、それぞれの幅を調整することで個別に制御することが可能である。このため、物性値検出部12の検出レンジに応じて物性値検出用流路32を流れる流体の流量を制御し、流量検出部11の検出レンジに応じて流量検出用流路33を流れる流体の流量を制御することができる。
【0040】
物性値検出用流路32および流量検出用流路33は、何れも上面視において略コ字型に形成された構成には限定されない。すなわち、物性値検出用流路32および流量検出用流路33は、物性値検出用流路32および流量検出用流路33を通過する流体の流量が制御可能な幅(断面積)に設定されていれば、他の形状を採用するようにしてもよい。
【0041】
また、物性値検出用流路32および流量検出用流路33において物性値検出部12、流量検出部11が配置される空間の形状を上面視において略正方形にしているが、本発明はこれに限定されない。物性値検出用流路32および流量検出用流路33の形状は、物性値検出部12または流量検出部11が配置可能であればよく、配置される物性値検出部12および流量検出部11の形状等に応じて決定することができる。
【0042】
したがって、例えば、物性値検出用流路32の幅よりも、物性値検出部12のサイズが小さい場合には、物性値検出用流路32において物性値検出部12が配置される空間の幅
を、物性値検出用流路32の他の部分の幅に一致させてもよい。すなわち、この場合は、物性値検出用流路32の長手方向に延在する部分は、幅がほぼ一定の形状になる。なお、流量検出用流路33についても同様である。
【0043】
以上のように、物性値検出用流路32および流量検出用流路33を流れる流体の量は、主流路部2を流れる流体の量よりも少ないが、それぞれ主流路部2を流れる流体の量に応じて変化する。仮に流量検出部11や物性値検出部12を主流路部2に配置する場合は、主流路部2を流れる流体の量に応じて流量検出部11および物性値検出部12の規模を大きくする必要が生じるが、本実施形態では主流路部2から分岐する副流路部3を設けることにより、規模の小さい流量検出部11および物性値検出部12によって流体の流量を測定できるようにしている。
【0044】
また、本実施例においては、物性値検出用流路32の断面積の方が流量検出用流路33の断面積よりも小さく、図3において矢印P及びQの大きさで表したように物性値検出用流路32を流れる流体の量の方が流量検出用流路33を流れる流体の量よりも少なくなっている。このように、流量検出部11を流れる流体の量よりも物性値検出部12を流れる流体の量の方を少なくすることにより、物性値検出部12が流体の物性値や温度を検出する際の流量の影響による誤差を小さくすることができる。
【0045】
図4は、流量検出部11及び物性値検出部12に用いられるセンサ素子の一例を示す斜視図である。また、図5は、センサ素子の仕組みを説明するための断面図である。センサ素子100は、マイクロヒータ(加熱部ともいう)101と、マイクロヒータ101を挟んで対称に設けられた二つのサーモパイル(温度検出部ともいう)102とを備える。すなわち、マイクロヒータ101と二つのサーモパイル102とは、所定の方向に並ぶように配置されている。これらの上下には、図5に示すように絶縁薄膜103が形成され、マイクロヒータ101、サーモパイル102及び絶縁薄膜103はシリコン基台104上に設けられている。また、マイクロヒータ101及びサーモパイル102の下方のシリコン基台104には、エッチング等により形成されるキャビティ(空洞)105が設けられている。
【0046】
マイクロヒータ101は、例えばポリシリコンで形成された抵抗である。図5においては、破線の楕円によって、マイクロヒータ101が発熱した場合の温度分布を模式的に示している。なお、破線が太いほど温度が高いことを示すものとする。流体の流れがない場合、図5(a)に示すようにマイクロヒータ101の周囲の温度分布はほぼ均等になる。一方、例えば図5(b)において破線の矢印で示す方向に流体が流れた場合、流体が移動するため、マイクロヒータ101の上流側には未加熱の流体が流入し、マイクロヒータ101の上流側よりも下流側の方が温度は高くなる。センサ素子100は、このようなヒータ熱の分布の偏りを利用して、流量を示す値を出力する。
【0047】
センサ素子の出力電圧ΔVは、例えば次のような式(1)で表される。
ΔV=A×(Th-Ta)×√(Vf) ・・・(1)
なお、Thはマイクロヒータ101の温度(サーモパイル102におけるマイクロヒータ101側の端部の温度)、Taはサーモパイル102におけるマイクロヒータ101から遠い側の端部の温度のうち低い方の温度(図5(a)では左側のサーモパイル102の左端の温度又は右側のサーモパイル102の右端の温度であり、図5(b)では上流側の端部である左側のサーモパイル102の左端の温度)、Vfは流速の平均値、A及びbは所定の定数である。
【0048】
また、流量測定装置1の回路基板5は、IC(Integrated Circuit)等により実現される制御部(図示せず)を備え、流量検出部11の出力に基づいて流量を算出する。また、
回路基板5は、物性値検出部12の出力に基づいて所定の特性値を算出し、特性値を用いて流量を補正してもよい。
【0049】
<流量検出部及び物性値検出部>
図6は、図1に示した流量検出部11の概略構成を示す平面図であり、図7は、図1に示した物性値検出部12の概略構成を示す平面図である。図6に示すように、流量検出部11は、測定対象の流体の温度を検出する第1サーモパイル(温度検出部ともいう)111および第2サーモパイル(温度検出部ともいう)112と、測定対象流体を加熱するマイクロヒータ(加熱部ともいう)113とを備えている。加熱部113と、温度検出部111および温度検出部112とは、流量検出部11内において、測定対象流体の流れ方向Pに沿って並べて配置されている。また、加熱部113、温度検出部111、および温度検出部112の形状は、平面視においてそれぞれ略矩形であり、各々の長手方向は測定対象流体の流れ方向Pと直交する。
