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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169588
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】デンプン汚れ固着防止剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/43 20060101AFI20241128BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20241128BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20241128BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20241128BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20241128BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20241128BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20241128BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20241128BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C11D3/43
C11D1/72
C11D1/722
C11D3/20
C11D3/30
C11D1/28
C11D1/04
C11D1/88
C11D1/75
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161917
(22)【出願日】2024-09-19
(62)【分割の表示】P 2019209339の分割
【原出願日】2019-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】國友 凜
(72)【発明者】
【氏名】小埜 真理子
(57)【要約】
【課題】乾燥などによるデンプン汚れの食器への固着を防止して、デンプン汚れが付着した食器を放置しても除去しやすくするデンプン汚れ固着防止剤、食器洗浄用前処理剤組成物、及びデンプン汚れの除去方法を提供する。
【解決手段】(a)デンプン膨潤率が150%以上300%以下である化合物、(b)分子量150以下の2価以上4価以下の多価アルコール[但し、(a)成分を除く]を有効成分として含有し、(a)成分として、(a1)炭素数2以上6以下のカルボン酸、及びその塩から選ばれる1種以上、並びに(a2)両性界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤、炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤、特定のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、及びアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上の界面活性剤を含む、デンプン汚れ固着防止剤(但し、特定の組成物1、組成物2、組成物3、組成物4、組成物5、及び組成物6を除く)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)デンプン膨潤率が150%以上300%以下である化合物[以下、(a)成分という]、(b)分子量150以下の2価以上4価以下の多価アルコール[但し、(a)成分を除く、以下、(b)成分という]を有効成分として含有し、(a)成分として、(a1)炭素数2以上6以下のカルボン酸、及びその塩から選ばれる1種以上[以下、(a1)成分という]、並びに(a2)両性界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤、炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤、下記一般式(a2-4)で表される化合物、及びアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上の界面活性剤[以下、(a2)成分という]を含む、デンプン汚れ固着防止剤(但し、以下の組成物1、組成物2、組成物3、組成物4、組成物5、及び組成物6を除く)。
10a-O-(AO)-H (a2-4)
〔式中、R10aは、炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、AOは炭素数2のアルキレンオキシ基、qは平均付加モル数であり、5以上30以下の数である。〕
組成物1:下記の(イ)および(ロ)を(イ):(ロ)=3:1~20:1の質量比で配合してなる非イオン界面活性剤(A1)と、アルカノールアミン(B1)と、酵素(C1)と、キシレンスルホン酸塩およびクメンスルホン酸塩の少なくとも一方からなる可溶化剤(D1)と、カルシウム添加剤と、水とを含有し、硬質表面用液体洗浄剤組成物全体に対し、上記非イオン界面活性剤(A1)が1~10質量%、アルカノールアミン(B1)が10~30質量%、酵素(C1)が0.1~5質量%含有され、硬質表面用液体洗浄剤組成物の25℃におけるpHが8.0~10.0の範囲に設定されていることを特徴とする硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(イ)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル。
(ロ)トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物およびグリセリンのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物の少なくとも一方。
組成物2:(A2)非イオン界面活性剤を1~15質量%、(B2)有機酸およびその水溶性塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸類を2.5~15質量%、(C2)酵素を0.5~5質量%、(D2)水溶性溶剤を10~40質量%、(E2)可溶化剤、(F2)カルシウム添加剤、及び(G2)水を含有し、組成物の25℃におけるpH(JIS-Z-8802:1984「pH測定方法」)が、6.0~8.0に設定されていることを特徴とする自動食器洗浄機用中性液体洗浄剤組成物。
組成物3:(B3)デンプン分解酵素、(C3)酵素安定化剤、(D3)可溶化剤、及び(E3)pH調整剤を含有することを特徴とする前浸漬用洗浄剤組成物。
組成物4:界面活性剤(A4)と、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄及び亜鉛から選択される少なくとも1種(B4)と、前記(B4)成分と錯体を形成するアミノカルボン酸型金属イオン封鎖剤(C4)と、ビグアニド系ポリマー(D5)とを含有する、食器洗い機用洗浄剤組成物。
組成物5:(A5)炭素数5以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を2つ有するジアルキルスルホサクシネート、(B5)下記一般式(B51)で表される非イオン界面活性剤、(C5)下記一般式(C51)で表される非イオン界面活性剤及び水を含有する、硬質表面用洗浄剤組成物。
1bO-(EO)-H (B51)
〔式中、R1bは炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、EOはエチレンオキシ基であり、nはEOの平均付加モル数を示し、0超110以下の数である。〕
1cO-[(EO)・(AO)]-H (C51)
〔式中、R1cは炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、EOはエチレンオキシ基であり、AOは炭素数3又は4のアルキレンオキシ基であり、pはEOの平均付加モル数を示し、qはAOの平均付加モル数を示し、pは4以上10以下の数であり、qは1以上10以下の数であり、EOとAOはブロック又はランダムに結合している。〕
