(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169482
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ケイ素ナノ粒子を含む送達システム
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20241128BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241128BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241128BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241128BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241128BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241128BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241128BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P27/02
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/24
A61K31/7105
A61K33/00
A61K9/14
A61K9/10
A61K9/51
A61K31/713
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158947
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2021557827の分割
【原出願日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】1904337.1
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512021597
【氏名又は名称】エスアイエスエイエフ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SISAF LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】サフィー-シーベルト,ローハイ スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】バラン-ラシュワルツカ,ポーリーナ マルゴジャタ
(72)【発明者】
【氏名】ステラ,フラヴィア マリア
(72)【発明者】
【氏名】トラビ-ポーア,ナスルーラ
(57)【要約】
【課題】角膜を含むがこれに限定されない身体部位にsiRNA及びmRNAを送達する、有効で安全かつ非侵襲性の手段を提供する。
【解決手段】ケイ素ナノ粒子、少なくとも1つのアミノ酸、及び少なくとも1つの脂質を含み、該ケイ素ナノ粒子が少なくとも50重量%のケイ素を含む、短鎖干渉RNA又はメッセンジャーRNAなどの核酸を制御して放出するための組成物を開示する。関連する組成及び方法も開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短鎖干渉RNA又はメッセンジャーRNAである核酸を制御して放出するための組成物であって、
少なくとも1つの脂質で表面処理され、少なくとも1つのアミノ酸でさらに処理されたケイ素ナノ粒子を含み、
前記ケイ素ナノ粒子は、少なくとも50重量%のケイ素を含み、前記短鎖干渉RNA又はメッセンジャーRNAがロードされており、
ケイ素の核酸に対する比が2:1~8:1である、組成物。
【請求項2】
前記核酸は短鎖干渉RNAである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ケイ素の核酸に対する比は2:1~3:1である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
遺伝子導入試薬をさらに含む、及び/又は、少なくとも1つの二糖をさらに含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記遺伝子導入試薬はリポフェクタミンである、
請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
脂質のケイ素に対する比は1:1~15:1である、及び/又は、アミノ酸のケイ素に対する比は0.05:1~2:1である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ケイ素ナノ粒子は20~200nmの平均直径を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの脂質は、ホスファチジルコリン、水素化ホスファチジルコリン、ジデカノイルホスファチジルコリン、ミリストイル(mirystoil)ホスファチジルコリン、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、コレステリルN-(2-ジメチルアミノエチル)カルバメート、ステアリルアミン、又はそれらの組合せから選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの脂質は、ホスファチジルコリン、水素化ホスファチジルコリン、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、コレステリルN-(2-ジメチルアミノエチル)カルバメート、ステアリルアミン、又はそれらの組合せから選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアミノ酸は、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、又はそれらの組合せから選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
短鎖干渉RNA又はメッセンジャーRNAである核酸を制御して放出するための薬物の製造における組成物の使用であって、
前記組成物は、少なくとも1つの脂質で表面処理され、少なくとも1つのアミノ酸でさらに処理されたケイ素ナノ粒子を含み、
前記ケイ素ナノ粒子は、少なくとも50重量%のケイ素を含むと共に、前記短鎖干渉RNA又はメッセンジャーRNAがロードされており、
ケイ素の核酸に対する比が2:1~8:1である、使用。
【請求項12】
眼の障害の処置に使用するための薬物の製造における、
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
眼部に送達するための薬物の製造における、
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
眼組織の処置のための薬物の製造における、
請求項1~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記眼組織が、角膜、強膜、虹彩、毛様体、脈絡膜、小帯線維、水晶体嚢、水晶体核、硝子体、及び網膜から選択される、
請求項14に記載の使用。
【請求項16】
眼球の障害の処置のための薬物の製造における、
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記眼球の障害は、黄斑変性、結膜炎、緑内障、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、円錐角膜、白内障、網膜炎、又はぶどう膜炎から選択される、
請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記眼球の障害は黄斑変性である、
請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記脂質および前記アミノ酸は、
(a)ステアリルアミン(SA)、ホスファチジルコリン(PC)およびグリシンであるか、または、
(b)ステアリルアミン(SA)、ジオレオイルL-α-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、N-(2-ジメチルアミノエチル)カルバメートコレステロール(DC-Chol)およびグリシンである、
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記脂質および前記アミノ酸は、
(a)ステアリルアミン(SA)、ホスファチジルコリン(PC)およびグリシンであるか、または、
(b)ステアリルアミン(SA)、ジオレオイルL-α-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、N-(2-ジメチルアミノエチル)カルバメートコレステロール(DC-Chol)およびグリシンである、
請求項11~18のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物活性剤の送達のための送達システムに関する。より具体的に、しかし排他的ではなく、この発明は、短鎖干渉RNA、メッセンジャーRNA、又は他の核酸の送達のためのケイ素ナノ粒子の使用に関する。また、本発明は関連する組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、その特異性のため、遺伝子疾患の治療の取り組みとして少なからぬ興味を引いている。短鎖干渉RNA(低分子干渉RNA又はsiRNAとしても知られる)は、実質的にいずれの遺伝子も標的にするように設計することができ、疾患の処置に大きな可能性を有する。siRNA技術が医学において大きな治療の可能性をもつことは明らかである。しかしながら、そのインビボ及びインビトロの用途における主な制限の1つは、siRNA分子が細胞膜を超えられず、細胞質に達することができないということである。siRNA骨格のリン酸基から生じる負の電荷が、負荷電細胞膜に静電的に反発するので、siRNAが細胞膜を超えて拡散できない。また、細胞膜を超えてsiRNAを送達することは、ネイキッドsiRNA分子を劣化させる、有効な細胞及び全身の防御機構による、そのインビトロの短い半減期によっても妨げられる。siRNAの高分子量、標的組織における低特異性及び低取り込み、細胞毒性、及び望ましくないオフターゲット作用など、医学においてsiRNA治療法を適切に適用することに対する他の障害が存在する。
【0003】
また、mRNAは治療剤としての有望性を示す。mRNAには、DNAに対するいくつかの利点があり、これには、いずれの核移行の要求もなく、ゲノム組込みを損傷する可能性のリスクがはるかに低いことを含む。siRNAが、遺伝子の高発現又は不適切な発現に起因する障害の処置に大きく可能性を示す一方、mRNAは、遺伝子低発現に起因する障害の処置に使用される可能性がある。また、mRNAには、抗腫瘍ワクチンを含むワクチンに使用される可能性がある。mRNAに基づく治療法は、任意の治療用核酸のものと同様の課題、すなわち送達の安全性、特異性、及び効率の課題に直面している。
【0004】
また、RNA治療法(siRNA及びmRNA治療法を含む)は、眼の障害の処置に適用可能であるが、内因性の物理的バリア、効果的な薬剤クリアランス機構、及び他の眼球組織の複雑性により、眼球のRNA送達に大きな課題をもたらしている。眼球表面は、短い接触時間、涙液の存在、及び角膜細胞透過を合わせた作用のため、薬剤送達において、より複雑な生物学的バリアの1つである。眼の障害の局所処置における大きな課題の1つは、液体の喪失及び病原体侵入に対する有効なバリアを形成するように適応する角膜の構造である。
【0005】
すべての眼組織に注射によってアクセス可能であるが、siRNA誘導遺伝子サイレンシング及びmRNA媒介処置に必要とされる頻回の処置レジメンでは、局所適用が好ましいと考えられる。従来より、角膜への薬剤送達は、点眼剤が鼻涙管を介して速やかに排出されるため、問題になる。速やかな涙の排出は、瞬目反射と併せて、活性剤の角膜を通る吸収に利用できる角膜前滞留時間を短くする。点眼製剤に含有される活性化合物の95%が、結膜を超えられない、又は鼻涙管を介した排出によって喪失するため、失われると推定されている。眼球の保護機構があるにもかかわらず、局所製剤はある程度の成功を収めているが、角膜のバリア特性のため、なお課題に直面している。
