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  • 特開-誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169650
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/40 20060101AFI20241128BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H05B6/40
H05B6/10 381
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165825
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2022148421の分割
【原出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219004
【氏名又は名称】島田理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】白石 匠
(57)【要約】
【課題】被加熱物全体を従来より一層均一に加熱することができるようにして、被加熱物全体における加熱分布について均一性の一層の向上を図る。
【解決手段】誘導加熱により被加熱物を加熱する誘導加熱装置において、螺旋形状に巻回されて一筆書き状に形成された誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルの一方の端部と誘導加熱コイルの他方の端部との間に接続された高周波電圧源とを有し、誘導加熱コイルにおける螺旋形状の外側に被加熱物を配置して、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱装置であって、誘導加熱コイルにおけるコイル軸の略中央部に隣接して位置するコイル部分同士の間の間隔を、隣接して位置する他のコイル部分同士の間の間隔よりも広く設定した。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱により被加熱物を加熱する誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、
螺旋形状に巻回されて一筆書き状に形成された誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルの一方の端部と前記誘導加熱コイルの他方の端部との間に接続された高周波電圧源と
を有する誘導加熱装置を用い、
前記誘導加熱コイルにおける前記螺旋形状の外側に被加熱物を配置して、前記被加熱物を誘導加熱することにより、前記被加熱物を流れる誘導電流の流れの向きを一方向に統一する
ことを特徴とする誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、
前記誘導加熱装置の前記誘導加熱コイルは、前記誘導加熱コイルにおけるコイル軸の略中央部に隣接して位置するコイル部分同士の間の間隔が、隣接して位置する他のコイル部分同士の間の間隔よりも広く設定されていて、前記誘導加熱コイルの前記コイル軸方向における磁界強度の平均化を図る
ことを特徴とする誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、
前記誘導加熱装置は、前記被加熱物が隣接して配置される前記誘導加熱コイルの近傍において、前記被加熱物に対して前記誘導加熱コイルを挟んだ位置に少なくとも1個以上の磁性材が配置されていて、前記誘導加熱コイルにより発生される磁界の磁界強度を強くする
ことを特徴とする誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法。
【請求項4】
請求項3に記載の誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、
前記被加熱物は、平面部位を備えた板状の形状を備えたものであり、前記誘導加熱コイルにおける前記螺旋形状の外側に前記被加熱物の前記平面部位を配置する
ことを特徴とする誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置および誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法に関する。さらに詳細には、本発明は、平面部位を備えた平板などのような板状の形状を備えた被加熱物を加熱する際に用いて好適な誘導加熱装置および誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、誘導加熱装置を用いて、誘導加熱により平面部位を備えた平板などのような板状の形状を備えた被加熱物を加熱する際には、誘導加熱コイルとしては、所謂、パンケーキ型コイルが用いられている。
