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特開2024-169455多発性骨髄腫におけるMタンパク質反応の臨床評価
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169455
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫におけるMタンパク質反応の臨床評価
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20241128BHJP
   C07K 16/42 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/13
C07K16/42
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024157490
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2023129240の分割
【原出願日】2017-03-03
(31)【優先権主張番号】16158714.2
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヘルトレ,シュテファン
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、治療抗体と内因性抗体とを区別でき、SPEPおよびIFEの際の治療抗体がもたらす干渉を回避できる抗体を提供することである。
【解決手段】本発明は、ヒトアルブミンに融合した抗イディオタイプ抗体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD38抗体に特異的であるモノクローナル抗イディオタイプ抗体の鎖をコードする核酸であって、前記抗CD38抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)、および配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)を含み、
前記モノクローナル抗イディオタイプ抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR3を含むVH鎖、および 配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR3を含むVL鎖を含む、核酸。
【請求項2】
前記モノクローナル抗イディオタイプ抗体が、配列番号16のアミノ酸配列を含む可変重鎖、および配列番号17のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記モノクローナル抗イディオタイプ抗体が、IgGである、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
前記モノクローナル抗イディオタイプ抗体が、IgMである、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
VHをコードし、配列番号4の配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
配列番号4の配列からなる、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
配列番号26の配列からなる、請求項5に記載の核酸。
【請求項8】
VLをコードし、配列番号5の配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項9】
配列番号5の配列からなる、請求項8に記載の核酸。
【請求項10】
配列番号27の配列からなる、請求項8にに記載の核酸。
【請求項11】
VLをコードし、配列番号5の配列を含む核酸をさらに含む、請求項5に記載の核酸。
【請求項12】
VHをコードする核酸が、配列番4の配列からなり、VLをコードする核酸が、配列番号5の配列からなる、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
VHをコードする核酸が、配列番号26の配列からなり、VLをコードする核酸が、配列番号27の配列からなる、請求項11に記載の核酸。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多発性骨髄腫(MM)は、悪性形質細胞のクローン増殖に関わる血液癌である。MMは、米国において、最も一般的な悪性形質細胞腫瘍であり、2番目に一般的な血液悪性腫瘍である。米国での年齢調整発生率は、100,000人あたり5.5患者であり、年間発生率は、英国において100,000人あたりおよそ6から7人に達する。
【0002】
形質細胞は、免疫グロブリン(ガンマグロブリンとも呼ばれる)を生成し、これは、共に結合する重鎖(IgG、IgA、IgM、IgD、またはIgE)および軽鎖(カッパまたはラムダ)からなる。一血漿細胞が、免疫グロブリンの一タイプ(例えば、IgAカッパまたはIgGカッパ)を生成する。通常、体は、種々の異なる形質細胞を含有する(「ポリクローナル」)ので、血清中の免疫グロブリンもまた、広範囲の様々なフォーマットおよび特異性を表す(ポリクローナル)。多発性骨髄腫の場合、悪性細胞は、1つのみまたは別個の少数のみの形質細胞のコピーであり、当該細胞によって分泌される免疫グロブリンは、モノクローナルであるとみなされる。
【0003】
このモノクローナル免疫グロブリンは、Mタンパク質またはパラプロテインと呼ばれ、重鎖(ほとんどはIgGまたはIgAであるが、IgM、IgD、またはIgEもある)および軽鎖(カッパまたはラムダ)または当該免疫グロブリンの切断型(truncated)形態からなってもよい。血清中のMタンパク質の増大は、B細胞悪性腫瘍、例えばMMを同定するのに用いられる。
【0004】
現在、複数の病期分類系が、多発性骨髄腫における反応の診断およびモニタリングに用いられている:a)Durie and Salmon Staging System、(b)国際病期分類(International Staging System;ISS)および国際骨髄腫作業部会(International Myeloma Working Group;IMWG)。Durie and Salmon staging systemは、腫瘍細胞の質量、高い血清免疫グロブリン(Ig)Gのレベル、末端器官の損傷、および溶骨性骨病変を評価する特徴を包含する。ISSは、β2-ミクログロブリンレベルおよび血清アルブミンレベルに基づいて、疾病負荷により重点を置いている。IMWGは、分子の異常および細胞遺伝学的異常の双方を考慮しており、詳細には、経時的なMタンパク質の引下げが、最も重要な要因の1つであり、疾患の進行および処置の成功を評価するのに用いられている。
