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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016964
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H02H3/02 G
H02H3/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119281
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】市橋 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】狼 智久
(72)【発明者】
【氏名】保科 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 功太郎
【テーマコード(参考)】
5G142
【Fターム(参考)】
5G142AC06
5G142BC02
5G142BD01
5G142BD06
5G142BD07
5G142DD03
5G142DD17
5G142GG07
(57)【要約】
【課題】制御装置にプログラマブルロジックデバイスを用いた場合にも、意図しない停止を抑制することができる電力システムを提供する。
【解決手段】電力の供給に関する所定の動作を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、回路構成情報に基づいて回路構成を変更可能な論理回路部と、論理回路部に構成された回路の全体についてソフトエラーの発生の検出を行うソフトエラー検出部と、を有するプログラマブルロジックデバイスと、論理回路部に構成された回路のうちの重要箇所に発生したソフトエラーの検出を行う検出回路と、を有し、検出回路が重要箇所のソフトエラーを検出した際に、主回路部の動作を停止させる制御を行い、ソフトエラー検出部のみがソフトエラーを検出した際には、主回路部の動作を継続させる制御を行う電力システムが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給に関する所定の動作を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
回路構成情報に基づいて回路構成を変更可能な論理回路部と、前記論理回路部に構成された回路の全体についてソフトエラーの発生の検出を行うソフトエラー検出部と、を有し、前記論理回路部に構成された前記回路により、前記主回路部の動作の制御に関する所定の処理を行うプログラマブルロジックデバイスと、
前記論理回路部に構成された前記回路のうちの重要箇所に発生したソフトエラーの検出を行う検出回路と、
を有し、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出した際に、前記主回路部の前記動作を停止させる制御を行い、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出せず、前記ソフトエラー検出部のみが前記ソフトエラーを検出した際には、前記主回路部の前記動作を継続させる制御を行う電力システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ソフトエラーの発生を報知するための報知部をさらに有し、前記ソフトエラー検出部が前記ソフトエラーを検出した際に、前記ソフトエラーの発生を前記報知部から報知する制御を行う請求項1記載の電力システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回路構成情報を記憶する不揮発性の記憶部をさらに有し、
前記プログラマブルロジックデバイスは、電源の投入毎に、前記記憶部から前記回路構成情報を読み込むことにより、前記論理回路部に前記回路を構成する請求項1記載の電力システム。
【請求項4】
前記制御装置は、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路を有し、
前記論理回路部に構成された前記回路は、前記変換回路の制御を行う制御部を有し、
前記検出回路は、前記制御部を前記重要箇所とし、前記制御部に発生したソフトエラーの検出を行う請求項1記載の電力システム。
【請求項5】
前記検出回路は、前記変換回路によって前記アナログ信号から前記デジタル信号に変換された後の変換結果の値が所定時間以上変化しない場合に、前記制御部にソフトエラーが発生したことを検出する請求項4記載の電力システム。
【請求項6】
複数の前記主回路部と、
複数の前記主回路部のそれぞれの動作を制御する複数の前記制御装置と、
を備え、
