(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169659
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166018
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2020076433の分割
【原出願日】2020-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】植原 裕治
(57)【要約】
【課題】ヒータによって透過部に発生する熱の分布のばらつきを抑える。
【解決手段】透過部300は、基材310、透明導電層320、第1端子322及び第2端子324を有している。透明導電層320は、少なくとも1層の酸化物半導体層を含んでいる。酸化物半導体層は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)層である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を出射する光学装置と、
前記光学装置を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記光学装置の前記電磁波を透過させる透過部と、
を備え、
前記透過部は、透明導電層を有し、
前記透過部は、基材をさらに有し、
前記透過部は、前記筐体の一部である取付枠に取り付けられており、
前記基材のうち前記取付枠の内側全面を含む領域において、前記透明導電層は、前記基材の両面のうちの少なくとも一方の面の全体に設けられている、センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置において、
前記透明導電層の少なくとも一部分は、前記透過部のうち前記電磁波が透過する領域に設けられている、センサ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサ装置において、
前記透明導電層は、前記筐体の外側よりも内側の近くに位置している、センサ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記透明導電層に電気的に接続された第1端子と、
前記透明導電層に電気的に接続され、前記透明導電層の少なくとも一部分を挟んで前記第1端子に対向する第2端子と、
をさらに備え、
前記第1端子と前記第2端子とは、実質的に平行に延伸している、センサ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のセンサ装置において、
前記第1端子の長さは、前記第2端子の長さの95%以上105%以下である、センサ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記透明導電層は、酸化物半導体層を含む、センサ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサ装置において、
前記酸化物半導体層は、ITO層を含む、センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等の可動反射部を有するLiDAR(Light Detection And Ranging)、RADAR(RAdio Detection And Ranging)等の光学装置が開発されている。光学装置は、可動反射部による赤外線等の電磁波の反射によって、光学装置の外部に位置する物体を走査する。
【0003】
特許文献1には、レーザレーダのレンズにヒータが設けられることが記載されている。ヒータによってレンズを加熱することで、レンズに付着した水滴の凍結が防止される。ヒータとしては、プリントよってレンズに焼き付けられた熱線ヒータや、レンズに貼り付けられたフィルム状ヒータが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1に記載されているように、光学装置から出射される電磁波を透過させるための透過部を熱線ヒータやフィルム状ヒータによって加熱することがある。熱線ヒータやフィルム状ヒータは、当該ヒータによって電磁波が遮断されるため、透過部のうち電磁波が透過する領域からずらして配置する必要がある。しかしながら、この場合、ヒータによって透過部に発生する熱の分布に比較的大きなばらつきが生じ得る。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、ヒータによって透過部に発生する熱の分布のばらつきを抑えることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
電磁波を出射する光学装置と、