組成物6:(A6)1質量%水溶液の曇点が20℃以下であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルもしくはポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリアルキレングリコールの混合物からなる非イオン界面活性剤を0.1~5質量%、(B6)1質量%水溶液の曇点が35℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルからなる非イオン界面活性剤を0.5~10質量%、(C6)アルカノールアミンを10~30質量%、(D6)酵素を0.1~7質量%、(E6)下記の一般式(1)を有するn-ヘキシルグリコシドを7.5~22.5質量%、(F6)カルシウム添加剤、(G6)水を含有するとともに、硬質表面用液体洗浄剤組成物の25℃におけるpHが8.0~10.0の範囲に設定されていることを特徴とする硬質表面用液体洗浄剤組成物。
13OG ・・・(1)
(ただし、Gはモノサッカリド残基であり、nは1~5である。)
【請求項2】
(a1)成分が、炭素数2以上6以下のモノカルボン酸、炭素数2以上6以下のジカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項1記載のデンプン汚れ固着防止剤。
【請求項3】
(a1)成分がリンゴ酸である、請求項1又は2記載のデンプン汚れ固着防止剤。
【請求項4】
(a1)成分の含有量と(a2)成分の含有量との質量比(a2)/(a1)が0.25以上5以下である、請求項1~3の何れか1項記載のデンプン汚れ固着防止剤。
【請求項5】
(b)成分が分子量150以下の2価以上3価以下の多価アルコールである、請求項1~4の何れか1項記載のデンプン汚れ固着防止剤。
【請求項6】
(b)成分がグリセリンである請求項1~5の何れか1項記載のデンプン汚れ固着防止剤。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項記載のデンプン汚れ固着防止剤、及び水を含有する、食器洗浄用前処理剤組成物。
【請求項8】
(b)成分の含有量が0.1質量%以上5質量%以下である、請求項7記載の食器洗浄用前処理剤組成物。
【請求項9】
請求項1~6の何れか1項記載のデンプン汚れ固着防止剤、及び水を含有する処理液を、デンプン汚れが付着した食器に接触させた後、当該食器を所定時間放置してからデンプン汚れを除去する、デンプン汚れの除去方法。
【請求項10】
前記所定時間が10分以上である、請求項9記載のデンプン汚れの除去方法。
【請求項11】
前記処理液が、前記デンプン汚れ固着防止剤の(a)成分を0.1質量%以上10質量%以下含有する、請求項9又は10記載のデンプン汚れの除去方法。
【請求項12】
前記処理液が、前記デンプン汚れ固着防止剤の(b)成分を0.1質量%以上5質量%以下含有する、請求項9~11の何れか1項記載のデンプン汚れの除去方法。
【請求項13】
前記処理液を噴霧して前記食器に接触させる、請求項9~12の何れか1項記載のデンプン汚れの除去方法。
【請求項14】
前記処理液を泡状で前記食器に接触させる、請求項9~13の何れか1項記載のデンプン汚れの除去方法。
【請求項15】
デンプン汚れの除去を、水を含有し前記処理液とは異なる液体媒体の接触により行う、請求項9~14の何れか1項に記載のデンプン汚れの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプン汚れ固着防止剤、食器洗浄用前処理剤組成物及びデンプン汚れの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家族中心の生活スタイルから個人中心の生活スタイルに変化しつつあり、家庭で家族そろって食事する機会が減少する傾向にある。このため食事毎に食器を洗浄するより、例えば一日分の汚れた食器をシンクなどに溜めておき、時間があるときに食器洗いをするなどの生活習慣が広まっている。ところがこの場合汚れが乾燥などにより強固に食器などに付着する現象が起こり、洗浄するために強い機械力を必要とするため非常に大きな労力が必要とされる。そのため、汚れが強固に付着した表面を簡単に除去できる技術が強く求められる。
【0003】
特許文献1には食器手洗い用液体洗浄剤にグリセリンなどの保湿剤を含有する技術が開示されておりアミンオキシドとの併用も例示されている。
特許文献2、特許文献3には酵素の安定化剤として多価アルコールを含有する技術が開示されており、特許文献2には乳酸などの有機酸を併用する技術も開示されている。
特許文献4には乳酸などの有機酸を含有する硬質表面洗浄剤の技術が開示されている。
特許文献5にはジカルボン酸を含有する浸漬用洗浄剤組成物の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-516905号公報
【特許文献2】特開2018-115286号公報
【特許文献3】特開2019-94420号公報
【特許文献4】特表2018-522116号公報
【特許文献5】特開2004-196901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乾燥などによるデンプン汚れの食器への固着を防止して、デンプン汚れが付着した食器を放置しても除去しやすくするデンプン汚れ固着防止剤、食器洗浄用前処理剤組成物、及びデンプン汚れの除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)デンプン膨潤率が150%以上300%以下である化合物[以下、(a)成分という]、(b)2価以上4価以下の多価アルコール[但し、(a)成分を除く、以下、(b)成分という]を有効成分として含有する、デンプン汚れ固着防止剤に関する。
【0007】
なお本発明のデンプン膨潤率は下記の方法で求めることができる。
<デンプン膨潤率>
内径4.20±0.02mm、長さ178mmのガラス製NMRチューブに馬鈴薯デンプンの含有量が10質量%である水・デンプン混合液を1ml加え、キャップ後25℃で1時間静置し、デンプン沈殿物の高さを測定し基準沈殿物高さL(mm)とする。次に、キャップを外して前記NMRチューブの内容物に、測定対象の化合物の100mMの水溶液1mlを加え、キャップをした後、2000rpmの条件で5分攪拌し、25℃で24時間静置し、デンプン沈殿物の高さを測定し、静置後の沈殿物の高さL24とする。デンプン膨潤率を下記式により求める。
デンプン膨潤率(%)=(L24/L)×100
【0008】
また、本発明は、上記本発明のデンプン汚れ固着防止剤、及び水を含有する、食器洗浄用前処理剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明のデンプン汚れ固着防止剤、及び水を含有する処理液を、デンプン汚れが付着した食器に接触させた後、当該食器を所定時間放置してからデンプン汚れを除去する、デンプン汚れの除去方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乾燥などによるデンプン汚れの食器への固着を防止して、デンプン汚れが付着した食器を放置しても除去しやすくするデンプン汚れ固着防止剤、食器洗浄用前処理剤組成物、及びデンプン汚れの除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[デンプン汚れ固着防止剤]
<(a)成分>
本発明のデンプン汚れ固着防止剤は、(a)成分として、デンプン膨潤率が150%以上300%以下である化合物を含有する。
【0012】
本発明のデンプン膨潤率は下記の方法で求めることができる。
<デンプン膨潤率>
内径4.20±0.02mm、長さ178mmのガラス製NMRチューブに馬鈴薯デンプンの含有量が10質量%である水・デンプン混合液を1ml加え、キャップ後25℃で1時間静置し、デンプン沈殿物の高さを測定し基準沈殿物高さL(mm)とする。次に、キャップを外して前記NMRチューブの内容物に、測定対象の化合物の100mMの水溶液1mlを加え、キャップをした後、2000rpmの条件で5分攪拌し、25℃で24時間静置し、デンプン沈殿物の高さを測定し、静置後の沈殿物の高さL24とする。デンプン膨潤率を下記式により求める。
デンプン膨潤率(%)=(L24/L)×100
【0013】
(a)成分は、(a1)炭素数2以上6以下のカルボン酸、及びその塩から選ばれる1種以上[以下、(a1)成分という]、並びに(a2)界面活性剤[以下、(a2)成分という]を含むことが好ましい。但し、(a1)成分、(a2)成分は、前記したデンプン膨潤率が150%以上300%以下である要件を満たしている必要がある。
【0014】
(a1)成分は、糖質の水溶性向上の観点から、炭素数2以上6以下のモノカルボン酸、炭素数2以上6以下のジカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0015】
(a1)成分のデンプン膨潤率は、デンプンの固着防止による糖質の水溶性向上の観点から、好ましくは175%以上、より好ましくは190%以上、そして、好ましくは275%以下、より好ましくは250%以下、更に好ましくは230%以下である。
