(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016969
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】乗物内装構造および乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240201BHJP
B60N 2/005 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60N2/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119289
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 直之
(72)【発明者】
【氏名】貞松 太樹
(72)【発明者】
【氏名】播磨 和典
【テーマコード(参考)】
3B087
3D023
【Fターム(参考)】
3B087AA08
3D023BA01
3D023BB07
3D023BC02
3D023BD02
3D023BE03
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】乗物の側壁部とシートバックとの間に形成される隙間の外観(意匠性)に優れ、隙間に物が落下することを抑制可能な乗物内装構造を提供する。
【解決手段】乗物室内に配されるシート50のシートバック60が係止された側壁部11における乗物内装構造1であって、前記側壁部11は、ボディ12と、前記ボディ12の少なくとも一部を乗物室内側から覆う内装材30と、を備え、前記ボディ12は、前記シートバック60を係止する係止部14を備え、前記内装材30は、前記側壁部11の乗物室内面を形成する本体部31と、前記本体部31から前記シートバック60の背面60Aに向けて突出して、前記本体部31と前記シートバック60との間の隙間Sを前記係止部14より上方から塞ぐカバー部40と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室内に配されるシートのシートバックが係止された側壁部における乗物内装構造であって、
前記側壁部は、ボディと、前記ボディの少なくとも一部を乗物室内側から覆う内装材と、を備え、
前記ボディは、前記シートバックを係止する係止部を備え、
前記内装材は、
前記側壁部の乗物室内面を形成する本体部と、
前記本体部から前記シートバックの背面に向けて突出して、前記本体部と前記シートバックとの間の隙間を前記係止部より上方から塞ぐカバー部と、
を有する、乗物内装構造。
【請求項2】
前記本体部は前記係止部を乗物室内に露出させる開口を備え、
前記カバー部は、前記開口の少なくとも上縁部から前記シートバックの背面に向けて突出している請求項1に記載の乗物内装構造。
【請求項3】
前記内装材は、当該内装材を前記ボディに取り付けるための取付座を備えており、
前記取付座は、前記開口の開口縁部から前記開口の内側に延出される形で形成されている請求項2に記載の乗物内装構造。
【請求項4】
前記開口は矩形をなし、前記カバー部は、前記開口の上縁部から前記シートバックの背面に向けて突出する上壁と、前記上壁に連なるとともに前記開口の2つの側縁部から前記シートバックの背面に向けて突出する側壁とを備える門型とされており、
前記取付座は、前記開口の下縁部および前記側壁と連なっている請求項3に記載の乗物内装構造。
【請求項5】
前記開口は横方向に長い長孔状とされ、前記取付座は、前記開口の長手方向の両端部に設けられている請求項3または請求項4に記載の乗物内装構造。
【請求項6】
乗物室内に配されるシートのシートバックが係止部により係止されたボディの乗物室内側に取り付けられて前記ボディとともに乗物の側壁部を構成する乗物用内装材であって、
前記側壁部の乗物室内面を形成する本体部と、
前記本体部から前記シートバックの背面に向けて突出して、前記本体部と前記シートバックとの間の隙間を前記係止部より上方から塞ぐカバー部と、を備える乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、乗物内装構造および乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前後方向および上下方向に比較的大きな寸法の箱型をなす車両本体の車室内の側壁部に、複数のシートが並んで設けられる車両が開示されている。複数のシートは、それぞれ、座面部と背もたれ部とを備え、車両の側壁部に車両幅方向内側を向くように配置されている。そして、背もたれ部が、フレーム部を介して、側壁部の車室内側側面に形成された固定ベースに取り付けられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構成において、側壁部と背もたれ部との間に隙間が形成され、側壁部と背もたれ部との取り付け部分が乗客から見えると、見栄えが悪く車室内の意匠性が低下するという問題がある。また、隙間に物が落ちて、落ちた物を取り出すことが困難になる虞がある。
