(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016948
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】インクジェット記録システム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240201BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240201BHJP
B41J 2/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B41J29/38 104
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/08
B41J2/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119259
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】城戸 美穂子
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056EB29
2C056EC28
2C056EC80
2C056FA05
2C057AL40
2C057AM40
2C057DB02
2C061AQ05
2C061HN05
2C061HN15
2C061HP00
2C061HQ01
2C061HT05
2C061HV14
(57)【要約】
【課題】環境負荷の低減を促進し得るインクジェット記録システムを提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置と、サーバと、を備え、前記インクジェット記録装置と前記サーバとの間で通信可能なインクジェット記録システムであって、前記サーバは、前記インクジェット記録装置で検出された情報、または、前記サーバとの間で通信可能な端末装置によって入力された情報、に基づき、温室効果ガスの排出削減に寄与する行為が前記インクジェット記録装置に対して実行された場合に付与するポイントを演算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置と、サーバと、を備え、前記インクジェット記録装置と前記サーバとの間で通信可能なインクジェット記録システムであって、
前記サーバは、前記インクジェット記録装置で検出された情報、または、前記サーバとの間で通信可能な端末装置によって入力された情報、に基づき、温室効果ガスの排出削減に寄与する行為が前記インクジェット記録装置に対して実行された場合に付与するポイントを演算する、インクジェット記録システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記インクジェット記録装置は、通常モードと節電モードに切り替えて運転可能であり、
前記サーバは、前記インクジェット記録装置から受信した稼働情報に基づき、節電モードで運転された場合に、付与するポイントを演算する、インクジェット記録システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記インクジェット記録装置は、インクの供給を受けて印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドに前記インクを供給する本体と、を備え、
前記印字ヘッドは、前記インクをインク粒子にして吐出するノズルと、前記インク粒子に帯電させる帯電電極と、帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、を有し、
前記本体は、前記インクを供給するインク供給経路と、前記インク供給経路および前記印字ヘッドを制御する制御部と、を有し、
前記インクジェット記録装置の運転モードは、
前記制御部が、前記インクを前記印字ヘッドへ供給し、かつ、前記偏向電極に電圧を印加する印字可能モードと、
前記制御部が、前記インクを前記印字ヘッドへ供給し、かつ、前記偏向電極に電圧を印加しないアイドリングモードと、を含み、
印字対象物が第1所定時間以上搬送されない場合、
前記制御部は、前記印字可能モードから前記アイドリングモードに移行させる、インクジェット記録システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記インクジェット記録装置の運転モードは、
前記制御部が、前記インクを前記印字ヘッドへ供給せず、かつ、前記偏向電極に電圧を印加しないアイドリングストップモードを、さらに含み、
前記アイドリングモードに移行した後、前記印字対象物が第2所定時間以上搬送されない場合、