【0016】
(a1)成分は、具体的には、乳酸(216%)、リンゴ酸(214%)、フマル酸(230%)、コハク酸(190%)、グリコール酸(205%)、プロピオン酸(206%)、及びクエン酸(226%)から選ばれる1種以上が挙げられる。( )内の数値はデンプン膨潤率を示す。
【0017】
(a1)成分は、糖質の水溶性向上の観点から、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グリコール酸、プロピオン酸、及びクエン酸から選ばれる1種以上が好ましく、リンゴ酸、フマル酸及びコハク酸から選ばれる1種以上がより好ましく、リンゴ酸がより更に好ましい。
【0018】
(a2)成分は、デンプン汚れ固着防止剤の浸透性向上の観点から、両性界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤、及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が好ましい。
【0019】
(a2)成分のデンプン膨潤率は、デンプン汚れ固着防止剤の浸透性向上の観点から、好ましくは175%以上、より好ましくは200%以上、そして、好ましくは275%以下、より好ましくは250%以下である。
【0020】
(a2)成分の両性界面活性剤としては、スルホベタイン及びカルボベタインから選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。
【0021】
スルホベタインとしては、アルキル基の炭素数が好ましくは10以上、好ましくは18以下、より好ましくは14以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルキル基の炭素数が好ましくは10以上、好ましくは18以下、より好ましくは14以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が好ましくは10以上、好ましくは18以下、より好ましくは14以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が好ましくは10以上、好ましくは18以下、より好ましくは14以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが挙げられる。
【0022】
カルボベタインとしては、アルキル基の炭素数が好ましくは10以上、好ましくは18以下、より好ましくは14以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインや下記一般式(a2-1)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
〔式中、R1aは炭素数7以上21以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2aはプロピレン基を示し、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。〕
【0025】
一般式(a2-1)中、R1aは、好ましくは9以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは15以下、より好ましくは13以下のアルキル基又はアルケニル基であり、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基が好ましい。
一般式(a2-1)中、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、好ましくはメチル基である。
【0026】
(a2)成分のアミンオキシド型界面活性剤としては、下記一般式(a2-2)の化合物が好適である。
【0027】
【化2】
【0028】
〔式中、R5aは炭素数8以上22以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R6a及びR7aは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。m及びpは、m=0かつp=0又はm=1かつp=1を示す。〕
【0029】
上記一般式(a2-2)において、R5aは、好ましくは炭素数10以上18以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数12以上16以下のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数12以上14以下のアルキル基であり、より更に好ましくは炭素数12のアルキル基である。R6a、R7aは、好ましくは炭素数1のメチル基である。
【0030】
(a2)成分の非イオン界面活性剤としては、炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、アルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
【0031】
炭素数8以上16以下の炭化水素基を有するグリコシド型界面活性剤としては、下記一般式(a2-3)で表される化合物が好適である。
8a(OR9a (a2-3)
〔式中、R8aは炭素数8以上16以下の炭化水素基を示し、R9aは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Gは炭素数5又は6の糖に由来する残基を示し、xはその平均値が0以上5以下となる数を示し、yはその平均値が1以上3以下となる数を示す。〕
【0032】
上記一般式(a2-3)において、R8aは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、16以下、好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。また、R9aで示されるアルキレン基としては、炭素数2のものが好ましい。また、Gで示される炭素数5又は6の糖に由来する残基は、使用される単糖類もしくは2糖類以上の糖によってその構造が決定される。Gとしては、単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられる。これらのうち好ましい原料は、洗浄力の点、及びこれらの入手性及び低コストの点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。
【0033】
また、上記一般式(a2-3)中のxは、OR9aの平均付加モル数であり、好ましくは0以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下であり、また0であってもよい。
【0034】
また上記一般式(a2-3)中のyの平均値が1より大きい場合、つまり2糖類以上の糖鎖を親水性基とする場合、糖鎖の結合様式が1-2、1-3、1-4、1-6結合又はα-、β-ピラノシド結合もしくはフラノシド結合及びこれらの混合された結合様式である任意の混合物を含むことが可能である。
【0035】
上記一般式(a2-3)中のyは、その平均値が、1以上、そして、3以下、好ましくは2以下である。このyの値(糖の平均縮合度)は1H-NMRにより測定する。具体的な測定方法としては、特開平8-53696号公報第6頁第10欄26行目~7頁第11欄15行目を参照する。
【0036】
ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルとしては、下記一般式(a2-4)で表される化合物が好適である。
10a-O-(AO)-H (a2-4)
〔式中、R10aは、炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、AOは炭素数2又は3のアルキレンオキシ基、qは平均付加モル数であり、1以上30以下の数である。〕
【0037】
一般式(a2-4)中、R10aの炭素数は8以上18以下が好ましい。また、R10aはアルキル基又はアルケニル基であり、アルキル基が好ましい。
AOはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。
qは1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、より好ましくは22以下である。
【0038】