【0005】
本明細書に開示する技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、乗物の側壁部とシートバックとの間に形成される隙間の外観(意匠性)に優れ、隙間に物が落下することを抑制可能な乗物内装構造および乗物用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、乗物室内に配されるシートのシートバックが係止された側壁部における乗物内装構造であって、前記側壁部は、ボディと、前記ボディの少なくとも一部を乗物室内側から覆う内装材と、を備え、前記ボディは、前記シートバックを係止する係止部を備え、前記内装材は、前記側壁部の乗物室内面を形成する本体部と、前記本体部から前記シートバックの背面に向けて突出して、前記本体部と前記シートバックとの間の隙間を前記係止部より上方から塞ぐカバー部と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、シートバックをボディに係止するための係止部分がカバー部により上方から覆われるから、側壁部とシートバックとの間に形成される隙間の外観(意匠性)を向上させることができる。また、隙間が少なくとも上方からカバー部により塞がれることにより、隙間に物が落下することを抑制することができる。
【0008】
前記本体部は前記係止部を乗物室内に露出させる開口を備え、前記カバー部は、前記開口の少なくとも上縁部から前記シートバックの背面に向けて突出していてもよい。
【0009】
前記内装材は、当該内装材を前記ボディに取り付けるための取付座を備えており、前記取付座は、前記開口の開口縁部から前記開口の内側に延出される形で形成されていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、ボディとシートバックとの係止部分だけでなく、内装材をボディに取り付ける部分もカバー部により上方から覆われるから、乗物室内の意匠性を向上させることができる。
【0011】
前記開口は矩形をなし、前記カバー部は、前記開口の上縁部から前記シートバックの背面に向けて突出する上壁と、前記上壁に連なるとともに前記開口の2つの側縁部から前記シートバックの背面に向けて突出する側壁とを備える門型とされており、前記取付座は、前記開口の下縁部および前記側壁と連なっていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、開口の下縁部から延出された取付座はカバー部の側壁に連結されているから、取付座の剛性を高めることができる。また、開口内に異物が侵入することを抑制することができる。
【0013】
前記開口は横方向に長い長孔状とされ、前記取付座は、前記開口の長手方向の両端部に設けられていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、乗物用内装材をより位置ずれし難い状態でボディに取り付けることができる。
【0015】
また、本明細書に開示される技術は、乗物室内に配されるシートのシートバックが係止部により係止されたボディの乗物室内側に取り付けられて前記ボディとともに乗物の側壁部を構成する乗物用内装材であって、前記側壁部の乗物室内面を形成する本体部と、前記本体部から前記シートバックの背面に向けて突出して、前記本体部と前記シートバックとの間の隙間を前記係止部より上方から塞ぐカバー部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示される技術によれば、乗物の側壁部とシートバックとの間に形成される隙間の外観(意匠性)に優れ、隙間に物が落下することを抑制可能な乗物内装構造および乗物用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態の乗物内装構造が採用された車両の斜視図
【
図2】乗物内装構造が採用された箇所を拡大して示す斜視図
【
図6】乗物内装構造が採用された箇所の一部拡大側断面図
【
図7】上側支持部材と縦支持部材との組付け部分、及び、第1被係止部の斜視図
【