前記制御部は、前記アイドリングモードから前記アイドリングストップモードに移行させる、インクジェット記録システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記インクジェット記録装置の消費電力を検知する電力検知センサをさらに備え、
前記サーバは、前記アイドリングモードまたは前記アイドリングストップモードであった運転時間の消費電力の合計値と、前記運転時間が印字可能モードであったと仮定した場合の消費電力の合計値と、の差分に基づき、前記ポイントを演算する、インクジェット記録システム。
【請求項6】
請求項3において、
前記印字対象物を搬送するコンベアに設置されて、前記印字対象物への印字タイミングを特定するために用いられる第1センサと、
前記コンベアの上流側に設置されて、前記印字対象物が搬送され得る状態にあるか否かを特定するするために用いられる第2センサと、をさらに備え、
前記制御部は、前記印字対象物が所定時間搬送されないことを、前記第2センサに基づき判定する、インクジェット記録システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2センサは、前記コンベアの搬送速度に応じて周期的なパルスを発生されるロータリーエンコーダ、および/または、所定位置に前記印字対象物が到達したことを検知する印字物検知センサである、インクジェット記録システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記インクジェット記録装置は、インクまたは溶剤を補給するためのカートリッジを有し、
前記サーバは、出荷時の前記カートリッジに付された識別情報と、回収時の前記カートリッジに付された識別情報と、を照合し、その照合結果に基づいて、前記ポイントを演算する、インクジェット記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザの部品やサービスの購入量や購入頻度等によりサービスポイントを加算するインクジェット記録システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、インクジェット記録装置に使用するインクなどの部品などを購入した際にポイントが加算するのみであり、環境負荷の低減を促進することは何ら考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、環境負荷の低減を促進し得るインクジェット記録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために、本発明は、インクジェット記録装置と、サーバと、を備え、前記インクジェット記録装置と前記サーバとの間で通信可能なインクジェット記録システムであって、前記サーバは、前記インクジェット記録装置で検出された情報、または、前記サーバとの間で通信可能な端末装置によって入力された情報、に基づき、温室効果ガスの排出削減に寄与する行為が前記インクジェット記録装置に対して実行された場合に付与するポイントを演算する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境負荷の低減を促進し得るインクジェット記録システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るインクジェット記録システムの全体構成図。
【
図3】インクジェット記録装置の循環系の構成を示す図。
【
図4】各運転モードにおけるインクジェット記録装置の動作状況を示す表。
【
図7】スタンバイモードの場合の動作状況を示す概略図。
【
図8】印字可能モードの場合の動作状況を示す概略図。
【
図9】アイドリングモードの場合の動作状況を示す概略図。
【
図10】アイドリングモードから印字可能モードに移行したときの状況を示す概略図。
【
図11】アイドリングストップモードの場合の動作状況を示す概略図。
【
図12】ポイントが付与される行為の例を示した図。
【
図13】インクジェット記録装置で消費される電力の推移の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
<インクジェット記録システムの構成>
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録システムの全体構成図である。
図1に示すように、インクジェット記録システムは、インクジェット記録装置1と、サーバ2と、サーバとインクジェット記録装置との間で相互に通信を行うための通信回線3(ネットワーク)と、を備える。なお、本実施形態では、1台のインクジェット記録装置1がサーバ2に接続されている例を挙げて説明するが、サーバ2に接続されるインクジェット記録装置1は複数台であっても良い。また、インクジェット記録装置1は、例えば、飲料や食品などが生産される工場内の生産ラインに据え付けられる。
【0011】
生産ラインは、複数のベルトコンベアで構成され、各ベルトコンベアが、飲料を充填したペットボトル、食品を収納した包装容器などの印字対象物4を搬送する。なお、
