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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169626
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】治療薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/14 20060101AFI20241128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07D495/14 CSP
A61P35/00
A61P7/00
A61K31/5517
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165038
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2023556623の分割
【原出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021175996
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(71)【出願人】
【識別番号】803000012
【氏名又は名称】株式会社テクノネットワーク四国
(71)【出願人】
【識別番号】503094117
【氏名又は名称】株式会社セルフリーサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡士
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】森下 了
(72)【発明者】
【氏名】尾澤 哲
(57)【要約】
【課題】新規標的タンパク質分解誘導化合物、該化合物を含む癌治療用組成物、特に重篤な催奇性を引き起こさない癌治療用組成物を提供する。
【解決手段】SALL4とPLZFの両方のタンパク質の分解を低減したサリドマイド誘導体が重篤な催奇性を回避できる標的タンパク質分解誘導化合物のE3 ligase binderになるという上記知見により、SALL4とPLZFの両方のタンパク質の分解能を低減したサリドマイド誘導体を見出し、さらに該誘導体を含む標的タンパク質分解誘導化合物が抗ガン作用を有することを確認して、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療薬組成物、特に、新規標的タンパク質分解誘導化合物、該化合物を含む癌治療用組成物、より詳しくは、催奇性を回避した癌治療用組成物に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願2021-175996号優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
(サリドマイド薬害)
サリドマイドは、半世紀以上前に妊婦における睡眠導入剤として世界中で使用された薬剤である。しかし、服用した妊婦から生まれた胎児の四肢に重篤な催奇性を示したことから、サリドマイド薬禍といわれるほどの世界規模の薬害問題を引き起こした。
しかし、サリドマイドは、ハンセン病や多発性骨髄腫に対する薬効が認められ、現在、サリドマイドやサリドマイド誘導体 (レナリドミド及びポマリドミド) は厳格な安全管理のもと、多発性骨髄腫などの血液がんに対する治療薬として年間約1兆円の規模で使用されている非常に有効な薬剤である。
サリドマイドやサリドマイド誘導体 (Immunomodulatory drug /IMiD)は、タンパク質分解酵素であるE3ユビキチンリガーゼの構成因子のひとつであるセレブロン(CRBN)へ結合することにより、様々なタンパク質の分解を誘導し、その結果、多様な薬理作用および副作用を示すことが明らかとなっている。
【0003】
胎児の四肢発生に重要な役割を果たすタンパク質SALL4 (Sal-like protein 4)が、 IMiD 依存的にCRBNによって分解誘導されることが報告されている。また、最近、本発明者らは、サリドマイドが体内で代謝されて生じる水酸化体(5位水酸化サリドマイド)が、サリドマイドよりも効率的にSALL4に作用するメカニズムを構造解析によって明らかにした(参照:非特許文献1)。
しかしながら、サリドマイドやサリドマイド誘導体によって引き起こされる催奇性のメカニズムに関しては未解明な点が多く残されており、SALL4以外の原因タンパク質の存在が示唆されていた。
【0004】
(標的タンパク質分解誘導化合物)
ユビキチン・プロテアソームシステム(Ubiquitin Proteasome System:UPS)を利用して、細胞内の標的タンパク質の分解(Targeted Protein Degradation,TPD)を誘導する低分子化合物としてPROTAC(標的タンパク質分解誘導化合物:Proteolysis Targeting Chimera,PROTAC)が知られている(参照:非特許文献2)。
標的タンパク質分解誘導化合物(PROTAC化合物)は、E3ユビキチンリガーゼと標的タンパク質とを結びつけ三元複合体を形成する。該形成により、標的がポリユビキチン化され、プロテアソームによる分解を受ける。標的タンパク質分解誘導化合物は、ポリユビキチン化反応後該複合体から離脱し、新たな標的とE3リガーゼとの結合を繰り返すことにより触媒的に作用する。この触媒作用により、細胞内で標的タンパク質がユビキチン化後プロテアソーム消化により枯渇して細胞死に致し、各種の疾患(例、癌)に効果を有する。
【0005】
(先行特許)
特許文献1は、「6-ヒドロキシレナリドミド、その塩、又はその溶媒和物を含む、医薬組成物」を開示している。
特許文献2は、「イミド系タンパク質分解モジュレーター」を開示している。
しかし、これらの文献は、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物を開示又は示唆をしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-20873号公報
【特許文献2】特表2017-513862号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】(2020) Structural bases of IMiDselectivity that emerges by 5-hydroxythalidomide Nat Commun 11: 4578
【非特許文献2】https://www.funakoshi.co.jp/contents/63923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、サリドマイド催奇性に関わるタンパク質として新たに PLZF(promyelocytic leukemia zinc finger) を見出し、サリドマイド催奇性の分子メカニズム、さらに、PLZFはサリドマイドやサリドマイド誘導体、そして 5位水酸化サリドマイドによって CRBN依存的に分解することを明らかにした。さらに、本発明者らは、次に、サリドマイド感受性の動物種であるニワトリ胚を対象にPLZFの遺伝子ノックダウン実験を行った結果、ニワトリ胚の四肢発達においてPLZF は重要な役割を果たすことを確認し、さらに、ニワトリ胚へサリドマイドや5位水酸化サリドマイドを投与することによって、ニワトリ胚の肢芽においてPLZFが減少している一方で、SALL4は減少しないことを確認した。加えて、ニワトリ胚へPLZFを過剰発現することによって、サリドマイド投与に伴って引き起こされる繊維芽細胞増殖因子のFgf8やFgf10の発現減少が、回復することを明らかにした。これにより、CRBNによるサリドマイド依存的なPLZFの分解がサリドマイド催奇性に直接関与していることを確認し、ヒトやサル、ウサギのようなサリドマイドに対して感受性の高い生物種(哺乳類)においてはサリドマイドが体内の代謝酵素により5位水酸化サリドマイドへ代謝されることと、SALL4とPLZFの両方のタンパク質が分解されることによって、重篤な催奇性が引き起こされることを確認した。
これにより、本発明では、新規標的タンパク質分解誘導化合物、該化合物を含む癌治療用組成物、特に重篤な催奇性を引き起こさない癌治療用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、SALL4とPLZFの両方のタンパク質の分解を低減したサリドマイド誘導体が重篤な催奇性を回避できる標的タンパク質分解誘導化合物のE3 ligase binderになるという上記知見により、SALL4とPLZFの両方のタンパク質の分解能を低減したサリドマイド誘導体を見出し、さらに該誘導体を含む標的タンパク質分解誘導化合物が抗ガン作用を有することを確認して、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
1.以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物、
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」、
ここで、該セレブロンバインダは、以下の一般式(1)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択される、標的タンパク質分解誘導化合物。
【化1】
(ここで、Rは水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
2.以下の構成を有する、前項1に記載の標的タンパク質分解誘導化合物、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(1)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化2】
(ここで、Rは水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、JQ-1又はBirabresibである、
標的タンパク質分解誘導化合物。
3.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(7)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化3】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib 又はJQ-1である、標的タンパク質分解誘導化合物。
4.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(8)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化4】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、標的タンパク質分解誘導化合物。
5.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(6)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化5】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、標的タンパク質分解誘導化合物。
6.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(3)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化6】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib 又はJQ-1である、標的タンパク質分解誘導化合物。
7.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(5)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化7】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、標的タンパク質分解誘導化合物。
8.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(4)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化8】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、標的タンパク質分解誘導化合物。
9.SALL4又はPLZFのタンパク質分解能が低減している、前項3~8のいずれか1に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
10.催奇性が低減されている、前項3~8のいずれか1に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
11.前項1~10のいずれか1以上の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、癌治療用組成物。
12.下記一般式(1)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む癌治療用組成物。
【化9】
(ここで、、Rは水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
13.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(7)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項12に記載の癌治療用組成物。
【化10】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
14.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(8)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項12に記載の癌治療用組成物。
【化11】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
15.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(6)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項12に記載の癌治療用組成物。
【化12】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
16.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(3)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項12に記載の癌治療用組成物。
【化13】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
17.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(5)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項12に記載の癌治療用組成物。
【化14】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
18.以下の一般式(5)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む、5番染色体欠損骨髄異形成症候群治療剤。
【化15】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
19.以下の一般式(3)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む、5番染色体欠損骨髄異形成症候群治療剤。
【化16】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。)
【0011】
さらに、本発明は、以下を含む。
1.以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物、
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」、
ここで、該セレブロンバインダは、以下の一般式(10)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択される、標的タンパク質分解誘導化合物。
【化17】
(ここで、XはCH又はC=Oであり、R10は水素、官能基、原子又はNRL1L2でありかつRL1及びRL2は水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子であり、R11は水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、並びに、R12は水素、F、Br、CF3、I、Cl、OH、CH3、OCF3又はOCH3である。)
2.前記標的タンパク質バインダは、JQ-1又はBirabresibである、前項1に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
3.前記一般式(10)のXはCHであり、R11はCF3であり、R12は水素である、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
4.前記一般式(10)のXはCHであり、R11はFであり、R12は水素である、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
5.前記一般式(10)のXはCHであり、R11はClであり、R12は水素である、請求項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、新規標的タンパク質分解誘導化合物及び該化合物を含む癌治療用組成物、並びに、催奇性が低減した癌治療用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】リンカーの例示。
図2】リンカーの例示。
図3】各サリドマイド誘導体の構造。
図4】各サリドマイド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZF対する親和性(分解誘導能)の解析の結果(左カラムはIKZF1、中央カラムはSALL4、右カラムはPLZFを示す)。
図5】各サリドマイド誘導体のIKZF1、SALL4及びCRBNに対する親和性(分解誘導能)の分解解析の結果。
図6】各メタ位の置換基挿入サリドマイド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する親和性(分解誘導能)の解析の結果{(1)は使用した各メタ位の置換基挿入サリドマイド誘導体の構造を示し、(2)は親和性の分析結果を示し、左カラムはIKZF1、中央カラムはSALL4、右カラムはPLZFを示す}。
図7】メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する親和性(分解誘導能)の解析の結果{(1)は使用した各メタ位の置換基挿入サリドマイド誘導体の構造を示し、(2)は親和性の分析結果を示す、XはIKZF1、YはSALI4、ZはPLZFを示す}。
図8】FC-レナリドミド及びF3CO-レナリドミドのSALL4及びPLZFへの親和性の解析の結果{(1)はFC-レナリドミド及びF3CO-レナリドミドの構造を示し、(2)は親和性の分析結果を示し、左カラムはIKZF1、中央カラムはSALL4、右カラムはPLZFを示す}。
図9】(1)CRBNへの結合能の測定方法の概要。(2)各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体のCRBNへの結合能の結果。
図10】各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の細胞培養内在性タンパク質分解能の結果。
図11】各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の多発性骨髄腫由来の培養細胞に対する抗癌活性の結果。
図12】各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の5番染色体欠損骨髄異形成症候群由来の培養細胞に対する抗癌活性の結果。
図13】公知のPROTACであるdBET1及びARV-825のネオタンパク質分解能の確認(1)及び多発性骨髄腫由来の培養細胞に対する抗癌活性の結果(2)。
図14】本発明のPROTACの作用の概要図。
図15】各PROTACの構造図。
図16】本発明のPROTACのセレブロンバインダのネオ基質に対する選択性の確認(1)及び多発性骨髄腫由来の培養細胞に対する抗癌活性の結果(2)。
図17】本発明のPROTACのSALL4及びPLZFに対する分解誘導能の結果。
図18】本発明のPROTACの抗癌作用の確認。
図19】CC-220のSALL4の分解評価。
図20】公知のPROTACの例示。
図21】公知のPROTACの例示。
図22】公知のPROTACの例示。
図23】公知のPROTACの例示。
図24】公知のPROTACの例示。
図25】公知のPROTACの例示。
図26】公知のPROTACの例示。
図27】公知のPROTACの例示。
図28】公知のPROTACの例示。
図29】公知のPROTACの例示。
図30】公知のPROTACの例示。
図31】公知のPROTACの例示。
図32】公知のPROTACの例示。
図33】IMR32細胞(神経芽腫細胞)を用いたマウスxenograftモデルにおけるPROTACの抗腫瘍効果の評価。
図34】サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドミドの分解誘導能の結果。
図35】サリドマイド誘導体の4位修飾における分解誘導能の結果。
図36】ポマリドミド骨格の5位、6位等の置換での分解誘導能の結果。
図37】レナリミド骨格の6位、7位等の置換での分解誘導能の結果。
図38】7位修飾ポマリドミド-リンカー-JQ-1誘導体(PROTAC)での分解誘導能の結果。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の対象)
本発明の対象は、以下の通りである。
〇下記一般式(1)又は一般式(10)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む癌治療用組成物(以後、「本発明の癌治療用組成物」と称する場合がある)。
〇以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物(PROTAC化合物、以後、「本発明の標的タンパク質分解誘導化合物」又は「本発明のPROTAC化合物」と称する場合がある)。
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」
【0015】
【化18】
【0016】
は水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。
【0017】
【化19】
【0018】
XはCH又はC=Oであり、R10は水素、官能基、原子又はNRL1L2でありかつRL1及びRL2は水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子であり、R11は水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、並びに、R12は水素、F、Br、CF3、I、Cl、OH、CH3、OCF3又はOCH3である。
【0019】
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の場合、RL1及びRL2は、いずれか1又は両方がリンカーと結合又はリンカーの一部となる。
官能基として、以下で述べるリンカーと結合(特に、共有結合)又はカップリング可能であれば、特に限定されないが、アルコール、ケトン、カルボン酸、アミン、エーテル、等を例示することができる。
