(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169568
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/22 20060101AFI20241128BHJP
F02B 43/10 20060101ALI20241128BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241128BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20241128BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20241128BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F01N3/22 301N
F02B43/10 Z
F02M21/02 301P
F02B43/00 A
F01N3/22 311B
F02M21/02
F02D19/02 B
F02D19/02 Z
F02D23/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161024
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2021051442の分割
【原出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 芳充
(72)【発明者】
【氏名】福井 義典
(72)【発明者】
【氏名】小田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕樹
(57)【要約】
【課題】エンジンから排気管に流入した未燃気体燃料が排気管内で燃焼することを抑制できるエンジンシステムを提供する。
【解決手段】エンジンシステム100は、エンジン1と、排気管19と、気体導入部21と、過給機11と、を備える。エンジン1は、気体燃料を燃焼させて動力を発生する。排気管19は、エンジン1から排出される排気ガスが流れる。気体導入部21は、空気又は不活性気体を排気管19に導入する。気体導入部21は、排気管19において過給機11の上流に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料を燃焼させて動力を発生するエンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスが流れる排気管と、
空気又は不活性気体を前記排気管に導入する気体導入部と、
過給機と、を備え、
前記気体導入部は、前記排気管において前記過給機の上流に接続される、エンジンシステム。
【請求項2】
前記過給機は、前記エンジンに空気を供給する給気管を流れる前記空気を圧縮して、大気圧よりも大きい圧力の前記空気を前記給気管に流す、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記気体導入部は、
前記給気管と前記排気管とを連通する連通管と、
前記連通管に配置され、前記連通管を流れる前記空気の流量を調整する流量調整部とを含み、
前記連通管の一端は、前記給気管において前記過給機の下流に接続される、請求項2に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記気体導入部は、前記過給機によって圧縮された前記空気を前記排気管に導入する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項5】
燃焼されなかった前記気体燃料が前記エンジンから前記排気管に流入したか否かを示す指標となる指標情報に基づいて、前記空気又は前記不活性気体を前記排気管に導入するか否かを決定する導入決定部と、
前記導入決定部の決定結果に基づいて、前記空気又は前記不活性気体を前記排気管に導入するように前記気体導入部を制御する導入制御部と
を更に備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている内燃機関の制御装置では、触媒暖機時には、排気管内の排ガス温度を、排ガス中のHC,CO等のリッチ成分が後燃え可能な温度に昇温させる。そして、二次空気導入装置によって排気管内に後燃えを発生させるための二次空気(外気)を導入する。その結果、エンジンから排出される高温の排ガス中のリッチ成分を二次空気導入装置によって導入される二次空気の酸素と混合させて、触媒上流側の排気管内で後燃えを自然に発生させ、燃焼熱で触媒を早期に暖機する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている内燃機関の制御装置では、排ガス中のリッチ成分を二次空気の酸素と混合させて、後燃えさせている。従って、未燃気体燃料がエンジンから排気管に流入した場合もまた、未燃気体燃料が排気管内で燃焼する。その結果、未燃気体燃料の燃焼によって、過給機及び触媒が損傷する可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンから排気管に流入した未燃気体燃料が排気管内で燃焼することを抑制できるエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、エンジンシステムは、エンジンと、排気管と、気体導入部と、過給機と、を備える。前記エンジンは、気体燃料を燃焼させて動力を発生する。前記排気管は、前記エンジンから排出される排気ガスが流れる。前記気体導入部は、空気又は不活性気体を前記排気管に導入する。前記気体導入部は、前記排気管において前記過給機の上流に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンから排気管に流入した未燃気体燃料が排気管内で燃焼することを抑制できるエンジンシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係るエンジンシステムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態1に係るエンジンシステムを示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係るエンジンシステムの各種状態の変化を示すタイムチャートである。
【
図4】実施形態1に係る気体導入部の制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1の第1変形例に係る気体導入部の制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態1の第2変形例に係る気体導入部の制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態1の第3変形例に係る気体導入部の制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態2に係るエンジンシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
(実施形態1)
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態1に係るエンジンシステム100を説明する。
図1に示すエンジンシステム100は、気体燃料を燃焼させて動力を発生する。気体燃料は、特に限定されないが、例えば、水素、アンモニア、又は、天然ガスである。天然ガスは、例えば、気化された液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)である。エンジンシステム100は、例えば、乗り物に搭載されるか、建造物内に設置されるか、又は、屋外に設置される。乗り物は、例えば、船舶、自動車、鉄道車両、又は、飛行機である。
【0011】
以下、気体燃料として、水素燃料を例に挙げて説明する。また、エンジンシステム100が搭載される乗り物として、船舶200を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、船舶200を「乗り物」と読み替え、水素燃料を「気体燃料」と読み替え、水素を「燃料気体」又は「燃料」と読み替えることができる。
【0012】
図1に示すように、船舶200は、エンジンシステム100を備える。エンジンシステム100は、水素燃料を燃焼させて動力を発生する。
【0013】
エンジンシステム100は、エンジン1と、液化水素タンク3と、気化器5と、水素流量調整部7と、水素燃料供給配管9と、過給機11と、インタークーラー13と、給気管15と、吸気マニホールド17と、排気管19と、気体導入部21と、発電機27とを備える。エンジンシステム100は、温度検知部23と、圧力検知部25とを更に備えることが好ましい。
【0014】
エンジン1は、水素燃料を燃焼させて動力を発生する。そして、エンジン1は、発電機27を駆動する。その結果、発電機27は電力を発生する。つまり、発電機27はエンジン1によって発電する。そして、発電機27は、例えば、補機に電力を供給する。補機は、発電機27に対する負荷装置の一例である。補機は、特に限定されないが、例えば、電磁弁、電動機、照明機器、又は、空調機器である。また、例えば、船舶200が電力によって推進力を発生する場合、発電機27は、プロペラを駆動する推進モーターに電力を供給する。推進モーターは、発電機27に対する負荷装置の一例である。