図1では、印字直前の印字対象物を搬送する下流側コンベア5aと、下流側コンベア5aに対して搬送方向の上流側に隣接する上流側コンベア5bと、の2つのみを示しているが、ベルトコンベアの数は2つに限定されない。
【0012】
下流側コンベア5aの近傍には、第1印字物検知センサ6aが設置され、上流側コンベア5bの近傍には、第2印字物検知センサ6bが設置される。また、下流側コンベア5aには、第1ロータリーエンコーダ7aが設置され、上流側コンベア5bには、第2ロータリーエンコーダ7bが設置される。
【0013】
第1印字物検知センサ6aは、印字タイミングを特定するために用いられ、下流側コンベア5a上の所定位置に印字対象物4が到達したことを検知すると、印字開始のトリガとして検知信号を後述の制御部15へ送信する。第2印字物検知センサ6bは、通常モードと後述する節電モードの切替の判定に用いられ、上流側コンベア5b上の所定位置に印字対象物4が到達したことを検知すると、印字対象物4が搬送され得る状態になったとして検知信号を後述の制御部15へ送信する。なお、本実施形態では、第1印字物検知センサ6aと第2印字物検知センサ6bを、それぞれ別のベルトコンベアに対して設置したが、同じベルトコンベアに対して設置しても良い。その場合、第1印字物検知センサ6aが同じベルトコンベアの下流側に設置され、第2印字物検知センサ6bが同じベルトコンベアの上流側に設置される。
【0014】
第1ロータリーエンコーダ7aは、印字タイミングを特定するために用いられ、下流側コンベア5aの搬送速度(印字対象物4の移動速度)に応じてパルス信号を発生させ、後述の制御部15へ送信する。第2ロータリーエンコーダ7bは、通常モードと後述する節電モードの切替の判定に用いられ、上流側コンベア5bの搬送速度(印字対象物4の移動速度)に応じてパルス信号を発生させ、後述の制御部15へ送信する。なお、ロータリーエンコーダを設けずに、印字物検知センサが遮光時間を測定することで、印字対象物4の移動速度を算出し、印字タイミングの特定やモード切替の判定が行われても良い。
【0015】
また、第2印字物検知センサ6bや第2ロータリーエンコーダ7bは、下流側コンベア5aよりも上流側にあるベルトコンベアに設置されれば良く、必ずしも下流側コンベア5aに隣接する上流側コンベア5bに設置されなくても良い。
【0016】
サーバ2は、インクジェット記録装置1から稼働情報を一定期間ごとに収集する。稼働情報には、インクジェット記録装置1の型式、インク残量、運転時間、印字回数の他、インクジェット記録装置1に設置された各センサの測定値などのセンサデータも含まれる。なお、サーバ2は、インクジェット記録装置1から直接ではなく、インクジェット記録装置1に接続されたコンピュータ(端末装置)から間接的に、稼働情報を収集しても良い。
【0017】
サーバ2は、
図1に示すように、プロセッサ21と、メモリ22と、データベース23と、インターフェース24と、を備える。プロセッサ21は、ポイントの管理に関する演算処理を実行する。メモリ22は、この演算に使用するプログラムおよび演算処理に必要なデータを記憶する。データベース23は、ポイントの管理に必要な稼働データなどを保存する記憶装置である。インターフェース24は、サーバ2の演算結果を各インクジェット記録装置1に送信する機能と、インクジェット記録装置1からデータを受信してデータベース23などに記憶する機能と、を有する。なお、サーバ2には、インクジェット記録装置1のユーザが所有する別の端末装置(例えばスマートフォン)も接続可能であり、ユーザは端末装置を利用してインクジェット記録装置1の稼働情報やポイントなどを閲覧できる。
【0018】
<インクジェット記録装置の構成>
次に、インクジェット記録装置1の構成について、
図2および
図3を用いて説明する。
図2は、インクジェット記録装置の外観斜視図であり、
図3は、インクジェット記録装置の循環系の構成を示す図である。
図2に示すように、インクジェット記録装置1は、本体11、導管12および印字ヘッド13を備える。導管12は、本体11と印字ヘッド13とを接続するものである。
【0019】
本体11は、定期的なメンテナンス作業などに必要なスペースが確保可能な場所に設置される。また、本体11の正面側には、操作表示部14が設けられている。操作表示部14は、ユーザが印字内容の設定や確認などを行うものであり、例えば入力部と出力部を兼ねたタッチパネル式のディスプレイで構成される。なお、操作表示部14の入力部と出力部は一体でも別体でも良いし、本体11とは別に設けられても良い。さらに、図示は省略しているが、本体11は、インクジェット記録装置1の消費電力を検知する電力検知センサも備えている。
【0020】
本体11は、