図10】側壁トリムを斜め下方から視た一部拡大斜視図
【
図11】側壁トリムをボディに取り付けた状態の一部拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態の乗物内装構造1が採用された車両(乗物)10について、
図1から
図12を参照しつつ説明する。本実施形態の車両10は、
図1に示すように、前後方向および上下方向に比較的大きな寸法の箱型のボディ12を有し、そのボディ12の内部空間である車室内に、複数の人を乗せて輸送可能な車両10である。車室内には複数のシート50が設けられており、その一部のシート50は、前後方向に延在する車両10の側壁部11の内側に沿って進行方向横向きに配置されている。
【0019】
車両10の側壁部11は、車両10の外形を構成するボディ12と、ボディ12の一部を乗物室内側から覆う側壁トリム30、80とを備えて構成されている。ボディ12は、前後方向に延びる複数の長尺な支持部材を備えている。
図3に示すように、上側に配される支持部材は上側支持部材13であって、この上側支持部材13は扁平な四角筒状をなし、互いに対向する幅広の面が車両内外に向く方向に配置されている。
【0020】
上側支持部材13のうち車室内側に配される面側には、上下方向に延びる3本の縦支持部材20が等間隔に複数本(本実施形態では3本)並んで固定されている(
図2および
図3参照)。縦支持部材20は扁平な四角筒状をなし、互いに対向する幅広の面が車両内外に向く方向で上側支持部材13と一体とされている。
図7に示すように、縦支持部材20のうち上側支持部材13に対応する位置には、車室外側から車室内側に向けて切り欠かれた上側切欠部21が設けられており、この上側切欠部21内に上側支持部材13が車室外側から嵌め入れられる形で、上側支持部材13と縦支持部材20とが位置決めされつつ組付けられている。縦支持部材20の上端は、上側支持部材13の上端から上方にやや突出している。
【0021】
縦支持部材20のうち上下方向における略中央部であって、車室内側を向く壁面には、車室内側から車室外側に向けて切り欠かれた中央切欠部22が設けられており(
図3参照)、この中央切欠部22内に嵌め入れられる形で、前後方向に延びる中央支持部材25が組付けられている。中央支持部材25は、扁平な四角筒状をなし、互いに対向する幅広の面が車両内外に向く方向で縦支持部材20と組付けられている。
【0022】
さらに、縦支持部材20のうち中央切欠部22の下方には、車室内側を向く壁面に、車室内側から車室外側に向けて切り欠かれた下側切欠部23が設けられており、この下側切欠部23内に嵌め入れられる形で、前後方向に延びる2本の下側支持部材28が上下方向に並んで組付けられている。2本の下側支持部材28は、扁平な四角筒状をなし、互いに対向する幅広の面が車両内外に向く方向で縦支持部材20と組付けられている。
【0023】
なお、上側支持部材13は、後述する側壁トリム30により車室内側から覆われ、下側支持部材28は下側側壁トリム80により車室内側から覆われている。また、上側支持部材13および下側支持部材28は、車両前後方向に並んで配された後述する複数のシート50の両端部から車両前後方向に突出する長さとされている。一方、中央支持部材25は、並んで配された複数のシート50の幅の範囲内の長さとされている(
図2参照)。
【0024】
図2は、進行方向横向きに配置され、上述した3つの支持部材13,25,28に取り付けられた状態のシート50の斜視図であって、本実施形態では、3つのシート50が前後方向に並んで設けられている。一のシート50は、座面部51と、シートバック60とを備えている。
【0025】
座面部51は、幅方向(車両の前後方向)の両端部に設けられた座面部取付部52を介して中央支持部材25に取り付けられている。また座面部51の下方には、下側支持部材28に取り付けられた座面部支持部53が設けられており、座面部51は下面側からこの座面部支持部53により支持されている。
【0026】
一方、シートバック60は、上側支持部材13および中央支持部材25に対して取り付けられている。シートバック60は、乗員がシート50に着座した際に乗員の背中に沿うように幅方向の両端部が車室内側に向けて緩やかに湾曲するとともに、上方部分が車室外側にやや反った板状をなしている。
【0027】
シートバック60は、
図4に示すように、車室外側の面(背面60Aとする)の上方部分に第1係止部61を備えるとともに、下端部分に第2係止部73を備えており、第1係止部61が上側支持部材13に係止し、第2係止部73が中央支持部材25に係止することで、ボディ12に対して取り付けられている。