【0015】
水素燃料供給配管9は、気体状態の水素燃料をエンジン1に供給する。具体的には、液化水素タンク3、気化器5、及び、水素流量調整部7が、この順番で、上流から下流に向かって配置される。液化水素タンク3は、液体状態の水素燃料である液体水素燃料を貯留する。気化器5は、液化水素タンク3から供給される液体水素燃料を気化して、気体状態の水素燃料を水素燃料供給配管9に供給する。なお、水素燃料は、圧縮された高圧ガスとして保管及び貯留されてもよい。この場合、例えば、エンジンシステム100は、液化水素タンク3に代えて、圧縮された高圧ガスとしての水素燃料を貯留する圧縮水素タンクを備え、気化器5を備えない。
【0016】
水素流量調整部7は、水素燃料供給配管9を流れる水素燃料の供給量を調整する。水素流量調整部7は、例えば、ガスバルブユニット(GVU:Gas Valve Unit)である。ガスバルブユニットは、例えば、複数のバルブ、ガスフィルター、ガスレギュレーター、及び、配管を含む。ガスバルブユニットにおいて、例えば、単数又は複数のバルブは、調圧バルブを構成する。
【0017】
給気管15は、過給機11、インタークーラー13、及び、吸気マニホールド17を介して、エンジン1の外部の空気をエンジン1に供給する。具体的には、過給機11及びインタークーラー13が、この順番で、給気の上流から下流に向かって配置される。過給機11は、エンジン1外部の空気を圧縮して、大気圧よりも大きい圧力の空気を給気管15に流す。インタークーラー13は、過給機11によって圧縮された空気を冷却して、吸気マニホールド17に供給する。吸気マニホールド17は、エンジン1に対して、圧縮及び冷却された空気を供給する。具体的には、エンジン1は、複数の気筒1aを有する。
図1には、図面の簡略化のために、1つの気筒1aが図示されている。そして、吸気マニホールド17は、圧縮及び冷却された空気を各気筒1aに供給する。なお、エンジン1は、1つの気筒1aを有していてもよい。この場合、吸気マニホールド17は省略可能である。
【0018】
排気管19には、エンジン1から排出される排気ガスが流れる。つまり、排気管19は、排気ガスをエンジン1の外部に排出する。排気ガスは過給機11によって利用される。具体的には、過給機11は、タービン111と、コンプレッサー112とを含む。タービン111は排気管19に配置され、コンプレッサー112は給気管15に配置される。タービン111は、排気管19を流れる排気ガスによって回転し、回転力をコンプレッサー112に伝達する。そして、コンプレッサー112は、タービン111の回転力によって駆動して、給気管15を流れる空気を圧縮する。
【0019】
温度検知部23は、排気管19を流れる排気ガスの温度を検知する。具体的には、温度検知部23は、排気管19の内部において過給機11(具体的にはタービン111)の上流における排気ガスの温度を検知する。
図1の例では、温度検知部23は、排気管19において、タービン111の上流であって、連通管211(後述)と排気管19との接続箇所の下流で、排気ガスの温度を検知する。温度検知部23は、例えば、温度センサーである。
【0020】
圧力検知部25は、排気管19を流れる排気ガスの圧力を検知する。具体的には、圧力検知部25は、排気管19の内部において過給機11(具体的にはタービン111)の上流における排気ガスの圧力を検知する。
図1の例では、圧力検知部25は、排気管19において、タービン111の上流であって、連通管211(後述)と排気管19との接続箇所の下流で、排気ガスの圧力を検知する。圧力検知部25は、例えば、圧力センサーである。
【0021】
気体導入部21は、空気を排気管19に導入する。従って、エンジン1で燃焼されなかった水素燃料(未燃水素燃料)が排気管19に流入した場合であっても、吸気通路63から排気管19に流入した未燃水素燃料を空気によって希釈できる。よって、排気管19に流入した未燃水素燃料の濃度を低下させることができる。その結果、実施形態1によれば、エンジン1から排気管19に流入した未燃水素燃料が燃焼することを抑制できる。また、排気管19に流入した未燃水素燃料の温度が、排気管19に導入する空気によって低下する。その結果、未燃水素燃料が着火し難くなって、排気管19に流入した未燃水素燃料が燃焼することを更に抑制できる。
【0022】
本明細書において、エンジン1(具体的には燃焼室61)で燃焼されなかった水素燃料を「未燃水素」又は「未燃水素燃料」と定義する。また、気体導入部21が排気管19に導入する空気は、排気管19内で未燃水素を希釈するための空気である。
【0023】
特に、空気によって排気管19内の未燃水素を希釈して、排気管19内の未燃水素の濃度が4%未満になると、排気管19内の未燃水素の燃焼を確実に防止できる。なぜなら、水素濃度が4%未満であれば、水素は着火しないからである。従って、気体導入部21は、排気管19内の未燃水素の濃度が4%未満になるように排気管19に空気を導入することが好ましい。つまり、気体導入部21は、排気管19内の未燃水素の濃度が可燃範囲外になるように排気管19に空気を導入することが好ましい。
【0024】
ただし、排気管19への空気の導入後に排気管19内の未燃水素の濃度が4%未満にならない場合でも、排気管19への空気の導入前と比較すると、排気管19内での未燃水素の濃度は低下する。従って、未燃水素の自着火温度は、排気管19への空気の導入後では、排気管19への空気の導入前と比較すると、上昇する。その結果、排気管19内において未燃水素が燃焼することを抑制できる。
【0025】
具体的には、気体導入部21は、過給機11によって圧縮された空気を給気管15から排気管19に導入する。つまり、実施形態1では、大気圧よりも大きい圧力の空気を給気管15から排気管19に送り出すことで、排気ガスの圧力に抗して排気管19に対してより確実に空気を導入できる。従って、排気管19に流入した未燃水素の濃度をより確実に低下させることができる。その結果、排気管19内で未燃水素が燃焼することをより効果的に抑制できる。
【0026】
更に具体的には、気体導入部21は、連通管211と、流量調整部212とを含む。
【0027】
連通管211は、給気管15と排気管19とを連通する。流量調整部212は、連通管211に配置される。連通管211の一端は、給気管15において過給機11の下流に接続される。具体的には、連通管211の一端は、給気管15においてコンプレッサー112の下流に接続される。従って、排気管19に対して、圧縮された空気を、連通管211を通して効果的に供給できる。また、流量調整部212は、連通管211を流れる空気の流量を調整する。従って、流量調整部212は、未燃水素が排気管19に流入しない状況下では、連通管211の流路を遮断して、空気が排気管19に流入することを禁止できる。その結果、実施形態1によれば、排気管19において排気ガスがより円滑に排出される。
【0028】
また、連通管211の他端は、排気管19において過給機11の上流に接続される。具体的には、連通管211の他端は、排気管19においてタービン111の上流に接続される。
【0029】
ここで、流量調整部212による空気の流量の調整は、流量を連続的又は段階的に増減させることだけでなく、流量をゼロにすることを含む。流量調整部212は、少なくとも、連通管211の流路を開いた状態と閉じた状態とを切り替えることができればよい。流量調整部212は、例えば、流量調整弁又は開閉弁である。
【0030】
また、流量調整部212は、連通管211において、給気管15よりも排気管19の近くに配置されることが好ましい。なぜなら、流量調整部212を閉じている状態において、給気管15からの空気が連通管211において排気管19の近くまで存在していると、空気が流量調整部212を開いてから排気管19に導入されるまでの時間が短くなるからである。つまり、流量調整部212によって排気管19に空気を導入する際の応答性が向上する。例えば、流量調整部212は、連通管211において、排気管19の近傍に配置される。
【0031】
引き続き、
図1を参照してエンジン1を説明する。エンジン1は、シリンダーヘッド51、シリンダーブロック52、吸気バルブ53、排気バルブ54、水素燃料供給部55、着火誘引部56、ピストン58、コネクティングロッド59、クランクシャフト60、及び、エンジン回転数検知部62を含む。エンジン1は気筒圧力検知部57を更に含むことが好ましい。また、エンジン1は燃焼室61を有する。燃焼室61は、シリンダーブロック52に形成される。燃焼室61は、シリンダーヘッド51とピストン58との間の空間である。
【0032】
シリンダーヘッド51は、シリンダーブロック52の上部に固定される。シリンダーヘッド51は、吸気通路63及び排気通路64を有する。
【0033】
吸気通路63の入口には、吸気マニホールド17が接続される。従って、吸気通路63には、吸気マニホールド17から、圧縮及び冷却された空気が供給される。吸気通路63の出口は、燃焼室61に接続される。
【0034】
水素燃料供給部55は、シリンダーヘッド51に配置される。そして、水素燃料供給部55は、エンジン1の内部に水素燃料を供給する。