複数の前記制御装置のそれぞれは、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出した際に、複数の前記主回路部のそれぞれの前記動作を停止させる制御を行う請求項1~5のいずれか1つに記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統や鉄道などの社会インフラ、及び工場設備などに用いられる比較的大きな規模の電力システムがある。電力システムは、電力の経路の切り替えや電力の変換など電力の供給に関する所定の動作を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備える。
【0003】
こうした電力システムの制御装置にFPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブルロジックデバイスを用いることが行われている。プログラマブルロジックデバイスを用いた場合には、プログラムの変更によって回路構成を任意に変更することができ、例えば、ASICなどの専用ICを用いる場合と比べて、仕様変更などを容易に行うことができる。例えば、電力システムの開発コストの低減を図ることができる。
【0004】
一方で、プログラマブルロジックデバイスを用いた制御装置では、宇宙線の影響などによるプログラマブルロジックデバイスの内部状態の意図しない変化により、プログラマブルロジックデバイスにソフトエラーが発生してしまう可能性がある。プログラマブルロジックデバイスのソフトエラーの発生は、制御装置の誤動作などの要因となり、電力システムの重故障の発生につながってしまう可能性がある。このため、制御装置にプログラマブルロジックデバイスを用いた電力システムでは、プログラマブルロジックデバイスのソフトエラーの検出を行い、ソフトエラーの検出に応じて電力システムを停止させることを行っている。
【0005】
しかしながら、社会インフラや工場設備などの比較的大きな規模の電力システムでは、電力システムの停止が周囲に大きな影響を与えてしまう。このため、比較的大きな規模の電力システムでは、意図しない電力システムの停止を極力抑制できるようにすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-19394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、制御装置にプログラマブルロジックデバイスを用いた場合にも、意図しない停止を抑制することができる電力システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、電力の供給に関する所定の動作を行う主回路部と、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、回路構成情報に基づいて回路構成を変更可能な論理回路部と、前記論理回路部に構成された回路の全体についてソフトエラーの発生の検出を行うソフトエラー検出部と、を有し、前記論理回路部に構成された前記回路により、前記主回路部の動作の制御に関する所定の処理を行うプログラマブルロジックデバイスと、前記論理回路部に構成された前記回路のうちの重要箇所に発生したソフトエラーの検出を行う検出回路と、を有し、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出した際に、前記主回路部の前記動作を停止させる制御を行い、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出せず、前記ソフトエラー検出部のみが前記ソフトエラーを検出した際には、前記主回路部の前記動作を継続させる制御を行う電力システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態では、制御装置にプログラマブルロジックデバイスを用いた場合にも、意図しない停止を抑制することができる電力システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電力システムを模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係る制御装置の一例を模式的に表すブロック図である。
図3】実施形態に係る検出回路の一例を模式的に表すブロック図である。
図4】実施形態に係る電力システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る電力システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力システム10は、主回路部12と、制御装置14と、を備える。電力システム10は、電力系統や鉄道などの社会インフラ、及び工場設備などに用いられる比較的大きな規模のシステムである。
【0013】
主回路部12は、電力の供給に関する所定の動作を行う。電力の供給に関する所定の動作とは、例えば、電力の供給及び遮断を切り替える動作、電力を供給する経路を切り替える動作、及び入力された電力を別の電力に変換して負荷などに供給する動作などである。
【0014】
