(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169573
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】クレーン用撮影システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B66C13/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161138
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2020057200の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 実
(72)【発明者】
【氏名】本庄 浩平
(57)【要約】
【課題】撮影が望まれないものが映像に入ってしまうことを抑制しつつ、クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影できるクレーン用撮影システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】このクレーン用撮影システムは、クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部(21)を有する移動体(10)と、表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部(31)と、撮影部の撮像データから表示不許可の対象が除外された表示画像を作成する画像作成部(32)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を有する移動体と、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
前記撮影部の撮像データから表示不許可の対象が除外された表示画像を作成する画像作成部と、
を備えるクレーン用撮影システム。
【請求項2】
前記画像作成部は、前記移動体に設けられている、
請求項1記載のクレーン用撮影システム。
【請求項3】
前記画像作成部は、
前記第1情報に基づき前記撮影部の撮像データから表示許可の対象を検出する対象検出部と、
前記対象検出部により検出された対象以外の部分を前記撮像データから除去するマスク処理部と、
を含む請求項1又は請求項2に記載のクレーン用撮影システム。
【請求項4】
前記画像作成部により作成された表示画像の元の撮像データを破棄するデータ処理部を更に備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクレーン用撮影システム。
【請求項5】
前記移動体は、撮像対象の距離を検出するための距離検出部を更に有し、
前記画像作成部は、前記距離検出部の検出結果を用いて、前記撮像データから表示不許可の対象を除外する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクレーン用撮影システム。
【請求項6】
前記距離検出部は、所定の視野範囲における各部の距離検出が可能であり、
前記撮影部の視野範囲が前記距離検出部の視野範囲内に含まれる、
請求項5記載のクレーン用撮影システム。
【請求項7】
前記第1情報には、表示許可の対象としてクレーンの情報が含まれ、
前記画像作成部は、クレーンの部分が抽出された表示画像を作成する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のクレーン用撮影システム。
【請求項8】
前記表示画像はクレーンの3次元画像である請求項7記載のクレーン用撮影システム。
【請求項9】
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を有する移動体と、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
前記第1情報に基づき表示不許可の対象が写りこまないように前記撮影部に撮像させる制御部と、
を備えるクレーン用撮影システム。
【請求項10】
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を有する移動体を備え、
前記撮影部は可視光以外の光又は電磁波を受けて撮影を行う、
クレーン用撮影システム。
【請求項11】
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部の撮像データから表示不許可の対象が除外された表示画像を作成する画像作成部と、
を備えるクレーン用撮影システム。
【請求項12】
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
前記第1情報に基づき表示不許可の対象が写りこまないように撮影部にクレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮像させる制御部と、
を備えるクレーン用撮影システム。
【請求項13】
移動体に搭載可能でクレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影可能な前記撮影部を更に備える請求項11又は請求項12に記載のクレーン用撮影システム。
【請求項14】
移動体に搭載可能で、クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を備え、
前記撮影部は可視光以外の光又は電磁波を受けて撮影を行う、
クレーン用撮影システム。
【請求項15】
前記撮影部の撮影画像を用いてクレーンの診断を行う診断部を更に備える、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のクレーン用撮影システム。
