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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169596
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】テラヘルツ強誘電共振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/17 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H01L27/04 C
H01L27/04 F
H01L29/06 601S
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024162265
(22)【出願日】2024-09-19
(62)【分割の表示】P 2022029350の分割
【原出願日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】21160551
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ルキヤンチュク・イーゴリ
(72)【発明者】
【氏名】ラスムナジャ・アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノコール・ヴァレリー
(57)【要約】
【課題】電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波のテラヘルツスペクトル範囲における振動を共振器と結合するための改善された方法の提供。
【解決手段】装置が有するヘテロ構造は、複数の誘電体層のうちの誘電体層と複数の強誘電体層のうちの強誘電体層との交互の積層シーケンスを備え、複数の強誘電体層はそれぞれ、分極パターンを各々が形成する複数の強誘電分極ドメインを含み、分極パターンは、テラヘルツ周波数範囲内の共振周波数で、全体的な分極の振動または局所的な分極の振動に関連する振動を実施するように適合されており、本方法は、分極パターンの振動と、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の振動とを装置によって機能的に結合することを含み、装置は、複数の誘電体層のうちの誘電体層または強誘電体層の一方である中間最上層と、他方である中間最下層との間に配置された少なくとも1つの中間電極をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ構造(200、210)を有する装置(100)を、電気回路(800、900、920、1000)の電子またはテラヘルツ電磁波(602、702、1002、1202)のための共振器として利用する方法であって、
前記ヘテロ構造(200、210)は、複数の誘電体層(104)および複数の強誘電体層(106)と、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)と前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)との交互の積層シーケンスとを備え、
前記複数の強誘電体層(106)はそれぞれ、分極パターンを各々が形成する複数の強誘電分極ドメイン(108、110)を含み、
前記分極パターンは、テラヘルツ周波数範囲内の共振周波数で、全体的な分極の振動または局所的な分極の振動に関連する振動を実施するように適合されており、
前記方法は、
前記分極パターンの振動と、前記電気回路(800、900、920、1000)の前記電子または前記テラヘルツ電磁波(602、702、1002、1202)の振動とを前記装置(100)によって機能的に結合することを含み、
前記装置(100)は、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)、または、前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)の一方である中間最上層と、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)、または、前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)の他方である中間最下層との間に配置された少なくとも1つの中間電極をさらに備える、方法。
【請求項2】
前記テラヘルツ周波数範囲内の共振周波数を制御するために静電場を前記ヘテロ構造(200、210)に加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装置(100)は、追加の集積素子(802,902,922)をさらに備え、
前記ヘテロ構造(200,210)は、共通集積回路(800,900,920,1000)の第1の構成要素であり、
前記追加の集積素子(802,902,922)は、前記共通集積回路(800,900,920,1000)の第2の構成要素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記追加の集積素子(802)は、ダイオードまたはトランジスタである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記追加の集積素子(802)は、小型半導体素子の一部であり、
前記小型半導体素子は、前記共振器のためのドライバおよび/または読み出し回路として構成される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記装置(100)は、前記ヘテロ構造(200、210)の下方に配置された底部電極(112)と、前記ヘテロ構造(200、210)の上方に配置された上部電極(114)と、前記上部電極(114)と前記底部電極(112)とを接続する金属または半導体シャント(922)とをさらに備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記テラヘルツ電磁波(602、702、1002、1202)のための受信機または送信機の構成要素として前記装置(100)を利用することをさらに含む、請求項1または4に記載の方法。
【請求項8】
前記装置(100)は、少なくとも1つの第2の誘電体層(104)および少なくとも1つの第2の強誘電体層(106)を備える第2のヘテロ構造(200,210)をさらに備え、前記少なくとも1つの第2の強誘電体層(106)は、第2の分極パターンを形成する第2の複数の強誘電分極ドメイン(108、110)を含み、前記第2の分極パターンは、前記テラヘルツ周波数範囲内の第2の共振周波数を有し、分極の振動に関連する第2の振動を実施するように適合されており、
前記装置(100)を適用することは、
前記ヘテロ構造(200,210)を、過渡テラヘルツ電磁波(602,702,1002)を発生させるように適合された送信機の構成要素として利用することと、
前記第2のヘテロ構造(200,210)を、前記過渡テラヘルツ電磁波(602,702,1002,1202)を受信するための受信機の構成要素として利用することと、をさらに含む、請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
プラズモン相互接続チャネルとして機能する金属チャネルを使用して前記過渡テラヘルツ電磁波(602,702,1002)を誘導することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記装置(100)を、ミラー、ビームスプリッタ、減衰器、位相調整器、ダイクロイックミラー、テラヘルツ光学ハイパスフィルタ、テラヘルツ光学ローパスフィルタ、テラヘルツバンドパスフィルタ、またはテラヘルツ光学ノッチフィルタであるテラヘルツ光学装置(100)の構成要素として使用して、前記テラヘルツ電磁波(602,702,1002,1202)を操作し、少なくとも1つのテラヘルツ光学パラメータを制御することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
電気回路(800、900、920、1000)の電子またはテラヘルツ電磁波(602、702、1002、1202)のための共振器として適用されるように適合されているヘテロ構造(200、210)を有する装置(100)であって、
前記ヘテロ構造(200、210)は、複数の誘電体層(104)および複数の強誘電体層(106)と、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)と前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)との交互の積層シーケンスとを備え、
前記複数の強誘電体層(106)はそれぞれ、分極パターンを各々が形成する複数の強誘電分極ドメイン(108、110)を含み、
前記分極パターンは、テラヘルツ周波数範囲内の共振周波数で、全体的な分極の振動または局所的な分極の振動に関連する振動を実行するように適合されており、
前記装置(100)は、
前記分極パターンの振動と、前記電気回路(800、900、920、1000)の前記電子または前記テラヘルツ電磁波(602、702、1002、1202)の結合周波数における振動とを結合するように適合されており、前記分極パターンの振動は、前記テラヘルツ周波数範囲内の振動周波数を有し、
前記装置(100)は、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)、または、前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)の一方である中間最上層と、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)、または、前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)の他方である中間最下層との間に配置された少なくとも1つの中間電極をさらに備える、装置(100)。
【請求項12】
前記ヘテロ構造(200,210)の下方に配置された底部電極(112)、および/または
前記ヘテロ構造(200,210)の上方に配置された上部電極(114)をさらに備える、請求項11に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記ヘテロ構造(200,210)が基板(102)の上方に配置される、請求項11または12に記載の装置(100)。
【請求項14】