【0050】
温度検出部111および温度検出部112は、加熱部113の上流側に温度検出部112が配置され、下流側に温度検出部111が配置されて、加熱部113を挟んで対称な位置の温度を検出する。
【0051】
流量測定装置1では、物性値検出部12および流量検出部11に、実質的に同一構造のセンサ素子100が用いられている。物性値検出部12のセンサ素子100と流量検出部11のセンサ素子100とは、流体の流れ方向に対する配置角度を、センサ素子100の平面視上、90度異ならせて配置されている。これにより、同一構造のセンサ素子100を物性値検出部12及び流量検出部11に使用することができ、流量測定装置1の製造コストを抑制することができる。
【0052】
一方、図7に示すように、物性値検出部12は、測定対象流体の温度を検出する第1サーモパイル(温度検出部ともいう。)121および第2サーモパイル(温度検出部ともいう。)122と、測定対象流体を加熱するマイクロヒータ(加熱部ともいう。)123とを備えている。加熱部123と、温度検出部121および温度検出部122とは、物性値検出部12内において、測定対象流体の流れ方向Qと直交する方向に並んで配置されている。また、加熱部123、温度検出部121、および温度検出部122の形状は、平面視においてそれぞれ略矩形であり、各々の長手方向は測定対象流体の流れ方向Qに沿っている。また、温度検出部121および温度検出部122は、加熱部123を挟んで左右対称に配置されており、加熱部123の両側の対称な位置の温度を検出する。したがって、温度検出部121および温度検出部122の測定値はほぼ同一であり、平均値を採用するようにしてもよいし、いずれか一方の値を採用するようにしてもよい。
【0053】
ここで、流体の流れによって温度分布は下流側に偏るため、流れ方向と直交する方向の温度分布の変化は、流体の流れ方向の温度分布の変化に比べて小さい。このため、温度検出部121と、加熱部123と、温度検出部122とを、この順で測定対象流体の流れ方向と直交する方向に並べて配置することにより、温度分布の変化による温度検出部121および温度検出部122の出力特性の変化を低減することができる。したがって、流体の流れによる温度分布の変化の影響を低減して、物性値検出部12による検出精度を向上させることができる。
【0054】
また、加熱部123の長手方向が測定対象流体の流れ方向に沿って配置されているため、加熱部123は測定対象流体の流れ方向の広範囲に亘って測定対象流体を加熱することが可能となる。このため、測定対象流体の流れによって温度分布が下流側に偏った場合であっても、温度検出部121および温度検出部122の出力特性の変化を低減することができる。同様に、流体温度を測定する場合においては、流速により生じる測定値の誤差を
低減することができる。なお、流体温度は、温度検出部121および温度検出部122が検出した温度から、加熱部123による加熱での温度上昇分を減じて求めるようにしてもよいし、加熱部123が加熱を行わない状態で検出するようにしてもよい。物性値検出部12によれば、測定対象流体の流れによる温度分布の変化の影響を抑え、物性値及び流体温度の検出精度を向上させることができる。
【0055】
さらに、温度検出部121および温度検出部122の長手方向が測定対象流体の流れ方向に沿って配置されているため、温度検出部121および温度検出部122は測定対象流体の流れ方向に亘って広範囲に温度を検出することが可能となる。このため、測定対象流体の流れによって温度分布が下流側に偏った場合であっても、温度検出部121および温度検出部122の出力特性の変化を低減することができる。したがって、測定対象流体の流れによる温度分布の変化の影響を低減して、物性値検出部12による検出精度を向上させることができる。
【0056】
<機能構成>
図8は、流量測定装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。流量測定装置1は、流量検出部11と、物性値検出部12と、制御部13と、記憶部14と、通信部15とを備えている。流量検出部11は、温度検出部111と、温度検出部112とを備える。物性値検出部12は、温度検出部121と、温度検出部122とを備える。なお、図6に示した加熱部113及び図7に示した加熱部123は、図示を省略している。また、制御部13は、検出値取得部131と、特性値算出部132と、流量算出部133とを含む。記憶部14は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶媒体を含み、補正テーブル141が保持される。
【0057】
流量検出部11は、温度検出部111において検出された温度に応じた信号と温度検出部112において検出された温度に応じた信号との差分を算出し、制御部13の検出値取得部131に出力する。物性値検出部12は、温度検出部121において検出された温度に応じた信号を特性値算出部132に出力する。なお、物性値検出部12は、温度検出部121および温度検出部122において検出された温度に応じた信号の平均値を求め、特性値算出部132に出力するようにしてもよい。また、温度検出部121又は温度検出部122のいずれか一方を用いて温度に応じた信号を取得するようにしてもよい。
【0058】
検出値取得部131は、所定の測定間隔(サンプリング周期)で、流量検出部11が出力する流体の流量に応じた検出値を取得する。特性値算出部132は、物性値検出部12の温度検出部121及び温度検出部122の少なくともいずれかの検出値に基づいて特性値を算出する。なお、特性値算出部132は、物性値検出部12のマイクロヒータの温度を変化させ、変化の前後において温度検出部121や温度検出部122が検出した測定対象流体の温度の差に所定の係数を乗じて特性値を算出するようにしてもよい。
【0059】
