(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169563
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】画像読取装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241128BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20241128BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H04N1/00 567K
B65H3/06 350A
B65H5/06 M
H04N1/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160998
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2023189513の分割
【原出願日】2019-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】西沢 聖児
(57)【要約】
【課題】高速化が可能で、かつ小型化が可能であって、読取った画像の品質も確保することが可能な原稿読取装置を提供する。
【解決手段】制御手段は、シートの画像を第1解像度で読取る第1解像度モード(S2のno)、シートの画像を第1解像度よりも高い第2解像度で読取る第2解像度モード(S2のyes)を実行可能である。第1解像度モードでは搬送速度を第1搬送速度に設定する高速モード、第2解像度モードでは搬送速度を第1搬送速度よりも低い第2搬送速度に設定する低速モードを実行可能である。低速モードを実行する際、シートが第1の厚みである場合に(S3のno)駆動手段に第1駆動速度を設定する第1の低速モード(S5)と、シートが第1の厚みよりも厚い第2の厚みである場合に駆動手段に第1駆動速度よりも速い第2駆動速度を設定する第2の低速モード(S6)とを実行可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載されるシート積載手段と、
前記シート積載手段に積載されたシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されるシートの画像を読取る画像読取手段と、
第1の厚みのシートを搬送する第1モードと、前記第1の厚みよりも厚い第2の厚みのシートを搬送する第2モードと、を実行可能な制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記第1モードにおいては、第1解像度でシートの画像を読取る場合の搬送速度が、前記第1解像度よりも高い第2解像度でシートの画像を読取る場合の搬送速度よりも速くなるように、前記搬送手段によるシートの搬送速度を制御し、
前記第2モードにおいては、読取りの解像度に関わらず、前記第1モードにおいて前記第1解像度でシートの画像を読取る場合よりも遅い所定の搬送速度となるように、前記搬送手段によるシートの搬送速度を制御する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記画像読取手段により画像を読取ったシートを積載する排出積載手段と、
前記シート積載手段から前記排出積載手段までシートを搬送する搬送路と、を備え、
前記シート積載手段と前記排出積載手段とは上下方向に重なる位置に配置され、
前記搬送路は、シートの表裏を反転させるように、シートの搬送方向に直交する方向から視て湾曲した湾曲形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
シートの厚みを検知する検知手段を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記第1モードと前記第2モードとを設定する設定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記搬送手段を駆動するモータを備え、
