(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169459
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/02 20060101AFI20241128BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A62C35/02 Z
A62C3/00 B
A62C3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157933
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2020171689の分割
【原出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
(57)【要約】
【課題】レンジ設備等の防護対象物に対する設置が容易で、維持管理も簡単であり、少ない消火剤の放出量で効率良く火災を抑制消火することを可能とする。
【解決手段】消火設備は、消火剤を放出する消火剤放出口32を有するシート体20と、消火剤を供給する消火剤供給手段と、シート体20を非展開状態に保持するシート保持部材94と、シート保持部材94による保持を解除してシート体20を展開状態とするシート保持解除部96と、を備え、通常時には、シート保持部材94によりシート体20を非展開状態に保持し、消火対象エリア内の火災時には、消火剤供給手段からシート保持解除部96に消火剤を供給してシート保持解除部96を動作させてシート保持部材94による非展開状態のシート体20の保持を解除することにより消火対象エリア内と外部とを仕切るようにシート体20を展開させる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の消火対象エリア内で発生した火災を抑制消火する消火設備であって、
消火剤を放出する消火剤放出口を有するシート体と、
前記消火剤を供給する消火剤供給手段と、
前記シート体を非展開状態に保持する保持手段と、
前記保持手段による保持を解除して前記シート体を展開状態とする展開手段と、
を備え、
通常時には、前記保持手段により前記シート体を非展開状態に保持し、
前記消火対象エリア内の火災時には、前記消火剤供給手段から前記展開手段に前記消火剤を供給して前記展開手段を動作させて前記保持手段による前記非展開状態の前記シート体の保持を解除することにより前記消火対象エリア内と外部とを仕切るように前記シート体を展開させることを特徴とする消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備であって、
前記消火剤供給手段から前記展開手段への前記消火剤の供給経路は、前記消火剤供給手段から前記シート体への前記消火剤の供給経路から分岐した供給経路であることを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項1又は2記載の消火設備であって、
前記消火対象エリアは、レンジ設備に付随する消火対象エリアであることを特徴とする消火設備。
【請求項4】
請求項1又は2記載の消火設備であって、
前記消火対象エリアは、仏壇に付随する消火対象エリアであることを特徴とする消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内で火気を使用するレンジ設備や仏壇等で発生した火災を抑制消火する消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、統計的に見た住宅火災の発生場所は、日常的に火気を使用する台所のレンジ設備や、ろうそくや線香を使用する仏壇等が多くを占めている。このため、例えばレンジ設備における火災に対処する各種の消火設備が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1の消火設備は、レンジ台の周縁部にエアバックを折り畳み状態で収納し、火災時にエアバッグを作動して矩形筒状に立ち上げてレンジ台の周囲を包囲し、包囲した空間に消火器から消火剤を放出して火災を消火している。
【0004】
また、特許文献2の消火設備は、レンジフードの外周に蛇腹状の耐火伸縮体を縮小状態でロックして配置し、火災時に消火器からの消火剤の噴射に伴って耐火伸縮体のロックを解除して下方のレンジ台の周囲を囲むように伸長し、伸長した耐火伸縮体により包囲した空間内に消火剤を放出して火災を消火している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-172307号公報
【特許文献2】特開平10-246482号公報
【特許文献3】特開平05-200127号公報
【特許文献4】実願昭52-065370号(実開昭53-166598号)のマイクロフィルム
【特許文献5】特開2020-146436号公報
【特許文献6】特開平07-015543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の消火設備は、レンジ設備等の消火対象を包囲して周囲から遮断する構造と、包囲した空間内に消火器から消火剤を放出する構造とを別々に設けていることから構造が複雑となり、且つ、余分な設置スペースを必要とするという問題がある。
【0007】
また、これらの消火設備は、消火剤供給源として消火器を使用しているが、このような消火器は高い放出圧力により大量の消火剤が放出されるため、消火対象がレンジ設備や仏壇などに付随する比較的小空間内にある場合、すなわち包囲空間が比較的狭い場合には、周囲に飛散した消火剤により周囲の物が汚れたり傷んだりする二次被害が発生するといった問題がある。
【0008】
ところで、本願発明者にあっては、防護区画(消火対象となる区画)の仕切り構造(包囲構造)と消火剤放出構造とを一体化した消火設備を提案している(特願2019-211175号)。この消火設備は、防護区画と外部との境界の開口部、例えば部屋の出入口の上部天井側に耐熱性を有するシートを非展開状態で保持し、例えば当該部屋内で火災が発生した場合に、シートを展開して当該部屋の出入口を塞ぎ、展開したシートの各所に配置した放出口から部屋の内部へ消火剤を面放出することにより、少量の消火剤で火災の抑制消火を可能としている。
【0009】
しかしながら、本願発明者の提案するこのような消火設備は消火剤供給源として例えば水道設備を使用しており、防護区画に設置した消火器具に対し水道配管を分岐して消火剤配管を接続する必要があるため、設置に手間がかかる場合がある。
【0010】
また、消火剤供給源として水道設備に代えて消火器を使用することもできるが、その場合は特許文献1、2の消火設備と同様の二次被害が発生するといった問題がある。さらに、消火器は耐用年数が決まっており、耐用年数が経過した場合は新品に交換する必要があることから、維持管理に手間と費用がかかるという問題もある。
【0011】
本発明は、例えばレンジ設備や仏壇等に対し設置が容易で、維持管理も簡単で、且つ、少量の消火剤で効率良く火災を抑制消火する(燃焼を抑制し又は鎮火させる)ことを可能とする消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(消火設備)
本発明は、所定の消火対象エリア内で発生した火災を抑制消火する消火設備であって、
消火剤を放出する消火剤放出口を有するシート体と、
消火剤を供給する消火剤供給手段と、
シート体を非展開状態に保持する保持手段と、
保持手段による保持を解除してシート体を展開状態とする展開手段と、
を備え、
通常時には、保持手段によりシート体を非展開状態に保持し、