流量算出部133は、検出値取得部131が取得した検出値に基づいて、流量を算出する。このとき、流量算出部133は、物性値検出部12が算出した特性値を用いて流量を補正するようにしてもよい。また、通信部15は、制御部13において処理した情報を外部に対して無線または有線で送信し、外部から指令や設定値を無線または有線で受信し制御部13に伝達する。なお、外部から受信された設定値には、記憶部14の補正テーブル141に保持されるデータが含まれる。補正テーブル141には、例えば、後述するように、算出された脈動流の周波数(脈動周波数)に応じた流量補正値が格納される。
【0060】
ところで、従来の流量算出部133では、(1)式で得られるΔV式に基づき、流体の体積流量(L/min)が算出される。配管等に脈動が発生する場合には、図1および図2に示す主流路部2を流れる流体の流量が脈動の影響を受けて変化することになる。
【0061】
図9には、主流路部2を流れる流体の流量を一定(2[L/min])に保った状態で、主流路部2に対して脈動を加えた場合におけるセンサ出力値(流量値)の変動を示す図が例示される。図9において、実線で示されるグラフg1には脈動を与えない場合のセンサ出力値の推移が例示される。同様にして、破線で示されるグラフg2には周波数「5Hz」で変動する周期間隔の脈動を与えた場合におけるセンサ出力値の推移が例示され、細破線で示されるグラフg3には周波数「10Hz」で変動する周期間隔の脈動を与えた場合におけるセンサ出力値の推移が例示される。さらに、一点鎖線で示されるグラフg4には、周波数「20Hz」で変動する周期間隔の脈動を与えた場合におけるセンサ出力値の推移が例示される。なお、図9における縦軸は、センサ出力値として出力された流量値(L/min)を表し、横軸は時間(s)を表す。
【0062】
図9のグラフg1に示すように、脈動がない場合には、本実施例に係る流量測定装置1で測定された流量値は、相対的に所定値2(L/min)近傍で安定して推移する。しかしながら、脈動が与えられた場合には、グラフg2からグラフg4に示されるように、流量測定装置1のセンサ出力値が与えられた脈動の周波数に応じて変化することがわかる。具体的には、周波数「5Hz」の周期間隔の脈動では、センサ出力値として得られる流量値が、-6(L/min)から10(L/min)の間で変動することがわかる。同様にして、周波数「10Hz」の場合には、-1(L/min)から8(L/min)の間で変動し、周波数「20Hz」の場合には、3(L/min)から7(L/min)の間で変動することがわかる。流量測定装置1のセンサ出力値における変動幅の傾向は、脈動として与えられた周波数が低い場合には相対的に大きく、周波数が高い場合には相対的に小さくなることがわかる。また、グラフg2からグラフg4におけるセンサ出力値(流量値)の最大値および最小値を平均値とすると、当該平均値は周波数の高さに応じて、+側にシフトしていく傾向があることがわかる。例えば、周波数「5Hz」のときに、平均値「2(L/min)」であった流量値は、周波数「10Hz」において「3.5(L/min)」にシフトし、周波数「20Hz」においては「5(L/min)」となることがわかる。
【0063】
図10は、脈動が生じた場合における流量検出装置内の温度分布を説明する図である。図10においては、図5で説明した、流量検出装置内における温度分布の模式図に相当する図が例示され、本実施例に係る流量測定装置1を流量方向に沿って観た側面断面図が例示されている。図10に示すように、本図の左側は図2に示す主流路部2において、流体が流れる上流側A5を表し、右側は流体が流れる下流側A6を表している。なお、図例の流量測定装置1では、上流側A5には上流側サーモパイル102が例示され、下流側A6には下流側サーモパイル102が例示され、上流側サーモパイル102と下流側サーモパイル102との間には、マイクロヒータ101が例示されている。上流側サーモパイル102において、上流側A5方向には当該サーモパイルの冷接点102aが位置し、下流側A6方向には温接点102bが位置する。同様にして、下流側サーモパイル102においては、上流側A5方向に当該サーモパイルの温接点102cが位置し、下流側A6方向には冷接点102dが位置する。
【0064】
また、破線で区切られた領域A1には、無風時の脈動が生じない場合のマイクロヒータ101による温度分布が、ハッチングされた楕円領域A1aにより例示されている。同様にして、領域A2には、無風時の脈動が生じた場合のマイクロヒータ101による温度分布がハッチングされた楕円領域A2a、A2bにより例示されている。また、領域A3には、風が有り、脈動が生じない場合のマイクロヒータ101による温度分布がハッチングされた楕円領域A3aにより例示されている。領域A4には、風が有り、脈動が生じた場合のマイクロヒータ101による温度分布がハッチングされた楕円領域A4a、A4bにより例示されている。
【0065】
無風かつ脈動が存在しない場合には、図10の楕円領域A1aに示すように、マイクロヒータ101の周囲の温度分布はほぼ均等に分布することになる。無風時において、脈動が存在するときには、領域A2の楕円領域A2aおよびA2bに示すように、脈動による負圧変動および正圧変動に応じて温度分布が上流側A5および下流側A6にシフトすることが推定される。すなわち、脈動による圧力変動が負圧の場合には、マイクロヒータ101近傍に均等に形成された温度分布が上流側A5に移動し、圧力変動が正圧の場合にはマイクロヒータ101近傍に均等に形成された温度分布が下流側A6に移動することが推定される。このため、負圧時には、上流側サーモパイル102の上流側A5に位置する温接点102bが、正圧時には下流側サーモパイル102の上流側A5に位置する温接点102cが、脈動による温度分布の変動を検知することになりと推定される。この結果、流量測定装置1のセンサ出力値の変動幅は、脈動の周波数に依存して変化するものと推定される。
【0066】