【0005】
多発性骨髄腫に特有のタンパク質発現として、モノクローナル(M)タンパク質濃度(IgG、IgA、IgA、IgD)、軽鎖濃度(カッパ[κ]およびラムダ[λ]が挙げられる)、異常β2-ミクログロブリン、血清アルブミン、クレアチニン、およびヘモグロビンのレベルの増大、ならびに(5%以上の)骨髄形質細胞の発見が挙げられる。患者によって生成されるタンパク質(例えばMタンパク質)発現の測定は、多数の方法によって達成され得る。Mタンパク質を測定する試験として、24時間の蓄尿試験、尿タンパク質電気泳動(UPEP)、血清タンパク質電気泳動(SPEP)、免疫固定電気泳動(IFE)、および血清遊離軽鎖(sFLC)アッセイがある。
【0006】
CD38は、悪性形質細胞および他のリンパ球上に発現される抗原の例であるので、多発性骨髄腫および他の免疫グロブリン血症の処置における治療標的を代表する。CD38に起因する機能として、接着およびシグナル伝達事象におけるレセプタ媒介、ならびに(エクト型)酵素活性が挙げられる。エクト酵素として、CD38は、環状ADPリボース(cADPR)およびADPRの、またニコチンアミドおよびニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(NAADP)の形成のための基質として、NAD+を用いる。cADPRおよびNAADPは、Ca2+動員用の二次メッセンジャとして機能することが示されてきた。NAD+をcADPRに変換することによって、CD38は、細胞外NAD+濃度を調節し、それゆえに、NAD誘導細胞死(NCID)の調節によって、細胞生存を調節する。Ca2+を介したシグナル伝達に加えて、CD38シグナル伝達は、T細胞およびB細胞上の抗原レセプタ複合体、または他のタイプのレセプタ複合体、例えばMHC分子とのクロストークを介して起こり、このようにして、いくつかの細胞反応に、またIgGのスイッチングおよび分泌にも関与する。
【0007】
CD38に特異的な抗体が、多発性骨髄腫の処置用に開発中である。CD38に特異的な抗体が、国際公開第1999/62526号パンフレット(Mayo Foundation);国際公開第200206347号パンフレット(Crucell Holland);米国特許出願公開第2002164788号明細書(Jonathan Ellis)(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第2005/103083号パンフレット(MorphoSys AG)、米国特許出願第10/588,568号明細書(その全体が参照によって組み込まれる)、国際公開第2006/125640号パンフレット(MorphoSys AG)、米国特許出願第11/920,830号明細書(その全体が参照によって組み込まれる)、および国際公開第2007/042309号パンフレット(MorphoSys AG)、米国特許出願第12/089,806号明細書(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第2006099875号パンフレット(Genmab)、米国特許出願第11/886,932号明細書(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第2011154453A1号パンフレット(Genmab)、米国特許出願第13/702,857号明細書(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第08/047242号パンフレット(Sanofi-Aventis)、米国特許出願第12/441,466号明細書(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第2015066450号パンフレット(Sanofi)、米国特許出願第14/529,719号明細書(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第2012092616A1号パンフレットおよび国際公開第2012092612A1号パンフレット(武田薬品工業)、米国特許出願第13/341,860号明細書および米国特許出願第13/977,207号明細書(双方ともそれらの全体が参照によって組み込まれる)、ならびに国際公開第2014178820A1号パンフレット(Teva)に記載されている。
【0008】
MM患者における抗CD38抗体による処置は、多発性骨髄腫細胞によって生成されるMタンパク質の部分的な、または完全なクリアランスをもたらすことができる。血清タンパク質電気泳動(SPEP)および免疫固定電気泳動(IFE)は双方とも、多発性骨髄腫の患者において、モノクローナルタンパク質を同定し、かつその免疫型を特定するのに用いられる必須のアッセイである。最近の研究は、多発性骨髄腫の処置用に開発中の特定の治療抗体が、血清IFE上で容易に検出され、かつMタンパク質レベルの検出およびモニタリングに干渉し得ることを実証した(McCudden et al.,Clinical Chemistry,56:12;1897-1904(2010)、また、Genzen et al.,British Journal of Haematology (2011)155(1)123-125も参照)。McCuddenらは、抗薬物抗体を伴うシルツキシマブ(抗IL-6抗体)とのインキュベーションにより、治療抗体シルツキシマブが内在性Mタンパク質から区別され得るように薬物電気泳動パターンがシフトされることを観察した。Janssenもまた、最近、類似のアプローチを用いて、IFEにおけるMタンパク質に対するダラツムマブの干渉を軽減するための臨床アッセイの開発を発表しており、これは、ビオチンタグまたはAlexa-fluorタグで理想的に標識されたマウス抗ダラツムマブ抗体を利用して、IFE上で複合体をシフトさせたものである。Axel,et al.,Development of a Clinical Assay to Mitigate Daratumumab,an IgG1k Monoclonal Antibody,Interference with Serum Immunofixation and Clinical Assessement of M-protein Response in Multiple Myeloma Poster Presented at the 105th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research(AACR),April 5-9,2014,San Diego,California,USA;また、van de Donk et al.,Monoclonal antibodies targeting CD38 in hematological malignancies and beyond,Immunological Reviews,270:95-112(2016)も参照。