消火対象エリア内の火災時には、消火剤供給手段から展開手段に消火剤を供給して展開手段を動作させて保持手段による非展開状態のシート体の保持を解除することにより消火対象エリア内と外部とを仕切るようにシート体を展開させることを特徴とする。
【0013】
(消火剤の供給経路)
消火剤供給手段から展開手段への消火剤の供給経路は、消火剤供給手段からシート体への消火剤の供給経路から分岐した供給経路である。
【0014】
(レンジ設備に適用した消火設備)
消火対象エリアは、レンジ設備に付随する消火対象エリアである。
【0015】
(仏壇に適用した消火設備)
消火対象エリアは、仏壇に付随する消火対象エリアである。
【発明の効果】
【0016】
(消火設備の基本的な効果)
本発明のレンジ設備で発生した火災を消火する消火設備にあっては、消火剤放出口を有する消火剤流通経路が設けられたシート体を含む消火手段と、消火剤流通経路に消火剤を供給する消火剤供給手段とを備え、レンジ設備に付随する所定の消火対象エリア内と外部とを仕切るようにシート体を展開すると共に、消火剤流通経路を介して消火剤供給手段から供給された消火剤を、消火剤放出口から消火対象エリア内に放出するようにしたため、設置が容易で維持管理も簡単であり、且つ、少ない消火剤の放出量で効率良く火災を抑制消火することを可能とする。
【0017】
(レンジ設備の消火手段による効果)
レンジ設備は、レンジ台の上部にレンジフードが配置され、消火対象エリアは、レンジフードとレンジ台との間の空間領域であり、消火手段は、レンジフード側の所定位置に設置され、レンジ設備の火災時に、消火対象エリア内と外部とを仕切るように、消火対象エリア内と外部との境界部の少なくとも一部にシート体を展開し、展開したシート体の消火剤放出口から消火対象エリア内に消火剤を放出するようにしたため、レンジ設備の仕切機能と消火機能の両方がシート体の展開により実現され、設備構成を簡単にして設置スペースとコストの低減ができる。更に、展開したシート体からの消火剤の放出により、レンジ設備内の火災を初期段階で確実に抑制消火可能とする。
【0018】
(消火剤供給手段の機能による効果)
消火剤供給手段は、所定のガスの圧力エネルギーを消火剤放出の運動エネルギーに変換して、消火剤を消火手段に供給するようにしたため、外部の消火剤供給源から消火剤の供給を必要としないことから、レンジ台に対し簡単且つ容易に消火設備を設置することができる。
【0019】
(消火剤供給手段の基本的構成による効果)
また、消火設備は、消火対象エリア内で発生した火災を検出する火災検出手段を備え、消火剤供給手段は、所定のガスを充填(窒素等の不活性ガスを圧縮状態で充填)した加圧手段と、火災検出手段により消火対象エリア内の火災を検出したときに、加圧手段の吐出口側を閉鎖状態から解放状態に切替えて所定のガスを放出させる起動手段と、加圧手段から放出された所定のガスを導入し、導入されたガスの圧力により消火剤を消火手段に供給するポンプ手段とを備えたため、外部の例えば水道設備等からの消火剤の供給を必要とすることなく、消火設備自身に設けられた消火剤供給手段が収容している消火剤を加圧して供給することができ、消火剤供給手段をレンジ設備又はその近傍に簡単且つ容易に設置することを可能とする。
【0020】
(消火剤供給手段の具体的構成による効果)
また、加圧手段は、例えば窒素や二酸化炭素等の圧縮ガスや液化ガス等のガスが充填された高圧容器である。窒素や二酸化炭素等のガスを充填した高圧容器として例えば、小型でであって低コスト、取扱いも容易なミニガスカートリッジとして知られたものが使用できる。起動手段は、容易に高圧容器の吐出口側の流路を閉鎖状態から解放状態とする弁手段、例えば小型の電磁弁等により簡単に実現できる。
【0021】
また、ポンプ手段は、例えばポリエチレンタンク等の容器に消火剤、例えば水道水等を収容して密閉し、火災時に高圧容器から放出されたガスをガス導入管を介して導入して密閉された容器内を加圧することで、消火手段に消火剤を供給する圧力を生じさせ、この圧力によりシート体を展開しつつ、消火剤吐出管を介して消火剤放出口から消火剤を放出することができ、構造が簡単で低コストであり、確実に動作して消火剤を供給することができる。
【0022】
また、消火手段により放出する消火剤の量は、消火剤を収容した容器の容量で決まり、住宅内に設置されたレンジ設備の設置スペースや大きさに見合った適量とすることができ、消火器を使用する場合のように高圧で多量を放出することに伴う二次被害を低減することを可能とする。
【0023】
(消火手段の構成による効果)
また、消火手段は、消火剤供給口と、消火剤放出口を有する消火剤流通経路を設けたシート体と、シート体を非展開状態に保持する保持手段と、保持手段による保持を解除してシート体を展開状態とする展開手段と、を備え、通常時は保持手段によりシート体を非展開状態に保持し、消火対象エリア内の火災時には、展開手段により消火対象エリア内と外部とを仕切るように展開し、消火剤供給口を介して消火剤流通経路に消火剤を供給して消火剤放出口から消火対象エリア内へ放出させることで、面放出が可能となり、設置場所を放出点とする従来の点放出に比べて広い放出範囲を確保でき、且つ散水障害となる(二次被害が発生する)箇所を低減することで、少ない消火剤の放出量で火災の抑制消火を可能とする。
【0024】
また、シート体はレンジ設備の設置場所や大きさに対応する程度のサイズであり、シート面の各所に配置した消火剤放出口から消火剤を放出することで、比較的小さい圧力で消火対象エリア内の消火対象(例えばコンロ台上の火のついた調理鍋と燃えた油が飛び散ったその周辺)の隅々まで消火剤を散布することができ、効率的に、また短時間に火災を抑制消火することを可能とし、外部への影響が少なく、更に、軽量且つ簡易なものとすることができる。
【0025】
また、シート体をレンジフードから下方へ展開し、消火剤放出口が展開したシート面に対して垂直な方向(水平方向)に消火剤を放出することから、消火対象の上から見て隠れた位置にも消火剤が届き、確実に火災を抑制消火可能とする。
【0026】
また、消火剤流通経路と消火剤放出口を備えたシート体は柔軟性を有することから、保持手段により、通常時はシート体を非展開状態、例えばロール巻き状態にしてレンジ設備使用時の邪魔とならない位置に設置することができ、消火手段を設置した場合でもレンジ設備の日常的な使用を妨げることがなく、また、設置スペースも少なくて済む。
【0027】
また、展開手段は、消火対象エリア内の火災時に保持手段によるシート体の保持を解除することで、一端辺を固定したシート体の他端辺が下方へ落下しながら縦方向へ展開し、消火対象エリア内と外部との境界部の所定位置を仕切ることができ、シート体の展開により仕切られた消火対象に対し、展開したシート体の各所に配置した消火剤放出口から消火剤を面放出して火災の消火抑制を可能とする。
【0028】
また、展開手段は、消火手段に供給される消火剤の圧力を駆動源として、シート体の非展開状態の保持を解除して展開することができる。また、電気的な保持解除動作を必要としないため、停電時にも確実にシートを展開して消火剤を放出できる。
【0029】
(第1のシート体構造による効果)
シート体は、第1カバーシート、第2カバーシート及び消火剤流通経路としてのシート配管を有し、シート配管は、潰し変形自在に形成すると共に、第1カバーシートと第2カバーシートとの間に配置されることで、消火剤流通経路と消火剤放出口を備えた柔軟性を有するシート体を簡単且つ容易に低コストで製作可能とする。
【0030】
(第2のシート体構造による効果)