【0028】
詳細には、
図4および
図5に示すように、第1係止部61は、シートバック60の背面60Aから車室外側に向けて上下方向に延びるように立ち上がる9つの板状の立壁63を備え、これらの立壁63が3つずつひとかたまりとなった形でシートバック60の幅方向(車両の前後方向)に並んでいる。1の立壁63は上方部分が背面60Aから最も突出した第1突出部64とされ、下方側の突出寸法が徐々に小さくなる側面視3段の略階段形状をなしている(
図6参照)。そして、第1突出部64と、この第1突出部64の下方に連なる第2突出部65との境界部分には、上下方向に所定寸法で延びるスリット66が下端から切り欠く形で設けられている。スリット66の開口は下方に向けて拡径しており、この拡径部分が後述する架橋部16をスリット66内に案内する案内部として機能する。
【0029】
このような形状の立壁63は、3つが一組となって、3つの立壁群62を構成している。1の立壁群62の3つの立壁63は、複数の横壁67により連結されている。具体的には、1の立壁群62の3つの立壁63は、シートバック60の背面60Aから連なって3つの立壁63の第1突出部64の上方部分を連結する第1横壁67Aと、3つの第1突出部64の下端部を連結する第2横壁67Bと、3つのスリット66の各溝壁のうち車室外側の溝壁同士を連結する第3横壁67Cと、により連結されている。
【0030】
また、3つの各立壁群62は、隣接して配される他の立壁群62との間が連結リブ68により連結されている。連結リブ68は、シートバック60の背面60Aから突出してシート50の幅方向に延びる2本のリブであって、隣接して配される立壁群62のうち互いに対向して配置される第1突出部64間を連結する位置に設けられている。
【0031】
また、連結リブ68の一部はシートバック60の背面60Aと平行に配された台座部69と連なっており、台座部69には、車室外側に向けて突出する筒状の位置決め突部70が設けられている(
図5参照)。
【0032】
さらに、3つの立壁群62のうちシートバック60の幅方向における両端部には、シートバック60の背面60Aから立ち上がる補強リブ71が設けられている。
【0033】
なお、9つの立壁63は、それらのシートバック60の背面60Aからの突出方向における先端面が一平面上に並ぶように、各突出寸法が設定されている(
図12参照)。
【0034】
一方、第2係止部73は、
図4に示すように、シートバック60の幅方向における中央部に設けられている。第2係止部73は、シートバック60の背面60Aから立ち上がる柱部74に車室内外方向に貫通する孔部75を設けた筒状とされている。柱部74の周囲には、当該柱部74を囲むように背面60Aから立ち上がる周壁76が設けられており、周壁76と柱部74とは複数の連結壁77により連結されている。また、周壁76の外面には、シートバック60の背面60Aから立ち上がって幅方向に延びる複数の補強リブ78が設けられている。
【0035】
図7に示すように、上側支持部材13のうち、シートバック60の第1係止部61に対応する位置には、第1係止部61を、つまり、3つの立壁群62を一括に係止するための第1被係止部14が設けられている。第1被係止部14は、長尺な略帯状の板材の両端部を同方向(車室外側)に屈曲させた扁平な略U字形状とされて、上側支持部材13の車室内面の下端部から車室内側に向けて門型に張り出している。以下、第1被係止部14の両端部を脚部15、2つの脚部15を連結する部分を架橋部16とすると、第1被係止部14の架橋部16は、その板面が車室内外方向に向く方向に配置されている。第1被係止部14の架橋部16のうち一端寄り(
図7の左寄り)には、上述したシートバック60の位置決め突部70を逃がすための切欠部17が上端から切り欠く形で形成されている。
【0036】
また、中央支持部材25のうち、シートバック60の第2係止部73に対応する位置には、第2係止部73の孔部75に貫通されたボルトを締結するための第2被係止部26が設けられている(
図2参照)。第2被係止部26は、略帯状の板材の両端部を同方向(車室外側)に屈曲させた略U字形状とされて、中央支持部材25の車室内面から車室内側に向けて門型に張り出している。第2被係止部26の架橋部27は、その板面が車室内外方向に向く方向に配置されている。
【0037】
なお、上述した縦支持部材20は、第1被係止部14および第2被係止部26の幅方向の中央部に配置される位置に設けられている。
【0038】