前記第2モードにおいて第2解像度でシートの画像を読取る場合の前記モータの回転速度は、前記第1モードにおいて第2解像度でシートの画像を読取る場合の前記モータの回転速度よりも速い、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取手段により読取った画像を別のシートに画像形成する画像形成部と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送する画像読取装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、自動原稿搬送装置(ADF)等においては、シートを搬送する機構が備えられている。シートを搬送する際には、シートの厚み(坪量)やサイズに応じて搬送抵抗(負荷トルク)が異なる。そのため、シートの情報(用紙情報)に応じて、シートを搬送するローラを駆動する駆動モータに供給する電流値を設定するものが開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1のものは、シートの厚みやサイズに応じて駆動モータの電流値を適宜に選択することで、シートの搬送時における発熱の低減や消費電力の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生産性を向上するために、モノクロの画像読取であったり、低解像度の画像読取であったりする場合は、原稿を高速で搬送することが考えられる。しかしながら、原稿の搬送速度を高速化すると、速度に応じて搬送抵抗が増加するため、各駆動モータの性能が追い付かず、特に厚紙の原稿ではジャムが発生する虞がある。
【0005】
そこで本発明は、厚紙が搬送される場合のジャムの発生を防止することが可能な画像読取装置、及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本画像読取装置は、シートが積載されるシート積載手段と、前記シート積載手段に積載されたシートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送されるシートの画像を読取る画像読取手段と、第1の厚みのシートを搬送する第1モードと、前記第1の厚みよりも厚い第2の厚みのシートを搬送する第2モードと、を実行可能な制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1モードにおいては、第1解像度でシートの画像を読取る場合の搬送速度が、前記第1解像度よりも高い第2解像度でシートの画像を読取る場合の搬送速度よりも速くなるように、前記搬送手段によるシートの搬送速度を制御し、前記第2モードにおいては、読取りの解像度に関わらず、前記第1モードにおいて前記第1解像度でシートの画像を読取る場合よりも遅い所定の搬送速度となるように、前記搬送手段によるシートの搬送速度を制御する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本画像形成装置は、上記の画像読取装置と、前記画像読取手段により読取った画像を別のシートに画像形成する画像形成部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、厚紙が搬送される場合のジャムの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は第1の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図、(b)は画像形成エンジンを示す模式図。
【
図2】第1の実施の形態に係る制御部とそれに接続されるセンサ類及び各種モータとを示すブロック図。
【
図3】第1の実施の形態に係る駆動速度のモード設定制御を示すフローチャート。
【
図4】第1の実施の形態における原稿厚み検知センサの受振素子による受振強度と閾値との関係を示すグラフ。
【
図5】第2の実施の形態における原稿厚み検知センサの構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施の形態>
[全体構成]
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。第1の実施の形態に係る画像形成装置としてのプリンタ100は、電子写真方式のレーザビームプリンタである。プリンタ100は、
図1(a)に示すように、プリンタ本体70と、プリンタ本体70の上部に装着される原稿読取装置10と、を備えている。なお、以下において、シートとは、普通紙の他にも、厚紙、コート紙等の特殊紙、封筒やインデックス紙等の特殊形状からなる記録材、及びオーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルムや布などを含むものとし、原稿もシートの一例である。
【0011】
プリンタ本体70は、その内部に画像形成部としての画像形成エンジン60を有している。画像形成エンジン60は、
図1(b)に示すように、電子写真方式の画像形成手段としての画像形成ユニットPUと、定着装置7と、を備えている。画像形成動作の開始が指令されると、感光体である感光ドラム1が回転し、ドラム表面が帯電装置2によって一様に帯電される。すると、露光装置3が、画像読取手段としての画像読取装置30,31又は外部のコンピュータから送信された画像データに基づいてレーザ光を変調して出力し、感光ドラム1の表面を走査して静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像装置4から供給されるトナーによって可視化(現像)されてトナー像となる。