前記光学装置を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記光学装置の前記電磁波を透過させる透過部と、
を備え、
前記透過部は、透明導電層を有し、
前記透過部は、基材をさらに有し、
前記透過部は、前記筐体の一部である取付枠に取り付けられており、
前記基材のうち前記取付枠の内側全面を含む領域において、前記透明導電層は、前記基材の両面のうちの少なくとも一方の面の全体に設けられている、センサ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るセンサ装置を斜め前から見た図である。
【
図3】
図1及び
図2に示した透過部の第2面側の平面図である。
【
図5】比較形態1に係る透過部の第2面側の平面図である。
【
図6】比較形態2に係る透過部の第2面側の平面図である。
【
図7】実施形態に係る透過部、比較形態1に係る透過部及び比較形態2に係る透過部の各々における加熱による温度の時間変化を示すグラフである。
【
図8】実施形態に係る透過部、比較形態1に係る透過部及び比較形態2に係る透過部の各々における風の吹き当てによる温度の時間変化を示すグラフである。
【
図9】
図1及び
図2に示した筐体に収容される光学装置の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係るセンサ装置10を斜め前から見た図である。
図2は、
図1に示したセンサ装置10の分解図である。なお、
図2では、
図1に示した筐体200内に収容される光学装置100を図示していない。
【0011】
センサ装置10は、光学装置100、筐体200及び透過部300を備えている。光学装置100は、電磁波を出射する。筐体200は、光学装置100を収容している。透過部300は、筐体200に設けられている。透過部300は、光学装置100から出射された電磁波を透過させる。透過部300は、第1面302及び第2面304を有している。透過部300の第1面302及び第2面304は、互いに反対側にある。
【0012】
図1及び
図2において、第1方向Xは、センサ装置10の前後方向である。第1方向Xを示す矢印によって示される方向である第1方向Xの正方向は、センサ装置10の前方向である。第1方向Xを示す矢印によって示される方向の反対方向である第1方向Xの負方向は、センサ装置10の後方向である。第2方向Yは、第1方向Xに交差しており、具体的には直交している。第2方向Yは、センサ装置10の左右方向である。第2方向Yを示す矢印によって示される方向である第2方向Yの正方向は、センサ装置10の前方から見て右方向である。第2方向Yを示す矢印によって示される方向の反対方向である第2方向Yの負方向は、センサ装置10の前方から見て左方向である。第3方向Zは、第1方向X及び第2方向Yの双方に交差しており、具体的には直交している。第3方向Zは、センサ装置10の上下方向である。第3方向Zを示す矢印によって示される方向である第3方向Zの正方向は、センサ装置10の上方向である。第3方向Zを示す矢印によって示される方向の反対方向である第3方向Zの負方向は、センサ装置10の前方向である。
【0013】
光学装置100は、所定位置から一方向、具体的には第1方向Xの正方向に向かうにつれて拡大する視野Fを有している。上記所定位置は、視野Fが拡大し始める起点である。また、上記所定位置は、筐体200の内部に位置している。視野Fは、光学装置100が物体等の対象を検出可能な領域である。例えば、光学装置100は、上記所定位置から視野F内のいずれかの方向に向けて赤外線等の電磁波を出射可能になっている。
【0014】
光学装置100は、筐体200に取り外し可能に取り付けられていてもよいし、又は筐体200から取り外し不可能に固定されていてもよい。光学装置100が筐体200に取り外し可能に取り付けられている場合、光学装置100は、例えば、ネジ等の固定具によって筐体200に固定されていてもよい。またこの場合、筐体200は、光学装置100が筐体200に取り付けられていない状態で製造され、販売される等、使用されてもよい。光学装置100が筐体200から取り外し不可能に固定されている場合、光学装置100は、例えば溶接等の接合処理によって、筐体200と一体となって形成されていてもよい。
【0015】
透過部300は、透過部300の第1面302及び透過部300の第2面304の双方とも平坦かつ平行なカバーとなっている。透過部300の第2面304は、例えば両面テープ等の粘着剤によって、筐体200の取付枠210に取り付けられている。これによって、透過部300は、透過部300の第1面302が透過部300の第2面304に対して筐体200の前側に配置されるように、筐体200の前面側に配置されている。すなわち、透過部300が筐体200に取り付けられたとき、透過部300の第1面302及び第2面304は、それぞれ、透過部300の前面及び後面となっている。なお、透過部300を筐体200に取り付ける方法は、本実施形態に係る方法に限定されない。また、透過部300は、筐体200と一体となっていてもよい。さらに、透過部300は、透過部300の第1面302及び透過部300の第2面304のうちの少なくとも一方が湾曲したレンズであってもよい。