【0006】
siRNAを眼球表面に直接滴下することは、インビトロにおける眼球表面及び前部障害の処置に用いられている。しかしながら、mRNA及びsiRNAを含む任意の化合物を眼球に局所投与することは、眼球の解剖学的な制約及び生理学的な保護機構によって、限定的となっている。臨床試験に進んでいる、いくつかの化学改変siRNA治療法を以下に列挙しているが、その大多数は硝子体内注射に関与する。
・SYL1001、Sylenthis S.A.、フェーズ1、2完了、フェーズ3進行中-点眼剤
・SYL040012 (bamosiran)、Sylenthis S.A.、フェーズ1、2完了-点眼剤
・Sirna-027(AGN211745)、Allergan、フェーズ1、2完了-硝子体内注射
・Bevasiranib(Cand5)、OPKO Health Inc.、フェーズ2完了-硝子体内注射
・QPI-1007、Quark Pharmaceuticals、フェーズ1完了-硝子体内注射
・PF-04523655、Quark Pharmaceuticals、フェーズ1完了-硝子体内注射
【0007】
眼疾患におけるRNAに基づく治療は頻回の処置レジメンを必要とするので、複数回の注射を必要とすることにより、白内障、網膜剥離、硝子体出血及び眼内炎の可能性が高まる。
【0008】
RNA送達の他の取り組みは、改変ウイルス粒子を含有する眼注射剤を含む。この粒子は、眼に核酸ペイロードを送達するように改変される。そうしたウイルスの種類は(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びレンチウイルス)RNAi療法のベクターとして研究されている。自己相補的AAV又はヘルパー依存型アデノウイルスなどの改変ウイルスベクターは、ウイルス性送達において現在の最新技術である。いくつかの眼科用途が現在開発されている。しかしながら、ウイルスベクターは、突然変異誘発の可能性、限定的なロード能力、適切な標的化、挿入予測性、作製の高コスト、及び有害免疫反応性を含む不利点がある。
【0009】
mRNA又はsiRNAを発現するプラスミドベクターの送達は、いくらかの成功を含みながら試みられているが、そうしたDNAに基づく発現ベクターは、宿主ゲノムに組み込まれ、挿入変異誘発の確率を高める可能性がある。改変非ウイルス性RNA送達システムの利点は、これらが比較的安全であり、標的リガンドで容易に修飾することができるということである。さらに、RNAをナノ担体に封入することは、長期にわたるRNAの持続放出形態を提供することに有用であり、ゆえに処置レジメンを改善させ得る。
【0010】
天然及び合成のポリマー、ポリプレックス、リポソーム、リポプレックス、ペプチド、及びデンドリマーナノ物質を含む多数の非ウイルス性担体が、RNA送達に対して提案されている。これらの方策の大部分が、インビボ及びインビトロにおいて異なる程度の成功を含みながら試みられているが、そのいずれも、眼及び他の組織の障害におけるRNA療法の臨床における用途に用いられていない。
【0011】
多くの種類のポリマーが、オリゴヌクレオチドを送達するために用いられているが、共有結合又は封入の必要なくRNAを静電的に結合することができるということ、及びアミン官能基化カチオン性ポリマーがエンドソーム緩衝作用を与えて、細胞質基質内RNA送達に逃れることができるということから、カチオン性ポリマーを使用することに多くの注目が集まっている。多数の物質が研究されているが、安全性の懸念なくRNA送達を向上するための生分解性ナノ単体の開発は課題となっている。
【0012】
利用可能なRNA送達の方策が多数あるにもかかわらず、インビボにおいて安全で効果的な送達がないことにより、病院でのRNA治療法の移行を限定的にしている。オリゴヌクレオチドを効果的に凝縮し、生理学的条件において安定し、眼球のバリア機構を問わず細胞の取り込みを促進し、RNAの細胞質への放出を促進することができる強力な担体システムが、RNA送達に必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、角膜を含むがこれに限定されない身体部位にsiRNA及びmRNAを送達する、有効で安全かつ非侵襲性の手段が未だ求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様において、ケイ素ナノ粒子、少なくとも1つのアミノ酸、及び少なくとも1つの脂質を含み、該ケイ素ナノ粒子が少なくとも50重量%のケイ素を含む、短鎖干渉RNA又はmRNAなどの核酸を制御して放出するための組成物を提供する。
【0015】
有利には、そうした組成物における脂質の存在は、siRNA又はmRNAなどの核酸のロードを高めることができる必要なゼータ電位をもたらして、標的部位における核酸放出速度を制御するように、ケイ素ナノ粒子の表面電荷に有益な作用を有する。また、製剤における少なくとも1つの脂質の存在により、ケイ素ナノ粒子が生体利用可能なオルトケイ酸(OSA)分解生成物に加水分解するように、ケイ素の加水分解速度を制御することができる。特定の実施形態において、核酸はRNAである。特定の実施形態において、RNAはsiRNAである。特定の実施形態において、RNAはmRNAである。
【0016】
上述の組成物は少なくとも1つのアミノ酸をさらに含む。有利には、組成物におけるアミノ酸の存在は、経時で、ケイ素ナノ粒子によって輸送される核酸の放出速度に影響することが認められている。
【0017】
好ましくは、上述の組成物は遺伝子導入試薬をさらに含む。
【0018】
本発明の第2の態様において、薬物として使用するための、本発明の第1の態様における組成物を提供する。
【0019】
本発明の第3の態様において、眼部に送達するための、本発明の第1の態様における組成物を提供する。
【0020】
自明のことではあるが、本発明の1つの態様に関して記載した特徴は本発明の他の態様に組み込むことができる、ということが理解される。例えば、本発明の方法は、本発明の装置に関して記載した任意の特徴を組み込むことができ、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明のsiRNAロード組成物及び非ロード組成物のゼータ電位の比較を示す。各製剤はF1~F5として表示する。
【
図2】
図2は、ケイ素ナノ粒子を、ステアリルアミン(
図2)で表面処理し、アミンがアルギニンであるときの、本発明のsiRNAロード組成物及び非ロード組成物のゼータ電位の比較を示す。
【
図3】
図3は、ケイ素ナノ粒子を、PCで表面処理し、アミンがアルギニンであるときの、本発明のsiRNAロード組成物及び非ロード組成物のゼータ電位の比較を示す。
【
図4】
図4は、ケイ素ナノ粒子を、レシチンで表面処理し、アミンがアルギニンであるときの、本発明のsiRNAロード組成物及び非ロード組成物のゼータ電位の比較を示す。
【
図5】
図5は、HCE細胞における本発明の組成物の遺伝子導入効率の結果を示す。第1欄の細胞はDAPIで染色され、及び青色で原蛍光を発して核を示す。第2欄の細胞は緑色で原蛍光を発光し、本発明の製剤F2~F5の正常な遺伝子導入を示す。
【
図6】
図6は、ゲル電気泳動実験の結果を示し、本発明において調製したケイ素ナノ粒子が、特に2:1以上のケイ素ナノ粒子のmRNAに対する比で(例えば2:1~8:1の範囲の比で)、mRNAを正常に封入することを示す。
【
図7】
図7は、分光光度実験の結果を示し、本発明において調製したケイ素ナノ粒子が、特に2:1以上のケイ素ナノ粒子のmRNAに対する比で(例えば2:1~8:1の範囲の比で)、mRNAを正常に封入することを裏付ける。
【
図8】
図8は、siRNAをロードした本発明のケイ素ナノ粒子送達システムの遺伝子導入効率を測定する実験の結果を示す。
【
図9】
図9は、siRNAをロードした本発明のケイ素ナノ粒子送達システムで処理した細胞の遺伝子導入後生存度を測定する実験の結果を示す。
【
図10】
図10は、本発明におけるケイ素ナノ粒子送達システムを用いてsiRNAを細胞に送達するときのsiRNA誘導遺伝子サイレンシングの度合いを測定する実験の結果を示す。
【
図11】
図11は、局所のケイ素ナノ粒子製剤によるインビボの眼球におけるsiRNA送達を評価する実験の結果を示す。
【
図12】
図12は、siRNAをロードした本発明のケイ素ナノ粒子送達システムで処理したとき、生動物イメージングによってインビボにおけるマウス角膜ルシフェラーゼ発現を測定する実験の結果を示す。
【
図13】
図13は、siRNAをロードした本発明のケイ素ナノ粒子送達システムで処理したとき、生動物イメージングによってインビボにおけるマウス角膜ルシフェラーゼ発現を測定する実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の態様において、ケイ素ナノ粒子、少なくとも1つのアミノ酸、及び少なくとも1つの脂質を含み、該ケイ素ナノ粒子が少なくとも50重量%のケイ素を含む、siRNA又はmRNAなどの核酸を制御して放出するための組成物を提供する。
【0023】
(定義)
本開示において、化合物の誘導体は、実質的に同じ構造を有するが、1つ以上の置換を有する化合物とすることができる。例えば、1つ以上の化学基を、付加する、欠失させる、又は他の基に置換することができる。特定の好ましい実施形態において、誘導体は、それが由来する化合物の医薬又は化粧料活性の少なくとも一部、例えば、それが由来する化合物の活性の少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、又は10%を保持する。一部の実施形態において、誘導体は、それが由来する化合物と比較して医薬又は化粧料活性の増大を示し得る。例えば、ペプチドの場合では、ペプチド誘導体は、1つ以上のアミノ酸残基を付加した、欠失させた、又は他のアミノ酸残基に置換したペプチドを包含することができる。置換の場合、置換は、非保存置換又は保存置換、好ましくは保存置換とすることができる。
【0024】
本開示の文脈において、PCはホスファチジルコリンを示し、SAはステアリルアミンを示し、DOPEはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを示し、DC-コレステロールは、コレステリル3β-N-(ジメチルアミノエチル)カルバメートハイドロクロライドを示す。
【0025】
(ケイ素ナノ粒子)
本発明のすべての態様において、組成物はケイ素ナノ粒子を含む。ケイ素ナノ粒子は、5~400nm、例えば50~350nm、例えば80~310nm、例えば100~250nm、例えば120~240nm、例えば150~220nm、例えば約200nmの公称径を有する。ケイ素ナノ粒子は、純ケイ素又は加水分解可能なケイ素含有物質のいずれかから作製される。ケイ素ナノ粒子は好ましくは多孔性である。上記で示す公称径は平均径を指し得、ケイ素ナノ粒子試料における総粒子の少なくとも90%は特定した寸法範囲内にあるとすることができる。ケイ素ナノ粒子は、純ケイ素又は加水分解可能なケイ素含有物質のいずれかから作製される。ケイ素ナノ粒子は、粒子をフッ化水素酸(HF)/エタノール混合物に接触させて、電流を印加するなどの標準的な技術によって多孔性に作製することができる。孔の密度及びその寸法を、HF濃度及び電流密度及び露出時間を変えることによって制御し、走査電子顕微鏡法及び/又は窒素吸着脱着容積等温測定によってモニタリングすることができる。
【0026】
ケイ素ナノ粒子は、純ケイ素又は他の加水分解可能なケイ素含有物質とすることができる。ケイ素ナノ粒子が純ケイ素ではない場合、少なくとも50重量%のケイ素を含む。例えば、ケイ素ナノ粒子は、少なくとも60、70、80、90、又は95%のケイ素を含むことができる。ケイ素ナノ粒子は、好ましくは、同じ寸法の純ケイ素粒子における加水分解速度の少なくとも10%の加水分解速度(例えば、室温のPBSバッファーにおいて)を示す。ケイ素含有物質の加水分解のアッセイは、例えば国際公開第2011/001456号など、当該技術分野で広く知られている。
【0027】
