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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169628
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20241128BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20241128BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16C17/10 Z
F16C19/36
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165151
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2021016783の分割
【原出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】牧角 知祥
(57)【要約】
【課題】小型軽量化を図る。
【解決手段】減速機100の主軸線1Laの周りを囲むケーシング122およびケーシングの内周に設けられたピン溝116bに回転可能に配置された複数の外ピン117を有する内歯歯車116と、内歯歯車と噛合う外歯歯車114と、外歯歯車を揺動させる偏心体112と、ケーシングと相対回転するキャリア118,120と、ケーシングと一体的に回転する内周すべり面148およびキャリアと一体的に回転する外周すべり面149を有する主軸受124,126と、を有し、主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項2】
前記主軸受において、少なくとも、前記内周すべり面が前記ケーシングの内周面に形成されるか、前記外周すべり面が前記キャリアの外周面に形成される、
請求項1記載の減速機。
【請求項3】
前記キャリアが樹脂により構成され、前記外周すべり面が前記キャリアの外周面に形成される、
請求項2記載の減速機。
【請求項4】
前記内周すべり面が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成され、
前記内周すべり面が前記主軸線に沿った方向において、前記外ピンと重なる位置に配置される、
請求項3記載の減速機。
【請求項5】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する金属リングの内周に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングおよび前記キャリアが樹脂により構成されるとともに、
前記金属リングと前記外ピンとが、前記主軸線に沿った方向において重なる位置に配置される、
減速機。
【請求項6】
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面の少なくとも一方が、前記主軸線に沿った方向で前記主軸線に対する径寸法を増大または減少するように傾斜している、
減速機。
【請求項7】
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成される、
請求項6記載の減速機。
【請求項8】
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成される
請求項1,2,3,4,6,7のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項9】
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングが金属により構成されるとともに、前記キャリアが樹脂により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面が、前記主軸線に沿って前記外歯歯車から離間する方向で前記主軸線に対する径寸法を増大するように傾斜しており、
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成され、
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成される、
減速機。
【請求項10】
第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する偏心揺動型の減速機であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有するとともに外歯を有する外歯歯車と、
前記第1の部材および前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成されるケーシングと、
前記第1の部材および前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成されるキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を備え、
前記ケーシングは、前記外歯歯車の前記外歯と噛み合う内歯を有しており、
前記キャリアは、前記外歯歯車を保持した状態で前記ケーシングの径方向内側に配置され、
前記ケーシングと前記キャリアとは、前記偏心部の回転に伴う前記外歯歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項11】
2つ以上の偏心体と、各偏心体にそれぞれ対応する外歯歯車と、を有する偏心揺動型の減速機であって、
前記外歯歯車と噛合う内歯歯車が内周に設けられたケーシングと、
前記ケーシングと相対回転するとともに前記偏心体と相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項12】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記主軸受における、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項13】
前記外ピンの端部には、拡径された拡径部が形成される、
請求項12記載の減速機。
【請求項14】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる一方の主軸受と、
互いに対向する断面V字状のV溝が形成され前記V溝の間には軸線を直交して配置された複数のローラを挟むクロスローラ軸受として構成された他方の主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項15】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンの一端を挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面が樹脂により構成され、前記外ピンが金属により構成され、
前記外ピンの端部には、拡径された拡径部が形成される、
減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つの相手側部材間で所定の減速比で回転数を減速する偏心揺動型減速機が知られている。この偏心揺動型減速機は、一方の相手側部材に固定される外筒と、外筒内に配置されるとともに、もう一方の相手側部材に固定されるキャリアとを備えており、キャリアは、クランク軸の偏心部に取り付けられた揺動歯車の揺動回転によって外筒に対して相対的に回転する。
【0003】
近年、ロボットの使用環境の変化により、ロボットのさらなる小型化・軽量化が求められる傾向にあり、これに伴い減速機についても小型化・軽量化が要求されている。
特許文献1に開示されているように、減速機の部品を軽量化するために、例えば、樹脂からなる部品を採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-17362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、まだ、軽量化が不十分であるという問題がある。
さらに、特許文献1に記載の技術で軽量化をおこなうために樹脂部品を多くすると、樹脂部品における強度が不足し、不具合の発生率が増加する可能性がある。
また、減速機の使用時に温度が上昇すると、樹脂性の部品では変型や動作不良等の不具合が発生する可能性があるという問題がある。
【0006】
本発明は、軽量化と剛性向上とを同時に実現可能な減速機を提供することができるという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【0008】
本発明の一態様に係る減速機によれば、ケーシングと外歯歯車との間に外ピンを用いているため、小型軽量化を維持したままで剛性および放熱性を向上し、故障発生を抑制することができる。
【0009】
(2)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(1)において、
前記主軸受において、少なくとも、前記内周すべり面が前記ケーシングの内周面に形成されるか、前記外周すべり面が前記キャリアの外周面に形成されることができる。
【0010】
(3)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(2)において、
前記キャリアが樹脂により構成され、前記外周すべり面が前記キャリアの外周面に形成されることができる。
【0011】
(4)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(3)において、
前記内周すべり面が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成され、
前記内周すべり面が前記主軸線に沿った方向において、前記外ピンと重なる位置に配置されることができる。
【0012】
(5)本発明の一態様に係る減速機は、(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する金属リングの内周に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングおよび前記キャリアが樹脂により構成されるとともに、
前記金属リングと前記外ピンとが、前記主軸線に沿った方向において重なる位置に配置される。
【0013】
本発明の一態様に係る減速機によれば、ケーシングと外歯歯車との間に外ピンを用いて金属リングとラップしているため、小型軽量化を維持したままで剛性をさらに向上し、故障発生を抑制することができる。
【0014】
(6)本発明の一態様に係る減速機は、
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面の少なくとも一方が、前記主軸線に沿った方向で前記主軸線に対する径寸法を増大または減少するように傾斜している。
【0015】
本発明の一態様に係る減速機によれば、すべり軸受における軸受面の接触面積を大きくして動作安定性を向上できる。
【0016】
(7)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(6)において、
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成されることができる。
【0017】
(8)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(1)から(7)のいずれかにおいて、
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成されることができる。
【0018】
(9)本発明の一態様に係る減速機は、
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングが金属により構成されるとともに、前記キャリアが樹脂により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面が、前記主軸線に沿って前記外歯歯車から離間する方向で前記主軸線に対する径寸法を増大するように傾斜しており、
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成され、
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成される。
【0019】
本発明の一態様に係る減速機によれば、すべり面において、ゴミや余分なグリース等を溝に収容して、これらがすべり面におけるすべり状態へ影響を与えてしまうことを防止し、さらに、ゴミ等が減速機の内部に進入することを防止できる。
【0020】
(10)本発明の一態様に係る減速機は、
第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する偏心揺動型の減速機であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有するとともに外歯を有する外歯歯車と、
前記第1の部材および前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成されるケーシングと、
前記第1の部材および前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成されるキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を備え、
前記ケーシングは、前記外歯歯車の前記外歯と噛み合う内歯を有しており、
前記キャリアは、前記外歯歯車を保持した状態で前記ケーシングの径方向内側に配置され、
前記ケーシングと前記キャリアとは、前記偏心部の回転に伴う前記外歯歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【0021】
本発明の一態様に係る減速機によれば、ケーシングと外歯歯車との間に外ピンを用いているため、小型軽量化を維持したままで剛性および放熱性を向上し、故障発生を抑制することができる。
【0022】
(11)本発明の一態様に係る減速機は、
2つ以上の偏心体と、各偏心体にそれぞれ対応する外歯歯車と、を有する偏心揺動型の減速機であって、
前記外歯歯車と噛合う内歯歯車が内周に設けられたケーシングと、
前記ケーシングと相対回転するとともに前記偏心体と相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【0023】
本発明の一態様に係る減速機によれば、ケーシングと外歯歯車との間に外ピンを用いているため、小型軽量化を維持したままで剛性および放熱性を向上し、故障発生を抑制することができる。
【0024】
(12)本発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【0025】
本発明の一態様に係る減速機によれば、ケーシングと外歯歯車との間に外ピンを用いているため、小型軽量化を維持したままで剛性および放熱性を向上し、故障発生を抑制することができる。
【0026】
(13)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(12)において、
前記外ピンの端部(一端および/または他端)には、拡径された拡径部が形成されることができる。
【0027】
(14)本発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる一方の主軸受と、
互いに対向する断面V字状のV溝が形成され前記V溝の間には軸線を直交して配置された複数のローラを挟むクロスローラ軸受として構成された他方の主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【0028】
(15)本発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面が樹脂により構成され、前記外ピンが金属により構成され、
前記外ピンの端部には、拡径された拡径部が形成される。
【0029】
本発明の一態様に係る減速機によれば、ケーシングと外歯歯車との間に外ピンを用いているため、小型軽量化を維持したままで剛性および放熱性を向上し、故障発生を抑制して動作確実性を向上することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、小型軽量化を維持したままで剛性および放熱性を向上し、故障発生を抑制して動作確実性を向上することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る減速機の第1実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図2図1におけるII-II断面矢視図である。
図3】本発明に係る減速機の第2実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図4】本発明に係る減速機の第3実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図5図4におけるV-V断面矢視図である。
図6】本発明に係る減速機の第4実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図7】本発明に係る減速機の第5実施形態における主軸受付近を示す軸線方向に沿った拡大断面図である。
図8】本発明に係る減速機の第6実施形態における主軸受の内周すべり面を示すケーシングの断面図である。
図9】本発明に係る減速機の第6実施形態における内周すべり面の潰し代と溝との関係の一他の例を示すケーシングの拡大断面図である。
図10】本発明に係る減速機の第6実施形態における内周すべり面の潰し代と溝との関係の他の例を示すケーシングの断面図である。
図11】本発明に係る減速機の第7実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図12図11におけるXII-XII断面矢視図である。
図13】本発明に係る減速機の第8実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図14】本発明に係る減速機の第9実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図15図14におけるXV-XV断面矢視図である。
図16】本発明に係る減速機の第10実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図17】本発明に係る減速機の第11実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図18】本発明に係る減速機の第12実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図19】本発明に係る減速機の第13実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
図20】本発明に係る減速機の第14実施形態を示す主軸線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る減速機の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における減速機を示す主軸線に沿った断面図である。図2は、図1におけるII-II断面矢視図である。各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
図において、符号100は、減速機である。図2においては、理解を容易にするため、2枚の外歯歯車114の一方を表示し、他方は表示していない。
【0033】
本実施形態に係る減速機100は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車および外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた自転成分を出力部材から被駆動装置に出力する偏心揺動型減速機である。
【0034】
偏心揺動型の減速機100は、図1図2に示すように、入力軸112と、外歯歯車114と、内歯歯車116と、キャリア118,120と、ケーシング122と、主軸受124,126と、内ピン140と、キャリアピン138と、を備える。
以下、内歯歯車116の中心軸線(主軸線)1Laに沿った方向を「軸線方向」といい、その中心軸線1Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸線方向の一方側(図1中右側)を入力側といい、他方側(図1中左側)を反入力側または出力側という。
【0035】
入力軸112は、駆動源から入力される回転動力によって回転中心線周りに回転させられる。本実施形態の減速機100は、入力軸112の回転中心線が内歯歯車116の中心軸線1Laと同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。駆動源は、たとえば、モータ、ギヤモータ、エンジン等である。
【0036】
入力軸112は、外歯歯車114を揺動させるための複数の偏心部112aを有する偏心体軸である。このような構成の入力軸(偏心体)112は、クランク軸と称されることがある。偏心部112aの軸芯は、入力軸112の回転中心線に対して偏心している。本実施形態では2個の偏心部112aが設けられ、隣り合う偏心部112aの偏心位相は180°ずれている。
【0037】