【請求項16】
コンピュータを、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部、及び、
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方が含まれる撮像データから表示不許可の対象が除外された表示画像を作成する画像作成部、
として機能させるプログラム。
【請求項17】
コンピュータを、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部、及び、
前記第1情報に基づき表示不許可の対象が写りこまないように撮影部にクレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮像させる制御部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーン用撮影システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クレーンが作業する現場を上空から撮影することで、見学者が現場の全容を把握できるようにした見学会説明システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、クレーンを上空から撮影すると、現場周辺が映像に入ってしまう。このため、現場周辺にプライバシー保護等のため撮影が望まれないものがある場合に、それが映像に入ってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、撮影が望まれないものが映像に入ってしまうことを抑制しつつ、クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影できるクレーン用撮影システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つに係るクレーン用撮影システムは、
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を有する移動体と、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
前記撮影部の撮像データから表示不許可の対象が除外された表示画像を作成する画像作成部とを備える。
【0007】
本発明の一つに係るクレーン用撮影システムは、
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を有する移動体と、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
前記第1情報に基づき表示不許可の対象が写りこまないように前記撮影部に撮像させる制御部と、
を備える。
【0008】
本発明の一つに係るクレーン用撮影システムは、
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を有する移動体を備え、
前記撮影部は可視光以外の光又は電磁波を受けて撮影を行う。
【0009】
本発明の一つに係るクレーン用撮影システムは、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部の撮像データから表示不許可の対象が除外された表示画像を作成する画像作成部と、
を備える。
【0010】
本発明の一つに係るクレーン用撮影システムは、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部と、
前記第1情報に基づき表示不許可の対象が写りこまないように撮影部にクレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮像させる制御部と、
を備える。
【0011】
本発明の一つに係るクレーン用撮影システムは、
移動体に搭載可能で、クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部を備え、
前記撮影部は可視光以外の光又は電磁波を受けて撮影を行う。
【0012】
本発明の一つに係るプログラムは、
コンピュータを、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部、及び、
クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方が含まれる撮像データから表示不許可の対象が除外された表示画像を作成する画像作成部、
として機能させる。
【0013】
本発明の一つに係るプログラムは、
コンピュータを、
表示許可又は表示不許可の対象を示す第1情報が格納される格納部、及び、
前記第1情報に基づき表示不許可の対象が写りこまないように撮影部にクレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮像させる制御部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮影が望まれないものが映像に入ってしまうことを抑制しつつ、クレーン、クレーンの周辺又はこれら両方を撮影できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1のクレーン用撮影システムを示すブロック図である。
【
図2】クレーンが配置される現場の一例を示す図である。
【
図4】移動体によるクレーンの撮像処理を説明する図(A)と、移動体の拡大図(B)である。
【
図6】撮影部の視野範囲と距離検出部の視野範囲とを示す図である。
【
図5】画像作成部が実行する画像作成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】検出された距離情報を用いたマスク処理の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態2のクレーン用撮影システムを示すブロック図である。