また、シート体は、第1カバーシート、第1防水シート、第2防水シート及び第2カバーシートを有し、第1防水シートと第2防水シートとの間に、消火剤流通経路を形成するように、第1カバーシート、第1防水シート、第2防水シート及び第2カバーシートの順で積層した状態で縫合され、消火剤流通経路の、第1カバーシート及び第1防水シート側、第2カバーシート及び第2防水シート側の少なくとも何れか一方に、消火剤放出口が設けられたことから、消火剤流通経路の形成と積層したシート体の一体化が縫合により同時に実現し、消火剤流通経路と消火剤放出口を備えた柔軟性を有するシート体を更に簡単且つ容易に作成でき、量産も容易であることから製造コストを更に低減可能とする。
【0031】
(布状体による効果)
また、第1カバーシート及び第2カバーシートのうち、展開状態において少なくとも消火対象エリア側に面する方は、防火性、耐火性、耐熱性、遮熱性、遮炎性又は遮煙性を有する布状体であることから、火災による熱や炎を受けても焼損せずに消火剤の放出を継続することができ、また、消火対象エリア内と外部との境界部の所定位置に設置して展開した場合には、消火対象の外部に対する遮炎、遮熱、遮煙により延焼防止を可能とする。
【0032】
(仏壇適用による効果)
消火手段は、レンジ設備に代えて仏壇に対応して設置され、仏壇に付随する消火対象エリア内の火災時に、消火対象エリア内と外部とを仕切るようにシート体を展開すると共に、消火剤流通経路を介して消火剤供給手段から供給された消火剤を、消火剤放出口から消火対象エリア内に放出することで、仏壇の消火対象エリア内の火災を早期に検出して確実に消火抑制することを可能とする。
【0033】
(仏壇の消火手段による効果)
消火対象エリアは、仏壇の、所定の枠構造で囲まれた所定の空間領域であり、消火手段は、枠構造の所定位置に設置され、消火対象エリア内の火災時に、消火対象エリア内と外部とを仕切るようにシート体を展開し、展開したシート体の消火剤放出口から消火対象エリア内に消火剤を放出することで、設置が容易で維持管理も簡単であり、且つ、少ない消火剤の放出量で効率良く火災を抑制消火することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】レンジ設備に設置された消火設備の実施形態で示した説明図である。
【
図2】消火設備に設けられた消火剤供給手段の構造を示した説明図である。
【
図3】レンジ設備で火災が発生したときの消火設備の動作を示した説明図である。
【
図4】消火設備の消火手段に設けられたシート体を展開状態で示した説明図である。
【
図5】シート体の製作手順の実施形態を示した説明図である。
【
図6】シート体に消火剤流通経路を形成するシート配管を示した説明図であり、
図6(A)に通常時の潰れたシート配管、
図6(B)に消火剤供給時の膨らんだシート配管を示す。
【
図7】
図5のシート体の消火剤放出口の構造を示した説明図であり、
図7(A)にシート配管と第1カバーシートを挟む取付け状態、
図7(B)に組立分解図、
図7(C)に断面で組立分解図を示す。
【
図8】縫合部により消火剤流通経路が形成されたシート体を展開状態で示した説明図である。
【
図9】
図8のシート体の製作手順を示した説明図である。
【
図10】
図8のシート体の放出口の構造を示した説明図であり、
図10(A)にシート配管と第1防水シートを挟む取付け状態、
図10(B)に組立分解図、
図10(C)に断面で組立分解図を示す。
【
図11】
図8の縫合により形成された消火剤流通経路を示した説明図であり、
図11(A)に通常時の潰れた消火剤流通経路、
図11(B)に消火剤流通時の膨らんだ消火剤流通経路を示す。
【
図12】消火手段に設けられた展開手段の実施形態を示した説明図であり、
図12(A)に通常時のシート体を非展開状態に保持した正面、
図12(B)に側面を示し、
図12(C)に火災時にシート体を展開した正面、
図12(D)に側面を示す。が
【
図13】
図12の展開手段に設けられたシート保持解除部を取り出して示した説明図であり、
図13(A)に外観、
図13(B)に断面を示す。
【
図14】仏壇に設置された消火設備の実施形態で示した説明図である。
【
図15】仏壇で火災が発生したときの消火設備の動作を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[消火設備の実施形態]
以下に、本発明に係る消火設備の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0036】
[実施形態の基本的概念]
まず、実施形態の基本的な概念について説明する。実施形態は、概略的に、消火設備に関するものである。「消火設備」とは、建物の室内等に設置された設備、機器、器具等の所定の消火対象エリア内で発生した火災を抑制消火する設備であり、例えば消火対象エリア又はその近傍に設置され、消火対象エリア内の火災を検出して自動的に消火剤を放出することで、火災を抑制消火する設備である。
【0037】
ここで、「消火対象エリア」とは、例えば住宅内で火気を使用するレンジ設備や仏壇等に付随する所定の空間領域を含む概念であり、「消火対象エリア内」とは、レンジ設備や仏壇等の消火対象エリアの内部の空間領域を含む概念である。
【0038】
また、「火災を抑制消火する」とは、火災を抑制する概念と火災を消火する別の概念を併せたものである。例えば火災の抑制とは火災の延焼、火災の燃焼速度、又は火災の規模を抑制する概念であり、火災の消火とは燃焼を鎮火させる概念である。勿論、どちらか一方となる場合も含む。
【0039】
本実施形態による消火設備は、火災検出手段、消火剤供給手段、消火手段を含むものである。
【0040】
ここで、「火災検出手段」とは、レンジ設備や仏壇等の消火対象エリア内で発生した火災を検出する手段であり、例えば感知器、熱感知器、煙感知器、炎感知器、煙センサ、熱センサ等を含む概念である。
【0041】
また、「消火剤供給手段」とは、火災検出手段がレンジ設備や仏壇等の消火対象エリア内の火災を検出したときに、所定のガスの圧力エネルギーを消火剤の運動エネルギーに変換して消火手段へ供給するものである。ここで、「所定のガス」とは、例えば圧縮された窒素や二酸化炭素などの不燃性の物質(気体)を含む概念であり、「ガスの圧力エネルギー」とは、例えば圧縮された窒素等の不活性ガスが膨張しようとする圧力を意味する。
【0042】
ここで、「ガスの圧力エネルギーを消火剤の運動エネルギーに変換する」とは、圧縮されたガスの持つ圧力を消火剤に加えて消火剤を移動させる力に変換することであり、例えば消火剤を収容して密閉した容器に高圧の、例えば圧縮された窒素を導入して消火剤を加圧して外部に吐出させるポンプ手段を構成する概念である。
【0043】
なお、「ポンプ手段」とは、導入したガスの圧力エネルギーを消火剤(液体)の運動エネルギーに変換して送り出す(吐出)するものであり、モータ駆動等による機械的な運動エネルギーを液体又は気体の運動エネルギーに変換する通常のポンプ手段とは異なる非機械的なポンプ手段ということができる。
【0044】
また、「消火手段」とは、消火剤供給手段から消火剤が供給されたときに、シート体を展開してレンジ設備や仏壇等の消火対象エリア内と外部との境界部の所定位置を仕切り、展開したシート体から消火剤を消火対象エリア内に放出するものである。
【0045】
ここで、「シート体」とは、例えば柔軟性を有する厚さと、被せたり、覆ったりするために使用することができる所定の面積を有するものであり、例えば非展開状態に保持したり、非展開状態の保持を解除して展開状態とすることのできる布状体などを含む概念である。
【0046】
また、「消火対象エリア」とは、レンジ設備であれば、レンジフードとレンジ台との間の空間領域であり、例えばレンジフードとレンジ台との間であって、壁面で構成された閉鎖部と周囲の開放された境界部とで囲まれた空間であり、仏壇であれば、仏壇の、所定の枠構造で囲まれた所定の空間領域であり、例えば仏壇の内部であって、筐体で構成された閉鎖部と前面側が開放された開口部とで囲まれた空間である。