【0016】
透過部300は、光学装置100の視野Fと交差している。本実施形態において、透過部300は、透過部300の上側部分が透過部300の下側部分よりもセンサ装置10の前方に側に位置するように、筐体200の高さ方向に対して斜めに傾いている。言い換えると、透過部300の下側部分は、透過部300の上側部分よりも、視野Fの上記一方向において、視野Fの上記所定位置の近くに位置している。しかしながら、筐体200に対する透過部300の配置は、本実施形態に係る配置に限定されない。例えば、透過部300は、筐体200の高さ方向に平行に配置されていてもよい。
【0017】
図3は、
図1及び
図2に示した透過部300の第2面304側の平面図である。
図4は、
図3のA-A断面図である。
【0018】
透過部300は、基材310、透明導電層320、第1端子322及び第2端子324を有している。
【0019】
基材310は、少なくとも、学装置100から出射される電磁波の波長について、透明となっている。基材310が透明であるとは、例えば、光学装置100から出射される電磁波が基材310に入射角0°で入射する場合において光学装置100から出射される電磁波のピーク波長の透過率が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であることを意味する。このピーク波長は、例えば、850nm以上950nm以下のいずれかの波長である。
【0020】
基材310は、電気絶縁性となっている。基材310は、例えば、ガラス基板などの無機材料からなっていている。ガラスとしては、例えば、強化ガラス、ガラスセラミック等が挙げられる。或いは、基材310は、樹脂フィルム等の有機材料からなっていてもよい。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル等が挙げられる。
【0021】
透明導電層320は、少なくとも、学装置100から出射される電磁波の波長について、透明となっている。透明導電層320が透明であるとは、例えば、光学装置100から出射される電磁波が透明導電層320に入射角0°で入射する場合において光学装置100から出射される電磁波のピーク波長の透過率が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であることを意味する。
【0022】
透明導電層320は、少なくとも1層の酸化物半導体層を含んでいる。酸化物半導体層は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)層、IZO(Indium Zinc Oxide)層、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)層、ZnO(Zinc Oxide)層又はIGZO(Indium Galium Zinc Oxide)層である。タッチパネル等、幅広い分野で使用されていることで安定的な供給が可能であることや、-40℃から氷を解かせるだけの熱を発生させることができること等の観点から、透明導電層320は、ITO層を含むことが好ましい。透明導電層320は、酸化物半導体層に代えて、又は酸化物半導体層とともに、例えば、銀ナノワイヤー又はグラフェンを含んでいてもよい。
【0023】
透明導電層320のうち第2面304側の面、すなわち筐体200の内側に位置する面は、不図示の反射防止(AR)コートによって覆われていてもよい。ARコートが設けられていることによって、光学装置100から出射された電磁波が透過部300の第2面304によって反射されることを抑制することができる。なお、ARコートは、透明導電層320のうち第1面302側の面や基材310の第1面302にも設けられていてもよい。
【0024】
透明導電層320は、基材310の両面のうちの少なくとも一方の面の全体に設けられている。本実施形態では、透明導電層320は、基材310の両面のうち筐体200の内側に位置する面の全体に設けられている。例えば、透明導電層320は、マスクを用いない蒸着によって基材310の両面のうちの少なくとも一方の面上に形成されている。したがって、マスクを用いる蒸着又はリソグラフィを用いるパターニングによって透明導電層320が形成されると比較して、透明導電層320を安価に形成することができる。しかしながら、透明導電層320は、マスクを用いる蒸着又はリソグラフィを用いるパターニングによって透明導電層320は形成されてもよい。
【0025】