本発明のすべての態様におけるナノ粒子(例えば、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上、並びに/又は、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化したナノ粒子)は、好ましくは多孔性である。例えば、その多孔性により、同等の寸法を有する非孔性物質の表面積に対して、その表面積が少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、又は4倍増加し得る。一部の実施形態において(例えば、ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上、並びに/又は、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、その総面積は、好ましくは、その多孔性のため、対応する非孔性粒子の表面積に対して、少なくとも50%又は少なくとも100%増加する。多くの場合、多孔性ケイ素ナノ粒子は、実際に、その多孔性のため総表面積がはるかに大きく増加することとなる。
【0028】
好ましくは、(例えば、ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上、並びに/又は、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子を、皮膚表面への送達又は眼の局所送達などの局所送達のため製剤化するとき)ケイ素ナノ粒子は、2~300nm、例えば20~290nm、20~280nm、例えば20~270nm、20~260nm、20~250nm、20~240nm、20~230nm、20~220nm、20~210nm、特に20~200nmの平均径を有する。有利には、この寸法のケイ素ナノ粒子は、pilosebaceous ostra又は汗管(孔)を阻害するには小さいが、その小さな寸法により、粒子が、表面薬剤リザーバーのみとして作用するのではなく、毛包の底部まで能動的に透過することができるので、皮膚送達に好適である。
【0029】
(脂質)
本発明のすべての態様において、(例えば、ナノ粒子を、グリシン、アルギニン、及びヒスチジンの1つ以上と共に製剤化するとき)ケイ素ナノ粒子は、少なくとも1つの脂質(例えば、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上、このように製剤化したナノ粒子は眼部に送達することに適切とすることができる)で表面処理される。ケイ素ナノ粒子を脂質で表面処理することは、生物活性剤の放出速度の制御を支援するということが分かっている。生物活性剤(例えば、siRNA又はmRNAなどの核酸)の特性を条件として、ナノ粒子表面を処理するために使用する脂質の種類が、その放出速度に影響を及ぼす。特に、ケイ素ナノ粒子を脂質で表面処理することは、短鎖干渉RNA又はメッセンジャーRNAのロードを高めることができる必要なゼータ電位をもたらして、標的部位におけるその放出速度を制御するように、ケイ素ナノ粒子の表面電荷に有益な作用を有する。
【0030】
(ケイ素対脂質の比)
好ましくは、(例えば、脂質を、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上から選択するとき)脂質のケイ素に対する比は、1:1~15:1、例えば1:1~13:1、1:1~12:1、1:1~11:1、1:1~10:1、1:1~9:1、1:1~8:1、1:1~13:1、2:1~12:1、2:1~11:1、2:1~10:1、2:1~9:1、2:1~8:1、例えば1:1~7:1、2:1~7:1、3:1~6:1、4:1~5:1である。有利には、この脂質のケイ素に対する比は、ケイ素ナノ粒子によって輸送される生物活性剤(例えば、siRNA又はmRNAなどの核酸)の放出を制御し、安定化させることができるとともに、ケイ素の生体利用可能な分解生成物であるOSAの放出を制御することができる多重膜小胞システムを提供する。
【0031】
有利には、脂質化合物は、ケイ素ナノ粒子の表面電荷に著しい作用をもたらすことができる。ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、及びレシチンで処理したケイ素ナノ粒子は、ゼータ電位分析を行ったとき、負の表面電荷を示した(1:1~1:3の範囲のケイ素:脂質の比で、-60~-20mVの範囲)。ステアリルアミンで処理したケイ素ナノ粒子表面は、正のゼータ電位を示す(1:1~1:3の範囲のケイ素:脂質の比で、0~40mVの範囲)。
【0032】
一実施形態において、本発明の第1の態様の組成物は、コーティングしたナノ粒子の総重量に基づく少なくとも5重量%の脂質、例えば少なくとも20重量%、典型的に少なくとも30重量%、及び特に少なくとも50重量%の脂質で表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。例えば1:1、1.5:1、2:1、又は2.5:1など、0.8:1~3:1の脂質対ケイ素のモル比が、特に有利であることが分かっている。
【0033】
特定の実施形態において(例えば、ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上、並びに/又は、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達することに適切とすることができるとき)、本発明の第1の態様の組成物は、コーティングしたナノ粒子の総重量に基づく少なくとも5重量%のリン脂質、例えば少なくとも20重量%、典型的に少なくとも30重量%、及び特に少なくとも50重量%のリン脂質で表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。例えば1:1、1.5:1、2:1、又は2.5:1など、0.8:1~3:1の脂質対ケイ素のモル比が、特に有利であることが分かっている。
【0034】
一実施形態において、リン脂質は、500~1000の範囲の数平均分子量を有する。特に適切なリン脂質はグリセロリン脂質である。特に適切なリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)又は水素化ホスファチジルコリンなど、極性頭部基が四級アンモニウム部分と連結したものである。リン脂質の種類は、製剤の特性に依存して選択することができ、中性又は負荷電脂質は非プロトン性製剤に好ましい一方、正荷電及びCH3短鎖の脂質はプロトン性製剤に好ましい。好ましくは、側鎖は、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールの鎖などの、炭素原子が15以上の脂肪族側鎖、又はエーテル単位が6以上反復するエーテル側鎖である。
【0035】
好ましくは(例えば、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上を含み、眼部に送達することに適切とすることができる、製剤において)、脂質は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、ステアリルアミン(SA)、レシチン、又はそれらの任意の組合せからなる群より選択される。
【0036】
さらなる実施形態において、ケイ素ナノ粒子表面は、ホスファチジルコリン、水素化ホスファチジルコリン、ステアリルアミン、レシチン、又はそれらの組合せで処理することができる。これは、siRNA/mRNAが荷電する場合、特に有利とすることができる。
【0037】
特定の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上、並びに/又は、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達するために製剤化することができるとき)、本発明の第1の態様の組成物は、コーティングしたナノ粒子の総重量に基づく少なくとも5重量%の水素化ホスファチジルコリン、例えば少なくとも20重量%、典型的に少なくとも30重量%、及び特に少なくとも50重量%の水素化ホスファチジルコリンで表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。例えば1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、又は4.5:1など、0.8:1~5:1の水素化ホスファチジルコリン対ケイ素のモル比が、特に有利であることが分かっている。
【0038】
特定の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達するために製剤化することができるとき)、本発明の第1の態様の組成物は、コーティングしたナノ粒子の総重量に基づく少なくとも5重量%のホスファチジルコリン、例えば少なくとも20重量%、典型的に少なくとも30重量%、及び特に少なくとも50重量%のホスファチジルコリンで表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。例えば1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、又は4.5:1など、0.8:1~5:1のホスファチジルコリン対ケイ素のモル比が、特に有利であることが分かっている。
【0039】
特定の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達するために製剤化することができるとき)、本発明の第1の態様の組成物は、コーティングしたナノ粒子の総重量に基づく少なくとも5重量%のレシチン、例えば少なくとも20重量%、典型的に少なくとも30重量%、及び特に少なくとも50重量%のレシチンで表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。例えば1:1、1.5:1、2:1、又は2.5:1など、0.8:1~3:1のレシチン対ケイ素のモル比が、特に有利であることが分かっている。
【0040】
特定の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達するために製剤化することができるとき)、本発明の第1の態様の組成物は、コーティングしたナノ粒子の総重量に基づく少なくとも5重量%のステアリルアミン、例えば少なくとも20重量%、典型的に少なくとも30重量%、及び特に少なくとも50重量%のステアリルアミンで表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。例えば1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、2:0.75、2:1.5、又は3:1など、0.8:1~3.5:1の脂質対ケイ素のモル比が、特に有利であることが分かっている。
【0041】
特定の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達するために製剤化することができるとき)、本発明の第1の態様の組成物は、好ましくは1:1~20:1の、より好ましくは7:1~10:1のPC:SAの重量比、例えば72:8のPC:SAの重量比のPC及びSAで表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。
【0042】
特定の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達するために製剤化することができるとき)、本発明の第1の態様の組成物は、DOPE、SA、及びDC-コレステロールで表面処理したケイ素ナノ粒子を含む。DOPE:SAの重量比は、1:1~10:1、例えば4:1~8:1の範囲とすることができる。DOPE:DC-コレステロールの重量比は、1:1~5:1、例えば1:1~3:1の範囲とすることができる。SA:DC-コレステロールの重量比は、1:1~1:5、例えば1:2~1:4の範囲とすることができる。一部の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上と共に製剤化し、そうしたナノ粒子は眼部に送達するために製剤化することができるとき)、DOPE:SA:DC-コレステロールの重量比は、48:8:24とすることができる。
【0043】
(アミノ酸)