【0047】
また、「シート体を展開して消火対象エリア内と外部との境界部の所定位置を仕切る」とは、例えば消火対象エリアを構成するのがレンジ設備であれば、周囲の開放された境界部の少なくとも一部、例えば人が位置するレンジ台の前方側の境界部にシート体を展開して仕切り、レンジ台と前方側の境界部を塞ぐことを意味し、また、消火対象エリアを構成するのが仏壇であれば、前面側が開放された開口部を、シート体を展開して仕切り、開口部を塞ぐことを意味する。
【0048】
本実施形態による消火手段は、前述したシート体に加え、シート体に設けられた消火剤流通経路、消火剤供給口、及び消火剤放出口を備えるものである。
【0049】
ここで、「消火剤流通経路」とは、シート体から消火剤を放出するためにシート体に設けられた消火剤が流れる通り道であり、例えば布状体の間に配置されるシート配管を含む概念である。なお、「シート配管」とは、例えば潰し変形自在であって、消火剤を流通させることで膨らむ可撓性の配管をいう。
【0050】
また、「消火剤供給口」とは、シート体に設けられた消火剤流通経路へ消火剤を供給する入口であり、例えば消火剤配管の接続口を含む概念である。
【0051】
また、「消火剤放出口」とは、消火剤供給口から消火剤流通経路に供給された消火剤の出口であり、シート体の少なくとも片面側の各所から消火剤を放出するものであり、例えば火災時にシート体の消火対象エリア側の各所に配置された複数の消火剤放出口から消火剤を面放出する開口である。
【0052】
ここで、「面放出」とは、複数の消火剤放出口(放出点)がシート面の各所に配置されることで、複数箇所から消火剤が面的に放出されること、即ち、シート面の各所に配置された消火剤放出口から消火剤が放出されることでシート面の広範囲から消火剤を散布することをいう。これに対し「点放出」とは、消火剤放出口(放出点)が1箇所(設置場所)に存在することで、消火剤が1点から放出されることをいう。
【0053】
また、消火手段は、保持手段及び展開手段を備える。ここで「保持手段」とは、通常時はレンジ設備や仏壇等の所定位置にシート体を非展開状態に保持し、「展開手段」とは、火災時にシート体の保持を解除して展開する手段であり、例えば通常時は、シート体を巻き回した非展開状態として所定位置、例えばレンジ設備であればレンジ台の上部に配置したレンジフードの前方縁部に配置され、消火対象エリア内の火災時にシート体の保持を解除して展開することで、一端辺(上端辺)が固定された状態で、他端辺(下端辺)が自重により落下しながら縦方向へ展開することで、レンジ台の人が位置する前方側の周囲との境界部を仕切って塞ぐものである。
【0054】
以下の説明では、本実施形態による消火設備として、まず、「レンジ設備」に設置された場合について、具体的内容を説明し、続いて、「仏壇」に設置された場合について、具体的内容を説明する。
【0055】
[実施形態の具体的内容]
次に、消火設備の実施形態の具体的内容を説明する。その内容は、次のように分けて説明する。
a.レンジ設備に設けられた消火設備の実施形態の具体的内容
a1.レンジ設備に設けられた消火設備の構成
b.火災検出手段
c.消火剤供給手段
c1.高圧容器
c2.起動装置
c3.ポンプ手段
d.消火手段
e.レンジ設備に設けられた消火設備の動作
f.シート体
f1.シート体の構造
f2.シート体の製作方法1
f3.シート体の製作方法2
g.保持手段及び展開手段
g1.保持構造及び展開構造
g2.シート保持解除部の構成
h.仏壇に設けられた消火設備の実施形態の具体的内容
h1.仏壇に設けられた消火設備の構成
h2.火災検出手段
h3.消火剤供給手段
h4.消火手段
h5.仏壇に設けられた消火設備の動作
i.本発明の変形例
【0056】
[a.レンジ設備に設けられた実施形態の具体的内容]
本実施形態による消火設備として、まずレンジ台とレンジフードで構成されるレンジ設備に設けられた実施形態の具体的内容について説明する。
【0057】
(a1.レンジ設備に設けられた消火設備の構成)
図1(A)(B)に示すように、本実施形態の消火設備は、台所に設けられたレンジ台10とレンジフード12で構成されるレンジ設備に設置され、火災検出手段14、消火剤供給手段16、及び消火手段18で構成されている。
【0058】
レンジ台10には、例えば加熱調理に使用されるガスコンロ10aが複数配置され、レンジ台10の上部にはレンジフード12が配置されている。レンジフード12は、レンジ台10に相対した下面に吸込口12aを備え、ガスコンロ10aを使用した調理で発生した湯気や煙を、内蔵したモータファンの回転により吸い込み、背後の壁内や上方の天井裏等を介して屋外に排気している。
【0059】
ここで、以下の説明における方向については、図示の如く、レンジフード12とレンジ台10との位置関係を上下とする方向を縦方向或いは高さ方向、レンジ台10に対し人の位置する前方からレンジフード12を取り付けた壁面に向う方向を前後方向或いは奥行方向、縦方向及び前後方向の両方に直交する方向を横方向或いは左右方向と称する。
【0060】
[b.火災検出手段]
火災検出手段14は、レンジ台10の使用中に、例えば調理鍋等から炎が上がる火災(以下「レンジ火災」という)を検出するものであり、その機能や構成は任意であるが、例えば火災による熱を検出して火災検出信号を出力する公知の熱感知器が設けられる。火災検出手段14の設置場所は任意であるが、例えば
図1に示すように、レンジフード12の吸込口12aの所定位置に設置される。なお、火災検出手段14としては、熱感知器以外に、煙感知器、炎感知器等であってもよい。
【0061】
[c.消火剤供給手段]
消火剤供給手段16は、火災検出手段14がレンジ火災を検出したときに、所定のガス、例えば圧縮窒素の圧力エネルギーを消火剤の運動エネルギーに変換し、消火手段18に消火剤配管26を介して消火剤を供給するものであり、その構成や構造は任意であるが、一例として
図2に示すように、加圧手段となる高圧容器34、起動手段となる起動装置36、及びポンプ手段38で構成され、また、本実施形態では、本体24aと蓋24bで構成された箱形のケース内に収納され、例えば
図1に示すように、レンジ台10の下に配置される。
【0062】
(c1.高圧容器)
高圧容器34は、所定のガスとして窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを圧縮した状態で充填したものであり、その構造や種類は任意であるが、一例として
図2に示すように、市販のミニガスカートリッジを使用することができる。ミニガスカートリッジは、概ね、全長14cm、胴径4cm、上部首部の首径1.4cmといったボトル形状であり、内容積は100ミリリットル以下であることから高圧ガス保安法の適用除外となり、充填圧力は常温で20MPa程度となっている。
【0063】
ミニガスカートリッジを用いた高圧容器34は、首部の上端に形成された吐出口が封止板により封止されており、また、首部の外側にはネジが形成され、ガス放出用のアダプタ35をねじ込んで固定することができる。アダプタ35が高圧容器34の首部にねじ込まれると封止板の封止が破られ、起動装置36の一次側までガスが導入される。消火設備の使用後は、アダプタ35から使用済みの高圧容器34を外して新品に交換することが簡単にできる。
【0064】
(c2.起動装置)
起動装置36は、
図1に示した火災検出手段14がレンジ火災を検出したときに動作して二次側(吐出口側)を開き、高圧容器34に充填されているガスを放出させるものであり、その構成や構造は任意であるが、例えば電磁弁等が使用される。火災検出手段14からの火災検出信号を、信号線55を介してコントローラ45が受信したときに、コントローラ45は、信号線56を介して駆動信号を出力し、起動装置36を閉状態から開状態へ動作する。