【0009】
しかしながら、これらのアプローチが、全ての治療抗体にとって十分であるというわけではない。国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準を満たす有効な臨床反応の記載を保証するために、SPEPおよびIFEに対するこの潜在的干渉を回避するような、各治療抗体に特異的な新規の軽減戦略が必要である。
【発明の概要】
【0010】
出願人は、本明細書中で、MOR202に対する抗イディオタイプ抗体を開示しており、これは、ヒトアルブミンに融合した場合に、IFEにおいて抗体をシフトさせたので、Mタンパク質ベースの臨床評価に対するMOR202のあらゆる潜在的干渉を軽減した。
【0011】
抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体は、MOR202の臨床開発設計に組み込まれて、Mタンパク質反応の臨床評価を増強することとなる。
【0012】
一態様は、MOR202に対する抗イディオタイプ抗体である。一態様において、抗イディオタイプ抗体は、ヒトアルブミンに融合する。実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、
アミノ酸配列YSFSNYWIS(配列番号18)のHCDR1、
アミノ酸配列WMGIIDPASSKTRYSPSFQG(配列番号19)のHCDR2、
アミノ酸配列SRGAGMDY(配列番号20)のHCDR3
を含む可変重鎖、および
アミノ酸配列TGSSSNIGAGYDVH(配列番号21)のLCDR1、
アミノ酸配列LLIYADNNRPS(配列番号22)のLCDR2、
アミノ酸配列GSYDESSNSM(配列番号23)のLCDR3
を含む可変軽鎖を含む。
【0013】
一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、ヒト抗体である。
【0014】
実施形態において、抗イディオタイプ抗体融合体は、以下のアミノ酸配列
【化1】
の重鎖を含む。
【0015】
実施形態において、抗イディオタイプ抗体融合体は、以下のアミノ酸配列
【化2】
の軽鎖を含む。
【0016】
一態様が、多発性骨髄腫または他の免疫グロブリン血症の処置を経験している患者から得られた血液サンプルを評価する、以下を含む方法である
a)前記患者から血液サンプルを得ること、
b)血液サンプルを抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートすること、
c)免疫固定電気泳動(IFE)を実行すること、および
d)IFEの結果を報告すること。
【0017】
実施形態において、患者は、MOR202による処置を経験している。
【0018】
実施形態において、サンプルは、総Mタンパク質レベルについて評価される。
【0019】
一態様が、例示される抗イディオタイプ抗体または例示される抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体をコードする核酸である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、MOR202のアミノ酸配列を示す。
図2A図2Aは、MOR09292(MOR202に対する抗イディオタイプ抗体)ヒトアルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。
図2B図2Bは、MOR09292(MOR202に対する抗イディオタイプ抗体)ヒトアルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。
図3図3は、血清タンパク質電気泳動によって判定したタンパク質の分布についての典型的な標準パターンを示す。
図4図4は、モノクローナル免疫グロブリン血症として知られている障害に共通するガンマグロブリン帯域の病巣部位(focal region)において均質なスパイク様のピークを有するタンパク質の血清タンパク質電気泳動分布を示す。このピークは、均質なMタンパク質を生成する形質細胞の単一のクローンを表す。
図5図5は、健康なドナーの血清免疫固定電気泳動後のゲルの一例を示す。レーンELP=総タンパク質染色;レーンG=抗IgG染色;レーンA=抗IgA染色;レーンM=抗IgM染色;レーンK=抗カッパ染色;レーンL=抗ラムダ染色。
図6図6は、薬物無感作の健康なドナー(AおよびB)および薬物無感作のMM患者(CおよびD)由来のサンプルの血清免疫固定電気泳動を示す。MOR202でスパイクしていない、または様々な濃度にてスパイクしたサンプルを試験した(レーン1=MOR202を加えなかった;レーン2=MOR202を200μg/mLにて加えた;レーン3=MOR202を400μg/mLにて加えた;レーン4=MOR202を800μg/mLにて加えた;レーン5=MOR202を1200μg/mLにて加えた)。点線で囲んだバンドは、MOR202スパイク後にのみ可視となって、それぞれの分子を表している。矢印で標示したバンドは、内在性Mタンパク質を表す。