次に、主流路部2内に流体の移動(風)があるときには、脈動がない場合には領域A3の楕円領域A3aに示すように、マイクロヒータ101の周囲の温度分布は流体の移動方向側、すなわち、下流側A6に偏ることが推定される。そして、さらに脈動が生じた場合には、脈動による圧力変動が正圧のときには楕円領域A4bに示すように、下流側A6に偏った温度分布がさらに下流側に偏り、脈動による圧力変動が負圧のときには、楕円領域A4aに示すように、下流側A6に偏った温度分布がやや上流側A5に移動するものの、相対的には下流側サーモパイル102近傍に形成されることになる。この、主流路部2内に流体の移動(風)があるときの、脈動による圧力変動が生じたときの温度分布の偏りは、当該脈動の変動周期(周波数)に応じて変動位置が変化するものと推定される。つまり、脈動の周波数が高い場合には、より下流側に温度分布が偏って形成される傾向になるものと推定できる。
【0067】
図11は、脈動の周波数に対するセンサ出力値のずれ量を示す図である。図11においては、2重破線に示す脈動流がない状態に対し、所定周波数の脈動を与えた場合における真値からのずれ量がグラフg5に例示されている。ここで、真値に対するずれ量は、例えば、図9の主流路部2を流れる流体の流量を一定(2[L/min])に保った状態で、主流路部2に対して脈動を加えた場合におけるセンサ出力値(流量値)の平均により求められる。
【0068】
図11のグラフg5に示すように、脈動の周波数が低い場合には、真値に対するずれ量が相対的に小さい。例えば、脈動の周波数が5(Hz)の場合には、真値(2(L/min))とのずれ量が約1(L/min)であるのに対し、当該周波数が10(Hz)のときには約2(L/min)となり、周波数が20(Hz)においては約3(L/min)に増大することがわかる。
【0069】
本実施形態に係る流量測定装置1においては、上述した脈動の変動周期(周波数)に依存した、流量の測定誤差を抑制するため、マイクロヒータ101の加熱期間中にサンプリングされたセンサ出力値に基づいて、脈動の周波数を特定する。そして、本流量測定装置は、特定された脈動周波数に応じて、センサ出力値のズレ量を補正する。本実施形態に係る流量測定装置1によれば、配管等に流れる測定対象の流体が周囲の振動やポンプ等の影響により脈動流になる場合であっても、より精度を高めた流量測定が可能になる。
【0070】
図12は、脈動の周波数を測定するためのサンプリング周期を説明する図である。図12においては、脈動流が生じた場合における脈動流量の推移を示すグラフが例示される。なお、図12の縦軸は正規化された流量を表し、横軸は正規化された周期間隔を表す。
【0071】
図12において、(a)には、脈動の周期とサンプリング周期が同期し、脈動によって変化する流量の0値近傍を常にサンプリングした場合のグラフが例示される。また、(b)においては、脈動の周期とサンプリング周期が同期し、脈動によって変化する流量の最大値近傍を常にサンプリングした場合のグラフが例示される。図12(a)に示すように、サンプリング周期が脈動周期と同期し、脈動によって変化する流量の0値近傍が常にサンプリングされる場合には、平均値は「0」となり、脈動の周期がサンプリング周期と同期しているか否かが不明である。また、図12(b)に示すように、サンプリング周期が脈動周期と同期し、脈動によって変化する流量の最大値近傍が常にサンプリングされる場合においいても、平均値は「max値」となるため、流量値が真値(0値)とは異なるものの、やはり脈動の周波数がサンプリング周期と同期しているか否かが不明である。
【0072】
したがって、測定対象の流体に生じた脈動流の変動する周波数を特定するためには、図12(c)に示すように、脈動の周期とサンプリング周期は非同期である必要がある。そして、脈動の周期と非同期のサンプリング周期で計測された流量値の平均値を演算することにより、最終的には真値(例えば、「0値」)に収束することになる。
【0073】
熱式の流量測定装置においては、脈動の周波数を測定するためのサンプリング時期がマイクロヒータ101の加熱期間(ヒータON期間)に限定される。このため、本実施形態に係る流量測定装置1では、限られたサンプリング期間で計測される脈動流の周波数精度を向上させるため、サンプリング方法としてゼロクロス法を採用する。
【0074】
図13は、本実施形態で処理されるゼロクロス法による周波数特定を説明するための図である。図13のグラフg6に示すように、脈動が生じた流量の変化に対し、計測点[1]に示すようにサンプリングされた計測点の中から基準となる計測値を決定する(基準点)。ここで、基準点の選定は任意である。そして、基準点となる計測値と同じ値の計測点[
m]が得られた時に、基準点[1]と計測点[m]との時間差から脈動に関する周波数を特定
するようにすればよい。このゼロクロス法を用いることで、限られたサンプリング期間の中で、測定対象の流体に生じた脈動流の周波数を特定することが可能になる。
【0075】
図14は、流量測定装置1の加熱期間における流量値のサンプリングを説明する図である。図14において、脈動が生じた流体における流量値の推移はグラフg7で表され、流量測定装置1におけるヒータの加熱期間はグラフg8で表されている。なお、縦軸は流量値を表し、横軸は時間を表す。図14に示すように、ゼロクロス法においては、脈動周波数を特定するためのサンプリング間隔が、当該周波数の検知精度に影響するためのパラメータの一つになる。すなわち、図12(a)、(b)に示すように、周波数が不明な脈動に対して同期するサンプリング周期では、正しい平均流量値が取得できない。また、流量測定装置1が内蔵するメモリ容量には限りがあるため、脈動周波数を特定するために記憶可能な流量値のサンプル数は限定される。本実施形態においては、流量値を取得するための取得間隔を少しずつ変更し、予め用意されたメモリ容量に格納可能なデータ数で脈動流の1周期以上の周期を特定する。このような周期として、例えば、脈動流の変動周期に対して、1.5周期程度のサンプル数を取得できることが望ましい。
【0076】