本発明のすべての態様において、(例えば、本発明のナノ粒子を、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、脂質処理ケイ素ナノ粒子はさらにアミノ酸で処理される。最も広義では、「アミノ酸」という用語は、アミン(-NH2)及びカルボキシル(-COOH)の官能基を含む、任意の人工又は自然起源の有機化合物を包含する。これは、α、β、γ、及びδアミノ酸を含む。これは、任意のキラル配置のアミノ酸を含む。一部の実施形態において、(例えば、本発明のナノ粒子を、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、アミノ酸は、好ましくは自然起源のαアミノ酸である。これは、タンパク質を構成するアミノ酸又はタンパク質を構成しないアミノ酸(カルニチン、レボチロキシン、ヒドロキシプロリン、オルニチン、又はシトルリンなど)とすることができる。好ましい実施形態において、(例えば、本発明のナノ粒子を、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、又はグリシン、又はアルギニン及びグリシンの混合物を含む。特に好ましい実施形態において、アミノ酸はグリシンを含む。
【0044】
好ましい実施形態において(例えば、ナノ粒子を、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンの1つ以上、並びに/又は、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、本発明のすべての態様の製品に存在するsiRNA又はmRNAの少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%は、表面処理したナノ粒子に会合する。
【0045】
siRNA又はmRNAなどの核酸と脂質処理ケイ素ナノ粒子との分子会合は、有利には、表面処理したケイ素ナノ粒子(例えば、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上、並びに/又はグリシン、アルギニン、及びヒスチジンの1つ以上で処理したナノ粒子)が分解すると、siRNA又はmRNAなどの核酸が生体利用可能になるということを確実にする。組成物の分解速度は、ケイ素ナノ粒子の加水分解によって決定される。この速度が制御可能であるので、siRNA又はmRNAなどの核酸が生体利用可能になる速度もまた、用量ダンピングしないように、及び/又はナノ粒子が適用部位から離れた位置に向かうときにのみ放出を確実にするように、制御することができる。例えば、これは、ナノ粒子が、適用される皮膚表面から基底位置に移動したときであり得る。
【0046】
脂質処理ケイ素ナノ粒子(例えば、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上で処理したナノ粒子)をアミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、及びヒスチジンの1つ以上、好ましくはグリシン)で処理することが、ケイ素ナノ粒子にロードしたRNA(例えば、mRNA又はsiRNA)などの核酸に有益な安定化作用をもたらすことが分かっている。特に、脂質処理ケイ素ナノ粒子をアミノ酸で処理することが、生物学的液体において、例えば眼球組織において、RNAなどの核酸を安定化させることが示されている。このようにアミノ酸と共に製剤化した脂質処理ケイ素ナノ粒子は、特に眼部への送達に適切とすることができ、核酸(siRNA又はmRNAなど)を眼部に送達するための送達システムを提供することができる。
【0047】
本発明のすべての態様の特定の実施形態において、(例えば、ナノ粒子を、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、脂質処理ケイ素ナノ粒子はさらにアルギニン、グリシン、又はそれらの組合せで処理される。グリシン及びアルギニンの1つ以上で表面処理し、RNAなどの核酸をロードしたケイ素ナノ粒子は、生物学的液体におけるより良好な生物活性安定性を示し、眼球細胞及び細胞質環境においてsiRNA又はmRNAなどのRNAなどの荷電核酸を効果的に送達した。
【0048】
(アミノ酸のケイ素に対する比)
好ましくは、(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)アミノ酸のケイ素に対する比は、0.05:1~2:1、例えば0.05:1~1.8:1、0.05:1~1.6:1、0.05:1~1.4:1、0.05:1~1.2:1、0.05:1~1:1、0.05:1~0.9:1、0.05:1~0.8:1、0.05:1~0.6:1、0.05:1~0.5:1、0.05:1~0.4:1、0.05:1~0.3:1、0.05:1~0.2:1、好ましくは0.2:1~0.8:1、特に0.3:1~0.7:1である。有利には、このアミノ酸のケイ素に対する比は、さらに、ケイ素ナノ粒子によって輸送されるRNA分子の放出速度に影響を及ぼし、該RNA分子を安定化させる。
【0049】
本発明のすべての態様において、(眼部に送達するために製剤化し得る)ケイ素ナノ粒子は、脂質(例えば、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上)並びにアミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、及びヒスチジンの1つ以上、例えばグリシン、又はグリシン及びアルギニンの混合物)で処理される。アミノ酸は任意のアミノ酸とすることができる。好ましくは、アミノ酸はアルギニン又はグリシン又はグリシンとアルギニンとの組合せである。脂質は任意の脂質とすることができる。好ましくは、脂質はリン脂質である。より好ましくは、脂質は、水素化PC、PC、DOPE、レシチン、ステアリルアミン、及びそれらの誘導体の1つ以上から選択される。任意で、脂質は、DC-コレステロール及び/又はその誘導体を含む。好ましくは、アミノ酸のケイ素に対する比は、0.05:1~0.4:1、例えば0.08:1~0.35:1、特に0.09:1~0.32:1である。一部の実施形態において、(例えば、脂質を、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上から選択するとき)、アミノ酸は、アルギニンとグリシンとの組合せであり、Arg:Glyの比は、1:0.6~3:1、例えば1:0.8~2.5:1、例えば1:1~2:1である。有利には、そうした比は、高速度のRNA放出を行い、並びに眼球細胞及び細胞質環境において効果的にRNA(siRNA又はmRNAなど)を送達するということが分かっている。このように、アミノ酸と共に製剤化した、本発明の脂質処理ケイ素ナノ粒子は、特に眼部への送達に適切とすることができ、核酸(siRNA又はmRNAなど)を眼部に送達するための送達システムを提供することができる。
【0050】
本発明のすべての態様の他の実施形態において、(例えば、本発明のナノ粒子を眼部に送達するために製剤化するとき)脂質処理ケイ素ナノ粒子はアルギニンで処理される。脂質は任意の脂質とすることができる。好ましくは、脂質は、水素化PC、PC、DOPE、レシチン、ステアリルアミン、及びそれらの誘導体の1つ以上から選択される。任意で、脂質は、DC-コレステロール及び/又はその誘導体を含む。好ましくは、アルギニンのケイ素に対する比は、0.05:1~0.4:1、例えば0.08:1~0.35:1、特に0.09:1~0.32:1である。有利には、そうした比は、高速度のRNA放出を行い、並びに眼球細胞及び細胞質環境において効果的にRNA(siRNA又はmRNAなど)を送達するということが分かっている。このように、アミノ酸と共に製剤化した、本発明の脂質処理ケイ素ナノ粒子は、特に眼部への送達に適切とすることができ、核酸(siRNA又はmRNAなど)を眼部に送達するための送達システムを提供することができる。
【0051】
本発明のすべての態様の他の実施形態において、(例えば、ナノ粒子を眼部に送達するために製剤化するとき)脂質処理ケイ素ナノ粒子はグリシンで処理される。脂質は任意の脂質とすることができる。好ましくは、脂質は、水素化PC、PC、DOPE、レシチン、ステアリルアミン、及びそれらの誘導体の1つ以上から選択される。任意で、脂質は、DC-コレステロール及び/又はその誘導体を含む。好ましくは、グリシンのケイ素に対する比は、0.05:1~0.5:1、例えば0.08:1~0.45:1、特に0.09:1~0.42:1である。有利には、そうした比は、高速度のRNA放出を行い、眼球細胞及び細胞質環境において効果的にsiRNA及びmRNAなどの荷電RNAを送達するということが分かっており、そうした比は細胞内部移行を支える。このように、アミノ酸と共に製剤化した、本発明の脂質処理ケイ素ナノ粒子は、特に眼部への送達に適切とすることができ、核酸(siRNA又はmRNAなど)を眼部に送達するための送達システムを提供することができる。
【0052】
(RNA)
本発明のすべての態様の好ましい実施形態において、(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、脂質処理ケイ素ナノ粒子には、siRNA又はmRNAであり得るRNAをロードする。最も広義では、「siRNA」という用語は、短鎖干渉RNA又はサイレンシングRNAとしても知られる低分子干渉RNA(siRNA)を包含し、5~50塩基対の長さの二本鎖RNA分子を含み、RNA干渉(RNAi)経路内で作動する。例えば、10~45塩基対、15~40塩基対、20~30塩基対、特に20~25塩基対の長さである。「mRNA」という用語は、メッセンジャーRNAを包含し、任意で、5プライムキャップ及び/又はポリアデニル化末端を含むmRNAを含むことができる。あるいは、これらの特徴の1つ又は両方がなくともよい。
【0053】
本発明のすべての態様の好ましい実施形態におけるRNAは(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、自然起源である、又は、活性の向上、血清安定性の増加、オフターゲットになることが少ない、及び免疫学的活性化の低下などの治療特性を高めるため化学的に修飾することができる。RNAの化学修飾は、当該技術分野で一般に知られる任意の修飾を含むことができる。
【0054】
特定の実施形態において、(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、RNAはsiRNAである。他の実施形態において、(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、RNAはmRNAである。
【0055】
他の実施形態において、(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、核酸はDNA、又はDNA/RNAハイブリダイゼーション生成物である。
【0056】
(ケイ素の核酸に対する比)
好ましくは(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、ケイ素の核酸(siRNA又はmRNAなど)に対する比は、1:1~8:1、例えば1:1~6:1、1:1~5:1、1:1~4:1、又は1:1~3:1である。好ましくは、ケイ素の核酸に対する比は、1:1~3:1である。有利には、このケイ素の核酸に対する比は、さらに、ケイ素ナノ粒子によって輸送される核酸分子(siRNA分子又はmRNA分子など)の放出速度に影響を及ぼし、該核酸分子を安定化させる。こうしたケイ素の核酸に対する比を有する製剤は、特に眼部への送達に適切とすることができ、核酸を眼球組織に送達するための送達システムを提供することができる。
【0057】
(他の成分)
(遺伝子導入試薬)
本発明のすべての態様の好ましい実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、脂質処理ケイ素ナノ粒子は、遺伝子導入剤で表面処理することができる。最も広義では、「遺伝子導入」とは、ネイキッド又は精製の核酸を真核生物細胞に計画的に導入するプロセスである。また、遺伝子導入は、他の方法及び細胞型をも指し得る。mRNAを、その配列の翻訳をするため、細胞に遺伝子導入することができる。siRNAを、RNAサイレンシングを行うため(すなわち、標的遺伝子におけるRNA及びタンパク質の喪失)、遺伝子導入することができる。