原子として、以下で述べるリンカーと結合又はカップリング可能であれば、特に限定されないが、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン、複素環式アミン(ピペラジン、ピペリジン)等を例示することができる。
【0020】
(本発明の癌治療用組成物)
本発明の癌治療用組成物は、上記一般式(1)又は一般式(10)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を有効成分として含む。また、上記一般式(1)又は一般式(10)で示される化合物は、以下を例示することができる。加えて、該有効成分は、セレブロンバインダとして機能することができる。
塩とは、薬理上許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、酸付加塩、塩基付加塩等が好ましい。
溶媒和物とは、薬理上許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、水和物、エタノール和物等が好ましい。
【0021】
(F-レナリドミド又はその誘導体)
一般式(1)の一例として、以下の一般式(3)を例示することができる。
【0022】
【化18】
【0023】
L1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。
F-レナリドミドは、レナリドミドのアミノイソインドリノン環の6位にフッ素を結合させたレナリドミド誘導体である。F-レナリドミドは、例えば、公知のレナリドミドの合成方法において、アミノイソインドリノン環の6位にフッ素を有するように、原料化合物や反応工程等を適宜変更することにより合成可能である。
F-レナリドミドには、S体とR体の光学異性体が存在するが、本発明では、S体、R体、又はこれらの混合物(ラセミ混合物等)を対象とする。
【0024】
(レナリドミド又はその誘導体)
一般式(1)の一例として、以下の一般式(4)を例示することができる。
【0025】
【化19】
【0026】
L1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。
レナリドミドは、市販されており、自体公知の方法で製造することができる。
レナリドミドには、S体とR体の光学異性体が存在するが、本発明では、S体、R体、又はこれらの混合物(ラセミ混合物等)を対象とする。
【0027】
(Cl-レナリドミド又はその誘導体)
一般式(1)の一例として、以下の一般式(5)を例示することができる。
【0028】
【化20】
【0029】
L1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。
Cl-レナリドミドは、レナリドミドのアミノイソインドリノン環の6位に塩素を結合させたレナリドミド誘導体である。Cl-レナリドミドは、例えば、公知のレナリドミドの合成方法において、アミノイソインドリノン環の6位に塩素を有するように、原料化合物や反応工程等を適宜変更することにより合成可能である。
Cl-レナリドミドには、S体とR体の光学異性体が存在するが、本発明では、S体、R体、又はこれらの混合物(ラセミ混合物等)を対象とする。
【0030】
(Br-レナリドミド又はその誘導体)
一般式(1)の一例として、以下の一般式(6)を例示することができる。
【0031】
【化21】
【0032】
L1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。
Br-レナリドミドは、レナリドミドのアミノイソインドリノン環の6位にBrを結合させたレナリドミド誘導体である。Br -レナリドミドは、例えば、公知のレナリドミドの合成方法において、アミノイソインドリノン環の6位にBrを有するように、原料化合物や反応工程等を適宜変更することにより合成可能である。
Br-レナリドミドには、S体とR体の光学異性体が存在するが、本発明では、S体、R体、又はこれらの混合物(ラセミ混合物等)を対象とする。
【0033】
(FC-レナリドミド又はその誘導体)
一般式(1)の一例として、以下の一般式(7)を例示することができる。
【0034】
【化22】
【0035】
L1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。
FC-レナリドミドは、レナリドミドのアミノイソインドリノン環の6位にCF3を結合させたレナリドミド誘導体である。FC-レナリドミドは、例えば、公知のレナリドミドの合成方法において、アミノイソインドリノン環の6位にCF3を有するように、原料化合物や反応工程等を適宜変更することにより合成可能である。
FC-レナリドミドには、S体とR体の光学異性体が存在するが、本発明では、S体、R体、又はこれらの混合物(ラセミ混合物等)を対象とする。
【0036】
(F3CO-レナリドミド又はその誘導体)
一般式(1)の一例として、以下の一般式(8)を例示することができる。
【0037】
【化23】
【0038】
L1及びRL2は、それぞれ独立して、H、官能基又は原子である。
F3CO-レナリドミドは、レナリドミドのアミノイソインドリノン環の6位にF3COを結合させたレナリドミド誘導体である。F3CO-レナリドミドは、例えば、公知のレナリドミドの合成方法において、アミノイソインドリノン環の6位にF3COを有するように、原料化合物や反応工程等を適宜変更することにより合成可能である。
F3CO-レナリドミドには、S体とR体の光学異性体が存在するが、本発明では、S体、R体、又はこれらの混合物(ラセミ混合物等)を対象とする。
【0039】
上記化合物に加えて、図35図38に記載のサリドマイの誘導体、ポマリドミドの誘導体、レナリドミドの誘導体も対象とする。
【0040】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物)
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物は、「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」の構成を含む。また、該標的タンパク質分解誘導化合物は、その塩、又はその溶媒和物の形態も含む。塩とは、薬理上許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、酸付加塩、塩基付加塩等が好ましい。溶媒和物とは、薬理上許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、水和物、エタノール和物等が好ましい。
ここで、該セレブロンバインダは、上記述べた、一般式(1)又は一般式(10)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、一般式(4)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物、一般式(6)で表される化合物、一般式(7)で表される化合物及び一般式(8)で表される化合物から選択されるいずれか1以上の化合物を対象とする。
【0041】
(リンカー)
本発明のリンカーは、該リンカーの両末端がセレブロンバインダ及び標的タンパク質バインダと連結(特に、化学的(共有結合的)に連結又はカップリング)できれば自体公知のリンカーを使用することができる。
リンカーは、公知の手法により、セレブロンバインダ及び標的タンパク質バインダと連結することができる。例えば、公知のPROTACでのリンカーの結合方法として、文献「Frontiers in Chemistry, 9, 707317(2021)」を参照することができる。
さらに、例えば、リンカーは、以下の式で表すことができる。
【0042】
【化24】
【0043】
式中、qが、1より大きい整数であり;かつLが、独立して、結合、CRM1M2、O、S、SO、SO、NRM3、SONRM3、SONRM3、CONRM3、NRM3CONRM4、NRM3SONRM4、CO、CRM1=CRM2、C≡C、SiRM1M2、P(O)RM1、P(O)ORM1、NRM3C(=NCN)NRM4、NRM3C(=NCN)、NRM3C(=CNO)NRM4、0~6個のRM1及び/またはRM2基で置換されていてもよいC3-11シクロアルキル、0~6個のRM1及び/またはRM2基で置換されていてもよいC3-11ヘテロシクリル、0~6個のRM1及び/またはRM2基で置換されていてもよいアリール、0~6個のRM1及び/またはRM2基で置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択されることができる。
M1、RM2、RM3、RM4、及びRM5が、それぞれ独立して、H、ハロ、C1-8アルキル、OC1-8アルキル、SC1-8アルキル、NHC1-8アルキル、N(C1-8アルキル)、C3-11シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C3-11ヘテロシクリル、OC1-8シクロアルキル、SC1-8シクロアルキル、NHC1-8シクロアルキル、N(C1-8シクロアルキル)、N(C1-8シクロアルキル)(C1-8アルキル)、OH、NH、SH、SO1-8アルキル、P(O)(OC1-8アルキル)(C1-8アルキル)、P(O)(OC1-8アルキル)、CC-C1-8アルキル、CCH、CH=CH(C1-8アルキル)、C(C1-8アルキル)=CH(C1-8アルキル)、C(C1-8アルキル)=C(C1-8アルキル)、Si(OH)、Si(C1-8アルキル)、Si(OH)(C1-8アルキル)、COC1-8アルキル、COH、ハロゲン、CN、CF、CHF、CHF、NO、SF、SONHC1-8アルキル、SON(C1-8アルキル)、SONHC1-8アルキル、SON(C1-8アルキル)、CONHC1-8アルキル、CON(C1-8アルキル)、N(C1-8アルキル)CONH(C1-8アルキル)、N(C1-8アルキル)CON(C1-8アルキル)、NHCONH(C1-8アルキル)、NHCON(C1-8アルキル)、NHCONH、N(C1-8アルキル)SONH(C1-8アルキル)、N(C1-8アルキル)SON(C1-8アルキル)、NHSONH(C1-8アルキル)、NHSON(C1-8アルキル)、及びNHSONHからなる群より選択されることができる。
また、qが1より大きい場合、RM1またはRM2が、それぞれ独立して、別のL基と連結して、0~4個のRM5基でさらに置換することができるシクロアルキル及び/またはヘテロシクリル部分を形成することができる。
具体的には、図1図2に記載のリンカーを例示することができる。
【0044】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物)
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物は、以下の実施例により、SALL4やPLZF等の分解誘導能は低減しているので、様々な疾患(特に、癌種)に適用することができる。
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物は、本発明のセレブロンバインダを有していれば、図20~32に記載の公知の標的タンパク質バインダを含むことにより、様々な疾患の治療剤の有効成分とすることができる。
例えば、図20に記載のNo.1のARV-825の構造を基にして、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の構成を「本発明のセレブロンバインダ」-「リンカー」-「JQ1又は OTX-015(標的タンパク質バインダ)」とすれば、該化合物は、多発性骨髄腫(MM)、びまん性大細胞B細胞性リンパ腫(DLBCL)、神経芽腫(Neuroblastoma)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)又はバーキットリンパ腫(Burkitt's lymphoma)治療剤の有効成分とすることができる。
例えば、図21に記載のNo.5のSIAIS178の構造を基にして、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の構成を「本発明のセレブロンバインダ」-「リンカー」-「ダサチニブ(標的タンパク質バインダ)」とすれば、該化合物はCML(慢性骨髄性白血病)治療剤の有効成分とすることができる。
例えば、図25に記載のNo.15のUNC6852の構造を基にして、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の構成を「本発明のセレブロンバインダ」-「リンカー」-「EED226(標的タンパク質バインダ)」とすれば、該化合物はびまん性大細胞B細胞性リンパ腫(DLBCL)治療剤の有効成分とすることができる。
例えば、図31に記載のNo.40のDGY-08-097の構造を基にして、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の構成を「本発明のセレブロンバインダ」-「リンカー」-「telaprevir(標的タンパク質バインダ)」とすれば、該化合物はウイルス治療剤の有効成分とすることができる。
例えば、図31に記載のNo.41のGSK983の構造を基にして、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の構成を「本発明のセレブロンバインダ」-「リンカー」-「GSK4027(標的タンパク質バインダ)」とすれば、該化合物は抗炎症剤の有効成分とすることができる。
例えば、図32に記載のNo.42のQC-01-175の構造を基にして、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の構成を「本発明のセレブロンバインダ」-「リンカー」-「AV-1451(標的タンパク質バインダ)」とすれば、該化合物はアルツハイマー治療剤及び前頭側頭型認知症の有効成分とすることができる。
当業者は、上記例示を基にして、図20~32に記載の公知の標的タンパク質分解誘導化合物の構造を参照にして、本発明のセレブロンバインダを含む本発明の標的タンパク質分解誘導化合物を設計することができる。
【0045】
(標的タンパク質バインダ)
本発明の「標的タンパク質バインダ」は、公知のPROTACで使用されている標的タンパク質バインダを利用することができるができ、以下を例示することができる。
JQ-1(CAS No.:1268524-70-4)
OTX015 (CAS No. :202590-98-5)
Darolutamide(CASNo. :1297538-32-9)
Ceritinib(CAS No. :1032900-25-6)
Brigatinib(CAS No.:1197953-54-0)
Crizotinib(CAS No.:877399-52-5)
Alectinib(CAS No. :1256580-46-7)
Venetoclax (CAS No. :1257044-40-8)
Dasatinib(CAS No. :302962-49-8)
Bosutinib(CAS No. :380843-75-4)
RX-37(CAS No. :1627715-60-9)
BI-882370 (CAS No. :1392429-79-6)
ibrutinib (CAS No. :936563-96-1)
CGI1746(CAS No. :910232-84-7)
Palbociclib(CAS No.:571190-30-2)
Ribociclib(CAS No.:1211441-98-3)
Abemaciclib(CAS No.:1231929-97-7)
Apcin-A (CAS No. :1683617-62-0)
Apcin(CAS No. :300815-04-7)
UNC1999(CASNo. :1431612-23-5)
EED226(CAS No. :2083627-02-3)
Dacomitinib(CASNo. :1110813-31-4)
Lapatinib(CAS No. :388082-78-8)
Gefitinib (CAS No.:184475-35-2)
afatinib (CAS No. :850140-72-6)
Quizartinib (AC220) (CAS No. :950769-58-1)
Gilteritinib(CASNo. :1254053-43-4.)
MLN-518 (CAS No. :387867-13-2)
Sunitinib (CAS No. :341031-54-7)
Ponatinib (CAS No. :943319-70-8)
ZYF0033
MI-1061(CAS No. :1410737-34-6)
MI-77301(CAS No. :1303607-60-4)
PD0325901(CAS No. :391210-10-9)
EPZ015666(CAS No. :1616391-65-1)
RA190(CAS No. :1617495-03-0)
SI-109(CAS No. :2429877-30-3)
CJ-887(CAS No. :1220952-08-8)
GNF-8625(CAS No. :1196546-33-4)
I-BRD9(CAS No. :1714146-59-4)
BI-7273(CAS No. :1883429-21-7)
cortistatin A(CAS No.:882976-95-6)
SNS-032(CAS No. :345627-80-7)
wogonin(CAS No. :632-85-9)
CX-4945(CAS No. :1009820-21-6)
Defactinib(CAS No.:1073154-85-4)
quizartinib(CAS No.: 950769-58-1)
nexturastat A(CAS No.:1403783-31-2)
EED226(CAS No. :2083627-02-3)
UNC1999(CAS No. :1431612-23-5)
Telaprevir(CAS No.:402957-28-2)
GSK4027(CAS No. :2079896-25-4)
AV-1451 (T807) (CASNo. :1415379-56-4)
【0046】
(対象疾患)
対象疾患は、以下を例示することができるが特に限定されない。
多発性骨髄腫(MM)、びまん性大細胞B細胞性リンパ腫(DLBCL)、神経芽腫(Neuroblastoma)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、バーキットリンパ腫(Burkitt's lymphoma)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、T細胞リンパ腫(TCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC (Triple-negative breast cancer))、悪性黒色腫(Melanoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma:MCL)、大腸がん(CRC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、卵巣がん(ovarian cancer)、多発性骨髄腫(MM:Multiple Myeloma)、急性T細胞リンパ腫(Acute T-cell lymphoma)、乳癌、ER(エストロゲン受容体)陽性の乳癌細胞(ER+BC)、肝臓がん、前立腺がん、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)、非ホジキンリンパ腫(non Hodgkin lymphoma:NHL)、ウイルス疾患、炎症疾患及びアルツハイマー及び前頭側頭型認知症。
【0047】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の例示)
本発明の好ましい標的タンパク質分解誘導化合物を以下に例示するが、特に限定されない。
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」
「レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
「F-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
「F3C-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
「F3CO-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
「Cl-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
「Br-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
「F-ポマリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
「F3C-ポマリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
【0048】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の合成例)
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の合成は、自体公知の標的タンパク質分解誘導化合物の合成方法を適宜修正して実施することができる。
例えば、「F-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」は、公知の標的タンパク質分解誘導化合物であるARV-825(CAS No.:1818885-28-7)の合成過程において、「レナリドミド」の代わりに「F-レナリドミド」を使用することにより、合成することができる。
【0049】
(本発明の癌治療用組成物の適応癌腫)
有効成分として含まれる以下の化合物の好ましい適用癌腫は、以下の実施例の結果により、血液癌(多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、急性骨髄性白血病、等)である。
〇一般式(4)で表される化合物(レナリドミド)
〇一般式(5)で表される化合物(Cl-レナリドミド)
〇一般式(3)で表される化合物(F-レナリドミド)
〇「レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
【0050】
(本発明の癌治療用組成物の適応癌腫)
有効成分として含まれる以下の化合物の好ましい適用癌腫は、以下の実施例の結果により、催奇性が低減されており、血液癌だけでなく、以下の癌種も含む。
〇一般式(5)で表される化合物(Cl-レナリドミド)
〇一般式(3)で表される化合物(F-レナリドミド)
〇一般式(6)で表される化合物(Br-レナリドミド)
〇一般式(7)で表される化合物(F3C-レナリドミド)
〇一般式(8)で表される化合物(F3CO-レナリドミド)
〇「F-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
〇「F3C-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
〇「F3CO-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
〇「Br-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
〇「Cl-レナリドミド」-「リンカー」-「JQ-1又はBirabresib」
癌腫
膀胱癌、腸癌、乳房癌、子宮頚部癌、結腸癌、食道癌、頭部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、頚部癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、白血病、悪性リンパ腫、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、肝細胞癌、腎細胞癌、悪性黒色腫、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、肉腫、乳癌、子宮癌、肺癌、精巣癌、甲状腺癌、食道癌等である。
【0051】
(催奇性の低減)
