(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169629
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】長尺医療器具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241128BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61M25/00 610
A61M25/09 510
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165203
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2022569672の分割
【原出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広明
(72)【発明者】
【氏名】各務 直樹
(57)【要約】
【課題】視認性を向上させることが可能な長尺医療器具の提供を目的とする。
【解決手段】長尺医療器具1は、円筒状に形成され、接着性官能基を有するフッ素樹脂(接着性樹脂111)と第1の着色料112とを含む第1層11と、第1層11の外周面上に接するように配置され、第1の着色料112の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料212により形成された所定の着色領域Rを有する第2層21と、を備え、所定の着色領域Rは、第1層11の外周面上の一部に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成され、接着性官能基を有するフッ素樹脂と第1の着色料とを含む第1層と、
前記第1層の外周面上に接するように配置され、前記第1の着色料の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料により形成された所定の着色領域を有する第2層と、を備え、
前記所定の着色領域は、前記第1層の外周面上の一部に形成されている長尺医療器具。
【請求項2】
前記所定の着色領域は、前記接着性官能基を有するフッ素樹脂とは異なる透明な樹脂中に配設されている請求項1に記載の長尺医療器具。
【請求項3】
前記透明な樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ナイロン、およびウレタンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項2に記載の長尺医療器具。
【請求項4】
前記第1層の内周面上に接するように配置された金属製のコアワイヤを更に備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の長尺医療器具。
【請求項5】
円筒状かつ前記第1層の内周面上に接するように配置された接着性を有する中間層と、
前記中間層の内周面上に接するように配置された金属製のコアワイヤと、を更に備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の長尺医療器具。
【請求項6】
略円筒形状かつ前記第1層の内周面上に接するように配置された金属層を更に備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の長尺医療器具。
【請求項7】
円筒状かつ径方向の最も内側に配置された摺動層を更に備えている請求項1から請求項3、および請求項6のいずれか1項に記載の長尺医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガイドワイヤなどの医療用具においては、共に挿入する内視鏡からの血管内での視認性等を高めるため、視認マーカを有するものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記技術を用いた医療用具においては、例えば、血管内に挿入された医療用具の位置を特定する場合、最外層の特定部位に着色領域を設けてこの着色領域を手がかりとしてその位置を特定することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、視認性を向上させることが可能な長尺医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のいくつかの態様は、
(1)円筒状に形成され、接着性官能基を有するフッ素樹脂と第1の着色料とを含む第1層と、
前記第1層の外周面上に接するように配置され、前記第1の着色料の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料により形成された所定の着色領域を有する第2層と、を備え、
前記所定の着色領域は、前記第1層の外周面上の一部に形成されている長尺医療器具、
(2)前記所定の着色領域は、前記接着性官能基を有するフッ素樹脂とは異なる透明な樹脂中に配設されている前記(1)に記載の長尺医療器具、
(3)前記透明な樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ナイロン、およびウレタンからなる群より選ばれた少なくとも1種である前記(2)に記載の長尺医療器具、
(4)前記第1層の内周面上に接するように配置された金属製のコアワイヤを更に備えている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の長尺医療器具、