ヘテロ構造(200,210)を有する装置(100)を製造する方法であって、前記ヘテロ構造(200,210)を有する前記装置(100)は、電気回路(800,900,920,1000)の電子またはテラヘルツ電磁波(602,702,1002,1202)の共振器として適用されるのに適しており、前記方法は、
前記ヘテロ構造(200、210)の複数の強誘電体層(106)および前記ヘテロ構造(200、210)の複数の誘電体層(104)を、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)と前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)との交互の積層シーケンスで堆積させることであって、
前記複数の強誘電体層(106)の強誘電体層(106)の強誘電体層の厚さ(h)は所定の最大厚さを超えず、結果、
前記複数の強誘電体層(106)の強誘電体層(106)は、共振周波数で、全体的な分極または局所的な分極の振動に関連する振動を行うように適合された分極パターンを各々が形成する複数の強誘電分極ドメイン(108、110)を含む、堆積させることと、
前記所定の最大厚さをテラヘルツ周波数範囲の共振周波数に対して調整することと、を含み、
前記装置(100)は、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)、または、前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)の一方である中間最上層と、前記複数の誘電体層(104)のうちの誘電体層(104)、または、前記複数の強誘電体層(106)のうちの強誘電体層(106)の他方である中間最下層との間に配置された少なくとも1つの中間電極をさらに備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気共振器回路に関し、特に集積回路の電気共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業は、集積電子回路を小型化し、そのスイッチング周波数および速度を増加させるというその目標によって推進されている。従来のシリコンベースの集積回路は、ある時点で、装置のキャパシタンスおよび誘導性、ならびに信号伝送中のエネルギー損失によって決定されるスイッチング周波数に関する基本的な限界に達することがある。より高速の回路および代替の伝送経路の概念が望ましい。電子伝送ではなく、電磁波による信号伝送が提案されている。今日のギガヘルツ電子機器から将来のテラヘルツ電子機器への発展は、同じまたは類似の集積電子素子を使用して、同様の周波数における電子信号処理および電磁波信号伝送を可能にし得る。したがって、テラヘルツ回路と電磁場とを結合する集積素子が望ましい。
【0003】
テラヘルツ電磁信号伝送、特に受信は、医療撮像およびセキュリティスクリーニングなどの既存の用途、または例えば航空宇宙産業および宇宙もしくは衛星データ通信における長距離信号伝送にも有用であり得る。
【0004】
信号の送受信に必要な共振器のような既存のテラヘルツ集積電子素子は、スプリットリング型およびスプリットディスク型の共振器を含む。これらの構造の寸法は、テラヘルツ波長によって決定され、シリコンベース集積回路の典型的な限界寸法よりもはるかに大きい。テラヘルツ振動器および共振器と小型集積回路との小型化および共集積化を可能にするための改善が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Luk’yanchuk他、Physical Review B 98,024107(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の技術的問題を考慮して、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波のテラヘルツスペクトル範囲における振動を共振器、特に小型集積回路に組み込むことができる共振器と結合するための改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項1に記載の方法によって達成される。独立請求項11は、共振器として適用されるヘテロ構造を有する装置を提供する。独立請求項14は、共振器として適用されるのに適したヘテロ構造を有する装置を製造する方法を提供する。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0008】
第1の態様では、本開示は、ヘテロ構造を有する装置を、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波のための共振器として利用する方法に関する。ヘテロ構造は、少なくとも1つの誘電体層および少なくとも1つの強誘電体層を備える。少なくとも1つの強誘電体層は、分極パターンを形成する複数の強誘電分極ドメインを含む。分極パターンは、テラヘルツ周波数範囲内の共振周波数で振動を実施するように適合される。本方法は、分極パターンの振動と、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の振動とを装置によって機能的に結合することを含む。
【0009】
少なくとも1つの誘電体層および少なくとも1つの強誘電体層を備えるヘテロ構造を有する装置は、小型集積回路に集積することができ、小型集積回路は、スプリットリング共振器およびスプリットディスク共振器などの既存のテラヘルツ共振器を超える利点を提供することができる。特に、装置の側方面積は、例えば、今日の半導体素子の限界寸法まで小さくすることができる。さらに、少なくとも1つの強誘電体層および/または少なくとも1つの誘電体層は、層堆積技術の十分発達した技法を使用して堆積することができる。有利には、小型化のために、相当のインダクタンスをもたらす要素を装置内で省略することができる。
【0010】
有利には、少なくとも1つの強誘電体層および少なくとも1つの誘電体層は、絶縁材料から形成することができ、絶縁材料は、共振周波数よりもはるかに低いかもしくははるかに高い周波数において、または分極パターン、電気回路の電子、もしくはテラヘルツ電磁波の振動の周波数において、例えば電磁波などの振動に対してほとんど応答を示さないものであり得る。これは、そうでなければはるかに高いまたははるかに低い周波数における振動、例えば電磁波に対する応答から生じる可能性がある望ましくない応答およびノイズを抑制することができる。
【0011】
本開示の文脈において、ヘテロ構造は、サンドイッチ様ヘテロ構造または積層ヘテロ構造、多層構造、および/または超格子を含んでもよい。
【0012】
共振周波数は、ヘテロ構造および/または分極パターンの複数の共振周波数から選択することができる。特に、共振周波数は、ヘテロ構造および/または分極パターンの複数の共振周波数の主要共振周波数に対応することができる。
【0013】
さらに、少なくとも1つの強誘電体層および/または少なくとも1つの誘電体層の絶縁材料は、装置全体にわたる望ましくない電気的短絡のリスクを低減することができる。有利には、装置の分極パターンは、例えば、少なくとも1つの強誘電体層もしくは少なくとも1つの誘電体層の適切な厚さを選択することによって、または少なくとも1つの強誘電体層および少なくとも1つの誘電体層の適切な材料組成を選択することによって、特定の用途の要件に向けて調整することができるテラヘルツスペクトル範囲内の共振周波数を有する。共振周波数は、有利には、分極パターンの振動と、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の振動との間の共振結合に使用することができる。共振結合は、特に効率的な結合を提供する。
【0014】
本開示の文脈では、テラヘルツ周波数範囲は、少なくとも0.05THz、特に少なくとも0.1THzまたは少なくとも0.2THzの周波数を含み得る。
【0015】
本開示の文脈では、テラヘルツ周波数範囲は、最大20THz、特に最大10THzまたは最大3THzの周波数を含み得る。
【0016】
分極パターンの振動は、第2のテラヘルツ周波数範囲内の振動周波数を有することができる。
【0017】
電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の振動は、第2のテラヘルツ周波数範囲内の結合周波数を有することができる。
【0018】
第2のテラヘルツ周波数範囲は、少なくとも0.05THz、特に少なくとも0.1THzまたは少なくとも0.2THzの周波数を含み得る。
【0019】
第2のテラヘルツ周波数範囲は、最大20THz、特に最大10THzまたは最大3THzの周波数を含み得る。
【0020】
分極パターンの共振周波数から遠すぎない振動周波数または結合周波数を有する分極パターンの振動および/または電気回路もしくはテラヘルツ電磁波の振動は、有利には、分極パターンの振動と電気回路もしくはテラヘルツ電磁波の振動との間の効率的な結合を可能にし得る。
【0021】
分極パターンの振動は振動周波数を有することができ、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の振動は結合周波数を有することができ、結合周波数は振動周波数と合致し得る。
【0022】
本開示の一実施形態によれば、振動周波数は共振周波数に合致する。
【0023】
結果として生じる共振結合は、分極パターンの振動と、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の振動との間の特に効率的な結合を可能にすることができる。
【0024】
一実施形態によれば、結合周波数は共振周波数に合致する。
【0025】
結果として生じる共振結合は、分極パターンの振動と、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の振動との間の特に効率的な結合を可能にすることができる。
【0026】
合致する周波数は、最大2倍、特に最大1.5倍、または最大1.1倍、互いに逸脱し得る。
【0027】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、複数の強誘電体層を備えてもよい。複数の強誘電体層は、少なくとも3つの強誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の強誘電体層を含んでもよい。
【0028】
