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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016949
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】天井構造及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20240201BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20240201BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240201BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E04B1/80 100E
E04B9/00 B
E04B1/76 500Z
E04B1/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119260
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】本間 瑞基
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DD01
2E001DH12
2E001FA14
2E001GA12
2E001GA13
2E001NB01
2E001NC01
(57)【要約】
【課題】天井面における結露の発生、及び冷却装置の冷却負荷の増大を抑制することができる天井構造及び建物を提供する。
【解決手段】天井構造1は、ショーケース20の上方に設けられ、天井面15aを有する天井材15と、天井面15aに設けられ、ショーケース20に対する形態係数が0.3以上となる範囲に配置される低放射材30と、を具備する。また、低放射材30は、平面視においてショーケース20の全体を含む範囲に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置の上方に設けられ、天井面を有する天井材と、
前記天井面に設けられ、前記冷却装置に対する形態係数が0.3以上となる範囲に配置される低放射材と、
を具備する、
天井構造。
【請求項2】
前記低放射材は、
平面視において前記冷却装置の全体を含む範囲に配置される、
請求項1に記載の天井構造。
【請求項3】
前記低放射材は、
放射率が0.3以下となるように形成される、
請求項1に記載の天井構造。
【請求項4】
前記天井面と前記低放射材との間に配置され、前記天井面に対して前記低放射材を支持する支持材を具備し、
前記支持材は、
前記天井面と前記低放射材との間の内部空間と、前記内部空間の外側の外部空間とを区画するように設けられる、
請求項1に記載の天井構造。
【請求項5】
前記低放射材は、
前記天井面に対して波打つコルゲート状に形成される、
請求項1に記載の天井構造。
【請求項6】
前記天井面に対して前記低放射材を支持するとともに、前記天井面と前記低放射材との間にダクト状の空間を形成するように設けられた支持材と、
平面視において前記低放射材と重複する位置に配置され、前記空間に室内の空気を取り込むとともに、前記空間から室外に空気を排出するファンと、
を具備する、
請求項1に記載の天井構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の天井構造を具備する建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井材を具備する天井構造及び建物の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井材を具備する天井構造及び建物の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、床部に冷凍食品や生鮮食品を陳列するための冷凍冷蔵ショーケースが設置され、冷凍冷蔵ショーケースの上方に天井材が設けられたスーパーマーケットが記載されている。当該冷凍冷蔵ショーケースは、上部が開口した平型ショーケースであり、建物の床部に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-83773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなショーケースが設置されたスーパーマーケット等の建物においては、天井面とショーケースの放射伝熱によって天井面の温度が露点温度以下まで低下することにより、天井面に結露が発生して天井にカビが発生してしまう可能性があった。