【0012】
このような画像形成動作に並行して、不図示のカセット又は手差しトレイに積載されたシートを画像形成エンジン60へ向けて給送する給送動作が実行される。給送されたシートは、画像形成ユニットPUによる画像形成動作の進行に合わせて搬送される。そして、感光ドラム1に担持されたトナー像は、転写ローラ5によってシートに転写される。トナー像転写後に感光ドラム1上に残ったトナーは、クリーニング装置6によって回収される。未定着のトナー像が転写されたシートは、定着装置7へと受け渡されて、ローラ対に挟持されて加熱及び加圧される。トナーがシートに対して溶融及び固着して画像が定着したシートは、排出ローラ対等の排出手段によって、排出される。
【0013】
[画像読取装置]
次に、原稿読取装置10について詳述する。原稿読取装置10は、
図1(a)に示すように、原稿トレイ121に積載された原稿Dを給送し排出トレイ122に排出するADF(自動原稿搬送装置)20と、ADF20によって搬送される原稿を読取る読取ユニット40と、を備えている。即ち、ADF20は、読取ユニット40に原稿としてのシートを搬送するシート搬送装置を構成している。読取ユニット40は、原稿Dの表面の画像を読取る画像読取装置30を有する画像読取部を構成している。また、原稿トレイ121はシート積載手段、排出トレイ122は排出積載手段を構成している。なお、このADF20は、原稿台ガラス203が開放可能となるように、ヒンジによって読取ユニット40に対して回動可能に支持されている。また、シートの一例である原稿Dは、白紙でも、片面又は両面に画像が形成されていてもよい。
【0014】
ADF20は、搬送手段として、給送ローラとしてのピックアップローラ101と、分離ローラ対を構成する分離駆動ローラ102及び分離従動ローラ103と、レジストレーションローラ対104と、を有している。さらに、ADF20は、搬送手段として、搬送ローラ対105,106,108と、排出ローラ対109とを有している。また、ADF20は、画像読取装置31を有している。さらに、ADF20は、原稿有無検知センサSn1と、原稿幅検知センサSn2と、原稿長短検知センサSn3と、を有している。さらに、ADF20は、原稿検知センサSn4と、原稿検知センサSn5と、原稿検知センサSn6と、原稿検知センサSn7と、原稿検知センサSn8と、超音波センサSn10と、を有している。
【0015】
なお、これらのセンサのうち、原稿幅検知センサSn2及び超音波センサSn10以外のセンサについては、反射型や透過型の光学センサを用いることが可能である。また、原稿幅検知センサSn2については、規制板123に設けた遮光板の位置を検知するフォトインタラプタなどの光学センサを用いることが可能である。超音波センサSn10の詳細については後述する。これらセンサの信号は、
図2に示すように、制御部80に出力され、制御部80によって判定されることで、以下のように機能する。
【0016】
原稿有無検知センサSn1は、原稿トレイ121上の原稿Dの有無を検知する。原稿幅検知センサSn2は、原稿トレイ121上の原稿Dの幅を規制する規制板123の位置を検知することで原稿Dの幅を検知する。原稿長短検知センサSn3は、原稿トレイ121上の原稿Dの長さが所定長さ以上であるか否かを検知することで、原稿の長さが所定長さ以上であるか否かを検知する。原稿検知センサSn4~Sn8は、原稿Dの先端及び後端を検知する。検知手段としての超音波センサSn10は、超音波を原稿Dに向けて発振素子から発振し、原稿Dを透過した超音波を受振素子によって受振する。
図4に示すように、受振素子により受振した超音波は、原稿Dの透過率に応じて変わるため、それを電圧Vに変換した値が閾値を超えているか否かで原稿Dが厚紙のシートであるか、それ以外のシートであるかを判定することができる。
【0017】
一方、読取ユニット40は、プラテンガラス201と、ジャンプ台202と、原稿台ガラス203と、画像読取装置30と、を有している。
【0018】
原稿読取装置10は、原稿トレイ121に積載された原稿DをADF20により給送しながら原稿画像を走査する流し読みモードと、原稿台ガラス203に載置された原稿を走査する固定読みモードと、により、原稿Dから画像情報を読取る。流し読みモードは、原稿トレイ121に積載された原稿Dを原稿有無検知センサSn1が検出した場合、又はプリンタ本体70の操作パネル等によってユーザが明示的に指示した場合に選択される。
【0019】
