(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169641
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】粗面化された表面を有するガイドワイヤ・チップ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61M25/09 550
A61M25/09 516
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165566
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2021539052の分割
【原出願日】2020-01-08
(31)【優先権主張番号】16/245,032
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507328645
【氏名又は名称】アボット カーディオバスキュラー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジル,プニート カマル シン
(72)【発明者】
【氏名】ダーカン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】トルーティ,ヤクブ
(72)【発明者】
【氏名】クルジンスキ,マシュー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,ジョン
(57)【要約】
【課題】 遠位チップとガイドワイヤの病変内へのかつ病変を通っての貫通性を向上させ、ガイドワイヤが撓む可能性を減少させる。
【解決手段】
近位コア部12と、遠位コア部13を有する細長いコア部材11と、
前記遠位コア部13の遠位端部24に取り付けられた遠位チップ20で、金属合金またはポリマーによって形成され、粗面化された表面を有し、血管中の狭窄した病巣内を通過させるために使用する遠位チップ20とを備え、
前記遠位チップ20が、ワイヤコイル14の遠位端部24に隣接しており、
前記粗面化された表面が前記遠位チップ20の表面を物理的に改変することによって形成されたことを特徴とするガイドワイヤ10により、上記課題が解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位コア部と、遠位コア部を有する細長いコア部材と、
前記遠位コア部の遠位端部に取り付けられた遠位チップで、金属合金またはポリマーによって形成され、粗面化された表面を有し、血管中の狭窄した病巣内を通過させるために使用する遠位チップとを備え、
前記遠位チップが、ワイヤコイルの遠位端部に隣接しており、
前記粗面化された表面が前記遠位チップの表面を物理的に改変することによって形成されたことを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
前記表面の物理的改変が、微小ビード・ブラスティング(micro bead blasting)、レーザー粗面化(laser roughening)、サンドペーパー、微小機械加工(micro machining)、ワイヤブラシ仕上げ(wire brush)を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記遠位チップの平均表面粗さが1ミクロンないし200ミクロンの範囲であることを
特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記遠位チップの平均表面粗さが1ミクロンないし10ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記遠位チップの平均表面粗さが20ミクロンないし150ミクロンの範囲であること
を特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記遠位チップが、スタンピング(stamping)、鋳造(casting)、微小成形(micro m
olding)、機械加工(machining)、金属射出成形(metal molding)および3D印刷(3
D printing)のいずれかによって製造されたことを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記遠位チップの前記粗面化された表面が、化学エッチング(chemical etching)、化
学蒸着(chemical vapor deposition)、物理蒸着(physical vapor deposition)のいずれかにより、形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
前記遠位チップが、丸みを帯びた半ドーム状(rounded half-dome)、円錐状、フラス
ト・コニカル(frusto-conical)状、マッシュルーム形状、扁平なチップを有する円錐状