(5)円筒状かつ前記第1層の内周面上に接するように配置された接着性を有する中間層と、
前記中間層の内周面上に接するように配置された金属製のコアワイヤと、を更に備えている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の長尺医療器具、
(6)略円筒形状かつ前記第1層の内周面上に接するように配置された金属層を更に備えている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の長尺医療器具、並びに、
(7)円筒状かつ径方向の最も内側に配置された摺動層を更に備えている前記(1)から(3)、および前記(6)のいずれか1項に記載の長尺医療器具、である。
【0007】
なお、本明細書において、「接着性官能基を有するフッ素樹脂」とは、隣接する樹脂や金属などの材料との接着に関与し得る官能基(接着性官能基)を有するフッ素樹脂を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、視認性の向上させることが可能な長尺医療器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態を示す概略的縦断面図である。
【
図2A】
図1のIIA-IIA線で切断した概略的横断面図である。
【
図2B】
図1のIIB-IIB線で切断した概略的横断面図である。
【
図3A】第2の実施形態を示す図であって、着色領域が形成された部位の概略的横断面図である。
【
図3B】第2の実施形態を示す図であって、着色領域が形成されていない部位の概略的横断面図である。
【
図4】第3の実施形態を示す概略的縦断面図である。
【
図5】第4の実施形態を示す概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1~第4の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示した長尺医療器具の寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。また、各図面において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(近位側、手元側)である。
【0011】
[第1の実施形態]
特許文献1には、芯線と芯線の外層にフッ素樹脂を有するガイドワイヤが記載されている。このような構造のガイドワイヤでは、芯線が金属で形成されている場合、外層のフッ素樹脂との接着性が悪くなるため、芯線とフッ素樹脂との間に下地となるバインダー層を設けることが必要となる。バインダー層をポリアミドイミド等の樹脂により構成した場合、ポリアミドイミドの色彩が血管などの身体組織の色彩に近いため、下地となるバインダー層の色彩と身体組織の色彩とが同化してしまう傾向にある。そのため、バインダー層の外周に色下地層を設け、色下地層の外周に視認マーカとなる着色層を設けることが必要となりガイドワイヤの外径が増大することとなる。
【0012】
本開示の長尺医療器具は、円筒状に形成され、接着性官能基を有するフッ素樹脂(以下、「接着性樹脂」ともいう)と第1の着色料とを含む第1層と、上記第1層の外周面上に接するように配置され、上記第1の着色料の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料により形成された所定の着色領域を有する第2層と、を備え、上記所定の着色領域は、上記第1層の外周面上の一部に形成されている。
【0013】
本開示の長尺医療器具の構成により、上述したバインダー層と色下地層とを、一つの層(第1の着色料を含む第1層)で構成することができ、例えば、ガイドワイヤの外径の増大を抑制しつつ視認性を向上することができる。
【0014】
図1および
図2は、第1の実施形態を示す概略図である。長尺医療器具1は、
図1、
図2A、
図2Bに示すように、概略的に、コアワイヤ31と、第1層11と、第2層21とにより構成されている。第1の実施形態では、長尺医療器具1としてガイドワイヤ100が例示されている。
【0015】
コアワイヤ31は、長尺医療器具1の芯材となる金属製の部材である。コアワイヤ31は、第1層11の内周面上に接するように配置されている。コアワイヤ31は、具体的には、例えば、1本の中実の金属材料で形成された長手形状のワイヤで構成することができる。
【0016】
コアワイヤ31を構成する材料としては、ガイドワイヤ100の柔軟性を向上すると共に、抗血栓性および生体適合性を付与する観点から、例えば、SUS304などのステンレス鋼、Ni-Ti合金などの超弾性合金等を採用することができる。
【0017】
コアワイヤ31の寸法としては、例えば、全長が1,800~3,000mm、外径が0.03mm~0.46mmである。
【0018】
第1層11は、円筒状に形成され、接着性官能基を有するフッ素樹脂(接着性樹脂111)と、第1の着色料112とを含む層である。接着性樹脂111は、可視光に対して透明な樹脂である。このため、この樹脂を通して、内包する部材(第1の着色料112など)や裏面側に位置する部材の色、形状等を視認することができる。
【0019】
接着性樹脂111を構成する重合体は、フッ素含有エチレン性単量体などのフッ素含有単量体単位を有している。
【0020】
フッ素含有エチレン性単量体の具体例としては、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類、下記式(1)で表される単量体等が挙げられる。
CH2=CX1(CF2)nX2 ・・・(1)
【0021】