【0003】
ここで、パンケーキ型コイルとは、線条体を平たい渦巻き形状に多層に巻いたコイルを意味する。
【0004】
こうしたパンケーキ型コイルにより構成される誘導加熱コイル(本明細書においては、「パンケーキ型コイルにより構成される誘導加熱コイル」について、単に「パンケーキ型誘導加熱コイル」と適宜に称することとする。)を備えた誘導加熱装置によれば、パンケーキ型誘導加熱コイルの渦巻き形状の中心部においてはコイルが隣接して配置されることになるため、当該中心部に対置された板状の形状を備えた被加熱物の部位には互いに相殺する向きに流れる誘導電流が発生することになって、誘導電流同士が互いに打ち消し合ってしまい、板状の形状を備えた被加熱物全体を均一に加熱することができないという問題点が指摘されていた。
【0005】
以下に、図1を参照しながら、パンケーキ型誘導加熱コイルを備えた誘導加熱装置によれば、板状の形状を備えた被加熱物全体を均一に加熱することができないという上記において指摘した問題点について詳細に説明することとする。
【0006】
ここで、図1には、パンケーキ型誘導加熱コイルを備えた従来の誘導加熱装置を模式的に示す上面構成説明図があわらされている。
【0007】
従来より、誘導加熱装置として、例えば、図1に示すように、パンケーキ型誘導加熱コイル102と、当該パンケーキ型誘導加熱コイル102に接続された高周波電圧源104とを有し、高周波電圧源104からパンケーキ型誘導加熱コイル102へ高周波電流を供給することにより、板状の形状を備えた被加熱物106を誘導加熱する誘導加熱装置100が知られている。
【0008】
なお、説明の便宜上、図1を記載した紙面に対して垂直上方に立ち上がる方向側を上方向とし、図1を記載した紙面に対して垂直下方に立ち下がる方向側を下方向として説明する。
【0009】
この図1に示す誘導加熱装置100においては、パンケーキ型誘導加熱コイル102における渦巻き形状の上面側に、誘導加熱される対象としての被加熱物106の下面側の平面部位が配置されている。
【0010】
こうしたパンケーキ型誘導加熱コイル102における渦巻き形状の中心部Cにおいては、中心部Cに位置するコイル部分102aとコイル部分102bとが隣接して配置されるため、コイル部分102aに流れる高周波電流102aIの流れの向きとコイル部分102bを流れる高周波電流102bIの流れの向きとが対向することになる。
【0011】
このため、パンケーキ型誘導加熱コイル102を流れる高周波電流により被加熱物106を誘導加熱する際においては、コイル部分102aに流れる高周波電流102aIの流れの向きとコイル部分102bを流れる高周波電流102bIの流れの向きとが対向する中心部Cに対置された被加熱物106の部位において、互いに対向する流れの向き,即ち、互いに相殺する向きに流れる誘導電流が発生することになってしまっており、誘導電流同士が互いに打ち消し合ってしまって加熱が弱くなっていた。
【0012】
このため、パンケーキ型誘導加熱コイル102の中心部C付近に対置するように配置された被加熱物106の部位における加熱温度は、パンケーキ型誘導加熱コイル102の中心部Cから離隔した位置に対置するように配置された被加熱物106の部位における加熱温度と比較すると低くなっていた。
【0013】
即ち、パンケーキ型誘導加熱コイル102を備えた誘導加熱装置100によれば、板状の形状を備えた被加熱物106を加熱する際に、被加熱物106全体を均一に加熱することができず、被加熱物106における加熱分布について均一性に劣るものになっていたということが指摘されていた。
【0014】
また、パンケーキ型誘導加熱コイルを備えた誘導加熱装置においては、パンケーキ型誘導加熱コイルの中心部の磁界強度が弱いため、板状の形状を備えた被加熱物全体がリング状に加熱されることになり、被加熱物全体を均一に加熱することができないというという問題点についても指摘されていた。
【0015】
以下に、図2を参照しながら、パンケーキ型誘導加熱コイルを備えた誘導加熱装置によれば、板状の形状を備えた被加熱物全体がリング状に加熱されることになって、被加熱物全体を均一に加熱することができないという上記において指摘した問題点について詳細に説明することとする。
【0016】
ここで、図2には、図1に示すパンケーキ型誘導加熱コイルを備えた誘導加熱装置について、図1のII-II線によるパンケーキ型誘導加熱コイルの断面部位ならびに当該断面部位における磁界強度のパターンを模式的に示す説明図があらわされている。
【0017】
図2に示すように、パンケーキ型誘導加熱コイル102を備えた誘導加熱装置100においては、パンケーキ型誘導加熱コイル102の中心部Cの磁界強度が弱くなり、板状の形状を備えた被加熱物106全体がリング状に加熱されることになってしまい、被加熱物106を加熱する際に被加熱物106全体を均一に加熱することができず、被加熱物106における加熱分布について均一性に劣るものになっていたということが指摘されていた。