入力軸112は、その入力側が入力軸軸受134を介して第2キャリア120に支持され、その反入力側が入力軸軸受134を介して第1キャリア(シャフトフランジ)118に支持されている。入力軸112は、第1キャリア118および第2キャリア(ホールドフランジ)120に対して回転自在に支持されている。入力軸軸受134は、その構成に特別の制限はないが、この例では、球状の転動体を有する玉軸受けである。
【0038】
内歯歯車116は、外歯歯車114と噛み合う。図1図2に示す本実施形態の内歯歯車116は、ケーシング122に一体化された内歯歯車本体116aと、当該内歯歯車本体116aに周方向に間隔を空けて複数形成された各ピン溝116bに配置された外ピン(内歯ピン)117と、を有している。外ピン117は、内歯歯車本体116aに回転自在に支持される円筒状または円柱状のピン部材である。外ピン117は、内歯歯車116の内歯を構成している。内歯歯車116における外ピン117の数(内歯の数)は、外歯歯車114の外歯数よりもわずかだけ(この例では1だけ)多い。
【0039】
基本的には、全ての外ピン117は同じ形状を有する。外ピン117の径寸法は、中心軸線1Laに沿った方向の全長で等しく設定される。全ての外ピン117は中心軸線1Laと平行に配置される。また、全ての外ピン117は中心軸線1Laに沿った方向で同じ位置で、かつ、径方向で同じ位置で、周方向に互いに離間した位置に配置される。
【0040】
内歯歯車本体116aと一体のケーシング122は、樹脂により構成される。内歯歯車本体116aには、種々の樹脂を用いることができるが、この例では、内歯歯車本体116aと一体のケーシング122は、POM(polyacetal:ポリアセタール)により構成されている。内歯歯車本体116aは、PEEK(polyetheretherketone:ポリエーテルエーテルケトン)を代表とした、PAEK(Polyaryletherketones:ポリアリールエーテルケトン)類など、POMとは異なる樹脂により構成されてもよい。
【0041】
内歯歯車本体116aと一体のケーシング122および本実施形態の他の構成部材に用いられる樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維などの強化用繊維を含む樹脂であってもよいし、強化用繊維を含まない樹脂であってもよいし、紙や布などの基材に樹脂を含浸して積層したものであってもよい。本実施形態の各構成部材に用いられる樹脂は、熱伝導性フィラーを配合させた樹脂であってもよい。
【0042】
減速機100では、外ピン117を、内歯歯車本体116aの樹脂よりも熱伝導率[W/(m・K)]が高いとともに耐摩耗性が高い素材により構成してもよい。
以下、樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料として金属等を挙げるが、本明細書において、金属との表記に、上述した樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料を含めるものとする。
【0043】
外ピン117を構成する素材は、内歯歯車本体116aの樹脂よりも耐摩耗性・熱伝導率の高い素材であればよく、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料などであってもよい。外ピン117は、カーボンナノチューブ(CNT)、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を配合させた樹脂であってもよい。図1図2に示す本実施形態の外ピン117は、軸受鋼等の鉄系金属で構成されてもよい。
【0044】
外ピン117は、中実の部材であってもよいし、中空の部材であってもよい。外ピン117は、芯材を表面材で包んだ多層構造の部材であってもよい。例えば、外ピン117は、芯材と表面材の一方が鉄系金属で、他方が銅系またはアルミニウム系の金属であってもよい。この場合、機械的特性と熱的特性との両立を図ることができる。また、別の一例として、外ピン117は、芯材と表面材の一方が金属で構成され、他方が樹脂で構成されてもよい。また、外ピン117は、焼結金属で構成されてもよい。
【0045】
外歯歯車114は、複数の偏心部112aのそれぞれに対応して個別に設けられる。外歯歯車114は、偏心軸受130を介して対応する偏心部112aに回転自在に支持される。図2に示すように、外歯歯車114には、その軸線からオフセットされた位置に10個の貫通孔が等間隔に形成されている。そのうち、120度の等間隔で配置された3つのキャリアピン孔139にはキャリアピン138が挿入し貫通され、残りの9つの内ピン孔141には内ピン140が挿入し貫通される。これらのキャリアピン孔139および内ピン孔141は同径であってもよい。
【0046】
外歯歯車114は、内歯歯車本体116aと同様に樹脂により構成される。また、外歯歯車114には、種々の樹脂を用いることができる。外歯歯車114は、内歯歯車本体116aよりも入力軸112の近傍に配置されている。外歯歯車114は、PEEKにより構成されている。外歯歯車114は、POMなどPEEKとは異なる樹脂により構成されてもよい。
【0047】
キャリアピン孔139および内ピン孔141は、同じ半径方向位置に設けられた円形の孔である。外歯歯車114の外周には波形の歯が形成されており、この歯が内歯歯車116と接触しつつ移動することで、中心軸を法線とする面内で外歯歯車114が揺動できるようになっている。外歯歯車114には、内ピン140が貫通する内ピン孔141が形成される。内ピン140と内ピン孔141の間には外歯歯車114の揺動成分を吸収するための遊びとなる隙間が設けられる。内ピン140と内ピン孔141の内壁面とは一部で接触する。
【0048】
キャリア118,120は、外歯歯車114の軸線方向の両側位置に配置される。キャリア118,120には、外歯歯車114の反入力側の側部に配置される第1キャリア(シャフトフランジ)118と、外歯歯車114の入力側の側部に配置される第2キャリア(ホールドフランジ)120と、が含まれる。
第1キャリア118および第2キャリア120は、第1主軸受124、第2主軸受126を介してケーシング122に回転自在に支持されている。第1キャリア(シャフトフランジ)118は、第1主軸受124を介してケーシング122に回転自在に支持されている。第2キャリア(ホールドフランジ)120は、第2主軸受126を介してケーシング122に回転自在に支持されている。
【0049】
キャリア118,120は全体として円盤状をなしている。第1キャリア118は、入力軸軸受134を介して入力軸112を回転自在に支持する。第2キャリア120は、入力軸軸受134を介して入力軸112を回転自在に支持する。
キャリアピン138は、ボルト138aによって第1キャリア(シャフトフランジ)118と第2キャリア(ホールドフランジ)120とに連結される。
内ピン140は、例えば、鉄系金属により構成されているボルト140aによって第1キャリア(シャフトフランジ)118と第2キャリア(ホールドフランジ)120とに連結される。
【0050】
第1キャリア118と第2キャリア120は、キャリアピン138および内ピン140を介して連結される。キャリアピン138および内ピン140は、外歯歯車114の軸芯から径方向にオフセットした位置において、複数の外歯歯車114を軸線方向に貫通する。この例では、キャリアピン138および内ピン140は、キャリア118,120と別体に設けられているが、これらの一部のピンがキャリア118,120の一部として一体に形成されてもよい。
【0051】
第1キャリア118とケーシング122とのいずれか一方は、被駆動装置に回転動力を出力する出力部材として機能し、他方は減速機100を支持するための外部部材に固定される被固定部材として機能する。出力部材は、被固定部材に主軸受124,126を介して回転自在に支持される。第1キャリア118の反入力側の端面には、減速機100によって回転駆動される被駆動部材が、ボルト等によって連結されてもよい。あるいは、ケーシング122の外周フランジ等には、減速機100によって回転駆動される被駆動部材が、ボルト等によって連結されてもよい。
【0052】
ケーシング122は、全体として中空の筒状をなし、その内周部には内歯歯車116が設けられる。ケーシング122の外周部には、フランジなどが設けられてもよい。ケーシング122には、ケーシング122の反入力側の第1金属リング144と、ケーシング122の入力側の第2金属リング145と、が設けられる。第1金属リング144および第2金属リング145は、ケーシング122と一体に固定される。
なお、第1金属リング144および第2金属リング145は、周方向に配列された複数のボルトによってケーシング122に固定されてもよい。
【0053】
ケーシング122には、第1金属リング144を収容する凹部が設けられる。第1金属リング144は凹部よりも軸線方向に突出している。ケーシング122では、第1金属リング144が第1主軸受124の外輪となる。第1金属リング144は、外周がケーシング122の外周と面一でもよい。
【0054】
第1主軸受124の外輪となる第1金属リング144は、ケーシング122の出力側に位置する。第1金属リング144は、ケーシング122の出力側に露出している。第1金属リング144は凹部よりも軸線方向に突出した部分が外輪となる内周すべり面148を形成する。第1金属リング144は、内周すべり面148が第1キャリア(シャフトフランジ)118に接している。第1金属リング144は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、ケーシング122に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0055】
ケーシング122には、第2金属リング145を収容する凹部が設けられる。第2金属リング145は凹部よりも軸線方向に突出している。ケーシング122では、第2金属リング145が第2主軸受126の外輪となる。第2金属リング145の外周は、ケーシング122の外周と面一でもよい。
【0056】
第2主軸受126の外輪となる第2金属リング145は、ケーシング122の入力側に位置する。第2金属リング145は、ケーシング122の入力側に露出している。第2金属リング145は凹部よりも軸線方向に突出した部分が外輪となる内周すべり面148を形成する。第2金属リング145は、内周すべり面148が第2キャリア(ホールドフランジ)120に接している。第2金属リング145は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、ケーシング122に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0057】
主軸受124,126には、第1キャリア118とケーシング122の間に配置される第1主軸受124と、第2キャリア120とケーシング122の間に配置される第2主軸受126と、が含まれる。図1図2に示す本実施形態の主軸受124,126は、すべり軸受とされる。
主軸受124,126は、外輪となる内周すべり面148と内輪となる外周すべり面149とを備える。
外周すべり面149は、内輪と一体とされたキャリア118,120の外周面に設けられている。外輪となる内周すべり面148は、金属リング144,145の内周面に設けられている。
【0058】
主軸受124,126の外輪となる内周すべり面148は、内輪となる外周すべり面149を形成するキャリア118,120の樹脂よりも熱伝導率の高い素材により構成される。
【0059】
主軸受124,126において、外輪となる金属リング144,145を構成する素材は、内輪となるキャリア118,120の樹脂よりも熱伝導率が高く、また、キャリア118,120の樹脂よりも強度が高い素材であればよく、金属材料、非金属材料などであってもよい。図1図2に示す本実施形態の金属リング144,145は、銅系またはアルミニウム系の金属や、軸受鋼等の鉄系金属で構成されてもよい。
【0060】
金属リング144,145は、中実の部材であってもよいし、中空の部材であってもよい。金属リング144,145は、芯材を、内周すべり面148を形成する表面材で包んだ多層構造の部材であってもよい。例えば、金属リング144,145は、芯材と表面材の一方が鉄系金属で、他方が銅系またはアルミニウム系の金属であってもよい。また、別の一例として、金属リング144,145は、焼結金属で構成されてもよい。
【0061】
主軸受124,126では、第1金属リング144と第2金属リング145とにおいてすべり面148,149は、外ピン117よりも径方向外側に位置する。
第1金属リング144と第2金属リング145とは、図1に示すように、いずれも、外ピン117とが軸線方向にラップして配置されている。第1金属リング144と第2金属リング145と外ピン117とは、軸線方向にラップしており、軸線方向におけるケーシング122の全長にわたって強度を維持することができる。
【0062】
内ピン140は、外歯歯車114に貫通形成された内ピン孔141に隙間を有した状態で挿入し貫通される。内ピン140は、その一端が第1キャリア118の凹部118bに嵌め込まれ、他端が第2キャリア120の凹部120bに嵌め込まれている。内ピン140は、凹部118b、120bにボルト140aにより固定される。内ピン140は、凹部118b、120bに圧入されてもよく、この場合、ボルト等によって固定されないこともできる。内ピン140は、外歯歯車114に形成された内ピン孔141の一部とあたって接しており、外歯歯車114の自転を拘束しその揺動のみを許容している。内ピン140は、第1キャリア118および第2キャリア120と外歯歯車114との間の動力の伝達に寄与する連結部材として機能する。
【0063】
キャリアピン138は、外歯歯車114に貫通形成されたキャリアピン孔139に隙間を有した状態で挿入し貫通される。キャリアピン138は、その一端が第1キャリア118の凹部118cに嵌め込まれ、他端が第2キャリア120の凹部120cに嵌め込まれている。キャリアピン138は、凹部118c、120cにボルト138aにより固定される。キャリアピン138は、凹部118c、120cに圧入されてもよく、この場合、ボルト等による固定はなされない。キャリアピン138は、外歯歯車114のキャリアピン孔139とは接しておらず、外歯歯車114の自転の拘束には寄与していない。キャリアピン138は、第1キャリア118と第2キャリア120の間の連結のみに寄与している連結部材として機能する。
【0064】
減速機としては、人の近くで稼働する協働ロボットなどにその用途が拡大している。用途を拡大するために、減速機の軽量化と低騒音化が望まれている。従来の減速機は鉄系金属からなる構成部材で構成されており、軽量化のためには、構成部材を低比重の素材により形成することが考えられる。このような材料としては、樹脂などが好適である。一方、構成部材を樹脂化すると、放熱性の低下により温度上昇し、寿命が短くなることが考えられる。このため、各構成部材を構成する素材は、軽量化と放熱性とを考慮して選択されることが望ましい。この際、軽量化にともなう強度低下は避ける必要がある。
【0065】
減速機100では、その内部、特にすべり軸受とされる主軸受124,126の周囲で発熱量が大きい場合が多い。また、相対的に高速で回転する入力軸112の周囲で発熱量が大きい場合が多い。さらに、内ピン140と外歯歯車114とは充分な強度が維持されないと減速機100としての動作不良を発生する可能性がある。
このように、内部で発生した熱の外部への放熱性が低いと減速機の温度上昇が高くなる。樹脂部材は、温度が高くなると剛性および強度が急激に低下し、そのまま使用し続けると動作不良を起こす可能性が高い。
【0066】
このため、互いに相対移動する部材について、一方を樹脂部材としたときに、他方をその樹脂部材より耐摩耗性と熱伝導率[W/(m・K)]とが高い素材で構成することが望ましい。この場合、他方の熱伝導率が低い場合に比べて、内部で発生した熱の外部への放熱性が改善される。同時に耐摩耗性が低い場合に比べて、部材寿命を長くできる。
【0067】
外輪の内周すべり面148を構成する素材は、内輪の外周すべり面149となる内歯歯車本体116aの樹脂よりも耐摩耗性と熱伝導率とが高い素材であればよく、金属材料、非金属材料、高熱伝導性の素材であってもよい。図1図2に示す本実施形態の外輪の内周すべり面148を構成する第1金属リング144および第2金属リング145、外ピン117は、軸受鋼などの鉄系金属やアルミニウム系金属、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタンなどの軽金属や、これらの複合材料により構成されてもよい。あるいは、第1金属リング144および第2金属リング145、外ピン117はセラミックス等で構成されてもよい。これ以外のキャリア118,120等が樹脂から形成されていることにより、減速機100の軽量化と機械的強度との両立を図ることができる。
【0068】
入力軸112と、第1キャリア118および入力軸112の間に配置される入力軸軸受134とには減速前の高速回転が入力される。このため、これらの温度上昇は比較的大きく、これらの耐熱性が低いと、許容入力回転数が低くなる。このため、入力軸軸受134と入力軸112と偏心軸受130とは鉄系金属などの金属により構成されてもよい。この場合、許容入力回転数の低下を抑制することができる。なお、入力軸112には大きなねじれ応力が加わるため、第1キャリア118より剛性の高い材料により構成されることが望ましい。入力軸112は、アルミニウムあるいはアルミニウムよりねじり強度の高い鉄系金属により構成されてもよい。鉄系金属としては、所望の特性に応じて炭素鋼、軸受鋼、ステンレス鋼などを用いることができる。
【0069】
第1キャリア118と第2キャリア120との連結強度を確保するため、キャリアピン138の剛性は高いことが望ましい。この観点から、キャリアピン138は金属により構成されてもよい。この例では、キャリアピン138は、樹脂よりも耐摩耗性と熱伝導率とが高い素材、例えば、アルミニウムなどの金属により構成されている。
【0070】
以上のように構成された減速機100の動作を説明する。
駆動装置から入力軸112に回転動力が伝達されると、入力軸112の偏心部112aが入力軸112を通る回転中心線周りに回転し、その偏心部112aにより外歯歯車114が揺動する。このとき、外歯歯車114は、自らの軸芯が入力軸112の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車114が揺動すると、外歯歯車114と内歯歯車116の外ピン117の噛合位置が順次ずれる。この結果、入力軸112が一回転する毎に、外歯歯車114の歯数と内歯歯車116の外ピン117の数との差に相当する分、外歯歯車114および内歯歯車116の一方の自転が発生する。図1図2に示す本実施形態においては、外歯歯車114の自転により、第1キャリア118またはケーシング122から減速回転が出力される。
【0071】
図1図2に示す本実施形態の減速機100では、主軸受124,126として、金属リング144,145を用いており、減速機100の主重量となる第1キャリア118と第2キャリア120が樹脂で構成されているので軽量化を図ることができる。
【0072】
図1図2に示す本実施形態の減速機100では、主軸受124,126の外輪となる内周すべり面148の形成される金属リング144,145が、外周すべり面149の形成されたキャリア118,120の樹脂よりも耐摩耗性を有し熱伝導率の高い素材により構成され、金属リング144,145と外ピン117とが軸線方向に重なった配置とされる。
この場合、外ピン117が金属リング144,145と当たって接しない場合と比べて、内周すべり面148と外周すべり面149との間の熱抵抗を小さくし、内部の熱を金属リング144,145および外ピン117を介して一層効率的に放熱することができる。この結果、内部温度の上昇を一層抑制することができる。
【0073】
図1図2に示す本実施形態の減速機100では、上述したように、第1金属リング144および第2金属リング145と外ピン117とが軸線方向にラップしている構成とされることにより、軸線方向におけるケーシング122の全長にわたって強度を維持することができる。したがって、第1金属リング144と第2金属リング145と外ピン117とは、軸線方向にラップしているため、ケーシング122の変形やキャリア118,120の変形を防止するとともに、外歯歯車114の動作不良を防止するために、充分な強度を維持することができる。
【0074】
図1図2に示す本実施形態ではまた、外ピン117が金属等から構成されることにより、外歯歯車114の動作不良を防止するために、充分な強度を維持することができる。
なお、主軸受124,126において、内周すべり面148および外周すべり面149と外ピン117とは軸線方向にラップしておらず、軸線方向にほぼ連続した配置とされる。これにより、減速機100の強度を維持したまま、減速機100の厚さを削減すなわち中心軸線1La方向の寸法を小さくして、小型化を図ることができる。
【0075】
第1金属リング144および第2金属リング145の内周すべり面148と外ピン117とは、径方向で近傍に位置している。図1図2に示す本実施形態では、このように構成されることにより、すべり軸受である主軸受124,126から第1金属リング144および第2金属リング145に伝わった熱を外部に放熱することができ、放熱性が向上する。
【0076】
すべり面148,149においては、過度の温度上昇によって表面で樹脂が溶ける、あるいは、互いに貼り付いてしまうことによって、動作不良を起こす可能性があるが、このように放熱性を向上することで、減速機100に熱がこもることがなく、不具合の発生を防止することができる。