図1の例では、水素燃料供給部55は、吸気通路63に水素燃料を供給する。この場合、例えば、水素燃料供給部55は水素燃料を噴射する。従って、水素燃料は、吸気マニホールド17から供給される空気と混合されて、燃焼室61に供給される。具体的には、吸気通路63の出口には、吸気バルブ53が配置される。吸気バルブ53は、吸気通路63の出口を、開いたり、閉じたりする。吸気バルブ53が吸気通路63の出口を開くと、空気と混合された水素燃料が燃焼室61に供給される。具体的には、一例として、水素燃料供給部55は、エンジン1の動作中において、水素燃料の噴射を一定周期で繰り返す。水素燃料供給部55は、例えば、ガスアドミッションバルブ(GAV:Gas Admission Valve)又は、ガスインジェクター(Gas Injector)である。
【0035】
水素燃料供給部55は、本発明の「気体燃料供給部」の一例に相当する。なお、例えば、水素燃料供給部55は、吸気マニホールド17に配置されてもよいし、インタークーラー13よりも下流において給気管15に配置されてもよい。
【0036】
一方、排気通路64の入口は燃焼室61に接続される。排気通路64の出口は排気管19に接続される。従って、燃焼室61からの排気ガスは、排気通路64を通って排気管19に排出される。具体的には、排気通路64の入口には、排気バルブ54が配置される。排気バルブ54は、排気通路64の入口を、開いたり、閉じたりする。排気バルブ54が排気通路64の入口を開くと、排気ガスが排気通路64を通って排気管19に排出される。
【0037】
着火誘引部56は、燃焼室61において水素燃料の着火を誘引する。具体的には、着火誘引部56は、燃焼室61において水素燃料の着火を誘引する液体燃料を燃焼室61に噴射する。液体燃料は、例えば、軽油又は重油である。着火誘引部56は、例えば、液体燃料インジェクターである。液体燃料インジェクターは、例えば、パイロット燃料噴射弁である。なお、着火誘引部56は、例えば、火花又はレーザーで点火を行う「点火プラグ」であってもよい。
【0038】
シリンダーブロック52は、気筒1aを構成する。シリンダーブロック52は、ピストン58、コネクティングロッド59、及び、クランクシャフト60を収容する。ピストン58は、シリンダーブロック52の内部を上下に往復運動する。コネクティングロッド59は、ピストン58とクランクシャフト60とを連結する。そして、コネクティングロッド59は、ピストン58の往復運動をクランクシャフト60に伝達する。クランクシャフト60は、ピストン58の往復運動を回転運動に変換する。そして、クランクシャフト60は、伝達機構(不図示)によって回転運動を発電機27に伝達する。その結果、発電機27の発電体(例えば、磁石)が回転することで、発電機27は発電する。
【0039】
例えば、ピストン58が下降し、排気バルブ54が閉じた状態で吸気バルブ53が開くと、空気と混合された水素燃料が吸気通路63から燃焼室61に供給される。次に、排気バルブ54及び吸気バルブ53が閉じた状態で、ピストン58が上昇する。次に、ピストン58の上死点において、着火誘引部56が液体燃料を噴射し、水素燃料が着火して燃焼する。その結果、燃焼によってピストン58は下降する。次に、ピストン58が上昇し、吸気バルブ53が閉じた状態で排気バルブ54が開く。その結果、排気ガスが燃焼室61から排気通路64に排出される。
【0040】
エンジン回転数検知部62は、エンジン1の単位時間当たりの回転数を検知する。エンジン回転数検知部62は、例えば、エンジン回転数センサーである。エンジン回転数センサーは、例えば、センサーとパルス発生器とにより構成され、クランクシャフト60の回転に応じてパルス信号を発生するように構成することができる。以下、エンジン1の単位時間当たりの回転数を「エンジン1の回転数」と記載する場合がある。気筒圧力検知部57は、燃焼室61の気体の圧力を検知する。気筒圧力検知部57は、例えば、圧力センサーである。
【0041】
ここで、未燃水素が排気管19に流入する要因を例示する。
【0042】
例えば、発電機27に対する負荷である発電機負荷が瞬時に低下した場合、燃焼室61で未燃水素が発生して、未燃水素が排気管19に流入すると予測できる。理由は、次の通りである。すなわち、発電機負荷が低下した場合、エンジン1は、発電機負荷が低下する前の出力を維持することが要求されない。従って、エンジン1に対して、出力を低下する制御が実行される。具体的には、水素流量調整部7及び/又は水素燃料供給部55を制御することで、水素燃料供給部55による水素燃料の供給量が低下される。しかしながら、水素燃料の供給量は、低下後の発電機負荷に応じた量に瞬間的に遷移するのではなく、極めて短時間ではあるが、余剰の水素燃料が供給される時間が発生する。その結果、発電機負荷が瞬時に低下すると、燃焼室61において未燃水素が発生し、排気管19に流入する可能性がある。なお、発電機負荷は、発電機27によって駆動される負荷装置によって発生する。
【0043】
例えば、水素燃料供給部55が故障した場合に、水素燃料の供給量が過多になって、燃焼室61で未燃水素が発生する可能性がある。その結果、未燃水素が排気管19に流入すると予測できる。この場合、水素燃料供給部55の故障は、例えば、水素燃料供給部55が、開いたまま、閉じることができない状態を示す。
【0044】
例えば、着火誘引部56が故障した場合、着火用の液体燃料が噴射されない。従って、水素燃料の着火不良が発生して、燃焼室61で未燃水素が発生する可能性がある。その結果、未燃水素が排気管19に流入すると予測できる。この場合、着火誘引部56の故障は、例えば、着火誘引部56が、液体燃料を噴射できない状態を示す。
【0045】
特に、実施形態1では、エンジンシステム100において、未燃水素が排気管19に流入すると予測される場合に、空気を排気管19に導入するように気体導入部21が制御される。
【0046】
次に、
図2を参照して、エンジンシステム100の制御を説明する。
図2は、エンジンシステム100を示すブロック図である。
図2に示すように、エンジンシステム100は、発電機制御装置29と、操作制御装置31と、エンジン制御装置33とを備える。
【0047】
発電機制御装置29は発電機27を制御する。発電機制御装置29は電力計291を含む。電力計291は、発電機27が出力する電力を計測する。発電機27が出力する電力は負荷装置に供給される。従って、発電機27が出力する電力は、発電機負荷を示す情報の一例である。発電機制御装置29は、電力計291によって計測された発電機27の電力を示す情報をエンジン制御装置33に出力する。
【0048】
発電機制御装置29は、例えば、コンピューターである。コンピューターは、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。具体的には、発電機制御装置29は、プロセッサーと、記憶装置とを含む。プロセッサーは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。記憶装置は、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶装置は、例えば、半導体メモリー等の主記憶装置及び補助記憶装置を含む。記憶装置は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。発電機制御装置29は、例えば、発電機制御盤である。
【0049】
操作制御装置31は、操作者からの操作を受け付け、操作者からの操作に応じた操作信号(以下、「操作信号SG」と記載する。)を発電機制御装置29に出力する。この場合、発電機制御装置29は、操作信号SGに基づいて発電機27を制御する。具体的には、操作信号SGは、発電機27から電力の供給を受けている負荷装置の動作状態を設定するための信号である。従って、操作信号SGは、発電機負荷を示す情報の一例である。
【0050】
操作制御装置31は、例えば、コンピューターである。具体的には、操作制御装置31は、入力装置と、表示装置と、プロセッサーと、記憶装置とを含む。入力装置は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、ダイヤル、及び、プッシュボタンを含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイである。表示装置は、例えば、タッチパネルを含んでいてもよい。プロセッサーは、例えば、CPUを含む。記憶装置は、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶装置は、例えば、半導体メモリー等の主記憶装置と、半導体メモリー及びハードディスクドライブ等の補助記憶装置とを含む。記憶装置は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。操作制御装置31は、例えば、操作制御盤である。
【0051】
エンジン制御装置33は、エンジン1を制御する。エンジン制御装置33は、例えば、水素燃料供給部55及び着火誘引部56を制御する。エンジン制御装置33は、エンジン回転数検知部62から、エンジン1の回転数を示す情報を受信する。また、エンジン制御装置33は、気筒圧力検知部57から、燃焼室61内の気体の圧力を示す情報を受信する。また、エンジン制御装置33は、水素流量調整部7を制御する。さらに、エンジン制御装置33は、気体導入部21を制御する。具体的には、エンジン制御装置33は流量調整部212を制御する。また、エンジン制御装置33は、温度検知部23から、排気ガスの温度を示す情報を受信する。さらに、エンジン制御装置33は、圧力検知部25から、排気ガスの圧力を示す情報を受信する。
【0052】