【0018】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記したような従来の技術における種々の問題点などに鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加熱物全体を従来より一層均一に加熱することができるようにして、被加熱物全体における加熱分布について均一性の一層の向上を図るようにした誘導加熱装置および誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明による誘導加熱装置および誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法は、本願発明者が誘導加熱装置における誘導加熱コイルの構成や当該誘導加熱コイルに対して被加熱物を配置する位置などについて創意工夫を発揮したものであり、これにより被加熱物全体を従来より一層均一に加熱することができるようになり、被加熱物全体における加熱分布について均一性の一層の向上を図ることができるようになった。
【0021】
即ち、本発明による誘導加熱装置は、誘導加熱により被加熱物を加熱する誘導加熱装置において、螺旋形状に巻回されて一筆書き状に形成された誘導加熱コイルと、上記誘導加熱コイルの一方の端部と上記誘導加熱コイルの他方の端部との間に接続された高周波電圧源とを有し、上記誘導加熱コイルにおける上記螺旋形状の外側に被加熱物を配置して、上記被加熱物を誘導加熱する誘導加熱装置であって、上記誘導加熱コイルにおけるコイル軸の略中央部に隣接して位置するコイル部分同士の間の間隔を、隣接して位置する他のコイル部分同士の間の間隔よりも広く設定したものである。
【0022】
また、本発明による誘導加熱装置は、上記した本発明による誘導加熱装置において、上記被加熱物に隣接する上記誘導加熱コイルの近傍において、上記被加熱物に対して上記誘導加熱コイルを挟んだ位置に少なくとも1個以上の磁性材を配置したものである。
【0023】
また、本発明による誘導加熱装置は、上記した本発明による誘導加熱装置において、上記被加熱物は、平面部位を備えた板状の形状を備えたものである。
【0024】
また、本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法は、誘導加熱により被加熱物を加熱する誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、螺旋形状に巻回されて一筆書き状に形成された誘導加熱コイルと、上記誘導加熱コイルの一方の端部と上記誘導加熱コイルの他方の端部との間に接続された高周波電圧源とを有する誘導加熱装置を用い、上記誘導加熱コイルにおける上記螺旋形状の外側に被加熱物を配置して、上記被加熱物を誘導加熱することにより、上記被加熱物を流れる誘導電流の流れの向きを一方向に統一するようにしたものである。
【0025】
また、本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法は、上記した本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、上記誘導加熱装置の上記誘導加熱コイルは、上記誘導加熱コイルにおけるコイル軸の略中央部に隣接して位置するコイル部分同士の間の間隔が、隣接して位置する他のコイル部分同士の間の間隔よりも広く設定されていて、上記誘導加熱コイルの上記コイル軸方向における磁界強度の平均化を図るようにしたものである。
【0026】
また、本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法は、上記した本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、上記誘導加熱装置は、上記被加熱物が隣接して配置される上記誘導加熱コイルの近傍において、上記被加熱物に対して上記誘導加熱コイルを挟んだ位置に少なくとも1個以上の磁性材が配置されていて、上記誘導加熱コイルにより発生される磁界の磁界強度を強くするようにしたものである。
【0027】
また、本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法は、上記した本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法において、上記被加熱物は、平面部位を備えた板状の形状を備えたものであり、上記誘導加熱コイルにおける上記螺旋形状の外側に上記被加熱物の上記平面部位を配置するようにしたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、以上説明したように構成されているので、被加熱物全体を従来より一層均一に加熱することができるようになり、被加熱物全体における加熱分布について均一性の一層の向上を図ることができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、パンケーキ型誘導加熱コイルを備えた従来の誘導加熱装置を模式的に示す上面構成説明図である。