また、透明導電層320は、筐体200の外側よりも内側の近くに位置している。したがって、透明導電層320が筐体200の内側よりも外側の近くに位置している場合と比較して、透明導電層320が外気に曝されることによる透明導電層320の劣化を抑制することができる。しかしながら、透明導電層320は、筐体200の内側よりも外側の近くに位置していてもよい。
【0026】
透明導電層320の少なくとも一部分は、透過部300のうち光学装置100から出射される電磁波が透過する領域に設けられている。言い換えると、透過部300のうち光学装置100から出射される電磁波が透過する領域であっても、ヒータ、すなわち透明導電層320を設けることができる。仮に、熱線ヒータやフィルム状ヒータが用いられた場合、当該ヒータによって電磁波が遮断される。このため、熱線ヒータやフィルム状ヒータは、透過部のうち電磁波が透過する領域からずらして配置する必要がある。しかしながら、この場合、ヒータによって透過部に発生する熱の分布に比較的大きなばらつきが生じ得る。これに対して、本実施形態では、上述したように、透過部300のうち光学装置100から出射される電磁波が透過する領域であっても、ヒータ、すなわち透明導電層320を設けることができる。したがって、透明導電層320によって透過部300に発生する熱の分布のばらつきを抑えることができる。
【0027】
第1端子322は、透明導電層320に電気的に接続されている。第1端子322は、透過部300の幅方向、すなわち第2方向Yに沿って長尺状となっている。
【0028】
第2端子324は、透明導電層320に電気的に接続されている。第2端子324は、透過部300の幅方向、すなわち第2方向Yに沿って長尺状となっている。
【0029】
第2端子324は、透明導電層320の少なくとも一部分、具体的には透明導電層320のうち光学装置100から出射される電磁波が透過する部分を挟んで、第1端子322に対向している。第1端子322及び第2端子324は、実質的に平行に延伸している。第1端子322及び第2端子324が実質的に平行に延伸しているとは、第1端子322及び第2端子324が厳密に平行になっている場合だけでなく、第1端子322及び第2端子324の一方が第1端子322及び第2端子324の他方に対して例えば3°以下の角度傾いていることも意味する。本実施形態においては、例えば、第1端子322及び第2端子324が第2方向Yにおいて短尺状である場合と比較して、第1端子322と第2端子324との間において第2方向Yに広い範囲に電流を流すことができる。
【0030】
第1端子322の長さと第2端子324の長さとは実質的に等しいことが好ましい。例えば、第2端子324の長さは、第1端子322の長さの95%以上105%以下、好ましくは97%以上103%以下となっている。例えば、第1端子322の長さと第2端子324の長さとが異なる場合、第1端子322の長さと第2端子324の長さとが等しい場合と比較して、第1端子322と第2端子324との間を流れる電流の経路長のばらつきが大きくなり、透明導電層320を均一に温めにくくなる。これに対して、第1端子322の長さと第2端子324の長さとが等しい場合、第1端子322の長さと第2端子324の長さとが異なる場合と比較して、第1端子322と第2端子324との間を流れる電流の経路長のばらつきを抑えることができ、透明導電層320を均一に温めやすくなる。
【0031】
透明導電層320、第1端子322及び第2端子324は、第1端子322と第2端子324との間に10Vの電圧を印加した場合に、例えば、0.7A以上0.9A以下の電流が流れるように設けられるようにすることができる。
【0032】
図5は、比較形態1に係る透過部300Aの第2面304側の平面図である。比較形態1に係る透過部300Aは、以下の点を除いて、実施形態に係る透過部300と同様である。
【0033】
透過部300Aは、基材310に設けられた配線360Aを有している。配線360Aは、透過部300の基材310のうち電磁波が透過する領域のほぼ全周を囲んでいる。配線360Aは、銅箔等の金属からなっている。
【0034】
図6は、比較形態2に係る透過部300Bの第2面304側の平面図である。比較形態2に係る透過部300Bは、以下の点を除いて、実施形態に係る透過部300と同様である。
【0035】
透過部300Bは、基材310に設けられた配線360Bを有している。配線360Bは、基材310の第2方向Yの一方側における一辺を除いて透過部300の基材310のうち電磁波が透過する領域のほぼ全周を囲んでいる。配線360Bは、銅箔等の金属からなっている。
【0036】
図7は、実施形態に係る透過部300、比較形態1に係る透過部300A及び比較形態2に係る透過部300Bの各々における加熱による温度の時間変化を示すグラフである。
【0037】
図7に示す例では、実施形態に係る透過部300、比較形態1に係る透過部300A及び比較形態2に係る透過部300Bを25℃雰囲気下に置いた。
