(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169698
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】光学系及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G02B13/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024167148
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2022008836の分割
【原出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】井野 友裕
(57)【要約】
【課題】 小型かつ軽量でありながら諸収差が良好に補正された光学系及びそれを有する撮像装置を提供すること。
【解決手段】 物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、フォーカシングに際して移動する正又は負の屈折力の第2レンズ群L2、負の屈折力の第3レンズ群L3から構成され、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系であって、最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をTL、第3レンズ群L3における最も物体側のレンズ面から第3レンズ群L3における最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をTL3、第3レンズ群L3におけるレンズの光軸上での厚みの和をSD3、第3レンズ群L3において光軸上での厚みが最大であるレンズの光軸上での厚みをDM3とするとき、所定の条件式を満足することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、フォーカシングに際して移動する正又は負の屈折力の第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群から構成され、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系であって、
前記第1レンズ群において、最も物体側に配置されたレンズと、最も物体側から2番目に配置されたレンズとは、正の屈折力を有し、
最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をTL、前記第3レンズ群における最も物体側のレンズ面から前記第3レンズ群における最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をTL3、前記第3レンズ群におけるレンズの光軸上での厚みの和をSD3、前記第3レンズ群において光軸上での厚みが最大であるレンズの光軸上での厚みをDM3とするとき、
0.10<TL3/TL<0.40
0.70<SD3/TL3<0.90
0.05<DM3/TL3<0.14
なる条件式を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をLD、前記光学系の無限遠合焦時の焦点距離をfとするとき、
0.45<LD/f<0.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
最も像側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をBF、最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をLDとするとき、
0.15<BF/LD<0.27
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第3レンズ群の焦点距離をf3、前記光学系の無限遠合焦時の焦点距離をfとするとき、
-0.50<f3/f<-0.10
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記第3レンズ群に含まれる正レンズのうちd線を基準としたアッベ数が最も大きいレンズのd線を基準としたアッベ数をvd3Pとするとき、
73<vd3P<97
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記第3レンズ群に含まれる負レンズのうちd線に対する屈折率が最も大きいレンズのd線に対する屈折率をnd3Nとするとき、
1.85<nd3N<2.2
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記第3レンズ群は、物体側より像側へ順に配置された、第1部分群、第2部分群、第3部分群を有し、前記第1部分群と前記第3部分群は像ぶれ補正に際して不動であり、前記第2部分群は像ぶれ補正に際して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記第1部分群は正の屈折力を有することを特徴とする請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記第2部分群は負の屈折力を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の光学系。