アルキルグリセリルエーテルは、炭素数8以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下のアルキル基を1つ有するアルキルグリセリルエーテルが好ましい。アルキルグリセリルエーテルのアルキル基は、炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基が好適であり、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、イソノニルグリセリルエーテル、又は2-プロピルヘプチルグリセリルエーテルが好ましい。
【0039】
本発明のデンプン汚れ固着防止剤は、(a1)成分と(a2)成分を含有することが好ましい。
本発明のデンプン汚れ固着防止剤において、(a1)成分の含有量と(a2)成分の含有量との質量比(a2)/(a1)は、デンプン易洗浄の観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0040】
<(b)成分>
本発明のデンプン汚れ固着防止剤は、(b)成分として、2価以上4価以下の多価アルコール(但し、(a)成分を除く)を含有する。
【0041】
(b)成分の分子量は、糖質の凝集抑制の観点から、好ましくは50以上、より好ましくは75以上、そして、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である。
(b)成分は、糖質の凝集抑制の観点から、2価以上3価以下の多価アルコールが好ましい。
【0042】
(b)成分は、具体的には、エチレングリコール(2価、分子量62)、プロピレングリコール(2価、分子量76)、ブチレングリコール(2価、分子量90)、グリセリン(3価、分子量92)、及びエリトリトール(4価、分子量122)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0043】
(b)成分は、糖質の凝集抑制の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、及びエリトリトールから選ばれる1種以上が好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0044】
本発明の食器用デンプン汚れ固着防止剤において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、デンプン易洗浄の観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.33以上、更に好ましくは0.5以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0045】
本発明のデンプン汚れ固着防止剤は、液体又は固体(粉末)であってよい。本発明のデンプン汚れ固着防止剤が液体である場合、水を含有してもよい。
本発明のデンプン汚れ固着防止剤は、食器用として好適に用いることができる。
【0046】
本発明者らはデンプンを含有する汚れが時間とともに食器などの表面に固着する原因を追究した結果、乾燥による糖質の凝集が原因であることを解明した。そして、その凝集を防止するためにはただ単に乾燥を遅らせるだけでは難しく、乾燥によって形成される糖質間の水素結合を抑制し、さらに乾燥しても水を導入するだけで簡単に水和しやすくすることが必要であることを見出した。
(a)成分は、糖質の水和を助ける成分であり、特に(a1)成分は炭素数2以上6以下の比較的低分子量のカルボン酸が、糖質の水和を促進することで、糖質が水に溶解しやすくなる。さらに(a2)成分は糖質への水や基剤の侵入を促進する働きを示すものと推察する。
さらに(b)成分は、糖質の乾燥により形成される水素結合の形成を抑制することに作用し、特に分子量の比較的小さい多価アルコールは糖質のネットワークへの浸透力があるため、水素結合による凝集を抑制することを可能にするものと推察する。
本発明では(a)成分と(b)成分を併用することで相乗的に糖質の凝集を抑制することができ、特に(a1)成分、(a2)成分、(b)成分の三成分を併用することで高い効果を得ることができるものと推察する。
【0047】
[食器洗浄用前処理剤組成物]
本発明のデンプン汚れ固着防止剤は、デンプンを含む汚れが付着した食器を所定時間放置後、洗浄する方法において、放置する前にデンプンを含む汚れに予め接触させる方法に供される食器洗浄用前処理剤組成物に応用することができる。
すなわち、本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、本発明のデンプン汚れ固着防止剤、及び水を含有する。また本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、(a)成分、(b)成分、及び水を含有する。
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物における(a)成分、(b)成分は、本発明のデンプン汚れ固着防止剤で記載したものと同じであり、好ましい態様も同じである。
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物において、本発明のデンプン汚れ固着防止剤で記載した態様を適宜適用することができる。
【0048】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、(a)成分を、糖質の水溶性向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.75質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0049】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、(a1)成分と(a2)成分を含有することが好ましい。
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物において、(a1)成分の含有量と(a2)成分の含有量との質量比(a2)/(a1)は、デンプン汚れ固着防止効果を高める観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0050】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、(b)成分を、糖質の凝集抑制の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.75質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0051】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、デンプン汚れ固着防止効果を高める観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.33以上、更に好ましくは0.5以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0052】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物では、デンプン汚れ固着防止効果を高める観点から、デンプン膨潤率が150%未満の界面活性剤[以下、(a2’)成分という]を本願発明の効果を妨げない程度に含有することができる。具体的には陰イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0053】
(a2’)成分の陰イオン界面活性剤としては、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤、及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0054】
アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。具体的には、炭素数6以上、好ましくは8以上、そして、18以下、好ましくは15以下のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0055】
硫酸エステル型界面活性剤としては、炭素数8以上20以下の炭化水素基と、硫酸エステル基とを有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。炭化水素基は、洗浄力の観点から、炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。炭化水素基は、アルキル基が好ましい。
【0056】
硫酸エステル型界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0057】
アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩が好適である。