図3に示すように、循環するインク8を保持するインク容器16と、インク8の希釈などに用いられる溶剤(補力液)を保持する溶剤容器17と、インク8を印字ヘッド13へ供給するインク供給経路40と、インク8を印字ヘッド13から回収するインク回収経路50と、溶剤をインク容器16に供給する溶剤供給経路60と、インク8の粘度を測定するインク粘度測定経路70と、を備える。
【0021】
本体11におけるインク供給経路40には、インク供給用電磁弁41、インク供給用ポンプ42、インク供給用フィルタ43および調圧弁44が設けられる。インク供給用電磁弁41は、インク容器16に接続され、インク供給経路40の開閉を行う。インク供給用ポンプ42は、インク供給用電磁弁41の下流側に設置され、インク8を吸引、圧送する。インク供給用フィルタ43は、インク供給用ポンプ42の下流側に設置され、インク8中に混入している異物を除去する。調圧弁44は、インク供給用ポンプ42から圧送されたインク8を印字するための適正な圧力に調整する。なお、インク容器16には、内部に保持するインク8の量を計測する液面センサ18が設けられる。また、
図3では省略されているが、本体11には、インク容器16にインク8を補給するためのインクカートリッジも設置される。
【0022】
印字ヘッド13は、生産ラインを構成するベルトコンベア(下流側コンベア5a)の近傍に設置され、ベルトコンベア上を
図1の矢印で示す搬送方向に搬送される印字対象物4に印字する。印字ヘッド13は、
図3に示すように、ヒータ81、封止弁82、ノズル83、帯電電極84、偏向電極85、ガター86および吐出曲がりセンサ(図示せず)を備える。
【0023】
ヒータ81は、インク供給経路40によって本体11から供給されたインク8を必要に応じて加温する。封止弁82は、ヒータ81の下流側に設置され、通電されると開放してインク8をノズル83へ供給する。ノズル83は、本体11から供給されるインク8を吐出する吐出口を有する。帯電電極84は、ノズル83の吐出口の直進方向に設置され、インク粒子8aに所定の電荷量を付加して帯電させる。偏向電極85は、帯電電極84の直進方向に設置され、帯電したインク粒子8aを偏向させる。ガター86は、偏向電極85の直進方向に設置され、帯電・偏向されずに直進的に飛翔するインク粒子8aを捕捉する。吐出曲がりセンサは、ノズル83から吐出されたインク粒子8aが曲がっているかを検知するものである。例えば、帯電したインク粒子8aがガター86で捕捉されず、ガター86で電流が検出されない場合、吐出曲がりセンサは、インク粒子8aが曲がっていてインク8の吐出が正常でないと判定する。
【0024】
本体11におけるインク回収経路50には、インク回収用フィルタ51、インク回収用電磁弁52およびインク回収用ポンプ53が設けられる。インク回収用フィルタ51は、印字ヘッド13のガター86から本体11内に回収されたインク粒子8a中に混入している異物を除去する。インク回収用電磁弁52は、インク回収用フィルタ51の下流側に設置され、インク回収経路50の開閉を行う。インク回収用ポンプ53は、インク回収用電磁弁52の下流側に設置され、ガター86により補足されたインク粒子8aを吸引する。最終的に、インク粒子8aはインク回収用ポンプ53の下流側にあるインク容器16に回収される。
【0025】
溶剤供給経路60には、溶剤供給用ポンプ61および溶剤供給用電磁弁62が設けられる。溶剤供給用ポンプ61は、溶剤容器17に接続され、溶剤を吸引、圧送する。溶剤供給用電磁弁62は、溶剤供給用ポンプ61の下流側に設置され、溶剤供給経路60の開閉を行う。なお、
図3では省略されているが、本体11には、溶剤容器17に溶剤を補給するための溶剤カートリッジも設置される。
【0026】
インク粘度測定経路70には、粘度センサ71、粘度測定用電磁弁72および粘度測定用ポンプ73が設けられる。粘度センサ71は、インク容器16に接続され、インク容器16内のインク8の粘度を測定する。粘度測定用電磁弁72は、粘度センサ71の下流側に設置され、インク粘度測定経路70の開閉を行う。粘度測定用ポンプ73は、粘度測定用電磁弁72の下流側に設置され、インク8を吸引、圧送する。粘度測定用電磁弁72に通電されてインク粘度測定経路70が開放状態のときに粘度測定用ポンプ73が駆動すると、インク容器16内のインク8が粘度センサ71に供給されて粘度が測定され、測定が完了したインク8が、再びインク容器16に戻される。
【0027】
粘度センサ71で検出された検出信号は制御部15へ送信され、制御部15のRAM94に記憶される。制御部15では、この検出された粘度が所定範囲内にあるか否かを判定し、所定範囲外と判定した場合は、溶剤容器17内の溶剤をインク容器16に供給することで、インク8の粘度を調整する。調整の結果、粘度センサ71で検出される粘度が所定範囲内になると、溶剤の供給を停止する。なお、この粘度測定および粘度調整は、後述の印字可能モードなどが実行されている間、インク8の品質を維持するために、所定時間間隔(例えば1回/30分)で間欠的に行われる。
【0028】
インクジェット記録装置1の本体11には、