また、天井面からの放射熱をショーケースが受けることによって、ショーケースの冷却負荷が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は天井面における結露の発生、及び冷却装置の冷却負荷の増大を抑制することができる天井構造及び建物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、冷却装置の上方に設けられ、天井面を有する天井材と、前記天井面に設けられ、前記冷却装置に対する形態係数が0.3以上となる範囲に配置される低放射材と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記低放射材は、平面視において前記冷却装置の全体を含む範囲に配置されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記低放射材は、放射率が0.3以下となるように形成されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記天井面と前記低放射材との間に配置され、前記天井面に対して前記低放射材を支持する支持材を具備し、前記支持材は、前記天井面と前記低放射材との間の内部空間と、前記内部空間の外側の外部空間とを区画するように設けられるものである。
【0012】
請求項5においては、前記低放射材は、前記天井面に対して波打つコルゲート状に形成されるものである。
【0013】
請求項6においては、前記天井面に対して前記低放射材を支持するとともに、前記天井面と前記低放射材との間にダクト状の空間を形成するように設けられた支持材と、平面視において前記低放射材と重複する位置に配置され、前記空間に室内の空気を取り込むとともに、前記空間から室外に空気を排出するファンと、を具備するものである。
【0014】
請求項7においては、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の天井構造を具備するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、天井面における結露の発生、及び冷却装置の冷却負荷の増大を抑制することができる。
【0017】
請求項2においては、天井面における結露の発生、及び冷却装置の冷却負荷の増大をより抑制することができる。
【0018】
請求項3においては、低放射材における結露の発生を抑制することができる。
【0019】
請求項4においては、空気層の断熱効果によって、天井面への伝熱を抑制することができる。
【0020】
請求項5においては、低放射材の強度を向上させることができる。
【0021】
請求項6においては、天井面における結露の発生をより抑制することができる。
【0022】
請求項7においては、天井面における結露の発生、及び冷却装置の冷却負荷の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第一実施形態に係る天井構造及び建物を示した正面断面図。
図2】(a)低放射材及びショーケースを示した拡大正面断面図。(b)同じく、平面図。
図3】ショーケースから放射される冷熱の移動方向を示した拡大正面断面図。
図4】(a)ショーケース(W900×D1800)から低放射材までの上下方向の距離と、ショーケースから低放射材への形態係数との関係を示すグラフ。(b)ショーケース(W1800×D5400)から低放射材までの上下方向の距離と、ショーケースから低放射材への形態係数との関係を示すグラフ。
図5】(a)低放射材を設けなかった場合の天井面温度のシミュレーション結果を示す図。(b)低放射材を設けた場合の天井面温度のシミュレーション結果を示す図。
図6】(a)第二実施形態に係る天井構造を示した拡大正面断面図。(b)同じく、天井構造を示した平面図。
図7】(a)第三実施形態に係る天井構造を示した拡大正面断面図。(b)図7(a)におけるB-B断面図。
図8】(a)第四実施形態に係る天井構造を示した拡大正面断面図。(b)同じく、天井構造を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0025】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る天井構造1及び建物10について説明する。なお、図2(b)においては、天井材15の図示を省略している。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る建物10は、スーパーやコンビニエンスストア等の店舗として用いられる平屋構造の建物である。建物10は、主として、基礎11、土台12、床部13、外壁部14、天井構造1、屋根16及びショーケース20を具備する。また、天井構造1は、天井材15及び低放射材30を具備する。
【0027】
基礎11は、建物10の自重を地盤Gに伝えて建物10を地盤Gに固定するためのものである。基礎11は、ベース部11a及び立ち上がり部11b等を具備する。ベース部11aは、その下部が地盤G内に配置されて建物10の底面を形成する。立ち上がり部11bは、ベース部11aの外縁部から上方向に延びるように形成される。