、凹状のチップを有する円錐状を含む構造形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項9】
ガイドワイヤに取り付ける遠位チップの製造方法であって、
金属合金またはポリマーによって、粗面化された表面を有し、血管中の狭窄した病巣内を
通過させるために使用する遠位チップを形成し、
前記遠位チップを血管内の狭窄部位内に挿入するに際して、前記遠位チップの表面を粗面
化するとともに、前記遠位チップを、ワイヤコイルの遠位端部に隣接するように配設することを特徴とする遠位チップの製造方法。
【請求項10】
前記遠位チップの表面を平均表面粗さが1ミクロンないし200ミクロンの範囲内になるように、粗面化することを特徴とする請求項9に記載の遠位チップの製造方法。
【請求項11】
前記遠位チップの表面を平均表面粗さが1ミクロンないし10ミクロンの範囲内になるように、粗面化することを特徴とする請求項9に記載の遠位チップの製造方法。
【請求項12】
前記遠位チップの表面を平均表面粗さが20ミクロンないし150ミクロンの範囲内になるように、粗面化することを特徴とする請求項9に記載の遠位チップの製造方法。
【請求項13】
前記遠位チップの表面を粗面化する方法が、微小ビード・ブラスティング(micro bead
blasting)、レーザー粗面化(laser roughening)、サンドペーパーを用いた粗面化、
微小機械加工(micro machining)、ワイヤブラシ仕上げ(wire brushing)を含んでいること
を特徴とする請求項9に記載の遠位チップの製造方法。
【請求項14】
前記遠位チップを、スタンピング(stamping)、鋳造(casting)、微小成形(micro m
olding)、機械加工(machining)、金属射出成形(metal molding)および3D印刷(3
D printing)のいずれかによって形成することを特徴とする請求項9に記載の遠位チップの製造方法。
【請求項15】
前記遠位チップの表面を粗面化する方法が、化学エッチング(chemical etching)、化
学蒸着(chemical vapor deposition)および物理蒸着(physical vapor deposition)を
含んでいることを特徴とする請求項9に記載の遠位チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くガイドワイヤに関するものであり、身体血管の慢性完全閉塞(CTO)内を通過させるガイドワイヤを正確に位置決めし、供給することができるガイドワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CTOは、冠状動脈などの血管の深刻な狭窄で、プライマリー・ヴェッセルの完全な閉塞またはほとんど完全な閉塞をもたらすものである。CTOは、病気の冠状動脈においてはごく普通のものであり、典型的には、動脈内にプラークが形成され、管腔のサイズがきわめて小さくなり、血栓が形成され、狭窄が完全閉塞を起こすまで、動脈内の管腔のサイズが徐々に小さくなる場合に生じる。完全閉塞はぶり返すので、狭窄または血管の閉塞は、引き続き、閉塞の近位端と遠位端に形成される線維性の後端キャップを徐々に成長させる傾向がある。これらの線維性の後端キャップは、かなり固く、様々な程度の靭性を有している。
【0003】
血管形成術とステント移植術は、通常は、患者の血管組織内に生成するCTOや、他の狭窄を取り扱うのに用いられる。ガイディング・カテーテルは、血管形成術または経皮経管冠動脈形成術(PTCA)を行っている際に、患者の血管内の所望の位置まで、患者の血管を通して、前進される。バルーン・カテーテル内に位置するガイドワイヤは、ガイディング・カテーテルの遠位端から、横に広がった閉塞物を通過し、横切るまで、患者の冠状動脈内を延ばされる。バルーン・カテーテルは、次いで、ガイディング・カテーテル内を進められ、すでに導入されているガイドワイヤ上を、閉塞物を横切り、所望の位置に位置するまで、進められる。バルーン・カテーテルが所望の位置に位置すると、バルーンが、所望のサイズに膨らまされ、閉塞物を形成している材料が動脈壁に押し付けられて、動脈内の通路が拡大される。バルーンは次いで、収縮され、拡張された動脈を通って、血流が再開され、バルーン・カテーテルが取り除かれる。典型的には、ステントは、血管が開通した状態を維持するように、嵌め込まれる。
【0004】
このような慢性的な血管の閉塞に対処するためには、種々の処理が可能なように、慢性的な血管の閉塞を形成する狭窄を通って延びるガイドワイヤを用いることが要求される。これまでの方法は、ガイドワイヤを狭窄や閉塞物を横切るように位置させ、ガイドワイヤをプラーク内の裂け目に追従し、偽腔を生成し、あるいは、血管の壁部に穴を開けて、血管を解離するような方向に、ガイドワイヤを向けるものであった。このように、ガイドワイヤを位置させようとすると、しばしば、ガイドワイヤをより硬いガイドワイヤに置き換えることが必要になり、時間がかかるという問題があった。