図7図7は、生理食塩水中MOR202+/-MOR0929 IgG1およびMOR09292 IgMのプレインキュベーションの血清免疫固定電気泳動を示す。生理食塩水中1200μg/mL(AおよびB)または560μg/mL(C)の一定濃度のMOR202を、そのイディオタイプ抗体MOR09292と共に、異なるフォーマットでプレインキュベートして、調製されたサンプルを、IFEにより分析した。A)+B):MOR202およびMOR09292 IgG1(抗IgG染色(A)および抗ラムダ染色(B)を用いた)(レーン1=MOR202;レーン2=MOR09292 IgG1 2400μg/mL;レーン3=MOR202+MOR09292 IgG1 600μg/mL;レーン4=MOR202+MOR09292 IgG1 1200μg/mL;レーン5=MOR202+MOR09292 IgG1 2400μg/mL)。C):MOR202およびMOR09292 IgM(抗IgG染色(レーン2~4)、抗ラムダ染色(レーン5~7)、および抗IgM染色(レーン8~10)を用いた)(レーン2/5/8=MOR202;レーン3/6/9=MOR09292 IgM 560μg/mL;レーン4/7/10=MOR202+MOR09292 IgM 560μg/mL;レーン1=血清サンプル中の一般的なバックグラウンドシグナリングを評価するために総タンパクについて染色した健康なドナー由来のヒト血清)。
図8図8は、生理食塩水およびヒト血清中MOR202+/-MOR09292ヒトアルブミン融合体(MOR09292-hAlb)のプレインキュベーションの血清免疫固定電気泳動を示す。生理食塩水(レーン2~3)または血清(レーン4~13)中1200μg/mLの一定濃度のMOR202を、そのイディオタイプ抗体MOR09292-hAlb有り、または無しで様々な比率にてプレインキュベートして、調製したサンプルを、IFEにより分析した(抗IgG染色(レーン2~8)または抗ラムダ染色(レーン9~13)を用いた)(レーン2=MOR202;レーン3=MOR202+MOR09292-hAlb 2400μg/mL;レーン4=MOR202;レーン5=MOR202+MOR09292-hAlb 1200μg/mL;レーン6=MOR202+MOR09292-hAlb 1800μg/mL;レーン7=MOR202+MOR09292-hAlb 2400μg/mL;レーン8=MOR202+MOR09292-hAlb 3600μg/mL;レーン9=MOR202;レーン10=MOR202+MOR09292-hAlb 1200μg/mL;レーン11=MOR202+MOR09292-hAlb 1800μg/mL;レーン12=MOR202+MOR09292-hAlb 2400μg/mL;レーン13=MOR202+MOR09292-hAlb 3600μg/mL;レーン1=一般的なバックグラウンドシグナリングを評価するために総タンパクについて染色した健康なドナー由来のヒト血清)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
用語「抗イディオタイプ」は、抗体の可変領域に結合するタンパク質またはペプチドを記述する。抗イディオタイプタンパク質は、抗体であり得る。例えば、抗体MOR09292は、MOR202の可変領域に結合する。
【0022】
用語「抗体」は、抗体フラグメントを含む。抗体は、あらゆるアイソタイプのモノクローナル抗体、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む。IgG抗体は、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖からなり、これらはジスルフィド結合によって結合される。抗体の重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域を含有する。各可変領域は「相補性決定領域」(「CDR」)または「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントを含有し、それらは主に、抗原のエピトープへの結合を担っている。それらは、N末端から順次数えられて、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。CDRの外側の可変領域のより高度に保存された部分は、「フレームワーク領域」と呼ばれる。「抗体フラグメント」は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’F(ab’)2のフラグメント、または他のフラグメントを意味し、これらは、少なくとも1つの可変重鎖または可変軽鎖を含有し、それぞれCDR領域およびフレームワーク領域を含有する。
【0023】
「CDR」は本明細書中で、Chothiaら、Kabatら、または内部のナンバリング規則(internal numbering convention)によって定義される。Chothia C,Lesk AM.(1987)Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.J Mol Biol.,196(4):901-17(その全体が参照によって組み込まれる)参照。Kabat E.A,Wu T.T.,Perry H.M.,Gottesman K.S.and Foeller C.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th edit.,NIH Publication no.91-3242,US Dept.of Health and Human Services,Washington,DC(その全体が参照によって組み込まれる)参照。
【0024】
「VH」は、抗体または抗体フラグメントの免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」は、抗体または抗体フラグメントの免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0025】
「Fc領域」は、抗体の定常領域を意味し、それはヒトにおいて、IgG1、2、3、4サブクラスまたは他のものであってよい。ヒトFc領域の配列は、IMGT,Human IGH C-REGIONs,http://www.imgt.org/ligmdb/(2016年2月22日に検索)で入手可能である。
【0026】
本明細書中で用いられる「ヒト抗体」または「ヒト抗体フラグメント」は、フレームワーク領域およびCDR領域の双方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体および抗体フラグメントを含む。さらに、抗体が定常領域を含有するならば、定常領域もまた、そのような配列に由来する。
【0027】