催奇性とは、薬剤などのある種の物質が生物の正常な発生を阻害して奇形を生じじさせる性質や作用のことで、催奇形性と同義で使われている。
本発明の「催奇性が低減されている」とは、レナリドミド又はPROTAC化合物中のE3 ligase(セレブロン) binderであるレナリドミドのセレブロンに直接又は間接的に結合することによるSALL4、PLZF、CK1α、IKZF1又はIKZF3 のタンパク質分解能を100とした場合で表すことができる(参照:実施例17)。
F-LenのSALL4の分解能は、レナリドミドと比較して、1~70、好ましくは5~60、より好ましくは10~50の範囲である。F-LenのPLZFの分解能は、レナリドミドと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。
Cl-LenのSALL4の分解能は、レナリドミドと比較して、0.5~20、好ましくは1.0~15、より好ましくは1.5~10の範囲である。Cl-LenのPLZFの分解能は、レナリドミドと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。Cl-LenのIKZF1の分解能は、レナリドミドと比較して、50~90、好ましくは60~85、より好ましくは65~80の範囲である。Cl-LenのIKZF3の分解能は、レナリドミドと比較して、30~70、好ましくは35~65、より好ましくは40~60の範囲である。
Br-LenのSALL4の分解能は、レナリドミドと比較して、0.5~40、好ましくは1.0~35、より好ましくは1.5~30の範囲である。Br-LenのPLZFの分解能は、レナリドミドと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。Br-LenのIKZF1の分解能は、レナリドミドと比較して、15~50、好ましくは20~45、より好ましくは25~40の範囲である。Br-LenのIKZF3の分解能は、レナリドミドと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。
F3C-LenのSALL4の分解能は、レナリドミドと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。F3C-LenのCK1αの分解能は、レナリドミドと比較して、0~90の範囲である。F3C-LenのIKZF1の分解能は、レナリドミドと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。F3C-LenのIKZF3の分解能は、レナリドミドと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。
F-Len-PROTACのSALL4の分解能は、Len-PROTACと比較して、30~90、好ましくは40~80、より好ましくは50~70の範囲である。F-Len-PROTACのPLZFの分解能は、Len-PROTACと比較して、0~60、好ましくは5~50の範囲である。F-Len-PROTACのIKZF3の分解能は、Len-PROTACと比較して、60~90の範囲である。
Cl-Len-PROTACのSALL4の分解能は、Len-PROTACと比較して、5~50、好ましくは10~40、より好ましくは15~30の範囲である。Cl-Len-PROTACのPLZFの分解能は、Len-PROTACと比較して、0~70、好ましくは0~60の範囲である。Cl-Len-PROTACのIKZF1の分解能は、Len-PROTACと比較して、70~95の範囲である。Cl-Len-PROTACのIKZF3の分解能は、Len-PROTACと比較して、20~80、好ましくは30~70、より好ましくは40~60の範囲である。
F3C-Len-PROTACのSALL4の分解能は、Len-PROTACと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。F3C-Len-PROTACのPLZFの分解能は、Len-PROTACと比較して、0~30、好ましくは0~15の範囲である。F3C-Len-PROTACのCK1αの分解能は、Len-PROTACと比較して、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の範囲である。F3C-Len-PROTACのIKZF1の分解能は、Len-PROTACと比較して、5~50、好ましくは10~40、より好ましくは15~35の範囲である。F3C-Len-PROTACのIKZF3の分解能は、Len-PROTACと比較して、10~70、好ましくは20~60、より好ましくは30~50の範囲である。
本発明者らは、SALL4又はPLZFのタンパク質分解能が低減したサリドマイド誘導体は、催奇性が低減されていることを確認している(参照:EMBO J(2021)40:e105375)。
【0052】
(本発明の癌治療用組成物の投与方法)
本発明の癌治療用組成物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口投与には、錠剤、カプセル、コーティング錠、トローチ、溶液または懸濁液などの液剤といった既知の投与用剤形を用いることができる。また、非経口投与は、注射による静脈内、筋肉内、または皮下への投与、スプレーやエアロゾルなどを用いた経鼻腔や口腔などの経粘膜投与、坐剤などを用いた直腸投与、パッチやリニメントやゲルなどを用いた経皮投与などを挙げることができる。好ましくは経口投与、経鼻腔投与、または注射による静脈内投与を挙げることができる。
【0053】
(本発明の癌治療用組成物に含まれる担体)
本発明の癌治療用組成物は、薬効成分の他に、適宜、投与形態などに応じて、当業者によく知られた適切な薬学的に許容される担体を含有していてもよい。薬学的に許容される担体としては、抗酸化剤、安定剤、防腐剤、矯味剤、着色料、溶解剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤、消泡剤、粘度調整剤、ゲル化剤、吸収促進剤、分散剤、賦形剤、およびpH調整剤などを例示できる。
【0054】
(本発明の癌治療用組成物の製剤方法)
本発明の癌治療用組成物を注射用製剤として調製する場合は、溶液剤または懸濁剤の製剤の形態が好ましく、経鼻腔や口腔などの経粘膜投与用の場合は、粉末、滴剤、またはエアロゾル剤の製剤の形態が好ましい。また、直腸投与用の場合は、クリ-ムまたは坐薬のような半固形剤の製剤の形態が好ましい。これらの製剤はいずれも、例えばレミントンの製薬科学(マック・パブリッシング・カンパニー、イーストン、PA、1970年)に記載されているような製薬技術上当業者に知られているいずれかの方法によって調製することができる。注射用製剤は担体として、例えば、アルブミンなどの血漿由来タンパク、グリシンなどのアミノ酸、およびマンニトールなどの糖を加えることができ、さらに緩衝剤、溶解補助剤、および等張剤などを添加することもできる。また、水溶製剤または凍結乾燥製剤として使用する場合、凝集を防ぐためにTween(登録商標)80、Tween(登録商標)20などの界面活性剤を添加するのが好ましい。さらに、注射用製剤以外の非経口投与剤形は、蒸留水または生理食塩液、ポリエチレングリコ-ルのようなポリアルキレングリコ-ル、植物起源の油、および水素化したナフタレンなどを含有してもよい。例えば、坐薬のような直腸投与用の製剤は、一般的な賦形剤として、例えば、ポリアルキレングリコ-ル、ワセリン、およびカカオ油脂などを含有する。膣用製剤では、胆汁塩、エチレンジアミン塩、およびクエン酸塩などの吸収促進剤を含有してもよい。吸入用製剤は固体でもよく、賦形剤として、例えば、ラクト-スを含有してもよく、さらに、経鼻腔滴剤は水または油溶液であってもよい。
【0055】
(本発明の癌治療用組成物の投与方法)
本発明の癌治療用組成物の正確な投与量および投与計画は、個々の治療対象毎の所要量、治療方法、疾病または必要性の程度などに依存して調整できる。投与量は、具体的には年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組合せ、および患者の病状などに応じて決めることができ、さらに、その他の要因を考慮して決定してもよい。本発明の癌治療用組成物の1日の投与量は、患者の状態や体重、化合物の種類、投与経路などによって異なるが、例えば、有効成分量として、非経口投与の場合は、約0.01~1000 mg/人/日、好ましくは0.1~500 mg/人/日で投与され、また、経口の場合は約0.01~500 mg/人/日、好ましくは0.1~100 mg/人/日で投与されることが望ましい。
【0056】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例0057】
(各サリドマイド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する相互作用能の確認)
本実施例では、各サリドマイド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する親和性(分解誘導能)を生化学的な相互作用解析により確認した。詳しくは、以下の通りである。
【0058】
(実験方法)
コムギ無細胞タンパク質合成系を用いてFLAG-GST-IKZF1,-SALL4,-PLZFおよびN末端ビオチン化bls-CRBNを組換えタンパク質として合成した。合成したbls-CRBNを0.5 μlを含む10 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下(100 mM Tris (pH 8.0), 0.01% Tween20, 100 mM NaCl, and 1 mg/mL BSA)で調整した。0.8 μlのFLAG-GST-タンパク質を含む5 μlの混合液をAlphaScreenバッファー下で調整した。DMSO(終濃度0.5%)または図4に示す終濃度のサリドマイド誘導体を含む5 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下で調整した。その後、3つの混合液を384穴のAlphaPlate(PerkinElmer社)内で混合し、26°Cで1時間静置した。次に、0.2 μg/ml の抗DYKDDDDK抗体(FUJIFILM WakoPure Chemical)、0.08 μlのストレプトアビジンドナービーズ(PerkinElmer社)および0.08 μLのプロテインAアクセプタービーズ(PerkinElmer社)を含む5 μlの検出用混合液をAlphaScreenバッファー下で調整した。そして、5 μlの検出用混合液を各穴に加え、26°Cで1時間静置後にEnvisionプレートリーダー(PerkinElmer社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0059】
(結果)
本実施例で使用した各サリドマイド誘導体の構造を図3に示す。図4の結果から明らかなように、レナリドミドのメタ位の置換基挿入は、催奇性原因タンパク質であるSALL4及びPLZFに対する親和性(分解誘導能)を低下させることを確認した。
【実施例0060】
(各サリドマイド誘導体のIKZF1およびSALL4に対する分解誘導能の確認)
本実施例では、各サリドマイド誘導体のIKZF1およびSALL4に対する親和性(分解誘導能)を培養細胞内における過剰発現したネオ基質(SALL4およびIKZF1)の分解解析により確認した。詳しくは、以下の通りである。
【0061】
(実験方法)
HEK293T培養細胞を細胞培養用の48穴プレート(BD falcon社)へ播種し、37℃, 5%CO2条件下で一晩培養した。その後、polyethyleneimine (PEI)Max (MW 40,000) (PolyScience, Inc.)を用いて、AGIA-SALL4およびMyc-IKZF1をトランスフェクションした。トランスフェクション6時間後に、DMSO(終濃度0.1%)または図5に記載の終濃度のサリドマイド誘導体を投与した。薬剤投与18時間後に培地上清をアスピレーターで除き、培養細胞を1×SDS sample buffer (62.5mM Tris-HCl pH 6.8, 2% SDS, 10% glycerol) を用いて回収・溶解した。回収した細胞抽出液を95°Cで5分間ボイルし、ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動を行った。次に、immunoblotを行い、図5に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
【0062】
(結果)
図5の結果から明らかなように、レナリドミドのメタ位の置換基挿入は、実施例1と同様に催奇性原因タンパク質であるSALL4に対する分解誘導能を低下させるが、IKZF1への分解誘導能は維持しており、CRBNの親和性は低下させないことを確認した。
【実施例0063】
(各メタ位の置換基挿入サリドマイド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する相互作用誘導能の確認)
本実施例では、各メタ位の置換基挿入サリドマイド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する親和性(分解誘導能)を生化学的な相互作用解析により確認した。詳しくは、以下の通りである。
【0064】
(実験方法)
コムギ無細胞タンパク質合成系を用いてFLAG-GST-IKZF1, -SALL4,-PLZFおよびN末端ビオチン化bls-CRBNを組換えタンパク質として合成した。合成したbls-CRBNを0.5 μlを含む10 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下(100 mM Tris (pH 8.0), 0.01% Tween20, 100 mM NaCl, and 1 mg/mL BSA)で調整した。0.8 μlのFLAG-GST-タンパク質を含む5 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下で調整した。DMSO(終濃度0.5%)または図6に示す終濃度のサリドマイド誘導体を含む5 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下で調整した。その後、3つの混合液を384穴のAlphaPlate(PerkinElmer社)内で混合し、26°Cで1時間静置した。次に、0.2 μg/ml の抗DYKDDDDK抗体(FUJIFILM WakoPure Chemical)、0.08 μlのストレプトアビジンドナービーズ(PerkinElmer社)および0.08 μLのプロテインAアクセプタービーズ(PerkinElmer社)を含む5 μlの検出用混合液をAlphaScreenバッファー下で調整した。そして、5 μlの検出用混合液を各穴に加え、26°Cで1時間静置後にEnvisionプレートリーダー(PerkinElmer社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0065】
(結果)
図6の結果から明らかなように、レナリドミドのメタ位の置換基挿入は、サリドマイドのメタ位の置換基挿入及びポマリドミドのメタ位の置換基挿入と比較して、催奇性原因タンパク質であるSALL4及びPLZFに対する親和性を低下させ、血液がんに対する薬効標的タンパク質であるIKZF1の親和性は維持していた。
これにより、以後の実施例では、レナリドミド及び各メタ位の置換基挿入のレナリドミド誘導体を使用した。なお、血液癌に対してはIKZFへの親和性維持が必要であるが、一般的には、IKZFへの親和性は不要である。
【実施例0066】
(メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の合成)
本実施例では、各メタ位の置換基挿入のレナリドミド誘導体を合成した。詳しくは、以下の通りである。レナリドミドは、FUJIFILM WakoPure Chemicalから購入した。5-hydroxythalidomide(5HT)は、文献Bioorg. Med Chem Lett 19:3973-3976に開示の方法により合成した。
【0067】
(F-レナリドミドの合成)
以下の手順で合成した。
【0068】
【化25】
【0069】
2-(ブロモメチル)-5-フルオロ-3-ニトロ安息香酸メチル(参照:WO2005034939 A1) 438 mg(1.50 mmol)と3-アミノピペリジン-2,6-ジオン塩酸塩247 mg(1.50 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド1.5 mLに溶解させた後に、トリエチルアミン0.25 mL(1.8 mmol)を加え、50℃で12時間撹拌した。室温まで冷却したのちに、水を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3-(6-フルオロ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを収量150 mg、収率33%で得た。以下に3-(6-フルオロ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン(参照:WO 2016065980 A1、WO 2019079701 A1)の化合物データを示す。
1H NMR (300 MHz, DMSO- d6) δ (ppm) 11.05 (s, 1H), 8.38 (dd, J = 9.1, 1.9 Hz, 1H),8.11 (dd, J = 6.8, 1.7 Hz, 1H), 5.22 - 5.11 (m, 1H), 4.80 (dd, J = 35.2, 18.9Hz, 2H), 2.99 - 2.78 (m, 1H), 2.64 - 2.50 (m, 2H), 2.07 - 1.90 (m, 1H).
19F NMR (282 MHz, DMSO- d6) δ (ppm) 109.38 (dd, J = 7.7 Hz, 1F).
ESIMS calculated for C13H9FN3O5 ([M-H]-) 306.05, found 306.05
【0070】
【化26】
【0071】
3-(6-フルオロ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン100 mg(0.327mmol)を1,4-ジオキサン4.1 mLに溶解させ、反応溶液を脱気した。次に、水酸化パラジウム炭素22.9 mgを加え、反応容器内を水素で置換した。3時間撹拌したのちに、反応溶液をろ過し、溶媒を減圧下留去することで3-(4-アミノ-6-フルオロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを収量16.1 mg、収率18%で得た。以下に3-(4-アミノ-6-フルオロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
1H NMR(300 MHz, DMSO- d6) δ (ppm) 11.03 (s, 1H), 6.69 - 6.49 (m, 2H), 5.81(s, 2H), 5.15 - 5.04 (m, 1H), 4.13 (dd, J = 34.3, 17.0 Hz, 2H), 3.00 - 2.81 (m, 1H), 2.70 - 2.54 (m, 1H), 2.38 - 2.19 (m, 1H), 2.11 - 1.96 (m, 1H).
19F NMR(282 MHz, DMSO- d6) δ (ppm) -113.63 (dd, J = 11.1, 8.3 Hz,1F).
ESIMS calculated for C13H11FN3O([M-H]-) 276.08, found 276.05
【0072】
(Cl-レナリドミドの合成)
以下の手順で合成した。
【0073】
【化27】
【0074】
2-(ブロモメチル)-5-クロロ-3-ニトロ安息香酸メチル(参照:Wang, Bing; Chu, Daniel,PCT Int. Appl. (2011), WO 2011130661 A1 ) 2.1 g (6.7 mmol)と3-アミノピぺリジン-2,6-ジオン塩酸塩1.3 g (8.1 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド 7.0 mLに溶解させた後に,トリエチルアミン 1.1 mL (8.1 mmol)を加え,60 ℃で19時間撹拌した。室温まで冷却したのち,水を加え,沈殿物をろ取した。得られた固体を減圧下で乾燥させ,3-(6-クロロ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量1.0 g,収率49%で得た。以下に,3-(6-クロロ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
m.p.:253.3-254.1 ℃. 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ:11.08 (s, 1H), 8.52 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 8.28 (d, J = 1.6 Hz,1H), 5.20 (dd, J = 13.3, 5.1 Hz, 1H), 4.85 (dd, J = 34.6, 19.3Hz, 2H), 2.99-2.87 (m, 1H), 2.74-2.56 (m, 2H), 2.05-1.99 (m, 1H) ppm. 13CNMR (176 MHz, DMSO-d6) δ: 172.8, 170.6, 164.8, 143.9, 136.2, 136.1, 134.3,129.3 (d, J = 26.8 Hz), 126.8 (d, J = 31.8 Hz), 52.0, 48.4, 31.2,22.2 ppm. ATR-FTIR (KBr): ν = 3087, 1691, 1537, 1450, 1353, 1322, 1192, 889, 731, 531 cm-1 . HRMS (ESI+ ): m/z calcd for C13H9ClN3O5[M-H]- : 322.0236 found: 322.0234.
【0075】
【化28】
【0076】
3-(6-クロロ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオン 1.0 g (3.1 mmol)と鉄 1.3 g (23.5 mmol), 塩化アンモニウム 1.3 g (24.7mmol)をエタノール 39 mL, 水 1.2 mLに溶解させ,16時間還流した。室温まで冷却し,固体をろ過で取り除き,得られたろ液を減圧下留去した。エタノールを用いた再結晶によって精製することで,3-(4-アミノ-6-クロロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量526 mg, 収率58%で得た。以下に,3-(4-アミノ-6-クロロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
m.p.:242.7-243.7 °C. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ:10.98 (s), 6.81 (d, J = 1.8 Hz), 6.77 (d, J = 1.8 Hz), 5.76 (s),5.05 (dd, J = 13.1, 5.2 Hz), 4.18-4.04 (m), 2.91-2.83 (m), 2.59-2.54(m), 2.29-2.20 (m), 2.04-1.97 (m) ppm. 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6)δ: 172.9, 171.1, 167.6, 145.1, 133.9, 133.4, 124.6, 115.2, 109.5, 51.7, 45.5, 31.2, 22.7 ppm. ATR-FTIR (KBr): ν = 3455, 3347, 3036, 2847, 1685, 1671, 1487,1356, 1029, 957 cm-1 . HRMS (ESI+ ): m/z calcd for C13H11ClN3O3 [M-H]- : 292.0494 found: 292.0487.