【0058】
最も広義では、「遺伝子導入試薬」とは、ネイキッド又は精製の核酸を真核生物細胞に導入しやすくする薬剤である。例えば、一部の遺伝子導入試薬は、ネイキッド又は精製のsiRNA又はmRNAを真核生物細胞に誘導しやすくする薬剤である。
【0059】
本発明のすべての態様の他の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化し、そうした製剤が眼部に送達することに適切とすることができるとき)、遺伝子導入試薬は、リポフェクション(リポソーム遺伝子導入)試薬、デンドリマー、塩化カルシウム溶液と合わせたホスフェートイオンを含むHEPEバッファー生理食塩水(HeBS)、又はジエチルアミノエチル-デキストラン(DEAE-デキストラン)若しくはポリエチレンイミン(PEI)などのカチオン性ポリマーとすることができる。
【0060】
好ましい実施形態において、(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、遺伝子導入試薬は、リポフェクタミンなどのリポフェクション試薬である。
【0061】
本発明の種々の態様に使用するためのRNAなど(siRNA又はmRNAなど)の核酸を、種々の形態で提供することができる。例えば、一部の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、RNAなどの核酸は、(単独、又は種々の他の核酸との組合せで)例えばバッファーなどの溶液中で提供される。一部の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、RNAなどの核酸は、単独、又は他の単離した核酸との組合せで、塩として提供される。一部の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、RNAなどの核酸は、再構成可能な凍結乾燥形態で提供される。例えば、一部の実施形態において、RNAなどの核酸は、凍結乾燥ペレット単独で、又は他の単離した核酸を含む凍結乾燥ペレットで提供することができる。一部の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、RNAなどの核酸は、ビーズ、又は膜などの固体物質に固定して提供される。一部の実施形態において(例えば、本発明のケイ素ナノ粒子を、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又はPC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化するとき)、RNAなどの核酸は、宿主細胞、例えばプラスミドを含む細胞株、又は安定的に組み込んだ配列を含む細胞株において、提供される。
【0062】
本発明に従って使用するためのRNAなどの核酸は、二本鎖及び一本鎖のDNA、RNA、DNA:RNAハイブリッド、並びにPNA(ペプチド核酸)又はRNA若しくはDNA間のハイブリッドを含む。また、この用語は、例えば、当該技術分野で知られる標識、メチル化、「キャップ」、自然起源のヌクレオチドの1つ以上を類似体で置換、ヌクレオチド間修飾、例えば無荷電結合によるもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメートなど)、負荷電結合によるもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、及び正荷電結合によるもの(例えば、アミノアルキルホスホロアミデート、アミノアルキルホスホトリエステル)、例えば、タンパク質(ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)などペンダント部分を含むもの、インターカレーターによるもの(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレーターを含むもの(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)、アルキレーターを含むもの、修飾結合によるもの(例えば、αアノマー核酸など)など既知の種類の修飾、並びに、非修飾形態のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含む。
【0063】
本明細書で使用するとき、「ヌクレオシド」及び「ヌクレオチド」という用語は、プリン及びピリミジン塩基だけでなく、修飾した他の複素環塩基も含有する部分を含むということが理解される。そうした修飾は、メチル化プリン若しくはピリミジン、アシル化プリン若しくはピリミジン、又は他の複素環を含む。また、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドは糖部分の修飾を含み得、例えば、ヒドロキシル基の1つ以上がハロゲン、脂肪族基で置換される、又はエーテル、若しくはアミンなどとして官能基化される。ヌクレオチド又はポリヌクレオチドの他の修飾は、それぞれの相補ピリミジン又はプリン、例えば、イソグアニン及びイソシステインなどと水素結合を形成するプリン又はピリミジン塩基の官能基を再編成、付加、置換、又は改変することに関与する。一部の実施形態において、オリゴヌクレオチド及び/又はプローブは、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの修飾ヌクレオチドを含む。
【0064】
一部の実施形態において、本明細書に開示するRNAなどの核酸は1つ以上の一般的な塩基を含む。本明細書で使用するとき、「一般的な塩基」という用語は、A、U/T、C、及びGから選択される1つを超えるヌクレオチドにハイブリダイズすることができるヌクレオチド類似体を指す。一部の実施形態において、一般的な塩基は、デオキシイノシン、3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、6-ニトロインドール、5-ニトロインドールからなる群より選択することができる。
【0065】
(ケイ素ナノ粒子の調製)
本発明に関するケイ素ナノ粒子は、当該技術分野で従来用いられている技術によって、例えば、ミリングプロセスによって又は粒子径を小さくする他の既知の技術によって、簡便に調製することができる。ケイ素含有ナノ粒子を、ケイ酸ナトリウム粒子、コロイダルシリカ、又はシリコンウエハー材料から作製することができる。マクロ又はミクロスケールの粒子を、ボールミル、遊星型ボールミル、又は他の寸法を小さくする機構において粉砕する。得られた粒子を空気分級してナノ粒子を回収することができる。また、ナノ粒子の作製にプラズマ法及びレーザーアブレーションを使用することも可能である。
【0066】
多孔性粒子を、本明細書に記載の方法を含む、当該技術分野で従来用いられる方法によって作製することができる。
【0067】
(クリーム剤及びゲル剤の調製)
クリーム剤及びゲル剤を、単にクリーム基剤又はゲル基剤に本発明のケイ素ナノ粒子を分散(すなわち混合)させることで製剤化することができる。例えば、ケイ素ナノ粒子を、医薬用クリーム基剤に入れてかく拌することができる。ゲル剤について、粉末を、粉末形態のゲルマトリックスへとかく拌して、その後ゲルを水和させることができる、又は粉末を、予め水和させたゲルに入れてかく拌することができる。
【0068】
(眼部への送達)
本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様における組成物(例えば、アルギニン、ヒスチジン、及びグリシンの1つ以上、並びに/又は、PC、水素化PC、SA、DOPE、DC-コレステロール、及びそれらの誘導体の1つ以上と共に製剤化した組成物)を提供し、これは眼部に送達するためのものである。
【0069】
すべての眼組織に注射によってアクセス可能であるが、siRNA誘導遺伝子サイレンシング処置に必要とされる頻回の処置レジメンでは、局所適用が好ましい。しかしながら、眼球表面は、短い接触時間、涙による希釈、及び角膜細胞透過不良を合わせた作用のため、薬剤送達において、より複雑な生物学的バリアの1つである。
【0070】
本発明の組成物は、線維層、血管層、及び網膜の組織の1つ以上などの眼組織にsiRNAを送達する、有効で、臨床において安全、且つ非侵襲性の手段を提供する。例えば、本発明の組成物は、角膜、強膜、虹彩、毛様体、脈絡膜、小帯線維、水晶体嚢、水晶体核、硝子体、及び網膜の組織から選択される1つ以上の組織にsiRNAを送達する、有効で、臨床において安全、且つ非侵襲性の手段を提供する。
【0071】
本発明の組成物は、活性医薬剤、特にsiRNA及びmRNAなどの核酸を封入して安定化することができる。次に、本発明のナノ粒子は、眼の細胞に(例えば角膜、強膜、虹彩、毛様体、脈絡膜、小帯線維、水晶体嚢、水晶体核、硝子体、及び網膜の細胞の1つ以上に)、核酸(例えばsiRNA又はmRNA)などのこれらの活性医薬剤を送達することができる。眼組織の1つ以上に組成物を適用すると、眼球細胞はナノ粒子を内部移行させる。これにより、核酸(例えばsiRNA又はmRNA)などのこれらの活性医薬剤が、眼球細胞に透過し、標的部位における核酸の制御された放出を確実にすることができる。
【0072】
本発明の第1の態様の組成物は眼部に送達するために製剤化することができる。例えば、組成物は、1つ以上の、眼部に適合性のある賦形剤と共に製剤化することができる。組成物は、眼障害の処置に使用することができる。例えば、本発明の第1の態様の組成物は、黄斑変性、結膜炎、緑内障、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、円錐角膜、白内障、網膜炎、及びぶどう膜炎、特に黄斑変性の処置に使用することができる。黄斑変性は、加齢黄斑変性を含むことができる。
【0073】
また、本発明は、さらなる態様において、本発明の第1の態様の組成物に関する方法及び薬剤を提供する。例えば、本発明の第1の態様における組成物を、任意で1つ以上の、眼部に適合性である賦形剤と組み合わせて、1つ以上の眼組織に(例えば、角膜、強膜、虹彩、毛様体、脈絡膜、小帯線維、水晶体嚢、水晶体核、硝子体、及び網膜の組織から選択される1つ以上の組織に)送達することを含む方法を提供する。本発明の第1の態様における組成物を、任意で1つ以上の、眼部に適合性である賦形剤と組み合わせて、1つ以上の眼組織に送達することを含む、眼障害を処置するための方法を提供する。例えば、そうした方法は、黄斑変性、結膜炎、緑内障、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、円錐角膜、白内障、網膜炎、又はぶどう膜炎、特に黄斑変性を処置することを含むことができる。
【実施例0074】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに記載する。
【0075】
(材料)
(ケイ素調製)
片面研磨のP型又はN型ケイ素ウエハーをSi-Mat(独国)から購入した。すべての洗浄及びエッチング試薬はクリーンルーム級であった。1:1(v/v)の純エタノール及び10%水性HF酸中において、80mA/cm2陽極電流密度で、2~10分間、p型Siを陽極エッチングすることによって、エッチングケイ素を調製した。エッチング後、試料を純エタノールで洗浄して、高純度の乾燥窒素流下で乾燥させてから、使用した。
【0076】
エッチングしたケイ素ウエハーP+又はN-を、ミリングボール及び/又は乳棒と乳鉢を用いて粉砕した。微細粉末を、Retschブランドのふるい(ゲージ38μm)振とう器as200を用いてふるいにかけた。ふるいの開口寸法によって、選択した均一の寸法(20~100μm)を得る。quantachromeシステム及びMalvern instrumentのPCSによって、粒子径を測定した。さらに使用するまで、試料を密閉容器にて保管する。
【0077】
また、ナノケイ素粉末をSigma及びHefel Kaier(中国)から得た。粒子径をPCSによって測定し、粒子径を記録してから(径は20~100nmの範囲であった)、ロード及びエッチングを行った。ケイ素ウエハーを、ミリングボールを用いて又は乳棒と乳鉢を用いて粉砕した。微細粉末を、Retschブランドのふるい(ゲージ38μm)振とう器as200を用いてふるいにかけ、所望の寸法を有する均一のナノ粒子を回収した。