【0058】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有し、炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基の平均付加モル数が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは6以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1.5以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。オキシアルキレン基は炭素数2が好ましい。
【0059】
アルカンスルホン酸型界面活性剤としては、アルカン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下のアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
【0060】
オレフィンスルホン酸型界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩は、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。また内部オレフィンスルホン酸塩は、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、そして、24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
【0061】
スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤としては炭素数5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは10以下の脂肪アルコールとスルホコハク酸とのモノエステル及び/又はジエステル、好ましくはジエステルが好ましい。また、脂肪アルコールは分岐アルコールが洗浄力の点から好適である。
【0062】
スルホ脂肪酸エステル型界面活性剤としては、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下のα-スルホ脂肪酸塩、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下であり、エステル部分の炭素数が1以上5以下であるα-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩が挙げられる。
【0063】
(a2‘)成分としては、アルキル基の炭素数が8以上18以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が8以上18以下のアルキル硫酸エステル塩、及び炭素数5以上18以下の脂肪アルコールとスルホコハク酸とのモノ又はジエステルの塩から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0064】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物が(a2’)成分を含有する場合、本発明の効果を損なわない程度に含有することができ、(a2’)成分の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0065】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物において、(a2’)成分を含有する場合、(a1)成分と(a2)成分の合計含有量と、(a2’)成分の含有量との質量比[(a1)+(a2)]/(a2’)は、デンプン易洗浄性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、そして、10以下、好ましくは6以下である。
【0066】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物において、(a2)成分の含有量と、(a2)成分と(a2’)成分の合計含有量との質量比(a2)/[(a2)+(a2’)]は、デンプン易洗浄性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは0.9以上、そして1.0以下であり、1.0であってもよい。
【0067】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物において、(a1)成分と(a2)成分の合計含有量と、(a1)成分と(a2)成分と(a2’)成分の合計含有量との質量比[(a1)+(a2)]/[(a1)+(a2)+(a2’)]は、デンプン易洗浄性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは0.9以上、そして、1.0以下であり、1.0であってもよい。
【0068】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、デンプン易洗浄の観点から、さらに(c)成分として酵素を含有することが好ましい。
(c)成分としては、リパーゼ、アミラーゼ、及びプロテアーゼから選ばれる1種以上の酵素が挙げられる。
【0069】
リパーゼとしては、E.C.3.1.1.3のトリアシルグリセロールリパーゼ、E.C.3.1.1.13のコレステロールエステラーゼ、E.C.3.1.23のモノアシルグリセロールリパーゼ、E.C.3.1.1.34のリポプロテインリパーゼが好ましい。リパーゼの由来は限定されないが、動物由来、植物由来、又は微生物由来のリパーゼが挙げられる。微生物由来リパーゼとしては、リゾプス(Rizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のものが挙げられる。
【0070】
(c)成分のリパーゼは、リパーゼA「アマノ」6、リパーゼAY「アマノ」30SD、リパーゼGS「アマノ」250G、リパーゼR「アマノ」、リパーゼDF「アマノ」15、リパーゼMER「アマノ」(以上、天野エンザイム(株)製)、オリパーゼ(長瀬産業(株))、リパーゼMY、リパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼPLC、リパーゼQLM、リパーゼQLC、ホスホリパーゼD(以上、明糖産業(株)製)、リポプロテインリパーゼ(オリエンタル酵母(株)製)、リパーゼ(東洋醸造(株)製)、Lipex、Lipolase、リパーゼSP-225(ノボザイムズ社製)、リパーゼ(ギスト社製)、リパーゼA、リパーゼB(以上、サッポロビール(株)製)などの市販品を用いることができる。
本発明では、Lipex、Lipolase(何れもノボザイムズ社製)が好適である。
【0071】
プロテアーゼとしては、中性又はアルカリ性の水溶液中で作用できるプロテアーゼが挙げられる。好ましいプロテアーゼの具体例としては、国際公開第99/018218号に記載されているアルカリプロテアーゼであって、好ましくは配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列の70%以上が保存されているもの、特開平5-25492に記載されているアルカリプロテアーゼであって、好ましくはアルカリプロテアーゼK-16又はアルカリプロテアーゼK-14等が挙げられる。その他に、ノボザイムズ社製のサビナーゼ(登録商標)、カンナーゼ(登録商標)、エバラーゼ(登録商標)、アルカラーゼ(登録商標)、ポラーザイム(登録商標)、エスペラーゼ(登録商標)の商品名で販売されているバチルス属ズブチリシン類が生産するプロテアーゼ、デュポン社製のFN2(登録商標)、FN3(登録商標)及びFN4(登録商標)、プラフェクト(登録商標)、プラフェクトプライム(登録商標)の商品名で供給されるプロテアーゼ類又はその変異型等が挙げられる。これらの中でも、国際公開第99/018218号に記載されている配列番号1、又は2で示されるアミノ酸配列の80%以上が保存されている酵素、ノボザイムズ社製のサビナーゼ、エバラーゼ、アルカラーゼ、プログレス、デュポン社製のプラフェクト、プラフェクトプライムがより好ましい。
【0072】