【0077】
(Br-レナリドミドの合成)
以下の手順で合成した。
【0078】
【化29】
【0079】
5-ブロモ-2-(ブロモメチル)-3-ニトロ安息香酸メチル(Hayashi, Kazuya; Yamashiro,Yoshiko; Taya, Kyoko; Fukuyama, Hiroko; Todo, Yozo, PCT Int. Appl. (1999), WO9907682)1.0 g (2.8 mmol)と3-アミノピぺリジン-2,6-ジオン塩酸塩 560 mg (3.4 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド 3.9 mLに溶解させた後に,炭酸カリウム 979 mg (7.1 mmol)を加え,50 ℃で2時間撹拌した。室温まで冷却したのち,水を加え,沈殿物をろ取した。得られた固体を減圧下で乾燥させ,3-(6-ブロモ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量564 mg,収率54%で得た。以下に,3-(6-ブロモ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
m.p.: 226.6-227.6 °C. 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ:11.06 (s, 1H), 8.59 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.37 (d, J = 1.5 Hz,1H), 5.21-5.15 (m, 1H), 4.81 (dd, J = 34.3, 19.3 Hz, 2H), 2.97-2.87 (m,1H), 2.72-2.62 (m, 2H), 2.03-1.99 (m, 1H) ppm. 13C NMR (176 MHz,DMSO-d6) δ: 172.8, 170.6, 164.7, 144.0, 136.4 (d, J =20.1 Hz), 132.0, 129.4, 121.8, 52.0, 48.4, 31.1, 22.2 ppm. ATR-FTIR (KBr): ν =3208, 3108, 3074, 1711, 1532, 1442, 1354, 1209, 1182, 720 cm-1 .HRMS (ESI+ ): m/z calcd for C13H9BrN3O5 [M-H]- :365.9731 found: 365.9723.
【0080】
【化30】
【0081】
3-(6-ブロモ-4-ニトロ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオン 200 mg (0.54 mmol)と鉄 231 mg (4.1 mmol), 塩化アンモニウム 233 mg (4.4mmol)をエタノール 0.8 mL, 水 1.4 mLに溶解させ,60 ℃で2時間撹拌した。室温まで冷却し,固体をろ過で取り除き,得られたろ液を減圧下留去した。酢酸エチルを用いて抽出を行い,有機層を飽和食塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下留去することで,3-(4-アミノ-6-ブロモ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量36.6 mg, 収率20%で得た。以下に,3-(4-アミノ-6-ブロモ-1-オキソイソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
m.p.: 237.9-238.7 °C. 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ:11.03 (s, 1H), 6.97-6.95 (m, 2H), 5.80 (s, 2H), 5.12- 5.06 (m, 1H), 4.12 (dd, J= 35.5, 17.6 Hz, 2H), 2.95-2.87 (m, 1H), 2.73-2.63 (m, 2H), 2.05-1.99 (m, 1H)ppm. 13C NMR (176 MHz, DMSO-d6) δ: 172.9, 171.1,167.5, 145.4, 134.2, 124.9, 121.7, 118.0, 112.4, 51.7, 45.6, 39.5, 31.2, 22.7ppm. ATR-FTIR (KBr): ν = 3425, 2186, 3083, 1681, 1605, 1481, 1462, 1335, 1199, 1026 cm-1 . HRMS (ESI+ ): m/z calcd for C13H11BrN3O3 [M-H]- : 335.9989 found: 335.9974.
【0082】
(FC-レナリドミドの合成)
以下の手順で合成した。
【0083】
【化31】
【0084】
2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸(参照:Kuntz, Kevin Wayne; Olhava, Edward James; Chesworth, Richard;Duncan, Kenneth William, WO 2012118812 A2)1.1g (4.4 mmol)をメタノール 44 mLに溶解させ,塩化チオニル 1.0 mL (13.2 mmol)をゆっくり滴下した。その後反応溶液を12時間還流させた。室温まで冷却し,水を加え,1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えた後,酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ,溶媒を減圧下留去することで2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルを収量939 mg, 収率78%で得た。以下に,2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルの化合物データを示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 8.27 (s, 1H), 8.11 (s, 1H), 3.98 (s, 3H), 2.70 (s, 3H) ppm.
19F NMR (282 MHz, CDCl3)δ -63.46 (s, 3F) ppm.
【0085】
【化32】
【0086】
2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル 646 mg (3.2 mmol)とN-ブロモスクシンイミド 1.1 g (6.3 mmol)を脱気した四塩化炭素4.5 mLに溶解させ,75%の過酸化ベンゾイル 102 mg (0.32 mmol)を加えた。その後反応溶液を14時間還流させた。室温まで冷却し,副生成物をろ過によって取り除き,ろ液を減圧下留去した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し,2-(ブロモメチル)-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルを収量734 mg, 収率68%で得た。以下に,2-(ブロモメチル)-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルの化合物データを示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 8.36 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 5.18 (s, 2H), 4.04 (s, 3H) ppm.
19F NMR (282 MHz, CDCl3)δ -63.74 (s, 3F) ppm.
【0087】
【化33】
【0088】
2-(ブロモメチル)-3-ニトロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル 600 mg (1.8 mmol)と3-アミノピぺリジン-2,6-ジオン塩酸塩 346 mg (2.1 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド 1.8mLに溶解させた後に,トリエチルアミン 0.5 mL (3.5 mmol)を加え,50 ℃で14時間撹拌した。室温まで冷却したのち,水を加え,沈殿物をろ取した。得られた固体をメタノールおよびテトラヒドロフランで洗浄し,減圧下で乾燥させることで,3-(4-ニトロ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量197 mg,収率31%で得た。以下に,3-(4-ニトロ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 11.08 (s, 1H), 8.71 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 5.23 (dd, J = 12.9, 5.0 Hz,1H), 4.96 (dd, J = 33.7, 19.9 Hz, 2H), 2.86-2.98 (m, 1H), 2.54-2.63 (m,2H), 2.03 (m, J = 5.1 Hz, 1H) ppm.
19F NMR (282 MHz, DMSO-d6)δ -60.46 (s, 3F) ppm.
【0089】
【化34】
【0090】
3-(4-ニトロ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオン 100 mg (0.29 mmol)とパラジウム炭素 20 mgをテトラヒドロフラン10 mLとメタノール 10 mLに溶解させた。反応溶液を脱気し,反応容器内を水素で置換したのちに室温で1時間撹拌した。反応溶液をろ過し,溶媒を減圧下留去することで3-(4-アミノ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量77 mg, 収率81%で得た。以下に,3-(4-アミノ-1-オキソ-6-(トリフルオロメチル)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 11.22-10.84 (1H), 7.11 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 6.00 (s, 2H), 5.14 (dd, J= 13.2, 5.3 Hz, 1H), 4.24 (dd, J = 36.3, 17.7 Hz, 2H), 2.86-2.96 (m,1H), 2.60-2.73 (m, 1H), 2.25-2.39 (m, 1H), 2.01-2.08 (m, 1H) ppm.
19F NMR (282 MHz, DMSO-d6)δ-60.64 (s,3F) ppm.
【0091】
(F3CO-レナリドミドの合成)
以下の手順で合成した。
【0092】
【化35】
【0093】
2-メチル-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸(参照:WO 9730989 A1) 500 mg (2.3 mmol)を濃硫酸 5.0 mLに溶解させた。反応溶液を0 ℃に冷却し,発煙硝酸 0.5 mLをゆっくりと滴下したあと,室温で4時間撹拌した。反応溶液を氷水に注ぎ,得られた沈殿をろ取した。ろ取した沈殿を水で洗浄し,減圧下で乾燥させることで,2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸を位置異性体の混合物で得た。得られた混合物はこれ以上精製を行わず,次の工程に用いた。
【0094】
【化36】
【0095】
2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸2.0 g (7.5 mmol)をメタノール 15 mLに溶解させ,塩化チオニル 1.6 mL (22.6 mmol)をゆっくり滴下した。その後反応溶液を12時間還流させた。室温まで冷却し,溶媒を減圧下留去した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し,2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸メチルを収量969 mg, 収率46%で得た。以下に,2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸メチルの化合物データを示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ: 7.89 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 3.97 (s, 3H), 2.64 (s, 3H) ppm.
19F NMR (282 MHz, CDCl3)δ: -58.7 (s, 1F) ppm.
13C NMR (126 MHz, CDCl3)δ: 165.5, 152.3, 146.5 (d, J = 1.8 Hz), 134.9, 132.1, 126.3, 120.3 (q, J= 260.0 Hz), 119.6, 53.1, 16.0 ppm.
【0096】
【化37】
【0097】
2-メチル-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸メチル 722mg (2.5 mmol)とN-ブロモスクシンイミド 893 mg (5.0 mmol)を脱気した四塩化炭素3.6 mLに溶解させ,75%の過酸化ベンゾイル 81 mg (0.25 mmol)を加えた。その後反応溶液を14時間還流させた。室温まで冷却し,副生成物をろ過によって取り除き,ろ液を減圧下留去した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し,2-(ブロモメチル)-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸メチルを収量734 mg, 収率68%で得た。以下に,2-(ブロモメチル)-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸メチルの化合物データを示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 7.97 (s, 1H), 7.84 (s, 1H), 5.14 (s, 2H), 4.03 (s, 3H) ppm.
19F NMR (282 MHz, CDCl3)δ: -58.5 (s, 3F) ppm.
13C NMR (126 MHz, CDCl3)δ: 164.7, 151.2, 148.4, 134.3, 131.6, 127.0, 120.4, 120.2 (q, J = 260.9Hz), 53.7, 22.0 ppm.
【0098】
【化38】
【0099】
2-(ブロモメチル)-3-ニトロ-5-(トリフルオロメトキシ)安息香酸メチル 104 mg (0.28 mmol)と3-アミノピぺリジン-2,6-ジオン塩酸塩 55 mg (0.34 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド 0.28 mLに溶解させた後に,トリエチルアミン 0.08 mL (0.60 mmol)を加え,50 ℃で14時間撹拌した。室温まで冷却したのち,水を加え,沈殿物をろ取した。得られた沈殿をメタノールおよびテトラヒドロフランで洗浄し,減圧下で乾燥させることで,3-(4-ニトロ-1-オキソ-6-(トリフルオロメトキシ)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量78 mg,収率46%で得た。以下に,3-(4-ニトロ-1-オキソ-6-(トリフルオロメトキシ)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ 11.06 (s, 1H), 8.46 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 0.9 Hz,1H), 5.19 (dd, J = 13.1, 5.2 Hz, 1H), 4.88 (dd, J = 47.8, 19.4Hz, 2H), 2.95-2.87 (m, 1H), 2.73-2.53 (m, 2H), 2.05-1.99 (m, 1H) ppm.
19F NMR (282 MHz, DMSO-d6)δ -57.0 (s, 3F) ppm.
13C NMR (126 MHz, DMSO-d6)δ 172.8, 170.5, 164.8, 148.3, 144.1, 136.4, 122.3, 120.5, 119.9 (q, J =258.5 Hz), 52.1, 48.5, 31.1, 22.1 ppm.
【0100】
【化39】
【0101】
3-(4-ニトロ-1-オキソ-6-(トリフルオロメトキシ)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオン 50 mg (0.13 mmol)とパラジウム炭素 10 mgをテトラヒドロフラン5.0 mLとメタノール 5.0 mLに溶解させた。反応溶液を脱気し,反応容器内を水素で置換したのち,室温で1時間撹拌した。反応溶液をろ過し,溶媒を減圧下留去することで3-(4-アミノ-1-オキソ-6-(トリフルオロメトキシ)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンを収量16 mg, 収率34%で得た。以下に,3-(4-アミノ-1-オキソ-6-(トリフルオロメトキシ)イソインドリン-2-イル)ピぺリジン-2,6-ジオンの化合物データを示す。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ: 11.02 (s, 1H), 6.75 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 0.9 Hz,1H), 5.92 (s, 2H), 5.11 (dd, J = 13.1, 5.2 Hz, 1H), 4.18 (dd, J =53.7, 17.1 Hz, 2H), 2.95-2.88 (m, 1H), 2.63-2.59 (m, 1H), 2.36-2.25 (m, 1H),2.06-2.02 (m, 1H) ppm.
19F NMR (282 MHz, DMSO-d6)δ -56.4 (s, 3F) ppm.
13C NMR (126 MHz, DMSO-d6)δ: 172.9, 171.1, 167.7, 149.5, 145.4, 133.7, 124.6, 120.1 (q, J = 255.8Hz), 108.0, 101.7, 51.8, 45.6, 31.2, 22.7 ppm.