【0078】
(ケイ素ナノ粒子の活性化)
250mlのエタノール及び500mgの100nm径の多孔性ケイ素ナノ粒子を混合して、マグネットバーを用いて30分間かく拌した。次に、溶液を3000rpmで30分間遠心した。上清を捨てて、ナノ粒子を5mlの蒸留水で洗浄し、丸底フラスコに移した。フラスコの内容物を凍結させた(-25℃で2時間)。凍結させたナノ粒子を凍結乾燥器を用いて一晩凍結乾燥させた。得られた乾燥粉末は活性化ナノ粒子である。
【0079】
(アミン、脂質、リポフェクタミンをロードしたsiRNAナノ粒子の調製)
製剤SIS005-PS91及びSIS005-DS61(グリシン含む)の両方を、siRNAを含有するケイ素ナノ粒子の水性懸濁液中にリポソーム形成物質の薄いフィルムを溶解することによって調製した。次に、混合物を3回凍結融解し、インビトロでHCES細胞において遺伝子導入効率について試験した。並行して、SIS005-PDS1051製剤を、角膜のsiRNA送達システムに好ましいと考えられる、さらなる正の電荷を導入することを狙いとするさらなる修飾の後(負のゼータ電位を有することが示されたので)、試験した。この目的のため、製剤におけるカチオン性脂質の比を増加させた。
【0080】
コロイド安定性を、非ロード及びロード製剤の両方について、ゼータ電位測定と並行して、動的光散乱法によって評価した。また、siRNAの封入効率を分光光度法によって測定した。遺伝子導入(細胞内移行)の効率を、フローサイトメトリー、続いて、siRNAロード製剤での処置後にインビトロにおけるノックダウンを測定するため行ったデュアルルシフェラーゼアッセイによって、ヒト角膜上皮細胞において評価する。
【0081】
(遺伝子導入のための製剤の調製手順(SI005-PS91、SI005-DS61、SI005-DSC613など))
これらと他の製剤との成分を以下の表に示す。
【表1】
【0082】
(材料)
ケイ素ナノ粒子、ヌクレアーゼ非含有水、クロロホルム
脂質:ステアリルアミン(SA)、カタログ番号305391(Sigma-Aldrich)
卵黄のL-α-ホスファチジルコリン(PC)、カタログ番号61755(Sigma-Aldrich)
ジオレオイルL-α-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、カタログ番号P1223(Sigma-Aldrich)
N-(2-ジメチルアミノエチル)カルバメートコレステロール(DC-Chol)、カタログ番号92243(Sigma-Aldrich)
100μM(1.33μg/μl)非特異性NSC4(カスタマイズしたsiRNA二本鎖、Eurogentec)
100μM(1.33μg/μl)標的化siLUC(カスタマイズしたsiRNAオリゴヌクレオチド二本鎖、Eurogentec)
100μM(1.33μg/μl)FAMタグ付きsiRNA(緑色siGLO、Dharmacon)
【0083】
(機器)
回転式蒸発システム、ボルテックス、超音波浴処理機、水浴、丸底フラスコ、一般的な試験管、エッペンドルフチューブ、マイクロピペット、凍結乾燥システム、ゼータサイザー、高速遠心機、NanoDrop分光光度計、蛍光リーダー
【0084】
(手順)
蛍光性siRNAは作業時に光に暴露させないということが留意される(例えば、フラスコ及び試験管をアルミニウムホイルで覆う)。
(A-ケイ素ナノ粒子/脂質組成物におけるsiRNAのロード)
(ステップI-成分1、siRNA-SiNP混合物の調製)
1.ヌクレアーゼ非含有水中にろ過したケイ素ナノ粒子溶液0.2mg/mlを調製する
2.それぞれが140μgのSiNPを含有するように、上述の溶液を8つのエッペンドルフマイクロチューブに入れてアリコート(700μl)の分取をする。
3.各アリコートに対して、siRNA及びグリシンを添加して、ヌクレアーゼ非含有水で体積を1.4mlに調節する。
【表2】
4.チューブを十分に混合させて、試料をかく拌しながら室温で1時間インキュベートする。
【0085】
(ステップII-成分2、脂質フィルムの調製)
1.各脂質成分(SA、PC、DOPE、DC-Chol)を0.2mg/mlの濃度になるようにクロロホルムに溶解する。
2.所望の量の各脂質を小さい丸底フラスコに移して、十分に混合させる。各脂質混合物を8つのレプリケート(8つのフラスコ中)に調製する。
a.(脂質基剤DS61)
68μgのDOPE(340μl)
12μgのSA(60μl)
b.(脂質基剤PS91)
72μgのPC(360μl)
8μgのSA(40μl)
c.(脂質基剤DSC613)
48μgのDOPE(240μl)
8μgのSA(40μl)
24μgのDC-Chol(120μl)
d.(脂質基剤PDS1051)
50μgのPC(250μl)
25μgのDOPE(125μl)
5μgのSA(25μl)
e.(脂質基剤PDS1052)
48μgのPC(240μl)
23μgのDOPE(115μl)
9μgのSA(45μl)
f.(脂質基剤PDSC10514)
40μgのPC(200μl)
20μgのDOPE(100μl)
4μgのSA(20μl)
16μgのDC-Chol(80μl)
3.回転式蒸発システムを用いて溶媒を慎重に蒸発させて、薄い脂質フィルムを形成する。乾燥した脂質を真空下に配置して、残りの溶媒を取り除く。
【0086】
(ステップIII-siRNA-SiNP(成分1)のリポソーム(成分2)での封入)
1.薄い脂質フィルム(ステップIIより)をsiRNAロード又は空のSiナノ粒子試料(ステップIより)と共に溶解させる。脂質フィルム(a、b、c、d、e、f)を含有する各フラスコに、別々に200μlの1、2、3、又は4のケイ素ナノ粒子/siRNA混合物を添加する。
【表3】
2.200μlのヌクレアーゼ非含有水を各フラスコに添加して、溶液の体積を400μlに調節する。
3.各フラスコをパラフィルムで覆い、内容物を十分に混合して、室温で1時間インキュベートする。
4.脂質フィルムを完全に溶解するようにボルテックスにかける。フラスコを15秒間音波浴処理して、脂質の溶解を促す。
5.各フラスコのすべての内容物を別々にエッペンドルフマイクロチューブに移す。
6.すべてのチューブを冷凍庫(-20℃)に置き、少なくとも3時間(又は一晩)保管する。
7.試料を冷凍庫から取り出し、30℃の水浴に10分間入れる。室温で冷却し、十分にボルテックスにかける。
8.凍結融解(ステップ5及び6)をさらに2回繰り返す。
9.すべての試料を、アッセイするまで冷凍庫(-20℃)に保管する。
10.それぞれロードした試料は、400μl体積に[10μgのsiRNA:20μgのSiNP:80μgの脂質基剤:10μgのグリシン]を含有する。
【0087】
(B-ケイ素ナノ粒子/脂質製剤の特徴)
(封入効率)
siRNA封入効率を、ロードした粒子を遊離(非結合)したsiRNAから高速遠心によって分離した後、封入効率を測定することによって検討した。
1.50μlの各試料を遠心用マイクロチューブに採取する。
2.すべての試料を21,000×gで30分間遠心する。
3.各試料の25μl(上半分)の上清を別のチューブに(S1と表示)に移し、アッセイするまで4℃で保管する(siGloロード試料の場合、光に暴露させない)。
4.25μlの2%SDSをペレット試料(残りの上清を含む)に添加して、脂質二重層を崩壊させて、結合したsiRNAを放出する。
5.再びチューブを21,000×gで30分間遠心して、上清を採取する(S2と表示)。
6.NanoDrop分光光度計を用いて、すべての上清S1及びS2試料において、260nmにおける吸光度(OD)を測定する。siGloをロードした試料では、S1及びS2の上清試料の両方において蛍光強度(FI)を測定する。
7.封入効率(EE%)を計算する。
【数1】
式中、OD
S1-上清S1の吸光度(260nm)(第1の遠心後)、
OD
S2-上清S2の吸光度(260nm)(第2の遠心後)。
siGloをロードした試料では、それぞれOD
S1及びOD
S2の代わりにFI
S1及びFI
S2を使用。
8.上清試料におけるsiRNAの濃度及びケイ素ナノ粒子製剤に封入したsiRNAの量は、siRNA較正曲線(以前に記載したような)を用いて決定することができる。
【0088】
(ゼータサイザー測定)
コロイド安定性を、ゼータ電位測定と並行して、動的光散乱法によって評価した。非ロード(空)の製剤試料及びsiLUC/NSC4をロードした製剤試料に測定を行う。
1.200μlの各試料を採取して、ヌクレアーゼ非含有超純水で1mlの総体積に希釈する。
2.試料を折り曲げキャピラリーセルにロードする。
3.ゼータサイザーを用いて、粒子寸法、多分散性指標、及びゼータ電位について試料を読み取る。トリプリケートで各測定を行う。データを
図1、
図2、及び
図3に示す。
【0089】
(HCES細胞における遺伝子導入効率)
遺伝子導入(細胞内移行)の効率を、フローサイトメトリーによって、ヒト角膜上皮細胞において評価した。この研究の目的のため、蛍光タグ付きsiRNAプローブ(siGlo)をロードした製剤試料を用いる。
1.10%FBSで富栄養化した1mlのDMEM中にウェル(12ウェルプレートにおいて)あたり2×105HCES細胞を播種し、標準的な条件で24時間成長させる(80%の培養密度まで)。
2.10%FBSで富栄養化した、ウェルあたり950μlの新しいDMEMで培地を交換する。
3.siGloをロードしたケイ素ナノ粒子/脂質の試料を室温に調節する。
4.151μlのOptiMEM中で6μlのリポフェクタミンRNAiMAX試薬を3μlのsiGlo原液(100μM)に混合することによって、リポフェクタミン遺伝子導入試薬を含むコントロールの試料を調製し、室温で15分間インキュベートする。
5.3つのレプリケートの細胞を、0.1μMのsiGlo濃度を得るようにウェルあたり53.3μlの各siGloロード製剤又はLPFコントロールを添加することによって、処理する。
6.細胞を標準的な条件で24時間成長させる(5%CO2で37℃)。
7.培地を捨て、ウェルを500μlのPBSで洗浄する。
8.300μlのトリプシン-EDTAを添加して、プレートを37℃で10分間インキュベートする。
9.直ちに、10%FBSで富栄養化した300μlのDMEMを添加して、トリプシン処理を停止する。
10.細胞を別々にマイクロチューブに移して、1000~2000rpmで5分間遠心する。
11.上清を捨て、500μlのPBS中に細胞を慎重に懸濁させる。
12.試料を1000~2000rpmで5分間遠心する。
13.上清を捨て、PI色素を含有する600μlのFACSバッファー中に細胞を慎重に再懸濁させる。
14.フローサイトメーターを用いて試料を分析する。
【0090】
(ノックダウン効率)
ノックダウン誘導の効率を測定するため、特異的(siLUC)、非特異的(NSC4)をロードした試験用製剤試料、及び非ロード製剤でデュアルルシフェラーゼアッセイを行う。
1.10%FBSで富栄養化した100μlのDMEM中にウェル(96ウェルプレートにおいて)あたり6.5×103HCES細胞を播種し、標準的な条件で24時間成長させる。すべての製剤試料をそれぞれ5つのレプリケートにおいて研究するため、2つのプレートを調製する。
2.製造者による手順に従ってリポフェクタミン2000を用いてウミシイタケ及びLuc2pプラスミドを細胞に遺伝子導入する。OptiMEM培地中で50μlの総体積まで希釈した、0.3μlのリポフェクタミン2000、1ngのウミシイタケプラスミド、及び5ngのLuc2pプラスミドを含有する50μlの試薬混合物を各ウェルに添加する。
3.細胞を、5%CO2において37℃で24時間成長させる。
4.ウェルあたり90μlの新しいDMEMで培地を交換する。
5.製剤試料を室温に調節する。32μlの各試料を28μlのOptiMEMに混合する。
6.リポフェクタミン遺伝子導入試薬を含むコントロールの試料を調製する。
・1.2μlのリポフェクタミンRNAiMAX試薬を55.8μlのOptiMEMに混合し、室温で5分間インキュベートしてから、3μlのsiLUC原液を添加し、10分間インキュベーションを続ける。
・1.2μlのリポフェクタミンRNAiMAX試薬を55.8μlのOptiMEMに混合し、室温で5分間インキュベートしてから、3μlのNSC4原液を添加し、10分間インキュベーションを続ける。