上記式(1)中、X1は、水素原子またはフッ素原子、X2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子、nは、1~10の整数をそれぞれ表す。
【0022】
接着性樹脂111を構成する重合体は、フッ素非含有エチレン性単量体などのフッ素非含有単量体単位を有していてもよい。
【0023】
フッ素非含有エチレン性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0024】
接着性樹脂111を構成する重合体としては、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であることが好ましい。これにより、接着性官能基を有するフッ素樹脂(接着性樹脂111)全体としての接着性をより高めることができる。テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体は、融点が高く、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との相溶性が良好であり、機械的物性も高い。
【0025】
接着性樹脂111における接着性官能基としては、例えば、隣接する樹脂や金属などの材料が有する極性官能基と反応し得るか、または水素結合等の分子間相互作用をし得るものであれば特に限定されない。上記接着性官能基は、上記フッ素樹脂における主鎖末端および側鎖のうちの少なくともいずれかにあればよい。接着性官能基は、カルボニル基を有していることが好ましい。
【0026】
上記カルボニル基を有する接着性官能基としては、例えば、カルボニル基、カーボネート基、ハロゲノホルミル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニルオキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基等が挙げられる。
【0027】
上記ハロゲノホルミル基を構成するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0028】
これらの中では、隣接する材料との反応性(接着性)向上の観点等から、上記接着性官能基は、カーボネート基および/またはハロゲノホルミル基であることが好ましい。
【0029】
接着性樹脂111の製造方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。上記製造方法としては、例えば、フッ素含有エチレン性単量体と、接着性官能基含有エチレン性単量体と、必要に応じてフッ素非含有エチレン性単量体とを所定の割合で配合し、これらを公知の方法で共重合させる方法等が挙げられる。
【0030】
なお、第1層11は、接着性官能基を有するフッ素樹脂(接着性樹脂111)を含んでいるので、上記接着性官能基とコアワイヤ31を構成する材料との反応性(例えば、金属製のコアワイヤ31表面に存在するカルボキシ基または水酸基等の極性基との反応性)に優れ、第1層11とコアワイヤ31とを強力に接着することができる。
【0031】
第1の着色料112は、第1層11に色彩を付与する。第1の着色料111を構成する材料としては、例えば、無機顔料、有機顔料などの顔料等が挙げられる。これらの中では、耐熱性が高く変色し難い等の観点から、無機顔料であることが好ましい。なお、上記材料は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、雲母、二酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、プルシアンブルー、ミロリーブルー、コバルトブルー、ウルトラマリン、ヴィリジアン等が挙げられる。
【0033】
上記顔料の平均粒径としては、特に限定されないが、0.02μm~5μmが好ましく、0.1μm~1.0μmがより好ましい。上記顔料の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、第1層11全体に対し、20質量%~50質量%が好ましく、30質量%~40質量%がより好ましい。
【0034】
第2層21は、第1層11の外周面上に接するように配置され、第2の着色料212により形成された所定の着色領域Rを有する層である。所定の着色領域Rは、第1層11の外周面上の一部に形成されている。
【0035】
第2層21は、例えば、
図1、
図2A、
図2Bに示すように、上述した接着性官能基を有するフッ素樹脂(接着性樹脂111)とは異なる透明な樹脂211を有し、上述した所定の着色領域Rが透明な樹脂211中に配設されていてもよい。これにより、第1の着色料112、および後述する第2の着色料212の色彩を確実に認識することができると共に、所定の着色領域Rが第1層11から剥離するのを防止することができる。
【0036】
第2の着色料212は、第2層21に色彩を付与する。第2の着色料212は、第1の着色料112の色彩とは異なる色彩を有している。
【0037】
第2の着色料212を構成する材料としては、例えば、第1の着色料112を構成する材料として例示したものと同様の着色料等が挙げられる。
【0038】
透明な樹脂211は、上述した接着性樹脂111とは異なる樹脂であって、可視光に対して透明(当該樹脂211を通して第1の着色料112や第2の着色料212の色彩が判別可能な状態)な樹脂である。
【0039】
透明な樹脂211としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ナイロン、およびウレタンからなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。これにより、第2層21外周面の摺動性を高めることができ、例えば、長尺医療器具1を体腔内に挿入したときに、円滑に操作を行うことができる。