<流量測定処理>
図15は、本流量測定装置における流量測定処理の一例を示すフローチャートである。本フローは、流量測定装置1の回路基板5に備えられたCPU等のプロセッサ(図示せず)から、流量検出部11、物性値検出部12、制御部13に指令を発信することで実行される。本フローの処理が実行されると、ステップS101においては、脈動流の周波数が検知される。脈動流の周波数の検知に関し、具体的な処理の詳細は、図16のフローチャートに例示される。
【0077】
図16のステップS101の詳細を示すフローチャートにおいて、まず、ステップS111では、流量検出部11の加熱部113がONされるタイミングを契機として、制御部13に対して、検出値取得部131の、流量検出部11が出力する流体の流量に応じた検出値を取得するための測定間隔(サンプリング周期)に初期値をセットすると、処理はステップS112に進む。ここで、サンプリング周期の初期値は、例えば、加熱部113の加熱期間と、予め用意されたメモリ容量に格納可能なデータ数とにより設定される値である。但し、サンプリング周期の初期値は、流量測定装置1の構成、性能、流量の測定対象になる流体の物性等に応じて任意に設定することが可能である。
【0078】
ステップS112において、設定された初期値の測定間隔で複数回の測定が行われる。ここで、複数回の測定とは、加熱期間において、脈動する流体の周波数(脈動周波数)を計測するための周期間隔条件を決定するための予め定められたサンプリング数(複数回)である。流量検出部11から出力された、流体の流量に応じた検出値が所定数(複数回)取得されると、処理はステップS113に進む。ステップS113においては、測定対象の流体に生じた脈動周波数の計測を開始するためのスタートフラグ値がリセットされると、処理がステップS114に進む。
【0079】
ステップS114においては、メモリに格納されたデータ(n個)の読込みが行われると、処理がステップS115に進む。ステップS115においては、スタートフラグ値が「1」であるか否(リセット値)かが判定される。ステップS115において、スタートフラグ値が「1」の場合には(ステップS115、“Yes”)、処理がステップS116に進み、そうでない場合には(ステップS115、“No”)、処理がステップS117に進む。
【0080】
ステップS116においては、メモリに格納された測定データが、ゼロクロス法による脈動の周波数を特定するためのエンド条件に合致するか否かが判定される。すなわち、図13に示すように、サンプリング測定されたデータの中に、基準点、および、当該基準点と同じ流量値を示す他の計測点があるか否かが判定される。ステップS116において、サンプリング測定されたデータの中に、基準点、および、当該基準点と同じ流量値を示す他の計測点がある場合には、エンド条件に合致すると判定し(ステップS116、“Yes”)、処理がステップS122に進む。そうでない場合には、エンド条件に合致しないと判定し(ステップS116、“No”)、処理がステップS119に進む。
【0081】
ステップS117においては、図13で説明したように、メモリに格納された測定データが、ゼロクロス法による脈動の周波数を計測するための開始条件(スタート条件)に合致しているか否かが判定される。すなわち、図12(a)、(b)に示すように、測定間隔と脈動の周期とが合致する場合には粗同じ流量値が連続的に測定されることになる。また、測定間隔と脈動の周期とが合致せずに適宜の測定間隔(ゼロクロス法を用いた脈動周波数の特定が可能な測定間隔)の場合には、図12(c)や図14に示すように、サンプリング順に連続して増加または減少する流量値が得られることになる。したがって、ステップS117においては、複数に計測された流量値(測定データ)の中に、上記サンプリング順に連続して増加または減少する複数の流量値が存在するか否かを判定する。なお、サンプリング順に連続して増加または減少する流量値のデータ数は、3個以上であることが望ましい。ステップS117において、複数に計測された流量値の中に、サンプリング順に連続して増加または減少する流量値のデータ数が所定数(3個以上)に存在する場合には(ステップS117、“Yes”)、スタート条件に合致していると判断し、処理がステップS118に進む。そうでない場合には(ステップS117、“No”)、処理がステップS119に進む。
【0082】
ステップS118においては、測定対象の流体に生じた脈動周波数の計測を開始するた
めのスタートフラグ値がセットされると、処理がステップS119に進む。ステップS119では、データ数(n)がインクリメントされて、処理がステップS120に進む。ステップS120においては、インクリメントされたデータ数がメモリに格納可能なデータ数であることを示す最終格納データか否かが判断される。メモリに格納可能なデータ数は予め定められる。ステップS120において、最終格納データである場合には(ステップS120、“Yes”)、処理がステップS121に進む。そうでない場合には(ステップS120、“No”)、処理はステップS114に戻る。
【0083】
ステップS121では、脈動する流体の周波数(脈動周波数)を計測するための測定間隔が更新されると処理は、ステップS112に進む。測定間隔の更新ステップは、任意に設定可能である。測定間隔の更新により、当該測定間隔が狭まるように(高周波数方向)、あるいは、広がるように(低周波数方向)更新される。更新後のステップS112においては、更新ステップによって更新された測定間隔に従って、流量値の測定が行われる。
【0084】
ステップS122においては、対象流体に生じた脈動の波数がインクリメントされると、処理はステップS123に進む。ステップS123においては、ゼロクロス法を用いた脈動の周波数を特定するために予め定められた「N波数」分の測定が完了したか否かが判定される。ここで、対象流体に生じた脈動の周波数を特定するための「N波数」は、任意に設定可能である。但し、図14において説明したように、少なくとも、対象流体に生じた脈動の1.5周期に相当する波数に対して計測されることが望ましい。ステップS123において、N波数分の測定が完了した場合には(ステップS123、“Yes”)、処理はステップS124に進む。そうでない場合には(ステップS123、“No”)、処理がステップS112に戻る。