流し読みモードが実行されると、ピックアップローラ101が下降し、原稿トレイ121上の最上位の原稿Dに当接する。そして、原稿Dは、ピックアップローラ101によって給送され、分離駆動ローラ102及び分離従動ローラ103によって形成される分離手段としての分離ニップにおいて1枚ずつに分離される。分離従動ローラ103の回転支持構造には、トルクリミッタが配置されており、分離従動ローラ103は、給送された原稿が1枚の時には分離駆動ローラ102に連れ回り、給送された原稿が2枚以上の時には回転しない。このため、原稿を1枚ずつ分離することができる。なお、分離従動ローラ103にシート給送方向とは反対方向の駆動を入力してもよい。
【0020】
分離ニップを通過した原稿の先端及び後端は、原稿検知センサSn4によって検知され、ピックアップローラ101の昇降タイミングや駆動開始及び駆動停止タイミングの基準となる。また、原稿Dの先端及び後端は、原稿検知センサSn5によって検知され、レジストレーションローラ対104の駆動開始及び駆動停止タイミングの基準となる。なお、ピックアップローラ101及び分離駆動ローラ102は、同一駆動源である給送分離モータM1(
図2参照)に接続されて駆動される。
【0021】
搬送される原稿Dの先端は、停止状態のレジストレーションローラ対104に突き当たり、原稿Dの斜行が補正される。斜行が補正された原稿Dは、レジストレーションローラ対104によって搬送され、搬送ローラ対105,106,108によってプラテンガラス201及び画像読取装置31に向けて搬送される。プラテンガラス201に対向してプラテンガイド107が配置されており、プラテンガイド107は、プラテンガラス201を通過する原稿Dがプラテンガラス201から浮かないように案内している。なお、搬送ローラ対105,106,108は、搬送モータM2(
図2参照)に接続されて駆動され、レジストレーションローラ対104は、レジモータM3(
図2参照)に接続されて駆動される。
【0022】
レジストレーションローラ対104を通過した原稿Dの先端及び後端は、原稿検知センサSn6によって検知され、搬送ローラ対105,106,108の駆動開始及び駆動停止タイミングの基準となる。また、搬送ローラ対106を通過した原稿Dの先端及び後端は、原稿検知センサSn7によって検知され、画像読取装置30の読取動作の開始及び終了の基準となる。さらに、搬送ローラ対108を通過した原稿Dの先端及び後端は、原稿検知センサSn8によって検知され、画像読取装置31の読取動作の開始及び終了の基準となる。
【0023】
原稿Dの表面の画像は、プラテンガラス201を介して画像読取装置30によって読取られ、また、原稿Dの裏面の画像は、画像読取装置31によって読取られる。これら画像読取装置30,31の不図示のラインセンサの受光素子によって光電変換された画像情報は、制御部80(
図2参照)へと転送される。そして、プラテンガラス201を通過した原稿Dは、ジャンプ台202によって搬送ローラ対108に導かれ、画像読取装置31を通過し、排出ローラ対109によって排出トレイ122に排出される。なお、排出ローラ対109は、排出モータM4(
図2参照)に接続されて駆動される。
【0024】
一方、固定読みモードは、原稿台ガラス203に載置された原稿Dを装置が検出した場合又はプリンタ本体70の操作パネル等によってユーザが明示的に指示した場合に選択される。この場合、原稿台ガラス203上の原稿Dは動くことなく、画像読取装置30が原稿台ガラス203に沿って移動して、原稿Dを走査する。同様に画像読取装置30の不図示のラインセンサの受光素子によって光電変換された画像情報は、制御部80(
図2参照)へと転送される。
【0025】
[制御部]
ついで、プリンタ100並びにADF20の制御手段としての制御部80の構成について
図2を用いて説明する。
図2に示すように、制御部80は、CPU81、RAM82、ROM83等を有している。また、制御部80には、上述した原稿有無検知センサSn1、原稿幅検知センサSn2、原稿長短検知センサSn3、原稿検知センサSn4~Sn8、原稿厚み検知センサとしての超音波センサSn10がそれぞれ接続されて、それらから信号が入力される。また、制御部80には、駆動手段或いは駆動モータとしての給送分離モータM1、搬送モータM2、レジモータM3、排出モータM4がそれぞれ接続され、それらに駆動速度を設定することで、各ローラ対の原稿の搬送速度を設定する。
【0026】
[モード設定制御]
続いて、上述した給送分離モータM1、搬送モータM2、レジモータM3、排出モータM4等の各駆動モータに駆動速度を設定する際のモード設定制御について
図1(a)を参照しつつ
図3を用いて説明する。
【0027】