シートバックは60、上述した第1係止部61(3つの立壁群62)を第1被係止部14に一括に係止させることにより、その上方側が上側支持部材13に対して取り付けられる。つまり、9つの立壁63のスリット66内に第1被係止部14の架橋部16を嵌め入れることにより、シートバック60の上方側がボディ12に対して取り付けられる(
図6参照)。
【0039】
また、シートバック60は、上述した第2係止部73を第2被係止部26に締結することにより、その下端分が中央支持部材25(ボディ12)に対して取り付けられる。
【0040】
ところで、一般的に車両の側壁部は、ボディの車室内面を内装材としてのトリムで覆うことにより構成される。本実施形態においても、上側支持部材13の車室内面を側壁トリム30で覆う構成とされているが、上述したようにシートバック60がボディ12(上側支持部材13および中央支持部材25)に対して固定された状態において、シートバック60と側壁トリム30の後述する本体部31との間には、隙間Sが形成される(
図6および
図12参照)。このような隙間Sは、シートバック60とボディ12との係止部分が乗客から見えて外観が美しくなく、車室内の意匠性を低下させる上、隙間Sに物が落ち易いという問題ある。
【0041】
そこで本実施形態では、上側支持部材13を覆う側壁トリム30に、シートバック60と側壁トリム30の本体部31との間の隙間Sを塞ぐカバー部40を設ける構成とした。以下、側壁トリム30について説明する。
【0042】
側壁トリム30は、上側支持部材13を車室内側から覆う内装材であって、
図8に示すように、断面扁平なU字型の直尺な本体部31を主体として構成されている。本体部31のうち、上側支持部材13の第1被係止部14に対応する領域には、第1被係止部14を車室内に露出させるための開口35が設けられている。開口は横長の略長方形状とされ、その開口縁部のうちの上縁部35Aが上方に緩やかに膨出している(
図9参照)。開口35の幅寸法は、第1被係止部14の幅寸法よりやや幅広の寸法とされ、幅方向中央部の高さ寸法は、第1被係止部14の下端および上側支持部材13の上端を露出させる寸法とされている(
図6参照)。側壁トリム30が上側支持部材13を車室内側から覆った状態において、第1被係止部14の架橋部16は、本体部31の開口35の開口縁部よりやや車室内側に突出している(同じく
図6参照)。
【0043】
以下、側壁トリム30の本体部31のうち上側支持部材13の上方を覆う部分を天井壁32とし、上側支持部材13の下方を覆う部分を底壁33とし、天井壁32と底壁33とを連結して上側支持部材13の車室内側の面を覆う部分を正面壁34として説明する。上述した開口35は、正面壁34の上方寄りに設けられている。
【0044】
側壁トリム30のうち、天井壁32と正面壁34との境界部分には、本体部31の背面31Aから車室外側に向けて突出する複数の係止突部36が設けられている(
図6および
図8参照)。これらの係止突部36は、上側支持部材13の上端に係止することで、側壁トリム30の本体部31が下方に撓んだり上側支持部材13から落下したりすることを抑制するためのものである。本実施形態において、係止突部36は、隣接する2つの開口35の間と本体部31の一端寄り(
図8の左寄り)の部分に設けられている。
【0045】
また、天井壁32のうち、開口35の幅方向中央部に対応する部分には、
図9に示すように、車室外側の端部から車室内側に向けてU字形状に切り欠かれた切欠部37が設けられている。切欠部37の幅方向における両側は、天井壁32の上面から窪む窪み部38とされており、この窪み部38内に、板状のプレート19を位置決め可能としている(
図11参照)。
【0046】
また、底壁33のうち縦支持部材20に対応する領域には、縦支持部材20を逃がすための逃がし凹部39(
図10参照)が、車室外側の端部から車室内側に向けてU字形状に切り欠かれる形で設けられている。
【0047】
さらに本実施形態の側壁トリム30には、開口35の開口縁部から車室内側に向けて突出するカバー部40が設けられている。カバー部40は、開口35の4つの開口縁部のうち上方に位置する上縁部35Aと、側方に位置する2つの側縁部35Bから突出している。すなわちカバー部40は、開口35の開口縁部から略門型をなして車室内側に向けて突出している。
【0048】
以下、カバー部40のうち、開口35の上縁部35Aから突出する部分を上壁41とし、2つの側縁部35Bから突出する部分を側壁42として説明する。
図9および
図10に示すように、側壁42は、上壁41から連なって開口35の下端まで延びている。
【0049】