【0028】
土台12は、基礎11の立ち上がり部11bの上面に配置される部材(角材)である。土台12は、アンカーボルト(不図示)によって立ち上がり部11bに固定される。
【0029】
床部13は、建物10の床を成す部材である。床部13は、合板等によって構成され、土台12に固定される。床部13は、その板面を上下方向に向けて配置される。
【0030】
図1に示すように、外壁部14は、建物10の外壁を成す部材である。外壁部14は、土台12に固定される。外壁部14は、上方向に延びるように形成される。
【0031】
天井構造1に含まれる天井材15は、外壁部14の上端部に固定される。天井材15は、その板面を上下方向に向けて配置される。天井材15は、建物10の内部の全域に亘って形成される。天井材15と後述する屋根16との間(天井裏)には、断熱材(不図示)が設けられる。天井材15には、床部13と対向する天井面15aが形成される。天井材15は、床部13及び当該床部13に載置された後述するショーケース20の上方に設けられる。
【0032】
図1に示すように、屋根16は、建物10の上端部に設けられる平屋根である。屋根16は、その板面を上下方向に向けて配置される。
【0033】
ショーケース20は、図2(a)に示すように、陳列された商品Aを内部で冷却するためのものである。ショーケース20には、その上面が開口されると共に当該開口部分が常に開放されるオープンタイプの平型ショーケースが採用される。ショーケース20は、コンプレッサ(不図示)や送風機(不図示)等を具備し、内部で冷気を循環可能に構成される。図2(b)に示すように、ショーケース20は、平面視略矩形状に形成される。ショーケース20は、床部13に載置される。すなわち、ショーケース20は、天井面15aの下方に配置される。
【0034】
天井構造1に含まれる低放射材30は、ショーケース20からの冷熱が天井面15aに伝わるのを抑制するためのものである。低放射材30は、平面視略矩形の板状に形成される。低放射材30の厚さは、任意の値とすることができる。低放射材30は、天井面15aに設けられる。低放射材30は、ショーケース20と対向する位置に配置される。
【0035】
低放射材30は、その放射率が天井材15の放射率よりも低く形成される。具体的には、低放射材30の放射率は、0.3以下となるように形成されることが好ましい。低放射材30は、放射率が天井材15の放射率よりも低くなる任意の材料によって形成され、例えば金属膜を付与した樹脂やアルミニウムにより形成される。
【0036】
図2(b)に示すように、低放射材30は、平面視においてショーケース20の全体を含む範囲に配置される。すなわち、低放射材30は、その外縁部が平面視においてショーケース20の外縁部よりも外側方に位置するように配置される。本実施形態においては、低放射材30は、平面視において当該低放射材30の中心がショーケース20の中心と一致するように配置される。低放射材30が配置される範囲の詳細については、後述する。
【0037】
次に、図3等を参照してショーケース20が動作しているときの建物10の状態について説明する。なお、図3に示す矢印は、冷熱の移動方向を示している。
【0038】
ショーケース20が動作すると、ショーケース20の内部で冷気が循環して内部が低温となり、商品Aが冷却される。このような状態において、図3に示すように、低温となったショーケース20の内部から冷熱が放射される。当該冷熱は、略上方向に移動(上昇)する。上昇して低放射材30に当たった冷熱は、一部が反射されて略下方向に移動(下降)する。
【0039】
これによれば、低放射材30によって、天井面15aによる冷熱の受熱を減らすことができるため、天井面15aが冷却されてしまうことを抑制できる。これによって、天井面15aが露点温度以下になることを抑制できるため、天井面15aに結露が発生することを抑制できる。したがって、天井面15aにカビが発生することを抑制できる。
【0040】
ここで、ショーケース20から低放射材30に伝達される熱量(冷熱によって低放射材30から奪われる熱量)Wは、以下の数式1で算出することができる。
(数1)
W=ψεεδ(T -T
【0041】
ここで、前記数式1に係るψは、ショーケース20から低放射材30への(ショーケース20に対する低放射材30の)形態係数である。前記数式1に係るεは、ショーケース20の放射率である。前記数式1に係るεは、低放射材30の放射率である。前記数式1に係るδは、ステファンボルツマン定数である。前記数式1に係るTは、ショーケース20の絶対温度である。前記数式1に係るTは、低放射材30の絶対温度である。
【0042】
なお、前記数式1に係る形態係数ψは、熱をやり取りする2つの面(ショーケース20の冷熱を放射する面(本実施形態においては、上面)、及び天井面15a)の間の幾何学的位置関係を示す無次元量であり、ショーケース20から放射される全熱量のうち、低放射材30に当たる熱量の割合を示している。形態係数ψは、0から1までの値をとる。形態係数ψは、1に近い値であればほとんどの冷熱が低放射材30に当たることを示し、0に近い値であればほとんどの冷熱が低放射材30に当たらないことを示すものとなる。本実施形態においては低放射材30に多くの冷熱を当てる(天井面15aに当たる冷熱を減らす)ことが好ましいため、形態係数ψは、1に近い値であることが好ましい。