【0065】
起動装置36は、高圧容器34に固定されたアダプタ35の放出口に連結され、例えば電磁弁を閉状態から開状態に切替えることで、高圧容器34からのガスが起動装置36の二次側に導入されるようにする。なお、コントローラ45は電池電源で動作し、火災検出手段14に電源を供給している。
【0066】
(c3.ポンプ手段)
ポンプ手段38は、起動装置36が閉状態から開状態に動作したときに、高圧容器34から放出されたガスを導入し、収容している消火剤46を加圧して、消火剤配管26に吐出するものであり、その構成や構造は任意であるが、一例として
図2に示すように、密閉容器40、ガス導入管42及び消火剤吐出管44で構成される。
【0067】
密閉容器40は、所定の消火剤46を収容するものであり、その構成や構造は任意であるが、例えば箱形を呈する密閉可能なポリエチレンタンクが使用され、収容できる消火剤46の量も任意であるが、例えば10リットル程度の消火剤46、例えば水道水等を収容可能とする。なお、密閉容器40に収容する消火剤46は、水道水に所定の消火強化液、例えば炭酸カリウム等を混ぜたものとしてもよい。また、密閉容器40には消火剤注入口52が設けられ、キャップ54で密閉閉鎖されている。
【0068】
密閉容器40には、例えばキャップ48で閉鎖される開口部に、両面にシールを介して仕切板50が配置され、仕切板50は、ガス導入管42と消火剤吐出管44を通して密閉固定されている。ガス導入管42の容器外の管端には、ガス配管41、例えばビニールチューブを介して起動装置36の二次側が接続され、ガス導入管42の容器内の管端は、消火剤46の液面上部の空間に位置している。消火剤吐出管44は、容器内の管端が容器底部側に位置しており、外部の管端には、消火剤配管26として、例えばビニールチューブが連結されている。
【0069】
このように構成されたポンプ手段38は、起動装置36が閉状態から開状態に動作して、高圧容器34に充填されているガスがガス配管41を介してガス導入管42の管端から密閉容器40内の上部空間に導入すると容器40の内圧が大気圧以上に上昇し、この内圧の作用により消火剤46が消火剤吐出管44を通して開放端が大気圧となる外部に吐出(圧送)して、消火剤配管26を経由して
図1のレンジフード12に設けられた消火手段18に消火剤を供給する。このようなポンプ手段38の機能は、ガスの持つ圧力エネルギーを、消火剤46を吐出(圧送)するという運動エネルギーに変換するポンプ手段ということができる。
【0070】
[d.消火手段]
図1に示した消火手段18は、消火剤供給手段16から消火剤配管26を介して消火剤が供給されたときにシート体20を展開し、展開したシート体20から消火剤をレンジ設備の消火対象エリア内へ放出して抑制消火するものであり、その機能や構成は任意であるが、一例として
図1に示すように、消火剤放出口を有するシート体20、展開手段を備えたホルダー22、及び消火剤供給口を備えた消火剤配管26から構成され、レンジ設備に設けられたレンジフード12の吸込口12aの周縁前部に配置される。
【0071】
[e.レンジ設備に設けられた消火設備の動作]
このようにレンジ設備に設置された本実施形態の消火設備は、次のように動作する。例えば
図3(A)(B)に示すように、ガスコンロ10aに調理油が入った調理鍋28を乗せて調理をしている際に、加熱のし過ぎ等により、調理鍋28から炎30が上がってレンジ火災が発生し、このレンジ火災をレンジフード12に設置された火災検出手段14が検出したとすると、火災検出手段14は、火災検出信号を、例えばレンジ台10の下側に設置されている消火剤供給手段16に出力して作動させ、消火剤供給手段16は、消火剤配管26を介してレンジフード12の消火手段18に消火剤を供給する。
【0072】
消火手段18は、消火剤供給手段16から消火剤配管26を介して消火剤が供給されると、通常状態でロール状に巻かれて非展開状態となっていたシート体20の保持を解除し、一端辺が固定されたシート体20の他端辺が下方へ落下ししながら縦方向へ展開することで、消火対象エリアの前方側の境界部を仕切り、展開したシート体20の各所に配置された消火剤放出口32(
図3では三角形で略示している)からレンジ台10側へ消火剤を面放出してレンジ火災を消火する。ここで、消火対象エリアとは、レンジフード12とレンジ台10の間の空間領域であり、
図3では、展開したシート体20とレンジ台10の後方の壁面との間でレンジ台10の横方向は開放されている。
【0073】
[f.シート体]
次に、消火手段18に設けられたシート体20について、
図4~
図11を用いて、より詳細に説明する。
【0074】
(f1.シート体の構造)
消火手段18のシート体20は、消火剤供給手段16から消火剤が供給されたときに、消火対象エリアと周囲との境界部の所定の位置を仕切るように展開し、展開した状態で消火対象エリア内に消火剤を放出するものであり、その構成や構造は任意であるが、一例として
図4に示すように、シート体20(20a)に設けられた消火剤流通経路60及び消火剤放出口32で構成される。ここで、シート体20について、図示の如く、上下の方向を縦方向或いは高さ方向、上下の方向に直交する方向を横方向或いは左右方向と称す。
【0075】
シート体20(20a)は、展開状態でレンジ設備のレンジ台10とレンジフード12の間の、人が位置するレンジ台10の前方側との境界部の大きさに対応した縦横の長さと幅をもつ矩形状であり、布状体を用いることで柔軟性を備え、ロール状に巻き回すなどして容易に非展開状態とすることができる。なお、
図3に示す実施形態では、シート体20の横幅は、レンジフード12の横幅に略一致しているが、設置可能な範囲で、レンジフード12の横幅よりも大きくても小さくても構わない。
【0076】
消火剤供給口62は、消火剤配管26に接続されて消火剤流通経路60への消火剤の入口となるものであり、その構成や構造は任意であるが、例えばシート体20(20a)の一端辺(上端辺)側に、消火剤の入り口が上方に向くように配置され、点線で示すシート体20(20a)内の消火剤流通経路60へ消火剤を流す入口となる。
【0077】
消火剤流通経路60は、シート体20(20a)に設けられ、消火剤供給口62から供給された消火剤を流通させるものであり、その構成、構造、配置は任意であるが、例えばシート体20(20a)の縦方向(消火剤の流下方向)に4段の梯子形を呈するように敷設され、最上段となる1段目の中央に消火剤供給口62を配置し、2段目から4段目に、例えば5個所ずつに分けて消火剤放出口32を配置している。
【0078】
消火剤放出口32は、消火剤流通経路60の各所に配置され、消火剤供給口62から消火剤流通経路60に供給された消火剤を、シート体20(20a)の消火対象エリア側に放出させるものであり、その構造、配置、数は任意であるが、例えば前述したように、消火剤流通経路60の2段目から4段目に、例えば5個所ずつ分けて配置されている。
【0079】
ここで、4段の梯子形を呈するように敷設された消火剤流通経路60は、2段目から4段目に配置された消火剤放出口32の横方向の放出口列(各段に横方向に並べた放出口列をひとつの放出口列要素とし、放出口列要素を2段目から4段目に3段並べて全体の放出口列としている)に対し、各放出口列要素の両端側から消火剤を供給するように形成されている。これにより同一列内の複数の消火剤放出口32に供給される消火剤の放出圧力を略均一とし、同一列内の放出パターン(角度分布)と放出量を揃えることを可能とする。
【0080】
なお、複数の消火剤放出口32に消火剤を供給する消火剤流通経路60の形態は、