本実施の形態においては、ADF20を省スペース化するため、原稿トレイ121と排出トレイ122とが上下方向に重なる位置に配置されている。そのため、原稿Dを搬送する搬送路110は、原稿Dの表裏を反転する形で原稿搬送方向(シート搬送方向)に直交する幅方向から視てU字状に形成され、つまり湾曲した湾曲形状111を有している。この湾曲形状111は、その円弧の径を小さくするほど、ADF20の小型化が図れるが、原稿Dの剛度(原稿を撓ませたときに元の形状に戻ろうとする力)が高くなるほど搬送抵抗が大きくなる。原稿Dの剛度は原稿Dの厚みに略比例し、つまり原稿Dが厚紙であると、それ以外の紙種(普通紙等)よりも搬送抵抗が大きくなる。原稿Dが厚紙であると、搬送抵抗が大きくなって各ローラ対における滑り量も大きくなるため、各駆動モータを同速度で駆動しても搬送速度が数%程度遅くなる。原稿Dの搬送速度が遅くなると、その分、画像読取装置30,31により読取った画像が副走査方向に延びてしまう。そのため、画像読取装置30,31による画像読取速度を合わせて遅くすることも考えられるが、走査速度を細やかに制御することになり、制御が複雑となってしまう。
【0028】
一方で、生産性を向上するために、モノクロの画像読取であったり、低解像度の画像読取であったりする場合は、原稿Dを高速で搬送することが考えられる。しかしながら、原稿Dの搬送速度を高速化すると、速度に応じて搬送抵抗が増加するため、各駆動モータの性能が追い付かず、特に厚紙の原稿Dでは、湾曲形状111で搬送速度が落ちて次の原稿Dが追い付くことによるジャム(紙詰まり)が発生する虞もある。
【0029】
そこで本実施の形態においては、ADF20のコンパクト化を図り、かつ読取った画像の品質を確保しつつ、高速化も図って生産性の向上を図ることを可能とするため、以下に説明するモード設定制御を実行するものである。なお、本実施の形態において、原稿Dの設計上の搬送速度は、高速と、それよりも低い低速との2種類であり、また、画像読取装置30,31における読取速度も、搬送速度に対向した高速と、それよりも低い低速との2種類である。また、本実施の形態における読取処理のモードとしては、原稿Dの画像をカラーで読取るカラーモードと、原稿Dの画像を白黒で読取るモノクロモードと、を実行可能である。さらに、本実施の形態における読取処理のモードとしては、例えば600dpi以上等の高解像度モードと、例えば600dpi未満等の低解像度モードと、を実行可能である。
【0030】
制御部80は、モード設定制御を開始すると、まず、プリンタ100の不図示の操作部(操作パネル)又は外部のコンピュータによって指令された画像読取処理の設定がカラーモードであるか否かを判定する(S1)。即ち、指令された画像読取処理の設定が、画像読取装置30,31により原稿Dの画像を白黒で読取るモノクロモードであるか、カラーで読取るカラーモードであるか、を判定する。カラーモードでない場合(S1のno)、つまりモノクロモードである場合は、ステップS4に進む。
【0031】
一方、カラーモードである場合は(S1のyes)、プリンタ100の不図示の操作部(操作パネル)又は外部のコンピュータによって指令された画像読取処理の設定における解像度を判定する(S2)。即ち、指令された解像度が、例えば600dpi未満等の低解像度(第1解像度)である場合は(S2のno)、低解像度モード(第1解像度モード)として、ステップS4に進む。一方、指令された解像度が、例えば600dpi以上等の低解像度よりも高い高解像度(第2解像度)である場合は(S2のyes)、高解像度(第2解像度モード)モードとして、ステップS3に進む。
【0032】
ステップS3に進むと、超音波センサSn10の検知結果に基づき原稿Dが厚紙である(第2の厚みである)か、厚紙以外であるか(第1の厚みであるか)を判定する。即ち、厚紙であれば紙種のモードとして厚紙モードと判定し(S3のyes)、厚紙以外であれば通常モードと判定する(S3のno)。通常モードと判定された場合は、カラーモードでありかつ高解像度モードであるため、原稿Dの搬送速度及び読取速度を低速(第2搬送速度)にする第1の低速モードに設定する(S5)。第1の低速モードに設定されると、制御部80は、各駆動モータ(給送分離モータM1、搬送モータM2、レジモータM3、排出モータM4)に対して、第1の低速モードとしての第1駆動速度を設定する。従って、各ローラ(ピックアップローラ101、分離駆動ローラ102、レジストレーションローラ対104、搬送ローラ対105,106,108、排出ローラ対109)は、低速である第1駆動速度で回転駆動され、原稿Dの搬送速度が低速に設定される。これにより、カラーかつ高解像度の画像読取であって、読取画像の品質を確保することができる。
【0033】