【0005】
上述したところから、本発明の技術分野においては、複雑で狭窄した障害部を貫通するように設計され、血管内の閉塞を取り扱うために用いられる複数のガイドワイヤ・チップにつき、解決すべき課題があった。これらの課題に対するどの解決手段も、CTOの好ましい配置(crossing)に行きつく可能性を向上されるであろう。さらに言えば、提案されるどの解決手段も、種々のガイドワイヤの種類および構成に適合するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、遠位でのサポート力が強化され、その一方で、可撓性がある遠位チップを有し、血管または室内のライニングを損傷させるおそれがほとんどない改良されたガイドワイヤに向けられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるガイドワイヤは、近位コア部と遠位コア部を有する細長いコア部材と、たとえば、前記コア部材の遠位部に取り付けられ、固定された螺旋状のコイルなどの可撓性を有する管状の本体を有している。
【発明の効果】
【0008】
可撓性コイルなどの可撓性を有する管状の本体は、公知の方法で、その遠位端部によって、遠位コア部の遠位端部に、固定されている。商業的に利用可能なガイドワイヤにおいて、患者の冠状動脈内になされているように、半田付けによって、ロウ付けによって、粘着剤によって、あるいは、溶接によって、ガイド部材に丸い遠位チップが形成されて、遠位端部に取り付けられる。ある実施態様においては、半田付けされる遠位チップの外表面が、その平均表面粗さが200ミクロンに粗面化される。粗面化された遠位チップは、狭窄部位(CTO)に係合し、摩擦係数が大きくなって、偏向せずに、狭窄部位の内部を通るように構成されている。ある実施態様においては、粗面化された遠位チップが、1ミクロンないし10ミクロンの平均表面粗さを有している。別の実施態様においては、粗面化された遠位チップが、20ミクロンおよび150ミクロンの範囲の平均表面粗さを有している。他の好ましい実施態様においては、粗面化された遠位チップの平均表面粗さが1ミクロンから200ミクロンの範囲内である。
【0009】
本発明の他の効果は、例示図面を引用して、以下に詳述する本発明の実施態様の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかるガイドワイヤの立面図であり、一部断面が示されている。
【
図2】
図2は、
図1に示されたガイドワイヤの2-2線に沿った横断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたガイドワイヤの拡大立面図であり、遠位部の一部が断面で示され、遠位コア部のテーパーが描かれている。
【
図4】
図4は、ガイドワイヤの遠位端および遠位チップの顕微鏡写真の立面図であり、修正される前の遠位チップの丸いハーフドーム型が示されている。
【
図5A】
図5Aは、
図4に示されたガイドワイヤの遠位チップとワイヤコイルの粗面化された表面の顕微鏡写真の立面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図4に示されたガイドワイヤの遠位チップとワイヤコイルの粗面化された表面の顕微鏡写真の立面図である。
【
図6】
図6は、血管内を遠位方向に進行しているガイドワイヤの遠位端部および狭窄部位内を通過している粗面化された遠位チップの立面図である。
【
図7B】
図7Bは、凹部の部分が描かれた円錐状の遠位チップの正面斜視図である。
【
図7D】
図7Dは、円錐状の遠位チップの背面図であり、キャビティが描かれている。
【
図7E】
図7Eは、遠位チップの7E-7E線に沿った断面図であり、凹部およびキャビティが描かれている。
【
図8C】
図8Cは、円錐状の遠位チップの後面斜視図であり、キャビティが描かれている。
【
図8D】
図8Dは、円錐状の遠位チップの背面図であり、キャビティが描かれている。
【
図8E】
図8Eは、遠位チップの8E-8E線に沿った断面図であり、キャビティが描かれている。
【
図9A】
図9Aは、frusto-円錐状の遠位チップの側面図である。
【
図9B】
図9Bは、frusto-円錐状の遠位チップの正面斜視図であり、凹部が描かれている。
【
図9C】
図9Cは、frusto-円錐状の遠位チップの後面斜視図であり、キャビティが描かれている。
【
図9D】
図9Dは、frusto-円錐状の遠位チップの背面図であり、キャビティが描かれている。
【
図9E】
図9Eは、9E-9E線に沿った遠位チップの断面図であり、凹部およびキャビティが描かれている。
【
図10A】
図10Aは、本発明の好ましい実施態様にかかるfrusto-円錐状の遠位チップの側面図であり、frusto-円錐状の部分およびそれから延びるステムが描かれている。
【
図10E】
図10Eは、10E-10E線に沿った遠位チップの断面図であり、
図7Aに示されているように、凹部とステムが描かれている。
【
図11C】