特に、少なくとも1つの強誘電体層は、複数の強誘電体層のうちの少なくとも1つの強誘電体層であってもよい。少なくとも1つの強誘電体層は、複数の強誘電体層のうちの最も厚い強誘電体層、または複数の強誘電体層のうちの最も薄い強誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0029】
複数の強誘電体層の各強誘電体層は、分極パターンを形成する複数の強誘電分極ドメインを含むことができる。
【0030】
一実施形態によれば、複数の強誘電体層の各層は、同じ最大強誘電体層厚を有することができる。特に、複数の強誘電体層の各層は、例えばヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの強誘電体層に垂直な方向に沿ってヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ強誘電体層厚を有することができる。
【0031】
代替的または付加的に、ヘテロ構造は、複数の誘電体層を備えてもよい。複数の誘電体層は、少なくとも3つの誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の誘電体層を含んでもよい。
【0032】
特に、少なくとも1つの誘電体層は、複数の誘電体層のうちの少なくとも1つの誘電体層であってもよい。少なくとも1つの誘電体層は、複数の誘電体層のうちの最も厚い誘電体層、または複数の誘電体層のうちの最も薄い誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0033】
一実施形態によれば、複数の誘電体層の各層は、同じ最大誘電体層厚を有することができる。特に、複数の誘電体層の各層は、例えばヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの誘電体層に垂直な方向に沿ってヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ誘電体層厚を有することができる。
【0034】
ヘテロ構造は、複数の誘電体層の誘電体層と複数の強誘電体層の強誘電体層との交互の積層シーケンスを含むことができる。
【0035】
代替的または付加的に、ヘテロ構造は、複数の強誘電体層の少なくとも2つの後続の強誘電体層または複数の誘電体層の少なくとも2つの後続の誘電体層を有する積層シーケンスを含んでもよい。
【0036】
代替的または付加的に、ヘテロ構造は、複数の強誘電体層または複数の誘電体層の第1の層と、複数の複数の強誘電体層または複数の誘電体層の第2の層との間に少なくとも1つの追加の層を有する積層シーケンスを含んでもよい。
【0037】
複数の強誘電体層および/または複数の誘電体層は、分極パターンの振動と電気回路またはテラヘルツ電磁波の振動との間の結合の結合ボリューム、したがって強度を増加させることができる。
【0038】
一実施形態によれば、方法は、テラヘルツ電磁波のための受信機または送信機の構成要素として装置を利用することをさらに含む。
【0039】
受信機または送信機の構成要素として装置を利用することは、有利には、分極パターンの振動と電気回路の電子の結合との間の結合を利用する。これは、チップ間および/またはチップ内の信号伝送および/もしくは処理、6G WiFi通信、ならびに/または衛星通信に関連する装置の用途に特に有用であり得る。
【0040】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、ダイオードまたはトランジスタに機能的に結合される。特に、装置は受信機の構成要素であってもよく、ダイオードまたはトランジスタは整流器として機能する。
【0041】
ヘテロ構造を有する装置は、トランジスタおよび/またはダイオードのような小型半導体素子とともに一体化することができるため、これらの十分に確立された半導体素子は、共振器のためのドライバおよび/または読み出し回路を実装するために有利に使用することができる。
【0042】
一実施形態によれば、装置は、共通集積回路の第1の構成要素であり、ダイオードまたはトランジスタは、共通集積回路の第2の構成要素である。例えば、共通集積回路の第1の構成要素および共通集積回路の第2の構成要素は、共通基板上に配置されてもよい。例えば、共通基板は、半導体基板または誘電体基板であってもよい。特に、半導体または誘電体基板は、半導体または誘電体ウェハであってもよい。
【0043】
一実施形態によれば、共通集積回路の第1の構成要素および共通集積回路の第2の構成要素は、互いに直接的に物理接触して配置される。
【0044】
装置の少なくとも1つの層および共通集積回路の第2の構成要素の少なくとも1つの部分は、同じ材料から構成されてもよい。装置の層および共通集積回路の第2の構成要素の部分の同じ材料組成は、共通の堆積ステップの結果によってもよい。
【0045】
装置は、追加のアンテナに機能的に結合されてもよい。特に、追加のアンテナは、スプリットリング共振器またはスプリットディスク共振器であってもよい。
【0046】
一実施形態によれば、本方法は、装置をRC回路の構成要素として適用することをさらに含む。特に、装置は、RC回路のキャパシタとして利用されてもよい。
【0047】
本装置を備えるRC回路の実施態様は、非常に小型化および集積化される可能性を有する共振器を提供する。特に、RC回路としての実施態様は、大きい側方面積が集積回路のレイアウト内にあることを必要とする傾向がある相当のインダクタンスを省略することを可能にする。
【0048】
RC回路は、ヘテロ構造と並列または直列の抵抗器を備えてもよい。一実施形態によれば、装置は、共通集積回路の第1の構成要素であり、抵抗器は、共通集積回路の第2の構成要素である。
【0049】
装置および抵抗器は、有利には、共通集積回路の構成要素として形成することができる。
【0050】
共通集積回路、共通集積回路の第1の構成要素、および共通集積回路の第2の構成要素は、共通集積回路の第2の構成要素を形成するダイオードまたはトランジスタの文脈で説明されたものに対応する特徴によって特徴付けられ得る。
【0051】
装置は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタの構成要素として利用されてもよい。
【0052】
特に、装置を構成要素として備えるRC回路は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタの構成要素として利用されてもよい。
【0053】
ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタは、カットオフ周波数範囲内のカットオフ周波数を有することができる。
【0054】
バンドパスフィルタは、上記カットオフ周波数範囲内の第2のカットオフ周波数を有することができる。
【0055】
カットオフ周波数範囲は、少なくとも0.1THz、特に少なくとも1THzまたは少なくとも0.2THzの周波数を含み得る。
【0056】
カットオフ周波数範囲は、最大1,00THz、特に最大10THzの周波数を含み得る。
【0057】
ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタは、電子ローパスフィルタ、電子ハイパスフィルタ、または電子バンドパスフィルタであってもよい。
【0058】
装置は、クロックの構成要素として利用されてもよい。
【0059】
装置は、有利には、現在の電子機器によって使用されている周波数範囲をわずかに上回るテラヘルツ周波数範囲内の共振周波数を提供し、したがって、半導体素子で現在使用されているものよりも高い周波数で、したがってより高い精度で動作するクロックを実装することを可能にすることができる。
【0060】
装置をクロックの構成要素として利用することは、分極パターンの振動を特徴付けるパラメータの最大値または最小値を決定することを含むことができる。
【0061】
装置をクロックの構成要素として利用することは、複数の最大値または最小値をカウントすることを含むことができ、各最大値または最小値は、分極パターンの振動に関連するパラメータの最大値または最小値である。
【0062】
分極パターンの振動に関するパラメータは、分極パターンの全体的な分極の測度であってもよく、または、分極パターンの全体的な分極の変化の測度であってもよい。
【0063】
分極パターンの振動に関するパラメータは、分極パターンの局所的な分極の測度であってもよく、または、分極パターンの局所的な分極の変化の測度であってもよい。
【0064】
装置は、少なくとも1つの第2の誘電体層および少なくとも1つの第2の強誘電体層を備える第2のヘテロ構造をさらに備えることができる。第2の強誘電体層は、第2の分極パターンを形成する第2の複数の強誘電分極ドメインを含むことができ、第2の分極パターンは、テラヘルツ周波数範囲内の第2の共振周波数を有する第2の振動を実施するように適合することができる。装置を適用することは、ヘテロ構造を過渡テラヘルツ電磁波を発生させるように適合された送信機の構成要素として利用することと、第2のヘテロ構造を過渡テラヘルツ電磁波を受信するための受信機の構成要素として利用することとをさらに含むことができる。これは、チップ内信号伝送および/または処理に関連する装置の用途に特に有用であり得る。
【0065】
第2のヘテロ構造は、第2の複数の強誘電体層を備えてもよい。複数の強誘電体層は、少なくとも3つの強誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の強誘電体層を含んでもよい。
【0066】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第2の強誘電体層は、第2の複数の強誘電体層のうちの少なくとも1つの強誘電体層であってもよい。少なくとも1つの第2の強誘電体層は、第2の複数の強誘電体層のうちの最も厚い強誘電体層、または第2の複数の強誘電体層のうちの最も薄い強誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0067】
特に、第2の複数の強誘電体層の各層は、同じ第2の最大強誘電体層厚を有することができる。特に、第2の複数の強誘電体層の各層は、例えば第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、特に第2の強誘電体層に垂直な方向に沿って第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ第2の強誘電体層厚を有することができる。
【0068】
代替的または付加的に、第2のヘテロ構造は、第2の複数の誘電体層を備えてもよい。複数の誘電体層は、少なくとも3つの強誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の誘電体層を含んでもよい。