エンジン制御装置33は、例えば、コンピューターである。コンピューターは、例えば、ECUである。具体的には、エンジン制御装置33は、制御部331と、記憶部332とを含む。制御部331は、CPU等のプロセッサーを含む。記憶部332は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶装置は、例えば、半導体メモリー等の主記憶装置及び補助記憶装置を含む。記憶装置は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。
【0053】
エンジン制御装置33は、導入決定部A1と、導入制御部A2とを含む。具体的には、エンジン制御装置33のプロセッサーが、記憶部332の記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを実行することで、導入決定部A1及び導入制御部A2として機能する。
【0054】
導入決定部A1は、指標情報(以下、「指標情報IF」と記載する。)に基づいて、気体導入部21によって空気を排気管19に導入するか否かを決定する。指標情報IFは、燃焼室61で燃焼されなかった水素燃料(未燃水素)がエンジン1から排気管19に流入したか否かを示す指標となる情報である。
【0055】
そして、導入制御部A2は、導入決定部A1の決定結果に基づいて、空気を排気管19に導入するように気体導入部21(具体的には流量調整部212)を制御する。従って、気体導入部21は、指標情報IFによって未燃水素が排気管19に流入したと予測される場合にのみ、排気管19に空気を導入できる。その結果、未燃水素が排気管19に流入していない場合には、排気管19に空気が導入されず、より円滑に排気ガスを排気できる。
【0056】
例えば、指標情報IFが、未燃水素が排気管19に流入したことを示している場合、導入決定部A1は排気管19に空気を導入することを決定する。この場合、導入制御部A2は、排気管19に空気を導入するように気体導入部21を制御する。その結果、気体導入部21は、空気を排気管19に導入する。一方、例えば、指標情報IFが、未燃水素が排気管19に流入していないことを示している場合、導入決定部A1は排気管19に空気を導入しないことを決定する。この場合、導入制御部A2は、排気管19に空気を導入しないように気体導入部21を制御する。その結果、気体導入部21は、空気を排気管19に導入しない。
【0057】
具体的には、指標情報IFは、エンジン1の出力を直接的又は間接的に示すエンジン出力情報を含む。従って、導入決定部A1は、エンジン出力情報に基づいて、気体導入部21によって空気を排気管19に導入するか否かを決定する。その結果、空気を排気管19に導入するか否かを、より適切に決定できる。
【0058】
例えば、エンジン出力情報がエンジン1の出力を直接的に示している場合において、エンジン出力情報によって示されるエンジン1の出力が閾値THA以下になったとき、又は、エンジン1の出力の低下率が閾値THB以上になったとき、導入決定部A1は、気体導入部21によって空気を排気管19に導入することを決定する。エンジン1の出力の低下率は、例えば、導入決定部A1が、エンジン1の出力を直接的に示す情報を所定周期で取得する場合に、最新のエンジン1の出力E0に対するQ回前に取得したエンジン1の出力EQの比率(=EQ/E0)を示す。「Q」は1以上の整数のうちのいずれかの整数である。「Q回前」は「最新に対するQ回前」を示す。
【0059】
一方、エンジン1の出力を間接的に示すエンジン出力情報(以下、「エンジン出力情報ID」と記載する。)は、例えば、エンジン1の回転数を示す情報と、発電機27に対する負荷である発電機負荷を示す情報とのうちの少なくとも1つの情報を含む。
【0060】
エンジン1の回転数は、発電機負荷に連動して変化する。例えば、発電機負荷が瞬時に低下すると、極めて短時間ではあるが、エンジン1の回転数が瞬時に上昇する。従って、エンジン1の回転数が瞬時に上昇したことは、発電機負荷が瞬時に低下したことを示す。よって、エンジン1の回転数が瞬時に上昇した場合、未燃水素が排気管19に流入すると予測できる。そこで、導入決定部A1は、エンジン回転数検知部62からエンジン1の回転数を示す情報を取得して、エンジン1の回転数に基づいて、気体導入部21によって空気を排気管19に導入するか否かを決定する。つまり、実施形態1によれば、導入決定部A1は、エンジン1の回転数に基づいて、空気を排気管19に導入するか否かを容易に決定できる。
【0061】
具体的には、導入決定部A1は、エンジン1の回転数の上昇の程度に基づいて、空気を排気管19に導入するか否かを決定する。従って、実施形態1によれば、発電機負荷の低下に起因して未燃水素が排気管19に流入した場合に、空気を排気管19に導入することを決定できる。
【0062】
例えば、導入決定部A1は、エンジン1の回転数が閾値TH1以上になった場合に、空気を排気管19に導入することを決定する。又は、例えば、導入決定部A1は、エンジン1の回転数の上昇率が閾値TH2以上になった場合に、空気を排気管19に導入することを決定する。エンジン1の回転数の上昇率は、例えば、導入決定部A1がエンジン回転数検知部62から所定周期でエンジン1の回転数の情報を取得する場合に、M回前に取得した回転数NMに対する最新の回転数N0の比率(=N0/NM)を示す。「M」は1以上の整数のうちのいずれかの整数である。「M回前」は「最新に対するM回前」を示す。
【0063】
また、導入決定部A1は、発電機負荷を示す情報を直接的に取得して、発電機負荷に基づいて、気体導入部21によって空気を排気管19に導入するか否かを決定してもよい。この場合、導入決定部A1は、発電機負荷を示す情報を直接的に取得することで、より正確に、空気を排気管19に導入するか否かを決定できる。
【0064】
具体的には、導入決定部A1は、発電機負荷の低下の程度に基づいて、空気を排気管19に導入するか否かを決定する。従って、実施形態1によれば、発電機負荷の低下に起因して未燃水素が排気管19に流入した場合に、空気を排気管19に導入することを決定できる。
【0065】
例えば、導入決定部A1は、発電機制御装置29の電力計291から、発電機負荷を示す情報として、発電機27の電力を示す情報を取得する。そして、導入決定部A1は、発電機27の電力の値に基づいて、空気を排気管19に導入するか否かを決定する。
【0066】
この場合、例えば、導入決定部A1は、発電機27の電力が閾値TH3以下になった場合に、空気を排気管19に導入することを決定する。又は、例えば、導入決定部A1は、発電機27の電力の低下率が閾値TH4以上になった場合に、空気を排気管19に導入することを決定する。発電機負荷の低下率は、例えば、導入決定部A1が電力計291から所定周期で電力の情報を取得する場合に、最新の電力の値P0に対するK回前に取得した電力の値PKの比率(=PK/P0)を示す。「K」は1以上の整数のうちのいずれかの整数である。「K回前」は「最新に対するK回前」を示す。
【0067】
又は、例えば、導入決定部A1は、発電機負荷を示す情報として、操作制御装置31から直接的に操作信号SGを取得するか、又は、発電機制御装置29を介して間接的に操作信号SGを取得する。操作信号SGは、発電機27から電力の供給を受けている負荷装置の動作状態を設定するための信号である。この場合、「動作状態」は、発電機負荷のレベルによって示される。従って、操作信号SGは、発電機負荷のレベルを示す。そこで、導入決定部A1は、操作信号SGによって示される発電機負荷のレベルに基づいて、空気を排気管19に導入するか否かを決定する。
【0068】
この場合、例えば、導入決定部A1は、操作信号SGによって示される発電機負荷のレベルが閾値TH5以下になった場合に、空気を排気管19に導入することを決定する。又は、例えば、導入決定部A1は、操作信号SGによって示される発電機負荷の低下率が閾値TH6以上になった場合に、空気を排気管19に導入することを決定する。発電機負荷の低下率は、例えば、最新の操作信号SGによって設定される発電機負荷のレベルL0に対する前回の操作信号SGによって設定されていた発電機負荷のレベルL1の比率(=L1/L0)を示す。
【0069】
また、指標情報IFは、水素燃料供給部55の状態を示す情報を含んでいてもよい。従って、導入決定部A1は、水素燃料供給部55の状態に基づいて、気体導入部21によって空気を排気管19に導入するか否かを決定する。その結果、空気を排気管19に導入するか否かを、水素燃料供給部55の状態の観点から決定できる。
【0070】
例えば、導入決定部A1は、水素燃料供給部55が故障したか否かを判定する。そして、水素燃料供給部55が故障したと判定した場合、導入決定部A1は、空気を排気管19に導入することを決定する。なぜならば、上述のように、水素燃料供給部55が故障した場合、水素燃料の供給量が過多になって、燃焼室61で未燃水素が発生する可能性があるためである。この場合、具体的には、水素燃料供給部55の状態は、エンジン1の燃焼室61内の気体の圧力によって示される。そこで、導入決定部A1は、気筒圧力検知部57から、燃焼室61内の気体の圧力を示す情報を取得する。そして、導入決定部A1は、燃焼室61内の気体の圧力に基づいて、空気を排気管19に導入するか否かを決定する。
【0071】