・1.2μlのリポフェクタミンRNAiMAX試薬を55.8μlのOptiMEMに混合し、室温で15分間インキュベートする。
7.5つのレプリケートの細胞を、ウェルあたり10μMのロードした若しくは空の製剤又はLPFコントロールを添加することによって、処理する。
8.細胞を標準的な条件で成長させる(5%CO2において37℃)。
9.48時間後、培地を捨てて、ウェルをPBSで洗浄する。
10.ウェルあたり20μlのパッシブ溶解バッファーを添加する。
11.オービタルシェーカーにおいてプレートを室温で15分間インキュベートする(900rpm)。
12.製造者による手順に従って、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイキット及びLUMIstar OPTIMAプレートリーダーを用いて発光レベルを読み取る。
【0091】
(siRNAロードケイ素ナノ粒子をリポフェクタミンに合わせる(SIS005-LPF))
1.それぞれが20μgのSiNPを含有するように、ケイ素ナノ粒子懸濁液を6つのエッペンドルフマイクロチューブに入れてアリコートの分取をする。
2.上述のSiNPアリコートに、10μgのsiRNAを添加する。
a.2つのマイクロチューブに、37μlの20μMのsiLuc2p(標的化siRNA)を添加する。
b.2つのマイクロチューブに、37μlの20μMのNSC4(非特異的siRNA)を添加する。
c.(非ロードコントロール)空のコントロールを調製するため、siRNAなしのSiNPを含有する残りの2つのマイクロチューブを置いておく。
3.試料をかく拌しながら室温で1時間インキュベートしてから、ボルテックスにかけて、チューブを冷凍庫(-20℃)に置き、2~3時間保管する。
4.水を蒸発させるため、試料を凍結乾燥システムに一晩接続する。
5.さらなる分析の前に、上述のsiRNAロード(又は非ロードのコントロール)SiNP試料をリポフェクタミン溶液(リポフェクタミンRNAiMAX試薬、カタログ番号13778075、ThermoFisher Scientific)に溶解し、150μlの総体積までヌクレアーゼ非含有水中に希釈し、ボルテックスにかけ、室温で1時間インキュベートする。
【表4】
【0092】
(
図3に示す結果)
ロードしたときの本発明のケイ素ナノ粒子における表面電荷の変化を評価した。通常、粒子の表面電荷は、表面において負荷電siRNA分子と結合した後、減少する(より正である値からより負である値に変化する)。この作用は、試験した製剤試料のほぼ半数において観察されたが、残りの試料はいずれの有意差も示さなかった。siRNAをロードした後のZPの変化を
図3に示す。PEを含有するすべての試料のゼータ電位はsiRNAのロードに影響されなかった。同様に、レシチンを含む大部分の製剤は、ZPの有意差を示さなかった。75μg:200μgの比のレシチン-Si-NP(F31)試料のみが、siRNAをロードしたとき、表面電荷の減少を示した(p=0.0001)。また、PCをロードした両方のナノ粒子(F01、F02)では、siRNAロードの後、ZPの有意な減少を観察し(75μg:200μgのSi:PC比ではp=0.0002、及び150μg:200μgのSi:PC比ではp=0.0005)、アルギニンもロードしたPC-SiNP(F04、F07)では、アミノ酸含有量に関わらず、ZPの有意な減少を観察した(75μg:200μg:20μgのSi:PC:Arg比ではp=0.0196、及び75μg:200μg:40μgのSi:PC:Arg比p=0.0490)。
【0093】
siRNAのロードは、ステアリルアミン表面処理ケイ素ナノ粒子の表面電荷に最も大きい影響を及ぼし、高負電荷を誘導した。これまでの分析で示したように、SA及びSA+アルギニンをロードした空のSi-NPは、正又はおおよそ中性の表面電荷を有しており、ゆえにアニオン性siRNA分子を効果的に誘引した。
【0094】
(mRNA封入効率におけるロード比の影響)
試料を、SIS005-DSC613Gにおける上述のプロトコルに従って調製した。各試料は、10:24:4:12:5のケイ素ナノ粒子:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE):ステアリルアミン:コレステリル3β-N-(ジメチルアミノエチル)カルバメートハイドロクロライド(DC-コレステロール):グリシンの重量比からなるものであった。試料を、以下の表に示すように核酸のケイ素ナノ粒子に対する様々な比で調製した。
表5は、様々なmRNAロード比を有するProSilic-DSC613G製剤試料を示す。
【表5】
* これは、他のすべての成分(ケイ素ナノ粒子、脂質、及びアミノ酸)のmRNAに対する重量比である。
** おおよその電荷比(N/P比として知られる)を、mRNAの長さ、RNAの平均分子質量(約325Da)、及びカチオン性脂質の分子量(ステアリルアミン:269.5Da、DC-コレステロール:500.8Da)に基づいて計算する。
【0095】
(ゲル電気泳動法を用いたケイ素ナノ粒子製剤によるmRNAの封入の評価)
mRNA封入効率におけるケイ素ナノ粒子のmRNAに対するロード比の影響をゲル電気泳動法によって検討した。1%のE-Gel EXプレキャストアガロースゲルを用いた。Gel Logic100イメージングシステム(Kodak)を用いて、ゲルを可視化した。結果を
図6に示す。
【0096】
図6は、1列目に非ロードmRNA(U0)を示す。mRNAをロードしたケイ素ナノ粒子(L0.5、L1、L2、L3、L4、L5、L6、L8)を、左から右に、ケイ素ナノ粒子のmRNAに対する比が増加する順に2~9列目に示す。等しい量のmRNA(100ng)を1~9列のそれぞれにロードした。InvitrogenのE-Gel 1Kb Plus Express DNA Ladder(80ng)をマーカーとしてM列にロードした。10列目は空にしておいた(ブランク溶液として)。
【0097】
電気泳動は、本発明のSIS005-DSC613G製剤が正常にmRNAを封入し、2:1を超える比など、ケイ素ナノ粒子のmRNAに対する比がより高いと、特に良好に封入するということを示した。
図6におけるコントロール列(非ロードmRNA、U0)は、予想されるように、単一の速く移動するバンドを示す。また、このバンドは、2列目(ロードしたL0.5)及び3列目(ロードしたL1)においても観察された。この観察されるバンドは、非結合mRNAに対応する。2列目及び3列目のバンドの強度(特に3列目)は、コントロール(U0)に比べて低いものであった。これは、ケイ素ナノ粒子のmRNAに対する比が非常に低い試料においても、一部のmRNAはなおケイ素ナノ粒子によって封入され、ゆえにバンドにおいて観察されないということを示している。
【0098】
効率的に封入されたmRNAは、ゲルの孔を通って移動できず、ウェルに留まる(U0、L0.5、及びL1とは異なり、バンドが現れない)。
図6は、1~3列目と比較してケイ素ナノ粒子の含有量が増えた試料L2~L8が正常にmRNAを封入することを示す。これは、U0、L0.5、及びL1に見受けられるバンドの不在によって証明される。これは、本発明のケイ素ナノ粒子製剤が正常にmRNAを封入することができるということを示す。この結果は、最適なロード比(最大のmRNA封入を示すが、用いられるナノ粒子の量を最小にする比)が、2:1(ケイ素ナノ粒子:mRNA)及び11:1(送達システムの他のすべての成分:mRNA)に対応するL2である、ということを示唆する。同じロード比が、siRNAロードに有効であることが分かっている。この比は、約2.5のN/P電荷比に対応する。
【0099】
(分光光度法を用いる封入効率の評価)
また、mRNA封入の効率(EE、パーセンテージとして表す)を概算するため、SIS005-DSC613G試料(U0~L8)をまた遠心して、非結合mRNAを分離した。上清液体中の核酸含有量を分光光度法によって測定して、以下の式を用いて封入効率を計算した。
【数2】
OD
非ロードは、非ロードmRNAコントロール(UO)の吸光度である。OD
ロードは、各試料L0.5~L8の吸光度である。
【0100】
結果を
図7に示し、これはゲル電気泳動法実験の結果を裏付けるものである。ケイ素ナノ粒子のmRNAに対する比が増加すると、封入効率も、プラトーに達するまで増加し、2:1を超えるケイ素のmRNAに対する比で横ばいになる。
【0101】
(インビボにおけるケイ素ナノ粒子製剤活性の評価)
試料を、上述のSIS005-PS91G及びSIS005-DSC613Gにおけるプロトコルに従って調製した。これらの試料は、以下の重量比でsiRNA、ケイ素ナノ粒子、脂質、及びグリシンを含む。
【表6】
SAはステアリルアミンであり、DOPEはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンであり、PCはホスファチジルコリンであり、DC-Cholはコレステリル3β-N-(ジメチルアミノエチル)カルバメートハイドロクロライドである。
【0102】
(siRNAをロードしたケイ素ナノ粒子製剤の調製)
特異的siRNA(siLUC)及び非特異的siRNA(NSC4)を含む試料を調製した。両方のsiRNA(siLUC及びNSC4)を、19bpの中央2本鎖領域、及び各3’末端に対称dTdTジヌクレオチドオーバーハングを有する、21merとして設計した。siRNAはEurogentec(白国)から提供された。
【0103】
試料を調製するため、ヌクレアーゼ非含有水に溶解したsiRNAを、ナノ粒子水溶液に添加して、室温で60分間インキュベートした。2:1のケイ素ナノ粒子のmRNAに対する比を用いた(これが、上述のゲル電気泳動法及び分光光度法実験において最適比であると分かったため)。
【0104】
(生動物のイメージング)
内務省(スコットランド)及び保健、社会福祉及び公共安全省(北アイルランド)によって倫理上の承認を得て、英国動物福祉法に従って、動物を以下の実験に用いた。角膜への蛍光siRNA(DY-547-標識siGLO、Dharmacon、英国)の送達を評価する実験を、野生型C57BL/6マウスに行った。製剤のsiRNAの生物学的利用能及びサイレンシング活性を評価するため、角膜上皮に特異的にホタルルシフェラーゼを発現させるように(内在性のKrt12プロモーターの制御下において)、レポーターノックインマウス株(Krt12+/luc2)を用いた。この動物モデルは、以前に報告されたようにC57BL/6バックグラウンドから開発され、レポーター遺伝子発現モニタリングを用いるsiRNA送達方法のインビボ評価において信頼できるモデルを提供する。インビボのイメージングのため、約1.5L/minの酸素流中で1.5~2%イソフルラン(Abbott Laboratories Ltd.、英国)を用いてマウスに麻酔した。siGloの蛍光を、LivingImage3.2ソフトウェアと共にXenogen IVISスペクトルによって(両方ともPerkin Elmer、英国)、DsRedフィルターの組合せを用いて(励起535nm、吸収570nm)、局所適用後の所定の時点において、検出した。ルシフェラーゼレポーター遺伝子発現を測定するため、Viscotearsゲル(Novartis、英国)と1:1w/wで混合したルシフェリン(30mg/mLのD-ルシフェリンカリウム塩、Gold Biotechnology、米国)を、イメージング直前に麻酔したマウスの眼に点眼した。生物発光の読み取りを、IVISスペクトルによって約10分にわたって行って、信号が取得時間内で安定に保たれていることを確認した後、LivingImageソフトウェアを用いて定量化した。信号強度の定量化のため、対象領域(ROI)を各眼において別々に選択し、実験を通してROIパラメーター(寸法及び形状)を一定に保った。スプリットボディコントロール測定方法(split body control measurement regime)を用いて、値を右眼/左眼の比(RE/LE)として表す。
【0105】
(インビボのsiRNA処置)