【実施例0102】
(メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する相互作用能の確認)
本実施例では、メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体のIKZF1、SALL4及びPLZFに対する親和性(分解誘導能)を生化学的な相互作用解析により確認した。
【0103】
(実験方法)
レナリドミド、F-レナリドミド、Cl-レナリドミド及びBr-レナリドミドのIKZF1、SALL4及びPLZFへの親和性は、DMSOでのシグナル値 = 1を基準とした相対値で算出した。詳しくは、以下の通りである。
コムギ無細胞タンパク質合成系を用いてFLAG-GST-IKZF1, -SALL4,-PLZFおよびN末端ビオチン化bls-CRBNを組換えタンパク質として合成した。合成したbls-CRBNを0.5 μlを含む10 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下(100 mM Tris (pH 8.0), 0.01% Tween20, 100 mM NaCl, and 1 mg/mL BSA)で調整した。0.8 μlのFLAG-GST-タンパク質を含む5 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下で調整した。DMSO(終濃度0.5%)または図7に示す終濃度のサリドマイド誘導体を含む5 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下で調整した。その後、3つの混合液を384穴のAlphaPlate(PerkinElmer社)内で混合し、26°Cで1時間静置した。次に、0.2 μg/mlの抗DYKDDDDK抗体(FUJIFILM WakoPure Chemical)、0.08 μlのストレプトアビジンドナービーズ(PerkinElmer社)および0.08 μLのプロテインAアクセプタービーズ(PerkinElmer社)を含む5 μlの検出用混合液をAlphaScreenバッファー下で調整した。そして、5 μlの検出用混合液を各穴に加え、26°Cで1時間静置後にEnvisionプレートリーダー(PerkinElmer社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0104】
FC-レナリドミド、F3CO-レナリドミド、ポマリドミド及びレナリドミドのIKZF1、SALL4及びPLZFへの親和性を算出した。詳しくは、以下の通りである。
コムギ無細胞タンパク質合成系を用いてFLAG-GST-IKZF1, -SALL4,-PLZFおよびN末端ビオチン化bls-CRBNを組換えタンパク質として合成した。合成したbls-CRBNを0.5 μlを含む10 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下(100 mM Tris (pH 8.0), 0.01% Tween20, 100 mM NaCl, and 1 mg/mL BSA)で調整した。0.8 μlのFLAG-GST-タンパク質を含む5 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下で調整した。DMSO(終濃度0.5%)または10 μMのサリドマイド誘導体を含む5 μlの混合液をAlphaScreen バッファー下で調整した。その後、3つの混合液を384穴のAlphaPlate(PerkinElmer社)内で混合し、26°Cで1時間静置した。次に、0.2 μg/ml の抗DYKDDDDK抗体(FUJIFILM WakoPure Chemical)、0.08 μlのストレプトアビジンドナービーズ(PerkinElmer社)および0.08 μLのプロテインAアクセプタービーズ(PerkinElmer社)を含む5 μlの検出用混合液をAlphaScreenバッファー下で調整した。そして、5 μlの検出用混合液を各穴に加え、26°Cで1時間静置後にEnvisionプレートリーダー(PerkinElmer社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0105】
図7の結果により、レナリドミド、F-レナリドミド、Cl-レナリドミド及びBr-レナリドミドのSALL4及びPLZFに対する親和性は、低いことを確認した。また、Cl-レナリドミドおよびBr-レナリドミドはSALL4やPLZFとほとんど相互作用しないことを確認した。
図8の結果により、FC-レナリドミド及びF3CO-レナリドミドのSALL4及びPLZFへの親和性は、レナリドミドのSALL4及びPLZFへの親和性と比較して、著しく低いことを確認した。
【実施例0106】
(各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体のCRBNへの結合能の確認)
本実施例では、各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体のCRBNへの結合能をサリドマイド固定化ビーズを使用して確認した(参照;図9(1))。
【0107】
(実験方法)
サリドマイド固定化用誘導体(Thalidomide-O-COOH)をMedChemExpressより購入し、固定化するための磁気ビーズ(FG-beads)を多摩川精機より購入した。多摩川精機の標準プロトコールを用いて4 mMのThalidomide-O-COOHをFG-beadsへ固定化した。また、コムギ無細胞タンパク質合成系を用いてFLAG-GST-CRBNを合成した。4 mM サリドマイド固定化ビーズ50 μlに50 μlを FLAG-GST-CRBNを加え、IP Lysis buffer (Pierce) (25 mM Tris-HCl pH 7.5, 150 mM NaCl, 1 mMEDTA, 1% NP-40, 5% glycerol)で500 μlに調整した。室温で2時間ローテーション後、800 μlのIP Lysis buffer (Pierce)で4回洗浄した。その後、7本のTubeへ当量ずつ分注し、200 μMの各種レナリドミド誘導体を含むIP Lysis buffer (Pierce) 20 μlを加え室温で30分間ボルテックスを行い競合溶出した。その後、各溶出サンプルへ20 μlの2×SDSsample bufferを加え、ボイルした。次に、ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動後、immunoblotを行い、図9に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
【0108】
(結果)
図9(2)の結果により、F-レナリドミド、Cl-レナリドミド、Br-レナリドミド、FC-レナリドミド及びF3CO-レナリドミドは、レナリドミドと同程度のCRBNと相互作用(CRBNへの結合能)を有することを確認した。
【実施例0109】
(各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の培養細胞内在性タンパク質分解の確認)
本実施例では、各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の培養細胞内在性タンパク質分解能を確認した。詳細は、以下の通りである。
【0110】
(実験方法)
MM1.S培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)または図10に示すレナリドミド誘導体濃度で薬剤を投与し、37°C, 5%CO2条件下で24時間培養した。その後、細胞をピペッティングにて回収し、900×gで3分間遠心後に上清をアスピレーターにて除去した。その後、1×PBSを500 μlを細胞ペレットに加え洗浄後、再度900×gで3分間遠心し、上清をアスピレーターにて除去した。次に、Protease inhibitorカクテル(Sigma Aldrich)を含むRIPA buffer (25 mM Tris-HCl pH 8.0, 150 mM NaCl, 1% NP-40, 0.5% sodium deoxycholate, 0.1% SDS, 1mM EDTA) 100 μlを細胞ペレットへ加え、細胞を溶解した。その後、16,100×gで15分間遠心後に上清液を細胞抽出液として得た。次に、BCAアッセイキット(Thermo FisherScientific)を用いてタンパク質定量を行い、等しいタンパク質濃度になるように1×SDS sample buffer内へ調整し、95°Cで5分間ボイルした。ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動後、immunoblotを行い、図10に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
HuH-7およびMCF7培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、37°C,5%CO2条件下で24時間培養した。次に、DMSO(0.1%)または図10に示すレナリドミド誘導体濃度で薬剤を投与し、37°C,5%CO2条件下で24時間培養した。その後、培地上清をアスピレーターで除き、培養細胞を1×SDS sample buffer を用いて回収・溶解した。回収した細胞抽出液を95°Cで5分間ボイルし、ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動を行った。次に、immunoblotを行い、図10に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
【0111】
(結果)
図10の結果は、以下の通りである。
F-レナリドミド及びCl-レナリドミドは、細胞培養の薬効標的(IKZF1/3・CK1α)に対する分解誘導能を有し、催奇性原因タンパク質であるSALL4・PLZFへ分解誘導能は低いことを確認した。
一方、Br-Lenは、細胞培養のIKZF1/3に対する弱い分解能を有し、催奇性原因タンパク質であるSALL4・PLZFに対する分解誘導能は実質的にないことを確認した。
【実施例0112】
(各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の多発性骨髄腫培養細胞に対する抗癌活性の確認)
本実施例では、各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の多発性骨髄腫由来の培養細胞に対する抗癌活性を確認した。詳細は、以下の通りである。
【0113】
(実験方法)
MM1.SまたはU266培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)または図11に示すレナリドミド誘導体濃度で薬剤を投与し、37°C,5%CO2条件下で72時間培養した。1/3量の細胞をピペッティングにて回収し、200×gで3分間遠心後に上清をアスピレーターにて除去した。その後、細胞ペレットを培地で再懸濁し、DMSO(0.1%)または図11に示すレナリドミド誘導体濃度で薬剤を投与し、37°C,5%CO2条件下で72時間培養した。
上記のように、3日毎にDMSOまたはレナリドミド誘導体を含む新たな培地で培養し、計9日間培養した。その後、細胞を懸濁し、96 穴のopti-plate (PerkinElmer社)へ40 μlずつ加え、Cell Titer-Glo キット (Promega社)を40 μlずつ加え細胞を溶解した。その後、SpectraMax iD3 (Molecular devise社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0114】
(結果)
図11の結果は、以下の通りである。
F-レナリドミドの多発性骨髄腫培養細胞の増殖抑制能(抗癌細胞増殖作用)は、公知の多発性骨髄腫治療剤の有効成分であるポマリドミドやレナリドミドの抗増殖作用と同程度であることを確認した。また、Cl-レナリドミドはポマリドミドやレナリドミドより弱いが抗増殖作用を有することを確認した。
【実施例0115】
(各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の5番染色体欠損骨髄異形成症候群に対する抗癌活性の確認)
本実施例では、各メタ位の置換基挿入レナリドミド誘導体の5番染色体欠損骨髄異形成症候群由来の培養細胞に対する抗癌活性を確認した。詳細は、以下の通りである。
【0116】
(実験方法)
MDS-L培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)または図12に示すレナリドミド誘導体濃度で薬剤を投与し、37°C, 5%CO2条件下で96時間培養した。1/2量の細胞をピペッティングにて回収し、200×gで3分間遠心後に上清をアスピレーターにて除去した。その後、細胞ペレットを培地で再懸濁し、DMSO(0.1%)または図12に示すレナリドミド誘導体濃度で薬剤を投与し、37°C,5%CO2条件下で96時間培養した。
上記のように、4日毎にDMSOまたはレナリドミド誘導体を含む新たな培地で培養し、計20日間培養した。その後、細胞を懸濁し、96 穴のopti-plate (PerkinElmer社)へ40 μlずつ加え、Cell Titer-Glo キット (Promega社)を40 μlずつ加え細胞を溶解した。その後、SpectraMax iD3 (Molecular devise社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0117】
(結果)
図12の結果は、以下の通りである。
F-レナリドミドの5番染色体欠損骨髄異形成症候群培養細胞の増殖抑制能(抗癌細胞増殖作用)は、公知の5番染色体欠損骨髄異形成症候群治療剤の有効成分であるレナリドミドの抗増殖作用より強いことを確認した。また、Cl-レナリドミドはレナリドミド同程度の抗増殖作用を有することを確認した。
これにより、F-Len又はCl-Lenを含む5番染色体欠損骨髄異形成症候群治療剤を本発明の対象とする。
【実施例0118】
(公知のPROTACのネオタンパク質分解の確認)
本実施例では公知のPROTACであるdBET1及びARV-825のネオタンパク質分解能を確認した。詳細は、以下の通りである。
【0119】
(実験方法)
MM1.S培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)、20 μMサリドマイド、10 μMレナリドミド、1 μM ポマリドミド、20 μM 5位水酸化サリドマイド、1 μM dBET1または1 μM ARV-825を投与し、37°C,5%CO2条件下で24時間培養した。その後、細胞をピペッティングにて回収し、900×gで3分間遠心後に上清をアスピレーターにて除去した。その後、1×PBSを500 μlを細胞ペレットに加え洗浄後、再度900×gで3分間遠心し、上清をアスピレーターにて除去した。次に、Protease inhibitorカクテル(Sigma Aldrich)を含むRIPA buffer 100 μlを細胞ペレットへ加え、細胞を溶解した。その後、16,100×gで15分間遠心後に上清液を細胞抽出液として得た。次に、BCAアッセイキット(Thermo FisherScientific)を用いてタンパク質定量を行い、等しいタンパク質濃度になるように1×SDS sample buffer内へ調整し、95°Cで5分間ボイルした。ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動後、immunoblotを行い、図13に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
HuH-7培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、37°C, 5%CO2条件下で24時間培養した。次に、DMSO(0.1%)、20 μMサリドマイド、10 μMレナリドミド、1 μM ポマリドミド、20 μM 5位水酸化サリドマイド、1 μM dBET1または1 μM ARV-825を投与し、37°C, 5%CO2条件下で24時間培養した。その後、培地上清をアスピレーターで除き、培養細胞を1×SDS sample bufferを用いて回収・溶解した。回収した細胞抽出液を95°Cで5分間ボイルし、ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動を行なった。次に、immunoblotを行い、図13に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
MM1.S培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)DMSO(0.1%)、10 μMサリドマイド、1 μMレナリドミド、0.1 μM ポマリドミド、10 μM dBET1または0.1 μM ARV-825を投与し、37°C, 5%CO2条件下で5日間培養した。その後、細胞を懸濁し、96 穴のopti-plate (PerkinElmer社)へ40 μlずつ加え、Cell Titer-Glo キット (Promega社)を40 μlずつ加え細胞を溶解した。その後、SpectraMax iD3 (Moleculardevise社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0120】
(結果)
図13の結果は、以下の通りである。
dBET1に関し、催奇性原因タンパク質であるSALL4及びPLZFの分解誘導能も低いが、薬効標的であるIKZF1及びIKZF3の分解誘導能も低いことを確認した。すなわち、抗癌細胞増殖作用が低いという課題を確認した。
ARV-825に関し、IKZF1及びIKZF3の分解誘導能が高いが、同様にSALL4及びPLZFの分解誘導能も高いことを確認した。すなわち、催奇性が問題になる癌治療に適応できないという課題を確認した。
すなわち、公知のPROTACは、標的タンパク質だけでなくE3 binderのネオ基質の分解を誘導する又は催奇性が問題になることを確認した。
【実施例0121】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物)
本実施例1~10の結果により、以下のことを確認した。
E3 binderのネオ基質であるIKZF1/3/CK1αと標的タンパク質の両方を分解するレナリドミド、F-レナリドミド及びCl-レナリドミドは、血液がんに効果がある標的タンパク質分解誘導化合物のセレブロンバインダになると考えられ(参照:図14左)、以下の実施例で確認した。
標的タンパク質のみを分解し、ネオ基質の分解誘導能が低いCl-レナリドミドおよびネオ基質の分解誘導能が無いBr-レナリドミド、FC-レナリドミド及びF3CO-レナリドミドは、E3 binderのネオ基質であるIKZF1/3/CK1αに対する分解誘導能が低いもしくは無いので特定の癌以外にも利用可能であり、さらに、催奇性を回避・低減しているので、様々な癌腫に使用できる標的タンパク質分解誘導化合物のセレブロンバインダになると考えられ(参照:図14右)、以下の実施例で確認した。
【実施例0122】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の合成)
本実施例では、図15に記載の本発明の標的タンパク質分解誘導化合物を合成した。詳細は、以下の通りである。なお、ARV-825及びdBET1は市販品を使用した。
【0123】
(「レナリドミド」-「リンカー」-「Birabresib」)の合成
Lenalidomide-Linker-JQ-1 誘導体(1a)の合成は、以下の手順で行った。
【0124】
【化40】
【0125】
3-(4-((2-(2-(2-(2-(4-nitrophenoxy)ethoxy)ethoxy)ethoxy)ethyl)amino)-1-oxoisoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione(3a) の合成は、以下の手順で行った。
【0126】
【化41】
【0127】
窒素雰囲気下にて,10 mLナスフラスコにレナリドミド (44.6 mg, 0.172 mmol, 1.0 equiv), 2 (87.7 mg, 0.206 mmol, 1.2 equiv),DMF (0.1 M, 2 mL), N,N-Diisopropylethylamine (87.8 μL, 0.516 mmol, 3.0 equiv) を順に加え,100 °Cにて12時間撹拌した。室温に冷却後,減圧下でトルエンとの共沸を行い,溶媒を留去した。得られた粗製生物をシリカゲルクロマトグラフィー (ジクロロメタン:メタノール = 1/0 → 20/1) にて精製した。マルチスポットとなったため,もう一度シリカゲルクロマトグラフィー (酢酸エチル) による精製を行い,化合物 3a を39.2 mg,収率 41% で得た。
1H NMR(300MHz, CDCl3) δ: 8.51 (s, 1H), 8.18 (tlike, J = 9.1 Hz, 2H), 7.34 (t like, J = 7.8 Hz, 1H), 7.00-6.92(m, 2H), 6.78 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.21 (dd, J = 13.0, 5.1 Hz,1H), 4.26-4.12 (m, 4H), 3.91-3.84 (m, 2H), 3.76-3.56 (m, 12H), 3.45-3.39 (m,2H), 2.94-2.73 (m, 1H), 2.35-2.12 (m, 2H)
【0128】
1aの合成は、以下の手順で行った。
【0129】
【化42】
【0130】
合成した3aに対してニトロ基の還元を行った。3a (39.8 mg, 0.0715 mmol, 1.0 equiv), 鉄 (39,9mg, 0.715mmol, 10 equiv) をエタノール (1.0 ml, 0.072 M) に加えたのち,水 (0.5 ml, 0.14 M) に溶解させた塩化アンモニウム (38.3 mg,0.715 mmol, 10equiv) を加えた。その後,80 °Cに加熱し,2時間撹拌した。室温に冷却後,濾過し酢酸エチルにて洗浄した。ろ液に酢酸エチルと水を加え,有機層を飽和食塩水で洗浄,硫酸ナトリウムにて脱水した。その後,減圧下溶媒を留去し,アミン体(下記4a)を得た。これ以上の精製操作を行うことなく,次のステップに用いた。
【0131】
【化43】
【0132】
次に、上記アミン体とJQ-1との縮合を行った。窒素雰囲気下にて,アミン体 (17.2 mg, 0.0327 mmol, 1.0 equiv), JQ-1 (13.1 mg, 0.0327 mmol, 1.0equiv), HATU (18.6 mg, 0.0491 mmol, 1.5 equiv) を DMF(0.5 mL, 0.065 M) に溶解させた後,N,N-Diisopropylethylamine(31.1 μL, 0183 mmol, 5.6 equiv) を加えた。その後,室温にて12時間撹拌した。反応溶液を濾過したのち,後述の条件にてHPLCによる単離を行った。NOMURA CHEMICAL DevelosilODS-HG-5, 20 × 250 mm, CH3CN/H2O = 10/90 to 40/60 with 0.1% TFA, 流量 5.0 mL/min, 測定波長 = 220 nm, tR = 53.6 min.
展開溶媒を減圧下留去することで,黄色の固体 1a を9.5 mg,収率14% (2step) で得た。
1H NMR(300MHz, CD3OD) δ: 10.11 (s, 1H), 7.49 - 7.38(m, 6H), 7.32 (t-like, J = 7.8 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 7.3 Hz, 1H),6.87 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.01 - 4.85 (m, 2H), 5.12 (dd, J = 13.3, 4.8 Hz, 1H), 4.73 (dd, J = 8.5, 5.9 Hz, 1H), 4.29 (s, 2H), 4.08 - 4.05 (m, 2H), 3.80 - 3,77(m, 2H), 3.71 - 3.64 (m,10H), 3.44 - 3.37 (m, 2H),2.95 - 2.75 (m, 2H), 2.72 (s,3H), 2.45 (s, 3H), 2.40 - 2.34(m, 1H), 2.14 - 2.10 (m, 1H)1.69 (s, 3H) ppm.
HRMS (ESI) calcd.for C46H50N8O8SCl [M + H]+:909.3160 found 909.3141.