燃焼室61内の気体の圧力が、水素燃料供給部55の状態を示す理由は次の通りである。すなわち、水素燃料供給部55が故障して、水素燃料の供給量が過多になると、燃焼室61内の気体の圧力が上昇する。従って、燃焼室61内の気体の圧力を監視することで、水素燃料供給部55が故障したか否かを判定できる。そこで、導入決定部A1は、燃焼室61内の気体の圧力が閾値TH7以上であるか否かを判定する。そして、燃焼室61内の気体の圧力が閾値TH7以上であると判定した場合、導入決定部A1は、空気を排気管19に導入することを決定する。
【0072】
更に、指標情報IFは、着火誘引部56の状態を示す情報を含んでいてもよい。従って、導入決定部A1は、着火誘引部56の状態に基づいて、気体導入部21によって空気を排気管19に導入するか否かを決定する。その結果、空気を排気管19に導入するか否かを、着火誘引部56の状態の観点から決定できる。
【0073】
例えば、導入決定部A1は、着火誘引部56が故障したか否かを判定する。そして、着火誘引部56が故障したと判定した場合、導入決定部A1は、空気を排気管19に導入することを決定する。なぜならば、上述のように、着火誘引部56が故障した場合、水素燃料の着火不良が発生して、燃焼室61で未燃水素が発生する可能性があるためである。この場合、具体的には、着火誘引部56の状態は、エンジン1の燃焼室61内の気体の圧力によって示される。そこで、導入決定部A1は、気筒圧力検知部57から、燃焼室61内の気体の圧力を示す情報を取得する。そして、導入決定部A1は、燃焼室61内の気体の圧力に基づいて、空気を排気管19に導入するか否かを決定する。
【0074】
燃焼室61内の気体の圧力が、着火誘引部56の状態を示す理由は次の通りである。すなわち、着火誘引部56が故障して、水素燃料の着火不良が発生すると、燃焼室61内の気体の圧力が異常に低い値を示す。従って、燃焼室61内の気体の圧力を監視することで、着火誘引部56が故障したか否かを判定できる。そこで、導入決定部A1は、燃焼室61内の気体の圧力が閾値TH8以下であるか否かを判定する。そして、燃焼室61内の気体の圧力が閾値TH8以下であると判定した場合、導入決定部A1は、空気を排気管19に導入することを決定する。なお、着火誘引部56の故障を判定するための閾値TH8は、水素燃料供給部55の故障を判定するための閾値TH7よりも小さい。
【0075】
次に、
図3を参照して、エンジンシステム100の状態の変化を説明する。
図3は、エンジンシステム100の各種状態の変化を示すタイムチャートである。
図3において、チャートCT1~CT6の横軸は時間を示す。チャートCT1の縦軸は発電機負荷を示し、チャートCT2の縦軸はエンジン1の回転数を示し、チャートCT3の縦軸は、水素燃料供給部55による水素燃料の噴射量(供給量)を示す。チャートCT4の縦軸は流量調整部212の開度を示し、チャートCT5の縦軸は排気管19内の未燃水素の濃度を示し、チャートCT6の縦軸は排気管19内の排気ガスの温度を示す。流量調整部212の開度は、流量調整部212が開いている程度を示す。
【0076】
チャートCT1に示すように、時刻t1において、発電機負荷が瞬時に低下している。そして、チャートCT2に示すように、発電機負荷の瞬時の低下に応じて、エンジン1の回転数が急峻に上昇している。その後、エンジン1の回転数は低下し、概ね時刻t2において、エンジン1の回転数は一定になる。
【0077】
また、チャートCT3に示すように、時刻t1において、発電機負荷の低下に応じて、水素燃料供給部55からの水素燃料の噴射量(供給量)を低下させる制御が実行される。その結果、水素燃料の噴射量は低下する。その後、水素燃料の噴射量は、一旦上昇した後に、時刻t2で一定になる。チャートCT3から理解できるように、水素燃料の噴射量は、水素燃料供給部55の応答性の限界から、噴射量を低下させる制御の開始時t1に直ちに一定になるのではなく、時刻t1~時刻t2の期間で一定になる。その結果、未燃水素が発生して、燃焼室61から排気管19に未燃水素が流入する。
【0078】
そこで、チャートCT4に示すように、時刻t1において、導入制御部A2は流量調整部212を開いて連通管211の流路を開放する。従って、給気管15の空気が連通管211を通って排気管19に導入される。その結果、チャートCT5の実線C1で示すように、排気管19内の未燃水素が空気によって希釈され、未燃水素の濃度が低下する。その結果、未燃水素が排気管19内で燃焼することが抑制される。
図3の例では、時刻t1から時刻t12までの期間TMだけ、流量調整部212を開いて空気が排気管19に導入される。そして、時刻t2より前の時刻t12において、導入制御部A2は流量調整部212を閉じて連通管211の流路を閉塞する。従って、給気管15からの空気は排気管19に導入されない。
【0079】
なお、参考例として、チャートCT5の破線C2で示すように、時刻t1において排気管19に空気を導入しない場合には、排気管19内の未燃水素は希釈されないため、未燃水素の濃度は、比較的高い。
【0080】
また、チャートCT6の実線T1で示すように、時刻t1において、連通管211から排気管19に空気が導入されるため、排気管19内の排気ガスの温度は急峻に低下し、その後、徐々に低下する。その結果、未燃水素が排気管19内で燃焼することが更に抑制される。特に、排気ガスの温度が低下を開始してから一定になるまでの時間は、排気管19に空気を導入する場合(実線T1)は、排気管19に空気を導入しない場合(破線T2)よりも短くなる。
【0081】
なお、参考例として、チャートCT6の破線T2で示すように、時刻t1において排気管19に空気を導入しない場合には、排気管19内の排気ガスの温度は急峻に低下することなく、徐々に低下する。
【0082】
次に、
図2及び
図4を参照して、気体導入部21の制御方法を説明する。
図4は、気体導入部21の制御方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、制御方法は、ステップS1~ステップS6を含む。制御方法は、エンジン制御装置33によって実行される。
【0083】
図2及び
図4に示すように、まず、ステップS1において、導入決定部A1は、第1希釈開始条件が満足されたか否かを判定する。第1希釈開始条件は、エンジン1の出力に関連する条件であって、気体導入部21によって排気管19に空気を導入するための条件である。第1希釈開始条件は、第1開始条件~第6開始条件のうちの少なくとも1つを含んでいればよい。第1開始条件は、エンジン1の回転数が閾値TH1以上になったことである。第2開始条件は、エンジン1の回転数の上昇率が閾値TH2以上になったことである。第3開始条件は、発電機27の電力が閾値TH3以下になったことである。第4開始条件は、発電機27の電力の低下率が閾値TH4以上になったことである。第5開始条件は、操作信号SGによって示される発電機負荷のレベルが閾値TH5以下になったことである。第6開始条件は、操作信号SGによって示される発電機負荷の低下率が閾値TH6以上になったことである。
【0084】
導入決定部A1は、第1開始条件~第6開始条件のうち第1希釈開始条件に含まれる1以上の開始条件のうちの1つでも満足されると、ステップS1で第1希釈開始条件が満足されたと判定して、処理をステップS4に進める。導入決定部A1が、第1希釈開始条件が満足されたと判定したことは、気体導入部21によって排気管19に空気を導入することを決定したことに相当する。
【0085】
一方、導入決定部A1は、第1開始条件~第6開始条件のうち第1希釈開始条件に含まれる1以上の開始条件の全てが満足されない場合、ステップS1で第1希釈開始条件が満足されないと判定して、処理をステップS2に進める。
【0086】
次に、ステップS2において、導入決定部A1は、第2希釈開始条件が満足されたか否かを判定する。第2希釈開始条件は、水素燃料供給部55に関連する条件であって、気体導入部21によって排気管19に空気を導入するための条件である。第2希釈開始条件は、燃焼室61内の気体の圧力が閾値TH7以上であることである。
【0087】
導入決定部A1は、ステップS2で第2希釈開始条件が満足されたと判定した場合、処理をステップS4に進める。導入決定部A1が、第2希釈開始条件が満足されたと判定したことは、気体導入部21によって排気管19に空気を導入することを決定したことに相当する。
【0088】
一方、導入決定部A1は、ステップS2で第2希釈開始条件が満足されないと判定した場合、処理をステップS3に進める。
【0089】
次に、ステップS3において、導入決定部A1は、第3希釈開始条件が満足されたか否かを判定する。第3希釈開始条件は、着火誘引部56に関連する条件であって、気体導入部21によって排気管19に空気を導入するための条件である。第3希釈開始条件は、燃焼室61内の気体の圧力が閾値TH8以下であることである。
【0090】
導入決定部A1は、ステップS3で第3希釈開始条件が満足されたと判定した場合、処理をステップS4に進める。導入決定部A1が、第3希釈開始条件が満足されたと判定したことは、気体導入部21によって排気管19に空気を導入することを決定したことに相当する。
【0091】
一方、導入決定部A1が、ステップS3で第3希釈開始条件が満足されないと判定した場合、処理は終了する。
【0092】
ステップS1で第1希釈開始条件が満足されたと判定された後、ステップS2で第2希釈開始条件が満足されたと判定された後、又は、ステップS3で第3希釈開始条件が満足されたと判定された後、ステップS4において、導入制御部A2は、流量調整部212によって連通管211の流路を開いて、給気管15及び連通管211から排気管19への空気の導入を開始する。この場合、導入制御部A2は、流量調整部212の開度を予め定められた開度に設定する。実施形態1では、予め定められた開度は固定値である。予め定められた開度は、例えば、全開を示す。