図1に示すように、本体11および印字ヘッド13を制御する制御部15も設けられる。制御部15は、各弁、各ポンプ、各センサなどを制御するとともに、インクジェット記録装置1とサーバ2との間の通信も行う。具体的には、制御部15は、インターフェース91と、MPU92(Micro Processing Unit)と、ROM93(Read Only Memory)と、RAM94(Random Access Memory)と、を有する。
【0029】
インターフェース91は、サーバ2との間で送受信を行う機能を備える。また、インターフェース91は、インクジェット記録装置1に設置される各センサでの検出信号だけでなく、ベルトコンベアに設置される印字物検知センサやロータリーエンコーダなどの検出信号を取り込むための検出信号入力部としての機能も備える。MPU92は、インクジェット記録装置1の動作全体の制御を行うための演算処理を行う。ROM93は、MPU92の演算処理に必要なプログラムやデータを記憶する。RAM94は、インターフェース91を介して受信したデータやMPU92の演算処理に必要なデータを記憶する。
【0030】
なお、制御部15は、第2印字物検知センサ6bや第2ロータリーエンコーダ7b以外の他の装置、例えばPLC(Programmable Logic Controller)からの信号を用いて、印字対象物4が搬送され得る状態になったことを特定しても良い。その場合、インクジェット記録装置1の制御部15のインターフェース91として、汎用入力の端子などが追加される。
【0031】
<インクジェット記録装置の運転モード>
以下、インクジェット記録装置1の運転モードの詳細に関し、
図4~
図11を用いて説明する。
図4は、各運転モードにおけるインクジェット記録装置の動作状況を示す表である。
【0032】
≪電源OFF≫
図5は、電源OFFの場合の動作状況を示す概略図である。インクジェット記録装置1の電源が入っていない状態であるため、各弁や各ポンプで構成される循環系だけでなく、I/O関係も動作しておらず、印字物検知センサやロータリーエンコーダから制御部15への信号入力もない。
【0033】
≪休止モード≫
図6は、休止モードの場合の動作状況を示す概略図である。ユーザがインクジェット記録装置1の電源を入れると、I/O動作がONとなり、印字物検知センサやロータリーエンコーダから制御部へ検出信号が入力されるようになる。ただし、循環系は未だ動作しておらず、インク吐出やインク粘度測定/調整は行われない。このとき、封止弁82は閉鎖されたままであり、帯電電極84および偏向電極85にも電圧は印加されず、吐出曲がりセンサを用いた異常判定も行われない。休止モードでは、I/O関係が動作するため、電源OFFのときと比べると、僅かに消費電力が高くなる。
【0034】
≪スタンバイモード≫
図7は、スタンバイモードの場合の動作状況を示す概略図である。制御部15が、インク供給用電磁弁41に通電してインク供給経路40を開放するとともに、インク供給用ポンプ42を駆動するため、インク容器16に保持されたインク8が、本体11から印字ヘッド13に供給される。また、制御部15が、封止弁82に通電して封止弁82を開放することで、インク8は、ノズル83からインク粒子8aとして吐出される。さらに、制御部15は、帯電電極84に電圧を印加することで、インク粒子を帯電させる。ただし、偏向電極には電圧が印加されないので、インク粒子8aは偏向せず、印字対象物4への印字は行われない。
【0035】
また、制御部15は、吐出曲がりセンサによる検知信号に基づいて、帯電したインク粒子8aがガター86で正常に捕捉されたか否かを判定するようになる。印字に使用されなかったインク粒子8aは、制御部15がインク回収用ポンプ53を駆動することで、ガター86からインク容器16に回収される。さらに、制御部15は、粘度測定用電磁弁72を開放し、粘度測定用ポンプ73を駆動することで、インクの粘度を測定し、必要に応じて溶剤をインク容器16に供給してインクの粘度を調整する。このインク粘度測定/調整は、間欠的に行われる。スタンバイモードでは、I/O関係だけでなく、循環系も動作するようになるので、前述の休止モードと比べて消費電力が高い。
【0036】
≪印字可能モード≫
図8は、印字可能モードの場合の動作状況を示す概略図である。印字可能モードでは、前述のスタンバイモードの場合と異なり、偏向電極85にも電圧が印加される。このため、第1印字物検知センサ6aが印字対象物4を検知すると、所定のタイミングで印字ヘッド13から印字対象物4への印字が行われる。この印字可能モードでは、偏向電極85にも電圧が印加されるようになるので、他のモードと比べて消費電力が最も高い。
【0037】
≪アイドリングモード≫