【0069】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第2の誘電体層は、第2の複数の誘電体層のうちの1つの誘電体層であってもよい。少なくとも1つの第2の誘電体層は、第2の複数の誘電体層のうちの最も厚い誘電体層、または第2の複数の誘電体層のうちの最も薄い誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0070】
特に、第2の複数の誘電体層の各層は、同じ第2の最大誘電体層厚を有することができる。特に、第2の複数の誘電体層の各層は、例えば第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの第2の誘電体層に垂直な方向に沿って第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ第2の誘電体層厚を有することができる。
【0071】
一実施形態によれば、ヘテロ構造は、共通集積回路の第1の構成要素であり、第2のヘテロ構造は、共通集積回路の第2の構成要素である。
【0072】
共通集積回路、共通集積回路の第1の構成要素、および共通集積回路の第2の構成要素は、共通集積回路の第2の構成要素を形成するダイオードまたはトランジスタの文脈で説明されたものに対応する特徴によって特徴付けられ得る。
【0073】
本方法は、導波路構造を使用して過渡テラヘルツ電磁波を誘導することをさらに含むことができる。
【0074】
本方法は、金属チャネル、特にプラズモン相互接続チャネルとして機能する金属チャネルを使用して過渡テラヘルツ電磁波を誘導することをさらに含むことができる。
【0075】
導波路構造および/またはプラズモン相互接続チャネルは、チップ内信号伝送および/または処理に関連する装置の用途に特に有用であり得る。
【0076】
本方法は、テラヘルツ電磁波を操作し、少なくとも1つのテラヘルツ光学パラメータを制御するためのテラヘルツ光学装置の構成要素として装置を使用することをさらに含むことができる。
【0077】
例えば、テラヘルツ光学装置は、テラヘルツ電磁波を反射するミラーであってもよく、テラヘルツ光学パラメータは反射率であってもよい。
【0078】
例えば、テラヘルツ光学装置は、テラヘルツ電磁波の一部を透過させる減衰器であってもよく、テラヘルツ光学パラメータは減衰であってもよい。
【0079】
例えば、テラヘルツ光学装置は、テラヘルツ電磁波のある部分を反射し、テラヘルツ電磁波の別の部分を透過させるためのビームスプリッタであってもよく、テラヘルツ光学パラメータは反射率であり、第2のテラヘルツ光学パラメータは透過率であってもよい。
【0080】
例えば、テラヘルツ光学装置は、テラヘルツ電磁波の位相を変更するための位相調整器であってもよく、テラヘルツ光学パラメータは位相シフトであってもよい。
【0081】
例えば、テラヘルツ光学装置は、テラヘルツ電磁波のためのテラヘルツ光学ローパスフィルタ、テラヘルツ光学ハイパスフィルタ、またはテラヘルツ光学バンドパスフィルタであってもよく、テラヘルツ光学パラメータはカットオフ周波数であってもよい。
【0082】
有利には、層状誘電体光学系の設計のための技法を使用して、例えば、ミラー、ビームスプリッタ、減衰器、位相調整器、ダイクロイックミラー、(テラヘルツ)光学ハイパスフィルタ、(テラヘルツ)光学ローパスフィルタ、(テラヘルツ)バンドパスフィルタ、または(テラヘルツ)光学ノッチフィルタとして、特定の用途の要件に適合するようにテラヘルツ光学装置を調整することができる。
【0083】
例えば、テラヘルツ光学装置はテラヘルツ電磁波の誘導構造であってもよく、テラヘルツ光学パラメータはテラヘルツ電磁波の方向であってもよい。特に、テラヘルツ光学装置は、テラヘルツ電磁波をヘテロ構造の内部に誘導するためのテラヘルツ光学メタマテリアルを含むことができる。
【0084】
少なくとも1つの強誘電体層の厚さは、テラヘルツ光学パラメータを制御するように適合させることができる。
【0085】
本方法は、テラヘルツ光学パラメータを制御するためにヘテロ構造に静電場を加えることをさらに含むことができる。
【0086】
本方法は、テラヘルツ光学パラメータを制御するために電気回路の電子の振動をトリガすることをさらに含むことができる。
【0087】
本方法は、テラヘルツ光学パラメータを制御するためにヘテロ構造に機械的応力を加えることをさらに含むことができる。
【0088】
ヘテロ構造は、共通集積回路の第1の構成要素であってもよく、追加のテラヘルツ光学装置または追加のテラヘルツ光電子装置は、共通集積回路の第2の構成要素であってもよい。
【0089】
共通集積回路、共通集積回路の第1の構成要素、および共通集積回路の第2の構成要素は、共通集積回路の第2の構成要素としてダイオードまたはトランジスタの文脈で説明されたものに対応する特徴によって特徴付けられ得る。
【0090】
方法は、テラヘルツ電磁波を操作し、少なくとも1つのテラヘルツ光学パラメータを制御するためのテラヘルツ光学装置の構成要素として装置を使用することに加えて、テラヘルツ電磁波の受信機または送信機の構成要素として装置を利用することをさらに含むことができる。
【0091】
第2の態様では、本開示は、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波のための共振器として適用されるように適合されたヘテロ構造を有する装置に関する。ヘテロ構造は、少なくとも1つの誘電体層および少なくとも1つの強誘電体層を備える。強誘電体層は、分極パターンを形成する複数の強誘電分極ドメインを含む。分極パターンは、テラヘルツ周波数範囲内の共振周波数で振動を実行するように適合される。装置は、分極パターンの振動を電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波の結合周波数における振動と結合するように適合されている。分極パターンの振動は、第2のテラヘルツ周波数範囲内の振動周波数を有する。
【0092】
ヘテロ構造を有する装置は、有利には、上記の特徴の少なくともいくつかを含む方法に適用することができる。
【0093】
テラヘルツ周波数範囲および/または第2のテラヘルツ周波数範囲は、本開示の第1の態様の文脈にあるように定義することができる。
【0094】
ヘテロ構造は、複数の強誘電体層を備えてもよい。複数の強誘電体層は、少なくとも3つの強誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の強誘電体層を含んでもよい。
【0095】
一実施形態によれば、少なくとも1つの強誘電体層は、複数の強誘電体層のうちの少なくとも1つの強誘電体層であってもよい。少なくとも1つの強誘電体層は、複数の強誘電体層のうちの最も厚い強誘電体層、または複数の強誘電体層のうちの最も薄い強誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0096】
特に、複数の強誘電体層の各層は、同じ最大強誘電体層厚を有することができる。特に、複数の強誘電体層の各層は、例えばヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの強誘電体層に垂直な方向に沿ってヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ強誘電体層厚を有することができる。
【0097】
代替的または付加的に、ヘテロ構造は、複数の誘電体層を備えてもよい。複数の誘電体層は、少なくとも3つの誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の誘電体層を含んでもよい。
【0098】
一実施形態によれば、少なくとも1つの誘電体層は、複数の誘電体層のうちの少なくとも1つの誘電体層であってもよい。少なくとも1つの誘電体層は、複数の誘電体層のうちの最も厚い誘電体層、または複数の誘電体層のうちの最も薄い誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0099】
特に、複数の誘電体層の各層は、同じ最大誘電体層厚を有することができる。特に、複数の誘電体層の各層は、例えばヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの誘電体層に垂直な方向に沿ってヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ誘電体層厚を有することができる。
【0100】
ヘテロ構造は、少なくとも5nm、特に少なくとも100nm、特に少なくとも500nm、特に少なくとも1μmの高さを有することができる。
【0101】
ヘテロ構造は、最大25mm、特に最大500μm、特に最大100μm、または最大10μm、または最大25nmの側方面積をカバーすることができる。
【0102】
分極パターンは、少なくとも1つの強誘電体層の横方向に沿って空間的周期性を有してもよい。特に、分極パターンは周期的な分極パターンであってもよい。
【0103】
一実施形態によれば、少なくとも1つの強誘電体層の厚さは、100nm、特に70nm、40nm、30nmまたは5nmを超えない。
【0104】
一般に、複数の強誘電体層のうちのいくつかまたはすべての強誘電体層は、同一の厚さを有してもよい。他の実施形態では、複数の強誘電体層のうちのいくつかまたはすべての強誘電体層の厚さは異なってもよい。
【0105】
複数の強誘電体層を有する実施形態では、複数の強誘電体層に含まれる強誘電体層の一部またはいずれかの厚さは、100nm、特に70nm、40nm、30nmまたは5nmを超えないものであってもよい。
【0106】
少なくとも1つの強誘電体層は、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウムまたは酸化ハフニウムを含んでもよい。複数の強誘電体層を有する実施形態では、複数の強誘電体層のうちの第1の強誘電体層および複数の強誘電体層のうちの第2の強誘電体層は、同じ材料または異なる材料から構成されてもよい。
【0107】
一実施形態によれば、複数の誘電体層に含まれる少なくとも1つの誘電体層の厚さは、100nm、特に70nm、40nm、30nmまたは5nmを超えない。
【0108】
一般に、複数の誘電体層のうちのいくつかまたはすべての誘電体層は、同一の厚さを有してもよい。他の実施形態では、複数の誘電体層のうちのいくつかまたはすべての誘電体層の厚さは異なってもよい。
【0109】