図4に示した梯子形に限定されず、ツリー形、トーナメント形等の適宜の形態が含まれる。また、複数の消火剤放出口32の放出圧力を略均一とする場合には、消火剤流通経路60の太さ(断面積)を消火剤供給口62側で太くし、消火剤供給口62から離れるほど細くしてもよい。
【0081】
(f2.シート体の製作方法1)
図4に示した本実施形態のシート体20(20a)は、例えば
図5に示す方法で製作される。まず所定サイズの第1カバーシート66と第2カバーシート68を準備する。第1カバーシート66と第2カバーシート68は、例えば防火性、耐火性、耐熱性又は難燃性を有する布状体であり、例えば1200℃の高熱に耐えることができる、耐火シート、耐火カーテン、耐火幕等とも呼ばれるものが適用できるが、これに限定されない。また、第1カバーシート66と第2カバーシート68は、それぞれ遮熱性、遮炎性又は遮煙性等も有する。なお、消火対象エリアに面する方のカバーシート(第1カバーシート66)のみを防火性、耐火性、耐熱性、難燃性、遮熱性、又は遮炎性を有するものとすることを妨げない。
【0082】
続いて、例えば4段の梯子形となるシート配管70を準備する。シート配管70は、例えば傘布等に使用される防水加工されたポリエステル等の布状体をパイプ状に形成して梯子形に接続しており(接続部は流通可能となっている)、
図6(A)の断面に示すように、潰し変形自在であり、第1カバーシート66及び第2カバーシート68側から押し潰されることで扁平となり、消火剤46が供給されると、
図6(B)の断面に示すように膨らみ、消火剤流通経路60を形成するものである。
【0083】
また、
図5に示すように、消火剤供給口62に接続されたシート配管70の消火対象エリアに面する第1カバーシート側には消火剤放出口32が配置され、消火剤放出口32に対応して第1カバーシート66に予め形成された通し穴72が開口している。
【0084】
消火剤放出口32は、例えば
図7(A)(B)(C)に示す構造とする。消火剤放出口32は、ベース74と挟着リング76で構成する。ベース74にはねじ軸78が起立し、ねじ軸78には放出孔82が貫通している。挟着リング76は、ねじ穴80を有し、ねじ軸78にねじ込み固定される。
【0085】
図7(A)に示すように、ベース74をシート配管70の中に配置し、一例として
図7(C)に示すように、接着部81で接着固定して、ねじ軸78を外部に取り出している。シート配管70に設けられた開口から取り出したねじ軸78は、第1カバーシート66の通し穴72(
図5参照)を通して取り出し、そこに挟着リング76をねじ込むことで、シート配管70を第1カバーシート66の裏側に配置した状態で挟み込み固定する。
【0086】
続いて、
図5に示すように、シート体20(20a)の厚さ方向において、第1カバーシート66の裏側に、消火剤放出口32及び消火剤供給口62を設けたシート配管70を配置し、シート配管70を挟んで第1カバーシート66の反対側に第2カバーシート68を配置する。シート配管70を間に挟んだ状態で、第1カバーシート66と第2カバーシート68を、一例として
図4に示すように、防水糸を二点鎖線で示す縫合部64で縫合することで、シート体20(20a)が完成する。
【0087】
ここで、消火剤放出口32のベース74に設けられた放出孔82は、消火剤放出口32の開口径を決めるものであり、例えば3~4ミリメートル程度の孔径とする。3~4ミリメートル程度の孔径による消火剤、例えば消火用水の放出パターンをシート体20の各所に配置した複数の消火剤放出口32から放出することで、全体として面放出となる。
【0088】
また、ねじ軸78を貫通している放出孔82は、消火剤の放出パターンを決めるノズルとして機能する。例えば
図7に示すストレートの放出孔82は、比較的狭角の放出パターンとなるが、放出孔82の出口開口部を円錐状に広げると、円錐状に広がる広角放出パターンとなり、必要とする放出パターンに応じて適宜の開口部形状とする。また、相互に異なる開口部形状の消火剤放出口32を適宜混在させてもよい。
【0089】
なお、本実施形態では放出孔82の中心軸(図の一点鎖線)は、シート面に対し垂直となっているが、これに限定されない。例えば中心軸のシート面に対する傾斜角度を調整することで、消火剤放出の指向性を調整することもできる。また、相互に異なる傾斜角度の消火剤放出口32を適宜混在させてもよい。
【0090】
また、消火剤放出口32とは別に、第1カバーシート66と第2カバーシート68を濡らして冷却するための湿潤手段(冷却手段)として、消火剤流通経路60を構成するシート配管70に冷却用放出口を設けてもよいし、シート配管70とは別に、或いはシート配管70から分岐して冷却用流通経路を構成する冷却用シート配管を設け、これに冷却用放出口を設けてもよい。これにより第1カバーシート66と第2カバーシート68の防火性、耐火性、耐熱性などを向上し、これらの性能に対しグレードの低いシートの使用を可能とすることで、コストダウンができる。
【0091】
(f3.シート体の製作方法2)
次に、
図8に示すシート体20(20b)の製作方法を説明する。
図8のシート体20(20b)は、
図5に示すシート配管70を使用せずに、縫合部64により消火剤流通経路60を形成したことを特徴とする。
【0092】
図9は、
図8のシート体20(20b)の製作方法を示している。まず、所定サイズの第1カバーシート66、第1防水シート84、第2防水シート86及び第2カバーシート68を準備する。第1カバーシート66と第2カバーシート68は、
図5の製作方法に示すものと同じであり、第1防水シート84と第2防水シート86は、
図5の製作方法に示すシート配管70と同様、例えば傘布等に使用される防水加工されたポリエステル等の布状体とする。
【0093】
第1防水シート84の上端中央には消火剤流通経路60に対応して消火剤供給口62を配置し、また、消火対象エリアに面する第1防水シート84と第1カバーシート66には消火剤流通経路60の消火剤放出口32に対応して予め形成された通し穴88,90が、シート体20(20b)の完成状態で同じ位置となるように開口している。
【0094】
第1防水シート84と第1カバーシート66は、通し穴88,90を位置合わせして重ねた状態で、
図10(A)(B)(C)に示すように、消火剤放出口32を取付けて固定する。この、消火剤放出口32は、
図7(A)(B)(C)に示した消火剤放出口32と同じ構造であり、ねじ軸78が起立したベース74と、ねじ穴80を有する挟着リング76で構成され、ねじ軸78には放出孔82が貫通し、
図7のシート配管70に代えて第1防水シート84を第1カバーシート66の裏側に配置した状態で挟み込み固定している。
【0095】
第1防水シート84と第1カバーシート66を消火剤放出口32により固定した状態で、
図9に示すように、第1防水シート84側に第2防水シート86と第2カバーシート68を重ね合わせ、この状態で
図8に示したように、例えば防水糸を用いてミシン等により縫合作業を行い、縫合部64を形成することで、消火剤流通経路60を作成する。また、各シートを重ね合わせた状態で、シート周縁を縫合した縫合部64によりシート体20(20b)として一体化する。
【0096】
このようにして製作された
図8のシート体20(20b)は、前述したように、第1カバーシート66、第1防水シート84、第2防水シート86及び第2カバーシート68を重ね合わせた状態で、例えば防水糸を用いてミシン等により縫合した縫合部64で形成した消火剤流通経路60を備える。消火剤流通経路60は、通常時は、
図11(A)に示すように、押し潰された状態にあるが、消火剤46が供給されると、
図11(B)に示すように、断面積が増えるように膨らんで消火剤46を流通させることができる。
【0097】