【0040】
なお、上述した第1層11は、接着性官能基を有するフッ素樹脂(接着性樹脂111)を含んでいるので、上記接着性官能基と第2層21を構成する第2の着色料212や透明な樹脂211との反応性(例えば、第2層21の表面に存在するカルボキシ基または水酸基等の極性基との反応性)に優れ、第1層11と第2層21とを強力に接着することができる。
【0041】
次に、当該ガイドワイヤ100の使用態様について説明する。ここでは、当該ガイドワイヤ100を用いてその先端部を体腔の閉塞部位に穿通する手技について説明する。
【0042】
まず、ガイドワイヤ100をその先端から体腔に挿入し、体外に露出しているガイドワイヤ100の部位を操作しながらその先端を閉塞部位まで押し進める。また、ガイドワイヤ100と共に内視鏡(不図示)を閉塞部位近傍まで挿入し、ガイドワイヤ100の状況(例えば、ガイドワイヤ100の先端部と閉塞部位との位置関係など)を観察する。
【0043】
この際、ガイドワイヤ100に形成された第2層21が、第1の着色料112の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料212により形成された所定の着色領域Rを有するため、上記内視鏡を用いて所定の着色領域Rが鮮明に視認される。例えば、ガイドワイヤ100を閉塞部位に穿刺する際、上記着色領域Rの位置を観察することで、閉塞部位へのガイドワイヤ100の進入度合い等が確実に把握される。
【0044】
なお、当該ガイドワイヤ100を用いて閉塞部位に穿通した後、ガイドワイヤ100にバルーンカテーテルやステント(不図示)などの医療デバイスを介装し、上記医療デバイスをガイドワイヤ100に沿って穿通後の閉塞部位まで搬送することで各種の処置を施してもよい。上記処置が完了した後、ガイドワイヤ100や内視鏡等を体外に抜去することで一連の手技が完了する。
【0045】
以上のように、当該長尺医療器具1は、上記構成であるので、下地となる第1層11とは色彩が異なる所定の着色領域Rを有する第2層21を、第1層11上に確実に設けることができる。その結果、所定の着色領域Rを手がかりとして長尺医療器具1の位置を確実に特定することができる。また、当該長尺医療器具1がコアワイヤ31を更に備えることで、ガイドワイヤとして好適に用いることができる。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、コアワイヤと接着性樹脂を含む第1層との接着性をより強めることを更なる目的とする。
【0047】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ第2の実施形態を示す概略的横断面図である。
図3Aは
図1のIIA-IIA線で切断した部位に相当し、
図3Bは
図1のIIB-IIB線で切断した部位に相当する。長尺医療器具2は、
図3A、
図3Bに示すように、概略的に、コアワイヤ32と、中間層42と、第1層11と、第2層21とにより構成されている。第2の実施形態では、長尺医療器具2としてガイドワイヤ200が例示されている。ガイドワイヤ200は、コアワイヤ32および中間層42を備えている点で、第1の実施形態と異なっている。なお、第1層11および第2層21の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、以下に示すガイドワイヤ2の構成以外の構成、およびガイドワイヤ200の使用態様は第1の実施形態と同様である。
【0048】
コアワイヤ32は、長尺医療器具2の芯材となる金属製の部材である。コアワイヤ32は、後述する中間層42の内周面上に接するように配置されている。
【0049】
中間層42は、円筒状かつ第1層11の内周面上に接するように配置された接着性を有する層である。中間層42は、具体的には、例えば、第1層11とコアワイヤ32との間に配置され、ガイドワイヤ200の長軸方向全体に亘って第1層11の内周面とコアワイヤ32の外周面とに接するように形成されている。中間層42は、例えば、ガイドワイヤ200の長軸方向全体に亘って均一な厚みを有するように構成することができる。
【0050】
中間層42を構成する材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレンケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエートルイミド、ポリイミドスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、ポリエステル、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂などのフッ素非含有の樹脂等が挙げられる。
【0051】
これらの中では、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォンが好ましい。これにより、中間層42を介して第1層11とコアワイヤ32とを強力に接着することができる。なお、上記材料は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、中間層42には、上記材料以外の材料を含有してもよい。
【0052】
以上のように、当該ガイドワイヤ200は、接着性を有する中間層42を備えているので、中間層42を介して第1層11とコアワイヤ32とを確実に接着することができる。
【0053】