「特異的な」は、抗原を認識するタンパク質を記述し、そのような抗原と、1つまたは複数の参照抗原とを識別することができる。この能力は、標準的なELISAアッセイによって同定され得る。典型的には、特異性の判定は、単一の参照抗原ではなく、一組の約3から5個の無関係な抗原、例えば粉乳、BSA、トランスフェリン等を用いることによって実行される。
【0028】
「血液サンプルを評価」は、方法に最も関連した血液または血液サンプルの一部を評価することを意味する。現在、免疫固定電気泳動が、血液の血清成分になされている。しかしながら、将来、異なる血液成分が評価されるならば、本発明は、その血液成分を評価する方法に向けられる。血液成分として、例えば、血漿、血清、細胞、例えば赤血球および白血球、ならびに血小板が挙げられる。血漿として、タンパク質、例えばグロブリン、および凝固因子、ならびに塩、糖、脂肪、ホルモン、およびビタミンが挙げられる。
【0029】
免疫グロブリン血症は、血清免疫グロブリンレベルが非常に増大する症状である。これは、ポリクローナル(主要な免疫グロブリンクラスが全て増大)またはモノクローナル(均質な単一免疫グロブリンが増大)と分類され得る。
【0030】
ポリクローナル免疫グロブリン血症は、免疫系の慢性刺激に由来する。したがってこれは、慢性膿皮症;慢性ウィルス感染症、慢性細菌感染症、もしくは慢性真菌感染症;肉芽腫細菌病;膿瘍;慢性寄生虫感染症;慢性リケッチア病、例えば熱帯イヌ科動物汎血球減少症;慢性免疫疾患、例えば全身性紅斑性狼瘡、慢性関節リウマチ、および筋炎によって;または一部の腫瘍形成によって引き起こされ得る。多くの場合、明らかな素因はない。一部の動物において、免疫グロブリン血症は最初、単一の免疫グロブリンクラス(通常IgG)の優勢のため、モノクローナルであり得る。
【0031】
モノクローナル免疫グロブリン血症は、大量の単一免疫グロブリンタンパク質の生成によって特徴付けられる。モノクローナル免疫グロブリン血症は、良性であり(すなわち、原因となる疾患を伴わない)、またはより一般的には、免疫グロブリン分泌腫瘍を伴う。モノクローナル抗体を分泌する腫瘍は、形質細胞(骨髄腫)に由来する。骨髄腫は、あらゆる免疫グロブリンクラス、または免疫グロブリンのサブユニットもしくはフラグメント(軽鎖または重鎖)の無傷タンパク質を分泌することができる。モノクローナル免疫グロブリン血症の例として、以下が挙げられる:ホジキン病;多発性骨髄腫の変異形、例えば、骨の孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、形質細胞白血病、および非分泌骨髄腫、リンパ増殖性障害、例えばワルデンストレームマクログロブリン血症およびリンパ腫;重鎖病(γ、α、μ);ならびにアミロイド症。
【0032】
用語「CD38」は、以下の同義語を有する、CD38として知られているタンパク質を指す:ADP-リボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、環状ADPリボースヒドロラーゼ1、T10。
【0033】
ヒトCD38は、以下のアミノ酸配列を有する:
【化3】
【0034】
抗CD38抗体「MOR202」のアミノ酸配列が、図1に示される。「MOR202」および「MOR03087」は、図1に示される抗体を記述する同義語として用いられる。
【0035】
MOR202可変重ドメインをコードするDNA配列は、以下の通りである:
【化4】
【0036】
MOR202可変軽ドメインをコードするDNA配列は、以下の通りである:
【化5】
【0037】
MOR202は、国際公開第2007/042309号パンフレット、米国特許出願第12/089,806号明細書(その全体が参照によって組み込まれる)に開示されている。米国特許出願第12/089,806号明細書において、MOR202は、配列番号21に相当する可変重鎖および配列番号51に相当する可変軽鎖を含む抗体であり、MOR202をコードする核酸は、可変重鎖配列番号6および可変軽鎖配列番号36である。
【0038】
MOR202は現在、再発した/難治性の骨髄腫の患者において、第1/2a相試験で試験されている。当該研究は、単剤療法として、かつポマリドミドおよびレナリドマイド、ならびにデキサメタゾンと組み合わせて、MOR202の安全性および予備的有効性を評価している。
【0039】
抗体MOR09292は、MOR202に対する抗イディオタイプ抗体であり、以下の核酸配列によってコードされている:
VH:
【化6】
VL:
【化7】
【0040】
MOR09292-VH-CH1_HSA_6His(リーダー配列なし)(MOR09292-hAlb重鎖)をコードするDNA:
【化8】
【0041】
MOR09292-VL-ラムダ(リーダー配列なし)(MOR09292-hAlb軽鎖)をコードするDNA:
【化9】
【0042】
ヒトアルブミンは、以下のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)を有する:
【化10】
【0043】
多発性骨髄腫についての国際骨髄腫作業部会(IMWG)の統一効果判定規準(Uniform Response Criteria)は、以下の通りである:
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0044】
電気泳動は、タンパク質を、その生化学的特性に基づいて分離する方法である。血清が、特定の媒質上に置かれて、電荷が加えられる。タンパク質の正味の電荷(正または負)ならびにサイズおよび形状が、種々の血清タンパクを区別するのに一般的に用いられる。
【0045】
血清タンパク質電気泳動のいくつかのサブセットが利用可能である。当該サブセットの名前は、種々の血清成分を分離して区別するのに用いられる方法に基づく。ゾーン電気泳動において、例えば、様々なタンパク質サブタイプが、アガー、セルロース、または他の植物材料から製造されるゲル上の別個の物理的位置に置かれる。タンパク質は染色されて、その濃度が電子工学的に算出されて、種々のタンパク質の絶対量および相対量に関するグラフィックデータが提供される。免疫固定および/または免疫蛍光をもたらす免疫学的に活性な剤による染色によって、タンパク質サブタイプの更なる分離が達成される。
【0046】
血清タンパク質電気泳動結果のパターンは、2種類の主要なタンパク質:アルブミンおよびグロブリンの分画によって決まる。血清の主要なタンパク質成分、アルブミンは、正常な生理学的条件下で、肝臓によって生成される。グロブリンは、総血清タンパク含量のより小さい画分を構成する。当該タンパク質のサブセットおよびその相対量は、ほとんどの場合、血清タンパク質電気泳動の解釈の主要な焦点である。