複数の誘電体層を有する実施形態では、複数の誘電体層に含まれる誘電体層の一部またはいずれかの厚さは、100nm、特に70nm、40nm、30nmまたは5nmを超えないものであってもよい。
【0110】
少なくとも1つの誘電体層は、絶縁材料、例えばチタン酸ストロンチウムを含んでもよい。複数の誘電体層を有する実施形態では、複数の誘電体層のうちの第1の誘電体層および複数の誘電体層のうちの第2の誘電体層は、同じ材料または異なる材料から構成されてもよい。
【0111】
装置は、ヘテロ構造の下方に配置された底部電極をさらに備えることができる。
【0112】
特に、複数の誘電体層および/または複数の強誘電体層を有する実施形態では、底部電極は、複数の誘電体層の下方および/または複数の強誘電体層の下方に配置することができる。
【0113】
装置は、ヘテロ構造の上方に配置された上部電極をさらに備えることができる。特に、複数の誘電体層および/または複数の強誘電体層を有する実施形態では、上部電極は、複数の誘電体層の上方および/または複数の強誘電体層の上方に配置することができる。
【0114】
装置は、中間最上層と中間最下層との間に配置された少なくとも1つの中間電極をさらに備えることができる。
【0115】
1つの誘電体層および1つの強誘電体層を備えるヘテロ構造を有する実施形態では、それぞれ、中間最上層は強誘電体層または誘電体層であってもよく、中間最下層は誘電体層または強誘電体層であってもよい。
【0116】
複数の誘電体層を有する実施形態では、中間最下層は、複数の誘電体層からの誘電体層であってもよく、および/または中間最上層は、複数の誘電体層からの誘電体層であってもよい。
【0117】
複数の強誘電体層を有する実施形態では、中間最下層は、複数の強誘電体層からの強誘電体層であってもよく、および/または中間最上層は、複数の強誘電体層からの強誘電体層であってもよい。
【0118】
中間電極の構造および材料組成は、一般に、上述の底部電極および上部電極の構造および材料組成に対応し得る。
【0119】
ヘテロ構造内に配置された中間電極は、共振器のより多様な用途を可能にし得る。
【0120】
底部電極、上部電極、および底部電極の各々は、外部駆動回路に、または接地に接続されるように適合することができる。
【0121】
ヘテロ構造は、基板の上方に配置されてもよい。
【0122】
基板は、装置の形成を促進するように構造化することができる。有利には、複雑な集積回路を実装するために、同じ装置上に追加の要素を形成することができる。さらに、装置は、例えば基板の湿潤特性を介して、または基板上の装置の少なくとも1つの層のエピタキシャル成長を介して、装置の少なくとも1つの層の形成を促進するように選択することができる。
【0123】
基板は、半導体基板または誘電体基板であってもよい。
【0124】
半導体または誘電体基板は十分に開発されており、手頃な価格で入手可能であり、半導体または誘電体基板上の層の形成は、層堆積技術の文脈で高度に開発されている。
【0125】
基板は、ヘテロ構造の側方寸法と少なくとも同じ大きさの側方寸法を有する単結晶部分を含むことができる。特に、基板は、少なくとも1つの誘電体層または少なくとも1つの強誘電体層のエピタキシャル成長を促進するように適合することができる。
【0126】
基板の結晶部分は、装置の少なくとも1つの層のエピタキシャル成長を促進することができる。エピタキシャル成長は、層内の欠陥の密度を最小限に抑える傾向がある。
【0127】
装置は、機械的に可撓性の装置であってもよい。
【0128】
特に、装置は自立型装置であってもよい。
【0129】
装置は、追加の集積素子をさらに備えてもよく、ヘテロ構造は、共通集積回路の第1の構成要素であり、追加の集積素子は、共通集積回路の第2の構成要素である。
【0130】
共通集積回路、共通集積回路の第1の構成要素、および共通集積回路の第2の構成要素は、共通集積回路の第2の構成要素としてダイオードまたはトランジスタによる方法の文脈で説明されたものに対応する特徴によって特徴付けられ得る。
【0131】
例えば、追加の集積素子は抵抗器であってもよい。抵抗器は、ヘテロ構造と直列または並列に配置されてもよい。
【0132】
例えば、追加の集積素子はダイオードまたはトランジスタであってもよい。ダイオードまたはトランジスタは、ヘテロ構造に機能的に結合することができる。
【0133】
例えば、追加の集積素子は、追加のテラヘルツ光学装置または追加のテラヘルツ光電子装置であってもよい。
【0134】
例えば、追加の集積素子は、ヘテロ構造に結合された追加のアンテナであってもよい。
【0135】
特に、追加のアンテナは、スプリットリング共振器またはスプリットディスク共振器であってもよい。
【0136】
装置は、複数の集積素子をさらに備えることができ、複数の集積素子の各集積素子は、共通集積回路の構成要素であってもよい。
【0137】
装置は、第2の電気回路の電子または第2のテラヘルツ電磁波のための第2の共振器として適用されるように適合された第2のヘテロ構造をさらに備えることができる。第2のヘテロ構造は、少なくとも1つの誘電体層および少なくとも1つの第2の強誘電体層を備えることができる。少なくとも1つの第2の強誘電体層は、第2の分極パターンを形成する第2の複数の強誘電分極ドメインを含むことができる。第2の分極パターンは、テラヘルツ周波数範囲内の第2の共振周波数で第2の振動を実行するように適合することができる。装置は、第2の分極パターンの第2の振動を第2の電気回路の電子または第2のテラヘルツ電磁波の第2の結合周波数における第3の振動と結合するように適合することができる。第2の分極パターンの第2の振動は、第2のテラヘルツ周波数範囲内の第2の振動周波数を有することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、第2のヘテロ構造の設計および特徴は、強誘電体層および誘電体層のレイアウト、数および位置、層厚ならびに材料組成などに関して、上述のヘテロ構造の設計および特徴に対応し得る。
【0139】
第2のヘテロ構造は、第2の複数の強誘電体層を備えてもよい。複数の強誘電体層は、少なくとも3つの強誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の強誘電体層を含んでもよい。
【0140】
特に、少なくとも1つの第2の強誘電体層は、第2の複数の強誘電体層のうちの少なくとも1つの強誘電体層であってもよい。少なくとも1つの第2の強誘電体層は、第2の複数の強誘電体層のうちの最も厚い強誘電体層、または第2の複数の強誘電体層のうちの最も薄い強誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0141】
一実施形態によれば、第2の複数の強誘電体層の各層は、同じ第2の最大強誘電体層厚を有することができる。特に、第2の複数の強誘電体層の各層は、例えば第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの第2の強誘電体層に垂直な方向に沿って第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ第2の強誘電体層厚を有することができる。
【0142】
代替的または付加的に、第2のヘテロ構造は、第2の複数の誘電体層を備えてもよい。複数の誘電体層は、少なくとも3つの強誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の誘電体層を含んでもよい。
【0143】
特に、少なくとも1つの第2の誘電体層は、第2の複数の誘電体層のうちの少なくとも1つの誘電体層であってもよい。少なくとも1つの第2の誘電体層は、第2の複数の誘電体層のうちの最も厚い誘電体層、または第2の複数の誘電体層のうちの最も薄い誘電体層であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0144】
一実施形態によれば、第2の複数の誘電体層の各層は、同じ第2の最大誘電体層厚を有することができる。特に、第2の複数の誘電体層の各層は、例えば第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの第2の誘電体層に垂直な方向に沿って第2のヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ第2の誘電体層厚を有することができる。
【0145】
第2の共振周波数は、第2のヘテロ構造および/または第2の分極パターンの第2の複数の共振周波数から選択することができる。
【0146】
特に、第2の共振周波数は、第2のヘテロ構造および/または第2の分極パターンの第2の複数の共振周波数の主要共振周波数に対応することができる。
【0147】
第2の共振周波数は、共振周波数と合致し得る。
【0148】
合致する周波数は、最大2倍、特に最大1.5倍、または最大1.1倍、互いに逸脱し得る。
【0149】
第2のテラヘルツ電磁波とテラヘルツ電磁波とは同一であり得、装置は、テラヘルツ電磁波を用いて分極パターンの振動と第2の分極パターンの第2の振動とを結合するように適合することができる。
【0150】
第3の態様では、本開示は、ヘテロ構造を有する装置を製造する方法に関する。ヘテロ構造を有する装置は、電気回路の電子またはテラヘルツ電磁波のための共振器として適用されるのに適している。本方法は、少なくとも1つの強誘電体層および少なくとも1つの誘電体層を堆積することを含み、少なくとも1つの強誘電体層の強誘電体層厚は、少なくとも1つの強誘電体層が、共振周波数による振動を実施するように適合された分極パターンを形成する複数の強誘電分極ドメインを含むように、所定の最大厚さを超えない。本方法は、所定の最大厚さをテラヘルツ周波数範囲内の共振周波数に対して調整することをさらに含む。
【0151】
方法は、複数の強誘電体層を堆積することをさらに含んでもよい。例えば、複数の強誘電体層を堆積することは、少なくとも3つの強誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の強誘電体層を堆積することを含んでもよい。
【0152】
特に、少なくとも1つの強誘電体層は、複数の強誘電体層に含まれてもよい。少なくとも1つの強誘電体層は、複数の強誘電体層のうちの最も厚い強誘電体層、または複数の強誘電体層のうちの最も薄い強誘電体層であるように堆積されてもよく、またはそれを含んでもよい。
【0153】
一実施形態によれば、複数の強誘電体層の各層は、例えばヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの強誘電体層に垂直な方向に沿ってヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ強誘電体層厚を有して堆積することができる。