アミラーゼとしては、バチルス ズブチリスマーバーグ(Bacillus subtilis Marburg)、バチルスズブチリスナットウ(Bacillus subtilis natto)、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス リケニフォルミス(Bacilluslicheniformis)、バチルスセレウス(Bacillus cereus)、バチルス マセランス(Bacillusmacerans)、シュードモナスシュツッツェリ(Pseudomonasstutzeri)、クレブシェラ アエリゲネス(Klebusiella aerogenes)等の細菌、ストレプトマイセスグリセウス(Streptomycesgriseus)等の放線菌、アスペルギウス オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルスニガー(Aspergillusniger)等のカビ類、イネ科及びマメ科植物の種子、ヒト及びブタ等の動物の消化腺等多くの生物から得られているものを使用することができる。本発明に用いるアミラーゼは、前記微生物又はそれらの変異株、又はこれらの酵素若しくはその変異体をコードするDNA配列を有する組換えベクターで形質転換された宿主細胞等を、同化性の炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養し、一般の酵素の採取及び精製方法に準じて得ることができる。このようにして得られる酵素液はそのまま用いることもできるが、更に公知の方法により精製、結晶化、粉末製剤化又は液体製剤化したものを用いることができる。本発明に用いるアミラーゼは、α-アミラーゼが好ましい。使用できる市販のアミラーゼとしては、商標名ラピダーゼ(ギストブロカーズ社製)、商標名ターマミル、デュラミル及びステインザイム(ノボザイムズジャパン(株)製)、Amplify(ノボザイムズ社製)、商標名プラスターST及びプラスターOxAm(ジェネンコア・インターナショナル社製)を挙げることができる。
【0073】
(c)成分は、デンプン易洗浄の観点から、アミラーゼが好ましい。本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、(c)成分としてアミラーゼを含有することが好ましい。
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、(c)成分を、酵素たんぱく質として、好ましくは0.00001質量%以上1質量%以下含有する。組成物中の(c)成分の含有量は、酵素たんぱく質として、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上がデンプン易洗浄の観点から、好ましく、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下が経済性の点から好ましい。なお、(c)成分の酵素たんぱく質は、バイオラッド社製のプロテインアッセイキットII(カタログ番号500-0002)を用い、標準アッセイ法に従って、キットに添付されたウシ血清アルブミンを標準たんぱく質として定量することができる。
【0074】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、水を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは97質量%以下含有する。
【0075】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物において、25℃におけるpHは、手へのマイルド性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
【0076】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、溶剤、ハイドロトロープ剤、分散剤、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、抑泡剤、漂白剤、漂白活性化剤などの他の成分(ただし、(a)~(c)成分に該当しないもの)を含有することができる。
【0077】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、塗布用の食器洗浄用前処理剤組成物であることが好ましい。
また、本発明の食器洗浄用前処理剤組成物は、噴霧用の食器洗浄用前処理剤組成物であることが好ましい。
【0078】
本発明の食器洗浄用前処理剤組成物を対象物に処理し、所定時間放置した後は、水で汚れを洗い流す方法でデンプンを含有する汚れを除去してもよく、通常の食器洗浄用洗浄剤をもちいて洗浄する方法でデンプンを含有する汚れを除去することもできる。
【0079】
[デンプン汚れの除去方法]
本発明は、本発明のデンプン汚れ固着防止剤、及び水を含有する処理液(以下、本発明の処理液という)を、デンプン汚れが付着した食器に接触させた後、当該食器を所定時間放置してからデンプン汚れを除去する、デンプン汚れの除去方法である。
本発明の処理液は、本発明のデンプン汚れ固着防止剤、及び水を含有する。本発明の処理液は、本発明の食器洗浄用前処理剤組成物であってよい。すなわち、本発明の処理液は、(a)成分、(b)成分、及び水を含有する。
本発明の処理液における(a)成分、(b)成分は、本発明のデンプン汚れ固着防止剤で記載したものと同じであり、好ましい態様も同じである。
本発明のデンプン汚れの除去方法において、本発明のデンプン汚れ固着防止剤、及び食器洗浄用前処理剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
【0080】
本発明の処理液は、前記デンプン汚れ固着防止剤の(a)成分を、糖質の水溶性向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.75質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0081】
本発明の処理液は、(a1)成分と(a2)成分を含有することが好ましい。
本発明の処理液において、(a1)成分の含有量と(a2)成分の含有量との質量比(a2)/(a1)は、デンプン易洗浄の観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0082】
本発明の処理液は、前記食器用デンプン汚れ固着防止剤の(b)成分を、糖質の凝集抑制の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.75質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0083】
本発明の処理液において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、デンプン易洗浄の観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.33以上、更に好ましくは0.5以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0084】
本発明の処理液は、デンプン易洗浄の観点から、(a2’)成分を本願発明の効果を妨げない程度に含有することができる。(a2’)成分は、本発明の食器洗浄用前処理剤組成物で記載したものと同じであり、好ましい態様も同じである。
【0085】
本発明の処理液が(a2’)成分を含有する場合、本発明の効果を損なわない程度に含有することができ、(a2’)成分の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0086】
本発明の処理液において、(a2’)成分を含有する場合、(a1)成分と(a2)成分の合計含有量と、(a2’)成分の含有量との質量比[(a1)+(a2)]/(a2’)が、デンプン易洗浄性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、そして、10以下、好ましくは6以下である。
【0087】
本発明の処理液において、(a2)成分の含有量と、(a2)成分と(a2’)成分の合計含有量との質量比(a2)/[(a2)+(a2’)]は、デンプン易洗浄性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは0.9以上、そして、1.0以下であり、1.0であってもよい。
【0088】
本発明の処理液において、(a1)成分と(a2)成分の合計含有量と、(a1)成分と(a2)成分と(a2’)成分の合計含有量との質量比[(a1)+(a2)]/[(a1)+(a2)+(a2’)]は、デンプン易洗浄性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは0.9以上、そして、1.0以下であり、1.0であってもよい。
【0089】
本発明の処理液は、デンプン易洗浄の観点からさらに(c)成分として酵素を含有することが好ましい。(c)成分は、本発明の食器洗浄用前処理剤組成物で記載したものと同じであり、好ましい態様も同じである。
【0090】