主回路部12は、例えば、電力線2に接続されることにより、経路の切り替えや電力変換などの動作を行う。電力線2の電圧は、例えば、高圧以上の電圧である。高圧とは、より具体的には、直流で750V以上、交流で600V(実効値)以上の電圧である。比較的大きな規模のシステムとは、例えば、扱う電圧が高圧以上の電圧のシステムである。
【0015】
主回路部12は、例えば、複数系統の電源の切り替えを行う切替開閉器である。電力システム10は、例えば、変電所や工場設備などにおいて、1つの系統に異常が発生した際に、別の系統に自動的に切り替える系統切替システムである。電力システム10は、例えば、鉄道のき電において、2つの変電所間における電力の切り替えを行う切替セクションのシステムなどでもよい。
【0016】
主回路部12は、例えば、電力の変換を行う変換回路でもよい。電力システム10は、例えば、供給された電力を別の電力に変換して出力する電力変換システムなどでもよい。電力の変換は、交流から直流への変換、直流から交流への変換、交流から別の交流への変換、及び直流から別の直流への変換など、任意の変換でよい。
【0017】
図1では、主回路部12が、電力線2の経路上に設けられた構成を模式的に表している。換言すれば、図1では、主回路部12が、一対の電力線2の間に設けられている。例えば、主回路部12が変換回路である場合などには、一対の電力線2の一方の電力は、一対の電力線2の他方の電力と異なってもよい。
【0018】
但し、電力線2に対して主回路部12を接続する形態は、上記に限定されるものではない。電力線2に対して主回路部12を接続する形態は、任意の形態でよい。主回路部12は、例えば、電力線2に対して並列的に接続してもよい。電力システム10は、例えば、主回路部12を電力線2に対して並列的に接続し、電力線2に対して無効電力を出力することにより、電力線2の電圧を安定化させる無効電力補償装置のシステムなどでもよい。主回路部12の動作は、上記に限ることなく、電力の供給に関する任意の動作でよい。主回路部12の構成は、電力の供給に関する所定の動作を行う任意の構成でよい。
【0019】
制御装置14は、主回路部12の動作を制御する。制御装置14は、例えば、主回路部12による電力の経路の切り替えや電力の変換などの動作を制御する。制御装置14は、例えば、上位装置4と通信を行い、上位装置4からの指令に基づいて主回路部12の動作を制御する。但し、制御装置14は、必ずしも上位装置4と通信を行わなくてもよい。制御装置14は、外部からの指令などを受けることなく、単独で主回路部12の動作を制御してもよい。
【0020】
図2は、実施形態に係る制御装置の一例を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、制御装置14は、FPGA20(プログラマブルロジックデバイス)と、PLD22と、CPU24と、DSP26と、記憶部28と、CPU用ADC30(変換回路)と、CPU用DAC32と、DSP用ADC34(変換回路)と、DSP用DAC36と、報知部38と、を有する。なお、図2では、制御装置14の一部のみを便宜的に図示している。また、図2では、一部の配線などの図示を便宜的に省略している。
【0021】
FPGA(Field-Programmable Gate Array)20、PLD(Programmable Logic Device)22、CPU(Central Processing Unit)24、及びDSP(Digital Signal Processor)26は、主回路部12の動作の制御に関する所定の処理を行う。これらの各部の行う処理は、主回路部12の動作の制御に関する任意の処理でよい。
【0022】
FPGA20は、論理回路部40と、ソフトエラー検出部42と、ハートビート信号生成部44と、を有する。論理回路部40は、回路構成情報BSDに基づいて回路構成を変更可能な論理回路の構成部である。FPGA20は、論理回路部40に構成された回路により、主回路部12の動作の制御に関する所定の処理を行う。
【0023】
論理回路部40は、例えば、ルックアップテーブル、マルチプレクサ、及びレジスタなどを有する複数の論理ブロックによって構成される。論理回路部40は、例えば、回路構成情報BSDに基づいてルックアップテーブルの構成を変更することにより、回路構成を変更可能とする。
【0024】
論理回路部40は、例えば、揮発性のメモリによって構成される。論理回路部40は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)によって構成される。FPGA20は、例えば、SRAM方式のFPGAである。論理回路部40は、例えば、Configuration RAM(CRAM)である。
【0025】
記憶部28は、回路構成情報BSDを記憶する不揮発性の記憶部である。記憶部28には、例えば、フラッシュメモリやEEPROMなどが用いられる。記憶部28は、FPGA20に接続される。記憶部28は、FPGA20に対する外付け式の不揮発性メモリである。FPGA20は、電源の投入毎に、記憶部28から回路構成情報BSDを読み込むことにより、論理回路部40に回路を構成する。なお、記憶部28は、FPGA20の外部に設ける構成に限ることなく、FPGA20の内部に設ける構成としてもよい。