図2図2は、図1に示すパンケーキ型誘導加熱コイルを備えた誘導加熱装置について、図1のII-II線によるパンケーキ型誘導加熱コイルの断面部位ならびに当該断面部位における磁界強度のパターンを模式的に示す説明図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置を模式的に示す上面構成説明図である。
図4図4は、図3に示す誘導加熱装置のA矢視による構造を模式的に示す構成説明図である。なお、図4においては、高周波電圧源に関連する図示については省略した。
図5図5は、図3に示す誘導加熱装置のV-V線による断面部位を模式的に示す構成説明図である。なお、図5においては、高周波電圧源に関連する図示については省略した。
図6図6は、誘導加熱コイルに流れる高周波電流の流れの向きと被加熱物に流れる誘導電流の流れの向きとを模式的に示す図4に相当する説明図である。
図7図7は、被加熱物に流れる誘導電流の流れの向きを模式的に示す図3に相当する説明図である。
図8図8は、図3に示す誘導加熱装置について、図7のVIII-VIII線による誘導加熱コイルの断面部位ならびに当該断面部位における磁界強度のパターンを模式的に示す説明図である。
図9図9は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱装置として、磁性材を有していない本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置を模式的に示す説明図であって、図6に相当する説明図である。
図10図10は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱装置として、磁性材を1個配置した本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置を模式的に示す説明図であって、図7に相当する説明図である。
図11図11は、本発明の実施の形態の他の例による誘導加熱装置として、磁性材を4個配置した本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置を模式的に示す説明図であって、図7に相当する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による誘導加熱装置および誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法の実施の形態の一例について詳細に説明するものとする。
【0031】
なお、各図を参照しながら行う以下の説明において、XYZ直交座標系におけるX方向は、誘導加熱コイルのコイル軸の延長方向を示し、また、XYZ直交座標系におけるY方向は、XY平面においてX方向と直交する方向を示し、また、XYZ直交座標系におけるZ方向は、XY平面と直交する高さ方向を示す。
【0032】
さらに、以下の説明においては、説明の便宜上、X方向については、図3を記載した紙面における左方側を左方向とするとともに右方側を右方向とし、Y方向については、図3を記載した紙面における下方側を前方向とするとともに上方側を後方向とし、Z方向については、図3を記載した紙面に対して垂直上方に立ち上がる方向側を上方向とし、図3を記載した紙面に対して垂直下方に立ち下がる方向側を下方向として説明する。
【0033】
なお、上記した方向については、説明の便宜上定めた方向に過ぎないものであって、本発明による誘導加熱装置の設置態様や本発明による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法の使用態様を何ら限定するものではないことは勿論であって、また、本発明を何ら限定するものでもないことも勿論である。
【0034】
(I) 本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置の構成についての説明
【0035】
ここで、図3には、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置を模式的に示す上面構成説明図があらわされている。
【0036】
また、図4には、図3に示す誘導加熱装置のA矢視による構造を模式的に示す構成説明図があらわされている。なお、図4においては、高周波電圧源に関連する図示については省略した。
【0037】