また、外ピン117が金属等から構成されることにより、主軸受124,126付近から伝わった熱を逃がして局所的に温度上昇することを防止でき、放熱性が向上する。
【0077】
同時に、金属リング144,145とキャリア118,120とによって主軸受124,126を構成しているので、ボール軸受けやコロ軸受等の構成に比べて、金属等の重い部品を削減することができる。これにより、減速機100として放熱性と構成とを維持した状態で、さらなる軽量化を図ることが可能となる。
【0078】
以下、本発明に係る減速機の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における減速機を示す主軸線方向に沿った断面図であり、本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、主軸受に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本実施形態の減速機100においては、図3に示すように、第1主軸受124の第1金属リング144が、第1キャリア(シャフトフランジ)118に設けられている。第1金属リング144は、その外周に主軸受124の外周すべり面149が形成されている。
第1キャリア(シャフトフランジ)118には、第1金属リング144を収容する凹部が設けられる。第1金属リング144は軸線方向において外ピン117に隣接するように配置される。第1キャリア(シャフトフランジ)118では、第1金属リング144が第1主軸受124の内輪となる。第1金属リング144は、外周が第1キャリア(シャフトフランジ)118の外周と面一とされてもよい。
【0080】
第1主軸受124の内輪となる第1金属リング144は、第1キャリア(シャフトフランジ)118の入力側に位置する。第1金属リング144は第1キャリア(シャフトフランジ)118の外周と面一となる外周部分が、内輪となる外周すべり面149を形成する。第1金属リング144は、外周すべり面149がケーシング122に接している。第1金属リング144は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、第1キャリア(シャフトフランジ)118に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0081】
外周すべり面149に接するケーシング122の内周面は、第1主軸受124の外輪となる内周すべり面148を形成する。第1主軸受124における外輪はケーシング122と一体の構成とされる。
【0082】
同様に、本実施形態の減速機100においては、図3に示すように、第2主軸受126の第2金属リング145が、第2キャリア(ホールドフランジ)120に設けられている。第2金属リング145は、その外周に主軸受126の外周すべり面149が形成されている。
【0083】
第2キャリア(ホールドフランジ)120には、第2金属リング145を収容する凹部が設けられる。第2金属リング145は軸線方向において外ピン117に隣接するように配置される。第2キャリア(ホールドフランジ)120では、第2金属リング145が第2主軸受126の内輪となる。第2金属リング145は、外周が第2キャリア(ホールドフランジ)120の外周と面一となされてもよい。
【0084】
第2主軸受126の内輪となる第2金属リング145は、第2キャリア(ホールドフランジ)120の出力側に位置する。第2金属リング145は第2キャリア(ホールドフランジ)120の外周と面一となる外周部分が、内輪となる外周すべり面149を形成する。第2金属リング145は、外周すべり面149がケーシング122に接している。第2金属リング145は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、第2キャリア(ホールドフランジ)120に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0085】
外周すべり面149に接するケーシング122の内周面は、第1主軸受124の外輪となる内周すべり面148を形成する。第1主軸受124における外輪はケーシング122と一体の構成とされる。
なお、主軸受124,126の金属リング144,145は、キャリア118,120の外周における軸線方向の全長を覆う構成とすることもできる。
【0086】
図3に示す本実施形態の減速機100においても、すべり面148,149がそれぞれ、樹脂と金属とによって構成されているので、上述した図1図2に示す第1実施形態と同等の効果を奏することが可能となる。
【0087】
以下、本発明に係る減速機の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図4は、本実施形態における減速機を示す主軸線方向に沿った断面図である。図5は、図4におけるV-V断面矢視図である。図において、符号200は、減速機である。
【0088】
本実施形態の減速機200は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車および外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた自転成分を出力部材から被駆動装置に出力する偏心揺動型の減速機である。
【0089】
本実施形態の減速機200では、図4図5に示すように、2枚の外歯歯車214の一方が他方の外歯歯車214と180度の位相差を有する点で相違し、その他の構成は同様である。
本実施形態の減速機200は、図4図5に示すように、入力軸212と、外歯歯車214と、内歯歯車216と、キャリア218、220と、ケーシング222と、主軸受224、226と、内ピン240と、キャリアピン238と、を備える。以下、内歯歯車216の中心軸線2Laに沿った方向を「主軸線方向」といい、その中心軸線2Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸線方向の一方側(図中右側)を入力側といい、他方側(図中左側)を反入力側という。
【0090】
入力軸212は、駆動装置(不図示)から入力される回転動力によって回転中心線周りに回転させられる。本実施形態の減速機200は、入力軸212の回転中心線が内歯歯車216の中心軸線2Laと同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。駆動装置は、たとえば、モータ、ギヤモータ、エンジン等である。
【0091】
本実施形態の入力軸212は、図4図5に示すように、外歯歯車214を揺動させるための複数の偏心部212aを有する偏心体軸である。このような構成の入力軸(偏心体)212は、クランク軸と称されることがある。偏心部212aの軸芯は、入力軸212の回転中心線に対して偏心している。本実施形態では2個の偏心部212aが設けられ、隣り合う偏心部212aの偏心位相は180°ずれている。
【0092】
入力軸212は、その入力側が入力軸軸受234を介して第2カバー223に支持され、その反入力側が入力軸軸受234を介して第1キャリア218に支持されている。つまり、入力軸212は、第1キャリア218および第2カバー223に対して回転自在に支持されている。入力軸軸受234は、その構成に特別の制限はないが、この例では、球状の転動体を有する玉軸受けである。入力軸軸受234には、与圧を与えてもよいが、この例では与圧を与えていない。
【0093】
内歯歯車216は、外歯歯車214と噛み合う。図4図5に示す本実施形態の内歯歯車216は、ケーシング222に一体化された内歯歯車本体216aと、当該内歯歯車本体216aに周方向に間隔を空けて複数形成された各ピン溝216bに配置された外ピン(内歯ピン)217と、を有している。外ピン217は、内歯歯車本体216aに回転自在に支持される円筒状のピン部材である。外ピン217は、内歯歯車216の内歯を構成している。内歯歯車216の外ピン217の数(内歯の数)は、外歯歯車214の外歯数よりもわずかだけ(この例では1だけ)多い。
【0094】
内歯歯車本体216aは、樹脂により構成される。内歯歯車本体216aには、種々の樹脂を用いることができるが、この例では、内歯歯車本体216aは、POM(polyacetal:ポリアセタール)により構成されている。内歯歯車本体216aは、PEEK(polyetheretherketone:ポリエーテルエーテルケトン)を代表とした、PAEK(Polyaryletherketones:ポリアリールエーテルケトン)類など、POMとは異なる樹脂により構成されてもよい。
【0095】
内歯歯車本体216aおよび本実施形態の他の構成部材に用いられる樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維などの強化用繊維を含む樹脂であってもよいし、強化用繊維を含まない樹脂であってもよいし、紙や布などの基材に樹脂を含浸して積層したものであってもよい。特に、本実施形態の各構成部材に用いられる樹脂は、熱伝導性フィラーを配合させた樹脂であってもよく、この熱伝導性フィラーとしては、ナノオーダーフィラー、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどのセラミック粉末、アルミニウム、銅、グラファイトなどの金属粉末などが挙げられる。
【0096】
減速機200では、その内部、特に相対的に高速で回転する入力軸212の周囲で発熱量が大きい場合が多い。このように、内部で発生した熱の外部への放熱性が低いと減速機200の温度上昇が大きくなる。樹脂部材は、温度が高くなると強度が急激に低下し、そのまま使用し続けると破損する可能性が高い。このため、互いに噛合う歯車対について、歯車対の一方を樹脂部材としたときに、歯車対の他方をその樹脂部材より熱伝導率[W/(m・K)]が高い素材で構成することが望ましい。そこで、偏心揺動型となる減速機200では、外ピン217を、内歯歯車本体216aの樹脂よりも熱伝導率の高い素材により構成している。この場合、外ピン217の熱伝導率が低い場合に比べて、内部で発生した熱の外部への放熱性が改善される。
【0097】
外ピン217を構成する素材は、内歯歯車本体216aの樹脂よりも熱伝導率の高い素材であればよく、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料などであってもよい。高熱伝導性の樹脂としては、熱伝導性フィラーを配合させた樹脂が挙げられる。外ピン217は、カーボンナノチューブ(CNT)、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を配合させた樹脂であってもよい。図4図5に示す本実施形態の外ピン217は、軸受鋼等の鉄系金属で構成されている。
【0098】
外ピン217は、中実の部材であってもよいし、中空の部材であってもよい。外ピン217は、芯材を表面材で包んだ多層構造の部材であってもよい。一例として、外ピン217は、芯材と表面材の一方が鉄系金属で、他方が銅系またはアルミニウム系の金属であってもよい。この場合、機械的特性と熱的特性との両立を図ることができる。また、別の一例として、外ピン217は、芯材と表面材の一方が金属で構成され、他方が樹脂で構成されてもよい。また、外ピン217は、焼結金属で構成されてもよい。
【0099】
外歯歯車214は、複数の偏心部212aのそれぞれに対応して個別に設けられる。外歯歯車214は、偏心軸受230を介して対応する偏心部212aに回転自在に支持される。外歯歯車214には、その軸線からオフセットされた位置に212個の貫通孔が等間隔に形成されている。そのうち、120度の等間隔で配置された3つの孔にはキャリアピン238が挿入し貫通され、残りの9つの孔には内ピン240が挿入し貫通される。そのため、前者をキャリアピン孔239と呼び、後者を内ピン孔241と表記する。これらの孔は同径であってもよいが、この例では、キャリアピン孔239の直径は内ピン孔241の直径より大きい。
【0100】
外歯歯車214は、樹脂により構成される。外歯歯車214には、種々の樹脂を用いることができる。特に、外歯歯車214は、温度上昇の大きい入力軸212の近傍に配置されているため、外歯歯車214は、内歯歯車本体216aよりも耐熱温度が高い樹脂により構成されてもよい。この観点から、外歯歯車214は、PEEKにより構成されている。外歯歯車214は、POMなどPEEKとは異なる樹脂により構成されてもよい。
【0101】
キャリアピン孔239および内ピン孔241は、同じ半径方向位置に設けられた円形の孔である。外歯歯車214の外周には波形の歯が形成されており、この歯が内歯歯車216と接触しつつ移動することで、中心軸を法線とする面内で外歯歯車214が揺動できるようになっている。外歯歯車214には、内ピン240が貫通する内ピン孔241が形成される。内ピン240と内ピン孔241の間には外歯歯車214の揺動成分を吸収するための遊びとなる隙間が設けられる。内ピン240と内ピン孔241の内壁面とは一部で接触する。
【0102】
キャリア218、220は、外歯歯車214の軸線方向側部に配置される。キャリア218、220には、外歯歯車214の反入力側の側部に配置される第1キャリア(シャフトフランジ)218と、外歯歯車214の入力側の側部に配置される第2キャリア(ホールドフランジ)220と、が含まれる。第1キャリア218および第2キャリア220は、第1主軸受224、第2主軸受226を介してケーシング222に回転自在に支持されている。キャリア218、220は全体として円盤状をなしている。第1キャリア218は、入力軸軸受234を介して入力軸212を回転自在に支持する。第2キャリア220は、入力軸軸受を介して入力軸を支持するように構成してもよいが、この例では、入力軸軸受234および入力軸212を支持していない。
【0103】
第1キャリア218と第2キャリア220は、キャリアピン238および内ピン240を介して連結される。キャリアピン238および内ピン240は、外歯歯車214の軸芯から径方向にオフセットした位置において、複数の外歯歯車214を軸線方向に貫通する。この例では、キャリアピン238および内ピン240は、キャリア218、220と別体に設けられているが、これらの一部のピンがキャリア218、220の一部として一体に形成されてもよい。
【0104】
第1キャリア218とケーシング222の一方は、被駆動装置に回転動力を出力する出力部材として機能し、他方は減速機200を支持するための外部部材に固定される被固定部材として機能する。出力部材は、被固定部材に主軸受224、226を介して回転自在に支持される。図4図5に示す本実施形態において、出力部材は第1キャリア218であり、被固定部材はケーシング222である。第1キャリア218の反入力側の端面には、減速機200によって回転駆動される被駆動部材250が、ボルト250bによって連結される。図4図5に示す本実施形態のボルト250bは、鉄系金属により構成されてもよい。
【0105】
ケーシング222は、全体として中空の筒状をなし、その内周部には内歯歯車216が設けられる。ケーシング222の外周部には、フランジなどが設けられてもよいが、この例ではフランジは設けられていない。ケーシング222には、ケーシング222の反入力側をカバーする第1カバー221と、ケーシング222の入力側をカバーする第2カバー223と、が設けられる。第1カバー221および第2カバー223は、周方向に配列された複数のボルトによってケーシング222に固定される。
【0106】
ケーシング222には、第1主軸受224の外輪の入力側を収容する凹部が設けられる。第1カバー221には、第1主軸受224の外輪の反入力側の一部を収容する凹部が設けられる。第1主軸受224の外輪は、ケーシング222と第1カバー221とに軸線方向に挟まれて支持される。ケーシング222には、第2主軸受226の外輪の反入力側を収容する凹部が設けられる。第2カバー223には、第2主軸受226の外輪の入力側の一部を収容する凹部が設けられる。第2主軸受226の外輪は、ケーシング222と第2カバー223とに軸線方向に挟まれて支持される。第2カバー223には、入力側の入力軸軸受234の外輪を収容する凹部が設けられる。つまり、第2カバー223は、入力軸軸受234を介して入力軸212の入力側を回転自在に支持している。
【0107】
主軸受224,226には、第1キャリア218とケーシング222の間に配置される第1主軸受224と、第2キャリア220とケーシング222の間に配置される第2主軸受226と、が含まれる。図4図5に示す本実施形態の主軸受224,226は、それぞれ内周すべり面248を形成する金属リング244,245を備える。金属リング244は、キャリア218,220を回転自在に支持する。
【0108】
主軸受224,226は、すべり軸受とされ、外輪となる内周すべり面248を形成する金属リング244,245と、内輪となる外周すべり面249とを備える。内輪となる外周すべり面249は、キャリア218,220の外周面に設けられている。外輪となる金属リング244,245は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、ケーシング222に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。主軸受224,226には、予圧が付与されてもよいが、この例では、予圧は付与されていない。
【0109】
図4図5に示す本実施形態では、主軸受224,226の外輪となる金属リング244,245は、内歯歯車本体216aの樹脂よりも熱伝導率の高い素材により構成され、主軸受224,226の金属リング244,245と外ピン217とが軸線方向にあたって接している。図4に示すように、金属リング244,245の端部と外ピン217の端部とは、直接接するように構成されてもよい。
また、金属リング244,245の端部と外ピン217の端部とは、内歯歯車本体216aの樹脂よりも熱伝導率の高い素材のスペーサを介して軸線方向に接するように構成されてもよい。このように構成されることにより、外ピン217に伝わった熱が金属リング244,245を介してキャリア218,220やケーシング222などに放熱され、放熱性が改善される。さらに、第1キャリア218に伝わった熱が被駆動部材250を介して外部に放熱され、放熱性が改善される。
【0110】
金属リング244,245および外ピン217を構成する素材は、内歯歯車本体216aの樹脂よりも熱伝導率の高い素材であればよく、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料であってもよい。図4図5に示す本実施形態の金属リング244,245および外ピン217は軸受鋼などの鉄系金属で構成されてもよい。
【0111】
第1キャリア218を構成する素材は、内歯歯車本体216aの樹脂よりも熱伝導率の高い素材であればよく、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料であってもよい。軽量化と機械的強度とを両立する観点から、第1キャリア218は、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタンなどの軽金属(比重が4ないし5以下の金属)や、これらの複合材料により構成されてもよい。図4図5に示す本実施形態の第1キャリア218は、アルミニウム系金属により構成されている。この場合、第1キャリア218を、入力軸212より比重の小さな金属材料で構成することができる。
【0112】
第2キャリア220は、金属や種々の樹脂で構成することができる。図4図5に示す本実施形態の第2キャリア220は、POMにより構成されている。この場合、第2キャリア220を軽量化することができる。第2キャリア220は、入力軸軸受234からの熱伝導を減らす観点から、入力軸軸受234とは直接接触せず、空間を介して配置されている。なお、第2キャリア220も、内歯歯車本体216aの樹脂よりも熱伝導率の高い素材により構成されてもよい。この場合、一層放熱性が改善される。
【0113】
内ピン240は、外歯歯車214に貫通形成された内ピン孔241に隙間を有した状態で挿入し貫通される。内ピン240は、その一端が第1キャリア218の凹部218bに嵌め込まれ、他端が第2キャリア220の凹部220bに嵌め込まれている。内ピン240は、凹部218b,220bに圧入され、ボルト等による固定はなされていない。内ピン240は、外歯歯車214に形成された内ピン孔241の一部と接しており、外歯歯車214の自転を拘束しその揺動のみを許容している。内ピン240は、第1キャリア218および第2キャリア220と外歯歯車214との間の動力の伝達に寄与する連結部材として機能する。
【0114】
キャリアピン238は、外歯歯車214に貫通形成されたキャリアピン孔239に隙間を有した状態で挿入し貫通される。キャリアピン238は、その一端が第1キャリア218の凹部218cに嵌め込まれ、他端が第2キャリア220の凹部220cに嵌め込まれている。キャリアピン238は、凹部218c,220cに圧入され、ボルト等による固定はなされていない。キャリアピン238は、管状のスペーサ237に環状に囲まれている。スペーサ237は、一端が第1キャリア218に接し、他端が第2キャリア220に接する。スペーサ237は、第1キャリア218と第2キャリア220の間の軸線方向の間隔を適正な距離に保つスペーサとして機能を有する。キャリアピン238およびスペーサ237は、外歯歯車214のキャリアピン孔239とは接しておらず、外歯歯車214の自転拘束には寄与していない。キャリアピン238は、第1キャリア218と第2キャリア220の間の連結のみに寄与している連結部材として機能する。