【0093】
次に、ステップS5において、導入制御部A2は、流量調整部212によって連通管211の流路を開いた時点から所定開時間が経過したか否かを判定する。所定開時間は、連通管211の流路を開いておく時間(排気管19への空気の導入時間)であり、予め定められる。つまり、所定開時間は、流量調整部212の開時間である。実施形態1では、所定開時間は固定値である。例えば、所定開時間は、想定し得る最も多量の未燃水素が排気管19に流入した場合に、未燃水素の濃度が着火濃度未満になる時間に設定される。着火濃度は、例えば、4%以下の値であることが好ましい。空気中において水素濃度が4%未満であれば、水素は着火しないからである。
【0094】
ステップS5で所定開時間が経過していないと判定された場合、所定開時間が経過するまでステップS5が実行される。
【0095】
一方、ステップS5で所定開時間が経過したと判定された場合、処理はステップS6に進む。
【0096】
次に、ステップS6において、導入制御部A2は、流量調整部212によって連通管211の流路を閉じて、給気管15及び連通管211から排気管19への空気の導入を停止する。つまり、導入制御部A2は流量調整部212を閉じる。そして、処理は終了する。
【0097】
(第1変形例)
図1、
図2、及び、
図5を参照して、本発明の実施形態1の第1変形例を説明する。第1変形例では、排気管19に空気を導入する流量調整部212の開度及び開時間が動的に設定される点で、
図4を参照して説明した実施形態1と主に異なる。以下、第1変形例が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0098】
まず、
図1及び
図2を参照して、流量調整部212の開度の制御を説明する。導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度、発電機負荷の低下の程度、排気管19の内部において過給機11(具体的にはタービン111)の上流における排気ガスの温度、及び、排気管19の内部において過給機11(具体的にはタービン111)の上流における排気ガスの圧力のうちの少なくとも1つに基づいて、気体導入部21によって排気管19に導入する空気の流量を制御する。換言すれば、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度、発電機負荷の低下の程度、排気ガスの温度、及び、排気ガスの圧力のうちの少なくとも1つに基づいて、流量調整部212の開度を制御する。なぜなら、排気管19に導入する空気の流量は、流量調整部212の開度によって定まるからである。排気管19に導入する空気の流量、つまり、流量調整部212の開度は、動的に制御されるため、固定値ではない。
【0099】
エンジン1の回転数の上昇の程度又は発電機負荷の低下の程度に基づいて流量調整部212の開度が制御される場合、排気管19への未燃水素の流入量に応じて流量調整部212の開度を設定できる。例えば、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度(例えば、上昇率)が大きいほど、流量調整部212の開度を大きく設定する。エンジン1の回転数の上昇の程度が大きいほど、排気管19への未燃水素の流入量が多くなる可能性があるからである。例えば、導入制御部A2は、発電機負荷の低下の程度(例えば、低下率)が大きいほど、流量調整部212の開度を大きく設定する。発電機負荷の低下の程度が大きいほど、排気管19への未燃水素の流入量が多くなる可能性があるからである。
【0100】
また、例えば、導入制御部A2は、排気管19の内部において過給機11の上流における排気ガスの温度が高いほど、流量調整部212の開度を大きく設定して、排気管19に導入する空気の流量を多くする。理由は次の通りである。すなわち、排気ガスの温度が高いほど未燃水素が着火する可能性が高くなる。そこで、排気管19へ導入する空気の流量を多くすることで、未燃水素の温度及び濃度をより効果的に低下させる。その結果、未燃水素が燃焼することを効果的に抑制できる。この例では、導入制御部A2は、温度検知部23から排気ガスの温度を示す情報を取得する。
【0101】
更に、例えば、導入制御部A2は、排気管19の内部において過給機11の上流における排気ガスの圧力が高いほど、流量調整部212の開度を大きく設定して、排気管19へ導入する空気の流量を多くする。理由は次の通りである。すなわち、排気ガスの圧力が高いほど排気管19に空気が流入し難い。そこで、流量調整部212の開度を大きくすることで、より確実に空気を排気管19に導入する。その結果、未燃水素が燃焼することを効果的に抑制できる。この例では、導入制御部A2は、圧力検知部25から排気ガスの圧力を示す情報を取得する。
【0102】
引き続き
図1及び
図2を参照して、流量調整部212の開時間の制御を説明する。導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度、発電機負荷の低下の程度、排気管19の内部において過給機11(具体的にはタービン111)の上流における排気ガスの温度、及び、排気管19の内部において過給機11(具体的にはタービン111)の上流における排気ガスの圧力のうちの少なくとも1つに基づいて、気体導入部21によって排気管19に導入する空気の導入時間を制御する。空気の導入時間は、流量調整部212によって連通管211の流路を開いておく開時間を示す。つまり、空気の導入時間は、流量調整部212の開時間を示す。空気の導入時間は、動的に変更されるため、固定値ではない。
【0103】
エンジン1の回転数の上昇の程度又は発電機負荷の低下の程度に基づいて空気の導入時間が制御される場合、排気管19への未燃水素の流入量に応じて空気の導入時間を設定できる。例えば、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度(例えば、上昇率)が大きいほど、空気の導入時間を長く設定する。エンジン1の回転数の上昇の程度が大きいほど、排気管19への未燃水素の流入量が多くなる可能性があるからである。例えば、導入制御部A2は、発電機負荷の低下の程度(例えば、低下率)が大きいほど、空気の導入時間を長く設定する。発電機負荷の低下の程度が大きいほど、排気管19への未燃水素の流入量が多くなる可能性があるからである。
【0104】
また、例えば、導入制御部A2は、排気ガスの温度が高いほど、空気の導入時間を長く設定して、排気管19へ導入する空気の流量を多くする。理由は、排気ガスの温度が高いほど流量調整部212の開度を大きくする場合と同様である。この例では、導入制御部A2は、温度検知部23から排気ガスの温度を示す情報を取得する。
【0105】
更に、例えば、導入制御部A2は、排気ガスの圧力が高いほど、空気の導入時間を長く設定する。理由は、次の通りである。すなわち、排気ガスの圧力が高いほど排気管19に空気が流入し難い。そこで、排気管19への空気の導入時間長くすることで、より確実に空気を排気管19に導入する。その結果、未燃水素が燃焼することを効果的に抑制できる。この例では、導入制御部A2は、圧力検知部25から排気ガスの圧力を示す情報を取得する。
【0106】
次に、
図2及び
図5を参照して、気体導入部21の制御方法を説明する。
図5は、第1変形例に係る気体導入部21の制御方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、制御方法は、ステップS11~ステップS18を含む。制御方法は、エンジン制御装置33によって実行される。
【0107】
図2及び
図5に示すように、導入決定部A1は、ステップS11~ステップS13を実行する。ステップS11~ステップS13は、それぞれ、
図4に示すステップS1~ステップS3と同様である。
【0108】
ステップS11で第1希釈開始条件が満足されたと判定された後、ステップS12で第2希釈開始条件が満足されたと判定された後、又は、ステップS13で第3希釈開始条件が満足されたと判定された後、ステップS14において、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度、発電機負荷の低下の程度、排気ガスの温度、及び、排気ガスの圧力のうちの少なくとも1つに基づいて、流量調整部212の開度、つまり、排気管19への空気の導入流量を決定する。
【0109】
次に、ステップS15において、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度、発電機負荷の低下の程度、排気ガスの温度、及び、排気ガスの圧力のうちの少なくとも1つに基づいて、流量調整部212の開時間、つまり、排気管19への空気の導入時間を決定する。
【0110】
次に、ステップS16において、導入制御部A2は、流量調整部212によって連通管211の流路を開いて、給気管15及び連通管211から排気管19への空気の導入を開始する。この場合、導入制御部A2は、流量調整部212の開度をステップS14で決定した開度に設定する。
【0111】