第2の実施形態では、第1層11は第1の着色料112と接着性樹脂を含むため、コアワイヤ32との接着性が高い樹脂を含有する中間層42を設けた場合であっても、ガイドワイヤ200の視認性を向上させることができ、更にコアワイヤ32と中間層42および第1層11との間の接着性を向上させることができる。また、中間層42にフッ素樹脂を混入させる必要が無く、中間層42を相対的に薄くすることが可能となる。
【0054】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、例えば、カテーテルでの視認性の向上を目的とする。また、カテーテルでは周方向での圧壊を防止するため、中空形状の金属層を有する。かかる金属層と金属層を被覆する樹脂層との接着性を向上させることを更なる目的とする。
【0055】
図4は、第3の実施形態を示す概略的縦断面図である。長尺医療器具3は、
図4に示すように、概略的に、金属層53と、第1層11と、第2層21とにより構成されている。第3の実施形態では、長尺医療器具3としてダイレータ300(カテーテル)が例示されている。長尺医療器具3は、コアワイヤに代えて中空形状の金属層53を備えている点で、第1の実施形態と異なっている。なお、第1層11および第2層21の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0056】
金属層53は、略円筒形状かつ第1層11の内周面上に接するように配置された金属製の部位である。金属層53は、具体的には、例えば、内腔300hを有する中空形状のシャフトとして構成することができる。
【0057】
金属層53を構成する金属としては、例えば、SUS304,SUS316などのステンレス鋼;超弾性合金(ニッケル-チタン合金)などの金属材料等が挙げられる。
【0058】
なお、第1の実施形態と同様に、第1層11は、接着性官能基を有するフッ素樹脂(接着性樹脂111)を含んでいるので、上記接着性官能基と金属層53を構成する材料との反応性(例えば、金属層53の表面に存在するカルボキシ基または水酸基等の極性基との反応性)に優れ、第1層11と金属層53とを強力に接着することができる。
【0059】
次に、当該長尺医療器具3の使用態様の一例について説明する。ここでは、長尺医療器具3がダイレータ300(カテーテル)であり、例えば、胆管などの体腔に形成された狭窄部位を拡張する手技について説明する。
【0060】
まず、ガイドワイヤ(不図示)を体腔に挿入して狭窄部位の内側空間まで押し進める。また、ガイドワイヤと共に内視鏡(不図示)を治療部位近傍まで挿入しておく。次いで、ガイドワイヤの基端をダイレータ300の先端側からその中空シャフト内腔300hに差し入れ、中空シャフトの拡張部300aを狭窄部位まで押し進める。
【0061】
この際、ダイレータ300に形成された第2層21が、第1の着色料112の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料212により形成された所定の着色領域Rを有するため、上記内視鏡を用いて所定の着色領域Rが鮮明に視認される。例えば、ダイレータ300の拡張部300aで狭窄部位を拡張する際、拡張部300aにおける着色領域Rの位置を観察することで、狭窄部位へのダイレータ拡張部300aの進入度合いが確実に把握される。
【0062】
なお、ダイレータ300を用いて狭窄部位の拡張が完了した後、ガイドワイヤやダイレータ300を体外に抜去することで一連の手技が完了する。
【0063】
以上のように、当該長尺医療器具3は、上記構成であるので、下地となる第1層11とは色彩が異なる所定の着色領域Rを有する第2層21を、第1層11上に確実に設けることができる。その結果、所定の着色領域Rを手がかりとして長尺医療器具3の位置を確実に特定することができる。また、当該長尺医療器具3が金属層53を更に備えることで、ダイレータなどのカテーテルとして好適に用いることができる。
【0064】
第3の実施形態では、第1層11は第1の着色料を含むため、第2層との接着性と視認性とを向上させることができる。更に、金属層53と着色領域を有する第2層21との間に第1層11を設けることにより、金属層53と第2層21との接着性が向上する。
【0065】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第3の実施形態と比較して、金属層の内周側に内腔を形成する樹脂製の管状層を有する場合に、金属層と管状層、および金属層の外周の樹脂層との接着性を向上させることを更なる目的とする。
【0066】
図5は、第4の実施形態を示す概略的縦断面図である。長尺医療器具4は、
図5に示すように、概略的に、摺動層64と、金属層54と、第1層11と、第2層21とにより構成されている。第4の実施形態では、長尺医療器具4としてダイレータ400(カテーテル)が例示されている。長尺医療器具4は、摺動層64および金属層54を備えている点で、第3の実施形態と異なっている。なお、第1層11および第2層21の構成は、第3の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、以下に示すダイレータ400の構成以外の構成、およびダイレータ400の使用態様は第3の実施形態と同様である。
【0067】
摺動層64は、円筒状かつ径方向の最も内側に配置された層である。摺動層64は、具体的には、例えば、金属層54の内周面上に配置され、ダイレータ400の長軸方向全体に亘って形成されている。摺動層64は、例えば、ダイレータ400の長軸方向全体に亘って内腔400hの内径が均一となるように構成することができる。
【0068】