【0026】
ソフトエラー検出部42は、論理回路部40に構成された回路の全体についてソフトエラーの発生の検出を行う。ソフトエラーとは、宇宙線などの影響による意図しないビットの反転に起因する論理回路部40に構成された回路の異常である。ソフトエラー検出部42は、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)によって論理回路部40に構成された回路のソフトエラーの検出を行う。
【0027】
ハートビート信号生成部44は、FPGA20が正常に動作していることを表すハートビート信号の生成、及び生成したハートビート信号の出力を行う。ハートビート信号生成部44は、例えば、定期的にハートビート信号の出力を行う。ハートビート信号生成部44は、例えば、論理回路部40から入力される信号に基づいて、ハートビート信号を生成する。ハートビート信号は、換言すれば、論理回路部40が正常に動作していることを表す信号である。
【0028】
なお、この例では、ソフトエラー検出部42及びハートビート信号生成部44を論理回路部40とは別に設けている。これに限ることなく、ソフトエラー検出部42及びハートビート信号生成部44は、論理回路部40内に設けてもよい。換言すれば、ソフトエラー検出部42及びハートビート信号生成部44は、回路構成情報BSDに基づいて論理回路部40に構成してもよい。
【0029】
論理回路部40は、例えば、内部レジスタ50、CPU間I/F部51、DSP間I/F部52、DI/DO I/F部53、CPU用ADC制御部54(制御部)、CPU用DAC制御部55、DSP用ADC制御部56(制御部)、DSP用DAC制御部57、LAN I/F部58、及びロガー機能部59などを有する。これらの各部は、回路構成情報BSDに基づいて論理回路部40に構成される。
【0030】
内部レジスタ50は、論理回路部40内の演算に用いられるデータなどを一時的に保持する記憶装置である。CPU間I/F部51は、CPU24と接続され、CPU24との間の信号の送受を行う。DSP間I/F部52は、DSP26と接続され、DSP26との間の信号の送受を行う。DI/DO I/F部53は、PLD22などの外部の機器とのデジタル信号の入出力に用いられる。CPU用ADC制御部54は、CPU用ADC30と接続され、CPU用ADC30の制御を行う。CPU用DAC制御部55は、CPU用DAC32と接続され、CPU用ADC30の制御を行う。DSP用ADC制御部56は、DSP用ADC34と接続され、DSP用ADC34の制御を行う。DSP用DAC制御部57は、DSP用DAC36と接続され、DSP用DAC36の制御を行う。LAN I/F部58は、LAN(Local Area Network)と接続され、LANとの信号の送受を行う。ロガー機能部59は、論理回路部40に入力されたデータの格納を行う。なお、論理回路部40に構成される回路は、上記に限ることなく、主回路部12の動作の制御に関する所定の処理を行うための任意の回路でよい。
【0031】
CPU用ADC(Analog to Digital Converter)30は、アナログ信号の入力を受け、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。CPU用ADC30は、例えば、主回路部12からアナログ信号の入力を受ける。CPU用ADC30は、例えば、主回路部12に設けられたセンサなどからアナログ信号の入力を受ける。CPU用ADC30は、FPGA20のCPU用ADC制御部54の制御に基づいて、アナログ信号からデジタル信号への変換を行う。CPU用ADC30は、変換後のデジタル信号をCPU24に入力する。
【0032】
CPU用DAC(Digital-to-Analog Converter)32は、CPU24からデジタル信号の入力を受け、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。CPU24は、例えば、CPU用ADC30から入力されたデジタル信号に基づいて、主回路部12の動作の制御に関する所定の処理を行う。
【0033】
DSP用ADC34は、CPU用ADC30と同様に、アナログ信号の入力を受け、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。DSP用DAC36は、CPU用DAC32と同様に、デジタル信号の入力を受け、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。DSP26は、CPU24と同様に、例えば、DSP用ADC34から入力されたデジタル信号に基づいて、主回路部12の動作の制御に関する所定の処理を行う。
【0034】