【0043】
したがって、形態係数ψは、図2(a)に示すショーケース20の上面から低放射材30の下面までの高さ方向の距離Hが短くなれば1に近い値となる。また、形態係数ψは、低放射材30の面積が大きくなれば(図2に示す低放射材30の外縁部とショーケース20の外縁部との距離Wsが長くなれば)1に近い値となる。
【0044】
本実施形態に係る建物10においては、天井面15aが冷却されるのを効果的に抑制できるという観点から、ショーケース20に対する形態係数が0.3以上となる範囲に低放射材30が配置される。より詳細には、ショーケース20の上面から低放射材30の下面までの上下方向の距離Hに応じて、形態係数ψが0.3以上となるように低放射材30の外縁部とショーケース20の外縁部との距離Ws(図2参照)の値が設定される。なお、距離Wsは、ショーケース20の左辺から低放射材30の左辺までの間の左右方向の距離、ショーケース20の右辺から低放射材30の右辺までの間の左右方向の距離、ショーケース20の前辺から低放射材30の前辺までの間の前後方向の距離、ショーケース20の後辺から低放射材30の後辺までの間の前後方向の距離を示している。
【0045】
図4(a)及び図4(b)は、ショーケース20の上面から低放射材30の下面までの距離Hと、形態係数ψと、の関係を示しており、図4(a)はショーケース20がW900×D1800(幅W=900mm、奥行D=1800mm)の場合、図4(b)はショーケース20がW1800×D5400(幅W=1800mm、奥行D=5400mm)の場合を示している。
【0046】
図4(a)及び図4(b)に示すように、ショーケース20の上面から低放射材30の下面までの距離Hが短いほど、形態係数ψが大きくなる。また、低放射材30の外縁部とショーケース20の外縁部との距離Wsが長いほど、形態係数ψが大きくなる。
【0047】
ショーケース20がW900×D1800である場合、図4(a)に示すように、距離Hが2.2m以下である建物10においては、距離Wsは少なくとも0.75m以上であれば形態係数ψ≧0.3とすることができる。距離Hが2.7mである建物10においては、距離Wsは少なくとも1.0m以上であれば形態係数ψ≧0.3とすることができる。距離Hが3.2mである建物10においては、距離Wsは少なくとも1.5m以上であれば形態係数ψ≧0.3とすることができる。
【0048】
ショーケース20がW1800×D5400である場合、図4(b)に示すように、距離Hが2.7m以下である建物10においては、距離Wsは少なくとも0.5m以上であれば形態係数ψ≧0.3とすることができる。距離Hが3.2mである建物10においては、距離Wsは少なくとも0.75m以上であれば形態係数ψ≧0.3とすることができる。
【0049】
図5(a)は、低放射材30を設けなかった場合の天井面15aの表面温度のシミュレーション結果を示す図であり、図5(b)は、低放射材30を設けた場合の天井面15aの表面温度のシミュレーション結果を示す図である。以下、シミュレーションの計算条件を示す。
【0050】
各部寸法
・距離H:3.2m
・ショーケース:W1.8m×D5.4m×H0.7m
・距離Ws:0.75m
・形態係数ψ:0.34
【0051】
温度環境
・室内温度:25℃
・床面温度:22℃
・天井裏温度:30℃
・ショーケース温度:-20℃
【0052】
仕様
・天井材:石こうボードt=12mm(放射率0.9)
・低放射材(放射率0.3)
・断熱材:グラスウールt=100mm
【0053】
図5(a)に示すように、低放射材30を設けない場合、天井面15aの中心温度は20.2℃であるのに対して、形態係数ψが0.3以上(0.34)となるように低放射材30を設けた場合、天井面15aの中心温度は22.3℃であり、低放射材30を設けない場合と比べて約2℃高くなる。すなわち、形態係数ψが0.3以上(0.34)となるように低放射材30を設けた場合、低放射材30を設けない場合と比べて、天井面15aの表面温度の冷却を2℃以上抑えることができる。したがって、天井面15aに結露が発生するのを抑制し易くすることができる。
【0054】
より詳細には、低放射材30を設けずに天井面15aの中心温度が20.2℃まで低下した場合、室内の空気温度が25℃のときに相対湿度が75%を超えていると、天井面15aの表面温度が露点温度以下となり、天井面15aに結露が発生してしまう。一方、形態係数ψが0.3以上(0.34)となるように低放射材30を設けることで天井面15aの中心温度が22.3℃までしか低下しない場合、室内の空気温度が25℃のときに相対湿度が75%を超えていても85%未満である場合には、天井面15aの表面温度が露点温度以下となることはなく、天井面15aに結露が発生するのを抑制することができる。