図8では、縫合部64を二重(縫合線が二列)にすることで、消火剤流通経路60の密閉性を高めているが、消火剤として水道水を供給すると縫い目から少量漏れ出す場合がある。しかし、消火剤流通経路60から漏れ出した水道水は、シート体20(20b)を濡らすこととなり、これにより火災に対する防火性、耐火性、耐熱性、遮熱性、遮炎性又は遮煙性が向上する。
【0098】
このように、第1カバーシート66と第2カバーシート68を濡らして冷却するための湿潤手段(冷却手段)として、縫合部64で形成された消火剤流通経路60に消火剤放出口32とは別に冷却用放出口を設けるようにしてもよい。冷却用放出口は、消火剤流通経路60を形成する縫合部64を、例えば部分的に縫合線の縫い目間隔が大きくなるように調整し、或いは部分的に縫い目を飛ばして縫合して形成された隙間を冷却用放出口としてもよい。また、冷却用放出口が設けられた流通路(冷却用流通路)を消火剤流通路60と別に設けるようにしてもよい。
【0099】
[g.保持手段及び展開手段]
次に、消火手段18に設けられたシート体の保持手段及び展開手段について、より詳細に説明する。
図12(A)(B)に示すように、本実施形態の消火手段18は、保持手段及び展開手段を備える。
【0100】
(g1.保持構造及び展開構造)
保持手段は、通常時はシート体20を非展開状態に保持し、展開手段は、消火対象エリア内の火災時にシート体20を展開し、展開したシート体20の消火剤流通経路60に消火剤を供給して複数の消火剤放出口32から放出させるものであり、その構成や構造は任意であるが、例えばホルダー22、シート固定部93、保持手段であるシート保持部材94、及び展開手段であるシート保持解除部96で構成される。
【0101】
ホルダー22は、横方向(左右方向)を長手方向とする箱形の収容手段であり、レンジフード12の周縁前部等に取り付ける固定部を構成するものである。シート体20は、その一端辺がホルダー22にシート固定部93で固定され、通常時、ロール状に巻き回された非展開状態でホルダー22の下側に、ワイヤ又はロープからなるシート保持部材94により複数箇所で吊下げ状態で保持されている。
【0102】
シート保持部材94は、一端がホルダー22に固定され、他端がシート体20の巻取り外周下側を通してホルダー22の反対側(シート固定部93の反対側)のシート保持解除部96に着脱自在に保持されている。シート保持解除部96は、消火剤配管26からの消火剤が供給されて動作し、シート保持部材94の保持を解除する。
【0103】
シート保持解除部96がシート保持部材94の一端の保持を解除すると、
図12(C)(D)に示すように、シート体20の一端辺(上端辺)がホルダー22に固定された状態で反対側の他端辺(展開時の下端辺)側が自重により落下しながら縦方向へ展開する。また、シート体20の下端辺側に、所定の重り部材を設けるようにすれば、シート体20の下端辺側の落下、またシート体20の展開後の安定を補助することができる。
【0104】
(g2.シート保持解除部)
非展開状態に保持されたシート体20を、その保持を解除して展開させるシート保持解除部96について、より詳細に説明する。このシート保持解除部96の構成や構造は任意であるが、一例として
図13(A)に示すように、ホルダー22内に消火剤が供給されたときに動作するアクチュエータ98が設けられている。
【0105】
アクチュエータ98は、一例として
図13(B)に示すように、シリンダ100にリターンばね106を介してピストン102が摺動自在に組み込まれ、ピストン102の片側にシリンダ室100aが形成されている。シリンダ室100aは、消火剤供給ポート108を介して消火剤配管26に連通すると共に、自動排水弁103が設けられている。自動排水弁103は、消火剤が供給されてシリンダ室100aが所定圧力を超えると閉鎖し、シリンダ室100aが所定圧力を下回ると開放する。
【0106】
ピストン102は、同軸にロッド104を備えている。ホルダー22の正面から下部にかけて開口112が設けられ、ロッド104の先端側が視認可能になっており、またロッド104の所定位置に設けられた操作スティック110が、ホルダー22の正面側の外部から操作可能に露出している。
【0107】
ロッド104にシート保持部材94を保持するときには、操作スティック110を操作してロッド104を左側に移動した状態で、例えばワイヤ等のシート保持部材94の先端をループ状に結んだ止め輪94aをロッド104に通し、ロール状に巻き回したシート体20を保持する。
【0108】
火災時には、消火剤が消火剤配管26から消火剤供給ポート108を介してシリンダ室100aに供給され、リターンばね106に抗してピストン102が左方向にストロークして、開口112の下部により左方向への移動を制限された止め輪94aからロッド104が抜ける。シート体20は、シート保持部材94による保持が解除され、自重により落下しながら縦方向へ展開する。
【0109】
なお、シート保持解除部96は、上記に限定されず、
図2に示す消火剤供給手段16に設けられたコントローラ45からの制御信号により、電磁ソレノイド等を駆動し、シート保持部材94の保持を解除してシート体20を展開するようにしてもよい。
【0110】
また、消火手段18のシート展開構造としては、他の適宜の構造を適用できる。例えばロールスクリーンのようにシート体20を回転軸に巻き、回転軸の係止を解除してシート体20を展開する構造としてもよいし、モータ駆動により巻き出しと巻き取りをする構造としてもよい。また、アコーディオンカーテンのようにシート体20を蛇腹状に折り畳んだ状態で保持し、保持を解除して展開する構造としてもよい。
【0111】
また、シート体20の消火剤流通経路60としては、
図4及び
図8に示した梯子形の配置に加え、例えば梯子形の周囲を囲むように消火剤流通経路60を矩形に配置して、消火剤として消火用水が供給されたときにシート体20の展開を補助し、また展開状態を安定させる補助手段となる「重り」として機能させるようにしてもよい。
【0112】
[h.仏壇に設けられた消火設備の実施形態の具体的内容]
次に、本実施形態による消火設備の他の例として、仏壇に設けられた実施形態の具体的内容について詳細に説明する。
【0113】
(h1.仏壇に設けられた消火設備の構成)
図14(A)(B)に示すように、本実施形態の消火設備は、室内に置かれた仏壇120に設置される。仏壇は、その構造、種類、様式は様々であるが、例えば筐体である本体122の前方の開口部130に両開きの扉124が設けられ、本体122の内部には、基本的に三段の壇125a~125cを備えている。最下段の壇125cの下は、引き戸を設けた戸棚132となっており、壇125a~125cには、燭台126、香炉128等の仏具が置かれ、燭台126にはろうそくが灯され、香炉128には火のついた線香が立てられる。
【0114】
仏壇120には本実施形態の消火設備が設けられ、この消火設備は、
図1のレンジ設備に設けられた実施形態と場合と同様に、火災検出手段14、消火剤供給手段16、及び消火手段18で構成されている。
【0115】
(h2.火災検出手段)
火災検出手段14は、仏壇120に置かれた火気が使用されている燭台126、香炉128等の仏具に起因した火災(以下「仏壇火災」という)を検出するものであり、その機能や構成は任意であるが、例えば
図14に示すように、火災による煙を検出して火災検出信号を出力する公知の煙感知器が設けられ、例えば本体122内の天井面等に設置される。なお、火災検出手段14としては、煙感知器以外に、熱感知器、炎感知器等であってもよい。
【0116】
(h3.消火剤供給手段)
消火剤供給手段16は、火災検出手段14が仏壇火災を検出したときに、所定のガス、例えば圧縮窒素の圧力エネルギーを消火剤の運動エネルギーに変換し、消火手段18に消火剤配管26を介して消火剤を供給するものであり、その機能や構成は任意であるが、一例として