実験を、一方の眼における試験の処置を同じ動物の他方の眼における負のコントロールと比較することによって、スプリットボディコントロールを用いて行った。処置の間、マウスに上述のように麻酔した。2:1のSiNP対mRNA重量比で複合させた、25μMのsiRNAを含有するケイ素ナノ粒子製剤を調製し、眼に対して4μLの総体積でインタクトな角膜に液滴として経局所で適用した。適用後、マウスをさらに15分間麻酔したままにして、吸収させて取り込みを最大限にした。処置後、蛍光及び発光実験を以下のように行った。
【0106】
(角膜へのsiRNA透過の評価)
siRNAの角膜への送達を検討するため、インビボの蛍光研究を、siGloを含有する点眼剤を用いて野生型マウスに行った。蛍光性siRNA-ケイ素ナノ粒子製剤を右眼の上に適用し、同じ量のネイキッドsiGloを、各マウスの左眼にコントロールとして経局所で適用した。蛍光ライブイメージングを、siGlo適用の15分(すなわち処置手技後直ちに)、及び3時間、6時間、及び24時間後にIVISスペクトルによって取得し、信号強度を、処置前に測定したバックグラウンドの蛍光(すなわち未処置の眼)に対してノーマライズし、上述のように定量化した。3時間又は24時間のいずれかで測定を行った後、マウスを絶命させ、眼を除去し、PBS中の4%パラホルムアルデヒドに室温で30分間固定し、PolyFreeze(Sigma-Aldrich、英国)に浸漬して、-80℃で直ちに凍結した。5マイクロメートルの切片をクリオスタット(CM 1850、Leica)を用いて切って、DAPI含有封入剤(DAPI I、Vysis、米国)と共にAPESコーティングスライド(3-アミノプロピルトリエトキシシラン、Sigma Aldrich、英国)に載せ、AxioCam MRcカメラに20×/40×N Archoplanレンズを備えたAxioScope A1顕微鏡(Carl Zeiss、独国)によって、蛍光を可視化した。
【0107】
(siRNA媒介遺伝子サイレンシングの評価)
ルシフェラーゼレポーターマウス(n=7)を用いて、本発明のケイ素ナノ粒子によって局所送達した後の角膜におけるsiRNAの生物学的利用能を測定した。スプリットボディコントロール実験において、ケイ素ナノ粒子製剤と複合させたルシフェラーゼ標的siLuCを、麻酔したマウスの右眼(RE)のインタクトな角膜に液滴として経局所で適用したが、左眼(LE)は、負のコントロールとしてケイ素ナノ粒子製剤と複合させたNSC4で対応して処置した。処置を、連続する8日間、毎日繰り返し、インビボにおける眼球の発光測定を約4~5時間後に行うようにした。ルシフェラーゼレポーター遺伝子発現における処置の効果を、処置レジメンにおいて毎日、及び休薬期間をモニタリングするため処置の中止後さらに8日間、ルシフェラーゼ生物発光活性を測定することによって(上述のように)、判定した。各実験動物において、処置前に4日間、24時間間隔で、眼球のルシフェラーゼ活性をモニタリングすることによって、ベースラインの発光を定義した。相対的なRE/LEルシフェラーゼ生物発光活性を、IVIS LivingImageソフトウェアを用いて定量化し、平均値±標準偏差としてプロットした。
【0108】
(統計分析)
データは、特に明記しない限り、平均±標準偏差として示されており、少なくとも3つの独立した測定を表す。一元配置又は二元配置分散分析、その後の95%信頼水準におけるテューキーのHSDポストホック検定によって、統計的有意性を評価した。インビトロのデュアルルシフェラーゼアッセイでは、ノックダウンレベルを分析するため各製剤に別々に、両側スチューデントt検定を行った(siLuc対NSC4コントロール)。インビボのルシフェラーゼ実験では、処置開始前の最初の4日における7匹すべてのマウスの平均の右/左の比(ベースラインとして設定)を、その後の日において測定した右/左の比と比較することによって、統計分析を行った。 GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software、米国)を用いて統計分析を行った。
【0109】
(結果)
(ケイ素に基づくsiRNA送達システムの特徴)
本発明のケイ素ナノ粒子送達システムの2つの変異形(SIS005-PS91G及びSIS005-DSC613G)を、核酸送達に一般に用いられるカチオン性脂質、ステアリルアミン及びDC-コレステロールでケイ素を表面機能化することによって製剤化し、約350nmの同様の流体力学的寸法及び比較される正のゼータ電位値を有するハイブリッド粒子を得た。ゲル電気泳動法によって検討した、カチオン性ケイ素ナノ粒子製剤のsiRNAとの複合化は、2:1の最小SiNP-siRNAw/w比で、核酸の完全な封入を示した。種々のw/w比における複合化siRNAのパーセンテージを、分光光度法によって測定し、担体に付加したsiRNA量と粒子分離後の溶液中のsiRNA濃度との差から計算した。ステアリルアミンで機能化した粒子と比較して、カチオン性コレステロール誘導体を含有するナノ粒子との複合化において、siRNA封入のより高い効率を観察した。しかしながら、両方の変異形は、1mgのケイ素ナノ粒子あたり13~48nmolの範囲のsiRNAロード能力を示した。上述のsiRNAロード研究の後、すべてのさらなる実験のため、2:1のSiNP/siRNAの固定比を選んだ。
【0110】
ナノ粒子の物理化学的特性は薬剤送達に重要な役割を果たすので、siRNAロード複合体の粒子径及び表面電荷を測定した。SIS005-DSC613Gは、空の担体及びロードした担体を比較したとき、寸法及びゼータ電位において有意差を示さなかったが、SIS005-PS91Gは、siRNAと複合化したとき、平均粒子径の増加及び負の表面電荷を示し、ハイブリッド粒子表面における核酸分子の吸収とともに、siRNAの内部封入を示唆した(以下の表を参照)。この研究において検討した製剤を、特にsiRNA送達のために設計された、市販される脂質に基づく担体である、遺伝子サイレンシングの至適基準のリポフェクタミンRNAiMAXと比較した。また、空及びsiRNAロードのRNAiMAXのゼータサイザー分析は、核酸との複合化後の、粒子径の増大、及び表面電荷の正の値から負の値への逆転を示した。
表7は、粒子特性の特徴を示す。
【表7】
【0111】
測定をヌクレアーゼ非含有水中で行った。データは平均±標準偏差を表す(n=3)。
【0112】
(インビトロにおける角膜細胞へのsiRNA送達の評価)
最初のインビトロにおけるスクリーニングのため、ヒト角膜上皮細胞株(HCE-S)を用いて、細胞毒性の可能性と共に、細胞遺伝子導入における本発明のケイ素ナノ粒子送達システムの効果を評価した。遺伝子導入効率を、担体システムにロードした蛍光オリゴヌクレオチド2本鎖による処置の24時間後に行ったフローサイトメトリー分析によって定量化した。
図8が参照される。RNAiMAX試薬で観察された84±1%のFAM陽性細胞と比較して、SIS005-DSC613Gは55±2%のFAM陽性細胞を示し、SIS005-PS91Gは65±6%のFAM陽性細胞を示した。
【0113】
遺伝子導入後の細胞生存度を、膜破壊の一般的指標であるヨウ化プロピジウム(PI)によるlive/dead染色に基づいて評価した。これは、リポフェクタミンと対照的に、ケイ素ナノ粒子製剤が角膜上皮細胞に十分に許容されることを示した。
図9が参照される。リポフェクタミンは、インビトロにおける外因性核酸の細胞への送達に極めて有効であるにもかかわらず、臨床における用途に適切でない。リポフェクタミンRNAiMAXを遺伝子導入した細胞の50%を超えるものが、膜の損傷、及び膜不透過PI色素の内部移行を示すが、ケイ素ナノ粒子製剤での処置後、86%及び98%を超えるインタクトな細胞が観察された。
【0114】
siRNAの生物学的利用能を、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて遺伝子発現研究において評価した。ケイ素に基づく送達システムと複合させた0.1μMのsiLucでHCE-S細胞を処理した後、それぞれSIS005-PS91G及びSIS005-DCS613Gにおいて、46±5%(p<0.01、siLuc対NSC4コントロール)及び38±8%(p<0.01)のノックダウンを得たが、RNAiMAXに遺伝子導入したsiLucは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子発現を66±9%低下させた(p<0.001)。
図10が参照される。このように、ケイ素ナノ粒子送達システムは、安全であり、細胞に十分に許容されながら、市販のsiRNA遺伝子導入試薬の効力の最大70%を示した。
【0115】
(局所のケイ素ナノ粒子製剤によるインビボの眼球におけるsiRNA送達の評価)
インビトロにおける正常なsiRNA送達及び遺伝子ノックダウンを示した後、2つのケイ素ナノ粒子製剤(SIS005-PS91G及びSIS005-DCS613G)を前眼部への局所投与についてインビボで評価した。まず、SIS005-PS91G及びSIS005-DCS613Gを、蛍光siGloと複合し、ネイキッドsiGloコントロールを反対の眼に滴下する片側の処置の後、野生型マウスに点眼剤として適用した。眼球の蛍光性を、インビボのイメージングシステムを用いて24時間までモニタリングした。第1の測定を、マウスがなお処置後の麻酔状態にある、投与の15分後に行い、その後の測定を投与後3時間、6時間、及び24時間で繰り返した。等しい量のsiGloを各眼に経局所で適用したが、15分後に測定した、最も高い蛍光強度は、SIS005-DCS613Gでの処置において観察し、SIS005-PS91Gではわずかに少なく、ネイキッドsiGloでは2倍少ない(p<0.05)。
図11が参照される。これは、ネイキッドオリゴヌクレオチドと比較して、製剤化した薬剤の眼球表面付着性の増大、及び、2つのケイ素ナノ粒子製剤における滞留時間の向上を示した。3時間後、インビボの蛍光信号は、siGlo-SIS005-DSC613Gで処置した眼において3倍低下したが、能動的な眼球のクリアランス機構のため、siGlo-SIS005-PS91G及び未製剤化のsiGloの点眼剤ではベースライン水準に戻った。インビボの信号強度におけるさらなる緩やかな低下が観察されたが、siGlo-SIS005-DSC613Gで処置した眼における蛍光性は、24時間まで持続し、すべての時点において未製剤化のネイキッドsiGloで処置した眼のものよりも有意に高かった(3時間及び6時間においてp<0.01、並びに24時間においてp<0.05)。これは、経局所で投与した、本発明のケイ素ナノ粒子と共に製剤化したsiRNA薬剤の有効な取り込みを示唆する。ナノ粒子の組織への浸透を検証するため、角膜層におけるsiRNAの分布を、処置後の角膜切片の蛍光顕微鏡観察によって検討した。赤色のsiGlo蛍光を、点眼剤適用の3時間後に採取した、ProSilicで処置した眼のすべての切片において、すべての角膜層にわたり検出したが、ネイキッドsiGloのコントロールにおいて、バックグランドを超える蛍光は観察されなかった。siRNA製剤投与の24時間後に、蛍光は、SIS005-DSC613Gで処置した角膜切片においてのみ観察された。
【0116】
インビボにおける取り込みの研究の後、SIS005-DSC613GによるsiRNA送達を、ルシフェラーゼ発現を角膜上皮のみに限定したマウスレポーターモデルを用いて機能アッセイにおいてさらに検討した。インビボの処置の前に、レポーターマウスにおける基底角膜ルシフェラーゼ活性を、4日間24時間毎に定量化して、スプリットボディコントロール実験における一貫した右対左の比を確認した。siLuc又はコントロールsiRNAと複合させたSIS005-DSC613Gを、1日毎に8回、同じ動物の反対の眼に点眼剤として経局所で適用し、角膜ルシフェラーゼ発現を、処置レジメンにおいて及びその後の8日において、生動物イメージングによって毎日評価した。ルシフェラーゼ発現の低下が、処置開始の24時間内に観察され、最大の阻害(41%±13、p<0.001)を11日目に得た。有意な遺伝子サイレンシング作用が処置レジメン全体にわたって持続し、処置終了後に4日間続いた。予想されるように、眼球の生物発光レベル低下は、処置停止後に緩やかにベースラインに戻り、これは遺伝子抑制からの正常な回復を示すものであった。これらの結果について
図12及び
図13が参照される。重要な点として、肉眼による処置した目の検査、及び局所処置後の毎日の動物の目視検査により、点眼剤からの有害作用は示されず、ケイ素ナノ粒子製剤がインビボにおいて十分に許容されるものであることを示唆した。