本発明の処理液は、(c)成分を、酵素たんぱく質として、0.00001質量%以上1質量%以下含有する。組成物中の(c)成分の含有量は、酵素たんぱく質として、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、がデンプン易洗浄の観点から好ましく、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下が経済性の点から好ましい。
【0091】
本発明の処理液は、水を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは97質量%以下含有する。
【0092】
本発明の処理液において、pHは、手へのマイルド性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。pHは25℃の時のものであってよい。
【0093】
本発明の処理液を、デンプン汚れが付着した食器に接触後、汚れの易洗浄化の観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは30分超、更に好ましくは60分超、より更に好ましくは90分超、より更に好ましくは120分超、そして、480分以下、より好ましくは360分以下、更に好ましくは120分以下、放置する。この場合、最初に前記処理液が食器に接触した時点を放置の開始としてよい。
なお、放置する際の温度は、室温でよく、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
【0094】
本発明のデンプン汚れの除去方法では、デンプン汚れが付着した食器を、前記処理液に浸漬させて接触させてもよいが、効率的に洗浄力を高める観点から、前記処理液を噴霧又は塗布して、前記食器に接触させる方法が好ましい。
本発明の処理液を、デンプン汚れが付着した食器に接触させる方法は、噴霧又は塗布が好ましく、液滴状にして噴霧する又は泡状にして塗布する方法がより好ましい。具体的には、スプレー手段を用いる、すなわち本発明の処理液を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる食器洗浄用前処理剤物品を用いるのが好ましい。本発明は、本発明の処理液を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、スプレー容器入り食器洗浄用前処理剤物品を提供する。
【0095】
前記スプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレーが好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0096】
前記スプレー容器入り食器洗浄用前処理剤物品において、前記処理液を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記処理液を入れるスプレー容器の噴射ノズルの噴口径は、スプレーのし易さや、噴射された液滴が荒くなく、直線状にスプレーされず、スプレーできる面積が極端に狭くならないために、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下の範囲である。
液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記スプレー容器入り食器洗浄用前処理剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.3mL以上、そして、好ましくは5mL以下、より好ましくは2mL以下の組成物を噴霧する。
【0097】
また前記スプレー容器入り食器洗浄用前処理剤物品において、泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、好ましくはスピンエレメント及び直径4~8mmの円形状の空間部分に棒状の突起を数個設置された液体通過板を有するものが好適である。ここでスピンエレメントとは、スピンエレメントを通じて液状物の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出する機構であり、その詳細な構造としては特開平8-332422号公報や特開平8-108102号公報の図4(b)、特開2002-68265号公報の図1などを参考にすることができる。
【0098】
泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記スプレー容器入り食器洗浄用前処理剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは1mL以上、そして、好ましくは30mL以下、より好ましくは15mL以下、更に好ましくは5mL以下の前記処理液を噴霧する。
【0099】
泡形成機構のもう一つの部材である液体通過板は、直径5~7mmの円形状の空間部分に棒状の突起を好ましくは3~8個設置されたものであり、通過する板を平面で見た場合に、好ましくは幅0.8~1.2mm、長さ2~4mmの長方形状の棒状の突起が好適である。また、棒状の突起を除いた空間部分に対する棒状の突起の占める面積は、好ましくは30面積%以上、より好ましくは40面積%以上、そして、好ましくは90面積%以下、より好ましくは80面積%以下、更に好ましくは70面積%以下であり、このような液体通過板を設置することで、垂直表面への泡の付着滞留性が良好になる。
【0100】
前記スプレー容器入り食器洗浄用前処理剤物品の容器は、一般に使用されている容器を用いることができる。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートを原料として得られるものであり、ブロー成形などによって製造することができる。容器の肉厚は底面と側面と異なってもよく、0.01~2mmが好ましく、容器の容量は100~1000mLが好ましい。容器に充填される本発明の処理液の量は、取り扱い上、200~500mLが望ましい。また液の充填は、常識的な空隙を残して行われる。
【0101】
本発明の処理液を、デンプン汚れが付着した食器に接触させた後は、所定時間放置してからデンプン汚れを除去すればよい。デンプン汚れの除去は、水を含有し前記処理液とは異なる液体媒体[以下、洗浄液という]の接触により行うのが好ましい。またデンプン汚れ除去には、必要に応じてスポンジ等の可撓性吸収体や布巾等の布製品を使用して、前記食器を擦るなどの操作を行い、デンプン汚れを除去するのが好ましい。
【0102】
洗浄液としては水であってもよいが、界面活性剤を含有する水溶液が好適である。界面活性剤としては上述の(a2’)成分である陰イオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤としては、具体的には、アルキル基の炭素数が8以上18以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が8以上18以下のアルキル硫酸エステル塩、及び炭素数5以上18以下の脂肪アルコールとスルホコハク酸とのモノ又はジエステルの塩から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤が好ましい。
本発明では(a2’)成分を、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは9質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは14質量%以下含有する洗浄液でデンプン汚れが付着した食器から汚れを除去することが好ましい。
本発明の洗浄液は、(a2’)成分に加えて、上述の(a2)成分である両性界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤、及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することがデンプンを含有する汚れの除去効果の点から好ましい。本発明は、(a2)成分を、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する洗浄液でデンプン汚れが付着した食器から汚れを除去することが好ましい。
また本発明の洗浄液において、デンプンを含有する汚れの除去効果の点から(a2’)成分の含有量と(a2)成分の含有量との質量比(a2’)/(a2)は、好ましくは0.9以上2.0以下である。
デンプン汚れが付着した食器に本発明の食器洗浄用前処理剤を接触させて所定時間放置した後、前記した界面活性剤を含有する洗浄液で処理することにより、労力をかけずとも、容易にデンプン汚れを除去することが可能となり、洗浄液で処理後は水で界面活性剤を濯ぎ除去するだけで高い洗浄効果を有することができる。
【実施例0103】