制御装置14は、検出回路60をさらに有する。検出回路60は、論理回路部40に構成された回路のうちの重要箇所に発生したソフトエラーの検出を行う。検出回路60は、論理回路部40に構成された回路の重要箇所に発生したソフトエラーのみを検出する。検出回路60は、例えば、CPU24に設けられる。CPU24は、FPGA20と比べて、ソフトエラーに対する耐性が高い。このように、検出回路60は、例えば、FPGA20よりもソフトエラーに対する耐性の高い半導体素子に設けられる。
【0035】
PLD22は、ソフトエラー検出オンディレイ70と、ハートビート異常検出回路72と、OR回路74、76と、を有する。ソフトエラー検出オンディレイ70は、ソフトエラー検出部42が論理回路部40に構成された回路のソフトエラーの発生を検出した際に、ソフトエラー検出部42によるソフトエラーの発生の検出を所定時間遅らせてOR回路74に入力する。PLD22も、CPU24と同様に、FPGA20と比べて、ソフトエラーに対する耐性が高い半導体素子である。
【0036】
ハートビート異常検出回路72は、ハートビート信号生成部44から入力されたハートビート信号の異常の検出を行う。ハートビート異常検出回路72は、例えば、ハートビート信号生成部44から定期的にハートビート信号が入力されなかった場合(所定時間以上ハートビート信号の入力がなかった場合)にハートビート信号の異常を検出し、異常検出信号をOR回路74に入力する。
【0037】
OR回路74は、報知部38と接続されている。OR回路74は、ソフトエラー検出オンディレイ70からソフトエラーの発生の検出が入力された場合、又は、ハートビート異常検出回路72からハートビート信号の異常検出信号が入力された場合に、報知部38に報知の実行を指示する。
【0038】
報知部38は、OR回路74からの報知の実行の指示に応じて、論理回路部40におけるソフトエラーの発生、又はハートビート信号の異常の発生の報知を行う。このように、制御装置14は、ソフトエラーの発生を報知するための報知部38を有し、ソフトエラー検出部42がソフトエラーを検出した際に、ソフトエラーの発生を報知部38から報知する制御を行う。
【0039】
報知部38は、例えば、光の点灯によって報知を行うランプである。報知部38は、例えば、文字や図柄などの表示によって報知を行う表示装置や、音声の出力によって報知を行うスピーカなどでもよい。報知部38の構成は、電力システム10の管理者などに対して異常の発生を適切に報知可能な任意の構成でよい。
【0040】
この例では、ソフトエラー検出オンディレイ70及びハートビート異常検出回路72の各出力をOR回路74に入力し、ソフトエラー検出オンディレイ70及びハートビート異常検出回路72の少なくとも一方が異常を検出した際に、報知部38で報知を行うようにしている。これに限ることなく、例えば、ソフトエラー検出オンディレイ70及びハートビート異常検出回路72の各出力を報知部38に入力することにより、ソフトエラーの発生の検出及びハートビート信号の異常の検出を報知部38において個別に報知できるようにしてもよい。報知部38は、少なくともソフトエラーの発生を報知可能に構成されていればよい。
【0041】
OR回路76には、検出回路60による重要箇所のソフトエラーの検出信号が入力されるとともに、CPU24やDSP26などで検出された他の制御異常信号が入力される。OR回路76は、検出回路60からの検出信号の入力、又はその他の制御異常信号の入力に応じて、重故障信号を出力する。OR回路76は、例えば、上位装置4に重故障信号を出力する。
【0042】
上位装置4は、制御装置14からの重故障信号の入力に応じて、主回路部12の動作の停止を制御装置14に指示する。制御装置14は、上位装置4からの指示に応じて、主回路部12の動作を停止させる。
【0043】
このように、制御装置14は、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出した際に、主回路部12の動作を停止させる制御を行い、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出せず、ソフトエラー検出部42のみがソフトエラーを検出した際には、主回路部12の動作を継続させる制御を行う。制御装置14は、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出せず、ソフトエラー検出部42のみがソフトエラーを検出した際には、例えば、主回路部12の動作を停止させることなく、報知部38によるソフトエラーの発生の報知のみを行う。
【0044】
なお、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出した際に行う主回路部12の動作を停止させる制御は、上位装置4に重故障信号を出力し、上位装置4からの指示に応じて主回路部12の動作を停止させる制御に限ることなく、検出回路60による重要箇所のソフトエラーの検出に応じて主回路部12の動作を即座に停止させる制御などでもよい。
【0045】