さらに、図5には、図3に示す誘導加熱装置のV-V線による断面部位を模式的に示す構成説明図があらわされている。なお、図5においては、高周波電圧源に関連する図示については省略した。
【0038】
本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置10は、螺旋形状(ソレノイド形状)に巻回されて一筆書き状に形成された誘導加熱コイル12と、当該誘導加熱コイル12の一方の端部12aと他方の端部12bとの間に接続された高周波電圧源14と、当該誘導加熱コイル12のZ方向上方側に位置するコイル部分の近傍に配置された2個の磁性材16Lおよび磁性材16Rとを有して構成されている。
【0039】
なお、上記した磁性材には、ケイ素鋼板材やアモルフォス材やフェライト材などが含まれる。
【0040】
より詳細には、本実施の形態における誘導加熱コイル12は、誘導加熱コイル12を構成する線条体がYZ平面において略長円形状を備えるようにして、一方の端部12aと他方の端部12bとの間にX方向に沿って8回分巻回されて構成されている。
【0041】
ここで、線条体を8回分巻回した誘導加熱コイル12の各巻回分のコイル部分について、図3における左方側、即ち、誘導加熱コイル12の一方の端部12a側から右方側、即ち、誘導加熱コイル12の他方の端部12b側に向けて、各巻回により形成されるコイル部分をそれぞれ符号12-1、12-2、12-3、12-4、12-5、12-6、12-7、12-8で示す。
【0042】
誘導加熱コイル12において、X方向に沿うコイル軸の略中央部に位置するコイル部分12-4とコイル部分14-5との間の間隔G1は、コイル部分12-1とコイル部分12-2との間の間隔G2、コイル部分12-2とコイル部分12-3との間の間隔G3、コイル部分12-3とコイル部分12-4との間の間隔G4、コイル部分12-5とコイル部分12-6との間の間隔G5、コイル部分12-6とコイル部分12-7との間の間隔G6ならびにコイル部分12-7とコイル部分12-8との間の間隔G7よりも広く(大きく)設定されている。
【0043】
なお、間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5、間隔G6ならびに間隔G7については、それぞれが同じ間隔となるように設定してもよいし、あるいは、それぞれの間隔が異なる間隔となるように設定してもよいし、あるいは、いくつかの間隔が同じになるとともにその他の間隔が異なるように設定してもよい。
【0044】
要するに、間隔G1、間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5、間隔G6ならびに間隔G7については、誘導加熱コイル12におけるX方向に沿うコイル軸の略中央部に位置するコイル部分12-4とコイル部分14-5との間の間隔G1が、他のコイル部分同士の間隔よりも広く、即ち、他のコイル部分同士の間隔よりも大きくなるによう設定すればよい。
【0045】
磁性材16Lならびに磁性材16Rは、それぞれが直方体形状を備えており、YZ平面において形成された誘導加熱コイル12の略長円形状の上方に位置するコイル部分に隣接するようにして、当該略長円形状の内側に配置されている。
【0046】
具体的には、磁性材16Lは、誘導加熱コイル12のコイル部分12-1、コイル部分12-2、コイル部分12-3およびコイル部分12-4に隣接して配置され、一方、磁性材16Rは、誘導加熱コイル12のコイル部分12-5、コイル部分12-6、コイル部分12-7およびコイル部分12-8に隣接して配置されている。
【0047】
即ち、磁性材16Lならびに磁性材16Rは、被加熱物18に隣接する誘導加熱コイル12の近傍において、被加熱物18に対して誘導加熱コイル12を挟んだ位置に配置される。
【0048】
なお、本実施の形態においては、被加熱物18は、平面部位を備えた平板などのような板状の形状を備えたものである。
【0049】
(II) 本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法についての説明
【0050】
ここで、図6には、誘導加熱コイルに流れる高周波電流の流れの向きと被加熱物に流れる誘導電流の流れの向きとを模式的に示す図4に相当する説明図があらわされている。
【0051】
また、図7には、被加熱物に流れる誘導電流の流れの向きを模式的に示す図3に相当する説明図があらわされている。
【0052】
さらに、図8には、図3に示す誘導加熱装置について、図7のVIII-VIII線による誘導加熱コイルの断面部位ならびに当該断面部位における磁界強度のパターンを模式的に示す説明図があらわされている。
【0053】
(II-1) 以上の構成において、誘導加熱装置10においては、高周波電圧源14から誘導加熱コイル12へ高周波電流を供給することにより、板状の形状を備えた被加熱物18を誘導加熱することができる。
【0054】