次に、ステップS17において、導入制御部A2は、流量調整部212によって連通管211の流路を開いた時点から開時間が経過したか否かを判定する。開時間は、連通管211の流路を開いておく時間(排気管19への空気の導入時間)であり、ステップS15で決定された時間である。
【0112】
ステップS17で開時間が経過していないと判定された場合、開時間が経過するまでステップS17が実行される。
【0113】
一方、ステップS17で開時間が経過したと判定された場合、処理はステップS18に進む。
【0114】
次に、ステップS18において、導入制御部A2は、流量調整部212によって連通管211の流路を閉じて、給気管15及び連通管211から排気管19への空気の導入を停止する。つまり、導入制御部A2は流量調整部212を閉じる。そして、処理は終了する。
【0115】
なお、導入制御部A2は、ステップS14を実行しなくてもよい。この場合、流量調整部212の開度は、
図4を参照して説明した実施形態1と同様に予め設定される。又は、導入制御部A2は、ステップS15を実行しなくてもよい。この場合、流量調整部212の開時間は、
図4を参照して説明した実施形態1と同様に所定開時間に設定される。
【0116】
(第2変形例)
図1、
図2、及び、
図6を参照して、本発明の実施形態1の第2変形例を説明する。第2変形例では、排気管19に導入する空気の停止条件が、エンジン1の回転数によって定められる点で、
図4を参照して説明した実施形態1と主に異なる。以下、第2変形例が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0117】
まず、
図1及び
図2を参照して第2変形例を説明する。導入制御部A2は、エンジン1の回転数の低下の程度に基づいて、気体導入部21による排気管19への空気の導入を停止する。従って、排気管19内の未燃水素が十分希釈されたことに応じて排気管19への空気の導入を停止できる。
【0118】
例えば、導入制御部A2は、エンジン1の回転数が閾値TH9以下になった場合に、流量調整部212を閉じることで、排気管19への空気の導入を停止する。又は、例えば、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の下降率が閾値TH10以下になった場合に、流量調整部212を閉じることで、排気管19への空気の導入を停止する。エンジン1の回転数の下降率は、例えば、導入決定部A1がエンジン回転数検知部62から所定周期でエンジン1の回転数の情報を取得する場合に、最新の回転数N0に対するM回前に取得した回転数NMの比率(=NM/N0)を示す。「M」は1以上の整数のうちのいずれかの整数である。
【0119】
次に、
図2及び
図6を参照して、気体導入部21の制御方法を説明する。
図6は、第2変形例に係る気体導入部21の制御方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、制御方法は、ステップS21~ステップS26を含む。制御方法は、エンジン制御装置33によって実行される。
【0120】
図2及び
図6に示すように、導入決定部A1は、ステップS21~ステップS23を実行する。ステップS21~ステップS23は、それぞれ、
図4に示すステップS1~ステップS3と同様である。
【0121】
次に、導入制御部A2は、ステップS24を実行する。ステップS24は、
図4を参照して説明したステップS4と同様である。
【0122】
次に、ステップS25において、導入制御部A2は、希釈停止条件が満足されるか否かを判定する。希釈停止条件は、気体導入部21による排気管19への空気の導入を停止するための条件である。希釈停止条件は、第1停止条件及び第2停止条件のうちの少なくとも1つを含んでいればよい。第1停止条件は、エンジン1の回転数が閾値TH9以下になったことである。第2停止条件は、エンジン1の回転数の下降率が閾値TH10以下になったことである。
【0123】
導入制御部A2は、第1停止条件及び第2停止条件のうち希釈停止条件に含まれる1以上の停止条件の全てが満足されない場合、当該1以上の停止条件の全てが満足されるまでステップS25を実行する。
【0124】
一方、導入制御部A2は、第1停止条件及び第2停止条件のうち希釈停止条件に含まれる1以上の停止条件のうちの1つでも満足されると、ステップS25で希釈停止条件が満足されたと判定して、処理をステップS26に進める。導入制御部A2が、希釈停止条件が満足されたと判定したことは、排気管19への空気の導入を停止することを決定したことに相当する。
【0125】
次に、ステップS26において、導入制御部A2は、流量調整部212によって連通管211の流路を閉じて、給気管15及び連通管211から排気管19への空気の導入を停止する。つまり、導入制御部A2は流量調整部212を閉じる。そして、処理は終了する。
【0126】
(第3変形例)
図1、
図2、及び、
図7を参照して、本発明の実施形態1の第3変形例を説明する。第3変形例では、排気管19に空気を導入する流量調整部212の開度が動的に設定される点で、
図6を参照して説明した第2変形例と主に異なる。以下、第3変形例が第2変形例と異なる点を主に説明する。
【0127】
図7は、第3変形例に係る気体導入部21の制御方法を示すフローチャートである。
図7に示すように、制御方法は、ステップS31~ステップS37を含む。制御方法は、エンジン制御装置33によって実行される。
【0128】
図2及び
図7に示すように、導入決定部A1は、ステップS31~ステップS33を実行する。ステップS31~ステップS33は、それぞれ、
図6に示すステップS21~ステップS23と同様である。
【0129】
次に、導入制御部A2は、ステップS34及びステップS35を実行する。ステップS34及びステップS35は、それぞれ、
図5を参照して説明したステップS14及びステップS16と同様である。
【0130】
次に、導入制御部A2は、ステップS36及びステップS37を実行する。ステップS36及びステップS37は、それぞれ、
図6を参照して説明したステップS25及びステップS26と同様である。
【0131】
(実施形態2)
図2及び
図8を参照して、本発明の実施形態2に係るエンジンシステム100Aを説明する。実施形態2では、加圧気体供給装置35から排気管19に空気又は不活性気体を導入する点で、実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0132】
図8は、実施形態2に係るエンジンシステム100Aの構成を示す図である。
図8に示すように、エンジンシステム100Aは、
図1に示す気体導入部21に代えて、気体導入部21Aを備える。
【0133】
気体導入部21Aは、空気又は不活性気体を排気管19に導入する。従って、エンジン1で燃焼されなかった未燃水素が排気管19に流入した場合であっても、エンジン1から排気管19に流入した未燃水素を空気又は不活性気体によって希釈できる。よって、排気管19に流入した未燃水素の濃度を低下させることができる。その結果、実施形態2によれば、排気管19内において未燃水素が燃焼することを抑制できる。また、排気管19に流入した未燃水素の温度が、排気管19に導入する空気又は不活性気体によって低下する。その結果、未燃水素が着火し難くなって、排気管19内において未燃水素が燃焼することを更に抑制できる。
【0134】
本明細書において、不活性気体は、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、又は、二酸化炭素である。
【0135】
具体的には、気体導入部21Aは、大気圧よりも大きい圧力の空気又は不活性気体を供給する加圧気体供給装置35に接続され、空気又は不活性ガスを排気管19に導入する。つまり、実施形態2では、大気圧よりも大きい圧力の空気又は不活性気体を排気管19に送り出すことで、排気ガスの圧力に抗して排気管19に対してより確実に空気を導入できる。従って、排気管19に流入した未燃水素の濃度をより確実に低下させることができる。その結果、排気管19内で未燃水素が燃焼することをより確実に抑制できる。
【0136】
加圧気体供給装置35は、例えば、加圧された空気を貯留する加圧空気タンク、加圧された不活性気体を貯留する加圧不活性気体タンク、空気を加圧して気体導入部21Aに供給するコンプレッサー、又は、不活性気体を加圧して気体導入部21Aに供給するコンプレッサーである。
【0137】
更に具体的には、気体導入部21Aは、加圧気体導入管211Aと、流量調整部212Aとを含む。
【0138】
加圧気体導入管211Aは、加圧気体供給装置35によって供給される空気又は不活性気体を排気管19に案内する。加圧気体導入管211Aの一端は、加圧気体供給装置35に接続される。加圧気体導入管211Aの他端は、排気管19において過給機11の上流に接続される。具体的には、加圧気体導入管211Aの他端は、排気管19においてタービン111の上流に接続される。
【0139】
流量調整部212Aは、加圧気体導入管211Aに配置される。そして、流量調整部212Aは、加圧気体導入管211Aに流れる空気又は不活性気体の流量を調整する。従って、流量調整部212Aは、未燃水素が排気管19に流入しない状況下では、加圧気体導入管211Aの流路を遮断して、空気又は不活性気体が排気管19に流入することを禁止できる。その結果、実施形態2によれば、排気管19において排気ガスがより円滑に排出される。
【0140】