図9は、アイドリングモードの場合の動作状況を示す概略図である。飲料などの製品の生産中でも、印字対象物4の容器などは、常に搬送され続ける訳ではなく、容器の型が変更される場合などは、搬送されない状態となる。このような状態において、消費電力の最も高い印字可能モードを維持するのは、非効率的であり、環境への負荷ともなる。そこで、印字対象物4が第1所定時間以上搬送されない場合、制御部15は、印字可能モードよりも節電となるアイドリングモードに移行させる。ここで、印字対象物4が搬送されないことは、第2印字物検知センサ6bや第2ロータリーエンコーダ7bに基づき判定される。上流側コンベア5bに設置されたセンサに基づいて、印字対象物4が搬送され得ないことが判定されるので、迅速な判定や高精度な判定が可能となる。
【0038】
アイドリングモードでは、偏向電極85には電圧が印加されなくなるので、印字可能モードと比べて消費電力が低い。なお、前述のスタンバイモードでは、印字対象物4の搬送が検知されても印字可能モードに移行しないが、アイドリングモードでは、印字対象物4の搬送が検知されると直ちに印字可能モードに移行する。
図10は、アイドリングモードから印字可能モードに移行したときの状況を示す概略図である。
図10に示すように、印字可能モードに移行すると、偏向電極85に電圧が印加される。
【0039】
≪アイドリングストップモード≫
図11は、アイドリングストップモードの場合の動作状況を示す概略図である。前述のアイドリングモードでは、印字可能モードと比べれば消費電力が低いものの、循環系などは動作し、インク8もノズル83から吐出されるので、依然として高い電力が消費される。そこで、アイドリングモードに移行した後、印字対象物4がさらに第2所定時間以上搬送されない場合、制御部15は、アイドリングモードよりも節電となるアイドリングストップモードに移行させる。
【0040】
アイドリングストップモードでは、インク供給用ポンプ42の駆動が停止され、インク供給用電磁弁41への通電も停止されてインク供給経路40が閉鎖するため、インク8が印字ヘッド13に供給されなくなる。このとき、封止弁82への通電も停止し、帯電電極84にも電圧が印加されなくなり、吐出曲がりセンサを用いた異常判定やインク粘度測定/調整も行われなくなる。
【0041】
アイドリングストプモードは、動作状況としては前述の休止モードに近くなるが、休止モードと異なり、調圧弁44によってノズル83直前までのインクが高圧に維持される。したがって、アイドリングストップ中に印字対象物4の搬送が検知されると、印字可能モードに移行して、ノズル83から直ちにインク粒子8aを吐出できる状態となる。
【0042】
<ポイントの演算方法>
次に、サーバ2におけるポイントの演算方法に関し、
図12および
図13を用いて説明する。本実施形態では、インクジェット記録装置1のユーザによって、環境に配慮した行為が実行され、温室効果ガスの排出削減に貢献した場合、ポイント(以下ではエコポイントと称する)がユーザに付与される。
図12は、ポイントが付与される行為の例を示した図である。CO2の排出削減に寄与し、ポイント付与の対象となる行為としては、次のような例が挙げられる。
【0043】
1つ目の例について説明する。本実施形態のインクジェット記録装置1は、前述のように、通常モード(印字可能モード)と、節電モード(アイドリングモードやアイドリングストップモード)に自動的に切り替えて運転が可能である。節電モードで運転された場合、消費電力が低くなるので、環境に配慮した行為が実行され、CO2の排出削減に寄与したと見做すことができる。
【0044】
2つ目の例について説明する。サービス員がインクジェット記録装置1の設置現場を訪問して行うメンテナンスではなく、オンラインによるリモートメンテナンスが行われた場合、設置現場への移動手段で排出されるCO2などが削減されるる。この場合、例えば、サービス員またはサービス員を派遣する管理事業者が、サーバ2と通信可能な端末装置を利用してリモートメンテナンスの実施情報を入力する。サーバ2は、受信した情報に含まれるリモートメンテナンスに対応するエコポイントを演算し、インクジェット記録装置1のIDに紐づくユーザにエコポイントを付与する。
【0045】
3つ目の例について説明する。純正品のカートリッジが回収されたり、推奨周期で部品交換が行われたりした場合にも、結果的にCO2の削減に繋がるため、エコポイントが付与される。この場合、サーバ2は、例えば、出荷時のカートリッジに付された識別情報と、回収時のカートリッジに付された識別情報と、を照合する。出荷時のカートリッジの識別情報は、例えば、ユーザがRFIDをスキャンしたり番号などを手入力したりすることで、サーバ2に送信される。回収時のカートリッジの識別情報は、例えば、回収事業者などがRFIDをスキャンするなどして、サーバ2に送信される。サーバ2は、出荷時と回収時のIDが一致しない場合、純正品でないとしてポイントを付与しないようにしたり、推奨周期を超過しての回収の場合、ポイントを減算したりする。
【0046】