【0115】
図4図5に示す本実施形態の各構成部材を構成する材料は、軽量化と放熱性とを考慮して選択されることが望ましい。近年、減速機は、人の近くで稼働する協働ロボットなどにその用途が拡大している。このために、減速機の軽量化と低騒音化が望まれている。従来の減速機は鉄系金属からなる構成部材で構成されており、軽量化のためには、構成部材を低比重の素材により形成することが考えられる。このような材料としては、樹脂などが好適である。一方、構成部材を樹脂化すると、放熱性の低下により温度上昇し、寿命が短くなることが考えられる。
【0116】
入力軸212と、第1キャリア218および入力軸212の間に配置される入力軸軸受234には減速前の高速回転が入力される。このため、これらの温度上昇は比較的大きく、これらの耐熱性が低いと、許容入力回転数が低くなる。このため、入力軸軸受234と入力軸212と偏心軸受230とは鉄系金属などの金属により構成されてもよい。この場合、許容入力回転数の低下を抑制することができる。なお、入力軸212には大きなねじれ応力が加わるため、第1キャリア218より剛性の高い材料により構成されることが望ましい。入力軸212は、アルミニウムよりねじり強度の高い鉄系金属により構成されている。図4図5に示す本実施形態の各構成部材に用いる鉄系金属としては、所望の特性に応じて炭素鋼、軸受鋼、ステンレス鋼などを用いることができる。
【0117】
第1キャリア218と第2キャリア220との連結強度を確保するため、キャリアピン238の剛性は高いことが望ましい。この観点から、キャリアピン238は金属により構成され、スペーサ237は、軽量化のため、樹脂により構成されてもよい。この例では、キャリアピン238は、鉄系金属により構成され、スペーサ237は、POMにより構成されている。ケーシング222は、内歯歯車本体216aに一体化されており、内歯歯車本体216aと同じ材料で構成されてもよい。軽量化の観点から、第1カバー221および第2カバー223は樹脂により構成されてもよい。これらは、同じ樹脂により構成されてもよいし、異なる樹脂により構成されてもよい。図4図5に示す本実施形態の第1カバー221および第2カバー223はPOMにより構成されてもよい。
【0118】
減速機200の動作を説明する。
駆動装置から入力軸212に回転動力が伝達されると、入力軸212の偏心部212aが入力軸212を通る回転中心線周りに回転し、その偏心部212aにより外歯歯車214が揺動する。このとき、外歯歯車214は、自らの軸芯が入力軸212の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車214が揺動すると、外歯歯車214と内歯歯車216の外ピン217の噛合位置が順次ずれる。この結果、入力軸212が一回転する毎に、外歯歯車214の歯数と内歯歯車216の外ピン217の数との差に相当する分、外歯歯車214および内歯歯車216の一方の自転が発生する。本実施形態においては、外歯歯車214が自転し、第1キャリア218から減速回転が出力される。
【0119】
図4図5に示す本実施形態の減速機200では、主軸受224,226として、金属リング244,245以外に樹脂よりも重い金属構成部材を有していないので、さらなる軽量化を図ることができる。
【0120】
図4図5に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0121】
以下、本発明に係る減速機の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態における減速機を示す軸線方向に沿った断面図である。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、主軸受に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には100番代に対して300番代で同一の符号を付してその説明を省略する。
【0122】
本実施形態の減速機300においては、図6に示すように、ケーシング322が主軸受324,326の外輪となる内周すべり面348と一体とされており、その全体が主軸受324,326の内輪となる外周すべり面349を構成する樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。具体的には、ケーシング322は金属製とされる。
【0123】
本実施形態の減速機300においては、図6に示すように、内周すべり面348と外周すべり面349とが、中心軸線3Laに沿った方向において外歯歯車314から離間するに連れて径寸法が大きくなるように形成されている。内周すべり面348と外周すべり面349とは、中心軸線3Laに対して為す角度が、30°~60°の範囲となるように形成されている。
さらに、図6に示す本実施形態の減速機300においては、内周すべり面348と外周すべり面349とは、中心軸線3Laに対して為す角度が、40°~50°の範囲、より好ましくは45°となるように形成することができる。
【0124】
あるいは、図6に示す本実施形態の減速機300においては、内周すべり面348と外周すべり面349とは、中心軸線3Laに対して為す角度が、45°~40°とすることができる。この構成では、樹脂から構成された第1キャリア(シャフトフランジ)318と第2キャリア(ホールドフランジ)320との端面(外周面)の角度を小さくして、これらの変形を抑制することができる。つまり、樹脂から構成された第1キャリア(シャフトフランジ)318と第2キャリア(ホールドフランジ)320との外縁部付近における軸線方向厚さが薄くなりすぎることを防止できる。
【0125】
図6に示す本実施形態の減速機300においては、ケーシング322と第1キャリア(シャフトフランジ)318とが、第1主軸受324を介して減速機300の内部空間を密閉している。同様に、ケーシング322と第2キャリア(ホールドフランジ)320とが、第2主軸受326を介して減速機300の内部空間を密閉している。外歯歯車314、外ピン(内歯ピン)317は、減速機300の内部空間に収容されている。
主軸受324,326は、すべり軸受とされており、減速機300の内部空間は、すべり面348,349により密閉される。
【0126】
図6に示す本実施形態の減速機300においては、入力軸(偏心体)312に対して駆動力を入力する駆動歯車313が駆動軸313aと一体に回転可能に設けられている。なお、図において、キャリアピン338は図示を省略している。
【0127】
図6に示す本実施形態の減速機300によれば、ケーシング322が全て樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料、例えば金属等により構成されることにより、主軸受324,326で発生した熱を、ケーシング322を介して伝達して速やかに外部に放熱することができる。これにより、減速機300の温度上昇を効果的に抑制することができる。同時に、ケーシング322、内ピン340、駆動歯車313以外の構成部材を樹脂からなる構成とすることにより、減速機300の軽量化を図ることができる。さらに、ケーシング322を金属製とすることで、充分な強度・剛性を維持することが可能となる。
【0128】
さらに、図6に示す本実施形態の減速機300によれば、内周すべり面348と外周すべり面349とは、中心軸線3Laに対して為す角度が、上述した範囲に設定されていることで、軸線方向における減速機の厚さ寸法を増大することなく、内周すべり面348と外周すべり面349との面積を増やすことができる。同時に、ケーシング322と第1キャリア(シャフトフランジ)318と第2キャリア(ホールドフランジ)320との変形を防止して動作不具合を発生しないための充分な強度を有することができる。これにより、故障等を発生せず、動作安定性を維持することができる。
【0129】
さらに、図6に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0130】
以下、本発明に係る減速機の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態の減速機における主軸受付近を示す軸線方向に沿った拡大断面図である。本実施形態において、上述した第4実施形態と異なるのは、主軸受に関する点であり、これ以外の上述した第4実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0131】
本実施形態の減速機300においては、図7に示すように、主軸受324,326における内周すべり面348と外周すべり面349とが、主軸線に沿った方向において互いに膨らんで凸部を形成している。あるいは、内周すべり面348と外周すべり面349とが、主軸線に沿った方向において一方のみ膨らんで凸部を形成している。
【0132】
内周すべり面348と外周すべり面349とは、互いにその全面で接触して接触面積を増やした状態ですべり支持することが好ましいが、製造上の都合により、発生する歪み等により必ずしもこの理想的な状態にはない。このため、ガタつきの発生など動作不良を起こす可能性があるが、これを防止するために、あらかじめ、内周すべり面348と外周すべり面349とに潰し代を形成する。
【0133】
内周すべり面348と外周すべり面349とに形成された潰し代としては、図7に示すように、断面が曲面を形成する凸部とされることができる。この構成によれば、内周すべり面348と外周すべり面349との間で、潰し代で設定された範囲にあらかじめ接触範囲を確実に決めることができる。これにより、製造誤差による非接触状態の発生を防止して、内周すべり面348と外周すべり面349との接触領域を軸線方向における中央付近の突条を確実に接触させることができる。したがって、ケーシング322に対する第1キャリア(シャフトフランジ)318と第2キャリア(ホールドフランジ)320との動作安定性を向上することができる。
また、ケーシング322と第1キャリア(シャフトフランジ)318と第2キャリア(ホールドフランジ)320との変形を防止して動作不具合を発生しないための充分な強度を有することができる。さらに、主軸受324,326における温度上昇を抑制することもできる。
【0134】
さらに、図7に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0135】
以下、本発明に係る減速機の第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
図8は、本実施形態の減速機における主軸受の内周すべり面を示すケーシングの断面図である。本実施形態において、上述した第4実施形態と異なるのは、主軸受に関する点であり、これ以外の上述した第4実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0136】
本実施形態の減速機300においては、図8に示すように、ケーシング322の内周すべり面348に溝360が形成されている。
溝360は、内周すべり面348において、径方向に延びる径溝(溝)361と、周方向に伸びる周溝(溝)362,363と、を有する。
径溝361は、互いに周方向に離間して複数が内周すべり面348に形成される。径溝361は、周方向に互いに離間する。径溝361は、周方向に等距離として互いに離間してもよい。
【0137】
周溝362は、軸線方向において、内周すべり面348の中央付近に形成される。周溝363は、軸線方向において、内周すべり面348の外歯歯車314に近接する位置に形成される。径溝361は、軸線方向において、周溝363よりも外歯歯車314に近接する位置には形成されない。また、径溝361は、軸線方向において、外歯歯車314から離間する方向では、内周すべり面348の端まで形成されて外部に連続している。
【0138】
周溝362,363は、内周すべり面348の周方向で一周している。径溝361は、周溝363を終端とするように周溝363に接続されている。内周すべり面348においては、周溝363よりも入力軸312に近接する位置には他の溝は形成されない。つまり溝360は、外ピン317と離間して接触していない。
溝360は、その深さ寸法および幅寸法が全て等しくされてもよく、あるいは、径溝361に対して周溝362,363が大きく形成されてもよい。
【0139】
図8に示す本実施形態の減速機300によれば、内周すべり面348と外周すべり面349との間に進入したゴミやパーティクル等の異物が、溝360によって捕捉されて、減速機300の内部空間には侵入しない。つまり、外歯歯車314や外ピン317等の動作にゴミやパーティクル等の異物が影響を及ぼすことを防止できる。また、内周すべり面348と外周すべり面349との間で過剰なグリース、潤滑剤等を溝360によって捕捉することができる。
【0140】
さらに、図8に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0141】
さらに、図8に示す本実施形態の構成を、例えば、上述した図7に示す第5実施形態における構成と組み合わせることもできる。
図9は、本実施形態の減速機における内周すべり面の潰し代と溝との関係を示すケーシングの拡大断面図である。
図10は、本実施形態の減速機における内周すべり面の潰し代と溝との関係の他の例を示すケーシングの断面図である。
具体的には、内周すべり面348には、潰し代となる断面が円弧状の凸部を複数本形成するとともに、その間を溝とすることが可能である。
【0142】
例えば、図9に示すように、ケーシング322には、その断面が弧状となる周方向に平行な突条を二本形成し、これらの間を周溝363とすることができる。ここで、径方向において入力軸312に近接する内周すべり面348の位置で曲面として形成される突条348aと、径方向においてケーシングの外周縁部に近接する内周すべり面348の位置で曲面として形成される突条348bとは、その断面における曲率がほぼ同じとなるように形成される。これら突条348aと突条348bとの間には、周溝363が形成される。これにより、内周すべり面348に潰し代を設けて動作安定性を向上するとともに、減速機300内へのコンタミネーションを防止することができる。
【0143】
あるいは、図10に示すように、突条348aの断面における曲率を突条348bの断面における曲率よりも大きくして、周溝363を、より一層、径方向において入力軸312に近接する内周すべり面348の位置とすることができる。
【0144】
また、図8図10に示す本実施形態では、ケーシング322の内周すべり面348に溝360を形成したが、外周すべり面349に溝を形成することもできる。この場合、外周すべり面349が樹脂ではなく金属から構成されていることが好ましく、同時に、内周すべり面348が樹脂から構成されることができる。つまり、図3に示す第2実施形態のように、キャリア318,320に金属リングを設けて、この外周すべり面349に溝を形成することができる。
【0145】
以下、本発明に係る減速機の第7実施形態を、図面に基づいて説明する。
図11は、本実施形態の減速機を示す軸線方向に沿った断面図である。図12は、図11におけるXII-XII線における断面図である。図において、符号400は減速機である。
【0146】
本実施形態の偏心揺動型の減速機400は、例えばロボットの旋回胴や腕関節等の旋回部、協働ロボットなど、各種工作機械の旋回部等に減速機として適用されるものである。この減速機400は、例えば、80rpm~200rpmの回転数で使用される。
【0147】
本実施形態の減速機400においては、図11図12に示すように、入力軸408を回転させることによってクランク軸(偏心体)410を回転させ、クランク軸410の偏心部410a,410bに連動して外歯歯車414,416を揺動回転させることにより、入力回転から減速した出力回転を得るように構成されている。
【0148】
減速機400は、図11図12に示すように、ケーシング(外筒)422と、キャリア404と、入力軸408と、複数(例えば3つ)のクランク軸410と、第1外歯歯車414と、第2外歯歯車416と、複数(例えば3つ)の伝達歯車420とを備えている。
【0149】
ケーシング422は、減速機400の外面を構成するものであり、略円筒形状を有している。ケーシング422の内周面には、多数のピン溝422bが形成されている。各ピン溝422bは、ケーシング422の軸線方向に延びるように配置され、軸線方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。これらのピン溝422bは、ケーシング422の内周面に周方向に等間隔で並んでいる。
【0150】
ケーシング422は、多数の内歯ピン(外ピン)417を有している。各内歯ピン417は、ピン溝422bにそれぞれ取り付けられている。具体的に、各内歯ピン417は、対応するピン溝422bにそれぞれ嵌め込まれており、ケーシング422の軸線方向に延びる姿勢で配置されている。これにより、多数の内歯ピン417は、ケーシング422の周方向に沿って等間隔で並んでいる。これらの内歯ピン417には、第1外歯歯車414の第1外歯414a及び第2外歯歯車416の第2外歯416aが噛み合う。多数の内歯ピン417は、内歯歯車417Aを構成する。
【0151】
キャリア404は、ケーシング422と同軸上に配置された状態でそのケーシング422内に収容されている。キャリア404は、ケーシング422に対して同じ軸回りに相対回転する。具体的に、キャリア404は、ケーシング422の径方向内側に配置されており、この状態で、軸線方向に互いに離間して設けられた一対の主軸受424,426によってケーシング422に対して相対回転可能に支持されている。
【0152】
キャリア404は、第1キャリア(シャフトフランジ)404aと複数(例えば3つ)のシャフト部404cとを有する基部と、第2キャリア(ホールドフランジ)404bと、を備えている。
【0153】
第1キャリア404aは、ケーシング422内において軸線方向の一端部近傍に配置されている。この第1キャリア404aの径方向中央部には円形の貫通孔404dが設けられている。貫通孔404dの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔404e(以下、単に取付孔404eという)が周方向に等間隔で設けられている。
【0154】
第2キャリア404bは、第1キャリア404aに対して軸線方向に離間して設けられており、ケーシング422内において軸線方向の他端部近傍に配置されている。第2キャリア404bの径方向中央部には貫通孔404fが設けられている。貫通孔404fの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔404g(以下、単に取付孔404gという)が第1キャリア404aの複数の取付孔404eと対応する位置に設けられている。ケーシング422内には、第2キャリア404b及び第1キャリア404aの互いに対向する双方の内面と、ケーシング422の内周面とで囲まれた閉空間(内部空間)が形成されている。
【0155】
3つのシャフト部404cは、第1キャリア404aと一体的に設けられており、第1キャリア404aの一主面(内側面)から第2キャリア404b側へ直線的に延びている。この3つのシャフト部404cは、周方向に等間隔で配設されている(図12参照)。各シャフト部404cは、ボルト404hによって第2キャリア404bに締結されている(図11参照)。これにより、第1キャリア404a、シャフト部404c及び第2キャリア404bが一体化されている。
【0156】
第1キャリア(シャフトフランジ)404aおよび第2キャリア(ホールドフランジ)404bは、第1主軸受424、第2主軸受426を介してケーシング422に回転自在に支持されている。第1キャリア404aは、第1主軸受424を介してケーシング422に回転自在に支持されている。第2キャリア404bは、第2主軸受426を介してケーシング422に回転自在に支持されている。
ケーシング422には、入力軸408の軸線方向で第1キャリア404a側の第1金属リング444と、入力軸408の軸線方向で第2キャリア404b側の第2金属リング445と、が設けられる。第1金属リング444および第2金属リング445は、ケーシング422と一体に固定される。
【0157】
ケーシング422には、第1金属リング444を収容する凹部が設けられる。第1金属リング444は軸線方向において凹部に収容されている。ケーシング422では、第1金属リング444が第1主軸受424の外輪となる。第1金属リング444の外周は、ケーシング422の内周に接続している。
【0158】
第1主軸受424の外輪となる第1金属リング444は、入力軸408の軸線方向で先端部側に位置する。第1金属リング444は、内周面に外輪となる内周すべり面448を形成する。第1金属リング444は、内周すべり面448が第1キャリア404aの外周面に接している。第1金属リング444は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、ケーシング422に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0159】
ケーシング422には、第2金属リング445を収容する凹部が設けられる。第2金属リング445は軸線方向において凹部に収容されている。ケーシング422では、第2金属リング445が第2主軸受426の外輪となる。第2金属リング445の外周は、ケーシング422の内周に接続している。
【0160】