【
図9】実施形態2のクレーン用撮影システムによる撮影処理の一例を説明する図である。
【
図10】本発明の実施形態3のクレーン用撮影システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のクレーン用撮影システムを示すブロック図である。
図2は、クレーンが配置される現場の一例を示す図である。本実施形態のクレーン用撮影システムは、クレーンTの一部又は全部を対象として撮影を行い、撮影画像に基づきクレーンTの診断を行うシステムである。以下では、ブームBを診断対象とする例を説明するが、診断対象はジブ、ワイヤー、キャブ、旋回フレーム、走行体、各連結部、各種電装品など、様々な部分又はクレーンT全体に拡張されてもよい。
【0018】
図2に示すように、クレーンTが配置される現場の周囲には、撮影画像に写ることが望まれないもの(建物N1、居住地N2、N3、人が通る道路など)がある。したがって、本実施形態のクレーン用撮影システムには、表示が許可される対象、表示が不許可な対象、又はこれら両方が設定され、表示が許可される対象のみが撮影画像に含まれるように、撮影を実行する。
【0019】
実施形態1に係るクレーン用撮影システムは、
図1に示すように、移動体10と、コンピュータ80とを備える。移動体10は、例えば空中を飛行し、上下前後左右の移動、正逆の旋回等を行うことが可能ないわゆるドローンである。移動体10は、複数のプロペラ11と、複数のプロペラ11を駆動する駆動部12と、測位を行う測位部13と、駆動部12を制御して移動体10を移動及び旋回させる移動制御部14とを備える。
【0020】
測位部13は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)、ビーコン、又はこれら両方を用いた測位と、ジャイロセンサ等を用いた方位の検出とを行って、移動体10の位置と向きとを測定する。測位部13により測定された位置及び向きの情報は、移動制御部14へ供給される。
【0021】
移動体10は、更に、クレーンT、クレーンTの周辺又はこれら両方を撮影する撮影部21と、2次元の視野範囲中の各部の距離を検出可能な距離検出部25と、表示を許可する対象、表示を許可しない対象又はこれら両方を示す設定情報(第1情報に相当)が格納される設定情報格納部31と、撮影部21の撮影により得られた撮像データから表示不許可の部分が除去された合成画像を作成する画像作成部32と、作成された合成画像を記憶する画像記憶部33と、合成画像の元の撮像データを破棄するデータ処理部34と、画像記憶部33の画像を外部のコンピュータ80等へ送信可能な通信部36と、移動及び撮影の統括的な制御を行う統括制御部38とを備える。通信部36は、トータルステーションからクレーンT及びその可動要素(ブームB、ジブ等)の測量情報を受信するためにも使用されてもよい。
【0022】
撮影部21は、所定の視野範囲の映像を撮影する光学系及び撮像素子を備える。撮影部21は、例えば単眼カメラである。
【0023】
図3は、距離検出部の動作原理を示す図である。距離検出部25は、センサ原点O1を中心に、水平画角αと垂直画角βとを有する視野範囲W1で、視野範囲W1の各検出区画に存在する物までの距離を検出する。距離検出部25としては、例えば赤外線レーザを用いたTOF(Time of Flight)方式の走査型センサを適用できる。走査型センサで視野範囲W1の各検出区画を走査することで、視野範囲W1の各部に存在するものまでの距離を検出できる。なお、距離検出部25としては、上記の方式に限られず、所定の視野範囲の各部に存在する物の距離を検出できれば、例えばステレオカメラなど様々な構成が適用されてもよい。
【0024】
図4は、移動体によるクレーンの撮影処理を説明する図(A)及び移動体の拡大図(B)である。
図5は、距離検出部の視野範囲と撮影部の視野範囲とを示す図である。ここでは、移動体10が、クレーンTの原点S0からX、Y、Zの3方向にそれぞれ所定長さX1、Y1、Z1離れた位置から、ブームBに向かって撮影を行う場面を想定する。この場合、
図5に示されるように、ブームBの一部が、撮影部21の撮影対象となり、かつ、距離検出部25の検出対象となる。
【0025】
図5に示すように、距離検出部25の視野範囲W1は、撮影部21の視野範囲W2を含むように設定されている。視野範囲を含むとは、同一平面上に撮影対象と距離検出対象とを配置したときに、撮影部21により撮影される平面上の範囲が、距離検出部25により距離が検出される平面上の範囲に含まれることを意味する。視野範囲W1、W2は画角と言い換えてもよい。
【0026】
設定情報格納部31は、設定情報が格納される記憶装置であり、表示許可の対象として、例えばクレーンTの各部の位置を表わす位置情報が記憶されている。この位置情報は、クレーンTの各部の位置が相対座標で表わされた位置情報である。ブームB又はジブなどの可動要素については、一つの可動要素ごとに1つの相対座標が設定され、設定情報格納部31には可動要素ごとの相対座標を用いた位置情報が格納されていてもよい。また、位置情報は、3次元モデルデータにより表わされてもよいし、各部表面の相対位置が示されるポリゴンメッシュのデータにより表わされてもよい。クレーンTの停車位置及び向きが決まり、かつ、各可動要素の姿勢が決まると、上記の相対位置の情報からクレーンTの各部、並びに、各可動要素の各部の絶対位置を求めることができる。クレーンTの停車位置、向き及び各可動要素の姿勢は、例えば、トータルステーションなどの測量機器を用いてクレーンTの複数点及び各可動要素の複数点の位置を測定することで求めることができる。設定情報格納部31としての機能は、装置外部から設定情報を入力する設定入力機能を有していてもよい。