【0055】
このように、低放射材30が、天井面15aのショーケース20と対向する位置に、ショーケース20から低放射材30への形態係数ψが0.3以上となるように配置されることにより、ショーケース20から放射された冷熱の多くを低放射材30に当てることが可能となるため、天井面15aに当たる冷熱を効果的に減らすことができる。したがって天井面15aに結露が発生するのを抑制することができる。
【0056】
また、低放射材30が配置されることにより、天井面15aからの放射熱をショーケース20が受けるのを抑制することができる。したがって、ショーケース20の冷却負荷が増大するのを抑制することができ、ひいては省エネ性を向上させることができる。
【0057】
また、前記数式1からも明らかなように、低放射材30の下面の放射率εを低くすることで、ショーケース20から低放射材30に伝達される熱量Wを減らすことができる。そこで、前述の如く、低放射材30の放射率は0.3以下とすることが好ましい。
【0058】
これによれば、ショーケース20から低放射材30に伝達される熱量Wを減らすことができるため、低放射材30が冷熱によって冷却され難くすることができる。これによって、低放射材30及び当該低放射材30の裏側(上方)の天井面15aに結露が発生することを効果的に抑制できる。また、低放射材30の放射率を低くすることで、低放射材30に当たった冷熱の多くを反射することができるため、低放射材30よりも下方の空間を効果的に冷却することができる。これにより、ショーケース20の冷却負荷が増大するのを抑制することができる。
【0059】
以上の如く、本実施形態に係る天井構造1は、ショーケース20の上方に設けられ、天井面15aを有する天井材15と、前記天井面15aに設けられ、前記ショーケース20に対する形態係数が0.3以上となる範囲に配置される低放射材30と、を具備するものである。
【0060】
このように構成することにより、ショーケース20から放射された冷熱を低放射材30で遮ることができる。これにより、ショーケース20から放射された冷熱によって天井面15aが冷却されることを抑制できるため、天井面15aに結露が発生することを抑制できる。また、天井面15aからの放射熱をショーケース20が受けるのを抑制することができるため、ショーケース20の冷却負荷が増大するのを抑制することができる。
【0061】
また、前記低放射材30は、平面視において前記ショーケース20の全体を含む範囲に配置されるものである。
【0062】
このように構成することにより、ショーケース20から放射された冷熱が天井面15aに当たり難くすることができる。これにより、天井面15aにおける結露の発生、及びショーケース20の冷却負荷の増大をより抑制することができる。
【0063】
また、前記低放射材30は、放射率が0.3以下となるように形成されるものである。
【0064】
このように構成することにより、ショーケース20から放射された冷熱を低放射材30でより多く反射することが可能となる。これによれば、ショーケース20から低放射材30に伝達される熱量Wを効果的に減らすことができるため、ショーケース20から放射された冷熱によって低放射材30及び当該低放射材30の裏側の天井面15aが冷却されることを効果的に抑制できる。これにより、低放射材30における結露の発生を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る建物10は、天井構造1を具備するものである。
【0066】
このように構成することにより、天井面15aにおける結露の発生、及びショーケース20の冷却負荷の増大を抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態に係るショーケース20は、冷却装置の実施の一形態である。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、本実施形態において、建物10は、平屋構造であるものとしたが、建物10の構造や階数はこれに限定されるものでなく、二階建ての構造等であってもよい。また、建物10は、スーパーやコンビニエンスストア等の店舗として用いられるものとしたが、建物10の用途は、これに限定されるものでない。建物10は、例えば、ショールーム等の用途に用いられるものであってもよい。
【0070】
また、建物10に設けられる屋根16の形状は平屋根に限るものではなく、種々の形状の屋根を適用することが可能である。
【0071】
また、本実施形態においては、板状の部材(低放射材30)によってショーケース20から放射される冷熱を遮るものとしたが、低放射材30の形状はこれに限定されるものでなく、例えば直方体状であってもよい。
【0072】
また、本実施形態において、低放射材30は、平面視略矩形状に形成されるものとしたが、低放射材30の平面視における形状はこれに限定されるものでなく、平面視略正方形状や平面視略円形状等であってもよい。