【0085】
ステップS124においては、測定されたデータの中の、基準点および基準点と同じ流量値を示す他の計測点との間の時間差に基づいて、測定対象の流体に生じた脈動の平均周波数が算出される。脈動の平均周波数は、N波数分の測定で取得された時間差の平均によって算出される。なお、ステップS124においては、脈動の周波数として予め設定された最大周波数未満であることを条件として、平均周波数を算出するとしてもよい。このような最大周波数は、例えば、主流路部2の管径や測定対象になる流体の物性等に応じて任意に設定することが可能である。また、例えば、所定数の周期内(例えば、10周期内等)において、測定データから算出された周波数の最大値と最小値の比が所定倍数(例えば、1.2倍等)であることを条件として、平均周波数の算出を行うとしてもよい。計測対象の流体に生じた脈動周波数の検知精度を高めることが可能になる。ステップS124の終了後、本ルーチンを終了し、処理は図15に示すステップS102に進む。
【0086】
図15に戻り、ステップS102においては、ステップS124で算出された平均周波数に基づいて、測定対象の流体に対する最適な流量サンプリング時間を算出すると処理はステップS103に進む。プロセッサは、例えば、算出されたサンプリング時間を、検出値取得部131の、流量検出部11が出力する流体の流量に応じた検出値を取得するための測定間隔に設定する。ステップS103においては、設定されたサンプリング時間で流量に応じた検出値が取得され、当該検出値に基づいて測定対象の流量の平均値が算出される。そして、ステップS104では、ステップS101で算出された脈動周波数に応じて、ステップS103で算出された平均値に対する流量補正が実施される。例えば、図11に示すように、測定対象の流体に生じた脈動の周波数に応じた、真値に対するずれ量を流量補正値として補正テーブル141に保持する。そして、ステップS101で算出された脈動周波数に対応する流量補正値を補正テーブル141から取得し、ステップS103で算出された流量値の平均値を補正するようにすればよい。ステップS104の処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。
【0087】
図17に、本実施形態に係る流量測定処理によって計測された脈動周波数の測定結果の一例を例示する。脈動周波数の計測においては、測定対象の流体に対してテスト周波数(5.0Hz、10.0Hz、15.0Hz、20.0Hz)で示される周期の脈動を与えた。計測された脈動周波数は「判定周波数」として例示されている。なお、脈動周波数の測定においては、図16に示すフローにおける「N」を「10」として、10回測定の平均値で周波数を算出した。図17の判定周波数に示すように、テスト周波数が「5.0Hz」では「5.07Hz」が算出され、「10.0Hz」では「10.10Hz」、「15.0Hz」では「15.03Hz」、「20.0Hz」は「20.53Hz」が算出された。各テスト周波数に対する判定周波数の誤差[%]は、それぞれ順に、「1.4%」、「1.0%」、「0.2%」、「2.7%」となり、概ね良好な周波数精度が得られた。
【0088】
以上のように、本実施例においては、流量検出部11から出力される流体の流量に応じた検出値から、当該流体に生じた脈動による流量変動の周波数を求めるように構成した。具体的には、計測されたデータが、所定の条件を満たさない場合には、検出値を取得する際のサンプリング周期の間隔を所定の更新ステップで更新しながらサンプリングを複数に繰り返す。そして、所定の条件が満たされた計測データに対して、ゼロクロス法を適用して、脈動による流量変動の周波数を算出することとした。これにより、加熱期間が限られた熱式の流量測定装置であっても、数少ないデータサンプル数に基づいて、測定対象の流体に生じた脈動の周波数を精度よく検知することが可能になる。
【0089】
また、測定対象の流体に脈動が生じる場合には、脈動の変動周期(周波数)に対応して、流量値の真値に対するずれ量が変化する。このずれ量は、脈動の周波数が低い場合には、相対的に小さく、周波数の増加に伴って増加する傾向にある。本実施形態に係る流量測定装置1においては、脈動の周波数に応じた、真値に対するずれ量を流量補正値として補正テーブル141に保持できる。そして、検知された脈動周波数に対応するずれ量を補正テーブル141から取得し、測定された流量値に対して補正することが可能になる。本実施形態によれば、脈動が生じた場合であっても、より精度を高めた流量測定装置が提供できる。
【0090】
〔実施例2〕
次に、実施例2として、実施例1に係る流量測定装置が組み込まれたガスメータ及び、流量測定装置ユニットについて説明する。本実施例は、実施例1に係る流量測定装置1を、ガスの使用量測定のためのガスメータに組み込んだ例である。図18は、流量測定装置1が組み込まれたガスメータ150の機能構成の一例を示すブロック図である。ガスメータ150は、流量測定装置1の他、表示部151、電源部152、操作部153、振動検出部154、遮断部155、統合制御部としてのガスメータ制御部156、ガスメータ記憶部157、ガスメータ通信部158を備えている。なお、操作部153を除き、これらの構成は筐体150b内に収納されている。
【0091】