第2主軸受426の外輪となる第2金属リング445は、入力軸408の軸線方向で基端部側に位置する。第2金属リング445は、内周面に外輪となる内周すべり面448を形成する。第2金属リング445は、内周すべり面448が第2キャリア404bの外周面に接している。第2金属リング445は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、ケーシング422に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0161】
主軸受424,426としては、第1キャリア404aとケーシング422の間に配置される第1主軸受424と、第2キャリア404bとケーシング422の間に配置される第2主軸受426と、が含まれる。図11図12に示す本実施形態の主軸受424,426は、すべり軸受とされる。
主軸受424,426は、外輪となる内周すべり面448と内輪となる外周すべり面449とを備える。
外周すべり面449は、内輪と一体とされた第1キャリア404a、第2キャリア404bの外周面に設けられている。
【0162】
主軸受424,426では、第1金属リング444と第2金属リング445とにおいてすべり面448,449は、径方向において内歯ピン417とほぼ等しい位置に配置される。
第1金属リング444と第2金属リング445とは、図11図12に示すように、いずれも、入力軸408の中心軸線(主軸線)4Laに沿った方向において内歯ピン417と接触して配置されている。第1金属リング444と第2金属リング445と内歯ピン417とは、軸線方向に接触しておりことで、軸線方向におけるケーシング422の全長にわたって強度を維持することができる。
【0163】
入力軸408は、図略の駆動モータの駆動力が入力される入力部として機能するものである。入力軸408は、第2キャリア404bの貫通孔404f及び第1キャリア404aの貫通孔404dに挿入されている。入力軸408は、その中心軸線4Laがケーシング422及びキャリア404の軸線と一致するように配置されており、軸回りに回転する。入力軸408の先端部の外周面には入力ギア408aが設けられている。
【0164】
3つのクランク軸410は、ケーシング422内において入力軸408の周囲に等間隔で配置されている(図12参照)。各クランク軸410は、一対のクランク軸受412a,412bによりキャリア404に対して軸回りに回転可能に支持されている(図11参照)。具体的に、各クランク軸410の軸線方向の一端から所定長さだけ軸線方向内側の部分に第1クランク軸受412aが取り付けられており、この第1クランク軸受412aは、第1キャリア404aの取付孔404eに装着されている。一方、各クランク軸410の軸線方向の他端部に第2クランク軸受412bが取り付けられており、この第2クランク軸受412bは、第2キャリア404bの取付孔404gに装着されている。これにより、クランク軸410は、第1キャリア404a及び第2キャリア404bに回転可能に支持されている。
【0165】
各クランク軸410は、軸本体412cと、この軸本体412cに一体的に形成された偏心部410a,410bとを有する。第1偏心部410aと第2偏心部410bは、両クランク軸受412a,412bによって支持された部分の間に軸線方向に並んで配置されている。第1偏心部410aと第2偏心部410bは、それぞれ円柱形状を有しており、いずれも軸本体412cの軸線に対して偏心した状態で軸本体412cから径方向外側に張り出している。第1偏心部410aと第2偏心部410bは、それぞれ軸線から所定の偏心量で偏心しており、互いに所定角度の位相差を有するように配置されている。
【0166】
クランク軸410の一端部、すなわち、第1キャリア404aの取付孔404e内に取り付けられる部分の軸線方向外側の部位には、伝達歯車420が取り付けられる被嵌合部410cが設けられている。
【0167】
第1外歯歯車414は、ケーシング422内の前記閉空間に配設されているとともに各クランク軸410の第1偏心部410aに第1コロ軸受418aを介して取り付けられている。第1外歯歯車414は、各クランク軸410が回転して第1偏心部410aが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン417に噛み合いながら揺動回転する。
【0168】
第1外歯歯車414は、ケーシング422の内径よりも少し小さい大きさを有している。第1外歯歯車414は、第1外歯414aと、中央部貫通孔414bと、複数(例えば3つ)の第1偏心部挿通孔414cと、複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔414dとを有している。第1外歯414aは、外歯歯車414の周方向全体に亘って滑らかに連続する波形状を有している。
【0169】
中央部貫通孔414bは、第1外歯歯車414の径方向中央部に設けられている。中央部貫通孔414bには、入力軸408が遊びを持った状態で挿入し貫通されている。
【0170】
3つの第1偏心部挿通孔414cは、第1外歯歯車414において中央部貫通孔414bの周囲に周方向に等間隔で設けられている。各第1偏心部挿通孔414cには、第1コロ軸受418aが介装された状態で各クランク軸410の第1偏心部410aがそれぞれ挿入し貫通されている。
【0171】
3つのシャフト部挿通孔414dは、第1外歯歯車414において中央部貫通孔414bの周りに周方向に等間隔で設けられている。各シャフト部挿通孔414dは、周方向において、3つの第1偏心部挿通孔414c間の位置にそれぞれ配設されている。各シャフト部挿通孔414dには、対応するシャフト部404cが遊びを持った状態で挿入し貫通されている。
【0172】
第2外歯歯車416は、ケーシング422内の前記閉空間に配設されているとともに各クランク軸410の第2偏心部410bに第2コロ軸受418bを介して取り付けられている。第1外歯歯車414と第2外歯歯車416は、第1偏心部410aと第2偏心部410bの配置に対応して軸線方向に並んで設けられている。第2外歯歯車416は、各クランク軸410が回転して第2偏心部410bが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン417に噛み合いながら揺動回転する。
【0173】
第2外歯歯車416は、ケーシング422の内径よりも少し小さい大きさを有しており、第1外歯歯車414と同様の構成となっている。すなわち、第2外歯歯車416は、第2外歯416a、中央部貫通孔416b、複数(例えば3つ)の第2偏心部挿通孔416c及び複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔416dを有している。これらは、第1外歯歯車414の第1外歯414a、中央部貫通孔414b、複数の第1偏心部挿通孔414c及び複数のシャフト部挿通孔414dと同様の構造を有している。各第2偏心部挿通孔416cには、第2コロ軸受418bが介装された状態でクランク軸410の第2偏心部410bが挿入し貫通されている。
【0174】
各伝達歯車420は、入力ギア408aの回転を対応するクランク軸410に伝達するものである。各伝達歯車420は、対応するクランク軸410の軸本体412cにおける一端部に設けられた被嵌合部410cにそれぞれ外嵌されている。各伝達歯車420は、クランク軸410の回転軸と同じ軸回りにこのクランク軸410と一体的に回転する。各伝達歯車420は、入力ギア408aと噛み合う外歯420aを有している。
【0175】
ここで、図11図12に示す本実施形態の減速機400の各部を構成する素材について説明する。
【0176】
図11図12に示す本実施形態の減速機400においては、キャリア404およびケーシング422は、樹脂から構成されて減速機400を軽量化している。
ここで、主軸受424,426の外輪となる内周すべり面448は、内輪となる外周すべり面449を形成する第1キャリア404a、第2キャリア404bの樹脂よりも熱伝導率の高い素材により構成される。
【0177】
主軸受424,426において、外輪となる金属リング444,445を構成する素材は、内輪となるキャリア404の樹脂よりも熱伝導率が高く、また、キャリア404の樹脂よりも強度が高い素材であればよく、金属材料、非金属材料などであってもよい。図11図12に示す本実施形態の金属リング444,445は、銅系またはアルミニウム系の金属、合金や、軸受鋼、ステンレス鋼等の鉄系金属で構成されてもよい。
なお、内歯ピン417についても、金属リング444,445と同じ素材で形成されていてもよい。また、入力軸408、クランク軸410、第1コロ軸受418a、第2コロ軸受418b、第1クランク軸受412a、第2クランク軸受412b、伝達歯車420などは、金属リング444,445と同じ素材で形成されていてもよい。さらに、第1外歯歯車414および第2外歯歯車416は、キャリア404と同じ素材で形成されていてもよい。
【0178】
図11図12に示す本実施形態の減速機400では、主軸受424,426として、金属リング444,445以外に樹脂よりも重い金属構成部材を有していないので、さらなる軽量化を図ることができる。
【0179】
図11図12に示す本実施形態では、このように構成されることにより、すべり軸受である主軸受424,426から第1金属リング444および第2金属リング445に伝わった熱を外部に放熱することができ、放熱性が向上する。
内周すべり面448および外周すべり面449においては、このように放熱性を向上することで、過度の温度上昇によって表面で樹脂が溶ける、あるいは、互いに貼り付いてしまうことによって、動作不良を起こすことを防止できる。したがって、減速機400には内部に熱がこもることがなく、不具合の発生を防止することができる。
【0180】
ケーシング422の内周位置では、金属からなる第1金属リング444と内歯ピン417と第2金属リング445とが、軸線方向に隣接して互いに接触する配置とされていることで、軸線方向におけるケーシング422の全長にわたって強度を維持することができる。これにより、減速機400の動作不良を防止するために、充分な強度を維持することができる。また、外歯歯車414,416の歯面の面圧が高くなることを抑制することができ、外歯歯車414,416の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0181】
なお、本実施形態は、上記の構成に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、図11図12に示す本実施形態では、2つの揺動する外歯歯車414,416が設けられた構成としたが、これに限られるものではない。例えば、1つの揺動歯車が設けられる構成、又は3つ以上の揺動歯車が設けられる構成であってもよい。
【0182】
また、図11図12に示す本実施形態では、入力軸408がキャリア404の中央部に配設され、複数のクランク軸410が入力軸408の周囲に配設される構成としたがこれに限られるものではない。例えば、クランク軸410がキャリア404の中央部に配設されたセンタークランク式としてもよい。この場合、入力軸408がクランク軸410に取り付けられた伝達歯車420に噛み合うように設けられれば、入力軸408はどの位置に配設されていてもよい。
【0183】
図11図12に示す本実施形態では、ケーシング422、キャリア404が樹脂、金属リング444,445がアルミニウム合金等の金属製である場合を例示したが、ケーシング422を金属製とすることや、キャリア404を金属製とすることができる。この場合、アルミニウム合金製とすることができるが、これに限られるものではない。特に、軽量化と必要な剛性とを維持することができて、内周すべり面448と外周すべり面449とが、樹脂と金属とのいずれか互いに異なる材質であれば、減速機400の構成部品は、適宜その素材を選択することができる。
【0184】
図11図12に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0185】
以下、本発明に係る減速機の第8実施形態を、図面に基づいて説明する。
図13は、本実施形態における減速機を示す主軸線方向に沿った断面図である。図において、符号500は減速機である。
【0186】
本実施形態の減速機500は、偏心揺動型であり、図13に示すように、入力軸(偏心体)512と、偏心部503と、偏心部503に対応する外歯歯車514と、偏心部軸受509と、キャリア519と、内歯歯車516と、を有する。
【0187】
入力軸512は、図13に示すように、中心軸線(主軸線)5La方向の出力側端部に開口部512Dを有し、中心軸線5La方向の入力側端部に図示せぬモータが係合可能な突出部512Aを有する。入力軸512は、装置全体の径方向中央に配置される。入力軸512には、中心軸線5Laに沿った方向の出力側端部に近接する位置に支持部512Bが形成される。入力軸512は、中心軸線5Laに沿った方向の入力側端部に近接する位置に支持部512Cが形成される。
【0188】
入力軸512は、一対の軸受534,536によってキャリア519に支持されている。軸受534は、支持部512Bの位置で入力軸512を支持している。軸受536は、支持部512Cの位置で入力軸512を支持している。
一対の軸受534,536は、転動体が玉とされており、その転動体が内外輪との間に図示しない隙間(遊び)を有している。
軸受534,536に挟まれる形態で、偏心体軸としても機能している入力軸512に、偏心部503が一体的に形成されている。
ここで、中心軸線5Laに沿った方向において、偏心部503から軸受534に向かう方向を出力側と称する。中心軸線5Laに沿った方向において、偏心部503から軸受536に向かう方向を入力側と称する。
【0189】
偏心部503は、図13に示すように、第1偏心部503aと、第2偏心部503bと、第3偏心部503cと、を備える。第1偏心部503aと、第2偏心部503bと、第3偏心部503cとは、中心軸線5Laに沿った方向に3つ並んだ配置とされる。
各偏心部503a,503b,503cは、第1偏心部503aおよび第3偏心部503c(2つの外側偏心部)が中心軸線5Laに沿った方向の両端位置にある。第1偏心部503aと第3偏心部503cとの中心軸線5Laに沿った方向の内側には、第2偏心部(内側偏心部)503bがある。即ち、中心軸線5Laに沿った方向で、第1偏心部503aと第3偏心部503cとが、第2偏心部503bを挟んでいる。
【0190】
3つの各偏心部503a,503b,503cの中心は、それぞれ入力軸512の中心軸線5Laに対して同一量だけ偏心している。3つの各偏心部503a,503b,503cは、360度を偏心部503a,503b,503cの数である3で割って得られる120度の偏心位相で配置されている。各偏心部503a,503b,503cは、中心軸線5Laに対する径方向寸法が最大となる最大偏心位置が、中心軸線5Laに対する周方向位置で異なる。
【0191】
具体的には、入力軸512の中心軸線5Laに対する右回り(左回りでもよい)で、第1偏心部503aの最大偏心位置を基準として、第2偏心部503bの最大偏心位置が120度ずれ、第3偏心部503cの最大偏心位置が第2偏心部503bの最大偏心位置からさらに120度ずれた位置とされている。また、第1偏心部503aの最大偏心位置は、第3偏心部503cの最大偏心位置から更に120度ずれた位置とされている。
【0192】
偏心部軸受509は、図13に示すように、偏心部503の外周に配置され、偏心部503の偏心回転を伝える構成とされている。偏心部軸受509は、各偏心部503a,503b,503cに対応して、第1偏心部軸受509aと、第2偏心部軸受509bと、第3偏心部軸受509cと、を有している。3つの各偏心部軸受509a,509b,509cはそれぞれ、コロと、コロの周方向位置を規制するリテーナと、を有している。3つの各偏心部軸受509a,509b,509cは、いずれも内輪外輪を有していない。ここで、「コロ」は「ニードル」の概念を含んでいる。
【0193】
外歯歯車514は、偏心部軸受509を介して偏心部503の外周に装着されている。外歯歯車514は、偏心部503によって揺動回転する。外歯歯車514は、各偏心部503a,503b,503cに対応して第1外歯歯車514aと、第2外歯歯車514bと、第3外歯歯車514cと、を有している。
【0194】
3つの各外歯歯車514a,514b,514cは、それぞれ、複数の内ピン孔515a,515b,515cを備える。複数の内ピン孔515a,515b,515cは、それぞれ、各外歯歯車514a,514b,514cを貫通する。各外歯歯車514a,514b,514cには回転可能な内ローラ537付きの内ピン540が遊びを持って嵌められている。
【0195】
キャリア519は、第1キャリア(シャフトフランジ)518と、第2キャリア(ホールドフランジ)520と、を備えている。第1キャリア518は、内ピン540と一体的に形成されている。
第1キャリア518と第2キャリア520とは、ボルト540aによって連結、固定されて一体化されている。ボルト540aは、第2キャリア520の外側からねじ込まれて内ピン540に連結、固定される。
【0196】
第1キャリア518は、第1外歯歯車514aよりも出力側となる位置に配置されている。第2キャリア520は、第3外歯歯車514cよりも入力側となる位置に配置されている。
キャリア519は、主軸受524,526によってケーシング522に支持されている。第1キャリア518は、第1主軸受524によってケーシング522に支持されている。第2キャリア520は、第2主軸受526によってケーシング522に支持されている。
【0197】
主軸受524,526は、いずれも、すべり面548,549を有するすべり軸受とされている。主軸受524,526は、それぞれ、金属リング544,545を有する。
主軸受524は、第1金属リング544を有する。第2主軸受526は、第2金属リング545を有する。
第1金属リング544は、ケーシング522の出力側に設けられる。第2金属リング545は、ケーシング522の入力側に設けられる。第1金属リング544および第2金属リング545は、ケーシング522と一体に固定される。
【0198】
第1金属リング544は、外周がケーシング522の内周に固定されている。ケーシング522の内周には、第1金属リング544を収容する凹部が設けられる。第1金属リング544は軸線方向において凹部に収容されている。第1金属リング544は、第1主軸受524の外輪となる。
【0199】
第1主軸受524の外輪となる第1金属リング544は、ケーシング522の出力側に位置する。第1金属リング544は、その内周が外輪となる内周すべり面548を形成している。第1金属リング544は、内周すべり面548が第1キャリア(シャフトフランジ)518に接している。第1金属リング544は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、ケーシング522に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0200】
第2金属リング545は、外周がケーシング522の内周に固定されている。ケーシング522の内周には、第2金属リング545を収容する凹部が設けられる。第2金属リング545は凹部よりも中心軸線5Laに沿った方向で入力側に向けて突出している。ケーシング522では、第2金属リング545が第2主軸受526の外輪となる。
【0201】
第2主軸受526の外輪となる第2金属リング545は、ケーシング522の入力側に位置する。第2金属リング545は、ケーシング522の入力側に露出している。第2金属リング545は、その内周が外輪となる内周すべり面548を形成している。第2金属リング545は、内周すべり面548が第2キャリア(ホールドフランジ)520に接している。第2金属リング545は、隙間嵌め、締まり嵌めあるいは中間嵌め等の嵌め合いにより、ケーシング522に固定される。嵌め合い隙間は熱膨張率の差に対応して設定されてもよい。
【0202】
主軸受524,526には、第1キャリア518とケーシング522との間に配置される第1主軸受524と、第2キャリア520とケーシング522との間に配置される第2主軸受526と、が含まれる。
主軸受524,526は、外輪となる内周すべり面548に対して接し、内輪となる外周すべり面549を備える。
外周すべり面549は、内輪と一体とされたキャリア518,520の外周面に設けられている。外周すべり面549は、金属リング544,545の内周面に設けられた外輪となる内周すべり面548と摺れた状態を維持して移動する。
【0203】
主軸受524,526は、内輪の外周すべり面549がそれぞれ第1、第2キャリア518、520に一体化されており、外輪の内周すべり面548が別体である金属リング544,545としてケーシング522の内周に支持される構成となっている。
【0204】
主軸受524,526では、第1金属リング544と第2金属リング545とに形成されるすべり面548,549は、径方向において外ピン(内歯ピン)517とほぼ等しい位置に配置される。
第1金属リング544と第2金属リング545とは、図13に示すように、入力軸512の中心軸線5Laに沿った方向において、いずれも、内歯ピン517と接触する配置とされている。第1金属リング544と第2金属リング545と内歯ピン517とは、中心軸線5Laに沿った方向で互いに接触した配置とされることで、中心軸線5Laに沿った方向におけるケーシング522の全長にわたって強度を維持することができる。
【0205】
主軸受524,526の外輪となる内周すべり面548は、内輪となる外周すべり面149を形成するキャリア518,520の樹脂よりも熱伝導率の高い素材により構成される。