図7において、グラフの横軸は、各透過部の加熱時間を示している。またグラフの縦軸は、各透過部の温度を示している。
図7の実施形態、比較形態1及び比較形態2の各々のプロットは、実施形態に係る透過部300の最低温度、比較形態1に係る透過部300Aの最低温度及び比較形態2に係る透過部300Bの最低温度をそれぞれ示している。
【0038】
実施形態に係る透過部300では、第1端子322及び第2端子324の間にDC10Vを印加した。比較形態1に係る透過部300Aでは、配線360AにDC12Vを印加した。比較形態2に係る透過部300Bでは、配線360BにDC12Vを印加した。
【0039】
図7のグラフに示すように、実施形態に係る透過部300では、加熱開始から13分56秒後に、最高温度、すなわち初期温度から58.45℃だけ高い温度に達した。比較形態1に係る透過部300Aでは、加熱開始から16分53秒後に最高温度、すなわち初期温度から38.8℃だけ高い温度に達した。比較形態2に係る透過部300Bでは、加熱開始から20分1秒後に最高温度、すなわち初期温度から20.2℃だけ高い温度に達した。
【0040】
図7のグラフに示すように、実施形態に係る透過部300では、初期時刻から25秒後に、初期温度から10℃だけ高い温度に達した。比較形態1に係る透過部300Aでは、初期時刻から138秒後に、初期温度から10℃だけ高い温度に達した。比較形態2に係る透過部300Bでは、初期時刻から215秒後に、初期温度から10℃だけ高い温度に達した。
【0041】
図7の結果より、透明導電層によって形成されたヒータは、配線によって形成されたヒータに比して、より短い時間でより高い温度に透過部を加熱することができるといえる。
【0042】
図8は、実施形態に係る透過部300、比較形態1に係る透過部300A及び比較形態2に係る透過部300Bの各々における風の吹き当てによる温度の時間変化を示すグラフである。
【0043】
実施形態に係る透過部300では、第1端子322及び第2端子324の間にDC10Vを印加した。比較形態1に係る透過部300Aでは、配線360AにDC10Vを印加した。電圧を印加しながら実施形態に係る透過部300及び比較形態1に係る透過部300Aの各々から15cmだけ離れた位置からエアガンによって風速45~82km/hの風を吹き当てた。
【0044】
図8のグラフに示すように、比較形態1に係る透過部300Aでは、風の吹き当てによって透過部300の温度が気温に近い温度まで低下した。これに対して、実施形態に係る透過部300では、風が吹き当てられても、気温より約20℃だけ高い温度が維持された。
【0045】
図8の結果より、透明導電層によって形成されたヒータの方が、配線によって形成されたヒータよりも、風による透過部の温度の低下を抑制することができるといえる。
【0046】
図9は、
図1及び
図2に示した筐体200に収容される光学装置100の動作の一例を説明するための図である。
【0047】
光学装置100は、送信部110、可動反射部120、受信部130及びビームスプリッタ140を備えている。
図9では、送信部110、可動反射部120、受信部130及びビームスプリッタ140は、模式的に、第1方向X及び第2方向Yの双方に平行な一平面内に位置している。しかしながら、実際のレイアウトにおいては、送信部110、可動反射部120、受信部130及びビームスプリッタ140は、第1方向X及び第2方向Yの双方に平行な一平面内に位置していなくてもよいし、又は第1方向X及び第2方向Yの双方に平行な一平面内に位置していてもよい。
【0048】
図9では、送信部110、可動反射部120、受信部130及びビームスプリッタ140を伝搬する電磁波は、破線によって示されている。
【0049】
送信部110は、電磁波を送信する。一例において、送信部110によって送信される電磁波は、光、具体的には、赤外線である。しかしながら、送信部110によって送信される電磁波は、赤外線の波長と異なる波長の光(例えば、可視光線又は紫外線)であってもよいし、又は光の波長と異なる波長の電磁波(例えば、電波)であってもよい。一例において、送信部110は、パルス波を送信する。しかしながら、送信部110は、連続波(CW)を送信してもよい。一例において、送信部110は、電気的エネルギー(例えば、電流)を電磁波に変換可能な素子(例えば、レーザダイオード(LD))である。
【0050】
送信部110から送信された電磁波は、ビームスプリッタ140を透過して可動反射部120に入射し、可動反射部120によって反射される。可動反射部120は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。可動反射部120は、上記所定位置に位置している。
【0051】