【0027】
設定情報格納部31には、更に、表示許可の対象として、現場の敷地E(
図2を参照)の絶対位置を表わす位置情報が含まれていてもよい。
【0028】
統括制御部38、画像作成部32、設定情報格納部31及びデータ処理部34は、例えばマイクロコンピュータのCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することで実現されるソフトウェアモジュールである。マイクロコンピュータは、CPU、ROM(Read Only Memory)、作業用のメモリ領域を提供するRAM(Random Access Memory)を備え、移動体に設けられている。ROMには、マイクロコンピュータを、統括制御部38、画像作成部32、設定情報格納部31及びデータ処理部34として機能させるプログラムが格納されている。
【0029】
統括制御部38は、クレーンTに設定された複数の被撮影箇所を示す情報、並びに、複数の被撮影箇所に対応づけられた複数の撮影位置及び撮影方向を示す制御情報を持つ。統括制御部38は、各撮影位置及び移動体10を移動させ、各撮影方向に移動体10が向くように旋回させる指令を、移動制御部14に出力する。さらに、統括制御部38は、各撮影位置への移動及び旋回後に距離検出部25及び撮影部21に距離検出の指令と撮影の指令とをそれぞれ出力する。例えば、検査対象がブームBであり、ブームBの下端から上端まで複数方向から撮影した画像が必要であれば、統括制御部38には、ブームBに設定された複数の被撮影箇所と、複数の被撮影箇所に対応づけられた複数の撮影位置及び撮影方向とを示す情報が記憶される。
図4(A)に示した被撮影箇所P1、撮影位置(X1、Y1、Z1)、撮影方向Z方向が、その一つの例である。ブームBの下端から上端まで切れ目のない撮影画像が必要であれば、隣接する2つの撮影箇所は一部同士が重なるように設定されてもよい。
【0030】
画像作成部32は、画像作成処理を実行し、撮像データから表示不許可の部分が除去された合成画像を作成する。
【0031】
データ処理部34は、画像作成処理中、表示不許可の部分が含まれる可能性のある撮像データが外部に流出しないように、画像作成部32が合成画像を作成した後に、合成画像の元の撮像データを削除する。
【0032】
<画像作成処理>
続いて、画像作成部により実行される画像作成処理について説明する。
図6は、画像作成処理の手順を示すフローチャートである。
【0033】
画像作成処理は、クレーンTが所定の姿勢で静止した状態で実行される。画像作成処理が開始されると、画像作成部32は、先ず、設定情報格納部31に格納されたクレーンTの位置情報(相対位置の情報、例えば3次元モデルの情報)を読み込み(ステップS1)、トータルステーションから受信されたクレーンTの複数点の絶対位置の情報を取得する(ステップS2)。ステップS2の情報から、画像作成部32は、クレーンTの絶対位置と向き、並びに、各可動要素(ブームB等)の姿勢を求めることができ、ステップS1の位置情報を合わせることで、クレーンTの各部の絶対位置を求めることができる。
【0034】
一方、統括制御部38は、ステップS1、S2の情報を同様に取得し、これらの情報からクレーンTの絶対位置と向き、各可動要素の姿勢、並びに、絶対位置で表わされる撮影位置及び撮影方向の情報を求める。さらに、統括制御部38は、移動体10を撮影位置まで移動させ、移動体10を撮影方向へ旋回させる。そして、統括制御部38は、先ず、距離検出部25を駆動して、その視野範囲W1の各検出区画に存在する物の距離を検出させる。検出された各検出区画の距離の情報は、画像作成部32へ送られる(ステップS3)。
【0035】
画像作成部32は、各検出区画の距離の情報を取得すると、距離の情報と、設定情報格納部31に格納されていたクレーンTの位置情報とに基づき、視野範囲W1のどの検出区画にクレーンTのどの構成部材が位置しているのか、その認識位置を補正する(ステップS4)。ステップS4の処理は、本発明に係る「表示許可の対象を検出する対象検出部」の処理の一例に相当する。なお、移動体10の絶対位置及び向きの情報と、クレーンTの絶対位置及び向きの情報と、各可動要素の姿勢の情報とから、距離検出部25の視野範囲W1のどの区画にクレーンTのどの部分が位置するのか計算することができる。さらに、クレーンTの各構成部材と移動体10との距離を計算することができる。しかし、移動体10とクレーンTの各絶対位置の情報には誤差が含まれる。このため、計算結果と実際の検出結果とにはズレが生じる。ステップS3において画像作成部32は、視野範囲W1の検出結果と計算結果とを比較して、上記の誤差分のズレを判定し、判定されたズレを位置情報に反映させることで、視野範囲W1のどの検出区画にクレーンTのどの構成部材が位置するのか正確に判別することができる。
【0036】
次に、画像作成部32は、距離検出部25の視野範囲W1のうち、表示許可の対象として設定されているクレーンTの一部(例えばブームBの構成部材)が位置する検出区画(
図7中の白部分)について、映像が抽出され、他の検出区画(
図7の網掛け部分)について、映像が除去されるように、マスク処理の区画を判定する(ステップS5)。なお、視野範囲W1中のクレーンTの構成部材のきわと、マスク処理を行う部分との間にはマージンが含まれていてもよい。マスク処理する区画は、撮影部21で撮影した場合に、表示不許可の対象(例えば現場に隣接する建物等)が撮影画像に写り込む可能性のある範囲に相当する。
【0037】
ステップS4、S5の処理と並行して、統括制御部38は撮影部21に撮影処理を実行させる。そして、画像作成部32は、撮影部21から撮像データを受ける(ステップS6)。前述したように、撮影部21の視野範囲W2は、距離検出部25の視野範囲W1に含まれる。したがって、撮像データの各画素は、ステップS5で判定された映像を抽出する区画と映像を除去する区画とのいずれかに含まれる。画像作成部32は、ステップS5の判定結果にしたがって、撮像データにマスク処理を実施し、マスク処理された合成画像を作成する(ステップS7)。ステップS7の処理は、本発明に係る「マスク処理部」の処理の一例に相当する。