【0073】
また、本実施形態において、ショーケース20には商品Aが陳列されるものとしたが、ショーケース20に陳列される物の種類は、これに限定されるものでなく、商品の見本等であってもよい。
【0074】
また、本実施形態において、ショーケース20は、上面が開口されるものとしたが、ショーケース20の開口部分の位置は、これに限定されるものでなく、左面や前面等が開口されていてもよい。このような場合であっても、ショーケース20に対する形態係数が0.3以上となるように、低放射材30の位置及び範囲が適宜設定される。なお、天井材15に向けて開放している冷却装置(平型ショーケース)が設置される場合に、上述した実施形態に係る低放射材30を適用することで、より実効的に効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態において、ショーケース20には、オープンタイプのショーケースが採用されるものとしたが、ショーケース20の種類は、これに限定されるものでなく、開口部分が開閉可能なクローズドタイプのショーケースであってもよい。
【0076】
また、本実施形態において、冷却装置としてショーケース20が配置されるものとしたが、冷却装置の種類はこれに限定されるものでなく、冷蔵庫等であってもよい。
【0077】
また、本実施形態において、低放射材30は、当該低放射材30の外縁部とショーケース20の外縁部との距離Wsが、各辺において同じ値となるように設けられるものとしたが、ショーケース20から低放射材30への形態係数が0.3以上となる限りにおいて、各辺において異なる値となるように設けられていてもよい。
【0078】
次に、図6(a)及び図6(b)を用いて、第二実施形態に係る天井構造2について説明する。第二実施形態に係る天井構造2が第一実施形態に係る天井構造1と異なる点は、主として、支持材40を備えている点である。なお、図6(b)及び後述する図8(b)においては、天井材15の図示を省略している。
【0079】
支持材40は、天井面15aに対して低放射材30を支持するためのものである。支持材40は、天井面15aと低放射材30との間に配置される。支持材40は、天井面15aに対して取り外し容易な手段(例えばビス等)で固定されることが好ましい。支持材40は、低放射材30の縁部に、低放射材30の全周に亘って連続するように配置される。すなわち、支持材40は、天井面15aと低放射材30との間の内部空間S1と、内部空間S1の外側の外部空間S2とを区画するように設けられる。これにより、支持材40は、天井面15aと低放射材30との間に、密閉された空気層を形成する。
【0080】
このように、天井面15aと低放射材30との間に密閉された空気層が形成されることにより、当該空気層の断熱効果によって、ショーケース20からの冷熱が天井面15aへ伝わるのをさらに抑制することができる。したがって、天井面15aに結露が発生するのをより抑制することができる。
【0081】
また、店内のレイアウトの変更により、ショーケース20の設置位置が変更される可能性がある。この場合、低放射材30の位置も変更する必要がある。そこで、第二実施形態においては、低放射材30が、天井面15aに直接固定又は接着されるのではなく、支持材40を介して天井面15aに取り付けられている。これにより、ショーケース20の設置位置が変更された場合、天井材15の大掛かりな改修をすることなく、支持材40の位置を変更することによって低放射材30の位置も容易に変更することができる。
【0082】
以上の如く、第二実施形態に係る天井構造2は、前記天井面15aと前記低放射材30との間に配置され、前記天井面15aに対して前記低放射材30を支持する支持材40を具備し、前記支持材40は、前記天井面15aと前記低放射材30との間の内部空間S1と、前記内部空間S1の外側の外部空間S2とを区画するように設けられるものである。
【0083】
このように構成することにより、空気層の断熱効果によって、天井面15aへの伝熱を抑制することができる。
【0084】
次に、図7(a)及び図7(b)を用いて、第三実施形態に係る天井構造3について説明する。第三実施形態に係る天井構造3が第二実施形態に係る天井構造2と異なる点は、主として、支持材40に代えて支持材41を備えている点、及び低放射材30に代えて低放射材50を備えている点である。
【0085】
支持材41は、天井面15aに対して低放射材50を支持するためのものである。支持材41は、正面断面視において略逆T字型に形成される。支持材41は、後述する低放射材50の左右縁部の前後長さと略同じ前後長さを有する長手状の部材に形成される。支持材41は、長手方向を前後方向に向けて配置される。支持材41は、その上端部において天井面15aに固定される。支持材41は、低放射材50の縁部を支持するように配置される。支持材41は、低放射材50の全周に亘って連続するように配置されてもよく、あるいは、互いに間隔をおいて複数配置されてもよい。