【0154】
代替的または付加的に、本方法は、複数の誘電体層を堆積することを含んでもよい。例えば、複数の誘電体層を堆積することは、少なくとも3つの誘電体層、特に少なくとも5つ、10個、20個、または50個の誘電体層を堆積することを含んでもよい。
【0155】
特に、複数の誘電体層は、少なくとも1つの誘電体層を含んでもよい。少なくとも1つの誘電体層は、複数の誘電体層のうちの最も厚い誘電体層、または複数の誘電体層のうちの最も薄い誘電体層であるように堆積されてもよく、またはそれを含んでもよい。
【0156】
一実施形態によれば、複数の誘電体層の各層は、例えばヘテロ構造と交差する線に沿って、特に少なくとも1つの誘電体層に垂直な方向に沿ってヘテロ構造と交差する線に沿って、同じ誘電体層厚を有して堆積することができる。
【0157】
所定の最大厚さは、ヘテロ構造の横方向に沿った少なくとも1つの強誘電体層の最大厚さを含むことができる。
【0158】
上部電極および底部電極を有する実施形態では、所定の最大厚さは、上部電極と底部電極との間のボリューム中の少なくとも1つの強誘電体層の最大厚さを含むことができる。
【0159】
複数の強誘電体層を有する実施形態では、所定の最大厚さは、ヘテロ構造と交差する線に沿った、特に複数の強誘電体層に垂直な線に沿った、複数の強誘電体層のうちの最も厚い強誘電体層の厚さとすることができる。
【0160】
上部電極および底部電極ならびに複数の強誘電体層を有する実施形態では、所定の最大厚さは、底部電極と上部電極とを接続する線、特に底部電極および上部電極に垂直な線に沿った、複数の強誘電体層のうちの最も厚い強誘電体層の厚さを含むことができる。
【0161】
代替的または付加的に、方法は、強誘電体層の厚さと少なくとも1つの強誘電体層の誘電率との比を調整することを含んでもよい。
【0162】
テラヘルツ周波数範囲は、少なくとも0.05THz、特に少なくとも0.1THzまたは少なくとも0.2THzの周波数を含み得る。
【0163】
テラヘルツ周波数範囲は、最大20THz、特に最大10THzまたは最大3THzの周波数を含み得る。
【0164】
一実施形態によれば、所定の最大厚さを調整することは、少なくとも1つの強誘電体層に含まれる材料の材料定数に従って所定の最大厚さを選択することを含むことができる。特に、少なくとも1つの強誘電体層に含まれる材料の材料定数は、少なくとも1つの強誘電体層に含まれる材料の誘電率であってもよい。
【0165】
所定の最大厚さを調整することは、少なくとも1つの強誘電体層の側方面積に従って所定の最大厚さを選択することを含むことができる。
【0166】
所定の最大厚さを調整することは、少なくとも1つの誘電体層に含まれる材料の誘電率に従って所定の最大厚さを選択することを含むことができる。
【0167】
所定の最大厚さを調整することは、少なくとも1つの誘電体層の厚さに従って所定の最大厚さを選択することを含むことができる。
【0168】
複数の誘電体層および/または複数の強誘電体層を有する実施形態では、所定の最大厚さを調整することは、誘電体層の数および/または強誘電体層の数に従って所定の最大厚さを選択することを含むことができる。
【0169】
所定の最大厚さを調整することは、強誘電分極ドメインの平均サイズに従って所定の最大厚さを選択することを含むことができる。
【0170】
所定の最大厚さを調整することは、強誘電分極ドメインのサイズ分布に従って所定の最大厚さを選択することを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1a】個々の誘電体層の厚さh、個々の強誘電体層の厚さh、ヘテロ構造の全体的な厚さH、および上面の面積Sを有する、本開示の一実施形態によるテラヘルツ強誘電共振器(TFR)を示す図である。
図1b】テラヘルツ強誘電共振器(TFR)の電子グラフィック記号を示す図である。
図2a】本開示の一実施形態による、ストライプによる周期的分極パターンを有するテラヘルツ強誘電共振器(TFR)のヘテロ構造を示す図である。
図2b】本開示の別の実施形態による、円筒形または泡状周期的分極パターンを有するテラヘルツ強誘電共振器(TFR)のヘテロ構造を示す図である。
図3】本開示の一実施形態による、25nmの個々の強誘電体層の厚さhを有するテラヘルツ強誘電共振器(TFR)のヘテロ構造の誘電率の実数部Re εおよび虚数部Im εの典型的な周波数依存性を示す図である。
図4】本開示の一実施形態によるテラヘルツ強誘電共振器(TFR)のヘテロ構造の共振周波数の典型的な周波数依存性を示す図である。
図5】h1がh=h=10nmに対応し、h2がh=h=15nmに対応し、h3がh=h=20nmに対応する、本開示の3つの実施形態による、異なる厚さh1、h2、h3に対するテラヘルツ強誘電共振器(TFR)のインピーダンス振幅の典型的な周波数依存性を示す図である。
図6】本開示の一実施形態によるテラヘルツ強誘電共振器(TFR)を備える衛星通信のためのシステムを示す図である。
図7】本開示の一実施形態によるテラヘルツ強誘電共振器(TFR)を備える6G無線通信のためのシステムを示す図である。
図8】本開示の一実施形態によるテラヘルツ強誘電共振器(TFR)を備える集積回路を示す図である。
図9a】本開示の一実施形態による直列に集積されたテラヘルツ強誘電共振器(TFR)および負荷抵抗器を備える集積回路を示す図である。
図9b図9aの集積回路の回路図である。
図9c】本開示のさらに別の実施形態による並列に集積されたテラヘルツ強誘電共振器(TFR)および負荷抵抗器を備える集積回路を示す図である。
図9d図9cの集積回路の回路図である。
図10】本開示のさらに別の実施形態による2つの連通しているテラヘルツ強誘電共振器(TFR)を示す図である。
図11a】本開示のさらに別の実施形態による、テラヘルツ強誘電共振器(TFR)に基づくハイパスおよびローパス周波数フィルタリングのための集積回路の回路図である。
図11b】h=10nm、h=5nm、H=1μm、およびS=100μmのテラヘルツ強誘電共振器(TFR)を備える、異なる負荷抵抗に対する図11aの集積回路によるハイパスフィルタの典型的な周波数依存出力特性を示す図である。
図11c】h=10nm、h=5nm、H=1μm、およびS=100μmのテラヘルツ強誘電共振器(TFR)を備える、異なる負荷抵抗に対する図11aの集積回路によるローパスフィルタの典型的な周波数依存出力特性を示す図である。
図12】本開示の一実施形態によるテラヘルツ光学装置を示す図である。
図13a】本開示の一実施形態によるh=h=25nmであるテラヘルツ光学装置の周波数依存屈折率を、その実数部Re nおよびその虚数部Im nに関して示す図である。
図13b】本開示の一実施形態による、h=h=25nmであるテラヘルツ光学装置の垂直入射におけるテラヘルツ周波数依存光反射係数Rを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0172】
本開示は、複数の強誘電体層を備えるヘテロ構造を有する装置に関する。装置は、テラヘルツ(THz)周波数範囲内の誘電体誘電率の強い周波数依存性を提供することができる。
【0173】
テラヘルツ周波数は一義的に定義されず、本開示の文脈では、0.05THz、特に0.1THzまたは0.2THzの周波数で始まると理解され得る。対応して、テラヘルツ周波数範囲は、最大20THz、特に最大10THzまたは最大3THzの周波数を含み得る。1つの可能な定義によれば、THzスペクトル範囲は、1mm~0.1mmの範囲内の波長に対応し得る。テラヘルツ電磁スペクトルは、一般に、マイクロ波と遠赤外線との間にあると理解され得る。
【0174】
以下では、テラヘルツ強誘電共振器(TFR)の例を用いて、請求項1に記載のヘテロ構造を有する装置について説明する。
【0175】
図1aは、TFR100の一例を示す。典型的なTFR100は、サンドイッチ様ヘテロ構造、多層構造、または超格子であってもよいヘテロ構造を備える。ヘテロ構造は、例えば、誘電体または半導体基板102上に堆積することができる。TFR100は、複数の誘電体層104および複数の強誘電体層106を含む交互の一連の層を含む。図1aの例示的なTFR100は、6つの誘電体層104および5つの強誘電体層106を含むが、TFR100の他の実施形態は、用途に応じて、異なる数の層、例えば1つの強誘電体層および1つの誘電体層、または任意の他の数の強誘電体層および/または誘電体層を含んでもよい。
【0176】
TFR100のヘテロ構造は、例えば、誘電体層104のうちの1つ、いくつかまたはすべてがほとんどSrTiOペロブスカイト酸化物から構成され、強誘電体層106のうちの1つ、いくつかまたはすべてがほとんどPbTiOペロブスカイト酸化物から構成されたエピタキシャル成長超格子として実現することができる。代替的に、強誘電体層106は、例えば、チタン酸バリウムもしくはチタン酸ジルコン酸鉛などのペロブスカイト構造を有する他の酸化物、または酸化ジルコニウムもしくは酸化ハフニウム、特にドープ酸化ハフニウムなどの非ペロブスカイト酸化物を含んでもよい。例えばハロゲン化物を含む他の材料組成も可能である。
【0177】
誘電体層104の個々の層の典型的な厚さhおよび強誘電体層106の典型的な厚さhは、数nm~数十nmの範囲内とすることができる。誘電体層104の数および強誘電体層106の数は、数個~数十個~数百またはさらにはそれ以上まで変化し得る。この例では、誘電体層104および強誘電体層106の全体の厚さH、ならびに装置の上面の面積Sに関連し得る装置の側方面積は、寄生誘導性を回避するために、ヘテロ構造における特徴的なテラヘルツ波長λ/√ε10μm(真空中で3THzテラヘルツの周波数を有する電磁波の波長に対して誘電率ε100およびλ100μm)を超えない。
【0178】
強誘電材料は、分極の一軸異方性を有する強誘電分極ドメイン108、110を保持し、これは自然に発生するか、または歪み誘起されるか、および/または歪み設計によって調整され得る。この目的のために、強誘電体層106内の誘電体層104間のエピタキシャル関係が有用であり得るが、必須ではない。さらに、誘電体層104または強誘電体層106と基板102との間の誘電関係が有用であり得るが、必須ではない。
【0179】
図1aに示す例によれば、強誘電分極ドメイン108、110の分極は、ヘテロ構造の層の表面法線に沿って規定されるz軸に沿って配向される。しかしながら、分極の他の向きも可能である。
【0180】