より詳細には、誘導加熱装置10により被加熱物18を誘導加熱する際には、YZ平面において形成された誘導加熱コイル12の略長円形状の上方に位置するコイル部分の外側、即ち、誘導加熱コイル12における螺旋形状(ソレノイド形状)の外側(外径側)であっって、磁性材16Lならびに磁性材16Rが配置されたコイル部分の上方位置に被加熱物18を配置する。
【0055】
ここで、高周波電圧源14から誘導加熱コイル12へ高周波電流を供給すると、図3図4ならびに図6において破線矢印で示すように、誘導加熱コイル12において高周波電流は一方向に向いて流れることになる。
【0056】
このように、誘導加熱装置10においては、被加熱物18が隣接して配置される誘導加熱コイル12の略長円形状の上方に位置するコイル部分において、誘導加熱コイル12に流れる高周波電流の流れの向きが揃うことになり、当該コイル部分においては対向する向きに流れる高周波電流は存在しない。
【0057】
従って、誘導加熱装置10に対して上記した位置関係、具体的には、YZ平面において形成された誘導加熱コイル12の略長円形状の上方に位置するコイル部分の外側、即ち、誘導加熱コイル12における螺旋形状(ソレノイド形状)の外側(外径側)に被加熱物18を配置すると、図6ならびに図7に示すように、誘導加熱コイル12の略長円形状の上方に位置するコイル部分に対置された被加熱物18には、高周波電流の流れの向きとは逆向きに流れる誘導電流が流れることになる。
【0058】
具体的には、図6ならびに図7において一点鎖線矢印で示すように、誘導電流は被加熱物18の表面を一方向に向いて流れることになる。
【0059】
このため、誘導加熱装置10によれば、螺旋形状(ソレノイド形状)に巻回されて一筆書き状に形成された誘導加熱コイル12における上記した長円形状の外側(つまり、螺旋形状(ソレノイド形状)の外側である。)、即ち、上記した長円形状の外径側(つまり、螺旋形状(ソレノイド形状)の外径側である。)に被加熱物18を配置して誘導加熱することにより、被加熱物18を流れる誘導電流も高周波電流と同様に同一の方向に流れるようになって、誘導電流の流れの向きが一方向に統一されることになる。
【0060】
即ち、誘導加熱装置10によれば、被加熱物18において互いに相殺する向き、即ち、対向する向きに流れる誘導電流が発生することがないので、誘導電流同士が互いに打ち消し合うことにより加熱が弱まる領域を低減することができるようになって、被加熱物18全体をより均一に加熱することができるようになる。
【0061】
このため、被加熱物18全体における加熱分布について、均一性の一層の向上を図ることができるようになる。
【0062】
(II-2) また、本願発明者の知見によれば、誘導加熱コイル12における上記した間隔G1、間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5、間隔G6および間隔G7について、これらの間隔を全て等間隔とした場合には、誘導加熱コイル12におけるX方向に沿うコイル軸の略中央部に位置するコイル部分12-4ならびにコイル部分14-5における磁界強度が他のコイル部分の磁界強度よりも大きくなってしまい、このため、被加熱物18におけるコイル部分12-4ならびにコイル部分14-5と対置する磁界強度が大きい領域は、その他の領域よりもより強く加熱されることになってしまっていた。
【0063】
本願発明者は、上記した本願発明者の知見から、誘導加熱コイル12におけるX方向に沿うコイル軸の略中央部に位置するコイル部分12-4とコイル部分14-5との間の間隔G1を他の間隔G2乃至G7よりも広く、即ち,大きく設定するようにした。
【0064】
これにより、誘導加熱コイル12のX方向、即ち、誘導加熱コイル12のコイル軸方向における磁界強度の平均化が図られ、コイル部分12-4ならびにコイル部分14-5に対置される被加熱物18の領域における加熱が抑制されることになり、被加熱物18全体をより均一に加熱することができるようになる。
【0065】
このため、被加熱物18全体における加熱分布について、均一性の一層の向上を図ることができるようになる。
【0066】
(II-3) さらに、誘導加熱装置10によれば、被加熱物18が対置される誘導加熱コイル12の領域、より詳細には、被加熱物18に隣接する誘導加熱コイル12の近傍において、被加熱物18に対して誘導加熱コイル12を挟んだ位置に、磁性材16Lならびに磁性材16Rを配設している。
【0067】
このため、上記したように配置された磁性材16Lならびに磁性材16Rの作用により、誘導加熱コイル12により発生される磁界の磁界強度をより強くすることができ、誘導加熱装置10において発生される磁界強度を向上することができようになる。
【0068】