【0047】
血清タンパク質電気泳動で観察される最も大きなピーク、アルブミンは、正の電極の最も近くに位置決めされる。次の5つの成分(グロブリン)は、アルファ1、アルファ2、ベータ1、ベータ2、およびガンマと標識される。これらの成分についてのピークは、負極の近くに出現し、ガンマピークが当該電極に最も近い。
【0048】
図3は、血清タンパク質電気泳動によって判定したタンパク質の分布についての典型的な標準パターンを示す。
【0049】
アルブミンバンドは、ヒト血清の最も大きなタンパク質成分を表す。アルブミンレベルは、肝臓によるタンパク質の生成がより少ない、または当該タンパク質の損失もしくは分解が増大する状況下で、低下する。栄養失調、重大な肝疾患、腎性損失(例えば、ネフローゼ症候群における)、ホルモン治療、および妊娠が、低いアルブミンレベルの原因となり得る。熱傷もまた、低いアルブミンレベルをもたらし得る。アルブミンのレベルは、例えば、血清水が相対的に引き下げられた(例えば脱水)患者において、増大する。
【0050】
ゲルの負の部分(すなわち負極)に移ると、次のピークは、アルファ1成分およびアルファ2成分に関係する。アルファ1タンパク質画分は、アルファ1-アンチトリプシン、甲状腺結合グロブリン、およびトランスコルチンで構成される。悪性腫瘍および急性炎症(急性相反応物質に由来する)は、アルファ1タンパク質バンドを増大させ得る。アルファ1タンパク質バンドの縮小が、肝疾患の結果としてのアルファ1-アンチトリプシンの欠乏またはグロブリンの生成の低下のため、起こり得る。セルロプラスミン、アルファ2-マクログロブリン、およびハプトグロビンは、アルファ2タンパク質バンドに寄与する。アルファ2成分は、急性相反応物質として増大する。
【0051】
ベータ画分は、β1およびβ2と標識された2つのピークを有する。ベータ1は、ほとんどの場合、トランスフェリンで構成され、ベータ2は、ベータ-リポプロテインを含有する。IgA、IgM、および時折IgGもまた、補体タンパク質と共に、ベータ画分内で同定され得る。
【0052】

臨床的な関心のほとんどは、血清タンパク質スペクトルのガンマ領域に集中する。なぜなら、免疫グロブリンがこの領域に泳動されるからである。免疫グロブリンは多くの場合、電気泳動スペクトルの至る所で見出され得る点に留意する必要がある。C反応性タンパク質(CRP)が、ベータ成分とガンマ成分との間の領域内に位置決めされる。
【0053】
多くの症状が、ガンマ領域の増大を引き起こし得るが、いくつかの疾患状態は、ガンマグロブリン帯域の病巣部位において均質なスパイク様のピークを引き起こす(図4)。このいわゆる「モノクローナル免疫グロブリン血症」は、均質なMタンパク質、例えばMMを生成する形質細胞それぞれの単一の、または極めて少ないクローンの増殖によって特徴付けられる一群の障害を構成する。
【0054】
免疫固定電気泳動(IFE)は、不溶性の複合体を、加えられたモノクローナル検出抗体試薬またはポリクローナル検出抗体試薬で形成することによって、タンパク質を電気泳動後に固定することができる技術である。これは、以下の4つの工程において実行される:
1)電気泳動によるタンパク質の分離。
2)電気泳動にかけたタンパク質の免疫固定(免疫沈降)-適切な電気泳動の泳動トラックを、個々の抗血清で覆う。抗血清は、ゲル中に拡散して、対応する抗原を、存在する場合には析出させる。参照トラック中のタンパク質を、固定剤で固定する。
3)析出しなかった、可溶性のタンパク質を、ブロッティングおよび洗浄によってゲルから除去する。抗原-抗体複合体の析出を、ゲルマトリックス内にトラップする。
4)析出したタンパク質を、染色(例えばアシッドバイオレット染色)によって視覚化する。
【0055】
疑わしいモノクローナル成分を検出して同定するために、サンプルは、並行したいくつかのトラックにおいて同時に電気泳動にかけられる(図参照)。電気泳動の後、ELPトラックは、参照(総タンパク質固定を含有する)として機能して、血清サンプルのタンパク質の完全な電気泳動パターンを提供する。残りのトラックは、モノクローナル成分の特徴付けを、通常ヒトIgG、IgA、およびIgMの重鎖に対する、かつ遊離したカッパ軽鎖およびラムダ軽鎖ならびに結合したカッパ軽鎖およびラムダ軽鎖に対する抗血清との反応から、または反応の欠如から、可能にする。他の抗血清(例えば抗IgD等)も可能である。次に、免疫固定されたバンドは、参照パターンにおける疑惑のバンドと比較される-対応するバンドは、泳動位置が同じであるはずである。
【0056】
図5は、血清免疫固定電気泳動後のゲルの例を示す。健康なドナー由来の血清サンプルが、ゲル電気泳動により並行して6倍に分離されたが、各レーンが、異なる試薬で染色された。染色後、非複合化タンパク質が、ブロッティングおよび洗浄によって除去された。レーンELP=総タンパク染色;レーンG=抗IgG染色;レーンA=抗IgA染色;レーンM=抗IgM染色;レーンK=抗カッパ染色;レーンL=抗ラムダ染色
【実施例0057】
材料および方法 IFE
Sebiaの半自動化アガロースゲル電気泳動系HydrasysおよびHydrasys2を用いて、かつSebiaのMaxikit Hydragel 9IFを用いて、免疫固定を実行した。キットは、免疫固定電気泳動によるヒト血清中の免疫グロブリンの検出用に設計されており、必要な試薬および材料を全て、すなわち、アガロースゲル、緩衝ストリップ(buffered strips)、希釈剤、アシッドバイオレット染色剤、抗血清(例えば、IgG、IgA、IgM、カッパおよびラムダ)、固定溶液、およびアプリケータを含有する。
【0058】
Mタンパク質分析に及ぼすMOR202の影響を評価するために、健康なドナーおよびMM患者由来の血清サンプルを、MOR202で様々な濃度にてスパイクして、室温(RT)にて少なくとも15分間インキュベートした。その後、MOR202でスパイクした、またはスパイクしていないサンプルを、IFEを用いて分析して、ゲルを、抗IgG抗血清または抗ラムダ抗血清(双方の染色試薬とも、MOR202に結合することができる)で染色した。双方の染色において、MOR202は、200μg/mLにて試験した最も低い濃度にて既に検出された。このことは、この薬物血清レベルでの、またはさらにそれ未満でのIFE干渉を示唆している(図6)。
【0059】