検出回路60は、例えば、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56を重要箇所とし、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56に発生したソフトエラーの検出を行う。
【0046】
図3は、実施形態に係る検出回路の一例を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、検出回路60は、例えば、変化検出回路80、81と、検出時限回路82、83と、OR回路84と、AND回路85と、を有する。
【0047】
検出回路60には、CPU用ADC30によってアナログ信号からデジタル信号に変換された後のAD変換結果の値が入力される。また、検出回路60には、DSP用ADC34によってアナログ信号からデジタル信号に変換された後のAD変換結果の値が入力される。DSP用ADC34のAD変換結果は、DSP用ADC34からCPU24(検出回路60)に入力される。DSP用ADC34のAD変換結果は、例えば、DSP26からCPU24に入力してもよい。
【0048】
変化検出回路80は、CPU用ADC30のAD変換結果の入力を受け、入力されたAD変換結果の値が変化していない場合に、変化なし信号を検出時限回路82に入力する。検出時限回路82は、AD変換結果の値の変化していない状態が所定時間以上継続している場合に、変化なし信号をOR回路84に入力する。
【0049】
変化検出回路81は、DSP用ADC34のAD変換結果の入力を受け、入力されたAD変換結果の値が変化していない場合に、変化なし信号を検出時限回路83に入力する。検出時限回路83は、AD変換結果の値の変化していない状態が所定時間以上継続している場合に、変化なし信号をOR回路84に入力する。
【0050】
OR回路84は、検出時限回路82、83の少なくとも一方から変化なし信号が入力された場合に、変化なし信号をAND回路85に入力する。
【0051】
AND回路85には、OR回路84からの変化なし信号が入力されるとともに、ソフトエラー検出部42によるソフトエラーの検出信号が入力される。AND回路85は、OR回路84から変化なし信号が入力され、かつソフトエラー検出部42からソフトエラーの検出信号が入力された際に、重要箇所(CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56)のソフトエラーの検出信号を出力する。
【0052】
CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56が正常に動作している場合、CPU用ADC30のAD変換結果及びDSP用ADC34のAD変換結果のそれぞれは、正常なアナログ検出信号の入力、又は無入力状態でもノイズ等の影響により、時間の経過に応じて値を変化させる。このため、AD変換結果の値が所定時間以上変化しない場合には、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56に何らかの異常が発生していると考えられる。
【0053】
従って、検出回路60は、上記のように、AD変換結果の値が所定時間以上変化しない場合に、重要箇所にソフトエラーが発生したと判断し、重要箇所のソフトエラーの検出信号を出力する。検出回路60は、例えば、AD変換結果の値が所定時間以上変化せず、かつソフトエラー検出部42によってソフトエラーが検出されている場合に、重要箇所のソフトエラーの検出信号を出力する。これにより、重要箇所でのソフトエラーの発生をより適切に検出することができる。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力システム10では、制御装置14が、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出した際に、主回路部12の動作を停止させる制御を行い、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出せず、ソフトエラー検出部42のみがソフトエラーを検出した際には、主回路部12の動作を継続させる制御を行う。これにより、例えば、ソフトエラー検出部42がソフトエラーを検出したことに応じて主回路部12の動作を停止させる場合と比べて、ソフトエラーの検出に基づく意図しない電力システム10(主回路部12)の動作の停止を抑制することができる。従って、制御装置14にFPGA20(プログラマブルロジックデバイス)を用いた場合にも、意図しない電力システム10の停止を抑制することができる。
【0055】
電力システム10では、制御装置14が、ソフトエラーの発生を報知するための報知部38をさらに有し、ソフトエラー検出部42がソフトエラーを検出した際に、ソフトエラーの発生を報知部38から報知する制御を行う。これにより、例えば、電力システム10の管理者などに対し、重要箇所以外の部分にソフトエラーが発生していることを報知することができる。例えば、ソフトエラーを解消するための動作の実行を電力システム10の管理者などに促すことができる。ソフトエラーを解消するための動作とは、例えば、電力システム10の動作を停止できる状況の際に、制御装置14の電源を一度遮断し、制御装置14を再起動させる動作である。論理回路部40に発生したソフトエラーは、制御装置14を再起動させ、回路構成情報BSDを再び読み込むことによって解消することができる。