カバー部40の、開口縁部からの突出寸法は、シートバック60が正規位置に組付けられた状態において、シートバック60と側壁トリム30の本体部31との間に形成される隙間Sをほぼぴったり埋める突出寸法に設定されている。換言すると、カバー部40の、開口縁部からの突出寸法は、カバー部40の先端がシートバック60の背面60Aに当接する、あるいは、近接する寸法に設定されている。
【0050】
具体的には、上壁41は、上述したシートバック60の湾曲形状に合わせて両端部よりも中央部の突出寸法が短い寸法とされた、先端部が平面視弧状となる形状とされている。また上壁41は、開口35の上縁部35Aに沿って、幅方向の中央部がやや上方に膨出した緩やかな湾曲形状とされている。
【0051】
また側壁42は、シートバック60の傾斜形状に合わせて、下方側の突出寸法が上方側の突出寸法より大きい寸法となる側面視略台形状をなしている。
【0052】
このような形状のカバー部40により、シートバック60と上側支持部材13(ボディ12)との係止構造、すなわち、第1係止部61と第1被係止部14との係止部分が上方および側方から覆われて隠された状態となり(
図6および
図12参照)、シートバック60と側壁トリム30の本体部31との間の外観(意匠性)が向上する。また、隙間Sがカバー部40により塞がれた状態とされることにより、シートバック60と本体部31との間に上方から物が落下して取れなくなる事態を抑制することができる。
【0053】
また本実施形態の側壁トリム30は、当該側壁トリム30をボディ12側(上側支持部材13)に取り付けるための取付座43を一体に備えている。取付座43は、開口35の幅方向における両端寄りの開口縁部から開口35の内側に延出される形で各開口35に2つずつ設けられており、取付座43の座面部44を、上側支持部材13の第1被係止部14の架橋部16に車室内側から重ね合わせてボルト締結することにより、側壁トリム30を上側支持部材13に取り付け可能としている。
【0054】
より詳細には、取付座43は、
図9および
図10に示すように、開口35の下縁部35Cのうち、幅方向における両端部に隣接した位置から、開口35の内側に延出されている。上述したように、側壁トリム30が上側支持部材13を車室内側から覆った状態において、第1被係止部14の架橋部16は、本体部31の開口35の開口縁部よりやや車室内側に位置している(
図6参照)。取付座43の座面部44は、この架橋部16に車室内側から重ね合わされるように設定されている。つまり、座面部44は、開口35の下縁部35Cよりも車室内側に位置するように、下縁部35Cから立上部45により車室内側に立ち上がった位置において、架橋部16の板面と平行に配置される。
【0055】
またこの座面部44の側縁部は、カバー部40の側壁42と連結されている。具体的には、座面部44は、カバー部40の側壁42の車室内側の端縁部の下端から開口35の内側かつ車室外側に向けてL字形状に屈曲して延びる横連結部46と連結されている。すなわち、横連結部46と座面部44とは、全体として、クランク形状をなして連なっている。
【0056】
さらに、この横連結部46の下端部と開口35の下縁部35Cとは、下連結部47により一体に連結されている。
図10に示すように、座面部44の立上部45と下連結部47とは、連続する一枚の板状とされている。
【0057】
座面部44には貫通孔48が形成されており、この貫通孔48は、架橋部16に設けられた架橋部側貫通孔18と連なるように設定されている(
図7参照)。これにより、座面部44が第1被係止部14(架橋部16)に対して、ひいては、側壁トリム30がボディ12に対してボルトまたはクリップ等により取り付け可能とされている(
図11および
図12参照)。
【0058】
なお、1の開口35の両端部に隣接して設けられた2つの取付座43の各貫通孔48の一方(
図9の左側)は円形とされ、他方(
図9の右側)は、横長の長孔状とされている。これにより、取り付け時の公差が吸収可能とされている。
【0059】
次に、作用効果について説明する。本実施形態は、車両10の車室内に配されるシート50のシートバック60が係止された側壁部11における乗物内装構造1であって、側壁部11は、上側支持部材13(ボディ12)と、上側支持部材13(ボディ12)の一部を車室内側から覆う側壁トリム30と、を備え、上側支持部材13(ボディ12)は、シートバック60を係止する第1被係止部14を備え、側壁トリム30は、側壁部11の車室内面を形成する本体部31と、本体部31からシートバック60の背面60Aに向けて突出して、本体部31とシートバック60との間の隙間Sを第1被係止部14より上方から塞ぐカバー部40と、を備えている。
【0060】