【請求項10】
前記第3部分群は負の屈折力を有することを特徴とする請求項7乃至9の何れか一項に記載の光学系。
【請求項11】
前記第2レンズ群は負の屈折力を有することを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の光学系。
【請求項12】
前記第2レンズ群は無限遠から近距離へのフォーカシングに際して像側へ移動することを特徴とする請求項11に記載の光学系。
【請求項13】
前記第2レンズ群は一つのレンズから構成されることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の光学系。
【請求項14】
隣接する二つのレンズ間の光軸上での距離のうち、最も物体側に配置されたレンズと該レンズに隣接するレンズとの距離が最も大きいことを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の光学系。
【請求項15】
前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群はフォーカシングに際して不動であることを特徴とする請求項1乃至14の何れか一項に記載の光学系。
【請求項16】
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に開口絞りが配置されていることを特徴とする請求項1乃至15の何れか一項に記載の光学系。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載の光学系と、該光学系を介して物体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項18】
請求項1乃至16の何れか一項に記載の光学系と、該光学系を保持する保持部材とを有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に関し、特にビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、監視カメラ等の撮像装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置に用いられる望遠型の光学系は、焦点距離が長くかつFナンバーが小さい(大口径である)ことが求められている。特許文献1及び2には、物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、正又は負の屈折力の第2レンズ群、正又は負の屈折力の第3レンズ群から成り、フォーカシングに際して第2レンズ群が移動する光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-218276号公報
【特許文献2】特開2012-189679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、望遠型の光学系は小型かつ軽量でありながら色収差や球面収差等の諸収差が良好に補正されたものであることも要望されている。しかしながら、望遠型の光学系を大口径化しようとすると、特に物体側に配置されたレンズの有効径が大きくなるため、全系の小型化及び軽量化が難しくなる。そのため、上述した要望を実現するためには、光学系を構成する各レンズ群の光学的配置や、各レンズ群を構成する各レンズの屈折力や配置等を適切に設定することが重要である。
【0005】
本発明の目的は、小型かつ軽量でありながら諸収差が良好に補正された光学系及びそれを有する撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための一側面としての光学系は、物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、フォーカシングに際して移動する正又は負の屈折力の第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群から構成され、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系であって、前記第1レンズ群において、最も物体側に配置されたレンズと、最も物体側から2番目に配置されたレンズとは、正の屈折力を有し、最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をTL、前記第3レンズ群における最も物体側のレンズ面から前記第3レンズ群における最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をTL3、前記第3レンズ群におけるレンズの光軸上での厚みの和をSD3、前記第3レンズ群において光軸上での厚みが最大であるレンズの光軸上での厚みをDM3とするとき、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.10<TL3/TL<0.40