IFEにおけるMOR202関連アッセイシグナルと内在性Mタンパク質スパイクを区別するために、MOR202含有サンプルをMOR202特異的抗イディオタイプ抗体(MOR09292)と共にプレインキュベートする方法を試験した。当該方法の目的は、MOR202関連IFEアッセイシグナルを泳動して、MOR09292と共にプレインキュベーションした、またはしていないサンプルを比較するので、MOR202関連アッセイシグナルを明確に同定することができることを実証することであった。泳動距離が、検出されるほど十分に大きいかを評価するために、生理食塩水中にMOR202を含有するサンプルを調製して、MOR09292有り、または無しでプレインキュベートした。抗イディオタイプ抗体を生成して、IgG1抗体フォーマット中で、およびIgM抗体フォーマット中で試験した。MOR202を1200μg/mLの一定の濃度にして、試験サンプルを調製して、種々の濃度の2つのMOR09292変異体無し、または有りで60分間プレインキュベートした。その後、サンプルを分析して、IFEゲルを、抗IgG抗血清または抗ラムダ抗血清で染色した。結果は、試験サンプルを種々の形態のMOR09292と共にプレインキュベートした場合に、臨床サンプル評価に適したMOR202薬物スパイクの許容可能な泳動距離が観察され得ないというものであった(図7)。驚くべき発見は、薬物抗体単独と比較して、薬物/抗体複合体のサイズをおよそ3倍(MOR09292-IgG)に、または7倍(MOR09292-IgM)に増大させた場合でさえ、複合体の分子量変化は、アッセイシグナルの妥当なシフト(すなわち泳動パターンの変化)とならないことを実証したことである。
【0060】
これらの結果に基づいて、MOR09292-Fabフラグメントをヒトアルブミンに遺伝的に融合させて(MOR09292-hAlb)、イディオタイプ抗体の更なる変異体を生成した。新しい変異体は、薬物抗体単独と比較して、薬物-抗体複合体のサイズを最大2.6倍増大させた。より重要なことに、ヒト血清アルブミンの組込みは、複合体の正味の電荷を全体的に低くした。サンプルの調製および試験を、先に述べたように実行した。結果として、MOR202/MOR09292-huAlb複合体の明確なシフトが、MOR202単独のアッセイシグナルと比較した場合に、観察され得る。図8参照。
【0061】
MOR09292-hAlbをサンプルの前処理に用いる改変IFEアッセイを、MOR202の臨床開発に組み込んだ。したがって、当該アッセイは、Mタンパク質分析を担う中央検査機関にて確認されて、「免疫固定(IFE)反射アッセイ(Immunofixation Reflex Assay)」として試験戦略に導入された。MOR202関連シグナルとMタンパク質関連シグナルを識別するために、例えば以下の2つの条件が満たされる場合に、IFE反射アッセイを、通常の血清IFEおよび血清タンパク質電気泳動(SPE)に加えて実行した:
a)Mタンパク質濃度前処理と比較して、少なくとも≧40%の血清Mタンパク質レベルの引下げ、および
b)残されたMタンパク質スパイクの少なくとも1つが、薬物抗体MOR202の特性(すなわち、IFEにおけるIgG/ラムダポジティブ染色)と同じである。
【0062】

臨床研究MOR202C101の範囲内でのIFE反射アッセイの使用および結果についてのケーススタディ
多発性骨髄腫患者をMOR202で処置する第1の臨床研究(MOR202C101)の範囲内で、血清Mタンパク質レベルの≧86%の引下げが観察された後に、IFE反射アッセイを患者19007に施した。当該患者について、同定したMタンパク質スパイクを、IFEによって、IgG/ラムダポジティブとして記述した。これは、MOR202について知られているのと同じ分子特性である。SPEを実行して、1または2g/Lの潜在的Mタンパク質の残留濃度を、2106年1月12日および2016年2月19日に検出した。IFE反射アッセイは、このアッセイシグナルが専ら、MOR202干渉によって引き起こされるので、Mタンパク質は関係しないことを実証し得た(表1の要約ラボ結果を参照)。当該結果は、新たに確立されたIFE反射アッセイが、Mタンパク質、従って疾患関連アッセイシグナルとMOR202処置関連アッセイシグナルを明確に識別し得る方法を実証している。
【表2】
【0063】
実施形態
一態様が、アルブミンに融合した抗イディオタイプ抗体である。一実施形態において、アルブミンは、配列番号6のアミノ酸配列を有するヒトアルブミンである。一実施形態において、ヒトアルブミンは、ヒトアルブミンのフラグメントまたはヒトアルブミンの部分配列である。
【0064】
一実施形態において、アルブミンは、アルブミンの機能的フラグメントである。別の実施形態において、ヒトアルブミンは、ヒトアルブミンの機能的フラグメントである。この文脈において、アルブミンまたはヒトアルブミンの用語「機能的フラグメント」は、天然アルブミンまたはヒトアルブミンのフラグメントまたは変異体であるが、アルブミンの生理学的役割を満たすことが依然としてできるという意味で、依然として機能的に活性であるアルブミンを指す。
【0065】
一実施形態が、以下のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン
【化11】
および
以下のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン
【化12】
を有する抗体に特異的である抗イディオタイプ抗体である。
【0066】
一態様が、以下のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン
【化13】
および
以下のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン
【化14】
を有する抗体に特異的である抗イディオタイプ抗体である。一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、アルブミンに融合している。一実施形態において、アルブミンは、配列番号6のアミノ酸配列を有するヒトアルブミンである。一実施形態において、ヒトアルブミンは、ヒトアルブミンのフラグメントまたはヒトアルブミンの部分配列である。一実施形態において、ヒトアルブミンは、ヒトアルブミンの機能的フラグメントまたはヒトアルブミンの部分配列である。
【0067】
実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、
アミノ酸配列YSFSNYWIS(配列番号18)のHCDR1、
アミノ酸配列WMGIIDPASSKTRYSPSFQG(配列番号19)のHCDR2、