図1aのヘテロ構造の強誘電体層106は絶縁性であり、ヘテロ構造は絶縁性である。ヘテロ構造は、底部電極112と上部電極114との間に閉じ込められている。底部電極112および上部電極114の各々は、1~10nmの範囲内の厚さを有することができ、金属または半導体材料を含む。底部電極112、上部電極114、ならびに誘電体層104および強誘電体層106を有するヘテロ構造の組合せは、実効的なキャパシタと考えることができる。TFR100は、例えば、基板102上に誘電体層104および強誘電体層106を後続しておよび/または交互に堆積することによって製造することができる。この場合、底部電極112は、ヘテロ構造の堆積の前に基板102上に堆積される。その結果、底部電極112の少なくとも一部分は、TFR100の基板102とヘテロ構造との間に配置される。上部電極114は、ヘテロ構造の堆積後の追加の堆積プロセスにおいてヘテロ構造の上方に製造することができる。外部回路との電気的接続を実施するために、底部電極112に底部接点116を取り付けることができ、上部電極114に上部接点118を取り付けることができる。
【0181】
図1bは、TFR100の電子グラフィック記号130を示す。
【0182】
誘電体層104と強誘電体層106との交互の組合せの特徴は、各強誘電体層106の分極が対応する誘電体-強誘電体界面において終端し、界面脱分極電荷を生成することである。界面脱分極電荷は、分極終端部の先頭において正であり、これはヘテロ構造の個々の強誘電体層106の誘電体-強誘電体界面に対応し、その最後尾において負であり、これはヘテロ構造の同じ個々の強誘電体層106の反対の誘電体-強誘電体界面に対応する。界面脱分極電荷は、脱分極場を引き起こす。界面脱分極電荷によって誘起される脱分極場は、エネルギー的に費用がかかる。これにより、分極パターンを形成する強誘電分極ドメインが形成される。分極パターンは、フィルムの一方または両方の横方向に沿って空間的周期性を有し得る。
【0183】
図2aおよび図2bは、ヘテロ構造200、210の周期的分極パターンの例を示す。図2aのヘテロ構造200は、ストライプによる周期的な分極パターンを有する。図2bのヘテロ構造210は、円筒形または泡状の周期的分極パターンを有する。例えば、強誘電体層106がPbTiOから構成される場合、図2aの周期的分極パターンは、強誘電分極ドメイン108、110の5~20nmの周期性を有することができる。周期的な分極パターンおよび結果として生じる強誘電分極ドメイン108、110の脱分極電荷の減少は、脱分極電荷に関連する静電エネルギーを実質的に低減し得る。
【0184】
分極パターン、例えば図2aおよび図2bのヘテロ構造200、210の周期的分極パターンは、振動を実行することができる。分極パターンの振動とサブTHz~THz信号との結合は、本開示の重要な態様を構成する。ここで、サブTHz~THz信号は、テラヘルツ周波数範囲内の周波数を有し得る。サブTHz~THz信号のテラヘルツ周波数範囲は、共振結合を促進するために共振周波数のテラヘルツ周波数範囲に対応してもよく、または非共振結合の場合にはより広い周波数範囲であってもよい。サブTHz~THz信号は、電気回路の電子の振動またはテラヘルツ電磁波の振動であってもよく、またはこれに関連してもよい。
【0185】
構造レベルでは、強誘電分極ドメイン108、110の振動、または分極パターンの振動はそれぞれ、共振周波数を有する周期的分極パターンの動的振動モードに関連し得る。特に、強誘電分極ドメイン108、110の振動、または分極パターンの振動はそれぞれ、全体的な分極の振動または局所的な分極の振動に関連し得る。分極パターンの振動は、サブTHz~THz信号と結合することができる。
【0186】
本開示は、必ずしもそうとは限らないが、有利には、共振結合を利用して、分極パターンの振動とサブTHz~THz信号との間の強力かつ効率的な結合を達成することができる。共振結合は、サブTHz~THz信号の周波数が共振周波数に合致するときに生じる。これに関連して、合致は、2倍以内、特に1.5倍または1.1倍以内の合致を指すことができる。
【0187】
サブTHz~THz信号が波長0.1~1mmのテラヘルツ電磁波である状況では、テラヘルツ波長は装置の厚さを超え得、この場合、テラヘルツ電磁波の作用は、TFR100に作用する均一な時間依存電場のうちの1つであると考えることができ、これは実効的なキャパシタ装置と考えることができる。したがって、TFR100の応答は、有効動的周波数依存インピーダンスZTFRによって記述することができる。N対の強誘電体層106およびN対の誘電体層104によって形成されたヘテロ構造の場合、有効動的周波数依存インピーダンスZTFRは、以下のように記述することができる。
【0188】
【数1】
【0189】
式中、hは誘電体層104のうちの1つの厚さであり、εは誘電体層104のうちの1つの誘電率であり、hは強誘電体層106のうちの1つの厚さであり、εは強誘電体層106のうちの1つの誘電率であり、εは真空の誘電体誘電率であり、Sはヘテロ構造の側方面積である。サブTHz~THz信号の周波数範囲内のεの周波数依存性は、分極パターンの振動および対応する共振に関連する。したがって、それは、共振を制御することによって、例えば、共振周波数および動的振動モードを制御することによって、ならびに/または、特定の動的振動モード、例えば主共振周波数および/もしくは主要共振周波数を有する主要共振モードおよび/もしくは主共振モードを選択することによって、制御され得る。
【0190】
一例として、εに対するドメインチェーンの交互の収縮-膨張振動に関連する特定の動的振動モードに対応する共振の効果を提示する。この例では、ε=ε(ω)は、Luk’yanchuk他、Physical Review B 98,024107(2018)において導出される以下の式で表すことができる。
【0191】
【数2】
【0192】
式中、Γは減衰係数であり、エネルギー散逸に関連する。例えば、エネルギー散逸は、磁壁振動に起因し得る。不均一係数g~0.4-0.9は、誘電体層104のうちの1つと強誘電体層106のうちの1つとの間の界面付近の電場分布の不均一性を説明する。
【0193】
図3は、本開示の一実施形態による、周波数ν(THz)(式中、ν(THz)=ω/2π)の関数としての典型的な誘電率300を示す。誘電率は複素値を有し、図3では、誘電率300の実数部Re εと誘電率300の虚数部Im εとが別個に示されている。共振周波数
【数3】
は、誘電率300の実数部Re εが0となる周波数として、グラフから読み取ることができる。共振周波数は、有利には、サブTHz~THz信号の周波数範囲内に位置する。
【0194】
図4は、PbTiOからなる強誘電体層106と、SrTiOからなる誘電体層104とを有する本開示の一実施形態による、共振周波数
【数4】
に対する強誘電体層のうちの1つの厚さhの影響を示すグラフ400を示す。強誘電体層の厚さhは、共振周波数を調整するように有利に選択することができる。例えば、ヘテロ構造の個々の層の所定の最大厚さまたはヘテロ構造の任意の層の所定の最大厚さは、例えば100nm、特に70nmまたは40nmの値に調整することができる。そうすることによって、共振周波数をサブTHz~THz信号の周波数に有利に整合させて、例えば共振結合による、分極パターンの振動とサブTHz~THz信号との間の強力で効率的な結合を達成することができる。加えて、共振周波数νを調整するために、強誘電体層106の材料および誘電体層104の材料を有利に選択することができる。加えて、静電場および/または機械的応力をヘテロ構造に有利に加えて、共振周波数νを調整することができる。
【0195】
図5は、周波数ν(THz)に対するインピーダンス振幅|ZTFR|の依存性を示す。グラフ500は、強誘電体層の3つの異なる厚さに対するインピーダンス振幅|ZTFR|を与え、h1はh=h=10nmに対応し、h2はh=h=15nmに対応し、h3はh=h=20nmに対応する。インピーダンス振幅|ZTFR|は、共振周波数νと類似または同一の周波数で最大となる。ヘテロ構造のインピーダンス振幅の周波数依存性は、例えば並列LC共振回路のような周知の電子部品のインピーダンス振幅の周波数依存性と同様である。したがって、ヘテロ構造およびTFR100装置は、例えば、サブTHz~THz信号の周波数範囲で動作する信号受信機、送信機、または処理装置のような電子装置に利用することができ、ヘテロ構造およびTFR100装置の集積および適用は、有利には、例えばLC共振回路のような周知の電子部品の集積および適用のための高度に開発された概念を利用することができる。
【0196】
本開示によれば、強誘電体層の厚さhは、共振周波数ν、したがってインピーダンス振幅の周波数依存性、特にインピーダンス振幅が最大値を有する周波数を調整するように有利に選択することができる。ここでも、強誘電体層106の材料および誘電体層104の材料を有利に選択することができ、ならびに/または静電場および/もしくは機械的応力をヘテロ構造に加えて共振周波数ωを調整することができる。
【0197】
図6および図7は、TFR100を使用し、サブTHz~THz信号の周波数範囲内で動作する信号受信機、送信機、または処理装置が特に有益であり得る例示的な適用を示す。
【0198】
例えば、図6に示すように、テラヘルツ電磁波の送信機および/または受信機の構成要素としてTFR100を利用する装置は、衛星通信において用途を見出すことができる。テラヘルツ電磁波602は、各々がTFR100に基づく送信機および/または受信機を備える第1の衛星604と第2の衛星606との間で交換され得る。衛星間の空間は、テラヘルツ電磁波602の伝播を可能にするために、テラヘルツのスペクトル範囲において透明である。TFR100、特にTFR100を有する集積回路は、エネルギー効率が特に重要である環境において、第1の衛星604および第2の衛星606のためのエネルギー効率の高い通信手段を提供し得る。TFR100はまた、軽量通信手段を提供し、これにより、第1の衛星604および第2の衛星606を宇宙に打ち上げるコストを低減することができる。重要なことに、テラヘルツ電磁波602とTFR100との間の共振結合は、周波数選択的な通信手段を提供し、TFR100の共振周波数とは異なる周波数における放射線からのノイズを抑制する。この利点は、様々な周波数の放射線が豊富であり得る宇宙環境において特に重要であり得る。
【0199】
さらに、図7に示すように、テラヘルツ電磁波の送信機および/または受信機の構成要素としてTFR100を利用する装置は、この周波数範囲における6G WiFi通信6Gの基礎を形成することができる。TFR100は、通信ハブまたはエンドユーザ装置704の集積電気回路の他の電気構成要素と高度に集積することができ、したがって、消費者製品にコスト効率的な通信技術を提供する。特に、単一の装置内の同じまたは類似のTFR100を、一方では電磁波702に結合するために、他方では集積回路内の電子信号処理のために使用することができる。通信ハブとエンドユーザ装置704の両方が、各々が1つまたは複数のTFR100を有する集積回路を備えてもよい。