【0206】
主軸受524,526において、外輪となる金属リング544,545を構成する素材は、内輪となるキャリア518,520の樹脂よりも熱伝導率が高く、また、キャリア518,520の樹脂よりも強度が高い素材であればよく、金属材料、非金属材料などであってもよい。図13に示す本実施形態の金属リング544,545は、銅系またはアルミニウム系の金属や、軸受鋼等の鉄系金属で構成されてもよい。
【0207】
内歯歯車516は、円筒形状の内歯ピン517とその内歯ピン517を回転可能に支持するピン溝516bの形成された内歯歯車本体516aとを有する。内歯歯車本体516aは、ケーシング522と一体とされている。内歯歯車516と第1外歯歯車514aとの間には、僅少の歯数差が存在する。内歯歯車516と第2外歯歯車514bとの間には、僅少の歯数差が存在する。内歯歯車516と第3外歯歯車514cとの間には、僅少の歯数差が存在する。なお、ケーシング522と第1キャリア518の間には、金属リング544の外側位置にオイルシール533が配置されている。
【0208】
図示せぬモータの駆動により、入力軸512が回転すると、入力軸512の外周に設けられた偏心部503が入力軸512と一体的に偏心回転する。偏心部503の回転により、各偏心部503a,503b,503cにそれぞれ対応する各外歯歯車514a,514b,514cも入力軸512の周りで揺動回転しようとする。しかし、内歯歯車516によってその自転が拘束されているため、各外歯歯車514a,514b,514cは内歯歯車516に接しながら殆ど揺動のみの動作を行なうことになる。
【0209】
このとき、内ピン孔515a,515b,515cおよび内ピン540(および内ローラ537)によってその揺動成分が吸収される。この結果、固定状態にある内歯歯車516に対して、第1外歯歯車514a、第2外歯歯車514b、第3外歯歯車514cが内歯歯車516との歯数差に相当する分だけそれぞれ相対回転する。即ち、第1外歯歯車514a、第2外歯歯車514b、第3外歯歯車514cと内歯歯車516との歯数差から生じる自転成分のみがキャリア519へと伝達される。
【0210】
ここで、図13に示す本実施形態の減速機500の各部を構成する素材について説明する。
【0211】
図13に示す本実施形態の減速機500においては、キャリア519、ケーシング522、第1外歯歯車514a、第2外歯歯車514b、第3外歯歯車514cは、樹脂から構成されて減速機500を軽量化している。
ここで、主軸受524,526の外輪となる内周すべり面548は、内輪となる外周すべり面549を形成する第1キャリア518、第2キャリア520の樹脂よりも熱伝導率の高い素材により構成されてもよい。
【0212】
主軸受524,526において、外輪となる金属リング544,545を構成する素材は、内輪となるキャリア519の樹脂よりも熱伝導率が高く、また、キャリア519の樹脂よりも強度が高い素材であればよく、金属材料、非金属材料などであってもよい。図13に示す本実施形態の金属リング544,545は、銅系またはアルミニウム系の金属、合金や、軸受鋼、ステンレス鋼等の鉄系金属で構成されてもよい。
なお、内歯ピン517についても、金属リング544,545と同じ素材で形成されていてもよい。また、入力軸512、偏心部軸受509、軸受534,536などは、金属リング544,545と同じ素材で形成されていてもよい。
【0213】
図13に示す本実施形態の減速機500では、主軸受524,526として、金属リング544,545以外に樹脂よりも重い金属構成部材を有していないので、さらなる軽量化を図ることができる。
【0214】
図13に示す本実施形態では、このように構成されることにより、すべり軸受である主軸受524,526から第1金属リング544および第2金属リング545に伝わった熱を外部に放熱することができ、放熱性が向上する。
内周すべり面548および外周すべり面549においては、このように放熱性を向上することで、過度の温度上昇によって表面で樹脂が溶ける、あるいは、互いに貼り付いてしまうことによって、動作不良を起こすことを防止できる。したがって、減速機500には内部に熱がこもることがなく、不具合の発生を防止することができる。
【0215】
ケーシング522の内周位置では、金属からなる第1金属リング544と内歯ピン517と第2金属リング545とが、軸線方向に隣接して互いに接触する配置とされていることで、軸線方向におけるケーシング522の全長にわたって強度を維持することができる。これにより、減速機500の動作不良を防止するために、充分な強度を維持することができる。
【0216】
なお、図13に示す本実施形態では、第1キャリア518が図示せぬ相手機械に対する出力軸として機能している。また、図13に示す本実施形態では、キャリア519は第2キャリア520を備えて内ピン540を両持ちする形態とされているが、内ピンを片持ちする形態のキャリアであってもよい。
また、3つ以上の偏心体が、360度/(該偏心体の数)の偏心位相で配置され、3つ以上の偏心体のうちの軸線方向両端にある2つの外側偏心体の軸線方向長さよりも、該外側偏心体の内側にある内側偏心体の軸線方向長さが長くされた構成に限定されるものではない。
【0217】
図13に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0218】
以下、本発明に係る減速機の第9実施形態を、図面に基づいて説明する。
図14は、本実施形態における減速機を示す主軸線方向に沿った断面図である。図15は、図14におけるXV-XV断面矢視図である。図において、符号600は減速機である。
【0219】
本実施形態の減速機600は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車および外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた自転成分を出力部材から被駆動装置に出力する偏心揺動型減速機である。
【0220】
本実施形態の減速機600は、図14図15に示すように、入力軸612と、外歯歯車614と、内歯歯車616と、キャリア618,620と、ケーシング622と、主軸受624、126と、内ピン140と、キャリアピン138と、を備える。
以下、内歯歯車616の中心軸線(主軸線)6Laに沿った方向を「軸線方向」といい、その中心軸線6Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸線方向の一方側(図14中右側)を入力側といい、他方側(図14中左側)を反入力側または出力側という。
【0221】
入力軸612は、駆動源から入力される回転動力によって回転中心線周りに回転させられる。図14図15に示す本実施形態の減速機600は、入力軸612の回転中心線が内歯歯車616の中心軸線6Laと同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。駆動源は、たとえば、モータ、ギヤモータ、エンジン等である。
【0222】
入力軸612は、外歯歯車614を揺動させるための複数の偏心部612aを有する偏心体軸である。このような構成の入力軸(偏心体)612は、クランク軸と称されることがある。偏心部612aの軸芯は、入力軸612の回転中心線に対して偏心している。図14図15に示す本実施形態では2個の偏心部612aが設けられ、隣り合う偏心部612aの偏心位相は180°ずれている。
【0223】
入力軸612は、その入力側が入力軸軸受634を介して第2キャリア620に支持され、その反入力側が入力軸軸受634を介して第1キャリア618に支持されている。入力軸612は、第1キャリア618および第2キャリア620に対して回転自在に支持されている。入力軸軸受634は、その構成に特別の制限はないが、この例では、球状の転動体を有する玉軸受けである。
【0224】
内歯歯車616は、外歯歯車614と噛み合う。図14図15に示す本実施形態の内歯歯車616は、ケーシング622に一体化された内歯歯車本体616aと、内歯歯車本体616aに周方向に間隔を空けて複数形成された各ピン溝616bに配置された外ピン(内歯ピン)617と、を有している。外ピン617は、内歯歯車本体616aに回転自在に支持される円筒状または円柱状のピン部材である。外ピン617は、軸方向の全長で等しい径寸法を有する。外ピン617は、内歯歯車616の内歯を構成している。内歯歯車616における外ピン617の数(内歯の数)は、外歯歯車614の外歯数よりもわずかだけ(この例では1だけ)多い。
【0225】
内歯歯車本体616aと一体のケーシング622は、樹脂により構成される。内歯歯車本体616aには、種々の樹脂を用いることができるが、この例では、内歯歯車本体616aと一体のケーシング622は、POM(polyacetal:ポリアセタール)により構成されている。内歯歯車本体616aは、PEEK(polyetheretherketone:ポリエーテルエーテルケトン)などPOMとは異なる樹脂により構成されてもよい。
【0226】
内歯歯車本体616aと一体のケーシング622および本実施形態の他の構成部材に用いられる樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維などの強化用繊維を含む樹脂であってもよいし、強化用繊維を含まない樹脂であってもよいし、紙や布などの基材に樹脂を含浸して積層したものであってもよい。本実施形態の各構成部材に用いられる樹脂は、熱伝導性フィラーを配合させた樹脂であってもよい。
【0227】
減速機600では、外ピン617を、内歯歯車本体616aの樹脂よりも熱伝導率[W/(m・K)]の高い素材により構成してもよい。
【0228】
外ピン617を構成する素材は、内歯歯車本体616aの樹脂よりも熱伝導率が高く剛性の高い素材であればよく、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料などであってもよい。外ピン617は、カーボンナノチューブ(CNT)、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を配合させた樹脂であってもよい。図14図15に示す本実施形態の外ピン617は、軸受鋼等の鉄系金属で構成されてもよい。
【0229】
外ピン617は、中実の部材であってもよいし、中空の部材であってもよい。外ピン617は、芯材を表面材で包んだ多層構造の部材であってもよい。例えば、外ピン617は、芯材と表面材の一方が鉄系金属で、他方が銅系またはアルミニウム系の金属であってもよい。この場合、機械的特性と熱的特性との両立を図ることができる。また、別の一例として、外ピン617は、芯材と表面材の一方が金属で構成され、他方が樹脂で構成されてもよい。また、外ピン617は、焼結金属やセラミック等で構成されてもよい。
【0230】
外歯歯車614は、複数の偏心部612aのそれぞれに対応して個別に設けられる。外歯歯車614は、偏心軸受630を介して対応する偏心部612aに回転自在に支持される。図15に示すように、外歯歯車614には、その軸心からオフセットされた位置に、複数個の貫通するキャリアピン孔(内ピン孔)639が周方向に等間隔として形成されている。キャリアピン孔139にはキャリアピン(内ピン)638が挿入される。これら複数のキャリアピン孔639は、いずれも同径である。キャリアピン孔639の径寸法は、キャリアピン638の径寸法よりも大きく設定される。
【0231】
外歯歯車614は、内歯歯車本体616aと同様に樹脂により構成される。また、外歯歯車614には、種々の樹脂を用いることができる。外歯歯車614は、内歯歯車本体616aよりも入力軸612の近傍に配置されている。外歯歯車614は、PEEKにより構成されてもよい。外歯歯車614は、POMなどPEEKとは異なる樹脂により構成されてもよい。
【0232】
複数のキャリアピン孔639は、同じ半径方向位置に設けられた円形の貫通孔である。外歯歯車614の外周には波形の歯が形成されており、この歯が内歯歯車616と接触しつつ移動することで、中心軸線6Laを法線とする面内で外歯歯車614が揺動できるようになっている。キャリアピン孔639には、キャリアピン638が貫通する。キャリアピン638とキャリアピン孔639の間には外歯歯車114の揺動成分を吸収するための遊びとなる隙間が設けられる。キャリアピン638とキャリアピン孔639の内壁面とは一部で接触する。
【0233】
キャリア618,620は、外歯歯車614の軸線方向の両側位置に配置される。キャリア618,620には、外歯歯車614の反入力側の側部に配置される第1キャリア(シャフトフランジ)618と、外歯歯車614の入力側の側部に配置される第2キャリア(ホールドフランジ)620と、が含まれる。
第1キャリア618および第2キャリア620は、第1主軸受624、第2主軸受626を介してケーシング122に回転自在に支持されている。第1キャリア(シャフトフランジ)618は、第1主軸受624を介してケーシング622に回転自在に支持されている。第2キャリア(ホールドフランジ)620は、第2主軸受626を介してケーシング622に回転自在に支持されている。
【0234】
キャリア618,620は全体として円盤状をなしている。第1キャリア618は、入力軸軸受634を介して入力軸612を回転自在に支持する。第2キャリア620は、入力軸軸受634を介して入力軸612を回転自在に支持する。
キャリアピン(内ピン)638は、鉄系金属等の剛性を有する素材により構成されているボルト638aによって第1キャリア(シャフトフランジ)618と第2キャリア(ホールドフランジ)620とに連結される。
【0235】
第1キャリア618と第2キャリア620は、複数のキャリアピン638を介して連結される。キャリアピン638は、外歯歯車614の軸芯から径方向にオフセットした位置において、複数の外歯歯車614を軸方向に貫通する。この例では、キャリアピン638は、キャリア618,620と別体に設けられているが、これらの一部のピンがキャリア618,620の一部として一体に形成されてもよい。
【0236】
第1キャリア618とケーシング622とのいずれか一方は、被駆動装置に回転動力を出力する出力部材として機能し、他方は減速機600を支持するための外部部材に固定される被固定部材として機能する。出力部材は、被固定部材に主軸受624,626を介して回転自在に支持される。第1キャリア618の反入力側の端面には、減速機600によって回転駆動される被駆動部材が、ボルト等によって連結されてもよい。あるいは、ケーシング622の外周フランジ等には、減速機600によって回転駆動される被駆動部材が、ボルト等によって連結されてもよい。
【0237】
ケーシング622は、全体として中空の筒状をなし、その内周部には内歯歯車616が設けられる。ケーシング622の外周部には、フランジなどが設けられてもよい。ケーシング622では、外ピン617を支持するピン溝616bが中心軸線6La方向の両端まで形成されている。外ピン617は、中心軸線6La方向において、ピン溝616bよりも外側に延長されている。つまり、外ピン617の中心軸線6La方向長さは、ピン溝616bの中心軸線6La方向長さよりも大きく設定される。外ピン617は、中心軸線6La方向において、ピン溝616bから外側にはみ出している。
【0238】
キャリア618,620には、ピン溝616bからはみ出した外ピン617を収容する周凹部646,647が設けられる。周凹部646,647は、キャリア618,6202の周方向の全長に形成される。周凹部646,647は、周方向の全長で等しい断面形状を有する。
周凹部646,647は、径方向における断面が矩形とされる。周凹部646,647の径方向における断面形状は、外ピン617の軸方向断面に対応している。
周凹部646,647は、それぞれ、径方向に沿った平面である環状面649aと、環状面649aの中心軸線6Laに近接する位置に連続する円筒面である外周面649bとを有する。
【0239】
キャリア618,620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、ピン溝616bからはみ出した外ピン617が周凹部646,647の内部で周方向に移動可能とされる。
キャリア618,620における周凹部646,647は、主軸受624,626の内輪となる。
【0240】
主軸受624,626はそれぞれ、外ピン617と、外ピン617の周方向位置を規制するリテーナとしてのピン溝616bと、を有している。主軸受624,626は、内歯歯車本体616aが外輪に相当する。つまり、図14図15に示す本実施形態の主軸受624,626は、外ピン617による転がり軸受とされている。
主軸受624,626には、第1キャリア618とケーシング622の間に配置される第1主軸受624と、第2キャリア620とケーシング622の間に配置される第2主軸受626と、が含まれる。
【0241】
第1主軸受624は、ケーシング622のピン溝616bと、外ピン617と、第1キャリア618の入力側外周に設けられた周凹部646とから構成される。
周凹部646において、径方向に沿った環状面649aには、外ピン617の端面617bがわずかに離間しているか、たまに接触する。周凹部646において、環状面649aよりも出力側となる外周面649bは外ピン617の周面617cが接触している。
【0242】
外ピン617の出力側の端面617bは、第1キャリア618とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、環状面649aに対して接触しないで移動するか、すべり接触して移動する。外ピン617の端面617b近傍の周面617cは、第1キャリア618とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、外周面649bに対して転がり接触して移動する。外ピン617の周面617cは、外周面649bに対して中心軸線6La方向の線状に接触した状態を維持する。
【0243】
第2主軸受626は、ケーシング622のピン溝616bと、外ピン617と、第2キャリア620の出力側外周に設けられた周凹部647とから構成される。
周凹部647において、径方向に沿った環状面649aには外ピン617の端面617bがわずかに離間しているか、たまに接触する。接触している。周凹部647において、環状面649aよりも入力側となる外周面649bには外ピン617の周面617cが接触している。
【0244】
外ピン617の入力側の端面617bは、第2キャリア620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、環状面649aに対して接触しないで移動するか、すべり接触して移動する。外ピン617の端面617b近傍の周面617cは、第2キャリア620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、外周面649bに対して転がり接触して移動する。外ピン617の周面617cは、外周面649bに対して中心軸線6La方向の線状に接触した状態を維持する。
【0245】
主軸受624,626における、周面617cと外周面649bとの中心軸線6La方向の接触長さは、複数の外ピン617でいずれも等しくなる。また、主軸受624,626における、周面617cと外周面649bとの接触位置は、複数の外ピン617でいずれも周方向に等しい距離だけ離れている。この複数の外ピン617における周方向距離は、ピン溝616bの周方向における離間距離によって維持される。
【0246】
主軸受624,626では、中心軸線6Laに沿った方向で外ピン617の両端部に、周凹部646,647から径方向外向きの力がかかる。また、中心軸線6Laに沿った方向で外ピン617の中央部に、ピン溝616bから径方向内向きの力がかかる。これにより、主軸受624,626は、ケーシング622とキャリア618,620とを全周で相対回転が可能に支持している。
【0247】
第1キャリア618の周凹部646と第2キャリア620の周凹部647とにおいては、周凹部646の環状面649aと、周凹部647の環状面649aとが中心軸線6Laに沿った方向で離間する距離は、外ピン617の軸方向寸法よりもやや大きいか、ほぼ等しく設定される。
また、周凹部646,647の外周面649bの中心軸線6Laからの径寸法は、ピン溝616bにおける最大径寸法から外ピン617の径寸法を減じた値とされている。
【0248】
環状面649aの径方向寸法は、外ピン617の径寸法と等しく設定することができる。この場合、キャリア618,620の外周面が外ピン617の径方向最外位置を接続した円筒面と等しい径寸法を有する。同時に、外ピン617の端面617bの全てが環状面649aに接触可能である。
あるいは、環状面649aの径方向寸法は、外ピン617の径寸法よりも小さく設定することができる。この場合、外ピン617の径方向最外位置を接続した円筒面は、キャリア618,620の外周面よりも大きな径寸法を有する。
また外周面649bの軸方向長さと、外周面649bに接触する外ピン617の周面617cの軸方向長さとは、ほぼ等しい値に設定されている。
【0249】
主軸受624,626において、外ピン617は、外輪の内周面648となるピン溝616bを形成するケーシング622、および、内輪となる外周面649bを形成するキャリア118,120の樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
具体的には、外ピン617を構成する素材は、外輪となるケーシング622、および、内輪となるキャリア618,120の樹脂よりも熱伝導率が高く、また、キャリア618,620の樹脂よりも強度が高い素材であればよく、金属材料、非金属材料などであってもよい。図14図15に示す本実施形態の外ピン617は、銅系またはアルミニウム系の金属や合金、あるいは、軸受鋼等の鉄系金属で構成されてもよい。