ここで、表示部151は、流量測定装置1によって測定・出力された流量(熱量流量(J/min)、体積流量(l/min)、または両方)に基づくガス使用量の他、日付、遮断処理の有無(後述)等が表示されるディスプレイであり、液晶表示板等が用いられてもよい。電源部152は、流量測定装置1及び、ガスメータ150の他の構成に対して電力を供給する部分で、アルカリ電池等のバッテリーで構成されてもよい。操作部153は、ガスメータ150の外部に設けられており、ガス契約者または検針者等が操作する部分である。例えば、ガスメータ150のリセット、時刻調整、表示・出力する流量(熱量流量か体積流量か、あるいは両方か)の切換、後述する遮断状態の解除等の操作を行うことが可能としてもよい。
【0092】
振動検出部154は、例えば加速度センサ(不図示)等を含み、ガスメータ150自身の振動を検出する。遮断部155は、ソレノイド等のアクチュエータと主流路部2を閉塞するバルブを有し、振動検出部154において閾値以上の振動が検出された場合には、地震が発生したと判断して主流路部2を通過するガスを遮断する。ガスメータ制御部156は、流量測定装置1、表示部151、電源部152、操作部153、振動検出部154、遮断部155、ガスメータ記憶部157、ガスメータ通信部158と電気的に接続されており、各部の制御を行う。例えば、操作部153からの入力情報を受信し、入力情報に応じた指令を各部に送信する。また、振動検出部154において閾値以上の加速度信号が検出された場合には、遮断部155に遮断信号を送信する。ガスメータ記憶部157は、流量測定装置1や、振動検出部154からの出力を時系列で所定の期間に亘り記憶する部分であり、SRAMやDRAM等のメモリ素子により構成されてもよい。ガスメータ通信部158は、ガスメータ制御部156で処理する各情報を外部へ無線または有線で送信可能であり、外部からの指令や設定値を受信してガスメータ制御部156に伝達する。また、流量測定装置1が有する通信部15と通信することで、流量測定装置1の制御部13で処理する情報を受信し、また、流量測定装置1に対する制御信号や設定値を送信するようにしてもよい。
【0093】
なお、ガスメータ150の構成のうち、例えば、流量測定装置1、表示部151、電源部152、振動検出部154、ガスメータ制御部156、ガスメータ記憶部157、ガスメータ通信部158をユニット化し、この流量測定装置ユニット150aに、操作部153、遮断部155を電気的に接続して、筐体150b内に組み込むことで、ガスメータ150を構成可能にしておいてもよい。このようにすることで、より効率的にガスメータ150を製造することが可能である。
【0094】
なお、本実施例において、ガスメータ150、流量測定装置ユニット150aに属する構成は一例であり、ガスメータ150の機能や、製造上の条件に応じて変更が可能である。また、本発明に係る流量測定装置は、上記の実施例で示した構成には限定されない。上記の実施例の構成は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【0095】
また、上記の実施例においては、流量測定装置1では、流量検出部11の温度検出部111、112の検出値を用いた脈動周波数に対応する補正処理を説明したが、これを物性値検出部12からの検出値としても略同様の内容が成立する。なお、流量測定装置1は、流量検出部11、物性値検出部12の何れか一方の構成のみを含む形態であってもよい。
【0096】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
主流路(2)を流れる測定対象流体の流量を検出する流量測定装置(1)であって、
測定対象流体を加熱する加熱部(113)と、
前記測定対象流体の温度を検出する温度検出部(111、112)と、
前記温度検出部による検出値に基づいて、前記主流路を流れる測定対象流体の流量が周期的に変動する脈動に関する脈動周波数を検知するとともに、前記検知された脈動周波数に応じて前記主流路を流れる測定対象流体の流量を補正する流量補正部(133)と、
を備えることを特徴とする、流量測定装置。
<発明2>
前記流量補正部(133)は、
前記主流路を流れる測定対象流体の流量の変動に関する変動周期とは異なる周期間隔で前記温度検出部による検出値を取得するとともに、少なくとも、前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中から同じ検出値になる2つの検出値間の時間差分に基づいて
、前記脈動周波数を検知することを特徴とする、発明1に記載の流量測定装置。
<発明3>
前記流量補正部(133)は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の数量が所定の条件を満たさないときには、前記周期間隔を変更することを特徴とする、発明2に記載の流量測定装置。
<発明4>
前記流量補正部(133)は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列における変動幅が所定の範囲内であるときには、前記周期間隔を変更することを特徴とする、発明2または3に記載の流量測定装置。
<発明5>
前記流量補正部(133)は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中に、連続して増加または減少変動する検出値群が存在しないときには、前記周期間隔を変更することを特徴とする、発明4に記載の流量測定装置。
<発明6>
前記流量補正部(133)は、
前記異なる周期間隔で取得された検出値の時系列の中に、連続して増加または減少変動する検出値群が存在するときには、前記周期間隔を用いた検出値の取得を所定回数に実行することを特徴とする、発明5に記載の流量測定装置。
<発明7>
発明1から6のいずれか一項に記載の流量測定装置(1)と、
前記流量補正部により補正された流量を表示する表示部(151)と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部(156)と、
を備える、流量測定装置ユニット(150a)。
<発明8>
発明1から7のいずれか一項に記載の流量測定装置(1)と、