上記構成によれば、シートバック60をボディ12に係止するための係止部分(第1被係止部14および第1係止部61)がカバー部40により上方から覆われるから、側壁部11とシートバック60との間に形成される隙間Sの外観(意匠性)を向上させることができる。また、隙間Sが上方からカバー部40により塞がれることにより、隙間Sに物が落下することを抑制することができる。
【0061】
また、本体部31は第1被係止部14を車室内に露出させる開口35を備え、カバー部40は、開口35の上縁部35Aからシートバック60の背面60Aに向けて突出している。
【0062】
また、側壁トリム30は、当該側壁トリム30をボディ12側に取り付けるための取付座43を備えており、取付座43は、開口35の開口縁部から開口35の内側に延出される形で形成されている。
【0063】
上記構成によれば、ボディ12とシートバック60との係止部分だけでなく、側壁トリム30をボディ12に取り付ける部分もカバー部40により上方から覆われるから、車室内の意匠性を向上させることができる。
【0064】
また、開口35は略矩形をなし、カバー部40は、開口35の上縁部35Aからシートバック60の背面60Aに向けて突出する上壁41と、上壁41に連なるとともに開口35の2つの側縁部35Bからシートバック60の背面60Aに向けて突出する側壁42とを備える門型とされており、取付座43は、開口35の下縁部35Cおよび側壁42と連なっている。
【0065】
上記構成によれば、開口35の下縁部35Cから延出された取付座43はカバー部40の側壁42に連結されているから、取付座43の剛性を高めることができる。また、開口35内に異物が侵入することを抑制することができる。
【0066】
また、開口35は横方向に長い長孔状とされ、取付座43は、開口35の長手方向の両端部に隣接した位置に設けられている。
【0067】
上記構成によれば、側壁トリム30をより位置ずれし難い状態でボディ12に取り付けることができる。
【0068】
また、本実施形態の側壁トリム30は、車室内に配されるシート50のシートバック60が第1係止部61および第1被係止部14により係止されたボディ12の車室内側に取り付けられて、ボディ12とともに車両10の側壁部11を構成するものであって、側壁部11の車室内面を形成する本体部31と、本体部31からシートバック60の背面60Aに向けて突出して、本体部31とシートバック60との間の隙間Sを第1係止部61より上方から塞ぐカバー部40と、を備えている。
【0069】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0070】
(1)上記実施形態では、側壁トリム30を上側支持部材13(ボディ12側)に対して取り付けるための取付座43を、開口35の開口縁部から開口35の内側に延出する構成を示したが、取付座は、開口以外の部分に設ける構成としてもよい。
【0071】
(2)上記実施形態では、取付座43を各開口35の幅方向の両端部に隣接して2つずつ設ける構成を示したが、開口の両端部に隣接した位置に限らず、開口のうち係止部分に邪魔にならない任意の位置に設けることもできる。また2つに限らず、1つや、3つ以上設ける形態としてもよい。
【0072】
(3)カバー部が上壁のみの形態も技術範囲に含まれる。
【0073】
(4)カバー部が上壁のみの形態とされた場合、取付座の座面部を開口の両端部に設け、開口の下縁部と側縁部の両方に連結させる形態とすることもできる。
【0074】
(5)上記実施形態では、カバー部40が開口35の開口縁部からシートバック60の背面60Aに向けて突出する形態を示したが、カバー部は開口縁部以外の、例えば内装材の乗物内面から立ち上がる形態としてもよい。要は、カバー部は、シートバックとボディの係止部分を上方から覆う構成であればよい。
【0075】
(6)上記実施形態では、側壁トリム30,80が別体である形態を示したが、側壁トリムは一体であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1:乗物内装構造、10:車両(乗物)、11:側壁部、12:ボディ、13:上側支持部材、14:第1被係止部(係止部)、15:立上部、16:架橋部(係止部)、20:縦支持部材、30:側壁トリム、31:本体部、31A:背面、35:開口、35A:上縁部、35B:側縁部、35C:下縁部、40:カバー部、41:上壁、42:側壁、43:取付座、44:座面部、45:立上部、46:横連結部、47:下連結部、48:貫通孔、50:シート、60:シートバック、60A:背面、61:第1係止部、62:立壁群、63:立壁、66:スリット、S:隙間