4つ目の例について説明する。ユーザがリビルドされた装置や部品を利用した場合にも、新品の装置などを利用する場合と比べて、結果的にCO2の削減に繋がるため、エコポイントが付与される。リビルド品が利用されたことの情報は、管理事業者などの端末装置からサーバ2へ送信されても良いし、ユーザが部品を装置に取り付ける際に部品の識別情報を入力することでサーバ2へ送信されても良い。
【0047】
5つ目の例について説明する。ユーザが低環境負荷モデルの装置や部品を購入した場合にも、そうでない場合と比べて、結果的にCO2の削減に繋がるため、エコポイントが付与される。
【0048】
ここで、前述の1つ目の例に関し、節電モードで運転された場合における、エコポイントの演算方法について、
図13に基づき説明する。
図13は、インクジェット記録装置で消費される電力の推移の一例を示す図である。
【0049】
インクジェット記録装置1の電源が入ると、休止モードを経て、生産準備のためのスタンバイモードになり、消費電力が増加する。さらに、生産中の印字可能モードになると消費電力が最大となる。その後、型替えなどのため、印字対象物4が第1所定時間以上搬送されない場合、自動的にアイドリングモードに移行する。すると、印字可能モードが継続されたと仮定した場合と比べて、消費電力が低減する。さらに、印字対象物4が第2所定時間以上搬送されない場合、自動的にアイドリングストップモードに移行する。すると、印字可能モードが継続されたと仮定した場合と比べて、消費電力がさらに低減する。なお、各運転モードにおけるインクジェット記録装置1での消費電力のデータは、電力検知センサからサーバ2に送信される。
【0050】
サーバ2は、アイドリングモードまたはアイドリングストップモードであった運転時間の消費電力の合計値と、当該運転時間が印字可能モードであったと仮定した場合の消費電力の合計値と、の差分(
図13の斜線で示す領域の面積に相当)を算出する。さらに、サーバ2は、算出した差分に対して、所定の変換係数を乗算することにより、CO2の排出削減量を求め、当該削減量をエコポイントに変換する。なお、サーバ2は、CO2の削減量を求めずに、消費電力の低減量を直接エコポイントに変換しても良い。
【0051】
このように、サーバ2は、インクジェット記録装置1から収集する稼働情報に基づき、CO2の排出削減に寄与する行為が実行されたか否かを判定し、実行された場合には相応のエコポイントを付与する。なお、前述の例では消費電力に基づいてエコポイントが演算されたが、インクや溶剤の消費量に基づいてエコポイントが演算されても良い。また、インクジェット記録装置1から収集する稼働情報だけでなく、サーバ2と通信可能な端末装置によって入力された情報に基づき、エコポイントが演算されても良い。
【0052】
<ポイントの利用方法>
ユーザは、付与されたポイントを、温室効果ガスの排出削減に寄与するサービスや商品の購入のために利用できる。ポイントの利用方法としては、次のような例が挙げられる。
【0053】
1つ目の例として、ユーザは、自らの排出量を他の場所の削減量で埋め合わせて相殺するための(カーボン・オフセット)クレジットの購入に充てることもできる。この場合、ポイントを提供する事業者、例えば、インクジェット記録装置1を製造・販売したりサーバ2を管理したりする事業者は、他の場所で削減されたCO2排出量のクレジットを、ポイント利用のために一定量予め買い取っておくこととなる。
【0054】
2つ目の例として、ユーザは、エコモデルのインクジェット記録装置1やインクなどを購入する際に、値引きを受けることができる。また、3つ目の例として、CO2を削減するための活動、例えば、植林など森林保全の活動への投資に充てることもできる。
【0055】
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。また、前述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…インクジェット記録装置、2…サーバ、3…通信回線、4…印字対象物、5a…下流側コンベア、5b…上流側コンベア、6a…第1印字物検知センサ、6b…第2印字物検知センサ、7a…第1ロータリーエンコーダ、7b…第2ロータリーエンコーダ、8…インク、8a…インク粒子、11…本体、12…導管、13…印字ヘッド、14…操作表示部、15…制御部、16…インク容器、17…溶剤容器、18…液面センサ、21…プロセッサ、22…メモリ、23…データベース、24…インターフェース、40…インク供給経路、41…インク供給用電磁弁、42…インク供給用ポンプ、43…インク供給用フィルタ、44…調圧弁、50…インク回収経路、51…インク回収用フィルタ、52…インク回収用電磁弁、53…インク回収用ポンプ、60…溶剤供給経路、61…溶剤供給用ポンプ、62…溶剤供給用電磁弁、70…インク粘度測定経路、71…粘度センサ、72…粘度測定用電磁弁、73…粘度測定用ポンプ、81…ヒータ、82…封止弁、83…ノズル、84…帯電電極、85…偏向電極、86…ガター、91…インターフェース、92…MPU、93…ROM、94…RAM