図11Cは、マッシュルーム状の遠位チップの後面斜視図であり、ステム部分が描かれている。
【
図11D】
図11Dは、マッシュルーム状の遠位チップの背面図であり、ステム部分が描かれている。
【
図11E】
図11Eは、11E-11E線に沿ったマッシュルーム状の遠位チップの断面図であり、ステム部分が描かれている。
【
図12A】
図12Aは、frusto-円錐状の遠位チップの側面図であり、ステム部分とアーチ状の溝を有している。
【
図12E】
図12Eは、12E-12E線に沿った
図12Aにかかる実施態様の断面図であり、ステム部分とアーチ状の溝が描かれている。
【
図13E】
図13Eは、13E-13E線に沿った
図13Aにかかる実施態様の断面図であり、凹部とステム部分が描かれている。
【
図15B】
図15Bは、凹部とステム部分を有する角張った遠位チップの正面斜視図である。
【
図15C】
図15Cは、角張った遠位チップの後面斜視図であり、ステム部分が描かれている。
【
図15D】
図15Dは、角張った遠位チップの背面図であり、ステム部分が描かれている。
【
図15E】
図15Eは、15E-15E線に沿った角張った遠位チップの断面図であり、凹部とステム部分が描かれている。
【
図16E】
図16Eは、16E-16E線に沿った
図16Aに示された実施態様の断面図であり、凹部とキャビティが描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1ないし
図3は、本発明の好ましい実施態様にかかるガイドワイヤ10を示しており、ガイドワイヤ10は、近位コア部12、遠位コア部13および螺旋状コイル14を有するコア部材11を有している。遠位コア部12は、第一のテーパー状セグメント15と、遠位方向に第一のテーパー状コアセグメントに隣接する第二のテーパー状コアセグメント16を有している。第二のテーパー状セグメント16は、第一のテーパー状セグメントよりも大きな角度で先細になっており、この付加的テーパーが、ガイドワイヤ10の遠位部が曲がりくねった通路を進行する際に、よりスムーズに移行することを可能とする。第一のテーパー状コアセグメント15の先細角度は、すなわち、長手軸17と第一のテーパー状コアセグメント15の接線の間の角度は典型的には約2°から約10°である。これに対して、第二のテーパー状コアセグメント16の先細角度は、すなわち、長手軸と第二のテーパー状コアセグメントの間の角度は第一の角度より大きく、
図3のガイドワイヤ10の拡大図に示されるように、典型的には約5°ないし約10°である。単に、2つのテーパー状コアセグメントのみが図示されているが、任意の数のテーパー状コアセグメントを用いることができる。さらに、多数のテーパー状コアセグメントのすべてが、遠位方向に角度が大きくなっていることは要しない。しかしながら、約5cmないし15cmの長さの2またはそれ以上の近接するテーパー状コアセグメントは、テーパーの角度が遠位方向に増大するように構成されていることが好ましい。
【0012】
通常は、第一のテーパー状セグメントが約3cmの長さを有し、第二のテーパー状セグメントが4cmの長さを有している。好ましい実施態様においては、ガイドワイヤ10が、約0.014インチ(0.36mm)の径を有し、第一のテーパー状コアセグメントが、0.014インチから約0.008インチ(0.36mmないし0.20mm)の径を有し、第二のテーパー状コアセグメントが約0.008インチから約0.002インチ(0.20mmないし0.05mm)の径を有している。平板状の遠位部18は第二のテーパー状コアセグメント16の遠位端部から遠位チップ20に延び、それによって、コア部材11の遠位部18が螺旋状コイル14の遠位端19に接着されている。半田の本体21によって、螺旋状コイル14の近位端部が第二のテーパー状セグメント16上の中間位置に取り付けられている。
コア部材11は、たとえば、DuPont社から入手可能なテフロン(登録商標)などのフッ素重合体を含む滑らかな被覆材22によって被覆されており、それによって、近位コア部12の長さが延長されている。明確性の観点から図示してはいないが、たとえば、本出願人であるAbbott Cardiovascular Systems, Inc.によって用いられるMICROGLIDE被覆材などの滑らかな被覆材および本出願人から商業的に手に入るガイドワイヤを用いることができる。親水性の被覆材もまた用いることができる。
【0013】
コア部材は、ステンレススチールおよびNiTi合金またはそれらの混合物または高強度合金など、公知の材料によっても形成することができる。
可撓性コイル14は、白金またはその合金などの適当な放射線不透過性材料によって形成することができ、または、ステンレススチールなどの他の材料によって形成し、金などの放射線不透過性材料を被覆することによって形成することができる。それからコイルを作るワイヤはおおむね約0.003インチ(0.05mm)の横径を有している。可撓性コイル14の全長は典型的には約3cmである。コイル14の遠位部の回転数は可撓性を付加するために増大することができる。