【0133】
(「F-レナリドミド」-「リンカー」-「Birabresib」)の合成
Fluorolenalidomide-Linker-JQ-1誘導体(1b)の合成は、以下の手順で行った。
【0134】
【化44】
【0135】
3-(6-fluoro-4-((2-(2-(2-(2-(4-nitrophenoxy)ethoxy)ethoxy)ethoxy)ethyl)amino)-1-oxoisoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione(3b) の合成
【0136】
【化45】
【0137】
窒素雰囲気下にて,10 mLナスフラスコに6-フルオロレナリドミド (50 mg, 0.180 mmol, 1.0 equiv) ,2 (92.0 mg, 0.216 mmol, 1.2 equiv), DMF (0.1 M, 2 mL), N,N-Diisopropylethylamine(92 μL, 0.540 mmol, 3.0 equiv) を順に加え,100 °Cにて12時間撹拌した。室温に冷却後,減圧下でトルエンとの共沸を行い,溶媒を留去した。得られた粗製生物をシリカゲルクロマトグラフィー (酢酸エチル:メタノール = 1/0 → 20/1) にて精製した。減圧下,溶媒を留去することで化合物3bを36.9 mg,収率 36% で得た。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ: 8.24-8.13 (m, 3H), 7.03-6.92 (m, 3H), 6.50(dd, J = 11.4, 2.1 Hz, 1H), 5.23 (dd, J = 13.0, 5.4 Hz, 1H),4.33-4.12 (m, 4H), 3.94-3.88 (m, 2H), 3.77-3.63 (m, 10H), 3.39-3.35 (m, 2H),2.99-2.84 (m, 2H), 2.54-2.54 (m, 1H), 2.37-2.25 (m, 2H), 1.79-1.79 (m, 1H)
19F NMR(282MHz, CDCl3) δ: -111.1 (t like, J = 9.4 Hz, 1F)
【0138】
1bの合成
【0139】
【化46】
【0140】
合成した3bに対してニトロ基の還元を行った。3b (36.9 mg, 0.0642 mmol, 1.0 equiv), 鉄 (35.9 mg, 0.642 mmol, 10 equiv) をエタノール (1.0 ml, 0.064 M) に加えたのち,水 (0.5 ml, 0.13 M) に溶解させた塩化アンモニウム (34.4 mg,0.642 mmol, 10 equiv) を加えた。その後,80 °Cに加熱し,2時間撹拌した。室温に冷却後,濾過し酢酸エチルにて洗浄した。ろ液に酢酸エチルと水を加え,有機層を飽和食塩水で洗浄,硫酸ナトリウムにて脱水した。その後,減圧下溶媒を留去し,アミン体 (25.8 mg, 収率74%,crude) を得た。これ以上の精製操作を行うことなく,次のステップに用いた。
次にアミン体とJQ-1との縮合を行った。窒素雰囲気下にて,アミン体(17.4 mg, 0.0314 mmol, 1.0 equiv), JQ-1 (12.6 mg, 0.0314 mmol, 1.0 equiv), HATU (17.9 mg, 0.0471 mmol, 1.5 equiv)をDMF(0.5 mL, 0.063 M) に溶解させた後,N,N-Diisopropylethylamine (16.0 μL, 0.0942 mmol, 3.0 equiv) を加えた。その後,室温にて15時間撹拌した。反応溶液を濾過したのち,後述の条件にてHPLCによる単離を行った。
NOMURA CHEMICAL DevelosilODS-HG-5, 20 × 250 mm, CH3CN/H2O = 10/90 to 40/60 with 0.1% TFA, 流量 5.0 mL/min, 測定波長 = 220 nm.
展開溶媒を減圧下留去することで,化合物1bを9.5 mg,収率33% で得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ: 10.11(s, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.49 - 7.39(m, 6H), 6.87 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 6.70 (dd, J = 7.6, 2.1 Hz,1H), 6.58 (dd, J = 12.3, 2.1 Hz, 1H), 5.10 (dd, J = 13.3, 5.4 Hz,1H), 4.79 - 4.71 (m, 1H),4.24 (s, 2H), 4.07 (t, J = 4.5 Hz, 2H), 3.79 (t, J = 4.5 Hz, 2H),3.70 - 3.64 (m, 10H), 3.37 - 3.34 (m, 2H), 2.72 (s, 3H), 2.45(s, 3H), 1.70 (s, 3H) ppm.
19F NMR (282 MHz, CD3OD) δ -107.8(dd, J = 11.9, 7.9 Hz, 1F) ppm.
HRMS(ESI) calcd. for C46H49N8O8FSCl [M+ H]+: 927.3067 found 927.3024.
【0141】
(「Cl-レナリドミド」-「リンカー」-「Birabresib」)の合成
Chloro lenalidomide-Linker-JQ-1 誘導体(4b)の合成は、以下の手順で行った。
【0142】
【化47】
【0143】
3-(6-chloro-4-((2-(2-(2-(2-(4-nitrophenoxy)ethoxy)ethoxy)ethoxy)ethyl)amino)-1-oxoisoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione(3b)
窒素雰囲気下にて,10 mLナスフラスコにレナリドミド1b (58.7 mg, 0.200 mmol, 1.0 equiv), 2 (340.2 mg, 0.800 mmol, 4.0 equiv), DMF (0.2 M, 1.0 mL), N,N-Diisopropylethylamine (0.10 mL,0.600 mmol, 3.0 equiv) を順に加え,110 °Cで24時間撹拌した。その後減圧下で溶媒を留去し,得られた粗製生物をシリカゲルクロマトグラフィー (酢酸エチル:メタノール = 20/1) で精製を行い,化合物 3b を58.5 mg,収率 49% で得た。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ: 8.55(s, 1H), 8.15 (d, J = 12.1 Hz, 2H), 7.16 (s, 1H), 6.92 (d, J =12.2 Hz, 2H), 6.69 (s, 1H), 5.15 (dd, J = 12.9, 5.3 Hz, 1H), 4.33 (s,1H), 4.07-4.26 (m, 4H), 3.84 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.54-3.74 (m, 10H),3.33 (d like, J = 4.1 Hz, 2H), 2.71-2.87 (m, 2H), 2.10-2.30 (m, 2H)
【0144】
3-(4-((2-(2-(2-(2-(4-aminophenoxy)ethoxy)ethoxy)ethoxy)ethyl)amino)-6-chloro-1-oxoisoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione
3b (58.5 mg, 0.099 mmol, 1.0 equiv), 鉄 (55.2 mg, 0.990 mmol, 10 equiv) をエタノール (1.7ml) に加えたのち,水 (0.4 ml) に溶解させた塩化アンモニウム (53.0 mg, 0.990 mmol, 10 equiv) を加えた。その後,80 °Cに加熱し,1時間撹拌した。室温に冷却後,濾過し酢酸エチルにて洗浄した。ろ液に酢酸エチルと水を加え,有機層を飽和食塩水で洗浄,硫酸ナトリウムにて脱水した。その後,減圧下溶媒を留去し,還元体を得た。これ以上の精製操作を行うことなく,次のステップに用いた。
窒素雰囲気下, 0 °Cで上記還元体 (46.8 mg, 0.0834 mmol, 1.0 equiv), JQ-1 (33.3 mg, 0.0834 mmol, 1.0 equiv), HATU (63.1 mg, 0.166 mmol, 2.0 equiv) を DMF(0.8 mL, 0.1M) に溶解させた後,N,N-Diisopropylethylamine(43.0 μL, 0.250 mmol, 3.0 equiv) を加えた後,室温で1時間撹拌した。反応溶液に水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸ナトリウムにて乾燥させた。後述の条件にてHPLCによる単離を行った。NOMURA CHEMICAL Develosil ODS-HG-5, 20 × 250mm, CH3CN/H2O = 10/90 to 60/40 with 0.1% TFA, 流量 5.0 mL/min, 測定波長 = 220 nm, tR = 69.6 min.
展開溶媒を減圧下留去することで,黄色の固体4bを64.0 mg,収率81% (2step) で得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ: 7.30-7.59(m, 6H), 6.93-7.02 (m, 1H), 6.78-6.85 (m, 3H), 5.06 (dd, J = 13.2, 5.0Hz, 1H), 4.75-4.84 (m, 1H), 4.15-4.28 (m, 2H), 4.02-4.09 (m, 2H), 3.75-3.85 (m,2H), 3.48-3.68 (m, 12H), 3.19-3.35 (m, 4H), 2.67-2.89 (m, 5H), 2.22-2.48 (m,4H), 2.01-2.11 (m, 1H), 1.59-1.74 (m, 3H)
【0145】
(「F3C-レナリドミド」-「リンカー」-「Birabresib」)の合成
Trifluoromethyl lenalidomide-Linker-JQ-1 誘導体(4a)の合成は、以下の手順で行った。
【0146】
【化48】
【0147】
3-(4-((2-(2-(2-(2-(4-nitrophenoxy)ethoxy)ethoxy)ethoxy)ethyl)amino)-1-oxo-6-(trifluoromethyl)isoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione(3a)
窒素雰囲気下にて,10 mLナスフラスコにレナリドミド1a (65.5 mg, 0.200 mmol, 1.0 equiv), 2 (255.1 mg, 0.600 mmol, 3.0 equiv), NMP (0.2 M, 1.0 mL), N,N-Diisopropylethylamine (0.10 mL,0.600 mmol, 3.0 equiv) を順に加え,110 °Cで12時間撹拌した。その後,50 °C,減圧下において溶媒を留去した。得られた粗製生物をシリカゲルクロマトグラフィー (酢酸エチル:メタノール = 1/0 → 5/1) で精製を行い,化合物3aを46.3mg,収率 41% で得た。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ: 8.71 (s, 1H), 8.10-8.15 (m, 2H), 7.44 (s, 1H), 6.90-6.98 (m, 3H),5.18 (dd, J = 12.9, 5.3 Hz, 1H), 4.49 (s, 1H), 4.15-4.35 (m, 4H), 3.84(t, J = 4.6 Hz, 2H), 3.74 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.54-3.68 (m, 8H),3.37 (m, 2H), 2.71-2.85 (m, 2H), 1.98-2.39 (m, 2H)
19F NMR(282MHz, CDCl3) δ: -62.84 (s, 3F)
【0148】
3-(4-((2-(2-(2-(2-(4-aminophenoxy)ethoxy)ethoxy)ethoxy)ethyl)amino)-1-oxo-6-(trifluoromethyl)isoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione
3a (46.3 mg, 0.074 mmol, 1.0 equiv), 鉄 (41.3 mg, 0.740mmol, 10 equiv) をエタノール (1.2 ml) に加えたのち,水 (0.3 ml) に溶解させた塩化アンモニウム (40.0 mg, 0.740 mmol, 10 equiv) を加えた。その後,80 °Cに加熱し,1時間撹拌した。室温に冷却後,濾過し酢酸エチルにて洗浄した。ろ液に酢酸エチルと水を加え,有機層を飽和食塩水で洗浄,硫酸ナトリウムにて脱水した。その後,減圧下溶媒を留去し,還元体を得た。これ以上の精製操作を行うことなく,次のステップに用いた。
【0149】
窒素雰囲気下, 0 °Cで上記アミン体(還元体)(37.5 mg, 0.0630 mmol, 1.0 equiv), JQ-1 (25.3 mg, 0.0630 mmol, 1.0 equiv), HATU (47.9 mg, 0.126 mmol, 2.0 equiv) を DMF(0.6 mL, 0.1M) に溶解させた後,N,N-Diisopropylethylamine(32.5 μL, 0189 mmol, 3.0 equiv) を加えた後,室温にて2時間撹拌した。反応溶液に水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸ナトリウムにて乾燥させた。後述の条件にてHPLCによる単離を行った。NOMURA CHEMICAL Develosil ODS-HG-5, 20 × 250mm, CH3CN/H2O = 10/90 to 90/10 with 0.1% TFA, 流量 5.0 mL/min, 測定波長 = 220 nm, tR = 39.5 min.
展開溶媒を減圧下留去することで,黄色の固体4aを41.0 mg,収率67% (2step) で得た。
1H NMR (300MHz, CD3OD) δ:7.39-7.48 (m, 6H), 7.27 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 6.84 (d, J = 8.8 Hz, 2H),5.09-5.14 (m, 1H), 4.79 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 4.33 (s, 2H), 4.04 (t, J= 4.4 Hz, 2H), 3.76-3.79 (m, 2H), 3.53-3.71 (m, 13H), 3.42 (t, J = 5.0Hz, 2H), 2.70-2.86 (m, 5H), 2.37-2.45 (m, 5H), 2.14 (s, 1H), 1.69 (s, 3H)
19F NMR(282MHz, CDCl3) δ: -62.89 (s, 3F)
【実施例0150】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物のセレブロンバインダのネオ基質に対する選択性の確認)
本実施例では、以下の標的タンパク質分解誘導化合物のセレブロンバインダのネオ基質に対する選択性を確認した。
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」
Le-PROTAC:「レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
NE-005-PROTAC:「F-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
NE-013-PROTAC:「Cl-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
NE-015-PROTAC:「F3C-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
【0151】
(実験方法)
MM1.SまたはH929培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)または図16に示す濃度で薬剤を投与し、37°C,5%CO2条件下で24時間培養した。その後、細胞をピペッティングにて回収し、900×gで3分間遠心後に上清をアスピレーターにて除去した。その後、1×PBSを500 μlを細胞ペレットに加え洗浄後、再度900×gで3分間遠心し、上清をアスピレーターにて除去した。次に、Protease inhibitorカクテル(Sigma Aldrich)を含むRIPA buffer 100 μlを細胞ペレットへ加え、細胞を溶解した。その後、16,100×gで15分間遠心後に上清液を細胞抽出液として得た。次に、BCAアッセイキット(Thermo FisherScientific)を用いてタンパク質定量を行い、等しいタンパク質濃度になるように1×SDS sample buffer内へ調整し、95°Cで5分間ボイルした。ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動後、immunoblotを行い、図16に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
MM1.S培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)または薬剤(0.1 μM)を投与し、37°C, 5%CO2条件下で5日間培養した。その後、細胞を懸濁し、96穴のopti-plate (PerkinElmer社)へ40 μlずつ加え、Cell Titer-Glo キット (Promega社)を40 μlずつ加え細胞を溶解した。その後、SpectraMax iD3(Molecular devise社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0152】
(結果)
図16に結果を示す。
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物は、公知のPROTACであるARV-825とは異なり、IKZF1/3/CK1αを分解誘導しないのでセレブロンバインダのネオ基質選択性を有し、さらに、抗癌作用(特に、多発性骨髄腫増殖抑制作用)を有することを確認した。
加えて、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物は、標的タンパク質であるBRD2、BRD3及びBRD4を分解誘導することができる。BRD2-4は、様々ながん種の増殖に関与していることが報告されており、実際にJQ1はAML, DLBCL, MM, ALLのような血液がんに加えて、肺癌、前立腺癌、NUT正中腺癌を含む様々ながん種に効果があることが報告されている。すなわち、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物は、多発性骨髄腫増殖抑制作用だけでなく、前立腺癌、バーキットリンパ腫、NUT正中腺癌、肺癌等の様々な癌細胞増殖抑制作用も有する。
【実施例0153】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物のSALL4及びPLZFに対する分解誘導能の確認)
本実施例では、以下の標的タンパク質分解誘導化合物のSALL4及びPLZFに対する分解誘導能を確認した。
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」
Le-PROTAC:「レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
F-PROTAC:「F-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
Cl-PROTAC:「Cl-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
F3C-PROTAC:「F3C-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
【0154】
(実験方法)
NTERA培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、37°C, 5%CO2条件下で24時間培養した。次に、DMSO(0.1%)または図17に示す濃度で薬剤を投与し、37°C,5%CO2条件下で24時間培養した。その後、培地上清をアスピレーターで除き、1×PBSを500 μlを細胞ペレットに加え洗浄後、上清をアスピレーターにて除去した。次に、Protease inhibitorカクテル(Sigma Aldrich)を含むRIPA buffer 100 μlを細胞へ加え、細胞を溶解した。その後、16,100×gで15分間遠心後に上清液を細胞抽出液として得た。次に、BCAアッセイキット(Thermo FisherScientific)を用いてタンパク質定量を行い、等しいタンパク質濃度になるように1×SDS sample buffer内へ調整し、95°Cで5分間ボイルした。ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動後、immunoblotを行い、図17に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
MDS-L培養細胞を細胞培養用の24穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)または図17に示す濃度で薬剤を投与し、37°C, 5%CO2条件下で24時間培養した。その後、細胞をピペッティングにて回収し、900×gで3分間遠心後に上清をアスピレーターにて除去した。その後、1×PBSを500 μlを細胞ペレットに加え洗浄後、再度900×gで3分間遠心し、上清をアスピレーターにて除去した。次に、Protease inhibitorカクテル(Sigma Aldrich)を含むRIPA buffer 100 μlを細胞ペレットへ加え、細胞を溶解した。その後、16,100×gで15分間遠心後に上清液を細胞抽出液として得た。次に、BCAアッセイキット(Thermo FisherScientific)を用いてタンパク質定量を行い、等しいタンパク質濃度になるように1×SDS sample buffer内へ調整し、95°Cで5分間ボイルした。ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動後、immunoblotを行い、図17に示す抗体を用いることで各タンパク質を検出した。