可動反射部120によって反射された電磁波は、透過部300を透過してセンサ装置10の外部に向けて出射される。センサ装置10の外部に向けて出射された電磁波は、センサ装置10の外部に存在する物体等の対象(
図9では不図示)に入射し、対象によって反射され、又は散乱される。対象によって反射され、又は散乱された電磁波は、透過部300を透過して可動反射部120に入射する。可動反射部120に入射した電磁波は、可動反射部120による反射及びビームスプリッタ140による反射を順に経て、受信部130に入射する。受信部130は、受信部130に入射した電磁波を受信する。一例において、受信部130は、電磁波を電気的エネルギー(例えば、電流)に変換可能な素子(例えば、アバランシェフォトダイオード(APD))である。
【0052】
センサ装置10は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)である。一例において、センサ装置10は、ToF(Time of Flight)に基づいて、センサ装置10と、センサ装置10の外部に存在する物体等の対象と、の間の距離を測定する。この例において、センサ装置10は、センサ装置10から電磁波が送信された時間(例えば、送信部110から電磁波が送信された時間)と、センサ装置10から送信され、かつセンサ装置10の外部に存在する対象によって反射され、又は散乱された電磁波がセンサ装置10によって受信された時間(例えば、受信部130によって電磁波が受信された時間)と、の差に基づいて、上記距離を算出する。
【0053】
第3方向Zの正方向から見て、視野Fは、センサ装置10の前方(第1方向Xの正方向)に向かうにつれて広がっている。具体的には、可動反射部120は、軸122の周りに揺動可能になっている。軸122は、第3方向Zに沿って延伸している。光学装置100の視野Fは、可動反射部120の最大揺動角に応じて決定されている。第3方向Zの正方向から見て、可動反射部120が反時計回りに光学装置100の最大揺動角だけ揺動したとき、送信部110から送信され、かつ可動反射部120によって反射された電磁波は、視野Fの一端部(
図9における視野Fの左側端部)を通過する。第3方向Zの正方向から見て、可動反射部120が時計回りに光学装置100の最大揺動角だけ揺動したとき、送信部110から送信され、かつ可動反射部120によって反射された電磁波は、視野Fの上記一端部の反対側の他端部(
図9における視野Fの右側端部)を通過する。第3方向Zの正方向から見て、可動反射部120の揺動角が0°であるとき、送信部110から送信され、かつ可動反射部120によって反射された電磁波は、視野Fの中心を通過する。
【0054】
可動反射部120は、上記一方向(第1方向Xの正方向)及び軸122の延伸方向(第3方向Z)の双方に交差する、具体的には直交する方向(第2方向Y)に沿って延伸する軸(不図示)の周りにも揺動可能になっている。したがって、第2方向Yの正方向又は負方向から見て、視野Fは、センサ装置10の前方(第1方向Xの正方向)に向かうにつれて広がっている。
【0055】
本実施形態において、光学装置100は、コアキシャル型LiDARとなっている。すなわち、光学装置100から出射される電磁波(可動反射部120によって光学装置100の外部に向けて出射された電磁波)が通過する軸と、光学装置100に戻る電磁波(光学装置100から出射されて、光学装置100の外部に存在する対象によって反射され、又は散乱されて、可動反射部120に入射する電磁波)が通過する軸と、が一致している。しかしながら、光学装置100は、バイアキシャル型LiDARであってもよい。すなわち、光学装置100は、可動反射部120を有していなくてもよい。この場合、光学装置100から出射される電磁波が通過する軸と、光学装置100に戻る電磁波(光学装置100から出射されて、光学装置100の外部に存在する対象によって反射され、又は散乱されて、光学装置100に入射する電磁波)が通過する軸と、が互いにずれるようになる。
【0056】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0057】
例えば、本実施形態では、光学装置100の視野Fは、LiDAR等の光走査装置の視野である。しかしながら、光学装置100の視野Fは、カメラ等の撮像装置の視野であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 センサ装置
100 光学装置
110 送信部
120 可動反射部
122 軸
130 受信部
140 ビームスプリッタ
200 筐体
210 取付枠
300 透過部
300A 透過部
300B 透過部
302 第1面
304 第2面
310 基材
320 透明導電層
322 第1端子
324 第2端子
360A 配線
360B 配線
F 視野
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向