【0200】
本開示によるTFR100装置は、既存の、小型化され、高度に開発された半導体技術および集積回路への集積に有利に適合する。その小さい側方面積のために、TFR100は、ダイオードまたはトランジスタなどの半導体素子と共集積化することができる。
【0201】
図8は、本開示の一実施形態による、TFR100および半導体素子802を有する集積回路800を示す。TFR100装置の一部分は、半導体素子802の一部分と共に単一のプロセスステップで処理、例えば堆積または構造化することができる。例えば、TFR100装置の誘電体層104、強誘電体層106、または底部電極112および/もしくは上部電極114などのTFR100の層は、単一の堆積ステップで半導体素子802の同様の層と共に堆積することができる。また、単一のエッチングステップにおいてTFR100装置の層を半導体素子の層と共にエッチングすることもできる。また、単一のマスキングステップにおいてTFR100装置の層を半導体素子の層と共にマスクすることもできる。テラヘルツ電磁波用の送信機を駆動するためのドライバ回路、または、テラヘルツ電磁波用の受信機を読み出すための読み出し回路は、ダイオードやトランジスタなどの半導体素子802を利用して実装することができる。例えば、TFR100のヘテロ構造を、ダイオードまたはトランジスタ802、特にトランジスタのゲートに結合して、テラヘルツ電磁波のサブTHz~THz信号を振動から極性信号に変換する整流器を実装することができる。
【0202】
TFR100装置の周波数依存特性、特に、TFR100のインピーダンス振幅の周波数依存性は、特定の装置における適用のために有利に最適化され得る。加えて、例えばRC回路のようなTFR100装置を含む回路の周波数依存インピーダンスは、回路内に負荷抵抗器のような追加の電気部品を集積することによって最適化することができる。負荷抵抗器は、図9aに示すようにTFR100装置と直列に集積された負荷抵抗900として、または図9cに示すようにTFRと並列に集積された負荷抵抗920として実装されてもよい。
【0203】
図9bおよび図9dは、TFR100の電子グラフィック記号130、直列の抵抗器912、および並列の抵抗器932を有する対応する回路図910、930を示す。
【0204】
図9bの回路図910による回路を実装することは、特定の装置における用途の要件に従って抵抗を最適化するように厚さおよび材料組成を選択することができる、1つまたはいくつかの金属または半導体層から構成される追加の抵抗部分902と一体化する延長上部電極114または延長底部電極112を形成することによって達成することができる。
【0205】
図9dの回路図930による回路を実装することは、上部電極114と底部電極112とを接続する金属または半導体シャント922を用いて、シャント状構造として並列負荷を集積することによって達成することができる。金属または半導体シャント922は、上部電極114と底部電極112との間に配置されてもよく、または金属または半導体シャント922の少なくとも一部分は、上部電極114と底部電極112との間のボリュームの外側に配置されてもよい。
【0206】
図10は、2つのTFR100を備える集積回路1000の別の例を示す。TFR100はサイズが小さいため、様々な集積回路に共集積化することができる。TFR100を備えることができ、かつ/またはそれに基づくことができる集積回路のさらなる例は、テラヘルツ放射のセンサとしても参照され得る、テラヘルツアンテナ、送信機、および受信機を含む。特に、TFR100を備える集積回路の装置は、集積回路の別の装置から放出されるサブTHz~THz信号を検出するための受信機として適用することができる。
【0207】
代替的または付加的に、TFR100を備える集積回路の装置は、集積回路の別の装置によって検出されるサブTHz信号~THz信号を生成するための送信機として適用されてもよい。有利には、TFR100に基づく送信機およびTFR100に基づく受信機は、サブTHz~THz信号の送信、誘導、および/または操作のために同じ集積回路上に配置することができる。図10は、対応する集積回路1000の一例を示す。この例では、半導体素子802は、例えば、プロセッサまたはメモリ装置に対応することができる。TFR100は、テラヘルツ電磁波1002を介して半導体素子802間の通信を確立するために使用され得る。テラヘルツ電磁波1002は、真空、ガス、誘電体または他の形態の物質中を自由に伝播する電磁波であってもよく、または導波路構造によって誘導されてもよく、または金属チャネル、特にプラズモンチャネルによってサポートされてもよい。この実施形態では、TFR100は、集積電気回路の構成要素、例えば送信機、受信機、または送受信機として機能するが、加えて、後により詳細に説明するテラヘルツ光学装置として機能してもよい。
【0208】
図11aは、TFR100を有する周波数フィルタの一実施形態に対応する回路図1100を示す。回路図1100による回路は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタとして利用されてもよい。ハイパスフィルタは、図11aに示すように、直列のTFR100、130と抵抗器912の両方にわたって入力電圧Uinを配置することによって実装することができる。TFR100、130は、インピーダンスZTFR(ω)を有する。直列の抵抗器912は、本質的に周波数に依存しない抵抗Rを有する。ハイパスフィルタは、直列の抵抗器912にわたる高電圧を出力電圧Uout,highとして使用することによって完成することができる。出力電圧Uout,highは、以下の式を使用して記述することができる。
【0209】
【数5】
【0210】
図11bは、本開示の一実施形態による、ハイパスフィルタの出力電圧Uout,high1110の周波数依存性を示す。
【0211】
ローパスフィルタは、電圧出力Uout,lowがTFR130から取得される同じ回路によって実現される。図11cは、以下によって与えられるような、ローパスフィルタの周波数依存出力電圧Uout,low1120を示す。
【0212】
【数6】
【0213】
TFR100のテラヘルツ電磁波への結合を利用して、TFR100はまた、テラヘルツ電磁波を誘導し、および/またはその振幅、位相、方向、もしくは(パルス化テラヘルツ電磁放射の場合)パルス形状などのその特性を操作するために、テラヘルツ光学装置において利用することもできる。有利には、TFR100のヘテロ構造の層状構造に起因して、層状誘電体光学系の設計のための高度に開発された技法を使用して、例えば、ミラー、ビームスプリッタ、減衰器、位相調整器、ダイクロイックミラー、(テラヘルツ)光学ハイパスフィルタ、(テラヘルツ)光学ローパスフィルタ、(テラヘルツ)バンドパスフィルタ、または(テラヘルツ)光学ノッチフィルタとして、特定の用途の要件に適合するようにTFR100を調整することができる。有利には、テラヘルツ光学装置としてのTFR100を有する装置の使用は、同じ装置の電子共振器としての、例えば受信機としての使用と組み合わせることができる。特に、TFR100に吸収されたテラヘルツ電磁波の一部分は検知に使用することができ、一方、テラヘルツ電磁波の別の部分は、テラヘルツ光学装置として機能する同じTFR100によって誘導、反射、または透過することができる。
【0214】
図12は、本開示の一実施形態による、テラヘルツ電磁波を操作するためのTFR100を有するテラヘルツ光学装置1200の一例を示す。テラヘルツ光学装置1200は、入射テラヘルツ電磁波1202の一部分を反射して、反射テラヘルツ電磁波1204を生成することができる。装置はまた、入射テラヘルツ電磁波1202の一部を透過して、透過テラヘルツ電磁波1206を生成することができる。さらに、テラヘルツ光学装置1200は、入射テラヘルツ電磁波1202の一部分を吸収することができる。テラヘルツ光学装置1200は、電子信号処理のために、例えば入射テラヘルツ電磁波1202を感知するために、装置によって吸収された入射テラヘルツ電磁波1202の部分を使用することができる。
【0215】
図13aおよび図13bは、本開示の一実施形態によるヘテロ構造の周波数ν(THz)の関数としての光学特性を示す。図13aは、複素屈折率n=√ε1300を示す。複素屈折率1300は複素量であるため、複素屈折率1300の実数部Re nと複素屈折率1300の虚数部Im nとは別個に与えられる。図13bは、垂直入射に対する対応するテラヘルツ光学反射係数Rを示す。テラヘルツ光学反射係数Rは、以下のように複素屈折率n=√ε1300に関連付けることができる。
【0216】
【数7】
【0217】
誘電体層104、強誘電体層106、底部電極112および上部電極114のようなTFR100のヘテロ構造の層の特性は、層状誘電体光学系の設計のための高度に開発された技法を使用して調整することができる。特に、ヘテロ構造の層の特性は、反射テラヘルツ電磁波1204および/または透過テラヘルツ電磁波1206の所望の振幅、位相、または方向を達成するように調整することができる。例えば、ヘテロ構造の層の厚さおよび材料組成を調整することができる。代替的または付加的に、共振周波数ωを調整するために、静電場および/または機械的応力を常にまたは動的に(例えば、テラヘルツ光学スイッチングのために)ヘテロ構造に加えることができる。TFR100を有するテラヘルツ光学装置は、例えば、無線テラヘルツ通信技術において、または、オンチップ無線信号伝送および処理のために有利に適用することができる。これらの用途のいくつかでは、ヘテロ構造の厚さを、放射波長を超えるように、または放射波長と適合するように調整することが有用であり得る。これは、底部電極112または上部電極114の堆積を複雑にする可能性がある。有利には、テラヘルツ光学装置1200が電子信号処理に使用されない用途では、上部電極112および/または底部電極114の堆積を省略することができる。
【0218】
実施形態および図面の説明は、本開示およびそれに関連する利点を説明する役割を果たすにすぎず、いかなる限定を意味するとも解釈されるべきではない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲から決定されるべきである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10
図11a
図11b
図11c
図12
図13a
図13b