図2に示すように、加圧手段となる高圧容器34、起動手段となる起動装置36、及びポンプ手段38で構成され、また、本実施形態では、本体24aと蓋24bで構成された箱形のケース内に収納され、例えば
図14に示すように、戸棚132の中に配置されている。
【0117】
(h4.消火手段)
消火手段18は、消火剤供給手段16から消火剤配管26を介して消火剤が供給されたときに、仏壇120の消火対象エリア内と外部とを仕切るように、開口部130にシート体20を展開し、展開したシート体20から消火剤を消火対象エリアとなる仏壇120の内部へ放出して抑制消火するものであり、その構成や構造は任意であるが、一例として
図14に示すように、シート体20、展開手段を備えたホルダー22、及び消火剤配管26から構成され、仏壇120の開口部130の上部天井側に配置されており、詳細は、
図4~
図13に示した構成と同様となる。また、戸棚132の中に置かれた消火剤供給手段16と消火手段18とを連通する消火剤配管26が、本体122の内壁に沿って立上げられている。
【0118】
(h5.仏壇に設けられた消火設備の動作)
このように仏壇120に設置された消火設備は、次のように動作する。一例として
図15(A)(B)に示すように、燭台126が倒れ、ろうそくの火が周囲に燃え移って仏壇火災が発生し、この仏壇火災を本体122内の天井面等に設置された火災検出手段14が検出したとすると、火災検出手段14は、火災検出信号を、例えば戸棚132の中に設置されている消火剤供給手段16に出力して作動させ、消火剤供給手段16は、消火配管26を介して消火手段18に消火剤を供給する。
【0119】
消火手段18は、消火剤が供給されると、通常状態ではロール状に巻かれた非展開状態となっていたシート体20の保持を解除し、一端辺が固定されたシート体20の他端辺が下方へ落下しながら縦方向へ展開することで、仏壇120の開口部130を仕切って塞ぎ、シート体20の展開で仕切られた仏壇120の内部(消火対象エリア内)に対し、展開したシート体20の各所に配置された消火剤放出口32(
図15では三角形で略示している)から消火剤を面放出して仏壇火災を消火抑制する。
【0120】
[i.本発明の変形例]
本発明の変形例について、詳細に説明する。
【0121】
(起動装置)
上記の実施形態は、火災検出手段14がレンジ設備内や仏壇内の火災を検出したときに、起動装置36が作動して、レンジ設備や仏壇の消火対象エリアを外部と仕切るようにシート体20を展開すると共に、消火剤をシート体20の消火剤放出口32から消火対象エリア内に放出することで、消火対象エリア内の火災を消火する自動消火であるが、火災検出手段14に代えて、手動操作により起動装置36を作動させる手段、例えば押しボタン式のスイッチをレンジ設備の前面等の操作し易い位置に設け、その押圧操作による手動消火とすることも可能である。
【0122】
(シート体の放出口配置)
上記の実施形態は、シート体20の片面(レンジ設備や仏壇の消火対象エリア側)の各所に複数の消火剤放出口32を配置しているが、これに限定されず、シート体20の両面の各所に複数の消火剤放出口32を配置してもよい。このシート体20を設けた消火手段18は、例えばレンジ設備や仏壇の内部空間の中央の天井部等に設置され、火災時にシート体20を上方から下方へ展開し、シート両面各所の複数の消火剤放出口32から両側に消火剤を面放出して火災を消火抑制する。
【0123】
(レンジ設備の消火手段)
消火手段をレンジ設備に設置した上記の実施形態では、レンジフード12の周縁前部に消火手段18を配置し、レンジ火災の発生時に、シート体20を展開してレンジフード12とレンジ台10の間の、壁面で構成された閉鎖面を除く周囲との境界部の一部となる前方側の境界部を仕切って消火剤を放出しているが、レンジフード12の周縁両側部の各々にも消火手段18を配置し、消火対象エリアとなるレンジフード12とレンジ台10の間の、周囲の開放された境界部の全てをシート体20の展開により仕切り、火災発生場所から見て壁面を含んで略全方向を塞ぐようにしてもよい。この場合、レンジフード12とレンジ台10との間の消火対象エリアの左右両側の周囲との境界部を仕切るシート体20は、消火剤流通経路60及び消火剤放出口32を持たない布状体のみのシートとしてもよい。
【0124】
(消火手段の設置対象)
上記の実施形態は、消火手段の設置対象としてレンジ設備と仏壇を例にとるものであったが、本実施形態の消火設備を設置する対象の種類、構造、場所等は任意であり、火災発生場所となる可能性のある適宜の対象が含まれる。また、本発明の消火設備の適用対象は、一般住宅に限定されず、更に、例えば工場、学校、役所、倉庫その他適宜の施設に適用し得る。
【0125】
(消火剤流通経路)
上記の実施形態は、シート体20を構成する2枚のカバーシート(第1カバーシート66と第2カバーシート68)を縫合により相互に固定する場合を説明したが、固定する方法はこれに限定されない。2枚のカバーシートの固定方法及び固定構造は任意であり、例えば縫合部64を縫合するのに代えて接着剤により接着してもよい。また上記実施形態では、2枚のカバーシートを重ね合わせる場合を説明したが、これに限らず、例えば1枚のカバーシートを二つ折りにしてもよい。
【0126】
上記の実施形態は、シート配管70や縫合部64により消火剤流通経路60を形成する場合を説明したが、これに限定されず、他の構成により消火剤流通経路を形成してもよい。例えば合成樹脂製等のチューブを用いた消火剤流通経路としてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、消火剤流通経路60を第1カバーシート66と第2カバーシート68で挟んで配置する場合を説明したが、これに限らず、例えばシート体20の片面又は両面に露出して消火剤流通経路60(例えばシート配管70)を固定するようにしてもよい。
【0128】
(シート体)
また、シート体20の形状は実施形態に限定されず、例えば矩形以外に円形や楕円形、多角形等適宜の形状とすることができる。また、上記の実施形態は、ひとつの消火対象エリアにシート体20を1枚設置した場合を例にとっているが、一つの消火対象エリアに設置するシート体20の数は任意である。
【0129】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0130】
10:レンジ台
10a:ガスコンロ
12:レンジフード
12a:吸込口
14:火災検出手段
16:消火剤供給手段
18:消火手段
20,20a,20b:シート
22:ホルダー
24a:本体
24b:蓋
26:消火剤配管
28:調理鍋
32:消火剤放出口
34:高圧容器
35:アダプタ
36:起動装置
38:ポンプ手段
40:密閉容器
42:ガス導入管
44:消火剤吐出管
45:コントローラ
46:消火剤
48,54:キャップ
50:仕切板
52:消火剤注入口
55,56:信号線
60:消火剤流通経路
62:消火剤供給口
64:縫合部
66:第1カバーシート
68:第2カバーシート
70:シート配管
72,88,90:通し穴
74:ベース
76:挟着リング
78:ねじ軸
80:ねじ穴
81:接着部
82:放出孔
84:第1防水シート
86:第2防水シート
93:シート固定部
94:シート保持部材
94a:止め輪
96:シート保持解除部
98:アクチュエータ
100:シリンダ
100a:シリンダ室
102:ピストン
103:自動排水弁
104:ロッド
106:リターンばね
108:消火剤供給ポート
110:操作スティック
112:開口
120:仏壇
122:本体
124:扉
125a~125c:壇
126:燭台
128:香炉
130:開口部
132:戸棚