0.70<SD3/TL3<0.90
0.05<DM3/TL3<0.14
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型かつ軽量でありながら諸収差が良好に補正された光学系及びそれを有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面は、便宜的に実際とは異なる縮尺で描かれている場合がある。また、各図面において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1,3,5,7は、実施例1乃至4に係る光学系L0の無限遠合焦時における光軸を含む断面図である。各断面図において、左側が物体側(前側)であり、右側が像側(後側)である。各実施例の光学系L0は撮像装置に用いられる撮像光学系であり、像面IPの位置には撮像素子の撮像面が配置される。なお、各実施例の光学系L0をプロジェクタ等の投射装置における投射光学系として用いてもよく、その場合は像面IPの位置に液晶パネル等の表示素子の表示面が配置されることになる。
【0011】
図2,4,6,8は、実施例1乃至4に係る光学系L0の無限遠合焦時における収差図である。各収差図においてFnoはFナンバー、ωは近軸計算により求められる撮像半画角(度)を示す。球面収差図において、dはd線(波長587.56nm)における球面収差、gはg線(波長435.835nm)における球面収差、CはC線(波長656.27nm)における球面収差、FはF線(波長486.13nm)における球面収差を示す。非点収差図において、Sはサジタル像面でのd線における非点収差、Mはメリディオナル像面でのd線における非点収差を示す。歪曲図はd線における歪曲を示す。色収差図において、gはg線における倍率色収差、CはC線における倍率色収差、FはF線における倍率色収差を示す。
【0012】
実施例1に係る光学系L0は、Fナンバーが5.9、半画角が1.51度の望遠型の光学系である。実施例2に係る光学系L0は、Fナンバーが8.0、半画角が1.05度の望遠型の光学系である。実施例3に係る光学系L0は、Fナンバーが8.0、半画角が1.24度の望遠型の光学系である。実施例4に係る光学系L0は、Fナンバーが5.9、半画角が1.59度の望遠型の光学系である。
【0013】
実施例1乃至4に係る光学系L0は、物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、フォーカシングに際して移動する負の屈折力の第2レンズ群L2、負の屈折力の第3レンズ群L3から構成される。光学系L0においては、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。すなわち、ここでのレンズ群とは、フォーカシングに際して一体的に移動するレンズの集合、あるいはフォーカシングに際して不動であるレンズの集合を示す。なお、レンズ群は1枚以上のレンズを有していればよく、単一のレンズから成る構成であっても複数のレンズから成る構成であってもよい。なお、ここでのレンズとは、屈折力を有する光学素子のことを示しており、屈折力を有さない平行平板ガラスなどの光学素子は含まないものとする。
【0014】
次に、各実施例に係る光学系L0の特徴について詳細に説明する。
【0015】
一般的に、光学系の全系の小型化のためにレンズ全長(最も物体側のレンズ面から像面までの距離)を短縮すればするほど諸収差が発生し、特に色収差(軸上色収差及び倍率色収差)の発生が顕著になるため、高い光学性能を実現することが難しくなる。とりわけ望遠型の光学系においてレンズ全長の短縮化を図った場合、焦点距離が長くなるにつれて色収差の発生が多くなる。また、光学系の焦点距離が長くなるにつれて、正の屈折力の第1レンズ群のレンズの有効径が大型化しやすくなる。
【0016】
ここで、光学系の全系の小型化を図りつつ球面収差や軸上色収差等の諸収差を良好に補正するには、第1レンズ群に多くのレンズを配置することが有効である。しかし、望遠型の光学系では物体側へ向かうほどレンズの有効径が大きくなり、その大きさはFナンバーが小さくなるほど増大する。また、レンズの有効径が大きくなるとそれに伴ってレンズの外径も増大し、その略3乗でレンズの重量も増加してしまう。よって、第1レンズ群を構成するレンズの数を増やすと全系の軽量化が難しくなる。
【0017】
そこで、各実施例においては、小型かつ軽量でありながら諸収差が良好に補正された望遠型の光学系を実現するために、第3レンズ群L3の構成を適切に設定している。具体的には、各実施例に係る光学系L0は以下の条件式(1)乃至(3)を満足している。ここでは、最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上での距離(光学全長)をTL、第3レンズ群L3における最も物体側のレンズ面から第3レンズ群L3における最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をTL3としている。また、第3レンズ群L3におけるレンズの光軸上での厚みの和をSD3、第3レンズ群L3において光軸上での厚みが最大であるレンズの光軸上での厚みをDM3としている。