【0014】
本発明について述べると、
図1ないし
図6に示されるように、ガイドワイヤ10は、近位コア部12と遠位コア部13を有する細長いコア部材11を有している。遠位コア部13は、典型的には、その上に取り付けられた可撓性コイル14を有する遠位端部24を有している。遠位チップ20が遠位端部24に取り付けられており、可撓性コイル14に取り付けられている。一つの実施態様においては、
図4ないし
図5Bに示されるように、遠位チップ20が、半田21の本体から、遠位端部24上のハーフドーム(half-dome)型部26内にかけて、形成されている。半田の本体は形成されたときはスムーズであるので、遠位チップ20を粗面化された面28を形成するのに用いることができる。粗面化された面28は、石灰化された線維性組織または病変(慢性完全閉塞CTO)を、粗面化された面28と病変との間の摩擦力を増大させることによって、より容易に貫通させるのに用いることができる。
図4に示されるように、遠位チップ20が滑らかであるときは、石灰化した病変が滑りやすく、病変を貫通することができない場合がある。
図5A及び
図5Bに示された粗面化された面28を用いる場合には、粗面化された面28が病変を突き刺し、そらしたり、スライドさせたり、医師がガイドワイヤを、病変を通して、前進することを許容するので、より容易に石灰化した病変を貫通することができる。
図5Aに示された実施態様においては、半田の本体は、遠位端部24に取り付けられ、粗面化された面28を形成する一方で、酸化アルミニウム媒体に微粒子の形で分散されていた(micro bead blasted)。
図5Bに示された実施態様においては、半田の本体は、遠位端部24に取り付けて、粗面化された面28を形成する一方で、重炭酸ナトリウム媒体に微粒子の形で分散されていた(micro bead blasted)。一つの実施態様においては、粗面28の平均表面粗さは、20ミクロンないし150ミクロンの範囲である。別の実施態様においては、粗面28の平均表面粗さは、1ミクロンないし200ミクロンの範囲である。微粒子の形で分散される(micro bead blasting)媒体は酸化アルミニウムおよび重炭酸ナトリウムに限定されるものではなく、適当な研磨材はすべて用いることができる。ここに開示した微粒子の形で分散するプロセスは公知であり、詳述する必要性はない。
【0015】
他の実施態様においては、
図1ないし
図4および
図7Aないし
図16Eに示されるように、ガイドワイヤ10は、近位コア部12および遠位コア部13を有する細長いコア部材11を有している。遠位コア部13は、典型的には、それに取り付けられた可撓性コイル14を有する遠位端部24を有している。遠位チップ20が、遠位端部24に設けられており、可撓性コイル14に取り付けられている。ある実施態様においては、
図4に示されているように、遠位チップ20が、半田の本体21から、遠位端部24のハーフドーム状部(half-dome shape)26内にかけて形成されている。半田の本体21は形成されたときは滑らかであるので、遠位チップ20は粗面化された面28を形成するために用いられる。粗面化された面28は、石灰化された線維性組織または病変(慢性完全閉塞CTO)を、粗面と病変との間の摩擦力を増大させることによって、より容易に貫通させるのに用いることができる。
図4に示されるように、遠位チップ20が滑らかであるときは、石灰化した病変が滑りやすく、病変を貫通することができない場合がある。
図6および7Aないし16Eに示された粗面28を用いる場合には、粗面化された面が病変を突き刺し、そらしたり、スライドさせたりすることがなく、医師がガイドワイヤを、病変を通して、前進することを許容するので、より容易に石灰化した病変を貫通することができる。
図7Aないし16Eに示された実施態様では、半田の本体21は、レーザによって、粗面化された面28が形成されていた。これらの実施態様においては、レーザによって粗面化された粗面28の平均表面粗さは、1ミクロンから10ミクロンの範囲である。他の実施態様においては、レーザによって粗面化された粗面28の平均表面粗さは、1ミクロンないし200ミクロンである。
【0016】
粗面28を形成するための表面処理としては、マイクロ・マシンニング(micro machining)、サンドペーパー、化学的エッチング、ワイヤブラシ(wire brush)、化学的蒸着、物理的蒸着が挙げられる。
micro bead blasting によって、
図5Aおよび5Bに示されるように、遠位チップ20の粗面28を形成しつつ、遠位端部24に取り付ける場合には、遠位チップ20を遠位端部24に取り付ける前に、遠位チップ20に粗面28を形成することが好ましい。
図7Aないし
図16Eに示されるように、遠位チップの異なった実施態様が図示されており、機械的構造を異にする場合、粗面を形成するのに先立って処理される場合、遠位チップ上に取り付けるのに先立って処理される場合が示されている。
図7Aないし16Eに示されている遠位チップは、部品レベルで製造され、次いで、表面処理が施され、ガイドワイヤに取り付けられる。