下記配合成分を用いて、表1~4に示す食器洗浄用前処理剤組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。結果を表1~4に示す。表1~4の食器洗浄用前処理剤組成物は、常法により調製した。即ち、適量のイオン交換水(60℃)に(a)成分及び/又は(a’)成分、(b)成分又は(b’)成分、並びに(c)成分を添加し、60℃で溶解した後、水酸化ナトリウム及び/又は塩酸を添加してpH(25℃)を表1~4に示す値に調整した後、室温(25℃)に冷却した。なお、表1~4中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
【0104】
<配合成分>
(a)成分
(a1)成分
・乳酸:富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率216%
・リンゴ酸:花王(株)製、デンプン膨潤率214%
・フマル酸:富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率230%
・コハク酸:富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率190%
・グリコール酸:富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率205%
・プロピオン酸:富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率206%
・クエン酸:花王(株)製、デンプン膨潤率226%
(a2)成分
・アルキルグルコシド:一般式(a2-3)中、R8aが炭素数8~16のアルキル基、Gがグルコースに由来する残基、xが0~5、yが1~3の化合物、プランタケア2000UP、BASF SE社製、デンプン膨潤率240%
・ラウリルヒドロキシスルホベタイン:N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アンヒトール20HD、花王(株)製、デンプン膨潤率210%
・C12カルボベタイン:一般式(a2-1)中、R1aが炭素数11のアルキル基を示し、R2aがプロピレン基、R3a及びR4aがメチル基の化合物、アンヒトール20AB、花王(株)製、デンプン膨潤率205%
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル:R10aが、炭素数8~18のアルキル基、AOがエチレンオキシ基、qが21の化合物、エマルゲン121、花王(株)製、デンプン膨潤率240%
・C12アミンオキシド:一般式(a2-2)中、R5aが炭素数12のアルキル基、R6a及びR7aメチル基、m=0、p=0の化合物、アンヒトール20N、花王(株)製、デンプン膨潤率220%
・GE-EH:2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、花王(株)製、デンプン膨潤率240%
【0105】
(a’)成分((a)成分の比較成分)
(a1’)成分((a1)成分の比較成分)
・BDG-NS:ジエチレングリコールモノブチルエーテル、日本乳化剤(株)製、デンプン膨潤率100%
・ジメチルスルホキシド:富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率110%
・尿素:富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率116%
(a2’)成分((a2)成分の比較成分)
・AES:ポリオキシエチレン(平均付加モル数2.0)アルキル(炭素数12)エーテル硫酸エステルナトリウム、エマール227―pH11、花王(株)製、デンプン膨潤率100%
・SDS:ドデシル硫酸ナトリウム、富士フイルム和光純薬(株)製、デンプン膨潤率85%
・LAS:ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製、デンプン膨潤率90%
【0106】
(a)成分及び(a’)成分のデンプン膨潤率は以下の方法で測定した。
<デンプン膨潤率>
内径4.20±0.02mm、長さ178mmのガラス製NMRチューブに馬鈴薯デン
プンの含有量が10質量%である水混合液を1ml加え、キャップ後25℃で1時間静置し、デンプン沈殿物の高さを測定し基準沈殿物高さL(mm)を測定した。次に、キャップを外して前記NMRチューブの内容物に、測定対象の化合物の100mMの水溶液1mlを加え、キャップをした後、2000rpmの条件で5分攪拌(攪拌機;IKA MS 3 Basic Vortexer、Overstock labequipment社製)、25℃で24時間静置し、デンプン沈殿物の高さL24を測定した。デンプン膨潤率を下記式により求めた。
デンプン膨潤率(%)=(L24/L)×100
【0107】
(b)成分
・エチレングリコール:2価のアルコール、分子量62、富士フイルム和光純薬(株)製
・プロピレングリコール:2価のアルコール、分子量76、花王(株)製
・ブチレングリコール:2価のアルコール、分子量90、富士フイルム和光純薬(株)製
・グリセリン:3価のアルコール、分子量92、花王(株)製
・エリトリトール:4価のアルコール、分子量122、東京化成工業(株)製
【0108】
(b’)成分((b)成分の比較成分)
・デキストラン:多価アルコール、東京化成工業(株)製
・ソルビトール:6価のアルコール、富士フイルム和光純薬(株)製
・グルコース:5価のアルコール、富士フイルム和光純薬(株)製
・ポリビニルアルコール:多価アルコール、富士フイルム和光純薬(株)製
【0109】
(c)成分
・アミラーゼ:Amplify Plime100L、Novozymes社製
【0110】
<洗浄力評価1>
カレー(ボンカレー、大塚食品(株)製)、米飯、卵を1:1:1の質量比で混合したものを作製し、モデル複合汚れとした。このモデル複合汚れと調製した食器洗浄用前処理剤組成物とを質量比2:1で混合し、混合液を調製した。25mm(横)×75mm(縦)×1mm(厚み)のガラス試験片の質量を4桁天秤で測定した(x)。前記ガラス試験片の片面に、調製した混合液を、0.3gとなるように均一に塗布したものを作成し、汚れピースとした。同汚れピースの質量を4桁天秤で測定した(y)。この汚れピースを塗布から240分間25℃で放置したのちに、イオン交換水で10秒間すすいだ。すすぎ終了後、汚れピースを乾燥させた後、4桁天秤で質量を測定した(z)。以下の式で洗浄率を求めた。結果を表1~4に示す。
洗浄率(%)={(y)-(z)}/{(y)-(x)}×100
洗浄力評価1において、洗浄率が高いほどすすぎによるデンプンの除去が容易であり、デンプンの固着も防止されていると判断できる。
【0111】
<洗浄力評価2>
カレー(ボンカレー、大塚食品(株)製)、米飯、卵を1:1:1の質量比で混合したモデル複合汚れ1gを白色陶器皿(直径23.5cm 、カタログナンバー:618-3-609、玉渕9吋リムミート皿、食器カタログ器蔵記載)に塗り広げたモデル汚染食器を作成した。
表1の各実施例組成物をトリガー式スプレー容器(マジックリンハンディスプレー、花王(株)製)に充填し、水平に置かれたモデル汚染食器5枚に1枚当たり3回均一にモデル複合汚れに付着するようにスプレーし、240分間25℃で放置した。
その後、下記洗浄液Aを1g及び25℃に温調した水道水30gを染み込ませた市販のスポンジ(商品名:キクロンA、キクロン株式会社)を手で5回揉むことで泡を立てた。このスポンジを用いて、熟練したパネラーにより放置後のモデル汚染食器を一定の手の速度で擦りながら、1枚ずつ、こすり洗いを行い汚れの落ちやすさを評価した。
また、表3の各比較例組成物を用いて上記と同様の評価を行った。
その結果、表1の各実施例組成物を用いた場合は、5枚のモデル汚染食器すべてにおいて1枚当たり、こすり洗いを5回以下行うことで汚れが完全に除去できたが、表3の各比較例組成物を用いた場合は、汚れを完全に除去するためには5枚のモデル汚染食器すべてにおいて、10回以上こすり洗いをする必要があった。
【0112】
洗浄液Aの配合組成
・ポリオキシエチレン(平均付加モル数2.0モル)アルキル(炭素数12)硫酸エステル塩(10質量%)
・N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピルプロピル)アンモニウムスルホベタイン(4.5質量%)、
・ラウリルジメチルアミンオキサイド(4.5質量%)、
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(6.0質量%)
・水 (残部:合計は100質量%)
・20℃におけるpH7.8
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】