【0250】
主軸受624,626において、外ピン617は、外輪の内周面648となるピン溝616bと、内輪となる周凹部646,647の外周面649bと、の間に挟まれている。
つまり、外ピン617は、ケーシング622と、キャリア118,120との間で挟まれている。
【0251】
主軸受624,626となるピン溝616bから中心軸線6Laに沿った方向に突出した外ピン617は、内歯歯車616を構成する外ピン617と兼ねている。したがって、主軸受624と内歯歯車616と主軸受626とは、中心軸線6Laに沿って隣接した配置となっている。これにより、軸線方向における減速機600の全長にわたって強度を維持することができる。
【0252】
キャリアピン(内ピン)638は、外歯歯車614に貫通形成されたキャリアピン孔(内ピン孔)639に隙間を有した状態で挿入し貫通される。キャリアピン638は、その一端が第1キャリア618の凹部618cに嵌め込まれ、他端が第2キャリア620の凹部620cに嵌め込まれている。キャリアピン638は、凹部618c,620cにボルト638aにより固定される。キャリアピン638は、凹部618c,620cに圧入されてもよく、この場合、ボルト等による固定はなされない。
【0253】
キャリアピン(内ピン)638は、外歯歯車614に形成されたキャリアピン孔639の一部とあたって接しており、外歯歯車614の自転を拘束しその揺動のみを許容している。キャリアピン638は、第1キャリア618および第2キャリア620と外歯歯車614との間の動力の伝達に寄与する連結部材として機能する。また、キャリアピン638は、外歯歯車614のキャリアピン孔639とは接していないものが設けられてもよく、この場合のキャリアピン638は、外歯歯車614の自転の拘束には寄与していない。このキャリアピン638は、第1キャリア618と第2キャリア620の間の連結のみに寄与している連結部材として機能することになる。
【0254】
減速機としては、人の近くで稼働する協働ロボットなどにその用途が拡大している。用途を拡大するために、減速機の軽量化と低騒音化が望まれている。従来の減速機は鉄系金属からなる構成部材で構成されており、軽量化のためには、構成部材を低比重の素材により形成することが考えられる。このような材料としては、樹脂などが好適である。一方、構成部材を樹脂化すると、強度・剛性の低下により、故障等の不具合が発生することが考えられる。また、構成部材を樹脂化すると、放熱性の低下により温度上昇し、寿命が短くなることが考えられる。このため、各構成部材を構成する素材は、強度維持と軽量化と放熱性とを考慮して選択されることが望ましい。特に、軽量化にともなう強度低下は避ける必要がある。
【0255】
減速機600では、その多くの構成部材を樹脂から構成して軽量化することができる。ケーシング622,キャリア618,620、外歯歯車614は、減速機600の構成部材のうち多くの体積を占めているので、これらを樹脂から構成することで、大幅な軽量化を図ることができる。同時に、強度、放熱性を考慮して、入力軸612、キャリアピン(内ピン)638およびボルト638a、偏心軸受630、入力軸軸受634、外ピン617は、金属から構成することが好ましい。
【0256】
さらに、減速機600では、主軸受624,626として、別構成の軸受を設けることなく、外ピン617を兼用してケーシング622とキャリア618,620とを回転可能に支持しているため、さらなる軽量化を図ることができる。また、主軸受624,626として、外ピン617以外の金属構成部材を有していないので、さらなる軽量化を図ることができる。
【0257】
同時に、主軸受624,626においては、外ピン617の周面617cは、キャリア618,620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、外周面649bに対して転がり接触して移動するため、すべり接触する構成に比べて、摩擦を少なくし、動作安定性を向上することができる。また、環状面649aと外周面649bとが樹脂から構成され、外ピン617が金属から構成されることで、これらの互いに接触する箇所から発生する熱を、効率的に逃がして、放熱性を向上することができる。
【0258】
減速機600では、その内部、特に主軸受624,626の周囲で発熱量が大きい場合が多い。また、相対的に高速で回転する入力軸612の周囲で発熱量が大きい場合が多い。さらに、キャリアピン(内ピン)638と外歯歯車614とは充分な強度が維持されないと減速機600としての動作不良を発生する可能性がある。
このように、内部で発生した熱の外部への放熱性が低いと減速機の温度上昇が高くなる。樹脂部材は、温度が高くなると剛性および強度が急激に低下し、そのまま使用し続けると破損する可能性が高い。
【0259】
このため、互いに相対移動する部材について、一方を樹脂部材としたときに、他方をその樹脂部材より耐摩耗性と熱伝導率[W/(m・K)]とが高い素材で構成することが望ましい。この場合、他方の熱伝導率が低い場合に比べて、内部で発生した熱の外部への放熱性が改善される。同時に、耐摩耗性が低い場合に比べて、部材寿命を長くできる。さらに、低騒音化することもできる。
【0260】
主軸受624,626となる外ピン617を構成する素材は、内輪の環状面649aおよび外周面649bを構成する樹脂よりも耐摩耗性が高いとともに熱伝導率が高い素材であればよく、金属材料、非金属材料、高剛性、高熱伝導性の素材であってもよい。
図14図15に示す本実施形態の主軸受624,626を構成する外ピン617は、軸受鋼などの鉄系金属やアルミニウム系金属、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタンなどの軽金属や、これらの複合材料により構成されてもよい。あるいは、外ピン617はセラミックス等で構成されてもよい。これ以外のキャリア618,620、ケーシング622等が樹脂から形成されていることにより、減速機600の軽量化と機械的強度との両立を図ることができる。
【0261】
入力軸612と、入力軸612に接して配置される偏心軸受630および入力軸軸受634とには減速前の高速回転が入力される。このため、これらの温度上昇は比較的大きく、これらの耐熱性が低いと、許容入力回転数が低くなる。このため、入力軸612と入力軸軸受634と偏心軸受630とは鉄系金属などの金属により構成されてもよい。この場合、許容入力回転数の低下を抑制することができる。なお、入力軸612には大きなねじれ応力が加わるため、キャリア618,620より剛性の高い材料により構成されることが望ましい。入力軸612は、アルミニウムよりねじり強度の高い鉄系金属により構成されてもよい。鉄系金属としては、所望の特性に応じて炭素鋼、軸受鋼、ステンレス鋼などを用いることができる。
【0262】
外歯歯車614への回転伝達を確保するため、キャリアピン(内ピン)638の剛性は高いことが望ましい。また、第1キャリア618と第2キャリア620との連結強度を確保するため、キャリアピン638の剛性は高いことが望ましい。これらの観点から、キャリアピン638およびボルト638aは金属により構成されてもよい。この例では、キャリアピン638は、鉄系金属により構成されることができる。
【0263】
以上のように構成された減速機600の動作を説明する。
駆動装置から入力軸612に回転動力が伝達されると、入力軸612の偏心部612aが入力軸612を通る回転中心となる中心軸線6La周りに回転し、その偏心部612aにより外歯歯車614が揺動する。このとき、外歯歯車614は、自らの軸芯が入力軸612の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車614が揺動すると、外歯歯車614と内歯歯車616の外ピン617の噛合位置が順次ずれる。この結果、入力軸612が一回転するごとに、外歯歯車614の歯数と内歯歯車616の外ピン617の数との差に相当する分、外歯歯車614および内歯歯車616の一方の自転が発生する。図14図15に示す本実施形態においては、外歯歯車614の自転により、第1キャリア618またはケーシング622から減速回転が出力される。
【0264】
このとき、主軸受624,626では、ピン溝616bからはみ出した外ピン617が、キャリア618,620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、周凹部646,647に対して転がりながら移動する。外ピン617の周面617cは、外周面649bに対して中心軸線6La方向の線状に接触している。
【0265】
図14図15に示す本実施形態の減速機600では、外ピン617が、内歯歯車616の内歯となる内歯ピンと、主軸受624,626のコロとを兼ねている。したがって、構成部品数を削減することができ、減速機600の小型化および軽量化を図ることができる。特に、外ピン617の外側に別部材として主軸受を設ける必要がないので、減速機600の厚さ方向寸法を減少させることができる。また、外ピン617は、減速機600の外周付近において厚さ方向の大半を覆うように並んでいるので、変形防止に起因する動作不良等に対して充分な強度を有することができる。
【0266】
図14図15に示す本実施形態の減速機600では、主軸受624,626として、外ピン617以外に樹脂よりも重い金属構成部材を有していないので、さらなる軽量化を図ることができる。また、一方を樹脂部材としたときに、他方をその樹脂部材より耐摩耗性と熱伝導率とが高い素材で構成することで、軽量化、高剛性化、高放熱化、動作確実性向上を図ることができる。
【0267】
図14図15に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0268】
以下、本発明に係る減速機の第10実施形態を、図面に基づいて説明する。
図16は、本実施形態の減速機を示す軸線方向に沿った断面図である。本実施形態において、上述した図14図15に示す第9実施形態と異なるのは、外ピンに関する点であり、これ以外の上述した図14図15に示す第9実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0269】
本実施形態の減速機600においては、図16に示すように、主軸受624,626における外ピン617には、その両端に拡径された拡径部(ブシュ)617fが形成される。拡径部617fは、ピン溝616bからはみ出た部分に形成される。ピン溝616bに収容されている部分の外ピン617は、上述した図14図15に示す第9実施形態と同等の構成とされる。
拡径部617fの径寸法は、ピン溝616bに収容されている部分の外ピン617の径寸法よりも大きい。拡径部617fの径寸法は、中心軸線6Laに沿った方向で、拡径部617fの全長にわたって等しい。また、外ピン617の両端に形成された拡径部617fはいずれも同じ形状とされる。
【0270】
拡径部617f外ピン617の端面617bは、拡径部の形成されていない場合と同じ軸線方向位置にあり、環状面649aとはわずかに離間しているか、たまに接触する。
拡径部617fにおける周面617cは、外周面649bに接触する。これにともなって、周凹部646,647においても、径方向の位置が中心軸線6Laに近づいている。同様に、環状面649aの径方向寸法も大きくなっている。
【0271】
周凹部646は、拡径部617fの断面形状に対応して、図14図15に示す第9実施形態に比べて、径方向に大きくなっている。
拡径部617fの周面617cは、キャリア618,620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、外周面649bに対して転がり接触して移動する。外ピン617の周面617cは、外周面649bに対して中心軸線6La方向の線状に接触した状態を維持する。
【0272】
ここで、図16に示す本実施形態の減速機600においては、拡径部617fの周面617cは、その径寸法が図14図15に示す第9実施形態における周面617cよりも大きい。したがって、外ピン617における回転数が同じである場合には、周面617cの周速は径寸法に比例して大きくなる。
前提として、外ピン617は、キャリア618,620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転にしたがって、内歯歯車616の内歯ピンとして外歯歯車614と接触する際に、一定の速度で回転している。
【0273】
この回転している周面617cが、周凹部646,647の外周面649bと接触することで、理想的な回転状態だと、周面617cと外周面649bとは転がり接触になる。しかし、外ピン617の周速が外周面649bの周速に対して異なり過ぎた場合には、周面617cと外周面649bとはすべり接触になってしまう。すべり接触は、転がり接触に比べて、摩耗具合増、発熱量増大、製品寿命短縮、騒音増大、故障率増、等の現象を引き起こす可能性があり、これを改善したいという要求がある。
【0274】
図16に示す本実施形態の減速機600では、上述したように拡径部617fを設けることで外ピン617を太くして、周面617cと外周面649bとがすべり接触となる状態を削減して、転がり接触の状態を維持することを可能としたものである。これにより、外ピン617の周速を調整可能とすることができる。
つまり、外ピン617に拡径部617fを設けることで、キャリア618,620からの摺動抵抗を受けにくくし、外歯歯車614との接触抵抗を主たる要因として外ピン617を回転させることができる。
【0275】
これにより、多数の外ピン617の回転数を揃えて、キャリア618,620とケーシング622との中心軸線6La周りの相対回転の動作安定性を向上することができる。
なお、キャリア618,620とケーシング622との径寸法、これらの中心軸線6La周りの相対回転状態等によって、好ましい外ピン617の回転数は異なる。
【0276】
このように、拡径部617fを形成して外ピン617を拡径して、外周面649bに接触する周面617cの周速を大きくすることで、外ピン617の回転数が同じでも、外ピン6178の周速を外周面649bの周速に近づける。これにより、キャリア618,620とケーシング622との相対回転数に容易に合わせることができる。したがって、多数の外ピン617の回転数を調節する効率を向上することができる。
【0277】
言い換えると、図16に示す本実施形態の減速機600では、ピン溝616bに接触する位置に比べて、拡径部(ブシュ)617fの周面617cにおける周速は速くなる。
外ピン617は、回っている速度が速い状態で外周面649bに接触しているので、外周面649bに当たる周面617cの周速が、理想的には全ての外ピン617で同一となることが好ましい。
【0278】
ここで、接触する相対速度が大きい方が、外ピン617における速度のバラツキに対する調整力、つまり、周速のバラツキ抑制は効果が高い。このため、拡径部617fを形成することで、多数の外ピン617の回転数を揃えて、全ての外ピン617の周速をおなじにすることができる。
したがって、多数の外ピン617における周速のバラツキを抑制することが可能となる。
【0279】
図16に示す本実施形態の減速機600では、外ピン617に径方向内側で噛み合っている外歯歯車(揺動歯車)614には影響を与えることなく、拡径部617fによって径寸法を太くして外周面649bに接触する位置の周速を上げることができる。これにより、多数の外ピン617における回転数を容易に揃えることができるという効果を奏することができる。
【0280】
図16に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0281】
なお、図16に示す本実施形態においては、外ピン617の両端に拡径部617fを形成したが、片方のみに拡径部617fを形成することもできる。
【0282】
以下、本発明に係る減速機の第11実施形態を、図面に基づいて説明する。
図17は、本実施形態の減速機を示す軸線方向に沿った断面図である。本実施形態において、上述した図16に示す第10実施形態と異なるのは、キャリアの分割に関する点であり、これ以外の上述した図14図15に示す第9実施形態、および、図16に示す第10実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0283】
本実施形態の減速機600においては、図17に示すように、第1キャリア(シャフトフランジ)618が、中心軸線6La方向で2枚に分割されている。ここで、分割面は、図17に破線で示すように、中心軸線6Laを法線とし、環状面649aと一致することができる。
ここで、第1キャリア(シャフトフランジ)618は、減速機600の内部空間を囲む側の内シャフトフランジ618aと、減速機600の外側に面する側の外シャフトフランジ618bと、に分割される。
【0284】
内シャフトフランジ618aは、減速機600の内部空間を囲む側に位置する。内シャフトフランジ618aは、周囲が外周面649bと一致する。内シャフトフランジ618aは、厚さが外周面649bの軸線方向寸法と等しく設定される。
外シャフトフランジ618bは、減速機600の外側に面する側に位置する。外シャフトフランジ618bは、周縁の一部が環状面649aと一致する。
第1キャリア(シャフトフランジ)618は、内シャフトフランジ618aと外シャフトフランジ618bとが、中心軸線6Laに沿った方向に重ねられた構成とされる。
【0285】
同様に、本実施形態の減速機600では、図17に示すように、第2キャリア(ホールドフランジ)620が、中心軸線6La方向で2枚に分割することもできる。この場合、分割面は、図17に破線で示すように、中心軸線6Laを法線とし、環状面649aと一致することができる。
ここで、第2キャリア(ホールドフランジ)620は、減速機600の内部空間を囲む側の内ホールドフランジ620aと、減速機600の外側に面する側の外ホールドフランジ620bと、に分割される。
【0286】
内ホールドフランジ620aは、減速機600の内部空間を囲む側に位置する。内ホールドフランジ620aは、周囲が外周面649bと一致する。内ホールドフランジ620aは、厚さが外周面649bの軸線方向寸法と等しく設定される。
外ホールドフランジ620bは、減速機600の外側に面する側に位置する。外ホールドフランジ620bは、周縁の一部が環状面649aと一致する。
第2キャリア(ホールドフランジ)620は、内ホールドフランジ620aと外ホールドフランジ620bとが中心軸線6Laに沿った方向に重ねられた構成とされる。
【0287】
内シャフトフランジ618aと外シャフトフランジ618b、および、内ホールドフランジ620aと外ホールドフランジ620bの4枚は、いずれもボルト638aによってキャリアピン(内ピン)638に連結されて、互いに固定される。
【0288】
この構成では、減速機600を組み立てる際に、まず、ケーシング622に入力軸612およびその周りの部材、外ピン617、および、外歯歯車614等を収容する。
この状態で、内シャフトフランジ618aと内ホールドフランジ620aとの2枚を、複数の外ピン617の拡径部617fに接するように組み込む。
【0289】
さらに、キャリアピン孔639にキャリアピン638を組み入れ、外シャフトフランジ618bと外ホールドフランジ620bとの2枚を、外ピン617の端面617bに接するか近接する位置とし、これら4枚をボルト638aによってキャリアピン(内ピン)638と連結する。
【0290】
これにより、減速機600を組み立てる際に、外ピン617に拡径部(ブシュ)617fが形成されている影響を受けずに、組み立て時間を短縮し、効率性を向上することができる。
また、内シャフトフランジ618aと内ホールドフランジ620aとの外周輪郭を加工するだけで外ピン617が接する外周面649bを形成することになり、加工の容易性が向上する。
なおキャリアピン638を第1キャリア(シャフトフランジ)618と一体に形成する場合には、内シャフトフランジ618aと一体に形成することができる。
【0291】
図17に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0292】
なお、図17に示す本実施形態においては、図14図15に示す第9実施形態のように、外ピン617に拡径部617fを設けない構成とすることもできる。
【0293】
以下、本発明に係る減速機の第12実施形態を、図面に基づいて説明する。
図18は、本実施形態の減速機を示す軸線方向に沿った断面図である。本実施形態において、上述した図14図17に示す第9~第11実施形態と異なるのは、主軸受に関する点であり、これ以外の上述した図14図17に示す第9~第11実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0294】
本実施形態の減速機600においては、図18に示すように、外ピン617の一端となる位置には、主軸受624としてクロスローラ軸受が設けられる。外ピン617の他端は、図14図17に示す第9~第11実施形態と同様に、主軸受626と兼用される。
主軸受626においては、外周面となるピン溝616bは、外ピン617における中心軸線6Laに沿った全長を覆っている。ピン溝616bは、外歯歯車614の径方向外側位置から第2キャリア620の径方向外側位置まで延びている。
【0295】
したがって、内歯歯車616が一体的に形成されるケーシング622もピン溝616bと同様に、第2キャリア620の径方向外側位置まで延びている。