【0155】
(結果)
図17に結果を示す。
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物(特に、Cl-PROTAC、F3C-PROTAC)は、公知のPROTACであるARV-825とは異なり、SALL4及びPLZFを分解誘導せず、かつセレブロンバインダのネオ基質選択性を有していることを確認した。すなわち、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物(特に、Cl-PROTAC、F3C -PROTAC)は、様々な標的タンパク質バインダを使用することにより、多種の癌腫に使用することができる。
【実施例0156】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物の抗癌作用の確認)
本実施例では、以下の標的タンパク質分解誘導化合物の抗癌作用を確認した。
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」
Le-PROTAC:「レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
F-PROTAC:「F-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
Cl-PROTAC:「Cl-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
F3C-PROTAC:「F3C-レナリドミド」-「リンカー(参照:図15)」-「Birabresib」
【0157】
(実験方法)
HCT116またはNTERA培養細胞を細胞培養用の96穴プレート(BD falcon社)へ播種し、DMSO(0.1%)または図18に示す濃度で薬剤を投与し、37°C,5%CO2条件下で2日間培養した。その後、培地上清をアスピレーターで除き、40 μlの培地を加えた。次に、Cell Titer-Glo キット (Promega社)を40 μlずつ加え細胞を溶解し、384 穴のopti-plate (PerkinElmer社)へ40 μlずつ加え、SpectraMax iD3(Molecular devise社)を用いて発光シグナルを検出した。
【0158】
(結果)
図18に結果を示す。
本発明の標的タンパク質分解誘導化合物は、固形癌(特に、胚性癌、大腸癌)に効果があることを確認した。
【実施例0159】
(CC-220のSALL4の分解評価)
本実施例では、以下の化合物であるCC-220のSALL4の分解能を上記実施例の測定方法を参照して実施した。
CC-220がIKZF1やIKZF3を分解できる濃度でSALL4の分解が弱いことを確認した(参照:図19)。すなわち、CC-220が血液がん治療用組成物の有効成分になることを確認した。
さらに、CC-220と同様な化学構造及び化学特性を有する以下のフッ素化CC-220、CC-92480、フッ素化CC-92480も同様に血液がん治療用組成物の有効成分になることができる。
加えて、CC-220、フッ素化CC-220、CC-92480及びフッ素化CC-92480は、本発明の標的タンパク質分解誘導化合物のセレブロンバインダとなることができる。
【0160】
【化49】
【0161】
【化50】
【0162】
【化51】
【0163】
【化52】
【実施例0164】
(本発明の標的タンパク質分解誘導化合物及び癌治療用組成物の分解能)
標的タンパク質分解誘導化合物の各タンパク質の分解能をLen-PROTACでの分解能を100として、以下の表のように算出した。
〇癌治療用組成物の各タンパク質の分解能
1)Lenを100とした際の数値に変換した。さらに、0より低い場合には、数値を0とした。
2)図10のHuH7細胞のMM1.S細胞での結果(1μmol/l、10μmol/l)を採用し、図10で測定していないFC-Lenは、図16及び図17での結果を採用した。
3)各数値において、一番大きな数値と一番小さい数値を範囲とした。
〇標的タンパク質分解誘導化合物の各タンパク質の分解能
1)Len-PROTACを100とした際の数値に変換した。さらに、0より低い場合には、数値を0とした。
2)各数値において、一番大きな数値と一番小さい数値を範囲とした。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【実施例0167】
(実験方法)
動物個体におけるPROTACの抗腫瘍効果を評価するために、BRD2-4が治療標的となることが複数報告されている神経芽腫培養細胞(IMR32細胞)を用いて、マウスXenograftモデルにおける解析を行った。詳細は以下の通りである。
【0168】
(実験方法)
IMR32培養細胞を細胞培養用の10 cm dish(BD falcon社)へ播種し、37°C, 5%CO2条件下で培養した。その後、ヌードマウス1個体あたり5×106細胞のIMR32細胞を50 μlのPBSで再懸濁し、50 μlマトリゲル(Corning)と混合した。混合した細胞溶液100 μlをヌードマウスの脇腹の皮下へ移植した。移植から1週間後より、DMSOもしくはPROTACを1日に1回(平日のみ)腹腔内に投与した。投与溶液は、10%DMSO, 5 mg/kg PROTACおよび1% Tween 80になるように PBSで希釈し、腹腔内に200 μlずつ投与した。投与より5週間後に腫瘍体積を電子ノギスにて測定し、腫瘍を取り出し写真を撮影した。
【0169】
(結果)
図33の結果は以下の通りである。
レナリドミドもしくはレナリドミド誘導体を用いたPROTACはマウスにおいて腫瘍の増殖を抑制することを確認した。特に、F3C-レナリドミドを用いたPROTACは、レナリドミドを用いたPROTACと比較して、同等以上の腫瘍増殖抑制効果を示した。
【0170】
セレブロンはタンパク質の分解をつかさどるユビキチンリガーゼの構成因子であり、サリドマイド誘導体化合物が、セレブロンに結合することによりセレブロン基質特異性が変化し、通常は分解されないタンパク質(ネオ基質)が分解されることにより、薬効あるいは副作用が生ずる。
発明者らは、すでに述べたようSALL4、PLZFがセレブロン-サリドマイド誘導体化合物複合体と結合することにより、分解を誘導することが、催奇性の発現の重要なイベントであることを発見した。つまり、サリドマイド系誘導剤(サリドマイド、ポマリドミド、レナリドミド)、あるいはサリドマイド骨格を利用した標的分解誘導剤においても、SALL4、PLZFと結合活性を有する場合に、結果的にそれらのタンパク質を分解し、催奇毒性を発現する。一方、KroenkeやLuにより、 レナリドミドの抗腫瘍効果(多発性骨髄腫における細胞増殖抑制効果)について、報告がなされており、B細胞やT細胞の分化に必須の因子であるイカロス(IKZF1)、およびアイオロス(IKZF3)のセレブロンによる基質認識からユビキチン化、プロテアソームでの分解に至る一連の機構により抗腫瘍効果が発現していることが明らかにされている。(Kroenke J,et al., Science 343,301-305(20014))。
そこで、以下の実施例では、催奇性を有しない、サリドマイド系薬剤、サリドマイド骨格を利用した標的分解誘導剤の開発を目的に、サリドマイド骨格の官能基修飾を検討した。
【実施例0171】
サリドマイド系誘導剤(サリドマイド、ポマリドミド、レナリドミドを含む剤)の内、グルタルイミド環が主にセレブロンとの結合に供していることから(参照:Nature 2014, 512, 49-53、Nature Structural & Molecular Biology 2014, 21, 803?809)、フタルイミド環のベンゼン環4位から7位に対して、さまざまな官能基置換を行い、IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFへの結合能、さらにはその結合能による細胞中におけるIKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFの分解の程度を調べた。
また、上記実施例の結果から明らかなように、4位において、リンカーを介して特定タンパク質と結合する機能(標的タンパク質バインダ)を結合させることで、目的タンパク質の分解誘導機能を持たせることが出来る。本実施例では、分解標的タンパク質としてBRDを選択し、標的タンパク質バインダとしてJQ-1を用いた。
さらに、このリンカー及び標的タンパク質バインダ部分は、立体排除体積効果が高いと考えられることから、同様にIKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFへの結合能、それらに対する細胞中における分解の程度を調べた。
【0172】
サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドミドについて、各分子への結合能、細胞中における分解の程度を評価した。各分子への結合能については、生化学的な相互作用(AlphaScreen法)により分析を行い、細胞内における各分子の分解能については、以下の方法により行った。
【0173】
(1)細胞腫の選択
IKZF1,IKZF3及びBRD(BRD2、BRD3、BRD4)については、H929細胞、SALL4およびPLZFについては、Huh7細胞を用いた。
(培養条件)
それぞれの細胞を50~60 x 104 cells/mLに調製し、24ウェルプレートに各ウェル1mlずつ分注した。インキュベーション温度は37℃、16時間から20時間、二酸化炭素濃度は5%とした。
(化合物の添加)
DMSOを溶媒とし10mMに調整した化合物溶液を1μL添加し、培地中における化合物終濃度を10μMとした。この状態で37℃16時間から20時間、二酸化炭素濃度5%条件でインキュベーションした。なお、化合物を溶解していない同量のDMSO溶媒を添加した細胞を評価コントロールとして、同時に準備した。
【0174】
(細胞の回収とウエスタンブロッティング評価用サンプルの調整)
1)H929細胞
任意の1.5mLチューブにH929細胞液を回収した。H929細胞は浮遊細胞なので剥がす操作は必要ない。回収した各サンプルの細胞数を揃えるため、BCA法で定量し、最も濃度の薄いサンプルに合わせて希釈した。希釈したH929細胞液にメルカプトエタノールを含むSDSサンプルバッファーを加え、98℃で5分間、加熱した。
2)Huh細胞
HuH7細胞液の培地をアスピレートした。HuH7細胞は接着細胞なのでプレートの底に張り付いている。24ウェルプレートに、メルカプトエタノールを含むSDSサンプルバッファーを100μLずつ入れた。吸い口が広いチップで24ウェルプレートの底を削るようしてHuH7細胞を剥がし、任意の1.5mLチューブに回収した。なお、H929細胞と同様に、BCA法により定量し、細胞数を合わせたのち、98℃で5分間、加熱した。
【0175】
(ウエスタンブロッティングによるIKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFの定量)
各細胞中に分解後に残存しているIKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFの定量を行った。
(ウエスタンブロッティング法による各タンパク質の定量)
検出(化学発光の撮影)はAmercham ImageQuant 800/ Cytivaで行った。
検出後のメンブレンはストリッピング溶液で抗体を剥がし、次の抗体反応を行った。
Amercham ImageQuant 800で撮影した画像データをQuantity One/ Bio-Radソフトで読み込み、解析した。Quantity Oneで目的タンパクのバンドを定量し、化合物を入れていない評価コントロール用DMSO添加後の各分子の残存量を100%とし、化合物添加後の残存分子数相対比を分解後の残存分子数割合(%)で分解の程度を評価した。
なお、検出に用いた抗体は、以下表3の通りである。なお、化合物の添加により細胞中におけるCRBNの発現量の増大、あるいは減少がないかを、Anti-CRBN-Abを用いて確認を行っているが、化合物添加により大きな変動は認められず、一様に発現していることを確認した。それぞれの抗体については、Thermo Fisher、SANTA Cruz、Cell Signaling、MBLから市販されている。
【0176】
【表3】
【0177】
(7-CF3-ポマリドミドの合成)
以下の手順で合成した。
((トリフロロメチル)スルフォニル)ベンゼン 30 mg (0.1 mmol)、ヨウ化銅(I)10 mg(0.06 mmol)およびt-ブトキシカリウム 10 mg(0.1 mmol)を乾燥したN,N-ジメチルホルムアミド 1 mLに溶解させ、室温で30分撹拌した。その後、7-Br-ポマリドミド 7 mg(0.02 mmol)を加え12時間後、減圧下で溶媒を留去した後、酢酸エチルで再溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
4-アミノ-2-(2,6-ジオキオピペリジン-3-イル)-7-トリフロロメチルイソインドリン-1,3-ジオンを収量2.0 mg、収率30%で得た。
1H-NMR(500 MHz, CDCl3) δ 2.11-2.18 ppm (m, 1 H), 2.69-2.95 ppm (m, 3 H), 4.90-4.97 ppm (m, 1 H), 5.67-5.87 ppm (m, 2 H), 5.26 ppm (brs, 2 H), 7.30 (m, 1H), 7.48 (m, 1H), 7.9 (brs, 1 H); 19F-NMR (470 MHz, CDCl3): -121.9.
(5,7-Br-ポマリドミドの合成)
以下の手順で合成した。
ポマリドミド 100 mg(0.366 mmol)とN-ブロモスクシミド 390 mg (2.2 mmol)をアセトニトリル 4 mLに溶解させ、室温で24時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去した後、酢酸エチルで再溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。4-アミノ-7-ブロモ-2-(2,6-ジオキオピペリジン-3-イル)イソインドリン-1,3-ジオンを収量42 mg、収率33%で得た。
1H-NMR(500 MHz, CDCl3) δ 2.11-2.18 ppm (m, 1 H), 2.69-2.95 ppm (m, 3 H), 4.90-4.97 ppm (m, 1 H), 5.67-5.87 ppm (m, 2 H), 5.26 ppm (brs, 2 H), 7.46 (m, 1H), 7.54 (m, 1H), 7.68 (brs, 1 H)
上記反応の副生成物として、4-アミノ-5,7-ブロモ-2-(2,6-ジオキオピペリジン-3-イル)イソインドリン-1,3-ジオンを収量2.1 mg得た。
1H-NMR(500 MHz, CDCl3) δ 2.11-2.18 ppm (m, 1 H), 2.69-2.95 ppm (m, 3 H), 4.90-4.97 ppm (m, 1 H), 5.67-5.87 ppm (m, 2 H), 5.26 ppm (brs, 2 H), 8.1 (s, 1H) 7.81 (brs, 1 H)
【0178】
サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドミドで、いずれも同様な傾向がみられ、多発性骨髄腫において抗腫瘍効果をもたらすIKZF1及びIKZF3の分解が認められた(参照:図34)。
一方、催奇性発現の原因である、SALL4、PLZFの分解も同時に見られることが分かった。また、各IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZF化合物存在下におけるCRBNとの結合能が強くなることで細胞中におけるそれら分子の分解は亢進した(参照:図34)。
【0179】
標的タンパク質分解誘導剤として、4位の位置に立体障害性の傘高いリンカー及びタンパク質標的バインダを結合した場合の化合物を用いて、4位位置おける修飾が各IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFとの結合に対する影響及び、その結果として発現する細胞中における各IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFの分解に対してどのような影響があるのかを確認した(参照:図35)。
4位アミンの水素置換体として、リンカーとしてポリエチレングリコール、その先にBRDを標的とするBET Bromodomain阻害剤であるJQ-1化合物を結合した化合物をモデル化合物として用いた。この化合物は、JQ-1が極めて嵩高く、また、n=3のポリエチレングリコールをリンカーとして利用していることから極めて柔軟性が高い置換体といえる。その結果を図35に示す。
BRDの生化学的相互作用については、IKZF等と同様に、Flag-GST―BRD4とbiotin化CRBNとの相互作用をAlphaScreen法で評価した。また、細胞中におけるBRDの分解については、表3のBRD抗体を用いて、BRD2、BRD3、BRD4の分解の平均値とした。なお、化合物を入れていない評価コントロール用DMSO添加後の各分子の残存量を100%とし、化合物添加後の残存分子数相対比を分解後の残存分子数割合(%)で分解の程度を評価した。
ポマリドミド系、レナリドミド系いずれの基本骨格においても、IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFに対する、結合能はほぼ同様な傾向を示し、驚くべきことに4位位置において「リンカー」「標的バインダ」による置換を行った場合(本実験では、リンカーとしてn=3のポリエチレングリコール、標的タンパク質バインダとして、BRDを標的とするJQ-1をモデル化合物として用いた)、この置換基は、IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFとの結合能に影響しないことを確認した。
また、レナリドミドと4フッ化レナリドミドの比較から、4位修飾の影響と比較するとベンゼン環の4位以外の修飾の影響が、各分子との結合傾向、分解傾向にドミナントに影響があることを確認した。つまり、4位にリンカーを介し、タンパク質バインダ(タンパク質標的機能)を付加させる場合、標的タンパク質バインダは任意に選択することができる。
詳しくは、ポマリドミド系、レナリドミド系のベンゼン環の6、7位の官能基修飾がSALL4、PLZFに対する結合能の抑制に重要になる。5位修飾もSALL4、PLZFに対する結合能の抑制が可能であることを確認した。
【0180】
ポマリドミド骨格に5位、6位を中心に置換基効果を確認した(参照:図36)。
6位修飾の結果に関し、ハロゲン置換をした場合、ポマリドミドと比較すると、F、Cl、Brいずれも、SALL4、PLZFとの結合は明らかに低下しており、かつファンデルワールス半径が大きくなるにつれて、その効果も高い。細胞中での分解の程度では、Cl、Brでその効果も大きい。一方で、IKZF1及びIKZF3への結合能は完全に消失していないことから、多発性骨髄腫への抗腫瘍効果を残しながら、催奇毒性発現に対しては、減弱できていることを確認した。
一方、7位へのハロゲン修飾の影響に関し、Fは、IKZF1,IKZF3への結合能も大きく低下をし、一方でSALL4、PLZFへの結合能も消失している。その結果、これを標的分解誘導剤の母核として用いた場合、催奇毒性の減弱のみならず、IKZF1,3の分解も抑えられていることから標的タンパク質バインダの標的能のみを利用したニュートラル(生物学的作用を持たない)にセレブロンのみをリクルート可能な標的分解誘導薬として用いることができる(分子糊機能)。
一方、Cl、Brとファンデルワールス半径が大きいハロゲン置換をすると、Clは、F置換と比べるとSALL4、PLZFともに結合能は上昇し、細胞内での分解も増大している。Clよりファンデルワールス半径の大きなBr置換にすると、SALL4、PLZFの分解もより抑えられている。さらに置換基を3フッ化メチル基にすると、SALL4、PLZFへの結合が大幅に減弱して、さらにSALL4、PLZFの分解も抑えられることが分かった。また、IKZF1、IKZF3への結合はかなり抑えられていることがわかる。この傾向は明らかに、6位修飾の場合と傾向が異なる。また、ポマリドミド系とレナリドミド系で7位フッ素置換のもの同士で比較できるが、いずれもほぼ同じ傾向であることがわかる。
5,7位にBr置換を行った場合、7位単独の場合より、IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFに対しての結合能が消失し、細胞内での分解もほとんど抑えられていた。
7位に水酸基置換を行った場合、3フッ化メチル基置換と同様に、分子糊としての機能は極めて高く、IKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFに対して結合能が消失し、細胞内での分解もほとんど抑えられていることから、4位でのリンカー、標的バインダ機能をもたせた標的分解誘導剤の母核として最適であることを確認した。
【0181】
レナリミド骨格に6位、7位を中心に置換基効果を確認した(参照:図37)。
6位ハロゲン置換をした場合、IKZF1、IKZF3に対する結合能を保持したまま、SALL4、PLZFに対する結合能を大きく低下させ、催奇毒性を大きく低下させていることを確認した。この傾向は、ポマリドミド骨格と同様な効果が認められた。また、官能基のファンデルワールス半径が大きい方が、SALL4、PLZFに対する結合能を減少させ、その結果、細胞中における分解を抑える効果が高いことがわかった。同様に、ポマリドミド骨格と同じ傾向にあった。特に、3フッ化メチル、3フッ化メトキシのよう嵩高い官能基で置換するとその効果が大きいことを確認した。
【0182】
図36に記載の結果において、IKZF1,IKZF3及びSALL4、PLZFのいずれも分解を誘導しない7位修飾ポマリドミド骨格に、実施例12と同様な化学反応を使い、7位修飾ポマリドミド-リンカー-JQ-1誘導体を合成し、IKZF1,IKZF3及びSALL4、PLZF、BRD4とCRBNとの生化学的な相互作用(AlphaScreen法)と細胞中における各タンパク質の分解の程度を評価した(参照:図38)。
7位フッ化ポマリドミド-リンカー標的バインダ(JQ-1)及び7位トリフルオロポマリドミド-リンカ-標的バインダ(JQ-1)の両方が、SALL4、PLZFへの結合能は低く、その結果、細胞中におけるSALL4、PLZFの分解の程度が、ポマリドミドーリンカー標的バインダ(JQ-1)と比較して、大きく低減されていることが確認できた。