【0017】
図7Aないし
図7Eに示されるように、ある実施態様においては、円錐状の遠位チップ30はほぼ円錐状の表面31を有している。円錐状の遠位チップ30の遠位端部33内に、凹部32が形成され、それによって、エッジ34を提供し、凹部が固いプラークに係合したときに、遠位チップ30を正確な位置に保持するように構成されている。遠位チップ30の近位端部35には、キャビティ36が形成され、遠位コア部13(
図3参照)の遠位端部24に取り付けられるように構成されている。粗面28は、遠位チップと固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能になる。
【0018】
他の実施態様においては、
図8Aないし
図8Eに示されるように、円錐状の遠位チップ40はほぼ円錐状の表面を有している。わずかに丸い形状のノーズコーン42が円錐状の遠位チップ40の遠位端部43内に形成され、それによって、突起44が提供され、突起44が固いプラークに係合するときに、遠位チップ40を正確な位置に保持することができる。遠位チップ40の近位端部45に、キャビティ46が形成され、遠位コア部13の遠位端部24上に取り付けることができるように構成されている(
図3参照)。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることを可能にする。
【0019】
他の実施態様においては、
図9Aないし
図9Eに示されるように、frusto-円錐状の遠位チップ50はほぼ円錐状の表面を有している。frusto-円錐状の遠位チップ50の遠位端部53内に、凹部52が形成され、それによって、エッジ54が提供され、凹部52が固いプラークに係合したときに、遠位チップ30を正確な位置に保持するように構成されている。遠位チップ50の近位端部55には、キャビティ56が形成され、遠位コア部13の遠位端部24上に取り付けることができるように構成されている(
図3参照)。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0020】
他の実施態様においては、
図10Aないし
図10Eに示されるように、frusto-円錐状の遠位チップ60がほぼ円錐状の表面61を有している。frusto-円錐状の遠位チップ60の遠位端部63内には、凹部62が形成され、凹部62が固いプラークに係合したときに、遠位チップ60を正確な位置に保持するエッジ64が設けられている。遠位チップ60の近位端部65には、ステム66が形成され、可撓性コイル14を差し込む(
図3参照)ことによって、遠位コア部13の遠位端部24内に差し込み、および、遠位コア部13の遠位端部24上に取り付けることができるように構成されている。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0021】
他の実施態様においては、
図11Aないし
図11Eに示されるように、マッシュルーム状の遠位チップ70はほぼ円錐の表面71を有している。丸い形状のノーズコーン(nose cone)72が、円錐状の遠位チップ70内の遠位端部73内に形成され、丸い形状のノーズコーン72が固いプラークに係合するときに、遠位チップ70を正確な位置に保持する突起74が提供されている。遠位チップ70の近位端部75には、ステム76が形成され、可撓性コイル14を挿入する(
図3参照)ことによって、遠位コア部13の遠位端部24内に挿入し、その上に取り付けることができるように構成されている。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0022】
他の実施態様においては、
図12Aないし
図12Eに示されるように、frusto-円錐状の遠位チップ80はほぼ円錐状の表面81を有している。frusto-円錐状の遠位チップ80の遠位端部83内には、凹部82が形成され、凹部82が固いプラークに係合したときに、遠位チップ80を正確な位置に保持するエッジ84が設けられている。多数のアーチ状の溝87が円錐状の表面81に形成され、医師がガイドワイヤをねじり、あるいは、回転させるときに、ドリルビットのように、固いプラーク内にねじ込まれるように構成されている。したがって、ガイドワイヤをねじり、同時に押すことによって、医師は、遠位チップ80およびアーチ状の溝87内をドリルビット(drill bit)のように進むことができる。遠位チップ80の近位端部85には、ステム86が形成され、可撓性コイル14を挿入する(
図3参照)ことによって、遠位コア部13の遠位端部24内に挿入し、取り付けることができるように構成されている。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0023】
他の実施態様においては、
図13Aないし