0.10<TL3/TL<0.40 (1)
0.70<SD3/TL3<0.90 (2)
0.05<DM3/TL3<0.14 (3)
【0018】
条件式(1)は、光学系L0の光学全長に対して第3レンズ群L3の全長(厚み)が十分に長いことを示している。上述したように、全系の小型化と諸収差の補正を両立するために第1レンズ群L1に多くのレンズを配置すると第1レンズ群L1の重量が増大してしまう。そこで、各実施例では条件式(1)を満たすように第3レンズ群L3に比較的多くのレンズを配置することで、全系の小型化と第1レンズ群L1の軽量化を両立しつつ諸収差を良好に補正することを可能にしている。
【0019】
条件式(1)の下限を下回ると、第3レンズ群L3の全長が小さくなり過ぎるため、諸収差を良好に補正するのに十分な数のレンズを第3レンズ群L3に配置することが困難となる。ここで、第3レンズ群L3によって諸収差を良好に補正するためには、軸上光束の通過位置が比較的高くなる物体側に多くのレンズを配置することが重要である。しかし、条件式(1)の上限を上回ると、第3レンズ群L3における像側の各レンズが像面に近づいて配置されることになり、第3レンズ群L3によって諸収差を良好に補正することが困難となる。
【0020】
条件式(2)は、第3レンズ群L3の全長に対して第3レンズ群L3におけるレンズの厚みの和が十分に大きいことを示している。条件式(2)の下限を下回ると、第3レンズ群L3における像側の各レンズが像面に近づいて配置されることになり、第3レンズ群L3によって諸収差を良好に補正することが困難となる。条件式(2)の上限を上回ると、第3レンズ群L3における各レンズの間隔が狭くなり過ぎるため、各レンズにおいて各光束が十分に分離されず諸収差を良好に補正することが困難となる。
【0021】
条件式(3)は、第3レンズ群L3の全長に対して第3レンズ群L3における最も厚いレンズの厚みが十分に小さいこと、すなわち第3レンズ群L3における各レンズの厚みが十分に小さいことを示している。条件式(3)の上限を上回ると、第3レンズ群L3における各レンズの厚みが大きくなり過ぎてしまい、第3レンズ群L3に設けることができるレンズの数が少なくなり、諸収差を良好に補正することが困難となる。条件式(3)の下限を下回ると、第3レンズ群L3における像側の各レンズが像面に近づいて配置されることになり、第3レンズ群L3によって諸収差を良好に補正することが困難となる。
【0022】
以上、各実施例に係る光学系L0は、上述した三つのレンズ群を有する構成において条件式(1)乃至(3)を満足することで、小型化及び軽量化と諸収差の良好な補正を両立することができる。
【0023】
なお、条件式(1)乃至(3)の数値範囲を以下の如く設定することが好ましい。
0.15<TL3/TL<0.35 (1a)
0.71<SD3/TL3<0.85 (2a)
0.06<DM3/TL3<0.13 (3a)
【0024】
さらに、条件式(1a)乃至(3a)の数値範囲を以下の如く設定することがより好ましい。
0.20<TL3/TL<0.30 (1b)
0.72<SD3/TL3<0.80 (2b)
0.08<DM3/TL3<0.12 (3b)
【0025】
また、各実施例に係る光学系L0は、後述する条件式(4)乃至(8)の少なくとも一つを満足することが望ましい。
0.45<LD/f<0.80 (4)
0.15<BF/LD<0.27 (5)
-0.50<f3/f<-0.10 (6)
73<vd3P<97 (7)
1.85<nd3N<2.2 (8)
【0026】
ここで、最も物体側のレンズ面から像面IPまでの光軸上での距離(レンズ全長)をLD、最も像側のレンズ面から像面IPまでの光軸上での距離(バックフォーカス)をBFとしている。ただし、レンズ全長及びバックフォーカスは、フィルター等の平行平板が光路上に配置されている場合はそれを無視したときの(空気換算での)距離を示す。また、光学系L0の無限遠物体にフォーカスしたとき(無限遠合焦時)の焦点距離をf、第3レンズ群L3の焦点距離をf3としている。さらに、第3レンズ群L3に含まれる正レンズのうちd線を基準としたアッベ数が最も大きいレンズの該アッベ数をvd3P、第3レンズ群L3に含まれる負レンズのうちd線に対する屈折率が最も大きいレンズの該屈折率をnd3Nとしている。
【0027】
条件式(4)は、光学系L0の焦点距離に対してレンズ全長(光学全長とバックフォーカスの和)が十分に短いことを示している。条件式(4)の下限を下回ると、レンズ全長が短くなり過ぎてしまい、軸上色収差と倍率色収差を良好に補正することが難しくなる。条件式(4)の上限を上回ると、レンズ全長が長くなり過ぎてしまい、光学系L0を保持する鏡筒(保持部材)の小型化が難しくなる。
【0028】