【0038】
ステップS4~S7により、設定情報格納部31に格納された表示許可の対象を示す情報と、距離検出部25の検出結果とに基づいて、表示不許可の対象が除外された表示画像が作成される。
【0039】
続いて、画像作成部32は、1つの被撮影箇所についての合成画像を画像記憶部33に格納する(ステップS8)。ステップS8の格納の際、画像作成部32は、合成画像がどの撮影位置でどの撮影方向から撮影したものなのか識別可能なタグ情報と紐づけて、合成画像を記憶させてもよい。合成画像が作成されたら、データ処理部34は、合成画像の元の撮像データを削除する(ステップS9)。
【0040】
1つの合成画像が作成及び記憶されたら、画像作成部32は、予め設定された全ての被撮影箇所の撮影が完了したか判別し(ステップS10)、完了してなければ、次の撮影位置での処理を行うために、処理をステップS3に戻す。統括制御部38は、予め設定された複数の撮影位置からの撮影が全て完了するまで、撮影位置及び撮影方向に移動体10を移動及び旋回させ、距離検出部25及び撮影部21に距離検出と撮像とを行わせる処理を繰り返す。さらに、これらの処理に伴って、画像作成部32及びデータ処理部34は、各撮影位置で撮影された撮像データについて、ステップS3~S8の処理を実行する。これにより、ブームBの全ての被撮影箇所の合成画像が画像記憶部33に記憶される。そして、ステップS10の判別処理で、全ての被撮影箇所の撮影が完了したと判別すると、画像作成部32は画像作成処理を終了する。
【0041】
<画像の表示処理>
コンピュータ80は、
図1に示すように、画像を表示する表示部81と、移動体10の画像記憶部33に格納された複数の合成画像から3次元画像を作成する機能モジュール82と、移動体10から供給された合成画像に基づきクレーンTの診断を行う診断部83と、移動体10と無線又は有線を介して通信する通信部84を有する。機能モジュール82と、診断部83とは、例えばCPUがプログラムを実行することで実現されるソフトウェアモジュールである。コンピュータ80は、CPU、記憶装置、RAMを備える。記憶装置には、機能モジュール82と診断部83を実現するプログラムが格納されている。
【0042】
オペレータは、コンピュータ80を用いて移動体10の画像記憶部33に格納された複数の合成画像を無線又は有線を介して読み込み、表示コマンドを入力することで、合成画像を表示部81に表示出力できる。
【0043】
オペレータは、コンピュータ80の機能モジュール82を動作させることで、読み出した複数の合成画像から3次元画像を作成し、これを表示部81を介して表示出力できる。3次元画像の表示機能は、3次元画像を3次元的に回転、平行移動、拡大又は縮小して表示する機能を含む。3次元画像作成用の機能モジュール82には、予めクレーンTの検査対象(例えばブームB)の3次元モデルデータが格納され、合成画像に紐づけられたタグ情報と、3次元モデルデータとから、3次元モデルの各部の表面に、合成画像の対応する部分が張り付けられた、3次元画像を作成する。タグ情報は、合成画像がどの撮影位置のどの撮影方向からどの被撮影箇所を撮影したものかを示す情報である。なお、コンピュータ80の機能モジュール82が3次元画像を作成するのではなく、画像作成部32が移動体10において3次元画像を作成してもよい。
【0044】
オペレータは、複数の合成画像を読み込んだ後、コンピュータ80の診断部83を動作させることで、クレーンTの診断処理を実行できる。診断部83は、合成画像、3次元画像、又はこれら両方を用いて、クレーンTを診断する。例えば、診断部83は、合成画像又は3次元モデルデータの細部、各部及び全体を基準画像と比較し、違いのある箇所を異常として診断し、診断結果を出力するように構成される。なお、診断部83は省略され、検査員が、合成画像又は3次元画像を見て、クレーンTに異常がないか検査してもよい。
【0045】
以上のように、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、表示許可又は表示不許可の対象を示す情報が格納される設定情報格納部31と、移動体10の撮影部21の撮像データとから表示不許可の対象が除外された合成画像を作成する画像作成部32と、が備わる。したがって、現場に配置されたクレーンTを対象として、移動体10の撮影部21により対象を撮影し、その撮像データから現場周辺の撮影が望まれないものを除外した合成画像を作成することができる。そして、作成された合成画像を、クレーンTの診断等に用いることができる。クレーンTの診断を検査員の目視により行う場合、ブームBを倒伏させる必要があるが、ブームBを倒伏させるスペースがない場合でも、本実施形態のクレーン用撮影システムを用いることで、合成画像に基づきクレーンTを診断することができる。
【0046】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、画像作成部32が移動体10に備わる。したがって、撮影が望まれないものが写った画像が、第3者から傍受されてしまう可能性を非常に低くすることができる。
【0047】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、画像作成部32は、表示許可の対象を検出し(例えば
図6のステップS4)、撮影画像から表示許可の対象以外の部分を除去する(例えば
図6のステップS5、S7)。したがって、例えば、ブームBの構成材料の間に表示不許可の対象が撮像データに入り込むような場合でも、ブームBの構成材料などの必要な部分を残し、表示不許可の部分を除外した合成画像を容易な処理によって作成することができる。