アミノ酸配列SRGAGMDY(配列番号20)のHCDR3
を含む可変重鎖、および
アミノ酸配列TGSSSNIGAGYDVH(配列番号21)のLCDR1、
アミノ酸配列LLIYADNNRPS(配列番号22)のLCDR2、
アミノ酸配列GSYDESSNSM(配列番号23)のLCDR3
を含む可変軽鎖を含む。
【0068】
一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、ヒト抗体である。
【0069】
実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、以下のアミノ酸配列の可変重鎖
【化15】
および
以下のアミノ酸配列の可変軽鎖
【化16】
を含む。
【0070】
実施形態において、抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体は、重鎖アミノ酸配列
【化17】
を含む。
【0071】
実施形態において、抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体は、軽鎖アミノ酸配列
【化18】
を含む。
【0072】
一態様が、多発性骨髄腫または他の免疫グロブリン血症の処置を経験している患者から得られた血液サンプルを評価する、以下を含む方法である
e)前記患者から血液サンプルを得ること、
f)血液サンプルを抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートすること、
g)免疫固定電気泳動(IFE)を実行すること、および
h)IFEの結果を報告すること。
【0073】
当該方法の実施形態において、患者は、以下のアミノ酸配列
【化19】
を含む可変重ドメイン、および以下のアミノ酸配列
【化20】
を含む可変軽鎖ドメインを有する抗体による処置を経験している。
【0074】
当該方法の一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、アルブミンに融合している。当該方法の一実施形態において、アルブミンは、配列番号6のアミノ酸配列を有するヒトアルブミンである。当該方法の一実施形態において、ヒトアルブミンは、ヒトアルブミンのフラグメントまたはヒトアルブミンの部分配列である。
【0075】
例示される抗イディオタイプ抗体MOR09292は、MOR202に特異的である。MOR202に対する抗イディオタイプ抗体は、ヒトアルブミンに融合している場合、IFEにおいて抗体をシフトさせるので、Mタンパク質ベースの臨床評価に対するMOR202のあらゆる潜在的干渉を軽減する。多発性骨髄腫または他の免疫グロブリン血症において治療に用いられる他の抗体に特異的な他の抗イディオタイプ抗体の融合体は、結果が類似するであろうと予想される。ゆえに、他の抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体がIFEにおける抗体のシフトに有用であろうことを意味するので、Mタンパク質ベースの臨床評価に対する抗体のあらゆる潜在的干渉が軽減される。
【0076】
当該方法の実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、
アミノ酸配列YSFSNYWIS(配列番号18)のHCDR1、
アミノ酸配列WMGIIDPASSKTRYSPSFQG(配列番号19)のHCDR2、
アミノ酸配列SRGAGMDY(配列番号20)のHCDR3
を含む可変重鎖、および
アミノ酸配列TGSSSNIGAGYDVH(配列番号21)のLCDR1、
アミノ酸配列LLIYADNNRPS(配列番号22)のLCDR2、
アミノ酸配列GSYDESSNSM(配列番号23)のLCDR3
を含む可変軽鎖を含む。
【0077】
当該方法の実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、ヒト抗体である。
【0078】
当該方法の実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、以下のアミノ酸配列
【化21】
の可変重鎖、および
以下のアミノ酸配列
【化22】
の可変軽鎖を含む。
【0079】
当該方法の実施形態において、抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体は、以下の重鎖アミノ酸配列
【化23】
を含む。
【0080】
当該方法の実施形態において、抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体は、以下の軽鎖アミノ酸配列
【化24】
を含む。
【0081】
当該方法の実施形態において、サンプルは、多発性骨髄腫または他の免疫グロブリン血症の処置を経験している患者から得られる。更なる実施形態において、免疫グロブリン血症は、モノクローナル免疫グロブリン血症である。更なる実施形態において、モノクローナル免疫グロブリン血症として、以下が挙げられる:ホジキン病;多発性骨髄腫の変異形、例えば、骨の孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、形質細胞白血病、および非分泌骨髄腫、リンパ増殖性障害、例えばワルデンストレームマクログロブリン血症およびリンパ腫;重鎖病(γ、α、μ);ならびにアミロイド症。
【0082】
当該方法の実施形態において、サンプルは、総Mタンパク質レベルについて評価される。
【0083】
一態様が、例示される抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプ抗体アルブミン融合体をコードする核酸である。一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、MOR09292である。一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、図2A図2Bに示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされる。
【0084】
一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、配列番号26(VH)および配列番号27(VL)の核酸配列によってコードされる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【外国語明細書】