【0056】
電力システム10では、制御装置14が、回路構成情報BSDを記憶する不揮発性の記憶部28をさらに有し、FPGA20は、電源の投入毎に、記憶部28から回路構成情報BSDを読み込むことにより、論理回路部40に回路を構成する。このように、論理回路部40をソフトエラーに対する耐性が比較的低い揮発性のメモリによって構成されるものとした場合にも、上記のように、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出した際に、主回路部12の動作を停止させる制御を行うことで、意図しない電力システム10の停止を適切に抑制することができる。
【0057】
なお、この例では、プログラマブルロジックデバイスの一例として、FPGA20を示している。プログラマブルロジックデバイスは、FPGA20に限ることなく、回路構成情報BSDに基づいて回路構成を変更可能な論理回路部40と、論理回路部40に構成された回路の全体についてソフトエラーの発生の検出を行うソフトエラー検出部42と、を有する任意のデバイスでよい。
【0058】
電力システム10では、検出回路60が、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56を重要箇所とし、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56に発生したソフトエラーの検出を行う。アナログ信号を扱うCPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56は、デジタル信号を扱う部分と比べて重畳構成とすることが難しく、また、他の部分において異常を検出することも難しい。このため、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56を重要箇所とすることで、制御装置14の誤動作などを適切に抑制することができる。例えば、重要箇所以外の部分にソフトエラーが発生しても主回路部12の動作を継続させるようにした際にも、電力システム10に重故障が発生してしまうことなどを適切に抑制することができる。
【0059】
但し、論理回路部40の重要箇所は、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56に限定されるものではない。例えば、内部レジスタ50、CPU間I/F部51、DSP間I/F部52、DI/DO I/F部53などを重要箇所として設定してもよい。論理回路部40の重要箇所は、例えば、電力システム10の重故障につながる可能性のある任意の回路でよい。
【0060】
電力システム10では、検出回路60が、AD変換結果の値が所定時間以上変化しない場合に、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56にソフトエラーが発生したことを検出する。これにより、CPU用ADC制御部54及びDSP用ADC制御部56に発生したソフトエラーを適切に検出することができる。なお、重要箇所のソフトエラーの検出方法は、上記に限ることなく、重要箇所の構成に対応した任意の方法でよい。検出回路60の構成は、例えば、重要箇所のソフトエラーをCRCによって個別に検出する構成などでもよい。
【0061】
図4は、実施形態に係る電力システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
図4に表したように、電力システム10aは、複数の主回路部12と、複数の制御装置14と、を備える。なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は、省略する。
【0062】
図4では、複数の主回路部12が、電力線2の経路上に直列に接続された構成を模式的に表している。複数の主回路部12の構成は、上記に限定されるものではない。複数の主回路部12は、例えば、電力線2に対してそれぞれ並列に接続される構成としてもよい。複数の主回路部12の構成は、複数の主回路部12のそれぞれによって電力の供給に関する所定の動作を行う任意の構成でよい。
【0063】
複数の制御装置14は、複数の主回路部12のそれぞれの動作を制御する。複数の制御装置14の数は、例えば、複数の主回路部12の数と同じである。但し、複数の制御装置14の数は、必ずしも複数の主回路部12の数と同じでなくてもよい。例えば、1台の制御装置14で複数台の主回路部12の動作を制御してもよい。
【0064】
複数の制御装置14のそれぞれは、検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出した際に、複数の主回路部12のそれぞれの動作を停止させる制御を行う。