この傾向は、4位に『リンカー』、『標的バインダ』で置換する前の、基本骨格のIKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFに対する結合能を性質として引き継いでいることが確認できた。
これにより、これらの化合物をCRBNバインダとして用いた場合、標的タンパク質の分解のみを誘起し、その余の性質は生物学的にニュートラルな標的タンパク質分解誘導剤を創出できる。
【0183】
(総評)
血液がんに関し、薬効標的がネオ基質IKZF1/3, CK1αと標的タンパク質BRD2/3/4の両方であるため、IKZF1/3への分解能が高い化合物の治療効果が高いと考えられる。
一方で、血液がん以外の癌種においては、IKZF1/3やCK1αは薬効の標的にならず、むしろ血液系の副作用につながると考えられている。
より詳しくは、IKZF1/3は、血液がん(特に多発性骨髄腫)の増殖に関与しているが、血液細胞(特に白血球)に発現するタンパク質であり、血液がん以外のがんに関しては大きく関与していないと考えられる。一方で、IKZF1/3は造血幹細胞等から白血球(特にT細胞やB細胞のようなリンパ球)への分化・機能において極めて重要な転写因子である。実際に、IKZF1/3のノックアウトマウスは、免疫不全になり、T細胞やB細胞が欠損している。加えて、マウスにおいてレナリドミド投与によるIKZF1やIKZF3の分解は、白血球や血小板の減少を引き起こすことが報告されている。また、サリドマイド誘導体の患者への投与に伴う副作用としても白血球の減少等の報告がある。
すなわち、血液がん以外のがん種におけるIKZF1/3の著しい分解は、薬効への寄与は無く、副作用に繋がると考えられる。
【0184】
SALL4はヘテロでも変異が入ることによってOkihiro症候群(Duane-radial ray syndrome)と呼ばれる先天性の疾患を引き起こすことが遺伝学的に示されている。加えて、この疾患は手足を含む様々な箇所で催奇性を示し、その表現型はサリドマイド胎児症と非常によく似ていることが報告されている。加えて、サリドマイドやサリドマイド誘導体のSALL4に対する分解誘導能は非常に高いこと、SALL4の変異がヘテロでもOkihiro症候群が引き起こされることを考慮すると、SALL4の分解によって催奇性が引き起こされる可能性が高いと考えられる。また、ウサギにサリドマイドを投与すると、胎児にてSALL4が減少していることも確認されている。
PLZFは、ヒトやマウス等において、変異によって催奇性を引き起こすことが報告されている。また、SALL4が分解誘導されないニワトリ胚を用いた系において、PLZFが分解誘導されることを本発明者らは報告している。さらに、PLZFをニワトリ胚に過剰発現することによって、サリドマイドによる催奇性が軽減されることを実験的に明らかにしている。
すなわち、SALL4とPLZFの両方の分解がヒトでは顕著に引き起こされることによって、重篤な催奇性が引き起こされることが考えられる。また、マウスにおいてSALL4とPLZFをダブルノックアウトすることによって、より顕著な催奇性の表現型を示し、サリドマイド胎児症によく似ていることが報告されている。これらにより、SALL4とPLZFの分解を低減することによって催奇性の低減につながる。
【0185】
上記知見及び上記実施例の結果により、以下のことを確認した。
F-Lenは、既存薬レナリドミドと比較して、多発性骨髄腫に対する活性が高く、5qMDSに対する活性が著しく高い。一方で、SALL4やPLZFの分解誘導能はレナリドミドと比較して低い。つまり、F-Lenは既存薬レナリドミドより催奇性を低減し、薬効の高いサリドマイド誘導体である。
Cl-Lenは、既存薬レナリドミドと比較して、多発性骨髄腫や5qMDSに対する活性が弱いが、SALL4やPLZFの分解誘導能はない。つまり、Cl-Lenは既存薬レナリドミドより薬効は弱いが催奇性を著しく低減している。
Br-Lenは、既存薬レナリドミドと比較して、弱いながらも多発性骨髄腫に対する薬効を有しており、SALL4やPLZFの分解誘導能はない。つまり、Br-Lenは既存薬レナリドミドより薬効は弱いが催奇性を著しく低減している。
F3C-Lenは、血液がんに対する薬効標的であるIKZF1/3やCK1α、催奇性に関与するSALL4やPLZFのような代表的なネオ基質の分解を誘導しない。しかし、CRBNを介した高いタンパク質分解を誘導することができる。そのため、F3C-Lenは様々ながん種を対象にした副作用の少ないPROTACヘの応用が期待できる。
F-Lenを用いたPROTACは、血液がんに対して既存のPROTACと同程度の効果があり、SALL4やPLZFの分解誘導能は低減している。つまり、F-Len-PROTACは、血液がんに対して非常に有効かつ催奇性を低減している。さらに、他のがん種にも有効である。
Cl-Lenを用いたPROTACは、血液がんに対して既存のPROTACの効果より弱いが、SALL4やPLZFの分解誘導能は無い。つまり、Cl-Len-PROTACは、血液がんに対して有効かつ催奇性が著しく低減している。さらに、他のがん種にも有効である。
F3C-LenPROTACは、様々ながん種に対して有効であり、催奇性および血液系の両方において副作用はないと考えられる。
F3CO-Len-PROTACは、F3C-Len-PROTACと同様な化学構造及び化学特性並びに実施例の結果により、様々ながん種に対して有効であり、催奇性および血液系の両方において副作用ないと考えられる。
Br-Len-PROTACは、実施例の結果により、F3C-Len-PROTACと同様に、様々ながん種に対して有効であり、催奇性および血液系の両方において副作用ないと考えられる。
【0186】
上記知見及び上記実施例18の結果により、以下のことを確認した。
1)サリドマイド誘導体の官能基(特に、6,7位)が催奇性に与える影響が大きいことを確認した。
2)サリドマイド誘導体のIKZF1、IKZF3、SALL4、PLZFに対する生化学的な結合が強いと、サリドマイド誘導体による細胞中のIKZF1、IKZF3、SALL4、PLの分解能が高い。
3)サリドマイド誘導体の4位(特に、4位のアミノ基)にリンカーを伸ばし、標的分子 (POI: protein of interest:嵩高い)を結合させた場合、該リンカー及び該POIは、SALL4、PLZFへの分解に対しては、ほぼ影響がないことを確認した。すなわち、4位にリンカー、さらに、該リンカーにPOIを結合させることによって、SALL4、PLZFの分解能力を阻害又は向上させない。また、サリドマイド誘導体の6、7位の修飾状況がSALL4、PLZFに対する分解性に極めて重要である。
4)6位修飾基置換により、SALL4、PLZFへの結合能は弱まる。修飾基の立体障害の影響の可能性も示唆される。一方、IKZF1,3への結合能は残る。
5)第7位の修飾は、IKZF1,3及びSALL4、PLZFへの結合能がいずれも減弱する。
6)第7位はファンデルワールス半径の大きな官能基は、特にSALL4、PLZFへの結合選択性を低下させる。
7)立体障害性効果がなくても、電気陰性度の高い官能基(F)、あるいは水素結合を起こす官能基(OH)も非常に強くSALL4、PLZFとの結合を阻害する。これは、サリドマイド誘導体がCRBNと相互作用する際、構造的にHis359が近傍に存在することから、Hisのイミダゾール基と相互作用し、SALL4、PLZFの侵入スペースを減少させているものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
新規標的タンパク質分解誘導化合物及び該化合物を含む癌治療用組成物、並びに、催奇性が低減した癌治療用組成物を提供することができる。
【0188】
本発明は以下の通りである。
1.以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物、
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」、
ここで、該セレブロンバインダは、以下の一般式(10)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択される、標的タンパク質分解誘導化合物。
【化53】
(ここで、XはCH又はC=Oであり、R10は水素、官能基、原子又はNRL1L2でありかつRL1及びRL2は水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子であり、R11は水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、並びに、R12は水素、F、Br、CF3、I、OH、Cl、CH3、OCF3又はOCH3である。)
2.前記標的タンパク質バインダは、JQ-1又はBirabresibである、前項1に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
3.前記一般式(10)のXはCHであり、R11はCF3であり、R12は水素である、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
4.前記一般式(10)のXはCHであり、R11はFであり、R12は水素である、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
5.前記一般式(10)のXはCHであり、R11はClであり、R12は水素である、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
6.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物であって、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(7)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化54】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib 又はJQ-1である、
標的タンパク質分解誘導化合物。
7.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物であって、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(3)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化55】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib 又はJQ-1である、
標的タンパク質分解誘導化合物。
8.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物であって、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(8)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化56】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、
標的タンパク質分解誘導化合物。
9.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物であって、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(6)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化57】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、
標的タンパク質分解誘導化合物。
10.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物であって、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(5)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化58】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、
標的タンパク質分解誘導化合物。
11.以下の構成を有する、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物であって、
前記セレブロンバインダは、以下の一般式(4)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択され、
【化59】
(ここで、RL1及びRL2は、水素、官能基又は原子であるが、いずれか1は官能基又は原子である。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、標的タンパク質分解誘導化合物。
12.SALL4又はPLZFのタンパク質分解能が低減している、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
13.催奇性が低減されている、前項1又は2に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
14.前項1又は2のいずれか1以上の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、癌治療用組成物。
15.下記一般式(1)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む癌治療用組成物。
【化60】
(ここで、Rは水素、F、Br、Cl、CH3、OCH3、I、CF3又はOCF3であり、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
16.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(7)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項15に記載の癌治療用組成物。
【化61】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
17.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(8)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項15に記載の癌治療用組成物。
【化62】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
18.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(6)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項15に記載の癌治療用組成物。
【化63】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
19.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(3)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項15に記載の癌治療用組成物。
【化64】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
20.下記一般式(1)で示される化合物が一般式(5)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物である、前項15に記載の癌治療用組成物。
【化65】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
21.以下の一般式(5)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む、5番染色体欠損骨髄異形成症候群治療剤。
【化66】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
22.以下の一般式(3)で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む、5番染色体欠損骨髄異形成症候群治療剤。
【化67】
(ここで、RL1及びRL2は、それぞれ独立して、水素、官能基又は原子である。)
図1
図2
図3
図4
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【手続補正書】
【提出日】2024-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(8)で示される化合物で示される化合物、その塩、又はその溶媒和物を含む癌治療用組成物。
【化1】
(ここで、RL1及びRL2は、水素である。)
【請求項2】
6-F-レナリドミドを含む5番染色体欠損骨髄異形成症候群治療剤。
【請求項3】
以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物、
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」、
ここで、該セレブロンバインダは、以下の、一般式(5)、一般式(7)、一般式(8)、一般式(6)、7-トリフロオロメチル-ポマリドミド若しくは7-ヒドロキシ-ポマリドミである化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択される、標的タンパク質分解誘導化合物であって、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
(ここで、RL1及びRL2はいずれか一は水素であり、もう一方は「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」と結合している。)
並びに、前記標的タンパク質バインダは、Birabresib又は JQ-1である、
標的タンパク質分解誘導化合物。
【請求項4】
前記セレブロンバインダは一般式(5)で示される化合物である、請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
【請求項5】
前記セレブロンバインダは一般式(7)で示される化合物である、請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
【請求項6】
前記セレブロンバインダは一般式(8)で示される化合物である、請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
【請求項7】
前記セレブロンバインダは一般式(6)で示される化合物である、請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
【請求項8】
前記セレブロンバインダは7-トリフロオロメチル-ポマリドミドである、請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
【請求項9】
前記セレブロンバインダは7-ヒドロキシ-ポマリドミドである、請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物。
【請求項10】
請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、多発性骨髄腫増殖抑制作用剤。
【請求項11】
請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、胚性癌又は大腸癌治療剤。
【請求項12】
請求項3に記載の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、神経芽腫増殖抑制剤。
【請求項13】
請求項5に記載の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、多発性骨髄腫増殖抑制作用剤。
【請求項14】
請求項5に記載の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、胚性癌又は大腸癌治療剤。
【請求項15】
請求項5に記載の標的タンパク質分解誘導化合物を含む、神経芽腫増殖抑制剤。
【請求項16】
以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物を含む、多発性骨髄腫増殖抑制作用剤、
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」、
ここで、該セレブロンバインダは、以下の一般式(3)である化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択される、
剤。
【化8】
(ここで、RL1及びRL2はいずれか一は水素であり、もう一方は「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」と結合している。)
【請求項17】
以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物を含む、胚性癌又は大腸癌治療剤、
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」、
ここで、該セレブロンバインダは、以下の一般式(3)である化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択される、
剤。
【化9】
(ここで、RL1及びRL2はいずれか一は水素であり、もう一方は「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」と結合している。)
【請求項18】
以下の構成を有する標的タンパク質分解誘導化合物を含む、神経芽腫増殖抑制剤、
「セレブロンバインダ」-「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」、
ここで、該セレブロンバインダは、以下の一般式(3)である化合物、その塩、又はその溶媒和物のいずれか1から選択される、
剤。
【化10】
(ここで、RL1及びRL2はいずれか一は水素であり、もう一方は「リンカー」-「標的タンパク質バインダ」と結合している。)
【請求項19】
5,7-ジブロモ-ポマリドミド。
【請求項20】
7-トリフロオロメチル-ポマリドミド。
【請求項21】
IKZF1、IKZF3及びCK1αの分解能が低減されていることによる催奇毒性を低減されている、請求項1に記載の癌治療用組成物。
【請求項22】
SALL4及びPLZFの分解能が低減されていることによる催奇毒性を低減されている、請求項10又は13に記載の多発性骨髄腫増殖抑制作用剤。
【請求項23】
SALL4及びPLZFの分解能が低減されていることによる催奇毒性を低減されている、請求項11又は14に記載の胚性癌又は大腸癌治療剤。