条件式(5)は、レンズ全長に対してバックフォーカス十分に長いことを示している。条件式(5)の下限を下回ると、バックフォーカスが短くなり過ぎてしまい、第3レンズ群L3が像面に近接して配置されることになるため、第3レンズ群L3における軸上光束の通過位置が低くなってしまう。結果として、第3レンズ群L3により球面収差や軸上色収差を良好に補正することが難しくなる。条件式(5)の上限を上回ると、バックフォーカスが長くなり過ぎてしまい、光学系L0に設けることができるレンズの数が少なくなり、諸収差を良好に補正することが難しくなる。
【0029】
条件式(6)は、光学系L0の全系の焦点距離に対して第3レンズ群L3の焦点距離の絶対値が十分に小さいこと、すなわち第3レンズ群L3の屈折力の絶対値が十分に大きい(負の屈折力が強い)ことを示している。条件式(6)の下限を下回ると、第3レンズ群L3の焦点距離の絶対値が大きくなり過ぎてしまい、すなわち第3レンズ群L3の負の屈折力が弱くなり過ぎてしまい、テレフォトの効果が小さくなってレンズ全長を短くすることが難しくなる。条件式(6)の上限を上回ると、第3レンズ群L3の焦点距離の絶対値が小さくなり過ぎてしまい、すなわち第3レンズ群L3の負の屈折力が強くなり過ぎてしまい、球面収差及び軸上色収差を良好に補正することが難しくなる。
【0030】
条件式(7)は、第3レンズ群L3に含まれる正レンズのうち最もアッベ数が大きい材料のアッベ数を規定しており、特に軸上色収差をより良好に補正するための条件を示している。条件式(7)の下限を下回ると、第3レンズ群L3の正レンズのアッベ数が小さくなり過ぎてしまい、軸上色収差を良好に補正が難しくなる。条件式(7)の上限を上回ると、第3レンズ群L3の正レンズのアッベ数が大きくなるため軸上色収差の補正は容易となる。しかし、光学材料のアッベ数が大きくなるにつれてその屈折率は小さくなる傾向にあるため、条件式(7)の上限を上回ると球面収差やコマ収差等の補正が難しくなる可能性がある。
【0031】
条件式(8)は、第3レンズ群L3に含まれる負レンズのうちd線に対する屈折率が最も大きいレンズのd線に対する屈折率を規定しており、特に像面湾曲をより良好に補正するための条件を示している。条件式(8)の下限を下回ると、第3レンズ群L3の負レンズの屈折率が小さくなり過ぎてしまい、像面湾曲を良好に補正することが難しくなる。条件式(8)の上限を上回ると、第3レンズ群L3の負レンズの材料の選択自由度が低くなってしまう。具体的には、条件式(8)の上限を上回る材料の中からレンズとして加工することが容易なものを選択することが難しく、所望の光学性能を有する光学系を安定して製造することが難しくなる。
【0032】
なお、条件式(4)乃至(6)の数値範囲を以下の如く設定することが好ましい。
0.46<LD/f<0.75 (4a)
0.17<BF/LD<0.26 (5a)
-0.45<f3/f<-0.15 (6a)
【0033】
さらに、条件式(4a)乃至(6a)の数値範囲を以下の如く設定することがより好ましい。
0.47<LD/f<0.60 (4b)
0.19<BF/LD<0.25 (5b)
-0.40<f3/f<-0.20 (6b)
【0034】
各実施例に係る光学系L0において、隣接する二つのレンズ間の光軸上での距離(レンズ間隔)のうち、最も物体側に配置されたレンズと該レンズに隣接するレンズとの距離が最も大きくなっている。これにより、有効径が大きくなりやすい第1レンズ群L1の物体側に配置されるレンズの数を減らすことができるため、光学系L0を軽量化することができる。ただし、必要に応じて他のレンズ間隔を最大としてもよい。また、光学系L0においては、光束を制限することでFナンバー(Fno)を決定する開口絞りSPが第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間に配置されているが、必要に応じて他の位置に開口絞りを配置してもよい。
【0035】
各実施例に係る光学系L0は、第2レンズ群L2を移動させることでフォーカシングを行うインナーフォーカス方式を採用している。また、
図1,3,5,7に矢印で示したように、各実施例においては第2レンズ群L2が無限遠から近距離(最至近)へのフォーカシングに際して像側へ移動している。また、各実施例においては、第2レンズ群L2を一つの(単一の)レンズで構成することにより軽量化し、フォーカシングを容易に行うことを可能にしている。ただし、必要に応じて第2レンズ群L2を複数のレンズで構成してもよい。
【0036】
なお、各実施例においては第2レンズ群L2が負の屈折力を有する構成を採っているが、必要に応じて第2レンズ群L2が正の屈折力を有する構成としてもよい。この場合、無限遠から近距離へのフォーカシングに際して第2レンズ群L2を物体側へ移動させればよい。また、各実施例においてはフォーカシングに際して第1レンズ群L1及び第3レンズ群L3が不動であるが、必要に応じて第1レンズ群L1及び第3レンズ群L3の少なくとも一方がフォーカシングに際して移動する構成を採ってもよい。
【0037】