このように、内歯歯車616における内歯を構成する外ピン617およびピン溝616bが、主軸受626の内周面648と一体的に形成されたと見なせる。
【0296】
主軸受624は、ケーシング622と一体に回転する外輪624aと、第1キャリア618と一体に回転する内輪624bと、転動体であるローラ624cとを有する。外輪624aと内輪624bとの対向面には互いに対向する断面V字状のV溝が形成される。外輪624aと内輪624bとV溝の間には、軸線を直交して交互に配置された複数のローラ624cを挟む。
【0297】
クロスローラ軸受とされた主軸受624は、中心軸線6Laに沿った方向で外ピン617の出力側に隣接している。外ピン617の出力側となる端部には、外輪624aが隣接している。内輪624bは、中心軸線6Laに沿った方向で、出力側に位置する外歯歯車614に対して離間して配置される。
クロスローラ軸受とされた主軸受624は、金属から構成されることが好ましい。
【0298】
外輪624aは、ケーシング622に形成された凹部に取り付けられる。図18に示す本実施形態ではケーシング622には、固定部材または出力部材となる部材650がボルト650aによって取り付けられ、この取り付け部分に主軸受624の外輪628aが挟まれている。
つまり、ケーシング622およびケーシング622と一体の部材650が、主軸受624の外輪624aを覆っている。主軸受624の内輪624bは、第1キャリア618の径方向外側に取り付けられている。
【0299】
図18に示す本実施形態の減速機600においては、キャリアピン638が出力側の端部にフランジ部638bを有する。キャリアピン638は、出力側の端部が第1キャリア618の孔部618dに貫通される。キャリアピン638は、出力側の端部がフランジ部638bにより第1キャリア618に固定される。
キャリアピン638は、入力側の端部が第2キャリア620の孔部620dに嵌め込まれる。キャリアピン638は、入力側の端部に雄ネジ部638eが形成されて、ナット638dにより第2キャリア620に固定される。キャリアピン638は、管状の内ローラ637に環状に囲まれている。
キャリアピン(内ピン)638は、外歯歯車614に貫通形成されたキャリアピン孔(内ピン孔)639に隙間を有した状態で挿入し貫通される。
【0300】
図18に示す本実施形態においては、入力軸軸受634が、入力軸612の出力側の端部を支持する。ここで、入力軸612の入力側が、図示しないモータ軸等が接続されるとともに、モータ軸等の軸受で、入力軸612の入力側を支える構成とすることができる。このため、入力軸612の入力側には、軸受を図示していない。
【0301】
図18に示す本実施形態においては、出力側の主軸受624がクロスローラ軸受とされることで、転がり接触によって抵抗を少なくして、キャリア618,620とケーシング622との相対回転を安定させることができる。特に、回転時における、スラスト方向のキャリア618,620とケーシング622との位置安定性を向上する。
【0302】
図18に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0303】
以下、本発明に係る減速機の第13実施形態を、図面に基づいて説明する。
図19は、本実施形態の減速機を示す軸線方向に沿った断面図である。本実施形態において、上述した図18に示す第12実施形態と異なるのは、主軸受に関する点であり、これ以外の上述した図18に示す第12実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0304】
本実施形態の減速機600においては、図19に示すように、外ピン617の入力側端部は、図18に示す第12実施形態と同様に、主軸受626と兼用されている。
主軸受626においては、外周面648となるピン溝616bは、外ピン617における中心軸線6Laに沿った全長を覆っていない。つまり、ピン溝616bは、外歯歯車614の径方向外側に位置して、第2キャリア620の径方向外側には設けられていない。
【0305】
ケーシング622は、ピン溝616bと同様に、外歯歯車614の径方向外側位置を覆っている。ケーシング622は、第2キャリア620の径方向外側位置には延びていない。ケーシング622は、中心軸線6Laに近接する内周側位置で、入力側の端面622aが第2キャリア620の出力側端面と面一となってもよい。このため、外ピン617は第2キャリア620の径方向外側位置では、ピン溝616bと接していない。
【0306】
図19に示す本実施形態の減速機600においては、ケーシング622が第2キャリア620の径方向外側には設けられていないことにより、さらに、軽量化することができる。
図19に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0307】
以下、本発明に係る減速機の第14実施形態を、図面に基づいて説明する。
図20は、本実施形態の減速機を示す軸線方向に沿った断面図である。本実施形態において、上述した図18図19に示す第12および第13実施形態と異なるのは、主軸受に関する点であり、これ以外の上述した図18図19に示す第12および第13実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0308】
本実施形態の減速機600においては、図20に示すように、外ピン617の入力側端部が、上述した図19に示す第13実施形態と同様に主軸受626と兼用されており、外周面648となるピン溝616bによって覆われていない。また、外ピン617の入力側端部には、上述した図16に示す第10実施形態と同様に、拡径部617fが設けられている。
【0309】
主軸受626の外ピン617においては、入力側でピン溝616bに接していない部分に拡径部617fが設けられる。外ピン617には、ケーシング622の端面622aよりも軸線方向で入力側となる部分に、拡径部617fが設けられる。
拡径部617fは、外ピン617におけるピン溝616bから露出している部分に設けられる。拡径部617fは、中心軸線6La方向において、端面622aと環状面649aとによって挟まれている。拡径部617fは、中心軸線6La方向において、第2キャリア620の径方向外側位置となる部分が、周凹部647よりも外側に露出している。
【0310】
これにより、減速機600の出力側においては、クロスローラ軸受である主軸受624によってスラスト方向の位置設定を安定させるとともに、金属からなる主軸受624によってケーシング622とキャリア618,620との回転動作安定性を確保する。
同時に、減速機600の入力側において、拡径部617fは、中心軸線6La方向で出力側が端面622aによって位置規制され、中心軸線6La方向で出力側が環状面649aによって位置規制されている。これにより、中心軸線6La方向におけるケーシング622とキャリア618,620との位置規制をおこなうことができる。
したがって、減速機の600の動作安定性を向上することができる。
【0311】
図20に示す本実施形態においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0312】
本発明においては、上述した各実施形態における個々の構成を、個別に組み合わせること、あるいは、特定の構成を個別に採用せず組み合わせないこともできる。
【0313】
また、PAEK(Polyaryletherketones:ポリアリールエーテルケトン)類は、PEK(ポリエーテルケトン)やPEKK(ポリエーテルケトンケトン)、PEKKEK(ポリエーテルケトンケトンエーテルケトン)等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0314】
本発明の活用例として、サービスロボットや協働作業ロボット、パワーアシスト装具など、物理的距離が人間に近い機器が挙げることができ、軽量性による本質安全との効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0315】
100,200,300,400,500,600…減速機
1La,2La,3La,4La,5La、6La…中心軸線(主軸線)
112,212,312,512,612…入力軸(偏心体)
112a,212a,312a,410a,410b,503,612a…偏心部
114,214,314,414,416,514,614…外歯歯車
116,216,316,417A,516,616…内歯歯車
116b,216b,316b,422b,516b,616b…ピン溝
117,217,317,417,517,617…外ピン(内歯ピン)
118,218,318,404a,518,618…第1キャリア(シャフトフランジ)
120,220,320,404b,520,620…第2キャリア(ホールドフランジ)
122,222,322,422,522,622…ケーシング
124,224,324,424,524,624…主軸受
126,226,326,426,526,626…主軸受
148,248,348,448,548…内周すべり面
149,249,349,449,549…外周すべり面
221…第1カバー
223…第2カバー
144,145,244,245,444,445,544,545…金属リング
348a,348b…突条
360…溝
361…径溝(溝)
362,363…周溝(溝)
404,519…キャリア
408…入力軸
410…クランク軸(偏心体)
617b…端面
617c…周面
617f…拡径部
646,647…周凹部
648…内周面
649a…環状面
649b…外周面
624a…外輪
624b…内輪
624c…ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2024-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する金属リングの内周に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングおよび前記キャリアが樹脂により構成されるとともに、
前記金属リングと前記外ピンとが、前記主軸線に沿った方向において重なる位置に配置される、
減速機。
【請求項2】
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面の少なくとも一方が、前記主軸線に沿った方向で前記主軸線に対する径寸法を増大または減少するように傾斜している、
減速機。
【請求項3】
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成される、
請求項記載の減速機。
【請求項4】
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成される
請求項2または請求項3に記載の減速機。
【請求項5】
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングが金属により構成されるとともに、前記キャリアが樹脂により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面が、前記主軸線に沿って前記外歯歯車から離間する方向で前記主軸線に対する径寸法を増大するように傾斜しており、
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成され、
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成される、
減速機。
【請求項6】
第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する偏心揺動型の減速機であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有するとともに外歯を有する外歯歯車と、
前記第1の部材および前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成されるケーシングと、
前記第1の部材および前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成されるキャリアと、 前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を備え、
前記ケーシングは、前記外歯歯車の前記外歯と噛み合う内歯を有しており、
前記キャリアは、前記外歯歯車を保持した状態で前記ケーシングの径方向内側に配置され、
前記ケーシングと前記キャリアとは、前記偏心部の回転に伴う前記外歯歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項7】
2つ以上の偏心体と、各偏心体にそれぞれ対応する外歯歯車と、を有する偏心揺動型の減速機であって、
前記外歯歯車と噛合う内歯歯車が内周に設けられたケーシングと、
前記ケーシングと相対回転するとともに前記偏心体と相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項8】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記主軸受における、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項9】
前記外ピンの端部には、拡径された拡径部が形成される、
請求項記載の減速機。
【請求項10】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる一方の主軸受と、
互いに対向する断面V字状のV溝が形成され前記V溝の間には軸線を直交して配置された複数のローラを挟むクロスローラ軸受として構成された他方の主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される、
減速機。
【請求項11】
主軸線の周りを囲むケーシング
および前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンの一端を挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面が樹脂により構成され、前記外ピンが金属により構成され、
前記外ピンの端部には、拡径された拡径部が形成される、
減速機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
発明の一態様に係る減速機は、上記において、
前記主軸受において、少なくとも、前記内周すべり面が前記ケーシングの内周面に形成されるか、前記外周すべり面が前記キャリアの外周面に形成されることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
発明の一態様に係る減速機は、上記において、
前記キャリアが樹脂により構成され、前記外周すべり面が前記キャリアの外周面に形成されることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
発明の一態様に係る減速機は、上記において、
前記内周すべり面が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成され、
前記内周すべり面が前記主軸線に沿った方向において、前記外ピンと重なる位置に配置されることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
(1)本発明の一態様に係る減速機は、(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する金属リングの内周に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングおよび前記キャリアが樹脂により構成されるとともに、
前記金属リングと前記外ピンとが、前記主軸線に沿った方向において重なる位置に配置される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
(2)本発明の一態様に係る減速機は、
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面の少なくとも一方が、前記主軸線に沿った方向で前記主軸線に対する径寸法を増大または減少するように傾斜している。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
(3)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(2)において、
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成されることができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(4)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(2)または(3)において、
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成されることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
(5)本発明の一態様に係る減速機は、
主軸線の周りを囲むケーシングの内周に設けられた内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記ケーシングが金属により構成されるとともに、前記キャリアが樹脂により構成され、
前記主軸受において、前記すべり面が、前記主軸線に沿って前記外歯歯車から離間する方向で前記主軸線に対する径寸法を増大するように傾斜しており、
前記主軸受において、前記すべり面には、潰し代となる凸部が形成され、
前記主軸受において、前記すべり面には、前記外歯歯車の収容される内部空間に連通しない溝が形成される。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
(6)本発明の一態様に係る減速機は、
第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する偏心揺動型の減速機であって、
偏心部と、
前記偏心部が挿入される挿通孔を有するとともに外歯を有する外歯歯車と、
前記第1の部材および前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成されるケーシングと、
前記第1の部材および前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成されるキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周すべり面および前記キャリアと一体的に回転する外周すべり面を有する主軸受と、
を備え、
前記ケーシングは、前記外歯歯車の前記外歯と噛み合う内歯を有しており、
前記キャリアは、前記外歯歯車を保持した状態で前記ケーシングの径方向内側に配置され、
前記ケーシングと前記キャリアとは、前記偏心部の回転に伴う前記外歯歯車の揺動によって同心状に互いに相対的に回転可能であり、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
(7)本発明の一態様に係る減速機は、
2つ以上の偏心体と、各偏心体にそれぞれ対応する外歯歯車と、を有する偏心揺動型の減速機であって、
前記外歯歯車と噛合う内歯歯車が内周に設けられたケーシングと、
前記ケーシングと相対回転するとともに前記偏心体と相対回転するキャリアと、
前記ケーシングの内周面に形成された内周すべり面および前記キャリアの外周面に形成された外周すべり面を有する主軸受と、
を有し、
前記主軸受におけるすべり面のうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
(8)本発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
(9)本発明の一態様に係る減速機は、上記の(8)において、
前記外ピンの端部(一端および/または他端)には、拡径された拡径部が形成されることができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
(10)本発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる一方の主軸受と、
互いに対向する断面V字状のV溝が形成され前記V溝の間には軸線を直交して配置された複数のローラを挟むクロスローラ軸受として構成された他方の主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面と前記外ピンとのうち、一方が樹脂により構成され、他方が樹脂よりも耐摩耗性が高い熱伝導材料により構成される。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
(11)本発明の一態様に係る減速機は、
(内歯歯車本体となるとともに)主軸線の周りを囲むケーシングおよび前記ケーシングの内周に設けられたピン溝に回転可能に配置された複数の外ピンを有する内歯歯車と、
前記内歯歯車と噛合う外歯歯車と、
前記外歯歯車を揺動させる偏心体と、
前記ケーシングと相対回転するキャリアと、
前記ケーシングと一体的に回転する内周面および前記キャリアと一体的に回転する外周面の間に前記外ピンを挟む配置とされる主軸受と、
を有し、
前記内周面および前記外周面が樹脂により構成され、前記外ピンが金属により構成され、
前記外ピンの端部には、拡径された拡径部が形成される。