ここで、流量調整部212Aによる空気の流量の調整は、流量を連続的又は段階的に増減させることだけでなく、流量をゼロにすることを含む。流量調整部212Aは、少なくとも、加圧気体導入管211Aの流路を開いた状態と閉じた状態とを切り替えることができればよい。流量調整部212Aは、例えば、流量調整弁又は開閉弁である。
【0141】
また、流量調整部212Aは、加圧気体導入管211Aにおいて、排気管19の近傍に配置されることが好ましい。なぜなら、流量調整部212Aを閉じている状態において、加圧気体供給装置35からの空気又は不活性気体が加圧気体導入管211Aにおいて排気管19の近くまで存在していると、空気が流量調整部212Aを開いてから排気管19に導入されるまでの時間が短くなるからである。つまり、流量調整部212Aによって排気管19に空気又は不活性気体を導入する際の応答性が向上する。
【0142】
温度検知部23は、排気管19において、タービン111の上流であって、加圧気体導入管211Aと排気管19との接続箇所の下流で、排気ガスの温度を検知する。圧力検知部25は、排気管19において、タービン111の上流であって、加圧気体導入管211Aと排気管19との接続箇所の下流で、排気ガスの圧力を検知する。
【0143】
ここで、実施形態2においても、実施形態1の第1変形例と同様の変形例を適用できる。つまり、実施形態2において、排気管19に空気又は不活性気体を導入する流量調整部212Aの開度及び開時間を動的に設定できる。また、実施形態2においても、実施形態1の第2変形例と同様の変形例を適用できる。つまり、実施形態2において、排気管19に導入する空気の停止条件を、エンジン1の回転数によって定めることができる。さらに、実施形態2においても、実施形態1の第3変形例と同様の変形例を適用できる。つまり、実施形態2において、排気管19に導入する空気の停止条件をエンジン1の回転数によって定めることができ、かつ、排気管19に空気を導入する流量調整部212Aの開度を動的に設定できる。
【0144】
また、実施形態2においても、
図4~
図7を参照して説明した制御方法を適用できる。
【0145】
更に、
図2示すように、エンジンシステム100Aにおける導入決定部A1及び導入制御部A2の動作は、それぞれ、エンジンシステム100における導入決定部A1及び導入制御部A2の動作と同様である。ただし、エンジンシステム100Aでは、排気管19に導入する気体が空気又は不活性気体である点で、排気管19に導入する気体が空気であるエンジンシステム100と異なる。従って、実施形態1及び第1変形例~第3変形例におけるエンジンシステム100の導入決定部A1及び導入制御部A2の説明において、「空気」を「空気又は不活性気体」と読み替え、「気体導入部21」を「気体導入部21A」と読み替え、「連通管211」を「加圧気体導入管211A」と読み替え、「流量調整部212」を「流量調整部212A」と読み替えることで、実施形態2の説明に援用できる。
【0146】
例えば、実施形態2において、導入決定部A1は、燃焼されなかったガス燃料がエンジン1から排気管19に流入したか否かを示す指標となる指標情報IFに基づいて、空気又は不活性気体を排気管19に導入するか否かを決定する。また、導入制御部A2は、導入決定部A1の決定結果に基づいて、空気又は不活性気体を排気管19に導入するように気体導入部21Aを制御する。
【0147】
例えば、実施形態2において、導入決定部A1は、エンジン1の回転数の上昇の程度、又は、発電機負荷の低下の程度に基づいて、空気又は不活性気体を排気管19に導入するか否かを決定する。
【0148】
例えば、実施形態2において、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度、発電機負荷の低下の程度、エンジン負荷の低下の程度、排気管19の内部における排気ガスの温度、及び、排気管19の内部における排気ガスの圧力のうちの少なくとも1つに基づいて、気体導入部21Aによって排気管19に導入する空気又は不活性気体の導入時間を制御する。
【0149】
例えば、実施形態2において、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の低下の程度に基づいて、気体導入部21Aによる排気管19への空気又は不活性気体の導入を停止する。
【0150】
例えば、実施形態2において、導入制御部A2は、エンジン1の回転数の上昇の程度、発電機負荷の低下の程度、エンジン負荷の低下の程度、排気管19の内部における排気ガスの温度、及び、排気管19の内部における排気ガスの圧力のうちの少なくとも1つに基づいて、気体導入部21Aによって排気管19に導入する空気又は不活性気体の流量を制御する。
【0151】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び実施例について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0152】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0153】
(1)
図1~
図8を参照して説明した実施形態1、第1変形例~第3変形例、及び、実施形態2(以下、「実施形態1等」と記載する。)では、エンジン1は、発電機27に動力を供給した。ただし、実施形態1等において、エンジン1は、発電機27と異なる種類の機器(以下、「機器MC」と記載する。)に動力を供給してもよい。機器MCは、エンジン1に対する負荷装置である。例えば、機器MCは、船舶200のプロペラの回転軸である。この場合、エンジン1は、船舶200のプロペラを回転させるための動力をプロペラの回転軸に供給する。
【0154】
(2)導入決定部A1によって使用される、エンジン1の出力を間接的に示すエンジン出力情報IDは、エンジン1のトルクを示す情報を含んでいてもよい。エンジン1のトルクは、例えば、エンジン1の出力軸に設けられるトルクメーターによって計測される。
【0155】
エンジン1のトルクは、例えば、発電機負荷に連動して変化する。従って、例えば、発電機負荷が瞬時に低下すると、極めて短時間ではあるが、エンジン1のトルクが瞬時に下降する。よって、エンジン1のトルクが瞬時に下降したことは、発電機負荷が瞬時に低下したことを示す。よって、エンジン1のトルクが瞬時に下降した場合、未燃水素が排気管19に流入すると予測できる。そこで、導入決定部A1は、エンジン1のトルクに基づいて、気体導入部21によって空気を排気管19に導入するか否かを決定する。
【0156】
例えば、導入決定部A1は、エンジン1のトルクの低下の程度に基づいて、空気又は不活性気体を排気管19に導入するか否かを決定してもよい。
【0157】
例えば、導入制御部A2は、エンジン1のトルクの低下の程度に基づいて、気体導入部21、21Aによって排気管19に導入する空気又は不活性気体の導入時間を制御してもよい。
【0158】
例えば、導入制御部A2は、エンジン1のトルクの低下の程度に基づいて、気体導入部21、21Aによって排気管19に導入する空気又は不活性気体の流量を制御してもよい。
【0159】
(3)エンジン1が機器MCに対して動力を供給する場合、導入決定部A1によって使用される、エンジン1の出力を間接的に示すエンジン出力情報IDは、エンジン1に対する負荷であるエンジン負荷を示す情報を含んでいてもよい。
【0160】
(4)エンジン1が機器MCに対して動力を供給する場合、導入決定部A1は、エンジン1に対する負荷であるエンジン負荷の低下の程度に基づいて、空気又は不活性気体を排気管19に導入するか否かを決定してもよい。なお、エンジン負荷は、エンジン1によって駆動される機器MCによって発生する。
【0161】
(5)エンジン1が機器MCに対して動力を供給する場合、導入制御部A2は、エンジン負荷の低下の程度に基づいて、気体導入部21、21Aによって排気管19に導入する空気又は不活性気体の導入時間を制御してもよい。
【0162】
(6)エンジン1が機器MCに対して動力を供給する場合、導入制御部A2は、エンジン負荷の低下の程度に基づいて、気体導入部21、21Aによって排気管19に導入する空気又は不活性気体の流量を制御してもよい。
【0163】
(7)その他、エンジン1が、機器MCに対して動力を供給する場合でも、発電機27に動力を供給する場合と同様に、導入決定部A1及び導入制御部A2は動作することができる。例えば、エンジン1が機器MCに対して動力を供給する場合でも、導入決定部A1及び導入制御部A2は、エンジン1の回転数を示す情報又はエンジン1のトルクを示す情報を使用できる。
【0164】
<発明の付記>
本発明の一局面によれば、エンジンシステムは、エンジンと、排気管と、気体導入部とを備える。エンジンは、気体燃料を燃焼させて動力を発生する。排気管には、エンジンから排出される排気ガスが流れる。気体導入部は、空気又は不活性気体を前記排気管に導入する。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、エンジンシステムに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0166】
1 エンジン
11 過給機
15 給気管
19 排気管
21、21A 気体導入部
35 加圧気体供給装置
55 水素燃料供給部(気体燃料供給部)
56 着火誘引部
61 燃焼室
100、100A エンジンシステム
211 連通管
211A 加圧気体導入管
212、212A 流量調整部
A1 導入決定部
A2 導入制御部