(II-4) 上記した誘導加熱装置10においては、上記(II-1)項において説明した技術(螺旋形状(ソレノイド形状)に巻回されて一筆書き状に形成された誘導加熱コイル12における当該螺旋形状(ソレノイド形状)の外側、即ち、当該螺旋形状(ソレノイド形状)の外径側に被加熱物18を配置して誘導加熱することにより、被加熱物18を流れる誘導電流の流れの向きを一方向に統一する技術である。)や、上記(II-2)項において説明した技術(誘導加熱コイル12におけるコイル軸の略中央部に隣接して位置するコイル部分同士の間の間隔を、隣接して位置する他のコイル部分同士の間の間隔よりも広く、即ち,大きく設定することにより、誘導加熱コイル12のコイル軸方向における磁界強度の平均化を図る技術である。)や、上記(II-3)項において説明した技術(被加熱物18に隣接する誘導加熱コイル12の近傍において、被加熱物18に対して誘導加熱コイル12を挟んだ位置に、磁性材16Lならびに磁性材16Rを配設して、誘導加熱コイル12により発生される磁界の磁界強度をより強くする技術である。)を適宜に組み合わせることによって、被加熱物18全体をより均一に加熱することができるようになり、被加熱物18全体における加熱分布について、均一性の一層の向上を図ることができるようになる。
【0069】
(III) 本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置および誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法の作用効果
【0070】
従って、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置10および誘導加熱装置10を用いた誘導加熱方法によれば、同一の方向に高周波電流が流れる誘導加熱コイル12上に被加熱物18を配置することにより、被加熱物18において隣接して流れる誘導電流同士が互いに打ち消すことがないので、被加熱物18をより均一に加熱することができる。
【0071】
また、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置10および誘導加熱装置10を用いた誘導加熱方法によれば、誘導加熱コイル12におけるコイル軸の略中央部に位置するコイル部分の間の間隔G1を、他のコイル部分の間の間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5、間隔G6および間隔G7よりも広く(大きく)設定することにより、磁界強度の均一を図ることがきるようになり、被加熱物18をより均一に加熱することができる。
【0072】
さらに、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置10および誘導加熱装置10を用いた誘導加熱方法によれば、磁性材16Lならびに磁性材16Rを配置することにより磁界強度を大きくすることができ、これにより被加熱物18より効果的に加熱することができるようになる。
【0073】
このため、本発明の実施の形態の一例による誘導加熱装置10および誘導加熱装置10を用いた誘導加熱方法によれば、被加熱物18全体における加熱分布について均一性の一層の向上を図ることができるようになる。
【0074】
(IV) その他の実施の形態について
【0075】
なお、上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができるものである。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換えあるいは変更などを適宜に行うことができる。
【0076】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(IV-1)乃至(IV-9)に説明するように変形してもよい。
【0077】
(IV-1) 上記した実施の形態においては、誘導加熱装置10が磁性材16Lならびに磁性材16Rを有する場合について説明したが、図9に示すように、誘導加熱装置20が磁性材を有していなくてもよいことは勿論である。こうした磁性材を有していない誘導加熱装置20においても、上記(II-1)項において説明した技術による作用効果ならびに上記(II-2)項において説明した技術による作用効果を享受できるものであり、被加熱物18全体をより均一に加熱することができるようになって、被加熱物18全体における加熱分布について、均一性の一層の向上を図ることができるようになる。
【0078】
(IV-2) 上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、間隔G1については、例えば、被加熱物18の加熱(温度)パターンを確認しながら好ましい間隔を実験的に求めるようにすればよい。同様に、間隔G2、間隔G3、間隔G4、間隔G5、間隔G6ならびに間隔G7についても、被加熱物18の加熱(温度)パターンを確認しながら好ましい間隔を実験的に求めるようにすればよい。
【0079】