【0048】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、表示不許可の対象が除外された合成画像が作成されたら、データ処理部34が元の撮像データを削除する。したがって、撮影が望まれないものが写った撮影画像が、第3者から傍受されてしまう可能性を非常に低くできる。
【0049】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、撮影対象の距離を検出するための距離検出部25を有し、画像作成部32は、距離検出部25の検出結果を更に用いて、撮影画像から表示不許可の対象を除外する。したがって、画像作成部32は、表示許可の対象と、表示不許可に対象とを、より正確に判別できる。
【0050】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、距離検出部25の視野範囲W1は撮影部21の視野範囲W2を含む。このような構成により、撮影部21が撮影する全範囲において写り込んだものの距離を検出でき、距離情報に基づき単純な情報処理によってマスク処理を実行できる。また、距離検出部25の視野範囲W1の方が、撮影部21の視野範囲W2よりも大きいので、視野範囲W2に撮影されたもの全ての距離を検出できる。したがって、距離を検出できずに撮影画像中に表示許可の対象なのか表示不許可な対象なのか判別できない部分が残ってしまうことがない。
【0051】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、表示許可の対象としてクレーンTの情報(各部の位置情報)が含まれ、画像作成部32は、クレーンTが抽出された合成画像を作成する。このような構成によれば、クレーンTの各部に異常が無いか診断を行う場合に適した合成画像を得ることができる。
【0052】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、クレーンTの3次元画像を得ることができる。したがって、検査員は、3次元画像によりクレーンT又はブームBの全体像を容易に把握でき、かつ、各部の詳細な画像が全体のどの部分かを容易に把握することができる。
【0053】
さらに、実施形態1のクレーン用撮影システムによれば、診断部83が、合成画像又は三次元画像に基づきクレーンTの診断を行うので、検査員を要さずに、クレーンTの診断結果を得ることができる。
【0054】
なお、実施形態1では、画像作成部32が、距離検出部25の検出結果を用いて、クレーンTが写った範囲を判定する構成を示した。しかし、画像作成部は、距離の検出結果を使用せずに、クレーンTの各部の絶対位置の情報と、移動体10の絶対位置及び向きの情報とから、撮影データ中のクレーンTが写った範囲を判定してもよい。また、画像作成部32は、距離検出の替わりに画像認識を行って、撮像データ中のクレーンTが写った範囲を判定するように構成されてもよい。その場合、画像作成部は、予め記憶されたクレーンTの三次元モデルデータと画像とを比較して画像認識を行ってもよいし、三次元モデルデータを使用せずに予め記憶された認識用の画像パターンを用いて画像認識を行ってもよい。また、画像作成部32は、学習機能により、クレーンTの各部を認識する精度を高める機能を有してもよい。
【0055】
さらに、実施形態1では、設定情報格納部31に表示を許可する対象であるクレーンTの位置情報(3次元モデルデータ等)が格納される例を示した。しかし、設定情報格納部31には表示許可されない対象、例えば、現場周辺の建物などの位置情報が格納されてもよい。この場合、画像作成部32は、移動体10の位置情報と距離の検出結果とから、あるいは、画像認識の結果から、撮像データ中の表示不許可の対象が含まれる範囲を判定し、この範囲をマスク処理するように構成されてもよい。
【0056】
また、実施形態1では、表示許可の対象を示す情報として、3次元モデルデータなど対象の各部の相対位置を示す情報が採用される例を示した。しかし、表示許可の対象と、表示不許可の対象とが、色分けされている場合には、色情報が採用されてもよいし、特定の波長光の反射から識別できる場合には、その識別情報が採用されてもよく、また、温度から識別できる場合には、温度情報が採用されてもよい。
【0057】
また、実施形態1では、表示許可の対象を示す設定情報が格納される設定情報格納部31、画像作成部32、撮像データを削除するデータ処理部34、3次元画像作成用の機能モジュール82のうち、いずれかか移動体10に備わり、いずれかがコンピュータ80に備わる例を示したが、これらの各要素は、移動体10とコンピュータ80のどちらに備わっていてもよいし、コンピュータ80とは別の管理端末、サーバ装置、クレーンに備わるコンピュータ等に備わっていてもよいなど、各要素が通信等により連携して機能できれば、それらの配置は限定されない。管理端末は、現場監督用の管理携帯端末であってもよい。また、画像表示が可能な表示部が移動体に備わっていてもよい。また、本発明に係るクレーン撮影用システムは、画像を表示する構成(例えばコンピュータ80)を含まず、合成画像又は3次元画像の作成までを行う構成としてもよい。
【0058】
さらに、実施形態1では、クレーン用撮影システムをクレーンTの診断用の画像を取得する目的で使用した例を示した。しかし、本発明に係るクレーン用撮影システムは、クレーンTの動作管理、搬送中の荷の管理、荷の搬送経路の管理、クレーンT周辺の安全管理、クレーンTの運転状況の記録など、クレーンT又はクレーンT周辺の撮影画像を利用できる各種業務又は各種機能を遂行するために使用されてもよい。この場合、表示許可の対象の情報には、荷を示す情報が含まれてもよい。また、クレーンTの姿勢の情報は、逐次測定及び画像作成部32に提供され、表示不許可の範囲が除外された合成画像は、無線を介してリアルタイムにコンピュータ80等へ送られて表示出力される構成としてもよい。この場合、合成画像は、通信ネットワークを介して管理サーバへ送られ、現場とは離れた箇所で管理者が閲覧してもよいし、現場の監督者がタブレットを介して閲覧できるようにしてもよいし、運転者がキャブ内で閲覧できるようにしてもよい。