また、ステップS3において、厚紙モードと判定された場合は、カラーモードでありかつ高解像度モードであるため、原稿Dの搬送速度及び読取速度を低速にする第2の低速モードに設定する(S6)。第2の低速モードに設定されると、制御部80は、各駆動モータ(給送分離モータM1、搬送モータM2、レジモータM3、排出モータM4)に対して、第2の低速モードとしての、上記第1駆動速度よりも速い第2駆動速度を設定する。従って、各ローラ(ピックアップローラ101、分離駆動ローラ102、レジストレーションローラ対104、搬送ローラ対105,106,108、排出ローラ対109)は、低速でかつ第1の低速モードよりも速い速度である第2駆動速度で回転駆動される。この第2駆動速度は、各ロータにおける厚紙の滑り量を加味した速度となっており、つまり原稿Dの搬送速度は、例えば普通紙等が搬送される場合の第1の低速モードにおける搬送速度と同じとなるように設定される。これにより、原稿Dが厚紙であっても、読取画像が延びることを防止することができ、読取画像の品質を確保することができる。
【0034】
以上のようにステップS3に進んだ場合は、ステップS1及びステップS2を経てカラーモードでかつ高解像度モードである場合に低速モードが実行されることが決定されている。そして、この低速モードを実行する際に、通常モードとしての第1の低速モードと厚紙モードとしての第2の低速モードとの一方が、原稿Dの厚みに応じて実行されることになる。
【0035】
一方、ステップS4に進むと、ステップS3と同様に、超音波センサSn10の検知結果に基づき原稿Dが厚紙であるか、厚紙以外であるかを判定する。即ち、厚紙であれば厚紙モードと判定し(S4のyes)、厚紙以外であれば通常モードと判定する(S4のno)。通常モードと判定された場合は、原稿Dの搬送速度及び読取速度を高速(第1搬送速度)にする高速モードに設定する(S7)。高速モードに設定されると、制御部80は、各駆動モータに対して、高速モードとしての高速の駆動速度を設定する。従って、各ローラは、高速で回転駆動され、原稿Dの搬送速度が上記低速よりも速い高速に設定される。これにより、普通紙等におけるモノクロかつ低解像度の画像読取にあって、単位時間あたりの処理枚数を増やすことができ、生産性を向上することができる。
【0036】
また、ステップS4において、厚紙モードと判定された場合は、モノクロモード或いは低解像度モードであるが、上述したステップS6に進み、原稿Dの搬送速度及び読取速度を低速にする第2の低速モードに設定する。従って、各ローラは、低速でかつ上記第2駆動速度で回転駆動される。これにより、原稿Dが厚紙である場合でかつ高速で画像読取を行おうとすると、特に湾曲形状111で次の原稿Dが追い付いてジャムを発生させる可能性があるが、低速で画像読取が行われるため、このようなジャムの発生を防止することができる。また、厚紙の滑り量を考慮した第2駆動速度で各駆動モータを駆動することで、読取速度が低速のままであっても、読取画像が延びることを防止することができ、読取画像の品質を確保することができる。
【0037】
なお、説明の便宜上、給送分離モータM1、搬送モータM2、レジモータM3、排出モータM4のそれぞれで第1駆動速度、第2駆動速度、高速の駆動速度、の3種類を設定するものとして説明した。しかし、これら各駆動モータに対して各駆動速度を設定する場合、3種類の駆動速度の中で同じ駆動速度に設定するのでなく、原稿Dが同じ搬送速度となるように、各ローラの摩擦係数や外径に応じて、それぞれ異なる駆動速度を設定することになる。即ち、厚紙モードの場合にあって、複数の駆動モータのそれぞれに第2駆動速度を設定する際、各ローラによる原稿Dの搬送速度が同じとなるように、第2駆動速度としてそれぞれ異なる駆動速度を設定することになる。
【0038】
以上説明したように、第1の実施の形態においては、原稿Dが厚紙である場合でも、搬送速度が厚紙以外の場合と同じになるようにすることができ、各種制御の簡易化を図ることができる。
【0039】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について
図5を用いて説明する。上記第1の実施の形態においては、レジストレーションローラ対104の原稿搬送方向の下流側に超音波センサSn10を配置して原稿Dの厚みを検知するものを説明した。第2の実施の形態では、この超音波センサSn10に代えて、レジストレーションローラ対104に設けた検知手段としての光センサSn11により原稿Dの厚みを検知するものである。即ち、光センサSn11は、レジストレーションローラ対104の一方のローラ軸の移動量が所定量以上となると遮光される構造を有しており、移動量が所定量以上である場合に厚紙として検知することができる。これ以外の構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0040】
<他の実施の形態の可能性>