(IV-3) 上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、磁性材16Lならびに磁性材16Rの配置位置については、例えば、被加熱物18の加熱(温度)パターンを確認しながら好ましい配置位置を実験的に求めるようにすればよい。
【0080】
(IV-4) 上記した実施の形態においては、誘導加熱装置10により平面部位を備えた平板などの板状の被加熱物18を加熱する場合について説明したが、誘導加熱装置10により加熱する対象である被加熱物の形状は、平板などの板状体に限らないことは勿論である。本発明による誘導加熱装置10は、各種の形状の被加熱物を加熱することができる。
【0081】
(IV-5) 上記した実施の形態においては、誘導加熱コイル12の巻回数を8回とした場合について説明したが、誘導加熱コイル12の巻回数は8回に限られるものではないことは勿論である。誘導加熱コイル12の巻回数は、7回以下の複数回でもよいし、あるいは、9回以上の複数回でもよい。
【0082】
(IV-6) 上記した実施の形態においては、誘導加熱コイル12をYZ平面において略長円形状に巻回した場合について説明したが、誘導加熱コイル12を巻回する際の形状はYZ平面において略長円形状に限られるものではないことは勿論である。設計条件などに応じて、誘導加熱コイル12をYZ平面において略四角形状や略円形形状あるいは略三角形状に巻回してもよい。さらには、誘導加熱コイル12をYZ平面において略五角以上の適宜の多角形形状に巻回するようにしてもよい。
【0083】
(IV-7) 上記した実施の形態においては、磁性材を2個(磁性材16Lおよび磁性材16Rである。)配置した場合について説明したが、配置する磁性材の個数は2個に限られるものではないことは勿論である。設計条件や実験結果などに応じて、磁性材の配置位置や配置個数は適宜に設定すればよい。例えば、図10に示すように、誘導加熱装置30が磁性材32を1個配置するようにしてもよい。あるいは、図11に示すように、誘導加熱装置40が磁性材42を4個配置するなどしてもよい。
【0084】
(IV-8) 上記した実施の形態においては、YZ平面において形成された誘導加熱コイル12の略長円形状の上方に位置するコイル部分の外側に被加熱物18を対置した場合について説明したが、誘導加熱コイル12に対して被加熱物18を配置する場所は、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、YZ平面において形成された誘導加熱コイル12の略長円形状の下方に位置するコイル部分の外側に被加熱物18を対置してもよいし、あるいは、YZ平面において形成された誘導加熱コイル12の略長円形状の左方に位置するコイル部分の外側に被加熱物18を対置してもよいし、あるいは、YZ平面において形成された誘導加熱コイル12の略長円形状の右方に位置するコイル部分の外側に被加熱物18を対置してもよい。要するに、誘導加熱装置10においては、誘導加熱コイル12における螺旋形状(ソレノイド形状)の外側、即ち、螺旋形状(ソレノイド形状)の外径側に被加熱物18を配置すればよい。
【0085】
(IV-9) 上記した実施の形態ならびに上記した(IV-1)乃至(IV-8)に示す各実施の形態や変形例などは、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、誘導加熱により各種の形状、例えば、平面部位を備えた平板などのような板状の形状を備えた被加熱物を加熱する際に用いると極めて有用である。
【符号の説明】
【0087】
10 誘導加熱装置
12 誘導加熱コイル
12a 一方の端部
12b 他方の端部
12-1 コイル部分
12-2 コイル部分
12-3 コイル部分
12-4 コイル部分
12-5 コイル部分
12-6 コイル部分
12-7 コイル部分
12-8 コイル部分
14 高周波電圧源
16L 磁性材
16R 磁性材
18 被加熱物
20 誘導加熱装置
30 誘導加熱装置
32 磁性材
40 誘導加熱装置
42 磁性材
G1 コイル部分12-4とコイル部分12-5との間の間隔
G2 コイル部分12-1とコイル部分12-2との間の間隔
G3 コイル部分12-2とコイル部分12-3との間の間隔
G4 コイル部分12-3とコイル部分12-4との間の間隔
G5 コイル部分12-5とコイル部分12-6との間の間隔
G6 コイル部分12-6とコイル部分12-7との間の間隔
G7 コイル部分12-7とコイル部分12-8との間の間隔
100 誘導加熱装置
102 パンケーキ型誘導加熱コイル
102a コイル部分
102aI 高周波電流
102b コイル部分
102bI 高周波電流
104 高周波電圧源
106 被加熱物
C 中心部
図1
図2
図3
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図10
図11