【0065】
複数の制御装置14のそれぞれは、例えば、検出回路60による重要箇所のソフトエラーの検出に応じて、上位装置4に重故障信号を出力する。上位装置4は、複数の制御装置14のいずれかからの重故障信号の入力に応じて、複数の主回路部12の動作の停止を複数の制御装置14のそれぞれに指示する。複数の制御装置14は、上位装置4からの指示に応じて、複数の主回路部12の動作を停止させる。
【0066】
複数の制御装置14のそれぞれは、例えば、検出回路60による重要箇所のソフトエラーの検出に応じて、他の制御装置14に重故障信号を出力することにより、複数の主回路部12の動作を停止させてもよい。検出回路60が重要箇所のソフトエラーを検出した際に、複数の主回路部12のそれぞれの動作を停止させる制御は、上記に限ることなく、複数の制御装置14のいずれかにおける重要箇所のソフトエラーの検出に応じて、複数の主回路部12の動作を適切に停止させることが可能な任意の制御でよい。
【0067】
本実施形態は、以下の態様を含む。
(付記1)
電力の供給に関する所定の動作を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
回路構成情報に基づいて回路構成を変更可能な論理回路部と、前記論理回路部に構成された回路の全体についてソフトエラーの発生の検出を行うソフトエラー検出部と、を有し、前記論理回路部に構成された前記回路により、前記主回路部の動作の制御に関する所定の処理を行うプログラマブルロジックデバイスと、
前記論理回路部に構成された前記回路のうちの重要箇所に発生したソフトエラーの検出を行う検出回路と、
を有し、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出した際に、前記主回路部の前記動作を停止させる制御を行い、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出せず、前記ソフトエラー検出部のみが前記ソフトエラーを検出した際には、前記主回路部の前記動作を継続させる制御を行う電力システム。
【0068】
(付記2)
前記制御装置は、前記ソフトエラーの発生を報知するための報知部をさらに有し、前記ソフトエラー検出部が前記ソフトエラーを検出した際に、前記ソフトエラーの発生を前記報知部から報知する制御を行う付記1記載の電力システム。
【0069】
(付記3)
前記制御装置は、前記回路構成情報を記憶する不揮発性の記憶部をさらに有し、
前記プログラマブルロジックデバイスは、電源の投入毎に、前記記憶部から前記回路構成情報を読み込むことにより、前記論理回路部に前記回路を構成する付記1又は2に記載の電力システム。
【0070】
(付記4)
前記制御装置は、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路を有し、
前記論理回路部に構成された前記回路は、前記変換回路の制御を行う制御部を有し、
前記検出回路は、前記制御部を前記重要箇所とし、前記制御部に発生したソフトエラーの検出を行う付記1~3のいずれか1つに記載の電力システム。
【0071】
(付記5)
前記検出回路は、前記変換回路によって前記アナログ信号から前記デジタル信号に変換された後の変換結果の値が所定時間以上変化しない場合に、前記制御部にソフトエラーが発生したことを検出する付記4記載の電力システム。
【0072】
(付記6)
複数の前記主回路部と、
複数の前記主回路部のそれぞれの動作を制御する複数の前記制御装置と、
を備え、
複数の前記制御装置のそれぞれは、前記検出回路が前記重要箇所のソフトエラーを検出した際に、複数の前記主回路部のそれぞれの前記動作を停止させる制御を行う付記1~5のいずれか1つに記載の電力システム。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
2…電力線、 4…上位装置、 10、10a…電力システム、 12…主回路部、 14…制御装置、 20…FPGA(プログラマブルロジックデバイス)、 22…PLD、 24…CPU、 26…DSP、 28…記憶部、 30…CPU用ADC(変換回路)、 32…CPU用DAC、 34…DSP用ADC(変換回路)、 36…DSP用DAC、 38…報知部、 40…論理回路部、 42…ソフトエラー検出部、 44…ハートビート信号生成部、 50…内部レジスタ、 51…CPU間I/F部、 52…DSP間I/F部、 53…DI/DO I/F部、 54…CPU用ADC制御部(制御部)、 55…CPU用DAC制御部、 56…DSP用ADC制御部(制御部)、 57…DSP用DAC制御部、 58…LAN I/F部、 59…ロガー機能部、 60…検出回路、 70…ソフトエラー検出オンディレイ、 72…ハートビート異常検出回路、 74、76…OR回路、 80、81…変化検出回路、 82、83…検出時限回路、 84…OR回路、 85…AND回路
図1
図2
図3
図4