なお、以上説明した第1及び第2の実施の形態においては、カラーモード又は高解像度モードであるか否かの両方に基づき高速モード又は低速モードを判定するものを説明した。しかながら、カラーモードであるか否かだけに基づき高速モード又は低速モードを判定するもの、或いは高解像度モードであるか否かだけに基づき高速モード又は低速モードを判定するものであってもよい。
【0041】
また、第1及び第2の実施の形態においては、シートの厚みを厚紙と厚紙以外との2種類で判定し、それに応じて低速モードにおける駆動モータの駆動速度を2種類に設定するものを説明した。しかしながら、これに限らず、3種類以上の厚みを判定して、それぞれの駆動モータの駆動速度を対応して設定するものであってもよい。
【0042】
また、第1及び第2の実施の形態においては、画像読取処理でカラーモードとモノクロモードとが設定されるものを説明した。しかし、これに限らず、例えばカラー諧調が低いものやグレースケールなどを、カラーモードとして扱ってもモノクロモードとして扱っても構わない。さらに、例えばカラー諧調が低いものやグレースケールを中間モードとして設定して、低速モードと高速モードとの間である中速モードを設定できるようにしてもよい。
【0043】
また、第1及び第2の実施の形態においては、画像読取処理で600dpi以上の高解像度モードと600dpi未満の低解像度モードとが設定されるものを説明した。しかし、これに限らず、例えば400dpiなどを中解像モードとして設定して、低速モードと高速モードとの間である中速モードを設定できるようにしてもよい。なお、これら600dpi等の解像度の数値は一例であって、どのような値であってもよい。
【0044】
また、第1及び第2の実施の形態においては、ADF20に、給送分離モータM1、搬送モータM2、レジモータM3、排出モータM4の4つのモータを備えたものを説明した。しかしながら、これに限らず、例えばクラッチ等の駆動力伝達の切換え機構を設けて、モータを兼用することでモータの個数を3個以下にしてもよい。また反対に、例えば搬送ローラのそれぞれにモータを設ける等、モータの個数を5個以上にしてもよい。
【0045】
また、第1の実施の形態においては超音波センサSn10で原稿Dの厚みを検知するもの、第2の実施の形態においてはレジストレーションローラ対104に設けた光センサSn11で原稿Dの厚みを検知するものを説明した。しかしながら、これらに限らず、原稿D(シート)の厚みはどのように検知(判定)してもよく、例えばプリンタ本体70の操作パネルや外部のコンピュータによりシートの種別が設定された場合に、その種別情報に基づきシートの厚みを検知してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…原稿読取装置:30,31…画像読取手段(画像読取装置):60…画像形成部(画像形成エンジン):80…制御手段(制御部):100…画像形成装置(プリンタ):101…搬送手段、給送ローラ:102,103…搬送手段、分離ローラ対:104…搬送手段、レジストレーションローラ対:105,106,108…搬送手段、搬送ローラ対:109…搬送手段、排出ローラ対:110…搬送路:111…湾曲形状:121…シート積載手段(原稿トレイ):122…排出積載手段(排出トレイ):D…シート(原稿):M1…駆動手段、駆動モータ(給送分離モータ):M2…駆動手段、駆動モータ(搬送モータ):M3…駆動手段、駆動モータ(レジモータ):M4…駆動手段、駆動モータ(排出モータ):Sn10…検知手段(超音波センサ):Sn11…検知手段(光センサ)
【手続補正書】
【提出日】2024-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載されるシート積載手段と、
前記シート積載手段に積載されたシートを搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラにより搬送されるシートの画像を、透明部材を介して読取る画像読取手段と、
前記透明部材に対向するように配置され、前記複数の搬送ローラにより搬送されるシートを案内する案内部材と、
前記複数の搬送ローラのうち、シートの搬送方向において前記案内部材を挟んで配置された第1ローラ及び第2ローラを駆動するモータと、
前記画像読取手段がシートの画像を読取る解像度として、第1の解像度と、前記第1の解像度よりも高い第2の解像度と、を設定する設定手段と、
通常モードと、前記通常モードで搬送されるシートよりも厚いシートを搬送する厚紙モードと、を実行可能な制御手段と、を備え、
前記画像読取手段がシートの画像を読取る解像度として前記第2の解像度が設定されている場合、前記厚紙モードにおける前記モータの回転速度は、前記通常モードにおける前記モータの回転速度よりも速い、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記画像読取手段により画像を読取ったシートを積載する排出積載手段と、