各実施例に係る第3レンズ群L3は、物体側より像側へ順に配置された、第1部分群L3A、像ぶれ補正に際して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動する第2部分群L3B、及び第3部分群L3Cを有している。なお、第1部分群L3A及び第3部分群L3Cは像ぶれ補正に際して不動であり、各部分群の間隔はフォーカシングに際して変化しない。このように、光学系L0において有効径が比較的小さい第3レンズ群L3の一部を像ぶれ補正用の部分群(防振群)とすることで、防振群を軽量化して像ぶれ補正を容易に行うことが可能になる。
【0038】
ここで、各実施例においては、第1部分群L3Aが正の屈折力、第2部分群L3Bが負の屈折力、第3部分群L3Cが負の屈折力である構成を採っている。第1部分群L3Aを正の屈折力とすることで、第2部分群L3Bに入射する光を集光することができ、防振群としての第2部分群L3Bを小型化及び軽量化することができる。また、第3部分群L3Cを負の屈折力とすることで、テレフォトの効果を高めてレンズ全長を短くすることができる。ただし、各部分群の屈折力の符号は上述したものに限られず、必要に応じて第1部分群L3Aを負の屈折力としたり、第2部分群L3Bを正の屈折力としたり、第3部分群L3Cを正の屈折力としたりしてもよい。
【0039】
また、必要に応じて第1部分群L3Aと第3部分群L3Cの少なくとも一方が像ぶれ補正に際して移動する構成を採ってもよい。このとき、第2部分群L3Bを像ぶれ補正に際して不動としてもよい。すなわち、第1部分群L3A、第2部分群L3B、及び第3部分群L3Cの少なくとも一つを移動させることにより像ぶれ補正を行えばよい。あるいは、必要に応じて第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2の少なくとも一方の一部に防振群を設けてもよい。
【0040】
以下に、実施例1乃至5に対応する数値データを示す。各数値データにおいて、物体側から数えたときの光学面の番号をiとするとき、rは第i面の曲率半径、dは第i面と第(i+1)面との間の軸上間隔(光軸上での距離)を示す。ndは第i面と第(i+1)面との間の媒質のd線に対する屈折率、νdは該媒質のd線を基準としたアッベ数を示している。また、「焦点距離」は無限遠合焦時の全系の焦点距離、「半画角」は撮像半画角(度)、BFはバックフォーカスの空気換算値を示している。なお、アッべ数νdは、F線(486.13nm)、d線(587.56nm)、C線(656.27nm)に対する屈折率を各々nF、nd、nCとしたとき以下の式で定義される値である。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0041】
[数値データ1]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd vd
1 154.563 14.23 1.59522 67.7
2 679.967 120.54
3 94.854 14.30 1.43700 95.1
4 -304.998 0.17
5 -287.507 1.50 1.80610 33.3
6 74.518 2.79
7 74.498 11.84 1.43700 95.1
8 ∞ 17.88
9 67.130 5.78 1.89286 20.4
10 126.373 1.51
11 70.327 2.00 1.83400 37.2
12 40.256 10.32 1.43700 95.1
13 136.385 6.96
14(絞り) ∞ 5.00
15 -565.591 1.60 1.61800 63.4
16 60.054 36.49
17 100.609 1.40 1.89286 20.4
18 65.895 7.56 1.51742 52.4
19 -93.947 1.00
20 93.499 5.02 1.80610 33.3
21 -121.235 1.20 1.53775 74.7
22 36.546 5.43
23 -82.443 1.20 1.72916 54.7
24 68.591 3.01
25 137.981 4.68 1.65412 39.7
26 -1079.970 6.25
27 71.027 10.18 1.72047 34.7
28 -58.536 1.50 1.80810 22.8
29 -358.382 2.00
30 137.275 1.40 1.92286 20.9
31 66.149 6.02 1.49700 81.5
32 -67.277 4.78
33 -90.283 1.20 1.77250 49.6
34 21.745 10.05 1.71736 29.5
35 -33.233 0.55
36 -25.355 1.47 1.72916 54.7
37 33.912 9.48 1.54072 47.2
38 -22.646 0.10
39 -36.033 1.20 1.65160 58.5
40 45.606 0.10
41 39.716 8.07 1.73800 32.3
42 -26.727 1.20 1.92286 20.9
43 -1863.408 88.12
像面 ∞
各種データ
焦点距離 820.00
Fナンバー 5.90
半画角 1.51
像高 21.64
レンズ全長 437.08
BF 88.12
レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 187.58
2 15 -87.76
3 17 -178.50
【0042】
[数値データ2]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd vd
1 202.979 13.85 1.59349 67.0
2 1146.213 159.36
3 112.201 13.48 1.43387 95.1
4 -294.589 0.08
5 -285.813 2.03 1.80610 33.3
6 95.724 0.64
7 85.744 9.70 1.43387 95.1
8 383.200 41.51
9 80.052 5.75 1.80810 22.8
10 167.608 0.15
11 91.557 2.26 1.77250 49.6
12 45.827 10.97 1.43875 94.7
13 202.203 20.88
14(絞り) ∞ 5.00
15 2486.000 2.00 1.59349 67.0
16 68.618 36.49
17 155.135 1.80 1.89286 20.4
18 60.697 5.22 1.70154 41.2
19 -150.303 8.04
20 64.876 3.66 1.85478 24.8
21 -242.070 1.45 1.61800 63.4
22 33.397 4.39
23 -100.746 1.10 1.81600 46.6
24 149.076 5.00
25 48.596 3.17 1.74077 27.8
26 -404.782 1.18
27 138.695 2.77 1.71736 29.5
28 -130.959 0.86 1.92286 20.9
29 419.022 1.92
30 -162.632 1.40 1.91082 35.2
31 79.849 6.02 1.53775 74.7
32 -65.599 3.25
33 -75.659 1.20 1.81600 46.6
34 55.017 10.05 1.65412 39.7
35 -32.781 0.87
36 -28.199 1.50 1.59522 67.7
37 33.147 9.51 1.51823 58.9
38 -27.446 0.38
39 -33.252 1.20 1.70300 52.4
40 82.476 0.30
41 69.620 8.05 1.71736 29.5
42 -28.138 1.20 1.92286 20.9
43 -103.166 140.36
像面 ∞
各種データ
焦点距離 1180.10
Fナンバー 8.00
半画角 1.05
像高 21.64
レンズ全長 550.00
BF 140.36
レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 262.69
2 15 -118.94
3 17 -201.50
【0043】
[数値データ3]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd vd
1 239.922 10.06 1.59349 67.0
2 7630.475 143.66
3 92.483 11.58 1.43387 95.1
4 -609.787 0.07
5 -571.874 1.85 1.80610 33.3
6 110.755 0.15
7 80.471 8.00 1.43387 95.1
8 268.516 29.41
9 74.041 3.77 1.92286 18.9
10 114.095 0.15
11 81.951 2.10 1.83481 42.7
12 40.678 10.10 1.43700 95.1
13 212.122 13.05
14(絞り) ∞ 5.00
15 453.386 1.60 1.59522 67.7
16 67.582 36.49
17 250.519 1.30 1.89286 20.4
18 41.617 4.42 1.80610 33.3
19 -260.662 8.04
20 69.888 4.44 1.66680 33.0
21 -53.319 1.30 1.59522 67.7
22 42.907 3.59
23 -112.551 1.10 1.77250 49.6
24 63.547 3.00
25 71.157 2.95 1.76182 26.5
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27 67.168 2.77 1.68893 31.1
28 -162.677 3.76 1.90043 37.4
29 110.060 1.06
30 146.490 1.40 1.90043 37.4
31 58.451 6.02 1.49700 81.5
32 -64.196 3.25
33 -101.733 1.20 1.75500 52.3
34 22.804 10.05 1.72047 34.7
35 -33.199 0.87
36 -26.967 1.50 1.69930 51.1