【0086】
低放射材50は、コルゲート加工によって形成された部材であり、天井面15aに対して上下方向に波打つコルゲート状(波型)に形成される。すなわち、低放射材50は、上方に突出する山部50aと、下方に突出する谷部50bと、が一方向に連続するように形成される。本実施形態においては、低放射材50は、山部50aと谷部50bとが前後方向に連続するように形成される。低放射材50の左右端部は、支持材41の下部に載置され、当該支持材41を介して天井面15aに支持される。
【0087】
低放射材50は、このようなコルゲート状に形成されることにより、所定方向(例えば、左右方向)の力に対する強度を向上させることができ、ひいては低放射材50のたわみを低減することができる。これにより、支持材41を複数設けた場合に、支持材41同士の間隔を比較的大きくする(支持材41の数を減らす)ことができる。
【0088】
また、低放射材50は、コルゲート状に形成されることにより、天井面15aとの間に空気層が形成される。したがって、当該空気層の断熱効果により、ショーケース20からの天井面15aへの伝熱を抑制することができる。
【0089】
また、低放射材50は、コルゲート状に形成されることにより、山部50aと谷部50bとが並ぶ方向(本実施形態においては前後方向)に伸縮可能に形成される。これにより、低放射材50の前後長さを容易に調整することができる。
【0090】
以上の如く、第三実施形態に係る天井構造3において、前記低放射材30は、前記天井面15aに対して波打つコルゲート状に形成されるものである。
【0091】
このように構成することにより、低放射材50の強度を向上させることができる。
【0092】
次に、図8(a)及び図8(b)を用いて、第四実施形態に係る天井構造4について説明する。第四実施形態に係る天井構造4が第二実施形態に係る天井構造2と異なる点は、主として、支持材40に代えて支持材42を備えている点、及びファン17をさらに備えている点である。
【0093】
支持材42は、天井面15aに対して低放射材30を支持するためのものである。支持材42は、天井面15aと低放射材30との間に配置される。支持材42は、天井面15aに対して取り外し容易な手段(例えばビス等)で固定されることが好ましい。支持材42は、低放射材30の左右縁部を支持するように、低放射材30の前端から後端にかけて延伸するように配置される。これにより、支持材42は、天井面15aと低放射材30との間にダクト状の空間S3を形成する。
【0094】
ファン17は、天井面15aと低放射材30との間の通気を行うように設けられる。ファン17は、天井材15に取り付けられる。ファン17は、平面視において低放射材30の略中央と重複する位置に配置される。ファン17は、運転することで、左右の支持材42の間から(前方及び後方から)、天井面15aと低放射材30との間の空間S3に室内の空気を取り込むとともに(図8(b)参照)、空間S3から室外に空気を排出する(図8(a)参照)ように設けられる。
【0095】
このように比較的暖かい室内の空気を天井面15aと低放射材30との間に取り込むこと(通気による加温)により、天井面15aの温度低下を抑制することができる。これにより、天井面15aに結露が発生するのをより抑制することができる。また、支持材42が低放射材30の左右縁部に低放射材30の前端から後端にかけて延伸するように配置されることにより、天井面15aと低放射材30との間の空間S3がダクト状に形成されるため、天井面15aと低放射材30との間をムラなく通気することができ、通気による加温の効果の確実性を向上させることができる。
【0096】
また、ファン17としては、法定換気用の(法令上必要な)既設の排気ファンを用いることができる。換言すれば、既設の排気ファンの位置に合わせて、ショーケース20や低放射材30を配置することができる。このように、法令上必要な既設の排気ファンを活用することで、コストアップを抑制しつつ、通気による加温を促進することができる。
【0097】
以上の如く、第四実施形態に係る天井構造4は、前記天井面15aに対して前記低放射材30を支持するとともに、前記天井面15aと前記低放射材30との間にダクト状の空間S3を形成するように設けられた支持材42と、平面視において前記低放射材30と重複する位置に配置され、前記空間S3に室内の空気を取り込むとともに、前記空間S3から室外に空気を排出するファン17と、を具備するものである。
【0098】
このように構成することにより、天井面15aにおける結露の発生をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3,4 天井構造
10 建物
15 天井材
15a 天井面
17 ファン
20 ショーケース
30,50 低放射材
40,41,42 支持材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8