図13Eに示されるように、部分的に円錐状をなした遠位チップ90はほぼ円錐状の表面91を有している。凹部92が、部分的に円錐状をなした遠位チップ90の遠位端部93内に形成され、凹部92が固いプラークに係合するときに、遠位端部90を正確な位置に保持するエッジ94が設けられてる。遠位チップ90の近位端部95には、ステム96が形成され、可撓性コイル14を挿入する(
図3参照)ことによって、遠位コア部13の遠位端部24内に挿入し、遠位端部24上に取り付けることができるように構成されている。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0024】
他の実施態様においては、
図14Aないし
図14Eに示されるように、部分的に円錐状をなした遠位チップ100は、ほぼ円錐状の表面101を有している。部分的に円錐状をなした遠位チップ100の遠位端部103内に、スルーホール102が形成され、それが固いプラークに係合するときに、遠位チップ100を正確な位置に保持するエッジ104が提供されている。遠位チップ100の近位端部105には、スルーホール102が設けられ、遠位コア部13の遠位端部24上に取り付ける(
図3参照)ことできるように構成されている。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0025】
さらに他の実施態様においては、
図15Aないし
図15Eに示されるように、角張った形状の遠位チップ110は部分的に円錐状の表面111を有している。凹部112が、角張った形状の遠位チップ110の遠位端部113に形成され、凹部112が固いプラークに係合するときに、遠位チップ110を正確な位置に保持するエッジ114を提供している。医師が、可撓性コイル14の端部を(指の圧力で)若干曲げて、押し込んだときに、ガイドワイヤが特定の方向に進むように、角張った形状の遠位チップ110は曲がっている。慢性的に狭窄した病変を取り扱うときは、遠位チップ110の角のある部分が短い方が望ましい。この実施態様によれば、ガイドワイヤ10の遠位チップ110を短く小さくすることができる。遠位チップ110の近位端部115には、ステム116が形成され、可撓性コイル14を差し込む(
図3参照)ことによって、遠位コア部13の遠位端部24に挿入し、取り付けることができるようになっている。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0026】
さらに別の実施態様においては、
図16Aないし
図16Eに示されるように、部分的に円錐状をなした遠位チップ120はほぼ円錐状の表面121を有している。凹部122が部分的に円錐状をなした遠位チップ120の遠位端部123に設けられており、凹部122が固いプラークに係合するときに、遠位チップ120を正確な位置に保持するエッジ124を提供している。遠位チップ120の近位端部125には、遠位コア部13の遠位端部24を取り付ける(
図3参照)キャビティ126が形成されている。粗面化された面28は、遠位チップ24と固いプラークとの間の摩擦係合を増大させて、遠位チップがプラークを通って、前進させることが可能にしている。
【0027】
上述した実施態様はいずれも、その目的および意図は、石灰化された線維性組織(CTO)に係合しやすくするために、遠位チップの表面粗さを大きくすることにある。遠位チップの表面粗さを大きくするためいくつかの製造方法が開発されている。一つの方法は、遠位チップを半田付けまたは他の方法でガイドワイヤの遠位端部24に取り付け、または可撓性コイル14に挿入し、遠位チップをmicro bead blasting、レーザによる粗面化、サンドペーパーによる粗面化、micro machiningおよびワイヤブラシ仕上げによって、処理して、所望の表面粗さに仕上げる方法である。これらの方法は他の方法よりも制御が容易であり、レーザによる粗面化は再現性に優れ、信頼できる製造方法であり、組織のタイプおよび表面粗さの程度についての選択肢も多く、とくに好ましい。
【0028】
他の製造方法においては、遠位チップをコンポーネントレベル(component level)で、表面処理工程で製造することができる。こうして製造されたチップは半田/溶接/接着あるいは他の適当な手段を用いて、コアワイヤおよびコイルに接着される。チップは、スタンピング(stamping)、鋳造(casting)、機械加工(machining)、マイクロ・モールディング、金属射出成形および3Dプリンティング(3D printing)によって製造し、その後、bead blasting, レーザによる粗面化(laser roughening)、機械加工、サンドペーパーを用いた粗面化、化学エッチング、化学蒸着または物理蒸着などの表面処理法によって処理することによって製造することができる。ここに例示した方法はこれらに限定する趣旨ではない。
図7Aないし
図16Eは、こうして機械仕上げされ、表面処理されて、ガイドワイヤに取り付けられたチップの例を示している。
【0029】
以上、半田の本体21から製造された遠位チップ20につき説明を加えたが、他の金属合金によって、遠位チップがつくられていても、プラスチックまたはポリマーによって、遠位チップが作られていてもよい。