摺動層64を構成する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体など樹脂等が挙げられる。
【0069】
これらの中では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が好ましく、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。これにより、摺動性をより向上することができる。
【0070】
金属層54は、金属層54の両側に位置する層を構成する材料が浸透可能な隙間(不図示)を有している。金属層54は、具体的には、例えば、素線を編み込んだ編組体で構成することができる。これにより素線間の隙間を介して上記材料どうしを溶融接合することができる。
【0071】
金属層54を構成する金属としては、例えば、上述した金属層53を構成する金属と同様の金属等が挙げられる。
【0072】
以上のように、当該長尺医療器具4は、上記構成であるので、例えば、ダイレータ400の内腔400hに挿通されて摺動層64に接するようなガイドワイヤなどの医療器具の摺動性を向上することができ、長尺医療器具4を用いた手技を円滑に進めることができる。
【0073】
第4の実施形態では、第1層11は第1の着色料を含むため、第2層との接着性と視認性とを向上させることができる。更に、第1層11の接着性樹脂が金属層54の隙間(編組体の素線間の間隙など)を溶融して浸透し、摺動層64と第1層11とを接着することも可能となる。
【0074】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0075】
例えば、上述した第1および第2の実施形態ではコアワイヤ31,32や中間層42を備えたガイドワイヤ100,200、第3および第4の実施形態では、金属層53,54や摺動層64を備えたダイレータ300,400(カテーテル)について説明した。しかしながら、当該長尺医療器具は、上述した第1層11および第2層21を備えていればよい。当該長尺医療器具は、コアワイヤ、中間層、金属層および摺動層の少なくともいずれかを備えてなくてもよい。また、当該長尺医療器具は、上記コアワイヤ等と共に、または上記コアワイヤ等に代えて、その他の芯材や層(他の下地層、中間層、被覆層など)を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1~4 長尺医療器具
100,200 ガイドワイヤ
300,400 ダイレータ
11 第1層
111 接着性樹脂
112 第1の着色料
21 第2層
212 第2の着色料
31,32 コアワイヤ
42 中間層
53,54 金属層
64 摺動層
R 着色領域
【手続補正書】
【提出日】2024-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体と、
前記金属体の外周面上に形成され、接着性官能基を有するフッ素樹脂と第1の着色料とを含む第1層と、
前記第1層の外周面上に形成され、前記第1の着色料の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料により形成された所定の着色領域を有する第2層と、を備え、
前記所定の着色領域は、前記第1層の外周面上の一部に形成され、
前記金属体および/または前記第2層のうちの前記第1層に接する部位には極性官能基が含まれ、
前記第1層と、前記金属体および/または前記第2層とは、前記第1層が有する前記接着性官能基と、前記金属体および/または前記第2層が有する前記極性官能基との反応により接着されている長尺医療器具。
【請求項2】
金属体と、
前記金属体の外周面上に形成され、前記金属体に対する接着性を有するフッ素非含有の樹脂からなる中間層と、
前記中間層の外周面上に形成され、接着性官能基を有するフッ素樹脂と第1の着色料とを含む第1層と、
前記第1層の外周面上に形成され、前記第1の着色料の色彩とは異なる色彩を有する第2の着色料により形成された所定の着色領域を有する第2層と、を備え、
前記所定の着色領域は、前記第1層の外周面上の一部に形成され、
前記中間層および/または前記第2層のうちの前記第1層に接する部位には極性官能基が含まれ、
前記第1層と、前記中間層および/または前記第2層とは、前記第1層が有する前記接着性官能基と、前記中間層および/または前記第2層が有する前記極性官能基との反応により接着されている長尺医療器具。
【請求項3】
前記所定の着色領域は、前記接着性官能基を有するフッ素樹脂とは異なる透明な樹脂中に配設されている請求項1または請求項2に記載の長尺医療器具。
【請求項4】
前記透明な樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ナイロン、およびウレタンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項3に記載の長尺医療器具。
【請求項5】
前記金属体は、金属で形成された中実のコアワイヤである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の長尺医療器具。
【請求項6】
前記金属体は、金属で形成された中空のシャフトであり、
前記金属体の内周側に摺動層が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の長尺医療器具。
【請求項7】
前記金属体の外周面と前記金属体の内周面とを繋ぐ隙間を有し、
前記第1層中の前記接着性官能基を有するフッ素樹脂は、前記隙間を介して前記金属体の内周側へ浸透することにより、前記第1層と前記摺動層とが接着されている請求項6に記載の長尺医療器具。