前記流量測定装置により測定した流量を表示する表示部(151)と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部(156)と、
前記流量測定装置(1)、表示部(151)及び、統合制御部(156)に電力を供給する電源部(152)と、
前記流量測定装置(1)、表示部(151)及び、統合制御部(156)を収納可能な筐体(150b)と、
前記筐体(150b)の外部から前記流量測定装置の作動に関する設定が可能な操作部(153)と、
を備える、ガスメータ(150)。
【符号の説明】
【0097】
1 :流量測定装置
11 :流量検出部
111 :温度検出部
112 :温度検出部
113 :加熱部
12 :物性値検出部
121 :温度検出部
122 :温度検出部
123 :加熱部
13 :制御部
131 :検出値取得部
132 :特性値算出部
133 :流量算出部
14 :記憶部
141 :補正テーブル
15 :通信部
2 :主流路部
21 :オリフィス
3 :副流路部
32 :物性値検出用流路
33 :流量検出用流路
34 :流入用流路
35 :流出用流路
4 :シール
5 :回路基板
6 :カバー
100 :センサ素子
101 :マイクロヒータ
102 :サーモパイル
103 :絶縁薄膜
104 :シリコン基台
105 :キャビティ
150 :ガスメータ
150a :流量測定装置ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路を流れる測定対象流体の流量を検出する流量測定装置であって、
前記測定対象流体を加熱する加熱部と、
前記測定対象流体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部による検出値に基づいて、前記流路を流れる測定対象流体の流量が周期的に変動する脈動に関する脈動周波数を検知するとともに、前記検知された脈動周波数に応じて前記流路を流れる測定対象流体の流量を補正する流量補正部と、を備え、
前記流量補正部は、前記脈動周波数を検知する処理の過程において、
前記流路を流れる測定対象流体の流量に対して任意の周期間隔で前記温度検出部による検出値を取得する工程と、
取得された前記検出値の読込み数を増加させつつ、前記検出値の時系列における変動幅が所定の範囲を超えて増加または減少変動する連続した所定数以上の検出値群を検出する工程と、
前記検出値群が検出された場合に、さらに前記検出値の読込み数を増加させ、前記検出値の時系列の中で、同じ値を示す検出値が存在するか否かを判定する工程と、
前記検出値の時系列の中で、同じ値を示す検出値が存在する場合に、該同じ値を示す検出値間の時間差に基づいて前記脈動周波数を検知する工程と、
前記検出値の読込み数が所定の最終格納データに到達したときには、前記検出値の周期間隔を変更して、前記温度検出部による検出値を取得する工程に戻る工程と、
を実行することを特徴とする、流量測定装置。
【請求項2】
流路を流れる測定対象流体の流量を検出する流量測定装置であって、
前記測定対象流体を加熱する加熱部と、
前記測定対象流体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部による検出値に基づいて、前記流路を流れる測定対象流体の流量が周期的に変動する脈動に関する脈動周波数を検知するとともに、前記検知された脈動周波数に応じて前記流路を流れる測定対象流体の流量を補正する流量補正部と、を備え、
前記流量補正部は、
前記流路を流れる測定対象流体の流量に対して任意の周期間隔で前記温度検出部による検出値を取得する(S112)とともに、
前記検出値を読込み(S114)、前記検出値の時系列における変動幅が所定の範囲を超えて増加または減少変動する連続した所定数以上の検出値群が存在するか否かの開始条件を判定し(S117)、前記検出値の読込み数を増加させ(S119)、前記検出値の読込み数が、所定の最終格納データに達したか否か判定し(S120)、前記検出値の読込み数が、所定の最終格納データ未満の場合には、再度前記検出値を読込む(S120、S114)という、処理ルーチンを、繰り返し実行可能であり、
前記流量補正部は、
前記処理ルーチンにおいて、
前記開始条件が成立する場合には(S115)、少なくとも、前記任意の周期間隔で取得された検出値の時系列の中から同じ検出値が存在するか否かの終了条件を判定する(S116)とともに、
前記終了条件が成立する場合(S116)には、前記2つの検出値間の時間差分に基づいて、前記脈動周波数を検知する処理を行い、
前記終了条件が成立しない場合(S116)には、前記検出値の読込み数を増加させる処理(S119)から、前記処理ルーチンに戻り、
前記流量補正部は、
前記処理ルーチンにおいて、
前記開始条件が成立しない場合には(S115)、前記検出値の読込み数を増加させる処理(S119)から、前記処理ルーチンを継続し、
前記処理ルーチンにおいて、
前記検出値の読込み数が、所定の最終格納データに達したと判定した場合(S120)には、前記検出値の周期間隔を変更して(S121)、前記温度検出部による検出値を取得し(S114)、前記処理ルーチンを開始する、
ことを特徴とする、流量測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流量測定装置と、
前記流量補正部により補正された流量を表示する表示部と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部と、
を備える、流量測定装置ユニット。
【請求項4】
請求項1または2に記載の流量測定装置と、
前記流量測定装置により測定した流量を表示する表示部と、
前記流量測定装置及び前記表示部を制御する統合制御部と、
前記流量測定装置、表示部及び、統合制御部に電力を供給する電源部と、
前記流量測定装置、表示部及び、統合制御部を収納可能な筐体と、
前記筐体の外部から前記流量測定装置の作動に関する設定が可能な操作部と、
を備える、ガスメータ。