前記シート積載手段から前記排出積載手段までシートを搬送する搬送路と、を備え、
前記シート積載手段と前記排出積載手段とは上下方向に重なる位置に配置され、
前記搬送路は、シートの表裏を反転させるように、シートの搬送方向に直交する方向から視て湾曲した湾曲形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
シートの厚みを検知する検知手段を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記制御手段が実行するモードとして前記通常モードと前記厚紙モードとを設定することが可能である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記第1ローラは、前記搬送方向において前記案内部材に対して上流側に隣接する位置に配置され、
前記第2ローラは、前記搬送方向において前記案内部材に対して下流側に隣接する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記通常モードにおいて前記第1の解像度で画像を読取るときのシートの搬送速度は、前記通常モードにおいて前記第2の解像度で画像を読取るときのシートの搬送速度、及び、前記厚紙モードにおいて前記第1及び第2の解像度で画像を読取るときのシートの搬送速度よりも速い、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
シートが積載されるシート積載手段と、
前記シート積載手段に積載されたシートを搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラにより搬送されるシートの画像を、透明部材を介して読取る画像読取手段と、
前記透明部材に対向するように配置され、前記複数の搬送ローラにより搬送されるシートを案内する案内部材と、
前記複数の搬送ローラのうち、シートの搬送方向において前記案内部材を挟んで配置された第1ローラ及び第2ローラを駆動するモータと、
前記画像読取手段がシートの画像を読取る解像度として、第1の解像度と、前記第1の解像度よりも高い第2の解像度と、を設定可能であり、且つ、前記画像読取手段がシートの画像をカラーで読取るかモノクロで読取るか、を設定可能な設定手段と、
通常モードと、前記通常モードで搬送されるシートよりも厚いシートを搬送する厚紙モードと、を実行可能な制御手段と、を備え、
前記画像読取手段がシートの画像を読取る解像度として前記第2の解像度が設定され、且つ、前記画像読取手段がシートの画像をカラーで読取る場合、前記厚紙モードにおける前記モータの回転速度は、前記通常モードにおける前記モータの回転速度よりも速い、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取手段により読取った画像を別のシートに画像形成する画像形成部と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
ところで、厚紙が搬送される場合、普通紙等の紙種よりも搬送抵抗が大きくなる。そのため、原稿が厚紙であると、原稿の画像読取時における各ローラ対の滑り量が大きくなってしまうという問題があった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
そこで本発明は、厚紙に対応することが可能な画像読取装置、及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本画像読取装置は、シートが積載されるシート積載手段と、前記シート積載手段に積載されたシートを搬送する複数の搬送ローラと、前記複数の搬送ローラにより搬送されるシートの画像を、透明部材を介して読取る画像読取手段と、前記透明部材に対向するように配置され、前記複数の搬送ローラにより搬送されるシートを案内する案内部材と、前記複数の搬送ローラのうち、シートの搬送方向において前記案内部材を挟んで配置された第1ローラ及び第2ローラを駆動するモータと、前記画像読取手段がシートの画像を読取る解像度として、第1の解像度と、前記第1の解像度よりも高い第2の解像度と、を設定する設定手段と、通常モードと、前記通常モードで搬送されるシートよりも厚いシートを搬送する厚紙モードと、を実行可能な制御手段と、を備え、前記画像読取手段がシートの画像を読取る解像度として前記第2の解像度が設定されている場合、前記厚紙モードにおける前記モータの回転速度は、前記通常モードにおける前記モータの回転速度よりも速い、ことを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明によると、厚紙に対応することができる。