【0059】
また、実施形態1において、クレーン用撮影システムは、移動体10のベース構成(機体、プロペラ11、駆動部12、測位部13及び移動制御部14)と、クレーンTを撮影するための構成(撮影部21、距離検出部25、設定情報格納部31、画像作成部32、画像記憶部33、データ処理部34、通信部36及び統括制御部38)とを有すると説明した。しかし、クレーン用撮影システムは、移動体10のベース構成(機体、プロペラ11、駆動部12、測位部13及び移動制御部14)を有さず、汎用の移動体に、クレーンTを撮影するための構成を搭載して使用される構成としてもよい。この場合、統括制御部38が、移動体10の移動制御部14に接続され、移動制御部14へ移動指令を送ることができれば、実施形態1の動作を実現できる。また、移動体10は飛行せず、クレーンTの近傍に用意されたレールやロープを伝って移動する装置など、クレーンTの撮影すべき箇所を撮影できる位置まで移動できれば、どのような移動方法が採用された装置であってもよい。
【0060】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係るクレーン用撮影システムを示すブロック図である。実施形態2において、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図9は、実施形態2のクレーン用撮影システムによる撮影の一例を説明する図を示す。実施形態2のクレーン用撮影システムは、移動体10Aと、コンピュータ80とを備える。移動体10Aは、いわゆるドローンであり、複数のプロペラ11、複数の駆動部12、測位部13、移動制御部14、撮影部21、設定情報格納部31、画像記憶部33、通信部36及び統括制御部38Aを備える。
【0061】
統括制御部38A及び設定情報格納部31は、例えばマイクロコンピュータのCPUがプログラムを実行することで実現されるソフトウェアモジュールである。マイクロコンピュータは、CPU、ROM(Read Only Memory)、作業用のメモリ領域を提供するRAM(Random Access Memory)を備え、移動体10Aに設けられている。ROMには、マイクロコンピュータを、統括制御部38A及び設定情報格納部31として機能させるプログラムが格納されている。
【0062】
設定情報格納部31には、クレーンTの位置情報(例えば3次元モデルデータ)、クレーンTが設置される現場の敷地E1の位置情報、現場の囲いE2の位置情報などが、表示許可の対象を示す情報として格納されている。また、設定情報格納部31には、現場周辺の別の建物の位置情報などが、表示不許可の対象を示す情報として格納されていてもよい。
【0063】
統括制御部38Aには、クレーンT、クレーンTの周辺又はこれら両方のうち、撮影すべき箇所(被撮影箇所)の情報が、予め設定される。統括制御部38Aは、被撮影箇所の撮影の際、背景に表示不許可の対象が入りこまないように、被撮影箇所の撮影位置及び撮影方向を計算する。そして、統括制御部38Aは、計算された撮影位置に移動体10Aを移動させ、計算された撮影方向に撮影部21を向けて、撮影を実行させる。
【0064】
例えば、
図9に示すように、ブームBに設定された被撮影箇所P2を撮影する場合、統括制御部38Aは、背景F1~F3が空、現場の敷地E1又は囲いE2となる複数の撮影位置Q1~Q3及び撮影方向R1~R3を演算する。そして、統括制御部38Aは、これらの撮影位置Q1~Q3及び撮影方向R1~R3に撮影部21が配置されるように、移動体10Aを移動させ、撮影部21の向きを制御し、撮影部21に撮影処理を実行させる。撮影部21は、画角を絞る機能と、撮影方向を変更できる機能とを有し、統括制御部38Aが、撮影部21の撮影方向と画角とを制御してもよい。
【0065】
このような撮影処理によれば、被撮影箇所を複数方向から眺めた画像で、かつ、表示不許可の対象が入り込まない画像が得られ、これらの画像に基づきクレーンTを診断したり、診断対象の3次元画像を作成することができる。クレーンTの診断を検査員の目視により行うにはブームBを倒伏させる必要があるが、ブームBを倒伏させるスペースのない現場においても、クレーンTを撮影し、撮影画像に基づきクレーンTを診断することができる。
【0066】
撮影画像は、搬送中の荷の管理、荷の搬送経路の管理、クレーンT周辺の安全管理、クレーンTの運転状況の記録などに利用することもできる。これら場合、統括制御部38Aは、被撮影箇所の背景が現場の敷地又は囲いとなる撮影位置及び撮影方向を演算する。そして、統括制御部38Aは、演算された撮影位置及び撮影方向に撮影部21が配置されるように、移動体10を移動させ、撮影部21の向きを制御し、撮影部21に撮影処理を実行させる。そして、撮影された画像をリアルタイムで、管理室のコンピュータ、現場の監督者のタブレット、キャブ内のコンピュータなどに配信し、上記の管理又は記録を行うことができる。
【0067】
以上のように、実施形態2のクレーン用撮影システムによれば、表示を許可する対象又は表示が不許可な対象を示す情報が格納される設定情報格納部31と、これらの情報に基づき表示不許可の対象が写り込まないようにクレーンT、その周辺、又はこれら両方を撮影させる統括制御部38とを備える。したがって、撮影が望まれないものが周囲にあっても、その部分が写り込まず、必要な部分が写った撮影を行うことができる。
【0068】