37 48.467 9.51 1.51742 52.4
38 -24.871 0.38
39 -35.800 1.20 1.61772 49.8
40 50.064 0.30
41 44.202 8.05 1.71736 29.5
42 -27.006 1.20 1.92286 20.9
43 -294.520 115.01
像面 ∞
各種データ
焦点距離 1000.00
Fナンバー 8.00
半画角 1.24
像高 21.64
レンズ全長 477.48
BF 115.01
レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 215.09
2 15 -133.64
3 17 -103.47
【0044】
[数値データ4]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd vd
1 148.873 15.64 1.59349 67.0
2 588.063 117.90
3 89.476 14.55 1.43700 95.1
4 -297.675 0.20
5 -288.374 2.10 1.80610 33.3
6 66.359 2.06
7 66.691 12.93 1.43700 95.1
8 14668.598 17.05
9 64.298 6.21 1.89286 20.4
10 132.593 0.32
11 69.442 2.72 1.83400 37.2
12 38.710 9.67 1.43875 94.7
13 95.465 9.65
14(絞り) ∞ 4.50
15 -477.364 1.90 1.61800 63.4
16 61.827 32.21
17 115.625 2.10 1.89286 20.4
18 72.037 7.20 1.53172 48.8
19 -92.175 2.10
20 110.462 5.13 1.80610 33.3
21 -136.740 1.60 1.53775 74.7
22 39.052 4.91
23 -91.721 1.60 1.72916 54.7
24 73.953 6.75
25 87.265 6.00 1.65412 39.7
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27 92.618 10.23 1.72047 34.7
28 -56.836 2.10 1.80810 22.8
29 -669.731 1.64
30 145.532 1.40 1.92286 20.9
31 64.398 6.12 1.49700 81.5
32 -62.120 3.30
33 -93.129 1.30 1.77250 49.6
34 21.107 10.15 1.71736 29.5
35 -32.887 0.90
36 -24.583 1.50 1.72916 54.7
37 38.446 9.51 1.54072 47.2
38 -22.396 0.38
39 -35.368 1.30 1.65160 58.5
40 45.856 0.30
41 38.488 8.05 1.73800 32.3
42 -25.087 1.30 1.92286 20.9
43 -714.778 87.88
像面 ∞
各種データ
焦点距離 780.00
Fナンバー 5.90
半画角 1.59
像高 21.64
レンズ全長 437.12
BF 87.88
レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 196.48
2 15 -88.45
3 17 -251.98
【0045】
以下の表に、各実施例における前述の各条件式に関する諸数値を示す。
【0046】
【0047】
図9は、本発明の実施形態に係る光学機器としての撮像装置(デジタルスチルカメラ)の概略図(模式図)である。本実施形態の撮像装置は、カメラ本体10と、光学系11と、光学系11によって形成される像を光電変換する撮像素子(光電変換素子)12とを備える。光学系11は、上述した各実施例の何れかに係る光学系L0であり、保持部材(鏡筒)により保持されている。撮像素子12は、光学系11からの光を受光することで物体の撮像を行う素子であり、例えばCCDセンサやCMOSセンサなどの光電変換素子を採用することができる。
【0048】
なお、本実施形態に係る撮像装置はカメラ本体10と光学系11とが一体化されたレンズ一体型カメラを想定しているが、レンズ交換式カメラであってもよい。例えば、光学系11を保持する保持部材が撮像装置としてのカメラ本体10に着脱可能である光学装置(レンズ装置)を採用してもよい。また、各実施例の光学系は、上述した撮像装置に用に限らず、銀塩フィルム用カメラやデジタルビデオカメラ、望遠鏡や双眼鏡、プロジェクタ(投射装置)等の種々の光学機器に適用することができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
L0 光学系
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群