なお、実施形態2においては、クレーン用撮影システムが、移動体10のベース構成と、クレーンTを撮影するための構成(撮影部21、設定情報格納部31、画像記憶部33及び統括制御部38A)とを備えると説明した。しかし、クレーン用撮影システムは、移動体10のベース構成を有さず、汎用の移動体に、クレーンTを撮影するための構成を搭載して使用される構成としてもよい。その場合、統括制御部38Aが移動体10の移動制御部14との指令及び応答を入出力可能に接続されれば、上述した動作を実現できる。
【0069】
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係るクレーン用撮影システムを示すブロック図である。実施形態3において、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施形態3のクレーン用撮影システムは、移動体10Bと、コンピュータ80とを備える。移動体10Bは、いわゆるドローンであり、プロペラ11、駆動部12、測位部13、移動制御部14、撮影部21B、画像記憶部33及び統括制御部38Bを備える。
【0070】
撮影部21Bは、可視光以外の光(赤外線等)又は電磁波を用いて対象を撮像する構成であり、可視光以外の光又は電磁波を取り込んで結像させる光学系と、結像した光又は電磁波を受けて電気信号に変換する撮像部と、を有する。撮影部21Bは、可視光以外の光又は電磁波を出力する光源を有してもよい。このような構成により、撮影部21BがクレーンTの各部に近づいたときには、クレーンT各部が映像に写る一方、遠くにある建物、道路あるいはそこに居る人の個人を特定できる情報が含まれるものなど、表示不許可とされるべき内容が映像に写らない特性が得られる。
【0071】
統括制御部38Bには、クレーンT、クレーンTの周辺又はこれら両方のうち、撮影すべき箇所(被撮影箇所)の情報が予め設定される。統括制御部38Bは、被撮影箇所の近傍へ移動体10Bを移動させ、撮影箇所に撮影部21Bが向くように移動体10を旋回させたら、撮影部21Bに撮影指令を出力して撮影を実行させる。
【0072】
以上のように、実施形態3のクレーン用撮影システムによれば、可視光以外の光又は電磁波を受けて撮影を行う撮影部21Bを備える。したがって、現場周辺に撮影が望まれないものがあっても、その部分が写り込まず、必要な部分が写った撮影を行うことができる。そして、この画像により、クレーンT各部の診断、運転の管理又は運転の記録などを遂行することができる。
【0073】
なお、実施形態3においては、クレーン用撮影システムが、移動体10のベース構成と、クレーンTを撮影するための構成(撮影部21B、画像記憶部33及び統括制御部38B)とを備えると説明した。しかし、クレーン用撮影システムは、移動体10のベース構成を有さず、汎用の移動体に、クレーンTを撮影するための構成を搭載して使用される構成としてもよい。その場合、統括制御部38Bが移動体10の移動制御部14との間で信号を入出力可能に接続されれば、上述した動作が実現される。
【0074】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、移動体は、実施形態1~3のうちの2つ又は3つが複合された構成としてもよい。また、本発明に係るクレーン用撮影システムが撮影対象とするクレーンの種類は、特に限定されるものでなく、例えばタワークレーン、ホイールクレーン、トラッククレーン、門型クレーン、ジブクレーンなどであってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、本発明に係るプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体として移動体10、10Aに搭載されるマイクロコンピュータのROMを適用した例を説明したが、これに限定されない。プログラムを記憶する媒体としては、管理端末及びサーバ装置などの他のコンピュータの記憶装置が適用されてもよいし、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体が適用されてもよい。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)が適用されてもよい。さらに、上記実施形態では、本発明に係るプログラムが、移動体10、10Aに搭載されるマイクロコンピュータにより実行されて、当該プログラムによりマイクロコンピュータが各ソフトウェアモジュールとして機能する構成を示した。しかし、本発明に係るプログラムは、クレーンに備わるコンピュータ、管理端末、サーバ装置など、移動体以外に配置されるコンピュータが実行して、当該プログラムにより当該コンピュータが各ソフトウェアモジュールとして機能してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、移動体10が所謂ドローンである例を示したが、移動体は、例えばクレーンの近傍に用意されたレールやロープを伝って移動する装置など、クレーンの撮影すべき箇所を撮影できる位置まで移動できれば、どのような移動方法が採用された装置であってもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 移動体
11 プロペラ
12 駆動部
13 測位部
14 移動制御部
21 撮影部
21B 可視光によらない撮影部
25 距離検出部
31 設定情報格納部(格納部)
32 画像作成部
33 画像記憶部
34 データ処理部
36通信部
38、38B 統括制御部
38A 統括制御部(制御部)
80 コンピュータ
81 表示部
82 機能モジュール
83 診断部
84 通信部
T クレーン
B ブーム
E、E1 敷地
E2 囲い
F1~F3 背景
P1、P2 被撮影箇所
R1~R3 撮影方向
Q1~Q3 撮影位置
W1 距離検出部の視野範囲
W2 撮影部の視野範囲